説明

両親媒性コポリマーおよび調節放出の有効成分を基にした微小粒子、ならびにこれらを含む医薬製剤

本発明は、有効成分(AI)、特にタンパク質およびペプチド有効成分を輸送する両親媒性ポリアミノ酸の新規な微小粒子に関し、またAIの前記微小粒子を含む新規な調節放出医薬製剤に関する。本発明の目的は、両親媒性ポリアミノ酸のナノ粒子の凝集によって得られ、特に乾燥固体形態で、分散能力に関して、ならびに再構成懸濁液に関し、容易に取扱い、および注射できる安定性および能力に関して、特性が改善している、AIが充填された新規な微小粒子を開発することである。第1の態様において、本発明は、少なくとも1種のAI(非共有結合による結合した)を含み、等張条件下でpH7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成する両親媒性ポリアミノ酸(PO)の微小粒子に関し、前記微小粒子は、a.これらを少なくとも1種のAIを含むPOのコロイド懸濁液または溶液の微粒化によって得ること、b.0.5から100μmのサイズ、およびc.これらがコロイド懸濁液に分散性であることを特徴とする。また、本発明は、これらの微小粒子を調製するための方法、これらPO/AI微小粒子の懸濁液を含む液体製剤、本製剤を再構成するための方法およびキット、ならびに本製剤の乾燥形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分(AP)、特にタンパク質およびペプチドの有効成分の新規なトランスポーターに関し、前記APトランスポーターを含む新規な調節放出(modified release)医薬製剤に関する。これら製剤の多くの治療的な(ヒトおよび動物への)適用が存在する。
【0002】
本明細書を通して使用される対照APは、少なくとも1種の有効成分に向けられる。
【0003】
「調節放出」という用語は、持続および/または遅延および/または周期的(pulsatile)放出を意味する。
【0004】
より具体的には、本発明により向けられる新規なAPトランスポーターは、両親媒性ポリマー(例えば、疎水基によって修飾されたポリアミノ酸)から形成された微小粒子である。これらの微小粒子は、ポリマーと結合した少なくとも1種のAPを含み、コロイド懸濁液の形態または乾燥形態で提供することができる。
【背景技術】
【0005】
持続放出の医薬AP、特に治療用ペプチド/タンパク質の領域において、目的は、健常対象者で観察される値に近い血漿ペプチドまたはタンパク質濃度を、可能な限り患者で再現させることであることが多い。
【0006】
この目的は、血漿中でタンパク質の有効期間が短く、結果として治療用タンパク質が繰り返し注射されていることと相反するものである。ここで、治療用タンパク質の血漿中濃度は、濃度ピークが高く、最小濃度が非常に低いことを特徴とする「のこぎり歯」プロフィールを示す。健常対象者における基礎濃度より非常に高い濃度のピークは、インターロイキンIL-2などの治療用タンパク質の高い毒性により、非常に顕著な有害作用を有する。さらに、最小濃度は、治療効果を有するために必要な濃度未満であり、この結果、患者の治療適用範囲は狭くなり、また重篤な長期の副作用を生じる。
【0007】
結果として、患者の治療のための理想値に近い治療用タンパク質の血漿中濃度を患者に再現させるために、検討中の医薬製剤が長期間にわたり治療用タンパク質を放出し、長時間にわたる血漿中濃度の変動を制限することを可能にすることが重要である。
【0008】
さらに、この活性製剤は、好ましくは、すでに当業者に公知の以下の基準を満たすべきである。
1 血漿中濃度が治療レベルで維持されるような活性および未変性治療用タンパク質(例えば、ヒトまたは合成タンパク質)の持続放出、
2 容易に注射可能である、注射時の十分な低粘度、
3 生体適合性および生物分解性の形態、
4 毒性または免疫原性を示さない形態、
5 優れた局所忍容性を有する形態。
【0009】
これらの目的を達成しようと試みる際に、先行技術で提供された最良のアプローチの1つは、治療用タンパク質が充填されたナノ粒子の低粘度液体懸濁液から成る、持続放出形態の治療用タンパク質を開発することであった。これらの懸濁液は天然の治療用タンパク質を容易に投与することを可能にさせている。
【0010】
したがって、治療用タンパク質は、疎水基および親水基を含むコポリアミノ酸のナノ粒子と結合している。特許US-B-5904936は、一方が中性および疎水性であり、他方がイオン性である、少なくとも2種のアミノ酸を含むポリアミノ酸の両親媒性コポリマーの、平均サイズが0.01から0.5μmのサブミクロンサイズの粒子(submicron-sized particle; NVP)、および平均サイズが0.5から20μmのミクロンサイズの粒子(micron-sized particle; MPV)を開示している。インスリンなどのタンパク質は、水溶液中で、これらの粒子において自然に吸着される。ポリアミノ酸コポリマーは、例えば、ポリ(L-ロイシン-b-(L-グルタミン酸ナトリウム)ブロックコポリマーである。この特許は、モノカチオン塩(硫酸アンモニウム)、ポリカチオン塩(Fe2+、Fe3+、Zn2+、Ca2+、Al2+、Al3+またはCu2+)、酸(HCl)またはカチオン性ポリマー(ポリリシン)のポリ-Leu/Gluのコロイド懸濁液への添加によってMPVを得るためのNPVの凝集を開示している。
【0011】
特許出願WO-A-03/104303は、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基を含み、これらの残基の少なくとも一部が少なくと個1つのα-トコフェロール単位を含むグラフトを担持する両親媒性ポリアミノ酸を開示している(例えば、合成または天然起源のαトコフェロールによってグラフトされたポリグルタミン酸またはポリアスパラギン酸)。これらの「疎水的に修飾された」ホモポリアミノ酸は、少なくとも1種の活性タンパク質(インスリン)とpH7.4の水性懸濁液中で容易に結合することができるナノ粒子のコロイド懸濁液を、水中で自然に形成する。
【0012】
US-B-5904936およびWO-A-2003/104303に従った懸濁液によって「ベクター化された(vectorized)」活性タンパク質(例えば、インスリン)のインビボでの放出期間は延長される可能性がある。
【0013】
放出期間の延長は、PCT出願WO-A-05/051416で開示された薬剤形態によって部分的に得られた。この出願は、皮下注射後に、内在性アルブミンと接触することでゲルが患者のその場で形成させる濃度で注射する、疎水的に修飾されたポリ(L-グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)のコロイド懸濁液を開示している。次いで、このタンパク質は、1週間の典型的な期間にわたりゆっくりと放出される。しかし、例えば、ヒト成長ホルモンの場合のように、投与される治療用タンパク質の濃度が比較的高いと、放出期間は数日のみに限られる。
【0014】
・非経口経路(例えば、皮下)による注射後に、未変性および高濃度(例えば、数mg/ml)であるAP(例えば、治療用タンパク質、治療用ペプチドおよび小分子)のインビボでの持続した放出時間を得ることを可能にし、
・保管において物理化学的および生物学的に安定した、APの持続放出医薬製剤を提供することによってこの先行技術を改善することが可能である。
【0015】
これを行うために、イオンが明白に定義された比率で存在した両親媒性ポリアミノ酸のイオン性基(ionizable group; IG)の極性と反対極性の多価イオンにより、WO05/051416に記載の製剤のナノ粒子を一緒に凝集し、微小粒子を得ることが望ましい。これにより、組み合わさるAP(例えば、タンパク質またはペプチド)の顕著な放出期間の延長が可能になる微小粒子の特定集団が選択される。例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+もしくはそれらの混合物、および/またはAl3+、Fe3+もしくはそれらの混合物などのいくつかの多価イオンは、そのようなAPの持続放出のための液体医薬製剤に対して優れた忍容性をもたらす。製剤は、例えば、次式を有する生成物rの多価イオンMg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu3+、Al2+またはFe3+を含む、0.5から100ミクロンのサイズを有する合成起源のα-トコフェロールによってグラフトされたポリグルタミン酸のミクロンサイズの粒子を基にした低粘度の水性コロイド懸濁液を含むことができる。
【0016】
【数1】

