説明

不織繊維集成体

不織繊維集成体は、接着剤成分、エラストマー成分及び親水性成分を含有する1以上の繊維を含む。不織繊維集成体を製造する方法は、接着剤成分、エラストマー成分及び親水性成分を含む1以上の繊維形成材料を用意し、前記1以上の繊維形成材料を少なくとも1の繊維に形成することを包含する。患者を治療する方法は、本発明の繊維集成体を含む包帯を患者に適用することを包含する。不織繊維集成体を形成する装置は、1以上のタイプの繊維形成材料を収容するための複数のリザーバー、それぞれ、独立してリザーバーと連通する複数のバルブ、及び紡糸口金、NGJノズル、及び電界紡糸装置でなる群から選ばれる、バルブと連通する繊維形成装置を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維集成体に係る。さらに詳述すれば、本発明は、重合体マトリックス材料から製造された複合繊維集成体に係る。
【背景技術】
【0002】
繊維の生成に関して、織物の分野では、各種の技術が知られている。これらの技術の中には、メルトブロー法、ガスジェットによるナノ繊維(NGJ)技術、及び電界紡糸法が含まれる。メルトブロー法では、代表的には、溶融した重合体又は他の繊維形成材料のストリームを、ガスジェットの中に押出しして、繊維を生成する。得られた繊維は、代表的には、直径が1,000nmより大、より代表的には、直径が10,000nmより大である。
【0003】
NGJ技術に従って直径3,000nm未満の直径を有する繊維を生成する技術及び装置は、米国特許第6,382,526号及び第6,520,425号に開示されており、それらの開示を、ここで、参考として参照する。
【0004】
繊維を形成しうる液体及び/又は溶液の電界紡糸法は公知であり(繊維形成の分野では、静電紡糸としても知られている)、一般的な文献と共に、多くの特許に記載されている。電界紡糸法は、一般に、液体表面における電界の作成を包含する。作成された電気的な力が、電荷を帯びた液体の噴流を作り出す。このようにして、液体噴流は、適切な電位で電気的に帯電された他の対象に引き付けられる。液体の噴流が伸長し、移動するにつれて、噴流は硬化し、乾燥される。伸長した液体噴流の硬化及び乾燥は、液体の冷却によって(すなわち、液体が室温において通常固体である場合);溶媒の蒸発、例えば、脱水(物理的に誘導される硬化)によって;又はキュアリングメカニズム(化学的に誘導される硬化)によって生ずる。生成された繊維を、好適に配置された反対の電荷に帯電したレシーバー上で集め、必要に応じて、ここから取り出し、又は反対の電荷に帯電した又はアースされた一般化ターゲットエリアに直接適用する。
【0005】
この方法で形成された繊維は、広い用途で使用されており、米国特許第4,043,331号から、創傷包帯での使用に好適な不織マットの形成に特に有用であることが知られている。創傷包帯における電界紡糸繊維の使用による主要な利点の1つは、通常約50nm〜約25μm、好ましくは、約50nm〜約5μm程度の直径を有する非常に細い繊維が得られることである。これらの繊維は集められ、各種の形状及び厚さの不織マットに形成される。繊維の直径が非常に小さいため、非常に小さい隙間及び単位重量当たりの大きい表面積(マットの多孔度を決定することにおいて重要な2つの特性)を持つマットが製造されることが認められる。
【0006】
これらの重合体繊維の不織マットを使用して製造された医療用包帯は、米国特許第4,043,331号によって教示されているように、使用した重合体のタイプに応じて、特別な利益をもたらす。湿潤性又は親水性の重合体、例えば、ポリウレタンを使用でき、あるいは非湿潤性又は少なくとも弱疎水性の重合体、例えば、飽和ポリエステルを使用できる。包帯が湿潤性重合体から形成される場合、傷口から流出した血液又は血漿は包帯に侵入しがちで、大きい表面積で凝固が促進される。このような包帯は、出血を止めるための救急用包帯として使用される。一方、包帯が非湿潤性の重合体から製造され、繊維間の隙間が充分に小さい、例えば、約100nm未満程度である場合には、組織液(血液を含む)は包帯には侵入しない傾向にある。その結果、組織液は傷口付近にとどまり、ここで凝固が生ずる。その後におけるこのような包帯の除去は、包帯材料へ侵入した血液の凝血塊が存在しないため容易である。さらに、米国特許第4,043,331号は、このような包帯が、通常、充分に多孔性であり、大気と傷口表面との間における酸素及び水蒸気の交換を可能にするとの利点を有することを示唆している。
【0007】
繊維の直径又は繊維から製造される各種不織マットの形状、厚さ又は多孔度に関する多様性を提供する以外に、電界紡糸によって繊維を製造できることは、繊維の組成、そのデポジション密度及び固有強度における制御された変更を可能にする。上記米国特許は、不織マットを他の材料によってポスト処理して、その特性を変更できることも示している。例えば、適当な結合剤を使用することによってマットの強度を増大でき、又はシリコーン又は他の防水材料、例えば、ペルフルオロアルキルメタクリレートにてマットをポスト処理することによって防水性を増大できる。あるいは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用することによって強度が増大される。
【0008】
