説明

両性のイオン交換樹脂を用いて濃厚な塩溶液から過塩素酸塩の除去

濃厚な多成分塩の水溶液中の過塩素酸塩の濃度を低減する方法であって、両性のイオン交換樹脂で該塩溶液を処理して吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂と過塩素酸塩涸渇溶液とを生成し;過塩素酸塩涸渇溶液を除去することからなる、過塩素酸塩の濃度を低減する方法が提供され、多成分のアニオンは、塩素酸ナトリウム製造用の電解過程で存在する塩化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩及びジクロム酸塩から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両性の樹脂を用いて濃厚な塩溶液から過塩素酸(perchlorate)アニオンの除去に関し;特に塩素酸ナトリウム電解質溶液から過塩素酸アニオンの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書及び特許請求の範囲において用語「過塩素酸塩(パークロレート)」は過塩素酸アニオン及びその塩を示す。
【0003】
若干の工業的プロセスにおいては、過塩素酸塩は主要な製品として製造される。例えば、過塩素酸アンモニウムは爆薬及びロケットの燃料を包含する用途に用いるのに製造した。塩素酸ナトリウムの電解製造の如き別の化学的プロセスでは過塩素酸塩は副生物として生成し且つ最終生成物において不純物として包含されることが多い下流のプロセスに進む。
【0004】
過塩素酸塩は、地下水層で高度の可動性を示す、安定で高度に水溶性の物質である。過去十年のうちに、過塩素酸塩の規制分布及び公衆分布は、米国における、ロケット燃料関連部位の再生及び飲料水を通じてのその暴露から生ずる潜在的な健康作用の認識によって主として押進められて、増大しつゝある。その結果として、政府は環境におけるその衝撃を最小にするより厳格な手引及び規定の実施に向って徐々に移行しつゝある。
【0005】
公共機関及び民間機関からの有意な研究努力は過塩素酸塩を除去する技術の発展をもたらした。然しながら、該方法の多数は水中の低濃度の過塩素酸塩のみを除去するのに特異的に発展されており、幾つかの成分を含有する塩素酸ナトリウム電解質溶液の如き複雑なイオン溶液マトリックスから過塩素酸塩高含量の除去には研究は向けられなかった。
【0006】
塩素酸ナトリウムは二酸化塩素の製造に用いた、パルプの漂泊に用いた主要な原料であり、並びに亜塩素酸ナトリウムの製造用の基本材料の原料である。
【0007】
二酸化塩素は塩素酸ナトリウムを酸と一般には硫酸又は塩酸と反応させることにより製造される。若干のプラントでは、塩素酸ナトリウムは結晶として供給され、少数の場合には工業プラントからの水溶液として供給される。然しながら、多数のパルプ及び製紙設備では言わゆる「集積プロセス(integrated process)」によって二酸化塩素を製造する。密閉ループ式の「集積プロセス」では塩素酸ナトリウム溶液は現場での電解系によって製造され、二酸化塩素生成単位装置に直接供給される。これによって二酸化塩素ガスと部分的に涸渇した塩素酸ナトリウム液とを生成し、これは塩化ナトリウムで富化されしかも富化用に電解系に戻して再循環される。
【0008】
電解槽での塩化ナトリウム溶液の電解により塩素酸ナトリウムの電気化学的製造は次の全反応によって一般に記載し得る;
NaCl+3H2O→NaClO3+3H2
より詳しく言えば、塩化ナトリウムの電解はアノードで塩素を製造し、カソードで水酸化物+水素を製造し、未分割の電解槽では、生成した塩素及び水酸化物が反応して次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンを形成し、これは更に溶液中で反応して塩素酸塩を形成する。アノードの副反応によって酸素の過剰生産を回避するのに、塩化ナトリウム濃度を調節して、主として塩素酸ナトリウムと塩化ナトリウム化合物を含有する溶液が得られる。この混合物は典型的には「槽液(cell liquor)」と記載される。電解槽における効率を更に促進させるのに、ジクロム酸ナトリウムの如き化学剤の添加は産業上周知である。然しながら、この添加はクロム含量により重金属汚染問題のせいとなる。
【0009】
塩素酸ナトリウムの工業プラントにおいては、塩素酸ナトリウム結晶を選択的な晶出により槽液から得る。典型的には「母液」と呼ばれる、塩素酸ナトリウムの選択的晶出後の残留液を、ブライン溶液の形で塩化ナトリウムの添加と共に電解槽に再循環して最適な電解性能のために溶液中に塩化ナトリウム濃度を維持する。
【0010】
電解中に生起する幾つかの望ましくない反応があり、これは全槽効率を低下させ即ち正味のエネルギー消費を増大して終う。有意な副反応であると十分に認識される、槽中の過塩素酸ナトリウム(NaClO4)の形成は、塩素酸ナトリウムの直接的な電気化学酸化によって生起する。槽液中に高度に水溶性の過塩素酸ナトリウムが次後に集積すると結局は塩化ナトリウムの溶解度を低下させ、これは次いで槽の操作に直接影響し、特に副生物の酸素製造に関してのアノードの性能、高価な電気触媒的アノード被覆槽の「摩耗」速度即ち寿命及びアノードの過剰電位によるエネルギー消費に影響する。結局は、過塩素酸塩の濃度は、結晶又は液体溶液として最終生成物と共に掃気され、続いて下流の二酸化塩素設備に進みしかも場合によってはプロセスの流出液に進行する水準にまで増進する。
【0011】
過塩素酸ナトリウムの形成は、塩素酸ナトリウムを統合した又は密閉ループ式の二酸化塩素系で製造する時に大きな問題となり、その際過塩素酸塩については結晶又は液体の掃気もない。統合した又は密閉ループ式の二酸化塩素プロセスにおいては、有意な量の過塩素酸ナトリウムが集積してしまい、これによって二酸化塩素発生器中で塩の沈澱を促進させ、最後には不安定な発生器操作を生じて終う。
【0012】
最新の設備においては、電解槽(electrolyzer)における過塩素酸塩の形成は槽液中の塩化ナトリウム濃度、アノードの条件及び電気触媒的なアノードの被覆層の型式、操作電流密度及び鉄、シリカの如き別の不純物の濃度値を含めて幾つかの因子によって影響される。種々の設備において過塩素酸塩の形成は1Kgの塩素酸ナトリウム当り50〜500mgの過塩素酸ナトリウムで変動することが見出された。1日当り100トンの塩素酸ナトリウムの製造プラントについては、これは1日当り5〜50Kgの過塩素酸酸ナトリウムに当量であり、これは系内に集積して操作上の問題を生じるかあるいは直接的又は間接的に雰囲気中に進行する。
