説明

不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システム

【課題】 歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを客観的に推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知して訂正を促すことにより、利用者に対して不快感や不信感を与えないようにする。
【解決手段】 楽曲毎に作成されたリファレンスデータと、マイクロホン24を介して入力された歌唱音声とを所定の歌唱区間毎に比較し、所定のアルゴリズムに従って歌唱の正確さを示す歌唱採点値を算出する歌唱採点手段39と、歌唱採点が行われた任意の楽曲について、所定の歌唱区間毎に歌唱採点値の統計値を算出する歌唱採点値統計手段51と、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定する過小採点区間特定手段52と、特定された歌唱区間について、当該楽曲のリファレンスデータが不適正である旨の報知を行う不適正データ報知手段53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムに関するものであり、詳しくは、歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在普及しているカラオケ演奏端末には歌唱採点機能を有しているものがあり、マイクロホンから入力された歌唱音声と、予め楽曲毎に設定されたリファレンスデータとを比較して、音程の正確性、発声タイミング、音量の加減等について、歌唱の巧拙を採点することができるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、採点機能付きのカラオケ演奏端末に関する技術が開示されている。特許文献1に記載された技術は、歌唱音声の周波数を採点して基本得点を算出するとともに、歌唱のビブラート、抑揚、声質、タイミング、しゃくりなど他の歌唱要素を採点して付加ポイントを算出するものである。
【0004】
また、特許文献2には、異なる評価の得点を複数種類表示することが可能なカラオケ演奏端末に関する技術が開示されている。この特許文献2に記載された技術は、利用者の歌唱音声が入力されると、歌唱採点機能が働き、歌唱の音高、音量、リズムを点数化する。そして、それぞれ異なる複数の採点基準(歌唱の音高、音量、リズムに対する重み付けが異なる採点基準)に基づいて、歌唱採点機能における採点値を加重平均し、複数の採点結果を導き出すことにより、音程(周波数)重視、リズム重視等のように視点の異なった複数の採点結果を得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107337号公報
【特許文献2】特開平10−161673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カラオケ演奏端末において歌唱採点を行うには、採点の基礎となるリファレンスデータが正確であることが必要である。すなわち、リファレンスデータが正確に作成されていない場合には、利用者がどんなに上手に歌唱したとしても、歌唱採点値が低いものとなり、利用者に不快感や不信感を与えるおそれがある。
【0007】
従来、カラオケ楽曲の作成や配信を行う業者が、リファレンスデータの正確性をチェックし、適正なリファレンスデータであることを確認したうえで、納品や配信を行っている。しかし、どのような技術にもヒューマンエラーは起こりうるものであり、厳重なチェックを行ったとしてもチェックミスを完全に排除できるとは言い難かった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを客観的に推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知してリファレンスデータの訂正を促すことにより、利用者に対して不快感や不信感を与えることがない、不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムは、歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知するためのシステムであって、歌唱採点手段と、歌唱採点値統計手段と、過小採点区間特定手段と、不適正データ報知手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
