説明

不織布製造装置、不織布製造方法

【課題】ナノファイバーを堆積させて得られる不織布であって、所望の厚み、密度、機械的強度、単位体積当たりの表面積を備えた不織布を製造する。
【解決手段】ナノファイバー200生成用の原料液を噴射する電圧が印加される噴射孔112と、生成されたナノファイバー200が堆積される被堆積手段160とを備える不織布製造装置であって、前記被堆積手段160上に堆積されたナノファイバー200を圧縮すると共に、前記ナノファイバーに対し温風を吹き付ける吹き付け孔302を有する圧縮昇温手段305を用い圧縮部位を昇温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子物質からなるナノファイバーを堆積し、不織布を製造する方法、及び、不織布の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質から成り、サブミクロンスケールの直径を有する糸状物質(以下、「ナノファイバー」と記す。)を製造する方法として、エレクトロスピニング(電荷誘導紡糸)法が知られている。
【0003】
このエレクトロスピニング法とは、高電圧を印加した針状のノズルから溶媒中に高分子物質を分散させた高分子溶液を空間中に流出(射出)させることにより、ナノファイバーを得る方法である。より具体的には、高電圧により帯電した高分子溶液の溶媒が蒸発するに伴い電荷密度が上昇する。そして、高分子溶液中に発生する反発方向のクーロン力が高分子溶液の表面張力より勝った時点で高分子溶液が爆発的に線状に延伸される現象(静電爆発)が生じる。この静電爆発が、空間において次々と発生することで、サブミクロンの直径の高分子から成るナノファイバーが製造される。
【0004】
また、前述の方法で製造されたナノファイバーを基板上に堆積させることで、立体的な網目を持つ3次元構造の薄膜を得ることができ、さらに厚く形成することでサブミクロンの網目を持つ高多孔性ウェブ(不織布)を製造することができる。
【0005】
このようにエレクトロスピニング法を採用して製造されたウェブは、ナノオーダーの孔からなる高多孔性であり表面積が広いため、フィルタや電池のセパレータや燃料電池の高分子電解質膜や電極等に適用され、高い効果を得ることが期待されている。
【0006】
従来、ナノファイバーを多量に生成してナノファイバーからなる実用的なウェブを製造する方法として、複数のノズルを並列に配置し、多量のナノファイバーを堆積させてウェブを製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−201559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、堆積しただけのナノファイバーからなる不織布では、密度が低くいわゆるふわふわの状態である。さらに、ある厚みを越えると、帯電しているナノファイバー同士が反発し合い、不織布として固定化されずに単に降り積もっただけの状態となるため、実用に供される不織布としては強度が不足したり、不織布として利用することができないことになる。また、堆積しただけのナノファイバーからなる不織布の単位体積当たりの表面積が少ないため、不織布としての機能が劣ることになる。
【0008】
そこで、本発明者らは、ローラなどを用いて堆積した後の不織布を圧縮することに思い至ったが、単に不織布を圧縮するだけでは、圧縮を解除すると元の体積に復元してしまうという課題を見出だした。
【0009】
本発明は、上記本発明者らが見出だした課題を解決するもので、ナノファイバーを堆積させて得られる不織布であって、所望の厚み、つまり、高い密度の不織布を製造することのできる、不織布の製造装置、及び、不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる不織布製増装置は、ナノファイバー生成用の原料液を噴射する、電圧が印加される噴射孔と、生成されたナノファイバーが堆積される被堆積手段とを備える不織布製造装置であって、前記被堆積手段上に堆積されたナノファイバーを圧縮すると共に、圧縮部位を昇温する圧縮昇温手段を備えることを特徴とする。
【0011】
前記原料液は、ナノファイバーの材料である高分子物質を溶媒に溶解させた溶液である。高分子物質の比率は、使用する溶媒により異なるが、3%から20%位が好適である。高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン(FVDF)、ポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリルニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の石油系ポリマーや、バイオポリマーなどの様々な高分子、それらの共重合体や混合物などが適用可能であり、溶媒はこれら高分子物質を溶解する任意の溶媒を適用できる。