【0013】
塩素酸ナトリウムプロセスでの、特に塩素酸ナトリウム結晶の工業プラントでの過塩素酸塩の集積に伴なう前記の問題に加えて、過塩素酸ナトリウムの増大した濃度は電解質における塩化ナトリウム溶解度の低減を生起し、更にフラッシュ晶出操作を複雑にする。特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載される如く、統合した二酸化塩素プロセスについては、高濃度の過塩素酸ナトリウムに因る塩化ナトリウムの減少した溶解度は、二酸化塩素生成器でより以上の塩化ナトリウムを沈澱させるものであり、増大したダウン時間と高い維持経費を生じる。塩素酸ナトリウム液から過塩素酸ナトリウムを除去する方法は技術的に知られている。塩化カリウムの添加を用いて塩素酸ナトリウム電解質溶液から過塩素酸カリウムとして過塩素酸ナトリウムを優先的に沈殿させ得るが、再溶解されないまゝの塩化物及び塩素酸塩の有意な同時損失なしに過塩素酸塩濃度を40g/l(gpl)以下に達成する。
【0014】
特許文献5は、槽液中の過塩素酸ナトリウム含量を更に低減する方法を記載しており、先ず蒸発により塩素酸塩液の一部を濃縮し、続いて冷却し、塩化カリウムの添加で沈澱し;次いで固相を分離し液相を塩素酸塩(クロレート)プロセスに再循環させる、低減方法を記載する。電解質容量の50%低減は、過塩素酸塩濃度を20gpl近くにまで徐々に低減させることができ、然るに電解質容量の75%又はそれ以上の低減は、この方式を用いて10gplの過塩素酸ナトリウム濃度を達成するのに必要とされるものである。
【0015】
特許文献6は、塩素酸ナトリウム晶出器の後に、塩素酸ナトリウム母液の一部に塩化カルシウムと塩化カリウムとの同時添加を用いて硫酸塩と過塩素酸塩との不純物を低減させる方法を記載している。電解槽の槽液の代りに母液を処理することにより高価な蒸発が回避される。然しながら、実験結果も操作データの何れも該プロセスにおける過塩素酸ナトリウムの達成し得る平衡濃度について与えられない。不運にも、該プロセスは、塩化物、塩素酸塩及びジクロム酸塩(dichromate)を含有する化学化合物で有意な程に汚染された硫酸カルシウムと過塩素酸カリウムスラッジとの混合物を生成する。
【0016】
前記のプロセスは塩素酸塩及びジクロム酸塩(六価のクロム)で汚染された有害なスラッジを生成し、処分前に更なる処理を必要とするものである。処理プロセスは複雑であり、処分経費は禁止的である。
【0017】
特許文献7は、化学処理を用いることなく二次的な晶出工程を利用して塩素酸ナトリウム液から過塩素酸塩の除去を促進する方法を記載している。この多段晶出プロセスは過塩素酸ナトリウム含量を1gpl以下に低減させることを要求している。また第1の晶出器母液の大部分を二次的な真空晶出器内で加工し、その際過塩素酸塩の濃度は高い値に徐々に増大し、然るに主要なプロセス中の過塩素酸塩の含量は1gpl未満に体系的に減少することを要求している。然しながら、第2の晶出剤の操作は実質的な投資経費及び操作経費を伴なうことが多い。また、濃厚な過塩素酸塩液の量の詳細な記載も提供されておらず、前記の処分方法も提供されていない。従って、塩素酸ナトリウム製造系の副生物であるので、当業者はこの過塩素酸塩液が若干の量の塩素酸塩、塩化物及びジクロム酸塩を含有するであろうと推論し得る。それ故、余分な晶出装置及び加工工程に加えて、該処理及び汚染した副生物の処分に包含される経費は、該方式を余り経済的に魅力のないものとさせるのである。
【0018】
塩化カリウム及び他のカリウム塩を用いての化学処理は有意な程の操業経費を表し、然るに二次的な晶出剤の添加はエネルギー要求量の組合せた増大と共に有意な投資経費を加えるものである。従って、塩素酸ナトリウムを製造する電解プロセスから過塩素酸を除去する改良した方法について工業上必要性が未だある。
【0019】
地下水からアニオン類の除去のため弱塩基のアニオン交換樹脂の使用は当該分野で周知である。これらの弱塩基アニオン樹脂は塩素イオン、水酸イオン及び重炭酸イオンの如き一価のアニオンに対して高い能力を有し;それ故該樹脂は高度にイオン性の基質中で過塩素酸イオンの除去には有効ではなく、塩素酸ナトリウムの製造用のプロセス系には応用されなかった。然しながら、米国のオークリッジ(Oak Ridge)国立研究所によって最初開発された特に官能化された樹脂であるプロライト(Purolite)530Eの様な強塩基アニオン交換樹脂は弱塩基のアニオン樹脂よりも過塩素酸塩についてより大きな選択率とより高い能力とを示したが、特許文献8“順次の化学的な置換により強塩基アニオン交換の再生”によって記載される方法の様に非慣用の回収方法を必要とすることが多い、再生するのがずっと困難であり、該特許文献は強酸性のテトラクロロフェレート(FeCl4)と塩酸との混合物を用いる再生方法を記載している。この技術は、技術的に利用できるけれども、経済的でないことが多くしかも複雑な再生工程と有害な化学薬品の使用とを必要とする。更には、有害な再生流体の処分及び故意でない汚染によって生起する塩素酸ナトリウムプロセス内のそれらの固有の化学的な非相溶性は、その実際の応用を制限するものである。
【0020】
イオン抑制(ion-retardation)樹脂としても知られる両性樹脂は、特許文献9によって詳細に記載される通り他の電荷を部分的に中和するように非常に関連しているアニオン吸着部位とカチオン吸着部位との両方を含有する。然しながら、該吸着部位は樹脂が接触している溶液からカチオンとアニオンとの両方を吸着するように可動アニオンと可動カチオンとについて十分な吸引を尚有するが、吸着したイオンは溶離液として水の使用によって該樹脂から移動し得る。これらの樹脂はダウケミカル社(商標名:ダウエックス リタードイオン11A8)及び三菱化成社(商標名:ダイアイオンAMP01、ダイアイオンDSR01)等から市販されて入手し得る。
【0021】
カゴに入ったヘビ(snake-in-a cage)型樹脂としても知られるダウエックス リタードイオン11A8樹脂は同じ樹脂内に弱酸カチオンと強塩基アニオン官能価との両方を含有し;イオン類は吸着部位に対するそれらの親和性に基いて互いに分離される。三菱のダイアイオンAMP01はベタイン型の樹脂と分類され、正に荷電したカチオン官能基と負に荷電した官能基とを有する中性の化学化合物である。該2つの樹脂は同様なイオン−抑制作用を示す。
【0022】
