説明

両親媒性ブロック共重合体、それを含有するポリマー含有組成物、それを用いた液体付与方法および装置

【課題】 機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロック共重合体、該ブロック共重合体を含む良好な分散性、定着性、耐環境性を有するポリマー含有組成物を提供する。
【解決手段】 イオン性官能基を有する両親媒性ブロック共重合体であって、純水中での5重量%溶液での回転粘度(N5)と10重量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下である両親媒性ブロック共重合体。前記ブロック共重合体、溶媒または分散媒、および機能性物質を含有するポリマー含有組成物。前記ポリマー含有組成物にエネルギーを作用させることにより、被記録媒体上に前記ポリマー含有組成物を吐出する液体付与方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性ブロック共重合体、各種機能材料として使用することができるポリマーを含む組成物、それを用いた液体付与方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性物質を含有する水性分散材料には、従来から機能性材料として、除草剤、殺虫剤等の農薬、抗がん剤、抗アレルギー剤、消炎剤等の医薬、また着色剤を有するインク、トナー等の色材が良く知られている。近年、デジタル印刷技術は非常な勢いで進歩している。このデジタル印刷技術は、電子写真技術、インクジェット技術と言われるものがその代表例であるが、近年オフィス、家庭等における画像形成技術としてその存在感をますます高めてきている。
【0003】
インクジェット技術はその中でも直接記録方法として、コンパクト、低消費電力という大きな特徴がある。また、ノズルの微細化等により急速に高画質化が進んでいる。インクジェット技術の一例は、インクタンクから供給されたインクをノズル中のヒーターで加熱することで蒸発発泡し、インクを吐出させて記録媒体に画像を形成させるという方法である。他の例はピエゾ素子を振動させることでノズルからインクを吐出させる方法である。
【0004】
これらの方法に使用されるインクは通常染料水溶液が用いられるため、色の重ね合わせ時ににじみが生じたり、記録媒体上の記録箇所に紙の繊維方向にフェザリングと言われる現象が現れたりする場合があった。これらを改善するために顔料分散インクを使用することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
しかしながら、インクジェット記録性の中でインク組成物の吐出安定性が十分に得られない場合が有り、具体的な例ではインクジェット記録ヘッドの所定のノズルからインクを吐出させた後そのノズルからのインクの吐出が一定時間停止された後に再びそのノズルからインクを再吐出させたときにそのインクの再吐出が安定して行いにくい場合があったり、その他に未だなお多くの改善が望まれている状況である。
【特許文献1】米国特許第5085698号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロック共重合体を提供しようとするものである。
また、本発明は、該ブロック共重合体を含む良好な分散性、定着性、耐環境性を有するポリマー含有組成物を提供しようとするものである。またそれらを使用した液体付与方法、記録方法及びその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の発明は、イオン性官能基を有する両親媒性ブロック共重合体であって、純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であることを特徴とする両親媒性ブロック共重合体である。
【0008】
好ましくは少なくとも一つの疎水性ブロックセグメントと少なくとも一つの親水性セグメントを有するブロック共重合体であり、非イオン性の親水ユニットとイオン性の親水ユニットを共に有する両親媒性ブロック共重合体である。
【0009】
好ましくは疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントが順に並ぶ構造を有するブロック共重合体であり、さらなる好ましい一形態としては、順に並ぶ疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントの重合度比が疎水性ブロックセグメントを10としたとき、非イオン性親水性セグメントが8以下、イオン性親水セグメントが5以下であるブロック共重合体化合物である。さらに本発明のブロック共重合体として好ましくは、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有することを特徴とするブロック共重合体である。
【0010】
本発明の第二の発明は、ブロック共重合体、溶媒または分散媒、および機能性物質を含有するポリマー含有組成物であって、前記ブロック共重合体が上記の両親媒性ブロック共重合体であることを特徴とするポリマー含有組成物である。本発明の好ましい一形態は前記機能性物質が、前記ブロック共重合体に内包されていることを特徴とするポリマー含有組成物である。
【0011】
本発明の第三の発明は、前記ポリマー含有組成物にエネルギーを作用させることにより、被記録媒体上に前記ポリマー含有組成物を吐出することを特徴とする液体形成方法である。
【0012】
また本発明の第四の発明は、上記のポリマー含有組成物の液体にエネルギーを作用させて媒体に液体を付与するための液体付与手段と、前記液体付与手段を駆動するための駆動手段とを備えていることを特徴とする液体付与装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロック共重合体を提供することができる。また、本発明は、該ブロック共重合体を含む良好な分散性、定着性、耐環境性を有するポリマー含有組成物を提供することができる。またそれらを使用した液体付与方法、記録方法及びその装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の発明は、イオン性官能基を有する両親媒性ブロック共重合体であって、純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であることを特徴とする両親媒性ブロック共重合体である。
【0015】
回転粘度とは、粘弾性測定装置により測定できる一定の回転シェアを印加したときの粘度を表し、粘弾性測定装置により測定可能である。粘度の測定は、25℃の温度において行う。
【0016】
本発明の両親媒性ブロック共重合体は特徴的にイオン性官能基を有する。両親媒性とは、共に溶解しない2種の溶媒にそれぞれ溶解する性質を併せ持つ性質あるいはある種の溶媒に溶解する部位と溶解しない部位を持つ性質あるいはある種の溶媒に親和する部位と親和しない部位を持つ性質を言い、本発明においては水あるいは水系溶媒に親和する部位と親和しない部位を併せ持つブロック共重合体であることが好ましい。
【0017】
