説明

両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび極性薬剤を含む医薬組成物

【課題】アトピー性皮膚炎のような皮膚疾患の治療に用いるナトリウムクロモグリケートの皮膚浸透性を改善する組成物の提供。
【解決手段】両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび極性薬剤を含む製剤、例えば水中油乳液が提供される。薬剤はナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムである。本製剤はアトピー性皮膚炎のような皮膚疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤の局所投与のための製剤に関する。
【0002】
ナトリウムクロモグリケート(USAではクロモリンナトリウムと称され、さらに二ナトリウムクロモグリケートまたは二ナトリウム5,5'−[(2−ヒドロキシトリメチレン)ジオキシ]ビス−[4−オキソ−4H−1−ベンゾピラン−2−カルボキシレート]としても知られている)は、アトピー症状、特に喘息の治療に有益な作用をもつことが分かっている。いくつかの陽性結果が臨床試験で得られ、アトピー性皮膚炎(湿疹またはアトピー性湿疹として知られている)および付随する皮膚疾患に関するその有効性が強調されている。
【0003】
アトピー性皮膚炎は炎症性の皮膚疾患で、小児人口の10%が罹患している。その特徴は激しいかゆみ、慢性の再発過程および特有の全身分布である。通常はアレルギーの家族歴があり症状は幼児期の初期に始まる。
【0004】
典型的な治療方法は、単純な保湿剤または局所用コルチコステロイドを使用するものである。局所用コルチコステロイドの長期使用は望ましくない副作用を、特に小児にもたらす可能性がある。
【0005】
ナトリウムクロモグリケートを含む局所用調製物(軟膏、水溶液およびクリーム)が試みられたが、それらの臨床効果は期待に反するものであった。これは、ナトリウムクロモグリゲートの皮膚での生体利用性の低さ(その皮膚浸透性の低さから生じる可能性がある)のためかもしれない。ナトリウムクロモグリケートは、その強力な極性に起因する低い皮膚浸透性を有するようである。
【0006】
1980年代の初期に、ハイダー(Haider)(参考文献1−5)が用いた製剤は良好な皮膚浸透を達成することは困難で、フィソン(Fison)は4%水中油クリーム製剤を開発し、これはモデル実験でより良好な皮膚浸透性を示した。この製剤は臨床試験で使用された。このプログラムでは3症例が報告された(18、19、20)。これらの試験のうち1例のみが陽性結果を示した(Arianayagam et al(20))。この実験では、処置後9週および12週後に総湿疹スコアについて顕著な効果が認められた。さらにまた、最大の効果は、総血清IgEが<500U/mlの患者で認められることが示された。しかしながら、この製剤の皮膚浸透性は比較的貧弱で、生体利用性の計算値は適用量の0.01%から2.75%の範囲で相対的に貧弱であった。これは、喘息治療で吸入により薬剤を投与した場合の10−15%の生体利用性に匹敵する(21)。
【0007】
1990年に、KimataおよびIgarashi(22)は、ナトリウムクロモグリケートの1%水溶液を用いた4週間のコントロール付二重盲検試験を報告した。水溶液を適用後、皮膚を白色軟パラフィンで遮断した。全ての患者は中等度から重度のアトピー性皮膚炎をもち、総血清IgEは100から8600U/mlの範囲であった。ナトリウムクロモグリケート処置群は処置後1週間で顕著な皮膚の改善を示し、2週間後にはかゆみおよび睡眠妨害に関して顕著な効果を示した。さらに別の実験も報告された(Kikata & Hiratsuka(23)およびHiratuska et al(24))。
【0008】
アトピー性皮膚炎におけるナトリウムクロモグリケートの局所適用の結果はきわめて変動性がある。これは、製剤の相違、用いられた濃度の相違または選択された患者集団の相違またはこれら3つの組み合わせの結果かもしれない。用いた濃度は1%から10%の範囲で製剤は水溶液、クリーム、および軟膏を含んでいた。もっとも強い陽性結果は比較的幼い小児(6ヶ月から7歳)で、アトピーの強い者(血清IgEが>2SDから正常)で認められた。
【0009】
さらにまた、薬剤がアレルギー性炎症およびかゆみのレセプターに結合するためには、薬剤の適切な皮膚浸透性が臨床効果に必須であるということもまた大いに考えられる。ナトリウムクロモグリケートはきわめて極性の化合物で、皮膚および粘膜の浸透性は貧弱であるかもしれない。Ariyanayagam et alが用いた製剤(その吸収性は比較的低レベルであった)とは別に、ナトリウムクロモグリケートの患者の皮膚からの吸収性についてはほとんど知られていない。Hiratsuka et alは、薬剤水溶液を適用後放射性免疫アッセイを用いたとき、血中でナトリウムクロモグリケートを検出することができなかった。しかしながら、B細胞活性およびサイトカイン遊離に対して示された作用を見れば、薬剤が吸収されなかったとは考えにくい。ナトリウムクロモグリケートは代謝されず、迅速に血中から除去されて検出レベル以下になったのかもしれない。経過時間による尿中レベルは生体利用性のよりよい測定方法であろう。Haiderは患者に軟膏を擦り込むように指示したが、これは浸透性を高めたかもしれない。
【0010】
最初の日本人の臨床試験の掲載では、以下のような論説が掲げられた:“治療の選択肢で頻繁に副作用がある場合は、局所投与用クロモリン溶液の潜在的利点を追及する価値があるであろう。…この頑固な疾患の治療で用いられる効果的で安全な新規薬剤がきわめて待たれる。”
したがって、アトピー性皮膚炎の治療に用いる、ナトリウムクロモグリケートの適切な皮膚浸透性を可能にする適切な担体の開発が長い間の関心事であり、要請である。この分野の多大な関心にもかかわらず、これまでのところ適切な担体は発見されていない。そのような担体は、単純な保湿剤と局所用コルチコステロイド(現時点でのこの症状の頼みの綱ともいうべき処置)との間の(特に小児の)対症治療として適切な生成物で有用であろう(27)。
【0011】
Ariyanayagam et al (20)は、例えば、Border et al(1980; Int. J. Pharmaceut. 7:63)が、ナトリウムクロモグリケートの生体利用性を改善するために一連の親油性プロドラッグを生成したことを報告した。
【0012】
上記で考察したように、ナトリウムクロモグリケート(またはクロモンネドクロミルナトリウム)を含む水中油乳液が知られている。これらの乳液のいくつかはさらに陰イオン性界面活性剤を含む。両性界面活性剤を含むものは存在しないし、両性界面活性剤の使用が提唱されたこともない。いずれも身体用製品で水溶性界面活性湿潤剤として用いられる物質であるアルコキシル化セチルアルコールを含まない。
【0013】
例えば、英国特許第2202145号明細書は、ネドクロミルナトリウム(ナトリウム9−エチル−6,9−ジヒドロ−4,6−ジオキソ−10−プロピル−4H−ピラノ(3,2−g)キノリン−2,8−ジカルボキシレート)のいくつかの局所用製剤(水中油乳液を含む)を開示している。
【0014】
Ishikura et al(1987; Drug Design & Delivery 1:285-295)は、水溶性フィルムからのジルチアゼムヒドロクロリド(陽イオン性水溶性薬剤の例として用いられる)の経皮的取り込み改善における両性界面活性剤の使用を開示している。一方、ナトリウムクロモグリケート(陰イオン性水溶性薬剤の例として用いられる)の取り込みの研究もまた文献で報告されたが、両性界面活性剤のナトリウムクロモグリケート取り込みに対する影響は提案されなかったし、検討されなかった。
【0015】
本発明は、両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび極性薬剤、例えばナトリウムクロモグリケートを含む組成物、例えば水中油乳液を生成できることを示す。本組成物は安定であり、局所的に投与されたとき有効量の薬剤が患者の皮膚を浸透できることが判明した。本組成物は、皮膚疾患、例えばアトピー性皮膚炎の治療で有用である。
【0016】
本発明の組成物は陰イオン性および陽イオン性物質を排除し、極性物質ナトリウムクロモグリケートを含む安定な製剤、例えば安定な乳液を提供する。ナトリウムクロモグリケートの極性は既知の乳液の安定性を制限するかもしれない。両性界面活性剤は、この問題の克服を可能にし、さらに、ナトリウムクロモグリケートの皮膚浸透を促進する。アルコキシル化セチルアルコールおよび両性界面活性剤の併用は、極性薬剤、例えばナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムを含む安定で有効な製剤、例えば乳液の製造に特に有益であろう。
