不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエーテルを含有する被覆剤
組成物が、a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される不飽和ポリエステル樹脂、b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)ならびにc)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、あるいはそのモノエステルまたはジエステルを含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比が1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする、標準条件(20℃、1bar)下で液体の組成物の被覆剤としての使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物の被覆材料としての使用に関し、この場合、この組成物は、
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比は1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする。
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂をベースとする溶剤不含の、放射線硬化可能な被覆剤は、しばしば反応性希釈剤を含有する。反応性希釈剤は、ポリエステル樹脂のための溶剤として、および/または所望の粘度の調整のために使用される。反応性希釈剤は、不飽和ポリエステル樹脂との組合せとして、たとえばスチレンまたは(メタ)アクリルモノマーが知られている。
【0003】
スチレンまたは(メタ)アクリルエステル中のポリエステル樹脂の溶解性はしばしば制限され、その結果、不所望の大量の反応性希釈剤が必要とされる。さらに(メタ)アクリルモノマーはしばしば感受性に作用する。
【0004】
不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルの組合せは、WO 00/78833中で成形体の製造に関して記載されている。
【0005】
ビニルエーテルを含有することができる放射線硬化可能な被覆材料は、US 6063864およびUS 6470897から知られている。
【0006】
US 6063864は、不飽和ポリエステル樹脂以外に、必須のスチレンおよびビニルエーテルを含有する、放射線硬化可能な被覆材料を開示している。
【0007】
US 5470 897は、(メタ)アクリルモノマーまたはビニルエーテルを含有する被覆材料を開示している。実施例において、(メタ)アクリルモノマー(1,4−ブタンジオールジメタクリレート)のみを使用している。(メタ)アクリルモノマーの最小量は5質量%である。硬化方法として、この記載において、代替的に熱硬化法と放射線硬化法が挙げられている。不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルを含有し、かつ反応性の光線によって照射することにより硬化する被覆材料については示されていない。
【0008】
本発明の課題は、不飽和ポリエステルおよび反応性希釈剤をベースとする放射線硬化可能な被覆材料を提供することであり、この場合、この材料は、良好な適用技術的特性を有する。同時に、使用された反応性希釈剤は、ポリエステル樹脂を可能な限り良好に溶解するものでなければならない。
【0009】
これに応じて、冒頭に定義された使用が見出された。
【0010】
不飽和ポリエステル、ビニルエーテルおよびα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸またはそのモノエステルまたはジエステルの用語は、以下、常に、それぞれ異なる不飽和ポリエステル樹脂の混合物、異なるビニルエーテルの混合物、ならびに異なるα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸またはそのモノエステルまたはジエステルの混合物であると理解される。
【0011】
不飽和ポリエステル樹脂a)は、ポリカルボン、特にジカルボン酸のポリエステル、およびポリオール、特にジオールであり、その際、構成成分として必須に、少なくとも1種のα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸を一緒に使用する。α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸として、特にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸を考慮することができ;この化合物は、エステル化の際に可能である場合には、無水物としても使用することができる。特に好ましくは、特にマレイン酸無水物として使用される。
【0012】
α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸の他に、不飽和ポリエステル樹脂はさらなるポリカルボン酸またはその誘導体、たとえば低分子量モノアルコールの無水物またはエステルを構成成分として含有していてもよい。たとえば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、ジシクロペンタンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、アクリル酸またはマレイン酸との樹脂酸付加物、およびさらにこれらポリカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0013】
ポリカルボン酸の反応成分は、ポリオール、特にジオール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール−1,3;2−メチルプロパンジオール−1,3;ブタンジオール−1,4;ネオペンチルグリコール;エチルブチルプロパンジオールおよびさらには前記のネオジオール(ジアルキルプロパンジオール−1,3,アルキルフェニルプロパンジオール−1,3);ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチル−グリコールエステル(HPN)、ペンタンジオール−1,5;2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3;ヘキサンジオール−1,6、トリメチルヘキサジオール、ダイマージオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジメチロールトリシクロデカン、ペルヒドロ−ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールAである。しかしながらさらに、高級ポリオール、たとえばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジ−ペンタエリトリット、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用することができる。