本発明のブロック共重合体は、5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であるが好ましくは2.0以下さらに好ましくは1.6以下である。2.5を超える場合、後述する機能物質分散体を調整したり、さらには後述するインクジェット記録を行う上で吐出安定性が良好でなかったりする場合がある。また、ブロック共重合体の各セグメントは共重合セグメントであってもよいし、その共重合の形態は限定されず、例えばランダムセグメントであってもグラジュエーションセグメントであってもよい。
【0018】
また、好ましくは少なくとも一つの疎水性ブロックセグメントと少なくとも一つの親水性セグメントを有するブロック共重合体であり、非イオン性の親水ユニットとイオン性の親水ユニットを共に有する両親媒性ブロック共重合体である。この場合好ましくは、疎水性セグメントと親水性セグメントの重合度比は、疎水性セグメントの重合度を10としたとき、それに対し親水性ユニットの重合度の総和が13以下であることが好ましい。
【0019】
また本発明のブロック共重合体は、疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントが順に並ぶ構造を有するブロック共重合体であることが好ましい。また、順に並ぶ疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントの重合度比が疎水性ブロックセグメントを10としたとき、非イオン性親水性セグメントが8以下、イオン性親水セグメントが5以下であるブロック共重合体化合物が本発明の好ましい一形態である。さらに好ましくは順に並ぶ疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントの重合度比が疎水性ブロックセグメントを10としたとき、非イオン性親水性セグメントが5以下、イオン性親水セグメントが3以下である。なおブロック共重合体とは異なる繰り返し単位構造からなるポリマーセグメントが共有結合で結合した共重合体で、ブロックコポリマー、ブロックポリマーとも呼ばれる。
【0020】
また、本発明のブロック共重合体としては、具体的な例をあげると、アクリル、メタクリル系ブロック共重合体、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロック共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロック共重合体等、従来から知られているブロック共重合体を用いることもできる。本発明において、ブロック共重合体はAB、ABA、ABD等のブロック形態がより好ましい。A、B、Dはそれぞれ異なるブロックセグメントを示す。また、本発明では、ブロック共重合体がある共重合体鎖にT字状に結合してグラフト共重合体となっていてもよい。本発明のブロック共重合体は、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有することが好ましい。
【0021】
イオン性のブロックセグメントの具体的構造としては、前記イオン性セグメントが、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位であるのが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R0 は−X−(COOH)r 、−X−(COO−M)r を表す。Xは炭素数1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、または−(CH(R5 )−CH(R6 )−O)p −(CH2m −CH3-r −もしくは−(CH2m −(O)n −(CH2q −CH3-r −または、それらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基または芳香環構造で置換された構造を表す。rは1から2を表す。pは1から18までの整数を表す。mは0から35までの整数を表す。nは1または0を表す。qは0から17の整数を表す。Mは一価または多価のカチオンを表す。R5 、R6 はアルキル基を表す。R5 、R6 は同じでも又は異なっていてもよい。)
【0024】
さらに、前記疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント及びイオン性親水セグメントの少なくとも1つが、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位であるのが好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−(CH(R3 )−CH(R4 )−O)p −R7 および−(CH2m'−(O)n −R7 から選ばれ、芳香環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
【0027】
pは1から18の整数、m’は1から36の整数、nは0または1である。
3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子もしくは−CH3 である。R7 は水素原子、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−CHO、−CH2 CHO、−CO−CH=CH2 、−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR8 からなり、R7 が水素原子以外である場合、R7 中の炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基または−F、−Cl、−Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R8 は水素原子または炭素数1から5のアルキル基である。Phはフェニル基、Pyrはピリジル基を表わす。)
一般式(1)で表される繰り返し単位構造の具体例を以下に挙げる。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
(Phはフェニレン基をあらわす。)
一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体例としては、以下に記載したものが挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
(Phはフェニレン基をあらわす。)
非イオン性の親水セグメントとしての繰り返し単位例として、
【0033】
【化6】

【0034】
などが挙げられる。
また、本発明のブロック共重合体の各ブロックセグメントは単一の繰り返し単位からなるものでもよく、複数の繰り返し単位構造からなるものでもよい。複数の繰り返し単位からなるブロックセグメントの例としては、ランダム共重合体や徐々に組成比が変化するグラデュエイション共重合体がある。
【0035】
また、本発明のブロック共重合体はブロック共重合体構造が他のポリマーにグラフト結合したポリマーであっても良い。
本発明において、ブロック共重合体中に含有される一般式(1)あるいは一般式(2)で表される繰り返し単位構造の含有量は、ブロック共重合体全体に対して0.01〜99mol%、好ましくは1〜90mol%の範囲が望ましい。0.01mol%未満ではイオン性官能基あるいは疎水性官能基あるいは非イオン性親水基の働くべき高分子相互作用が不充分な場合があり、99mol%を越えると逆に相互作用が働きすぎて機能が不充分な場合がある。