形成される繊維の組成を変更することによって、異なった物理的又は化学的特性を有する繊維が得られる。これは、複数の成分(各々が、最終製品に所望の特性を付与する)を含有する液体を紡糸することによって、又は多種の液体源から、異なった繊維を同時に紡糸し、ついで、これらをデポジットしてマットを形成することによって達成される。もちろん、生成されたマットは、緊密に混じり合った異なった材料の繊維からなる。上記米国特許に記載された他の変形は、例えば、時間毎にレシーバー上にデポジットされる繊維のタイプを変更することによるように、異なった材料の異なった繊維(又は同じ材料ではあるが、異なった特性(例えば、直径)を有する繊維)の複数個の層を有するマットを製造することである。例えば、湿潤性の繊維及び非湿潤性の繊維は、それぞれ、異なった用途において望まれる付加的な特性を提供する。湿潤性の重合体は高度に吸収性であるが、比較的弱いマットを提供するが、一方、非湿潤性の重合体は非吸収性ではあるが、比較的強いマットを提供する。例えば、医療用包帯の如きいくつかの用途では、単一製品において湿潤性重合体層及び非湿潤性重合体層の組合せを使用することが望ましい。湿潤性重合体層は、比較的高レベルの吸収性を製品に付与し、一方、非湿潤性重合体層は、比較的高レベルの強度を付与する。しかし、このような積層タイプの構造体は、疎水性の層が液体に対するバリヤーを形成し、湿潤性層による液体の吸収を妨害するとの欠点を示す。さらに、液体を吸収する際、湿潤性重合体層は弱く、層の不均衡、スリッピング、又は分離を生じ、その結果、製品の一体性が損なわれる。
【0009】
米国特許第4,043,331号は、複数個の有機性材料、すなわち重合体の繊維を含む強い不織マットが、この材料又はその前駆体よりなる液体から繊維を静電的に紡糸することによって得られることを示している。これらの繊維を、好適に帯電されたレシーバー上で集める。ついで、レシーバー上で形成されたマット又はライニングを移し、単独で、又は例えば、織られた繊維のマット又は裏当て層の如き他の予め形成された部材と組み合わせて使用して、所望の特性の創傷包帯を提供する。例えば、創傷包帯の製造では、皮膚に創傷包帯を付着させるため及び創傷包帯に他の所望の特性を付与するためには、繊維のマット又はライニング、又は裏当て層の如き追加の支持材又は補強材が必要である。例として、織った繊維のマット又はライニングは、殺菌性又は外傷治療特性を有する物質を含有できる。既に形成された不織マットの表面処理によっても、このような創傷包帯の製造において、付加的な利点を提供できる。しかし、米国特許第4,043,331号は、無傷の皮膚のみに付着する医療用包帯を提供するものではない。さらに、該特許は、患者の所望のエリアに付着できる単一成分包帯、又はその長さ方向に沿って組成が変化する複合繊維を含む包帯を提供するものでもない。
【0010】
国際特許公開WO98/03267号には、傷口上の所定位置で創傷包帯を静電的に紡糸することが開示されている。このような用途では、身体自体がアースされ、電界紡糸された繊維のコレクターとして機能する。この創傷包帯の製法は、包帯及びガーゼの保管及び製造に伴う問題点のいくつかを解消できる。例えば、ガーゼ及び包帯は、傷口の治療において最善の保護を提供するため、無菌雰囲気において保管及び保持されなければならないことよく知られている。ガーゼ又は包帯が無菌状態ではない場合には、これらの製品は、傷口の保護において何ら役に立たない。傷口上の所定位置において、無菌液体から創傷包帯を電界紡糸することは、これらの問題を排除する。
【0011】
しかしながら、傷口上の所定位置における創傷包帯の電界紡糸では、使用される溶媒のタイプが、包帯が適用される皮膚又は他の組織と適合する溶媒にのみ制限される。このような溶媒には、水、アルコール、及びアセトンが含まれる。同様に、使用可能な溶媒のタイプが限定されるため、重合体と組み合わせて使用される添加剤、例えば、吸収剤、殺菌剤、及び抗生物質のタイプも、使用する特別な溶媒に溶解性である又は該溶媒における好適な分散液を生成するものに制限される。同じく、使用される重合体のタイプも、皮膚又は組織適合性溶媒に溶解性であるものに制限される。生体適合性重合体/溶媒の組合せとして、例えば、ポリ(エチレンイミン)/エタノール、ポリ(ビニルピロリドン)/エタノール、ポリエチレンオキシド/水、及びポリ(2-ヒドロキシメタクリレート)/エタノール+酸が含まれる。このような組合せからの繊維は、紡糸された状態では非反応性であるが、繊維か傷口又は外部源からの液体に接触すると、中性又はほぼ中性のpHから、繊維の組成に応じて酸性又はアルカリ性のpHへの局部的なpHの変化を生ずる。例えば、ポリ(エチレンイミン)繊維が液体と接触すると、プロトンの移動に関与し、重合体と接触する液体においてアルカリ性のpHを呈する。望ましくないpH雰囲気の創成は、例えば、傷口の治癒が遅い等の如き副作用を生ずる。
【0012】
国際特許公開WO01/27365号には、親水性重合体、少なくとも弱い疎水性である重合体、及び任意にpH調節化合物の実質的に均質な混合物を含有する電界紡糸繊維が開示されており、参考として、その記載を、ここに組み込む。繊維は、一時的な帯電したレシーバーに付けられることなく、又は中間の製造工程に供されることなく、その目的とする用途エリアに直接デポジットされる。しかし、得られる繊維は、無傷の皮膚のみに付着する包帯を提供しない。
【0013】
従って、乾燥した素地には付着するが、傷口の如き湿潤した表面又は傷口の治癒の初期段階において生ずる湿潤組織には付着しない医療用包帯又は他の不織マット又は膜に関する要求が存在し続けている。また、その長さにわたる包帯の個々の繊維の組成における変動から生ずる特性を提供できる医療用包帯に関する要求も存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の態様は、無傷の皮膚の如き乾燥した素地に付着できるが、傷口表面の如き湿潤した素地又は傷口の治癒の初期段階において生ずる湿潤組織には付着しない医療用包帯又は他の不織マット又膜を提供することにある。
【0015】
