説明

不織布

【課題】吸水性に優れかつ透水性を抑制した不織布を提供する。
【解決手段】本発明の不織布は、熱可塑性樹脂から紡糸されたフィラメントが一方向に配列された一方向配列不織布、または、2枚の一方向配列不織布をフィラメントの配列方向が直交するように積層した積層不織布を有し、フィラメントの直径が3〜20μm、嵩密度が0.1g/cm3以上、かつ目付けが5〜40g/cm2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性に優れながらも透水性を抑制した不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オムツや生理用品などの液体吸収部分は、液体の吸収性を向上させかつ逆戻りを改善するために、液体吸収体と表層との間に中間層を配することが行われている。特許文献1には、この中間層の具体例として、水解紙、エアレイドパルプ、水解性不織布が挙げられている。
【0003】
一般的に中間層の機能は、表層を通って浸入してきた液体を効率良く透過し液体吸収体に吸収させること、さらに、液体吸収体から染み出てきた液体が表層材を通って外へ出ること、すなわち液体の逆戻りを抑制することである。表層や中間層を不織布で構成した場合、液体を効率良く透過させるには、不織布の繊維径を太くしてかつ嵩密度を小さくするのが有効である。現に、市販されているオムツや生理用品などの表層や中間層には、そのような不織布が用いられている。しかし、このような繊維径を太くしかつ嵩密度を小さくした不織布は、液体を液体吸収体に透過する性能は優れているものの、液体吸収体から染み出た液体についても同様に透過させやすいため、液体の逆戻りを抑制することについては不十分であった。
【0004】
また、液体吸収体への液体の浸入が局所的であると、液体吸収体への液体の吸収も局所的になり、液体吸収体を効率的に利用することができない。そこで、液体吸収部分の液体拡散性を向上させるために、従来のオムツや生理用品などでは液体吸収体の前に吸水紙といった拡散材を配している。この種の拡散材は、液体の吸収性には優れるが、繊維の方向がランダムであり拡散方向を制御することはできない。さらに、嵩密度が高いために拡散範囲が狭い(拡散距離が小さい)といった欠点があった。この欠点を補う目的で、特許文献2には、吸水紙の前にさらに、親水処理した目付が10〜50g/m2のスパンボンド不織布を配することが開示されている。その他、エンボスパターンを工夫した不織布を配したり、高目付の不織布を配したりすることも行われている。しかし、このようにさらに別の不織布を配することは、嵩高くなり厚みが厚くなるという欠点と、透湿性や通気性が低下するとともに保温性が高いため蒸れやすいという欠点があった。
【0005】
一方、不織布としては、スパンボンド法によって製造されたスパンボンド不織布や、メルトブロー法によって製造されたメルトブロー不織布がある。
【0006】
スパンボンド不織布は、フィラメントがランダムな方向を向いているランダム不織布である。そのため、スパンボンド不織布は、強度が小さく、また、フィラメントを高度に配列させることが難しい。この点を改善するために、特許文献3には、フィラメントの噴出方向に対してコンベアを傾斜させる方法が記載されている。また、特許文献4には、気流とともに噴出させたフィラメントを通気性のあるコンベア上に堆積させ、このコンベアの裏側に気流を遮断する手段を設けて気流の制御を行うことにより、フィラメントを縦方向に広げて縦方向への配列性を向上させる方法が記載されている。さらに、特許文献5には、コンベアの一部を走行方向に対して垂直方向かつ下方に湾曲させたり、コンベアの直上に障壁を設けたりすることによって、フィラメントを横方向に配列させることが開示されている。
【0007】
メルトブロー不織布は、高速の気流によって、フィラメントが固化する前に細化されるため、直径が5μm以下の非常に細いフィラメントが得られる。
【特許文献1】特開2001−190597号公報
【特許文献2】特開平8−164159号公報
【特許文献3】特公昭60−25541号公報
【特許文献4】特開平7−3604号公報
【特許文献5】特許第2612203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスパンボンド不織布において、上述した各文献に開示された方法ではフィラメントを高度に配列させるには不十分であり、コンベア上に捕集したフィラメントの集合体であるウェブを延伸させても、フィラメント同士の間隔が広がって解繊してしまい、フィラメントを高度に延伸させることはできない。
【0009】
また、メルトブロー不織布は、フィラメントを細化する際にフィラメントが切断され易く、フィラメントの長さはスパンボンド不織布と比べて短い。したがって、メルトブロー不織布も、コンベア上に捕集したフィラメントの集合体であるウェブを延伸させても、フィラメントを高度に延伸させることはできない。
【0010】
