説明

両親媒性ブロックコポリマーにより靭性を付与したエポキシ樹脂及びそれらから製造される室温硬化型ハイソリッドコーティング

【課題】両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いて変性した室温硬化型ハイソリッドコーティングエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)エポキシ樹脂;(b)少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマー;ここで、前記非混和性ブロックセグメントは、上記非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造が少なくとも一種又は2種以上のアルキレンオキシドモノマー単位を含有する条件の下でポリエーテル構造を少なくとも一つ含み、上記エポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られた硬化したエポキシ樹脂組成物の靭性が向上する;及び(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:を包含する硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化した室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物の耐破壊性又は靭性が向上するように、両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いて変性した室温硬化型ハイソリッドコーティングエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
「室温硬化」とは、60℃未満で適用しかつ硬化させることができるコーティングを意味する。
混合されたスプレー可能な配合物(ウェットペイント)に関連する「ハイソリッド」とは、当該配合物が、溶媒1リットル当り420g未満を含有することを意味する。
【0003】
コーティングに関連する「靭性(toughness)」とは、上記コーティングが、ポリマー弾性率を低下させることか、又は可塑化(例えば、添加剤の相分離化粒子のキャビテーション)によること以外の機構により乏しい耐衝撃性をもたらす応力を緩和できることを意味する。
【0004】
コーティングに関連する「軟質」とは、コーティングの乏しい耐衝撃性を、コーティングを形成するポリマーの弾性率を下げるか、又は可塑化により下げること(両者は、一般的にコーティングのガラス転移温度を下げる、)ことを意味する。
【0005】
エポキシ樹脂は、一般的に、ハードナー又は硬化剤を用いて硬化させ、そして硬化した場合に、当該樹脂は、耐熱性及び耐薬品性で知られている。硬化エポキシ樹脂はまた、良好な機械的特性を示すが、しかし、それらは靭性に欠け、硬化する際に極めて脆くなる傾向がある。樹脂の靭性の不足は、架橋密度又は樹脂のTgが増すにつれて特にその傾向が強くなる。
【0006】
エポキシ樹脂は、一般的に、室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物を調製するために用いられる。良好な靭性を有する室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティングも、また知られているが、しかし、樹脂靭性の改良は、ほとんどの場合、樹脂の他の特性を犠牲にして出現することとなる。これまで、一つの系の中で全ての良好な適用性並びに靭性を組み合わせる室温硬化コーティングを開発することは、困難であった。
【0007】
いくつかの方法が、室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティングの軟らかさを改良するために提案されてきたが、しかし、各方法は、その広い用途を限定してきたことに関連する少なくとも一つの不利益がある。
【0008】
例えば、脂肪族主鎖を変性して、これらの系に軟らかさを付与することができる。脂肪族の変性を、エポキシ又は硬化剤により熱硬化網目に導入することができる。このアプローチの不利益は、ガラス転移温度、耐薬品性及び耐食性が、全て、脂肪族鎖セグメントにより負の影響を受けるということである。硬化速度もまた、脂肪族エポキシが系を変性するために用いられた場合、負の影響を受ける場合がある。
【0009】
別の公知の方法には、可塑剤の使用が含まれ、室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティングに添加して、その軟らかさを増すことができる。脂肪族主鎖の変性と同時に、これもコーティング性能に負の影響を与える場合がある。可塑剤は、経時的脆化による膜からの揮発又は浸出のどちらかのさらなる不利益を有する。
【0010】
さらに別の公知の方法は、カルボキシル基末端ブタジエン−アクリロニトリル(CTBN)ゴムを使用することである。CTBNは室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティング中で用いられる第2の相靭性付与剤(toughener)である。第2の相モルホロジーは、硬化条件の関数であるので、CTBN変性系の性能は硬化スケジュールの関数となる。CTBNはまた、変性された樹脂の粘度を上げ、靭性及び延性の有意な改良を得るために大量が必要とされるので、ハイソリッド系におけるその使用が制限される。CTBNはまた、系のガラス転移温度を下げることが知られている。
【0011】
近年、エポキシ樹脂に種々のブロックコポリマーを添加することによりエポキシ樹脂の耐破壊性又は靭性を向上させることに関する、いくつかの研究がある。以前の研究の多くは、エポキシ混和性ブロックがポリ(エチレンオキシド)(PEO)であり、非混和性ブロックが飽和ポリマー系炭化水素である、エポキシ混和性ブロックとエポキシ非混和性ブロックとを有する両親媒性ジブロックコポリマーを使用することに主眼を置いている。公知のブロックコポリマー材料は、魅力的な特性の硬化(set)を有するテンプレート化エポキシを提供する上で効果を発揮するが、一部の用途において用いるには余りにも高価すぎる。
【0012】
例えば、Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics,2001,39(23),2996〜3010には、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチレン−alt−プロピレン)(PEO−PEP)ジブロックコポリマーを使用することにより、硬化したエポキシ系中にミセル構造体が提供され、そしてベシクル及び球状ミセルに自己組織化したブロックコポリマーが、4官能性芳香族アミン硬化剤と硬化させたモデルのビスフェノールAエポキシの耐破壊性を大きく上げることができることが開示されている。
【0013】
そして、Journal of the American Chemical Society,1997,119(11),2749〜2750には、両親媒性PEO−PEP及びポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチルエチレン)(PEO−PEE)ジブロックコポリマーを用いてもたらされた自己組織化微構造を有するエポキシ系が記載されている。これらのブロックコポリマー含有系は自己組織化特性を示す。
【0014】
ブロックの一つにエポキシ反応性官能基を導入する他のブロックコポリマーは、ナノ構造化エポキシ熱硬化樹脂を達成するためのエポキシ樹脂用の変性剤として用いられてきた。例えば、Macromolecules,2000,33(26)9522〜9534には、本質的に両親媒性であり、樹脂が硬化する際にブロックの一つがエポキシマトリクス中で反応できるような様式で設計された、ポリ(エポキシイソプレン)−b−ポリブタジエン(BIxn)及びポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸グリシジル)−b−ポリイソプレン(MG−I)ジブロックコポリマーの使用が記載されている。また、Journal of Applied Polymer Science,1994,54,815には、ポリ(カプロラクトン)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)−b−ポリ(カプロラクトン)トリブロックコポリマーのサブミクロンスケールの分散液を有するエポキシ系が記載されている。
【0015】
上述の既知のジブロック及びトリブロックコポリマーの一部は、エポキシ樹脂の靭性を改良するために有用であるが、上記既知のブロックコポリマーの調製は複雑である。既知のブロックコポリマーは合成するために多段階を必要とし、従って、商業的な観点から経済的には魅力的でない。
【0016】