非特許文献1に公開された松下健による論文“両性イオン交換樹脂を用いることにより、ブラインから硫酸塩の除去”は、ブライン溶液から硫酸塩及び塩素酸塩の分離のため、単一の芳香族基上に第4級アンモニウム基(強塩基のアニオン)とカルボキシル基(弱酸性のカチオン)との両方を有する両性樹脂“ダイアイオンDSR01”の使用を記載している。両性樹脂の他の応用は特許文献10に開示されている。この特許文献は、両性樹脂を用いる若干のクロマトグラフィー分離工程の組合せが如何にクロルアルカリプロセスに応用し得るかを説明している。1つの応用は中程度に強アルカリ溶液から塩化物の塩を低減させるためであり、記載される別の応用は酸性化したブライン溶液から塩素酸塩を低減させるためである。
【0023】
イオン溶液中の塩化ナトリウム、塩素酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの分離のために両性樹脂を用いることはクロルアルカリ工業において成功裡に証明され且つ工業的に応用された。イオン−抑制樹脂に対する種々のイオンの親和性の程度に応じて、吸着したイオンの溶離は、脱イオンを通して高度にイオン化した物質の混合物を分別し主要な化学成分の回収及び再使用を可能とすることにより達成し得る。このより単純な水「再生」は普通のイオン交換樹脂に必要とされるのとは異なっており、その際カチオン又はアニオンはイオン的に交換され、交換部位に強固に保持又は捕捉されかくして捕捉したイオンを移動させ得る再生薬剤の使用を必要とし;しかも更に慣用の「捕捉」イオン交換系での得られる再生流出溶液は処分前に処理しなければならない。イオン抑制は「再生」用の水のみを必要とするので、イオン交換が経済的に実用的でない場合に特に塩素酸ナトリウム電解質溶液の如き複雑なイオン溶液基質では、イオン抑制はより経済的に引合うように用い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第5,324,497号(1994)
【特許文献2】米国特許第3,929,974号(1975)
【特許文献3】米国特許第4,086,329号(1978)
【特許文献4】米国特許第5,458,858号(1995)
【特許文献5】米国特許第5,063,041号
【特許文献6】米国特許第5,681,446号
【特許文献7】米国特許第7,250,144号
【特許文献8】米国特許第6,448,299号
【特許文献9】米国特許第3,078,140号
【特許文献10】米国特許第6,482,305号(2002)
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Journal of Ion Exchange Vol.7 No.3(1996)、松下健の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は多成分イオン溶液から過塩素酸塩の分離及び任意の回収に関し、所望の最終生成物中の過塩素酸塩不純物の濃度の低減を提供する。本発明は更に操作性能及びプロセスの経済性を改良するように工業プロセスにおける過塩素酸濃度の低減を提供する。
【0027】
本発明は電解製造プロセスからアルカリ金属パークロレート不純物の除去に、特に塩化ナトリウムの電解によって生じた塩素酸ナトリウム溶液から過塩素酸ナトリウムの除去に好ましい利用を有する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
即ち、イオン多成分を含有する濃厚な水溶液から過塩素酸塩不純物を除去する方法であって過塩素酸塩貧化溶液と過塩素酸塩富化溶液のフラクションを製造する、不純物除去方法を提供するのが本発明の目的である。
【0029】
塩素酸ナトリウム電解質溶液中の過塩素酸塩濃度を低減するのに経費的に有効な方法を提供するのが本発明の別の目的であり、これによって主として塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ジクロム酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含有する過塩素酸塩涸渇溶液フラクションが再循環及び主要なプロセス系での再使用に適当であり;他の化学汚染物を比較的含有しない過塩素酸塩富化液フラクションは更に処理して生成物として過塩素酸塩を回収できあるいは過塩素酸塩を環境上良性の成分に転化するか又は過塩素酸塩を主要なプロセスに再循環するための使用可能な成分に転化できる。
【0030】
本発明の方法は、過塩素酸ナトリウムの固有の増進が生起して終う塩素酸ナトリウム電解プロセスに特に応用できる。然しながら、過塩素酸塩が存在し、プロセス流から除去されるのが必要である別の工業的プロセスにも応用でき、特に複雑なイオン溶液を有するプロセスに応用できる。用語「複雑なイオン溶液」は水溶液中に幾つかの又は多数の溶質を含有する溶液を記載し、その際溶質はイオンに解離する化合物である。かゝる「多成分イオン」溶液の基本的な性状は、特にこれらの化合物の1つ又はそれ以上のきわめて高濃度を有する溶液中で、特定の挙動を予測するのに十分な程に未だ良く解明されていない。何故ならば互いの相互作用は予期せぬ結果を生起することが多いからである。
【0031】
驚くべきことには本発明者が見出した処によれば、両性(イオン抑制)樹脂を、複雑で濃厚な溶液に例えば高濃度の1価イオン例えば塩素イオン及び塩素酸イオン及びジクロム酸イオン及び硫酸イオンの様な2価イオンを有する塩素酸ナトリウム溶液に用いて、その経済的で薬剤無含有の分離を可能とするように過塩素酸塩の選択的な分離を行うことができる。
【0032】
従って、1つの要旨においては、本発明は濃厚な多成分塩水溶液中の過塩素酸塩の濃度を低減する方法であって、
前記の塩溶液を両性樹脂で処理して吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂と過塩素酸塩涸渇溶液とを生成し;前記の過塩素酸塩涸渇溶液を除去することからなる低減方法を提供する。
【0033】
好ましい要旨においては本発明は前述した如く、前記の吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂を第1の量の溶離水で処理して第1の貧化溶離液と第1の溶離した樹脂とを生成し;前記の第1の貧化溶離液を収集することから更になる、過塩素酸塩の濃度を低減する方法を提供する。
【0034】
