説明

不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物とそれらの製造方法

【課題】 本発明は、上記従来の技術が有する課題を解決することであり、これらチタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物などのような金属化合物を触媒主成分として含まない触媒を用いて重縮合した不飽和ポリエステル樹脂、すなわち、いわゆる重金属触媒ではなく、生産性の点でも問題のない速度で重縮合が可能な触媒を用いた、透明性、耐薬品性、色調および成形性に優れた不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂組成物及び前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いた成形体などを提供する。
【解決手段】 アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる一種以上を含む重縮合触媒を用いて重縮合した不飽和ポリエステル樹脂であって、不飽和ジカルボン酸が全カルボン酸成分の1〜80モル%であり、特定構造で表されるジオール化合物から選ばれる少なくとも一種が全グリコール成分の30〜100モル%であることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物などのような金属化合物を触媒主成分として用いない、主としてアルミニウム化合物からなる重縮合触媒を用いた、重縮合時にゲル化し難く、透明性、耐薬品性および色調に優れた不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂組成物及び前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いた成形体に関し、特に繊維強化プラスチック(以下、「FRP」と略す)に用いる不飽和ポリエステル樹脂組成物および前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いたFRP材に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂は、一般的に機械、電気、耐薬品性および施工作業性が優れているため、浄化槽、水タンク、浴槽などの住設機器、漁船、レジャー関係の器具、設備、例えば、ボート、ヨット等の船舶、耐食性機器、自動車分品等の各種用途に広く用いられている。また、塗料、化粧版、注形関係、などにも使用されている。不飽和ポリエステル樹脂を重合するにあたっては、カルボキシル基含有化合物とグリコールを用いて、脱水によるエステル化反応を利用する方法や、カルボン酸メチルエステルとグリコールを用いて、脱メタノールによるエステル交換反応を利用する方法が知られている。
【0003】
不飽和ポリエステルの重縮合には、通常エステル化やエステル交換反応を促進するための触媒が用いられる。特に、アンチモン化合物、チタン化合物(例えば、特許文献1参照)、ゲルマニウム化合物、スズ化合物(例えば、特許文献1、2、3、4参照)が良く用いられる。
これら触媒化合物は、触媒活性の観点から選択されているが、アンチモン化合物を使用すると樹脂の色相が全体に黒ずむこと、チタン化合物を使用すると黄色くなることが知られている。ゲルマニウム化合物については樹脂の色相は良好であるが、非常に高価であるという点で使用しにくい問題もある。ゲルマニウム化合物とチタン化合物に共通する問題であるが、重合の際生成する水分により触媒活性が低下し、重合時間が長くなったり、あるいは触媒の追加が必要になったりするという問題もある。また、スズ化合物は黄色くなるという問題がある。
【0004】
スズ化合物やアンチモン化合物等の重縮合触媒は、いわゆる重金属であり、これらを含まない耐薬品性に優れた不飽和ポリエステル樹脂が望まれている。
【特許文献1】特開平4−335024号公報
【特許文献2】特開昭57―164112号公報
【特許文献3】特開平8−143731号公報
【特許文献4】特開平10−1536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物などのような金属化合物を触媒主成分として用いない、主としてアルミニウム化合物からなる重縮合触媒を用いた、重縮合時にゲル化し難く、透明および色調に優れた不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂組成物などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、本発明を完成するに到った。即ち、本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる一種以上を含む重縮合触媒の存在下に重縮合した不飽和ポリエステル樹脂であって、不飽和ジカルボン酸が全カルボン酸成分の1〜80モル%であり、下記式(式1)で表されるジオール化合物から選ばれる少なくとも一種が全グリコール成分の30〜100モル%であることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂である。
【0007】
【化1】

【0008】
((式1)中、Aは2価の炭化水素基、2価の炭化フッ素基、−SO−、−CO−、−O−、又は直接結合、R,Rは炭素数2〜5のアルキレン基、m、nは1〜10である。)
【0009】
この場合において、前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、リン化合物から選ばれる少なくとも一種からなることができる。
この場合において、前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とからなることができる。
前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、リン化合物から選ばれる少なくとも一種、さらにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とからなることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【0010】
この場合において、前記アルミニウム化合物がカルボン酸含有化合物であることができる。
この場合において、前記リン化合物が、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、もしくは、ホスフィン系化合物のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
この場合において、前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属がLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも一種であることができる。
【0011】
この場合において、前記のいずれかの不飽和ポリエステル樹脂20〜80重量%とビニールモノマー80〜20重量%を含んでなる不飽和ポリエスエル樹脂とすることができる。
この場合において、前記不飽和ポリエステル樹脂を含む成形体であることができる。
この場合において、前記不飽和ポリエステル樹脂を含む積層体とすることができる。
【0012】
また、ジカルボン酸成分とジオール成分を主成分とし、不飽和ジカルボン酸成分が全カルボン酸成分の1〜80モル%であり、前記式(式1)で表されるジオール化合物から選ばれる少なくとも一種が全グリコール成分の30〜100モル%である不飽和ポリエステル樹脂の製造方法であって、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる一種以上を含む重縮合触媒を用いることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂の製造方法である。
さらにまた、前記の不飽和ポリエステル樹脂20〜80重量%とビニールモノマー80〜20重量%を混合することを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、いわゆる重金属触媒ではなく、生産性の点でも問題のない速度で重縮合が可能な触媒を用いた、エステル化時のエステル化速度が速く、重縮合時にゲル化し難く、透明および色調に優れた不飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる重縮合触媒を構成するアルミニウム化合物としては、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物は限定なく使用できる。
【0016】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0017】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるアルミニウム化合物の使用量としては、得られる不飽和ポリエステル樹脂のジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜1.0モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.5モル%である。このようにアルミニウム成分の添加量は、使用する多価カルボン酸およびジオールの種類やその組合せ、さらには重縮合方法によって大きく触媒活性が変動するため広い範囲が求められる。このことは他の重縮合触媒でも同様の傾向を示す。特に減圧下で重縮合を実施しない場合は重縮合触媒量を大幅に増加する必要がある。本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる重縮合触媒は十分な触媒活性を示すため、その結果、得られる不飽和ポリエステル樹脂の熱安定性や熱酸化安定性、耐加水分解性が優れ、アルミニウムに起因する異物の発生や着色が抑制される。
【0018】
以下に、アルミニウム化合物として、塩基性酢酸アルミニウムを用いた同溶液の調製方法の具体例を示す。
塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例としては、下記の通りである。すなわち、塩基性酢酸アルミニウムに水を加え室温で十分拡散させた後、室温〜100℃で溶解させることで水溶液を調製する。この場合の温度は低い方が好ましく、加熱は短い方が好ましい。水溶液の濃度は、10〜30g/lが好ましく、とくに15〜20g/lが好ましい。
【0019】
さらに、触媒添加時のヒートショックを抑制するために、塩基性酢酸アルミニウム水溶液を同エチレングリコール溶液にすることが好ましい態様である。すなわち、上述の水溶液に対してエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で0.5〜5.0倍量が好ましい。より好ましくは0.8〜2.0倍量である。該溶液を攪拌することで均一な水/エチレングリコール混合溶液を得た後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は70℃以上が好ましく、130℃以下が好ましい。より好ましくは80〜120℃で加熱・攪拌して水を留去することが好ましい。さらに好ましくは、減圧下および/または窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で加熱し、水を留去し触媒溶液を調製することである。
上記エチレングリコールは一例であって、他のアルキレングリコールも同様にして使用できる。
【0020】
上述の塩基性酢酸アルミニウムは水やグリコールなどの溶媒に可溶化したもの、とくに水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが触媒活性や得られる不飽和ポリエステル樹脂の異物低減の観点からも好ましい。
【0021】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる重縮合触媒を構成するリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるより好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、不飽和ポリエステル樹脂の熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0023】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(化2)〜(化7)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0031】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物としては、下記式(化8)〜(化13)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0039】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物としては、下記一般式(化14)〜(化16)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
(式(化14)〜(化16)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0044】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物としては、上記式(化14)〜(化16)中、R、R、R、Rが芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0045】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0046】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物がとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると本発明の課題である不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0047】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0048】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリンの金属塩化合物としては、下記一般式(化17)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0049】
【化17】

