説明

不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料およびその成形品

【課題】成形材料保管時のゲル化を抑制するとともに黄変を抑制することができる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、硬化剤、キノン系重合禁止剤およびフェノール類を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記キノン系重合禁止剤は(A)無置換またはアルキル基置換p−ベンゾキノンを含有し、前記フェノール類は(B)無置換ハイドロキノンを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比((A)成分/(B)成分)が0.5〜5であり、かつ、前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が前記不飽和ポリエステル樹脂と前記重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂組成物、成形材料およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽、洗面化粧台、キッチンカウンターなどの成形品は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いて製造されたシートモールディングコンパウンド(以下、SMCと称する)などの成形材料を140℃程度の温度でプレス成形することで得られる。不飽和ポリエステル樹脂組成物は不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、硬化剤などが含有されている。
【0003】
製造されたSMCなどの成形材料は一般的にはプレス成形されるまで常温保管されるが、その保管期間中に原料の不飽和ポリエステル樹脂の重合(ゲル化)が徐々に進むため成形材料が硬くなる。そうなると、プレス成形時に成形材料の流動性が低下し、充填不良などの成形欠陥が生じてしまう。
【0004】
これを防ぐために通常、キノン系重合禁止剤が不飽和ポリエステル樹脂組成物に配合される(例えば、特許文献1−2参照)。硬化剤から発生するラジカルの不飽和ポリエステル樹脂に働きかける時間がキノン系重合禁止剤によって延長されるので、不飽和ポリエステル樹脂のゲル化を防ぐことができ、成形材料の長期保管が可能になる。
【0005】
成形材料製造後、比較的短期間でプレス成形する場合であってもキノン系重合禁止剤が予め配合されていなければプレス成形時の成形金型内でのゲル化が速すぎて充填不良など成形欠陥が起こる。
【0006】
したがって、キノン系重合禁止剤はSMCなどの成形材料の常温保管安定性や成形時ゲル化時間の調節のために広く利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−372649号公報
【特許文献2】特開平5−320275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キノン系重合禁止剤を含んだ成形材料は常温保管時に徐々に黄変するという問題がある。黄変した成形材料で成形したものもやはり黄変しており、意匠性の低下を招く。
【0009】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、成形材料保管時のゲル化を抑制するとともに黄変を抑制することができる不飽和ポリエステル樹脂組成物および成形材料と黄変や成形欠陥が低減された成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、硬化剤、キノン系重合禁止剤およびフェノール類を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、キノン系重合禁止剤は(A)無置換またはアルキル基置換p−ベンゾキノンを含有し、フェノール類は(B)無置換ハイドロキノンを含有し、(A)成分と(B)成分との質量比((A)成分/(B)成分)が0.5〜5であり、かつ、(A)成分と(B)成分との合計量が不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲であることを特徴とする。
【0011】
この不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、(A)成分が、無置換p−ベンゾキノンまたはt−ブチル−p−ベンゾキノンであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の成形材料は、上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物を有することを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の成形品は、上記の成形材料の硬化物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形材料保管時のゲル化を抑制するとともに黄変を抑制することができ、成形品の黄変や成形欠陥を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上記のとおり、不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、硬化剤、キノン系重合禁止剤およびフェノール類を含有する。
【0016】
本発明に適用される不飽和ポリエステル樹脂は、脂肪族不飽和ポリカルボン酸、脂肪族飽和ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸などの不飽和もしくは飽和のポリカルボン酸と、ジオール、トリオール、テトラオールなどの有機ポリオールとの縮合反応によって得られる熱硬化性樹脂である。
【0017】
脂肪族不飽和ポリカルボン酸としては、(無水)マレイン酸、フマル酸などが例示され、脂肪族飽和カルボン酸としてはセパシン酸、(無水)コハク酸、アジピン酸などが例示される。芳香族ポリカルボン酸としては、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが例示される。これらポリカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
【0018】
有機ポリオールは、脂肪族ポリオールと芳香族ポリオールとに分けられる。脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、水素化ビスフェノールAなどが例示される。芳香族ポリオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが例示される。これら有機ポリオールは2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明に適用される重合性単量体は、本発明の効果を損なわない範囲で通常の不飽和ポリエステル樹脂組成物に使用されるものであれば特に種類を問わない。例えばスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなど、不飽和ポリエステル樹脂と架橋可能な不飽和単量体が例示される。これらは2種以上を併用してもよい。
