説明

両親媒性粒子の油性分散体、この製造方法、分散安定剤、樹脂組成物及び顔料分散組成物

【課題】
固体微粒子の分散性及び疎水性溶媒や樹脂中への分散性に優れた分散安定剤を提供することである。
【解決手段】
両親媒性粒子(a)と油性成分(b)とを含む油性分散体であって、両親媒性粒子(a)が、親水性表面と疎水性表面とを有する無機微粒子であることを特徴とする油性分散体を用いる。この油性分散体の製造方法であって、親水性無機微粒子を油性成分(b)に分散して親水性無機微粒子油性成分分散体を得る分散工程;親水性無機微粒子油性成分分散体中に分散された親水性無機微粒子を疎水化して疎水化無機微粒子油性成分分散体を得る疎水化工程;及び疎水化無機微粒子油性成分分散体に含まれる疎水化無機微粒子を破砕して両親媒性粒子(a)を得る破砕工程を含むことを特徴とする製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両親媒性粒子の油性分散体、この製造方法、分散安定剤、樹脂組成物及び顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、疎水性無機酸化物を親水性有機化合物の存在下で水性媒体中に分散させた無機分散安定剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−237216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の無機分散安定剤は分散安定性が低く、特に固体微粒子(顔料等)の分散性が著しく低いという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、分散安定剤に優れ、特に固体微粒子の分散性に優れた分散安定剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の油性分散体の特徴は、両親媒性粒子(a)と油性成分(b)とを含む油性分散体であって、
両親媒性粒子(a)が親水性表面と疎水性表面とを有する無機微粒子であることを要旨とする。
【0006】
本発明の製造方法の特徴は、上記の油性分散体を製造する方法であって、
親水性無機微粒子を油性成分(b)に分散して親水性無機微粒子油性成分分散体を得る分散工程;
親水性無機微粒子油性成分分散体中に分散された親水性無機微粒子を疎水化して疎水化無機微粒子油性成分分散体を得る疎水化工程;及び
疎水化無機微粒子油性成分分散体に含まれる疎水化無機微粒子を破砕して両親媒性粒子(a)を得る破砕工程を含むことを要旨とする。
【0007】
本発明の分散安定剤は、上記の油性分散体を含んでなることを要旨とする。
【0008】
本発明の顔料分散組成物は、上記の油性分散体と、顔料微粒子(c)と、希釈剤(d)とを含むことを要旨とする。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、上記の油性分散体と、顔料微粒子(c)と、熱可塑性樹脂(r)とを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油性分散体は、分散安定性性(特に固体微粒子(顔料等)の分散安定性)に優れる。したがって、本発明の油性分散体は、懸濁・乳化重合用分散安定剤、繊維工業用分散安定剤、インク用分散安定剤、塗料用分散安定剤、プラスチック用分散安定剤、農薬工業用分散安定剤等として好適であり、特に固体微粒子(顔料等)をインク、塗料、及びプラスチック等に分散する際に使用する分散安定剤として好適である。
なお、分散安定性には乳化安定性を含み、分散安定剤には乳化安定剤を含む(以下同様)。
【0011】
本発明の製造方法は、上記の油性分散体を製造するのに適しており、上記の油性分散体を容易に製造できる。
【0012】
本発明の分散安定剤は、上記の油性分散体を含んでいるため、分散安定性(特に固体微粒子(顔料等)の分散安定性)に優れる。
【0013】
本発明の顔料分散組成物は、上記の油性分散体を含んでいるため、分散安定性に優れる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上記の油性分散体を含んでいるため、分散安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<両親媒性粒子(a)>
両親媒性粒子(a)は、水性表面と疎水性表面とを有する無機微粒子であるが、無機微粒子の表面が水性表面と疎水性表面とに分割されている。このような無機微粒子としては、親水性無機微粒子を疎水化剤で表面処理(疎水化処理)した後、破砕して得られる微粒子が含まれる。このように、親水性無機微粒子を疎水化剤で表面処理(疎水化処理)した後破砕した場合、親水性無機微粒子のもともとの表面(破砕面)は親水性表面であり、疎水化剤で疎水化された表面は疎水性表面となる。
【0016】
なお、分割とは、一つの磁石の中で正極と負極が局在するがごとく、親水性表面と疎水性表面とが一つの無機微粒子の表面に局在していることを意味する(一つの微粒子の表面に親水性表面と疎水性表面とが散在しているものとは相違する)。
【0017】
両親媒性粒子(a)の表面が、親水性表面と疎水性表面とに分割されていることは、以下の方法で確認することができる。
<表面が分割されていることの確認方法>
イオン交換水5mLとn−ヘキサン5mLとを試験管に入れ、これにイソプロパノールに1重量%の濃度で測定試料(両親媒性粒子(a)等)を分散した分散液を0.02g加え、60分間静置する(各測定試薬の純度は99重量%以上のものを使用する)。
測定試料の表面が親水性表面と疎水性表面とに分割されている場合、水とn−ヘキサンとの界面に測定試料(両親媒性粒子(a))の均一な集合層を形成し、その上層と下層は測定試料(両親媒性粒子(a))を含まない清浄な層をなす。
一方、表面が親水性表面と疎水性表面とに分割されていない場合(親水性表面と疎水性表面とが粒子表面に均一に分散(散在)した粒子等の場合)、測定試料(粒子)は水相若しくはn−ヘキサン層に分散、又は水とn−ヘキサンとの界面に凝集塊を形成し、界面に均一な集合層を形成しない。
【0018】
なお、両親媒性粒子(a)は、本発明の油性分散体から次のようにして単離できる。すなわち、油性分散体50gをn−ヘキサン450gと混合して生じた白色沈殿物を遠心分離にて取り出し、100℃の順風式乾燥機にて12時間乾燥することにより、両親媒性粒子(a)を単離することができる。
【0019】
両親媒性粒子(a)のM値は、両親媒性粒子の界面活性及び分散安定剤の分散安定性等(以下、単に界面活性という。)の観点から、1〜35が好ましい。M値は、微粒子の疎水性の程度を表す概念であり、M値が高いほど親水性が低いことを示し、水・メタノール混合溶液に微粒子を均一分散させる際、必要最低量のメタノールの容量割合で表され、次の方法で求めることができる。
【0020】
<M値算出法>
測定試料(両親媒性粒子(a)等)0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加し、続いてメタノールをビュレットから測定試料の全量が懸濁するまで滴下する。この際ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時撹拌し、測定試料の全量が溶液中に均一懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率がM値となる。
【0021】
親水性無機微粒子としては、金属酸化物微粒子(非晶質合成シリカ、結晶性合成シリカ、天然シリカ、アルミナ又は酸化チタンからなる微粒子等)、金属水酸化物微粒子(水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムからなる微粒子等)、炭酸塩微粒子(炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムからなる微粒子等)、層状鉱物微粒子{カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト及びサボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライト、ハイドロタルサイト又は層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト及びケニヤアイト等)からなる微粒子等)}等が含まれる。
【0022】
これらの親水性無機微粒子のうち、金属酸化物微粒子が好ましく、さらに好ましくはシリカ、特に好ましくは非晶質合成シリカである。非晶質合成シリカのうち、熱分解法シリカが好ましく、さらに好ましくはBET法による比表面積が50〜300m/gの熱分解法シリカである。
【0023】
なお、BET法による比表面積は、JIS R1626−1996(一点法)に準拠して測定される値である{測定試料:50mg(200℃で15分間加熱処理したサンプル)、吸着量の測定方法:定溶法、吸着質:混合ガス(N70体積%、He30体積%)、測定平衡相対圧:0.3、装置:たとえば、大倉理研社製、全自動粉体表面測定装置 AMS−8000}。
【0024】
親水性無機微粒子は、市場から容易に入手でき、たとえば、以下に例示する商品が挙げられる。
【0025】
<沈殿法シリカ>
Nipsilシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、Sipernatシリーズ{エボニック デグサ ジャパン株式会社、「Sipernat」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、Carplexシリーズ{DSL.ジャパン株式会社、「Carplex」はDSL.ジャパン株式会社の登録商標である。}、FINESILシリーズ{株式会社トクヤマ、「FINESIL」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、TOKUSILシリーズ{株式会社トクヤマ、「TOKUSIL」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、Zeosilシリーズ{ローディア社、「Zeosil」はロディア シミ の登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社、「MIZUKASIL」は水沢化学工業株式会社の登録商標である。}等。
【0026】
<ゲル法シリカ>
Carplexシリーズ、SYLYSIAシリーズ{富士シリシア株式会社、「SYLYSIA」は有限会社ワイ・ケイ・エフ の登録商標である。}、Nipgelシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipgel」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、MIZUKASILシリーズ{水澤化学工業株式会社、「MIZUKASIL」は水沢化学工業株式会社の登録商標である。}等。
【0027】
<熱分解法シリカ>
Aerosilシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社、「Aerosil」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、Reolosilシリーズ{株式会社トクヤマ、「Reorosil」は株式会社トクヤマの登録商標である。}、Cab−O−Silシリーズ{キャボット社、「Cab−O−Sil」はキャボットコーポレーションの登録商標である。}等。