【0036】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、200以上10000000以下であり、好ましく用いられる範囲としては1000以上1000000以下である。10000000を越えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。各ブロックセグメントの好ましい重合度は3以上10000以下である。さらに好ましくは5以上5000以下である。さらに好ましくは10以上4000以下である。
【0037】
また、機能物質の分散安定性向上、包接性(内包性)向上のためには、ブロック共重合体の分子運動性がよりフレキシブルであることが好ましい。ブロック共重合体の分子運動性がフレキシブルであることによって、ブロック共重合体が機能性物質の表面と物理的に絡まり親和しやすい点を有しているからである。更には、後に詳述するように被記録媒体上で被覆層を形成しやすい点でもフレキシブルであることが好ましい。このためには、その主鎖のガラス転移温度Tgは、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。この点でもポリビニルエーテル構造を有するポリマーは、一般にガラス転移点が低く、フレキシブルな特性を有するため、好ましく用いられる。上記した繰り返し単位構造例の場合、そのガラス転移温度は−20℃くらいか、それ以下である場合が多い。
【0038】
本発明において好ましく用いられるポリビニルエーテル繰り返し単位構造を有するブロック共重合体の重合は主にカチオン重合で行われることが多い。開始剤としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過塩素酸等のプロトン酸や、BF3 、AlCl3 、TiCl4 、SnCl4 、FeCl3 、RAlCl2 、R1.5 AlCl1.5 (Rはアルキルを示す)等のルイス酸とカチオン源の組み合わせ(カチオン源としてはプロトン酸や水、アルコール、ビニルエーテルとカルボン酸の付加体などがあげられる。)が例として挙げられる。これらの開始剤を重合性化合物(モノマー)と共存させることにより重合反応が進行し、ブロック共重合体を合成することができる。
【0039】
本発明において好ましく用いられるポリビニルエーテル繰り返し単位構造を有するブロック共重合体は、より好ましくはポリビニルエーテル繰り返し単位構造が50mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上含有される。
【0040】
本発明にさらに好ましく用いられる重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年 417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロック共重合体、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、他にHI/I2 系、HCl/SnCl4 系等でリビング重合を行うこともできる。
【0041】
また本発明のブロック共重合体は、上記のような粘性を有する上で臨界ミセル濃度は0.2g/Lであることが好ましい。またそのために疎水性ブロックセグメントの数平均分子量は3000以上が好ましく、さらに好ましくは5000以上、より好ましくは7000以上である。
【0042】
本発明の第二の発明について説明する。
本発明の第二の発明は、溶媒または分散媒、機能性物質および前記本発明のブロック共重合体を含有することを特徴とするポリマー含有組成物である。上記のブロック共重合体と色材などの有用な所定の機能を奏する機能性物質を含有し、該ブロック共重合体は機能性物質等を良好に分散するのに好適に用いることができる。
【0043】
機能性物質は液体、固体である場合が好ましく、溶解性の物質であってもよい。例えばオイル、顔料、金属、除草剤、殺虫剤、生体材料、薬、染料や分子性触媒等も用いることができる。
【0044】
また、本発明のポリマー含有組成物中に含有される本発明のブロック共重合体は、本発明の組成物の重量に対して、0.1〜99質量%であり、好ましくは0.3〜70質量%である。0.1質量%未満の場合、機能性物質の分散性が充分でない場合が有り、99質量%を越える場合、粘度が高くなりすぎたりする場合がある。
【0045】
また、本発明中の組成物中に含有される機能性物質の含有量は、0.1質量%以上80質量%以下である。好ましくは0.5質量%以上60質量%以下である。0.1質量%未満の場合、機能性が充分に発現しない場合があり、80質量%を越える場合、分散が充分でない場合がある。
【0046】
さらに、本発明のポリマー含有組成物には、溶媒、分散媒が含有され、分散媒としてバインダー樹脂を用いることも可能である。溶媒または分散媒としては、水、水性溶剤、非水性有機溶剤等を用いることができる。もちろんそれらの混合物も用いることができる。
【0047】
水性溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロビレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、置換ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒等を用いることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類を用いることもできる。
【0048】
非水性有機溶剤としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、トルエン等の炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の溶剤も使用可能である。また、オリーブオイル、大豆油、牛脂、豚脂等の天然油脂を使用することもできる。
【0049】
バインダー樹脂としては、スチレンアクリル共重合体、ポリエステル等が例として挙げられる。
本発明のポリマー含有組成物中の溶媒、分散媒の含有量は、1質量%以上99質量%以下である。好ましくは10質量%以上95質量%以下である。1質量%未満の場合や99質量%を越える場合、機能性物質の分散が充分でない場合がある。
【0050】
また、本発明のポリマー含有組成物中には、上記以外の成分を含有することを妨げず、各種界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等の添加剤を含有することも可能である。
【0051】
本発明のポリマー含有組成物は、例えば前述したABCトリブロックポリマーを使用して、色材と溶媒としても水を使用して分散液を作成すると、色材をABCブロックポリマーが形成するミセル中に内包させることが可能であり、そのように色材内包型のインク組成物を形成することも可能となる。また、その分散組成物の粒子の粒径も非常に揃った均一なものとすることも可能である。さらにはその分散状態を極めて安定なものとすることも可能である。
【0052】
