説明

不飽和(共)重合体の選択的水素化方法

【課題】不飽和(共)重合体中に存在するオレフィン系二重結合を選択的に水素化する方法を提供する。
【解決手段】(a)水素化すべき(共)重合体の、所望により変性剤(C)を含む炭化水素溶液を調製する工程と、(b)in−situで形成された触媒溶液を、水素雰囲気中で、前記(共)重合体溶液中に加える工程とを含んでなり、前記触媒が、(b1)一種以上の非溶剤系希釈剤中に分散された、少なくとも一種の、一般式(I) (CTi(R)(R)を有する、ビス−(シクロペンタジエニル)チタン誘導体、(b2)少なくとも一種の、一般式(II) M(R)(R)を有する(Mは亜鉛およびマグネシウムから選択されるものである)有機誘導体、および(b3)少なくとも一種の変性剤(C)を含んでなり、水素雰囲気中で前記選択的水素化を行なう。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、不飽和(共)重合体中に存在するオレフィン系二重結合の選択的水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和(共)重合体は、工業的規模で広く使用されており、例えば共役ジエンの重合または共重合により得ることができる。
【0003】
これらの(共)重合体は、オレフィン系二重結合を重合体鎖中に有し、このオレフィン系二重結合は、加硫工程には有用であるが、安定性、とりわけ酸化に対する安定性を低下させる。
【0004】
特に、共役ジエンからや、ビニル置換された芳香族炭化水素から出発して得られるブロック共重合体は、非加硫形態で、熱可塑性エラストマーとして、または耐衝撃性透明樹脂として、もしくはスチレン樹脂およびオレフィン系樹脂の変性剤として使用される。重合体鎖中にオレフィン系二重結合が存在するために、上記のブロック共重合体は、酸化、オゾンおよび大気中エージングに対する耐性が低い。これは、これらのブロック共重合体の用途にとって重大な欠点である。
【0005】
この安定性の不足は、上記共重合体のオレフィン系二重結合を選択的に水素化することにより、大幅に低減することができる。
【0006】
オレフィン系二重結合を有する重合体を水素化する公知の方法では、(1)不活性担体(例えばシリカ、アルミナおよび炭素)上に金属(例えばニッケル、パラジウムおよび白金)を堆積させた、担持不均質触媒、および(2)ニッケル、コバルト、チタン、等の有機金属化合物を還元性化合物、例えば有機アルミニウム、有機マグネシウムまたは有機リチウム、と反応させることにより得られる、担持されていない不均質触媒を使用する。
【0007】
担持された不均質触媒(1)に対して、担持されていない触媒(2)には、活性が高いという利点がある。これは、少量の触媒で、穏やかな条件を使用できるので、非常に大きな利点である。
【0008】
欧州特許第816,382号には、チタン触媒、好ましくはTi−シクロペンタジエニルジクロリド(TiCpCl)、およびアルキル化剤、典型的にはRがアルキルであるMgRを使用する、スチレン−ブタジエン(SBS)共重合体の水素化方法が記載されている。
【0009】
好ましい実施態様では、欧州特許第816,382号に記載されている触媒は、Ti化合物およびMg−アルキルを、炭化水素分散剤(例えばシクロヘキサン)中、Ti:Mg比1:1〜1:10、典型的には1:1〜1:3、好ましくは1:1〜1:1.5で、第三成分(エーテル)の存在下で、別に混合することにより製造する(予備形成)。TiとMgの最適な比は、触媒と相互作用し得る化学種の含有量によって異なる。水素化工程は、上記の触媒を、水素存在下で、水素化すべき溶液と接触させることにより行われる。
【0010】
この触媒の予備形成工程、およびその後に続く共重合体溶液の水素化における触媒の使用は、水素化すべき共重合体の特性を考慮していないので、それほど融通性が高いとは言えない。特に、最適Ti/Mg比に関する限り、存在する活性化学種(鎖末端)がプロトン性物質(例えばアルコール)を加えて完全に終結させていない場合、チタン塩に対する還元剤として作用する。この場合、Mg/Ti比を低くする必要がある。
【0011】
一方、重合体溶液中に過剰の重合停止剤が存在すると、これはMg−アルキルと反応するので、大量のMg−アルキルを使用する必要がある。
【0012】
この技術(触媒を別に予備形成し、続いてそれを水素化で使用すること)の主な欠点は、そのようにして調製された触媒の活性にある。
【0013】
予備形成された触媒の活性は、時間、温度および触媒が調製された媒体の極性と関係があり、一般的に、触媒が形成された媒体の極性(通常はエーテルにより与えられる)が高い程、水素化反応速度として測定され、触媒の失活速度としても測定されるその活性は高くなる。
【0014】