歌唱採点手段は、予め楽曲毎に作成されたリファレンスデータと、マイクロホンから入力された歌唱音声とを所定の歌唱区間毎に比較し、所定のアルゴリズムに従って両者の相違を数値化して演算することにより歌唱の正確さを示す歌唱採点値を算出するための手段である。歌唱採点値統計手段は、歌唱採点が行われた任意の楽曲について、所定の歌唱区間毎に歌唱採点値の統計値を算出するための手段である。過小採点区間特定手段は、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定するための手段である。不適正データ報知手段は、特定された歌唱区間について、当該楽曲のリファレンスデータが不適正である旨の報知を行うための手段である。
【0011】
このような構成からなるシステムでは、歌唱採点を行うために、楽曲毎にリファレンスデータを作成して楽曲データと共に所定の格納手段に格納しておく。そして、利用者により歌唱採点が指示され、あるいは予め歌唱採点を行うように設定されている楽曲が演奏されると、歌唱採点手段の機能により、当該楽曲の歌唱採点用リファレンスデータと、マイクロホンから入力された歌唱音声とを比較して、音程の正確性、発声タイミング、音量の加減等について、歌唱の巧拙に関する歌唱採点値を算出する。
【0012】
また、歌唱採点が行われた任意の楽曲について、歌唱採点値統計手段の機能により、所定の歌唱区間毎に、歌唱採点値の統計値を算出する。そして、過小採点区間特定手段の機能により、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定する。
【0013】
統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間が特定されると、不適正データ報知手段の機能により、特定された歌唱区間におけるリファレンスデータが不適正である旨の報知を行う。報知は、不適正なリファレンスデータが付帯された楽曲について、例えば、その楽曲IDと、不適正なリファレンスデータが存在する歌唱区間を特定するためのデータをファイルとして出力したり、表示装置の画面に表示したり、プリンタにより印刷したりすればよい。
【0014】
また、上述した構成に加えて、利用者毎に歌唱採点値を記憶する利用者別歌唱採点値記憶手段と、利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上の利用者を特定する高採点値利用者特定手段と、を備えることが可能である。このような構成とした場合には、歌唱採点値統計手段は、特定された利用者のみについて、歌唱採点値の統計値を算出する。
【0015】
このような構成からなるシステムでは、歌唱採点が行われると、利用者別歌唱採点値記憶手段の機能により、歌唱採点値を利用者毎に記憶しておく。また、高採点値利用者特定手段の機能により、利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上の利用者を特定する。そして、歌唱採点値統計手段は、歌唱採点値が基準値以上であると特定された利用者のみについて、歌唱採点値の統計値を算出する。すなわち、客観的に歌唱が上手いと評価されている利用者の歌唱採点値を基準として、統計値を算出して、不適正なリファレンスデータが存在するか否かを推定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムによれば、歌唱採点値の統計値が基準値よりも低い歌唱区間については、実際には上手に歌唱しているにも拘わらず歌唱の巧拙が低く評価されている可能性があるため、当該歌唱区間のリファレンスデータが不適正なものであると推定して、その旨の報知を行うことにより、リファレンスデータが正確に作成されているか否かを客観的に推定することができる。
【0017】
これにより、不適正であるとして報知されたリファレンスデータについて再確認を行い、適正なリファレンスデータとすることができるので、利用者に対して歌唱採点に対する不快感や不信感を与えることがなくなる。
【0018】
また、歌唱採点を行ったすべての利用者が上手に歌唱できているとは限らないため、各利用者の歌唱採点値を記憶しておき、歌唱採点値が基準値以上である歌唱の上手な利用者のみについて、歌唱採点値の統計値を算出することにより、より一層、正確かつ確実に不適正なリファレンスデータを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムの主要部を示すブロック図。
【図2】本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムの機能を示す説明図。
【図3】本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システムを適用したカラオケ演奏端末を示すブロック図。
【図4】楽曲別歌唱採点値テーブルの構成を示す説明図。
【図5】不適正データ報知ファイルの構成を示す説明図。