【0017】
したがって、本発明の第一の特徴は両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび極性薬剤を含む組成物である。
【0018】
本組成物は水相および油相を含むことができる。それは乳液でもよく、また乳液の製造に用いてもよい。例えば、それは乳液の水相で生成または構成されてもよい。乳液は水中油乳液であることが好ましいが、選択肢として油中水乳液でもよい。
【0019】
“極性薬剤”は薬剤中の活性成分として用いることができる化合物であり、水溶性で25℃の蒸留水中の溶液で電離する。“水溶性”化合物は蒸留水に25℃で以下の水:化合物比で溶解できる:(重量:容積、または化合物が液体の場合は容積:容積)少なくとも1:10000、1:1000、1:100、1:30、1:10、1:1または1:1未満。極性薬剤は陰イオン性極性薬剤、例えばクロモン(例えばネドクロミルナトリウムまたはナトリウムクロモグリケート)を含む。もっとも好ましくは、薬剤はナトリウムクロモグリケートを含む。
【0020】
適切な極性薬剤の他の例には、極性抗炎症性または抗リューマチ性薬剤(例えばイブプロフェン);抗菌剤、例えば瘡(かさぶた)の治療に有用なもの(例えばクリンドマイシンナトリウムホスフェートまたはテトラサイクリン);ホルモン、例えばエストロジェン;極性鎮痛剤、例えばフェンタニル;極性運動障害治療分子、例えばスコポラミンまたはヒオシン;降圧剤、例えばクロニジン;血管拡張剤または冠状動脈拡張剤、例えばニトログリセリン;またはニコチンが含まれる。
【0021】
適切な極性薬剤のさらに別の好ましい例には、極性コルチコステロイド製剤、例えば、エステル化コルチコステロイドの塩、例えば燐酸エステルまたは琥珀酸エステルの塩が含まれる。そのような極性製剤は水溶性で、注射に通常用いられる形態または溶液である。コルチコステロイドのエステルの適切な塩には、ベータメタゾンナトリウムホスフェート、デキサメタゾンナトリウムホスフェート、ヒドロコルチゾンナトリウムホスフェート、ヒドロコルチゾンナトリウムスクシネート、メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネートおよびプレドニゾロンナトリウムスクシネートが含まれる。
【0022】
本薬剤は皮膚疾患の治療に有用であるか、または経皮的に投与されたときに有用な薬剤であろう。
【0023】
本薬剤、例えばナトリウムクロモグリケートは、組成物(例えば乳液の)0.01から20%w/v、好ましくは0.1から20%w/v、より好ましくは1から20%w/v、さらに好ましくは約7.5%w/v、もっとも好ましくは約4%w/vを構成することができる。極性薬剤がコルチコステロイドを含むときは、コルチコステロイドは、組成物(例えば乳液)の好ましくは0.01から10%w/v、好ましくは0.1から10%w/v、もっとも好ましくは約0.25または0.5%w/vを構成する。
【0024】
上記の比率は、製剤(例えば乳液)である本発明の組成物で、患者に投与される場合(例えば患者の皮膚に適用される場合)に好ましいと理解されよう。さらにまた、本発明の組成物は、患者への投与(例えば患者の皮膚への適用)に適した製剤、例えば乳液の製造で有用であることは理解されよう。例えば、本組成物は乳液の水相を形成するか、または当業者が知るように、乳液の水相の製造で用いられる濃縮物であろう。したがって、これらの本発明の組成物の実施例では、極性薬剤である組成物の比率は約1.5から約10倍上記のものより高いことが好ましいことは理解されよう。
【0025】
本組成物(例えば乳液)は、2つ以上の極性薬剤を含むことができることは理解されよう。したがって例えば、本発明の好ましい組成物(例えば乳液)は、クロモン(例えばネドクロミルナトリウムまたはナトリウムクロモグリケート)およびコルチコステロイドを含むことができる。コルチコステロイドは、上記のように乳液または患者に投与される他の製剤の0.01から10%w/v、好ましくは0.1から10%w/v、もっとも好ましくは約0.25から0.5%w/vを構成することができる。好ましくはコルチコステロイドは上記のとおりで、もっとも好ましくはベータメタゾンナトリウムホスフェートである。
【0026】
乳液は安定であることが好ましい。このことは、15℃から30℃で保存されるとき、油相および水相の分離は少なくとも製造後1日、好ましくは1週間、より好ましくは1ヵ月、さらに好ましくは6ヵ月または1年では視覚的に検出できないことを意味する。保存は例えば22℃であろう。
【0027】
本組成物(例えば乳液)は、当業者が知るようにローションまたはフォームとして提供できる。
【0028】
“両性界面活性剤”という用語は当業者にはよく知られている。そのような界面活性剤(両性電解質界面活性剤とも称される)は、少なくとも1つの陰イオン基および少なくとも1つの陽イオン基をもち、したがってpHによって陰イオン、非イオン性または陽イオン特性を示すことができる。分子の等電点がpH7で発生する場合、この分子は平衡であると称する。両性界面活性剤は洗剤作用および殺菌作用をもつことができる。安定な両性界面活性剤は特に眼および皮膚に対して非炎症性であろう。
【0029】
両性界面活性剤の特徴は、pHに応じて陽イオン荷電または陰イオン荷電との間を移動することができることである。弱酸溶液(例えばpH6)中で高度に極性の分子(例えばナトリウムクロモグリケート)の存在下では、これらの界面活性剤は分子周囲の電荷の変化に適合することができる。なぜならば、それは、解離するかまたは結合して(ナトリウムクロモグリケートの場合、陽性ナトリウムおよび陰性クロモグリケート成分の間で)、表面湿潤および皮膚浸透のために一定の媒体を提供するからである。
【0030】
組成物(例えば乳液)は、長期使用した場合に皮膚に刺激を惹起する可能性がある成分を含むべきではないことは理解されよう。過敏が発生する可能性がある化合物は避けるべきである。したがって、安定な両性界面活性剤が好ましい。
【0031】
皮膚のpHは約4.5である。皮膚への刺激を避けるために、かすかに酸性(すなわち中性の酸性側)が好ましい。例えば約4.5から約7の間のpHである。例えば乳液は、緩衝剤としてナトリウムジヒドロゲンオルトホスフェートを用いてpH6.0で製造できる。
【0032】
両性界面活性剤の例には、アミノカルボン酸、アミノプロピオン酸誘導体、イミダゾリン誘導体、ドディシン、ペンデカマイン、または長鎖ベタイン、ニッコールAM101(登録商標)(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)、ニッコールAM310(登録商標)(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ニッサンアノン(Nissan Anon)#300(12w/v%アルキルジアミノエチルグリシンヒドロクロリド、3w/v%アルキルジエチレン−トリアミノグリコールヒドロクロリド;Inui Shoji Co, ADG)、G31G(アルキルベタインおよびアルキルアミンオキシドの混合物)、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルフォネート)またはコカミドプロピルベタインが含まれる。これらのいずれも用いることができるが、コカミドプロピルベタインは、シャンプーに用いられたとき本化合物に対するアレルギーの例が報告されたので好ましくないかもしれない(De Groot et al, Contact Dermatitis 33(6):419-422(1995))。
【0033】
両性界面活性剤は、“両性界面活性剤”として供給されるか、または、製造業者により他の物質と一緒に充てんされるかもしくは調合された両性界面活性剤調製物として供給され、さらに、両性界面活性剤という場合は両性界面活性剤単独および製造業者により両性界面活性剤として供給される調製物も包含されることは理解されよう。好ましくは、両性界面活性剤はカルボキシル化イミダゾリン誘導体である。特に好ましくは、両性界面活性剤は二ナトリウムコアコアンホジアセテートを含む。さらに好ましくは、当業者が知るように、二ナトリウムコアコアンホジアセテートは、ラウリルスルフェートおよびヘキシレングリコールと一緒に充てんされているか、または調合されている。
【0034】
特に好ましくは、両性界面活性剤調製物は以下の組成を有する:
二ナトリウムコアコアンホジアセテート
5から30%w/w 例えば14%w/w
ナトリウムラウリルスルフェート
2から20%w/w 例えば12.5%w/w
ヘキシレングリコール
3から20%w/w 例えば7%w/w
塩化ナトリウム
0.25から15%w/w 例えば3.9%w/w
ラウリルアルコール
1から5%w/w 例えば1.0%w/w
塩酸 0.1から5%w/w 例えば1.0%w/w
硫酸ナトリウム
0.025から2.5%w/w 例えば0.25%w/w