【0050】
(式(化17)中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0051】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0052】
上記一般式(化17)で表される化合物の中でも、下記一般式(化18)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0053】
【化18】

【0054】
(式(化18)中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0055】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0056】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0057】
上記式(化18)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0058】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0059】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物がとくに好ましい。これらのリン化合物を含有することで不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果がとくに高まることに加えて、不飽和ポリエステル樹脂の重縮合時に、これらのリン化合物を本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いるとアルミニウム化合物との錯体形成が容易になり、不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0060】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0061】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(化19)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0062】
【化19】

【0063】
(式(化19)中、Rは水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0064】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0065】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0066】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0067】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる好ましいリン化合物としては、化学式(化20)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0068】
【化20】

【0069】
(式(化20)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0070】
また、更に好ましくは、化学式(化20)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0071】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0072】
【化21】

【0073】
【化22】

【0074】
【化23】

【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

【0077】
【化26】

【0078】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物は、分子量が大きいものの方が重縮合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0079】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することで不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果が高まることに加えて、不飽和ポリエステル樹脂の重縮合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、従って不飽和ポリエステル樹脂の生産性に優れる。
【0080】
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果や触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0081】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(化27)〜(化29)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
(式(化27)〜(化29)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0086】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(化30)〜(化33)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(化32)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0087】
【化30】

【0088】
【化31】

【0089】
【化32】

【0090】
【化33】

【0091】
上記の式(化32)にて示される化合物としては、SANKO-220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0092】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化34)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0093】
【化34】

【0094】
(式(化34)中、R、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0095】
これらの中でも、下記一般式(化35)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0096】
【化35】

【0097】
(式(化35)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
【0098】
上記式(化34)または(化35)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0099】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0100】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化36)で表されるP-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0101】
【化36】

【0102】
(式(化36)中、R、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0103】
これらの中でも、下記一般式(化37)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0104】
【化37】

【0105】
(式(化37)中、Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0106】
上記のRとしては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0107】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0108】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化38)で表される特定のリン化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物が好ましい。
【0109】
【化38】

【0110】
(上記式(化38)中、R、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0111】
上記一般式(化38)の中でも、下記一般式(化39)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると不飽和ポリエステル樹脂の物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0112】
【化39】

【0113】
(上記式(化39)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0114】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CHCHOHで表される基などが挙げられる。
【0115】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0116】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明でとくに望ましい化合物は、化学式(化40)、(化41)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0117】
【化40】

【0118】
【化41】

【0119】
上記の化学式(化40)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化41)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0120】
本発明で使用することが好ましいその他のリン化合物としては、下記する(化42)、(化43)で表される連結基(X)を有するホスホン酸系化合物あるいは(化44)で表される連結基(X)を有さないホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0121】
【化42】

【0122】
[式(化42)中、Rは炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。Xは連結基であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、あるいは置換基を含有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、−O−、−OCH−、−SO−、−CO−、−COCH−、−CHOCO−、−NHCO−、−NH−、−NHCONH−、−NHSO−、−NHCOCHCHO−から選ばれる。また、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。]
【0123】
式(化42)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基、から選ばれる1種もしくは2種以上である。
【0124】
式(化42)で表されるリン化合物には次のようなものが挙げられる。具体的には、ベンジルホスホン酸、ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−ナフチルメチルホスホン酸、1−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ナフチルメチルホスホン酸、2−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、4−フェニル,ベンジルホスホン酸、4−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−フェニル,ベンジルホスホン酸、2−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸、4-クロル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸、4−メチル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸、4−アミノ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸、2−メチル, ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸、10−アンスラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸ジエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、その他、複素環を含有するリン化合物としては、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸などが挙げられる。上記の連結基を有するリン化合物は、重合活性の点で好ましい態様である。
【0125】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を有するその他の化合物としては式(化43)で表されるリン化合物が挙げられる。
【0126】
【化43】

