説明

両親媒性分枝ポリマーおよびそれらの乳化剤としての使用

本発明は両親媒性分枝共重合体、それらの製造法、かかる共重合体を含有してなるエマルション、およびそれらの乳化剤としての使用に関する。該ポリマーは外部から刺激を加えた場合、モノマー残基間で非共有結合を形成し、本来的に反応性である。該共重合体の好適な実施態様において、該共重合体はエマルションの安定化に使用することが可能であり、またエマルション小滴は可逆的に凝集し、脱凝集し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両親媒性分枝共重合体、それらの製造法、かかる共重合体を含有してなるエマルション、およびそれらの乳化剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分枝ポリマーは枝分かれした有限サイズの重合体分子である。分枝ポリマーは、分子間結合した不確定サイズの傾向があり、また一般に溶解性ではないがしばしば膨潤性である架橋ポリマー網目構造とは異なる。一部の事例において、分枝ポリマーは類似の線状ポリマーに比較して、有利な性質を有する。例えば、分枝ポリマーの溶液は通常類似の線状ポリマーの溶液よりも粘度が低い。さらに、より高分子量の分枝ポリマーは、対応する線状ポリマーよりもより容易に溶解させることができる。また、分枝ポリマーは線状ポリマーよりもより多くの末端基をもつ傾向があり、それ故、一般に強い表面修飾性を示す。従って、分枝ポリマーは様々な分野で利用される多くの組成物の有用な成分である。
【0003】
分枝ポリマーは、通常、適切なモノマーの縮重合を経由する段階成長メカニズムを介して調製され、生成するポリマーの化学的機能性とその分子量により制限される。さらなる重合過程においては、1工程プロセスが使用されるが、そのプロセスにおいては、そのポリマー鎖からポリマー分枝が成長し得る機能性を与えるために多官能性ポリマーが使用される。しかし、通常、従来のワンステッププロセスの使用には、多機能性モノマーの量は通常はポリマーの過剰な架橋と不溶性ゲルの形成を避けるために、実質的に0.5%w/w未満に注意深く制御しなければならないという制限がある。この方法を使用しは、架橋を回避することが困難であり、特に、希釈剤としての溶媒なしには、および/またはモノマーからポリマーへの高い変換率の場合では困難である。
【0004】
両親媒性分枝共重合体は、名目上、親水性部分および疎水性部分を有する分枝共重合体である。このものは永続的にまたは一時的に親水性であるか、または疎水性の部分である;例えば、疎水性のための弱酸性または弱塩基性の単位は、そのポリマー溶液のpHに左右される。
【0005】
多くの化粧品、医薬製品または食物製品はエマルションの形状にあり、例えば、連続相中に分散した疎水性相(水中油もしくはo/w)として、または連続疎水性相中に分散した親水性相(油中水もしくはw/o)として存在する。安定なエマルションの形成には、小滴の二相性界面で吸着し得て、小滴の融合もしくは脱乳化を防止し得る物質の使用を必要とする。界面活性剤または界面活性ポリマーなどの両親媒性分子は、分子の一方が油相と相互作用し、他方が水相と相互作用するため、油と水とのエマルションを安定化するために一般的に使用する。乳化剤としての界面活性剤によるエマルションは、界面活性剤に起因する動力学的不安定性、高い泡形成性および刺激性などの不利益を有し得る。
【0006】
無機または有機粒子で安定化したエマルションは優れた安定性を有し、泡形成性が低く、刺激性も減少していることが知られている。一般に、これらのエマルションは微細に分割した無機粒子、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属などを使用して形成される。界面を安定化する粒子の推進力は、粒子が吸着する際の自由エネルギーの減少である。多くの事例において、粒子安定化エマルションは、表面から粒子を除去するために必要とされるエネルギーが大きい場合に極めて安定である;一部の事例において、エマルションの小滴を安定化する粒子は、不可逆的に吸着されると考えることができる。かかる粒子はピッカーリング(Pickering)またはラムスデン(Ramsden)乳化剤粒子と言われ、共通して無機種である。また、有機粒子はピッカーリング乳化剤として研究されてきた。
【0007】
疎水性活性体、例えば、薬物および香料などは、それらが体内において、またはホームケアもしくはパーソナルケア用水性製剤においてなど、持続期間、親水性環境において安定化し得る場合にのみ、しばしば有用である。従って、かかる活性体について適切な媒体を開発する必要がある。この脈絡において、ミセルなどの自己集合性ポリマー構造は、それらの機能性とサイズにより有意な注目を受けている。これらのポリマー媒体内への活性体の封入、およびそれらの制御放出および/または放出誘発は、それらの適合性試験として常套的に使用されている。
【0008】
国際特許出願WO99/46301は、単官能ビニルモノマーと、0.3ないし100%w/w(単官能モノマーの重量の)の多機能性ビニルモノマー、0.0001ないし50%w/w(単官能モノマーの重量の)の連鎖移動剤および選択肢としてのフリーラジカル重合開始剤との混合物を形成し、その後に当該混合物を反応させて共重合体を形成する工程からなる分枝ポリマーの製造法を開示している。WO99/46301の実施例には、主として疎水性ポリマーの調製、特に、メタクリル酸メチルが単官能モノマーを構成するポリマーの調製について記載している。これらのポリマーは成形樹脂の製造において、線状ポリ(メタクリル酸メチル)の溶融体粘度を低下させる成分として有用であると言われている。
【0009】
国際特許出願WO99/463は、単官能ビニルモノマーと、0.3ないし100%w/w(単官能モノマーに基づく)の多機能性ビニルモノマーおよび0.0001ないし50%w/wの連鎖移動剤との混合物を形成し、当該混合物を反応させてポリマーを形成させ、そして変換率が99%となる前に重合反応を終結する工程からなる(メタ)アクリル酸エステル官能化ポリマーの製造法を開示している。生成するポリマーは、表面コーティング剤およびインクの成分として、成形樹脂として、または硬化性化合物、例えば、硬化成形樹脂もしくは光レジストにおいて有用である。
【0010】
国際特許出願WO02/34793は、不飽和カルボン酸の分枝共重合体、疎水性モノマー、疎水性連鎖移動剤、架橋剤、および選択肢として立体安定化剤を含有するレオロジー修飾共重合体組成物を開示している。該共重合体は、pHの上昇した水性電解質含有環境において粘度を増加させる。当該製造法は溶液重合プロセスである。該ポリマーは0.25%未満ではあるが僅かに架橋している。
【0011】
林ら(H. Hayashi et al., Macromolecules 2004, 37, 5389-5396)は、ジメタクリル酸エチレングリコールなどの架橋剤の存在下、安定化試薬としてアルファ−ビニルベンジル−オメガ−カルボキシ−PEGを用いて、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルをエマルション重合し、50ないし680nmのサイズ範囲のゲル粒子を得たことを記載している。該重合プロセスにおいては連鎖移動剤を使用していない。これらのナノゲルは潜在的に診断薬および制御薬物放出装置などの適用に利用し得る。
【0012】
米国特許US6,361,768B1は、重合性アミノおよびカルボキシ−官能性のエチレン性不飽和モノマーと、非イオン性親水性モノマーとを、選択肢として疎水性モノマー(類)および架橋性モノマー(類)と共に、しかし連鎖移動剤は使用せずに反応させて、約50℃よりも高いガラス転移温度を有するポリマーとすることにより合成する親水性両性ポリマーを開示している。該共重合体は適切な有機溶媒を含む重合媒体から沈殿させる。該ポリマーは任意に僅かに架橋を有する。生成する共重合体はサブミクロン粒径を有する微粉末の形状にある。このものはそのままでパーソナルケア製剤の増粘剤またはレオロジー調節剤として、生物接着剤としての使用に、また医薬としての適用に適している。両性電解質の性質は恐らく高い塩/界面活性剤レベルとの整合性をもつように設計された結果である。
【0013】
米国特許出願US2006/0106133A1は、両親媒性ポリマーを含有してなるインク−ジェットインクを開示しているが、その場合のポリマーは300ないし100,000ダルトンの分子量範囲で、親水性および疎水性部分を含有してなり、線状ポリマー、星型ポリマーまたはポリマーコアを有するエマルション型の形状であり得る。該ポリマーの製造に際し、連鎖移動剤は使用されていない。該ポリマーは基板上に均一のインク小滴を形成する際に湿潤助剤として使用する。
【0014】
欧州特許公開EP1 384 771Aは、酸−機能性トリガー反応性高分子電解質を開示しているが、このものは比較的高いイオン強度または塩基濃度の水性系で安定、かつ不溶性であり、また水性系のイオン強度または塩基強度が変化した場合(顕著に低下する場合)、分散し、崩壊し、溶解し、不安定化し、膨潤し、またはその組み合わせを生じる。従って、該高分子電解質はトリガー反応を示す。該高分子電解質は以下のものを含有してなる1種以上のアルカリ可溶性ポリマーである:(a)例えば、(メタ)アクリル酸から選択される5ないし70質量パーセントの酸性モノマー;(b)例えば、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルから選択される30ないし95質量パーセントの1種以上の非イオン性ビニルモノマー;および選択肢としての(c)0.01ないし5質量パーセントのポリエチレン性不飽和モノマーなどの1種以上の架橋剤または金属架橋剤。該ポリマーは、該ポリマーの分子量を減ずるために、連鎖移動剤の存在下もしくは不存在下に調製した多価金属塩(亜鉛またはカルシウム)もしくはポリビニルポリマーで架橋したエマルション重合経路を経由して調製する。該トリガー反応は高分子電解質内に取り込まれている成分を放出させ得る。本開示は水素結合については具体的に表示しておらず、膨潤トリガーとなる高いpHのアルカリ膨潤性架橋ポリマーに基づいている。
【0015】
国際特許出願WO2008/004988は、少なくとも1個の疎水性末端基を有する両親媒性線状共重合体を開示している。第一モノマーは該共重合体が熱反応性であるようなものであり、第二モノマーはカルボン酸またはカルボキシレート基を含んでなる。該共重合体は液体中、ミセル状に配列されており、該液体は有機液体であってもよく、その場合、ミセルはコア殻構造を採り、その構造中で親水性コアが疎水性殻により取り囲まれている。該ミセルは生物学的に活性な化合物(例えば、酵素)を含むことが可能で、活性化合物は温度の上昇によりミセルから放出され得る。該共重合体には分枝も架橋もない。該ミセルは熱反応性ミセルであってもよく、これらポリマーの熱反応性は、それらの調製に使用するN−アルキルアクリルアミドモノマー、特に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーのより低い臨界共溶温度(LCST)に由来するものである。該ポリマーはカルボン酸−含有第二モノマーを含有する。
【0016】
米国特許US7,316,816B2は、温度およびpH感受性の両親媒性線状共重合体を開示している。該共重合体は少なくとも温度感受性モノマー、親水性モノマー、および少なくとも1個のpH−感受性部分を含む疎水性モノマーの3種のモノマー単位を含むものである。ただし、当該疎水性モノマー単位は共重合性不飽和脂肪酸に由来する。該分子量は連鎖移動剤を使用することにより減少させ得る。該共重合体は疎水性コアによりコア殻構造に配列することができ、その場合、該コアは疎水性(薬学的)有効成分を含有し得る。外部の条件を変化させることにより(例えば、温度またはpH)、内部に取り込まれた成分を放出させることができる。
【0017】