ホルムアルデヒド
0.003から1%w/w 例えば0.03%w/w
水を加えて100%w/wとする。
【0035】
そのような調製物は、ローヌ・プーラン・ケミカルズ社(Rhone−Poulenc Chemicals, Poleacre Lane, Woodely, Stockport, Cheshire SK61PQ)が供給するミラケア(Miracare "MCA/E(登録商標)であろう。皮膚はこの調製物に対して極めて耐性を有する。強力な界面活性剤として、それは迅速に皮膚を“潤し”、皮膚の天然の油性バリアーを浸透して、ナトリウムクロモグリケートまたは他の極性薬剤の経皮的通過を促進する。皮膚の油を破壊する作用はまた、乳液中に存在する水による皮膚の水和を強化する。
【0036】
両性界面活性剤は、本発明の好ましい実施態様である水中油乳液の水相に取り込まれる。これは、極性薬剤(例えばナトリウムクロモグリケート)による皮膚浸透を促進し、乳液を安定に保つことができる。両性界面活性剤が存在しない場合、乳液は24時間が経過する間に2相に分解、すなわち油が分離し表面に浮遊するであろう。両性界面活性剤は、乳液の容積に対して0.05から20%の重量(w/v)、好ましくは0.1%から10%w/v、より好ましくは1から5%w/v、もっとも好ましくは約2%w/vを構成する。上記の比率は、両性界面活性剤単独、または上記のように例えば二ナトリウムコアコアンホジアセテート、ラウリルスルフェートおよびヘキシレングリコールを含む両性界面活性剤調製物、例えばミラケア2MCA/E(登録商標)の場合をいうことは理解されよう。好ましくは、比率は両性界面活性剤調製物の場合をいう。両性界面活性剤成分は、乳液の0.007から2.8%w/v、0.014から1.4%w/v、0.14から0.7%w/v、またはもっとも好ましくは0.28%w/vを構成することができる。
【0037】
本組成物(例えば乳液)の成分容積に対する重量%、または溶媒の溶質に対する重量%を決定する場合、グラムで表した重量は、調製組成物(例えば乳液)のミリリットル(ml)で表した容積と比較される。
【0038】
アルコキシル化セチルアルコールという用語は、ポリプロポキシル化セチルアルコールを包含する。ポリプロポキシル化セチルアルコールは、下記文献でプロセチルAWSに与えられた化学表記である(Gardner's Chemical Synonyms and Trade Names, ninth edition)。アルコキシル化セチルアルコールは、クローダ・ケミカル社(Croda Chemicals Ltd, Cowick Hall, Snaith, Goole, North Humberside, DN149AA)から入手でき、“プロセチルAWS”として市販されている。アルコキシル化セチルアルコールは、その水溶性表面活性湿潤特性のゆえに有用であろう。それはまた、乳化剤および可溶化剤としても作用し、皮膚に絹様感触を付与する。
【0039】
アルコキシル化セチルアルコールは、乳液の0.1から20%w/v、好ましくは0.1から10%w/v、さらに好ましくは0.5から4%w/vを構成できる。
【0040】
上記の比率は、患者に投与される、例えば患者の皮膚に適用される製剤(必ずしも乳液である必要はない)である本発明の組成物に当てはまることは理解されよう。さらにまた、本発明の組成物は、患者に投与(例えば患者の皮膚に適用)するために適した製剤(例えば乳液)の製造に有用であることは理解されよう。例えばそのような組成物は当該乳液の水相を構成するかもしれないし、また当業者が知るように当該乳液の水相の製造で用いる濃縮物であるかもしれない。したがって、本発明の組成物のこれらの実施態様では、アルコキシル化セチルアルコールまたは両性界面活性剤である組成物の比率は、上記に示した比率の約1.5倍から約10倍高いことが好ましい。
【0041】
製剤(例えば乳液)の重要な成分は、両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび薬剤成分(例えばナトリウムクロモグリケート)である。さらに別の成分も油相または水相に含ませることができる。油相の適切な成分は当業者の知るところで、以下の説明は制限的なものではない。
【0042】
乳液の成分は、それを使用する患者に乳液が許容されるように選択することが好ましい。例えばそれは脂ぎっていてはいけない。乳液は、傷んだ皮膚または過敏な皮膚領域に少ない摩擦で皮膚上に滑らかに広げることができるように適切に粘性を有することが好ましい。したがって、乳液は22℃または37℃では外観が固体ではないであろう。乳液は、22℃または37℃で約10、20、100、200または、好ましくは400から20000センチポアズまたはmPasの粘性を有するのが好ましい。乳液は、最大せん断速度210sec-1で測定したとき約1.4から2.6Pas(1400から2600センチポアズ)、好ましくは約2.0から2.6Pas(2000から2600センチポアズ)の粘性をもち、さらに最大せん断速度125sec-1で測定したとき約2.3から3.8Pas(2300から3800センチポアズ)、好ましくは約3.0から3.8Pas(3000から3800センチポアズ)の粘性をもつ。粘性の測定方法は当業者の知るところで、例えば文献に記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences 15th Ed, (Chapter 22), Mac Publishing)。比較として示せば、オリーブ油の粘性は10℃で約138mPasで、40℃で約36mPasである。本乳液の外観は水性ローションで、ビン型ディスペンサーで塗布できる。より好ましくは、乳液の外観はクリームで、20℃で容器を逆さまにしたとき開けた容器の中に留まり、さらに、液状ハンドソープの使用分量を取り出すために用いられるような、ビンに取り付けたハンドポンプで塗布することができる。参考文献18は、アトピー性皮膚炎の治療のためのいくつかの望ましい特性を詳述する。
【0043】
乳液の外観はフォームでもよく、これは加圧ディスペンサーで塗布できる。フォームとして提供されるときは、上記のようにローションとして提供される乳液よりも賦形剤に関してはより希釈し、極性薬剤に関してはより濃縮することが好ましい。これは乳液の粘性を低下させ、フォームを使用量ずつ取り出しやすくする。
【0044】
油相は、流動パラフィン、白色軟パラフィン、グリセロールモノステアレート、非イオン性乳化ワックスまたは親油性非イオン性界面活性剤(例えばソルビタントリステアレート)、ベンジルアルコールおよび/またはイソプロピルミリステートを含むことができる。これらの用語は当業者の知るところである。イソプロピルミリステートは湿潤剤の例である。グリセロールモノステアレートは乳化剤の例で、湿潤剤としても機能する。ベンジルアルコールは保存料および穏やかな局所麻酔剤の例である。非イオン性乳化ワックスはポラワックスNF(高級脂肪アルコールおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合物、特にセトステアリルアルコールおよびソルビタントリステアレートの混合物)でもよい。非イオン性乳化ワックスは極性物質を含む乳液の製造で有用であろう。親油性非イオン性界面活性剤(例えばソルビタントリステアレート)は、非イオン性乳化ワックスの代わりとして、またはそれに加えて用いることができる。流動パラフィンおよびイソプロピルミリステートは湿潤剤として作用し、水が乳液から乾燥除去されたとき皮膚の上に閉鎖フィルムを形成する。このフィルムは乳液中で供給された水で水和された皮膚を保持するのを助ける。
【0045】
流動パラフィンは、乳液の0.1%から30%w/v、好ましくは1%から20%w/v、より好ましくは5%から15%w/v、もっとも好ましくは約10%w/vで提供される。
【0046】
白色軟パラフィンは、乳液の0.1から30%w/v、好ましくは1%から20%w/v、より好ましくは2%から15%w/v、もっとも好ましくは約5%w/vで提供される。
【0047】
グリセロールモノステアレートは、乳液の0.1から10%w/v、好ましくは0.5%から5%w/v、より好ましくは1%から3%w/v、もっとも好ましくは2%w/vで提供される。
【0048】
非イオン性乳化ワックス(例えばポラワックスNF)、または親油性非イオン性界面活性剤(例えばソルビタントリステアレート)は、乳液の0.1から15%w/v、好ましくは0.5%から5%w/v、より好ましくは約2%で提供される。親油性非イオン性界面活性剤(例えばソルビタントリステアレート)は、乳液の0.5から5%w/vで提供されるのが好ましく、また非イオン性乳化ワックス(例えばポラワックスNF)は2から5%w/vで提供されるのが好ましい。非イオン性乳化ワックス(例えばポラワックスNF)が乳液の約5%以上を提供する場合は、得られる乳液は粘性が高すぎて皮膚に容易には広げることができないことは理解されよう。