【0017】
(式中、・nは、前記多価イオンの原子価であり、
・[MI]は、多価イオンのモル濃度であり、
・[IG]は、イオン性基IGのモル濃度であり、rが0.3から10である)。
これらの選択されたミクロンサイズの粒子は、両親媒性コポリマーの多数のナノ粒子の凝集によって生じる。
したがって、AP(例えば、hGH)を充填された微小粒子の懸濁液を、多価イオンMg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+、Al3+またはFe3+とのフロキュレーション、およびこれに続く成熟および洗浄によって製造することができる。この懸濁液を、続いて凍結乾燥または微粒化し、次に水で再構成し、注射可能な状態にある製剤を生産することができる。
【0018】
微小粒子のこれらの乾燥粉末形態が、保管に関して経験的に有利であることは明白である。具体的には、これらは、これら微小粒子の物理的安定性およびAPの安定性を増すことができるはずである。しかし、非経口経路による治療的適用でのこれら微小粒子粉末の使用という状況では、障害は、使用時にこれらの粉末を容易に分散(または、懸濁)させ(例えば、周囲温度において、少なくとも数分で、実際には、少なくとも数十分でも)、再構成された安定した液体微小粒子形態、より具体的には、懸濁液を得ることを可能にすることにある。この安定性は、特に、この再構成懸濁液の容易な取扱いが可能になるために望まれる。また、この再構成懸濁液が、注射器または注射ペン(インスリンペン型)と結合した中空針を通過させることによって、容易に注射できることが重要である。最後に、再構成懸濁液の分散、取扱いおよび注射の操作が、患者または医療従事者によって実施されることが意図されているという事実を考慮に入れることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US-B-5904936
【特許文献2】WO-A-03/104303
【特許文献3】WO-A-05/051416
【特許文献4】US-A-2005/0158392
【特許文献5】WO-A-00/30618
【特許文献6】FR-A-2881140
【特許文献7】FR-A-2801226
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Maaら、J. Pharm. Sci.、87(2)、152〜159, 1988
【非特許文献2】「Biopolymers, 1976, 15, 1869」
【非特許文献3】H.R.Kricheldorf、「alpha-Amino acid N-carboxy Anhydride and related Heterocycles」、Springer Verlag(1987)
【非特許文献4】Tomidaら、Polymer 1997、38、4733〜36
【非特許文献5】Injectable Drug Development、P.K. Guptaら、Interpharm Press、Denver、Colorado、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
これに関連して、本発明の主要な目的の1つは、例えば、WO-A-05/051416で開示される製剤に従ったタイプの、生物分解性および水溶性両親媒性ポリマーのナノ粒子の凝集によって得られる新規な微小粒子を提供することであり、これらの微小粒子は、APが充填され、特に、これらの分散する能力(「分散性」)に関して、ならびに再構成懸濁液に関し、容易に取扱いおよび注射できる安定性および能力に関して、特に、乾燥固体形態で改善した特性を示すことができるであろう。
【0022】
本発明の別の目的は、生物分解性および水溶性両親媒性ポリマーのナノ粒子の凝集によって得られる新規な微小粒子を提供することであり、前記微小粒子は、APが充填され、水相であろうと、有機相であろうと良好な分散特性を有し、一方で前記微小粒子の完全性を維持している。
【0023】
本発明の別の目的は、生物分解性および水溶性両親媒性ポリマーのナノ粒子の凝集によって得られる新規な微小粒子を提供することであり、前記微小粒子は、APが充填され、固体および乾燥形態で、優れた安定特性を有する。
【0024】
本発明の別の目的は、微小粒子が、さらに
→例えば、WO-A-05/051416で開示される製剤に従ったタイプの、生物分解性および水溶性両親媒性ポリマーのナノ粒子の凝集によって得られ、
→APが充填され、
→上記の目的で定義された通りである、固体および乾燥形態における微小粒子の調製のための新規な方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、上記の目的で向けられたタイプの固体および乾燥形態の微小粒子の調製方法、およびさらに単純、経済的および産業用である調製方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、微小粒子が、さらに
→APが充填され、
→上記の目的で定義された通りである、例えば、WO-A-03/104303で開示される製剤に従ったタイプの、生物分解性および水溶性両親媒性ポリマーのナノ粒子の凝集によって得られる新規な微小粒子を含む医薬製剤を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、先行技術の不備を解決し、特に、非経口経路(例えば、皮下)による注射後に、未変性AP(例えば、タンパク質、治療用ペプチドまたは小分子)のインビボでの持続した放出期間を得ることを可能にする、APの持続放出のための医薬製剤を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、非経口経路(例えば、皮下)による注射後に、例えば、数mg/mlの高濃度の治療用タンパク質またはペプチドのインビボでの持続した放出期間を得ることを可能にする、医薬製剤を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、保管において物理化学的および生物学的に安定した、インビボでのAPの持続放出医薬製剤を提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの以下の特性(生体適合性、生物分解性、非毒性および良好な局所忍容性)を示す、インビボでのAPの持続放出医薬製剤を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、少なくとも1種のAPと自己結合している両親媒性ポリマーPOの微小粒子(PO/AP微小粒子)を含むインビボでのAPの緩徐な持続放出のための医薬製剤あって、ポリマーPOが、水中でコロイド状のナノ粒子の懸濁液を自然に形成する疎水基(HG)および親水基[好ましくは、少なくとも部分的にイオン化されているイオン性基(IG)]を担持する水溶性の生物分解性ポリマーであり、このポリマーPOが、例えば、アスパラギン酸残基またはグルタミン酸残基によって主鎖が形成されているポリアミノ酸であり、これら単位の少なくとも一部が、鎖中および/または鎖末端で少なくとも1つの疎水基HGのグラフトによって修飾されている医薬製剤を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、キットが、例えば、患者または医療従事者が容易に使用することができるように使用が単純である、上記で提示した目的において定義された通りに製剤を再構成するためのキットを提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、例えば、特に患者または医療従事者にとって実施することが単純である、上記で提示した目的において定義された通りに製剤を再構成するための方法を提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、
・上記で提示した目的において定義された通りに、少なくとも1種のAPと結合したPO微小粒子を基にした、
・または上記で提示した目的において定義された通りに製剤から得た、
特に肺吸入および投与のための乾燥粉末形態であるAPの持続放出のための固体医薬製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
これらの目的を達成するために、特に本発明者らは、長期および困難な調査の後に、完全な驚きと、予想外にも、両親媒性PO(例えば、コポリアミノ酸上の)およびAPを基にした製剤の微粒化により、液状媒体での微小粒子水性懸濁液の再構成を可能にし、サイズが0.5から100ミクロンである、非常に安定した乾燥PO/AP微小粒子が生じることを発見する功績を挙げている。
【0036】
さらに、本発明者らは、手段が水性液相および有機液相の両方における微小粒子の分散を最適化することを可能にする、これらの微小粒子から懸濁液を再構成するための手段を開発する功績を挙げている。
【0037】
これは、上質の安定した容易な分散が、注射用製剤として乾燥PO/AP微小粒子から再構成された、これら懸濁液使用のための前提条件であるからである。
【0038】
微粒化は、粒子の構成物質の溶液または懸濁液から乾燥粒子を生産するために知られた産業技術である。微粒化(または噴霧乾燥)は、熱風または高温の不活性ガスの流れの中で、この溶液または懸濁液の噴霧された小滴を非常に迅速に蒸発させることにある。
【0039】
この製剤領域で、微粒化は、タンパク質または他のペプチド化合物を基にしたAPなどの一部の感熱性のAPにとって全く容認できないとわかる熱ストレスを加えるので問題がある可能性がある。したがって、実際にペプチドAPの変性を最小化することすら、防止することが可能な賦形剤を選択することを除き、賦形剤およびAPを基にした乾燥粒子を生産するために微粒化に頼ることは、自明のことではない。
【0040】
したがって、このことについて、出願US-A-2005/0158392が、ペプチドAPが充填された固体の親油性微小粒子の微粒化による調製を開示している。この微粒化は、ヒアルロン酸、APおよび親油性界面活性剤(例えば、レシチン)(実際に、別のTween(登録商標)80タイプの界面活性剤でも)を含む水溶液を微粒化すること、または第1ステップで、ヒアルロン酸、APおよび場合によってTween(登録商標)80タイプの界面活性剤を含む水溶液を、1次粒子を得るために微粒化し、第2ステップで、1次粒子が分散している親油性界面活性剤(例えば、レシチン)のアルコール溶液を微粒化することかのいずれかにある。この米国出願における重点は、親油性界面活性剤が、ヒアルロン酸およびAPを基にした微小粒子に対するコーティング被膜を形成することを目的とした、ヒアルロン酸および親油性界面活性剤(例えば、レシチン)の保護的組合せに置かれている。この文書は、一緒に微小粒子を形成する賦形剤またはAPのトランスポーターとしての両親媒性POの使用について、まして両親媒性コポリアミノ酸の使用について言及することも、さらに触れることさえしていない。
【0041】
別の微粒子化の例は、Maaら、J. Pharm. Sci.、87(2)、152〜159, 1988による論文に記載のものである。この文書によれば、微小粒子を得るために微粒化する前に、AP(ヒト成長ホルモン)を、生物分解性界面活性剤の存在下で亜鉛によって複合体にする。
【0042】
したがって、タンパク質の微粒化が、プロセスの間にAPを保護し、保管に対してその安定性を保証するために存在する、多くの賦形剤を含む複合製剤の使用を必要とする困難な操作であり、特に、このことはヒト成長ホルモン(hGH)などの特定の感受性分子(sensitive molecule)では重要であることは明白である。
【0043】
さらに、先行技術がAPの持続放出のためにデザインされた乾燥微小粒子(特に、両親媒性POの微小粒子に関して)の液体中の分散および安定化の困難な問題について何も教えていないので、本発明者らに対する賞賛はより大きい。
【発明を実施するための形態】
【0044】
したがって、第1の態様おいて、本発明は、ポリマーPOが
・疎水基(HG)および親水基を担持する水溶性の生物分解性両親媒性コポリマーであり、
・等張条件下で、pH7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成し、
・APと非共有結合により結合し、
微小粒子が、
a. 少なくとも1種のAPを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液の微粒化によって得られ、
b. T試験で測定して、サイズが0.5から100ミクロン、好ましくは1から70ミクロン、好ましくは2から40ミクロンであり、
c. 「分散性」試験DP1においてコロイド懸濁液中で分散性である、少なくとも1種の有効成分(AP)を含むポリマー(PO)の微小粒子に関する。
【0045】
第2の態様において、本発明は、PO/AP微小粒子が、特に本発明の第1の態様により上記で定義されたようなPO/AP微小粒子であり、
i ポリマーPOが
・疎水基(HG)および親水基[好ましくは、少なくとも部分的にイオン化されているイオン性基(IG)]を担持する水溶性の生物分解性両親媒性ポリマーであり、
・等張条件下で、pH7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成し、
・APと非共有結合により結合し、
ii 前記微小粒子が、T試験で測定して、サイズが0.5から100ミクロン、好ましくは1から70ミクロン、好ましくは2から40ミクロンであり、本質的にAPを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液を微粒化するステップを含む、少なくとも1種の活性成分(AP)と結合しているPO微小粒子の調製のための方法に関する。興味深い変形によれば、微粒化によって得た微小粒子を、本質的に水性の液状媒体(好ましくは、分散手段として多価イオンを含む)中で再分散させ、次に得られた分散物を凍結乾燥させる。
【0046】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様により上記で定義されたような微小粒子であるか、または本発明の第2の態様により上記で定義されたような方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子を基にした「低」粘度のコロイド懸濁液を含む、APの持続放出のための液体医薬製剤に関する。
【0047】
第4の態様において、本発明は、キットが
・本発明の第1の態様により上記で定義されたような微小粒子であるか、または本発明の第2の態様により上記で定義されたような方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子、
・ならびに
→本質的に水性液と、
→本質的に有機および水混和性液と、
→本質的に有機水非混和性液とを含む群から選択された再構成液を含む、特に本発明の第3の態様により上記で定義されたような製剤を再構成するための再構成キットに関する。
【0048】
第5の態様において、本発明は、
・混合するステップであって
⇒本発明の第1の態様により上記で定義されたような微小粒子であるか、または本発明の第2の態様により上記で定義されたような方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子、
⇒ならびに
→本質的に水性液と、
→本質的に有機および水混和性液と、
→本質的に有機水非混和性液とを含む群から選択された再構成液を混合するステップと、
・この混合物を撹拌するステップとを本質的に含む、特に本発明の第3の態様により上記で定義されたような製剤を再構成するための再構成方法に関する。
【0049】
第6の態様において、本発明は、
・本発明の第1の態様により上記で定義されたような微小粒子であるか、もしくは本発明の第2の態様により上記で定義されたような方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子を基にしているか、
・または本発明の第3の態様により上記で定義されたような製剤から得た、吸入および経肺投与のための乾燥粉末形態を含む、APの持続放出のための固体医薬製剤に関する。
【0050】
利点
理論に縛られることは望まないが、一緒に集合して疎水性ドメインを得ることができるポリマーPOの疎水基が、ちょうどAPの安定化のような、APの調節放出のためのプロセスで重要な役割を果たすことが考えられる。
【0051】
物理的な(非共有結合性の)相互作用が、両親媒性ポリマーPOの疎水性ドメインとAP(特にタンパク質)の間で発生するという仮説を立てることができる。ポリマーに対するタンパク質のこの強い親和性が、皮下投与後の持続放出を生じさせる。この放出のメカニズムは、特に、ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸の微小粒子で観察されるメカニズム、またはAPの放出が有効成分の拡散および粒子の分解/侵食に本質的に関連があるヒアルロン酸ナトリウムのメカニズムと異なり、場合によって組み合わされる可能性がある。
【0052】
ポリマーPOに対するタンパク質の親和性は、他の安定化剤(例えば、砂糖、界面活性剤など)に頼る必要なしに、微粒化プロセスの間に起こる可能性のあるタンパク質の凝集の現象および他の有害なイベントを制限することを可能にする。このPOの保護作用も、保管に関して安定している液体製剤を容易に得ることを可能にする。最終的に、POが本質的に無定形の性質をもつと(特に、POがポリアミノ酸である場合)、これらが乾燥形態で保管される場合、このことは微小粒子に対して優れた物理的安定特性をもたらす。
【0053】
したがって、これらの両親媒性ポリアミノ酸POの存在が、APの調節放出および凝集または可能な化学分解に関するその安定化を制御するための更なる手段を導入することは明らかである。
【0054】
さらに、ポリマーPOの両親媒性の性質は、微粒化方法の間、全体が水相もしくは全体が有機揮発性相のいずれか、または水相および有機相の揮発性混合物を使用できることを可能にし、本方法実施において大きな柔軟性を提供する。
【0055】
さらに、これらの化学的性質のため、(コ)ポリアミノ酸タイプのPOから形成された微小粒子は、生物分解性および生体適合性であり、一般に良好な局所忍容性の特性を有する。
【0056】
本発明による固体および乾燥微小粒子を生産するプロセス(すなわち、微粒化)に関して、本質的には、産業規模に容易に転換できる。
【0057】
最後に、本発明による微小粒子およびこれらを含む製剤は、非毒性で、局所において良好な忍容性を示す。
【0058】
定義
本出願の全体において、接続詞「または」は、「一方もしくはもう一方、または両方」の包括的意味と理解すべきである。したがって、例えば、少なくとも1個のヘテロ原子(O、NまたはS)または少なくとも1つの不飽和を含み得る直鎖アルキルは、2個のヘテロ原子NおよびS、ならびに不飽和を含むことができる。
【0059】
本明細書の全体を通して、本発明による微小粒子とは異なり、「サブミクロンスケールの粒子」または「ナノ粒子」という用語は、例えば、1nm以上および500nm未満、好ましくは5から250nmのサイズの粒子(以下の記載のT試験で測定された)を意味する。
【0060】
本発明の意味の範囲内および本明細書全体を通して、「ポリアミノ酸」という用語は、天然ポリアミノ酸および合成ポリアミノ酸の両方、ならびに20個を超えたアミノ酸残基を含むポリアミノ酸と同じように、2から20個のアミノ酸残基を含むオリゴアミノ酸も包含する。
【0061】
ポリアミノ酸主鎖の好ましいアミノ酸残基は、L立体配置を有するアミノ酸残基であり、好ましい結合型は、別のα-アミノ酸の1位における、α型である(すなわち、アミノ酸のα-アミノ基とカルボン酸基の間のペプチド結合)。
【0062】
本発明の意味の範囲内で、「タンパク質」という用語は、例えば、タンパク質、およびオリゴペプチドまたはポリペプチドにかかわらずペプチドの両方を意味する。このタンパク質またはこのペプチドは、例えば、1つまたは複数のポリオキシエチレン基をグラフトすることによって、修飾することができる、またはできない。
【0063】
本発明の意味の範囲内および本明細書全体を通して、1つまたは複数のAPとポリマーPOの間の関係を述べるために使用される「結合」または「結合する」という用語は、特に、1つまたは複数の有効成分が、例えば、静電的もしくは疎水性相互作用または水素結合または立体的干渉による、非共有結合によってポリマーPOに結合していることを意味する。
【0064】
本発明の第1の態様:微小粒子
特性(a)
微粒化の前に、両親媒性(コ)ポリアミノ酸などの両親媒性ポリマーPOとAP(例えば、タンパク質または別のペプチド化合物)を結合させる事実は、プロセス自体および微粒化により生産された微小粒子の特性の両方に関して、数多くの利点を示す。
【0065】
物理的な微粒化処理は、得られた乾燥固体微小粒子に対して、多数のこれらの有益な特性の源である特定の構造をもたらす。この構造は、これらの有益な特性に結びついた機能と共に、微粒化によるこの生産法により正しく特徴付けられている。
【0066】
特性(b)
この特性は、下記のT試験によって客観的に定義されている。
レーザー回折による微小粒子のサイズを測定するためのT試験。
a 微小粒子が乾燥形態である場合のT0試験。
1 装置および操作条件
【0067】
【表1】

