説明

両性高分子凝集剤及びその製造方法並びにこれを用いる汚泥の脱水方法

【課題】
汚泥の脱水処理に用いると、形成されるフロックが高強度で、ろ過速度が速く、得られる脱水ケーキの含水率を十分に低下させることができる両性高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】
アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aと、
カチオン性単量体単位を有する高分子化合物Bと、
を含んでなり、前記高分子化合物Aが前記高分子化合物B 100質量部に対して、0.1〜10質量部含んでなることを特徴とする両性高分子凝集剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子量の両性高分子凝集剤及びその製造方法並びにこの両性高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生活排水、産業排水等に含まれる懸濁物を凝集・沈降・分離させることを目的として、ノニオン性、カチオン性、アニオン性又は両性の高分子凝集剤が使用されている。特に、下水汚泥の脱水処理にはカチオン性高分子凝集剤が多用されている。しかし、汚泥の発生量の増加や汚泥の性状の変化により、従来のカチオン性高分子凝集剤を用いる脱水方法では、汚泥を十分に脱水することができなくなっている。
【0003】
これらの問題を解決するため、種々の両性高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水方法が提案されている(特許文献1−3)。しかし、従来の両性高分子凝集剤は、処理する汚泥の種類によっては、汚泥に対して多量に添加する必要がある。また、従来の両性高分子凝集剤を用いると、形成されるフロックの粒径が小さくなり、ろ過速度が低下するため、単位時間当りの汚泥処理量を大きくすることができない。そのため、従来の両性高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水方法では、得られる脱水ケーキの含水率を十分に低下させることが困難である。
【0004】
また、無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用する汚泥の脱水方法が提案されている。特許文献4には、無機凝集剤としてポリ硫酸鉄を添加し、ノニオン性、アニオン性又はカチオン性の何れかの高分子凝集剤を添加してフロックを形成させ、脱水する汚泥の脱水方法が開示されている。しかし、この方法でも、形成されるフロックが十分な大きさではなく、フロック強度も低い。そのため、得られる脱水ケーキの含水率を十分に低下させることができない。
【0005】
特許文献5には、無機凝集剤と両性高分子凝集剤とを用いる汚泥の脱水方法が開示されている。しかし、この方法は、汚泥の圧搾脱水工程において、ろ布やパンチングメタル等を閉塞させやすく、脱水ケーキが剥離し難い。そのため、得られる脱水ケーキの含水率を十分に低下させることができない。
【0006】
特許文献6には、無機凝集剤を添加後、pHを5〜8に調節し、次いで両性高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法が開示されている。しかし、この方法は、処理の対象とする汚泥の性状によっては、十分な効果が得られない場合がある。汚泥の性状はその発生場所に応じて様々であり、1種類の高分子凝集剤を用いて様々な性状の汚泥を処理することは難しいのが現状である。そのため、様々な性状の汚泥に用いることができる高分子凝集剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62―205112号公報
【特許文献2】特開昭53―149292号公報
【特許文献3】特開平3―18900号公報
【特許文献4】特開昭58−51998号公報
【特許文献5】特開昭59−16599号公報
【特許文献6】特開昭63−158200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決する両性高分子凝集剤及びその製造方法並びにこの両性高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の高分子化合物を検討するうちに、アニオン性基を有する高分子化合物と、カチオン性単量体単位を有する高分子化合物とから成る両性高分子凝集剤を汚泥の脱水処理に用いると、形成されるフロックが高強度で、ろ過速度が速く、得られる脱水ケーキの含水率を十分に低下させることができることを知得し、本発明を完成するに至った。上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0010】
〔1〕 アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aと、
カチオン性単量体単位を有する高分子化合物Bと、
を含んでなり、前記高分子化合物Aが前記高分子化合物B 100質量部に対して、0.1〜10質量部含んでなることを特徴とする両性高分子凝集剤。
【0011】
〔2〕 高分子化合物Bが、高分子化合物Aの存在下で重合された高分子化合物である〔1〕に記載の両性高分子凝集剤。
【0012】
〔3〕 高分子化合物Aと高分子化合物Bとの一部が化学的に結合している〔1〕又は〔2〕に記載の両性高分子凝集剤。
【0013】
〔4〕 高分子化合物Aが、下記式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
(但し、式(1)中、R11は水素原子又はメチル基、Mは水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を示す。)で表される単量体単位を含む〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の両性高分子凝集剤。
【0016】
〔5〕 高分子化合物Bがノニオン性単量体単位を含む〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の両性高分子凝集剤。
【0017】
〔6〕 高分子化合物Bがアニオン性単量体単位を含む〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の両性高分子凝集剤。
【0018】
〔7〕 アニオン性基を有する重量平均分子量が1000〜100万の高分子化合物Aの存在下で、少なくともカチオン性単量体を含む単量体混合物を重合させる〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載の両性高分子凝集剤の製造方法。
【0019】
〔8〕 汚泥に〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【0020】
〔9〕 汚泥に有機カチオン性凝結剤及び/又は無機凝結剤を添加した後、〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【0021】
〔10〕 汚泥に有機カチオン性凝結剤及び/又は無機凝結剤を添加した後、前記汚泥のpH(25℃)を4〜7に調整し、次いで、〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の両性高分子凝集剤は、広い範囲の汚泥と強固に結合できるので、極めて高い凝集作用を発揮する。これを汚泥の処理脱水に用いる場合、形成されるフロックは粒子径が大きく、高強度であるため、ろ過速度が高い。よって、得られる脱水ケーキの含水率も低い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
なお、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【0025】
(a)両性高分子凝集剤
本発明の両性高分子凝集剤は、アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aと、カチオン性単量体単位を有する高分子化合物Bと、を含んでなる。
【0026】
高分子化合物Bは、高分子化合物Aの存在下で重合された高分子化合物であることが好ましい。
【0027】
本発明の両性高分子凝集剤は、高分子化合物Aと高分子化合物Bとの一部が化学的に結合していることが好ましい。即ち、本発明の両性高分子凝集剤は、カチオン性単量体単位を有する主鎖と、アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の側鎖と、から構成されるグラフト共重合体を含んで成ることが好ましい。
【0028】
本発明の両性高分子凝集剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤等の添加剤を加えてもよい。
【0029】
(b)高分子化合物A
本発明の両性高分子凝集剤を製造する際の原料として用いられる高分子化合物Aは、アニオン性基を有する、重量平均分子量が1000〜100万の高分子化合物である。重量平均分子量は、5000〜50万であることが好ましく、8000〜25万であることが特に好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合、得られる重合体(両性高分子凝集剤)の凝集能力が乏しい。一方、重量平均分子量が100万を超える場合、得られる重合体(両性高分子凝集剤)の不溶解分が多くなり、凝集剤としての機能を発揮し難い。なお、高分子化合物Aの重量平均分子量Mwは、標準PEOを分子量標準としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる測定値である。
【0030】
高分子化合物Aは、下記(1)の単量体単位を有していることが好ましい。
【0031】
【化2】