【0049】
イソプロピルミリステートは、乳液の0.1から10%w/v、好ましくは0.5%から5%w/v、より好ましくは約2%で提供される。
【0050】
ベンジルアルコールは、乳液の0.001から5%w/v、好ましくは0.01%から1.0%w/v、より好ましくは約0.2%で提供される。
【0051】
水相は水および薬剤を含むことができる。水相はまた1つまたは2つ以上の保存料を含むことができる。二ナトリウムエデテート(EDTA)およびトリクロサン(5−クロロ−2(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール)は、防腐性をもつ適切な化合物である。この薬剤は水相中の溶液に存在するであろう。EDTAはまた、いずれの重金属イオンとも複合体を形成することによって製剤の安定性に貢献することができる。トリクロサンは皮膚で残留性抗菌作用をもち、細菌のコロニー形成により生じる湿疹部位の損傷を制限するために役立つ。保存料(例えばトリクロサンおよび/またはベンジルアルコール)の抗感染作用はまた、投与中に生じる長期の擦過過程に起因する潜在的感染を防止するために役立つ。
【0052】
二ナトリウムエデテートは、乳液の0.001%から5%w/v、好ましくは0.01%から1%w/v、より好ましくは約1%w/vで提供される。
【0053】
トリクロサン(5−クロロ−2(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール)は、乳液の0.001%から5%w/v、好ましくは0.01%から1.0%w/v、より好ましくは約0.2%w/vで提供される。
【0054】
乳液は、本質的には下記に挙げた成分から(好ましくは実質的に下記の量で)成る。薬剤は、好ましくはナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウム、もっとも好ましくはナトリウムクロモグリケートである。
【0055】
ソルビタントリステアレートまたは
非イオン性乳化ワックス(ポラワックスNF) 2.0%
グリセロールモノステアレート 2.0%
流動軽パラフィン 10.0%
白色軟パラフィン 5.0%
イソプロピルミリステート 3.0%
薬剤 7.5%
二ナトリウムエデテート 0.1%
両性界面活性剤 2.0%
(例えばコアコアンホジアセテートで、これはラウリルスルフェートおよびヘキシレングリコールと複合化させることができる(例えばミラケア2MCA/E(登録商標))
アルコキシル化セチルアルコール 1.0%
トリクロサン 0.2%
ベンジルアルコール 0.2%
精製水 67.0%
ソルビタントリステアレートは、クローダ・ケミカル社(Croda Chemicals Limited, Cowick Hall, Snaith, Goole, North Humberside DN14 9AA)からクリル(Crill)35(登録商標)の名称で入手できる。ポラワックスNFはまたクローダ・ケミカル社から入手できる。好ましくは、ソルビタントリステアレートよりむしろポラワックスNFが用いられる。
【0056】
また別に、薬剤(例えばナトリウムクロモグリケート)は4.0%w/v(または例えば2%または8%)、精製水は70.5%(例えば72.5%または66.5%)で存在してもよい。
【0057】
乳液のpHは、オルト燐酸二水素ナトリウムを用いて6.0に調節することができる。
【0058】
乳液の外観はクリームでもまたは水様ローションでもよい。ローションは症状をもつ皮膚に約3から5分擦り込むことができる。この過程の間にローションは最初白色になり、続いて透明になり、さらに皮膚の中に消え、皮膚の乾燥を止めることができるバリヤーを残す。
【0059】
本発明の乳液は当業者の周知の方法によって製造できる。例えば油を約70℃に加熱し、続いてよく攪拌しながらそれらを定常的に水相に加え(同様に70℃または約70℃で)、続いて乳液を冷却する。
【0060】
いったん乳液が形成されたら、所望の場合(例えばフォームとして用いるために適した製剤を調製する場合)は攪拌しながらさらに水を加えることができる。フォームとして用いるために適した製剤は、本質的に上記のような乳液を、乳液2部に対して水1部を添加することにより希釈して調製できる。乳液が皮膚に適用される前に希釈する場合は、所望の濃度(例えば4%)が希釈された製剤で達成されるように薬剤(例えばナトリウムクロモグリケート)の乳液中の濃度を計算することが好ましいことは理解されよう。乳液は、希釈の必要がないように、例えば最初から上記で引用した添加水を用いて皮膚に適用することを目的とする組成で生成することが好ましいことは理解されよう。
【0061】
フォームとして用いるに適した製剤は、好ましくは実質的に下記の量で本質的には下記に挙げた成分から成るであろう。薬剤は、好ましくはナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムで、もっとも好ましくはナトリウムクロモグリケートである。
【0062】
ソルビタントリステアレートまたは
非イオン性乳化ワックス(ポラワックスNF) 1.3%
グリセロールモノステアレート 1.3%
流動軽パラフィン 6.6%
白色軟パラフィン 3.3%
イソプロピルミリステート 2.0%
薬剤 4%
二ナトリウムエデテート 0.66%
両性界面活性剤 1.3%
(例えばナトリウムクロモグリケートで、これはラウリルスルフェートおよびヘキシレングリコールとともに調合することができる、例えばミラケア2MCA/E(登録商標))
アルコキシル化セチルアルコール 0.66%
トリクロサン 0.13%
ベンジルアルコール 0.13%
精製水(約78.6%)を加えて100%とする
本発明のまた別の特徴は、ナトリウムクロモグリケートを含む安定な水中油乳液で、本乳液は皮膚に適用されたとき、アトピー性皮膚炎/湿疹の治療に明瞭な効果を惹起するために十分な量である相当量のナトリウムクロモグリケートが皮膚に浸透する。
【0063】
皮膚に浸透するナトリウムクロモグリケートの量は当業者に周知の方法で測定できる(そのうちのいくつかを上記で述べた)。それらの方法には皮膚生検標本のin vitro測定またはin vivo測定が含まれる。上記生検標本皮膚はヒトでも動物でもよいが、好ましくはげっ歯類で、より好ましくは無毛ラットの皮膚である。例えば、ヒトまたは実験動物(例えばラットまたはウサギ)に局所適用した後の血中または尿中のナトリウムクロモグリケートの存在を測定することができる。そのような測定は上記に引用したIshikawa et al(1987)およびAriyanayagam et al(20)に記載されている。ナトリウムクロモグリケートは、分析化学技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量できる。
【0064】
乳液の有効性は、アトピー性皮膚炎の動物モデルで、またはヒトでの臨床試験(例えば実施例3から6で述べるようなもの)で測定できる。好ましくは、ヒトで測定される。
【0065】
アトピー性皮膚炎の患者は、当業者の知る基準にしたがって診断できる。例えば、患者はアトピー性湿疹の皮膚表面に対する影響を認識している一般の開業医によって診断できる。症状の研究での一定性を達成するために役立つようにいくつかの診断基準の組み合わせが提唱された((29)およびWilliams et al., B. J. Dermatol. 135:12-17(1996))。Williams et alが考察した基準は以下を含む:皮膚のかゆみの症歴プラス以下の3または4項目以上:(i)皮膚のしわ(ひじ、ひざの後ろ、かかとの上、または首の周囲のしわ)の発疹の症歴;(ii)喘息または枯草熱の当人の病歴;(iii)過去における一般的乾燥肌の病歴;(iv)2歳以下での発症;および(v)写真判定プロトコルによって判定される目で認識することができる屈曲性皮膚炎。
【0066】
アトピー性皮膚炎に対する効果の判定基準は文献29に記載されている。
【0067】
循環IgEレベルを基準にして患者を選択する必要があるかもしれない。適切なIgE検査には総IgEin vitro検査および特異的IgEin vitro検査が含まれる。例えば、ユニキャップ(UniCAP)総(または特異的)IgEテストが市販されている(Pharmacia & Upjohnより販売)が、これは、アレルゲン試薬としてアレルゲンイムノCAP(Allergen ImmunoCAP)を使用する。
【0068】
ナトリウムクロモグリケートによる治療を行う前に、患者のIgEレベルにしたがって患者をスクリーニングすることが望ましく、または必要であろう。より具体的には、総血清IgEレベルが150iu/mlより低い患者はこの治療に反応する可能性は少ないかもしれない。好ましくは、患者はアトピー性皮膚炎の6ヶ月から10歳の間の小児である。
【0069】