【0014】
不飽和ポリエステルはさらにモノカルボン酸を構成成分として含有していてもよく、したがってこれは鎖末端に存在し、それというのも専らエステル化が可能であるためである。特に2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸および他のコッホ合成またはオキソ合成により合成的に製造可能なモノカルボン酸、ペラルゴン酸、ヤシ油酸、シュロ核油酸および獣脂の蒸留画分、またはさらに不飽和脂肪酸である。モノカルボン酸は、通常、高級ポリオールとの化合物の形で使用される。これはさらに混合物を使用することができる。好ましい実施態様は、飽和モノカルボン酸のグリシドエステルの使用であり、その際、グリシドエステル基によって後にさらに反応させ、かつさらなる化合物の結合が可能である。不飽和ポリエステル樹脂はさらにヒドロキシカルボン酸またはその誘導体を含有することができ、たとえばヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ヒドロキシステアリン酸であってもよい。
【0015】
不飽和ポリエステルは、特に0〜40mgKOH/g、好ましくは10〜35mgKOH/gの酸価を有し、この数平均分子量は450〜8000g/mol、好ましくは800〜3000g/molを有する。α−オレフィン性二重結合のモル量に対する当量は、特に170〜1100g/mol、好ましくは200〜800g/molであり;α−オレフィン二重結合の含量に基づいて、ポリエステル中に含まれるα−オレフィン不飽和ポリカルボン酸の質量の、不飽和ポリエステル1モルに対する当量がさらに得られる。
【0016】
不飽和ポリエステルは、通常の文献に記載された方法にしたがって製造することができる。
【0017】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物は、不飽和ポリエステル樹脂の他に、ビニルエーテル基を含む必須の化合物b)(ビニルエーテルと略す)を含有する。
【0018】
特にビニルエーテルは、1種または2種のビニルエーテル基を有するビニルエーテルである(モノビニルエーテルまたはジビニルエーテル)。
【0019】
ビニルエーテルのモル質量は、特に500g/mol未満である。
【0020】
特に好ましくは、ビニルエーテルb)はジビニルエーテルであるか、あるいはジビニルエーテルとモノビニルエーテルとの混合物である。
【0021】
特にビニルエーテルは、ビニルエーテル基および場合によるさらなるエーテル基以外に、他の官能基を含有しない脂肪族化合物または脂環式化合物である。
【0022】
ビニルエーテル(b)は、たとえば種々のアルカノール(モノアルコールおよびポリオール)とアセチレンとの反応混合物であってもよい。モノビニルエーテルとして、特にエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert.−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキヂブチルビニルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンのモノビニルエーテルを考慮することができる。
【0023】
ポリオール、特にジオールのビニルエーテルとして、たとえば以下のものが挙げられる:ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジビニルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジビニルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジビニルエーテル。
【0024】
液体組成物中のビニルエーテルの含量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して特に1〜100質量部である。ビニルエーテルの最小量は、100質量部のポリエステル樹脂に対して少なくとも5質量部、および特に好ましくは少なくとも10質量部である。100質量部のポリエステル樹脂に対して最大50質量部のビニルエーテル含量を有する。
【0025】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物は、場合によっては化合物c)を含有することができる。化合物c)は、α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、またはそのモノエステルまたはジエステルである。このα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸は、不飽和ポリエステル樹脂のための構成成分として使用される(上記参照)のと同じα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいは、これら不飽和ポリカルボン酸の相当するモノエステルまたはジエステルである。
【0026】
モノエステルまたはジエステルは、特に前記ジカルボン酸、特にマレイン酸と、脂肪族モノアルコール、特にC1〜C10−アルカノールまたはシクロアルカノール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールとのエステルであるか、あるいはさらに相当するアルコキシ化アルコールのアルコキシ基含有エステルである。
【0027】
好ましい化合物c)は、α−オレフィン性不飽和ジカルボン酸、特にマレイン酸のモノエステルまたはジエステルである。特に好ましくはジエステルである。
【0028】
液体組成物の構成成分a)、b)およびc)の量は、a)から成るα−不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とが1.3:1〜0.8:1のモル比、特に1.2:1〜0.9:1のモル比、および特に好ましくは1.1:1〜0.95:1のモル比である。特に好ましい実施態様においてこの量は等モルである。
【0029】
したがって、ポリエステルa)中のα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸の含量およびビニルエーテルb)の添加量に基づいて、化合物c)の量は、前記条件を充足するよう選択される。
【0030】
特に液体組成物は、化合物c)を含有する。したがって、化合物c)の含量は特に、100質量部の不飽和ポリエステル樹脂に対して1〜20質量部である。
【0031】