熱硬化性エポキシ樹脂を変性してナノ構造化エポキシ熱硬化樹脂を形成するための、さらに他の自己組織化両親媒性ブロックコポリマーは公知である。例えば、Macromolecules,2000,33,5235〜5244及びMacromolecules,2002,35,3133〜3144には、ジブロック含有混合物中の分散相の平均サイズがほぼ10〜30ナノメートル(nm)である、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(プロピレンオキシド)(PEO−PPO)ジブロック及びポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(プロピレンオキシド)−b−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)トリブロックを、メチレンジアニリンと硬化させたエポキシに添加することが記載されている。そして、PEO−PPO−PEOトリブロック等のポリエーテルブロックコポリマーはまた、日本国特許出願公開第H9−324110号明細書に開示されているように、エポキシ樹脂と用いられることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の既知のジブロック及びトリブロックコポリマーの一部は、エポキシ樹脂の靭性を改良するために有用であるが、樹脂の全ての他の重要な特性を維持しながら、室温硬化型ハイソリッドコーティング用途において用いられるエポキシ樹脂の靭性をさらに高めるための、室温硬化型ハイソリッドコーティング業界における必要性がなお存在する。
【0018】
従って、既知のブロックコポリマーのいかなる不利益もなしで、自己組織化法により熱硬化性エポキシ樹脂の靭性を改良するために有用である別のブロックコポリマーを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、
(a)エポキシ樹脂;
(b)当該エポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られた硬化したエポキシ樹脂組成物の靭性が向上するような、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマー、ここで、前記非混和性ブロックセグメントは、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含む;及び
(c)60℃未満の温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:
を含む室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、0%の変性及び10重量%の変性に対する引張応力−ひずみグラフを示すグラフ説明図である。
【図2】図2は、0%の変性(実線)及び10重量%の変性(点線)に対するDMTAを示すグラフ説明図である。
【図3】図3は、二つのコーティング系:(a)0%の変性及び10重量%の変性に対する別個のコーティングされたパネルの衝撃試験結果を示す隣り合った写真を含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の一つは、上記非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造が、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも一つ以上のアルキレンオキシドモノマー単位を含有する条件の下、少なくとも一つのポリエーテル構造を含む非混和性ブロックセグメントを含有する両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いて変性したエポキシ樹脂に向けられている。
【0022】
これまでは、コーティングが塗布し易く、機械的応力及び腐食の両方から基材を保護することを必要とされる環境においてコーティングを用いることができるレベルにおいて、良好な耐薬品性、良好な耐食性、良好な靭性、及び良好な適用性の組合せを示す室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティングを開発することは困難であった。
【0023】
サブミクロンの長さスケールで自己組織化する本発明のブロックコポリマー靭性付与剤(toughening agent)をエポキシ樹脂系に添加することにより、室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティング系の一つにおいて、良好な耐薬品性、良好な耐食性、良好な靭性、及び良好な適用性を含む全ての特性を組み合わせる目標が達成された。
【0024】
本発明の目的の一つは、コーティング用途向けに両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いて変性したエポキシ樹脂を用いることである。
【0025】
エポキシ樹脂に靭性を付与するために本発明の両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いることの有利な特徴の一部には、例えば、(1)両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの自己組織化特性、(2)サブミクロンの長さスケールにおいて集まるための両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの能力、(3)樹脂モノマーマトリクス全体にわたり極めて均一な分散体を作り出すための両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの能力、及び(4)靭性を付与した結果を達成するために、低充填濃度において両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー靭性付与剤を用いるための能力が含まれる。
【0026】
本発明の両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを用いることの利点の一部には、例えば、(1)ガラス転移温度、弾性率及び粘度等のホスト樹脂の他の基本性質に悪影響を与えることなく、ホスト樹脂の靭性を改良するための両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの能力、及び(2)適切に設計された両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー構造により、エポキシ樹脂それ自体の硬化の前又はその際に、一致してかつ再現可能にモルホロジーを作り出すための能力が含まれる。
【0027】
本発明は、樹脂用の靭性付与剤として、ポリエーテルブロックコポリマー等の両親媒性ブロックコポリマーを用いて変性したエポキシ樹脂を含む、靭性を改良した室温硬化型ハイソリッド組成物を含む。これらの変性したエポキシ樹脂は、硬化させると、弾性率及びガラス転移温度(Tg)挙動のほんの僅かな変化を伴うだけで固有の靭性(降伏の導入とそれに続く応力−ひずみ曲線下の面積を増大させる薄膜引張試験での破断点伸びの明確な増加により規定される)が大きく向上する。
【0028】
サブミクロンの自己組織化モルホロジーを有するテンプレート化熱硬化エポキシポリマー材料は、改良された靭性、及び弾性率及びTg等の材料特性を保持する魅力的な組合せを示す。熱硬化エポキシポリマーは、例えば、コポリマーが自己組織化を受けることができる樹脂モノマーマトリクス中に両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを分散させ、次に樹脂を硬化させて調製することができる。
【0029】
界面活性剤様モルホロジーを示す自己組織化樹脂は、極めて低い(例えば、1体積%(vol.%)〜10体積%)ブロックコポリマー充填量において、破壊靭性が向上する。樹脂モノマーと混合する場合、自己組織化できる両親媒性ブロックコポリマーは、完全な硬化の前に樹脂/硬化剤混合物と混和性を有するブロックを少なくとも一つと、完全な硬化の前に樹脂/硬化剤混合物と非混和性のブロックを少なくとも一つを有しなければならない。
【0030】
本発明の実施形態の一つは、エポキシ樹脂系中で自己組織化する全てのポリエーテルブロックコポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)−b−(ブチレンオキシド)(PEO−PBO)に基づくもの等のジブロックコポリマーを調製することに向けられている。十分に長いブチレンオキシドブロック長(例えば、Mn=1000以上)で、これらのブロック構造は、樹脂モノマーを球状ミセル等のミセル構造体にテンプレート化する際に有効であることが見出された。
【0031】
本発明において必要とされる要素は、エポキシ樹脂モノマー系(単一のエポキシ樹脂成分又は2種若しくは3種以上のエポキシ樹脂成分の組合せとしてかのどちらか)と、1つ若しくは2つ以上のブロックがポリエチレンオキシド又は任意の他のエポキシ混和性構造体であり、そして他の1又は複数のブロックがポリアルキレンオキシド(例えば、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシドデカン)又は他のエポキシ非混和性ポリマー若しくはオリゴマーであるポリエーテルブロックコポリマーとである。本発明の成分を、そのまま又は溶媒を用いて混合し、次に、アミン等の窒素含有エポキシ硬化剤と硬化させて、分散されたポリエーテルブロックコポリマーを含有する不溶性のエポキシ熱硬化樹脂を提供することができる。
【0032】
室温硬化型ハイソリッドエポキシ配合物は、例えば、PEO−PBOジブロックコポリマー又はPEO−PBO−PEOトリブロックコポリマー等のポリエーテルブロックコポリマーを1体積%(vol.%)〜10体積%添加することにより靭性が付与される。PEO−PBOジブロックコポリマー及びPEO−PBO−PEOトリブロックコポリマー添加剤は、ホストエポキシマトリクス中で自己組織化できるポリエーテルブロックコポリマーの代表例である。これらブロックコポリマーのどちらかを添加することにより、エポキシ系の適用性(例えば、ガラス転移温度、Tg)、又はエポキシ系の最終耐薬品性及び耐食性に大きな悪影響を与えない。
