両面パイル２重織タオル体
【課題】 リバーシブル使用においても表裏から紋様が正像として識別され使い勝手や高級感の向上とコスト低減を図る。
【解決手段】 第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を結合経糸４により積層状態に一体化してなり、第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３にそれぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様５、６が織成される。
【解決手段】 第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を結合経糸４により積層状態に一体化してなり、第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３にそれぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様５、６が織成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、２層の両面パイルタオル地からなり、表裏面においてそれぞれ正像として識別される凸紋様を織成してなる両面パイル２重織タオル体に関する。
【背景技術】
【０００２】
タオル地は、一般に低速の第１ビームから送り出す地経糸と高速の第２ビームから送り出すパイル経糸とに対して地緯糸をおさ打ちし、地経糸と地緯糸で織布した素地の片面或いは両面にパイル経糸によりパイルを形成する。タオル地は、表面に形成されたパイルにより、独特のフワフワ感による肌触りが良い感触、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して、様々なタオル製品に使用される。タオル地は、用途に応じて所定の大きさに裁断した後に外周部位等に適宜の絡げ処理を施すことにより、タオル、おしぼり、ハンドタオル、フェイスタオル、マフラータオル、スポーツタオル或いはバスタオル等の各種タオル製品が製造される。
【０００３】
ところで、タオル製品には、例えばプリント法や刺繍法或いは各種織り等によってロゴ等の名入れ或いは文字や図案等の様々な紋様を設けたものが提供される。タオル製品としては、例えば表面を凹凸に織り上げて適宜の紋様を織成するジャガード織や多色の凹凸紋様を織成する毛違いジャガード織等の特殊織によって織布することにより、高級感がありまた色落ちがなく長持ちするものも提供されている。
【０００４】
また、タオル製品においては、より良好な弾力性を有して使用者に対してフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、吸水性や通気性或いは保温性の向上を図る多層化の検討も行われている。従来の多層タオル製品としては、タオル地と織り方を異にし、粗く織ることによりソフト感を与えるガーゼタオルが一般的である（例えば、特許文献１及び特許文献２を参照）。
【０００５】
また、従来の多層タオル製品としては、柔らかすぎるガーゼタオルの物足りなさ補完するために、ガーゼ地に対して織り方を異にするタオル地を積層して一体化することによりある程度腰を強くした複合タオルも提供されている（例えば、特許文献３及び特許文献４を参照）。なお、これら従来の多層タオル製品も、ジャガード織等により素地を織布することによって凹凸の紋様が織成される。
【０００６】
【特許文献１】特許第３２０７１５６号公報
【特許文献２】特開２００４−１０７８２３号公報
【特許文献３】特許第２９１２６１２号公報
【特許文献４】特開平１１−３５０３００号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
ところで、従来のタオル製品においては、ジャガード織等により凹凸紋様を織成した場合に、当該凹凸紋様に対応した部位の裏面側に反対の凸凹紋様が出現する。従来のタオル製品においては、特に文字列等の上下左右の方向性を有する凹凸紋様である場合に、裏面側からではその識別が困難となってしまう。従来のタオル製品においては、このために折角の高級感が損なわれてしまい、いわゆるリバーシブル態様での使用に適さなかった。
【０００８】
一方、従来のガーゼ地多層タオル製品においては、上述したように柔らかすぎる特性により、例えばハンドタオルやフェイスタオル或いはスポーツタオル等の用途としては使用しづらくまた嵩張ってしまうといった問題がある。また、従来のタオル地とガーゼ地を積層した複合多層タオル製品においては、製造工程に手間がかかりコストアップとなる。
【０００９】
したがって、本発明は、リバーシブル使用においても表裏から紋様が正像として識別され使い勝手や高級感の向上を図る廉価で汎用性の高い両面パイル２重織タオル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を結合経糸により積層状態に一体化してなる。両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地に、それぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様が織成される。
【００１１】
以上のように構成された本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化したことにより表面層と内層にパイル層が構成される。両面パイル２重織タオル体によれば、多層のパイル層により良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して高級感と使い勝手の向上が図られるようにする。両面パイル２重織タオル体によれば、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地にそれぞれ織成される凹凸紋様が表裏面からそれぞれ正像として識別されることから、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無い。
【００１２】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地に織成される第１凹凸紋様と第２両面パイルタオル地に織成される第２凹凸紋様が、それぞれ経糸と緯糸を適宜浮沈させるジャガード織により織成された数字列や文字列或いはそれらの混成表示列若しくは適宜の図形やキャラクタ紋様等により構成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、高級感を与えるジャガード織により織成された数字列等が、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることなく自然に読み取られる。
【００１３】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地に織成される第１凹凸紋様と第２両面パイルタオル地に織成される第２凹凸紋様が、それぞれ多色の経糸と緯糸を適宜浮沈させる毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様により構成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、より高級感を与える毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様が、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることなく自然に識別されるようにする。