色材がABCブロックポリマーが形成するミセル中に内包されているとは、形成したミセルのコア部に色材が取り込まれて溶液中に分散していることを意味する。
内包状態は、例えばブロックポリマーが形成する水中でのミセルに、水に不溶の有機溶媒中に色材を溶解もしくは分散させたものをミセルへ取り込ませるために分散機等を使用して混合し、そののち該有機溶媒を留去することにより形成することが出来る。
【0053】
その他に、有機溶剤中にポリマーと色材を共に溶解させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより内包状態を形成し、残存する有機溶媒を留去することにより形成することも可能である。そのほかに有機溶剤中にポリマーを溶解し色材を分散させた状態から、水系の溶媒中に転相することにより内包状態を形成することにより形成することも可能である。
【0054】
内包状態を確認するためには、各種電子顕微鏡、X線回折等の機器分析により実施することが可能である。また、ミセル状態の包接の場合、ミセル崩壊条件で色材が溶媒からポリマーと別々に分離することで内包状態を間接的に確認することが出来る。
【0055】
本発明において90%以上の機能物質が内包されていることがより好ましい。
本発明のポリマー含有組成物は、好ましくインク組成物として使用される。例えばそのとき以上のような分散プロセスを用いて原組成物を調整するが、調整後添加物あるいは溶媒を加えて最終組成物を調整することになる。後から様々な添加剤あるいは溶媒を加えて濃度調整行うことを考えたとき、原組成物の機能物質とポリマーの濃度はできるだけ高い方が最終組成物をより簡便にかつ高生産性で得るために好ましいことになる。原組成物をできるだけ高濃度で得ようとすれば、以上記載した分散プロセスをできるだけ高濃度で行うがそのとき分散プロセス途中で粘度が高くなりすぎると機能物質の分散が良好に行われない場合があるが、本発明のブロック共重合体を用いれば、純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下、すなわち水系溶媒中で高濃度でより低い粘度を実現できることから、より高濃度での原組成物を得ることが可能となる。
【0056】
さらに、本発明の組成物の好ましい一形態であるインクジェットインク組成物について説明する。本発明のインクジェットインク組成物に含有される本発明のブロック共重合体の含有量は、0.3質量%以上80質量%以下である。好ましくは0.3質量%以上30質量%以下で用いられる。さらに好ましくは1.0質量%以上25質量%以下であり、もっと好ましくは2質量%以上20質量%以下あるいは3質量%以上15質量%以下である。インクジェットインク組成物として、非常に好ましい形で1.0質量%以上、あるいは2質量%以上あるいは3質量%以上であることは、被記録媒体への定着性、色材の耐候性の向上にも寄与が大きい。その意味でも本発明のブロック共重合体が純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下、すなわち水系溶媒中で高濃度でより低い粘度を実現できることは驚くべき効果があるといわねばならない。
【0057】
次に、本発明のインクジェットインク組成物に含有されるブロック共重合体以外の他の成分について詳しく説明する。他の成分には、水、水性溶媒、色材、添加剤等が含まれる。それらの例は前述したものが例となる。
【0058】
色材としては、代表的に顔料、染料があげられる。顔料は、有機顔料および無機顔料のいずれでもよく、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いることができる。なお、上記に記した以外の色顔料、無色または淡色の顔料、または金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明において、市販の顔料を用いてもよいし、あるいは新規に合成した顔料を用いてもよい。また、染料と併用して用いても良い。
【0059】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。黒色の顔料としては、Raven1060、(コロンビアン・カーボン社製)、MOGUL−L、(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)、MA100(三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
イエローの顔料としては、、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
また、本発明のインク組成物では、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがあり、市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)等が挙げられる。
【0064】
本発明のインクジェットインク組成物に用いられる顔料は、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。顔料の量が、0.1質量%未満であると、十分な画像濃度を得られなくなり、50質量%を超えると顔料が凝集し分散できなくなる。さらに好ましい範囲としては0.5〜30質量%の範囲である。
【0065】
また、本発明のインク組成物では染料も使用することができる。以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、又は分散染料の不溶性色素を用いることができる。
【0066】
例えば、水溶性染料としては、C.I.ダイレクトブラック,−17,−62,−154;C.I.ダイレクトイエロー,−12,−87,−142;C.I.ダイレクトレッド,−1,−62,−243;C.I.ダイレクトブルー,−6,−78,−199;C.I.ダイレクトオレンジ,−34,−60;C.I.ダイレクトバイオレット,−47,−48;C.I.ダイレクトブラウン,−109;C.I.ダイレクトグリーン,−59等の直接染料、
C.I.アシッドブラック,−2,−52,−208;C.I.アシッドイエロー,−11,−29,−71;C.I.アシッドレッド,−1,−52,−317;C.I.アシッドブルー,−9,−93,−254;C.I.アシッドオレンジ,−7,−19;C.I.アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、 C.I.リアクティブブラック,−1,−23,−39;C.I.リアクティブイエロー,−2,−77,−163;C.I.リアクティブレッド,−3,−111,−221;C.I.リアクティブブルー,−2,−101,−217;C.I.リアクティブオレンジ,−5,−74,−99;C.I.リアクティブバイオレット,−1,−24,−38;C.I.リアクティブグリーン,−5,−15,−23;C.I.リアクティブブラウン,−2,−18,−33等の反応染料;
C.I.ベーシックブラック,−2;C.I.ベーシックレッド,−1,−12,−27;C.I.ベーシックブルー,−1,−24,;C.I.ベーシックバイオレット,−7,−14,−27;C.I.フードブラック,−1,−2等が挙げられる。
【0067】