従って、触媒をヘキサン中で予備形成する場合、活性はそれ程でもないが、安定性は良好であり、時間と共に増加し、触媒をエーテル、例えばTHF(4,000ppm以上)の存在下で調製すると、活性は非常に高いが、調製直後の期間だけである。
【0015】
触媒の予備形成は、固定されたTi/Mg比で行われ、使用の際、Tiの量ではなく、Mgの量を増加することにより、その比を「調節」することができる。つまり、重合溶液が過剰の終結剤を含む場合、Mgの量を増加することにより、Mg/Ti比を増加することができる。反対に、重合溶液がなお部分的に活性である場合、予備形成された触媒は、機能しない。
【特許文献1】欧州特許第816,382号
【発明の概要】
【0016】
ここで、必ずしも同じレベルで終結していない一連のバッチを連続的に水素化する工業的製法で特に明白な上記の欠点を解決する方法が見出された。
【0017】
そこで、本発明は、不飽和(共)重合体中に存在するオレフィン系二重結合を選択的に水素化する方法であって、
(a)水素化すべき(共)重合体の、所望により変性剤(C)を含む炭化水素溶液を調製する工程と、
(b)in−situで形成された触媒溶液を、水素雰囲気中で、前記(共)重合体溶液中に加える工程とを含んでなり、
前記触媒が、
(b1)一種以上の非溶剤系希釈剤中に分散された、少なくとも一種の、一般式(I) (CTi(R)(R)を有する(式中、RおよびRは、ハロゲンであって、同一または異なるものである)、ビス−(シクロペンタジエニル)チタン誘導体、
(b2)少なくとも一種の、一般式(II) M(R)(R)を有する(Mは亜鉛およびマグネシウムから選択されるものであり、RおよびRは、C〜C16アルキルから選択されるものであって、同一または異なるものである)有機誘導体、および
(b3)少なくとも一種の変性剤(C)
を含んでなり、前記選択的水素化が、水素雰囲気中で行われる、方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好ましい実施態様では、チタン化合物(I)を、好ましくはTHF3,000〜10,000ppmを含むシクロヘキサンの懸濁液中に保持し、ポンプ(高剪断)のヘッド中で粉砕する。次いで、懸濁液を重合反応器に送り、Mg−アルキルを、化合物(I)を含む流れの中に、活性水素化触媒を得るのに最も好適な比で導入する。上記のように、このようにして、Ti/Mg比を補正し、終結剤が過剰に存在する、および不足している時の両方で活性触媒を形成する。
【0019】
他の非常に大きな利点は、このようにして、触媒が高濃度のエーテルの存在下で形成されるが、直ちに使用されるので、より活性な触媒が得られ、エーテルの存在下で特に観察される自然の失活が防止される。
【0020】
上記のように、化合物(I)を非溶剤系希釈媒体中の分散物として供給することが基本である。「分散物」の用語は、多相系、特に、一方の相が連続であり、他方が細かく分散している2相系を意味する。
【0021】
好ましい実施態様では、非溶剤系希釈剤は、チタン化合物(I)およびマグネシウム化合物(II)の両方の希釈剤として導入する。
【0022】
上記の非溶剤系希釈剤は、化合物(I)を溶解させてはならず、化合物(I)および(II)に対しても不活性でなければならない。より詳しくは、上記の非溶剤系希釈剤は、脂肪族飽和炭化水素およびそれらの混合物から選択する。これらの非溶剤系希釈剤の典型的な例は、プロパン、ブタン、n−ヘキサン、n−ペンタン、イソ−ペンタン、n−ヘプタン、オクタン、デカン、シクロペンタン、および様々にアルキル化されたシクロペンタンである。好ましい非溶剤系希釈剤はシクロヘキサンである。
【0023】
同様に、変性剤(C)も水素化環境中に単独で、または化合物(I)および(II)の一方または両方と共に導入することができる。好ましい実施態様では、変性剤はチタン化合物と共に加える。
【0024】
変性剤(C)は、(C1)少なくとも一個の異原子を含む、好ましくは窒素化された、および/または酸素化された有機化合物、および(C2)芳香族化合物から選択される。
【0025】
異原子を含む化合物(C1)の典型的な群は、エーテル、好ましくはエチレングリコールおよびジエチレングリコールのC〜C20エーテルおよびテトラヒドロフラン(THF)である。
【0026】
一般式(C2)を有する典型的な化合物は、トルエン、ベンゼン、キシレン、好ましくはトルエンである。
【0027】
変性剤(C)とTiとのモル比は、0.01/1〜200/1、好ましくは1/1〜100/1である。
【0028】
水素化される(共)重合体の量に対する化合物(I)の量(Tiのppmとして表す)は、少なくとも5ppm、好ましくは5〜500ppm、より好ましくは25〜200ppmである。
【0029】