【００１４】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、全体が第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成体からなる。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、表裏面全体にリバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い様々な凹凸紋様が織成される。
【００１５】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、全体が１層の両面パイルタオル地であり、一部領域に第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成部位を構成し、当該２層構成部位に第１凹凸紋様と第２凹凸紋様を織成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い様々な凹凸紋様が効率的に織成される。また、両面パイル２重織タオル体によれば、部分的に第１凹凸紋様と第２凹凸紋様を織成することにより、工程の簡易化によるコスト低減が図られる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、積層状態に一体化した第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地にそれぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様を織成したことから、肌触りの良い感触でかつ良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して使い勝手の向上が図られ、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無く、廉価な両面パイル２重織タオル体を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明の実施の形態として図面に示した両面パイル２重織タオル体（以下、タオル体と略称する。）１について、詳細に説明する。タオル体１は、詳細を省略する周知のジャガードタオル織機によって織布され、図１に示すように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３が結合経糸４により積層状態に一体化されてなる。タオル体１は、第１両面パイルタオル地２に、その表面層２Ａ側から正像として識別される凸紋様部５Ａと凹紋様部５Ｂとからなる第１凹凸紋様５が織成される。タオル体１は、後述するように第２両面パイルタオル地３に、その表面層３Ａ側から正像として識別される凸紋様部６Ａと凹紋様部６Ｂとからなる第２凹凸紋様６が織成される。
【００１８】
タオル体１の織布工程は、従来のタオル織布工程とほぼ同様の工程であり、低速の第１ビームから送り出す第１地経糸７と高速の第２ビームから送り出す第１パイル経糸８とに対して第１地緯糸９が筬打ちされる。タオル体１の織布工程においては、第１地経糸７と第１地緯糸９で織布される第１素地層１０の両面に、第１パイル経糸８により表面パイル１１Ａと内層パイル１１Ｂとからなる第１パイル１１を形成して第１両面パイルタオル地２を織布する。
【００１９】
タオル体１の織布工程においては、上述した第１両面パイルタオル地２の織布工程と並行して、低速の第１ビームから送り出す第２地経糸１２と高速の第２ビームから送り出す第２パイル経糸１３とに対して第２地緯糸１４がおさ打ちされる。タオル体１の織布工程においては、第２地経糸１２と第２地緯糸１４で織布される第２素地層１５の両面に、第２パイル経糸１３により表面パイル１６Ａと内層パイル１６Ｂとからなる第２パイル１６を形成して第２両面パイルタオル地３を織布する。
【００２０】
タオル体１の織布工程においては、刻々と織布される第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の相対する内層２Ｂ、３Ｂにおいて、それぞれの素地層１０、１５間に結合経糸４を掛け合わせて一体化する。タオル体１の織布工程においては、以上の工程を経て織布した原反を用途に応じて所定の大きさに裁断する。
【００２１】
タオル体１の織布工程においては、上述した第１両面パイルタオル地２の織布工程と第２両面パイルタオル地３の織布工程において、第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を形成するパターンデータをジャガードタオル織機の制御部に記憶させ、プログラム処理により素地層１０、１５にそれぞれの経糸や緯糸を適宜浮沈させることによって、第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を織成する。
【００２２】
タオル体１は、染色された経糸や緯糸を用いる毛違いジャガード織により多色の第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成した第１両面パイルタオル地２や第２両面パイルタオル地３を織布するようにしてもよい。また、タオル体１は、各素地層１０、１５に対して第１パイル１１や第２パイル１６の大きさを変えてレリーフパイルにより第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成した第１両面パイルタオル地２や第２両面パイルタオル地３を織布するようにしてもよい。
【００２３】
図１及び図２に示したタオル体１は、第１両面パイルタオル地２が、２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂを用いてレリーフパイル織により第１素地層１０に第１凹凸紋様５を織成される。また、タオル体１は、第２両面パイルタオル地３が、第１両面パイルタオル地２側の第１パイル経糸８ａ、８ｂと異なる２色の第２パイル経糸１３ａ、１３ｂを用いてレリーフパイル織により第２素地層１５に第２凹凸紋様６を織成される。タオル体１は、第１両面パイルタオル地２の第１素地層１０と第２両面パイルタオル地３の第２素地層１５が、結合経糸４により一体化されてなる。
【００２４】
第１両面パイルタオル地２は、第１地緯糸９が、第１凹凸紋様５の形成部位において例えば図１に示すように３本を１組とした第１地緯糸組（９ａ１、９ａ２、９ａ３）〜（９ｎ１、９ｎ２、９ｎ３）として各組を所定の間隔を以って張り、これら各第１地緯糸組間に一対の第１地経糸７ａ、７ｂを織り込んで第１素地層１０が織布される。また、第１両面パイルタオル地２は、第１地緯糸９の各第１地緯糸組間に第１凹凸紋様５に対応したパターンを以って２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂが表面層２Ａと内層２Ｂにそれぞれパイルを形成するようにして織り込まれる。
【００２５】
第２両面パイルタオル地３も、同様にして第２地緯糸１４が、第２凹凸紋様６の形成部位において図１に示すように３本を１組とした第２地緯糸組（１４ａ１、１４ａ２、１４ａ３）〜（１４ｎ１、１４ｎ２、１４ｎ３）として所定の間隔を以って張り、これら各第２地緯糸組間に一対の第２地経糸１２ａ、１２ｂを織り込んで第２素地層１５が織布される。また、第２両面パイルタオル地３も、第２地緯糸１４の各第２地緯糸組間に第２凹凸紋様６に対応したパターンを以って２色の第２パイル経糸１３ａ、１３ｂが表面層３Ａと内層３Ｂにそれぞれパイルを形成するようにして織り込まれる。
【００２６】