別の具体例においては、前述した如く、前記の第1の溶離した樹脂を第2の量の溶離水で処理して第2の富化溶離液と第2の溶離した樹脂とを生成し;前記の第2の富化溶離液を収集することから更になる、方法を提供する。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲における用語「貧化」は合した濃度の他の成分に対する過塩素酸塩濃度の比率が塩溶液中の該比率よりも小さいことを意味する。
【0036】
用語「富化」は合した濃度の他の成分に対する過塩素酸塩濃度の比率が塩溶液中の該比率よりも大きいことを意味する。
【0037】
好ましい具体例においては、前述した如き方法は、過塩素酸塩涸渇溶液を塩素酸ナトリウム電解プロセス、二酸化塩素の統合したプロセス及び亜塩素酸ナトリウムの製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環することから更になる。
【0038】
別の具体例においては、過塩素酸塩で富化された樹脂を第1の量の溶離水で処理すること及び第1の溶離された樹脂を第2の量の溶離水で処理することは連続的なプロセス工程を成す。
【0039】
他成分塩溶液は塩素イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン及びジクロム酸イオンよりなる群から選んだアニオンを含有するのが好ましい。
【0040】
好ましくは、両性樹脂は第1の樹脂容量又はベッド容量を有し、合した第1の量及び第2の量の全溶離水は第1の樹脂容量の約1〜10倍の容量、より好ましくは2〜5倍の容量を有する。
【0041】
前述した如き方法は塩溶液が次の成分を含有するのが特に価値があり;
1〜700gplのNaClO3
0〜300gplのNaCl、
0〜20gplのNa2Cr2O7
0〜50gplのNa2SO4
0.1〜140gplのNaClO4
好ましくは、
300〜650gplのNaClO3
80〜130gplのNaCl、
3〜10gplのNa2Cr2O7
0〜25gplのNa2SO4
0.5〜100gplのNaClO4;及び
より好ましくは
480〜620gplのNaClO3
80〜110gplのNaCl、
4〜6gplのNa2Cr2O7
5〜20gplのNa2SO4
20〜50gplのNaClO4
を含有する。
【0042】
塩溶液は塩素酸ナトリウム電解槽中の塩化ナトリウムの電解から製造した槽液であるのが最も好ましい。
【0043】
別の具体例では、塩溶液は塩素酸ナトリウム電解プロセスにおいて塩素酸ナトリウム晶出器を出る母液である。
【0044】
吸着した過塩素酸塩及び多成分イオンは、両性樹脂に対するそれらの逆親和性の順序で樹脂から溶離水で溶離されて過塩素酸塩と別の成分イオンとを分離し、その際余り固定されていないイオンが先ず溶離されて第1の貧化溶離液を生成し、然るにより強固に固定した過塩素酸塩は溶離水で次後に溶離されて第2の富化溶離液を生成する。
【0045】
溶離水は脱イオン水であるのが最も好ましい。
【0046】
場合によっては前述した如き方法は、過塩素酸塩涸渇溶液を、塩素酸ナトリウムの電解プロセス、二酸化塩素の統合プロセス及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだ但しこれに限定されないプロセスに再循環させることから更になる。
【0047】
前述した如き方法は、第1の貧化溶離液を、塩素酸ナトリウムの電解プロセス、二酸化塩素の統合プロセス及び亜塩素酸ナトリウムの製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる。
【0048】
即ち、過塩素酸塩を含有する多成分塩素酸ナトリウム電解質溶液は、適当な装置例えばイオン−抑制樹脂を含有するカラム又は容器に通過させて塩素酸ナトリウム電解質溶液の別成分から過塩素酸ナトリウム不純物を分離することにより精製する。これによって過塩素酸ナトリウムの一部は塩素酸ナトリウムプロセス又は二酸化塩素の統合したプロセスから除去される。本法は、定常状態の低減した過塩素酸塩濃度を維持する連続的な形態であるいは過塩素酸ナトリウムの濃度がプラント操作に所望の値以下に低減するまで周期的なバッチ形態での何れかで操作できる。電解製造プロセスからの過塩素酸ナトリウム成分の除去は、延長した処理操作時間、原料の向上した利用及び向上した反応効率を可能にする。該樹脂は過塩素酸ナトリウムを水で溶離することにより容易に再生され、該樹脂の再生方法は何ら外来の薬剤又は特別な薬剤を導入せず、かくして現存する塩素酸ナトリウムプロセスに容易に組入れ得る。更には、生成した過塩素酸塩溶液は他の環境上有害な汚染物、主として塩素酸塩及びクロム酸塩を含有しないので、余り複雑でなくしかも余り高価でない処分の選択を考慮し得る。
【0049】
典型的には、プロセスにおける塩素酸ナトリウム電解質溶液の全体の在庫量又は全量を処理することは必要とされないが、その量は全体のプロセス内で維持されるに必要な過塩素酸塩濃度並びに電解回路における過塩素酸塩の製造速度に基づく、例えば、主要回路で20gplの過塩素酸塩濃度を維持するのを望む20kg/日の過塩素酸塩を生成する設備では、5gplの過塩素酸塩濃度が主要回路で望ましいならば、1日当り1m3の液体のみ又は1日当り4m3を処理することが理論上必要となる。主要な時間当りの液流が50〜100m3/hの範囲で測定される設備ではこれは比較的小さな側流の流れである。従って前記因子の関数として、必要とされる樹脂の容量及び包含される装置の寸法は、特に連続操作形態については比較的小さくあり得る。
【0050】
化学成分の分離には、水のみが過塩素酸塩貧化部分と過塩素酸富化部分とを分別する溶離液として必要とされその際必要とされる溶離水の容量は樹脂容量の2〜3倍程小さくあり得る。溶離容量の有意な部分、特に生成物の塩素酸ナトリウムと塩化ナトリウム供給材料とジクロム酸ナトリウムの加工助剤とを含有する過塩素酸塩貧化フラクションは、薬剤回収の主要プロセスに、例えば電解系又はブライン製造工程等に再循環するのに適当である。溶離した過塩素酸塩富化溶液は、次いで選択した処理法又は処分法によって指示される如く処理又は分解できる。例えば、過塩素酸塩富化溶液は、適当な設備への次後の販売又は処分のために蒸発によって更に濃縮でき、あるいは必要とされる固形分の処分と共に閉ループ系内で晶出又は沈澱できる。過塩素酸塩の幾つかの可能な生成物化合物は適当な薬剤の添加により比較的純粋な過塩素酸ナトリウム溶液から得ることができ;かゝる生成物には過塩素酸カリウム及び過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム又はマグネシウム及び過塩素酸があり、後者は蒸留工程を伴なう。別法として、過塩素酸塩富化溶液は、電解還元、熱分解、電気触媒的及び/又は何れか別の方法又は技術的に公知の方法により過塩素酸塩含量の分解のため処理できる。主に塩化ナトリウムを含有する得られた溶液は次いで材料組立ての用の主要なプロセス流に再循環できる。かゝる場合には、溶離した溶液の純度は余り重要ではない。何故なら含有される薬剤は主要プロセスに共通であり、溶離サイクルの切換え工程は余り重大的でなく調節し得るからである。