【0068】
2 試料の調製
・ヘプタン中のスパン(Span)80の0.1%溶液を調製する(このために、スパン80粉末0.01gを、20mlフラスコで検量し、次にヘプタンを計量することにより加え、最終重量10gを得る)、
・約6mgの粉末を、5ml試験管で検量する、
・0.1%スパン80を含むヘプタン0.7gを、試験管に加える、
・この試験管を、超音波槽に2分間入れて、粉末を十分に分散させる。
【0069】
3 試料の分析
静置させた液体経路分散システムの循環液を空にし、ヘプタンと置き換える。ヒドロ(Hydro)2000SMローターの撹拌を、2,400回転/分に調整する。
測定を前述の実験条件で開始する。
・レーザー光の配置、
・暗雑音の記録。
これらのステップの後、操作者は分析される試料を以下のようにして添加する。希釈試料を、不明瞭状態が5%から20%の間にあるまで1滴ずつ加え(パスツールピペットにより)、収集を開始する。
D50(分析される物体の50%が発見されるより小さい直径)に関するデータを得る。
3つの異なる調製物で実施された3つの測定のD50の平均を算出する。
【0070】
b 微小粒子が水性分散の形態である場合のT1試験
1 装置および操作条件
【0071】
【表2】

【0072】
2 試料の調製
分析する試料を、そのままセルに添加する、または非常に散乱している試料の場合、水で場合によって再希釈してもよい。
【0073】
3 試料の分析
静置させた液体経路分散システムの循環液を空にし、新しい脱塩水と置き換える。ヒドロ(Hydro)2000SMローターの撹拌を、2,400回転/分に調整する。
測定を前述の実験条件で開始する。
・レーザー光の配置、
・暗雑音の記録。
これらのステップの後、操作者は分析される試料を以下のようにして添加する。
希釈試料を、不明瞭状態が5%から20%の間にあるまで1滴ずつ加え(パスツールピペットにより)、収集を開始する。
D50(分析される物体の50%が発見されるより小さい直径)に関するデータを得る。
3つの異なる調製物で実施された3つの測定のD50の平均を算出する。
【0074】
c 微小粒子が有機溶媒中の分散である場合のT2試験
本試験は、T1試験と類似している。にもかかわらず、この場合、分散液と完全に混和性であり、粒子が膨張しない溶媒と水を置換する必要がある。多くの場合、ヘプタンが使用される。
1 装置および操作条件
【0075】
【表3】

【0076】
2 試料の調製
分析する試料を調製するために、分析するサンプル400μlを、5ml試験管において、ヘプタン600μlで希釈する必要があり、次に調製物を10秒間(10±5)ボルテックスする必要がある。
【0077】
3 試料の分析
静置させた液体経路分散システムの循環液を空にし、新しい脱塩水と置き換える。ヒドロ2000SMローターの撹拌を、2,400回転/分に調整する。
測定を前述の実験条件で開始する。
・レーザー光の配置、
・暗雑音の記録。
これらのステップの後、操作者は分析される試料を以下のようにして添加する。希釈試料を、不明瞭状態が5%から20%の間にあるまで1滴ずつ加え(パスツールピペットにより)、収集を開始する。
D50(分析される物体の50%が発見されるより小さい直径)に関するデータを得る。
3つの異なる調製物で実施された3つの測定のD50の平均を算出する。
【0078】
特性(c)
この特性は、下記のDP1試験によって客観的に定義されている。
粉末の「分散性」DP1試験
約30mgの粒子粉末を、隔壁を備えた3mlフラスコに添加する。次に、粒子の正確な重量を測定する(w1)。再構成溶液1mlを、25G×5/8(0.5×16mm)針(例えば、BDミクロランス(Microlance)3型)を取り付けた1ml注射器を使用して隔壁を通して粉末に加え、フラスコを手で断続的に15分間撹拌する。添加した溶液の正確な重量を測定するためにフラスコを計量する(w2)。この終了時、全体の懸濁液を、25G針を取り付けた1ml注射器(ブラウン インジェクケト-Fルアー(Braun Injeckt-F Luer) 1mlタイプ、9166017V参照)を通して吸引し、前もって風袋を計量した新しいフラスコにデカントし、回収した溶液の重量w3を測定する。
【0079】
分散の質的側面(溶液の分散、混濁、視覚的均一性の傾向)、25G針を通して注入されたまたは注入されない可能性、および回収された溶液のパーセンテージ
%=w3×100/(w1+w2)
ならびに微小粒子のサイズを、T1またはT2試験に従って測定する(分散液が、水溶液または有機液であるかによって決める)。
【0080】
粉末が液体中で良好な分散特性を有すると考慮されるのは、
・得られた混濁液が2から40μmの平均直径の微小粒子を含む場合、
・懸濁液の外観が均一である場合、
・25G針を通して注射可能である場合、および
・したがって、懸濁液の少なくとも80%を回収できる場合である。
【0081】
特性(a)、(b)および(c)は別として、本発明による微小粒子は、これらがST1試験および/またはST2試験において安定しているという事実によって客観的に定義することができる。
【0082】
乾燥微小粒子の物理的安定性に関するST1試験
乾燥微粒化粉末に存在する微小粒子のサイズを、T0試験に従って、レーザー粒子寸法測定器により粉末の微粒化後の1週間以内に測定する。次に粉末を乾燥器内に30℃で1週間置く。「対照」試料は5℃で放置する。分散後、サイズ測定を時間t0と同じ条件下で再度実施する。エイジング前後の粒子の分布を比較する。
【0083】
懸濁液中の粒子のコロイド安定性に関するST2試験
微小粒子粉末を、その安定性を観察するのに望ましい濃度で、磁気撹拌しながら分散液中に分散させ、中程度の磁気撹拌で少なくとも2時間撹拌を続ける(測定t0)。
粒子サイズを分散媒体(水性または有機)によってT1またはT2試験に従ってレーザー粒子寸法測定器で測定する。
続いて、懸濁液を5℃で7日間放置する。沈殿ペレットを数分間撹拌することによって分散させる(目視観測後に均一である懸濁液が得られるまで)。分散後、サイズ測定を時間t0と同じ条件下で再度実施する。
【0084】
ポリマーPO
本発明によるポリマーPOは、疎水基HGおよび親水基[好ましくは、少なくとも部分的にイオン化されているイオン性基IG]を担持する水溶性の生物分解性ポリマーである。疎水基HGは、鎖の残部に関して少数である可能性があり、鎖の側方に位置するか、または鎖に挿入される可能性があり、ランダムに(ランダムコポリマー)または配列もしくはグラフト(ブロックコポリマーまたはシーケンスコポリマー(sequential copolymer))の形態で分布する可能性がある。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマーPOは、両親媒性(コ)ポリアミノ酸である。
【0086】
そのようなPOの選択は、タンパク質/ペプチド型のAPとの優れた適合性をもたらす。したがって、ポリマーPOとタンパク質/ペプチド型のAPの出発溶液または懸濁液の組成を非常に単純化することが可能である。この出発溶液または懸濁液は、水性および/または有機相中に単にAPおよびPOだけを含み得る。他の成分を欠くことは、そのような出発溶液または懸濁液を、微粒化前に濾過すること(0.2μmフィルターを通して)を可能にし、無菌状態で微粒化を実施することができる。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、POは両親媒性(コ)ポリアミノ酸およびそれらのブレンドから選択される。
【0088】
好ましくは、本発明によるポリアミノ酸は、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸反復残基を含むオリゴマーもしくはホモポリマー、またはこれらの2種のアミノ酸残基の混合物を含むコポリマーである。これらのポリマーにおける考察中の残基は、DもしくはLまたはD/L立体配置を有するアミノ酸であり、グルタメートまたはグルタミン酸残基ではこれらのαまたはγ位、およびアスパラギン酸またはアスパラルテート残基ではこれらのαまたはβ位を通して結合している。
【0089】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、ポリマーPOは、少なくとも一部の残基が少なくとも1つの疎水基HGを有するグラフトを担持する、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基によって形成されたポリアミノ酸である。これらのポリアミノ酸は、特にPCT特許出願WO-A-00/30618で開示されたポリアミノ酸型である。
【0090】
第1の可能性によれば、POは、以下の一般式(I)で定義される(基-COOR3は、カルボン酸とR3の結合がイオン結合-COO-+R3である形態を含む)
【0091】
【化1】

【0092】
(式中、・R1は、H、直鎖C2〜C10もしくは分枝C3〜C10アルキル、ベンジルおよび-R4-[HG]を表し、または
・NHR1は、末端アミノ酸残基であり;
・R2は、H、直鎖C2〜C10もしくは分枝C3〜C10アシル、末端ピログルタミン酸基または-R4-[HG]を表し;
・R3は、Hであるか、または
・+R3は、好ましくは
・ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含む亜群から有利に選択された金属カチオン、
・有機カチオンであって、
・アミンベースのカチオン、
・オリゴアミンベースのカチオン、
・ポリアミンベースのカチオン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)、
・リシンもしくはアルギニンを基にしたカチオンを含むクラスから有利に選択されたアミノ酸を基にしたカチオンを含む亜群から有利に選択された有機カチオン、
・あるいはポリリシンもしくはオリゴリシンを含む亜群から有利に選択されたカチオン性ポリアミノ酸を含む群から選択され;
・R4は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基を基にした「スペーサー」を表し、
・Aは、独立に-CH2-基(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-基(グルタミン酸残基)を表し;
・n/(n+m)は、モルグラフト比(molar grafting rate)と定義され、この値は、pH=7および25℃で水に溶解した、サブミクロンサイズのPO粒子のコロイド懸濁液を形成するために、POにとって十分低い値であり;好ましくは、n/(n+m)は、1から25モル%、さらに好ましくは1から15モル%に含まれ;
・n+mは、重合度と定義され、10から1,000、好ましくは50から300の間で変動し;
・HGは、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表す)。
【0093】
本発明の好ましい実施形態において、疎水基HGは、-OCH2(CH2-CH2)3〜8-CH3、オレイル、トコフェリルまたはコレステリル型のアルコキシ基を含む群から選択され、
R4は単結合を表す。
【0094】
第2の可能性によれば、POは、以下の一般式(II)、(III)および(IV)のうちの1つに対応する(基-COOR3’は、カルボン酸とR3’の結合がイオン結合-COO-+R3’である形態を含む)
【0095】
【化2】

【化3】

【0096】
(式中、HGは、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表し;
・R30は、二価の直鎖アルキレンC2〜C6鎖であり;
・R3’は、Hであるか、または
+R3’は、好ましくは
・ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含む亜群から有利に選択された金属カチオン、
・有機カチオンであって、
・アミンベースのカチオン、
・オリゴアミンベースのカチオン、
・ポリアミンベースのカチオン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)、
・リシンもしくはアルギニンを基にしたカチオンを含むクラスから有利に選択されたアミノ酸を基にしたカチオンを含む亜群から有利に選択された有機カチオン、
・またはポリリシンもしくはオリゴリシンを含む亜群から有利に選択されたカチオン性ポリアミノ酸を含む群から選択され;
・R50は、1つまたは2つのメチレン単位が、好ましくはR50の各末端で、独立に-O-または-NHによって置換されてもよい二価の直鎖アルキレンC1〜C8鎖であり;
・R4は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基を基にしたスペーサーを表し;
・Aは、独立に-CH2-基(アスパラギン酸残基)または-CH2-CH2-基(グルタミン酸残基)を表し;
・n’+m’またはn’’は、重合度と定義され、10から1,000、好ましくは50から300の間で変動する)。
【0097】
有益な代替の形態によれば、R4基は単結合を表す。
【0098】
第3の可能性によれば、POは、互いに同一または異なる多くのペンダント疎水基(HG)を含む本質的に中性コポリヒドロキシアルキルグルタミンである(好ましくは、アルキルはエチルである)。また、コポリヒドロキシアルキルグルタミンは、ヒドロキシアルキルアミン基を担持する。これらのヒドロキシアルキルアミン基は、好ましくはアミド結合を通してコポリマーに結合している。グルタミン酸残基のカルボン酸をアミド化し、このコポリヒドロキシアルキルグルタミンを形成するために使用することができるヒドロキシアルキルアミン基は、互いに同一かまたは異なり、例えば、以下の2-ヒドロキシエチルアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、2,3-ジヒドロキシプロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび6-ヒドロキシヘキシルアミンの群から選択される。有利には、疎水基HGの少なくとも1つは、コポリグルタミン酸の鎖に疎水基HGを結合することを可能にする少なくとも1つのスペーシングジョイント(すなわち、ユニット)(スペーサー)を含む疎水性グラフトに含まれる。このジョイントは、例えば、少なくとも1つの直接の共有結合、または少なくとも1つのアミド結合、または少なくとも1つのエステル結合を含み得る。例えば、このジョイントは、特に、アミノ酸残基、アミノアルコール誘導体、ポリアミン(例えば、ジアミン)誘導体、ポリオール(例えば、ジオール)誘導体およびヒドロキシ酸誘導体を含む群に属するタイプのジョイントであり得る。コポリグルタミン酸またはポリアルキルグルタミン鎖にHGをグラフトすることは、コポリグルタミン酸またはコポリヒドロキシアルキルグルタミン鎖に結合することができるHG前駆体の使用を伴う可能性がある。HG前駆体は、実際には、制限されることなく、アルコールおよびアミンを含む群から選択され、これらの化合物は当業者により容易に官能性をもつことができる。このコポリヒドロキシアルキルグルタミン(好ましくは、アルキルはエチルである)に関する詳細については、FR-A-2881140で言及される。
【0099】
有益な代替の形態によれば、特に、上記で向けられた3つの可能性の少なくとも1つによれば、POの疎水基HGの全部または一部は、独立に
・6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)および/または少なくとも1つの不飽和を含み得る直鎖または分枝のアルコキシ、
・6から30個の炭素原子を含み、1つまたは複数のアニールしたシクロアルキルを有し、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)を場合によって含むアルコキシ、
・7から30個の炭素原子の、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)を含み得るアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキルを含む基の群から選択される。
【0100】
別の有益な代替の形態によれば、特に、上記で向けられた3つの可能性の少なくとも1つによれば、疎水基HGは、-OCH2(CH2-CH2)3〜8-CH3、オレイル、トコフェリルまたはコレステリル型のアルコキシ基を含む群から選択され、
R4は単結合を表す。
【0101】
別の有益な代替の形態によれば、POのnHG基は、特に、上記で向けられた3つの可能性の少なくとも1つによれば、それぞれが互いに独立に以下の式の一価の基を表す
【0102】
【化4】