タオル体１は、上述した第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３が結合経糸４により一体化されることにより、図１に示すように第１両面パイルタオル地２の表面層２Ａに所定のパターンを以って凸紋様部５Ａと凹紋様部５Ｂが連続した第１凹凸紋様５が織成される。また、タオル体１は、第２両面パイルタオル地３の表面層３Ａにも、所定のパターンを以って凸紋様部６Ａと凹紋様部６Ｂが連続した第２凹凸紋様６が織成される。
【００２７】
図２は、上述したタオル体１の組織図であり、上述した各第１地緯糸組間及び各第２地緯糸組間における第１地経糸７ａ、７ｂと第１パイル経糸８ａ、８ｂ及び第２地経糸１２ａ、１２ｂと第２パイル経糸１３ａ、１３ｂの状態を示している。タオル体１は、各経糸が各第１地緯糸組間及び各第２地緯糸組間において、同図×印で示す位置では紙面奥から手前側へと引き出されるいわゆる上がりの状態、同図○印で示す位置では紙面手前側から奥へと引き込まれるいわゆる下がりの状態となる。
【００２８】
タオル体１においては、第１両面パイルタオル地２が、その表面層２Ａ側に形成される表面パイル１１Ａとその内層２Ｂ側に形成される内層パイル１１Ｂとからなる第１パイル１１を形成する。タオル体１においては、第２両面パイルタオル地３も、その表面層３Ａ側に形成される表面パイル１６Ａとその内層３Ｂ側に形成される内層パイル１６Ｂとからなる第２パイル１６を形成する。タオル体１においては、かかる多層のパイル構成により良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上が図られる。
【００２９】
タオル体１においては、上述したように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３に、毛違いジャガード織によりそれぞれ独立した第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を織成する。したがって、タオル体１は、これら第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６が、表裏面からそれぞれ正像として識別される多色の凹凸紋様として織成されることから、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無い。
【００３０】
タオル体１は、上述した従来のガーゼ地多層タオル製品と比較して、柔らかすぎず、例えばフェイスタオルやスポーツタオル等の用途に最適に使用され、さほど嵩張ることも無い。また、タオル体１は、同一織り仕様で織布される第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を一体化した構造であることから、上述した従来のタオル地とガーゼ地を積層した複合多層タオル製品と比較して製造工程が簡易化され低コストで製造することが可能である。
【００３１】
なお、タオル体１は、上述したように色違いの２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂにより第１両面パイルタオル地２に第１凹凸紋様５を織成するとともに第２パイル経糸１３ａ、１３ｂにより第２両面パイルタオル地３に第２凹凸紋様６を織成したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。タオル体１は、さらに多色のパイル経糸や地経糸或いは地緯糸を用いて第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成するようにしてもよい。
【００３２】
タオル体１は、所定の大きさに裁断され、外周部位の縁取り等の仕上げ処理を施して、例えば図３に示した第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の２層構造からなる全体が両面パイル２重織のフェイスタオル２０を製作する。フェイスタオル２０には、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａに、それぞれ上述した第１凹凸紋様５を構成する第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂが長手方向の両側に位置して織成される。フェイスタオル２０には、第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａに、それぞれ上述した第２凹凸紋様６を構成する第３数字列紋様２１Ｃと第４数字列紋様２１Ｄが長手方向の両側に位置して織成される。なお、以下の説明において、第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂ及び第３数字列紋様２１Ｃと第４数字列紋様２１Ｄについては、個々に説明する場合を除いて数字列紋様２１と総称する。
【００３３】
フェイスタオル２０には、数字列紋様２１の形成部位を除くその表面の全面に亘り、第１両面パイルタオル地２の表面パイル１１Ａと第２両面パイルタオル地３の表面パイル１６Ａによるパイルが形成される。また、フェイスタオル２０には、内層にも第１両面パイルタオル地２の内層パイル１１Ｂと第２両面パイルタオル地３の内層パイル１６Ｂによるパイルが形成される。フェイスタオル２０は、かかる多層のパイル構成により、良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上を図った上述したタオル体１の特性を有する。
【００３４】
フェイスタオル２０は、図３（Ａ）に示すように、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａに一方側に位置して織成される第１数字列紋様２１Ａが例えば矩形枠内に左並びで「１２３４」の数字列を表現してなり、他方側に位置して織成される第２数字列紋様２１Ｂが矩形枠内に第１数字列紋様２１Ａと左右対称の態様で「１２３４」の数字列を表現してなる。フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａにおいて、左右対称ではあるが、それぞれ「１２３４」の数字列が正像として識別される第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂが形成される。なお、第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂは、「１２３４」の数字列が凸紋様部であり、矩形枠の地部位が凹紋様部として構成される。
【００３５】
フェイスタオル２０は、図３（Ｂ）に示すように、第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａにも、上述した第１数字列紋様２１Ａ及び第２数字列紋様２１Ｂと同等の、第３数字列紋様２１Ｃ及び第４数字列紋様２１Ｄが形成される。フェイスタオル２０は、これら第３数字列紋様２１Ｃ及び第４数字列紋様２１Ｄも第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａにおいて、左右対称ではあるが、それぞれ「１２３４」の数字列が正像として識別される。したがって、フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２側から第３数字列紋様２１Ｃを透視するならば、第１数字列紋様２１Ａと重なり合う左並びの「４３２１」の鏡反射形態の数字列となる。フェイスタオル２０は、同様に第１両面パイルタオル地２側から第４数字列紋様２１Ｄを透視するならば、第２数字列紋様２１Ｂと重なり合う左並びの「４３２１」の鏡反射形態の数字列となる。
【００３６】