【0051】
別の要旨においては、本発明は、前記の第1の貧化溶離液を塩素酸ナトリウム電解質プロセス、二酸化塩素の統合したプロセス及び亜塩素酸ナトリウムの製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環することから更になる前述した如き方法を提供する。
【0052】
別の要旨においては、本発明は前記の第2の富化溶離液を処理して回収した過塩素酸塩を生成することから更になる前述した方法を提供する。
【0053】
別の要旨においては、本発明は前記の第2の富化溶離液を過塩素酸塩分解プロセスに処理して前記の過塩素酸塩を除去し且つ過塩素酸塩涸渇溶液を生成することから更になる前述した如き方法を提供する。
【0054】
別の要旨においては、本発明は前記の分解プロセスが電解還元、熱分解及び電気触媒的方法よりなる群から選ばれる前述した如き方法を提供する。
【0055】
別の要旨においては、本発明は前記の過塩素酸塩涸渇溶液を電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、二酸化塩素の統合したプロセス及び次亜塩素酸製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環することから更になる前述した如き方法を提供する。
【0056】
別の要旨においては本発明は前記の吸着した過塩素酸塩と多成分のアニオンとを含有する樹脂を溶離水で処理して過塩素酸塩含有溶離液を生成することから更になる、前述した如き方法を提供する。
【0057】
別の要旨においては、本発明は前記の過塩素酸塩含有溶離液を処理して回収した過塩素酸塩を生成することから更になる、前述した如き方法を提供する。
【0058】
別の要旨においては、本発明は前記の過塩素酸塩含有溶離液を過塩素酸塩分解プロセスに処理して前記の過塩素酸塩を除去し且つ過塩素酸塩涸渇溶液を生成することから更になる前述した如き方法を提供する。
【0059】
別の要旨においては、本発明は前記の分解プロセスを電解還元、熱分解及び電気触媒的方法よりなる群から選ぶ、前述した如き方法を提供する。
【0060】
別の要旨においては、本発明は戦記の過塩素酸塩涸渇溶液を電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、二酸化塩素の統合したプロセス、及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる、前述した如き方法を提供する。
【0061】
本発明をより良く理解するために、好ましい具体例を添附図面を参照して例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】塩素酸ナトリウム晶出器液の少なくとも一部を電解槽(electrolyzer cells)に再循環する前に両性のイオン抑制樹脂床に通過させる本発明による結晶質塩素酸ナトリウムプロセスのフローチャート図。
【図2】生成/蒸発後の廃液の少なくとも一部を、電解槽に再循環する前に両性のイオン抑制樹脂床に通送する本発明の二酸化塩素統合プロセスのフローチャート図。
【図3】生成/蒸発後の廃液の少なくとも一部を、電解槽に再循環する前に両性の樹脂床に通送する本発明の塩素酸ナトリウム製造プロセスのフローチャート図。
【0063】
図4、5、6及び7は本発明により分離した塩素酸ナトリウム液の溶離曲線のグラフである。
【図4】塩素酸塩液から過塩素酸ナトリウムの分離(反復周期)を表わすグラフ。
【図5】塩素酸塩プロセス流中の過塩素酸塩濃度の関数として400cm3のダウエックス 11A8抑制(Retardation)樹脂上の過塩素酸塩保持を表わすグラフ。
【図6】ダイアイオンAMP01両性樹脂を用いて、塩化ナトリウムとジクロム酸ナトリウムとを含有する塩素酸ナトリウム液から過塩素酸ナトリウムの分離を表すグラフ。
【図7】ダイアイオンAMP01両性樹脂を用いて、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムとジクロム酸ナトリウムとを含有する塩素酸ナトリウム液から過塩素酸ナトリウムの分離を表すグラフ。
【0064】
同じ番号は同様な部分を表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
地下水中の過塩素酸塩の除去に現在用いた過塩素酸塩選択性のアニオン交換樹脂は、典型的な塩素酸ナトリウム液から過塩素酸塩を除去する潜在用途のため固定ビーカー試験を用いて篩分する。プロライト強塩基アニオン交換樹脂A−530Eを、充填床の連続流操作を用いて更なる評価のため選択する。プロライトA−530Eは過塩素酸塩(パークロレート)に対して高い選択性を示す独特な二重アミン二官能性樹脂である。該樹脂は「D−3696」又は「ビコート(BiQuat)」樹脂としてオークリッジ(Oak Ridge)国立研究所(ORNL)によって当初開発され且つ工業化された。米国特許第6,448,299号に援用される通りメタノール中の塩化第二鉄/塩酸並びに高濃度の塩化第二鉄/塩酸再生法を用いて該イオン交換樹脂の再生をまた評価する。バイオ−ラド(Bio-Rad)1×30cmのジャケット入りエコノカラムに20cm3の樹脂を充填する。該樹脂を、カラムに装填する前に少なくとも24時間脱イオン水(DI)中で水和させる。塩素酸ナトリウム液を、室温で下方流方向に2ml/分で樹脂カラムに充填する。15床容量(BV's)の塩素酸塩液装填後に、カラムを脱イオン水で完全に洗浄して何れの遊離塩素酸塩液を除去する。カラムの再生は室温で下方流方向に1.5ml/分で行なう。カラムの反復した再充填及び再生は、メタノール中の塩化第二鉄/塩酸を用いての再生工程が不完全であり、過塩素酸塩除去の樹脂能力は有意な程大きく降下したことを迅速に表す。実験は米国特許第6,448,299号「順次薬剤置換により強塩基アニオン交換樹脂の再生」に記載した改良法を用いて新規バッチ分の樹脂及び再生した樹脂で反復した。該米国特許は有機溶剤の使用なしに強酸性のテトラクロロフェレート(FeCl4)及び塩酸を用いての再生法を記載している。最初の塩素酸塩液の分析並びに樹脂を通しての40mlの塩素酸塩液の処理後の溶離液(eluent)の分析又は2当量の樹脂床容量(BV)後の溶離液の分析を表1に示す。