液体組成物は、化合物a)、b)およびc)以外にさらなる構成成分を含有してもよい。
【0032】
さらなる皮膜形成成分を考慮することができ、この場合、これは、成分a)、b)およびc)と一緒になって結合剤として役立ち、かつ硬化後に一緒になってポリマーフィルムを形成する。
【0033】
この種の皮膜形成分は、特にさらなるポリマー、特に放射線硬化可能なポリマー、たとえばアクリル基またはさらに他の反応性希釈剤を含むものであってもよい。
【0034】
さらなる反応性希釈剤として、たとえばビニル化合物、たとえばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドンおよびジビニルエチレン尿素が挙げられる。
【0035】
好ましい実施態様において、組成物のすべての皮膜形成成分の少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%、とりわけ好ましくは少なくとも95質量%は、不飽和ポリエステル樹脂a)、ビニルエーテルb)および場合によっては化合物c)である。
【0036】
反応性希釈剤、たとえばスチレンであるか、あるいは1個またはそれ以上のアクリル基またはメタアクリル基を有する室温で液体のモノマー((メタ)アクリルモノマー)は、液体組成物中では必要とされない。
【0037】
したがって、特に液体組成物はスチレンを1質量%未満含有し、特にはスチレンを含有しない。
【0038】
したがって、特に液体組成物は5質量%未満、特に2質量%未満の(メタ)アクリルモノマーを含有し;特に好ましくは(メタ)アクリルモノマーを含有しない。
【0039】
組成物の他の構成成分として、たとえば光開始剤、顔料、適用挙動を改善させるための添加剤、皮膜形成剤および皮膜安定化剤、これに関してさらに適したUV吸収剤が考慮される。
【0040】
組成物は、さらに溶剤を含有することができ、これは水または有機溶剤であってもよい。しかしながら本発明の範囲において、この種の溶剤は必要不可欠なものではなく;所望の粘度はこの種の溶剤なしで調整することができる。したがって組成物は、特に10質量%未満、特に5質量%未満、および特に好ましくは3質量%未満の水または有機溶剤を含有する。特に好ましい実施態様において、組成物は水または有機溶剤を含有するものではない。
【0041】
特に、組成物の硬化は、エネルギー光線、特にUV光線の照射によって実施される。したがって組成物は、特に光開始剤を含有する。
【0042】
UV光線による架橋のために、好ましい実施態様において、皮膜形成成分の全量に対して0.5〜5.0%(好ましくは0.5〜3.0%)のラジカル作用性UV開始剤(場合によってはUV感受剤との組合せで)と0〜2%のカチオン作用性UV開始剤とから成る混合物を使用する。
【0043】
ラジカル作用性UV開始剤は、たとえばベンゾフェノン(しばしば第3級アミン、たとえばN−メチルジエタノールアミンとの組合せ物で使用される)、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、モノ−およびビス−ベンゾイルホスフィンオキシドである。
【0044】
カチオン作用性UV開始剤は、たとえばテトラフルオロホウ酸またはヘキサフルオロリン酸のアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨード塩、トリアルールスルホニウム塩である。
【0045】
UV光線なしでのラジカル開始架橋に関しては、開始剤として公知の過酸化物が、促進剤としてのレドックス系、たとえば金属塩および第3級アミンとの組合せで適しており、たとえばメチルエチルケトンペルオキシドとコバルトオクトエート、またはベンゾイルペルオキシドとジメチルベンジルアミンである。
【0046】
特に、液体組成物の硬化は、エネルギー光線での照射によって実施する。これに関して組成物を被覆すべき表面上に塗布し、引き続いて被覆の硬化を、エネルギー光線、特にUV光線での照射によって実施する。
【0047】
液体組成物は、種々の表面および種々の用途のための被覆剤として役立つ。これは、たとえば木材、紙、プラスチックまたは金属からなる表面を被覆することができる。この組成物は、たとえばラッカーとして、これは腐蝕保護剤として、装飾用ラッカーとして、保護ラッカーとして、有色ラッカーまたはクリアラッカーとして、あるいは印刷インキとして役立つ。
【0048】
本発明による組成物または本発明による使用は、硬化の際の高い反応性に関して要求される条件を充足する。UV硬化は、空気酸素によってはほとんど阻害されない。高い層厚は、十分かつ均一な架橋をもたらす。皮膜形成剤の組合せは、さらに種々の有色UVラッカーのために使用される。
【0049】
さらに通常のラジカル開始剤および促進剤を用いての熱架橋を、極めて効果的に実施することができる。
【0050】
一般に、組成物は少ない粘度を有し、かつ硬化後に良好な適用技術的特性、たとえば良好な弾性、良好な付着性、良好な溶剤耐性および良好な化学薬品耐性を有する被覆を生じる。生理学的に懸念される成分、たとえばスチレンについては排除することができる。
【0051】
実施例:
1.不飽和ポリエステル樹脂の製造および溶解
制御可能な電気抵抗加熱器;生成物温度制御器;保護ガス装入口;常用の無段階制御可能な攪拌装置;塔頂温度測定器を備えた充填塔;上行型水分離装置(その際、水分離装置は共留剤(シクロヘキサン)で満たされている)および還流冷却器を備えた実験室用反応器中で、223.3g(2.94mol)のプロパンジオール−1,2;254.6g(2.44mol)のネオペンチルグリコール;239.9g(2.44mol)の無水マレイン酸;362.2g(2.44mol)の無水フタル酸、開始剤としての0.05gのヒドロキノンを、共留剤としての20gのシクロヘキサンと一緒に計量供給した。この混合物を、保護ガスとしての窒素の装入下で約150℃に加熱した。その後にこの温度を180℃までゆっくり上昇させ、それにより、共留剤および分離される水を規則的に蒸留した。反応混合物の酸価が35mgKOH/gを下回るまで(予め中和したエタノールおよびキシレン(2:1)から成る混合物中に溶解した試料を、フェノールフタレインに対して0.5モルの苛性カリアルコール溶液で滴定することにより測定したもの)、180℃に維持した。その後に、実験室用反応器をショートパス運転(下行型蒸留ブリッジ)に切り替え、かつ共留剤および残りの水を留去した。その後にこれを冷却した。ポリエステル樹脂は、25mgKOH/gの酸価およびコーンプレート粘度計中で150℃で測定された2.2−Pa・sの粘度および442g/molの当量を有していた。
【0052】
90℃の温度で、その後に少量のエタノール中に溶解された0.5gのヒドロキノンを添加し、かつその後に不飽和ポリエステルの溶融物を、330gのブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル(71g/mol当量、モル質量142g/mol)中に溶解し、これに関して、この温度は60℃を下回って維持された。その後に、これをさらに冷却した。これは、ビニルエーテル中に不飽和ポリエステルの75%濃度の溶液を生じ、この場合、これは23℃で、コーンプレート粘度計中で測定された粘度39Pa・sを有しており、これは十分に貯蔵安定性である。