【0032】
式(1)中、R11は水素原子又はメチル基、Mは水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を示す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0033】
高分子化合物Aは、ビニル基を1個有する不飽和カルボン酸単量体の重合により製造される。特に(メタ)アクリル酸の重合により製造される高分子化合物が好ましい。重合の方法は、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相エマルション重合等が採用できる。簡便且つ容易に取扱いが可能である水溶液重合が好ましい。
【0034】
水溶液重合の場合、上記単量体の濃度は、30〜70質量%とすることが好ましく、40〜60質量%とすることが特に好ましい。反応温度は50〜150℃の範囲から適宜選択される。得られた重合体は水溶液の状態、又は乾燥、粉砕等の工程を経た粉末の状態で使用される。
【0035】
重合の際に用いられる重合開始剤は特に制限されない。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酢酸、t−ブチルハイドパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の過酸化物からなるラジカル重合開始剤、;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、アゾビスシアノバレリン酸、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物からなるアゾ系開始剤、;過酸化水素、過硫酸ナトリウム等の過酸化物と、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸等還元剤との組合せからなるレドックス系開始剤、;及び光重合開始剤等を、重合方法に応じて適宜利用できる。重合開始剤の使用量は単量体の合計質量対して0.05〜20質量%が好ましい。
【0036】
分子量を調節する目的で連鎖移動剤を使用しても良い。連鎖移動剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類、メタンチオール、エタンチオール等のチオール類、メタリルスルホン酸メルカプトエタノール及びメルカプトプロピオン酸等のチオール化合物や、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類等や、メタリルスルホン酸等の有機系スルホン酸化合物等が挙げられる。
【0037】
不飽和カルボン酸単量体の重合の際には、不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいても良い。共重合可能な単量体としては、特に制限されないが、以下に記載するビニル基を1個有するアニオン性単量体やビニル基を1個有するノニオン性単量体が例示される。
【0038】
アニオン性単量体としては、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が例示される。ノニオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルが例示される。これらの共重合可能な他の単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0039】
また、高分子化合物Aとしては、市販のポリ(メタ)アクリル酸(塩)類も使用できる。
【0040】
(c)高分子化合物B
本発明に用いられる高分子化合物Bは、カチオン性単量体を必須成分とし、共重合可能な他の単量体を任意成分とする単量体混合物を重合して製造される高分子化合物である。
【0041】
カチオン性単量体としては、下記式(2)で示される化合物が好ましい。
【0042】
【化3】