また、油溶性染料として、以下に、各色の市販品を例示する。
黒色の油溶性染料としては、C.I.Solvent Black−3,−22:1,−50等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
イエローの油溶性染料としては、C.I.Solvent Yellow−1,−25:1,−172等が挙げられるが、これらに限定されない。
オレンジの油溶性染料としては、C.I.Solvent Orange−1,−40:1,−99等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
レッドの油溶性染料としては、C.I.Solvent Red−1,−111,−229等が挙げられるが、これらに限定されない。
バイオレットの油溶性染料としては、C.I.Solvent Violet−2,−11,−47等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
ブルーの油溶性染料としては、C.I.Solvent Blue−2,−43,−134等が挙げられるが、これらに限定されない。
グリーンの油溶性染料としては、C.I.Solvent Green−1,−20,−33等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
ブラウンの油溶性染料としては、C.I.Solvent Brown−1,−12,−58等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のインク組成物に用いられる染料は、インクの全重量に対して、0.1〜50質量%が好ましい。なお、これら上記の色材の例は、本発明のインク組成物に対して好ましいものであるが、本発明のインク組成物に使用する色材は上記色材に特に限定されるものではない。
【0072】
本発明の第三の発明の、前記第二の発明の組成物を用いた液体付与方法について説明する。
本発明の好ましい一形態は、吐出部から液体組成物を吐出して被記録媒体上に付与して記録を行う液体付与方法である。吐出部とは通常のインクジェットで使用されている駆動素子の設けられたノズルやオリフィスである。特に、一定のパターンを被記録媒体上に形成するパターン形成方法や、画像や文字を被記録媒体上に形成する各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法として好ましく用いられ、インクジェット法であることが特に好ましい。
【0073】
用いられるインクジェット法は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式のような周知の方法であってもよい。また、コンティニュアス型またはオンデマンド型のいずれの方法を用いてもよいがオンデマンド型インクジェット法が好ましい。オンデマンド型インクジェット法においては、よく吐出部すなわちノズルから液体組成物、インク組成物が吐出され記録媒体に記録される。昨今このノズル径は高精細画像形成のため、年々小径化してきている。こうした状況下インクジェット記録性の中でインク組成物の吐出安定性が十分に得られない場合が有り、具体的な例ではインクジェット記録ヘッドの所定のノズルからインクを吐出させた後そのノズルからのインクの吐出が一定時間停止された後に再びそのノズルからインクを再吐出させたときにそのインクの再吐出が安定して行いにくい場合があったりするが、本発明の第一の発明のブロック共重合体を用い、本発明の第二の発明の液体組成物を用いるとこのような課題を大きく改善することが可能である。これは一つには小径ノズルのの吐出口でインク組成物の溶媒が揮発しその部分が高濃度化し、高粘度化あるいは固着したりすることが関係していると考えられるが、このこととの関係で本発明のブロック共重合体、すなわちイオン性官能基を有する両親媒性ブロック共重合体であって、純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であるブロック共重合体がその粘度特性をもつがために、臨界的に大きな効果を発揮し大きく改善をはかることができる。
【0074】
本発明においては純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であるブロック共重合体をもちいることが大きな特徴の一つとなっている。このことが前記した、本発明の吐出安定性上の大きな効果に相関していると考えられるが、特に本発明のポリマーを含有する分散組成物の吐出安定性を改善する上で、そのポリマーの分散組成物中に占める含有量が0.5wt%から10wt%の範囲好ましくは1wt%から8wt%の範囲さらに好ましくは1.5wt%から7wt%の範囲である分散組成物において好ましく、その意味で前記した色材内包インクはこの範囲でポリマーを使用することが好ましいことと考え合わせたとき本発明の意味が一つ加えられることが理解される。
【0075】
次に、本発明の液体付与形成装置について説明する。
本発明のインク組成物は、前記液体付与方法を用いた液体付与装置、一定のパターンを被記録媒体上に形成するパターン形成方法を利用したパターン形成装置や、画像や文字を被記録媒体上に形成する各種印刷法、インクジェット法、電子写真法等の様々な画像形成方法を利用した画像形成装置に使用でき、インクジェット記録装置において用いることが特に好ましい。
【0076】
本発明のインクジェット用インクを用いるインクジェット記録装置は、圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーを作用させて発泡し記録を行う熱インクジェット方式等のようなインクジェット記録装置を含む。
【0077】
図1に、インクジェット記録装置の概略的機能図を示す。50はインクジェット記録装置20の中央処理ユニット(CPU)である。CPU50を制御するためのプログラムは、プログラムメモリ66に記憶されていてもよいし、あるいはいわゆるファームウェアとしてEEPROM(不図示)等の記憶手段に記憶されていてもよい。インクジェット記録装置は、記録データ作成手段(不図示、コンピュータなど)から、プログラムメモリ66に記録データを受容する。記録データは、記録すべき画像あるいは文字の情報そのものでもよいし、それら情報の圧縮されたものでもよいし、または符号化された情報であってもよい。圧縮または符号化された情報を処理する場合には、CPU50に伸長または展開を行わせて記録すべき画像あるいは文字の情報を得ることができる。Xエンコーダ62(例えば、X方向または主走査方向に関する)およびYエンコーダ64(例えば、Y方向または副走査方向に関する)を設けて、被記録媒体に対するヘッドの相対位置をCPU50に通知することができる。
【0078】