【0127】
[式(化43)中、Rは、水酸基、C1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR(Rは、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基を表す(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)。Rはベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C4の炭化水素基、水酸基またはアルコシキル基を有するC1〜C4の炭化水素基を表す。mは1〜5の整数を表し、Rが複数個の場合、同一置換基あるいは異なる置換基の組合せであってもかまわない。nは0あるいは1〜5の整数を表す。]
【0128】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸などのベンゼン環に水酸基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0129】
また、2−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸モノメチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸、3−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸、4−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキルを導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0130】
さらに、2−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸、3−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸、4−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にカルボキル基あるいはカルボン酸エステル基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0131】
さらに、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノメチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキレングリコール基あるいはモノアルコキシ化アルキレングリコール基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられる。
【0132】
(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0133】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルモノエチルホスホン酸、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸などのナフタレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノアルコキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0134】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0135】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸などのビフェニル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0136】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0137】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0138】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0139】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニチオエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルチオエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0140】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルチオエーテルであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0141】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルスルホン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0142】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0143】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0144】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0145】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0146】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0147】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルケトン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0148】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0149】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルイルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸などのアンスラセン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0150】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0151】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸などのフェナントレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0152】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0153】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−n-ブチル)ピレニリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸などのピレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0154】
式(化43)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物は、上述した単一置換基種に限定されるものではなく、上述した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0155】
上記一連の芳香環に導入されるヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基などの置換基は、不飽和ポリエステル樹脂の重縮合時のアルミニウム原子との錯体形成に深く関わるものと推定される。また、不飽和ポリエステル樹脂形成時の官能基であるカルボキシル基あるいは水酸基と類似のものも含まれており、不飽和ポリエステル樹脂マトリックス中に溶解または取り込まれやすいため、重合活性、異物低減などに特に有効であると考えられる。
【0156】
芳香環構造(R)に結合したRが水素原子である未置換基に比べ、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるC1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR(Rは、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)で置換されたリン化合物は、触媒活性を改善するだけでなく、異物低減効果の点で好ましい。
芳香環構造に結合した置換基は、C1〜C10のアルキル基、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールなどが挙げられる。異物低減効果の点でより好ましくは、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールである。その理由は不明であるが、不飽和ポリエステル樹脂および触媒の媒体であるアルキレングリコールとの相溶性が改善されることによると推測している。
【0157】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を持たないリン化合物(化44)は次のようなものである。
【0158】
【化44】

