説明

不足周波数事象時におけるガスタービン入口温度の抑制及び関連方法

【課題】グリッド周波数が所定の目標周波数以下に低下した場合のような事象時に、複数段圧縮機、燃焼器及び複数段タービン構成要素を含むガスタービン発電プラントにおける出力を増強する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、a)圧縮機への周囲空気入口に対する液体空気の選択的付加を可能にするように配置された液体空気源を設けるステップと、b)そのような事象時に周囲空気入口内に制御量の液体空気を流すステップとによって実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの運転に関し、具体的には、需要が供給を超えた不足周波数事象時におけるガスタービンの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要が配電網(グリッド)への供給を超えた時に、グリッド周波数は、50Hz又は60Hzのいずれかの目標値以下に低下することになる。ガスタービンベースの発電プラントの場合には、ガスタービンの発電能力は、周波数の低下と共に低下する。従って、大きな周波数低下の間にグリッド安定性を得るためには、ガスタービン発電プラントの出力は、少なくとも一時的に増大させることが必要となる可能性がある。発電するのに使用するガスタービンの出力は、例えば付加的な圧縮機質量流量又は付加的な燃料流量によって増大させることができる。しかしながら、圧縮機質量流量の増加は、圧縮機サージマージン又はその他の限界値のために制限される可能性があり、一方、燃料流量の増加は、正常作動温度を超えた運転により生じる部品寿命の問題のために制限される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4354565号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ohasi Yoshihito, "Liquid Air Storage System to Boost Gas Turbine Capacity", Science Links Japan, http://sciencelinks.jp/j-east/article/200216/000020021602A0608919.php, Vol. 8th.,pp, 349-352 (2002) (Abstract only)
【非特許文献2】"Heat Transfer-Asian Research", http://www3.interscience.wiley.com/journal/72507742/abstract, Wiley InterScience, Vol. 29 Issue 5, 347-357 (2002) (Abstract Only)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、それによって、必要条件を満たすためにタービンを正常作動温度よりも高い温度で燃焼させる必要性がない状態で又は燃焼温度の上昇を最小にした状態で、短期間の不足周波数事象時にガスタービン出力を増強することができる機構に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載した本技術の例示的であるが非限定的な実施形態によると、圧縮機入口温度の低下は一般的にガスタービン出力性能を増大させるという公知の現象の利点を採用している。従って、グリッド周波数が所定の目標周波数以下に低下した場合のような事象時に、複数段圧縮機、燃焼器及び複数段タービン構成要素を含むガスタービン発電プラント(又は、その他の機械的駆動用途)における出力を増強する方法を提供し、本方法は、a)圧縮機への周囲空気入口に対する液体空気の選択的付加を可能にするように配置された液体又は液化空気或いは気体ブレンド源(従って、単に「空気」と呼ぶ)を設けるステップと、b)そのような事象時に周囲空気入口内に制御量の液体空気を流すステップとを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、ガスタービン発電プラントに関し、本ガスタービン発電プラントは、周囲空気入口を有する複数段圧縮機と、複数段タービン構成要素と、圧縮機から加圧空気を受けかつ複数段タービン構成要素に対してガス状燃焼生成物を供給するように配置された燃焼器と、圧縮機の周囲空気入口に対して液体空気を供給するように配置された液体空気源とを含む。
【0008】
以下に特定する単一の図面の図に関連させて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の例示的であるが非限定的な実施形態による圧縮機入口冷却構成を組み込んだガスタービンプラントの簡略概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図を参照すると、ガスタービンプラント10は、燃焼器14に対して空気を供給する複数段圧縮機12を含み、燃焼器14は次に、複数段ガスタービン16に対して高温燃焼ガスを供給する。図示するように、圧縮機12及びガスタービン16は、共通のロータシャフト18上で作動し、ロータシャフト18はまた、タービン16の下流に配置された発電機(図示せず)に連結することができる。その他のタービン構成もまた、本発明により利点を得ることができる。ガスタービン構成自体は、本発明の主題ではなく、何らさらに詳細に説明する必要はない。
【0011】
本発明の例示的であるが非限定的な実施形態によると、圧縮機12に対して実質的に開口端部の入口プレナム20が配置されて、圧縮機入口22に対して低温吸気を供給する。貯蔵タンク24は、複数ノズル30を備えた噴射マニホルド28に対して導管26を通して液体空気を供給するように配置される。液体空気は、圧縮及び熱除去によって非常に低温に冷却された空気である。液体空気は、約870kg/mの密度を有し、この密度は、空気の元素組成に応じて変化させることができる。液体空気噴射は、マニホルド28及びノズル30の上流において導管24内に配置された制御弁32によって制御される。