CPU50は、プログラムメモリ66、Xエンコーダ62およびYエンコーダ64の情報に基づいて、画像を記録するための信号をXモータ駆動回路52、Yモータ駆動回路54およびヘッド駆動回路60に送信する。Xモータ駆動回路52はX方向駆動モータ56を、Yモータ駆動回路54はY方向駆動モータ58をそれぞれ駆動し、ヘッド70を被記録媒体に対して相対的に移動させ、記録位置に移動させる。ヘッド駆動回路60は、ヘッド70が記録位置に移動した時点で、各種インク組成物(Y、M、C、K)あるいは刺激となる刺激付与物質の吐出を行わせるための信号をヘッド70に送信し、記録を行う。ヘッド70は、単色のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、複数種のインク組成物を吐出するためのものであってもよいし、あるいは刺激となる刺激付与物質を吐出する機能を併せて有していてもよく、それによって色混じり等の改善を図ることも可能であり、対応する刺激応答機能を本発明のブロック共重合体は好ましくも有する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
<ブロックポリマーの合成1>
イソブチルビニルエーテル(IBVE:Aブロック)と、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテル(Bブロック)と、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチル(VEOEtPhCOOEt:Cブロック)からなるトリブロック共重合体の合成。
【0080】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE5.5mmol(ミリモル)、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.05mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。このときAブロックのMnは11200、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)=1.10であった。
【0081】
次いで、Bブロックのモノマーを2.2mmol添加し、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックの重合の完了を確認した後、5mmolのCブロック成分のトルエン溶液を添加して、重合を続行した。20時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=19700、Mw/Mn=1.24であった。重合比はA:B:C=110:42:16であった。
【0082】
さらにここで得られたブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解し、Cブロック成分が加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
さらに水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してC成分がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0083】
<ブロックポリマーの合成2>
イソブチルビニルエーテルとCH2 =CHOCH2 CH2 OPhPh:(IBVE−r−VEEtPhPH:Aブロック)と、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルビニルエーテル(Bブロック)と、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチル(Cブロック)からなるトリブロックポリマーの合成。
【0084】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE5mmol(ミリモル)、VEEtPhPhを5mmol、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.1mmol、及びトルエン11mlを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。このときAブロックのMnは13200、Mw/Mn=1.10であった。
【0085】
次いで、Bブロックのモノマーを4.4mmol添加し、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Bブロックの重合の完了を確認した後、4mmolのCブロック成分のトルエン溶液を添加して、重合を続行した。20時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=21700、Mw/Mn=1.23であった。重合比はA:B:C=100:45:17であった。Aブロック内の2種のモノマーの重合比は1:1であった。
【0086】
さらにここで得られたブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解し、Cブロック成分が加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
さらに水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してC成分がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMRおよびGPCを用いて行った。
【0087】
<ブロックポリマーの合成3>
合成2で重合したトリブロックポリマーのAブロックを4−メチルフェニルエチルビニルエーテルに変え、合成2と同様に重合したところ、AブロックのMnは13200、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体のMn=21200、Mw/Mn=1.21であった。重合比はA:B:C=99:43:17であった。
【0088】
<ブロックポリマーの合成4〜8>
合成3と同じモノマーを用いて、同様に共重合体を合成した。
<合成4>
AブロックのMnが13100、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体がMn=25000、Mw/Mn=1.28、重合比がA:B:C=99:65:17の共重合体を合成した。
【0089】
<合成5>
AブロックのMnが13300、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体がMn=23400、Mw/Mn=1.26、重合比がA:B:C=98:50:15の共重合体を合成した。
【0090】
<合成6>
AブロックのMnが13300、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体がMn=20400、Mw/Mn=1.20、重合比がA:B:C=98:30:15の共重合体を合成した。
【0091】
<合成7>
AブロックのMnが13200、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体がMn=27200、Mw/Mn=1.36、重合比がA:B:C=98:90:14の共重合体を合成した。
【0092】
<合成8>
AブロックのMnが12900、Mw/Mn=1.11で、トリブロック共重合体がMn=31200、Mw/Mn=1.36、重合比がA:B:C=98:130:14の共重合体を合成した。
【0093】