【図6】利用者別歌唱採点値テーブルの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システム(以下、報知システムと略記する)の実施形態について説明する。図1〜図6は本発明の実施形態に係る報知システムを示すもので、図1は報知システムの主要部のブロック図、図2は報知システムの機能説明図、図3は報知システムを適用したカラオケ演奏端末のブロック図、図4は楽曲別歌唱採点値テーブルの説明図、図5は不適正データ報知ファイルの説明図、図6は利用者別歌唱採点値テーブルの説明図。
【0021】
<報知システムの概要>
本発明の実施形態に係る報知システムは、歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知するためのシステムであって、図1に示すように、歌唱採点値管理サーバ50と、複数のカラオケ演奏端末10とにより構成され、歌唱採点手段39と、歌唱採点値統計手段51と、過小採点区間特定手段52と、不適正データ報知手段53とを含んでいる。また、報知システムの構成要素として、利用者別歌唱採点値記憶手段54と、高採点値利用者特定手段57を備えていてもよい。本実施形態では、歌唱採点手段39は、各カラオケ演奏端末10の構成要素となっており、歌唱採点値統計手段51、過小採点区間特定手段52、不適正データ報知手段53、利用者別歌唱採点値記憶手段54、高採点値利用者特定手段57は、歌唱採点値管理サーバ50の構成要素となっている。
【0022】
この報知システムでは、図2に示すように、利用者により歌唱採点が指示され、あるいは予め歌唱採点を行うように設定されている楽曲が演奏されると、歌唱採点手段39の機能により、当該楽曲の歌唱採点用リファレンスデータと、マイクロホン24から入力された歌唱音声とを比較して歌唱採点値を算出する。また、このような歌唱採点が行われると、歌唱採点値統計手段51の機能により、所定のタイミングで、楽曲毎(所定の歌唱区間毎)に、歌唱採点値の統計値を算出し、過小採点区間特定手段52の機能により、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を楽曲毎に特定する。そして、不適正データ報知手段53の機能により、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間におけるリファレンスデータが不適正である旨の報知を行う。リファレンスデータが不適正である旨の報知は、例えば、不適正データ報知ファイル56を作成することにより行う。
【0023】
このような処理において、利用者別歌唱採点値記憶手段54の機能により、歌唱採点値を利用者毎に記憶しておき、高採点値利用者特定手段57の機能により、利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上の利用者を特定する。そして、歌唱採点値統計手段51は、歌唱採点値が基準値以上の利用者のデータのみを用いて、歌唱採点値の統計値を算出することが好ましい。
【0024】
<報知システムの詳細>
本発明の実施形態に係る報知システムでは、図1に示すように、歌唱採点値管理サーバ50と複数のカラオケ演奏端末10とが、通信ネットワーク60を介して相互に接続されている。通信ネットワーク60は、公衆電話回線、専用電話回線、光通信回線、LAN等を用いることができるが、ネットワークに対する第三者の侵入やデータの傍聴及び改竄が困難であるとともに、帯域を独占せずに安価な通信網であるという点で、インターネットにより構成されるVPNを利用することが好ましい。
【0025】
<歌唱採点値管理サーバ>
歌唱採点値管理サーバ50は、図1に示すように、歌唱採点値統計手段51、過小採点区間特定手段52、不適正データ報知手段53を備えており、さらに、利用者別歌唱採点値記憶手段54、高採点値利用者特定手段57を備えることが可能である。なお、図示しないが、歌唱採点値管理サーバ50は、上述した機能手段の他に、複数のカラオケ演奏端末10との間でデータの送受信を行うと共に、受信したデータを所定の記憶装置に記憶するための基本的なサーバ機能を備えている。また、歌唱採点値管理サーバ50を独立したサーバとして構築するのではなく、カラオケ楽曲の配信を行うホストサーバに歌唱採点値を管理する機能を持たせ、あるいは仮想化技術により歌唱採点値管理サーバ50を構築してもよい。
【0026】
<歌唱採点値統計手段>