【0028】
<溶融法シリカ>
Admafineシリーズ{アドマテックス社、「Admafine」はトヨタ自動車株式会社の登録商標である。}、Fuselexシリーズ{株式会社龍森}、デンカ溶融シリカシリーズ{電気化学工業株式会社}等。
【0029】
<結晶性合成シリカ>
CRYSTALITEシリーズ{株式会社龍森、「CRYSTALITE」は株式会社龍森の登録商標である。}、Imsilシリーズ{UNIMIN社、「Imsil」はユニミン スペシャルティ ミネラルズ インコーポレーテッドの登録商標である。 }等。
【0030】
<天然シリカ>
ミズカエースシリーズ{水沢化学工業株式会社}等。
【0031】
<火炎燃焼法アルミナ>
Aeroxide Alシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社、「Aeroxide」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、SpectrAlシリーズ{キャボット社}等。
【0032】
<焼成法アルミナ>
高純度アルミナAKPシリーズ{住友化学株式会社}、アルミナAシリーズ{日本軽金属株式会社}等。
【0033】
<酸化チタン>
タイペークシリーズ{石原産業株式会社}、酸化チタンTAシリーズ及びTRシリーズ{富士チタン株式会社}、堺化学株式会社製酸化チタン等。
【0034】
<金属水酸化物微粒子>
水酸化マグネシウムMGZシリーズ{堺化学株式会社}、水酸化マグネシウムUDシリーズ{宇部マテリアルズ株式会社}、宇部マテリアルズ株式会社製水酸化カルシウム等。
【0035】
<炭酸塩微粒子>
炭酸カルシウムCSシリーズ{宇部マテリアルズ株式会社}、炭酸カルシウムNSシリーズ及びNITOREXシリーズ{日東粉化工業株式会社}、炭酸カルシウムカルシーズシリーズ{神島化学工業株式会社}、炭酸カルシウムTPシリーズ{奥多摩工業株式会社}、炭酸カルシウムFMTシリーズ{株式会社ファイマテック}、新見化学工業株式会社製ラスカル、東洋電化工業株式会社製トヨライト、白石工業株式会社製炭酸カルシウム、神島化学工業株式会社製炭酸マグネシウム、協和化学工業株式会社製炭酸マグネシウム等。
【0036】
<層状鉱物微粒子>
竹原化学株式会社製、日本タルク株式会社製、コープケミカル株式会社製、クニミ化学株式会社製等。
【0037】
親水性無機微粒子は、二次凝集体であることが好ましい。二次凝集体とは、少なくとも2つの無機微粒子の一次粒子が凝集することによって形成された凝集粒子である。少なくとも2つの一次粒子が凝集することによって形成された二次凝集体であることは、透過型電子顕微鏡で粒子を5万〜100万倍に拡大した画像によって確認することができる。二次凝集体であると、親水性無機微粒子を疎水化剤で表面処理(疎水化処理)して、両親媒性粒子(a)を得る場合、親水性表面と疎水性表面とに分割されやすいと考えられ、得られる両親媒性粒子(a)の界面活性がさらに良好となる。
【0038】
親水性無機微粒子の一次粒子の粒子径(nm)は、界面活性の観点から、5〜30が好ましいく、さらに好ましくは10〜20である。なお、一次粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡で粒子を5万〜100万倍に拡大した画像を用い、JIS Z−8827−1:2008 粒子径解析−画像解析法−第1部:静的画像解析法によって得られた粒子の投影像に外接円相当径(粒子に外接する円の直径)の相加平均値である。
【0039】
親水性無機微粒子の二次凝集体の体積平均粒子径(μm)は、界面活性の観点から、0.2〜10が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1である。この範囲であると、親水性無機微粒子を疎水化剤で表面処理(疎水化処理)して、両親媒性粒子(a)を得る場合、親水性表面と疎水性表面とに分割されやすいと考えられ、得られる両親媒性粒子(a)の界面活性がさらに良好となる。
【0040】
二次凝集体の体積平均粒子径は、親水性無機微粒子を1重量%の濃度となるようにn−ヘキサンに分散した分散液をJIS Z8825−1:2001に準拠したレーザー回折式粒度分析計{例えば、Leeds&Northrup社製Microtracシリーズ、株式会社堀場製作所製ParticaLAシリーズ等}を用い、測定温度25±5℃で測定した後、n−ヘキサンの屈折率として1.38を、測定試料の屈折率として文献値(「A GUIDE FOR ENTERING MICROTRAC ”RUN INFORMATION”(F3)DATA」、Leeds&Northrup社作成)を用いて、50%積算体積平均粒子径として求められる。
【0041】
親水性無機微粒子を疎水化剤で表面処理(疎水化処理)して、両親媒性粒子(a)を得る場合、親水性無機微粒子を表面処理する疎水化剤としては、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、炭素数4〜28の脂肪酸、炭素数3〜36の脂肪族アルコール、炭素数12〜22の脂肪族アミン、炭素数24〜38の脂肪酸アミド及びシリコーン化合物等が使用できる。
【0042】
ハロシランとしては、炭素数1〜12のアルキル基をもつアルキルハロシラン及び炭素数6〜12のアリール基をもつアリールハロシランが含まれ、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン及びt−ブチルジメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0043】
アルコキシシランとしては、炭素数1〜12のアルキル基(メタクリロキシアルキルを含む)、アルケニル基又はアリール基と炭素数1〜2のアルコキシ基とをもつアルコキシシランが含まれ、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0045】
炭素数4〜28の脂肪酸としては、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、2−エチルエキサン酸、オレイン酸、カプリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、ウンデシレン酸、エルカ酸及びモンタン酸等が挙げられる。
【0046】
炭素数3〜36の脂肪族アルコールとしては、イソプロパノール、ノルマルブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルオクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0047】
炭素数12〜22の脂肪族アミンとしては、ドデシルアミン、ステアリルアミン及びオレイルアミン等が挙げられる。
【0048】
炭素数24〜38の脂肪酸アミドとしては、N−ラウリルオレイン酸アミド及びN,N’−エチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。
【0049】
シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、アリール変性ポリシロキサン(アリール基の炭素数6〜10)、アルキル基変性ポリシロキサン(変性アルキル基の炭素数2〜6)、水酸基変性ポリシロキサン、アミノ基変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、及びメチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0050】
ジメチルポリシロキサン、アリール基変性ポリシロキサン及びアルキル基変性ポリシロキサンとしては、25℃での動粘度が1〜10000mm/sのもの等が使用できる。
【0051】
ポリエーテル変性ポリシロキサンとしては、25℃での動粘度が1〜10000mm/sであり、HLBが2〜5のもの等が使用できる。
【0052】
HLBとは、分子中の親水基と疎水基とのバランスを表す概念であり、その値は「界面活性剤の性質と応用」(著者 刈米孝夫、発行所 株式会社幸書房、昭和55年9月1日発行)の第89頁〜第90頁に記載された「乳化試験によるHLBの測定法」により算出できる。例えば、ポリエーテル変性ポリシロキサンは、以下の試験方法により算出できる。
【0053】
<ポリエーテル変性ポリシロキサンの乳化試験によるHLBの測定法>
HLBが未知のポリエーテル変性ポリシロキサンXとHLBが既知の乳化剤Aを異なった比率で混合し、HLBが既知の油剤の乳化を行う。乳化層の厚みが最大となったときの混合比率から下記式を用いてポリエーテル変性ポリシロキサンXのHLBを算出する。
【0054】

油剤のHLB={(W×HLB)+(W×HLB)}÷(W+W
【0055】
はポリエーテル変性ポリシロキサンXと乳化剤Aの合計重量に基づく乳化剤Aの重量分率、Wはポリエーテル変性ポリシロキサンXと乳化剤Aの合計重量に基づくポリエーテル変性ポリシロキサンXの重量分率、HLBは乳化剤AのHLB、HLBはポリエーテル変性ポリシロキサンXのHLBである。
【0056】
水酸基変性ポリシロキサン、アミノ基変性ポリシロキサン及びメチルハイドロジェンジメチルポリシロキサンとしては、25℃での粘度が1〜10000mm/sであり、官能基当量が300〜8000g/molのもの等が使用できる。
【0057】
親水性無機微粒子を疎水化するのに用いる疎水化剤として、以上の他に、公知のカップリング剤(上記以外のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びジルコアルミネートカップリング剤等)等も使用できる。
【0058】
これらの疎水化剤のうち、分散安定性等の観点から、ハロシラン、シラザン、アルコキシシラン及びシリコーン化合物が好ましく、さらに好ましくはメチルハイドロジェンポリシロキサン、ハロシラン、シラザン及びアルコキシシランである。
【0059】
疎水化剤による疎水化は、公知の方法が適用でき、たとえば、以下の<疎水化方法1>〜<疎水化方法4>に記載の方法等により行うことができる。
【0060】
<疎水化方法1>
親水性無機微粒子と疎水化剤との混合物を撹拌機で撹拌しながら疎水化して、疎水化された親水性無機微粒子(以下、疎水化無機微粒子という。)を得る疎水化方法(乾式法)。
【0061】
<疎水化方法2>
親水性無機微粒子の入った撹拌機付き反応容器に、加熱、気化した疎水化剤を含む気体を導入して疎水化し、疎水化無機微粒子を得る疎水化方法(気相法)。
【0062】
<疎水化方法3>
親水性無機微粒子を溶剤(s)に分散して親水性無機微粒子溶剤分散体を得てから、引き続き親水性無機微粒子溶剤分散体を撹拌しながら、疎水化剤を加えて疎水化無機微粒子溶剤分散体を得る疎水化方法(液中法1)。
【0063】
<疎水化方法4>
親水性無機微粒子を油性成分(b)に分散して親水性無機微粒子油性成分分散体を得てから、引き続き親水性無機微粒子油性成分分散体を撹拌しながら、疎水化剤を加えて疎水化無機微粒子油性成分分散体を得る疎水化方法(液中法2)。
【0064】
<疎水化方法3>において、溶剤(s)としては、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素及び脂肪族炭化水素等が含まれる。
【0065】