【0103】
(式中、・R5は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec-ブチル(イソロイシン)またはベンジル(フェニルアラニン)を表し、
・R6は、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表し、
・lは、0から6まで変動する)。
【0104】
本発明の注目すべき特性によれば、POの疎水基R6の全部または一部は、独立に
・6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)または少なくとも1つの不飽和を含み得る直鎖または分枝のアルコキシ、
・6から30個の炭素原子を含み、1つまたは複数のアニールしたシクロアルキルを有し、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)を場合によって含むアルコキシ、
・少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS)を含み得る7から30個の炭素原子のアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキルを含む基の群から選択される。
【0105】
実際には、制限されることなく、POのグラフトの疎水基R6は、-OCH2(CH2-CH2)3〜8-CH3、オレイル、トコフェリルまたはコレステリル型のアルコキシ基を含む群から選択され、
R4は単結合を表す。
【0106】
有利にも、ポリアミノ酸の主鎖は、
・α-L-グルタミン酸塩もしくはα-L-グルタミン酸ホモポリマー、
・α-L-アスパラギン酸塩もしくはα-L-アスパラギン酸ホモポリマー、
・またはα-L-アスパラギン酸塩/α-L-グルタミン酸塩もしくはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーである。
【0107】
注目すべきも、POのポリアミノ酸主鎖のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の分布は、このように形成されたポリマーがランダム、またはブロック型もしくはマルチブロック型のいずれかのようである。
【0108】
別の定義の方法によれば、POは、2,000から100,000g/モル、好ましくは5,000から40,000g/モルの間にあるモル質量を有する。
【0109】
代替の形態によれば、POは、グルタミン酸またはアスパラギン酸残基に結合されるポリアルキレングリコール型の少なくとも1つのグラフトを担持する。
【0110】
有利にも、ポリアルキレングリコール型のこのグラフトは、以下の式(V)のグラフトである
【0111】
【化5】