歌唱採点値統計手段51は、任意のカラオケ演奏端末10において、歌唱採点が行われた任意の楽曲について、所定の歌唱区間毎に歌唱採点値の統計値を算出するためのプログラムからなる。歌唱採点値の統計値とは、複数の利用者による歌唱採点値の単純平均値、加重平均値、標準偏差値等、どのような統計値であってもよい。例えば、複数の利用者による歌唱採点値の単純平均値を用いる場合には、歌唱採点が行われた各楽曲について、歌唱区間毎に歌唱採点値の平均値を求めて、楽曲別歌唱採点値テーブル55を作成し、HDD等の記憶装置に記憶する。なお、統計値を算出するのはどのようなタイミングであってもよく、例えば、1ヶ月毎、1週間毎、所定回数の歌唱が行われた毎に、統計値を算出する。
【0027】
楽曲別歌唱採点値テーブル55は、例えば、図4に示すように、楽曲毎に、楽曲ID、歌唱区間毎の歌唱採点平均値を関連付けて構成したデータテーブルである。なお、楽曲別歌唱採点値テーブル55に含まれるデータは、図4に示すものに限られず、全区間の歌唱採点値の平均値等、他のデータを含んでいてもよい。
【0028】
なお、歌唱採点値統計手段51は、利用者別歌唱採点値記憶手段54により記憶された歌唱採点値に基づいて、高採点値利用者特定手段57により利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上であると特定された利用者のみについて、歌唱採点値の統計値を算出するように機能させることが可能である。この場合には、客観的に歌唱が上手いと評価されている利用者の歌唱採点値のみに基づく統計値を算出する。過小採点区間特定手段52では、この統計値を用いて、不正なリファレンスデータが存在するか否かを推定する。
【0029】
<過小採点区間特定手段>
過小採点区間特定手段52は、歌唱採点値統計手段51により算出した統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定するためのプログラムからなる。なお、基準値はどのような値であってもよいが、一般的な利用者の歌唱採点値として明らかに低い値を基準値とすることが好ましい。例えば、一般的な利用者は60点程度の歌唱採点値を出すことができると仮定した場合に、これよりも明らかに低い40点を基準値とすることができる。また、客観的に歌唱が上手いと評価されている利用者の歌唱採点値のみに基づく統計値を算出する場合には、前者よりも高い50点を基準値とすることができる。
【0030】
<不適正データ報知手段>
不適正データ報知手段53は、歌唱採点値統計手段51により算出した統計値が所定の基準値よりも低いとして特定された歌唱区間について、当該楽曲のリファレンスデータが不適正である旨の報知を行うためのプログラムからなる。すなわち、不適正データ報知手段53では、リファレンスデータが不適正であると特定された場合に、この不適正なリファレンスデータが付帯された楽曲について、楽曲IDと、不適正な歌唱区間を特定するためのデータとを関連付けた不適正データ報知ファイル56を出力したり、不適正データ報知ファイル56の内容を表示したり、プリンタにより印刷したりする。不適正データ報知ファイル56は、図5に示すように、不適正なリファレンスデータが付帯されていると判断された楽曲の楽曲IDと、当該不適正なリファレンスファイルを含む歌唱区間とを関連付けたファイルである。
【0031】
<利用者別歌唱採点値記憶手段>
利用者別歌唱採点値記憶手段54は、利用者毎に歌唱採点値を記憶するためのプログラムからなる。すなわち、利用者別歌唱採点値記憶手段54は、カラオケ演奏端末10において歌唱採点が行われる毎に、その歌唱採点値を取得して、利用者別歌唱採点値テーブル58を作成してHDD等の記憶手段に記憶する。利用者別歌唱採点値テーブル58は、例えば、図6に示すように、利用者IDと、歌唱採点値の最大値、最小値、平均値とを関連付けたデータであるが、これらのすべての値ではなく、最大値、最小値、平均値のうちのいずれか一つ、あるいは標準偏差値等を構成データとしてもよい。
【0032】
<高採点値利用者特定手段>
高採点値利用者特定手段57は、利用者別歌唱採点値記憶手段54の機能により記憶された利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上の利用者を特定するためのプログラムからなる。すなわち、高採点値利用者特定手段57は、客観的に歌唱が上手いと評価されている利用者を特定して、その歌唱採点値を基準として歌唱採点値統計手段51による統計値の算出を行わせる。
【0033】
<カラオケ演奏端末>
本発明の実施形態に係る報知システムを適用するカラオケ演奏端末10は、図3に示すように、カラオケ本体21、カラオケリモコン装置22、スピーカ23、マイクロホン24、表示装置25、ミキシングアンプ26を備えている。
【0034】
<カラオケリモコン装置>