国際特許出願WO2008/019984は、両親媒性線状ブロック共重合体、その製造法、およびそのエマルション中での使用について開示している。該ブロック共重合体は親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含有してなり、乳化剤として、または乳化助剤として、特に油中水エマルション中で使用し得る。該ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルで共重合化したN−ビニルピロリドン/N−アルキルアクリルアミンから構成される。
【0018】
米国特許出願US2004/0052746A1は、所望のpH領域で必要な会合を生じるアミノ官能性ターポリマーであるポリマーを開示している。該ポリマーは少なくとも1種のアミノ置換ビニルモノマー;少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマー;少なくとも1種の会合性ビニルモノマー;少なくとも1種の半疎水性ビニル界面活性モノマーを含有してなるモノマー混合物の製品であり;また選択肢として、1種以上のヒドロキシ置換非イオン性ビニルモノマー、多飽和架橋モノマー(これが存在する場合、該モノマー混合物の0.1ないし1wt%の最適濃度で)、連鎖移動剤(これが存在する場合、該モノマー混合物の少なくとも0.1wt%の濃度で)、またはポリマー安定化剤を含有してなる。これらのビニル付加ポリマーは置換基の組み合わせを有し、該置換基は低pHにてカチオン性を提供するアミノ置換基、疎水性置換基、疎水性修飾ポリアルキレン置換基、および親水性ポリアルキレン置換基である。該ポリマーはレオロジー調節剤であり、低pHでエマルションに適用した場合、粘度を増大させ、カチオン性物質と相容性である。
【0019】
米国特許出願US2006/0183822A1は、両性電解質共重合体、およびかかる両性電解質共重合体を含有してなる高分子電解質複合体、および少なくとも1種の両性電解質共重合体または1種の高分子電解質複合体を含有してなる化粧品組成物または医薬組成物を開示している。該共重合体は平衡比のアニオン性/カチオン性モノマー、アミド含有ポリマー、疎水性モノマー、および選択肢としての架橋剤(例えば、ジエチレン性不飽和化合物)、および/または連鎖移動剤から構成される。該ポリマーはパーソナルケア用途におけるレオロジー修飾剤(増粘剤)およびフィルム形成剤である。
【0020】
国際特許出願WO2002/047665は、小滴の界面に付着するポリマー粒子によりエマルション(油中水または水中油)の安定化法を開示している。該固体粒子は約1マイクロメートルのサイズを有する。該エマルション小滴はさらに粒子間の架橋の一部形成により、例えば、焼成プロセスにより安定化し得る。エマルションは架橋ポリマービーズの使用を介して形成するが、該ビーズはさらに適当な高分子電解質とのイオン性相互作用により反応させて硬い殻を得ることができる。該ポリマーは可溶性でも分枝性でもなく、条件の変化によっても反応の挙動は示さない。
【0021】
英国特許GB2 403 920Aは、水中油型または油中水型エマルション中のピッカーリング乳化剤としての粒子状物質(直径は好ましくは0.05ないし5マイクロメートル)の使用について開示している。該粒子状物質は少なくとも1種のポリマー(ラテックス)を含んでなり、その場合の該ポリマーの親水性/疎水性バランスは、エマルションを破壊するために、または位相の反転を起こすために、刺激を加えて(例えば、ポリマーのpKaを越えるpHからポリマーのpKa未満のpHにpH変化させる)変化させることができる。該ポリマーの製造に連鎖移動剤は使用しない。
【0022】
欧州特許EP1 726 600A1は、油相、水相、少なくとも1種の油中水型乳化系、選択肢として少なくとも1種の水中油型乳化系を含んでなり、20質量%ないし70質量%の分枝もしくは架橋高分子電解質を含有してなる逆ラテックスの形状である組成物を開示している。該高分子電解質は、N,N−ジメチルアクリルアミドで部分的にもしくは全体的に塩形成した2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、および選択肢として部分的もしくは全体的に塩形成した弱酸機能を有するモノマーから、および/またはN,N−ジメチルアクリルアミド以外の中性モノマーから選択される1種以上のモノマーの共重合体である。該高分子電解質は多官能モノマーにより架橋されていてもよく、また該ポリマーの製造工程に連鎖移動剤は使用しない。これらのポリマーは化粧用または医薬用組成物における乳化剤および増粘剤として使用する。該溶液に塩を添加した場合、それらは粘度を増大させる。
【0023】
コーおよびサウンダーズ(Koh and Saunders, Chem. Commun. (2000) 2461)は、可逆的熱誘導ゲル化を示す水中油型(O/W)エマルション(水中1−ブロモヘキサデカン)を開示しており、その場合の乳化剤は、主鎖としてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)およびペンダントメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)基(平均数分子量360)を含む線状グラフト(櫛型)共重合体である。該ポリマーはフリーラジカル重合プロセスにより製造する。ポリマーの低臨界溶液温度を超える値まで温度を上昇させると、ゲル化のためにエマルションの粘度が著しく上昇する。このプロセスの可逆性は、50℃未満まで温度を低下させて、粘度を著しく低下させることにより証明された。該エマルションは温度低下でばらばらになることはなく、凝集したエマルション小滴の一部残留する綿状の塊りがなお存在した。
【0024】
米国特許US6,528,575B1は、モノマー混合物の沈降重合により入手し得る架橋酸官能化共重合体について記載している;該混合物は、(a)モノエチレン性不飽和C−Cカルボン酸、それらの無水物または当該カルボン酸と無水物の混合物;(b)架橋剤として分子中に少なくとも2個の非共役エチレン二重結合をもつ化合物;および可能性として(c)使用する飽和非イオン性の界面活性化合物モノマーに基づき、0.1ないし20質量%の、フリーラジカル重合開始剤の存在下に、モノマー(a)および(b)と共重合化し得る他のモノエチレン性不飽和モノマーからなる。これらのポリマーは架橋しており、連鎖移動剤の存在なしに、沈降経路を経由して製造される。該ポリマーは、エマルション質量の0.01ないし5%の量で、水中油型エマルション中、安定剤として使用される。当該沈降ポリマーを含む水中油型エマルションに基づく化粧品および医薬製剤もまた開示されている。該ポリマーは非水素結合性である(非会合性)。
【0025】
米国特許US6,020,291は、金属切断操作において潤滑剤として使用される水性金属加工油剤を開示している。該油剤は、疎水性および親水性モノマーを含むミスト抑制分枝共重合体、および選択肢として、2個以上のエチレン性不飽和結合を含んでなるモノマーを含有する。選択肢として、該金属加工油剤は水中油型エマルションであってもよい。該ポリマーはスルホン酸含有の疎水性修飾したモノマーを含むポリ(アクリルアミド)に基づくものである。それらは極少量のビス−アクリルアミドを使用し、連鎖移動剤は使用せずに、非常に僅かな範囲で架橋している。
【0026】
非公開前特許出願番号PCT/EP2007/063615は、僅かに塩基性である分枝ポリマーを開示している。低pHにおいて、これらのポリマーはプロトン付加されており、水によく溶ける。pHを上昇させると、該ポリマーの塩基性残基は脱プロトン化を受け、それと共にそれらはより疎水性となる。これらの疎水性基のために、該ポリマーは親水性殻に囲まれた、エチレンオキシド基からなる、小粒子を形成する疎水性コアと化す。この親水性殻は溶液中で粒子を維持し、これらの粒子はピッカーリング乳化剤として使用し得る。
【0027】
先行技術による線状ポリマーを使用することの不利益は、該ポリマーがエマルションを十分に安定化しないことである。線状ポリマーをブロック様構造とするためには、非常に制御された様式で作製しなければならない。これは製造プロセスを複雑なものとする。さらに、分枝しているよりもむしろ架橋している多くのポリマーは、大きな分子量をもつ架橋したミクロゲルを形成し、結果としてそれらは事実上溶解せず、加工処理が困難である。その結果、これが粘度の上昇によるレオロジー変性につながり、不利益となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
それ故、本発明の目的は、分散液のレオロジーを増粘改変することなく、エマルションの安定化に使用し得るポリマー乳化剤を提供することである。さらなる目的は、分散相に官能性成分を含有するエマルションであって、保存に安定なエマルションを提供することである。外部条件の変化により、機能性成分は分散相から放出されなければならない。本発明の別の目的は、分散相の濃度が高い、濃厚で安定なエマルションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明においては、エマルションを効率的に安定化し得る両親媒性分枝ポリマーを開発した。当該両親媒性分枝ポリマーは、一不飽和モノマー、多不飽和モノマー、および連鎖移動剤の残基を含んでなる。これらモノマーの1つ以上が別のモノマーの1つと非共有結合を形成し得る部分を含む。本発明によるポリマーは乳化剤として使用することができよう。外部条件の変化、例えば、溶液pHまたは温度の変化により、エマルションの小滴はこれらの変化に対応して凝集するはずであるが、エマルションの小滴は連続相に分散したままである。当該分枝ポリマーは、例えば、隣接するエマルション小滴間で水素結合を介して会合することができる。このエマルションは、ポリマーが変化する条件に反応するために、反応に応じて集合するエマルションと考えられる。
【0030】
別の実施態様において、該ポリマーを含有してなるエマルションはこれらの変化に反応して脱乳化し、それと共に分散相に取り込まれた化合物の放出を容易にする。本方法においては、エマルション小滴の制御された凝集と分解を達成し得る方法が提供される。この反応性挙動は、pHまたは温度のような外部条件に依存的な残基間の非共有結合の形成と破壊によるものである。
【0031】
従って、第一の態様において、本発明は、付加重合プロセスにより入手し得る両親媒性分枝共重合体であって、当該ポリマーが:
a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
b)少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
c)連鎖移動剤の少なくとも一残基および任意に開始剤の一残基;および
d)共有結合している(a)から、それらの末端以外で、残基(b)での架橋により形成される少なくとも2本の鎖;
[ここで、
i)(a)ないし(c)の少なくとも1つは親水性残基を含み;
ii)(a)ないし(c)の少なくとも1つは疎水性残基を含み;
iii)(b)対(a)のモル比は1:100ないし1:4の範囲である;そして、
iv)(a)ないし(c)の少なくとも1つは、(a)ないし(c)の少なくとも1つと非共有結合を形成し得る部分を含む]
を含んでなる共重合体を提供する。
【0032】
第二の態様において、本発明は付加重合プロセス、好ましくはフリーラジカル重合プロセスによる本発明の第一の態様による分枝両親媒性共重合体の製造法であって、
(a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
(b)1ないし25モル%(単官能モノマー(類)のモル数に基づく)の少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
(c)連鎖移動剤;および
(d)開始剤、任意ではあるが、好ましくはフリーラジカル開始剤;