【0043】
式(2)中、R21は水素原子又はメチル基を示す。Aは酸素原子又はNHを示す。R22は炭素数が2〜8のアルキレン基を示す。R23は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はベンジル基を示す。R24及びR25は炭素数1〜8のアルキル基を示し、それぞれは同一であっても異なっていても良い。(X)は陰イオンを示す。(X)としては、塩素イオン等のハロゲン原子イオンや硫酸イオンが例示される。
【0044】
上記式(2)で示されるカチオン性単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートや、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩が例示される。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートやジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド付加物又は塩化ベンジル付加物等の第4級塩が例示される。
【0045】
上記の他、本発明において使用できるカチオン単量体には以下の物が例示される。
【0046】
(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジメチルアミン及びその塩酸塩又は硫酸塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート。
【0047】
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルジアルキルアンモニウムハライド。
【0048】
これらのカチオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0049】
共重合可能な単量体としては、特に制限されないが、以下に記載するノニオン性単量体やアニオン性単量体が例示される。
【0050】
ノニオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルが例示される。
【0051】
特に好ましいノニオン性単量体としては、下記式(3)で示されるアクリルアミド化合物を挙げることができる。
【0052】
【化4】

【0053】
式(3)中、R31は水素原子又はメチル基、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基である。
【0054】
これらのうちでも、特にアクリルアミドが好ましい。
【0055】
これらのノニオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0056】
アニオン性単量体としては、下記式(4)で示される(メタ)アクリル酸、及びこれらの塩類が例示される。塩類としてはアンモニウム塩、又はナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0057】
【化5】