カラオケリモコン装置22は、ユーザインタフェース機能を備えており、カラオケ本体21のローカル送受信手段36に対して有線方式又は無線方式によりデータの送受信を行うようになっている。このカラオケリモコン装置22は、楽曲検索手段22aとして機能するプログラム、楽曲索引データベース22b、カードリーダ22c、データの送受信を行うための電子回路及びプログラム、フラッシュメモリ等からなる記憶手段(図示せず)を備えている。このカラオケリモコン装置22に付帯するスイッチ類や、入出力表示部(図示せず)に表示される各種のアイコン等を操作することにより、選曲操作等の種々の操作を行うことができる。
【0035】
<楽曲検索手段/楽曲索引データベース>
楽曲検索手段22aは、利用者の指示に基づき、楽曲索引データベース22bを参照してカラオケ楽曲を検索するためのプログラムからなる。楽曲索引データベース22bは、カラオケ演奏端末10で演奏に供されるカラオケ楽曲についての属性情報を記述したデータベースであり、例えば、楽曲番号・曲名・歌手名・歌い出し部分の歌詞・流行時期・音楽ジャンル区分・デュエット曲か否かなど、種々の属性情報がこれに含まれている。
【0036】
<カードリーダ>
カードリーダ22cは、任意の利用者がカラオケ演奏端末10を利用する際に、当該利用者の利用者IDを取得するための装置であり、本実施形態では、利用者がカラオケ演奏端末10を利用する際に、利用者が所持するID媒体27から利用者IDを読み取るようになっている。カードリーダ22cで読み取った利用者IDは、カラオケ本体21のRAM34において利用者管理テーブル34bとして記憶され、利用者管理手段37で管理される。ID媒体27は、例えば非接触型のIDカード、携帯電話、携帯情報端末等からなり、利用者IDを記憶して、カードリーダ22cとの間でデータの送受信を行うことができるようになっている。利用者管理テーブル34bに格納されているデータは、利用者別の歌唱採点値を集計する際等に利用される。
【0037】
<マイクロホン>
マイクロホン24は、歌唱音声の入力を行うための装置である。マイクロホン24から入力された歌唱音声信号は、ミキシングアンプ26により、音楽再生制御手段40から送出される演奏音声信号とミキシングされると共に増幅され、スピーカ23へ出力される。なお、マイクロホン24からの音声入力信号は、A/Dコンバータ41によりデジタル変換されて、歌唱採点手段39における採点等に使用される。
【0038】
<表示装置>
表示装置25は、カラオケ楽曲に関連した背景映像や歌詞テロップ等を表示するための装置で、例えば、液晶ディスプレイ等により構成される。
【0039】
<カラオケ本体>
カラオケ本体21は、ネットワーク送受信手段31、中央制御手段32、ROM33、RAM34、HDD35、ローカル送受信手段36、利用者管理手段37、予約管理手段38、歌唱採点手段39、音楽再生制御手段40、A/Dコンバータ41、映像再生制御手段42を備えている。
【0040】
<中央制御手段>
中央制御手段32は、カラオケ本体21を総合的に制御するための手段であり、例えばCPU及びその周辺機器により構成されており、CPU等がROM33等に記憶されたプログラムに従って動作することにより、制御機能を発揮することができるようになっている。
【0041】
<ROM/RAM>
ROM33は、カラオケ本体21を構成する各機器を制御するためのプログラムデータや数値データを記憶するための機器で、例えば半導体メモリ等で構成される。また、RAM34は、プログラムや各種データを一時的に記憶する一時記憶領域として機能するもので、例えば半導体メモリ等で構成される。なお、物理的な半導体メモリによりRAM34を構成するのではなく、ハードディスク記憶装置等を用いて仮想的なRAM34を構成してもよい。本実施形態では、RAM34に、予約待ち行列34a、利用者管理テーブル34b、利用者別歌唱採点値34cが記憶されるようになっている。
【0042】
予約待ち行列34aは、選曲予約されたカラオケ楽曲について、演奏順に楽曲IDと選曲者の利用者IDとを関連付けて構成されたデータテーブルであり、他の識別データが関連付けられている場合もある。利用者管理テーブル34bは、カラオケ演奏端末10にシステムログインした利用者を利用者IDに基づいて管理するためのデータテーブルである。また、利用者別歌唱採点値34cは、各利用者の歌唱採点値に関するデータであり、歌唱採点値管理サーバ50に送信されて利用される。
【0043】
<HDD>
HDD35は、大容量記憶装置として機能するもので、楽曲データベース35a及び映像データベース35bが格納されている。なお、HDD35に替えて、あるいはHDD35と共に、データを書き替え可能なDVD等の大容量記憶装置を用いてもよい。
【0044】
<楽曲データベース>