【0020】
この重合性単量体は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、例えば10〜70重量部の範囲で配合することができる。
【0021】
本発明に適用される硬化剤は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を有する成形材料を、例えば100℃以上の高温、圧力下で成形するための高温硬化系の触媒が用いられる。高温硬化系の触媒としては、メチルエチルケトンパーオキシド、t―ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート、過酸化ベンゾイル、ジ−t―ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシなどが例示される。
【0022】
この硬化剤は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、例えば0.01〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0023】
本発明に適用されるキノン系重合禁止剤は、必須成分として(A)無置換またはアルキル基置換p−ベンゾキノン(以下、無置換p−ベンゾキノンを単にp−ベンゾキノンと称する)を含有する。また、本発明に適用されるフェノール類は、必須成分として(B)無置換ハイドロキノン(以下、ハイドロキノンと称する)を含有する。
【0024】
(A)成分は下記式(1)で表される。
【0025】
【化1】

【0026】
式中、R、R、RおよびRは、各々、同一または別異に水素原子またはアルキル基である。アルキル基は、例えば炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基などを挙げることができる。
【0027】
(B)成分は下記式(2)で表される。
【0028】
【化2】

【0029】
そして本発明においては、(A)成分と(B)成分との質量比((A)成分/(B)成分)が0.5〜5であり、かつ、(A)成分と(B)成分との合計量が不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲である。
【0030】
このような(A)成分と(B)成分との組み合わせ、質量比および配合量とすることにより、成形材料保管時のゲル化を抑制するとともに黄変を抑制することができる。また、成形品の黄変や成形欠陥をも低減することができる。
【0031】
以上の(A)成分において、R、R、RおよびRが水素原子であるp−ベンゾキノンが好ましいものとして挙げることができる。また、R、RおよびRが水素原子でありRがt−ブチル基であるp−ベンゾキノン、すなわちt−ブチル−p−ベンゾキノンも好ましいものとして挙げることができる。(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて、p−ベンゾキノンとハイドロキノンとの組み合わせ、t−ブチル−p−ベンゾキノンとハイドロキノンとの組み合わせが、上記した効果をより効果的に発現させることができる。
【0032】
本発明においては(A)成分と(B)成分との質量比が0.5〜5であるが、なかでも0.5〜4が好ましく、特に1〜3が好適である。かかる範囲内の場合、保管初期における成形材料で作製した成形品においてツヤムラの発生がより効果的に抑えられ、ある一定期間保管した後、例えば1ヶ月保管した後の成形材料で作製した成形品においてもツヤムラの発生や黄変がより効果的に抑えられるので望ましい。また、成形欠陥もより効果的に低減することができる。
【0033】
また、本発明においては(A)成分と(B)成分との合計量が不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲であるが、なかでも0.05〜0.3が好ましく、特に0.08〜0.2が好適である。かかる範囲内の場合、保管初期における成形材料で作製した成形品においてツヤムラの発生がより効果的に抑えられ、ある一定期間保管した後、例えば1ヶ月保管した後の成形材料で作製した成形品においてもツヤムラの発生や黄変がより効果的に抑えられるので望ましい。また、成形欠陥もより効果的に低減することができる。
【0034】
本発明においてはキノン系重合禁止剤として(A)成分を単独で配合し、フェノール類として(B)成分を単独で配合することができるが、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分以外のキノン系重合禁止剤や(B)成分以外のフェノール類を併用することができる。
【0035】
本発明に適用される(A)成分以外のキノン系重合禁止剤として、例えば、ナフトキノン、フェナンスラキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシp−べンゾキノン、2,5−ジカプロキシp−べンゾキノン、2,5−ジアシロキシp−べンゾキノンなどが例示される。
【0036】
また本発明に適用される(B)成分以外のフェノール類として、例えば、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジt−ブチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジt−アミルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルl−4−メチルフェノール(BHT)などが例示される。
【0037】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに必要に応じて、低収縮剤、無機充填剤、増粘剤、離型剤などが配合されていてもよい。
【0038】
低収縮剤は、不飽和ポリエステル樹脂の硬化収縮を低減させる目的で使用されるものであり、一般的には熱可塑性樹脂である。具体例として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンポリ酢酸ビニル共重合体、その他ポリスチレン変性共重合体などが例示される。
【0039】
低収縮剤は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、例えば1〜50重量部の範囲で配合することができる。
【0040】
無機充填剤は、具体例として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナなどが例示される。
【0041】
無機充填剤は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、100〜250重量部の範囲で配合することができる。配合量が100重量部以上の場合、成形品中の強化材の流動時の分散が均一になりやすく、強度バラツキが小さくなりやすいので好ましい。また配合量が250重量部以下の場合、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘性が高くなり過ぎることがなく強化材への樹脂含浸が良好になり、繊維強化樹脂としての強度が発現されやすいので好ましい。
【0042】