【0159】
(Rは炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。)
式(化44)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基から選ばれる1種もしくは2種以上である。また、前記(化44)の芳香環構造がベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンから選ばれる。および前記複素環構造がフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、ナフタランおよびフタリドから選ばれる。また、上記式(化44)中のRおよびRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
【0160】
本発明で使用できる式(化44)で表されるリン化合物としては、下記のリン化合物などが挙げられる。すなわち、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸、(4−クロル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロル,)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロル)-フェニルホスホン酸、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−ニトロ)- フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ,6−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)-フェニルホスホン酸、その他、式(化43)で表されるリン化合物において、上述のベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を有するそれぞれの構造式から連結基であるメチレン鎖すなわち、−CH−を取り除いたリン化合物群、さらに複素環含有リン化合物として、5−ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸などが挙げられる。上述の連結基を有しないリン化合物は、前述の連結基を有するリン化合物に比べ重合活性は若干劣る場合もあるが、本発明の触媒調製法を使用した場合、不飽和ポリエステル樹脂重縮合触媒として使用することは可能である。
【0161】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物を併用することにより、不飽和ポリエステル樹脂重縮合触媒中のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を発揮する触媒が得られる。
【0162】
リン化合物は、ポリエステルの熱安定剤としては知られていたが、これらの化合物を従来の金属含有不飽和ポリエステル樹脂重縮合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重縮合を大きく促進することはこれまで知られていなかった。実際に、ポリエステル重縮合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重縮合触媒としてポリエステルを溶融重縮合する際に、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重縮合が促進されることは認められない。
【0163】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるリン化合物の使用量としては、得られる不飽和ポリエステル樹脂のポリカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜2.0モル%が好ましく、0.005〜1.0モル%であることがさらに好ましい。リン化合物の添加量が0.001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合があり、2.0モル%を超えて添加すると逆に不飽和ポリエステル樹脂重縮合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウムの使用量等により変化する。
【0164】
また一方で、本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0165】
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その使用量M(モル%)は、不飽和ポリエステル樹脂を構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10-6以上1.0モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10-6〜0.5モル%であり、さらに好ましくは1×10-5〜0.3モル%であり、特に好ましくは、1×10-5〜0.1モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の使用量Mが1.0モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10-6未満では、添加してもその効果が明確ではない。
【0166】
本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0167】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重縮合系に添加しなければならず重縮合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重縮合時に不飽和ポリエステル樹脂が加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重縮合した不飽和ポリエステル樹脂は着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられるアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、及び酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0168】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂には、さらに、コバルト化合物をコバルト原子として不飽和ポリエステル樹脂に対して10ppm未満の量で添加する事が好ましい態様である。
コバルト化合物はそれ自体ある程度の重合活性を有していることは知られているが、前述のように十分な触媒効果を発揮する程度に添加すると得られる不飽和ポリエステル樹脂の明るさの低下や熱安定性の低下が起こる。本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、色調並びに熱安定性が良好であるが、コバルト化合物を上記のような少量で添加による触媒効果が明確でないような添加量にて添加することにより、得られる不飽和ポリエステル樹脂の明るさの低下を起こすことなく着色をさらに効果的に消去できる。なお本発明におけるコバルト化合物は、着色の消去が目的であり、添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であってもかまわない。
【0169】
コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的にはたとえば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物などが挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水塩が好ましい。
【0170】
コバルト化合物の添加量は、最終的に得られるポリマーに対してアルミニウム原子とコバルト原子の合計が50ppm以下かつ、コバルト原子は10ppm未満となることが好ましい。より好ましくはアルミニウム原子とコバルト原子の合計が40ppm以下かつ、コバルト原子は8ppm以下、さらに好ましくはアルミニウム原子とコバルト原子の合計が25ppm以下かつ、コバルト原子は5ppm以下である。
不飽和ポリエステル樹脂の熱安定性の点から、アルミニウム原子とコバルト原子の合計が50ppmより少ないこと、コバルト原子が10ppm以下であることが好ましい。また、十分な触媒活性を有するためには、アルミニウム原子とコバルト原子の合計量が0.01ppmより多いことが好ましい。
【0171】
本発明に使用される触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。たとえば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重縮合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて本発明に使用される触媒を用いることもできる。また、本発明に使用される触媒は、溶融重縮合のみならず固相重合や溶液重縮合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によっても不飽和ポリエステル樹脂を製造することが可能である。
【0172】
本発明に使用される重縮合触媒は、重縮合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。たとえばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階あるいは重縮合反応の開始直前あるいは重縮合反応途中の任意の段階で反応系への添加することが出きる。特に、アルミニウムないしその化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
【0173】
本発明に使用される重縮合触媒は、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物などの他の重縮合触媒1種または2種以上を、これらの成分の添加が前述の様な不飽和ポリエステル樹脂の特性、加工性、色調など製品に問題が生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重縮合時間の短縮による生産性を向上させる際に有利であり、好ましい。
【0174】
ただし、アンチモン化合物としては重縮合して得られる不飽和ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加可能である。より好ましくは30ppm以下の量で添加することである。アンチモンの添加量を50ppmより多くすると、金属アンチモンの析出が起こり、不飽和ポリエステル樹脂に黒ずみや異物が発生するため好ましくない。
【0175】
チタン化合物としては重縮合して得られるポリマーに対して10ppm以下の範囲で添加する事が可能である。より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下の量で添加することである。チタンの添加量を10ppmより多くすると得られるレジンの熱安定性が著しく低下する。
【0176】
また、ゲルマニウム化合物は、重縮合して得られた不飽和ポリエステル樹脂中に残存するゲルマニウム原子の残存量として30ppm以下の量になるように添加可能である。より好ましい残存量は20ppm以下である。ゲルマニウムの残存量を30ppm以上にすると、コスト的に不利になるため好ましくない。
【0177】
本発明で用いられるアンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物およびスズ化合物は特に限定はない。
具体的には、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、これらのうち三酸化アンチモンが好ましい。
また、チタン化合物としてはテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、蓚酸チタンなどが挙げられ、これらのうちテトラ−n−ブトキシチタネートが好ましい。
【0178】
そしてゲルマニウム化合物としては二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、これらのうち二酸化ゲルマニウムが好ましい。
また、スズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアデテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0179】
本発明で用いられる重縮合触媒の添加方法は、粉末状ないしはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコールなどのグリコール類のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよく、特に限定されない。また、アルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、好ましくは本発明で用いられるリン化合物とを予め混合した混合物あるいは錯体として添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。またアルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、好ましくはリン化合物とを同じ添加時期に重縮合系に添加してもよく、それぞれの成分を別々の添加時期に添加してもよい。
【0180】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂に用いられる重縮合触媒の別の態様として、上記アルミニウム化合物のグリコール溶液/リン化合物のグリコール溶液にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属のグリコール溶液を併用して使用することも可能であることはいうまでもない。
【0181】
以下に、アルミニウム化合物として、塩基性酢酸アルミニウムを用いた場合の、エチレングリコール溶液の調製方法の具体例を示す。
【0182】
(1)アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液の調製例
塩基性酢酸アルミ二ウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;アルドリッチ社製)を20g/lの濃度で蒸留水に分散させ、攪拌下95℃で2時間加熱処理をして溶解させた。該水溶液に対して等量(容量比)のエチレングリコールを共にフラスコへ仕込み、減圧(133Pa)下、70〜90℃で攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
【0183】
(2)リン化合物のエチレングリコール溶液の調製例
リン化合物としてIrganox 1222(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)をエチレングリコールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で12時間加熱し、30g/lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
【0184】
(3)アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例
上記アルミニウム化合物の調製例1および上記リン化合物の調製例1で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、5時間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0185】
(4)アルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液の調製例
アルカリ金属化合物として酢酸リチウム(ナカライ(株)製、試薬特級)をエチレングリコールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら室温で30g/lのアルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液を調製した。)
【0186】
また、本発明の重合触媒の別の態様として、上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属のエチレングリコール溶液を併用して使用することも可能であることはいうまでもない。
【0187】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂を構成する不飽和ジカルボン酸は、不飽和ポリエステル樹脂を構成する全カルボン酸成分の1〜80モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%である。1モル%より少ないと耐食性や機械的特性が顕著に低下し問題であり、80モル%を超えると脆くなり問題である。
【0188】
本発明で用いられる不飽和ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸及びシトラコン酸、リノール酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸を挙げることができ、これらを1種あるいは2種以上を混合した形で使用することもできる。
【0189】
また、ジカルボン酸成分としては、前記α,β―不飽和ジカルボン酸でないジカルボン酸も用いることができる。これらジカルボン酸の好ましい例として、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸及びセバシン酸を挙げることができ、これらの酸成分を1種あるいは2種以上を混合した形で使用することもできる。これらジカルボン酸は、全カルボン酸成分の20〜99モル%の範囲で用いることが好ましい。
【0190】
本発明で用いられるその他のジカルボン酸としては、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル―4,4―ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン―p,p’―ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などに例示される脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
【0191】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂を構成する下記式(式1)で表されるジオール化合物は、全グリコール成分の30〜100モル%、好ましくは35〜95モル%、より好ましくは40〜90モル%である。30モル%未満では、耐蝕性や可撓性に優れた不飽和ポリエステル樹脂が得られないので好ましくない。
【化45】