【0066】

表1 強塩基アニオン交換樹脂(プロライトA−530E)を用いて塩素酸塩液から過塩素酸塩の除去
Cr2O7-2 Cl- ClO3- ClO4-
g/L g/L g/L g/L
塩素酸塩液供給原料 5.0 62.8 357 5.4
新しい樹脂溶離液 3.2 60.4 342 0.7
1回目の再生溶離液後 3.7 60.5 345 0.2
2回目の再生溶離液後 3.6 56.0 323 0.2

米国特許第6,448,299号に記載された再生法を用いてのプロライトA−530E強塩基アニオン交換樹脂はメタノール中の塩化第2鉄/塩酸を用いての第一の再生方法と比較すると有意な改良を示したけれども、塩素酸ナトリウムプロセスにおける強酸性のテトラクロロフェレート(FeCl4)及び塩酸の使用について、その化学的な非混和性により並びに過塩素酸イオンについての樹脂能力及びその選択性により関心が残っている。該樹脂は過塩素酸イオンについて良好な親和性を示すが、ジクロム酸イオン及び塩素酸イオンについてもより小さな程度まで親和性を示す。
【0067】
本発明は1つの要旨において、塩化ナトリウム、塩素酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ジクロム酸ナトリウム及び過塩素酸ナトリウムを包含する多成分含有の複雑なイオン性水溶液から過塩素酸塩の選択的な分離を可能にする、水溶液から過塩素酸塩を除去する改良した方法に関する。本発明の方法は、過塩素酸ナトリウムの固有の集積が生起して終う塩素酸ナトリウムの電解プロセスに応用できる。好ましくは活性塩素無含有の、晶出器(crystallizer)操作により指令される温度で典型的には20〜50℃で塩素酸ナトリウム晶出器からの母液は、これを両性樹脂単位に通送して塩素酸ナトリウム電解質溶液から過塩素酸ナトリウム不純物を分離することにより精製される。従って、塩素酸ナトリウム製造プロセス中の過塩素酸ナトリウムの一部はこれによって該プロセスから除去される。該プロセスは連続形態又はバッチ式形態であるいは過塩素酸ナトリウムの濃度がその所望のレベルに減少するまで操作できる。該樹脂は、ある温度範囲で好ましくは水の凍結点以上から水の沸点まで、より好ましくは室温から90℃までの範囲で、樹脂の製造業者によって推奨される最高操作温度以下の最大温度で溶離液として水を用いて容易に再生される。樹脂の再生に水のみが必要とされしかも外来の又は特定の薬剤を該プロセスに導入しないので、過塩素酸塩除去システムを現存する塩素酸ナトリウムプロセスに組入れることは容易である。更には、イオン抑制プロセスからの溶離した過塩素酸塩貧化フラクションは薬剤回収用の主要プロセスに再循環させることができ、然るに別の薬剤成分を含有しない溶離した過塩素酸塩富化フラクションは、例えば米国特許第6,800,203号、米国特許第7,399,725号及び米国特許第7,407,581号に記載される方法の如き技術的に既知の方法によって並びに生体反応器、生体再生又は堆肥化の如き微生物分解によって低減又は分解でき、あるいは他の工業用途のために更に精製及び濃縮できる。
【0068】
本発明による結晶性塩素酸塩プロセスは図1のフローチャート図によって説明され、10は塩素酸塩電解槽(electrolyzer)システムを表し、12は塩素酸塩晶出及び分離プロセスを表し、18は塩素酸塩母液から過塩素酸塩を除去する進歩性を包含する両性樹脂床を表す。
【0069】
本発明による二酸化塩素統合プロセスは図2のフローチャート図によって説明され、10は塩素酸塩電解槽システムを表し、16は二酸化塩素生成器/蒸発器プロセスを表し、18は廃液及び/又は該プロセス内の液体供給源の別の選択から過塩素酸を除去する進歩性を伴なう両性樹脂床を表す。
【0070】
本発明の亜塩素酸ナトリウムプロセスは図3のフローチャート図によって表され、10は塩素酸塩電解槽システムを表し、20は二酸化塩素生成器/蒸発器プロセスを表し、22は亜塩素酸ナトリウム製造システムを表し、18は廃液発生器及び/又は該プロセス内の液体供給源の別の選択からの過塩素酸塩を除去する進歩性を伴なう両性樹脂床を表す。
【実施例1】
【0071】
表2に示した濃度で種々の無機塩を含有する塩素酸塩液(pH8.2)を調製した。1200ml分の塩素酸塩液を室温で400cm3の両性〔イオン抑制(retardation)〕樹脂(商標名:ダウエックス11A8)を充填したジャケット付きカラムに対して下側の方向で20ml/分の容量流速でポンプ輸送した。これに続いて、併流方向で20ml/分の容量流速で90℃の脱イオン水洗浄を行った。イオン抑制カラムの底部から出ていく溶離液をフラクションずつ収集し、ダイオネックス120イオンクロマトグラフィー単位を用いてその塩成分について分析し、結果を図4に示す。
【0072】

表2 両性樹脂(ダウエックス11A8)を用いて塩素酸塩液から過塩素酸塩の除去
Cr2O7-2 Cl- ClO3- ClO4-
g/L g/L g/L g/L
塩素酸塩液の供給 4.4 58.0 365.7 19.3

結果が示す処によれば、両性(イオン抑制)樹脂カラムを用いると、回収すべき溶離液のフラクションを適当に選択することにより塩素酸塩液から過塩素酸イオンの選択的な除去が得られる。
【実施例2】
【0073】
表3に示した濃度で種々の無機塩を含有する塩素酸塩(クロレート)液(pH6.4〜8.2)を調製した。1200〜5000ml分の塩素酸塩液を、室温で400cm3の両性(イオン抑制)樹脂(商標名:ダウエックス11A8)を充填したジャケット付きカラムに通して下向きの方向で20〜50ml/分の容量流速でポンプ輸送した。これに続いて、併流方向で20ml/分の容量流速で80〜90℃の脱イオン水洗浄を行なった。イオン抑制カラムの底部から出る溶離液をフラクションずつ収集し、イオンクロマトグラフィーを用いてその塩成分について分析した。カラム上で抑制した過塩素酸塩の量によって示される見掛けの樹脂能力は、図5に示される通り、供給プロセス流の過塩素酸塩濃度の関数として例示される。
【0074】

表3 両性樹脂(ダウエックス11A8)を用いて塩素酸塩液から過塩素酸塩の除去