からなる混合物を形成し、次いで当該混合物を反応させて、分枝共重合体を形成させることからなる方法を提供する。
【0033】
第三の態様において、本発明は油−水界面にて本発明による分枝共重合体を含有してなる油/水−エマルションを提供する。
【0034】
本発明の第四の態様は、本発明の第三の態様によるエマルションの製造法であって、本発明の第一の態様によるポリマーの水溶液と疎水性液体とを混合する工程からなるが、その工程の条件が、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤の少なくとも1種の部分が、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤のいずれとも非共有結合を形成しない条件である製造法を提供する。
【0035】
これらモノマー類の1種以上は、該モノマー類の別の1種と非共有結合を形成し得る部分を含んでなる。
【0036】
本発明の第五の態様では、本発明の第一の態様による分枝共重合体の乳化剤としての使用が提供される。
【0037】
定 義
以下の定義は、化学構造、分子セグメントおよび置換基に関するものである:
エチレン性一不飽和モノマーとは、「単官能モノマー」をいい、エチレン性多不飽和モノマーとは「多官能モノマー」または「ブランチャー(枝分かれ体)」をいう。
【0038】
本明細書にて使用する場合、用語「アルキル」とは、1個ないし12個の炭素原子を含み得る分枝もしくは未分枝の飽和炭化水素基をいい、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなどである。より好ましくは、アルキル基は1個ないし6個、好ましくは1個ないし4個の炭素原子を含む。メチル、エチルおよびプロピル基が、特に好適である。「置換アルキル」とは、1個以上の置換基により置換されたアルキルをいう。好ましくは、アルキルおよび置換アルキルは未分枝である。
【0039】
典型的な置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミル、アルコキシカルボニル、カルボキシル、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホナト、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルホナト、ホスフィニル、ホスホニル、カルバモイル、アミド、アルキルアミド、アリール、アラルキル、およびベタイン基などの四級アンモニウム基である。これらの置換基の内、ハロゲン原子、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、カルボキシル、アミド、およびベタイン基などの四級アンモニウム基が特に好ましい。前記置換基のいずれかがアルキルもしくはアルケニル置換基を表すかまたは含む場合、このものは線状または分枝状であってもよく、12個まで、好ましくは6個まで、特に4個までの炭素原子を含み得る。シクロアルキル基は3個ないし8個、好ましくは3個ないし6個の炭素原子を含み得る。アリール基またはアリール部分は6個ないし10個の炭素原子を含み、特にフェニル基が好ましい。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であってもよく、従って、ハロアルキル基などのハロ部分を含むいずれもの基が1個以上のこれらのハロゲン原子を含み得る。
【0040】
「(メタ)アクリル酸」などの用語は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方を包含する。類似の用語も同様に解釈すべきである。
「アルキル/アリール」などの用語は、アルキル、アルカリール、アラルキル(例えば、ベンジル)およびアリール基、そして基部分を包含する。
【0041】
モル百分率は総単官能モノマー含量に基づくものである。
モノマーおよびポリマーの分子量は、他に特に断りのない限り、重量平均分子量として表す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明による共重合体は、乳化剤として作用することによりエマルションを安定化し得る。該エマルションは、例えば、油中水型エマルションまたは水中油型エマルション、または二重エマルション、例えば、油中水中油型エマルションである。外部からの刺激に反応して、該ポリマーは非共有結合、例えば、水素結合、ファンデルワールス力により、またはイオン相互作用により、またはパイ−パイ(pi−pi)相互作用により形成される非共有結合などにより相互作用し得る。非共有結合の形成は、ポリマーの外部の条件の変化、例えば、温度またはpHの変化が引き金となる。例えば、pHの変化により、ポリマーの異なるモノマー残基間で水素結合が形成され得る。この非共有結合の形成は、異なるポリマー分子間で、またはポリマー分子内で起こり得る。もしそれが異なるエマルション小滴と連続相間の界面上に局在する異なる分子間で起こるならば、これは凝集したエマルション小滴の形成に導き得る。該ポリマーは本質的に反応性であるように、また外部の刺激、例えば、限定されるものではないが、温度、pHおよび/またはイオン強度により脱乳化するか、または凝集するように調整し得る非常に安定なエマルションを形成するように設計することができる。かかる成分はそれらを適用することにより非常に容易に特性化され、また親水性であるか、および/または疎水性であるかを考察し得る。該反応性ポリマーの性質は予測される用途に対応して、モノマー類と外部条件を選択することにより調整することができる。例えば、該ポリマーの永続的親水性は、連鎖移動剤(CTA)の選択により制御することができる、すなわち、弱塩基性部分にプロトンが付加して、その結果、親水性となった場合でも、疎水性CTAが両親媒性ポリマーをもたらすことになろう。
【0043】
より親水性であるCTAによる分枝共重合体は、より完全な脱乳化を生じるであろう。分枝共重合体および疎水性CTAにより安定化したエマルションは、脱乳化の発生が比較的少ない。従って、脱乳化の程度は、CTAの賢明な選択により「調整する」ことができる。
【0044】
該ポリマー粒子の疎水性部分が反応性である場合、エマルションを安定化するこの粒子の能力は、外部の刺激に左右される。従って、反応性の分枝共重合体により安定化したエマルションは、刺激を与えることにより脱乳化することができる。理論に拘束されることは願わなないが、本プロセスに対する推進力は、両親媒性であることから純粋に親水性であることへの変化による、エマルション小滴表面からの粒子脱湿潤であると考えられる。
【0045】
好適な実施態様において、これらの共重合体は外部の刺激に反応して互いに水素結合を形成し得る機能性を含む。該ポリマーを乳化剤として使用する場合、エマルション小滴の凝集を起こし得る。再び、理論に拘束されることは願わないが、凝集プロセスは小滴間の水素結合相互作用により推進され、分枝共重合体の水素結合供与体と受容体基を必要とする。その典型的な例は、エチレングリコールとメタ(アクリル)酸残基を有する分枝共重合体である。
【0046】
本発明による両親媒性分枝共重合体は付加重合プロセスにより入手可能であり、当該ポリマーは以下のものから構成される:
a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
b)少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
c)連鎖移動剤の少なくとも一残基および任意に開始剤の一残基;および
d)共有結合している(a)から、それらの末端以外で、残基(b)での架橋により形成された少なくとも2本の鎖;
ただし、
i)(a)ないし(c)の少なくとも1つは親水性残基を含み;
ii)(a)ないし(c)の少なくとも1つは疎水性残基を含み;
iii)(b)対(a)のモル比は1:100ないし1:4の範囲である;そして、
iv)(a)ないし(c)の少なくとも1つは、(a)ないし(c)の少なくとも1つと非共有結合を形成し得る部分を含む。
【0047】
これらの両親媒性分枝共重合体は、可溶性の分枝した非架橋性付加ポリマーであり、スタチスティカル共重合体、グラフト共重合体、グラディエント共重合体および交互分枝共重合体である。モノマーが利用し得る間は成長し、かつ任意に大きくなり得る架橋ポリマーとは異なり、分枝ポリマーは有限のサイズをもつように設計されたポリマー分子である。末端以外で架橋により共有結合している少なくとも2本の鎖からなる本発明によるポリマーは、当該ポリマーのサンプルがその末端以外で架橋により共有結合している平均して少なくとも2本の鎖からなるポリマーであると理解すべきである。当該ポリマーのサンプルを作製する場合、一部のポリマー分子が分枝状とならずに偶然に存在しているかも知れないが、これは製造方法(付加重合プロセス)に本来備わっている属性である。同じ理由で、該ポリマーの少量は鎖末端上にCTAを有しないかも知れない。
【0048】
好ましくは、本発明による分枝共重合体の非共有結合は水素結合であるか、または該非共有結合はファンデルワールス力により形成されるか、または該非共有結合はイオン相互作用により形成されるか、または該非共有結合はパイ−パイ相互作用により形成される。最も好ましくは、本発明による分枝共重合体中の非共有結合は水素結合である。
【0049】
該非共有結合の形成は単一のポリマー分子内での相互作用をもたらし得る(例えば、2本の鎖間または1本の鎖と架橋の間)。そのものはまた、異なるポリマー分子間の相互作用ももたらし得る。該モノマーを選択することにより、外部条件変化に対して必要な反応を示すポリマーを設計することができる。
【0050】
好ましくは、一不飽和モノマー(類)と多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤の少なくとも1種が水素結合供与体として作用し得る部分を構成し、また、一不飽和モノマー(類)と多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤の少なくとも1種が水素結合受容体として作用し得る部分を構成する。
【0051】
好ましくは、本発明による共重合体は、酸残基、好ましくはカルボン酸、およびエーテル残基、好ましくはアルキレンオキシド残基を含んでなる。好ましくは、エチレン性一不飽和モノマー(類)および/またはエチレン性多不飽和モノマー(類)は、酸残基またはエーテル残基を含んでなる。
【0052】
本発明による好適な分枝共重合体は、少なくとも2つのエチレン性一不飽和モノマーを含んでなり、その場合、エチレン性一不飽和モノマーの一方が(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸誘導体であり、エチレン性一不飽和モノマーの一方が(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(エチレングリコール)誘導体であって、酸対エチレンオキシド単位のモル比が5:1ないし1:5である。
【0053】
より好適な実施態様において、酸対エチレンオキシド単位のモル比は2:1ないし1:2であり、より好適には0.66:1ないし1:1.5であり、最も好適には約1:1である。好ましくは、この好適な共重合体における(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体の分子量は、500ないし10,000ダルトンである。より好適な実施態様において、このモノマーの分子量は、1,000ないし10,000であり、最も好適には、2,000ないし10,000である。
【0054】