本発明の態様は、無傷の皮膚に付着できるが、傷口の湿潤した表面又は傷口の治癒の初期段階において生ずる湿潤組織には付着しない医療用包帯の製法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の態様は、その長さにわたって組成が変化する複合繊維を含有する医療用包帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一般に、本発明は、1以上の繊維を含んでなる不織繊維集成体であって、前記繊維が、接着剤成分、エラストマー成分及び親水性成分を含有するものあることを特徴とする不織繊維集成体を提供する。
【0018】
本発明は、不織繊維集成体の製法を提供する。この製法は、少なくとも1の繊維形成材料を準備し、前記の少なくとも1の繊維形成材料から少なくとも1の繊維を形成することを包含してなり、少なくとも1の繊維形成材料が、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有するものであることを特徴とする。
【0019】
本発明は、患者の所定範囲に不織繊維集成体を適用することを包含する患者を処置する方法であって、前記不織繊維集成体が、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含む1以上の繊維を含有するものであることを特徴とする患者の処置法を提供する。
【0020】
本発明は、親水性成分、エラストマー成分、及び接着剤成分を含む1以上の複合繊維を製造する装置であって、該装置は、1以上のタイプの繊維形成材料を収容するための複数個のリザーバー、それぞれ、独立してリザーバーと連通する複数個のバルブ、及び紡糸口金、NGJノズル、及び電界紡糸装置でなる群から選ばれる、バルブと連通する繊維形成装置を包含することを特徴とする複合繊維製造装置を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上述のように、本発明は、1以上の繊維を含んでなり、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有する不織繊維集成体を提供する。少なくとも1の繊維は、例えば、主として又は完全に接着剤成分であるセグメント、主として又は完全にエラストマー成分であるセグメント、主として又は完全に親水性成分であるセグメントの如き一連のセグメントを含有できる。少なくとも1の繊維が、このような成分のアレンジメントを有する場合には、異なったセグメントは、特別な用途の必要性に応じて、多数のオーダーの内のいかなるオーダーにおいてもアレンジされる。特に有用なアレンジメントには、少なくとも主として親水性成分であるセグメント(これ自体、少なくとも主としてエラストマー成分であるセグメントに近接して配置される)に近接して配置された、少なくとも主として接着剤成分であるセグメントが含まれることが想定される。複合繊維も、繊維のセグメントに2以上の成分を含む。各セグメントの組成及びセグメントの数は、繊維の長さにわたって変化する。加えて、繊維の組成は、その長さにわたって一定である。不織繊維集成体も、複数の繊維を含有し、異なった繊維は、個々に又は組合せとして、各成分を供給する。
【0022】
本発明による不織繊維集成体の製法は、少なくとも1の繊維を形成することを含み、この少なくとも1の繊維は、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有する。少なくとも1の繊維は、繊維の成分のそれぞれに適合する各種の技術によって形成される。メルトブロー法、NGJ技術、及び電界紡糸法が、本発明による繊維の形成に関する好適な方法であると想定される。電界紡糸法は格別の利点を提供する。繊維は、相分離、孔におけるキャスティング、及びフィルムのスリティングを含む他の技術によっても形成される。
【0023】
上述したように、不織繊維集成体において静電的に紡糸した繊維を使用する重要な利点の1つは、これらの繊維が、非常に小さい直径、通常、約3〜約3000nm程度、より好ましくは、約10〜約500nm程度、最も好ましくは、約10〜約100nm程度を有するものとして製造されることである。NGJ技術によって形成された繊維も非常に小さい直径を有する。このようにして、これらの「ナノ繊維」が、所望の形状及び厚さを有する不織膜に比較的迅速に形成される場合には、医療用包帯及び他の不織繊維集成体における有用性及び好ましさが容易に評価される。
【0024】
非常に小さい直径を有する繊維が形成される場合には、非常に小さい隙間及び大きい比表面積を持つ膜が形成される。本発明による不織繊維集成体は、医療用包帯、おむつ、女性生理用製品、皮膚用吸収タオル又はティッシュ、治療用及び予防用物質のための経皮又は経口送達システムにおいて有用である。また、不織繊維集成体は、溢流の管理、水の移送及び燃料電池における管理の如き他の目的のため、又は凝集フィルターから水又は他の液体を集め、移送するために使用されることが想像される。
【0025】
不織繊維集成体が医療用包帯を形成する場合、得られた医療用包帯は、ミクロ多孔性及び通気性であるが、高速気流には抵抗性である。これらは、医療用包帯には重要かつ所望の特性である。一般に、このような技術を使用して調製された医療用包帯に関する孔サイズは約50nm〜約1μmであり、充分に小さいため、エーロゾル粒子捕捉メカニズムを介してバクテリアの侵入から傷口を保護できる。この範囲の孔サイズは、包帯を通ってウイルス粒子が傷口に至ることを、少なくとも部分的に阻止できる。
【0026】
本発明の不織マット又は膜は、効果的な液体吸収及び経皮送達のために、好ましくは、少なくとも5m2/g、より好ましくは、約100m2/gの大きい比表面積を有する。大きい比表面積は、包帯に大きい止血能力を与える。
【0027】