水素化反応は、好ましくは温度20℃〜110℃で、水素圧0.1〜5.0MPa(1〜50バール)、より好ましくは0.5〜2.0MPaで行う。
【0030】
工程(b)における触媒のin−situ形成は、好ましくは水素圧0.01〜3MPa、より好ましくは0.05〜0.5MPa、さらに好ましくは略大気水素圧で行う。
【0031】
一般式(II) Mg(R)(R)を有する好ましい有機マグネシウム誘導体は、RおよびRが、C〜C16、好ましくはC〜Cアルキルから選択されるものであって、同一または異なるものである誘導体である。ジアルキルマグネシウムの典型的な例は、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−イソブチルマグネシウム、ジ−イソプロピルマグネシウム、ジ−シクロヘキシルマグネシウム、ブチル−イソブチルマグネシウムおよびそれらの混合物である。Mg(R)(R)とチタン化合物の好ましいモル比は、1/1〜10/1、より好ましくは1.1/1〜9/1である。
【0032】
本発明の方法は、オレフィン系二重結合を含むすべての不飽和(共)重合体、すなわち重合体または共重合体、好ましくは4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンを重合または共重合させることにより得られる、共役ジエンの重合体または(共)重合体に適用できる。
【0033】
共役ジエンの(共)重合体は、共役ジエンの単独重合体、様々な共役ジエンのインターポリマー、および少なくとも一種の共役ジエンを、少なくとも一種の、上記共役ジエンと共重合し得るオレフィンと共重合させることにより得られる共重合体を含んでなる。
【0034】
共役ジエンの典型的な例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンおよび3−ブチル−1,3−オクタジエンである。優れた物理化学的特性を有するエラストマーを製造するための中間体としては、イソプレンおよび1,3−ブタジエン、より好ましくは1,3−ブタジエンが特に有用である。従って、本発明の方法で使用できる単独重合体の典型的な例は、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびブタジエン/イソプレン共重合体である。
【0035】
上記のジエンと共に共重合に使用できるオレフィン系モノマーは、上記の共役ジエンと共重合し得るすべての不飽和モノマー、特にビニル置換された芳香族炭化水素である。これらの中で、スチレン、t−ブチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンが特に好適である。特に、最も有用なビニル芳香族化合物はスチレンである。
【0036】
本発明の水素化製法で使用できるブロック共重合体の典型的な例は、一般式(B−T−A−B)X、(A−T−B)X、およびA−T−B−T−BXであり、ここでBは、同一であるか、または異なったポリジエンブロックであり、Aは、ポリビニル芳香族ブロックであり、Tは、ジエンとビニル芳香族単位から構築された統計的共重合体断片であり、Xは、原子価nを有するカップリング基であり、nは、1〜20の整数であり、断片Tの含有量は0〜40重量%である。nが1である場合、Xは失活剤の残基、例えばモノクロロトリメチルシランを失活剤として使用する場合、−Si−(CHである。nが2以上である場合、Xはカップリング剤の残基、例えばジメチルクロロシランの場合は=Si(CH、メチルトリクロロシランの場合は≡Si(CH)、四塩化ケイ素の場合は=Si=である。
【0037】
上記のブロック共重合体中、ビニル置換された芳香族炭化水素の含有量は5〜95%、好ましくは10〜60%である。上記の共重合体中、ポリジエン相の1,2または3,4単位の含有量は10〜80%の間で変化し得る。
【0038】
上記のスチレン−ジエンブロック共重合体に加えて、重合体鎖中にモノマーが統計的に分布し、1,2または3,4単位の量が10〜80%の間で変化し得る直鎖状または分岐鎖状構造を有するランダム共重合体を、本発明の方法により水素化することができる。
【0039】
本発明の方法で使用できる(共)重合体は、分子量に関して特に差別されるものではない。しかし、これらの(共)重合体は、一般的に数平均分子量が1000〜約百万である。
【0040】
本発明の方法で使用できる(共)重合体は、先行技術で開示されているすべての方法、例えば、アニオン重合および有機金属錯体を使用する重合、で製造することができる。上記の(共)重合体は、分子中に少なくとも一個のリチウム原子を有する少なくとも一種の有機化合物の存在下でアニオン重合を使用して製造するのが好ましい。これらのリチウム有機化合物の例は、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、ベンジルリチウム、1,4−ジリチウム−n−ブタン、1,5−ジリチウム−ペンタン、および1,2−ジリチウム−ジフェニルエタンである。