本発明による好適な分枝共重合体の例は、エチレン性一不飽和モノマーが、メタクリル酸(MAA)およびメタクリル酸ポリエチレンオキシド(PEO)1kMA;ただし、ポリエチレンオキシド残基は分子量約1000ダルトンを有する)、エチレン性多不飽和モノマーがジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)、および連鎖移動剤がドデカンチオール(DDT)の残基、および任意成分としての開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の残基を含んでなる分枝共重合体である。かかるポリマーは付加重合プロセスにより入手し得る。かかる好適な共重合体は、MAA95/(PEO1kMA)10−EGDMA10−DDT10(この場合、メタクリル酸残基(MAA)とエチレンオキシド残基(EO)間のモル比は約1:1であり、また分枝度は約10である)として表し得る。
【0055】
別の好適な分枝共重合体は、MAA90/(PEO1kMA)10−EGDMA10−DDT10分枝共重合体(この場合、メタクリル酸残基(MAA)とエチレンオキシド残基(EO)間のモル比は約1:2であり、また分枝度は約10である)として表し得る。
【0056】
親水性モノマーは、単官能および多官能モノマーおよび連鎖移動剤の少なくとも1つが少なくとも1000ダルトンの分子量をもつ親水性残基であるような高分子量のモノマーであるとよい。好ましくは、該親水性成分は多官能モノマーから、より好ましくは連鎖移動剤(通常のフリーラジカル重合に際し)または開始剤から由来するが、最も好ましくは、単官能モノマーに由来する。すべての事例において、親水性成分の組み合わせが可能であり、望ましい。
【0057】
より高い分子量の疎水性種は一般に低分子量の疎水性種よりもより疎水性である。好ましくは、該疎水性成分は多官能モノマーから、より好ましくは連鎖移動剤(通常のフリーラジカル重合に際し)または開始剤に由来するが、最も好ましくは、単官能モノマーに由来する。すべての事例において、疎水性成分の組み合わせが可能であり、また望ましい。
【0058】
連鎖移動剤(CTA)はフリーラジカル重合に際して、連鎖移動メカニズムを介して分子量を低下させることが知られた分子である。これらの試剤はチオール含有分子であってもよく、単官能または多官能であっても良い。該試剤は親水性、疎水性、両親媒性、アニオン性、カチオン性、中性、両性イオン性または反応性であってもよい。該分子はチオール部分を含むオリゴマーまたは予め形成したポリマーでもあり得る。(該試剤は立体障害性アルコールまたは同様のフリーラジカル安定化剤であってもよい)。触媒連鎖移動剤、例えば、コバルト ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)(CoBF)などの遷移金属複合体に基づくものを使用し得る。適切なチオールは、限定されるものではないが、C−C18アルキルチオール、例えば、ドデカンチオール、チオグリコール酸、チオグリセロール、システインおよびシステアミンである。ポリ(システイン)など、または後に官能化されてチオール基を生じるオリゴマーもしくはポリマー、例えば、(ジ)チオグリコール酸ポリ(エチレングリコール)、またはチオール基で官能化した予め形成したポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)などの末端もしくは側鎖−官能化アルコールとチオブチロラクトンとの反応で対応するチオール官能化鎖伸張ポリマーを生じるポリマーなどのチオール含有オリゴマーまたはポリマーも使用し得る。多官能チオールもまた、可逆性付加フラグメンテーション転移(RAFT)またはキサントゲン酸エステル交換による高分子設計(MADIX)リビングラジカル法を介して調製したキサントゲン酸エステル、ジチオエステルまたはジチオ炭酸エステル末端官能化ポリマーの還元によっても調製し得る。キサントゲン酸エステル、ジチオエステルまたはジチオ炭酸エステル、例えば、フェニルジチオ酢酸クミルなども使用し得る。代わりの連鎖移動剤は、フリーラジカル付加重合において分子量を制限することの知られた種である場合もあり、例えば、ハロゲン化アルキルおよび遷移金属塩または複合体である。1種を超える連鎖移動剤を組合わせて使用してもよい。連鎖移動剤が共重合体に必要な親水性を提供している場合、好適なのは該連鎖移動剤が親水性であり、少なくとも1000ダルトンの分子量をもつことである。
【0059】
CTAは、好ましくは疎水性モノマーである。疎水性CTAは、限定されるものではないが、線状および分枝のアルキルおよびアリール(ジ)チオール、例えば、ドデカンチオール、オクタデシルメルカプタン、2−メチル−1−ブタンチオールおよび1,9−ノナンジチオールである。疎水性マクロ−CTA類(ただし、CTAの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)後に鎖末端を還元することにより合成した疎水性ポリマーから調製し得るか、または別法として、予め形成した疎水性ポリマーの末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンなどの化合物で後に官能化してもよい。
【0060】
親水性CTA類は、典型的には水素結合および/または永続的もしくは一過性の電荷を含んでいる。親水性CTA類は、限定されるものではないが、チオグリコール酸およびシステインなどのチオ酸、システアミンなどのチオアミン、および2−メルカプトエタノール、チオグリセロールおよびモノ−(およびジ−)チオグリコール酸エチレングリコールなどのチオ−アルコールである。親水性マクロ−CTA類(ただし、CTAの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)後に鎖末端を還元することにより合成した親水性ポリマーから調製し得るか、または別法として、予め形成した疎水性ポリマーの末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンなどの化合物で後に官能化してもよい。
【0061】
反応性マクロ−CTA類(ただし、CTAの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)後に鎖末端を還元することにより合成した反応性ポリマーから調製し得るか、または別法として、ポリ(プロピレングリコール)などの予め形成した反応性ポリマーの末端ヒドロキシル基をチオブチロラクトンなどの化合物で後に官能化して調製してもよい。
【0062】
該連鎖移動剤の残基は、0ないし80モル%、好ましくは0ないし50モル%、より好ましくは0ないし40モル%、および特にとりわけ0.05ないし30モル%の共重合体を含み得る(単官能モノマーのモル数に基づく)。
【0063】
前記開始剤はフリーラジカル開始剤であり、アゾ−含有分子、過硫酸エステル、レドックス開始剤、過酸化物、ベンジルケトンなど、フリーラジカル重合を開始することの知られた分子であり得る。これらは熱、光分解または化学的手段を介して活性化し得る。これらの例は、限定されるものではないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス(4−シアノ吉草酸)、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、過酸化水素/アスコルビン酸などである。ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメートなどの開始剤も使用し得る。一部の事例においては、1種を超える開始剤を使用してもよい。該開始剤は少なくとも1000ダルトンの分子量を有する高分子開始剤であってもよい。この場合、高分子開始剤は親水性、疎水性、または反応性であってもよい。
【0064】
好ましくは、フリーラジカル重合における開始剤の残基は、該モノマーの総重量に基づき、0ないし5%w/w、好ましくは0.01ないし5%w/w、特に0.01ないし3%w/wの共重合体を含んでなる。
連鎖移動剤および開始剤を使用することが好ましい。しかし、一部の分子は両方の機能を示し得る。
【0065】
親水性高分子開始剤(ただし、前形成ポリマーの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)により合成された親水性ポリマーから調製し得るか、または予め形成した親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基は、CuBrビピリジルなどの低原子価遷移金属触媒と共に原子遷移ラジカル重合(ATRP)にて使用する臭化2−ブロモイソブチリルなどの化合物で後に官能化して調製することができる。
【0066】
疎水性高分子開始剤(ただし、前形成ポリマーの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)により合成された疎水性ポリマーから調製し得るか、または予め形成した親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基は、ATRPで使用する臭化2−ブロモイソブチリルなどの化合物で後に官能化して調製することができる。
【0067】
反応性高分子開始剤(ただし、前形成ポリマーの分子量は少なくとも1000ダルトンである)は、RAFT(またはMADIX)により合成された反応性ポリマーから調製し得るか、または予め形成した親水性ポリマーの末端ヒドロキシル基は、ATRPで使用する臭化2−ブロモイソブチリルなどの化合物で後に官能化することができる。
好ましくは、高分子開始剤は親水性である。
【0068】
単官能モノマーは、付加重合メカニズムにより重合し得る炭素−炭素不飽和化合物、例えば、ビニルおよびアリル化合物を含み得る。単官能モノマーは本質的に、親水性、疎水性、両親媒性、アニオン性、カチオン性、中性または両性イオン性であり得る。単官能モノマーは、限定されるものではないが、ビニル酸、ビニル酸エステル、ビニルアリール化合物、ビニル酸無水物、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルアミン、ビニルアリールアミン、ビニルニトリル、ビニルケトン、および上記化合物の誘導体、並びに対応するそのアリル変異体などのモノマーから選択し得る。その他の適切な単官能モノマーは、ヒドロキシル含有モノマーおよび後の反応でヒドロキシル基を形成し得るモノマー、酸含有もしくは酸官能性モノマー、両性イオン性モノマーおよび四級化アミノモノマーである。オリゴマー性、ポリマー性および二−もしくは多−官能化モノマーも使用可能であり、特に、オリゴマー性またはポリマー性(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ポリアルキレングリコールもしくはポリジメチルシロキサンのモノ(アルキル/アリール)(メタ)アクリル酸エステル、または低分子量オリゴマーのその他のモノ−ビニルもしくはアリル付加物を使用し得る。1種を超えるモノマーの混合物もまた使用可能であり、スタテスティカル共重合体、グラフト共重合体、グラディエント共重合体または交互共重合体を生じ得る。
【0069】