楽曲データベース35aは、演奏制御データ(MIDI(登録商標)データ)、歌詞描出データ、及び歌唱採点用のリファレンスデータが同期されて構成される楽曲データについて、楽曲IDと対応付けてそれぞれ構成されたデータベースである。演奏制御データは、各楽曲の演奏を制御するためのデジタルデータであり、歌詞描出データは演奏に同期した歌詞文字の表示タイミングデータ及び色変わりデータを含んでいる。リファレンスデータは、楽曲毎に、音高、音量、リズム、ビブラート、抑揚、声質、タイミング、しゃくり等について、原曲に対応させて、音符毎に作成したデータであり、歌唱採点手段39において、マイクロホン24から入力される歌唱音声と比較することにより、歌唱採点を行うことができる。
【0045】
<映像データベース>
映像データベース35bは、演奏されるカラオケ楽曲に対応した背景映像データを、当該カラオケ楽曲の楽曲IDに対応させた映像ファイルとして所定数格納したデータベースである。
【0046】
<ネットワーク送受信手段/ローカル送受信手段>
ネットワーク送受信手段31は、歌唱採点値管理サーバ50とカラオケ本体21との間で、データの送受信を行うための電子回路及びプログラムからなる。また、ローカル送受信手段36は、カラオケ本体21とカラオケリモコン装置22との間で、データの送受信を行うための電子回路及びプログラムからなる。本実施形態では、赤外線通信により、カラオケ本体21とカラオケリモコン装置22との間でデータの送受信が行われる。
【0047】
<利用者管理手段>
利用者管理手段37は、取得された利用者IDに基づき利用者を特定して管理するためのプログラムからなる。すなわち、利用者管理手段37では、カードリーダ22cがID媒体27から利用者IDを読み取った場合に、この利用者IDに基づいて利用者を特定し、利用者管理テーブル34bにて管理する。取得した利用者IDは、選曲予約や歌唱採点値の統計を行う際に利用される。
【0048】
<予約管理手段>
予約管理手段38は、利用者により楽曲検索手段22aの機能を用いて選曲されたカラオケ楽曲の楽曲IDに選曲者の利用者IDを付帯させ、演奏順に並べて予約待ち行列34aを生成し、この予約待ち行列34aをRAM34に格納して管理するためのプログラムからなる。
【0049】
<歌唱採点手段>
歌唱採点手段39は、予め楽曲毎に作成されたリファレンスデータと、マイクロホン24から入力された歌唱音声とを所定の歌唱区間毎に比較し、所定のアルゴリズムに従って両者の相違を数値化して演算することにより歌唱の正確さを示す歌唱採点値を算出するためのプログラムからなる。
【0050】
すなわち、歌唱採点手段39では、マイクロホン24から入力され、A/Dコンバータ41によりデジタル変換された利用者の音声信号から、音程、声量、テンポ等の歌唱評価データを抽出すると共に、この歌唱評価データと演奏されたカラオケ楽曲の主旋律等からなるリファレンスデータとを比較して歌唱採点を行う。この歌唱採点手段39における採点機能として、音程、しゃくり、走り及びタメ、抑揚、ロングトーンの巧拙、ビブラートの巧拙、フォール、こぶし、低音部分及び高音部分の正確さ等を採点するようにしてもよい。歌唱採点手段39における採点結果値は、歌唱採点値管理サーバ50に送信されて、歌唱採点値統計手段51の機能により、所定のタイミングで統計値が算出される。また、歌唱採点値管理サーバ50で受信した利用者毎の歌唱採点値は、利用者別歌唱採点値記憶手段54の機能により、利用者別歌唱採点値テーブル58として記憶される。
【0051】
<音楽再生制御手段>
音楽再生制御手段40は、楽曲IDに基づいて楽曲データベース35aから抽出された演奏制御データに基づいて、音源データをデジタル再生すると共にアナログ変換してミキシングアンプ26に出力するための電子回路である。上述したように、ミキシングアンプ26は、マイクロホン24から入力された利用者の歌唱音声信号と、音楽再生制御手段40から送出される演奏音声信号とをミキシングすると共に、アンプ機能により増幅してスピーカ23より出力させるための装置である。
【0052】
<映像再生制御手段>
映像再生制御手段42は、カラオケ楽曲の演奏中に、映像データベース35bから抽出された映像データと、演奏データに含まれる歌詞描出データとを、当該カラオケ楽曲の演奏データに同期させて表示装置25に出力するためのプログラムからなる。
【0053】
<報知処理>
次に、本実施形態の報知システムを用いて、不適正なリファレンスデータが存在する旨の報知を行う処理について説明する。本実施形態の報知システムでは、図2に示すように、利用者により歌唱採点が指示され、あるいは予め歌唱採点を行うように設定されている楽曲が演奏されると、歌唱採点手段39の機能により、当該楽曲のリファレンスデータと、マイクロホン24から入力された歌唱音声とを比較して、音程の正確性、発声タイミング、音量の加減等について、歌唱の巧拙に関する歌唱採点値を算出する。そして、歌唱採点値統計手段51の機能により、複数の利用者について、所定のタイミングで、その歌唱採点値を楽曲毎に統計値を算出する。