【0033】
本明細書において開示されるポリエーテルブロックコポリマーは、製造後に、ウェットペイントに添加できる利点を有する。従って、ペイント製品を、必要性がある場合に、適用直前に軟質化することができる。これは、自動車のプラスチックバンパーが自動車の他の箇所よりもさらに軟らかいコーティングを必要とする自動車塗り替え等の用途において有用であることができる。後添加できる軟質化剤を有することにより、具体的には、プラスチックバンパー用の第2のコーティングを有するための必要性が排除される。
【0034】
本明細書において開示される第2の相靭性付与剤(ポリエーテルブロックコポリマー)はまた、既知の脂肪族主鎖の変性、可塑化又はCTBN添加よりも低濃度において有効である利点を有する。少なくとも部分的には、本発明の靭性付与剤が低濃度において有効であるという理由により、価格、ガラス転移温度、硬化速度、耐薬品性、耐食性及び粘度に対するそれらの潜在的な負の影響が最小化される。
【0035】
本発明において有用な両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーには、少なくとも一つのポリエーテル構造を含むエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのポリエーテル構造を含むエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する任意のブロックコポリマーが含まれうる。
【0036】
好ましくは、本発明において有用なポリエーテルブロックコポリマーには、エチレンオキシド(EO)等のアルキレンオキシドから誘導された少なくとも一つのエポキシ混和性ポリエーテルブロックセグメントと、少なくとも3個超の炭素原子を有するアルキレンオキシド、例えば、ブチレンオキシド(BO)として一般に知られる1,2−エポキシブタンから誘導される少なくとも一つのエポキシ非混和性ポリエーテルブロックセグメントとを含む1種又は2種以上のポリエーテルブロックコポリマーが含まれる。
【0037】
非混和性ブロックセグメントはまた、一緒に共重合して非混和性ブロックセグメントを与えるC4以上の炭素系類似モノマー(carbon analogue monomer)の混合物を含んで成ることができる。非混和性ブロックはまた、EO等の低分子量コモノマーを含有することができる。ポリエーテルブロックコポリマーは、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメント(E)と、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメント(M)とを含有する。
【0038】
本発明のポリエーテルブロックコポリマー成分は、少なくとも2以上の両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーセグメントを含有することができる。両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの例は、ジブロック(EM);直鎖トリブロック(EME又はMEM);直鎖テトラブロック(EMEM);高次の複数ブロック構造(EMEM)XE又は(MEME)XM(式中、Xは、1〜3の範囲の整数である。);分岐鎖ブロック構造;又は星型ブロック構造;及びそれらの任意の組合せから成る群から選択することができる。分岐鎖ブロック構造又は星型ブロック構造から成る両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、少なくとも一つのエポキシモノマー混和性ブロックと、少なくとも一つのエポキシモノマー非混和性ブロックとを含む。
【0039】
エポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメント(E)の例には、ポリエチレンオキシドブロック、プロピレンオキシドブロック、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロック、ポリ(エチレンオキシド−ran−プロピレンオキシド)ブロック、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、本発明において有用なエポキシ樹脂混和性ポリエーテルブロックセグメントは、ポリエチレンオキシドブロックである。
【0040】
一般に、本発明において有用なエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメント(M)は、C4〜C20の炭素原子数を有するエポキシ化α−オレフィンである。エポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメント(M)の例には、ポリブチレンオキシドブロック、1,2−エポキシヘキサンから誘導されるポリヘキシレンオキシドブロック、1,2−エポキシドデカンから誘導されるポリドデシレンオキシドブロック、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、本発明において有用なエポキシ樹脂非混和性ポリエーテルブロックセグメントは、ポリブチレンオキシドブロックである。
【0041】
本発明の別の実施形態では、ポリエーテルブロックコポリマーが多ブロックコポリマー構造を有する場合に、E及びMに加えて他のブロックセグメントがブロックコポリマー中に存在することができる。ブロックコポリマーの他の混和性セグメントの例には、ポリエチレンオキシド、ポリメチルアクリレート、及びそれらの混合物が含まれる。ブロックコポリマーの他の非混和性セグメントの例には、ポリエチレンプロピレン(PEP)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサン、ポリブチレンオキシド、ポリヘキシレンオキシド、ポリエチルヘキシルメタクリレート等のポリアルキルメチルメタクリレート、及びそれらの混合物が含まれる。
【0042】
本発明の実施において用いることができる両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーには、例えば、ジブロックコポリマー、直鎖トリブロック、直鎖テトラブロック、高次の複数ブロック構造、分岐鎖ブロック構造、又は星型ブロック構造が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0043】
例えば、ポリエーテルブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)ブロック、ポリ(プロピレンオキシド)ブロック、又はポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロック;及び例えば、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシドデカン、又は1,2−エポキシヘキサデカンブロック等のC4以上の炭素類似物ブロックに基づくアルキレンオキシドブロックを含むことができる。アルキレンオキシドブロックの他の例には、Atofinaから市販されているC10〜C30+オレフィンを含むエポキシ化α−オレフィン、Vikolox(商標)が含まれうる。
【0044】
本発明において有用な好適なブロックコポリマーの好ましい例には、例えば、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(ブチレンオキシド)(PEO−PBO)等の両親媒性ポリエーテルジブロックコポリマー;及び例えば、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(ブチレンオキシド)−b−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PBO−PEO)等の両親媒性ポリエーテルトリブロックコポリマーが含まれる。
【0045】
本発明において用いられる両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、両方のブロック長の結合に関して、1,000〜30,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。最も好ましくは、ポリエーテルブロックコポリマーの分子量は、3,000〜20,000である。非混和性ブロックが極めて低い溶解度パラメータ(ポリマーの炭化水素)を有するブロックコポリマーに由来する先行技術の材料は、硬化の前にミクロ相分離を起こす。一方、本発明のポリエーテル含有ブロック構造は、好ましい分子量において、硬化の前にミクロ相分離するか、又は硬化工程が行われている間にミセルを形成するかのどちらかであることができる。
【0046】
ブロックコポリマーの組成は、エポキシ樹脂混和性ポリエチレンオキシドブロック90%及びエポキシ樹脂非混和性ポリアルキレンオキシドブロック10%から、エポキシ樹脂混和性ポリアルキレンオキシドブロック10%及びエポキシ樹脂非混和性ポリアルキレンオキシドブロック90%の範囲にわたることができる。
【0047】