ビニル酸およびその誘導体は、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびその酸ハロゲン化物、例えば、塩化(メタ)アクリロイルなどである。ビニル酸エステルおよびその誘導体は、(メタ)アクリル酸C−C20アルキル(線状および分枝)、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸アリール、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリ(アルキルオキシ)シリルアルキル、例えば、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、および(メタ)アクリル酸の活性化エステル、例えば、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシコハク酸アミドなどである。ビニルアリール化合物およびその誘導体は:スチレン、アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルピリジン、塩化ビニルベンジルおよびビニル安息香酸である。ビニル酸無水物およびその誘導体にはマレイン酸無水物がある。ビニルアミドおよびその誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]ジメチルアンモニウム、スルホン酸3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパン、(メタ)アクリルアミドグリコール酸メチル メチルエーテルおよびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。ビニルエーテルおよびその誘導体としては、メチルビニルエーテルがある。ビニルアミンおよびその誘導体としては:(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノ−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチルおよび反応した後にアミン基を形成するモノマー、例えば、ビニルホルムアミドがある。ビニルアリールアミンおよびその誘導体としては、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールおよびビニルイミダゾールがある。ビニルニトリルおよびその誘導体には(メタ)アクリロニトリルがある。ビニルケトンおよびその誘導体にはアクレオリンがある。
【0070】
ヒドロキシル含有モノマーとしては:ビニルヒドロキシルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロールおよびモノ(メタ)アクリル酸糖エステル、例えば、モノ(メタ)アクリル酸グルコースなどがある。反応後にヒドロキシル基を形成し得るモノマーとしては、酢酸ビニル、アセトキシスチレンおよび(メタ)アクリル酸グリシジルがある。酸含有または酸官能性モノマーには:(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド 2−エチルプロパンスルホン酸、コハク酸モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルおよび(メタ)アクリル酸スルファトエチルアンモニウムがある。両性イオンモノマーとしては、塩化(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルおよびベタイン、例えば、水酸化[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムが挙げられる。四級化アミノモノマーとしては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−(アルキル/アリール)アンモニウム、例えば、塩化(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0071】
オリゴマーおよびポリマー性モノマーには、オリゴマーおよびポリマー性(メタ)アクリル酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸モノ(アルキル/アリール)オキシポリアルキレングリコールおよび(メタ)アクリル酸モノ(アルキル/アリール)オキシポリジメチル−シロキサンがある。これらのエステルとしては:モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシポリ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシポリ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)、およびモノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)である。さらなるに例には、開環重合により形成される前形成オリゴマーまたはポリマーのビニルもしくはアリルエステル、アミドまたはエーテル:例えば、オリゴ(カプロラクタム)、オリゴ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクタム)もしくはポリ(カプロラクトン)、またはリビング重合法により形成されるオリゴマーまたはポリマー、例えば、ポリ(1,4−ブタジエン);がある。
【0072】
上記掲載のモノマーに対応するアリルモノマーもまた適切な場合使用し得る。
【0073】
単官能モノマーの例は以下のとおりである:アミド含有モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、Nおよび/またはN’−ジ(アルキルまたはアリール)(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、塩化[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウム、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、スルホン酸3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパン、(メタ)アクリルアミドグリコール酸メチル メチルエーテルおよびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸およびその誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸、塩化(メタ)アクリロイル(またはいずれかのハロゲン化物)、(メタ)アクリル酸(アルキル/アリール)、官能化オリゴマーもしくはポリマーのモノマー、例えば、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシオリゴ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシオリゴ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシオリゴ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシオリゴ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシポリ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノメトキシポリ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシポリ(エチレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸モノヒドロキシポリ(プロピレングリコール)、モノ(メタ)アクリル酸グリセロールおよびモノ(メタ)アクリル酸糖エステル、例えば、モノ(メタ)アクリル酸グルコース;ビニルアミン、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノ−t−ブチルアミノ、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、ビニルアリールアミン、例えば、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および反応した後にアミン基を形成し得るモノマー、例えば、ホルムアミド;ビニルアリールモノマー、例えば、スチレン、塩化ビニルベンジル、ビニルトルエン、cx−メチルスチレン、スチレンスルホン酸およびビニル安息香酸;ビニルヒドロキシルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、または官能化後にヒドロキシル基を生じ得るモノマー、例えば、酢酸ビニル、アセトキシスチレンおよび(メタ)アクリル酸グリシジル;酸含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド、2−エチルプロパンスルホン酸およびコハク酸モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、またはマレイン酸無水物などの酸無水物;両性イオン性モノマー、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、およびベタイン含有モノマー、例えば、水酸化[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウム;四級化アミノモノマー、例えば、塩化(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム。
【0074】
相当するアリルモノマーは、適用し得る場合に、それぞれの事例において使用することができる。
【0075】
重合後に別の部分により事後または事前に修飾し得る反応性ペンダント基をもつモノマーである官能性モノマーも使用することができる;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリ(アルコキシ)シリルアルキル、例えば、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、塩化(メタ)アクリロイル、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸、塩化ビニルベンジル、(メタ)アクリル酸の活性化エステル、例えば、m(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシコハク酸アミドおよびアセトキシスチレンである。
【0076】
高分子モノマー(少なくとも1000ダルトンの分子量を有するモノマー)は、一般にビニルもしくはアリル基などの重合可能な部分を予め形成した単官能ポリマーに、エステル、アミドもしくはエーテルなどの連結単位を介して連結することにより形成する。適当なポリマーの例には単官能ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、モノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]またはモノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)]、シリコーン類、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)類、開環重合により形成されるポリマー、例えば、ポリ(カプロラクトン)もしくはポリ(カプロラクタム)、またはリビング重合を介して形成される単官能ポリマー、例えば、ポリ(1,4−ブタジエン)がある。
【0077】
好適な高分子モノマーには、モノ(メタクリル酸)モノメトキシ[ポリ(エチレングリコール)]、モノ(メタクリル酸)モノメトキシ[ポリ(プロピレングリコール)]およびモノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−末端化ポリ(ジメチルシロキサン)がある。
【0078】
単官能モノマーが共重合体において必要な親水性を提供している場合、該単官能モノマーは親水性単官能モノマーの残基であり、好ましくは少なくとも1000ダルトンの分子量を有することが好ましい。
【0079】