フェイスタオル２０は、上述したように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を毛違いジャガー織で織布することにより、その表裏主面に正像として識別可能であり、例えば数字列を地色と異なる色調としたり各数字を色違いとする等の変化に富んだ第１数字列紋様２１を形成することが可能である。フェイスタオル２０は、一層の高級感を有するとともに、リバーシブル使用の形態においても第１数字列紋様２１が正像として識別され、違和感を生じさせることは無い。
【００３７】
なお、フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の異なる位置にそれぞれ第１数字列紋様２１を形成することも可能である。また、フェイスタオル２０は、両面に形成する凹凸紋様が、数字列ばかりでなく文字列或いはそれらの混成表示列を形成するようにしてもよく、全体に適宜の紋様を形成したものであってもよい。また、フェイスタオル２０は、両面に形成する凹凸紋様が、表裏同一形状とならない様々な図形やキャラクタ模様等であってもよい。フェイスタオル２０は、両面に形成する数字列等の凹凸紋様が同一であることに限定されないが、いずれの形態であっても両面からそれぞれ正像として識別される凹凸紋様が形成される。
【００３８】
本発明の第２の実施の形態として図４に示したタオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２を織布するとともに結合経糸３３で積層状態に一体化した基本的な構成を上述したタオル体１と同様とする。タオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２の素地層が上述したタオル体１と同様に織布されることから、その説明を省略する。
【００３９】
タオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１に１色の第１パイル経糸３４を使用するとともに、第２両面パイルタオル地３２に第１パイル経糸３４と同色若しくは異なる色の第２パイル経糸３５を使用する。タオル体３０は、ジャガード織により第１両面パイルタオル地３１に第１凹凸紋様３６を織成するとともに第２両面パイルタオル地３２に第２凹凸紋様３７を織成して織布する。
【００４０】
タオル体３０は、上述したタオル体１との比較において、第１凹凸紋様３６や第２凹凸紋様３７が単色で簡単な紋様として織成される。タオル体３０においても、多層のパイル構成により、良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上が図られる。タオル体３０においても、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２にそれぞれの表面から正像として識別される第１凹凸紋様３６と第２凹凸紋様３７が形成され、リバーシブル使用の形態においても違和感を生じさせることは無い。
【００４１】
本発明の第３の実施の形態として図５に示したタオル体４０は、基本態様として全体を１層の両面パイルタオル地４１により織布するが、一部領域に第１両面パイルタオル地４２と第２両面パイルタオル地４３を積層状態に一体化した２層構成部位の紋様形成部４４を形成した構成に特徴がある。タオル体４０は、各両面パイルタオル地４１〜４３がそれぞれ上述したタオル体１の両面パイルタオル地と同様の構造であることからそれぞれの詳細について説明を省略する。
【００４２】
タオル体４０は、紋様形成部４４を構成する第１両面パイルタオル地４２と第２両面パイルタオル地４３が例えば別工程のジャガード織や毛違いジャガード織により積層状態で一体に織布され、その両端部を両面パイルタオル地４１に対してそれぞれ縫止めされる。なお、タオル体４０は、詳細を省略するがプログラム制御により両面パイルタオル地４１を織布する途中で織布方法を変えて紋様形成部４４を形成することで、同一工程で全体を一体に織布することも可能であることは勿論である。
【００４３】
タオル体４０は、紋様形成部４４を構成する第１両面パイルタオル地４２に凹凸紋様が織成されるとともに、第２両面パイルタオル地４３にも凹凸紋様が織成される。タオル体４０においても、第１両面パイルタオル地４２に織成される凹凸紋様と第２両面パイルタオル地４３に織成される凹凸紋様が、それぞれの面から正像として識別される。
【００４４】
タオル体４０においては、上述したように紋様形成部４４に両面から正像として識別される凹凸紋様を織成したことにより、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い。タオル体４０においては、紋様形成部４４を除く地部分が１層の両面パイルタオル地４１で構成されることからやや薄手ではあるが、両面パイル織により充分な弾力性を有しまた良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性が保持される。タオル体４０においては、部分的に紋様形成部４４を形成することにより、工程の簡易化によるコスト低減が図られる。
【００４５】
なお、本発明は、上述した実施の形態として示したタオル体に限定されず、特許請求の範囲に記載した各構成についてその技術範囲を逸脱しない範囲で適宜変更、展開されることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【００４６】
【図１】実施の形態として示すタオル体の経方向の要部断面図である。
【図２】タオル体の組織図である。
【図３】タオル体により製作したフェイスタオルの斜視図である。
【図４】第２の実施の形態として示すタオル体の経方向の要部断面図である。
【図５】第３の実施の形態として示すタオル体の要部構成図である。
【符号の説明】
【００４７】
１ 両面パイル２重織タオル体（タオル体）、２ 第１両面パイルタオル地、３ 第２両面パイルタオル地、４ 結合経糸、５ 第１凹凸紋様、６ 第２凹凸紋様、７ 第１地経糸、８ 第１パイル経糸、９ 第１地緯糸、１０ 第１素地層、１１ 第１パイル、１２ 第２地経糸、１３ 第２パイル経糸、１４ 第２地緯糸、１５ 第２素地層、１６ 第２パイル、２０ フェイスタオル、２１ 数字列紋様、３０ タオル体、３１ 第１両面パイルタオル地、３２ 第２両面パイルタオル地、３３ 結合経糸、３４ 第１パイル経糸、３５ 第２パイル経糸、３６ 第１凹凸紋様、３７ 第２凹凸紋様、
【技術分野】
【０００１】
本発明は、２層の両面パイルタオル地からなり、表裏面においてそれぞれ正像として識別される凸紋様を織成してなる両面パイル２重織タオル体に関する。
【背景技術】
【０００２】
タオル地は、一般に低速の第１ビームから送り出す地経糸と高速の第２ビームから送り出すパイル経糸とに対して地緯糸をおさ打ちし、地経糸と地緯糸で織布した素地の片面或いは両面にパイル経糸によりパイルを形成する。タオル地は、表面に形成されたパイルにより、独特のフワフワ感による肌触りが良い感触、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して、様々なタオル製品に使用される。タオル地は、用途に応じて所定の大きさに裁断した後に外周部位等に適宜の絡げ処理を施すことにより、タオル、おしぼり、ハンドタオル、フェイスタオル、マフラータオル、スポーツタオル或いはバスタオル等の各種タオル製品が製造される。
【０００３】
ところで、タオル製品には、例えばプリント法や刺繍法或いは各種織り等によってロゴ等の名入れ或いは文字や図案等の様々な紋様を設けたものが提供される。タオル製品としては、例えば表面を凹凸に織り上げて適宜の紋様を織成するジャガード織や多色の凹凸紋様を織成する毛違いジャガード織等の特殊織によって織布することにより、高級感がありまた色落ちがなく長持ちするものも提供されている。
【０００４】