各ブロックセグメントのそれぞれに由来する少量のホモポリマーは、本発明の最終両親媒性ポリエーテルブロックコポリマー中に存在してもよい。例えば、混和性又は非混和性ブロックの構造に類似又は同一のホモポリマーを1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜10重量%を、エポキシモノマー系及び両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを含む本発明の組成物に添加することができる。
【0048】
さらなるポリマー又はオリゴマーをまた、最終コーティングにおけるその自己組織化モルホロジーに影響を与えるためにブロックコポリマーに添加することができる。これらのさらなるポリマーは、それら自身を非混和性領域に分離して、そのモルホロジーを変える。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に用いられる両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの量は、ポリマーの当量、並びに組成物から製造される生成物の所望の特性を含む多様な因子に応じて決まる。一般に、本発明において用いられる両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーの量は、硬化コーティングの体積に基づいて、0.1体積%〜30体積%、好ましくは0.5体積%〜10体積%、最も好ましくは1体積%〜5体積%であることができる。
【0050】
本発明の両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーは、エポキシ樹脂の靭性又は耐破壊性を、エポキシ樹脂組成物中で、好ましくはブロックコポリマーの低充填率(例えば、10体積%未満)において向上させることが好ましい。一般に、1体積%〜10体積%のポリエーテルブロックコポリマーを、エポキシ樹脂組成物に添加することにより、対照品の靭性の1.5倍〜4倍の係数で組成物の靭性を向上させる。
【0051】
本発明の室温硬化型ハイソリッドエポキシコーティング配合物は、熱硬化性エポキシ樹脂と混合した両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを少なくとも一つ以上含むことができる。加えて、2種又は3種以上の異なる両親媒性ブロックコポリマーを、当該ブロックコポリマーの一種がポリエーテルブロックコポリマーである限り、本発明のブロックコポリマー成分を製造するために一緒に混合することができる。1を超えるブロックコポリマーを、ナノ構造のさらなる制御、すなわち、形状及び寸法を得るために混合することができる。
【0052】
樹脂組成物中に用いられるポリエーテルブロックコポリマーに加えて、他の両親媒性ブロックコポリマーも、本発明の樹脂組成物中の第2のブロックコポリマー成分として用いることができる。本発明の実施において用いることができる、本発明のポリエーテルブロックコポリマー以外のさらなる両親媒性ブロックコポリマーの例には、例えば、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(エチレン−alt−プロピレン)(PEO−PEP)、ポリ(イソプレン−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PI−b−PEO)、ポリ(エチレン・プロピレン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PEP−b−PEO)、ポリ(ブタジエン−b−エチレンオキシド)ブロックコポリマー(PB−b−PEO)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−b−イソプレン)ブロックコポリマー(PI−b−PEO−PI)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド−b−メタクリル酸メチル)ブロックコポリマー(PI−b−PEO−b−PMMA)、及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。一般に、樹脂組成物中に用いられる第2の両親媒性ブロックコポリマーの量は、0.1体積%〜30体積%であることができる。
【0053】
本発明のポリエーテルブロックコポリマーは、あるブロックセグメントの非混和性と他のブロックセグメントの混和性とのバランスによりもたらされたミセル化により、液状樹脂マトリクス中に好ましくは「テンプレート」を形成する、均一に分散しかつ均一に調整したサブミクロンサイズの構造体を提供する。上記ミセル構造体は、硬化エポキシ熱硬化樹脂中に保存されるか、又は、硬化工程の間に形成され、Tgを保持しつつ、改良された靭性、改良された耐破壊性、耐衝撃性、及び非変性エポキシ熱硬化樹脂と同レベルにおける他の特性を示すエポキシ熱硬化性材料を製造する。
【0054】
ナノテンプレート化樹脂のミセルモルホロジーは、例えば、球状、ウォーム様(worm−like)、及びベシクルであることができる。ミセルモルホロジーは、有利には低濃度(例えば、5体積%未満)のブロックコポリマーで得られる;すなわち、モルホロジーの特徴は、互いに結び付けられていないか、又は3次元格子中に詰められている。より高濃度における自己組織化構造体はまた、ナノメートルサイズスケールにおいて格子相互作用によりお互いに結び付いた球状、円筒型、又はラメラモルホロジーの特徴を形成することができる。
【0055】
ブロックコポリマーが、ウォーム様、ベシクル又は球状ミセルモルホロジー等のサブミクロンサイズ化モルホロジーに自己組織化する場合に、耐破壊性が増すと思われる。いずれのミセルモルホロジーが、どのように異なる樹脂中で生ずるかを予測できるのかについては、もしあったとしても十分に理解されてはいない。しかし、自己組織化モルホロジーを決める要因の一部には、例えば、(i)ブロックコポリマー中のモノマーの選択、(ii)ブロックコポリマー中の非対称度、(iii)ブロックコポリマーの分子量、(iv)エポキシ樹脂の組成、及び(v)樹脂用の硬化剤の選択を挙げることができると思われる。
【0056】
本発明の実施形態の一つの実例として、エポキシ樹脂を、ポリエーテルブロックコポリマー、例えば、PBOがジブロックコポリマーのエポキシ非混和性の疎水性の軟かい成分であり、そしてPEOがジブロックコポリマーのエポキシ混和性成分である、ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(ブチレンオキシド)(PEO−PBO)ジブロックコポリマーと混合することができる。PEO−PBOジブロックコポリマーを含む硬化性エポキシ樹脂組成物により、硬化したエポキシ樹脂本体の耐衝撃性が向上する。
【0057】
PEO−PBOブロックコポリマーは、一般に、化学式(PEO)x−(PBO)y(式中、添字x及びyは、それぞれ、各ブロック中のポリエチレンオキシド及びポリブチレンオキシドのモノマー単位の数であり、そして正の数である。)により示すことができる。一般に、xは15〜85であることが好ましく、構造部分(PEO)xの分子量は750〜100,000であることが好ましい。
【0058】
添字yは15〜85であることが好ましく、構造部分(PBO)yにより表される分子量は、1,000〜30,000であることが好ましい。また、単一のPEO−PBOジブロックコポリマーを単独で用いることができ、あるいは1種超のPEO−PBOジブロックコポリマーを混合して、同様に用いることができる。
【0059】
本発明の実施形態の一つにおいて、ジブロックコポリマーがPEO20%及びPBO80%〜PEO80%及びPBO20%を有し;そして2000以上のPBOの分子量(Mn)及び750以上のPEOの分子量のブロックサイズを有し;そして種々の自己組織化モルホロジーを付与するPEO−PBOブロックコポリマーが用いられる。例えば、本発明は、球状ミセルを与える2,500〜3,900のPBOブロック長を有するジブロックを含む。
【0060】
本発明の別の例には、ウォーム様ミセルを与える6,400のPBOセグメントを有するジブロックが含まれる。本発明のさらに別の例は、凝集したベシクルモルホロジーを与える短い(Mn=750)PEOブロックセグメントを有するジブロックである。本発明のさらに別の例には、PBOホモポリマーが別個のマクロ相を形成することなく、ミセル中に隔離される球状ミセルを与える低分子量PBOホモポリマーとのPEO−PBOジブロックの混合物が含まれ;PBOホモポリマーは、ジブロックの存在なしで添加された場合にマクロ相分離を起こす。
【0061】
一般に、本発明において用いられる両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーを、一種のモノマーが重合して初期ブロックを調製し、続いて第2のモノマー種を単に導入し、次に、重合工程が完了するまで第1のブロックコポリマーの末端上に重合させる単一の連続合成重合法において調製することができる。別個にブロックを製造することもまた可能であり、第1のブロックを調製し、次に、第2の合成段階において、第1のブロックの末端上に第2のブロックを重合させる。二種のブロック断片の溶解度の違いは十分であり、当該ブロックコポリマーを、多様なエポキシ材料を変性するために用いることができる。
【0062】