【0053】
2.UV架橋のための被覆剤の製造
実施例1により製造された不飽和ポリエステル樹脂(0.34当量)の、ブタンジオールジビニルエーテル(0.70当量)中の溶液200gに対して、50gのマレイン酸ジエチル(それぞれの不飽和基の量に対して0.29等量)を混合する。マレイン酸エステルの合計の当量比は、ビニルエーテルの当量に対して0.9/1.0である。これはその後に、5gの市販のラジカル作用性UV開始剤(Irgacure 500(Ciba Spezialitatenchemie)、これは50%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと50%のベンゾフェノンとの混合物である)および0.12gの市販のカチオン作用性UV開始剤(Irgacure 250(Ciba Spezialitatenchemie)、これは4−メチルフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートである)を添加する。被覆剤は、60質量%のポリエステルの濃度で、0.51Pa・s(コーンプレート粘度計、26.5℃)の粘度を有している。
【0054】
3.比較例
実施例1で記載した不飽和ポリエステル樹脂を、UVラッカーに一般に使用されている反応性希釈剤(ここではトリプロピレングリコールジアクリレートを使用する)中に溶解し、その結果、70%濃度の溶液が26Pa・sの粘度で、かつ60%濃度の溶液が7Pa・sの粘度で(コーンプレート粘度計)得られた;したがってはるかに高い粘性で得られる。
【0055】
4.適用
実施例2で記載した被覆剤を、ドクターブレードでガラスプレート上に、層厚100μmの湿性フィルムの形で塗布し、かつその後に、UV硬化のための実験室用装置Aktiprint Mini上で、水銀ランプを用いて、かつ80W/cmの照射で、かつ5および10サイクルで2m/分の送りで硬化させた。この被覆は完全に硬化し、かつ良好な適用技術的特性を有していた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物の被覆材料としての使用に関し、この場合、この組成物は、
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比は1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする。
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂をベースとする溶剤不含の、放射線硬化可能な被覆剤は、しばしば反応性希釈剤を含有する。反応性希釈剤は、ポリエステル樹脂のための溶剤として、および/または所望の粘度の調整のために使用される。反応性希釈剤は、不飽和ポリエステル樹脂との組合せとして、たとえばスチレンまたは(メタ)アクリルモノマーが知られている。
【0003】
スチレンまたは(メタ)アクリルエステル中のポリエステル樹脂の溶解性はしばしば制限され、その結果、不所望の大量の反応性希釈剤が必要とされる。さらに(メタ)アクリルモノマーはしばしば感受性に作用する。
【0004】
不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルの組合せは、WO 00/78833中で成形体の製造に関して記載されている。
【0005】
ビニルエーテルを含有することができる放射線硬化可能な被覆材料は、US 6063864およびUS 6470897から知られている。
【0006】
US 6063864は、不飽和ポリエステル樹脂以外に、必須のスチレンおよびビニルエーテルを含有する、放射線硬化可能な被覆材料を開示している。
【0007】
US 5470 897は、(メタ)アクリルモノマーまたはビニルエーテルを含有する被覆材料を開示している。実施例において、(メタ)アクリルモノマー(1,4−ブタンジオールジメタクリレート)のみを使用している。(メタ)アクリルモノマーの最小量は5質量%である。硬化方法として、この記載において、代替的に熱硬化法と放射線硬化法が挙げられている。不飽和ポリエステルおよびビニルエーテルを含有し、かつ反応性の光線によって照射することにより硬化する被覆材料については示されていない。
【0008】
本発明の課題は、不飽和ポリエステルおよび反応性希釈剤をベースとする放射線硬化可能な被覆材料を提供することであり、この場合、この材料は、良好な適用技術的特性を有する。同時に、使用された反応性希釈剤は、ポリエステル樹脂を可能な限り良好に溶解するものでなければならない。
【0009】
これに応じて、冒頭に定義された使用が見出された。
【0010】
不飽和ポリエステル、ビニルエーテルおよびα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸またはそのモノエステルまたはジエステルの用語は、以下、常に、それぞれ異なる不飽和ポリエステル樹脂の混合物、異なるビニルエーテルの混合物、ならびに異なるα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸またはそのモノエステルまたはジエステルの混合物であると理解される。
【0011】
不飽和ポリエステル樹脂a)は、ポリカルボン、特にジカルボン酸のポリエステル、およびポリオール、特にジオールであり、その際、構成成分として必須に、少なくとも1種のα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸を一緒に使用する。α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸として、特にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸を考慮することができ;この化合物は、エステル化の際に可能である場合には、無水物としても使用することができる。特に好ましくは、特にマレイン酸無水物として使用される。
【0012】
α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸の他に、不飽和ポリエステル樹脂はさらなるポリカルボン酸またはその誘導体、たとえば低分子量モノアルコールの無水物またはエステルを構成成分として含有していてもよい。たとえば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、ジシクロペンタンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、アクリル酸またはマレイン酸との樹脂酸付加物、およびさらにこれらポリカルボン酸の混合物が挙げられる。