【0012】
これにより、堆積した状態のままの不織布を圧縮しつつ圧縮された部位を昇温することで、不織布からの溶媒の蒸発を促進させると共に、ナノファイバー同士の融着を促すことができるため、圧縮を解除しても厚みが復元することのない、所望の厚みの不織布を製造することが可能となる。
【0013】
前記圧縮昇温手段は、前記ナノファイバーに対し温風を吹き付ける吹き付け孔を有する事が望ましい。
【0014】
これにより、圧縮状態の不織布に対し温風を吹き付けることで圧縮された部位の隅々まで昇温可能となり、さらに、風力により残存している溶媒を不織布外に押し出すことが可能となる。
【0015】
不織布製造装置はさらに、前記被堆積手段を所定方向に移動させる移動手段を備え、前記圧縮昇温手段は、筒体からなり、前記吹き付け孔を前記筒体の周壁に多数備える圧縮昇温ローラと、前記圧縮昇温ローラと協働して不織布を挟持するピンチローラとを備えてもよい。
【0016】
これによれば、連続的に製造される不織布を連続的に圧縮昇温させることができるため、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0017】
前記不織布製造装置はさらに、前記圧縮昇温手段に交流電圧を印加し、製造される不織布を除電する除電手段を備えてもよい。
【0018】
これによれば、帯電状態の不織布を除電することができるため、不織布が圧縮時に圧縮昇温手段にくっつく等の不具合を回避することが可能となる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる不織布製造方法は、ナノファイバーからなる不織布の製造方法であって、電圧が印加された噴射孔からナノファイバー生成用の原料液を空間に噴射し、生成したナノファイバーを被堆積手段に堆積させるナノファイバー堆積ステップと、前記被堆積手段上に堆積されたナノファイバーを圧縮すると共に、圧縮部位を昇温する圧縮昇温ステップとを含むことを特徴とする。
【0020】
当該効果は上記装置と同様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所定の厚み、所定の密度のナノファイバーからなる不織布を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明にかかる不織布製造装置の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
【0024】
同図に示すように不織布製造装置100は、ナノファイバー発生手段110と、収集電極120と、被堆積手段としてのシート160と、圧縮昇温手段300とを備えている。なお、生成されているナノファイバー、または、その原料液には明確に区別できないためいずれにも200の符号を付し、製造された不織布には210を付している。
【0025】
ナノファイバー発生手段110とは、ナノファイバーを生成するための原料液を噴射(流出)する装置であり、電源150に接続されて所定の電位に維持されるものとなっている。また、原料液を貯蔵するタンク(図示せず)と接続されるパイプ111がナノファイバー発生手段110に接続されており、所定の圧力で原料液が供給されるようになっている。
【0026】
図2はナノファイバー発生手段の具体例を示す図である。
【0027】
同図(a)に示すナノファイバー発生手段110は、先端に噴射孔112を備えたノズル113を複数本備え、各ノズル113には電源150が接続されている。また、各ノズル113にはパイプ111がそれぞれ接続されており、原料液を貯蔵するタンクから所定の圧力で原料液が供給されるものとなっている。
【0028】
同図(a)に示すナノファイバー発生手段110は、供給される圧力により噴射孔112から原料液200を噴射するものであり、ノズル113に接続される電源150により、噴射する原料液200が帯電するようになっている。
【0029】
同図(b)に示すナノファイバー発生手段110は、周壁に多数個の噴射孔112が設けられた円筒形のバレル114を備えている。バレル114は、回転可能であると共に、電源150により所定の電位に維持されるものである。また、回転軸上に設けられたシャフトの一方にはパイプ111が接続され、バレル114内部に原料液200が供給されるものとなっている。
【0030】