上記ブロックコポリマーを、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のI族金属により穏やかにしたアニオン重合により調製することができる。上記重合を、そのまま又は溶媒を用いて行うことができる。上記重合反応の温度は、例えば、大気圧から、僅かに大気圧を超える圧力において、100℃〜140℃であることができる。ブロックコポリマーの合成は、例えば、Whitmarsh,R.H.,In Nonionic Surfactants Polyoxyalkylene Block Copolymers;Nace,V.M.,Ed.;Surfactant Science Series;Vol.60;Marcel Dekker,N.Y.,1996;Chapter 1に記載されるように行うことができる。
【0063】
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーのブロックセグメントを、1,2−エポキシアルケンの開環重合により調製する。
【0064】
熱硬化材料は、3次元網目を形成するために、共有結合を介して互いに結合した可変長のポリマー鎖から形成されると定義する。熱硬化エポキシ材料は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂を、アミン種等の硬化剤と反応させて得ることができる。
【0065】
本発明に有用なエポキシ樹脂には、多様なエポキシ化合物が含まれる。一般的に、エポキシ化合物は、ポリエポキシドとも称されるエポキシ樹脂である。本明細書において有用なポリエポキシドは、モノマー性(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ樹脂、及びトリスエポキシ樹脂)、高分子量の改良樹脂(例えば、ビスフェノールAを用いて改良したビスフェノールAのジグリシジルエーテル)又は重合した不飽和のモノエポキシド(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル)、ホモポリマー又はコポリマーであることができる。最も望ましくは、エポキシ化合物は、平均して1分子当り少なくとも一つのペンダント又は末端1,2−エポキシ基(すなわち、隣接エポキシ基)を含む。
【0066】
本発明において有用なポリエポキシドの例には、多価アルコール及び多価フェノール両方のポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸又は乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化不飽和二酸エステル(epoxidized di−unsaturated acid esters)、エポキシ化不飽和ポリエステル、及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0067】
多価フェノールから調製される多くのポリエポキシドには、例えば、米国特許第4,431,782号明細書に開示されてポリエポキシドが含まれる。ポリエポキシドは1価、2価及び3価のフェノールから調製することができ、そしてノボラック樹脂を含むことができる。ポリエポキシドには、エポキシ化シクロオレフィン、並びにアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル及びアリルグリシジルエーテルのポリマー及びコポリマーである高分子量のポリエポキシドが含まれうる。好適なポリエポキシドは、米国特許第3,804,735号明細書、同第3,892,819号明細書、同第3,948,698号明細書、同第4,014,771号明細書、及び同第4,119,609号明細書;及びLee及びNevilleのHandbook of Epoxy Resins,Chapter 2,McGraw Hill,N.Y.(1967)に開示されている。
【0068】
本発明は、一般的に、ポリエポキシドに適用できるが、好ましいポリエポキシドは、150〜3,000のエポキシド当量(EEW)、好ましくは170〜2,000のEEWを有する、多価アルコール又は多価フェノールのグリシジルポリエーテルである。これらのポリエポキシドは、通常、少なくとも2モルのエピハロヒドリン又はグリセロールジハロヒドリンを、1モルの多価アルコール又は多価フェノールと、当該ハロヒドリンと結合するために十分な量の苛性アルカリとを反応させることにより製造される。当該生成物は、1を超えるエポキシド基、すなわち、1を超える1,2−エポキシ当量の存在を特徴とする。
【0069】
本発明に有用なポリエポキシドはまた、脂環式ジエン誘導エポキシドであることができる。これらのポリエポキシドを、熱、カチオン又は光開始(例、UV開始硬化)のいずれかを用いて硬化させることができる。
【0070】
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ビス(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルメチルヘキサン二酸エステル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートメチルエステル、及びそれらの混合物等のDow Chemical Companyにより製造され市販されているいくつかの脂環式エポキシドがある。
【0071】
上記ポリエポキシドはまた、反応希釈剤として、ブチル及びそれ以上の高級脂肪族グリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、又はクレシルグリシジルエーテル等の少量のモノエポキシドを含むことができる。上記反応希釈剤は、通常、ポリエポキシド配合物に添加されて、それらの使用粘度を下げ、そして配合物に一層良好な基材ヌレ性を付与する。技術上公知であるように、モノエポキシドは、ポリエポキシド配合物の化学量論性に影響を与え、そしてその変化を反映させるために硬化剤の量及び他のパラメータの調整がなされる。
【0072】
一般に、本発明に用いられるポリエポキシドの量は、10重量%〜95重量%の範囲にあることができる。
【0073】
本発明において有用な硬化剤成分(ハードナー又は架橋剤とも称される)は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応性を有する活性基を有する任意の窒素含有化合物であることができる。上記硬化剤の化学的性質は、エポキシ樹脂に関する前述の書籍に記載されている。本発明に有用な硬化剤には、アミン及びそれらの誘導体等の窒素含有化合物が含まれる。
【0074】
本発明の窒素含有硬化剤は、多官能性アミンと二塩基酸との反応生成物等のポリアミド;メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン;エチレンジアミン等の脂肪族アミン;イソホロンジアミン等の脂環式アミン;多官能性アミンと一塩基酸との反応生成物等のアミドアミン;フェノール、ホルムアルデヒド及びアミンの反応生成物等のフェンアルキルアミン;シリコン含有主鎖を有するアミン官能性ポリマー等のシロキサンアミン;多官能性アミンとケトンとの反応生成物等のケチミン;エチレンジアミンとビスフェノールAとのジグリシジルエーテルの反応生成物等の上述のアミンのエポキシ付加物;及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0075】
本発明に用いられる硬化剤の量は、60℃未満の温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量である。一般に、本発明に用いられる硬化剤の量は、硬化剤50モル%〜硬化剤150モル%の範囲であることができる。
【0076】
本発明のエポキシ樹脂組成物中の添加剤として有用な任意成分には、硬化触媒が含まれる。当該硬化触媒を、硬化性組成物のエポキシ樹脂成分に添加するか、又は硬化性組成物中の成分の混合物中に混合することができる。当該硬化触媒の例には、2−エチル−4−メチルイミダゾール、フェノール、アルコール、第3級アミン、及び有機金属塩が含まれる。好ましくは、当該硬化触媒は、硬化性組成物の全体重量に基づいて、0〜20重量部の量で用いられる。
【0077】
本発明の硬化性の熱硬化性エポキシ樹脂組成物に添加することができる別の任意成分は、溶媒又は複数の溶媒の混合物である。上記樹脂組成物中に用いられる溶媒は、好ましくは、樹脂組成物中の他の成分と混和性を有する。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物中で用いられる任意の溶媒に応じて決まる透明な溶液又は安定な分散液であることができる。本発明において用いられる好適な溶媒の例には、例えば、ケトン、エーテル、アセテート、芳香族炭化水素、シクロヘキサノン、グリコールエーテル、及びそれらの組合せが含まれる。
【0078】
好ましい溶媒は極性溶媒である。例えば、イソプロパノール等の1〜20個の炭素原子を有する低級アルコールは、化合物が形成する際に、樹脂マトリクスから除去させるために好適な溶解度及び揮発度を有する。
【0079】
硬化性エポキシ樹脂組成物中に用いられる溶媒の全体量は、一般に、0〜40重量%であることができる。
【0080】
本発明による硬化性樹脂組成物はまた、他の触媒、他の硬化剤、他の樹脂、充填剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、界面活性剤、流動性制御剤、安定剤、処理を補助する希釈剤、付着促進剤、軟質化剤、靭性付与剤、難燃剤等の室温硬化型ハイソリッドコーティング配合物中に一般的に用いられる添加剤を含有することができる。通常、室温硬化型ハイソリッドエポキシを構成するであろう顔料、ポリマー、及び溶媒並びに他の添加剤を、本発明のエポキシ樹脂組成物中に混合することができる。一般に、本発明において用いられる任意の添加剤の量は、0〜50体積%であることができる。