【0192】
((式1)中、Aは2価の炭化水素基、2価の炭化フッ素基、−SO−、−CO−、−O−、又は直接結合、R,Rは炭素数2〜5のアルキレン基、m、nは1〜10である。)
【0193】
前記(式1)における基Aは、2価の炭化水素基、2価の炭化フッ素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)である。
【0194】
基Aが2価の炭化水素基の場合は、炭素数1〜8のアルキレン基、アルキリデン基、または2価の芳香族基であるのが好ましく、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、エチルエチレン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルメチレン基、1−メチルプロピリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンチリデン基、1−メチルブチリデン基、ペンタメチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチルプロピリデン基、トリメチルエチレン基、イソプロピルメチレン基、1−メチルブチリデン基、2,2−ジメチルプロピリデン基、ヘキサメチレン基、1−エチルブチリデン基、1,2−ジエチルエチレン基、1,3−ジメチルブチリデン基、エチルトリメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、1,1−シクロペンチリデン基、1,1−シクロヘキシリデン基、1,1−シクロヘプチリデン基、1,1−シクロオクチリデン基、ベンジリデン基、1,1−フェニルエチリデン基などを挙げることができる。
【0195】
基Aが2価の炭化フッ素基の場合は、炭素数1〜8のフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキリデン基が好ましく、具体的には、例えば、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、フルオロエチレン基、ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、1,1−ジトリフルオロメチルメチレン基などを挙げることができる。
【0196】
前記(式1)において、基R,基Rは炭素数2〜5のアルキレン基であるが、具体的にはエチレン基または1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチル基などであって、RとRが同一であっても異なっていてもよい。
【0197】
前記(式1)におけるmおよびnは、それぞれ独立して1〜10の整数であり、同じ数であってもまたは異なった数であってもよい。そのうちでも、mおよびnがそれぞれ独立して1または2であるのが、不飽和ポリエステル樹脂の溶融時の熱安定性が良好になる点から好ましい。
ただし、(式1)の化合物は、その合成法のため、付加するアルキレンオキサイドの数を目的とする整数に合わせるのは難しく、実際は付加数に幅を持つことになる。そのため、m、nは整数ではなく、アルキレンオキサイドの付加数の平均値で表されることがある。
【0198】
本発明で用いられる前記(式1)としては、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールF(4,4’−ジヒドロキシジフェニールメタン)のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS(4,4’−ジヒドロキシジフェニールスルフォン)のアルキレンオキサイド付加物、4,4’−ジヒドロキシジフェニールシクロヘキサンのアルキレンオキサイド付加物等が上げられ、これらを1種あるいは2種以上を混合した形で使用することができる。これらのうち、特に、共重合ポリエステルの製造コスト、製造の容易性、得られる共重合ポリエステルの溶融安定性などの点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の使用が好ましい。1分子あたりのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加数(つまりm+nの値)としては、平均2.0〜6.0が好ましい。より好ましいエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加数(つまりm+nの値)は、平均2.0〜4.0である。
【0199】
本発明で用いられる前記(式1)として、具体的化合物名は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−2−[4’−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−[4’−(2−ヒドロキシエトキシ(フェニル]スルホン、ビス{4−[2’−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−1−[4’−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}シクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0200】
本発明で用いられるその他のグリコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールのなどのアルキレングリコールや水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、TCDグリコールなどの脂環族グリコール、ダイマージオールなどが挙げられる。などの脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどの脂環族グリコール等を挙げることができ、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジエタノールが耐候性の改良の点から好ましい。これらの多価アルコール成分を1種あるいは2種以上を混合した形で使用することができる。
【0201】
さらに、前記ポリエステルの共重合成分として使用できる多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸などをあげることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンを挙げることができ、特に、トリメリット酸が好都合である。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。
【0202】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量は、500〜50,000、好ましくは700〜10,000、さらに好ましくは1、000〜5、000である。不飽和ポリエステル の数平均分子量が500よりも小さい場合には、成形品の機械的強度が低下し、逆に50、000を超える場合には、粘度が高くなり、その後のビニールモノマーとの混練作業が困難となるため好ましくない。
【0203】
また、塗料、コーティング剤などの用途に用いる場合には、本発明の不飽和ポリエステル樹脂の還元粘度は0.02〜3.80dl/gであることが好ましい。酸価は0.01〜5000eq/tであることが好ましい。還元粘度が0.02dl/g未満ではタック性が発生し問題である。また、2.0dl/gを超える場合は反応に時間がかかり経済性が問題となり好ましくない。
【0204】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂の溶液ヘイズは、10.0%以下、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、最も好ましくは1.5%以下であることが好ましい。特に、7mm以上の肉厚の成形体に用いる場合には、溶液ヘイズは3.0%以下であることが望ましい。10.0%を超える場合は、不飽和ポリエステル樹脂中の異物が多く、成形体の透明性が悪くない商品価値が無くなる。
【0205】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、系に不溶なアルミニウム系異物が少ないことが望ましく、不飽和ポリエステル樹脂ペレット30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:重量比)混合溶液300mlに2時間で攪拌・溶解した溶液を直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、全量を0.15MPaの加圧下、有効ろ過直径37.5mmで異物をろ別試験する測定法で測定した場合、5時間未満であることが望ましい。この様な特性の不飽和ポリエステル樹脂は、特に有機溶剤に溶解して用いるワニスや種々の塗料などの用途に好適に用いることが出来る。前記の濾過時間が5時間を越えると、溶液にして濾過フィルターで濾過する際に長時間を要し問題となる。
【0206】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂の合成方法には特に制限はなく、公知の慣用方法が使用できる。さらに、本発明の不飽和ポリエステル樹脂の製造方法に関しては、エステル交換法あるいは直接エステル化法のいずれでもよく、加圧または減圧操作あるいは不活性ガスで反応を促進させることも可能である。
【0207】