医療用包帯として使用される際、本発明の不織繊維集成体は、市販のバリヤーフィルムよりも大きい水蒸気の透過性(水蒸気フラックスによって表示される)を提供する。1具体例では、電界紡糸膜は、固体フィルムバリヤー包帯よりも少なくとも10倍大きい水蒸気フラックスを有する包帯を形成する。好ましくは、医療用包帯は、市販のバリヤーフィルムよりも少なくとも30倍大きい水蒸気フラックスを提供する。さらに好ましくは、医療用包帯は、市販のバリヤーフィルムよりも少なくとも30倍大きい水蒸気フラックスを提供する。
【0028】
医療用包帯は薄いが、汚染に対して効果的なバリヤーである。包帯の繊維の好適な厚さは、例えば、空気透過性及び汚染からの保護の望ましい度合と共に、使用した繊維形成材料、繊維の直径、繊維の構造配置、繊維によって形成された孔のサイズの如きファクターに左右される。例えば、繊維は、約0.1g/m2程度の小さい被覆レベルで適用される際に医療用包帯を形成する。繊維は、約0.1〜100g/m2の被覆レベルでも適用される。1の厚さでは、医療用包帯の繊維は、直径約0.5〜約20μmのエーロゾルに対して97%より大の濾過効率を提供する。他の厚さでは、繊維は、直径約0.1〜約20μmのエーロゾルに対して97%より大の濾過効率を提供する。さらに、繊維は、直径約0.5〜約20μm又は直径約0.1〜約20μmのエーロゾルに対して実質的に完全な濾過を提供する厚さで適用される。
【0029】
医療用包帯は汚染に対する保護を提供する一方、空気の通過を許容する。このため、包帯を通って、傷口、やけど、又は保護されるべきエリアに酸素が侵入でき、これによって、保護されるエリアへの空気流の通過を許容しない創傷包帯と比べて、治癒の促進及び感染の可能性の低減が達成される。1実施例では、医療用包帯は、通気抵抗性5×109-1未満を提供する。好ましくは、医療用包帯は、通気抵抗性2×108-1未満を有する。他の実施例では、医療用包帯は、通気抵抗性2×107-1未満を有する。
【0030】
本発明の繊維及び医療用包帯及び他の不織繊維集成体は、軽量であり、酸素及び水分透過性であり、さらに、ほこり、細菌、又は他の感染体の如き空気で運ばれる汚染物に対する保護を提供する。膜繊維が有する治療剤を傷口部位に運搬する能力も重要である。この添加剤を運搬及び送達する能力は、重合体キャリヤーの選択、繊維不織シートの密度及び厚さ、及び/又は異なる膜繊維組成物の層化を介して制御される。
【0031】
医療用包帯において使用される繊維に関して、繊維は好ましくは乾燥しており、強い膜を形成することが理解されるであろう。しかし、いくつかの例では、湿潤した繊維を使用できる。湿潤した繊維は強いが、湿潤した繊維は、一般に、柔らかく、乾燥した繊維よりも良好に、これらが適用される素材の表面に適合する。他の利点は、米国特許第4,043,331号の上記検討において既に述べた事項を含む。いずれにしても、本発明の繊維を傷口表面に直接形成できることは、安価かつ適時に、繊維の組成における柔軟性、膜の多孔度、及び強度を改善することを可能にする。さらに、繊維の直接適用は、繊維が傷口表面全体と接触して、緊密にかつ適合した形状で、有利に配置されることを意味している。これにより、包帯を交換する際、傷口の深部からの死滅した細胞、液体又は細菌を有効に除去することが可能になり、その結果、傷口の創傷清拭の必要性が低減又は排除される。傷口表面との直接接触も、傷口への薬剤の送達を改善することを可能にする。最後に、直接適用によって、繊維及び従って包帯の、改善された、実際には、特有の無菌状態が提供され、これによって、包帯材料を無菌化するためにガンマ線照射又は他の処理の必要性を排除できる。さらに、殺菌を補助するため、オゾン又は他の活性剤を制御して発生させることができる。
【0032】
1具体例では、包帯は、機械的な障害から処置エリアを保護し、熱絶縁体を提供するため、クローズドセル発泡体を包含する。
【0033】
本発明の不織繊維集成体は、多様な親水性重合体、エラストマー重合体、及び接着特性を有する重合体の中のいずれかの混合物から形成された少なくとも1の繊維を包含できる。繊維形成材料は、任意に、多数の医療上重要な治療剤(鎮痛剤及び他の医薬用又は治療用添加剤を含む)の中のいずれかとブレンドされる。電界紡糸によって繊維を形成する際に適した重合体材料としては、例えば、吸収性及び/又は生物分解性である不活性高分子物質、選択された有機又は水性溶媒と良好に作用する高分子物質、又は迅速に乾燥する高分子物質が含まれる。本質的には、各種の有機又は水溶解性重合体又は傷口の局所治療処置に適した可溶性又は不溶性の添加剤を含む当該重合体の各種分散液が使用される。医療用包帯以外の用途で使用される際には、他の添加剤が使用される。例えば、溢流の管理に関する用途では、特殊なタイプの化合物を吸収するために有用な粒子を、重合体成分の1つにカプセル化できる。例えば、疎水性化合物の溢流を管理することに関して有用な不織繊維集成体は、集成体の1つの重合体成分にカプセル化された、疎水性化合物吸収化合物を有することができる。
【0034】
本発明の包帯は、エラストマー系かつ親水性又は疎水性(ただし、親水性粒子が付着されている)であるナノ繊維の混合物を含む。例えば、重合体 WATERLOCK(Grain Processing Corp., Muscatine, IA)が、高度に親水性の包帯(乾燥重量の60倍以下の水を保持できる)に組み込まれる。このようなエラストマー系の水含有創傷包帯材料は、包帯の圧縮及び膨脹、傷口への治療剤の運搬及び傷口からの可溶性又は水搬送性の治癒副生物の運搬を交互に行うことによって駆動される水、液体流のリザーバーを提供する。
【0035】