同図(b)に示すナノファイバー発生手段110は、遠心力により噴射孔112から原料液200を噴射するものであり、バレル114に接続される電源150により、噴射する原料液200が帯電するようになっている。
【0031】
シート160は、空間中で生成したナノファイバー200が堆積する対象となる部材であり、堆積したナノファイバー200と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシートである。
【0032】
当該シート160は、ロール状に巻き付けられた状態で供給され、ナノファイバー200が堆積する部分をゆっくりと移動手段170により図中矢印方向に移動するものとなっている。そして、シート160上で製造された不織布210とともに再びロール状に巻き付けられるようになっている。
【0033】
移動手段170は、シート160を所定の張力を維持しつつ一方方向に送ることができる装置であり、モータ(図示せず)などの駆動により図に示されるローラを回転させてシート160を移動させるものである。
【0034】
収集電極120は、ナノファイバー発生手段110と所定の電位差が生じるように電源150により電位が付与される金属製の電極である。この収集電極120は、シート160に対しナノファイバー発生手段110の反対側に、ナノファイバー発生手段110と対向して配置されている。また、収集電極120は、ナノファイバー発生手段110から噴射され生成した帯電状態のナノファイバー200を吸引し、シート160上にナノファイバー200を堆積させる機能を担っている。
【0035】
なお、収集電極120については、堆積するナノファイバーの密度分布を均一にするための複数の態様が存在する。以下収集電極120の各態様を説明する。
【0036】
(収集電極<1>)
図3は、収集電極<1>を概念的に示す斜視図である。
【0037】
同図に示すように、収集電極120は、複数の電極121と、複数の電極121それぞれに電位を付与する電源150と、電極121に印加する電圧を周期的に変化させることのできる電圧変化手段151と、絶縁体130とを備えている。
【0038】
電極121は、シート160の移動方向(図中矢印)に延び、ナノファイバー200が堆積する部分すなわち堆積部161にわたって配置される金属製の部材である。本収集電極<1>の場合、電極121は、シート160の移動方向に対し垂直に6個の電極121が配置されており、電極の間には絶縁体130が設けられている。なお、電極121のそれぞれを区別して示す場合には符号にa〜fを添えて説明する。
【0039】
電源150は、最大−50kv〜−100kvの電位を付与することができる装置である。本収集電極<1>の場合、電極121a〜電極121fに対し、それぞれ電源150a〜電源150fが接続され、各電極121に独立して電位が付与されるようになっている。
【0040】
電圧変化手段151は、電極121に付与する電位を10kv〜100kv程度の電圧の幅で変化させることのできる装置である。
【0041】
以上の構成の収集電極120であれば、電圧変化手段151で各電極121の電位を変化させることによって、シート160の上に発生する電場の分布を任意に変化させることができる。従って、帯電したナノファイバー200の収集が集中する位置を前記電場の分布に従って移動させることができ、堆積するナノファイバー200の厚さの均一かを図ることが可能となる。
【0042】
(収集電極<2>)
次に、他の収集電極120について説明する。
【0043】
図4は、他の収集電極<2>を概念的に示す側面図である。
【0044】
同図に示すように、収集電極120は、複数の電極121と、複数の電極121それぞれに電位を付与する電源150と、電極121を駆動する駆動手段157と、絶縁板159とを備えている。
【0045】
電極121、電源150については収集電極<1>と同様であるため説明を省略する。
【0046】
駆動手段157は、各電極121を独立して直線的に往復動作させることのできるものであり、空圧によって直線的に出没する移動軸158を備えている。なお、駆動手段157は、リニアアクチュエータであればよく、空圧や油圧を用いるもの、ボールねじを用いるもの、リニアモータなどを用いるもの、その駆動方法は問わない。また、駆動手段157は、電極121とナノファイバー発生手段110とを結ぶ線に沿って電極121を移動させるものとなっている。
【0047】
絶縁板159は、電極121の移動時における振れを規制すると共に、電極121相互の接触や近接を阻害して異常な放電等を防止する働きを担うものである。
【0048】