アルコールとしては、炭素数1〜10のアルコール等が使用でき、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0066】
ケトンとしては、炭素数3〜6のケトン等が使用でき、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0067】
エステルとしては、炭素数4〜10のエステル等が使用でき、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0068】
エーテルとしては、炭素数4〜10のエーテル等が使用でき、エチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0069】
芳香族炭化水素としては、炭素数6〜9の芳香族炭化水素等が使用でき、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びトリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0070】
脂環式炭化水素としては、炭素数5〜10の脂環式炭化水素等が使用でき、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカン等が挙げられる。
【0071】
脂肪族炭化水素としては、炭素数5〜10の脂肪族炭化水素等が使用でき、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ノナン及びデカン等が挙げられる。
【0072】
以上の他に、塩素系溶剤(ジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルクロライド、エチルクロライド、ジクロロエタン及びテトラクロロエタン等)、石油エーテル及び石油ナフサ等も使用できる。これらの溶剤(s)のうち、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素及び脂肪族炭化水素が好ましい。
【0073】
これらの疎水化方法のうち、<疎水化方法3>及び<疎水化方法4>が好ましく、さらに好ましくは<疎水化方法4>である。これらの好ましい方法を適用すると、両親媒性粒子(a)の界面活性がさらに良好となる。これは、両親媒性粒子(a)の表面にある親水性表面と疎水性表面とが局在しやすくなるためと考えられる。
【0074】
<疎水化方法4>による疎水化を行う場合、溶剤(s)を併用してもよい。溶剤(s)を併用する場合、溶剤(s)の添加量(重量%)は、油性成分(b)の合計重量に基づいて10〜50%が好ましい。
【0075】
疎水化方法3及び4において、親水性無機微粒子溶剤分散体及び親水性無機微粒子油性成分分散体を得る方法としては、以下の<分散方法1>〜<分散方法3>等が適用できる。
【0076】
<分散方法1>
分散容器に親水性無機微粒子と溶剤(s)又は油性成分(b)とを同時に入れて均一分散する方法。
【0077】
<分散方法2>
あらかじめ親水性無機微粒子の入った分散容器に、溶剤(s)又は油性成分(b)を加えて均一分散を行う方法。
【0078】
<分散方法3>
あらかじめ溶剤(s)又は油性成分(b)の入った分散容器に、親水性無機微粒子を加えて均一分散する方法。
【0079】
これらのうち、両親媒性粒子(a)の界面活性の観点から、<分散方法1>及び<分散方法3>が好ましく、さらに好ましくは<分散方法3>である。
【0080】
分散には、公知の分散機{櫂型羽型撹拌機、高速剪断式分散機(高速回転型ホモミキサー、高圧ホモジナイザー及びディゾルバー等}、ニーダー、三本ロールミル、超音波分散機、遊星型ミキサー、3軸遊星型ミキサー、湿式媒体型分散機{ビーズミル、サンドグラインダー、コロイドミル、アトライタ(日本コークス工業株式会社製、「アトライタ」は日本コークス工業株式会社の登録商標である。)等}、垂直単軸型粉体撹拌機{ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、「ヘンシエルミキサ」は三井鉱山株式会社の登録商標。)等}、水平単軸型撹拌機(リボンミキサー等)及び垂直単複軸撹拌機(万能ミキサー、らいかい機等)等が使用できる。
【0081】
なお、遊星型ミキサーとして、容器及び/又は撹拌羽根が遊星回転運動を行う分散機であり、遊星運動を行う2枚のブレード型撹拌羽根をもつプラネタリミキサー、遊星式撹拌脱泡装置(たとえば、特開平7−289873号公報記載の撹拌・脱泡装置)等が挙げられ、3軸遊星型ミキサーとしては、遊星運動を行う2枚のブレード型撹拌羽根と少なくとも1つの遊星運動を行う小型の高速回転羽根をもつ遊星型ミキサー(たとえば、登録実用新案第3026043号)等が挙げられる。
【0082】
これらの分散機のうち、羽型撹拌機、高速剪断式分散機及び3軸遊星型ミキサーが好ましく、さらに好ましくは高速剪断式分散機及び3軸遊星型ミキサーである。これらの分散機によれば、両親媒性粒子(a)の界面活性がさらに良好となる。
【0083】
分散の温度は特に制限なく、溶剤(s)又は油性成分(b)の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、溶剤(s)を用いる場合、0〜50℃(好ましくは15〜35℃)が好ましく、油性成分(b)を用いる場合30〜150℃(好ましくは50〜120℃)が好ましい。また、分散に要する時間は、5分〜10時間が好ましく、さらに好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは15分〜3時間である。
【0084】
疎水化方法3及び4において、親水性無機微粒子の含有量(重量%)は、溶剤(s)及び油性成分(b)の合計重量に基づいて、0.1〜10(さらに好ましくは0.5〜8、特に好ましくは1〜5)が好ましい。この範囲であると、疎水化が均一にされ、界面活性がさらに良好となる。
【0085】
<疎水化方法1>〜<疎水化方法4>において、撹拌には上記の公知の分散機等が使用できる。
上記の分散機のうち、<疎水化方法1>及び<疎水化方法2>においては、遊星型混合分散機、垂直単軸型粉体撹拌機、水平単軸型撹拌機及び垂直単複軸撹拌機が好ましく、さらに好ましくは単軸型粉体撹拌機、水平単軸型撹拌機及び垂直単複軸撹拌機であり、<疎水化方法3>及び<疎水化方法4>においては、高速剪断式分散機、遊星型ミキサー及び3軸遊星型ミキサーが好ましい。
【0086】
疎水化剤の使用量(重量%)としては、親水性無機微粒子の重量に基づいて、0.5〜20が好ましく、さらに好ましくは1〜5である。この範囲であると、界面活性がさらに良好となる。
【0087】
<疎水化方法3>及び<疎水化方法4>で得られた疎水化無機微粒子溶剤分散体及び疎水化無機微粒子油性成分分散体は、そのまま用いてもよく、疎水化無機微粒子溶剤分散体及び疎水化無機微粒子油性成分分散体から溶剤(s)及び油性成分(b)を除去し、乾燥して、疎水化無機微粒子を取り出してから用いてもよい。
【0088】
溶剤(s)及び油性成分(b)の除去は、(1)加熱装置及び撹拌装置つきの減圧可能な反応容器やロータリーエバポレーター等を使用して蒸留する方法、(2)疎水化無機微粒子溶剤分散体及び疎水化無機微粒子油性成分分散体を遠心分離し、上澄みを除去する方法等の公知の方法で行うことができる。
【0089】
乾燥は、加熱乾燥(例えば30〜150℃の乾燥炉にて10〜120分加熱乾燥する)や減圧乾燥等が適用できる。これらの乾燥は公知の方法で行うことができ、遠赤外線式乾燥機、真空乾燥機、温風式乾燥機及び流動層乾燥機等を使用できる。
【0090】
溶剤(s)及び油性成分(b)を除去し、乾燥して得られた疎水化無機微粒子は解砕及び/又は分級することができる。ここで行う解砕は、乾燥によって再凝集した凝集体を解す(ほぐす)ものである(破砕とは異なる)。解砕は公知の方法で行うことができ、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ローラーミル、衝撃式粉砕機及びジェット粉砕機等を使用して、破砕が起こらないように粉砕機の回転数や圧力を適宜調整して行われる。
【0091】
疎水化無機微粒子のうち、<疎水化方法1>及び<疎水化方法2>による疎水化無機微粒子は、市場から容易に入手でき、たとえば、以下に商品等が挙げられる。
【0092】
<沈殿法シリカを疎水化した微粒子>
Nipsil SSシリーズ、Sipernat D及びCシリーズ、並びにSYLOPHOBICシリーズ{富士シリシア化学株式会社、「SYLOPHOBIC」は富士シリシア化学株式会社の登録商標である。}等。
【0093】
<熱分解法シリカを疎水化した微粒子>
Aerosil Rシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社}、Reolosil MT及びDMシリーズ{株式会社トクヤマ}等。
【0094】
<火炎燃焼法アルミナを疎水化した微粒子>
Aerosil C805{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社}、SpectrAl TAシリーズ及びTGシリーズ{キャボット社}等。
【0095】
両親媒性粒子(a)は、疎水化無機微粒子を破砕することにより得ることができる。
破砕とは、1粒の疎水化無機微粒子を、すくなとも2つの微粒子に分割することを意味し、破砕によって、無機微粒子の表面が、親水性表面(破砕によって生じた新たな表面)と疎水性表面(疎水化処理によって疎水化された表面)とに分割されるものである。
【0096】
破砕は、(1)疎水化無機微粒子を乾式破砕する方法、(2)疎水化無機微粒子分散体を湿式破砕する方法等で行うことができる。
これらの破砕方法のうち、破砕が均一に行われ、界面活性がさらに良好となる点で、湿式破砕による方法(2)が好ましい。
【0097】
湿式破砕における疎水化無機微粒子分散体としては、以下の疎水化無機微粒子分散体が使用できる。
(分散体1)疎水化無機微粒子を、水、溶剤(s)又は油性成分(b)に分散した疎水化無機微粒子分散体。
(分散体2)<疎水化方法3>で得られた疎水化無機微粒子溶剤分散体。
(分散体3)<疎水化方法4>で得られた疎水化無機微粒子油性成分分散体。
【0098】
(分散体1)において、疎水化無機微粒子と、水、溶剤(s)又は油性成分(b)との分散には、上記の分散で用いる公知の分散機等が使用でき、好ましい分散機も同じである。(分散体1)の分散方法は、前記の<分散方法1>〜<分散方法3>と同じ方法で行うことができ、好ましい方法も同じである。ただし、<分散方法1>〜<分散方法3>の「溶剤(s)又は油性成分(b)」を「水、溶剤(s)又は油性成分(b)」にそれぞれ読み替える。
【0099】
(分散体1)において、水としては、水道水、工業用水、蒸留水、イオン交換水、蒸留水、地下水、海水及び温泉水等が利用できる。
(分散体1)において、界面活性の点から、疎水化無機微粒子を溶剤(s)又は油性成分(b)に分散した疎水化無機微粒子分散体が好ましく、さらに好ましくは疎水化無機微粒子を油性成分(b)に分散した疎水化無機微粒子油性成分分散体である。
【0100】
疎水化無機微粒子分散体中の疎水化無機微粒子の割合(重量%)は、分散媒{水、溶剤(s)又は油性成分(b)}の合計重量に基づいて、0.1〜10(さらに好ましくは0.5〜8、特に好ましくは1〜5)が好ましい。この範囲であると、分散体の粘度が低く、破砕が良好に進み、界面活性がさらに良好となる。
【0101】