また、タオル製品においては、より良好な弾力性を有して使用者に対してフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、吸水性や通気性或いは保温性の向上を図る多層化の検討も行われている。従来の多層タオル製品としては、タオル地と織り方を異にし、粗く織ることによりソフト感を与えるガーゼタオルが一般的である（例えば、特許文献１及び特許文献２を参照）。
【０００５】
また、従来の多層タオル製品としては、柔らかすぎるガーゼタオルの物足りなさ補完するために、ガーゼ地に対して織り方を異にするタオル地を積層して一体化することによりある程度腰を強くした複合タオルも提供されている（例えば、特許文献３及び特許文献４を参照）。なお、これら従来の多層タオル製品も、ジャガード織等により素地を織布することによって凹凸の紋様が織成される。
【０００６】
【特許文献１】特許第３２０７１５６号公報
【特許文献２】特開２００４−１０７８２３号公報
【特許文献３】特許第２９１２６１２号公報
【特許文献４】特開平１１−３５０３００号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
ところで、従来のタオル製品においては、ジャガード織等により凹凸紋様を織成した場合に、当該凹凸紋様に対応した部位の裏面側に反対の凸凹紋様が出現する。従来のタオル製品においては、特に文字列等の上下左右の方向性を有する凹凸紋様である場合に、裏面側からではその識別が困難となってしまう。従来のタオル製品においては、このために折角の高級感が損なわれてしまい、いわゆるリバーシブル態様での使用に適さなかった。
【０００８】
一方、従来のガーゼ地多層タオル製品においては、上述したように柔らかすぎる特性により、例えばハンドタオルやフェイスタオル或いはスポーツタオル等の用途としては使用しづらくまた嵩張ってしまうといった問題がある。また、従来のタオル地とガーゼ地を積層した複合多層タオル製品においては、製造工程に手間がかかりコストアップとなる。
【０００９】
したがって、本発明は、リバーシブル使用においても表裏から紋様が正像として識別され使い勝手や高級感の向上を図る廉価で汎用性の高い両面パイル２重織タオル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を結合経糸により積層状態に一体化してなる。両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地に、それぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様が織成される。
【００１１】
以上のように構成された本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化したことにより表面層と内層にパイル層が構成される。両面パイル２重織タオル体によれば、多層のパイル層により良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して高級感と使い勝手の向上が図られるようにする。両面パイル２重織タオル体によれば、第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地にそれぞれ織成される凹凸紋様が表裏面からそれぞれ正像として識別されることから、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無い。
【００１２】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地に織成される第１凹凸紋様と第２両面パイルタオル地に織成される第２凹凸紋様が、それぞれ経糸と緯糸を適宜浮沈させるジャガード織により織成された数字列や文字列或いはそれらの混成表示列若しくは適宜の図形やキャラクタ紋様等により構成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、高級感を与えるジャガード織により織成された数字列等が、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることなく自然に読み取られる。
【００１３】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、第１両面パイルタオル地に織成される第１凹凸紋様と第２両面パイルタオル地に織成される第２凹凸紋様が、それぞれ多色の経糸と緯糸を適宜浮沈させる毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様により構成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、より高級感を与える毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様が、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることなく自然に識別されるようにする。
【００１４】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、全体が第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成体からなる。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、表裏面全体にリバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い様々な凹凸紋様が織成される。
【００１５】
上述した目的を達成する本発明にかかる両面パイル２重織タオル体は、全体が１層の両面パイルタオル地であり、一部領域に第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成部位を構成し、当該２層構成部位に第１凹凸紋様と第２凹凸紋様を織成する。本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い様々な凹凸紋様が効率的に織成される。また、両面パイル２重織タオル体によれば、部分的に第１凹凸紋様と第２凹凸紋様を織成することにより、工程の簡易化によるコスト低減が図られる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明にかかる両面パイル２重織タオル体によれば、積層状態に一体化した第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地にそれぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様を織成したことから、肌触りの良い感触でかつ良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏して使い勝手の向上が図られ、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無く、廉価な両面パイル２重織タオル体を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、本発明の実施の形態として図面に示した両面パイル２重織タオル体（以下、タオル体と略称する。）１について、詳細に説明する。タオル体１は、詳細を省略する周知のジャガードタオル織機によって織布され、図１に示すように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３が結合経糸４により積層状態に一体化されてなる。タオル体１は、第１両面パイルタオル地２に、その表面層２Ａ側から正像として識別される凸紋様部５Ａと凹紋様部５Ｂとからなる第１凹凸紋様５が織成される。タオル体１は、後述するように第２両面パイルタオル地３に、その表面層３Ａ側から正像として識別される凸紋様部６Ａと凹紋様部６Ｂとからなる第２凹凸紋様６が織成される。