親水性単官能モノマーは以下のものを包含する:塩化(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシスクシンアミド、スチレンスルホン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルホルムアミド、四級化アミノモノマー、例えば、塩化(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化[3−((メタ)アクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウムおよび塩化(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、スルホン酸3−[N−(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)−N,N−ジメチル]アミノプロパン、(メタ)アクリルアミドグリコール酸メチル メチルエーテル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸モノメトキシおよびモノヒドロキシオリゴ(エチレンオキシド)、モノ(メタ)アクリル酸糖エステル、例えば、モノ(メタ)アクリル酸グルコース、(メタ)アクリル酸、ビニルリン酸、フマル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−エチルプロパンスルホン酸、コハク酸モノ−2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アンモニウムスルファトエチル、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびベタイン含有モノマー、例えば、水酸化[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウム。親水性高分子モノマーも使用でき、(メタ)アクリル酸モノメトキシおよびモノヒドロキシポリ(エチレンオキシド)、および重合可能な部分、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基などの重合可能な部分で後に官能化し得る末端官能基をもつその他の親水性ポリマーを包含する。
【0080】
疎水性単官能モノマーには、(メタ)アクリル酸C−C20アルキル(線状および分枝状)および(メタ)アクリルアミド、例えば、(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸アリール、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリ(アルキルオキシ)シリルアルキル、例えば、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、スチレン、アセトキシスチレン、塩化ビニルベンジル、メチルビニルエーテル、ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、アクレオリン、(メタ)アクリル酸1−および2−ヒドロキシプロピル、酢酸ビニル、および(メタ)アクリル酸グリシジルがある。疎水性高分子モノマーを使用してもよく、(メタ)アクリル酸モノメトキシおよびモノヒドロキシポリ(ブチレンオキシド)、および重合可能な部分、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基などで後に官能化し得る末端官能基をもつその他の疎水性ポリマーを包含する。
【0081】
反応性単官能モノマーは、(メタ)アクリル酸、2−および4−ビニルピリジン、ビニル安息香酸、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸三級アミンおよび(メタ)アクリルアミド、例えば、(メタ)アクリル酸2−(ジメチル)アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノ−t−ブチルアミノエチルおよび(メタ)アクリル酸N−モルホリノエチル、ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびビニル安息香酸を包含する。反応性高分子モノマーを使用してもよく、(メタ)アクリル酸モノメトキシおよびモノヒドロキシポリ(プロピレンオキシド)、および重合可能な部分、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基などで後に官能化し得る末端官能基をもつその他の反応性ポリマーを包含する。
【0082】
多官能モノマーまたはブランチャーは、付加重合を介して重合し得る少なくとも2種のビニル基を含む分子を含み得る。該分子は親水性、疎水性、両親媒性、中性、カチオン性、両性イオン性、オリゴマー性またはポリマー性であり得る。かかる分子は当該技術分野にて架橋剤としても知られており、二−もしくは多官能性分子と適当な反応性モノマーとを反応させることにより調製し得る。その例には、ジ−ないし多−ビニルエステル、ジ−ないし多−ビニルアミド、ジ−ないし多−ビニルアリール化合物、ジ−ないし多−ビニルアルキル/アリールエーテルがある。典型的に、オリゴマーもしくはポリマー性ジ−ないし多−官能性分枝剤においては、連結反応を用いて重合可能な部分をジ−ないし多−官能性オリゴマーまたはポリマーに結合させる。該ブランチャーはそれ自体1つを超える分枝点、例えば、T−形状ジビニルオリゴマーまたはポリマーなどを有し得る。一部の事例においては、1種を超える多官能モノマーを使用し得る。該多官能モノマーが共重合体中で必要な親水性を提供している場合には、該多官能モノマーが少なくとも1000ダルトンの分子量を有していることが好適である。
【0083】
上記掲載のモノマーに相当するアリルモノマーも適切な場合には使用し得る。
【0084】
好適な多官能モノマーとしては、限定されるものではないが、ジビニルアリールモノマー、例えば、ジビニルベンゼン;(メタ)アクリル酸ジエステル、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、およびジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレン;ジ(メタ)アクリル酸ポリアルキレンオキシド、例えば、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、およびジ(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレングリコール);ジビニル(メタ)アクリルアミド、例えば、メチレンビスアクリルアミド;シリコーン含有ジビニルエステルまたはアミド、例えば、(メタ)アクリルオキシプロピル末端化ポリ(ジメチルシロキサン);ジビニルエーテル類、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル;およびテトラ−またはトリ(メタ)アクリル酸エステル、例えば、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリトリトール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンまたはジ−ないしペンタ(メタ)アクリル酸グルコースがある。さらなる例には、開環重合を介して形成される予め形成したオリゴマーもしくはポリマーのビニルまたはアリルエステル、アミドまたはエーテル、例えば、オリゴ(カプロラクタム)、オリゴ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクタム)もしくはポリ(カプロラクトン);またはリビング重合法を介して形成されるオリゴマーまたはポリマー、例えば、オリゴ−もしくはポリ(1,4−ブタジエン)である。高分子架橋剤または高分子ブランチャー(少なくとも1000ダルトンの分子量を有する多官能モノマー)は、一般に、ビニルもしくはアリール基などの重合可能な部分を、エステル、アミドまたはエーテルなどの適当な連結単位を介して予め形成した多官能ポリマーに連結することにより形成する。適当なポリマーの例には、二官能ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(プロピレングリコール)、シリコーン、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)類、開環重合により形成されるポリマー、例えば、ポリ(カプロラクトン)もしくはポリ(カプロラクタム)、またはリビング重合を介して形成される多官能ポリマー、例えば、ポリ(1,4−ブタジエン)がある。
【0085】
好適な高分子ブランチャーとしては、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレングリコール)、メタクリルオキシプロピル−末端化ポリ(ジメチルシロキサン)、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(カプロラクトン)およびポリ(カルボラクタム)ジ(メタ)アクリルアミが挙げられる。
【0086】
ブランチャーは以下を包含する:メチレンビスアクリルアミド、ジ(メタ)アクリル酸グリセロール、ジ−およびトリ(メタ)アクリル酸グルコース、オリゴ(カプロラクタム)およびオリゴ(カプロラクトン)。多末端官能化親水性ポリマーもまた(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基などの適当な重合可能部分により官能化し得る。
【0087】
さらなるブランチャーは以下を包含する:ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコールおよびジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレン、ジ(メタ)アクリル酸オリゴ(エチレングリコール)、例えば、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、テトラ−もしくはトリ−(メタ)アクリル酸エステル、例えば、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリトリトール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンおよびペンタ(メタ)アクリル酸グルコース。多末端官能化疎水性ポリマーもまた、適当な重合可能な部分、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基を用いて官能化し得る。
【0088】
多官能反応性ポリマーもまた、適当な重合可能な部分、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたはスチレン基を用いて官能化し得る;例えば、ジ(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレンオキシド)である。
【0089】
[製造方法]
第二の態様において、本発明は付加重合プロセス、好ましくはフリーラジカル重合プロセスにより前記請求項のいずれか1項に記載の分枝両親媒性共重合体の製造法であって、
(a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
(b)1ないし25モル%(単官能モノマー(類)のモル数に基づく)の少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
(c)連鎖移動剤;および
(d)開始剤、任意ではあるが、好ましくはフリーラジカル開始剤;
からなる混合物を形成し、当該混合物を反応させて、分枝共重合体を形成させることからなる方法を提供する。
【0090】
該共重合体は付加重合法により調製するが、当該方法は連鎖移動剤を用いる常套のフリーラジカル重合法である。
【0091】
常套のラジカル重合プロセスにより分枝ポリマーを製造するためには、単官能モノマーを連鎖移動剤とフリーラジカル開始剤の存在下に、多官能モノマーまたは分枝剤と重合させる。
【0092】
該重合反応は溶液、バルク、懸濁液、分散液またはエマルション手法を介して進行させ得る。