破砕は、公知の破砕分散機等を用いて行うことができ、破砕分散機としては、湿式媒体型粉砕分散機{ビーズミル、サンドグラインダー、コロイドミル、アトライタ(日本コークス工業株式会社製、「アトライタ」は日本コークス工業株式会社の登録商標である。)、DISPERMAT(VMA−GETAMANN GMBH社製)等}、高圧噴射型破砕分散機{ナノマイザー(吉田機械株式会社製、「ナノマイザー」はエス・ジーエンジニアリング株式会社の登録商標である。)、スターバースト(株式会社スギノマシン製、「スターバースト」は株式会社スギノマシンの登録商標である。)、ゴーリンホモジナイザー(APV社製)等}、及び高速剪断型分散機(高速回転型ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ディゾルバー及び3軸遊星ミキサー等)等が使用できる。これらのうち、湿式媒体型粉砕分散機及び高速剪断型分散機が、疎水化無機微粒子の再凝集が起こりにくく、界面活性がさらに良好となる点で好ましい。
【0102】
破砕温度は特に制限なく、疎水化無機微粒子分散体の分散媒の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、疎水化無機微粒子分散体が疎水化無機微粒子溶剤分散体である場合は、0〜50℃(好ましくは15〜35℃)で、疎水化無機微粒子油性成分分散体である場合は、30〜150℃(好ましくは50〜120℃)で行うことができる。
また、破砕時間は、5分〜10時間が好ましく、さらに好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは15分〜3時間である。
【0103】
両親媒性粒子(a)の体積平均粒子径(μm)は、0.05〜1が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5である。この範囲であると、両親媒性粒子(a)の界面活性がさらに良好となる。
【0104】
両親媒性粒子(a)の体積平均粒子径は、両親媒性粒子(a)を1重量%の濃度となるようにイソプロパノールに分散した分散液を測定試料とし、JIS Z8825−1:2001に準拠したレーザー回折式粒度分析計{例えば、Leeds&Northrup社製Microtracシリーズ、株式会社堀場製作所製ParticaLAシリーズ等}を用い、測定温度25±5℃で測定した後、イソプロパノールの屈折率として1.377を、測定試料の屈折率として1.457を用いて、50%積算体積平均粒子径として求められる。なお、湿式破砕した場合、体積平均粒子径の測定に用いる両親媒性粒子(a)は、両親媒性粒子(a)を含む分散体50gをn−ヘキサン450gと混合して生じた白色沈殿物を遠心分離にて取り出し、100℃の順風式乾燥機にて12時間乾燥することで単離することができる。
【0105】
湿式破砕した場合、両親媒性粒子(a)は、破砕後の疎水化無機微粒子分散体、疎水化無機微粒子溶剤分散体又は疎水化無機微粒子油性成分分散体から、水、溶剤(s)又は油性成分(b)を除去し、乾燥して、り出してから用いてもよい。
【0106】
水、溶剤(s)又は油性成分(b)の除去は、前記の公知の方法と同様に行うことができ、除去した後の乾燥も前記の公知の方法で同様に行うことができる。
【0107】
<油性成分(b)>
油性成分(b)としては、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、シリコーン及びポリオキシアルキレン化合物等が使用できる。
【0108】
炭化水素油としては、40℃での動粘度が0.1〜3500mm/sの炭化水素油等が使用でき、パラフィン、ポリオレフィン、ポリオレフィンを水素化した水添炭化水素、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン及びこれらの混合物が含まれる。
【0109】
パラフィンとしては、ノルマルパラフィン及びイソパラフィン等が挙げられる。
【0110】
ポリオレフィンとしては、ポリブテン、1−デセンオリゴマー及び1−デセンとエチレンとのコオリゴマー等が挙げられる。
【0111】
ポリオレフィンを水素化した水添炭化水素としては、ポリオレフィンを水素化して得られる水素化炭化水素が含まれ、水添ポリブテン及び水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0112】
アルキルベンゼンとしては、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルベンゼンが含まれ、モノアルキルベンゼン及びジアルキルベンゼン等が挙げられる。
【0113】
アルキルナフタレンとしては、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルナフタレンが含まれ、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン及びポリアルキルナフタレン等が挙げられる。
【0114】
これらの炭化水素油は、石油の蒸留精製又は溶剤精製、オレフィンモノマーの重合反応、及び有機合成反応(フィッシャー・トロプシュ法等)等によって得ることができる。
【0115】
脂肪酸としては、前記の炭素数4〜28の脂肪酸のうち、炭素数8〜28の脂肪酸(オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、カプリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、ウンデシレン酸及びモンタン酸等)等が挙げられる。
【0116】
脂肪酸アミドとしては、前記脂肪酸の酸アミド(ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエルカ酸アミド等)及びN−置換酸アミド(N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシリレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸モノメチロールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド及びN−ステアリルエルカ酸アミド等)等が挙げられる。
【0117】
脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸のエステル(ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、2,2−ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、エチレングリコール2−エチルヘキサン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールカプリン酸ジエステル、グリセリン2−ヘプチルウンデカン酸ジエステル、トリメチロールプロパン2−エチルヘキサン酸トリエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサン酸テトラエステル、グリセリン2−エチルヘキサン酸トリエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、グリセリンミリスチン酸トリエステル、グリセリン2−ヘプチルウンデカン酸トリエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル及びパルミチン酸2−ヘキシルデシル等)及び、後記高級アルコールのエステル(乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル及び2−エチルヘキサン酸セチル等)、多価アルコールの酢酸エステル(グリセリントリアセテート及びトリメチロ−ルプロパントリアセテート等)、及び低級(炭素数1〜4)アルコールの多価脂肪酸(炭素数6〜10)エステル(アジピン酸ジイソブチル、セバチン酸ジイソプロピル及びリンゴ酸ジプロピル等)等が挙げられる。
【0118】
高級アルコールとしては、炭素数12〜36の脂肪族アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−ヘプチルウンデシルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール及びミリスチルアルコール等)等が挙げられる。
【0119】
シリコーンとしては、前記のシリコーン化合物及び環状シリコーン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)等が挙げられる。
【0120】
ポリオキシアルキレン化合物としては、数平均分子量950〜4000のポリオキシプロピレングリコール等が使用できる。
【0121】
油性成分(b)としては、これらの他に、動物又は植物から抽出される物質(アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、スクアレン、スクアラン、及びその他のテルペン等)を用いることもできる。
【0122】
油性成分(b)としては、分散安定性の観点から、炭化水素油及びシリコーンが好ましい。
【0123】
これらの炭化水素油及びシリコーンは市場から容易に入手することができ、以下に商品名を例示する。
【0124】
<炭化水素油>商品名の後に続く括弧内の数字は40℃における動粘度mm/sである。
IPソルベント1016(0.5)、IPソルベント2028(2)及びIPソルベント2835(12)(出光興産株式会社);
コスモSC22(21)、コスモSP10(10)、コスモRCスピンドル油(10)、コスモRBスピンドル油(15)、コスモニュートラル150(32)、コスモピュアスピンG(21)、コスモピュアスピンE(5)、コスモホワイトP60(60)、コスモホワイトP120(120)、コスモホワイトP200(200)及びコスモホワイトP350P(250)(コスモ石油ルブリカンツ株式会社、「コスモ」は、コスモ石油株式会社の登録商標である。);
日石スーパーオイルC(93)、日石スーパーオイルD(141)、日石スーパーオイルB(54)、日石ポリブテンLV−7(12)、日石ポリブテンLV−50(110)、日石ポリブテンLV−100(200)及び日石ポリブテンLV−150(3500)(JX日鉱日石エネルギー株式会社);
スタノール43N(27)、スタノール52(56)、スタノール69(145)、スタノール35(9)及びスタノールLP35(11)(エッソ石油株式会社);
フッコールNT100(21)、フッコールNT150(28)、フッコールNT200(39)、フッコールNT60(10)及びフッコールSTマシン(9)(富士興産株式会社、「フッコール」は新日本石油株式会社の登録商標である。);
パールリーム4(3)、パールリームEX(10)及びパールリーム6(20)(日油株式会社製、「パールリーム」は日油株式会社の登録商標である。);
エクソールシリーズ及びアイソパーシリーズ(エクソン モービル ケミカル社);
シェルゾールシリーズ(シェル ケミカル社);並びに
ニッサンポリブテン及びNAソルベントシリーズ(日油株式会社製、「ニッサン」は日油株式会社の登録商標である。)等。
【0125】
<ジメチルポリシロキサン>
KF−96−10cs、KF−96−20cs、KF−96−30cs、KF−96−50cs、KF−96−100cs、KF−96−200cs、KF−96−300cs、KF−96−350cs、KF−96−500cs、KF−96−1、000cs、KF−96−3,000cs、KF−96−5,000cs、KF−96H−6,000cs、KF−96H−1万cs、KF−96H−12,500cs、KF−96H−3万cs、KF−96H−5万cs、KF−96H−6万cs及びKF−96H−10万cs{信越化学工業株式会社;商品名の終り(csの直前)に記載されている数字は動粘度を表し、例えば、「10」は10mm/sである。};