このような状態で、液体の吸収性を向上させるために、圧縮加工などによって嵩密度を高くしたとしても、フィラメントが高度に配列しておらずフィラメントの重なりが多いため、所望の吸水性および透水性は得られない。また、フィラメントが重なっているところでフィラメントが切断されやすく、不織布としての著しい強度低下を招いてしまう。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、吸水性に優れかつ透水性を抑制した不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の不織布は、熱可塑性樹脂から紡糸されたフィラメントが一方向に配列された一方向配列不織布、または、2枚の一方向配列不織布をフィラメントの配列方向が直交するように積層した積層不織布を有し、フィラメントの直径が3〜20μm、かつ嵩密度が0.1g/cm3以上である。
【0013】
本発明の不織布によれば、フィラメントが一方向に配列され、かつ嵩密度が0.1g/cm3以上であるので、不織布中の空気層が薄くかつフィラメントの重なりが少ないものとなる。その結果、吸水性に優れながらも、JIS A1218に準じた透水度が0.1cm/sec以下に抑制された不織布が得られる。また、フィラメントの直径が上記の範囲にあるので、フィラメントを高度に配列するのが容易であり、かつ、所望の吸水性および透水性が得られるように嵩密度を高くすることができる。さらに、本発明の不織布は、透水度が低くかつフィラメントが一方向に配列されているので、液体の拡散性および拡散方向の制御性にも優れている。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明の不織布は優れた吸水性を有し、しかも吸収した液体の逆戻りが抑制されるので、オムツや生理用品などの液体吸収部分に用いるのに適した不織布とすることができる。また、液体の拡散性および拡散方向の制御性に優れるので、液体吸収体と組み合わせて用いたときに、液体吸収体を有効に活用することができ、その結果、液体吸収体の使用量を削減することができる。さらに、本発明の不織布は、適度な透湿性、通気性を有しつつも保温率が低いので、身体に密着させて用いる場合には蒸れが生じにくくなり、快適な装着感を有する不織布とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の不織布は、熱可塑性樹脂から紡糸されたフィラメント(繊維)がほぼ一方向に配列されかつフィラメントの配列方向に延伸されて構成された延伸一方向配列不織布、または、このように構成された2枚の延伸一方向配列不織布を互いのフィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布である。延伸一方向配列不織布を構成するフィラメントの直径は3〜20μmであることが必要であり、好ましくは3〜15μmである。さらに、嵩密度は、0.1g/cm3以上であることが必要であり、好ましくは0.2g/cm3以上である。また、目付は、5〜40g/cm2である。
【0017】
以上のように構成された不織布は、優れた吸水性を有しつつも、透水度が0.1cm/sec以下に抑制された不織布となる。しかも、保温率が30%以下、好ましくは25%以下になり、このような不織布は、オムツや生理用品の液体吸収体として特に好ましく用いることができる。
【0018】
ここで、延伸一方向配列不織布について説明する。
【0019】
延伸一方向配列不織布は、上述したように、フィラメントをその配列方向に延伸したものであり、紡糸段階では通常の不織布と同様の太さのフィラメントを紡糸するが、これをフィラメントの配列方向に5〜10倍に延伸することにより、フィラメントの直径が3〜20μmとされる。この場合、紡糸段階においてはフィラメントが未配向であり、かつ集積されたフィラメントが一定方向に配列されているので、フィラメントの配列方向に延伸することで、細いフィラメントであっても延伸後の引張り強度が向上する。しかし、紡糸段階におけるフィラメントの配列は完全ではないので、延伸一方向配列不織布には、未延伸フィラメントや未配向フィラメントが若干混じっている。未延伸フィラメントは、融点も低く、その後の積層処理で融解するため、延伸一方向配列不織布のフィラメント同士の接着剤的機能を果たす。
【0020】
延伸一方向配列不織布を構成するフィラメントは長繊維フィラメントである。ここでいう長繊維フィラメントとは、実質的に長繊維であればよく、平均長さが100mmを超えているものをいう。フィラメントの長さおよび径は顕微鏡写真により測定する。
【0021】
延伸一方向配列不織布には、その製造方法によって縦延伸不織布と横延伸不織布とがあるが、本実施形態においてはこれらの何れも使用することができ、また組み合わせも自由である。縦延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向である縦方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、横延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向である横方向にフィラメントが配列され延伸された不織布である。