【0013】
ポリカルボン酸の反応成分は、ポリオール、特にジオール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール−1,3;2−メチルプロパンジオール−1,3;ブタンジオール−1,4;ネオペンチルグリコール;エチルブチルプロパンジオールおよびさらには前記のネオジオール(ジアルキルプロパンジオール−1,3,アルキルフェニルプロパンジオール−1,3);ヒドロキシピバリン酸−ネオペンチル−グリコールエステル(HPN)、ペンタンジオール−1,5;2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3;ヘキサンジオール−1,6、トリメチルヘキサジオール、ダイマージオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジメチロールトリシクロデカン、ペルヒドロ−ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールAである。しかしながらさらに、高級ポリオール、たとえばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジ−ペンタエリトリット、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用することができる。
【0014】
不飽和ポリエステルはさらにモノカルボン酸を構成成分として含有していてもよく、したがってこれは鎖末端に存在し、それというのも専らエステル化が可能であるためである。特に2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸および他のコッホ合成またはオキソ合成により合成的に製造可能なモノカルボン酸、ペラルゴン酸、ヤシ油酸、シュロ核油酸および獣脂の蒸留画分、またはさらに不飽和脂肪酸である。モノカルボン酸は、通常、高級ポリオールとの化合物の形で使用される。これはさらに混合物を使用することができる。好ましい実施態様は、飽和モノカルボン酸のグリシドエステルの使用であり、その際、グリシドエステル基によって後にさらに反応させ、かつさらなる化合物の結合が可能である。不飽和ポリエステル樹脂はさらにヒドロキシカルボン酸またはその誘導体を含有することができ、たとえばヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ヒドロキシステアリン酸であってもよい。
【0015】
不飽和ポリエステルは、特に0〜40mgKOH/g、好ましくは10〜35mgKOH/gの酸価を有し、この数平均分子量は450〜8000g/mol、好ましくは800〜3000g/molを有する。α−オレフィン性二重結合のモル量に対する当量は、特に170〜1100g/mol、好ましくは200〜800g/molであり;α−オレフィン二重結合の含量に基づいて、ポリエステル中に含まれるα−オレフィン不飽和ポリカルボン酸の質量の、不飽和ポリエステル1モルに対する当量がさらに得られる。
【0016】
不飽和ポリエステルは、通常の文献に記載された方法にしたがって製造することができる。
【0017】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物は、不飽和ポリエステル樹脂の他に、ビニルエーテル基を含む必須の化合物b)(ビニルエーテルと略す)を含有する。
【0018】
特にビニルエーテルは、1種または2種のビニルエーテル基を有するビニルエーテルである(モノビニルエーテルまたはジビニルエーテル)。
【0019】
ビニルエーテルのモル質量は、特に500g/mol未満である。
【0020】
特に好ましくは、ビニルエーテルb)はジビニルエーテルであるか、あるいはジビニルエーテルとモノビニルエーテルとの混合物である。
【0021】
特にビニルエーテルは、ビニルエーテル基および場合によるさらなるエーテル基以外に、他の官能基を含有しない脂肪族化合物または脂環式化合物である。
【0022】
ビニルエーテル(b)は、たとえば種々のアルカノール(モノアルコールおよびポリオール)とアセチレンとの反応混合物であってもよい。モノビニルエーテルとして、特にエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert.−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキヂブチルビニルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンのモノビニルエーテルを考慮することができる。
【0023】
ポリオール、特にジオールのビニルエーテルとして、たとえば以下のものが挙げられる:ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジビニルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジビニルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジビニルエーテル。
【0024】
液体組成物中のビニルエーテルの含量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して特に1〜100質量部である。ビニルエーテルの最小量は、100質量部のポリエステル樹脂に対して少なくとも5質量部、および特に好ましくは少なくとも10質量部である。100質量部のポリエステル樹脂に対して最大50質量部のビニルエーテル含量を有する。
【0025】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物は、場合によっては化合物c)を含有することができる。化合物c)は、α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、またはそのモノエステルまたはジエステルである。このα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸は、不飽和ポリエステル樹脂のための構成成分として使用される(上記参照)のと同じα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいは、これら不飽和ポリカルボン酸の相当するモノエステルまたはジエステルである。
【0026】
モノエステルまたはジエステルは、特に前記ジカルボン酸、特にマレイン酸と、脂肪族モノアルコール、特にC1〜C10−アルカノールまたはシクロアルカノール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールとのエステルであるか、あるいはさらに相当するアルコキシ化アルコールのアルコキシ基含有エステルである。
【0027】