Cr2O7-2 Cl- ClO3- ClO4-
g/L g/L g/L g/L
塩素酸塩液供給原料−1 4.4 58.0 365.7 19.3
塩素酸塩液供給原料−2 0 0.02 0.4 8.5
塩素酸塩液供給原料−3 3.5 48.1 305.2 4.1
【実施例3】
【0075】
4.6gplのジクロム酸塩と63.4gplの塩化物と418.8gplの塩素酸塩と21gplの過塩素酸塩とを含有する1200ml試料の塩素酸塩液(pH8.2)を室温で400cm3の両性イオン交換樹脂(商標名:ダイアイオンAMP01)を充填したジャケット付きカラムに通して下向きの方向で20ml/分の容積流量でポンプ輸送した。これに続いて併流方向で20ml/分の容積流量で85℃の脱イオン水洗浄を行なった。イオン抑制カラムの底部から出てくる溶離液をフラクションずつ収集し、イオンクロマトグラフィーを用いてその塩成分について分析した(表4及び図6の結果参照)。
【0076】

表4 両性樹脂(ダイアイオンAMP01両性樹脂)を用いて塩素酸塩液から過塩素酸塩の除去
容量 温度 Cr2O7-2 Cl- ClO3- ClO4-
mL ℃ g/L g/L g/L g/L
塩素酸塩液供給量 21 4.6 63.4 418.8 21.0
200 21 1.0 0.9 0.2 0.0
400 21 4.6 56.6 265.3 0.0
600 21 4.5 63.2 426.0 0.0
800 21 4.7 65.0 442.5 0.0
1000 21 4.5 63.5 432.5 0.7
1200 30 4.6 63.1 421.4 14.8
洗浄水
1450 85 2.6 45.6 369.2 29.7
1700 85 0 0.1 2.1 45.7
2200 85 0 0 0.2 5.6
2700 85 0 0 0 0.3
3200 85 0 0 0 0.0

元の塩素酸塩液を大体250mlの洗浄水(カラムにつき1450mlの全容量)で置換した後に、過塩素酸塩富化フラクション(1700〜2700ml)を転換し、別個に収集し、ジクロム酸塩と塩化物と塩素酸塩との成分の殆んど全てを含有する過塩素酸塩貧化流を後に残す。
【実施例4】
【0077】
3.7gplのジクロム酸塩と50.9gplの塩化物と312.7gplの塩素酸塩と17.1gplの硫酸塩と13.9gplの過塩素酸塩とを含有する1200ml試料の塩素酸塩液(pH8.0)を、室温で400cm3の両性(イオン抑制)樹脂(商標名:ダイアイオンAMP01)を充填したジャケット付きカラムに通して下向きの方向で20ml/分の容積流量でポンプ輸送した。カラムを200mlの脱イオン水で室温でゆすいで塩素酸塩液の大部分を置換してから向流方向で20ml/分の容積流量で80℃の脱イオン水で洗浄する。イオン抑制カラムの底部から出てくる溶離液をフラクションずつ収集し、イオンクロマトグラフィーを用いてその塩成分について分析する(表5の結果及び図7を参照)。
【0078】

表5 両性樹脂(ダイアイオンAMP01両性樹脂)を用いて塩素酸塩液から過塩素酸塩の除去
容量 温度 Cr2O7-2 Cl- ClO3- SO4-2 ClO4-
mL ℃ g/L g/L g/L g/L g/L
塩素酸塩液の供給量 21 3.7 50.9 312.7 17.1 13.9
200 21 3.5 27.9 70.5 17.4 0
400 21 3.8 50.0 293 18.0 0
600 21 3.8 52.2 321 18.6 0
800 21 3.9 51.3 319 20.4 0
1000 21 4.0 51.7 316 20.8 0
1200 21 4.2 52.5 322 20.7 3.1
洗浄水
1400 21 1.3 34.1 295 7.3 15.5
1600 80 0 0.4 24.7 0 33.4
1800 80 0 0.3 0.2 0 25
2000 80 0 0.1 0.2 0 10.4
2200 80 0 0 0 0 5.5
2700 80 0 0 0 0 1.3
3200 80 0 0 0 0 0

元の塩素酸塩液の大部分を大体200mlの洗浄水(カラムにつき1400mlの全容量)で置換した後に、過塩素酸塩富化フラクション(1600〜2700ml)を転用し、別個に収集してジクロム酸塩、塩化物硫酸塩及び塩素酸塩の諸成分の殆んど全てを含有する過塩素酸塩貧化流を後に残す。
【0079】
この記載は本発明の好ましい具体例を報告し説明するけれども、本発明はこれらの特定の具体例に限定されないことを理解すべきである。むしろ、本発明は、報告され且つ説明された特定の具体例及び特徴の官能的又は機械的同等物である全ての具体例を包含する。
【符号の説明】
【0080】
10 塩素酸塩電解槽システム
12 塩素酸塩の晶出、分離プロセス
18 両性樹脂床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃厚な多成分塩水溶液中の過塩素酸塩の濃度を低減する方法において、前記の塩溶液を両性樹脂で処理して、吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂と過塩素酸塩涸渇溶液とを生成し;該過塩素酸塩涸渇溶液を除去することからなる、過塩素酸塩の濃度を低減する方法。
【請求項2】
前記の吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂を第1の量の溶離水で処理して第1の貧化溶離液と第1の溶離した樹脂とを生成し;該第1の貧化溶離液を収集することから更になる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の第1の溶離した樹脂を第2の量の溶離水で処理して第2の富化溶離液と第2の溶離した樹脂とを生成し;該第2の富化溶離液を収集することから更になる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記の吸着した過塩素酸塩の樹脂の、前記の第1の量の溶離水での処理及び前記の第1の溶離した樹脂の、前記の第2の量の溶離水での処理は、連続的なプロセスを成す請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記の多成分塩溶液は塩化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩及びジクロム酸塩よりなる群から選んだアニオンを含有してなる請求項1〜4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記の両性イオン交換樹脂は第1の樹脂容量を有し、前記の第1の量の溶離水と前記の第2の量の溶離水とを組合せると前記の第1の樹脂容量の約1〜10倍の総容量を有する請求項3〜5の何れか1に記載の方法。