【００１８】
タオル体１の織布工程は、従来のタオル織布工程とほぼ同様の工程であり、低速の第１ビームから送り出す第１地経糸７と高速の第２ビームから送り出す第１パイル経糸８とに対して第１地緯糸９が筬打ちされる。タオル体１の織布工程においては、第１地経糸７と第１地緯糸９で織布される第１素地層１０の両面に、第１パイル経糸８により表面パイル１１Ａと内層パイル１１Ｂとからなる第１パイル１１を形成して第１両面パイルタオル地２を織布する。
【００１９】
タオル体１の織布工程においては、上述した第１両面パイルタオル地２の織布工程と並行して、低速の第１ビームから送り出す第２地経糸１２と高速の第２ビームから送り出す第２パイル経糸１３とに対して第２地緯糸１４がおさ打ちされる。タオル体１の織布工程においては、第２地経糸１２と第２地緯糸１４で織布される第２素地層１５の両面に、第２パイル経糸１３により表面パイル１６Ａと内層パイル１６Ｂとからなる第２パイル１６を形成して第２両面パイルタオル地３を織布する。
【００２０】
タオル体１の織布工程においては、刻々と織布される第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の相対する内層２Ｂ、３Ｂにおいて、それぞれの素地層１０、１５間に結合経糸４を掛け合わせて一体化する。タオル体１の織布工程においては、以上の工程を経て織布した原反を用途に応じて所定の大きさに裁断する。
【００２１】
タオル体１の織布工程においては、上述した第１両面パイルタオル地２の織布工程と第２両面パイルタオル地３の織布工程において、第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を形成するパターンデータをジャガードタオル織機の制御部に記憶させ、プログラム処理により素地層１０、１５にそれぞれの経糸や緯糸を適宜浮沈させることによって、第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を織成する。
【００２２】
タオル体１は、染色された経糸や緯糸を用いる毛違いジャガード織により多色の第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成した第１両面パイルタオル地２や第２両面パイルタオル地３を織布するようにしてもよい。また、タオル体１は、各素地層１０、１５に対して第１パイル１１や第２パイル１６の大きさを変えてレリーフパイルにより第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成した第１両面パイルタオル地２や第２両面パイルタオル地３を織布するようにしてもよい。
【００２３】
図１及び図２に示したタオル体１は、第１両面パイルタオル地２が、２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂを用いてレリーフパイル織により第１素地層１０に第１凹凸紋様５を織成される。また、タオル体１は、第２両面パイルタオル地３が、第１両面パイルタオル地２側の第１パイル経糸８ａ、８ｂと異なる２色の第２パイル経糸１３ａ、１３ｂを用いてレリーフパイル織により第２素地層１５に第２凹凸紋様６を織成される。タオル体１は、第１両面パイルタオル地２の第１素地層１０と第２両面パイルタオル地３の第２素地層１５が、結合経糸４により一体化されてなる。
【００２４】
第１両面パイルタオル地２は、第１地緯糸９が、第１凹凸紋様５の形成部位において例えば図１に示すように３本を１組とした第１地緯糸組（９ａ１、９ａ２、９ａ３）〜（９ｎ１、９ｎ２、９ｎ３）として各組を所定の間隔を以って張り、これら各第１地緯糸組間に一対の第１地経糸７ａ、７ｂを織り込んで第１素地層１０が織布される。また、第１両面パイルタオル地２は、第１地緯糸９の各第１地緯糸組間に第１凹凸紋様５に対応したパターンを以って２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂが表面層２Ａと内層２Ｂにそれぞれパイルを形成するようにして織り込まれる。
【００２５】
第２両面パイルタオル地３も、同様にして第２地緯糸１４が、第２凹凸紋様６の形成部位において図１に示すように３本を１組とした第２地緯糸組（１４ａ１、１４ａ２、１４ａ３）〜（１４ｎ１、１４ｎ２、１４ｎ３）として所定の間隔を以って張り、これら各第２地緯糸組間に一対の第２地経糸１２ａ、１２ｂを織り込んで第２素地層１５が織布される。また、第２両面パイルタオル地３も、第２地緯糸１４の各第２地緯糸組間に第２凹凸紋様６に対応したパターンを以って２色の第２パイル経糸１３ａ、１３ｂが表面層３Ａと内層３Ｂにそれぞれパイルを形成するようにして織り込まれる。
【００２６】
タオル体１は、上述した第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３が結合経糸４により一体化されることにより、図１に示すように第１両面パイルタオル地２の表面層２Ａに所定のパターンを以って凸紋様部５Ａと凹紋様部５Ｂが連続した第１凹凸紋様５が織成される。また、タオル体１は、第２両面パイルタオル地３の表面層３Ａにも、所定のパターンを以って凸紋様部６Ａと凹紋様部６Ｂが連続した第２凹凸紋様６が織成される。
【００２７】
図２は、上述したタオル体１の組織図であり、上述した各第１地緯糸組間及び各第２地緯糸組間における第１地経糸７ａ、７ｂと第１パイル経糸８ａ、８ｂ及び第２地経糸１２ａ、１２ｂと第２パイル経糸１３ａ、１３ｂの状態を示している。タオル体１は、各経糸が各第１地緯糸組間及び各第２地緯糸組間において、同図×印で示す位置では紙面奥から手前側へと引き出されるいわゆる上がりの状態、同図○印で示す位置では紙面手前側から奥へと引き込まれるいわゆる下がりの状態となる。
【００２８】
タオル体１においては、第１両面パイルタオル地２が、その表面層２Ａ側に形成される表面パイル１１Ａとその内層２Ｂ側に形成される内層パイル１１Ｂとからなる第１パイル１１を形成する。タオル体１においては、第２両面パイルタオル地３も、その表面層３Ａ側に形成される表面パイル１６Ａとその内層３Ｂ側に形成される内層パイル１６Ｂとからなる第２パイル１６を形成する。タオル体１においては、かかる多層のパイル構成により良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上が図られる。
【００２９】
タオル体１においては、上述したように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３に、毛違いジャガード織によりそれぞれ独立した第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６を織成する。したがって、タオル体１は、これら第１凹凸紋様５と第２凹凸紋様６が、表裏面からそれぞれ正像として識別される多色の凹凸紋様として織成されることから、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせたり高級感を損なわせることは無い。
【００３０】
タオル体１は、上述した従来のガーゼ地多層タオル製品と比較して、柔らかすぎず、例えばフェイスタオルやスポーツタオル等の用途に最適に使用され、さほど嵩張ることも無い。また、タオル体１は、同一織り仕様で織布される第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を一体化した構造であることから、上述した従来のタオル地とガーゼ地を積層した複合多層タオル製品と比較して製造工程が簡易化され低コストで製造することが可能である。
【００３１】