以上のような収集電極120であれば、電源150から出力される電圧は一定でよい。また、各電極121の移動を制御することにより、シート160の移動方向と垂直な方向で分割されたシート160の堆積部161の領域毎にアナログ的経時的に変化する電場を形成することが可能となる。
【0049】
(収集電極<3>)
次に、その他の収集電極120について説明する。
【0050】
図5は、他の収集電極<3>を概念的に示す斜視図である。
【0051】
同図に示すように、収集電極120は、電極121と、電極121に電位を付与する電源150と、電極121を駆動する駆動手段167とを備えている。
【0052】
電源150については収集電極<1>と同様であるため説明を省略する。
【0053】
駆動手段167は、電極121をレールに沿って直線的に往復動作させることのできるものである。なお、駆動手段157は、前記と同様リニアアクチュエータであればよく、空圧や油圧を用いるもの、ボールねじを用いるもの、リニアモータなどを用いるもの、その駆動方法は問わない。また、駆動手段167は、シート160の幅方向、すなわち、シート160の移動方向と垂直な線に沿って電極121を移動させるものとなっている。
【0054】
以上のような収集電極120であれば、電源150から出力される電圧は一定でよい。また、電極121の移動を制御することにより、シート160の堆積部161にシート160の移動方向と垂直な方向に変化する電場を形成することが可能となる。
【0055】
図6は、圧縮昇温手段を示す斜視図である。
【0056】
図7は、圧縮昇温手段を示す断面図である。
【0057】
同図に示すように、圧縮昇温手段300は、堆積されたナノファイバー200からなる不織布210を圧縮しつつ温風を前記不織布210(ナノファイバー200)に吹き付ける事のできる装置であり、圧縮昇温ローラ301と、ピンチローラ303と、温風発生装置304と、押圧手段305と、駆動手段306と、ギア307、308と、シャフト309とを備えている。
【0058】
圧縮昇温ローラ301は、シート160と共に移動する不織布210を連続的に押圧する円筒状の筒体であり、筒体の周壁には放射状に吹き付け孔302が穿設されている。
【0059】
シャフト309は、圧縮昇温ローラ301の回転軸と同軸上に圧縮昇温ローラ301を貫通して配置される一端が閉塞した筒状の部材である。シャフト309の周壁には、圧縮昇温ローラ301と同様に温風を放出するための孔が多数放射状に穿設されている。
【0060】
シャフト309と圧縮昇温ローラ301とは、シャフト309を固定した状態で圧縮昇温ローラ301を回転可能に軸支するために、圧縮昇温ローラ301の両端部に取り付けられるベアリング310を介して接続されている。
【0061】
ピンチローラ303は、圧縮昇温ローラ301と協働し、不織布210及びシート160を挟持するローラであり、シート160の移動に伴って回転可能に軸支されている。
【0062】
温風発生装置304は、所望の温度に昇温された空気を送風できる装置であり、空気を昇温することのできるヒータと、所定量の風量で空気を送風することのできる送風ファンとを備えている。
【0063】
温風発生装置304は、シャフト309の開口端とフレキシブルなパイプで接続されており、温風発生装置304で発生した温風を、シャフト309に導入し、シャフト309に穿設された孔を介して、径大の圧縮昇温ローラ301に温風を導入する構成になっている。
【0064】
これにより、回転しないシャフト309に容易にパイプを接続し、温風を圧縮昇温ローラ301に導入することができる。さらに、一端シャフト309を介して圧縮昇温ローラ301に温風を導入することで、圧縮昇温ローラ301から均等に温風を放出することが可能となる。
【0065】
押圧手段305は、エアの圧力により圧縮昇温ローラ301をピンチローラ303に向けて押圧する装置であり、シリンダ311と移動軸312とを備えている。移動軸312は、シャフト309の両端部と接続されており、エアの圧力により移動軸312をシリンダ311から突出させることでシャフト309を介して圧縮昇温ローラ301を回転可能に押圧している。
【0066】
従って、圧縮昇温ローラ301とピンチローラ303とに挟まれる不織布210は、押圧手段305のエアの圧力による力によって圧縮されることになる。
【0067】
駆動手段306は、圧縮昇温ローラ301を強制的に回転させる装置であり、ステッピングモータと、ギア308とを備えている。ギア308は、圧縮ローラ301の端面外方に向かって取り付けられているギア307とかみ合っている。従って、駆動手段306は、ステッピングモータの駆動を制御することにより圧縮昇温ローラ301の回転を正確に制御することができるものとなっている。