本発明のまた別の特徴は皮膚疾患または皮膚症状を治療する方法で、この方法では、当該疾患または症状をもつ個体の皮膚に、アルコキシル化セチルアルコールおよび両性界面活性剤を含む製剤中に存在する薬剤が適用されるか、または当該製剤と一緒に薬剤が適用される。この薬剤は、アルコキシル化セチルアルコールを含む製剤中に存在するか、またはこの薬剤は前記製剤適用の前、後または適用と同時に用いることができるが、この場合、前記製剤はさらに同じ薬剤または異なる薬剤のある量を含んでいても、また含んでなくてもよい。
【0070】
好ましくは、この薬剤は上記で述べたように極性薬剤である。前記製剤は、上記で述べたように、皮膚によって提供されるバリヤーの性質を変えることによって皮膚を通過して薬剤(特に極性薬剤)が浸透するのを助ける。しかしながら、この薬剤は、下記でさらに詳述するように、非極性薬剤、例えば皮膚疾患または症状の治療に有用な非極性薬剤、例えばコルチコステロイドの非極性形(例えば局所適用のために製造されたクリーム、例えばベトネベート(Betnovate(登録商標))、ユーモベート(Eumovate(登録商標))またはオレオコート(Aureocort(登録商標))に存在するようなもの)でもよいことは理解されよう。好ましくは、非極性薬剤(例えばコルチコステロイドの非極性形)は、前記製剤の前、後または同時に適用できるが、好ましくは実質的に前記製剤の直前または実質的に直後、もっとも好ましくは前記製剤の前または直前に適用される。この製剤は皮膚表面上にフィルムを形成することができ、これは例えば水分保持に有益である。
前記製剤に対して望ましいことは、本発明の組成物に対して所望されることと同様であるが、薬剤が皮膚に別々に適用される場合は、前記製剤は極性薬剤を含まなくてもよいことは理解されよう。
【0071】
好ましくは、製剤は、ナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムおよび/またはコルチコステロイド(例えばコルチコステロイドの極性形、例えば上記のようにエステル化コルチコステロイドの塩)を含む。また別に薬剤は、上記で述べたように抗菌剤、例えば瘡治療で有用な抗菌剤でもよい。
【0072】
本発明のまた別の特徴は、皮膚疾患または皮膚症状の治療用医薬の製造におけるアルコキシル化セチルアルコールおよび両性界面活性剤の使用である。薬剤、好ましくは極性薬剤をさらに当該医薬の製造で用いることができる。
【0073】
本発明の以下の特徴では、好ましくは、本発明の組成物または乳液はナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムおよび/またはコルチコステロイド(上記で述べたようにコルチコステロイドの極性形、例えばエステル化コルチコステロイドの塩)を含む。
【0074】
本発明のまた別の特徴は皮膚疾患または皮膚症状の治療方法であって、本方法は、本発明の組成物または乳液を当該疾患または症状をもつ個体の皮膚に適用することを含む。
【0075】
本発明のさらに別の特徴は、皮膚疾患または皮膚症状の治療用医薬の製造における本発明の組成物または乳液の使用である。
【0076】
好ましくは前記皮膚疾患または皮膚症状はヒトの疾患であるが、他の哺乳類、例えばネコ、イヌまたはウマが罹患するものでもよい。前記疾患または症状は、皮膚マスト細胞および/または遅延型(細胞性)過敏反応および/または炎症が付随すると考えられるいずれの疾患でもよい。
【0077】
好ましくは、この疾患または症状は、アトピー性皮膚炎または湿疹であるが、または接触過敏、乾癬、薬剤過敏反応、アプサス(apthous)潰瘍、ベーチェット症候群、天疱瘡、じんま疹、色素性じんま疹、皮膚発熱壊疽(pyroderma gangrenosum)、慢性皮膚潰瘍、クローン病付随潰瘍、火傷、昆虫の刺し傷/かみ傷、ヘルペス感染、全身性硬化症(全身性強皮症)、限局性強皮症(局所性強皮症)、皮膚結節性線維症でもよい。
【0078】
皮膚疾患または皮膚症状はコルチコステロイド適用中でも、適用の後でも、または今後さらに適用しようとする場合でもよい。患者、特にアトピー性皮膚炎または湿疹をもつ患者をクロモンおよびコルチコステロイドを併用して治療することは有益であろう。クロモン(例えばナトリウムクロモグリケート)およびコルチコステロイドの治療効果は、Altounyan & Hnowell(1969)が記載したように完全には互換できない("Treatment of asthma with disodium cromoglycate(FPL 670, "Intal")", Respiration 26(suppl):131-140; Altounyan, (1979) Proceedings of Allergy(Pitman Medical))。それ以下ではナトリウムクロモグリケートが臨床効果をもたない最低用量のコルチコステロイドが必要であるかもしれない。さらに、たとえ高い投与量でもコルチコステロイド単独では、ナトリウムクロモグリケートと一緒に低用量のコルチコステロイドで得られた反応と同じ治療反応を達成できないかもしれない。Haider(5)は、ナトリウムクロモグリケートはアトピー性湿疹ではコルチコステロイド節約作用を示すか、またはこの2物質の間には協調作用が存在するかもしれないと提唱している。
【0079】
クロモンおよびコルチコステロイドは同じ製剤中で提供されてもよいし、別々の製剤に存在してもよい。クロモンおよびコルチコステロイドは、局所提供のためには別々の製剤として提供してもよい。(適切な場合に)片方を含むかまたは両方を含む製剤が本発明の組成物(例えば乳液)であろう。実施例3および4で述べるように、コルチコステロイドを含む製剤は、クロモン(例えばナトリウムクロモグリケート)を含む本発明の製剤の前または後(好ましくは前)に適用できる。コルチコステロイドは極性形でも非極性形でもよい。本発明の組成物中で提供されない場合は、それは好ましくは非極性形である。非極性コルチコステロイドを含む適切な製剤には、特許製剤であるベトネベートRD(ベタメタゾンバリレート、希釈済み)、オレオコート(トリアムシノロンアセトニドおよびクロルテトラサイクリンヒドロクロリド(抗生物質))、およびユーモベート(クロベタゾンブチレート)が含まれる。1%ヒドロコルチゾン調製物もまた用いることができる。
【0080】
Martindali(Extra Pharmacopoeia, 31st Ed)で分類されるように、ベタメタゾンバリレートおよびトリアムシノロンアセトニドは強力なコルチコステロイドであると考えられ、クロベタゾンブチレートは中等度に強力なコルチコステロイドであると考えられる。ヒドロコルチゾンは穏やかなコルチコステロイドであると考えることができる。クロモンを含む本発明の乳液と併用して用いられるコルチコステロイド調製物は治療する症状の重篤度にしたがって選択できる。より強力な(例えば中等度に強力または強力な)コルチコステロイドは併用療法の開始時に用いることができる。これは、症状が制御できるようになったとき、より弱い(例えば穏やかなまたは中等度に強力な)コルチコステロイドによって置き換えることができる。したがって、患者が風邪をひいた結果として症状が悪化した場合、より強力なコルチコステロイドを症状が軽減するまで用い、それからより弱いコルチコステロイドを実施例3で述べるように用いることができる。
【0081】
検定される症状には皮膚のかゆみ、睡眠ロス、および皮膚の状態(例えば皮膚の発赤およびただれまたはかさぶたの存在)が含まれる。
【0082】
ナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルを含む本発明の組成物または乳液はまた、日焼けの治療または日光遮蔽調製物で有用であろう。それらはまた、化粧品調製物、例えば抗老化クリームで有用であろう。
【0083】
本発明のまた別の特徴は極性薬剤を必要としている患者を治療する方法で、この方法は、前記極性薬剤を含む本発明の組成物または乳液を前記患者の皮膚に適用することを含む。極性薬剤は例えば以下のものであるか、または以下のものを含むことができる:極性抗炎症性または抗リューマチ性薬剤、例えばイブプロフェン;抗菌剤、例えば瘡の治療で有用な薬剤(例えばクリンドマイシンナトリウムホスフェートまたはテトラサイクリン);ホルモン、例えばエストロジェン;極性鎮痛剤、例えばフェンタニル;極性運動疾患治療分子、例えばスコポラミンまたはヒオシン;降圧剤、例えばクロニジン;血管拡張剤または冠状動脈拡張剤、例えばニトログリセリン;またはニコチン。
【0084】
さらに別の特徴は、前記極性薬剤を必要としている患者の治療における本発明の組成物または乳液の使用である。
【0085】