SH200 C Fluid 10cs、SH200 C Fluid 20cs、SH200 C Fluid 50cs、SH200 C Fluid 100cs、SH200 C Fluid 200cs、SH200 C Fluid 350cs、SH200 C Fluid 500cs、SH200 C Fluid 1,000cs、SH200 C Fluid 3,000cs、SH200 C Fluid 5,000cs、SH200H C Fluid 1万cs、SH200H C Fluid 1.25万cs、SH200H C Fluid 3万cs、SH200H C Fluid 6万cs及びSH200H C Fluid 10万cs(東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製;商品名の終り(csの直前)に記載されている数字は動粘度を表し、例えば、「10」は10mm/sである。);並びに
TSF451−10、TSF451−20、TSF451−30、TSF451−50、TSF451−100、TSF451−200、TSF451−300、TSF451−350、TSF451−500、TSF451−1000、TSF451−1500、TSF451−2000、TSF451−3000、TSF451−5000、TSF451−6000、TSF451H−1M、TSF451H−12500、TSF451H−2M、TSF451H−3M、TSF451H−5M、TSF451H−6M及びTSF451H−10M(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;商品名の終りに記載されている数字は動粘度を表し、例えば、「10」は10mm/sである。なお、Mは万を表し、たとえば1Mは1万mm/sである。)等。
【0126】
本発明の油性分散体は、以下の<製造方法1>〜<製造方法3>等の方法で得ることができる。
【0127】
<製造方法1>
両親媒性粒子(a)を油性成分(b)に分散する方法。
【0128】
<製造方法2>
疎水化無機微粒子油性成分分散体を破砕して、両親媒性粒子(a)と油性成分(b)とを含む分散液を得た後、油性成分(b)を加えるか、又は濃縮することにより濃度調整する方法。
【0129】
<製造方法3>
疎水化無機微粒子油性成分分散体を破砕して、両親媒性粒子(a)と油性成分(b)とを含む分散液を得た後、この分散液をそのまま使用する方法。
【0130】
油性成分の除去、濃縮は、加熱装置及び撹拌装置つきの減圧可能な反応容器やロータリーエバポレーター等を使用する方法等の公知の方法で行うことができる。
【0131】
これらの製造方法のうち、<製造方法3>が好ましく、さらに好ましくは親水性無機微粒子を油性成分(b)に分散して親水性無機微粒子油性成分分散体を得る分散工程と、続いて、親水性無機微粒子油性成分分散体中に分散された親水性無機微粒子を疎水化して疎水化無機微粒子油性成分分散体を得る疎水化工程と、疎水化無機微粒子油性成分分散体に含まれる疎水化無機微粒子を破砕して両親媒性粒子(a)を得る破砕工程を含む製造方法である。
【0132】
本発明の油性分散体において、両親媒性粒子(a)の含有量(重量%)は、油性成分(b)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.5〜8、特に好ましくは1〜5である。この範囲であると、分散安定性がさらに良好となる。
【0133】
油性分散体は、界面活性剤と同様に機能し、懸濁・乳化重合用分散安定剤、繊維工業用分散安定剤、インク用分散安定剤、塗料用分散安定剤、プラスチック用分散安定剤、農薬工業用分散安定剤等として用いることができる。特に着色用、導電用等の機能性顔料微粒子等の分散安定性に優れる。そのため、インク用、塗料用又はプラスチック用の分散安定剤として好ましく用いることができる。
【0134】
本発明の分散安定剤には、その効果を損なわない範囲において、他の成分(たとえば、希釈剤、抗菌剤、光安定剤及び粘度調整剤等)を配合できる。
【0135】
<顔料分散組成物>
本発明の顔料分散組成物に含まれる顔料微粒子(c)としては、親水性顔料微粒子及び疎水性顔料微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれ、高分子微粒子、有機顔料微粒子、親水性無機顔料微粒子及び疎水性無機顔料微粒子が使用できる。
【0136】
高分子微粒子としては、親水性高分子微粒子{ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、キトサン、セルロース又はアルギン酸塩からなる微粒子等}、及び疎水性高分子微粒子{ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、芳香族高分子(ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、又はフェノキシ樹脂からなる微粒子等}等が含まれる。
【0137】
有機顔料微粒子としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料及びキノフタロン顔料等からなる微粒子等が含まれる。
【0138】
親水性無機顔料微粒子としては、前記の親水性無機微粒子、及び金属微粒子(金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、及びチタン等からなる微粒子)等が含まれる。
【0139】
疎水性無機顔料微粒子としては、前記の親水性無機微粒子を疎水化した疎水化無機微粒子、及びカーボンブラックからなる微粒子等が含まれる。なお、親水性無機微粒子の疎水化は、前記の公知の疎水化方法で行うことができる。
【0140】
本発明の顔料分散組成物に含まれる顔料微粒子(c)の形状に制限はなく、顔料分散組成物の用途に応じて適宜選択される。例えば、塗料やプラスチックの着色用に用いられる場合は、不定形又はフレーク状の形状が、導電性付与用に用いられる場合は、針状の形状が好ましく用いられる。
顔料微粒子(c)の大きさは、顔料分散組成物の用途に応じて適宜選択されるが、分散安定性の観点から、顔料微粒子(c)の体積平均粒子径(μm)が、0.01〜20が好ましい。
【0141】
本発明の顔料分散組成物に含まれる希釈剤(d)としては、前記の溶剤(s)及び前記の油性成分(b)と同じものを使用でき、顔料分散組成物の用途に応じて適宜選択される。希釈剤のうち、水系塗料や水系インクに適用する場合、アルコールが好ましく、非水系塗料や非水系インクに適用する場合、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び油性成分(b)が好ましい。
【0142】
本発明の顔料分散組成物に含まれる油性分散体の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)及び希釈剤(d)の合計重量に基づいて、5〜50が好ましい。
【0143】
本発明の顔料分散組成物に含まれる顔料微粒子(c)の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)、及び希釈剤(d)の合計重量に基づいて、0.1〜20が好ましい。
【0144】
本発明の顔料分散組成物に含まれる希釈剤(d)の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)、及び希釈剤(d)の合計重量に基づいて、40〜90が好ましい。
【0145】
本発明の顔料分散組成物には、必要に応じて他の添加剤(酸化防止剤、光安定剤及び粘度調整剤等)を含むことができる。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が含まれる。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が含まれる。粘度調整剤としてはビスステアリン酸アマイド等が含まれる。
【0146】
他の添加剤を含む場合、これらの添加量(重量%)は、油性分散体、顔料微粒子(c)及び希釈剤(d)の合計重量に基づいて、それぞれ、1〜30が好ましい。
【0147】
本発明の顔料分散組成物は、油性分散体、顔料微粒子(c)、希釈剤(d)及び必要に応じて他の添加剤を加えて、(顔料分散方法1)〜(顔料分散方法3)等の通常の方法で混合分散することにより製造される。
【0148】
(顔料分散方法1)
分散機に顔料微粒子(c)、希釈剤(d)及び必要に応じて他の添加剤を加えて混合分散した後、油性分散体を加えながらさらに混合分散する方法。
【0149】
(顔料分散方法2)
油性分散体、顔料微粒子(c)、希釈剤(d)及び必要に応じて他の添加剤を分散機で混合分散する方法。
【0150】
(顔料分散方法3)
油性分散体と顔料微粒子(c)を分散機で混合した後、希釈剤(d)及び必要に応じて他の添加剤添加剤を加え混合分散する方法。
【0151】
これらの顔料分散方法のうち、分散安定性の観点から、(顔料分散方法2)が好ましい。
【0152】
顔料分散組成物の製造に用いる分散機としては、前記の公知の公知の破砕分散機と同じものが使用でき、好ましいものも同様である。
【0153】
前記の顔料分散方法において、分散温度は特に制限なく希釈剤(d)の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、希釈剤(d)として油性成分(b)を用いた場合は、20〜150℃(好ましくは30〜100℃)で行うことができる。また、顔料微粒子(c)の分散に要する時間は、5分〜10時間が好ましく、さらに好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは15分〜3時間である。
【0154】
本発明の顔料分散組成物は、顔料分散性が良好であり、プラスチック用着色剤、プラスチック用改質剤、塗料用着色剤、塗料用導電剤、印刷インク、電子ペーパー用表示材、及び電子写真用液体トナー等に用いることができる。
【0155】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物に含まれる顔料微粒子(c)としては、前記の顔料分散組成物に含まれる顔料微粒子(c)と同じものが使用できる。
【0156】
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(r)としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂及びフッ素樹脂等が含まれる。
【0157】
アクリル樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチルエステル)、ポリメタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体及びこれらの混合物等が含まれる。
【0158】
ポリエステル樹脂としては、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボキシレート樹脂、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボキシレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂及びこれらの混合物等が含まれる。