【0012】
マニホルド28及び関連するノズル30の配置は、プレナム20内で変化させることができる。例えば、プレナム入口34に近接させてノズルを設置することによって、空気が圧縮機入口22に向かって流れるにつれて、より均一な温度を達成することができるが、通路に沿った幾分望ましくない温度上昇を生じる可能性がある。圧縮機入口22に近接させてマニホルド28及び関連するノズル30を配置することによって、低温であるがより均一さが劣る温度が生じる可能性がある。従って、マニホルド28及びノズル30の的確な配置は、特定の用途に応じて決まることになるが、このことは、当業者にはよく知られていることである。
【0013】
上記の入口構成は、圧縮機12の入口システム内に液体空気を噴射し、それによって圧縮機12に流入する周囲空気の温度を低下させることによって、短期間の出力増強を可能にする。液体空気の流量を増大させることによる温度の低下は、少なくとも一時的に、そうでなければガスタービン16をその正常作動温度以上で燃焼させることが必要となるレベルまで該ガスタービン16の出力を増大させる。
【0014】
制御方式は、様々な周波数レベルでの出力要件に又は具体的な圧縮機入口温度の維持に基づいたものとすることができる。弁32によって液体空気の供給量を、所定の周波数レベルでの必要な出力に維持するのに必要な最小量に、すなわち高価な液体空気をより長い補充間隔として節約する断続又は調整基準に基づいて制御することもまた、利点をもたらすことができる。
【0015】
本明細書に記載したような付加的な圧縮機質量流量によって達成される出力増強により、圧縮機サージ及び部品寿命を改善することができることも、理解されたい。
【0016】
現時点で最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な改良及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0017】
10 ガスタービンプラント
12 複数段圧縮機
14 燃焼器
16 複数段ガスタービン
18 ロータシャフト
20 入口プレナム
22 貯蔵タンク
26 導管
28 マニホルド
30 ノズル
32 制御弁
34 プレナム入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド又はガスタービン周波数が所定の目標周波数以下に低下した場合或いはガスタービン負荷が一時的にその能力を超えると予測された場合のような事象時に、複数段圧縮機、燃焼器及び複数段タービン構成要素を含むガスタービン発電プラントにおける出力を増強する方法であって、
a)前記圧縮機への周囲空気入口に対する液体空気の選択的付加を可能にするように配置された液体空気源を設けるステップと、
b)前記事象時に前記周囲空気入口内に制御量の液体空気を流すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記周囲空気入口に対して前記液体空気を供給する導管内に1以上の制御弁を設けるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)が、前記圧縮機の周囲空気入口に近接させて設置した複数のノズルを通して前記液体空気を噴射するステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)が、
前記ノズルをマニホルドに取付けるステップと、
前記マニホルドを前記周囲空気入口に隣接させてプレナム内に設置するステップと
をさらに含む,
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)が、前記グリッド周波数の関数として実施される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)が、圧縮機空気入口温度及びタービン出力の関数として実施される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)が、所定の周波数レベルで必要な出力を維持するための最小量の液体空気を供給するように実施される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
周囲空気入口を有する複数段圧縮機と、
複数段タービン構成要素と、
前記圧縮機から加圧空気を受けかつ前記複数段タービン構成要素に対してガス状燃焼生成物を供給するように配置された燃焼器と、
前記圧縮機の周囲空気入口に対して液体空気を供給するように配置された液体空気源と
を含むガスタービン発電プラント。
【請求項9】
前記周囲空気入口に近接させて設置した1以上の噴射ノズルを備えた液体空気噴射マニホルドを含む、請求項8記載のガスタービン発電プラント。
【請求項10】
前記液体空気源と前記周囲空気入口との間に配置された導管を含み、
前記マニホルドの上流において前記導管内に、制御弁が設置される、
請求項9記載のガスタービン発電プラント。
【請求項11】
前記マニホルドが、前記周囲空気入口に隣接してプレナム内に設置される、請求項10記載のガスタービン発電プラント。

【図1】
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【公開番号】特開2009−250233(P2009−250233A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75418(P2009−75418)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】