【0112】
(式中、・R'4は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基を基にした「スペーサー」を表し、
・Xは、酸素、窒素およびイオウを含む群から選択されたヘテロ原子であり、
・R7およびR8は、独立にHまたは直鎖のC1〜C4アルキルを表し、
・n'''は、10から1,000、好ましくは50から300まで変動する)。
【0113】
実際には、ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコールである。
【0114】
本発明によれば、ポリアルキレングリコールにグラフトするモル百分率が1から30%まで変動することが望ましい。
【0115】
さらに、ポリアミノ酸POは、グラフトの程度が調節可能な状態で、これらをpH=7.4の水中(例えば、リン酸緩衝液により)に拡散し、コロイド懸濁液を得るという事実により極めて有益である。
【0116】
さらに、タンパク質、ペプチドまたは小分子などの有効成分APを、これらのポリアミノ酸POを含むナノ粒子と一緒に自然に結合することができる。
【0117】
POは、pHおよび組成によって、中性(例えば、-COOH)またはイオン化されている(例えば、-COO-)かのいずれかである、イオン性官能基を含むことを理解すべきである。この理由により、水相での溶解性は、イオン化官能基と、したがってpHのレベルと正の相関にある。水溶液において、対イオンは、カルボキシル官能基の場合、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどの金属カチオン、またはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンもしくはポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン)のプロトンでの形態などの有機カチオンであり得る。
【0118】
ポリアミノ酸型のPOは、例えば、当業者に公知の方法によって得られる。ランダムなポリアミノ酸は、前もってスペーサーによって官能性をもたせた疎水性グラフトを、従来のカップリング反応により、直接ポリマーにグラフトすることにより得ることができる。ブロックまたはマルチブロックポリアミノ酸POは、対応するN‐カルボキシアミノ酸無水物(N-carboxyamino acid anhydrides; NCA)の連続的な重合によって得ることができる。
【0119】
ホモポリグルタミン酸、ホモポリアスパラギン酸、またはブロック、マルチブロックもしくはランダムグルタミン酸/アスパラギン酸コポリマーであるポリアミノ酸は、例えば、従来法に従って調製する。
【0120】
α型のポリアミノ酸を得るために最も広く用いられる技術は、例えば、論文「Biopolymers, 1976, 15, 1869」およびH.R.Kricheldorfによる著作物「alpha-Amino acid N-carboxy Anhydride and related Heterocycles」、Springer Verlag(1987)に記載のN‐カルボキシアミノ酸無水物(NCA)の重合に基づく。側鎖がカルボン酸官能基を有するとき、NCA誘導体は好ましくはNCA-O-Me、NCA-O-EtまたはNCA-O-Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチルおよびBz=ベンジル)である。続いて、ポリマーを、この酸形態のポリマーを得るための適切な条件下で加水分解する。これらの方法は、本出願者の特許FR-A-2801226での記載により生まれている。本発明により使用することができる特定数のポリマー(例えば、様々な重量のポリ(α-L-アスパラギン酸)、ポリ(α-L-グルタミン酸)、ポリ(α-D-グルタミン酸)およびポリ(γ-L-グルタミン酸)型)は市販されている。α,β型のポリアスパラギン酸は、アスパラギン酸の縮合(ポリスクシンイミドを得るために)と、これに続く塩基性加水分解によって得る(参照、Tomidaら、Polymer 1997、38、4733〜36)。
【0121】
ポリマーの酸官能基とグラフトの結合は、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの適切な溶媒中で、結合剤としてカルボジイミドおよび場合によって4-ジメチルアミノピリジンなどの触媒の存在下、ポリアミノ酸の反応によって容易に実施される。カルボジイミドは、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。グラフトの程度は、成分および反応物の化学量論または反応時間によって化学的に制御される。「スペーサー」によって官能性をもたせた疎水性グラフトは、従来のペプチド結合によって、または酸触媒による直接の縮合によって得る。これらの技術は、当業者に周知である。
【0122】
前もって疎水性グラフトと合成したNCA誘導体を、ブロックまたはマルチブロックコポリマーの合成のために使用する。例えば、NCA-疎水性誘導体を、NCA-O-ベンジルと共重合させ、次にベンジル基を加水分解によって選択的に除去する。
【0123】
有効成分AP
APに関して、タンパク質、糖タンパク質、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖に結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびこれらの混合物を含む群、
ならびにより好ましくは、さらにエリトロポエチン、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、血小板由来成長因子(PDGF)、血球新生を刺激する因子およびこれらの混合物、因子VIIIおよびIX、ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアンタゴニスト、LHRH競合物、ヒト、ブタまたはウシ成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキンまたはこれらの混合物(IL-2、IL-11、IL-12)、インターフェロン-α、-βまたは-γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、VEG-F、組換え型B型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、サイクロスポリンおよび合成類似体および薬学的に活性な修飾、ならびに酸素、サイトカイン、抗体、抗原およびワクチンの断片の亜群から好ましくは選択される。
【0124】
代替の形態によれば、有効成分は、アントラサイクリン、タキソイドもしくはカンプトセシンのファミリーに属するこれらのタイプ、またはロイプロリドもしくはサイクロスポリンなどのペプチドのファミリーに属するこれらのタイプおよびこれらの混合物の疎水性、または親水性、場合によってイオン性の「小」有機分子である。
本明細書の意味の範囲内で、「小」分子は、特に、例えば、アミノ酸を欠いている小非タンパク質分子である。
【0125】
別の代替の形態によれば、有効成分は、以下の有効物質のファミリー:アルコール乱用の治療用薬剤、アルツハイマー病の治療用薬剤、麻酔薬、末端肥大症の治療用薬剤、鎮痛薬、気管支喘息治療薬、アレルギーの治療用薬剤、抗癌薬、抗炎症薬、抗凝固薬および抗トロンビン薬、抗痙攣薬、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素阻害薬、心臓血管作用薬、抗高脂血症薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、高血圧治療薬、血管保護薬、コリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系障害の治療用薬剤、中枢神経系興奮薬、避妊薬、受精率促進薬、子宮分娩の誘発薬および阻害薬、嚢胞線維症の治療用薬剤、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症の治療用薬剤、勃起不全の治療用薬剤、受精率の治療用薬剤、胃腸障害の治療用薬剤、免疫調節薬および免疫抑制薬、記憶障害の治療用薬剤、片頭痛薬、筋弛緩薬、ヌクレオシド類似体、骨粗鬆症の治療用薬剤、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、精神治療薬、鎮静薬、催眠薬および精神安定薬、神経弛緩薬、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ薬、皮膚科的治療用薬剤、ステロイドおよびホルモン、アンフェタミン、食欲抑制薬、非鎮痛性鎮痛薬、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、緩下薬、向精神薬ならびにこれら生成物のいずれかの組合せの少なくとも1つから有利に選択される。
【0126】
定量的に、重量%としてミクロンスケールの粒子と結合していないAP(非結合AP)の重量画分が、
・[非結合AP]≦1
・好ましくは[非結合AP]≦0.5であることは特に有益である。
【0127】
本発明の第2の態様: APを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液の微粒化により微小粒子を生産するための方法
本発明による方法の好ましい形態によれば、微粒化することが意図される溶液またはコロイド懸濁液に存在するPOは、少なくとも一部は、T1試験で測定して、500nm未満、好ましくは10から300nm、より好ましくはさらに10から100nmのサイズを有するPOナノ粒子の形態である。
【0128】
有利にも、微粒化する溶液またはコロイド懸濁液中のPOの濃度は、例えば、5mg/mlから100mg/ml、好ましくは10mg/mlから40mg/mlである。
【0129】
本発明の文脈において、AP/PO結合は、微粒化のステップ前および/または中に生産される。
【0130】
この結合に関して、POおよび/またはAPは、液体懸濁液の形態で固体形態(好ましくは、粉末)であり得る。
【0131】
微粒化ステップの前にPOと1つまたは複数のAPを結合する技術は、特に、特許出願WO-A-00/30618に記載されている。これは、例えば、APの溶液または懸濁液とPOのコロイド懸濁液を混合することにある。1つの代替形態によれば、粉末形態のAPをPO懸濁液と混合する。
【0132】
この生産する方法の興味深い変形によれば、少なくとも1つの有効成分(AP)と結合したPOポリマーの微小粒子を、好ましくは分散手段M1を含む本質的に水性の液状媒体中に分散させ、得られた分散物を凍結乾燥させる。
【0133】
このようにして得られた凍結乾燥物は、微小粒子を基にした液体製剤の調製を促進する(後述する本発明の第3の態様)。なぜなら、この凍結乾燥物が、前記液体製剤を調製するために使用する再構成液に迅速に分散するためである。
【0134】
有利にも、分散手段M1は、以下の
i. 極性がPOポリマーのイオン性基の極性と反対であり、連続的な水相に含まれる多価イオン、
ii. 微粒化するためにPO懸濁液/溶液に加えられ、したがって微粒化されたPO/AP微小粒子に含まれる少なくとも親水性の化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)、
iii. 少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)の少なくとも被膜でコーティングしている少なくとも微小粒子、
iv. pH変更、
v. および手段(i)から(iv)の少なくとも2つの組合せ(手段(i)が特に好ましい)の群から選択される。
【0135】
手段M1(i)から(ii)の実施形態についての詳細に関しては、以下の分散手段M2の説明で言及する。
同様に、分散の液状媒体に関して、下記で定義された再構成液について記載した添加物と同一の添加物を含むことができる。
【0136】
本発明の第3の態様: APを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液の微粒化により得られた微小粒子を基にした液体製剤
本発明による製剤は、上記の定義の通りである微小粒子であるか、またはそれ自体も上記の定義の通りおよび下記の実施例でのプロセスによって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPと結合したPO微小粒子を基にした低粘度のコロイド懸濁液を含むAPの持続放出のための液体医薬であり得る。
本製剤は、非経口的に注射可能であり、注射条件下で液体であるという利点を有する。
【0137】
本発明によれば、有利にも限定詞「低い」または「非常に低い」粘度は、20℃での1,000mPa.s以下の動粘度に対応する。好ましくは、20℃で1,000s-1のせん断勾配で測定した製剤の動粘度は、好ましくは500mPa.s以下、好ましくは2から200mPa.s、例えば1.0から100mPa.s、実際にさらに1.0から50mPa.sである。
【0138】
動粘度の測定
動粘度率の基準測定は、例えば、20℃でコーン/プレート型外形(4cm、2°)を備えたAR1000レオメーター(ティーエイインスツルメント(TA Instruments))を使用して実施することができる。粘度vを、10s-1のせん断勾配で測定する。
【0139】
この低粘度は、本発明の製剤を、特に粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内もしくは大脳内経路により、または腫瘍へ非経口的に容易に注射できるようにする。また、本発明による製剤を、とりわけ、経口、鼻腔、肺、膣内または眼球経路を通して投与することができる。
【0140】
本発明の液体製剤の粘度は、周囲温度(例えば、4から30℃)に対応する注射温度および生理的温度の両方で低い。
【0141】
両親媒性PO(例えば、ポリアミノ酸)の微粒化により形成された乾燥微小粒子は、さらに低粘度の微小粒子懸濁液または溶液を形成するために容易に再分散させることができる。
【0142】
分散手段M2
特に製剤を調製するために再構成液に微粒化PO/AP微小粒子を分散または懸濁させることに関して、前記製剤がPO/AP微小粒子を分散させるための手段M2を含むことが本発明により提供されている。
【0143】
この分散手段M2は、製剤を形成するために使用される懸濁液の連続相(すなわち、再構成液の)の性質により異なる。
したがって、4つの可能性を、特に本発明により考えることができる。
1. 懸濁液の連続相は、本質的に水性である。
2. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水混和性相である。
3. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水非混和性相である。
4. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水混和性相である、または有機水混和性相でない。
【0144】
「本質的に水性連続相」という用語は、例えば、少なくとも60%の水の質量を含む液体を意味するものと理解される。
【0145】
「本質的に有機連続相」という用語は、例えば、少なくとも60%の有機相の質量を含む液体を意味するものと理解される。
【0146】
1. 懸濁液の連続相は、本質的に水性である。
場合によって互いに組み合わせることができる分散手段M2のいくつかのタイプは、すなわち、分散手段M2は、例えば以下の群より選択されると考えることができる。
i. 極性がPOポリマーのイオン性基の極性と反対であり、連続的な水相に含まれる多価イオン、
ii. 微粒化するためにPO懸濁液/溶液に加えられ、したがって微粒化されたPO/AP微小粒子に含まれる少なくとも親水性の化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)、
iii. 少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)の少なくとも被膜でコーティングしている少なくとも微小粒子、
iv. pH変更、
v. および手段(i)から(iv)の少なくとも2つの組合せ(手段(i)が特に好ましい)。
【0147】
(i)多価イオンを基にした分散手段
POがイオン性基IGを示す場合には、分散手段M2は、極性がポリマーPOのイオン性基IG(少なくとも部分的にイオン化されている)の極性の反対であり、懸濁液を形成する懸濁液/溶液の再構成の間に水性連続相に添加される、多価イオンを含み得る。
本発明の意味の範囲内で、「多価イオン」という用語は、例えば、二価イオン、三価イオン、四価イオンおよびこれらのイオンの組合せを意味する。
POがアニオン性IG基を示す場合には、多価イオンは、多価カチオン、好ましくは二価カチオンであり、より好ましくはさらにMg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+およびこれらの混合物を含む群から選択され、または三価カチオンであり、より好ましくはAl3+、Fe3+もしくはこれらの混合物を含む群から選択される。
【0148】
本発明による製剤が、多価イオンに加えて、微小粒子を得るためのナノ粒子の凝集において有効であると思われる一価イオン(例えば、カチオン)を含む可能性がある。
これらの多価イオンは、好ましくは塩(有機または無機)水溶液、例えば、多価カチオンの硫酸塩、塩化物、酢酸塩、グルコン酸塩またはグルタミン酸塩(または他のアニオン性アミノ酸)の溶液の形態で、本発明の製剤に添加される。
多価イオンを基にしたこの分散手段M2は、より好ましくは、両親媒性PO(例えば、(コ)ポリアミノ酸)が比較的親水性である場合には適している。
【0149】
(ii)および(iii)親水性化合物を基にした、または親水性化合物を基にした少なくともコーティングを含む分散手段M2
分散手段M2は、
微粒化するPO懸濁液/溶液に加えられ、したがって微粒化されたPO/AP微小粒子に存在する少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは注射用製剤のために使用することができる)、
または少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは注射用製剤のために使用することができる)の少なくとも1つの被膜を有する微小粒子の少なくとも1つのコーティングを本質的に含むことができる。
【0150】
この分散手段M2を、いくつかの方法に従って製剤に組み込むことができる。
【0151】
第1の方法によれば、親水性化合物が、
→アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、グリシン)、
→ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、
→コポリアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー(ポロキサマー(Poloxamer)またはプルロニック(Pluronic)またはルトロール(Lutrol)型の)、
→セルロースポリマーおよびこれらの誘導体、好ましくはカルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)またはアルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、
→トレハロース、ソルビトール、マンニトールまたはスクロースなどの水素化または非水素化サッカリド、
→プロピレングリコールまたはグリセロールなどのポリオール、
→ゼラチン、好ましくは加水分解されたゼラチン、
→窒素(コ)ポリマー、好ましくはポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリ-N-ビニルラクタムを含む群に存在する窒素(コ)ポリマー、
→ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、
→ポリ(グルタミン酸ナトリウム)、
→ならびにこれらの混合物を含む群から好ましくは選択され、
前記親水性コーティング化合物が、好ましくは少なくとも1つの親水性ポリマーを含む、注射用製剤に使用することができる親水性化合物から選択された少なくとも1種の親水性化合物を、微粒化するPO懸濁液/溶液に加える。
【0152】
第2の方法によれば、微小粒子を上記の定義のような少なくとも1種の親水性化合物の少なくとも1つの層でコーティングする。
【0153】
この第2の方法において、親水性化合物は、好ましくは上記の定義のような親水性化合物から選択された少なくとも1種の親水性ポリマーを含む。
【0154】
少なくとも1種の親水性化合物を基にした分散手段M2(ii)は、十分高い疎水性を示す両親媒性PO(例えば、少なくとも1種のポリアミノ酸から成るPOに対して10モル%以上のHG基レベル)に対して特に適していることが証明されている。
【0155】
親水性で生体適合性の化合物そのようなの層による微小粒子のコーティング[手段M2(iii)]は、例えば、連続2回の微粒化によって実施することができ、前記微小粒子が混和しない溶媒中の粒子の懸濁液に対して実施する2回目の微粒化は、これら粒子の分散の促進に寄与することができる。
【0156】
微小粒子の親水性コーティングによるそのような分散手段(iii)は、微小粒子の懸濁液が少なくとも数日間、信頼性および安定性を維持し、この取扱いを容易にすることを可能にする。
【0157】
有利にも、親水性化合物を基にした微小粒子を分散するための手段(ii)または(iii)と、製剤の再構成中の水相に存在する二価イオンを基にした分散の手段(i)との組合せにより、分散を促進させることができる。
【0158】
別の特定の実施形態によれば、水性連続相または親水性コーティングも、Tween(登録商標)80、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンコポリマー(商標: Poloxamer、Pluronic、Lutrol)などの少なくとも1種の注射用界面活性剤を含むことができる。
【0159】
(iv) pH変更による分散手段M2
本発明により予想することができる別の分散手段は、好ましくは微粒化の前のpH変更による分散手段から成る。この種の手段は、特に両親媒性PO(例えば、ポリアミノ酸)がイオン性官能基を保有しており、さらに非常に親水性(すなわち、例えば、10モル%未満の疎水性HGを含む)である化合物の場合に適していることが証明されている。
【0160】
実際に、そのような手段M2(iv)の使用は、PO(例えば、ポリアミノ酸の)のイオン性官能基が非イオン化する(例えば、POがポリGluまたはポリAspタイプの親水性ポリアミノ酸である場合には酸性化)値にpHをすることによって、両親媒性POの疎水性を増加させることを可能にする。
【0161】
好ましくは、微粒化前のpH変更によるこの分散手段M2(iv)は、微粒化の直前にPO懸濁液/溶液に適用される。
【0162】
微粒化前のpH変更によるこの分散手段M2(iv)は、
・再構成ステップでの微粒化後に使用される多価イオンを基にした分散手段M2(i)、または、
・好ましくは、少なくとも1種の親水性ポリマーの微小粒子をコーティングすることM2(iii)による、親水性化合物を基にした分散手段M2(ii)もしくは(iii)と組み合わせても、組み合わせなくてもよい。
【0163】
2. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水溶性相である
分散手段は、この水混和性有機相から成る。
この相は、したがって、例えば、エタノール、N-メチルピロリドン(N-MethylPyrrolidone: NMP)、ジメチルスルホキシド(DiMethyl SulfOxide: DMSO)、イソプロパノール、グリセロールまたはグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)を含むことができる。
【0164】
3. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水非混和性相である
有益な実施形態によれば、分散手段は、水非混和性有機連続相に存在する、融点が好ましくは15℃以下である親油性液を含む。
【0165】
好ましくは、親油性液は、飽和脂肪酸のトリグリセリドの少なくとも混合物または少なくとも1種の植物油または少なくとも脂質または少なくとも1種の脂質誘導体または少なくとも1種の脂肪酸または少なくとも1種の脂肪酸誘導体を含む。
【0166】
より好ましくは、親油性液は、別々に挙げられた以下のリストの生成物の一部が例えば15℃以下の温度で液体でない場合、次いでこれらの生成物を、これらが例えば15℃以下の温度で液体であるように他のものと混合するという条件で、
・例えば、サソール(Sasol)により「ミグリオル(Miglyol)812」の名前で販売されているヤシ油から得られた飽和C8〜C10脂肪酸のトリグリセリドの混合物、
・少なくとも1種の植物油、好ましくはダイズ油、パーム油、アマニ油、綿実油、ゴマ油、ヒマワリ油または落花生油、
・少なくとも1種の脂質、好ましくは液体レシチン、合成または天然のビタミンE、
・少なくとも1種の脂質誘導体、好ましくはアラキドイルホスファチジルコリンおよびステアロイルホスファチジルコリン、
・少なくとも1種の脂肪酸、好ましくはオレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの塩、
・少なくとも1種の脂肪酸誘導体、好ましくはモノ、ジまたはトリグリセリド誘導体、オレイン酸エチル、乳酸ラウリル、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノオレエートまたはポリソルベート、
・およびこれらの混合物を含む。
【0167】
脂肪酸トリグリセリドの誘導体は、特に好ましく、特に、例えばサソールにより「ミグリオル812」の名前で販売されているヤシ油から得られた飽和C8〜C10脂肪酸のトリグリセリドの混合物は好ましい。脂肪酸の長鎖を含む他のトリグリセリドは、特にダイズ油、パーム油、アマニ油、綿実油、ゴマ油、ヒマワリ油または落花生油などの植物油中に存在する。
【0168】
微粒化されたPO/AP粉末は、この水非混和性有機相に容易に分散し、数日間完全のままであり、したがってここでも容易に取り扱うことができる微小粒子の安定した懸濁液を得る。たとえ可能性が考えられるとしても、もう1つまたは別の分散手段を加える必要なしに、特に、この分散は迅速である。
【0169】
4. 懸濁液の連続相は、本質的に有機水溶性相または有機非水溶性相である
製剤を構成している懸濁液/溶液の連続相の性質に関する第2および第3の可能性と合致した有益なプロセスの代替によれば、分散手段は、少なくとも1種の被膜形成コーティング化合物(好ましくは注射用製剤に使用することができる)による微小粒子のコーティングを含む。
【0170】
好ましくは、被膜形成コーティング化合物は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-co-コグリコリド)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(炭酸アルキル)、非水溶性POポリマー、これらの誘導体およびこれらのブレンドを含む群から選択された少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む。
【0171】
1つの代替形態によれば、被膜形成コーティング化合物は、脂質性質の化合物であり、好ましくは15℃以上の融点を示し、少なくとも1種の脂質もしくは少なくとも1種の脂質誘導体、または少なくとも1種の植物油、または少なくとも1種の脂肪酸もしくは少なくとも1種の脂肪酸誘導体または飽和脂肪酸のトリグリセドの少なくとも1つの混合物またはこれら生成物の混合物を含む。
【0172】
別の有益な実施形態によれば、例えば、疎水性の有機連続相または疎水性コーティングも、Tween(登録商標)80、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンコポリマー(商標: Poloxamer、Pluronic、Lutrol)などの少なくとも1種の注射用界面活性剤を含むことができる。
【0173】
賦形剤/安定剤
また、水相中の分散特性を促進するためおよび/または水性懸濁液の安定性をさらに改善するために、注射用製剤が他の添加物(一方で「賦形剤/安定剤」によって下記で示す添加物、および他方で従来の賦形剤)を含むことは有益である可能性がある。
【0174】
賦形剤/安定剤は、
→POが疎水基(HG)および等張条件下でpH=7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成する少なくとも部分的にイオン化されているイオン性親水基(IG)を担持する水溶性生物分解性の両親媒性コポリマーである、少なくとも1種のポリマーPOのナノ粒子、
→アミノ酸、
→ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、
→コポリアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー(ポロキサマー、プルロニックまたはルトロール型)、
→セルロースポリマーおよびこれらの誘導体、好ましくはカルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)またはアルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、
→ソルビタンおよび脂肪酸のエステル、好ましくはポリオキシアルキレン(例えば、エチレン)グリコールおよび少なくとも1種の酸(例えば、オレイン酸)、Tween(または、ポリソルベート)型のエステル、
→リン脂質およびポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールを基にした界面活性剤、
→トレハロース、ソルビトール、マンニトールまたはスクロースなどの水素化または非水素化サッカリド、
→プロピレングリコールまたはグリセロールなどのポリオール、
→ゼラチン、好ましくは加水分解されたゼラチン、
→好ましくはポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリ-N-ビニルラクタムを含む群からの窒素(コ)ポリマー、
→ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、
→ならびにこれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0175】
本発明による好ましい賦形剤(安定剤)の1つは、微小粒子を構成しているポリマーPOと同一または異なる(好ましくは同一)少なくとも1種のポリマーPOのナノ粒子によって形成される。製剤で使用される賦形剤/安定剤の量は、好ましくは0.01から10重量%、より好ましくはさらに0.1から5重量%である。ナノ粒子を含む安定剤に関しては、これらは、1.5から3.5重量%(例えば、2.0から3.0(≒2.5)重量%)の比率で製剤において有利に使用される。
【0176】
再構成液
前述の分散手段に加えて、本発明による製剤の調製において使用される再構成液は、例えば、
・溶液のpHを調整することを可能にする、例えば、0.001Mから0.1M、好ましくは0.005Mから0.02Mの濃度で少なくとも1種の緩衝液または少なくとも1種の注射用塩(リン酸緩衝液、クエン酸塩緩衝液、塩化ナトリウム)、
・例えば、0.01%から2%、好ましくは0.05から0.5%の濃度における、好ましくはTween(登録商標)20およびTween(登録商標)80などのポリソルベート型、またはLutrol(登録商標)F38、Lutrol(登録商標)F68もしくはLutrol(登録商標)F127などのポロキサマー型の少なくとも1種の注射用界面活性剤を含むことができる。
【0177】
再構成液は、0.1%から10%、好ましくは0.5から5%の濃度で、サッカリド、すなわち、とりわけスクロース、D-マンニトールまたはトレハロースなどの高密度化剤(densifying agent)をさらに含むことができる。また、再構成溶液は、多糖類、合成ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)およびこれらのブレンドを含む群から選択された注射用高粘度化ポリマー(viscosifying polymer)を含むことができる。
【0178】
したがって、両親媒性PO (例えば、ポリアミノ酸)の乾燥微小粒子の使用および特別の再構成手段の使用は、非経口的に注射することを可能にするための安定的および容易に分散性である、医薬製剤を得ることができるという2重の目的を満たすことを可能にする。
【0179】
分散性および安定性を向上させるために上記で向けられた賦形剤/安定剤に加えて、微粒化する懸濁液/溶液または本発明による製剤に加えることができる他の従来の賦形剤は、例えば、抗菌薬、緩衝剤、抗酸化剤または当業者に公知の等張性の調整を可能にする薬剤である。例えば、Injectable Drug Development、P.K. Guptaら、Interpharm Press、Denver、Colorado、1999の研究を参照することができる。
【0180】
この従来の賦形剤の添加は、微粒化前の水性分散相または溶液/懸濁液のいずれかに実施することができる。
【0181】
本発明による液体製剤の適用
本発明による製剤は好ましくは医薬製剤であるが、しかし、このことは上記の定義のような少なくとも1種のPOおよび少なくとも1種のAPを含む化粧品、健康食品または植物保護製剤を除外するものではない。
【0182】
本発明の第4の態様:本発明による製剤を再構成するためのキット
PO/AP微小粒子ならびに本質的に水性の再構成液、本質的に有機水混和性の再構成液および本質的に有機水非混和性の再構成液は上記に定義されている。
【0183】
本発明の第5の態様:特に本発明による製剤を再構成するための再構成方法
PO/AP微小粒子ならびに本質的に水性の再構成液、本質的に有機水混和性の再構成液および本質的に有機水非混和性の再構成液は上記に定義されている。
【0184】
本発明によれば、例えば、本発明による製剤のミクロンスケールの粒子が生じるナノ粒子の液体懸濁液の0.2μmに等しい多孔度のフィルターによって、滅菌濾過を提供することを考えることが可能である。したがって、上記の調製法に従った無菌条件下での凝集は、患者に製剤を直接注射することを可能にする。
【0185】
本発明の第6の態様:固体医薬製剤
このAPの持続放出のための製剤は、上記の定義のようなPO/AP微小粒子を基にした吸入および経肺投与のための乾燥粉末形態を含む。
【0186】
本発明の他の態様
また、本発明は、本発明によるPO微小粒子から誘導される固体生成物に向けられる。
【0187】
実際には、これらの誘導生成物は、特に、とりわけ粉末、ゲル、インプラントまたは被膜を含むことができる。
【0188】
したがって、本発明は、いかなる調製の方法が取られたとしても、本発明による製剤から誘導された生成物に向けられる。
【0189】
また、本発明は、本質的に非経口、粘膜、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内もしくは大脳内経路によってまたは腫瘍に、本明細書に記載のように製剤を投与することにある、治療的処置法に関する。また、本発明による製剤を、とりわけ経口、鼻腔、経肺、膣内または眼球経路によって投与することができる。
【0190】
本発明の特定の代替形態によれば、この治療的処置法は、非経口の皮下、筋肉内、皮内、腹腔内もしくは大脳内注射または腫瘍への注射によって前述のような製剤を、好ましくは注射部位で沈着層を形成するように、投与することにある。
【0191】
本発明は、以下に続く、疎水基によってグラフトされたポリアミノ酸により形成されたPOの合成、APの持続放出システムへのこれらの変換、つまり本発明による製剤(乾燥微小粒子の粉末)への変換、ならびにそのようなシステムの安定性および再分散特性について記載した実施例により、より理解され、この利点および代替の実施形態が明白に明らかにされるであろう。
【0192】
(実施例)
(実施例1)
両親媒性ポリマーPO-Aの合成
合成起源のα-トコフェロールによりグラフトされたポリグルタミン酸の合成
ポリ(α-L-グルタミン酸)15g(ポリオキシエチレン標準(polyoxyethylene standard)に関して約16,900Daと当量であり、特許出願FR-A-2801226に開示のようにNCAGluOMeの重合、続く加水分解によって得る)を、ポリマーが溶解するまで、80℃で加熱することによってジメチルホルムアミド(DMF)288mlに溶解する。本溶液を、15℃まで冷却し、前もってDMF8mlに溶解したD,L-α-トコフェロール2.5g(>98%、Fluka(登録商標)から入手)、前もってDMF1mlに溶解した4-ジメチルアミノピリジン280mgおよび前もってDMF6mlに溶解したジイソプロピルカルボジイミド1.6gを連続して加える。3時間撹拌した後、反応媒体を塩化ナトリウムおよび塩酸(pH=2)を15%含む水1,200mlに注ぐ。沈殿したポリマーを続いて濾過によって回収し、0.1N塩酸、水およびジイソプロピルエーテルで洗浄する。ポリマーを、続いて40℃で真空下の乾燥器において乾燥させる。約90%の収率を得る。立体排除クロマトグラフィーによって測定したモル質量は、ポリオキシエチレン標準に関して15,500である。プロトンNMRスペクトロスコピーによって推定したグラフトされたトコフェロールのレベルは5.1モル%である。水中のポリマーのナノ粒子懸濁液を、これを、pHを7+/-1に調整した(カルボキシレートの中和)水に溶解することによって得る。
【0193】
(実施例2)
両親媒性ポリマーPO-Bの合成
実施例2は、実施例1を適合し、20%のグラフト比を目標とする。
【0194】
(実施例3)
IFN-α2bを含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
ポリマー20mg/gおよびIFN0.25mg/gを含む溶液の調製
ポリマーPO-Aの30mg/g溶液200gを、500mlフラスコに添加する。続いて水68gを、ポリマーを含むフラスコに添加する。2.8mg/gに濃縮したIFN-α-2bの凍結溶液を、25℃で1時間解凍し、この解凍溶液26.8gを、ポリマー溶液を含むフラスコに添加する。混合物を周囲温度で14時間放置する。
【0195】
本溶液を0.2μm滅菌フィルターを通して濾過する。
【0196】
ポリマー-IFN溶液の微粒化
溶液をビュッヒ(Buchi)B290型のスプレー乾燥装置で微粒化する。溶液を、5ml/分の速度で吸引し、窒素を送られた(7バール、900L/h)スプレーノズルを通して噴霧する。吸引流速(乾燥空気)は、40m3/hである。引入口温度を90℃で維持し、これらの条件下で、放出口温度は45℃となる。
【0197】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIFNアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0198】
(実施例4)
IFN-α2bおよびポリソルベート80を含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
ポリマーPOおよびインターフェロンの溶液を、実施例3と同様に調製する。ポリソルベート80 0.9gを、微粒化前に溶液に加える。
【0199】
ポリソルベートの存在下でのポリマー-IFN溶液の微粒化
溶液を実施例3に記載の条件と同一の条件下で微粒化する。
【0200】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIFNアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0201】
(実施例5)
IFN-α2bを含むポリマーPO-Aの酸性化乾燥ミクロンスケール粒子の調製
ポリマーPO-AおよびIFNの溶液を、実施例3と同様に調製する。この溶液を、ポリマーPO-Aの濃度が15mg/gである(次にIFN濃度が0.188mg/gである)ように、水の添加によって連続して希釈する。0.2μmフィルターを通して濾過した後、溶液をpH4が得られるまで、1N HClの添加により酸性化する。このように得られた溶液は乳白色である。
【0202】
酸性化ポリマー-IFN溶液の微粒化
溶液を実施例3に記載の条件と同一の条件下で微粒化する。
【0203】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIFNアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0204】
(実施例6)
PVPでコーティングされ、IFN-α2bを含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
ポリマーPO-AおよびIFNの乾燥微小粒子で形成した粉末を、実施例3で使用したプロトコールに従ってPO-A/IFN混合物から得る。
微粒化ステップの終了時に、この粉末1.5gを、注射用グレードポリビニルピロリドン(PVP)K30タイプのPVP7g/Lを含むエタノール溶液に再懸濁する。エタノール懸濁液を2時間撹拌し、続いて有機溶媒(-20℃の不活性ループ(inerting loop))に対する抽出トラップ(extraction trap)を取り付け、窒素下で閉鎖循環(closed circuit)として操作するビュッヒB290型のスプレー乾燥装置で2回目の微粒化を行う。溶液を、5ml/分の速度で吸引し、窒素を送られた(7バール-670L/h)スプレーノズルを通して噴霧する。吸引流速(乾燥空気)は、40m3/hである。引入口温度を80℃で維持し、これらの条件下で、放出口温度は55℃となる。
【0205】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=6μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIFNアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0206】
(実施例7)
IFN-α2bを含むポリマーPO-Bの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
ポリマー-IFN溶液を調製し、微粒化するためのプロトコールは、ポリマーPO-AをポリマーPO-Bと交換した実施例3に記載のプロトコールと同一である。
【0207】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=4μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIFNアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0208】
(実施例8)
hGHを含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
濃縮hGH溶液の調製
組換えヒト成長ホルモン溶液(濃度3.9mg/g)60gを、25℃で1時間30分間解凍し、24mg/gの濃度が得られるまで(HPLCでモニター)10kD膜を通した前部限外濾過によって約6倍濃縮する。
【0209】
ポリマー溶液との混合物
ポリマーPO-Aの濃縮30mg/g溶液52gを、水28gの添加によって19.5mg/gまで希釈する。24mg/g hGH溶液8gを、このように希釈されたポリマー溶液にゆっくりと注ぐ。本混合物を、周囲温度で終夜放置し、次に0.2μm滅菌フィルターを通して濾過する。
【0210】
ポリマー/hGH溶液の微粒化
溶液を実施例3に記載の条件と同一の条件下で微粒化する。
【0211】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるhGHアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0212】
(実施例9)
IL-2を含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
濃縮IL-2溶液の調製
SDSによって安定化した2g/Lの濃度のIL-2凍結溶液100gを、周囲温度で解凍し、次に本溶液を0から2℃の温度まで冷却する。無水エタノール100gを本溶液にゆっくりと加え、タンパク質を沈殿させる。沈殿物を、前部ダイアフィルトレーションセルにおける0.65/0.45μm膜を通した濾過によって回収し、水200gで洗浄する。沈殿物を、窒素流を加えることによって乾燥させる。次に、沈殿物を、予冷した(<5℃)0.02N水酸化ナトリウム10gに溶解し、SDSを欠いた20mg/gおよびpH=12のタンパク質の透明な溶液を得る。本溶液の正確なアッセイを、HPLC法によって測定する。
【0213】
ポリマー溶液との混合物
実施例1のポリマーPOの濃縮溶液(30mg/gで)96gを、水39gの添加によって希釈する。前述の20mg/g濃縮IL-2溶液9gを、このように希釈されたポリマー溶液にゆっくりと注ぐ。20mg/gのポリマーPOおよび1.25mg/gのIL-2を含む混合物を、周囲温度で終夜放置し、次に0.2μm滅菌フィルターを通して濾過する。
【0214】
ポリマー-IL-2溶液の微粒化
本溶液を実施例3に記載の条件と同一の条件下で微粒化する。
【0215】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるIL-2アッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0216】
(実施例10)
インスリンを含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
20.3mg/g濃縮インスリン溶液40gの調製
28.7UI/gの活性を有し、2.5%の含水量の組換えヒトインスリン(粉末)0.83gを、ガラスフラスコに添加する。水23.62gを加え、インスリンをゆっくりと磁気撹拌しながら分散させる。0.1N HCl 6.22gを、透明な酸性インスリン溶液が得られるまで加える。次に、1N水酸化ナトリウム9.32gを加え、pH7から8の透明な最終溶液を得る。インスリン溶液を、0.2μm滅菌フィルターを通して濾過する。
【0217】
ポリマー溶液との混合物
前述の濃縮インスリン溶液37.66gを、30mg/gポリマーPO溶液220gにゆっくりと注ぐ(磁気撹拌しながら)。水72.34gを溶液に加える。混合物を周囲温度で4時間放置し、次に0.2μmフィルターを通して濾過する。
【0218】
ポリマー-インスリン溶液の微粒化
本溶液を、続いてビュッヒB290型のスプレー乾燥装置で微粒化する。溶液を、5ml/分の速度で吸引し、窒素を送られた(7バール、900L/h)スプレーノズルを通して噴霧する。吸引流速(乾燥空気)は、40m3/hである。引入口温度を120℃で維持し、この条件下で、放出口温度は70℃となる。
【0219】
ポリマー-インスリン溶液の微粒化
溶液を実施例3に記載の条件と同一の条件下で微粒化する。
【0220】
得られた微小粒子の特性決定
得られた粒子のサイズ(T0試験に従って)は、D50=5μmである。
微粒化濃度で水中に粉末を分散させた後、HPLCによるインスリンアッセイは、微粒化前の溶液のアッセイと同一であり、分解形態は検出されない。
【0221】
(実施例11)
本発明により得られた微小粒子の特性:サイズと安定性
微小粒子のサイズを、T0試験に従って測定し、安定性をS1試験に従って測定する。タンパク質の分解は、微粒化前後の製剤のクロマトグラムを比較することによりHPLCによって評価する。
【0222】
【表4】