本発明においては、全ての原料を一括して反応容器に添加して反応させても良いが、逐次的に原料を添加しても良い。特に酸成分の一部のみとグリコール成分と後述する触媒成分を最初に反応容器に投入し、エステル化反応またはエステル交換反応を進行させた後、残りの酸成分を投入して再度エステル化反応またはエステル交換反応を進行させる手順で行うことが好ましい。通常酸成分は粉体状であることが多く、一方、グリコール成分は液状であることが多い。従って全原料を一括して反応容器に添加すると粉体成分が多すぎて攪拌するのに負荷がかかるため、却って反応速度が遅くなるおそれがあるからである。最初に添加する酸成分は、全酸成分のうち20〜80重量%であることが好ましい。
【0208】
本発明においては、さらに窒素を反応系に導入しながら重合反応を進行させることが好ましい。窒素を導入することにより、生成した水やメタノールの蒸気を効率的に系外に排出することが出来るため、効率的に重合反応を進行させることが出来る。窒素は単に反応系の気相に流すだけでも良いが、反応混合物に直接バブリングする方が、より好ましい。
【0209】
本発明における不飽和ポリエステル樹脂の重合反応は150〜300℃の範囲で行うことが好ましい。昇温は、原料の昇華や突沸を抑えるためにマイルドに行うことが望ましい。反応の終了は、理論量の水やアルコールが排出されたことを目安にする方法、分子末端のカルボキシル基や水酸基を滴定により測定する方法、反応物の溶融粘度や軟化点測定する方法等を用いて決定することが出来る。
【0210】
本発明においては、前記の反応が終了した後、過剰なグリコール成分や、残存する水やアルコールを除去する目的で、6500〜90000Paにおいて減圧する工程を導入しても良い。6500Pa未満であれば、過剰にグリコール成分が取り除かれることにより目標とする分子量より高い不飽和ポリエステル樹脂になってしまうことがあり、90000Paを超えると、前記グリコール、水またはアルコールを効率的に除去することが出来ないおそれがある。なお、水分散タイプや溶剤溶解タイプに用いる場合は1000Pa以下の高真空状態で重縮合反応をより進行させる工程を有していても良い。
前記反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。
【0211】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、前記の不飽和ポリエステル樹脂をビニールモノマーに溶解して製造され、不飽和ポリエステル樹脂20〜80重量%に対して、ビニールモノマー80〜20重量%であることが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の含有量は、より好ましくは30〜75重量%、さらに好ましくは50〜70重量%である。ビニールモノマー含有量が20重量%未満では成形体の機械的特性や耐熱性が劣り問題である。また、80重量%を超えると硬化反応が進みすぎて成形体の収縮率が大きくなり、ソリや亀裂発生などの問題が生じる。
【0212】
本発明で用いられるビニールモノマーとしては、主として、スチレンが用いられるが、その他に、αーメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンもしくはジアリルフタレートまたは脂肪族多官能(メタ)アクリル酸エステル類であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、繰り返し単位数が2〜20のポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を併用してもよい。上記スチレン以外のビニールモノマーのうち、脂肪族多官能(メタ)アクリル酸エステル類のポリエチレングリコールジメタクリレートが好適に使用され、特に繰り返し単位数が14のポリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。これらはビニールモノマーの全量に対して5〜40重量%の範囲で用いられる。成形品の収縮量を抑制して、機械的強度を向上させることができるので好ましい。配合量が5重量%を下回る量ではその効果が現れにくく、40重量%を超える量では硬化時の収縮量を増大させるので好ましくない。
【0213】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに、重合禁止剤、内部離型剤、充填材及び繊維強化材の少なくとも1種以上を混合、混練することができる。
【0214】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される重合禁止剤は、不飽和ポリエステル樹脂とビニールモノマーとを配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造時の安全性や貯蔵時の安定性などを向上させる作用を有するものである。
【0215】
かかる重合禁止剤としては、パラベンゾキノン、トルキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、2,5−ジフェニルパラベンゾキノン、2,5−ジアセトキシパラベンゾキノン等のキノン類、トルハイドロキノン、ハイドロキノン、ターシャリブチルカテコール、モノターシャリブチルハイドロキノン、2,5ジターシャリブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のハイドロキノン類、2,6−ジターシャリブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−ターシャリブチルフェノール、2,6−ジターシャリブチル−4−メチルフェノール等のフェノール類、ジターシャリブチルパラクレゾール等のクレゾール類、ナフテン酸銅等の有機銅塩、アセトアミジンアセテート等のアミジン類、フェニルヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類等が挙げられ、これらの内一種若しくは二種以上を使用することができる。
重合禁止剤の使用量は、要求される硬化性により適宜決定されるが、不飽和ポリエステル樹脂組成物に対して0.005〜5重量部であることが好ましい。
【0216】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される増粘剤は、不飽和ポリエステル樹脂中のカルボキシル基と反応し不飽和ポリエステル樹脂を高分子量化させ、タック性のない取り扱い性に優れた不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができる作用を有している。かかる増粘剤としては、例えばマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物または水酸化物が挙げられ、その使用量は不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部の範囲が適切であり、使用量がこの範囲、すなわち0.1より少ない場合には到達粘度が低くまたその時間も遅く、タックフリー性が得られ難い。また使用量がこの範囲、すなわち10重量部より多い場合には増粘化が速すぎて不飽和ポリエステル樹脂組成物の混練性を妨げる他、熟成中にゲル化を引き起こす危険性があり、さらには、その成形物は耐煮沸性を低下させるので好ましくない。
【0217】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される硬化剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱成形する際にラジカルを発生し、不飽和ポリエステル樹脂中に存在する不飽和基と、ビニールモノマーとのラジカル重合反応を容易に促進させる作用を有するものである。
【0218】
かかる硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3.3.5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−3.3.5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら硬化剤は、単独或いは二種類以上を混合して使用することもできる。その使用量は不飽和ポリエステル 樹脂100重量部に対して通常0.1〜5.0重量部の範囲で使用することができ、使用量が前記範囲より少ない場合には重合反応が充分に進まず、特にビニールモノマーの未反応物が多く残ることになり、充分な耐熱性や強度物性を有する硬化物が得られない。また使用量を前記範囲より多くしても反応性の向上は見られず、時には硬化物の物性の低下をもたらす場合がある。
【0219】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される内部離型剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物に混練され、金型内にて加熱成形する際の成形品と金型とを容易に離型させる作用を示すものである。かかる内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムに代表される金属石鹸や、シリコンやフッ素系の有機化合物、リン酸系の化合物等を挙げることができ、これらは不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し通常0.01〜10.0重量部の範囲で使用することができる。内部離型剤の使用量が、前記の範囲より少ない場合には金型から成形品を容易に離型させる内部離型剤の効果が発現され難く、逆に使用量が前記の範囲より多い場合には、離型性は良くなるものの、成形品の表面に離型剤の流れた跡が残ったりし、光沢の低下をもたらし外観不良を招く虞れがある。