【0022】
縦延伸不織布および横延伸不織布について、詳細に説明する。
【0023】
縦延伸不織布は、紡糸されたフィラメントにドラフト張力を与えてフィラメントを細径化した後、コンベアの移動を利用してコンベア上に集積することによって、フィラメントが縦方向に配列したウェブを形成し、これを縦方向に延伸することによって得られる。
【0024】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー法(MB法)や、狭義のスパンボンド法(SB法)が挙げられる。何れの方法でも、フィラメントを細径化する際にできるだけ分子配向を伴わないようにするために、フィラメントに熱風を噴射する。また、コンベア上でのフィラメントの配列性を向上させるために、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸したり、熱風の流域中にロッド部材を配置し、このロッド部材の回転または移動により生じるコアンダ効果を利用してフィラメントを縦方向に振動させたりすることが好ましい。
【0025】
コンベア上に集積したウェブは、縦方向に延伸され、縦延伸不織布となる。この延伸によって、フィラメントの配列性がさらに向上する。
【0026】
ウェブの延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸が用いられる。多段延伸においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、2段目以降の延伸が主延伸として行われる。
【0027】
ウェブの延伸方法としては、近接延伸法を用いることが好ましい。多段延伸において近接延伸法を用いる場合は、1段目の延伸に近接延伸を用いる。近接延伸法とは、隣接する2組のロールの表面速度の差によりウェブを延伸する方式において、短い延伸間距離(延伸の開始点から終点までの距離)を保って延伸を行う方法であり、延伸間距離が100mm以下であることが望ましい。このように、ウェブを近接延伸法で延伸することにより、個々のフィラメントを有効に延伸することができる。特に、フィラメントが全体として縦方向に配列していても個々にはある程度屈曲している場合には、できるだけ延伸間距離を短く保つことが、個々のフィラメントを有効に延伸する上で重要である。
【0028】
一般的なメルトブロー不織布では、フィラメントがランダムに配列しており、近接延伸法によって延伸しても、フィラメントの間隔が広がるだけで、個々のフィラメントが延伸される確率は低い。ところが本発明においては、ウェブは既に高度に一方向に配列しているので、近接延伸法によれば、より確実に個々のフィラメントを延伸することができる。
【0029】
次に、横延伸不織布について説明する。横延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントが横方向に配列したウェブを形成する。フィラメントが横方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより紡糸されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からエアを直接噴出することにより横方向に振らせ、コンベア上に集積することによって形成することができる。また、他の方法として、上述したコアンダ効果を利用してフィラメントを横方向に振動させ、コンベア上に集積する方法もある。このようにして、コンベア上には、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0030】
こうして得られたウェブをフィラメントの配列方向すなわち横方向に延伸することにより、横延伸不織布となる。この延伸により、フィラメントの配列性がさらに向上する。
【0031】
ウェブを横方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、設備の設置のために広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。また、いずれの延伸方式でも、横方向への延伸に際してはウェブの両端部を掴んだ状態で行う。ウェブは既に、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが配列されているので、これらの延伸方式においては個々のフィラメントを効果的に延伸することができる。
【0032】
延伸一方向配列不織布の代表的な製造方法について、縦延伸不織布および横延伸不織布を例に挙げて説明したが、延伸一方向配列不織布の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつ配列したフィラメントをその配列方向に延伸できる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0033】