上記の合成1〜8までのそれぞれのブロック共重合体について、カルボン酸の量に対し1化学量論量の水酸化ナトリウム水溶液を加えカルボン酸ナトリウムとしてイオン化し、それぞれの純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)を、レオロジカ社製粘弾性測定装置(DAR−100)を用いてシェアーレイト100/secの条件で測定したところ、それぞれ1.9、1.8、1.6、2.0、1.7、1.4、2.9、4.9であった。また、これをそれぞれのポリマー合成途中の加水分解後のカルボン酸塩となっている状態でポリマーを単離して、これを純水に分散して、同様の回転粘度測定を行っても同様の結果を得た。
【0094】
なお、合成1のブロック共重合体の25℃における5質量%溶液での回転粘度(N5)は3.6cpsであり、10質量%溶液の回転粘度(N10)は6.8cpsであり、その(N10/N5)比は1.9であった。
【0095】
実施例2
実施例1で得たそれぞれのカルボン酸塩型のブロック共重合体15質量部とオイルブルーN(C.I.Solvent Blue−14、アルドリッチ社製)7質量部をジメチルフォルムアミド150質量部に共溶解し、蒸留水400質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。室温で10日間放置したが、オイルブルーはいずれも分離沈殿しなかった。
【0096】
実施例3
実施例1で得た合成例1から8のカルボン酸塩型のブロックポリマー15質量部とシアン銅フタロシアニン顔料(東洋インキ製)6質量部をジメチルフォルムアミド90質量部に共溶解し、蒸留水500質量部を用いて水相へ変換しインク組成物を得た。粗大粒子を2ミクロンのメンブランフィルターで除去し、これらにグリセリン13質量部、エチレングリコール12質量部を加え、これらをインク組成物とした。
【0097】
合成例1のブロック共重合体で作成した組成物をクリアトランスファー透過型電子顕微鏡で観察をしたところ球形のカプセル状の粒子のみが観察され、全ての顔料が内包されていることがわかった。合成例1から6のポリマーによるインク組成物をインクジェット記録装置(BJF600、キヤノン製)を用いて印字したところ、きれいに印字できた。印字後すぐ蒸留水を浴びせ掛けたが滲みは一切なかった。
【0098】
実施例4
実施例3で用いたインクジェット装置、実施例3で調整したインク組成物を用いて、吐出安定性試験を以下のように行った。インクジェット記録装置(BJF600、キヤノン製)の各ノズルから20ドットづつ記録し、6秒後また各ノズルから20ドットづつ記録させる記録サイクルを100回繰り返した。光学濃度測定装置(商品名RD−19、サカタインク社製)で光学濃度を測定したところ、合成1から8の各ブロック共重合体によるインク組成物1から8の光学濃度は、0.68、0.72、0.76、0.69、0.71、0.77、0.34、0.25であった。また合成例7,8による記録は記録にみだれがあった。
【0099】
比較例1
黒色の自己分散顔料(商品名CAB−0−JET300、キャボット社製)2質量部、界面活性剤(ノニオンE−230、日本油脂社製)0.5質量部、エチレングリコール5質量部、及びイオン交換水92.5質量部を混合し、インク組成物を調製した。該インク組成物を用いて、実施例3と同様に記録し、記録1分後に水を浴びせ掛けたところ、黒色が強くにじんだ。
【0100】
比較例2
実施例1のブロック共重合体をスチレンアクリル酸ナトリウム1:1ランダム共重合体(Mn=22000、Mw/Mn=1.98)に変え、実施例4と同様にインクジェットインクを調整した。実施例4と同様に、吐出安定性試験を以下のように行った。インクジェット記録装置(BJF600、キヤノン製)の各ノズルから20ドットづつ記録し、6秒後また各ノズルから20ドットづつ記録させる記録サイクルを10回繰り返した。サカタインク社製、光学濃度測定装置で光学濃度を測定したところ、このインク組成物の光学濃度は、0.10であった。記録は大きなみだれがあった。
【0101】
実施例5
4−メチルフェニルエチルビニルエーテル(Aブロック)、2−{2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルオキシ}エチルビニルエーテル(Bブロック)、4−(2−ビニルオキシ)エトキシ安息香酸エチル(Cブロック)からなるトリブロックポリマー9(重合比86/41/16、Mn=16,600、Mw/Mn=1.31)を実施例1と同様に合成した。
【0102】
このブロック共重合体について、カルボン酸の量に対し1化学量論量の水酸化ナトリウム水溶液を加えカルボン酸ナトリウムとしてイオン化し、それぞれの純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)を、レオロジカ社製粘弾性測定装置で測定したところ、2.0であった。
【0103】
このポリマーを用いて実施例3と同様にインク組成物を調整した。このインク組成物を用いて、吐出安定性試験を以下のように行った。インクジェット記録装置(BJF600、キヤノン製)の各ノズルから1ドットづつ記録し、6秒後また各ノズルから1ドットづつ記録させる記録サイクルを100回繰り返した。サカタインク社製、光学濃度測定装置で光学濃度を測定したところ、このインク組成物の光学濃度は、0.70であった。また記録後水を浴びせかけたが滲みはまったく発生しなかった。
【0104】
実施例6
<ブロックポリマーの合成10〜13>
実施例5のポリマー9と同じモノマーを用いて、同様に以下のポリマーを合成した。
<合成10>
AブロックのMnが8100、Mw/Mn=1.10で、トリブロック共重合体がMn=11900、Mw/Mn=1.19、重合比がA:B:C=44:10:10の共重合体を合成した。
【0105】
<合成11>
AブロックのMnが9700、Mw/Mn=1.09で、トリブロック共重合体がMn=14100、Mw/Mn=1.16、重合比がA:B:C=59:21:9の共重合体を合成した。
【0106】
<合成12>
AブロックのMnが13000、Mw/Mn=1.08で、このあと、合成例9で用いたBセグメントのモノマーとCセグメントのモノマーを同時に仕込み親水セグメントが両モノマーユニットが共重合されたジロック共重合体を合成した。その数平均分子量はMn=20700、Mw/Mn=1.08、重合比がA:(B/C)=89:(24/27)の共重合体を合成した。
【0107】
<合成13>
上記Aブロックに使用したモノマーを2−フェニルオキシエチルビニルエーテルに変え、合成例11と同様にポリマーを合成した。AセグメントのMnが8200、Mw/Mn=1.07で、トリブロック共重合体がMn=12200、Mw/Mn=1.19、重合比がA:B:C=58:19:9の共重合体を合成した。
【0108】
このブロック共重合体について、カルボン酸の量に対し1化学量論量の水酸化カリウム水溶液を加えカルボン酸カリウムとしてイオン化し、それぞれの純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)を、レオロジカ社製粘弾性測定装置で測定したところ、それぞれ1.8、1.8、2.2、1.6であった。
【0109】