【0159】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体及びこれらの混合物等が含まれる。
【0160】
スチレン樹脂としては、PS(ポリスチレン)、スチレン/メタクリル酸エステル共重合体、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)樹脂、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)樹脂、ASA(アクリロニトリル/スチレン/アクリルゴム共重合体)樹脂)及びこれらの混合物等が含まれる。
【0161】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン9T(Tはテレフタル酸)、ナイロン66/6、ナイロン66/6T、ナイロン66/6I(Iはイソフタル酸)、ナイロン6/6T、ナイロン6/6T、ナイロン12/6T、ナイロン6T/6I、ナイロン66/6T/6I、ナイロン66/6/6T、ナイロン66/6/6I、ナイロン6T/M5T(M5はメチルペンタジアミン)、ポリメタキシリレンアジパミド及びこれらの混合物等が含まれる。
【0162】
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂等が含まれ、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が含まれる。
【0163】
熱可塑性樹脂(r)としては、上記の他に、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノキシ樹脂等も使用でき、合成ゴム、天然ゴムもしくはシリコーン等を添加した熱可塑性樹脂であってもよい。
【0164】
本発明の樹脂組成物において、油性分散体の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)及び熱可塑性樹脂(r)の合計重量に基づいて、4〜35が好ましい。
【0165】
本発明の樹脂組成物において、顔料微粒子(c)の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)及び熱可塑性樹脂(r)の合計重量に基づいて、0.1〜15が好ましい。
【0166】
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(r)の含有量(重量%)は、分散安定性の観点から、油性分散体、顔料微粒子(c)及び熱可塑性樹脂(r)の合計重量に基づいて、55〜95が好ましい。
【0167】
本発明の樹脂樹脂組成物には、必要により、他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、可塑剤、離型剤、ブロッキング防止剤及び安定剤等が挙げられる。
他の添加剤を用いる場合、これらの添加量(重量%)は、油性分散体、顔料微粒子(c)及び熱可塑性樹脂(r)の合計重量に基づいて、それぞれ、1〜30が好ましい。
【0168】
可塑剤としては、公知の可塑剤等が使用でき、フタル酸エステル(フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルベンジル及びフタル酸ジイソデシル等)、脂肪族2塩基酸エステル(アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル及びセバシン酸−2−エチルヘキシル等)、トリメリット酸エステル(トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリメリット酸トリオクチル等)、脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル等)、脂肪族リン酸エステル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等)、芳香族リン酸エステル(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート及びトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等)、ハロゲン脂肪族リン酸エステル(トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(βークロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート及びトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等)等が挙げられる。
【0169】
離型剤としては公知の離型剤等が使用でき、フッ素化合物型離型剤(トリパーフルオロオクチルホスフェート及びトリパーフルオロドデシルホスフェート等)、シリコーン化合物型離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン及びカルボキシル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル型離型剤(ブチルステアレート、硬化ひまし油及びエチレングリコールモノスレアレート等)、脂肪族酸アミド型離型剤(オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド及びエチレンジアミンのジステアリン酸アミド等)、金属石鹸(ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛等)、天然又は合成ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及びポリブロピレンワックス等)等が挙げられる。
【0170】
ブロッキング防止剤としては特に限定されず、公知の無機系ブロッキング防止剤及び有機系ブロッキング防止剤等を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としては無機親水性無機微粒子、及び粒子径10μm以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂及びエポキシ系樹脂等)微粒子及び粒子径10μm以下の熱可塑性樹脂微粒子等が挙げられる。
【0171】
安定剤としては、フェノール系酸化防止剤{2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等}、リン系酸化防止剤{リフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等}、硫黄系酸化防止剤(ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等)、ヒンダードアミン系安定剤及び高級脂肪酸の金属塩等の公知の安定剤が挙げられる。
【0172】
本発明の樹脂組成物は、油性分散体、顔料微粒子(c)、熱可塑性樹脂(r)及び必要に応じて他の添加剤を加えて溶融混練することで製造することができる。
溶融混練する方法としては、以下の溶融混練方法等が使用できる。
【0173】
<溶融混練方法1>
顔料微粒子(c)及び熱可塑性樹脂(r)を粉体混合機で混合した後、油性分散体及び必要に応じて他の添加剤を加えながら混練機で溶融混練する方法。
【0174】
<溶融混練方法2>
分散機にて油性分散体に顔料微粒子(c)を分散した後、熱可塑性樹脂(r)及び必要に応じて他の添加剤を加えて混練機で溶融混練する方法。
【0175】
なお、<溶融混練方法2>において、分散機にて油性分散体と顔料微粒子(c)との分散を行う代わりに、前記の本発明の顔料分散組成物を使用してもよい。
【0176】
混練機としては、単軸押出機、二軸押出機、ロールミル、ニーダー、及びプラストミル(東洋精機株式会社製、プラストミルは東洋精機株式会社の登録商標である。)バンバリー型ミキサー(バンバリーは、フアレル コ−ポレ−シヨンの登録商標である。)等が挙げられる。
【0177】
混練温度は熱可塑性樹脂(r)の融点及び軟化点に応じて適宜選択されるが、例えばポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂及びポリエステル樹脂であれば、120〜260℃で行うことができる。
【0178】
本発明の樹脂組成物は、混練後に成形、冷却して樹脂成形体として用いることができる。成形後の形状は目的に応じて任意の形状とすることができ、成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、成形体の目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の成型方法を選択できる。
【0179】
本発明の樹脂組成物は、顔料微粒子の分散性に優れる。そのため、本発明の樹脂組成物を成形することで、事務機器、家電、電子部品、並びにサニタリー用品の筐体、及び建材等に広く用いることができる。
【実施例】
【0180】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0181】
<<油性分散体の製造>>
実施例1〜11、比較例1及び2で使用した親水性無機微粒子の体積平均粒子径は以下の方法で測定した。
【0182】
<親水性無機微粒子の体積平均粒子径>
測定試料(親水性無機微粒子)を1重量%の濃度となるようにn−ヘキサンに超音波分散機(Hiel−scher GmbH製、ULTRASONIC PROCESSOR MODEL UP400S、以下同様。)を用いて出力60%にて1分間分散した後、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、Partica LA−950)にて測定した。
【0183】
実施例1〜11、比較例1〜4で製造又は使用した疎水化無機微粒子及び両親媒性粒子(a)の体積平均粒子径は、「n−ヘキサン」を「イソプロパノール」に変更したこと以外、<親水性無機微粒子の体積平均粒子径>と同様にして測定した。
【0184】
実施例1〜11で得た両親媒性微粒子及び比較例1〜4の疎水化無機微粒子のM値は以下の方法で測定した。
【0185】
<M値の測定>
測定試料(実施例1〜11で得た両親媒性微粒子又は比較例1〜3の疎水化無機微粒子)0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLのイオン交換水に添加して、ビーカー内の液体をマグネティックスターラーで常時撹拌しながら、この中にメタノール(関東化学株式会社、試薬特級、以下同様。)をビュレットからビーカーの壁を伝わせながら徐々に滴下し、測定試料の全量がイオン交換水に懸濁するまで、メタノールの滴下を続けた。測定試料の全量が懸濁された時点でのメタノールの滴下量(g)を記録し、下記式からM値を算出した。
【0186】
(M値)=100×(メタノールの滴下量:g)/{(メタノールの滴下量:g)+50}
【0187】
<実施例1>
油性成分(b1){40℃での動粘度1mm/sのイソパラフィン(出光興産株式会社製、商品名 IPソルベント1620)}100部と親水性無機微粒子(p1){熱分解法シリカ、商品名 Aerosil 130(一次粒子径16nm、二次凝集粒子径0.5μm、BET法による比表面積130m/g)}5部を減圧装置及び加熱装置付き3軸プラネタリミキサ(浅田鉄工株式会社製プラネタリディスパ)に入れ、減圧下(およそ5kPa)で60分間、撹拌・分散(低速撹拌羽根;50rpm、高速撹拌羽根;3000rpm)して、親水性無機微粒子油性成分分散体(hd1)を得た。