不織繊維集成体における各成分の比率は、特別なタイプの用途における特別な要求に応じて変動することが想定される。包帯における各成分の比率は、不織繊維集成体自体において、1つの表面における集成体の組成が、他の表面における集成体の組成とは異なるように変動することも想定される。例えば、主としてエラストマー系重合体から形成された1以上の繊維によって、傷口から最も遠い表面を形成することができる。包帯のこの部分における繊維に存在するエラストマー系重合体の割合は100%に近いか、100%である。包帯内部には、親水性重合体が増量された繊維が存在する。包帯のこの部分における繊維に存在する親水性重合体の割合は100%に近いか、100%である。包帯のこの部分の厚さも、特別な用途の予期される要求に従って変動する。患者と接触して配置される包帯の表面における繊維は、付着特性を有する重合体を多量に含む。包帯のこの部分における繊維で使用される付着性重合体の割合は、積極的又は非積極的な付着に関する要求によって変動するが、100%に近いか、100%である。重合体のタイプの他のタイプへの移行が緩やかであるば、包帯内において、繊維タイプの識別可能な層は形成されず、また、移行が急激である場合には、包帯内において識別可能な層が形成される。重合体繊維は、殺菌条件下で適用される。あるいは、少なくとも1の繊維の組成が、繊維の長さに沿って一定であってもよい。
【0036】
以下に詳述するように、水と接触する際には、親水性成分は、水を吸収し、膨脹して、これによって、接着剤成分を包囲し、傷口表面への付着を持続するものと考えられる。親水性成分も、包帯を湿った状態に維持し、包帯の外部表面への水の移動を容易にし、包帯を通っての治療剤の移動を容易にする。好適は親水性重合体の例としては、線状ポリ(エチレンイミン)、酢酸セルロース及び他のグラフト化セルロース誘導体、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリプロピレンオキシド及びこれらの混合物及びそのコポリマーがある(ただし、これらに限定されない)。親水性成分は、例えば、重合体 WATERLOCK又はカルボキシメチルセルロースの如き水吸収ゲルでもよい。親水性成分は、繊維に組み込まれるか、繊維の表面に付着されるか、又は繊維間に物理的に保持される。
【0037】
本発明のエラストマー成分は、包帯に、機械的強度及び皮膚の伸縮に適合する能力を提供する。機械的強度は、使用の間、包帯を所定位置に保持するだけでなく、交換が必要となった際に、包帯の除去を容易なものとするためにも必要である。好適なエラストマー重合体の例としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアンヒドリッド、ポリアミド、ポリイミド及びこれらの混合物及びそのコポリマーがある。
【0038】
接着剤成分は、集成体を素地に付着させるために必要である。付着特性を有する好適な重合体としては、アクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、及びシリコーン及びこれらの混合物が含まれる。接着剤は、繊維において開放ネットワークを形成して、包帯を傷口に多数のポイントで付着させるが、接着剤ネットワーク内の隙間を通る液体の必須の流動を許容するものである。
【0039】
繊維に含有される重合体は、1以上の成分カテゴリーに関与する。例えば、アクリレートブロックコポリマーが使用される。このような場合、アクリレートブロックは付着特性に寄与し、一方、コポリマーブロックは親水性に寄与する。
【0040】
機能の各種の特別なメカニズムに関する特許要件を条件付けることを意図するものではないが、繊維形成重合体の成分は、相分離によって、ロッド、粒子、シート又は他の幾何形状の形である繊維に、内部構造を創製するものと考えられる。また、湿潤する際、親水性成分は、接着剤成分が素地表面と接触することを物理的に阻止するように膨潤及び膨脹するものと考えられる。これによって、本発明の医療用包帯は、親水性重合体が水と接触せず、膨潤して接着剤成分を包囲することがないため、無傷の皮膚に付着する。一方、包帯は、傷口からの水分が親水性成分と接触して、親水性成分が膨潤して、接着剤の傷口への付着を妨げる原因となるため、治癒の初期段階では、傷口又は組織には付着しない。
【0041】
同じようにして、包帯の一部の意図的な湿潤(そうしない場合には、皮膚に付着する)は、親水性領域が膨潤する原因となる。このような湿潤及び膨潤は、包帯の除去を容易なものとする。好ましくは、包帯を所定位置に保持するためには、不注意による湿潤は回避されるべきである。
【0042】
不織繊維集成体は、他の用途にも使用される。例えば、繊維集成体は、殺虫剤、栄養剤又は他の所望の化合物を農作物へ送達するためにも使用される。繊維集成体は、乾燥した状態では農作物に付着し、水にて洗浄することによって容易に除去される。集成体は、水又は他の液体を吸収又は収容するための一種のスポンジ又は壁なし(wall-less)フラスコとしても使用される。従って、繊維集成体は、おむつ、個人的衛生製品、吸収タオル等において有用である。
【0043】
本発明は、不織繊維集成体を製造する方法であって、該方法は、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有する少なくとも1の繊維形成材料を用意し、繊維形成材料から少なくとも1の繊維を形成することを包含する不織繊維集成体の製法も提供する。本発明の繊維集成体は、有機又は水性溶媒中の可溶性重合体から形成される。繊維形成材料は、例えば、アルコール、酢酸エチル、アセトン、又はテトラヒドロフラン(THF)の如き溶媒中に存在する形で提供される。いくつかの用途では、溶媒が生物学的に適合性であることが望まれる。
【0044】
上記の製法は、任意に、繊維の形成に続いて、包帯に所望の特性を提供するための処理工程を包含する。例えば、水溶性物質を含有する繊維を架橋して、水不溶性の繊維を形成することができる。他の例では、繊維を、治療剤又は医薬製品を含むように処理することもできる。例えば、線状ポリエチレンを一酸化窒素にて処理して、イミンジアゼニウムジオレートを形成することができる。