なお、タオル体１は、上述したように色違いの２色の第１パイル経糸８ａ、８ｂにより第１両面パイルタオル地２に第１凹凸紋様５を織成するとともに第２パイル経糸１３ａ、１３ｂにより第２両面パイルタオル地３に第２凹凸紋様６を織成したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。タオル体１は、さらに多色のパイル経糸や地経糸或いは地緯糸を用いて第１凹凸紋様５や第２凹凸紋様６を織成するようにしてもよい。
【００３２】
タオル体１は、所定の大きさに裁断され、外周部位の縁取り等の仕上げ処理を施して、例えば図３に示した第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の２層構造からなる全体が両面パイル２重織のフェイスタオル２０を製作する。フェイスタオル２０には、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａに、それぞれ上述した第１凹凸紋様５を構成する第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂが長手方向の両側に位置して織成される。フェイスタオル２０には、第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａに、それぞれ上述した第２凹凸紋様６を構成する第３数字列紋様２１Ｃと第４数字列紋様２１Ｄが長手方向の両側に位置して織成される。なお、以下の説明において、第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂ及び第３数字列紋様２１Ｃと第４数字列紋様２１Ｄについては、個々に説明する場合を除いて数字列紋様２１と総称する。
【００３３】
フェイスタオル２０には、数字列紋様２１の形成部位を除くその表面の全面に亘り、第１両面パイルタオル地２の表面パイル１１Ａと第２両面パイルタオル地３の表面パイル１６Ａによるパイルが形成される。また、フェイスタオル２０には、内層にも第１両面パイルタオル地２の内層パイル１１Ｂと第２両面パイルタオル地３の内層パイル１６Ｂによるパイルが形成される。フェイスタオル２０は、かかる多層のパイル構成により、良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上を図った上述したタオル体１の特性を有する。
【００３４】
フェイスタオル２０は、図３（Ａ）に示すように、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａに一方側に位置して織成される第１数字列紋様２１Ａが例えば矩形枠内に左並びで「１２３４」の数字列を表現してなり、他方側に位置して織成される第２数字列紋様２１Ｂが矩形枠内に第１数字列紋様２１Ａと左右対称の態様で「１２３４」の数字列を表現してなる。フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２側の表面層２Ａにおいて、左右対称ではあるが、それぞれ「１２３４」の数字列が正像として識別される第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂが形成される。なお、第１数字列紋様２１Ａと第２数字列紋様２１Ｂは、「１２３４」の数字列が凸紋様部であり、矩形枠の地部位が凹紋様部として構成される。
【００３５】
フェイスタオル２０は、図３（Ｂ）に示すように、第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａにも、上述した第１数字列紋様２１Ａ及び第２数字列紋様２１Ｂと同等の、第３数字列紋様２１Ｃ及び第４数字列紋様２１Ｄが形成される。フェイスタオル２０は、これら第３数字列紋様２１Ｃ及び第４数字列紋様２１Ｄも第２両面パイルタオル地３側の表面層３Ａにおいて、左右対称ではあるが、それぞれ「１２３４」の数字列が正像として識別される。したがって、フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２側から第３数字列紋様２１Ｃを透視するならば、第１数字列紋様２１Ａと重なり合う左並びの「４３２１」の鏡反射形態の数字列となる。フェイスタオル２０は、同様に第１両面パイルタオル地２側から第４数字列紋様２１Ｄを透視するならば、第２数字列紋様２１Ｂと重なり合う左並びの「４３２１」の鏡反射形態の数字列となる。
【００３６】
フェイスタオル２０は、上述したように第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３を毛違いジャガー織で織布することにより、その表裏主面に正像として識別可能であり、例えば数字列を地色と異なる色調としたり各数字を色違いとする等の変化に富んだ第１数字列紋様２１を形成することが可能である。フェイスタオル２０は、一層の高級感を有するとともに、リバーシブル使用の形態においても第１数字列紋様２１が正像として識別され、違和感を生じさせることは無い。
【００３７】
なお、フェイスタオル２０は、第１両面パイルタオル地２と第２両面パイルタオル地３の異なる位置にそれぞれ第１数字列紋様２１を形成することも可能である。また、フェイスタオル２０は、両面に形成する凹凸紋様が、数字列ばかりでなく文字列或いはそれらの混成表示列を形成するようにしてもよく、全体に適宜の紋様を形成したものであってもよい。また、フェイスタオル２０は、両面に形成する凹凸紋様が、表裏同一形状とならない様々な図形やキャラクタ模様等であってもよい。フェイスタオル２０は、両面に形成する数字列等の凹凸紋様が同一であることに限定されないが、いずれの形態であっても両面からそれぞれ正像として識別される凹凸紋様が形成される。
【００３８】
本発明の第２の実施の形態として図４に示したタオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２を織布するとともに結合経糸３３で積層状態に一体化した基本的な構成を上述したタオル体１と同様とする。タオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２の素地層が上述したタオル体１と同様に織布されることから、その説明を省略する。
【００３９】
タオル体３０は、第１両面パイルタオル地３１に１色の第１パイル経糸３４を使用するとともに、第２両面パイルタオル地３２に第１パイル経糸３４と同色若しくは異なる色の第２パイル経糸３５を使用する。タオル体３０は、ジャガード織により第１両面パイルタオル地３１に第１凹凸紋様３６を織成するとともに第２両面パイルタオル地３２に第２凹凸紋様３７を織成して織布する。
【００４０】
タオル体３０は、上述したタオル体１との比較において、第１凹凸紋様３６や第２凹凸紋様３７が単色で簡単な紋様として織成される。タオル体３０においても、多層のパイル構成により、良好な弾力性を有して使用者にフワフワして肌触りが良い感触を与えるとともに、良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性を奏し、高級感と使い勝手の向上が図られる。タオル体３０においても、第１両面パイルタオル地３１と第２両面パイルタオル地３２にそれぞれの表面から正像として識別される第１凹凸紋様３６と第２凹凸紋様３７が形成され、リバーシブル使用の形態においても違和感を生じさせることは無い。
【００４１】
本発明の第３の実施の形態として図５に示したタオル体４０は、基本態様として全体を１層の両面パイルタオル地４１により織布するが、一部領域に第１両面パイルタオル地４２と第２両面パイルタオル地４３を積層状態に一体化した２層構成部位の紋様形成部４４を形成した構成に特徴がある。タオル体４０は、各両面パイルタオル地４１〜４３がそれぞれ上述したタオル体１の両面パイルタオル地と同様の構造であることからそれぞれの詳細について説明を省略する。