【0081】
本発明の混合物又は組成物の調製において、当該組成物の成分を、好ましくは液体状である硬化性組成物を生成させるための条件において、当業界に公知の手段により一緒に混合する。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を、組成物中の全ての成分を任意の順序で一緒に混合することにより製造することができる。
【0082】
あるいは、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を、エポキシ樹脂成分及びブロックコポリマーを含む第1の組成物と、硬化剤成分を含む第2の組成物とを調製することにより製造することができる。樹脂組成物を製造する上で有用な全ての他の成分は、同一の単一組成物中に存在することができ、あるいは一部は第1の組成物中に、そして一部は第2の組成物中に存在することができる。例えば、靭性が付与された樹脂組成物を製造するための方法には、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられる硬化剤中に靭性付与剤を導入することが含まれる。
【0083】
次に、第1の組成物を第2の組成物と混合して、硬化性樹脂組成物を形成する。次に、当該硬化性樹脂組成物の混合物を硬化させて、樹脂熱硬化材料を生成させる。好ましくは、当該硬化性エポキシ樹脂組成物は溶液状であり、当該組成物の成分は溶媒中に溶解している。上記溶液を、基材上のコーティング及びコーティングされた物品を製造するために用いる。
【0084】
前述のように、中性溶媒を、ブロックコポリマー、エポキシ樹脂及び硬化剤の均質混合を促進するために、混合物中で用いることができる。本発明で用いられる好ましい任意の溶媒には、例えば、キシレン及びメチルエチルケトン(MEK)が含まれうる。さらに、他の溶媒選択物もまた用いることができる。
【0085】
エポキシ樹脂の処理が促進段階を含む場合、ブロックコポリマー靭性付与剤を、促進反応の前に反応物質と共に添加することができる。従って、靭性が付与された樹脂を製造する別の方法は、樹脂製造段階の際に、靭性付与剤を直接エポキシ樹脂促進反応器中に導入することから成る。この実施形態において、本発明の組成物は、液状エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA等の多価アルコール及びEO−BOブロックコポリマー等のブロックコポリマー靭性付与剤を包含することができる。
【0086】
上記ブロックコポリマー靭性付与剤を、コーティング用途において用いられる硬化したエポキシ系の配合された固形分含有率に基づいて、1体積%〜10体積%、好ましくは5体積%〜10体積%の濃度で用いることができる。上記樹脂中のブロックコポリマー靭性付与剤の濃度を、最終配合物中の望ましい濃度を与えるように調整することができるか、あるいはより高濃度に保持し(マスターバッチ)、そして未変性樹脂と共に所望の最終濃度に下方調整することができる。
【0087】
エポキシ樹脂、硬化剤、ブロックコポリマー及び組成物中に存在する任意の他の変性剤の混合物を、当業界により実施される一般的な方法に従って硬化させることができる。硬化温度は、一般に、5℃〜200℃の範囲にあることができるが、好ましい方法は、本発明の場合、室温硬化(例えば、20℃)である。用いられる硬化処理は、熱、放射線又はエネルギー源の組合せを含むことができる。
【0088】
一般に知られているように、硬化のために用いられる時間帯は、一般に、硬化剤及び樹脂成分に応じて決まり、数秒から数時間又は数日の範囲にわたることができ、例えば、硬化のために用いられる時間は、一般的に、光硬化の場合の1秒から室温硬化の場合の1ヶ月までの範囲にわたることができる。
【0089】
上記硬化性組成物を、1段階又は複数段階で硬化させることができ、あるいは上記硬化性組成物を、初期硬化サイクル後、異なる温度又はエネルギー源を用いてポストキュアさせることができる。
【0090】
本発明は、コーティングを製造するために好適なエポキシ樹脂と、例えば、EO−BOブロックコポリマー又は類似構造の任意の他のコポリマーであることができる靭性付与剤との混合物から成る。
【0091】
本発明のポリエーテルブロックコポリマーを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物は、室温硬化コーティング組成物を調製するために用いられる。次に、当該室温硬化コーティング組成物を、種々の基材に適用する。当該室温硬化コーティング組成物を、スプレー、はけ塗り、ローリング、流し塗り、又はディッピング等の任意の周知の方法により基材に塗布することができる。
【0092】
他の用途
本発明のコポリマーの使用をまた、エポキシ樹脂系多機能コーティングに予見することができる。上記コーティングは、衝撃及び腐食保護と、機械及び車両の金属表面の振動緩和処理とのために用いられる。
【実施例】
【0093】
以下の例は、本発明を説明するために与えられ、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。特に示さない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0094】
予備例A:PEO−PBO−PEOトリブロックコポリマーの調製
PEO−PBO−PEOトリブロックコポリマーを製造するために用いられた基本手順は、米国特許第5,600,019号明細書の例1に基づいている。この手順に対する修正を以下に列挙する。PEO−PBO−PEOトリブロック最終生成物は、重合開始剤/モノマーの以下のモル比を含有していた。
プロピレングリコールを1モル/ブチレンオキシドを56モル/エチレンオキシドを62モル
【0095】
パートA:触媒化重合開始剤の調製
プロピレングリコール及びKOH水溶液(固形分46重量%)を用いた。KOH水溶液を、9重量%の最終触媒濃度を与える量で反応器に添加した。水は、反応生成物から除去しなかった。
【0096】
パートB:ブチレンオキシドポリマーの調製
ブチレンオキシドを二つのバッチに添加した。BOの量を、中間体のブチレンオキシドブロックが約1000の数平均分子量(Mn)を有するように調整した。
【0097】
熟成が完了した後に、さらにKOH水溶液(46重量%)を反応器に添加し、最終触媒濃度を約1重量%とした。水を減圧下で反応生成物から除去し、次に、さらにBOを反応器に添加して、最終ブチレンオキシドポリマーを得た。最終ブチレンオキシドポリマーは約3500の数平均分子量を有していた。
【0098】
パートC:PEO−PBO−PEO最終トリブロックコポリマーの調製
液状生成物を得るために、エチレンオキシド及びブチレンオキシドの混合物(80/20重量%)を、上記パートBで調製したブチレンオキシドに添加した。この段階において少量のブチレンオキシドを導入すると、PEOが結晶化して固体を形成しようとする傾向が乱される。最終トリブロックが約6800g/モルの数平均分子量を有するように、添加される混合物の量を調整した。最終反応混合物を60℃に冷却し、次に、ケイ酸マグネシウム床を通して中和して、PEO−PBO−PEO最終トリブロックコポリマーを得た。
【0099】
例1
この例において、以下の6つの系を用いた:3つの未変性エポキシ系(Air ProductsのAncamide 2353を用いた硬化を1つ、Air ProductsのAncamine 1618を用いた硬化を1つ、そしてCardoliteのNC541LVを用いた硬化を1つ);及び上述の予備例Aを用いて調製した、10重量%のPEO−PBO−PEOトリブロックコポリマー靭性付与剤を用いて変性した3つの変性エポキシ系。この例において用いた3種の硬化剤に関する情報を、表1に記載する。
【0100】
【表1】

【0101】
全ての6つのコーティング系からパネルを調製した。錫メッキ化鋼製パネル及びBonderite 1000パネルの両方を、ワイヤーを巻いたドローダウンバーを用いてコーティングした。衝撃試験の際の失敗の根本的原因から、可能な限り付着要因を排除するために、Bonderite 1000パネルを選択した。フィルム特性試験用に、錫メッキ化鋼製パネルを選択した。というのは、上記コーティングを、水銀アマルガム化法により当該パネルから容易に剥がすことができるからである。全てのパネルを、60℃にセットしたオーブン中で、週末にわたって(約64時間)硬化させた。この硬化スケジュールは、主硬化反応を、エポキシ−アミンからエポキシ−エポキシに変化させるほど積極的でないが、反応物質の完全な転化を確保するために十分積極的であると考えた。
【0102】
ASTM法D2794−91を用いて変性及び未変性コーティングの耐衝撃性を評価するために、Bonderite 1000パネルを用いた。この試験の結果を、表2に見出すことができる。各ケースにおいて、10%変性系は、それらの未変性の対応系の性能と等しいか又はそれを上回った。Ancamine 1618硬化系に対する衝撃試験パネルの写真を図3に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