【0041】
重合をアニオン重合技術を使用して行った場合、本発明の方法は、リビング(共)重合体はカップリングされた、または失活した(共)重合体で行うことができる。
【0042】
本発明の方法を使用し、Ti/Mg比を調整して、終結剤が過剰および不足の両方で、活性触媒を得ることができる。
【0043】
もう一つの非常に大きな利点は、このようにして、触媒が高濃度のエーテルの存在下で形成されるが、直ちに使用されるので、より活性な触媒が得られ、エーテルの存在下で特に観察される自然の失活が回避されることである。
【0044】
本発明の水素化方法は、水素圧、温度および接触時間の処理条件を調節することにより、オレフィン系二重結合が実質的に消失するまで、どのような所望の程度にでも行うことができる。(共)重合体の他の反応および官能化には、特定量の残留オレフィン系不飽和が望ましい場合がある。しかし、工業的用途では、ほとんどの場合、実質的に完全な水素化、すなわちヨウ素滴定により99%以上の水素化度、が好ましい。
【実施例】
【0045】
下記の例は、本発明をより深く理解するために提供する。
【0046】
触媒の製造で、存在するエーテル量が増加するにつれて触媒の活性が増加するが、これは、逆比例して、触媒のエージング時間に影響を及ぼすことを立証する例を記載する。これらの例は、バッチ反応器に対する例である。
【0047】
例1 共重合体1の製造
シクロヘキサン8,400g、スチレン174gおよびテトラヒドロフラン43gを25リットルオートクレーブ中に入れ、この系をサーモスタットで45℃に調整しながら、sec−ブチルリチウムの1.5M溶液16mlを加える。30分後、1,3−ブタジエン852gを加え、混合物を10分間反応させる。次いで、スチレン174gを加え、混合物を15’反応させる。得られた重合体溶液に、シクロヘキサン中トリメチル−クロロ−シランの2M溶液12mlを加える。こうして得られた重合体は、Mwが50,000、多分散度(Mw/Mn)が1.03、スチレン含有量が29重量%である。ポリジエン相中の1,2含有量は40%である。
【0048】
例2 共重合体2の製造
典型的な重合で、シクロヘキサン8,400g、スチレン174gおよびテトラヒドロフラン43gを25リットルオートクレーブ中に入れ、この系をサーモスタットで45℃に調整しながら、sec−ブチルリチウムの1.5M溶液16mlを加える。30分後、1,3−ブタジエン852gを加え、混合物を10分間反応させる。次いで、スチレン174gを加え、混合物を15’反応させる。得られた重合体溶液に、シクロヘキサン中トリメチル−クロロ−シランの2M溶液24mlを加える。こうして得られた重合体は、Mwが50,000、多分散度(Mw/Mn)が1.03、スチレン含有量が29重量%である。ポリジエン相中の1,2含有量は40%である。
【0049】
例3(比較) THF含有量が異なった触媒混合物の製造(予備形成された触媒)
ビス−シクロペンタジエニル−チタンジクロリド0.28g、シクロヘキサン100mlおよび表1に示すように増加THFのアリコートを装填することにより、THF含有量(溶剤に対して0、1000、5000、10,000ppmw)を増加させた一連の溶液(3a−3d)を500ml反応器中、アルゴン雰囲気中で調製した。懸濁液を、高せん断ヘッドを取り付けた循環ポンプ(IKA WERKE mod. 25 B)で攪拌し、TiCpCl顆粒を寸法20μmまで粉砕した。この懸濁液にヘプタン中ジイソブチルマグネシウムの1M溶液1.7mlを加え、Mg/Tiのモル比1.5を得た。温度25℃および60℃で調製した混合物を使用し、例4に記載する手順に従って、例1で調製したSBS溶液の水素化を行った。
【0050】
【表1】

【0051】
触媒活性の時間に対する依存性を確認するために、上記の手順で調製した触媒を、25℃および60℃で1分間、120分間および24時間保持した後、使用した。表2は、触媒3−a、3−bおよび3−cから出発して得た触媒の略号を示す。
【0052】
【表2】

【0053】
例4(比較) 異なった条件下で予備形成した触媒による水素化反応
典型的な水素化反応で、例1に記載されているようにして調製した重合体溶液4,800gを16リットル反応器に、水素雰囲気下で、攪拌し、サーモスタットで90℃に調整しながら供給する。次いで、この溶液に、例3で調製した触媒組成物を、乾燥ゴムに対して計算したTi含有量が90ppmになり、オレフィン系二重結合/チタンのモル比が6930になる量で加える。次いで、反応器中の水素圧を8kg/cmにする。水素化反応中、ゴム試料を採取し、これを、溶剤除去した後、ヨウ素滴定により、水素化度(HD)を測定した。反応器の最終温度は110℃であった。結果を表3に示す。