【0093】
[エマルション]
第三の態様において、本発明は油−水界面にて本発明による分枝共重合体を含有してなる油/水−エマルションを提供する。従って、本発明の別の態様は、本発明の第一の態様による分枝共重合の乳化剤としての用途を提供することである。
【0094】
好ましくは、該エマルション中の小滴の平均径は20マイクロメートル未満、より好ましくは10マイクロメートル未満である。好ましくは、該エマルションは水中油型エマルションである。
【0095】
好適な実施態様において、該エマルションは有効成分を含んでなり、当該有効成分は分散相中に取り込まれている。
【0096】
本発明の第四の態様においては、本発明の第一の態様による好適なポリマーの水溶液を疎水性液体と混合する工程からなる、かかるエマルションの製造方法であって、その条件下で、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤の少なくとも1種の部分が、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤のいずれとも非共有結合を形成しないことを特徴とする製造法を提供する。これらの条件下、該ポリマーは相互に作用しない形状にあり、本方法を使用して製造するエマルションは非凝集状態にある。このことはエマルションの小滴がエマルション中で自由に分散していることを意味する。該疎水性液体は、例えば、薬物または香料などの有効成分を含有し得る。
【0097】
好ましくは、かかるエマルションの製造法は、本発明の第一の態様による好適なポリマーの水溶液を該ポリマーのpKaを越えるpHで疎水性液体と混合する工程からなる。この好適な方法において、好ましくは、外部の条件の変化により形成され得る非共有結合が水素結合であるポリマーが適用される。
【0098】
本発明の第一の態様による好適なポリマーを含有してなるかかる油/水エマルションは、この目的のための一般的装置、例えば、高剪断ミキサー、またはホモジナイザー、またはいずれかの他の一般的既知の機器を用いて調製し得る。油または疎水性物質は該ポリマーの水溶液にゆっくりと注ぎ入れる。混合プロセスの結果として、油滴は均一に分散し、該ポリマーが該エマルションを安定に維持する乳化剤として作用する。エマルションのpHがポリマーのpKa以上である場合、油滴が水相中に均一に分散し、エマルションが安定なものとなる。
【0099】
外部条件の変化により、本発明の第三の態様によるエマルションは脱乳化を受け、それと共に取り込まれていた成分のエマルション小滴からの放出が達成される。かかる外部条件の変化の例は、安定な水中油エマルションが低pHで形成され、pHの上昇後、脱乳化によってエマルションが解体するというものである。
【0100】
好適な実施態様において、該ポリマーの分枝度が弱塩基性部分からなる分枝ポリマーのpKaに影響し得るならば、該pKaは、ポリマーの分枝度が増大する場合、低下し得る。それ故、他の適用においても、これらのポリマーはそれらの濃度と分枝度との関数として溶液のpHを調節することができる。従って、本質的に同一のポリマーは、単純に分枝度を変えることによって、異なるpH値で疎水性活性体の放出を促進し得る。
【0101】
本発明第三の態様の好適な実施態様において、該エマルションの分散相は凝集する。この凝集は外部刺激に対する反応が引き金となる。好ましくは、凝集体の平均径は100マイクロメートルを超え、より好ましくは200マイクロメートルを超えるか、またはさらには500マイクロメートルを超える。該凝集体はまたミリメートルまたはセンチメートルのサイズともなり得る。エマルション小滴は、外部刺激、例えば、温度、pH、またはイオン強度の変化により凝集し得る。凝集体サイズの限度は容器の規模であり、その場合、凝集したエマルションが形成されている。凝集は外部刺激の反転に対する反応として逆転し(凝集解離を意味する)、分散したエマルションを生じる。
【0102】
本発明の第四態様の好適な実施態様においては、エマルションの水溶液のpHがポリマーのpKa未満の値に低下する場合の方法が提供される。モノマーの適切な選択により、分散相の凝集が得られるはずであるが、エマルションは安定のままである。エマルションのpHを、該ポリマーのpKaを越える値からpKa未満の値に低下させることにより、ポリマーの官能性残基が非共有結合を形成するために凝集する。例えば、該非共有結合は、ポリマーがカルボン酸とエチレンオキシド残基を有しているとき、水素結合となろう。
【0103】
このような凝集したエマルションは、分散相が凝集していないエマルションに比べて、連続相における分散相の濃度が高いという利点がある。
【0104】
乳化剤として使用し得る本発明による好適なポリマーは、MAA95(PEO1kMA)−EGDMA10−DDT10(この場合、メタクリル酸残基(MAA)とエチレンオキシド残基(EO)間のモル比は約1:1であり、また分枝度は約10である)として表し得る。理論に拘束されるものではないが、この共重合体を含有する水中油型エマルションのpHが、約4.5というMAA残基のpKaを超えている場合、該MAAはアニオンの形状にあると信じられる。エマルションの小滴はこのpHにて個々の小滴として分散したままである。エマルションのpHが1付近のpH(MAA残基のpKa未満)まで引き続き低下する場合、MAA単位はプロトン付加される(中性)。小滴内および小滴間双方の架橋が、同一のおよび周囲のエマルション小滴上でMAA残基とEO残基との間の相互作用により生じる。凝集体の大きさはセンチメートルにまで達し得るが、容器の規模により制限される。本工程は可逆的であり、溶液pHをMAA残基のpKaを超えて上昇させることにより、エマルション凝集体を再び個々の小滴に解離させる。
【実施例】
【0105】
本発明につき、以下の非制限的実施例を参照することによりさらに詳細に説明する。
以下の実施例において、共重合体は以下の命名法に従い記載する:
(単官能モノマーG)(単官能モノマーJ)
(多官能モノマーL)(連鎖移動剤)
ただし、下付き文字の値は正規化した各成分のモル比であり、単官能モノマー値を100として、すなわち、g+j=100として与える。分枝度または枝分かれレベルはlによって示し、dは連鎖移動剤のモル比をいう。
【0106】
例えば:
メタクリル酸100 ジメタクリル酸エチレングリコール15 ドデカンチオール15は、メタクリル酸:ジメタクリル酸エチレングリコール:ドデカンチオールを100:15:15のモル比で含有するポリマーを描出する。
【0107】
分子量の測定は、有機もしくは水性溶出液としてそれぞれpH9に調整した0.05M−NaNOを含むテトラヒドロフラン(THF)または20%水性メタノールによるワイアット(Wyatt)クロマトグラフ上のセック−モールス(SEC-MALLs)を用いるGPCにより実施し流速は1ml/分、サンプルインジェクション容量を100μlとした。装置には40℃に設定したポリマーラボラトリーズPLミックスCおよびミックスDカラムを装着した。検出はジャスコRI検出計を備えるワイアットドーン(Wyatt Dawn)DSPレーザー光度計により実施した。
【0108】
実施例1a
分枝ポリ[メタクリル酸ジエチルアミノエチル−コ−モノメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)22−コ−ジメタクリル酸エチレングリコール]の合成
DEA95(PEG22MA)−EGDMA15−DDT15
メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEA)(8.000g、43mmol)、PEG22MA(2.162g、2.2mmol)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)(1.35g、6.8mmol)およびドデカンチオール(DDT)(1.62mL、6.8mmol)をエタノール(100mL)に溶かし、30分間窒素を吹き込み脱気した。この時点後、反応溶液に窒素気流を流し、60℃に加熱した。温度が平衡に達したところで、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、110mg、1wt%、モノマー総量に基づく)を加えて重合を開始させ、反応混合物を18時間攪拌放置した。真空蒸留によりエタノールを除去し、得られる澄明油状のポリマーを非常に冷たい石油で洗った。このポリマーを真空オーブン中で48時間乾燥し、85%の収率で得た。
GPC:Mw:11,900g/mol;光散乱シグナルから計算;溶出液:THF
【0109】
実施例1b
線状ポリ[メタクリル酸ジエチルアミノエチル−コ−モノメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)22]の合成
この線状ポリマーは実施例1aの分枝共重合体に類似しており、EGDMAなしに調製した。
DEA95(PEG22MA)DDT2.5
メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEA)(8.000g、43mmol)、PEG22MA(2.162g、2.2mmol)およびドデカンチオール(DDT)(0.27mL、1.1mmol)をエタノール(100mL)に溶かし、30分間窒素を吹き込み脱気した。この時点後、反応溶液に窒素気流を流し、60℃に加熱した。温度が平衡に達したところで、AIBN(101mg、1wt%、モノマー総量に基づく)を加えて重合を開始させ、反応混合物を40時間攪拌放置した。真空蒸留によりエタノールを除去し、得られる澄明油状のポリマーを非常に冷たい石油で洗った。このポリマーを真空オーブン中で48時間乾燥し、90%の収率で得た。
GPC:Mw:35,300g/mol;光散乱検出器により計算;溶出液:THF
【0110】
実施例2a
分枝ポリ[メタクリル酸ジメチルアミノエチル−コ−モノメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)22−コ−ジメタクリル酸エチレングリコール]の合成
DMA95(PEG22MA)−EGDMA15−TG15
メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMA)(8.949g、57mmol)、PEG22MA(3.000g、3mmol)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)(1.782g、9mmol)およびチオグリセロール(TG)(0.972mL、9mmol)をエタノール(120mL)に溶かし、30分間窒素を吹き込み脱気した。この時点後、反応溶液に窒素気流を流し、60℃に加熱した。温度が平衡に達したところで、AIBN(137mg、1wt%、モノマー総量に基づく)を加えて重合を開始させ、反応混合物を24時間攪拌放置した。真空蒸留によりエタノールを除去し、得られる澄明油状のポリマーを非常に冷たい石油で洗った。このポリマーを真空オーブン中で48時間乾燥し、80%の収率で得た。
GPC:Mw:23,500g/mol;光散乱検出器により計算;溶出液:THF
【0111】
実施例2b
線状ポリ[メタクリル酸ジメチルアミノエチル−コ−モノメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)22]の合成
この線状ポリマーは実施例2aの分枝共重合体に類似している。
DMA95(PEG22MA)TG2.5
メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMA)(8.949g、57mmol)、PEG22MA(3.000g、3mmol)およびチオグリセロール(TG)(0.162g、1.5mmol)をエタノール(120mL)に溶かし、30分間窒素を吹き込み脱気した。この時点後、反応溶液に窒素気流を流し、60℃に加熱した。温度が平衡に達したところで、AIBN(120mg、1wt%、モノマー総量に基づく)を加えて重合を開始させ、反応混合物を24時間攪拌放置した。真空蒸留によりエタノールを除去し、得られる澄明油状のポリマーを非常に冷たい石油で洗った。このポリマーを真空オーブン中で48時間乾燥し、80%の収率で得た。