好ましい化合物c)は、α−オレフィン性不飽和ジカルボン酸、特にマレイン酸のモノエステルまたはジエステルである。特に好ましくはジエステルである。
【0028】
液体組成物の構成成分a)、b)およびc)の量は、a)から成るα−不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とが1.3:1〜0.8:1のモル比、特に1.2:1〜0.9:1のモル比、および特に好ましくは1.1:1〜0.95:1のモル比である。特に好ましい実施態様においてこの量は等モルである。
【0029】
したがって、ポリエステルa)中のα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸の含量およびビニルエーテルb)の添加量に基づいて、化合物c)の量は、前記条件を充足するよう選択される。
【0030】
特に液体組成物は、化合物c)を含有する。したがって、化合物c)の含量は特に、100質量部の不飽和ポリエステル樹脂に対して1〜20質量部である。
【0031】
液体組成物は、化合物a)、b)およびc)以外にさらなる構成成分を含有してもよい。
【0032】
さらなる皮膜形成成分を考慮することができ、この場合、これは、成分a)、b)およびc)と一緒になって結合剤として役立ち、かつ硬化後に一緒になってポリマーフィルムを形成する。
【0033】
この種の皮膜形成分は、特にさらなるポリマー、特に放射線硬化可能なポリマー、たとえばアクリル基またはさらに他の反応性希釈剤を含むものであってもよい。
【0034】
さらなる反応性希釈剤として、たとえばビニル化合物、たとえばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドンおよびジビニルエチレン尿素が挙げられる。
【0035】
好ましい実施態様において、組成物のすべての皮膜形成成分の少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%、とりわけ好ましくは少なくとも95質量%は、不飽和ポリエステル樹脂a)、ビニルエーテルb)および場合によっては化合物c)である。
【0036】
反応性希釈剤、たとえばスチレンであるか、あるいは1個またはそれ以上のアクリル基またはメタアクリル基を有する室温で液体のモノマー((メタ)アクリルモノマー)は、液体組成物中では必要とされない。
【0037】
したがって、特に液体組成物はスチレンを1質量%未満含有し、特にはスチレンを含有しない。
【0038】
したがって、特に液体組成物は5質量%未満、特に2質量%未満の(メタ)アクリルモノマーを含有し;特に好ましくは(メタ)アクリルモノマーを含有しない。
【0039】
組成物の他の構成成分として、たとえば光開始剤、顔料、適用挙動を改善させるための添加剤、皮膜形成剤および皮膜安定化剤、これに関してさらに適したUV吸収剤が考慮される。
【0040】
組成物は、さらに溶剤を含有することができ、これは水または有機溶剤であってもよい。しかしながら本発明の範囲において、この種の溶剤は必要不可欠なものではなく;所望の粘度はこの種の溶剤なしで調整することができる。したがって組成物は、特に10質量%未満、特に5質量%未満、および特に好ましくは3質量%未満の水または有機溶剤を含有する。特に好ましい実施態様において、組成物は水または有機溶剤を含有するものではない。
【0041】
特に、組成物の硬化は、エネルギー光線、特にUV光線の照射によって実施される。したがって組成物は、特に光開始剤を含有する。
【0042】
UV光線による架橋のために、好ましい実施態様において、皮膜形成成分の全量に対して0.5〜5.0%(好ましくは0.5〜3.0%)のラジカル作用性UV開始剤(場合によってはUV感受剤との組合せで)と0〜2%のカチオン作用性UV開始剤とから成る混合物を使用する。
【0043】
ラジカル作用性UV開始剤は、たとえばベンゾフェノン(しばしば第3級アミン、たとえばN−メチルジエタノールアミンとの組合せ物で使用される)、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、モノ−およびビス−ベンゾイルホスフィンオキシドである。
【0044】
カチオン作用性UV開始剤は、たとえばテトラフルオロホウ酸またはヘキサフルオロリン酸のアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨード塩、トリアルールスルホニウム塩である。
【0045】
UV光線なしでのラジカル開始架橋に関しては、開始剤として公知の過酸化物が、促進剤としてのレドックス系、たとえば金属塩および第3級アミンとの組合せで適しており、たとえばメチルエチルケトンペルオキシドとコバルトオクトエート、またはベンゾイルペルオキシドとジメチルベンジルアミンである。
【0046】
特に、液体組成物の硬化は、エネルギー光線での照射によって実施する。これに関して組成物を被覆すべき表面上に塗布し、引き続いて被覆の硬化を、エネルギー光線、特にUV光線での照射によって実施する。
【0047】
液体組成物は、種々の表面および種々の用途のための被覆剤として役立つ。これは、たとえば木材、紙、プラスチックまたは金属からなる表面を被覆することができる。この組成物は、たとえばラッカーとして、これは腐蝕保護剤として、装飾用ラッカーとして、保護ラッカーとして、有色ラッカーまたはクリアラッカーとして、あるいは印刷インキとして役立つ。
【0048】
本発明による組成物または本発明による使用は、硬化の際の高い反応性に関して要求される条件を充足する。UV硬化は、空気酸素によってはほとんど阻害されない。高い層厚は、十分かつ均一な架橋をもたらす。皮膜形成剤の組合せは、さらに種々の有色UVラッカーのために使用される。
【0049】
さらに通常のラジカル開始剤および促進剤を用いての熱架橋を、極めて効果的に実施することができる。
【0050】
一般に、組成物は少ない粘度を有し、かつ硬化後に良好な適用技術的特性、たとえば良好な弾性、良好な付着性、良好な溶剤耐性および良好な化学薬品耐性を有する被覆を生じる。生理学的に懸念される成分、たとえばスチレンについては排除することができる。
【0051】
実施例:
1.不飽和ポリエステル樹脂の製造および溶解
制御可能な電気抵抗加熱器;生成物温度制御器;保護ガス装入口;常用の無段階制御可能な攪拌装置;塔頂温度測定器を備えた充填塔;上行型水分離装置(その際、水分離装置は共留剤(シクロヘキサン)で満たされている)および還流冷却器を備えた実験室用反応器中で、223.3g(2.94mol)のプロパンジオール−1,2;254.6g(2.44mol)のネオペンチルグリコール;239.9g(2.44mol)の無水マレイン酸;362.2g(2.44mol)の無水フタル酸、開始剤としての0.05gのヒドロキノンを、共留剤としての20gのシクロヘキサンと一緒に計量供給した。この混合物を、保護ガスとしての窒素の装入下で約150℃に加熱した。その後にこの温度を180℃までゆっくり上昇させ、それにより、共留剤および分離される水を規則的に蒸留した。反応混合物の酸価が35mgKOH/gを下回るまで(予め中和したエタノールおよびキシレン(2:1)から成る混合物中に溶解した試料を、フェノールフタレインに対して0.5モルの苛性カリアルコール溶液で滴定することにより測定したもの)、180℃に維持した。その後に、実験室用反応器をショートパス運転(下行型蒸留ブリッジ)に切り替え、かつ共留剤および残りの水を留去した。その後にこれを冷却した。ポリエステル樹脂は、25mgKOH/gの酸価およびコーンプレート粘度計中で150℃で測定された2.2−Pa・sの粘度および442g/molの当量を有していた。