【0045】
上述のように、繊維の製造の間、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分の相対的な量を経時的に変動させて、第1の表面における組成が第2の表面における組成とは異なる医療用包帯又は他の不織繊維集成体を製造することができる。例えば、1以上の繊維を、主としてエラストマー系重合体から電界紡糸して、患者とは接触しない医療用包帯の表面を形成することができる。包帯の内部を形成するために繊維を電界紡糸する時には、親水性重合体を増量して使用して繊維を形成する。親水性重合体を含有する充分な量の繊維を包帯に組み込んだ後、付着特性を有する重合体を増量して使用して、包帯の繊維を形成する。重合体の1つのタイプから他のタイプへの移行が緩やかあれば(すなわち、重合体のタイプ間における一定傾斜)、包帯内において、繊維タイプの識別可能な層は形成されず、また、移行が急激である(すなわち、重合体のタイプ間におけるステップ傾斜)場合には、包帯内において識別可能な層が形成される。包帯の領域間の移行も、重合体のタイプ間の非一定又は「歪んだ」傾斜の結果である。この方法では、移行の他の変形例又は組合せが使用される。また、包帯の中央における層は、例えば、電界又は空気流により繊維ジェットの位置を制御することによって、包帯の他の部分における層とは異なったものとなる。
【0046】
1つの特別な具体例では、医療用包帯は、次の方法に従って製造される。例えば、エラストマー系ポリウレタンの如きエラストマー系重合体から、湿潤した繊維、すなわち、繊維全体で又は繊維の表面においてのみ過剰な溶媒を含有する繊維を製造する条件下で、少なくとも1の繊維を電界紡糸する。集めた湿潤した繊維を、高温で焼結することなく、共通部分において融解又は溶融して、高水蒸気透過率及び空気透過率を持つ繊維性膜を形成する。ついで、電界紡糸に関する条件を、乾燥した維が湿潤した繊維の上に配置されるように変更する。例えば、これは、電界紡糸装置とレシーバーとの間の距離を増大することによって達成される。乾燥繊維の層が湿潤繊維の上に敷かれる場合には、重合体の組成は、親水性ポリウレタンの如き親水性重合体に変更される。この第2の重合体は、重合体のタイプ間においてステップ傾斜、一定傾斜、又は歪んだ傾斜によって組み込まれる。親水性重合体の濃度は、100%近くか、又は100%である。所定量の繊維を付着させ、ついで、重合体の組成を接着剤重合体に変更する。重合体のタイプ間における予めの移行による場合のように、移行は、重合体のタイプ間におけるステップ傾斜、一定傾斜、又は歪んだ傾斜を介して起こる。包帯のこの部分の組成は、接着剤重合体100%近くか、又は100%である。接着剤重合体は、患者に適用される包帯の表面を形成する。
【0047】
同様に、本発明は、患者の所定エリアに医療用包帯を適用することを包含する患者を処置する方法であって、包帯が、1以上の繊維を含有し、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有する患者の処置法を提供する。この方法は、やけど、傷口又は汚染からの保護を必要とする他のエリア又は治療剤又は医薬化合物による措置を必要とするエリアに、1以上の繊維を適用するために使用される。この方法は、別のレシーバーにおいて少なくとも1の繊維を形成し、ついで、少なくとも1の繊維を患者の所定エリアに移すこと、又は少なくとも1の繊維を適用することを包含する。
【0048】
上記において示唆したように、少なくとも1の繊維に形成される液体中には、他の添加剤、すなわち、可溶性又は不溶性添加剤も含有される。好ましくは、これらの添加剤は、患者の治療にとって少なくとも治療上有効な量を提供する、医療上重要な局所添加剤である。このような量は、患者と共に、添加剤のタイプ及び物理特性に大いに左右される。しかし、一般的には、このような添加剤は、極微量(重合体100部当たり0.1重量部)から重合体100部当たり500重量部以上の量範囲で繊維に組み込まれる。このような治療用添加剤としては、銀含有抗菌剤、及び抗菌性ポリペプチドの如き抗菌剤、リドカインの如き鎮痛剤、ネオマイシンの如き可溶性又は不溶性の抗生物質、トロンボゲン化合物、シドノニミン及びジアゼニウムジオレートの如き傷口の治癒を促進する一酸化窒素放出化合物、殺菌性化合物、防かび性化合物、抗ウイルス性化合物、静菌性化合物、抗炎症性化合物、抗寄生虫性化合物、抗不整脈性化合物、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗癲癇剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア性化合物、β−アドレナリン受容体遮断性化合物、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断用化合物、利尿剤、抗パーキンソン病化合物、免役学的化合物、筋弛緩薬、血管拡張剤、ステロイドを含むホルモン、副交感神経興奮性化合物、放射性医薬品、抗ヒスタミン剤及び他の抗アレルギー性化合物、PDE IVインヒビターの如き抗炎症性化合物、NK3インヒビターの如き神経ホルモンインヒビター、p38/NK/CSBP/mHOG1インヒビターの如きストレスタンパクインヒビター、抗精神病剤、芳香、臭い吸収性化合物、及びデオキシリボ核酸、リボ核酸、及びヌクレオチド類似体の如き核酸、酵素及び他のタンパク質及び成長ファクターがある(ただし、これらに限定されない)。
【0049】
さらに他の具体例では、医療用包帯には、粒子の構造特性に寄与する添加剤が含まれる。これらには、小さい固体粒子、他の物質が溶解される非混和性液体の分散小滴、架橋化合物、発泡体を創製する発泡剤、接着剤、エラストマー等が含まれ、傷口の保護及び治癒におけるその機能によって選択される。