【0068】
駆動手段306を制御し、圧縮昇温ローラ301の回転と不織布210(シート160)の移動とを同期させることで、不織布210がよれることなく不織布210を圧縮することが可能となる。
【0069】
また、圧縮昇温ローラ301には、図8に示すように、交流電源360により交流電圧が印加できるものとなっている。これは、帯電した不織布210と直接接触する圧縮昇温ローラ301に交流電圧を印加することで、不織布210を除電することができ、圧縮昇温ローラ301に不織布210が付着することを防止することが可能となる。
【0070】
図9は、圧縮昇温手段の制御構成を示すブロック図である。
【0071】
同図に示すように、圧縮昇温ローラ301には温度センサ324が取り付けられており、当該温度センサ324からの情報に基づき制御部323は、温風発生装置304をフィードバック制御している。
【0072】
また、圧縮昇温ローラ301に付与する押圧力は、空圧源324からの圧縮空気をシリンダ311に導入することにより発生する。また、シリンダ311に導入される空気の圧力は圧力調整手段322により調整され、さらに、圧力検出手段321による測定値に基づき空気の圧力は正確に調整されている。
【0073】
従って、不織布210は、正確に制御された圧力で圧縮され、正確に温度が制御された温風が吹き付けられることとなる。
【0074】
次に、ナノファイバー発生手段110の全体の配置を説明する。
【0075】
図10は、不織布の製造状態を概念的に示す側面図である。
【0076】
同図に示すように、ナノファイバー発生手段110は、下部に配置されるシート160に向かい、原料液が噴射されるものとなっている。また、ナノファイバー発生手段110とシート160の距離は、静電爆発が複数回発生し、所望の径のナノファイバーが得られる距離に設定されている。
【0077】
また、シート160の下側に配置される収集電極120は、ナノファイバー発生手段110と所定の電位差が発生するものとなされている。これらの電位差は、ナノファイバー発生手段110と収集電極120とにそれぞれ接続される電源150により調整される。
【0078】
収集電極120に対し、シート160の移動方向(同図中矢印)の下流側には、圧縮昇温ローラ301と、ピンチローラ303とがシート160および不織布210を挟むように配置されている。
【0079】
また、シート160は、長尺のシート160が巻き付けられたシート供給ロール162から供給され、圧縮状態の不織布210は、シート160と共に巻き取りロール163に巻き取られる。
【0080】
なお、圧縮昇温ローラ301上に配置される、防風カバー164は、圧縮昇温ローラ301から吹き付けられる温風を不織布210に多く到達させるために、圧縮昇温ローラ301の上半分に存在する吹き付け孔302をふさぐ半円筒状の部材である。
【0081】
以上の構成の不織布製造装置100による不織布の製造方法を次に説明する。
【0082】
従来の方法に従いナノファイバー発生手段110の複数の噴射孔112から原料液を噴射し、ナノファイバー200を空間中で発生させつつ、シート160上にナノファイバーを堆積させてゆく。この際、シート160の下部に配置されている収集電極120によりシート160上にナノファイバー200が収集され、シート160上にナノファイバー200が堆積することとなる。
【0083】
ナノファイバー200が堆積するシート160は、一定の移動速度で移動している。またシート160の移動速度は、ナノファイバー200が堆積する早さと、希望する不織布210の状態(例えば密度など)から計算により求められる。
【0084】
以上のようにしてシート160の上に堆積し、形成された不織布210は、いわゆるふわふわの状態である。この状態の不織布210は、シート160と共に移動する。
【0085】
シート160の移動方向の下流では、圧縮昇温ローラ301とピンチローラ303とによりふわふわの状態の不織布210を圧縮しつつ圧縮昇温ローラ301から不織布210に対して吹き付ける温風により圧縮されている部位を昇温し、不織布210に残存している溶剤をとばし乾燥させる。
【0086】
ここで、不織布210の厚みは、堆積直後の不織布210の厚みと、押圧手段305の押圧力の設定により決まる。これらの設定は、ナノファイバー200を構成するポリマーの種類、使用する溶媒等の条件に基づき決定される。
【0087】
以上のように不織布を製造すれば、所望の厚み、密度、機械的強度、単位体積当たりの表面積を備えた不織布210を容易に製造することが可能となる。
【0088】