応力−ひずみ曲線を、TA Instruments社のRSAIII上で、薄膜から作成した。直線定規状の試料(一般的に、4mm幅、0.1mm厚さ及び10mm長さ)を、はさみを用いてフリーフィルムから注意深く切り取った。環境チャンバーを除去して、室温において、0.05mm/sの線形クロスヘッド速度を用いて試験を行った。グリップ部による失敗を最小とするために、微細サンドペーパー(1200グリット)を固定化(tabbing)材料として両端に用い、試料とグリップ間に置いた。変性の有無によるAncamide 2353硬化系に対する代表的な応力−ひずみトレースを図1に示す。全ての試料はゲージ領域に失敗があった。要約データ表2は4個の反復引張試験の平均に基づいている。
【0105】
表2のデータから、3つの系のそれぞれの変性により、衝撃試験の結果とは無関係に破断点伸びが大きく向上したことが観察できる。従って、NC541LV硬化系の場合、付着性に起因して、衝撃改良が不足したことが示唆される。
【0106】
動的熱機械分析(DMTA)を、TA Instruments社のRSAIIIを用いて薄膜上で、張力モードにおいて実施した。はさみを用いて試料をフリーフィルムから切り取った。一般的に、試料は10mm幅、0.1mm厚さ及び15mm長さであった。−110℃から150℃まで、1分当り5℃の傾斜で試験を実施した。1Hzの周波数を用いた。これらの系に対する一般的な損失係数曲線を図2に示す。図2中の曲線をAncamine 2353硬化系から作成し、点線は変性系を表し、実線は未変性系を表す。
【0107】
損失係数曲線のピークを、系のガラス転移温度を規定するために用いた。この分析の結果を表2に記載する。このデータから観察できるように、上記コーティングのガラス転移温度は、靭性付与剤の添加により大きな影響を受なかった。
【0108】
[1]
(a)エポキシ樹脂;
(b)当該エポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られた硬化したエポキシ樹脂組成物の靭性が増すような、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマー、ここで、前記非混和性ブロックセグメントは、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含む;及び
(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:
を含む硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物。
[2]
前記両親媒性ブロックコポリマーが、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーであり、前記混和性ブロックセグメントが少なくとも一つのポリエーテル構造を含む、[1]に記載の組成物。
[3]
前記非混和性ブロックセグメントが、前記非混和性ブロックセグメントのポリエーテル構造が少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも一つ又は二つ以上のアルキレンオキシドモノマー単位を含有する条件の下、ポリエーテル構造の少なくとも一つを含む、[1]に記載の組成物。
[4]
前記窒素含有硬化剤がアミン硬化剤である、[1]に記載の組成物。
[5]
前記窒素含有硬化剤が、ポリアミド、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環式アミン、アミドアミン、フェンアルキルアミン、シロキサンアミン、ケチミン、アミンのエポキシ付加物、及びそれらの混合物から成る群から選択される[1]に記載の組成物。
[6]
前記両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーが、ジブロック、直鎖のトリブロック、直鎖のテトラブロック、高次の複数ブロック構造、分岐鎖ブロック構造、又は星型ブロック構造から成る群から選択される、[1]に記載の組成物。
[7]
前記混和性ブロックセグメントが、ポリエチレンオキシドブロック、プロピレンオキシドブロック、又はポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロックを含有し;そして前記非混和性ブロックセグメントが、ポリブチレンオキシドブロック、ポリヘキシレンオキシドブロック、又はポリドデシレンオキシドブロックを含有する、[1]に記載の組成物。
[8]
前記両親媒性ブロックコポリマーの前記混和性セグメントの少なくとも一つが、ポリ(エチレンオキシド)であり;そして前記両親媒性ブロックコポリマーの前記非混和性セグメントの少なくとも一つが、ポリ(ブチレンオキシド)である、[1]に記載の組成物。
[9]
前記両親媒性ブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンオキシド)又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)である、[1]に記載の組成物。
[10]
前記両親媒性ブロックコポリマーが1000〜30,000の分子量を有する、[1]に記載の組成物。
[11]
前記両親媒性ブロックコポリマーの混和性セグメント:前記両親媒性ブロックコポリマーの非混和性セグメントの比率が、10:1〜1:10である、[1]に記載の組成物。
[12]
前記両親媒性ブロックコポリマーが、硬化したコーティングの体積に基づいて0.1体積%(vol.%)〜30体積%の量で存在する、[1]に記載の組成物。
[13]
前記エポキシ樹脂が、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多価フェノールのポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸又は乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化不飽和二酸エステル、エポキシ化不飽和ポリエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、[1]に記載の組成物。
[14]
前記エポキシ樹脂が、多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルである、[1]に記載の組成物。
[15]
前記エポキシ樹脂が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ビス(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルメチルヘキサン二酸エステル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートメチルエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、[1]に記載の組成物。
[16]
前記エポキシ非混和性ブロックセグメントと同一組成のホモポリマーを包含する、[1]に記載の組成物。
[17]
前記エポキシ混和性ブロックセグメントと同一組成のホモポリマーを包含する、[1]に記載の組成物。
[18]
前記エポキシ非混和性ブロックに混和性を有し、従って、エポキシ熱硬化網目中の前記非混和性ブロックのモルホロジーを変化させるポリマーを包含する、[1]に記載の組成物。
[19]
ポリエポキシドが、150〜3000のエポキシド当量を有する、[1]に記載の組成物。
[20]
溶媒を包含する、[1]に記載の組成物。
[21]
硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物を調製するための方法であって;
(a)エポキシ樹脂;
(b)当該エポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られた硬化したエポキシ樹脂組成物の靭性が増すような、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマー、ここで、前記非混和性ブロックセグメントは、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含む;及び
(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:
を混合することを含む方法。
[22]
コーティングされた基材を調製するための方法であって、下記段階;
(I)前記基材を、下記を含む硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物に接触させる段階;
(a)エポキシ樹脂;
(b)当該エポキシ樹脂組成物が硬化すると、得られた硬化したエポキシ樹脂組成物の靭性が増すような、少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマー、ここで、前記非混和性ブロックセグメントは、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含む;及び
(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:そして
(II)前記室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物を、当該コーティング組成物を硬化させるために十分な時間及び温度において硬化させる段階:
を含む方法。
[23]