【0058】
式(4)中、R41は水素原子又はメチル基を示す。Mは水素原子、アンモニウム基、又はアルカリ金属を示す。
【0059】
アニオン性単量体としては、この他にビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩等が例示される。
【0060】
これらのアニオン性単量体は単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0061】
単量体混合物中の各単量体の配合比(モル比)は、カチオン性単量体:ノニオン性単量体:アニオン性単量体=1〜100:0〜99:0〜99である。ノニオン性単量体を用いる場合、単量体混合物中におけるノニオン性単量体の含有量は、5〜95モル%が好ましく、10〜85モル%が特に好ましい。
【0062】
重合の方法は、水溶液ゲル重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相エマルション重合等が採用できる。簡便且つ容易に取扱いが可能である水溶液ゲル重合又は逆相エマルション重合が好ましい。
【0063】
水溶液ゲル重合の場合、上記単量体混合物の濃度は、25〜60質量%とすることが好ましく、35〜55質量%とすることが特に好ましい。単量体水溶液のpHは2〜4に調整することが好ましい。
【0064】
逆相エマルション重合の場合、上記単量体混合物の濃度は、全体量に対して25〜50質量%とすることが好ましく、35〜45質量%とすることが特に好ましい。単量体水溶液のpHは2〜6に調整することが好ましい。
【0065】
重合の際に用いられる重合開始剤は特に制限されない。上記(b)に記載の重合開始剤が同様に使用できる。重合開始剤の使用量は単量体の合計質量に対して0.001〜5質量%が好ましい。
【0066】
また、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。上記(b)に記載の連鎖移動剤が同様に使用できる。
【0067】
また、必要に応じて架橋剤を使用してもよい。架橋剤としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、N−ビニルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0068】
高分子化合物Bの0.5%塩粘度は、25〜100mPa・sであることが好ましい。0.5%塩粘度は、平均分子量の代替指標であり、測定方法は後述する。25〜100mPa・sの範囲は、重量平均分子量Mwが概ね100万〜1000万の範囲に相当する。
【0069】
0.5%塩粘度が25mPa・sより低いと、十分な大きさのフロックが形成されない。また、100mPa・sを超えると、溶解する際に不溶解物が発生しやすくなる。さらには、処理水の粘度上昇により、反応性が低下するなどの問題が生じる。
【0070】
なお、上記の重量平均分子量Mwは、JIS K7361−1に準じて、1.0N−硝酸ナトリウム水溶液を溶媒としてpH=3.0±0.1、30℃で測定した固有粘度[η](dl/g)から、下記式1により求めたポリアクリルアミド換算分子量である。
[η]=3.73×10−4×Mw0.66 (式1)
【0071】
(d)両性高分子凝集剤の製造方法
本発明の両性高分子凝集剤は、上記(b)に記載の高分子化合物Aと、上記(c)に記載の高分子化合物Bとを混合することにより製造できる。
【0072】
高分子化合物Bに対する高分子化合物Aの配合量は、高分子化合物B 100質量部に対して、0.1〜10質量%であり、0.5〜8質量%が好ましく、0.75〜5質量%が特に好ましい。配合量が0.1質量%未満の場合、得られる重合体の凝集能力が乏しい。一方、10質量%を超える場合、得られる凝集剤が溶解時にゲル化又は析出してしまい、凝集剤としての機能を大きく低減させる。
【0073】
混合の方法は、高分子化合物A及び高分子化合物Bを乾燥状態で混合しても良いし、高分子化合物A及び高分子化合物Bの各溶液をそれぞれ混合しても良い。また、高分子化合物A又は高分子化合物Bの一方の溶液に、他方の乾燥粉末を溶解することにより混合しても良い。
【0074】
特に好ましい本発明の両性高分子凝集剤の製造方法は、高分子化合物Aの存在下で、上記(c)に記載のカチオン性単量体を含む単量体混合物を重合する方法である。
【0075】
このような方法で製造される両性高分子凝集剤は、カチオン性単量体単位を有する主鎖と、アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の側鎖と、から構成されるグラフト共重合体を含んでいると考えられる。
【0076】
上記単量体混合物に対する高分子化合物Aの配合量は、上記単量体混合物の全単量体質量に対して、0.1〜10質量%であり、0.5〜8質量%が好ましく、0.75〜5質量%が特に好ましい。配合量が0.1質量%未満の場合、得られる重合体の凝集能力が乏しい。一方、10質量%を超える場合、得られる重合体が不溶化して凝集剤としての機能を果たさなくなる。
【0077】
重合の方法は、特に制限されない。上記(c)に記載の重合方法が同様に使用できる。
【0078】
重合の際に用いられる重合開始剤は特に制限されない。上記(b)に記載の重合開始剤が同様に使用できる。
【0079】
また、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。上記(b)に記載の連鎖移動剤が同様に使用できる。
【0080】
さらに、必要に応じて架橋剤を使用してもよい。上記(c)に記載の架橋剤が同様に使用できる。
【0081】
このような方法で製造される両性高分子凝集剤は、高分子化合物Aと、高分子化合物Bと、グラフト共重合体との混合物であると考えられる。上記グラフト共重合体は、両性高分子凝集剤100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましい。
【0082】
本発明においては、上記混合物からグラフト共重合体を分離してこれを凝集剤として用いてもよい。又は、両者を分離せずにそのまま用いてもよい。
【0083】
両性高分子凝集剤の0.5%塩粘度は、25〜100mPa・sであることが好ましい。推定される重量平均分子量Mwは約100万〜1000万である。
【0084】
このグラフト共重合体が良好な脱水性能を示す理由は、主鎖から離れて局在化するアニオン性基が、有機カチオン性凝結剤又は無機凝結剤のカチオン価を有効に電荷中和しイオン結合できるためと本発明者らは考えている。
【0085】
本発明の両性高分子凝集剤を用いる汚泥の脱水処理では、処理対象の汚泥は特に制限されない。公共下水処理場の各種汚泥、生活廃水処理汚泥、食品工場廃水処理汚泥、化学工場廃水処理汚泥、養豚場排水処理汚泥、及びパルプ又は製紙工業汚泥等の各種汚泥が処理対象になる。脱水方法は、具体的には、必要により汚泥に無機凝結剤及び/又は有機カチオン性凝結剤を添加し、好ましくはpHを4〜7に調節する。その後、この汚泥に本発明の両性高分子凝集剤を添加して、汚泥フロックを形成させる。なお、脱臭、脱リン及び脱窒等を目的とする場合、pHは5未満にすることが好ましい。フロックの形成方法は、公知の方法に準じる。
【0086】
無機凝結剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸鉄、ポリシリカ鉄が例示される。
【0087】
有機カチオン性凝結剤としては、ジアルキルアミン類とエピハロヒドリン重縮合物、アルキレンジアミン類とジアルキルアミン及びエピハロヒドリン重縮合物、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化物塩、ジシアンジアミドとホルムアルデヒド重縮合物、ジシアンジアミドとホルムアルデヒドと塩化アンモニウム重縮合物、ポリアルキレンイミン、(メタ)アクリレート系カチオン性基を含む水溶性高分子、及びカチオン性界面活性剤が例示される。
【0088】
両性高分子凝集剤、無機凝結剤及び有機カチオン性凝結剤の各添加量、撹拌速度、撹拌時間等は、従来公知の条件に準じる。
【0089】
形成させたフロックは、公知の手段により脱水され、脱水ケーキとされる。
【0090】
脱水装置としては、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、ロータリープレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリューデカンター型脱水機、多重円盤型脱水機が例示される。
【実施例】
【0091】
以下、実施例によりさらに具体的に本発明を説明する。なお本発明における物性の測定方法及び性能の評価方法は以下のとおりである。以下に記載のない項目は、「JIS K0102 工場排水試験法」に準じて測定した。
【0092】
〔0.1%不溶解分量〕
純水400mLに試料(重合体)を0.1質量%となる量を加えて十分に溶解し、目開き180μm(83メッシュ)の網でろ過した後の残渣をメスシリンダーを用いて測定した。
【0093】
〔0.5%塩粘度〕
純水500mLに塩化ナトリウム20.8g、及び試料(重合体)の0.50質量%となる量を加えて十分に溶解し、試料溶液を調製した。液温を25±1℃に調整し、M1ローターを付けた東機産業社製TV−10M型B型粘度計を用いて30rpm、3分間回転後の値を読み取り、これを0.5%溶液粘度とした。粘度がM1ローターの測定上限を超えた場合は、M2ローターを使用した。
【0094】
〔10秒ろ過速度〕
目開き273μm(60メッシュ)の樹脂製ろ布をフィルターとし、フロック形成後の汚泥を重力ろ過した。有効ろ過径は70mmφである。投入してから10秒後のろ液の容量を測定し、これを10秒ろ過速度とした。
【0095】
〔フロック径〕
目視により測定した。
【0096】
〔ケーキ含水率〕
脱水後の汚泥ケーキを105℃で2時間乾燥し、その減量率を含水率とした。
【0097】
〔高分子化合物A〕
(高分子化合物A1〜A4)
高分子化合物A1〜A4(以下、単に「A1」、「A2」・・・のように略記する)として、市販されているポリアクリル酸ナトリウムを使用した。それぞれの重量平均分子量は表1に示した。
【0098】
(製造例1;高分子化合物A5の製造)
還流冷却器及び攪拌機を備えた容量3リットルのガラスフラスコに水400gを仕込み、80℃に加温した。次いで、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「AA」と略記する)625gと、30質量%過硫酸ナトリウム(以下、「NaPS」と略記する)水溶液50g(アクリル酸100質量部に対して3質量部)と、30質量%亜硫酸水素ナトリウム(以下、「NaHSO」と略記する)83.3g(アクリル酸100質量部に対して5質量部)とを、それぞれ滴下ノズルから4時間かけて攪拌下にガラスフラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに30分間反応液を80℃に保持して重合を完結させた。
【0099】
重合終了後、反応液を攪拌し、その中に48質量%水酸化ナトリウム水溶液575gを滴下して中和した。このようにして固形分濃度が41質量%の高分子化合物A5(ポリアクリル酸ナトリウム)の水溶液を得た。この高分子化合物A5の重量平均分子量Mwをゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したところ、Mw=21000であった。その結果を表1に示した。
【0100】
(製造例2−4;高分子化合物A6〜A8の製造)
NaPSとNaHSを表1に示す添加量とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、高分子化合物A6〜A8をそれぞれ得た。
【0101】
【表1】