【0054】
表3に対する考察
THF無しに調製した触媒(3−a)を使用して行った水素化試験は、触媒を調製した後に保持した時間および温度に関連する活性改良、すなわち3−a1<3−a2<3−a3<3−a4<3−a5<3−a6を示した。
THF1,000ppmの存在下で調製した触媒(3−b)は、(3−a)系列の活性よりも高い活性を示したが、時間と温度の増加に対する耐性が低かった。活性が最も高い触媒は、60℃で調製され、1分後に使用された触媒(3−b4)であることが確認された。
THF5000ppmの存在下で調製した触媒(3−c)は、25℃で調製され、直ちに使用した場合に最適活性を示した。触媒のエージング時間および保持温度の増加は、活性に悪影響を及ぼし、3−c6<3−c5<3−c3<3−c4<3−c2<3−c1であった。
THF10,000ppmの存在下で調製した触媒(3−d)は、この傾向を確認した。25℃で調製され、直ちに使用した触媒の活性が最も高く、時間と温度の増加は、急速で大きな特性低下を引き起こした。
【0055】
【表3】

【0056】
例5(比較)失活度が異なった重合体溶液に対する、予備形成された触媒による水素化反応
3−c1の条件下で予備形成された触媒を使用し、例4に記載する手順で、例2で得た重合体溶液に対して水素化反応を行う。結果を表4に、例1で得た重合体溶液に対する類似の条件下で得た(例3)結果と比較して示す。
【0057】
表4に対する考察
トリメチル−クロロ−シランが過剰である場合、触媒活性に劣化が観察される。
ジ−イソブチル−マグネシウムを重合体溶液に再添加することにより、触媒が部分的に再活性化される。
【0058】
【表4】

【0059】
例6(本発明による)in−situで調製された触媒による水素化反応
例1に記載するようにして調製した重合体溶液4,800gを16リットル反応器に、水素雰囲気中、攪拌し、サーモスタットで90℃に調整しながら、供給する。この溶液に、例2で調製したTiCpClの懸濁液を、THF5,000ppmの存在下で、乾燥ゴムに対して計算したTi含有量が90ppmになり、オレフィン系二重結合/チタンのモル比が6930になる量で加える。
【0060】
次いで、この重合体溶液にヘプタン中ジイソブチルマグネシウムの1M溶液1.7mlを加え、Mg/Tiのモル比1.5を得た。続いて、反応器中の水素圧を8kg/cmにする。水素化反応中、ゴム試料を採取し、これを、溶剤除去した後、ヨウ素滴定により、水素化度(HD)を測定した。反応器の最終温度は110℃であった。結果を表5に示す。
【0061】
表5に対する考察
すべてこのように行った一連の水素化では、TiCpClを、アニオン合成により調製し、従って、エーテルを含む重合体溶液に加え、次いでMg−アルキルを加える。
この場合、完全に中和した共重合体の場合、触媒はSBS共重合体を極めて急速に水素化する。
過剰のTMSを使用した共重合体の場合、アルキルMgのアリコートを水素化反応器中に順序注入して行ったMg/Ti比の補正により、水素化が可能になる。
【0062】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和(共)重合体中に存在するオレフィン系二重結合を選択的に水素化する方法であって、
(a)水素化すべき(共)重合体の、所望により変性剤(C)を含む炭化水素溶液を調製する工程と、
(b)in−situで形成された触媒溶液を、水素雰囲気中で、前記(共)重合体溶液中に加える工程とを含んでなり、
前記触媒が、
(b1)一種以上の非溶剤系希釈剤中に分散された、少なくとも一種の、一般式(I) (CTi(R)(R)を有する(式中、RおよびRは、ハロゲンであって、同一または異なるものである)、ビス−(シクロペンタジエニル)チタン誘導体、
(b2)少なくとも一種の、一般式(II) M(R)(R)を有する(Mは亜鉛およびマグネシウムから選択されるものであり、RおよびRは、C〜C16アルキルから選択されるものであって、同一または異なるものである)有機誘導体、および
(b3)少なくとも一種の変性剤(C)
を含んでなり、前記選択的水素化が、水素雰囲気中で行われる、方法。
【請求項2】