また、無機充填剤はより微粒であればあるほど、凝集や吸油などが生じやすく、充填が困難になることが予想されるため、表面が脂肪酸やカップリング剤などで表面処理されていることが望ましい。
【0043】
使用される脂肪酸としては一般式CCOOH(nおよびmは整数)で示されるものであり、具体例として、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの不飽和脂肪酸などが例示される。
【0044】
カップリング剤としては一般式R−Si(OR’)で示されるシランカップリング剤などが用いられる。Rは官能基であり、具体例としてアミノプロピル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基、メルカト基、ビニル基などが例示される。R’はメチル基またはエチル基などのアルキル基などが例示される。
【0045】
増粘剤は、具体例として、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カリウム、水酸化カリウムなどが例示される。
【0046】
増粘剤は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、例えば0.5〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0047】
離型剤は、例えばステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪族有機酸もしくはその金属塩、ワックス系、シリコーン系などが例示される。
【0048】
離型剤は、不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量を100重量部とした場合、例えば0.5〜20重量部の範囲で配合することができる。
【0049】
以上の不飽和ポリエステル樹脂組成物はSMCやバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと称する)などの成形材料に用いられる。製造された成形材料は、上述した不飽和ポリエステル樹脂組成物が用いられているので成形材料保管時のゲル化や黄変が効果的に抑制される。
【0050】
SMCは例えば次の方法で製造される。まず、上述した不飽和ポリエステル樹脂組成物をポリプロピレンフィルムなどの離型フィルム上に塗布し、その上に切断したガラス繊維などの強化材を散布し、さらにその上に不飽和ポリエステル樹脂組成物を塗布した離型フィルムを重ね合わせる。次いで、ローラー間に通して強化材に不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させることにより得られる。
【0051】
BMCは上述した不飽和ポリエステル樹脂組成物に強化材を加え混練することにより得られる。
【0052】
SMCやBMCなどの成形材料に使用される強化材の具体例として、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。黄変に対しては強化材含有率はほぼ関係がなく、必要な強度に応じて強化材含有率が設定される。例えばこれら強化材の配合量は最終成形品の10〜40重量%の範囲とすることができる。
【0053】
製造された成形材料をプレス成形やトランスファー成形などの方法で成形することにより、浴槽、洗面化粧台、キッチンカウンターなど所望の成形品を作製することができる。
【0054】
黄変が抑制された成形材料を用いているので、作製された成形品も黄変が抑制される。また成形材料のゲル化が効果的に抑制されているのでゲル化由来のツヤムラの発生が抑制され、充填不良などの成形欠陥も低減する。
【0055】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0056】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の原料および強化材は次のものを使用した。
【0057】
・不飽和ポリエステル樹脂:昭和高分子株式会社製M−580
・重合性単量体:スチレン(三菱化学株式会社製CAS(100−42−5)準拠スチレンモノマー)
・硬化剤:t−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂株式会社製 パーブチルZ)
・重合禁止剤((A)成分):t−ブチル−p−ベンゾキノン(精工化学株式会社製)
・重合禁止剤((A)成分):p−ベンゾキノン(和光純薬製)
・フェノール類((B)成分):ハイドロキノン(和光純薬製)
・低収縮剤:ポリスチレン(PSジャパン製 GPPS)
・無機充填剤:炭酸カルシウム(白石工業社製ホワイトンSB青)
・増粘剤:酸化マグネシウム(協和化学株式会社製キョーワマグ#40)
・離型剤:ステアリン酸亜鉛(川村化学工業製)
・強化材:ガラス繊維(日東紡製RS480PB−549)
【0058】
<実施例1>
不飽和ポリエステル樹脂80重量部、スチレン20重量部、ポリスチレン5重量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート1重量部、t−ブチル−p−ベンゾキノン0.05重量部を混合した。次いでハイドロキノン0.01重量部、炭酸カルシウム150重量部、ステアリン酸亜鉛5重量部、酸化マグネシウム1重量部を混合し、SMC製造工程によりガラス繊維を含浸させSMCを得た。ガラス繊維はSMC全重量に対して25重量%使用した。
【0059】
得られたSMCを40℃1日間熟成させた後、140℃の平板プレス機により200mm角、厚み3mmの成形板(初期品)を作製した。また保管安定性を評価するため、40℃30日間保管したSMCを、同様にプレス成形して200mm角、厚み3mmの成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0060】
<実施例2>
実施例1においてハイドロキノンを0.1重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0061】
<実施例3>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.1重量部、ハイドロキノンを0.2重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0062】
<実施例4>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.1重量部、ハイドロキノンを0.02重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0063】
<実施例5>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.06重量部、ハイドロキノンを0.02重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0064】
<実施例6>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.06重量部、ハイドロキノンを0.06重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0065】