GPC:Mw:16,000g/mol;光散乱検出器により計算;溶出液:THF
【0112】
実施例3
分枝ポリマー乳化剤についての脱乳化の速度と程度に対する鎖末端の影響
pH10にて異なる疎水性の鎖末端をもつ分枝共重合体により安定化したエマルションを調製し、脱乳化の程度をエマルションの溶液pHを低下させることでモニターした。分枝共重合体の分枝度は‘15’(実施例1aにおけるように)に維持し、親水性CTAはチオグリセロールを使用した。検討した共重合体の組成は以下のとおりであった:
【0113】
DEA95(PEG22MA)TG2.5(線状対照として合成)、DEA95(PEG22MA)EGDMA2.5TG2.5およびDEA95(PEG22MA)EGDMA15TG15、(略号は実施例1aと同じ)。これらのポリマーは実施例1aおよび実施例1bに示した方法に従って合成した。pH10で安定なエマルション(50%v/vドデカン/水)を調製し、酸を加えて溶液のpHをpH1近傍に低下させ、脱乳化を誘発した。脱乳化度(DEA残基のプロトン付加により惹起)は、24時間放置後のクリーム状エマルション相の減少を測定することにより定量した。
【0114】
実施例4a
分子間/分子内水素結合分枝共重合体の合成
MAA95(PEO1kMA)−EGDMA10−DDT10分枝共重合体の合成
このポリマーにおいて、メタクリル酸残基(MAA)とエチレンオキシド残基(EO)のモル比は約1:1であり、分枝度は約10である。
メタクリル酸(MAA、10g、95当量)、メタクリル酸ポリエチレンオキシド(PEO1kMA、6.732g、5当量;ただし、ポリエチレンオキシド残基は約1000ダルトンの分子量を有する)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA、2.302g、10当量)およびドデカンチオール(DDT、2.349g、10当量)を磁気攪拌バーを備えた丸底フラスコに加え、攪拌下に窒素気流を15分間パージして脱気した。別途、エタノールを脱気し、モノマー混合物に加えた(190mL)。反応を封鎖し、75℃に加熱し、その後にAIBN(190mg)を加えて、重合を開始させた。重合は48時間進行させ、その後にエタノールを減圧下除去し、ポリマーを冷却(5℃)ジエチルエーテルで数回洗った。
【0115】
実施例4b
MAA90(PEO1kMA)10−EGDMA10−DDT10分枝共重合体の合成
このポリマーにおいて、メタクリル酸残基(MAA)とエチレンオキシド残基(EO)のモル比は約1:2であり、分枝度は約10である。
メタクリル酸(MAA、11g、90当量)、メタクリル酸ポリエチレンオキシド(PEO1kMA、13.464g、10当量;ただし、ポリエチレンオキシド残基は約1000ダルトンの分子量を有する)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA、2.302g、10当量)およびドデカンチオール(DDT、2.349g、10当量)を磁気攪拌バーを備えた丸底フラスコに加え、攪拌下に窒素気流を15分間パージして脱気した。別途、エタノールを脱気し、モノマー混合物に加えた(190mL)。反応を封鎖し、75℃に加熱し、その後にAIBN(190mg)を加えて、重合を開始させた。重合は48時間進行させ、その後にエタノールを減圧下除去し、ポリマーを冷却(5℃)ジエチルエーテルで数回洗った。
【0116】
実施例4cおよび4d
MAA95(PEO1kMA10−DDT10およびMAA90(PEO1kMA)10−DDT10線状ポリマーの合成
実施例4aおよび4bからのポリマーの線状例を調製した(それぞれ実施例4cおよび4d)。該ポリマーはEGDMAブランチャーの存在なしに、同じ手法で調製した。
【0117】
水中ドデカンエマルションの調製
MAA95(PEO1kMA)−EGDMA10−DDT10分枝共重合体(実施例4aにて合成)の2.0w/v%水溶液は、分枝共重合体100mgを二回蒸留水5mLに溶かし、NaOH溶液(2M)によりpHをpH10に調整することにより調製した。この溶液にドデカン(5mL)を加えた。エマルションはこの混合物を24,000rpmで2分間均一化し、平均ドデカン小滴径が約10マイクロメートルであるエマルションを得た。このエマルションは貯蔵の間安定であった。
【0118】
エマルションのpH−反応性水性溶液の挙動の測定
乳化剤として作用する共重合体(実施例4aまたは4bにて合成)により安定化したエマルション小滴が凝集するか否かを測定するために、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)を使用して、希釈水溶液中の小滴直径を測定した。濃厚水中ドデカンエマルションの1滴を、均一な分散が得られるまで(20秒)、分散器具中、pH9の水に加えた。このpHはMAAのpKaを超えるものであり、MAAのpKaは、そのアニオン形状にあるとき、約4.5である。油滴径を決定するために、pH9で5回の測定を行い、次いで、HCl(0.6mL、1M)を加えて溶液のpHをpH1近傍に低下させた。このpHはMAAのpKaより低く、MAA単位にはプロトン付加している(中性)。
【0119】
測定値は30秒の間隔で記録し、平均小滴の直径をMAA95(PEO1kMA)−EGDMA10−DDT10分枝共重合体(実施例4aにて合成)またはMAA90(PEO1kMA)10−EGDMA10−DDT10分枝共重合体(実施例4bにて合成)で安定化したエマルション分散の時間軸に対してプロットした。
【0120】
このものはMAA:EO単位が1:2の比(実施例4bにて合成した共重合体の場合)で存在する場合、小滴内架橋のみが起こること、すなわち、同じエマルション小滴上のMAAとEO残基間の相互作用のみが起こったことを示した。エマルション小滴はこの濃度でそれぞれの小滴として分散したままであった。
【0121】
MAA:EO単位が1:1の比(実施例4aにて合成した共重合体の場合)で存在する場合は、小滴内および小滴間で架橋が起こる、すなわち、同じエマルション小滴および周囲の小滴上のMAAとEO残基間で相互作用が起った。このことがエマルション小滴の油滴凝集体への凝集を惹起した。このプロセスは可逆的であった、すなわち、溶液のpHがMAA残基のpKaを超えて上昇すると、エマルション凝集体が個々の小滴へ解離する原因となった。
エマルションを線状ポリマーにより調製した場合(実施例4cおよび4d)、エマルションは不安定であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加重合プロセスにより入手し得る両親媒性分枝共重合体であって、当該ポリマーが:
a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
b)少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
c)連鎖移動剤の少なくとも一残基および任意に開始剤の一残基;および
d)共有結合している(a)から、それらの末端以外で、残基(b)での架橋により形成される少なくとも2本の鎖;
[ここで、
i)(a)ないし(c)の少なくとも1つは親水性残基を含み;
ii)(a)ないし(c)の少なくとも1つは疎水性残基を含み;
iii)(b)対(a)のモル比は1:100ないし1:4の範囲であり;そして、
iv)(a)ないし(c)の少なくとも1つは、(a)ないし(c)の少なくとも1つと非共有結合を形成し得る部分を含む]
を含んでなる共重合体。
【請求項2】
前記非共有結合が水素結合であるか、または該非共有結合がファンデルワールス力により形成されるか、または該非共有結合がイオン相互作用により形成されるか、または該非共有結合がパイ−パイ相互作用により形成されるものである請求項1記載の分枝共重合体。
【請求項3】
(a)ないし(c)の少なくとも1種が水素結合供与体として作用し得る部分を含み、また(a)ないし(c)の少なくとも1種が水素結合受容体として作用し得る部分を含むものである請求項1記載の分枝共重合体。
【請求項4】
該ポリマーが酸残基、好ましくはカルボン酸残基、およびエーテル残基、好ましくはアルキレンオキシド残基を含んでなるものである請求項1記載の分枝共重合体。
【請求項5】
該2本の鎖が、少なくとも2つのエチレン性一不飽和モノマーを含んでなり、その場合、エチレン性一不飽和モノマーの一方が(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸誘導体であり、該エチレン性一不飽和モノマーの一方が(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(エチレングリコール)誘導体であって、酸対エチレンオキシド単位のモル比が5:1ないし1:5である請求項4記載の分枝共重合体。
【請求項6】
酸対エチレンオキシド単位のモル比が0.66:1ないし1:1.5である請求項5記載の分枝共重合体。
【請求項7】
(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)誘導体の分子量が、500ないし10,000ダルトンである請求項5または6記載の分枝共重合体。
【請求項8】
前記請求項のいずれか1項に記載の分枝両親媒性共重合体の付加重合プロセス、好ましくはフリーラジカル重合プロセスによる製造法であって、
(a)少なくとも1種のエチレン性一不飽和モノマー;
(b)1ないし25モル%(単官能モノマー(類)のモル数に基づく)の少なくとも1種のエチレン性多不飽和モノマー;
(c)連鎖移動剤;および
(d)開始剤、任意ではあるが、好ましくはフリーラジカル開始剤;
からなる混合物を形成し、当該混合物を反応させて、分枝共重合体を形成させることを特徴とする製造法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載のポリマーを油−水界面に含んでなる油/水エマルション。
【請求項10】
分散相が凝集している請求項9記載のエマルション。
【請求項11】
有効成分が分散相に取り込まれている請求項9または10記載のエマルション。
【請求項12】
請求項1ないし7のいずれかに記載のポリマーの水溶液と疎水性液体とを、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤の少なくとも1種の部分が、一不飽和モノマー(類)、多不飽和モノマー(類)および連鎖移動剤のいずれとも非共有結合を形成しない条件下で混合する工程を含んでなる請求項9ないし11のいずれかに記載のエマルションの製造方法。
【請求項13】
請求項4ないし7のいずれかに記載のポリマーの水溶液と疎水性液体とを、該ポリマーの酸残基のpKaを越えるpHで混合する工程を含んでなる請求項9ないし11のいずれかに記載のエマルションの製造法。
【請求項14】
引き続く工程で、該水溶液のpHをポリマー酸残基のpKa未満の値に低下させる請求項13記載の製造法。
【請求項15】
請求項1ないし7のいずれかに記載の分枝共重合体の乳化剤としての使用。

【公表番号】特表2011−522083(P2011−522083A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511089(P2011−511089)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001355
【国際公開番号】WO2009/144471
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(501229115)ユニリーバー・エヌ・ブイ (3)
【Fターム(参考)】