直交積層不織布は、前述したように、2枚の延伸一方向配列不織布を、フィラメントの配列方向が直交するように積層したものであり、各延伸一方向配列不織布には、上述した縦延伸不織布および横延伸不織布をそれぞれそのまま用いることができる。これにより、2枚の延伸一方向配列不織布を連続的に繰り出して重ね合わせ、繋ぎ目のない連続した均一な直交積層不織布を得ることができる。また、予め縦延伸不織布を作製しておき、横延伸不織布の製造段階で、横延伸不織布の搬送過程で横延伸不織布上に縦延伸不織布を繰り出して重ね、これらを積層することで、直交積層不織布をより効率良く製造することができる。
【0034】
2枚の延伸一方向配列不織布は、例えば、熱エンボス法によって積層することができる。エンボス条件は、延伸一方向配列不織布に用いられる樹脂の種類によって異なるが、その融点よりも30〜80℃低い温度とすることが好ましい。また、直交積層不織布に高い表面平滑性が要求される場合には、2枚の延伸一方向配列不織布の積層を、熱カレンダー処理によって行うこともできる。
【0035】
前述したように、不織布を構成するフィラメントの直径が3〜20μmの範囲であることが必要である。フィラメントの直径が3μm未満では、メルトブロー不織布と同様にフィラメントの強度不足と短繊維化により、フィラメントを一方向に配列することが困難になる。さらに、フィラメントの直径が3μm未満の場合は、フィラメントを高度に配列させることが困難になるためフィラメントの重なりが多くなり、嵩密度を小さくできないので、目的とする吸水性、および保温率を得ることが困難になる。目的とする吸水性とは、後述の実施例で示す試験方法にて10分以下、好ましくは8分以下である。目的とする保温率とは、JIS L1096A法に準じて測定した保温率が30%以下、好ましくは25%以下である。逆に、フィラメントの直径が20μmを超えると、フィラメントを高度に配列して嵩密度を0.1g/cm3以上にしても、フィラメント間距離が大きくなり、目的とする透水度を得ることが困難になる。目的とする透水度とは、JIS A1218に準じて測定した透水度が0.1cm/sec以下、好ましくは0.05cm/sec以下である。
【0036】
不織布の嵩密度は0.1g/cm3以上である必要がある。嵩密度が0.1g/cm3未満では、前述した吸水性、透水度、および保温率を目的とする値とすることが困難になる。
【0037】
さらに、延伸一方向配列不織布は、フィラメントがほぼ一方向に配列されているが、フィラメントの配列度合いをみるものとして嵩密度が有効である。つまり、フィラメントの重なりが多くなるほど、厚みが増すので嵩密度は小さくなる。それに対して、フィラメントが一方向に配列されていればフィラメントの重なりは少なく、それによって厚みは薄くなり嵩密度が高くなる。
【0038】
本実施形態の不織布は吸水性が高いが、ここで、吸水性が高くなる原理については、次のように考えられる。本明細書に記載の吸水性試験法では、不織布を水中に浸けているので、不織布の両面には水が接している。不織布を微視的に見ると、ある太さをもったフィラメントがある距離を隔てて位置しているので、そのフィラメント間で水は、界面張力、および水と不織布中の空気との圧力関係により決まった状態にある。水が不織布中に浸入するには、両面から染み込んだ水が互いに接する必要があるが、嵩密度が低い不織布は不織布中の空気層が厚く両面から染み込んだ水が接する状態にはなりにくい。それに対し、本実施形態の不織布は、嵩密度が高くフィラメントの重なりが少ないため、不織布中の空気層が薄く、水に浸けたときに両面から染み込んだ水が容易に接し、このようにして水を吸収する。さらに、片面に高分子吸収体や吸水紙のような吸水性の高い素材(高吸収材)が密着して配置され、その反対側の面に液体が存在する場合も同様に、本実施形態の不織布の吸水性(この場合は、片面の高吸収材への液体透過性ということもできる)は高くなる。
【0039】
さらに、高吸収体に吸収された液体の逆戻りについては、本実施形態の不織布は、透水性が低いことにより、市販のオムツや生理用品で使われている水解紙、エアレイドパルプ、水解性不織布、親水性不織布などと比較して著しく改善することができる。
【0040】
また、本実施形態の不織布は、液体の拡散性をその拡散する方向の制御に優れている。これは、透水度が低いことで、不織布の表面に垂れた液体の透過が抑制され、かつ、高度に配列したフィラメントの間隙が毛細管現象を引き起こし、フィラメントの配列方向に沿って液体が拡散されるためと考えられる。これにより、本実施形態の不織布は、優れた液体拡散性を示すとともに、フィラメントの配列方向を規定したり、あるいは直交積層不織布においては縦方向と横方向のフィラメント量を調整したりすることで、液体が拡散する方向を制御することができるようになる。
【0041】
不織布の目付は5〜40g/cm2である。目付が5g/cm2未満では、所望の透水度が得られにくくなる。また、目付が40g/cm2を超えると、所望の吸水性、保温率が得られにくくなる。
【0042】
通気度について、本実施形態の不織布の通気度は、同程度の目付のスパンボンド不織布と比べて低い。よって、同じ通気度を得ようとする場合は、スパンボンド不織布よりも低目付にする必要がある。また、透湿度について、本実施形態の不織布は、同程度の目付のスパンボンド不織布と同等の透湿度が得られる。