これらポリマーを用いて実施例3と同様にインク組成物を調整した。このインク組成物を用いて、吐出安定性試験を以下のように行った。インクジェット記録装置(BJF600、キヤノン製)の各ノズルから1ドットづつ記録し、6秒後また各ノズルから1ドットづつ記録させる記録サイクルを100回繰り返した。サカタインク社製、光学濃度測定装置で光学濃度を測定したところ、このインク組成物の光学濃度は、0.74、0.80、0.69、0.84であった。また記録後水を浴びせかけたが滲みはまったく発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、機能性物質を溶媒に良好に分散することができるブロック共重合体、また該ブロック共重合体を含む良好な分散性、定着性、耐環境性を有するポリマー含有組成物、またそれらを使用した液体付与方法、記録方法及びその装置を提供することができ、電子写真技術、インクジェット技術を代表例とするオフィス、家庭等における画像形成技術に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の概略の機構を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
20 インクジェット記録装置
50 CPU
52 Xモータ駆動回路
54 Yモータ駆動回路
56 X方向駆動モータ
58 Y方向駆動モータ
60 ヘッド駆動回路
62 Xエンコーダ
64 Yエンコーダ
66 プログラムメモリ
70 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性官能基を有する両親媒性ブロック共重合体であって、純水中での5質量%溶液での回転粘度(N5)と10質量%溶液の回転粘度(N10)の比(N10/N5)が2.5以下であることを特徴とする両親媒性ブロック共重合体。
【請求項2】
少なくとも一つの疎水性ブロックセグメントと少なくとも一つの親水性セグメントを有するブロック共重合体であり、非イオン性の親水ユニットとイオン性の親水ユニットを共に有する請求項1記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項3】
疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントが順に並ぶ構造を有する請求項1記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記順に並ぶ疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント、イオン性親水セグメントの重合度比が疎水性ブロックセグメントを10としたとき、非イオン性親水性セグメントが8以下、イオン性親水セグメントが5以下であることを特徴とする請求項1記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記ブロック共重合体は、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
前記イオン性セグメントが、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位である請求項4記載のブロック共重合体。
【化1】

(式中、R0 は−X−(COOH)r 、−X−(COO−M)r を表す。Xは炭素数1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、または−(CH(R5 )−CH(R6 )−O)p −(CH2m −CH3-r −もしくは−(CH2m −(O)n −(CH2q −CH3-r −または、それらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基または芳香環構造で置換された構造を表す。rは1から2を表す。pは1から18までの整数を表す。mは0から35までの整数を表す。nは1または0を表す。qは0から17の整数を表す。Mは一価または多価のカチオンを表す。R5 、R6 はアルキル基を表す。R5 、R6 は同じでも又は異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記疎水性ブロックセグメント、非イオン性親水セグメント及びイオン性親水セグメントの少なくとも1つが、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位である請求項4記載のブロック共重合体。
【化2】

(式中、R1 は炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−(CH(R3 )−CH(R4 )−O)p −R7 および−(CH2m'−(O)n −R7 から選ばれ、芳香環中の水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基と、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい。
pは1から18の整数、m’は1から36の整数、nは0または1である。
3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子もしくは−CH3 である。R7 は水素原子、炭素数1から18までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−CHO、−CH2 CHO、−CO−CH=CH2 、−CO−C(CH3 )=CH2 、−CH2 COOR8 からなり、R7 が水素原子以外である場合、R7 中の炭素原子に結合している水素原子は炭素数1から4の直鎖状または分岐状のアルキル基または−F、−Cl、−Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。R8 は水素原子または炭素数1から5のアルキル基である。Phはフェニル基、Pyrはピリジル基を表わす。)
【請求項8】
ブロック共重合体、溶媒または分散媒、および機能性物質を含有するポリマー含有組成物であって、前記ブロック共重合体が請求項1乃至7のいずれかに記載の両親媒性ブロック共重合体であることを特徴とするポリマー含有組成物。
【請求項9】
前記機能性物質が、前記ブロック共重合体に内包されていることを特徴とする請求項8記載のポリマー含有組成物。
【請求項10】
前記ブロック共重合体が1質量%以上含有されることを特徴とする請求項8または9に記載のポリマー含有組成物。
【請求項11】
前記請求項8乃至10のいずれかの項に記載のポリマー含有組成物にエネルギーを作用させることにより、被記録媒体上に前記ポリマー含有組成物を吐出することを特徴とする液体付与方法。
【請求項12】
前記請求項8から10のいずれかに記載のポリマー含有組成物の液体にエネルギーを作用させて媒体に液体を付与するための液体付与手段と、前記液体付与手段を駆動するための駆動手段とを備えていることを特徴とする液体付与装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−96970(P2006−96970A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6761(P2005−6761)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】