極性薬剤を必要としている患者は、例えば極性抗炎症剤または抗リューマチ剤、例えばイブプロフェンを必要とする関節炎の患者であろう。また別には、極性薬剤を必要とする患者は、極性抗菌剤(例えばクリンドマイシンナトリウムホフェートまたはテトラサイクリン)を必要とする瘡をもつ患者であろう。極性薬剤を必要とする患者はニコチンを必要とする患者、例えば喫煙を止めようと試みている患者でもよい。経皮的に投与した場合に個々の症状の治療に適した極性薬剤は、当業者のよく知るところである。
【0086】
本組成物または乳液は、任意の便利な態様で包装または提供される。例えば、それは管状容器、箱、ビンに詰めるか、または加圧エアロゾルでもよい。後者の技術は当業者には周知で、例えば以下の文献(Remington's Pharmaceutical Sciences 15th Ed, Mac Publishing)で説明されている。好ましくは、本組成物または乳液は、未使用組成物または乳液と環境との接触を最小限にとどめることができるような態様で包装され、それによって、容器の開放の前後における組成物または乳液の汚染を最小限にする。特に好ましくは、本組成物または乳液は加圧エアロゾル容器またはプラスチックのディスペンサーボトルに詰められる。例えば、ナトリウムクロモグリケートを4%または8%w/vで含む組成物または乳液はプラスチックディスペンサーボトルに詰めることができる。この容器は1か月分を供給することができる(約150から300ml)。
【0087】
本乳液の外観はクリームでもローションでも、またはフォームでもよいことは理解されよう。
【0088】
本組成物または乳液は、局所的に罹患領域または予防的に非罹患領域に適用できる。本組成物または乳液は、医師の指示にしたがって適用できる。薬剤の吸収を促進するために、例えば、罹患領域を例えば少なくとも約5分間擦って組成物または乳液を適用する。本組成物または乳液は1日1回または2回適用するか、さもなくばより長い間隔または短い間隔で患者の必要に応じ、患者または医師の決定により適用される。上記で述べたように、クロモンを含む本発明の組成物または乳液は、コルチコステロイドを含む組成物の後で適用できる。
【0089】
これから本発明を以下の非制限的実施例および図を参考に説明する。
【実施例】
【0090】
実施例1:ナトリウムクロモグリケートを含む水中油乳液の製造
以下の物質を一緒にして乳液を生成する。百分率は最終乳液のw/v百分率を示す。
【0091】
A群:
ソルビタントリステアレート又はポラワックスNF 2.0%
グリセロールモノステアレート 2.0%
流動軽パラフィン 10.0%
白色軟パラフィン 5.0%
イソプロピルミリステート 3.0%
ベンジルアルコール 0.2%
B群:
ナトリウムクロモグリケート 7.5%
ナトリウムエデテート 0.1%
両性界面活性剤 2.0%
(例えば二ナトリウムコアカアンホジアセテート、これはラウリルスルフェートおよびヘキシレングリコールと調合することができる、例えばミラケア2MCA/E(登録商標))
アルコキシル化セチルアルコール 1.0%
トリクロサン 0.2%
精製水 67.0%
乳液は油(A群の化合物)を約70℃に加熱し、続いてよく攪拌しながらそれを水相(B群化合物、同様に約70℃)に定常的に添加し、さらに乳液を冷却することによって製造する。バッチサイズは約10リットルから約500リットルまたはそれ以上であろう。乳液は、当業者に知られている強力せん断ホモジナイザーを用いて製造される。成分が混合されるように混合物を攪拌し、混合物が室温に冷却されるまで攪拌を継続する。混合物の過剰攪拌は、有害であるようには思われない。混合物が十分に攪拌されない場合は乳液は形成されず、たとえ形成されたとしても不安定で、分解すなわち油相成分と水相成分に戻る。
【0092】
実施例2:ナトリウムクロモグリケート含有乳液のアトピー性皮膚炎治療における効果の臨床試験
臨床試験の患者は、アトピー性皮膚炎の診断を基準に、または総血清IgEが200ユニット/mlより高いアトピー性皮膚炎の診断を基準に選択できる。
【0093】
患者の年齢は任意で、小児、例えば6ヶ月から5歳であろう。患者のアトピー性皮膚炎の診断重篤度レベルはいずれでもよく、または重篤度を基準に選択してもよい(例えば軽度から中等度の症状のみの患者、活発な症状のみの患者(すなわち緩解期の症状ではない)、重篤な症状のみの患者)。
【0094】
適切な臨床集団は、例えば6ヶ月から5歳の小児で総血清IgEが200ユニット/mlより高いものであろう。
【0095】
小児の臨床試験方法は、欧州アトピー性皮膚炎特別専門委員会の推奨にしたがう(29)。
【0096】
実施例3:アトピー性皮膚炎によって惹起される皮膚症状の重篤度に対する本発明の組成物の効果
本発明の組成物は以下の組成を有する:
ポラワックスNF 2.0%
グリセロールモノステアレートBP 2.0%
流動軽パラフィンBP 10.0%
白色軟パラフィンBP 5.0%
イソプロピルミリステートBPC 3.0%
ナトリウムクロモグリケート 4.0%
二ナトリウムエデテートBP 0.1%
ミラノール 2.0%
プロセチルAWS 1.0%
トリクロサン 0.2%
ベンジルアルコールBP 0.2%
脱イオン水 70.5%
二水素オルト燐酸ナトリウムを用いてpHを6.0に調節
背景情報:
患者TR(年齢3.5歳)は3−5週齢から重篤なアトピー性皮膚炎に罹患している。本発明の組成物を用いる前の治療は、1日2回の局所ステロイド適用であった。これは3年間用いられ有効ではなかった。
【0097】
本発明の組成物による治療:
患者はオーレオコート(登録商標)(トリアムシノロンアセトニド[強力なコルチコステロイド]およびクロルテトラサイクリンヒドロクロリド)、続いて一番上に本発明の組成物を適用して治療を開始した。
【0098】
3日後、オーレオコート(登録商標)をより穏やかなステロイド(ユーモベート(登録商標);クロベタゾンブチレート[中等度に強力なステロイド])で置き換え、症状の改善が続いた。13日目に順序を変更し、本発明の組成物を最初に続いてユーモベート(登録商標)を適用したが、これは効果的であるとは認められず、皮膚は赤くなり炎症を起こした。19日目に、適用順序を戻し、ユーモベート(登録商標)の後に本発明の組成物を適用した。
【0099】
25日目に、患者は皮膚症状を悪化させる風邪をひき状態が悪化し、熱感を生じたので26日目に本発明の組成物の使用を中止した。オーレオコート(登録商標)のみを2日間用い、続いて皮膚がほぼ清浄になるまでさらに6日間オーレオコート(登録商標)を本発明の組成物とともに用いた。それからユーモベート(登録商標)の使用を再開しその上に本発明の組成物を適用した。
【0100】
35日目に別の風邪をひき、患者の喘息に影響を与えたが、湿疹は悪化せず本発明の組成物の使用を中止しなかった。
【0101】
治療開始後8週間で皮膚はほぼ清浄で、患者の体には炎症もかさぶたも存在しなかった。
【0102】
結果の記録:
皮膚の状態、かゆみ、およびかゆみによる睡眠ロスを毎日記録し、0から3のスケールで測定した(3=重度、2=中等度、1=軽度、0=無し)。
【0103】
結果:
治療の結果は、図1に示すグラフに表した。図1は各症状の毎週の平均スコアを示している。
【0104】
症状は直ちに改善され、3日後に患者はより穏やかな局所コルチコステロイド治療に移された。第2週の悪化は、本発明の後でコルチコステロイド治療を適用したためであるかもしない。これは第3週に風邪のためにさらに悪化したのであろう。第4週および5週で、症状は、本発明の組成物とより強力なコルチコステロイドとの組み合わせで制御可能となり、第6週で患者は、本発明の組成物と併用しながら穏やかなコルチコステロイドに戻された。
【0105】
症状の改善が続き、患者の皮膚はほぼ清浄かつ非常に滑らかになった。その結果、患者の体には第7週までに炎症もかさぶたもほとんど存在しなくなった。
【0106】
罹患面積、コルチコステロイドクリームの使用および母親による患者の状態の評価についてさらに測定が行われた。最初の2つは顕著な減少を示し、さらに、母親は“信じられないほどの改善”があったと評価した。
【0107】
3歳から25歳の表示の他の7人の患者を本発明の組成物で治療した。最初に、数名の患者に7.5%のフォームを基剤とした製剤を投与した。これは効果的であることが示された。数名の患者で、特に傷んだ皮膚領域で熱傷感が認識された。後に患者は本発明の製剤として提供される4%溶液、特に上記で述べた製剤を投与された。これは全ての患者で皮膚の症状を改善した。熱傷感は、いくつかの事例で認識された。本発明の製剤を用いて制御が成功した患者はステロイドの使用を減らすかまたは中止することができ、7人の患者のうち5人が日常的基準で本発明の組成物の使用を継続している。
【0108】
実施例4:耐性および吸収実験
本実験は、実施例3で述べた本発明の組成物の安全性および耐性を評価し、さらにナトリウムクロモグリケートの全身的吸収を測定するためのものである。検査した製剤は、0%、2%、4%、または8%ナトリウムクロモグリケートを含む製剤である。
【0109】
実験は、二重盲検、任意抽出、プラセボコントロール付きの用量増加型実験である。