【0102】
〔高分子化合物B〕
(製造例5;水溶液ゲル重合による高分子化合物R1の製造)
ステンレス製反応容器に、78質量%ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩水溶液(以下、「DAC」と略記する)、78質量%ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル水溶液(以下、「DMC」と略記する)、50質量%アクリルアミド水溶液(以下、「AM」と略記する)及びAAを加え、さらに蒸留水を加えて全質量を1.0kgにして均一に混合した。各単量体は、表2に示した配合比とし、全単量体の合計濃度は40質量%である。この溶液をpH=4に調整し、窒素ガスを60分間溶液に吹き込みながら、溶液温度を20℃に調節した。その後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(以下、「V−50」と略記する)及びNaHSOを、各単量体の合計質量に対して固形分換算で、それぞれ1500ppm、20ppmとなるように加えた。次いで、反応容器の上方からこの溶液に光照射して重合を行い、含水ゲル状の重合体を得た。光照射には13Wブラックライトを用いた。照射強度は0.4mW/cmで、照射時間は60分間である。得られた含水ゲル状の重合体を、容器から取り出して細断した。これを温度80℃で5時間乾燥後、粉砕して粉末状の重合体(高分子化合物R1)を得た。この重合体の0.1%不溶解分量及び0.5%塩粘度を測定した。その結果を表2に示した。
【0103】
(製造例6−19;水溶液ゲル重合による高分子化合物B1〜B13の製造)
高分子化合物Aを表2に示す量で加えて、各高分子化合物Aと全単量体との合計濃度を40質量%とした以外は、製造例5と同様に操作し、高分子化合物B1−B13(以下、単に「B1」、「B2」・・・のように略記する)をそれぞれ得た。B1〜B13は、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得られた高分子化合物Bであり、それぞれが両性凝集剤でもある。
【0104】
【表2】