【請求項7】
溶離水の前記総容量は前記の第1の樹脂容量の約2〜5倍である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記の塩溶液は以下の成分;
1〜700gplのNaClO3
0〜300gplのNaCl
0〜20gplのNa2Cr2O7
0〜50gplのNa2SO4
0.1〜140gplのNaClO4
を含有する請求項5〜7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記の塩溶液は以下の成分;
300〜650gplのNaClO3
80〜130gplのNaCl
3〜10gplのNa2Cr2O7
0〜25gplのNa2SO4
0.5〜100gplのNaClO4
を含有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記の塩溶液は以下の成分;
480〜620gplのNaClO3
80〜110gplのNaCl
4〜6gplのNa2Cr2O7
5〜20gplのNa2SO4
20〜50gplのNaClO4
を含有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記の塩溶液は、塩素酸ナトリウム電解槽での塩化ナトリウムの電解から生じた槽液である請求項1〜10の何れか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記の塩溶液は、塩素酸ナトリウム電解プロセスにおける塩素酸ナトリウム晶出器を出る母液である請求項1〜11の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記の吸着した過塩素酸塩及び多成分アニオンは、前記の両性イオン交換樹脂に対するそれらの逆親和性の程度で前記の樹脂から前記の溶離水で溶離されて、前記の過塩素酸塩及びアニオンを分離し、その際余り付加されないアニオンが先ず溶離されて前記の第1の貧化溶離液を生成し然るにより強力に付加された過塩素酸塩は前記の溶離水で続いて溶離されて前記の第2の富化溶離液を生成する請求項1〜12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記の溶離水は脱イオン水である請求項1〜13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記の過塩素酸塩涸渇溶液を、電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、統合した二酸化塩素プロセス及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる請求項1〜14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記の第1の貧化溶離液を、電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、統合した二酸化塩素プロセス及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる請求項2〜15の何れか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記の第2の富化溶離液を処理して回収した過塩素酸塩を生成することから更になる請求項3〜16の何れか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記の第2の富化溶離液を過塩素酸塩分解プロセスに対して処理して前記の過塩素酸塩を除去し且つ過塩素酸塩涸渇溶液を製造することから更になる請求項3〜16の何れか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記の分解プロセスは電解還元、熱分解及び電気的触媒プロセスよりなる群から選ばれる請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記の過塩素酸塩涸渇溶液を、電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、統合した二酸化塩素プロセス及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記の吸着した過塩素酸塩と多成分アニオンとを含有する樹脂を溶離水で処理して過塩素酸塩含有溶離液を生成することから更になる請求項1又は2記載の方法。
【請求項22】
前記の過塩素酸塩含有溶離液を処理して回収した過塩素酸塩を生成することから更になる請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記の過塩素酸塩含有溶離液を、過塩素酸塩分解プロセスに対して処理して前記の過塩素酸塩を除去し且つ過塩素酸塩涸渇溶液を製造することから更になる請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記の分解プロセスは、電解還元、熱分解及び電気的触媒プロセスよりなる群から選ばれる請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記の過塩素酸塩涸渇溶液を、電解質の塩素酸ナトリウムプロセス、統合した二酸化塩素プロセス及び亜塩素酸ナトリウム製造プロセスよりなる群から選んだプロセスに再循環させることから更になる請求項23又は24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−512013(P2012−512013A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541035(P2011−541035)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002205
【国際公開番号】WO2010/069031
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511148374)ケメテイックス インコーポレイテッド (1)