【0043】
不織布の素材は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などを用いることができ、また、2種類以上の樹脂の混合品であっても構わない。これらの樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、無機フィラーなどの添加剤を添加することができる。
【0044】
不織布には、その特徴を損なわない範囲で二次加工を施してもよい。二次加工の例としては、親水加工、エンボス加工、他の材料との複合(貼り合せ)などが挙げられる。不織布と複合する他の材料としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。また、複合時の積層方法としては、熱圧着法、押出ラミネーション法、ドライラミネーション法、接着剤による接着、低融点樹脂を塗布して熱圧着する方法、物理的にフィラメントを絡ませる方法など、不織布の積層に一般に用いられる種々の方法を適用することができる。
【0045】
こうして得られた本発明の不織布およびその加工品は、様々な用途に用いることができる。用途としては、オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、スキンケアワイパー、キッチンワイパー、掃除用ワイパー、湿布薬の基布、絆創膏、ガーゼ、医療用サポータ、使い捨てタオル、汗取りパッド、フェイスマスク、フィルタ、トレーニングパンツ、紙オムツ、医療用ドレープガウンとドレープ、芯地、下着、ディスポーザブル下着と衣料、テープ基布、経皮吸収薬基材などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0046】
本発明の不織布は、前述したように、吸水性に優れかつ透水性が抑制されていることから、オムツや生理用品などの液体吸収部分に特に好ましく用いることができる。本発明の不織布をこのような液体吸収部分に用いると、優れた液体吸収性を示し、かつ一度吸収した液体の逆戻りについても、現在市販されている製品に比べて著しい改善がなされる。さらに、現状の市販品では液体の拡散性が不十分であるため、液体吸収体が十分に機能および活用されておらず、結果として液体吸収体の使用量が増えてしまう。このことは、材料の無駄遣いであるばかりでなく、使用者の装着間を著しく低下させている。それに対して本発明の不織布は、フィラメントの配列によって液体の拡散性を制御することができるので、液体吸収体の一部だけに液体が集中することなく全体に拡散させることができる。よって、液体吸収体の使用量を削減することができる。
【0047】
また、本発明の不織布をオムツや生理用品の最外層(バックシート)に使用すると、透湿性や通気性は有するのに保温性が低いので、中が蒸れにくくなるという効果がある。
【0048】
以上のような本発明の不織布の特性により、オムツや生理用品の使用者が快適になるだけでなく、使用する材料を削減することもでき、省資源、省エネルギーに大きく貢献する。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の具体的な実施例について比較例とともに説明する。
【0050】
〈実施例1〉
目付5g/cm2、フィラメント径約10μm、嵩密度0.23g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0051】
〈実施例2〉
目付10g/cm2、フィラメント径約10μm、嵩密度0.25g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0052】
〈実施例3〉
目付10g/cm2、フィラメント径約7〜14μm、嵩密度0.3g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布と、フィラメントが横方向に配列された横延伸不織布とを積層した直交積層不織布を作製した。縦延伸不織布および横延伸不織布は、フィラメントの配列方向を除いては実質的に同じものを用いた。
【0053】
〈実施例4〉
目付10g/cm2、フィラメント径約10μm、嵩密度0.26g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製し、さらに、作製した縦延伸不織布にエンボス加工を施した。
【0054】
〈実施例5〉
目付10g/cm2、フィラメント径約7〜14μm、嵩密度0.31g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布と、フィラメントが横方向に配列された横延伸不織布とを積層した直交積層不織布を作製し、さらに、作製した直交積層不織布にエンボス加工を施した。縦延伸不織布および横延伸不織布は、フィラメントの配列方向を除いては実質的に同じものを用いた。
【0055】
〈実施例6〉