【0223】
この結果は、両親媒性ポリアミノ酸の存在下でのタンパク質の微粒化がタンパク質の安定化を保持することを可能にすることを示している。固体形態では、粉末は記載のプロトコールに従って安定している。粉末の安定性が5℃で少なくとも2年間であることは不可避な条件であり、予測される。微粒化は、タンパク質を分解することができる方法である。HPLCによる分析は、分解の形態が、微粒化前後のクロマトグラムの比較において観察されないことを示している。
両親媒性ポリアミノ酸の存在下でのタンパク質の微粒化は、長期にわたり安定し、タンパク質の分解を引き起こさない微小粒子を生じる。
【0224】
これらの粉末は、固体形態(例えば、吸入、加圧下のガンによる無針注射)または適切な媒体での再構成後に注射用懸濁液の形態で使用することができる。
【0225】
(実施例12)
実施例3から10の粉末から開始する懸濁液の再構成
粉末を、DP1試験を実施するために記載したプロトコールに従った3つの異なる媒体に再構成する。
A. pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水溶液
B. 0.1M塩化マグネシウム水溶液
C.カプリン酸トリグリセリド溶液(Miglyol(登録商標)812)
【0226】
試料を続いて以下のステップを実施することによって評価する。
・上記の媒体の1つに分散させるステップ
・注射器に移し、次に25G針を通して注射するステップ。
懸濁液は、少なくとも80%が25G針を通した吸引/注射によって回収されるならば良好な特性を有すると考慮される。
【0227】
結果
【0228】
【表5】