<実施例7>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.09重量部、ハイドロキノンを0.09重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0066】
<実施例8>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.09重量部、ハイドロキノンを0.03重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0067】
<実施例9>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンの代わりにp−ベンゾキノンを配合し、その配合量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0068】
<実施例10>
実施例9においてハイドロキノンを0.1重量部とした以外は、実施例9と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0069】
<実施例11>
実施例9においてp−ベンゾキノンを0.1重量部、ハイドロキノンを0.2重量部とした以外は、実施例9と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0070】
<比較例1>
実施例1においてハイドロキノンを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0071】
<比較例2>
実施例1においてハイドロキノンを0.125重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0072】
<比較例3>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0073】
<比較例4>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.03重量部、ハイドロキノンを0.006重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0074】
<比較例5>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.12重量部、ハイドロキノンを0.24重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0075】
<比較例6>
実施例1においてt−ブチル−p−ベンゾキノンを0.12重量部、ハイドロキノンを0.02重量部とした以外は、実施例1と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0076】
<比較例7>
実施例9においてハイドロキノンを配合しなかった以外は、実施例9と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0077】
<比較例8>
実施例9においてハイドロキノンを0.2重量部とした以外は、実施例9と同様にして成形板(初期品)および成形板(1ヶ月保管品)を作製した。
【0078】
以上のようにして作製された成形板(初期品)についてはツヤムラの評価を行い、成形板(1ヶ月保管品)についてはツヤムラと黄変の評価を行った。
【0079】
<ツヤムラの評価>
成形板を目視で外観観察し、成形板に発生したゲル化由来のツヤムラの有無を調べ、その発生数を数えた。ツヤムラの発生数が0個の場合は「◎」、1〜2個の場合は「○」、3個以上の場合は「×」として評価した。
【0080】
<黄変の評価>
成形板の黄変の程度をΔb*を測定して評価した。ΔB*の数値が小さいほど黄変の程度が小さい。そこでΔb*≦3の場合は「◎」、3<Δb*≦4の場合は「○」、5<Δb*の場合は「×」として評価した。
【0081】
その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例1−11の成形板に使用されたSMCは、キノン系重合禁止剤として(A)無置換またはアルキル基置換p−ベンゾキノンを含有し、フェノール類として(B)無置換ハイドロキノンを含有している。そして(A)成分と(B)成分との質量比((A)成分/(B)成分)が0.5〜5であり、かつ、(A)成分と(B)成分との合計量が不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲である。このようなSMCで作製された成形板では、ゲル化由来のツヤムラの発生が抑制されており黄変の程度も小さくなっている。また、成形欠陥が低減することも確認した。
【0084】
実施例5−8の成形板に使用されたSMCは(A)成分と(B)成分の質量比が1〜3の範囲であるか、または(A)成分と(B)成分との合計量が不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との合計量100重量部に対して1〜3重量部の範囲である。このようなSMCで作製された成形板ではゲル化由来のツヤムラの発生、黄変の程度ともにより効果的に抑制されている。また、成形欠陥がより効果的に低減することも確認した。
【0085】
他方、比較例1−8の成形板に使用されたSMCは、キノン系重合禁止剤としての(A)成分またはフェノール類としての(B)成分を含有していないか、両者を含有していてもその質量比や合計量が上記した範囲から外れている。このようなSMCで作製された成形板ではゲル化由来のツヤムラが実施例よりも多く発生しているか、黄変の程度が大きくなっている。また、ツヤムラの発生が多いと成形欠陥が低減しないことも確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、硬化剤、キノン系重合禁止剤およびフェノール類を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記キノン系重合禁止剤は(A)無置換またはアルキル基置換p−ベンゾキノンを含有し、前記フェノール類は(B)無置換ハイドロキノンを含有し、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比((A)成分/(B)成分)が0.5〜5であり、かつ、前記(A)成分と前記(B)成分との合計量が前記不飽和ポリエステル樹脂と前記重合性単量体との合計量100重量部に対して0.05〜0.35重量部の範囲であることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、無置換p−ベンゾキノンまたはt−ブチル−p−ベンゾキノンであることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を有することを特徴とする成形材料。
【請求項4】
請求項3に記載の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2012−116962(P2012−116962A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268247(P2010−268247)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】