【0052】
90℃の温度で、その後に少量のエタノール中に溶解された0.5gのヒドロキノンを添加し、かつその後に不飽和ポリエステルの溶融物を、330gのブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル(71g/mol当量、モル質量142g/mol)中に溶解し、これに関して、この温度は60℃を下回って維持された。その後に、これをさらに冷却した。これは、ビニルエーテル中に不飽和ポリエステルの75%濃度の溶液を生じ、この場合、これは23℃で、コーンプレート粘度計中で測定された粘度39Pa・sを有しており、これは十分に貯蔵安定性である。
【0053】
2.UV架橋のための被覆剤の製造
実施例1により製造された不飽和ポリエステル樹脂(0.34当量)の、ブタンジオールジビニルエーテル(0.70当量)中の溶液200gに対して、50gのマレイン酸ジエチル(それぞれの不飽和基の量に対して0.29等量)を混合する。マレイン酸エステルの合計の当量比は、ビニルエーテルの当量に対して0.9/1.0である。これはその後に、5gの市販のラジカル作用性UV開始剤(Irgacure 500(Ciba Spezialitatenchemie)、これは50%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと50%のベンゾフェノンとの混合物である)および0.12gの市販のカチオン作用性UV開始剤(Irgacure 250(Ciba Spezialitatenchemie)、これは4−メチルフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニル−ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートである)を添加する。被覆剤は、60質量%のポリエステルの濃度で、0.51Pa・s(コーンプレート粘度計、26.5℃)の粘度を有している。
【0054】
3.比較例
実施例1で記載した不飽和ポリエステル樹脂を、UVラッカーに一般に使用されている反応性希釈剤(ここではトリプロピレングリコールジアクリレートを使用する)中に溶解し、その結果、70%濃度の溶液が26Pa・sの粘度で、かつ60%濃度の溶液が7Pa・sの粘度で(コーンプレート粘度計)得られた;したがってはるかに高い粘性で得られる。
【0055】
4.適用
実施例2で記載した被覆剤を、ドクターブレードでガラスプレート上に、層厚100μmの湿性フィルムの形で塗布し、かつその後に、UV硬化のための実験室用装置Aktiprint Mini上で、水銀ランプを用いて、かつ80W/cmの照射で、かつ5および10サイクルで2m/分の送りで硬化させた。この被覆は完全に硬化し、かつ良好な適用技術的特性を有していた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物の被覆剤としての使用において、この組成物が、
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される、不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比が1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする、前記組成物の使用。
【請求項2】
液体組成物が、1質量%未満のスチレンを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
液体組成物が、5質量%未満の(メタ)アクリルモノマーを含有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
不飽和ポリエステル樹脂が、α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によっては飽和ポリカルボン酸および場合によってはモノカルボン酸から構成され、かつポリエステル樹脂1gあたり0〜45mgKOHの酸価を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリエステル樹脂が、450〜80000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
a)中のポリカルボン酸がマレイン酸であり、かつ化合物c)がマレイン酸、マレイン酸モノエステルまたはマレイン酸ジエステルである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
ビニルエーテルが、500g/mol未満のモル質量を有するモノビニルエーテルまたはジビニルエーテルである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ビニルエーテルが、少なくとも1種のジビニルエーテルであるか、あるいは場合による他のビニルエーテルとの混合物である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ビニルエーテルが、脂肪族化合物または脂環式化合物であり、この場合、これはビニルエーテル基および場合による他のエーテル基以外に他の官能基を含有しない、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
ビニルエーテルの含量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜100質量部である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
液体組成物が、少なくとも1種の化合物c)を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
化合物c)の含量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜20質量部である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
組成物のすべての皮膜形成成分の少なくとも80質量%が、不飽和ポリエステル樹脂a)、ビニルエーテルb)および場合によっては化合物c)である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