【0220】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用される充填材は、前記増粘剤と共に不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘性に大きく関与し、特に成形時に良好なハンドリング性を付与する効果があり、プレス成形時にあっては、金型内での流動性に関与し、加圧作業を容易にする。さらに成形品にあっては、強度物性、表面の平滑性や、熱による寸法変化、硬度等の各物性に関与し、それらを向上させる作用を有している。また、充填剤の色は成形品の外観に大きく関与し、白色の充填剤は白い成形品を、着色された充填剤は柄・模様のある成形品を得ることができる。
【0221】
かかる充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ粉末、クレイ、シリカ、アルミナ、アスベスト、石英粉、陶磁器粉、ガラス粉末、珪砂など無機充填材が挙げられ、中でも本発明の不飽和ポリエステル樹脂硬化物の屈折率に近い水酸化アルミニウム、ガラス粉末、特に水酸化アルミニウムが透明性に優れた人工大理石が得られることより好ましい。前記無機充填材はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、アルキルカルボン酸塩、アルコ−ルなどで表面処理したものも同様に使用出来る。なお無機充填剤は単独或いは二種類以上を混合して使用することもできる。その使用量は、不飽和ポリエステル 樹脂100重量部に対して100〜350重量部の範囲で使用することができる。使用量が前記の範囲より少ない場合には不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘性が低く、成形時に良好なハンドリング性が得られなかったり、プレス成形時にあっては、金型内での流動性が大きすぎて加圧成形作業がスムースに行い難い。さらに成形品にあっては、表面の平滑性が悪く、熱による寸法変化も大きいため反りの発生もあり、硬度も低いものとなる。逆に使用量が前記の範囲より多い場合には、プレス成形時の金型内での流動性が悪く、良好な成形品が得られず、成形品の強度物性の低下、耐熱水性の低下をもたらす虞れがある。
【0222】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、所望に応じて、熱硬化性樹脂に使用される繊維強化材を配合することができる。本発明において繊維強化材は、前記充填材と同様に、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘性に大きく関与し、特に成形時に良好なハンドリング性をもたらす作用効果を有する。また、プレス成形時にあっては、金形内での流動性に関与し、加圧成形を容易に行なうことができる。また成形品にあっては、特に強度物性向上に関与し、さらに表面の平滑性や、熱による寸法変化、硬度等の各物性にも関与する。
【0223】
かかる繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、炭素繊維等の無機及び有機繊維を使用することができる。これらの繊維強化材は必要に応じて繊維表面を公知のカップリング剤で処理したものを使用することができる。繊維の長さは、0.1〜10mmの範囲のものが使用されるが、好ましくは0.5〜3.0mmの範囲のものが成形時の割れ防止、補強効果、表面性の点で好ましい。繊維長が0.1mm未満では補強効果が十分に得られず、10mmを越えるものは成形品の表面が悪くなる。これらは、単独或いは繊維長の異なる2種類以上の繊維を混合して使用することができる。その配合量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物100重量部に対して1〜50重量部好ましくは3〜10重量部の範囲で使用することができる。1重量部未満では強化材の効果が得られず、50重量部を超える範囲では高強度になるが成形品の表面の平滑性が失われ、耐熱性が低下し熱水処理後にブリスター等が発生し易くなる。その他に成形を円滑に行なうために公知の離型剤、成形品を着色する目的で顔料、あるいは紫外線吸収剤等を配合することができる。
【0224】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には目的、用途に応じて酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、クレイなどの体質顔料、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメートなどのクロム含有防錆顔料、コロイダルシリカ、トリポリリン酸アルミなどのトリポリリン酸塩系、リン酸亜鉛系、亜リン酸塩系、リンモリブデン酸塩系、モリブデン酸塩系、シアナミド亜鉛カルシウム系、ホウ酸塩系、カルシウムシリカ系などの非クロム系防錆顔料、公知の着色剤、シリカ、ワックスなどの添加剤、難燃剤、グラスファイバーなどを配合することができる。
【0225】
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物は有機溶剤に溶解した形で使用されるものでも良い。有機溶剤としては、たとえば、トルエン、キシレン、ソルベッソ100および150、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセリソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン、2塩基酸エステルなどから溶解性、蒸発速度を考慮して適宜選択される。
【0226】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂あるいは不飽和ポリエステル樹脂組成物は、接着剤、塗料、コーティング剤、ポリエステルポリウレタン用など各種変性反応用の原料、FRPなどの成形用途、積層体、バインダー等へ応用することが出来る。
【実施例】
【0227】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。各測定項目は以下の方法に従った。
【0228】
1.不飽和ポリエステル樹脂の数平均分子量
テトラヒドロフランを溶離液としたウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用いて、カラム温度35℃、流量1ml/分にてGPC測定を行なった結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。ただしカラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804、806を用いた。
【0229】
2.不飽和ポリエステル樹脂の組成比
不飽和ポリエステル樹脂のサンプル約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(9/1;体積比)0.7mlに溶解し、H−NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。
【0230】
3.不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物の外観着色の程度
不飽和ポリエステル樹脂のほぼ同一厚みの板状体の試料および下記の方法5で得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物粘状体の試料を目視で観察し、次のように判定した。
○:ほとんど着色なし
△:やや黄色着色あり、あるいは灰色あり
×:著しく黄色着色あり
【0231】
4.不飽和ポリエステル樹脂の溶液ヘイズ
不飽和ポリエステル樹脂5gを前記(1)の混合溶媒50ccに溶解させた後、その溶液を20mm厚さのセルに入れて日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定する。
【0232】
5.不飽和ポリエステル樹脂組成物の作成
不飽和ポリエステル樹脂700重量部にスチレンモノマー300重量部およびトルハイドロキノン0.07重量部を加えて不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0233】
6.成形用樹脂組成物の作成、成形品の成形および外観
前記不飽和ポリエステル樹脂組成物100重量部に増粘剤として酸化マグネシウム1.0部、硬化剤としてパーオキシエステル系硬化剤(カヤエステルAN 化薬アクゾ社製)1.0重量部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛2.0重量部、及び無機充填材として水酸化アルミニウム50重量部を配合し、各材料が均一に分散されるようミキサーで充分に混練してコンパウンドを調製した後、前記コンパウンドを40℃の恒温器にて48時間熟成させて成形用樹脂組成物を得た。
この成形用樹脂組成物を300mm×300mmの平板形状の金型に充填し、上型(凸型)温度120℃、下型(凹型)温度130℃に調整し、圧力10MPaに加圧し7分間保持して、厚み6.0mmの成形品を得た。
これを目視で観察し、下記のように評価した。
(成形品の評価)
○:成形品の表面全体に光沢があり、着色なし
△:成形品の表面一部に光沢のない部分があり、黄色着色あり
×:成形品表面のかなりの部分に光沢がなく、黄色または灰色がつよい
【0234】
7.耐薬品性
前記の成形用樹脂組成物をガラス板を用いて、厚さ3mmの注形板を作成し、1週間養生後、3%塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、6ケ月後の外観変化を目視にて測定した。
○:ほとんど変化なし
△:クラック有り
×:一部溶出
【0235】
(実施例1)