【0050】
本発明に従って、繊維の製造及び適用の仕方に応じて、各種のタイプの膜が製造されることが認められる。1具体例では、繊維に形成される液体は、接着剤重合体、親水性重合体、及びエラストマー重合体の混合物である。このように、1つの液体が膜全体を提供できる。しかし、異なる組成の複合繊維を、一緒に又は連続した層において紡糸して、好適な膜を提供することもできる。
【0051】
本発明の医療用包帯を使用する方法は、傷口又は汚染からの保護を必要とする他のエリア、又は治療剤又は医薬化合物による治療を必要とするエリアに、少なくとも1の繊維を適用して、繊維性不織マトリックスを形成することを包含し、包帯が、親水性成分、エラストマー成分及び接着剤成分を含有するものである。
【0052】
他の具体例では、包帯は、さらに、生体適合性の溶媒における溶解性に関係なく、殺菌性及び殺かび性化合物の如き抗菌性化合物、静菌性化合物、架橋化合物、鎮痛性化合物、トロンボゲン化合物、シドノニミン及びジアゼニウムジオレートの如き傷口の治癒を促進する一酸化窒素放出化合物、他の医薬化合物、接着剤、芳香、臭い吸収性化合物及び核酸でなる群から選ばれる少なくとも1の医薬品又は治療剤を包含する。上記の電界紡糸繊維とは異なり、添加剤は、重合体/溶媒の組合せに溶解性のものに限定されない。本発明の重合体/溶媒の組合せに添加される不溶性の添加剤も繊維内に保持されることが見出された。
【0053】
最後に、本発明は、親水性成分、エラストマー成分、及び接着剤成分を含む1以上の複合繊維を製造する装置も提供する。この装置は、1以上のタイプの繊維形成材料を収容するための複数個のリザーバー、それぞれ、独立してリザーバーと連通する複数個のバルブ、及び紡糸口金、NGJノズル、及び電界紡糸装置でなる群から選ばれる、バルブと連通する繊維形成装置を包含する。
【0054】
本発明の装置の具体例を、図面を参照して記述する。装置10は、第1のリザーバー12、第2のリザーバー16及び第3のリザーバー20を包含する。第1のリザーバー12は、第1のバルブ14と液体連通している。同様に、第2のリザーバー16は第2のバルブ18と液体連通し、第3のリザーバー20は第3のバルブ22と液体連通している。第1、第2及び第3のバルブ14、18、22は手動式で制御されるか、又は自動制御用のコントローラー24と導通して配置される。第1の、第2の及び第3のバルブは、任意に混合チャンバー26と連通し、混合チャンバーは、それ自体、繊維形成装置28と導通している。あるいは、各リザーバーには、紡糸装置(紡糸口金、NGJノズル、電界紡糸装置)が取付られる。各装置からの繊維の製造速度は、特別に望まれる各種の構造を形成するに必要な量で特別な重合体が供給されるように制御される。繊維形成装置が電界紡糸装置である場合には、電源が電界紡糸装置と電気的に導通している。
【0055】
装置10は、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を、各リザーバー12、16及び20に入れることによって、本発明による繊維を形成するために使用される。繊維形成装置28に供給される各成分の相対的な量は、各バルブ14、18及び20を、選択的に開閉することによって制御される。各成分の相対量は、繊維形成装置28によって製造される繊維の組成を制御する。
【0056】
本発明の実施を説明するため、WATERLOCK A-180及びTECOPHILIC重合体を含有するTHF:エタノール(30:70)溶液から複合繊維を電界紡糸して、不織繊維集成体又はマットを形成した。WATERLOCK重合体は、Grain Processing Corp.(Muscatine, IA)から市販されているコーンスターチ/アクリルアミド/ナトリウムアクリレート共重合体である。WATERLOCK重合体は、得られる繊維集成体について親水性成分として寄与する。TECOPHILICは、Thermedics Polymer Products(Wilmington, MA)から市販されている脂肪族ポリエーテル基材ポリウレタンであり、繊維集成体についてエラストマー成分及び親水性成分として寄与する。WATERLOCK(WL)7、30、50、70又は85%を含有する繊維のマットを、その吸収性について、WATERLOCKを含まない繊維を含有するマットの吸収性と比べてテストした。繊維を室温において24時間蒸留水中に浸漬し、浸漬前後のマットの重量を比較することよって平衡水含量を測定した。各サンプルの重量増大率(%)を図2に示す。図2は、WATERLOCK重合体の添加が、得られる繊維集成体の吸収性を大いに増加させることを示している。
【0057】
WATERLOCK及びTECOPHILIC重合体を含有するサンプルを、その応力−歪み挙動についてもテストした。ASTM 638を使用するInstron疲労テストシステムモデル5567(Canton, MA)にてテストした。サンプルを50mm/分の速度で伸張した。 WATERLOCK(WL)7、30、50、70又は85%を含有するサンプルの応力−歪み挙動を図3に示す。これらのデータによれば、各ケースにおいて、サンプルが吸収できる変形(歪み)の量は500%を超えている。繊維集成体の引張強さは、WATERLOCK7%で最大であり、TECOPHILIC重合体(0%WL)でなるサンプルよりも大きい。
【0058】
この明細書及び請求の範囲では、単数形の表示は、内容が明らかに他の内容を示すことにならない限り、複数形を含むものである。他に限定しない限り、ここで使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明が関与する技術分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有するものである。