【0105】
重量平均分子量Mw(以下「Mw」と略す)が1200〜80万のA1〜A3及びA5〜A7を添加して製造した重合体は、全単量体量に対して8質量部添加しても水への溶解性が良好であった。一方、Mwが150万のA4を0.3質量部添加して重合したB4は、不溶解分が非常に多かった。また、Mwは50000のA2を15質量部添加して重合したB11は、溶解性が低下した。B4及びB11は、不溶解分が生じるため、実際の溶解濃度が低くなり、0.5%塩粘度が低い。
【0106】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
公共下水処理場から採取した初沈汚泥及び余剰汚泥からなる混合汚泥を用い、凝集及び脱水性能を評価した。使用した混合汚泥の性状は表3に示した。この混合汚泥200mLを300mLのビーカーに入れ、pHが4.6となるまで硫酸第二鉄を添加した。これに表3に示す両性凝集剤を、それぞれ汚泥質量(固形分ではなく有姿)に対して固形分として100ppm(質量)添加した。この混合汚泥をジャーテスターを用いて200rpmで1分間攪拌し、汚泥フロックを形成させた。汚泥フロックのフロック径及び10秒ろ過速度を測定した。ろ布上の汚泥を、同様のろ布を内装した遠沈管に採り、遠心分離器を使用して2000rpm、10分間の条件で汚泥を脱水し、そのケーキ含水率を測定した。これらの結果を表3に示した。なお、表3中、実施例4において添加した両性凝集剤のR1+A2の表記は、100質量部のR1に対し、0.3質量部のA2を予め混合してから汚泥に添加調整したことを意味し、実施例5において添加した両性凝集剤のR1+A2の表記は、100質量部のR1に対し、8質量部のA2を予め混合してから汚泥に添加したことを意味する(以下、同様の表記において同じ。)。
【0107】
【表3】


【0108】
(実施例6〜12、比較例4〜7)
汚泥の採取日と、両性凝集剤の種類及び添加量が異なる以外は、実施例1と同様の操作で、凝集及び脱水性能を評価した。使用した凝集剤、汚泥の性状、得られた結果を表4に示した。
【0109】
【表4】