攪拌機、コンデンサー、温度計を装備した10Lステンレス製反応釜に表1に記載の各成分モル%になるようにイソフタル酸、テレフタル酸、ニューポールBPE―20(ビスフェノールーAエチレンオキサイド2.2モル付加物 三洋化成(株)製)、エチレングリコールおよび前記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調整例で説明した触媒溶液を全酸成分に対しアルミニウムおよびリン原子換算で0.02モル%および0.04モル%になるように仕込み、窒素下150℃〜220℃でエステル化反応を行なった。次いで、120℃に冷却して、フマル酸を添加し220℃に昇温しエステル化を行った後昇温しながら減圧し最終的に温度が230℃で、圧力が0.2hPaになるように減圧縮合反応を実施し重縮合反応を終了した。得られた溶融ポリエステルを重合槽下部の抜き出し口からシート状に抜き出し冷却した後、シート状態で得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−1)の組成および特性値を表1に示す。
本実施例で得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−1)の溶液ヘイズ値は低く、色調も良好であり、また、前記方法5により作成した不飽和ポリエステル樹脂組成物(B−1)の着色も問題なかった。
さらに、前記方法6により成形した成形品(C−1)の外観や耐薬品性を表1に示すが、問題なかった。
【0236】
(実施例2〜6)
実施例1の不飽和ポリエステル樹脂の合成に準じた方法で、表1に記載の各組成の不飽和ポリエステル樹脂を得た。得られた各不飽和ポリエステル樹脂の組成と特性値を表1に示す。
また、前記各不飽和ポリエステル樹脂からの不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形品の特性を表1に示す。実施例2の不飽和ポリエステル樹脂組成物では、不飽和ポリエステル樹脂700重量部にスチレンモノマー200重量部、繰り返し単位数が14のポリエチレングリコールジメタクリレート100重量部を用いた。特性は全て問題なかった。
【0237】
(比較例1)
表1に記載した各成分のモル%になるように各原料の仕込量を変更する以外は実施例1と同様にして重縮合して不飽和ポリエステル樹脂(A−7)を得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−7)の組成および特性値を表1に示す。
評価した不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物の特性は問題なかった。
しかし、成形品(C−7)の耐薬品性は、クラックが発生し良くなかった。
【0238】
(比較例2)
重縮合触媒を三酸化アンチモン(全酸成分に対しアンチモン原子換算で0.04モル%)に変更する以外は実施例1と同様にして重縮合して不飽和ポリエステル樹脂(A−8)を得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−8)の組成および特性値を表1に示す。
不飽和ポリエステル樹脂(A−8)の外観着色は灰色がかっており、溶液ヘイズは高く問題である。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物(B−8)の外観着色も灰色がかっており、成形品(C−8)の外観も悪く問題であった。
【0239】
(比較例3)
重縮合触媒をテトラブチルチタネート(全酸成分に対しチタン原子換算で0.0008ル%)に変更する以外は実施例1と同様にして重縮合して不飽和ポリエステル樹脂(A−9)を得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−9)の組成および特性値を表1に示す。
溶液ヘイズは低かったが、不飽和ポリエステル樹脂(A−9)の外観着色は著しく黄色に着色しており、問題である。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物(B−9)の外観着色も著しい黄色であり、また、成形品(C−9)の外観も悪く問題であった。
【0240】
(比較例4)
重縮合触媒をジブチルチンジラウレート(全酸成分に対し錫原子換算で0.02モル%)に変更する以外は実施例1に準じた方法で不飽和ポリエステル樹脂(A−10)を得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂(A−10)の組成と特性値を表1に示す。
不飽和ポリエステル樹脂(A−10)の外観着色は著しく黄色がかっており、溶液ヘイズも高く問題である。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物(B−10)の外観着色も著しい黄色であり、また、成形品(C−10)の外観も悪く問題であった。
【0241】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明は、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物などのような金属化合物を触媒主成分として用いない、主としてアルミニウム化合物からなる重縮合触媒を用いた、透明性、耐薬品性、色調および成形性に優れた不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物並びに前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いた成形体などを提供する。特に、海洋構築物のライニングや化学工場の床防水などの用途においては、従来一般の不飽和ポリエステル樹脂では建造物の振動やモルタルの亀裂等に対し、可撓性、強度が不足し、これを補おうとすれば耐薬品性が低下する難点があったが、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、可撓性、強度を高水準に保持すると共に、高い耐薬品性をも兼ねそなえさせることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる一種以上を含む重縮合触媒を用いて重縮合した不飽和ポリエステル樹脂であって、不飽和ジカルボン酸が全カルボン酸成分の1〜80モル%であり、下記式(式1)で表されるジオール化合物から選ばれる少なくとも一種が全グリコール成分の30〜100モル%であることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂。
【化1】

((式1)中、Aは2価の炭化水素基、2価の炭化フッ素基、−SO−、−CO−、−O−、又は直接結合、R,Rは炭素数2〜5のアルキレン基、m、nは1〜10である。)
【請求項2】
前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、リン化合物から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とからなることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記重縮合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と、リン化合物から選ばれる少なくとも一種、さらにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属とからなることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記アルミニウム化合物がカルボン酸含有化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記リン化合物が、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、もしくは、ホスフィン系化合物のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項2、4および5のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属がLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの不飽和ポリエステル樹脂20〜80重量%とビニールモノマー80〜20重量%を含んでなる不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む成形体。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂を含む積層体。
【請求項11】
ジカルボン酸成分とジオール成分を主成分とし、不飽和ジカルボン酸成分が全カルボン酸成分の1〜80モル%であり、前記式(式1)で表されるジオール化合物から選ばれる少なくとも一種が全グリコール成分の30〜100モル%である不飽和ポリエステル樹脂の製造方法であって、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる一種以上を含む重縮合触媒を用いることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂20〜80重量%とビニールモノマー80〜20重量%を混合することを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2008−19330(P2008−19330A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191522(P2006−191522)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】