【0229】
また、タンパク質は、安定性試験中に媒体A、BおよびC中での再構成後に分解されないことが測定されている。
【0230】
これらの結果は、唯一実施例7の組成物によって、pH=7.4のPBSにより緩衝した水中の安定した注射用の微小粒子懸濁液を得ることができることを示している。大半の実施例(実施例5を除く)では、二価塩を含む再構成媒体は、これらの特性を改善することを可能にする。ミグリオル媒体では、すべての製剤が容易に分散可能、注射可能であり、安定している。
【0231】
これらの特性の組合せは、使用されるポリマーによっては容易に得られない。多くの試験後に、特定の賦形剤および再構成媒体により、これらを得られることを発見していることは本発明者らの功績である。
【0232】
(実施例13)
再構成製剤の粘度の評価
前述の実施例(媒体Bの実施例5は除く)の媒体BおよびC中の粉末の30mg/mlの分散により、低粘度の安定した懸濁液が得られる。媒体Bでは、測定した粘度は、すべて10mPa.s未満であり、媒体Cでは、粘度は、すべて約30から40mPa.sである。
比較として、先行技術によるナノ粒子形態の同じポリマーの組成物は、この容認可能な粘度値(<100mPa.s)を有する濃度では(30mg/ml)得ることができない。
【0233】
(実施例14)
凍結乾燥粉末形態で得られたIFN-α2bを含むポリマーPO-Aの乾燥ミクロンスケール粒子の調製
最初に、粒子を実施例3に記載のように調製する。微粒化ステップは、無菌状態下で実施し、粒子を無菌コンテナに回収する。
【0234】
Mg2+イオンの存在下で再分散している粒子
微粒化段階の直後、粒子を回収し、無菌状態下で0.1M MgCl2水溶液中に再分散する。加えられるMgCl2溶液の量を、懸濁液中のPO-Aポリマー濃度が、約40mg/mlとなるように調整する。pHを、1N水酸化ナトリウムの添加によって6.5に調整する。
【0235】
凍結乾燥
懸濁液を、凍結乾燥中に懸濁液を無菌状態に保つLyoguard(登録商標)型コンテナに分ける。次に、コンテナを実験室凍結乾燥器(実験台ユニット、クリスト(Christ)、ドイツ、オステローデ(Osterode))で72時間サイクルの無菌様式で凍結乾燥させる。粉末を、使用前に、無菌様式でフラスコに分ける。
【0236】
(実施例15)
実施例3から始まり得られた微小粒子粉末と実施例14の微小粒子粉末との再構成の比較
この比較では、再構成懸濁液の容量は両方の場合とも同一であり(約1ml)、再構成のフラスコも同一である(3mlガラスフラスコ)。粉末量を、両方の懸濁液が最終的に40mg/mlのポリマーおよび0.5mg/mlのIFN-α2bを含むように調整する。実施例3の粉末を0.1M MgCl2水溶液で再構成し、実施例14の粉末(すでにMg2+イオンを含む)を純水で再構成する。
【0237】
最初に、フラスコを手で撹拌する。実施例3の粉末が再分散するために少なくとも15分必要とする場合、分散は、実施例14の粉末でより速く、5分未満で均一な懸濁液が得られる。次に磁気撹拌子を、フラスコに挿入し、両方のフラスコを同一の様式で1時間撹拌する。
この撹拌の終了時に、両方の特性を比較する。両方の懸濁液の粒子サイズおよび粘度は同等である。
【0238】
【表6】

【0239】
(実施例16)
微小粒子形態の両親媒性ポリアミノ酸を基にした製剤の皮下注射後のイヌに対するIFNの薬物動態
未処置のビーグル犬(体重9±0.6kg)8頭を、以下の製剤で処置した。
【0240】
【表7】

【0241】
IFN IR(IR=即時放出)は、濃度、pHおよびモル浸透圧濃度([IFN]0.5mg/ml、pH=6.5および354mOsm)において調整された組換えヒトインターフェロン溶液(PCGen、IB05.0516バッチ)に対応する。
製剤1の粒子を、同一のインターフェロンPCGenバッチから開始する実施例14に従って調製する。凍結乾燥粉末を、実施例15に記載の方法に類似した方法に従って無菌の様式(層流フード下)で水に再懸濁させる。
【0242】
薬物動態の結果を、以下の表にまとめる。
【0243】
【表8】

【0244】
・Cmaxは、最大IFNセリック(seric)濃度であり、
・T>50pg/mlは、IFNセリック濃度が50pg/mlを超える時間であり、
・AUCは、時間の関数におけるIFNセリック濃度に対応する曲線下面積を表し、
・RBAは、即時放出製剤に関する生物学的利用能を表し、
・T50%aucは、塩析される総IFNの塩析50%に要する時間を表す。
【0245】
IFN IRは、時間中央値5時間(範囲: 3〜5時間)後に得られる、最大セリック濃度が25.2±0.4ng/mlの迅速な放出プロフィールを表す。循環IFNは、24時間後はもはや定量化できない。
製剤1は、非常にゆるやかな放出を示すIFN薬物動態学的プロフィールの大きな変更、および時間中央値60時間(範囲: 48〜96時間)後に最大セリック濃度0.5±0.2ng/ml(IR形態の最大セリック濃度より50倍低い)が得られる。薬物動態の一般的態様は、疑似プラトーを示す平坦なプロフィールである。循環IFN濃度は、192時間から240時間(8日から10日)の間、定量化できない濃度である。本製剤は、AUCが低く、相対的生物学的利用能が66%減少し(RBA=34%)、T50%aucは、IFN IRのT50%aucの約20倍高い。
【0246】
(実施例17)
微小粒子形態の両親媒性ポリアミノ酸を基にした製剤の皮下注射後のイヌに対するインスリンの薬動力学
本実施例の対照のLantus(登録商標)は、修飾インスリン類似体である(グラルギンインスリン、サノフィアベンティス(Sanofi Aventis))。ヒトインスリンの一次構造に対する2種のアミノ酸の修飾は、Lantus(登録商標)に原位置での析出を通した24時間にわたる持続放出特性をもたらしている。
【0247】
健常なビーグル犬6頭の群(体重11.4±1kg)を、2期間のクロスオーバー試験中に製剤Lantus(登録商標)で処置し、健常なビーグル犬8頭の群(体重11.8±1kg)を、4期間のクロスオーバー試験中に製剤2で処置した。本処置の要約表を、以下に示す。
【0248】
【表9】

【0249】
製剤2の粒子を、インスリン3.5mg(100IU)に対するPOポリマー30mgの比率を目標にすることによって実施例10に従って調製する。製剤を、0.1M MgCl2に微粒化粉末を分散させ、懸濁液の1時間の磁気撹拌によって調製する。製剤のpHは6.2で、モル浸透圧濃度は348mOsmである。T1試験で測定した対応する粒径はD50=12μmで、製剤粘度は20℃で約5mPa.sである。
【0250】
血糖には、血液生化学分析機(アドビア(Advia)1650、バイヤーダイアグノスティックス(Bayer Diagnostics))による酵素法(ヘキソキナーゼ)によって投薬する。
薬動力学の結果の分析は、時間と関連した基礎血糖のパーセンテージに基づいている。
【0251】
薬動力学データを、以下の表にまとめる。
【0252】
【表10】

【0253】
・Cminは、基礎血糖の観察された最小パーセンテージ、
・APGC0〜36h(パーセント血糖曲線面積(Area Percent Glycemia Curve))は、投与後0から36時間の基礎血糖(100%)と血糖の進展を表す曲線(基礎血糖の%で表される)の間の面を表す、
・T50%APGCは、50%のAPGC0〜36hを得るために必要な時間を表す。
【0254】
対照Lantus(登録商標)の投与は、1時間目から血糖の迅速な減少につながる。次いで、グラルギンインスリンの血糖降下作用は、18から36時間を含む期間にわたり維持される(血糖は、平均で30時間後にこの基礎レベルに戻る)。
比較すると、製剤2の投与も、1時間目から迅速な血糖の減少をもたらす。次いで基礎血糖のパーセンテージは、平均で36時間までプラトーを維持する。製剤1で得られたCminは、対照Lantus(登録商標)のCminより平均で高く、このことは糖尿病患者の重度の低血糖現象をかなり減少できると思われる。
製剤2の作用持続時間は、対照の作用時間の長いLantus(登録商標)の作用持続時間を明らかに上回る。このことは製剤2での高い平均T50%APGC値によって例証される。
わずか24%のAPGC0〜36hの減少が、対照Lantus(登録商標)と比較して製剤2で観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の有効成分(AP)を含むポリマー(PO)の微小粒子であって、ポリマーPOが、
・疎水基(HG)および親水基を担持する水溶性の生物分解性両親媒性(コ)ポリマーであり、
・等張条件下で、pH=7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成し、
・APと非共有結合により結合し、
微小粒子が、
a. 少なくとも1種のAPを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液の微粒化によって得られ、
b. T試験で測定して、サイズが0.5から100ミクロン、好ましくは1から70ミクロン、好ましくは2から40ミクロンであり、
c. 「分散性」試験DP1においてコロイド懸濁液中で分散性である微粒子。
【請求項2】
ST1試験またはST2試験で安定性である、請求項1に記載の微小粒子。
【請求項3】
POがブロックまたはランダム型のコポリマーである、請求項1または2に記載の微小粒子。
【請求項4】
POの親水基が少なくとも部分的にイオン化されているイオン性基(IG)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項5】
ポリマーPOが両親媒性(コ)ポリアミノ酸または両親媒性(コ)ポリアミノ酸のブレンドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項6】
POがアスパラギン酸単位および/またはグルタミン酸単位によって形成された主鎖を有するポリアミノ酸であり、これらの単位の少なくとも一部分が前記鎖または前記鎖の末端で少なくとも1つの疎水基(HG)をグラフトすることによって修飾されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項7】
POが以下の一般式(I)(基-COOR3は、カルボン酸とR3との結合がイオン結合-COO-+R3である形態を含む)により定義される、請求項1から6のいずれか一項に記載の微小粒子
【化1】