なお、上記実施の形態では圧縮昇温手段300を、ローラを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、底面から温風を吹き付けることのできる吹き付け孔を備えた箱体と基台との間でプレス状態で不織布210を圧縮し、温風を吹き付けるものでも構わない。
【0089】
また、圧縮昇温手段300は、圧縮される部位を昇温すれば良く温風を吹き付けなくても良い。例えば、加温した部材(例えば吹き付け孔のない単なる円筒状のローラ)で不織布210を圧縮するものでもよい。
【0090】
また、圧縮昇温ローラと協働して不織布を挟持するのはピンチローラばかりでなく、回転しないシャフトや板状の剛体、無限軌道などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、微小多孔性を利用したフィルターや表面積の広さを利用した触媒の担持体などに適用できる不織布の製造装置などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明にかかる不織布製造装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】ナノファイバー発生手段の具体例を示す図である。
【図3】収集電極<1>を概念的に示す斜視図である。
【図4】他の収集電極<2>を概念的に示す側面図である。
【図5】他の収集電極<3>を概念的に示す斜視図である。
【図6】圧縮昇温手段を示す斜視図である。
【図7】圧縮昇温手段を示す断面図である。
【図8】圧縮昇温ローラの除電構造を示す図である。
【図9】圧縮昇温手段の制御構成を示すブロック図である。
【図10】不織布の製造状態を概念的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0093】
100 不織布製造装置
110 ナノファイバー発生手段
112 噴射孔
113 ノズル
114 バレル
120 収集電極
121 電極
150 電源
160 シート
161 堆積部
170 移動手段
200 ナノファイバー
210 不織布
300 圧縮昇温手段
301 圧縮昇温ローラ
302 吹き付け孔
303 ピンチローラ
304 温風発生装置
305 押圧手段
306 駆動手段
307 ギア
308 ギア
309 シャフト
310 ベアリング
311 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー生成用の原料液を噴射する、電圧が印加される噴射孔と、生成されたナノファイバーが堆積される被堆積手段とを備える不織布製造装置であって、
前記被堆積手段上に堆積されたナノファイバーを圧縮すると共に、圧縮部位を昇温する圧縮昇温手段
を備える不織布製造装置。
【請求項2】
前記圧縮昇温手段は、前記ナノファイバーに対し温風を吹き付ける吹き付け孔を有する圧縮昇温手段
を備える請求項1に記載の不織布製造装置。
【請求項3】
不織布製造装置はさらに、
前記被堆積手段を所定方向に移動させる移動手段を備え、
前記圧縮昇温手段は、
筒体からなり、前記吹き付け孔を前記筒体の周壁に多数備える圧縮昇温ローラと、
前記圧縮昇温ローラと協働して不織布を挟持するピンチローラとを備える
請求項2に記載の不織布製造装置。
【請求項4】
前記不織布製造装置はさらに、
前記圧縮昇温手段に交流電圧を印加し、製造される不織布を除電する除電手段を備える請求項1に記載の不織布製造装置。
【請求項5】
ナノファイバーからなる不織布の製造方法であって、
電圧が印加された噴射孔からナノファイバー生成用の原料液を空間に噴射し、生成したナノファイバーを被堆積手段に堆積させるナノファイバー堆積ステップと、
前記被堆積手段上に堆積されたナノファイバーを圧縮すると共に、圧縮部位を昇温する圧縮昇温ステップとを含む
不織布製造方法。
【請求項6】
前記圧縮昇温ステップでは、前記ナノファイバーに対して温風を吹き付け圧縮部位を昇温する請求項5に記載の不織布製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−156766(P2008−156766A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344948(P2006−344948)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発/先端機能発現型新構造繊維部材基盤技術の開発」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】