【0059】
上述の記載に基づき、本発明の医療用包帯が上記の目的を達成するものであることが明白であろう。従って、請求の範囲に記載する発明の範囲に明らかに入る各種の変更及び特殊な成分要素の選択は、ここに開示する発明の精神から逸脱することなく決定されることは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による複合繊維を製造するための装置の概略図である。
【図2】本発明のナノ繊維集成体の吸収性を示すグラフである。
【図3】本発明のナノ繊維集成体に関する応力−歪み曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の繊維を含んでなる不織繊維集成体であって、前記繊維が、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有するものであることを特徴とする、不織繊維集成体。
【請求項2】
集成体が、乾燥した素地には付着するが、湿潤した素地には付着しないものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項3】
集成体が、医療用包帯の成分を構成するものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項4】
接着剤成分が、アクリレートのホモポリマー及びコポリマー、シリコーン、ポリビニルピロリドン及びこれらの混合物でなる群から選ばれるものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項5】
エラストマー成分が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアンヒドリッド、ポリアミド、ポリイミド及びこれらの混合物及びそのコポリマーでなる群から選ばれるものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項6】
親水性成分が、線状ポリ(エチレンイミン)、グラフト化セルロース誘導体、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びこれらの混合物及びそのコポリマーでなる群から選ばれるものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項7】
集成体の第1の表面における1以上の繊維の組成が、集成体の第2の表面における1以上の繊維の組成と異なる、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項8】
少なくとも1の繊維が、直径約3−約3000nmを有するものである、請求項1記載の不織繊維集成体。
【請求項9】
不織繊維集成体を製造する方法であって、該方法は、少なくとも1の繊維形成材料を用意し、前記の少なくとも1の繊維形成材料から少なくとも1の繊維を形成することを包含してなり、少なくとも1の繊維形成材料が、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含有するものであることを特徴とする、不織繊維集成体の製法。
【請求項10】
1以上の繊維形成材料を溶媒中に存在するものとして用意し、前記溶媒が、アルコール、酢酸エチル、アセトン、及びテトラヒドロフランでなる群から選ばれるものである、請求項9記載の不織繊維集成体の製法。
【請求項11】
接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分の相対的な量が経時的に変動し、これによって、包帯の第1の表面における1以上の繊維の組成が、包帯の第2の表面における1以上の繊維の組成とは異なっている繊維集成体を製造する、請求項9記載の不織繊維集成体の製法。
【請求項12】
患者の所定エリアに不織繊維集成体を適用することを包含する患者を処置する方法であって、前記不織繊維集成体が、接着剤成分、エラストマー成分、及び親水性成分を含む1以上の繊維を含有するものであることを特徴とする、患者の処置法。
【請求項13】
親水性成分、エラストマー成分、及び接着剤成分を含む1以上の複合繊維を製造する装置であって、該装置は、1以上のタイプの繊維形成材料を収容するための複数個のリザーバー、それぞれ、独立してリザーバーと連通する複数個のバルブ、及び紡糸口金、NGJノズル、及び電界紡糸装置でなる群から選ばれる、バルブと連通する繊維形成装置を包含することを特徴とする、複合繊維製造装置。
【請求項14】
さらに、バルブ及び繊維形成装置に連通する混合チャンバーを具備する、請求項13記載の装置。
【請求項15】
繊維形成装置が電界紡糸装置であり、さらに、該電界紡糸装置に電気的に導通する電源を具備する、請求項13記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−501373(P2006−501373A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−583261(P2003−583261)
【出願日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/010652
【国際公開番号】WO2003/086234
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(397033939)ザ ユニバーシティ オブ アクロン (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF AKRON
【Fターム(参考)】