【0054】
この際、高採点値利用者特定手段57の機能により、利用者別歌唱採点値テーブル58に記憶されている利用者別の歌唱採点値に基づいて、その統計値(例えば歌唱採点平均値)が基準値以上の利用者を特定し、特定された利用者の歌唱採点値のみを用いて、歌唱採点値統計手段51における統計値の算出を行うことが好ましい。
【0055】
歌唱採点値の算出及び統計が行われると、過小採点区間特定手段52の機能により、統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定し、不適正データ報知手段53の機能により、特定された歌唱区間について、当該楽曲のリファレンスデータが不適正である旨の報知を行う。
【0056】
<他の実施形態>
本発明のシステム及びその周辺装置を構成する機器や手段は上述したものに限定されず、その利用目的に応じて、必要な機器や手段のみの構成としたり、適宜他の機器や手段を付加したりすることができる。また、各手段をそれぞれ別個のものとして構成するのではなく、複数の機能を統合した手段として構成してもよい。さらに、ネットワーク接続された複数のカラオケ演奏端末10及び歌唱採点値管理サーバ50を用いるのではなく、所定の区域内でLAN接続されたカラオケ演奏端末10及び歌唱採点値管理サーバ50を用いてもよいし、カラオケ演奏端末10が1台のみのシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 カラオケ演奏端末
21 カラオケ本体
22 カラオケリモコン装置
22a 楽曲検索手段
22b 楽曲索引データベース
22c カードリーダ
23 スピーカ
24 マイクロホン
25 表示装置
26 ミキシングアンプ
27 ID媒体
31 ネットワーク送受信手段
32 中央制御手段
33 ROM
34 RAM
34a 予約待ち行列
34b 利用者管理テーブル
34c 利用者別歌唱採点値
35 HDD
35a 楽曲データベース
35b 映像データベース
36 ローカル送受信手段
37 利用者管理手段
38 予約管理手段
39 歌唱採点手段
40 音楽再生制御手段
41 A/Dコンバータ
42 映像再生制御手段
50 歌唱採点値管理サーバ
51 歌唱採点値統計手段
52 過小採点区間特定手段
53 不適正データ報知手段
54 利用者別歌唱採点値記憶手段
55 楽曲別歌唱採点値テーブル
56 不適正データ報知ファイル
57 高採点値利用者特定手段
58 利用者別歌唱採点値テーブル
60 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱採点に用いるリファレンスデータが正確に作成されているか否かを推定し、不適正なリファレンスデータであると推定した場合にその旨を報知するためのシステムであって、歌唱採点手段と、歌唱採点値統計手段と、過小採点区間特定手段と、不適正データ報知手段と、を備え、
前記歌唱採点手段は、予め楽曲毎に作成されたリファレンスデータと、マイクロホンから入力された歌唱音声とを所定の歌唱区間毎に比較し、所定のアルゴリズムに従って両者の相違を数値化して演算することにより歌唱の正確さを示す歌唱採点値を算出し、
前記歌唱採点値統計手段は、歌唱採点が行われた任意の楽曲について、所定の歌唱区間毎に前記歌唱採点値の統計値を算出し、
前記過小採点区間特定手段は、前記統計値が所定の基準値よりも低い歌唱区間を特定し、
前記不適正データ報知手段は、前記特定された歌唱区間について、当該楽曲のリファレンスデータが不適正である旨の報知を行う、
ことを特徴とする不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システム。
【請求項2】
利用者別歌唱採点値記憶手段と、高採点値利用者特定手段をさらに備え、
前記利用者別歌唱採点値記憶手段は、利用者毎に前記歌唱採点値を利用者別歌唱採点値として記憶し、
前記高採点値利用者特定手段は、前記利用者別歌唱採点値の統計値が基準値以上の利用者を特定し、
前記歌唱採点値統計手段は、前記特定された利用者のみについて、前記歌唱採点値の統計値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の不適正な歌唱採点リファレンスデータ報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247730(P2012−247730A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121439(P2011−121439)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】