【0188】
続いて常圧(およそ101kPa)にて撹拌(低速撹拌羽根;50rpm、高速撹拌羽根;3000rpm)を継続しながら、疎水化剤(m1){ヘキサメチルジシラザン(信越化学工業株式会社製、商品名 HMDS−3)}0.15部(親水性無機微粒子の重量に対して3重量%)を添加し、60分間撹拌を継続することにより疎水化処理を行い、疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd1)を得た。
【0189】
その後、常圧(およそ101kPa)にて撹拌(低速撹拌羽根;50rpm、高速撹拌羽根;4000rpm)を継続しながら100℃まで加熱し、その温度で60分間撹拌してから、撹拌を継続したまま室温(25±3℃、以下同じである。)まで冷却することにより、破砕処理して、両親媒性粒子(a1)を含む本発明の油性分散体(q1)を得た。
【0190】
油性分散体(q1)5gとn−ヘキサン(関東化学株式会社、試薬1級)100gとを容量100mLのふた付きガラス容器に入れ、30秒間手で上下に振ることで撹拌した後、6時間、室温下で静置し、透明な上澄み層をスポイトで除去した。続いて、残留した下層を容量40mLのサンプルチューブに入れて遠心分離(回転数;4000rpm、時間;10分間)にて固液分離して沈殿物を取り出し、130±5℃に温調した温風式乾燥機にて3時間加熱、乾燥して両親媒性粒子(a1)を得た。
両親媒性粒子(a1)のM値は13、体積平均粒子径は0.2μmであった。
【0191】
<実施例2>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b2){40℃での動粘度10mm/sの水添ポリブテン(日油株式会社製、商品名 パールリームEX)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p2){熱分解法シリカ、商品名 Aerosil 50(一次粒子径30nm、二次凝集粒子径0.4μm、BET法による比表面積50m2/g)}8部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m2){メチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名 KBM−13)}0.4部(親水性無機微粒子の重量に対し5重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の油性分散体(q2)及び両親媒性粒子(a2)を得た。
両親媒性粒子(a2)のM値は15、体積平均粒子径は0.1μmであった。
【0192】
<実施例3>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b3){40℃での動粘度20mm/sの流動パラフィン(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製、商品名 コスモホワイトP120)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p3){熱分解法シリカ、商品名 Aerosil 300(一次粒子径7nm、二次凝集粒子径0.7μm、BET法による比表面積300m/g)}1部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m1)0.01部(親水性無機微粒子の重量に対し1重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の油性分散体(q3)及び両親媒性粒子(a3)を得た。両親媒性粒子(a3)のM値は5、体積平均粒子径は0.3μmであった。
【0193】
<実施例4>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b4){40℃での動粘度141m/sの鉱物油(JX日鉱日石エネルギー株式会社製、商品名 日石スーパーオイルD)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p4){熱分解法シリカ、商品名 HDK T40(一次粒子径5nm、二次凝集粒子径0.9nm、BET法による比表面積400m/g)}7部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m3){デシルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名 KBM−3103C}0.5部(親水性無機微粒子の重量に対し7重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の油性分散体(q4)及び両親媒性粒子(a4)を得た。両親媒性粒子(a4)のM値は20、体積平均粒子径は0.05μmであった。
【0194】
<実施例5>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b5){40℃での動粘度9mm/sの流動パラフィン(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製、商品名 コスモホワイトP60)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p5){熱分解法シリカ、商品名 HDK T125(一次粒子径15nm、二次凝集粒子径0.6nm、BET法による比表面積125m/g)5部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m1)0.1部(親水性無機微粒子の重量に対し2重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の油性分散体(q5)及び両親媒性粒子(a5)を得た。両親媒性粒子(a5)のM値は7、体積平均粒子径は0.2μmであった。
【0195】
<実施例6>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b6){25℃での動粘度50mm/sのジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名 KF−96−50cs)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p2)10部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m3)0.07部(親水性無機微粒子の重量に対し0.7重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の油性分散体(q6)及び両親媒性粒子(a6)を得た。両親媒性粒子(a6)のM値は1、体積平均粒子径は0.5μmであった。
【0196】
<実施例7>
油性成分(b7){40℃での動粘度50mm/sの流動パラフィン(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製、商品名 コスモホワイトP260)}100部と親水性無機微粒子(p6){燃焼法シリカ、商品名 Aerosil 200(一次粒子径12nm、二次凝集粒子径0.6μm、BET法による比表面積200m/g)}0.5部を加熱装置付きステンレス製混合容器に入れ、直径約4cmののこぎり歯状ディスクインペラーを装着した高速回転遠心放射型撹拌機(プライミクス株式会社製、T.K.ホモミクサー)を用いて常圧(およそ101kPa)にて4000rpmで60分間、撹拌・分散して分散工程を行った。続いて撹拌を継続しながら、疎水化剤(m1)0.05部(親水性無機微粒子の重量に対して10重量%)を添加し、続いて撹拌を60分間継続した後、撹拌下で100℃まで加熱し、その温度で撹拌を60分間維持して疎水化工程を行い、撹拌を継続したまま室温まで冷却することにより、本発明の油性分散体(q7)を得た。
「油性分散体(q1)5g」を「油性分散体(q7)5g」に変更したこと以外、実施例1と同様にして得た両親媒性粒子(a7)のM値は20、体積平均粒子径は0.1μmであった。
【0197】
<実施例8>
「油性成分(b7)」を「油性成分(b8){25℃での動粘度2mm/sのジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名 KF−96L−2cs)}」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p6)0.5部」を「親水性無機微粒子(p2)10部」に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の油性分散体(q8)及び両親媒性粒子(p8)を得た。両親媒性粒子(p8)のM値は1、体積平均粒子径は1μmであった
【0198】
<実施例9>
「油性成分(b7)」を「油性成分(b4)」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p6)0.5部」を「親水性無機微粒子(p5)7部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.05部」を「疎水化剤(m1)0.1部(親水性無機微粒子の重量に対して1.4重量%)」に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の油性分散体(q9)及び両親媒性粒子(p9)を得た。両親媒性粒子(p9)のM値は20、体積平均粒子径は0.05μmであった
【0199】
<実施例10>
「油性成分(b1)」を「油性成分(b4)」に変更したこと、「親水性無機微粒子(p1)5部」を「親水性無機微粒子(p7){沈降法シリカNipsil AY−200(一次粒子径 10nm、二次凝集体の粒子径 2μm、BET法による比表面積 300m/g)}10部」に変更したこと、「疎水化剤(m1)0.15部」を「疎水化剤(m2){メチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名 KBM−13)}2部(親水性無機微粒子の重量に対し20重量%)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd10)を得た。
【0200】
続いて、疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd10)200mLを粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mLを充填した湿式媒体型粉砕機{DISPERMAT SL−C−12(VMA−GETAMANN GMBH社製、以下同様}にてローター回転数4000rpmにて15分間破砕処理して、両親媒性粒子(a10)を含む本発明の油性分散体(q10)を得た。
【0201】
続いて、油性分散体(q10)を実施例1と同様に遠心分離、乾燥して両親媒性粒子(a10)を得た。
両親媒性粒子(a6)のM値は35、体積平均粒子径は0.5μmであった。
【0202】
<実施例11>