【0110】
実施例1〜12に示した本発明の両性凝集剤を使用した場合は、比較例の凝集剤を使用した場合と比較して形成されるフロックの粒径が大きく、10秒ろ過速度も大きかった。さらに、得られた脱水ケーキも含水率が低いものであった。Mwが850のA8を添加して重合したB8を使用する比較例5では、高分子化合物Aを添加せずに重合したR1を使用する比較例4と比較して性能の差がほとんどなかった。また、A2を15質量部添加して重合したB11を使用する比較例7では、フロックが形成されなかった。すなわち、本発明の凝集剤は比較例の凝集剤よりも性能が優れている。さらに、実施例2と実施例4―5から明らかなように、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得られるB2は、後から高分子化合物Aと高分子化合物Bとを単に混合して得られる両性凝集剤と比較して性能が優れるといえる。
【0111】
(製造例20−32;水溶液ゲル重合によるR5、B14〜B25の製造)
A1〜A4及び各単量体を表5に示した組成とした以外は製造例6と同様に操作し、高分子化合物R5及びB14〜B25を得た。B14〜B25は、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得られた高分子化合物Bであり、それぞれが両性凝集剤でもある。
【0112】
【表5】


【0113】
A1〜A3を全単量体量に対して10質量部以下で添加して重合したB14〜B16、B18〜B21、B24〜B25は、水への溶解性が良好であった。一方、A1を15質量部添加して重合したB22は溶解性が低下し、A1を20質量部添加したB23は溶解しなかった。Mwが150万のA4を添加して重合したB17は、単量体質量に対する添加量が0.3質量部であっても不溶解分が非常に多くなった。
【0114】
(実施例13〜18、比較例6〜9)
製紙工場廃水の汚泥200mLを300mLのビーカーに採取した。汚泥のpHは8.0であった。この汚泥に、pHが6.0となるまで硫酸バンドを添加した。これに表6に示す組成の両性凝集剤を、それぞれ汚泥質量(固形分ではなく有姿)に対して固形分として50ppm(質量)添加した。この混合汚泥を、ジャーテスターを用いて200rpmで1分間攪拌し、汚泥フロックを形成させた。汚泥フロックのフロック径及び10秒ろ過速度を測定した。ろ布上の汚泥を採取し、試験用ベルトプレス機を使用して170kPaで3.0分間圧搾して脱水ケーキを得、ケーキ含水率を測定した。これらの結果を表6に示した。
【0115】
【表6】


【0116】
(実施例19〜27、比較例10〜14)
汚泥の採取日と、両性凝集剤の種類が異なる以外は、実施例13〜18、比較例6〜9と同様の操作で、凝集及び脱水性能を評価した。使用した凝集剤、汚泥の性状、得られた結果を表7に示した。
【0117】
【表7】


【0118】
実施例13〜27に示した本発明の両性凝集剤を使用した場合は、比較例の凝集剤を使用した場合と比較して形成されるフロックの粒径が大きく、10秒ろ過速度も大きい。さらに、得られた脱水ケーキの含水率も低かった。A1を全単量体量に対し0.05質量部を添加して重合したB18を使用する比較例11では、高分子化合物Aを添加しないR5を使用する比較例10と比較して性能の差がほとんどなかった。また、A1を15質量部添加して重合したB22を使用した比較例12では、さらに性能が低下した。A1をR5に対して15質量部又は20質量部添加して混合した比較例13及び14では、フロックが小さいか又はフロックが形成されなかった。すなわち、本発明の凝集剤は比較例の凝集剤よりも性能が優れている。さらに、実施例22と実施例26〜27から明らかなように、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得られるB21は、後から高分子化合物Aと高分子化合物Bとを単に混合して得られる両性凝集剤と比較して性能が優れるといえる。
【0119】
(製造例6;エマルション重合によるR10の製造)
1000ml四つ口セパラブルフラスコにDACを203.6g、DMCを2.2g、AAを7.4g、連鎖移動剤としてイソプロピルアルコール4.6g(単量体に対して2.0質量%)、及び蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した。その後、V−50を0.04g含む20gの水溶液を添加し、全量が400gとなるように蒸留水を加えて単量体水溶液を調製した。さらに、この単量体水溶液を、HLB 8.0のノニオン性界面活性剤10.0gを溶解したパラフィン油 155gに加え、ホモジナイザーを用いて約1分間高速攪拌し乳化した。その後、フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に代え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通して脱気した。その後、50℃に昇温して、窒素ガス雰囲気下で重合を行った。重合終了後、HLBが13.0のノニオン性界面活性剤17.2gを加えてエマルション型高分子化合物を得た。
【0120】
(製造例33〜40;エマルション重合によるB26〜B32の製造)
A2、A4又はA7を表8に示す組成とした以外は製造例6と同様に操作し、B26〜B32を得た。B26〜B32は、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得た高分子化合物Bであり、それぞれが両性凝集剤である。
【0121】
【表8】