[22]に記載の方法により製造されたコーティングされた物品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂;
(b)少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマーであって、前記混和性ブロックセグメントおよび前記非混和性ブロックセグメントの両者は、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含み、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、アルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、少なくとも3個超の炭素原子を有するアルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ非混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーが、硬化したコーティングの体積に基づいて0.1体積%〜30体積%の量で存在する、両親媒性ブロックコポリマー;及び
(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:
を含む硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物。
【請求項2】
前記窒素含有硬化剤がアミン硬化剤である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記窒素含有硬化剤が、ポリアミド、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環式アミン、アミドアミン、フェンアルキルアミン、シロキサンアミン、ケチミン、アミンのエポキシ付加物、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記両親媒性ポリエーテルブロックコポリマーが、ジブロック、直鎖のトリブロック、直鎖のテトラブロック、複数ブロック構造、分岐鎖ブロック構造、又は星型ブロック構造から成る群から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記混和性ブロックセグメントが、ポリエチレンオキシドブロック、ポリプロピレンオキシドブロック、又はポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロックを含有し;そして前記非混和性ブロックセグメントが、ポリブチレンオキシドブロック、ポリヘキシレンオキシドブロック、又はポリドデシレンオキシドブロックを含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記両親媒性ブロックコポリマーの前記混和性ブロックセグメントの少なくとも一つが、ポリ(エチレンオキシド)であり;そして前記両親媒性ブロックコポリマーの前記非混和性ブロックセグメントの少なくとも一つが、ポリ(ブチレンオキシド)である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンオキシド)又はポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ブチレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記両親媒性ブロックコポリマーが1000〜30,000の分子量を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記両親媒性ブロックコポリマーの混和性ブロックセグメント:前記両親媒性ブロックコポリマーの非混和性ブロックセグメントの比率が、10:1〜1:10である、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂が、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多価フェノールのポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルアミン、ポリグリシジルアミド、ポリグリシジルイミド、ポリグリシジルヒダントイン、ポリグリシジルチオエーテル、エポキシ化脂肪酸、エポキシ化乾性油、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化不飽和二酸エステル、エポキシ化不飽和ポリエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂が、多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ビス(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルメチルヘキサン二酸エステル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートメチルエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントと同一組成のホモポリマーを包含する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと同一組成のホモポリマーを包含する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂が、150〜3000のエポキシド当量を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
溶媒を包含する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物を調製するための方法であって;
(a)エポキシ樹脂;
(b)少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマーであって、前記混和性ブロックセグメントおよび前記非混和性ブロックセグメントの両者は、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含み、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、アルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、少なくとも3個超の炭素原子を有するアルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ非混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーが、硬化したコーティングの体積に基づいて0.1体積%〜30体積%の量で存在する、両親媒性ブロックコポリマー;及び
(c)60℃未満の周辺温度で前記コーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:
を混合することを含む方法。
【請求項18】
コーティングされた基材を調製するための方法であって、下記段階;
(I)前記基材を、下記を含む硬化性の室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物に接触させる段階;
(a)エポキシ樹脂;
(b)少なくとも一つのエポキシ樹脂混和性ブロックセグメントと、少なくとも一つのエポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントとを含有する両親媒性ブロックコポリマーであって、前記混和性ブロックセグメントおよび前記非混和性ブロックセグメントの両者は、ポリエーテル構造を少なくとも一つ含み、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、アルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーの前記エポキシ樹脂非混和性ブロックセグメントの少なくとも1つは、少なくとも3個超の炭素原子を有するアルキレンオキシドから誘導された少なくとも1つのエポキシ非混和性ポリエーテルブロックセグメントであり、前記両親媒性ブロックコポリマーが、硬化したコーティングの体積に基づいて0.1体積%〜30体積%の量で存在する、両親媒性ブロックコポリマー;及び
(c)60℃未満の周辺温度でコーティング組成物を硬化させるために十分な量の窒素含有硬化剤:そして
(II)前記室温硬化型ハイソリッドコーティング組成物を、当該コーティング組成物を硬化させるために十分な時間及び温度において硬化させる段階:
を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法により製造されたコーティングされた物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57074(P2013−57074A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−243635(P2012−243635)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2007−541250(P2007−541250)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】