組成物が、光開始剤を含有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
組成物が、5質量%未満の水または有機溶剤を含有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物を、被覆すべき表面上に塗布し、かつ引き続いて硬化をエネルギー光線での照射により実施する、表面を被覆する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られる被覆された対象物。
【請求項18】
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される、不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比が1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする被覆剤。
【請求項1】
標準条件(20℃、1bar)で液体の組成物の被覆剤としての使用において、この組成物が、
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される、不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比が1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする、前記組成物の使用。
【請求項2】
液体組成物が、1質量%未満のスチレンを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
液体組成物が、5質量%未満の(メタ)アクリルモノマーを含有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
不飽和ポリエステル樹脂が、α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によっては飽和ポリカルボン酸および場合によってはモノカルボン酸から構成され、かつポリエステル樹脂1gあたり0〜45mgKOHの酸価を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリエステル樹脂が、450〜80000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
a)中のポリカルボン酸がマレイン酸であり、かつ化合物c)がマレイン酸、マレイン酸モノエステルまたはマレイン酸ジエステルである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
ビニルエーテルが、500g/mol未満のモル質量を有するモノビニルエーテルまたはジビニルエーテルである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ビニルエーテルが、少なくとも1種のジビニルエーテルであるか、あるいは場合による他のビニルエーテルとの混合物である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ビニルエーテルが、脂肪族化合物または脂環式化合物であり、この場合、これはビニルエーテル基および場合による他のエーテル基以外に他の官能基を含有しない、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
ビニルエーテルの含量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜100質量部である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
液体組成物が、少なくとも1種の化合物c)を含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
化合物c)の含量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜20質量部である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
組成物のすべての皮膜形成成分の少なくとも80質量%が、不飽和ポリエステル樹脂a)、ビニルエーテルb)および場合によっては化合物c)である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
組成物が、光開始剤を含有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
組成物が、5質量%未満の水または有機溶剤を含有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物を、被覆すべき表面上に塗布し、かつ引き続いて硬化をエネルギー光線での照射により実施する、表面を被覆する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られる被覆された対象物。
【請求項18】
a)α−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸、ポリオールおよび場合によってはさらなる化合物から構成される、不飽和ポリエステル樹脂、
b)ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテルと略す)、および
c)場合によってはα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸であるか、あるいはそのモノエステルまたはジエステル、
を含有し、その際、a)から成るα−オレフィン性不飽和ポリカルボン酸および場合によっては化合物c)の二重結合の合計と、ビニルエーテルb)の二重結合とのモル比が1.3:1〜0.8:1であることを特徴とする被覆剤。
【公表番号】特表2013−503218(P2013−503218A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525996(P2012−525996)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061899
【国際公開番号】WO2011/023583
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061899
【国際公開番号】WO2011/023583
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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