【0110】
各対象者は上記の濃度の医薬の1つだけを投与され、それは1日2回局所的に7日間前腕および腹部の予め規定した領域に適用される。36人の健常なボランティアが調査されるが、彼らのうちの少なくとも4人は男性で、さらに少なくとも4人は女性でなければならない。
【0111】
対象者は、各々12人の3群で投与される。各群の12人のうち9人はナトリウムクロモグリケート含有製剤を投与され、3人はナトリウムクロモグリケートを含まない製剤を投与される。本製剤に関して定常状態に達するためには7日間の治療で十分である。
【0112】
検査製剤は以下の領域に均等に塗布することによって投与される:両前腕の掌側および腹部。検査製剤は、各手の2本の指を使って対象者によって塗布される。規定領域をきっちりと被覆するために十分な製剤が用いられる。対象者は手袋をはめない。各対象者の検査製剤の容器は投与前に重量を測定する。製剤を投与する部位は1時間覆いをかけず放置し、続いて覆いをかける。残存検査製剤の質量を決定するために容器の重量を投与後に再度測定する。投与手順を12時間間隔で繰り返す。薬剤は各事例につき皮膚の同じ3領域に7日間適用する(合計14回投与)。
【0113】
薬剤の投与部位は、ドレーズ(Draize)スケール検定および皮膚症状(かゆみを含む)について薬剤適用の前後に評価する。
【0114】
尿は、未変化クロモグリケート(Ae0-24)の24時間累積尿分泌アッセイのために薬剤処置の7日目に採集する。全身吸収は、血漿または血清薬剤濃度に関してもっともよく評価できるが、ナトリウムクロモグリケートの予想される低薬剤レベルの測定のための鋭敏なアッセイは一般には利用できない。尿の回収はしたがって薬剤吸収を算定する手段として用いられる。
【0115】
尿サンプルは、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)によって未変化クロモグリケートについてアッセイされる。定量の限界は0.05mg/Lである。
【0116】
副作用の評価、皮膚関連症状およびドレーズスケール検定を決定する。対象者にかゆみおよび他の皮膚関連症状について質問する。
【0117】
本製剤に対する耐性は十分で、さらに吸収は吸入ナトリウムクロモグリケートで観察されるレベルより低いことが予想される。ナトリウムクロモグリケートは、臨床使用で非常に安全な薬剤であると評されており、十分に立証されている。しかしながら、いくつかの副作用が確かに発生する。これらは、一般的には一過性であると報告されており、主なものは、頭痛、めまい、標的器官の局所炎症および口内の不快な味である。
【0118】
さらにまた投与ルートによるいくつかの他の影響が存在する。目薬は場合によって熱傷のような痛みおよび刺すような痛みをもたらす。経口投与は、吐き気、皮膚発疹および関節痛を生じるかもしれない。鼻腔内投与は鼻出血を起こす可能性がある。皮膚に適用される局所製剤については、皮膚の刺激が熱傷感または刺傷感をもたらすかもしれない。
【0119】
現在のところ、臨床的に投与されるナトリウムクロモグリケートの最大投与量は、喘息(20mg吸入で1日8回まで;最大投与量160mgで13−24mgの吸収、生体利用性は8−15%)および食物アレルギー(経口的に40mg/kg/日まで;70kgの患者で最大投与量2800mgで、吸収量は28mg、生体利用性は1%)のためである。本製剤の最大投与量は、8%ナトリウムクロモグリケート製剤で約5mlを1日2回と考えられる。したがって、局所的に投与される1日の最大投与量は800mgと考えられる。文献に引用されている局所の生体利用性の値は0.01から2.75%である。これは、1日の最大吸収用量は0.08から22mgであることを意味する。したがって、全身的用量は、他の投与ルートで達成されるものより低いと考えられる。
【0120】
皮膚からのナトリウムクロモグリケートの吸収は、上記のように局所適用した後で、または例えば上記引用文献(Ishikawa et al(1987))もしくは上記で述べた文献(Ariyanayagam et al(20))に記載されたように局所適用した後で、血漿または尿中のナトリウムクロモグリケートの存在を測定することによって求めることができる。
【0121】
実施例5:フェースII臨床試験
臨床試験1:単独センター二重盲検プラセボコントロール付きランダムクロスオーバー試験。アトピー性皮膚炎の1歳から7歳の小児のステロイド治療の補助薬として実施例3で述べたように本発明の4%組成物使用。治療期間は、4週間のならしの後の12週である。評価規準は、局所コルチコステロイド使用の減少、SCORAD検定スコア、治療受容性および副作用を含む。
【0122】
対象者は、Hanifin & Rajika(Hanifin, "Atopic dermatitis", J. Am. Acad. Dermatol. 6: 1-13(1982))の診断基準を参考にしてアトピー性皮膚炎と決定した。これらのアトピー性皮膚炎は、Rajika & Langelandの等級系にしたがい(Rajika & Langeland, "Grading of the severity of atopic dermatitis", Acta Derm, Venerol. 144(suppl):13-14(1989))中等度から重度のものである。二重盲検(治療)フェースの開始時に、対象者のSCORADスコアは25またはそれ以上である。
【0123】
ステロイド治療は、ベトネベートRD(登録商標)(ベタメタゾンバリレート強力なコルチコステロイド)による。これは対象者が以前に用いていたいずれのコルチコステロイド治療の代替にもなる。
【0124】
日誌カードは、ならしおよび治療フェースの間(両親の一人によって)記載される。尿サンプルは、実施例4で述べたようにナトリウムクロモグリケートの吸収を決定するために、試験治療の12週間の最後に採取される。アトピー性皮膚炎によるかゆみおよび睡眠の妨げの程度は1日2回記録される。本治療の有効性および受容性の包括的評価もまた両親によって実施される。
【0125】
検査ローションおよび局所コルチコステロイドの適用の順序は特定される:例えば、局所コルチコステロイドは、検査ローションの適用後少なくとも15分してから適用される。ローションは1日に2回皮膚の罹患領域に適用される。
【0126】
臨床試験2:アレルギーの成人男性ボランティアによる抗原チャレンジで発生する皮膚のじん麻疹のサイズおよび発赤反応に対する本発明の2%、4%、および8%組成物による3日間の予備処置の受容性、耐性および効果を調べる、単独センター二重盲検プラセボコントロール付きランダムクロスオーバー試験。
【0127】
Kimata & Igarashi(Allergy 453:393-395(1990)およびPhillips et al(Allergy 51(3):198-199(1996))は、局所ナトリウムクロモグリケートは、ヒトの皮膚の抗原誘発じん麻疹および発赤反応を抑制することを示した。後者の実験結果は、予備処置(本事例では3日間)の後でのみ顕著な効果が観察され、皮膚プリック検査直前の単回投与後には観察されないことを示した。
【0128】
ナトリウムクロモグリケートはヒトの皮膚での抗原仲介反応に対して影響をもつかもしれない。さらに、これらの影響は、アトピー性皮膚炎のような症状におけるその潜在的な臨床効果に関連しているかもしれない。おそらくいずれの臨床効果も、皮膚の関連する細胞およびレセプターに到達するために皮膚の良好な浸透を達成する本使用製剤によるものであろう。特定の製剤の使用によって、付随するかゆみの減少とともに抑制作用が生じるということは、小児のアトピー性皮膚炎での本製剤の使用が支持され、さらに、至適濃度の選択に有用なデータを提供するであろう。
【0129】
対象者は、少なくとも2つの一般的アレルゲンに対して陽性の皮膚チャレンジテスト反応を示す。これは、陽性コントロールの反応よりも大きいかまたは同じで、少なくとも10mm2に等しい。アレルゲンは以下から選ばれる:草、ブタクサの花粉、ネコの毛、またはハウスダストダニ。対象者は、軽度から中等度のじん麻疹反応(直径が3−5mm)を生じるように希釈した抗原による皮膚プリックテストを受ける。続いて、4つの処置(2%、4%、8%ナトリウムクロモグリケートまたはプラセボ)の各々を任意の順序で実施できるように対象者を配分し、一方の前腕に1日4回3日間適用する。4日目に、最終適用の後で対象者を抗原で再チャレンジし、じん麻疹の面積および発赤反応並びにかゆみのレベルを15分後に検定する。処置期間は、少なくとも4日間の排出期間によって分断される。評価の基準は、チャレンジ後15分のアレルゲンに対するじん麻疹のサイズおよび発赤反応並びにVASスケールによって評価されるこの時点でのかゆみの程度である。
【0130】
実施例6:フェースIII臨床試験
2つの試験を以下のように実施する:
1)250人の中等度から重度のアトピー患者。
局所コルチコステロイド療法について1ヶ月の慣らし期間。