【００４２】
タオル体４０は、紋様形成部４４を構成する第１両面パイルタオル地４２と第２両面パイルタオル地４３が例えば別工程のジャガード織や毛違いジャガード織により積層状態で一体に織布され、その両端部を両面パイルタオル地４１に対してそれぞれ縫止めされる。なお、タオル体４０は、詳細を省略するがプログラム制御により両面パイルタオル地４１を織布する途中で織布方法を変えて紋様形成部４４を形成することで、同一工程で全体を一体に織布することも可能であることは勿論である。
【００４３】
タオル体４０は、紋様形成部４４を構成する第１両面パイルタオル地４２に凹凸紋様が織成されるとともに、第２両面パイルタオル地４３にも凹凸紋様が織成される。タオル体４０においても、第１両面パイルタオル地４２に織成される凹凸紋様と第２両面パイルタオル地４３に織成される凹凸紋様が、それぞれの面から正像として識別される。
【００４４】
タオル体４０においては、上述したように紋様形成部４４に両面から正像として識別される凹凸紋様を織成したことにより、リバーシブル使用の形態においても使用者に違和感を生じさせることが無い。タオル体４０においては、紋様形成部４４を除く地部分が１層の両面パイルタオル地４１で構成されることからやや薄手ではあるが、両面パイル織により充分な弾力性を有しまた良好な吸水特性や通気特性或いは保温特性が保持される。タオル体４０においては、部分的に紋様形成部４４を形成することにより、工程の簡易化によるコスト低減が図られる。
【００４５】
なお、本発明は、上述した実施の形態として示したタオル体に限定されず、特許請求の範囲に記載した各構成についてその技術範囲を逸脱しない範囲で適宜変更、展開されることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【００４６】
【図１】実施の形態として示すタオル体の経方向の要部断面図である。
【図２】タオル体の組織図である。
【図３】タオル体により製作したフェイスタオルの斜視図である。
【図４】第２の実施の形態として示すタオル体の経方向の要部断面図である。
【図５】第３の実施の形態として示すタオル体の要部構成図である。
【符号の説明】
【００４７】
１ 両面パイル２重織タオル体（タオル体）、２ 第１両面パイルタオル地、３ 第２両面パイルタオル地、４ 結合経糸、５ 第１凹凸紋様、６ 第２凹凸紋様、７ 第１地経糸、８ 第１パイル経糸、９ 第１地緯糸、１０ 第１素地層、１１ 第１パイル、１２ 第２地経糸、１３ 第２パイル経糸、１４ 第２地緯糸、１５ 第２素地層、１６ 第２パイル、２０ フェイスタオル、２１ 数字列紋様、３０ タオル体、３１ 第１両面パイルタオル地、３２ 第２両面パイルタオル地、３３ 結合経糸、３４ 第１パイル経糸、３５ 第２パイル経糸、３６ 第１凹凸紋様、３７ 第２凹凸紋様、
【特許請求の範囲】
【請求項１】
第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を結合経糸により積層状態に一体化してなる両面パイル２重織タオル体であり、
上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地に、それぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様が織成されていることを特徴とする両面パイル２重織タオル体。
【請求項２】
上記第１両面パイルタオル地に織成する第１凹凸紋様と上記第２両面パイルタオル地に織成する第２凹凸紋様が、それぞれ経糸と緯糸を適宜浮沈させるジャガード織により織成された数字列や文字列或いはそれらの混成表示列若しくは図形模様であることを特徴とする請求項１に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項３】
上記第１両面パイルタオル地に織成する第１凹凸紋様と上記第２両面パイルタオル地に織成する第２凹凸紋様が、それぞれ多色の経糸と緯糸を適宜浮沈させる毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様であることを特徴とする請求項１に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項４】
全体が、上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成体であることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項５】
全体が１層の両面パイルタオル地であり、一部領域に上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成部位を構成し、当該２層構成部位に相対して凹凸紋様を織成したことを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項１】
第１両面パイルタオル地と第２両面パイルタオル地を結合経糸により積層状態に一体化してなる両面パイル２重織タオル体であり、
上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地に、それぞれの表面層側から正像として識別される凹凸紋様が織成されていることを特徴とする両面パイル２重織タオル体。
【請求項２】
上記第１両面パイルタオル地に織成する第１凹凸紋様と上記第２両面パイルタオル地に織成する第２凹凸紋様が、それぞれ経糸と緯糸を適宜浮沈させるジャガード織により織成された数字列や文字列或いはそれらの混成表示列若しくは図形模様であることを特徴とする請求項１に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項３】
上記第１両面パイルタオル地に織成する第１凹凸紋様と上記第２両面パイルタオル地に織成する第２凹凸紋様が、それぞれ多色の経糸と緯糸を適宜浮沈させる毛違いジャガード織により織成された多色の凹凸紋様であることを特徴とする請求項１に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項４】
全体が、上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成体であることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載の両面パイル２重織タオル体。
【請求項５】
全体が１層の両面パイルタオル地であり、一部領域に上記第１両面パイルタオル地と上記第２両面パイルタオル地を積層状態に一体化した２層構成部位を構成し、当該２層構成部位に相対して凹凸紋様を織成したことを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載の両面パイル２重織タオル体。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１０−６５３５２（Ｐ２０１０−６５３５２Ａ）
【公開日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２３３８４３（Ｐ２００８−２３３８４３）
【出願日】平成２０年９月１１日（２００８．９．１１）
【出願人】（５０８２７５４７８）大成タオル株式会社 (2)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年９月１１日（２００８．９．１１）
【出願人】（５０８２７５４７８）大成タオル株式会社 (2)
【Ｆターム（参考）】
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