前記選択的水素化が、前記オレフィン系二重結合が実質的に消失するまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RおよびRがClである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Mがマグネシウムであり、RおよびRが、C〜Cアルキルから選択されるものであって、同一または異なるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物(I)がシクロヘキサン中に分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式(II) M(R)(R)の誘起誘導体と前記チタン誘導体とのモル比が、1/1〜10/1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記式(II) M(R)(R)の誘起誘導体と前記チタン誘導体とのモル比が1.1/1〜9/1である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記変性剤(C)が、テトラヒドロフラン、エチレングリコールのC〜C20エーテル、ジエチレングリコールのC〜C20エーテル、およびトルエンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変性剤(C)とTiのモル比が0.01/1〜200/1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記変性剤(C)とTiのモル比が1/1〜100/1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、温度20℃〜110℃、および水素圧1〜50バールで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記共役ジエンの重合体が、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、および3−ブチル−1,3−オクタジエンの重合体から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記共役ジエンが、1,3−ブタジエンおよびイソプレンから選択されるものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記共役ジエンの共重合体が、共役ジエン/ビニルアレーンの共重合体から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ビニルアレーンがスチレンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記共役ジエンの共重合体が、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、およびスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)から選択されるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記式(I)のチタン誘導体が、THF3,000〜10,000ppmを含むシクロヘキサンの懸濁液として供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
水素化される(共)重合体の量に対する前記式(I)の化合物の量(Tiのppmとして表す)が、少なくとも5ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
水素化される(共)重合体の量に対する前記式(I)の化合物の量(Tiのppmとして表す)が、5〜500ppmである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素化される(共)重合体の量に対する前記式(I)化合物の量(Tiのppmとして表す)が、25〜200ppmである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記不飽和(共)重合体が、共役ジエンの重合体および共重合体から選択されるものである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(b)における、触媒のin−situ形成が、水素圧0.01〜3MPa、好ましくは0.05〜0.5MPaで行われる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(b)が、略大気水素圧で行われる、請求項22に記載の方法。

【公開番号】特開2006−316275(P2006−316275A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132607(P2006−132607)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(502205330)ポリメリ、エウローパ、ソシエタ、ペル、アチオニ (4)
【氏名又は名称原語表記】POLIMERI EUROPA S.P.A.
【Fターム(参考)】