3ヶ月間のプラセボまたは能動的治療に対して任意抽出。
病状の改変(標準パラメーターを用いて測定)および使用コルチコステロイドの量の減少が治療の有効性の評価に使用される。
【0131】
長期非規制追跡試験を実施する。
2)250人の軽度のアトピー患者。
断続的局所コルチコステロイド療法について1ヶ月の慣らし期間。
3ヶ月間のプラセボまたは能動的治療に対して任意抽出。
病状の改変(標準パラメーターを用いて測定)が、治療の有効性の評価に使用される。
【0132】
長期非規制追跡試験を実施する。
【0133】
結果は、実施例3で要約したように、表示の患者で認められたものと同様である。症状の改善が認められ、コルチコステロイド治療の必要性の低下が随伴する。この処置の耐性は良好であった。
【0134】
【表1】

【0135】
【表1】

【0136】
【表1】

【0137】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】コルチコステロイドおよびナトリウムクロモグリケート含有乳液による処置後の平均症状スコアを示す。処置の詳細は実施例3に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性界面活性剤、アルコキシル化セチルアルコールおよび極性薬剤を含む組成物。
【請求項2】
前記薬剤が陰イオン性薬剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記両性界面活性剤が平衡した両性界面活性剤である、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシル化セチルアルコールがポリプロポキシル化セチルアルコールである、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記両性界面活性剤が二ナトリウムコアコアンホジアセテートを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬剤がナトリウムクロモグリケートまたはネドクロミルナトリウムを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記薬剤がコルチコステロイドまたは抗菌剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬剤が抗リューマチ剤、ニコチンまたはホルモンを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がコルチコステロイドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が水相および油相を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が水中油乳液である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がフォームである、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
以下に記載の組成物:
ソルビタントリステアレートまたは非イオン性乳化ワックス
0.5から5%w/v
グリセロールモノステアレート 0.5から5%w/v
軽流動パラフィン 1から20%w/v
白色軟パラフィン 1から10%w/v
イソプロピルミリステート 0.5から5%w/v
薬剤 0.1から20%w/v
二ナトリウムエデテート 0.01から1%w/v
両性界面活性剤 0.1から10%w/v
アルコキシル化セチルアルコール 0.1から10%w/v
トリクロサン 0.01から1%w/v
ベンジルアルコール 0.01から1%w/v
精製水 乳液を100%v/vにするまで。
【請求項14】
ナトリウムクロモグリケートを含む安定な水中油乳液であって、前記乳液が皮膚に適用されるとき、アトピー性皮膚炎/湿疹の治療に明瞭な効果を発揮するために十分な量である相当量のナトリウムクロモグリケートが前記皮膚に浸透する乳液。
【請求項15】
薬剤を、アルコキシル化セチルアルコールおよび両性界面活性剤を含む製剤の中に入れてまたは前記製剤と共に、皮膚疾患または皮膚症状に罹患している個体の皮膚に適用する前記疾患または症状の治療方法。
【請求項16】
皮膚疾患または皮膚症状の治療用医薬の製造におけるアルコキシル化セチルアルコールおよび両性界面活性剤の使用方法。
【請求項17】
皮膚疾患または皮膚症状に罹患している個体の皮膚に請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物または乳液を適用することを含む、前記皮膚疾患または皮膚症状の治療方法。
【請求項18】
皮膚疾患または皮膚症状を治療する方法における、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物または乳液の使用方法。
【請求項19】
皮膚疾患または皮膚症状の治療用医薬の製造における、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物または乳液の使用方法。
【請求項20】
前記皮膚疾患または皮膚症状が、皮膚のマスト細胞および/または遅延性(細胞性)過敏反応および/または炎症が関与していると考えられるものである、請求項18または19のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項21】
前記皮膚疾患又は皮膚症状が、アトピー性皮膚炎または湿疹、接触過敏、乾癬、薬剤過敏反応、アプサス潰瘍、ベーチェット症候群、天疱瘡、じんま疹、色素性じんま疹、皮膚発熱壊疽、 慢性皮膚潰瘍、クローン病付随潰瘍、火傷、昆虫の刺し傷/かみ傷、ヘルペス感染、全身性硬化症(全身性強皮症)、限局性強皮症(局所性強皮症)、皮膚結節性線維症、または日焼けである、請求項18から20のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項22】
前記皮膚疾患または皮膚症状がコルチコステロイドの適用によって治療されているか、治療されたか、またはさらに治療されようとしている、請求項16、18から21のいずれか1項に記載の使用方法、または請求項15または17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
極性薬剤を必要としている患者の治療方法であって、前記方法が、前記極性薬剤を含む請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物または乳液を前記患者の皮膚に適用することを含む治療方法。
【請求項24】
前記極性薬剤を必要としている患者の治療方法における、請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物または乳液の使用方法。
【請求項25】
前記患者が関節炎をもつ患者で、前記極性薬剤が極性抗炎症剤または抗リューマチ剤である、請求項23の方法または請求項24の使用方法。
【請求項26】
前記患者が瘡をもつ患者で、前記極性薬剤が極性抗菌薬剤である、請求項23の方法または請求項24の使用方法。
【請求項27】
前記患者がニコチンを必要としている患者で、前記極性薬剤がニコチンである、請求項23の方法または請求項24の使用方法。
【請求項28】
チューブ、箱、びん、または加圧エアロゾル容器に充てんされた、請求項1から14のいずれか1項の組成物または乳液。
【請求項29】
医薬として使用される、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物または乳液。
【請求項30】
前記アルコキシル化セチルアルコールがポリプロポキシル化セチルアルコールである、請求項1から13または15から29のいずれか1項に記載の組成物、方法または使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−273985(P2008−273985A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146698(P2008−146698)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【分割の表示】特願2000−550458(P2000−550458)の分割
【原出願日】平成11年5月20日(1999.5.20)
【出願人】(503412012)ソーントン・アンド・ロス・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Thornton & Ross Limited
【住所又は居所原語表記】Linthwaite, Huddersfield, United Kingdom
【Fターム(参考)】