(式中、・R1は、H、直鎖C2〜C10もしくは分枝C3〜C10アルキル、ベンジルまたは-R4-[HG]を表し、
・NHR1は、末端アミノ酸残基であり;
・R2は、H、直鎖C2〜C10もしくは分枝C3〜C10アシル基、または-R4-[HG]を表し;
・R2は、末端ピログルタミン酸基であり;
・R3は、Hであるか、または
+R3は、好ましくは
・ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含む亜群から有利に選択された金属カチオン、
・有機カチオンであって、
・アミンベースのカチオン、
・オリゴアミンベースのカチオン、
・ポリアミンベースのカチオン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)、
・リシンもしくはアルギニンを基にしたカチオンを含むクラスから有利に選択されたアミノ酸を基にしたカチオンを含む亜群から有利に選択された有機カチオン、
・またはポリリシンもしくはオリゴリシンを含む亜群から有利に選択されたカチオン性ポリアミノ酸を含む群から選択され;
・R4は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基を基にしたスペーサーを表し、
・Aは、独立に-CH2-基(アスパラギン酸単位)または-CH2-CH2-基(グルタミン酸単位)を表し;
・n/(n+m)は、モルグラフト比と定義され、この値は、pH=7および25℃で水に溶解した、サブミクロンサイズのPO粒子のコロイド懸濁液を形成するために、POにとって十分低い値であり;好ましくは、n/(n+m)は、1から25モル%、より好ましくは1から15モル%に含まれ;
・n+mは、重合度と定義され、10から1,000、好ましくは50から300の間で変動し;
・HGは、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表す)。
【請求項8】
1つまたは複数のPOが以下の一般式(II)、(III)および(IV)(基-COOR3’は、カルボン酸とR3’との結合がイオン結合-COO-+R3’である形態を含む)のうちの1つに対応する、請求項1から7のいずれか一項に記載の微小粒子
【化2】

(式中、HGは、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表し;
・R30は、直鎖の二価C2〜C6アルキレン鎖であり;
・R3’は、Hであるか、または
+R3’は、好ましくは
・ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含む亜群から有利に選択された金属カチオン、
・有機カチオンであって、
・アミンベースのカチオン、
・オリゴアミンベースのカチオン、
・ポリアミンベースのカチオン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)、
・リシンもしくはアルギニンを基にしたカチオンを含むクラスから有利に選択されたアミノ酸を基にしたカチオンを含む亜群から有利に選択された有機カチオン、
・またはポリリシンもしくはオリゴリシンを含む亜群から有利に選択されたカチオン性ポリアミノ酸を含む群から選択され;
・R50は、1つまたは2つのメチレン単位が、好ましくはR50の各末端で独立に-Oまたは-NHによって置換されてもよい直鎖の二価C1〜C8アルキレン鎖であり;
・R4は、直接結合または1から4個のアミノ酸残基を基にしたスペーサーを表し;
・Aは、独立に-CH2-基(アスパラギン酸単位)または-CH2-CH2-基(グルタミン酸単位)を表し;
・n’+m’またはn’’は、重合度と定義され、10から1,000、好ましくは50から300の間で変動する)。
【請求項9】
R4基が単結合を表す、請求項7または8に記載の微小粒子。
【請求項10】
1つまたは複数のPOが互いに同一または異なる多くのペンダント疎水基(HG)を含む少なくとも1つの「本質的に中性の」コポリヒドロキシアルキルグルタミン(好ましくは、アルキルはエチルである)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項11】
POの疎水基HGの全部または一部が、独立に
・6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)または少なくとも1つの不飽和を含み得る直鎖または分枝のアルコキシ、
・6から30個の炭素原子を含み、1つまたは複数のアニールした炭素環を有し、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)を場合によって含むアルコキシ、
・7から30個の炭素原子の、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)を含み得るアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキルを含む基の群から選択される、請求項6から10のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項12】
疎水基HGが、-OCH2(CH2-CH2)3〜8-CH3、オレイル、トコフェリルまたはコレステリル型のアルコキシ基を含む群から選択され、R4が単結合を表す、請求項6から10のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項13】
POのnHG基が、それぞれが互いに独立に以下の式の一価の基を表す、請求項6から10のいずれか一項に記載の微小粒子
【化3】

(式中、
・R5は、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ベンジルを表し、
・R6は、6から30個の炭素原子を含む疎水基を表し、
・lは、0から6まで変動する)。
【請求項14】
POの疎水基R6の全部または一部が、独立に
・6から30個の炭素原子を含み、少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)または少なくとも1つの不飽和を含み得る直鎖または分枝のアルコキシ、
・6から30個の炭素原子を含み、1つまたは複数のアニールした炭素環を有し、少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)を場合によって含むアルコキシ、
・少なくとも1つの不飽和または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOまたはNまたはS)を含み得る7から30個の炭素原子のアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキルを含む基の群から選択される、請求項13に記載の微小粒子。
【請求項15】
POのグラフトの疎水基R6が、-OCH2(CH2-CH2)3〜8-CH3、オレイル、トコフェリルまたはコレステリル型のアルコキシ基を含む群から選択される、請求項13または14に記載の微小粒子。
【請求項16】
ポリアミノ酸の主鎖がα-L-グルタミン酸塩またはα-L-グルタミン酸ホモポリマーである、請求項6から9および11から15のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項17】
ポリアミノ酸の主鎖がα-L-アスパラギン酸塩またはα-L-アスパラギン酸ホモポリマーである、請求項6から9および11から15のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項18】
ポリアミノ酸の主鎖がα-L-アスパラギン酸塩/α-L-グルタミン酸塩またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーである、請求項6から9および11から15のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項19】
POが、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも15モル%のレベルで式(I)におけるHG、(n/n+m)を含む、請求項6から18のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項20】
POのモル質量が、2,000から100,000g/モル、好ましくは5,000から40,000g/モルの間にある、請求項6から19のいずれか一項に記載の微小粒子。
【請求項21】
少なくとも1種の有効成分(AP)を含むPO微小粒子の調製のための方法であって、これらの微小粒子が、特に請求項1から20のいずれか一項に記載の通りであり、
i ポリマーPOが
・疎水基(HG)および親水基[好ましくは、少なくとも部分的にイオン化されているイオン性基(IG)]を担持する水溶性の生物分解性両親媒性(コ)ポリマーであり、
・等張条件下で、pH=7.0の水中でナノ粒子のコロイド懸濁液を自然に形成し、
・APと非共有結合により結合し、
ii 前記微小粒子が、T1試験で測定して、サイズが0.5から100ミクロン、好ましくは1から70ミクロン、好ましくは2から40ミクロンであり、方法がAPを含むPOの溶液またはコロイド懸濁液を微粒化するステップを本質的に含む方法。
【請求項22】
溶液またはコロイド懸濁液に存在するPOが、少なくとも一部は、T1試験で測定して、500nm未満、好ましくは10から300nm、より好ましくはさらに10から100nmのサイズを有するPOナノ粒子の形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の有効成分(AP)と結合したPOポリマーの微小粒子を、媒体が好ましくは分散手段M1を含む本質的に水性の液状媒体中に分散させ、得られた分散物を凍結乾燥させる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
分散手段M1が、以下の
i. 極性がPOポリマーのイオン性基の極性と反対であり、連続的な水相に含まれる多価イオン、
ii. 微粒化するためにPO懸濁液/溶液に加えられ、したがって微粒化されたPO/AP微小粒子に含まれる少なくとも親水性の化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)、
iii. 少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)の少なくとも被膜でコーティングしている少なくとも微小粒子、
iv. pH変更、
v. および手段(i)から(iv)の少なくとも2つの組合せ(手段(i)が特に好ましい)の群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子を基にした低粘度のコロイド懸濁液を含む、APの持続放出のための液体医薬製剤であって、これらの微小粒子が請求項1から20のいずれか一項に記載の微小粒子であるか、または請求項21から24に記載の方法によって得られた微小粒子である製剤。
【請求項26】
少なくとも1種のAPと結合したPO微小粒子を分散させるための手段M2を含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
懸濁液の連続相が本質的に水性である、請求項25または26に記載の製剤。
【請求項28】
懸濁液の連続相が本質的に有機水混和性相である、請求項25または26に記載の製剤。
【請求項29】
懸濁液の連続相が本質的に有機水非混和性相である、請求項25または26に記載の製剤。
【請求項30】
分散手段M2が、以下の
i. 極性がPOポリマーのイオン性基の極性と反対であり、連続的な水相に含まれる多価イオン、
ii. 微粒化するためにPO懸濁液/溶液に加えられ、したがって微粒化されたPO/AP微小粒子に含まれる少なくとも親水性の化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)、
iii. 少なくとも1種の親水性化合物(好ましくは、注射用製剤に使用可能である)の少なくとも被膜でコーティングしている少なくとも微小粒子、
iv. pH変更、
v. および手段(i)から(iv)の少なくとも2つの組合せ(手段(i)が特に好ましい)の群から選択される、請求項25または26、最終的に27に記載の製剤。
【請求項31】
親水性コーティング化合物が、
→アミノ酸、
→ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、
→コポリアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー(ポロキサマーまたはプルロニックまたはルトロール型の)、
→セルロースポリマーおよびそれらの誘導体、好ましくはカルボキシアルキルセルロースまたはアルキルセルロース、
→トレハロース、ソルビトール、マンニトールまたはスクロースなどの水素化または非水素化サッカリド、
→プロピレングリコールまたはグリセロールなどのポリオール、
→ゼラチン、好ましくは加水分解されたゼラチン、
→窒素(コ)ポリマー、好ましくはポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリ-N-ビニルラクタムを含む群に存在する窒素(コ)ポリマー、
→ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、
→ポリ(グルタミン酸ナトリウム)、
→ならびにこれらの混合物を含む群から選択され、
前記親水性コーティング化合物が、少なくとも1種の親水性ポリマーを好ましくは含む、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
分散手段が、水混和性または水非混和性連続相に存在する融点が好ましくは15℃以下である親油性液を含む、請求項25および27または28に記載の製剤。
【請求項33】
親油性液が、飽和脂肪酸のトリグリセリドの少なくとも1つの混合物または少なくとも1種の植物油または少なくとも1種の脂質または少なくとも1種の脂質誘導体または少なくとも1種の脂肪酸または少なくとも1種の脂肪酸誘導体を含む、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
親油性液が、別々に挙げられた以下のリストの生成物の一部が例えば15℃以下の温度で液体でない場合、次いでこれらの生成物を、これらが例えば15℃以下の温度で液体であるように他のものと混合するという条件で、
・ヤシ油から得られた飽和C8〜C10脂肪酸のトリグリセリドの少なくとも1つの混合物、
・少なくとも1種の植物油、好ましくはダイズ油、パーム油、アマニ油、綿実油、ゴマ油、ヒマワリ油または落花生油、
・少なくとも1種の脂質、好ましくは液体レシチン、合成または天然のビタミンE、
・少なくとも1種の脂質誘導体、好ましくはアラキドイルホスファチジルコリンおよびステアロイルホスファチジルコリン、
・少なくとも1種の脂肪酸、好ましくはオレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの塩、
・少なくとも1種の脂肪酸誘導体、好ましくはモノまたはトリグリセリド誘導体、オレイン酸エチル、乳酸ラウリル、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノオレエートまたはポリソルベート、
・およびこれらの混合物
を含む、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
分散手段が、少なくとも1種の被膜形成コーティング化合物(好ましくは注射用製剤に使用することができる)による微小粒子のコーティングを含む、請求項25および27または28ならびに場合によって32、33または34に記載の製剤。
【請求項36】
被膜形成コーティング化合物が、ポリラクチド、ポリグリコリド酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(炭酸アルキル)、非水溶性POポリマー、これらの誘導体およびこれらのブレンドを含む群から選択された少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
被膜形成コーティング化合物が脂質性質の被膜形成コーティング化合物であり、好ましくは15℃以上の融点を示し、飽和脂肪酸のトリグリセリドの少なくとも1種の混合物または少なくとも1種の植物油または少なくとも1種の脂質または少なくとも1種の脂質誘導体または少なくとも1種の脂肪酸または少なくとも1種の脂肪酸誘導体またはこれら生成物の混合物を含む、請求項25および27または29ならびに場合によって請求項31から35の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項38】
・請求項1から20のいずれか一項に記載の微小粒子、または請求項21もしくは22に記載の方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子、
・ならびに
→本質的に水性液と、
→本質的に有機水混和性液と、
→本質的に有機水非混和性液と
を含む群から選択された再構成液を含む、請求項24から37のいずれか一項に記載の特に製剤を再構成するための再構成キット。
【請求項39】
・混合するステップであって
⇒請求項1から20のいずれか一項に記載の微小粒子、または請求項21もしくは22に記載の方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子、
⇒ならびに
→本質的に水性液と、
→本質的に有機水混和性液と、
→本質的に有機水非混和性液と
を含む群から選択された再構成液を混合するステップと、
・この混合物を撹拌するステップと
を本質的に含む、請求項24から37のいずれか一項に記載の特に製剤を再構成するための再構成方法。
【請求項40】
・請求項1から20のいずれか一項に記載の微小粒子、または請求項21もしくは22に記載の方法によって得られた微小粒子である、少なくとも1種のAPを含むPO微小粒子を基にした乾燥粉末形態、
・あるいは請求項24から37のいずれか一項に記載の製剤から得た乾燥粉末形態
を含む、APの放出のための固体医薬製剤。
【請求項41】
吸入および経肺投与のための、請求項40に記載の固体医薬製剤。

【公表番号】特表2009−544759(P2009−544759A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525938(P2009−525938)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006722
【国際公開番号】WO2008/025425
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508361829)フラメル・テクノロジーズ (2)
【Fターム(参考)】