【0122】
A2又はA7を全単量体質量に対し、10質量部以下で添加して重合したB26〜B28、及びB31は、水への溶解性が良好であった。一方、A2を15質量部添加して重合したB29、及びA7を12質量部添加して重合したB32は溶解性が低下した。また、A4を添加して重合したB30は、単量体質量に対して0.3質量部の添加量であっても不溶解分が非常に多いものであった。
【0123】
(実施例28〜32、比較例15〜21)
公共下水処理場から採取した消化汚泥を用い、凝集及び脱水性能を評価した。使用した汚泥の性状は表9に示した。この混合汚泥200mLを300mLのビーカーに入れ、表9示した組成の両性凝集剤を、それぞれ汚泥質量に対して固形分として300ppmとなるよう添加した。この汚泥を、ジャーテスターを用いて200rpmで30秒間攪拌し、汚泥フロックを形成させた。汚泥フロックのフロック径及び10秒ろ過速度を測定した。ろ布上の汚泥を採取し、試験用ベルトプレス機を使用して170kPaで3.0分間圧搾して脱水ケーキを得、ケーキ含水率を測定した。これらの結果を表9に示した。
【0124】
【表9】


【0125】
実施例28〜32に示した本発明の両性凝集剤を使用する場合は、比較例の凝集剤を使用する場合と比較して形成されるフロックの粒径が大きく、10秒ろ過速度も大きかった。さらに、得られた脱水ケーキの含水率も低かった。A2を全単量体質量に対し0.05質量部を添加して重合したB26を使用する比較例16では、高分子化合物Aを添加しないで重合したR10を使用する比較例15と比較して性能の差がほとんどなかった。また、A2を15質量部添加して重合したB29、A7を12質量部添加して重合したB32を使用する比較例17及び比較例19では、さらに性能が低下した。A4を0.3質量部添加して重合したB30使用する比較例18では、フロックが形成されなかった。また、R10に対して12質量部のA7を添加して混合した比較例21もフロックが形成されなかった。すなわち、本発明の凝集剤は比較例の凝集剤よりも性能が優れている。さらに、実施例28―32から明らかなように、高分子化合物Aの存在下で単量体を重合して得られるB27、B28は、後から高分子化合物Aと高分子化合物Bとを単に混合して得られる両性凝集剤と比較して性能が優れる傾向がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基を有する重量平均分子量Mwが1000〜100万の高分子化合物Aと、
カチオン性単量体単位を有する高分子化合物Bと、
を含んでなり、前記高分子化合物Aが前記高分子化合物B 100質量部に対して、0.1〜10質量部含んでなることを特徴とする両性高分子凝集剤。
【請求項2】
高分子化合物Bが、高分子化合物Aの存在下で重合された高分子化合物である請求項1に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項3】
高分子化合物Aと高分子化合物Bとの一部が化学的に結合している請求項1又は2に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項4】
高分子化合物Aが、下記式(1)
【化7】



(但し、式(1)中、R11は水素原子又はメチル基、Mは水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を示す。)で表される単量体単位を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項5】
高分子化合物Bがノニオン性単量体単位を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項6】
高分子化合物Bがアニオン性単量体単位を含む請求項1乃至5の何れか1項に記載の両性高分子凝集剤。
【請求項7】
アニオン性基を有する重量平均分子量が1000〜100万の高分子化合物Aの存在下で、少なくともカチオン性単量体を含む単量体混合物を重合させる請求項1乃至6の何れか1項に記載の両性高分子凝集剤の製造方法。
【請求項8】
汚泥に請求項1乃至6の何れか1項に記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【請求項9】
汚泥に有機カチオン性凝結剤及び/又は無機凝結剤を添加した後、請求項1乃至6の何れか1項に記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【請求項10】
汚泥に有機カチオン性凝結剤及び/又は無機凝結剤を添加した後、前記汚泥のpH(25℃)を4〜7に調整し、次いで、請求項1乃至6の何れか1項に記載される両性高分子凝集剤を添加して脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。

【公開番号】特開2013−78755(P2013−78755A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106457(P2012−106457)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(306048535)MTアクアポリマー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】