目付20g/cm2、フィラメント径約7〜14μm、嵩密度0.35g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布と、フィラメントが横方向に配列された横延伸不織布とを積層した直交積層不織布を作製した。縦延伸不織布および横延伸不織布は、フィラメントの配列方向を除いては実質的に同じものを用いた。
【0056】
〈実施例7〉
目付40g/cm2、フィラメント径約7〜14μm、嵩密度0.45g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0057】
〈実施例8〉
目付10g/cm2、フィラメント径約7〜14μm、嵩密度0.28g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0058】
〈実施例9〉
目付15g/cm2、フィラメント径約14〜18μm、嵩密度0.28g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0059】
〈比較例1〉
目付3g/cm2、フィラメント径約10μm、嵩密度0.18g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0060】
〈比較例2〉
目付50g/cm2、フィラメント径約10μm、嵩密度0.55g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製した。
【0061】
〈比較例3〉
目付10g/cm2、フィラメント径約30μm、嵩密度0.28g/cm3として、フィラメントが縦方向に配列された縦延伸不織布を作製し、さらに、作製した縦延伸不織布にエンボス加工を施した。
【0062】
〈比較例4〉
目付20g/cm2、フィラメント径約15μm、嵩密度0.08g/cm3として、フィラメントの配列がランダムなスパンボンド不織布を作製した。
【0063】
〈比較例5〉
目付15g/cm2、フィラメント径約2μm、嵩密度0.13g/cm3として、フィラメントの配列がランダムなメルトブロー不織布を作製した。
【0064】
《評価》
実施例1〜9、比較例1〜5について、以下の特性を評価した。
【0065】
〈吸水性〉
10cm×15cmに切り出した試験片を水中に浸し、
(吸水後の重量−吸水前の重量)×100/吸水前の重量
で算出される吸水率(%)が50%以上になるまでの時間を測定し、その時間を、吸水性を示す指標とした。
【0066】
〈透水度〉
JIS A1218に準じ、透水面積1cm2、水位10cm、透水時間60secで試験を行った。
【0067】
〈保温率〉
JIS L1096A法に準じ、ASTM型保湿性試験機を用い、試験板面積225cm2、試験板温度36±0.3℃、外気温度約20℃、試験時間120分で試験を行った。
【0068】
〈液体拡散性〉
水溶性の赤インキで着色した生理食塩水を試験片に1滴垂らしたときの広がりの最大拡散距離、および縦と横の拡散比を概算した。なお、表面張力の関係で液が浸透しないので、試験片には予め水を含ませておいた。
【0069】
〈液体の逆戻り性〉
この評価は市販の生理用ナプキン(花王株式会社製、生理用ナプキン「ロリエ(登録商標) スーパースリムガード」)との対比で行った。試験用サンプルは、以下のようにして作製した。上記生理用ナプキンの表層不織布と液体吸収体の間にある不織布を剥がし、それぞれ実施例1〜9、比較例1〜5と置き換えた。このようにして作製した試験用サンプルに対し、水溶性の赤インキで着色した生理食塩水5mlを表層から吸収させた直後に、表層の上にティッシュペーパーを載せ、さらにその上に200gの荷重をかけて、ティッシュペーパーへの生理食塩水の付着程度を目視で判断した。評価は、市販の生理用ナプキンでの逆戻り状態を基準にして、以下の判断基準に従って5段階で行った。
レベル1:市販品より悪い。
レベル2:市販品相当。
レベル3:市販品と比べて付着量が少ない。
レベル4:市販品と比べて付着量が著しく少ない。
レベル5:付着しない。
【0070】
表1に、実施例1〜9、比較例1〜5についての評価結果を示す。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂から紡糸されたフィラメントが一方向に配列された一方向配列不織布、または、2枚の前記一方向配列不織布を前記フィラメントの配列方向が直交するように積層した積層不織布を有し、
前記フィラメントの直径が3〜20μm、嵩密度が0.1g/cm3以上、かつ目付けが5〜40g/cm2である不織布。
【請求項2】
保温率が30%以下である請求項1に記載の不織布。


【公開番号】特開2006−43998(P2006−43998A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226782(P2004−226782)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000231682)新日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】