親水性無機微粒子(p8){沈降法シリカNipsil ER(一次粒子径 30nm、二次凝集体の粒子径 11μm、BET法による比表面積 100m/g)}15部をヒーター付きヘンシェルミキサー(株式会社三井三池製作所製、以下同様。)に入れ、低速撹拌(750rpm)しながら、疎水化剤(m4){25℃での動粘度20mm/sのメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名 KF−99)}0.08部(親水性無機微粒子の重量に対して0.5重量%)を噴霧した。次いでヘンシェルミキサーを常温(約25℃、以下同じ)にて高速回転(2000rpm)を15分間行い、均一に混合した。次いで高速回転を維持したままヒーターでヘンシェルミキサーを加熱し、200℃にて3時間加熱乾燥処理を行い、疎水化無機微粒子(mp11)を得た。
【0203】
疎水化無機微粒子(mp11)15部と油性成分(b4)100部を櫂型羽型撹拌機にて25±3℃にて15分間撹拌して、疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd11)を得た。
【0204】
疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd11)200mLを粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mLを充填した湿式媒体型粉砕機{DISPERMAT SL−C−12(VMA−GETAMANN GMBH社製、以下同様}にてローター回転数4000rpmにて60分間破砕処理して、両親媒性粒子(a11)を含む本発明の油性分散体(q11)を得た。
【0205】
続いて、油性分散体(q7)を実施例1と同様に遠心分離、乾燥して両親媒性粒子(a7)を得た。
両親媒性粒子(a7)のM値は3、体積平均粒子径は1μmであった。
【0206】
<比較例1>
親水性無機微粒子(p7)100部をヒーター付きヘンシェルミキサーに入れ、低速撹拌(750rpm)しながら、疎水化剤(m4)8部を噴霧した。次いでヘンシェルミキサーを20〜25℃の常温にて高速回転(2000rpm)を15分間行い、均一に混合した。次いでヒーターでヘンシェルミキサーを加熱し、230℃にて3時間加熱処理を行ない、疎水化無機微粒子(hp1)を得た。続いて、疎水化無機微粒子(hp1)15部と油性成分(b2)100部を櫂型羽型撹拌機(ヤマト科学株式会社製、スリーワンモータBL1200、以下、同様)にて25±3℃にて15分間撹拌して、比較用の分散体(hq1)を得た。
なお、疎水化無機微粒子(hp1)のM値は50、体積平均粒子径は11μmであった。
【0207】
<比較例2>
実施例4で得た疎水化無機微粒子油性成分分散体(pd4)を櫂型羽型撹拌機にて25±3℃にて15分間撹拌して、比較用の分散体(hq2)を得た。
比較用の分散体(hq4)を実施例1と同様に遠心分離、乾燥して得られた比較用の疎水化無機微粒子(hp2)のM値は50、体積平均粒子径は1μmであった。
【0208】
<比較例3>
疎水化無機微粒子(hp3){疎水化熱分解法シリカ、商品名 AerosilR976}10部とエタノール90部を櫂型羽型撹拌機にて25±3℃にて15分間撹拌して、比較用の分散体(hq3)を得た。
なお、疎水化無機微粒子(hp3)のM値は40、体積平均粒子径は0.3μmであった。
【0209】
<比較例用4>
「エタノール90部」を「油性成分(b5)90部」に変更したこと以外、比較例3と同様にして、比較用の分散体(hq4)を得た。
【0210】
実施例1〜11で得た両親媒性粒子(a1〜a11)1部をイソプロパノール99部に超音波分散機(heilscher社製 UP400)を用いて出力70%にて1分間分散して得た1重量%の分散液0.02gを、イオン交換水5mLとn−ヘキサン5mLとの入った試験管に加えて60分間静置したところ、イオン交換水とn−ヘキサンとの界面に両性媒体粒子の均一な集合層が形成され、その上層と下層は両親媒性粒子を含まない清浄な層であった。このことから、粒子表面が親水性表面と疎水性表面とに二分割されていると考えられる。
【0211】
比較例1〜4で用いた疎水化無機微粒子(hp1〜hp3)1部をイソプロパノール99部に超音波分散機を用いて出力70%にて1分間分散して得た1重量%の分散液0.02gを、イオン交換水5mLとn−ヘキサン5mLとの入った試験管に加えて60分間静置したところ、粒子はn−ヘキサン層に分散してn−ヘキサン層全体が白濁し、2時間後にはイオン交換水とn−ヘキサンとの界面に疎水化無機微粒子の凝集塊が生じた。このことから、粒子表面が親水性表面と疎水性表面とに二分割されていないと考えられる。
【0212】
<<顔料分散組成物の作成>>
<実施例12〜24、比較例5〜8>
表1又は表2に記載した各成分を一括で内径40mm、容量170mLのガラス容器に入れ、のこぎり歯状ディスクインペラーを装着したホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G タイテック(株)製、以下、同様)にて4000rpmにて25±3℃にて15分間撹拌して、本発明の顔料分散組成物(cd1〜cd14)及び比較用の顔料分散組成物(hcd1〜hcd4)を調製した。
【0213】
なお、表1及び表2中の各成分に対応する数値は重量部を表し、「顔料微粒子(c1)」は酸化チタンからなる親水性無機顔料微粒子(堺化学工業株式会社製、商品名 R−680)を、「顔料微粒子(c2)」は、カーボンブラックからなる疎水性無機顔料微粒子(三菱化学株式会社製、MA−100)を、「顔料微粒子(c3)」は、アントラキノン系顔料からなる有機顔料微粒子(三菱化学株式会社製、商品名 ダイアレジン ブルーK)を、「顔料微粒子(c4)」は、結晶性セルロースからなる高分子微粒子(Alfa Aesar社製、商品名 Cellulose,Microcrystalline)を、「希釈剤(d1)」は流動イソパラフィン(エクソンモービルケミカル社製、商品名 アイソパーG)を、「希釈剤(d2)」は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダイセル化学工業株式会社製、商品名 MMPG)を表す。
【0214】
<顔料分散状態の観察>
実施例12〜24、比較例5〜8で得た顔料分散組成物について、静置後1時間及び静置後12時間での顔料分散状態(顔料微粒子の凝集の程度)を光学顕微鏡(400倍)を用いて目視観察した。静置後1時間における顔料分散状態を初期分散性とし、また、静置後12時間における顔料分散状態を分散安定性とし、それぞれを次の基準で判別し、結果を表1及び表2に記載した。
【0215】
採点基準
凝集がない ; ◎
凝集がわずかにある ; ○
凝集が非常に多くある; ×
【0216】
【表1】

【0217】
【表2】


【0218】
本発明の顔料分散組成物(cd1〜cd13)は、比較用の顔料分散組成物(hcd1〜hcd4)に比較して、顔料微粒子の初期分散性及び分散安定性に優れていることを確認できた。実施例のうち、親水性無機微粒を油性成分へ分散した後、疎水化処理及び破砕処理を行った本発明の顔料分散組成物(cd1〜cd10)は、分散安定性に著しく優れていた。これは、顔料微粒子に吸着した両親媒性粒子が顔料微粒子の凝集を解す働きをし、その後も顔料微粒子に吸着した両親媒性粒子が顔料微粒子同士が凝集することを防止しているためと推定される。
【0219】
<<樹脂組成物の作成>>
<実施例25〜37、比較例9〜12>
表3又は表4に記載した各成分を一括でラボプラストミルR250ミキサー(東洋精機社製)に入れ、230℃、30rpm、10分の条件で溶融混練して本発明の樹脂組成物(cr1〜cr13)及び比較用の樹脂組成物(hcr1〜hcr4)を調製した。
【0220】
なお、表3及び表4中の各成分に対応する数値は重量部を表し、「顔料微粒子(c1)」、「顔料微粒子(c2)」、「顔料微粒子(c3)」、及び「顔料微粒子(c4)」は、表1と同じである。「熱可塑性樹脂(r1)」はスチレン/メタクリル酸エステル共重合体(三洋化成工業株式会社製、商品名 ハイマーSB−75)を、「熱可塑性樹脂(r2)」は、結晶性ポリエステル樹脂(ダイセル化学工業株式会社製、商品名 プラクセルH1P)を表す。
【0221】
<顔料分散状態の観察>
実施例25〜37、比較例9〜12で得た樹脂組成物を回転式ミクロトームを用いて厚さ10μmにスライスし、得られた切片の断面を光学顕微鏡(400倍)で目視観察し、顔料微粒子の分散性を顔料微粒子の凝集の程度を次の基準で判別し、表3及び表4に記載した。
【0222】
採点基準
凝集がない ; ◎
凝集がわずかにある ; ○
凝集が非常に多くある; ×
【0223】
【表3】

【0224】
【表4】


【0225】
本発明の樹脂組成物(cr1〜cr13)は、比較用の樹脂組成物(hcr1〜hcr4)に比較して、顔料微粒子の分散性に優れていることを確認できた。これは、顔料微粒子に吸着した両親媒性粒子が顔料微粒子の凝集を解す働きをしているためと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明の油性分散体は、顔料微粒子の分散性及び安定性に優れる。したがって、着色用、導電用等の機能性顔料微粒子等の分散安定剤として好適であり、懸濁・乳化重合用分散安定剤、繊維工業用分散安定剤、インク用分散安定剤、塗料用分散安定剤、プラスチック用分散安定剤、農薬工業用分散安定剤等として利用できる。特にインク用、塗料用、及びプラスチック用の分散安定化剤として好適である。
【0227】
本発明の顔料分散組成物は、顔料微粒子の分散安定性が高く、プラスチック用着色剤、プラスチック用改質剤、塗料用着色剤、塗料用導電剤、印刷インク、電子ペーパー用表示材、及び電子写真用液体トナー等に用いることができる。
【0228】
本発明の樹脂組成物は、顔料微粒子の分散性が高く、本発明の樹脂組成物を成形することで、事務機器、家電、電子部品、並びにサニタリー用品の筐体、及び建材等に広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性粒子(a)と油性成分(b)とを含む油性分散体であって、
両親媒性粒子(a)が、親水性表面と疎水性表面とを有する無機微粒子であることを特徴とする油性分散体。
【請求項2】
請求項1に記載された油性分散体を製造する方法であって、
親水性無機微粒子を油性成分(b)に分散して親水性無機微粒子油性成分分散体を得る分散工程;
親水性無機微粒子油性成分分散体中に分散された親水性無機微粒子を疎水化して疎水化無機微粒子油性成分分散体を得る疎水化工程;及び
疎水化無機微粒子油性成分分散体に含まれる疎水化無機微粒子を破砕して両親媒性粒子(a)を得る破砕工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載された油性分散体を含んでなることを特徴とする分散安定剤。
【請求項4】
請求項1に記載された油性分散体と、顔料微粒子(c)と、希釈剤(d)とを含むことを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の油性分散体と、顔料微粒子(c)と、熱可塑性樹脂(r)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−140529(P2012−140529A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293918(P2010−293918)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】