説明

両面接着性粘着シート

【課題】プラスチックフィルムを基材とし、非接触の金属を腐食させる性質が抑えられた両面接着性粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明により提供される両面接着性粘着シートは、プラスチックフィルム基材の各面それぞれに、水分散型アクリル系粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層を有する。上記粘着剤組成物は、硫黄含有連鎖移動剤を用いて合成された水分散型アクリル系重合体を含む。そして、該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄含有ガスの放散量が、前記シートの面積1cm当たり、SO2−換算で0.043μg以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系共重合体をベースポリマーとする水分散型の粘着(感圧接着ともいう。以下同じ。)剤組成物および該粘着剤組成物から形成された粘着剤層をプラスチックフィルム基材の各面それぞれに有する両面接着性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
水分散型のアクリル系重合体を用いた粘着剤組成物は、分散媒として有機溶剤を用いないことから、粘着成分が有機溶剤に溶解したタイプの粘着剤組成物に比べて環境衛生の観点から望ましい。このため、水分散型アクリル系粘着剤組成物を用いてなる粘着シートは、両面テープその他の形態で、種々の分野に利用されるようになってきている。かかる利用分野の一例として、家電やOA機器等の各種電子機器が挙げられる。アクリル系エマルションを用いた粘着剤に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−12775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水分散型アクリル系粘着剤組成物から形成された粘着シートは、使用の態様によっては、該粘着シートに直接接触しない金属(例えば銀)を腐食させることがある。例えば、電子機器の筐体内部のように限られた空間内で粘着シートと金属材料が共存する状況において、上記非接触の金属材料に腐食が生じる場合がある。かかる事象は、電子機器の基板や配線等を構成する金属の腐食による接触不良を引き起こす要因となり得る。また、上記金属の腐食は、電子機器以外の分野においても、外観品質の低下等の不都合を生じ得る。したがって、金属を腐食させない粘着シートが望まれる。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題を解決すべくなされたものであり、水分散型アクリル系粘着剤組成物を用いてなる粘着剤層をプラスチックフィルム基材の各面それぞれに有する粘着シートであって上記非接触金属の腐食が抑えられた両面接着性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、粘着シートが非接触の金属を腐食させる事象は、該粘着シートから金属腐食性の物質が放散することにより引き起こされるのではないかと考え、該金属腐食性物質として硫黄含有ガス(すなわち、硫黄を構成原子として含むガス)に着目した。さらに、粘着剤用アクリル系重合体エマルションの製造において連鎖移動剤として広く使用されている硫黄化合物(硫黄含有連鎖移動剤、典型的にはn−ラウリルメルカプタン)が、上記硫黄含有ガスの主要な発生源となり得ることを突き止めた。そして、硫黄含有連鎖移動剤を使用しても、上記硫黄含有ガスの放散量を極めて少なくすることにより上記金属腐食の問題を解消し得ることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
本発明によると、プラスチックフィルム基材と、水分散型粘着剤組成物から形成され上記基材の各面それぞれに設けられた粘着剤層と、を備える両面接着性粘着シートが提供される。上記粘着剤組成物は、硫黄を構成原子として含む連鎖移動剤(硫黄含有連鎖移動剤)を用いて合成された水分散型アクリル系重合体を含む。そして、該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄を構成原子として含むガス(硫黄含有ガス)の放散量が、上記シートの面積1cm当たり、SO2−換算で0.043μg以下である(以下、これを「0.043μgSO2−/cm以下」と表すことがある。)。かかる粘着シートによると、硫黄含有ガス(特に、銀等の金属と反応して硫化物を形成し得るガス。例えばHS、SO)の発生が抑えられていることにより、上記金属の腐食(例えば、上記硫化物の形成)を効果的に防止または抑制することができる。また、水分散型アクリル系重合体の合成にあたり硫黄含有連鎖移動剤の使用を許容しているので、該重合体を適切な分子量に調節することが容易である。分子量が適切に調節されたアクリル系重合体を含む粘着剤組成物によると、より高性能な粘着シートが形成され得る。したがって、本発明によると、金属腐食防止性に優れ、且つ粘着性能の良い両面接着性粘着シートが提供され得る。
【0008】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記硫黄含有連鎖移動剤が、上記ガス発生試験において、上記硫黄含有ガスを実質的に発生しない連鎖移動剤である。かかる態様の粘着シートによると、より高レベルの金属腐食防止性が実現され得る。
【0009】
上記硫黄含有連鎖移動剤としては、メルカプト基の結合している炭素原子に結合する水素原子が一つ以下であるメルカプタン(該炭素原子に水素原子が結合していないメルカプタンを包含する。)や、該炭素原子が共鳴構造をとるメルカプタンを主成分(すなわち、硫黄含有連鎖移動剤のうちの50質量%以上を占める成分)とするものを好ましく使用し得る。かかるメルカプタンの好適例として、3級メルカプタンおよび芳香族メルカプタンが挙げられる。
【0010】
ここに開示される技術の適用対象は、基材の各面それぞれに上記粘着剤層を備えた両面接着性粘着シート(以下、両面粘着シートとも言う。)である。かかる構成の粘着シートでは、アクリル系重合体の分子量を調節することの重要性が特に大きい。したがって、水分散型アクリル系重合体の合成時に硫黄含有連鎖移動剤を使用し得ることが特に有意義である。
【0011】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様では、上記プラスチックフィルム基材のヤング率をY(kPa)、該基材の厚さをh(mm)としたとき、数式(A):E=Yhで表される曲げ弾性係数Eが5×10以下(より好ましくは0.001以上4.5×10以下、さらに好ましくは0.01以上4×10以下)であることが好ましい。
【0012】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様では、上記プラスチックフィルム基材の厚さが1μm以上300μm以下である。これにより、適度なコシや曲面追従性を有する両面接着性粘着シートを実現し得る。
【0013】
他の好ましい一態様では、上記プラスチックフィルム基材の両面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、またはイトロ処理が施されている。ここでイトロ処理とは、燃焼化学蒸着(combustion chemical vapor deposition:CCVD)により基材表面にナノレベルの酸化ケイ素膜を形成する表面改質処理一般を指す。これらの表面改質処理は、粘着剤層に対する基材表面の投錨性を向上し得る。
【0014】
他の好ましい一態様では、上記基材の表面に、オキサゾリン基を含有する下塗り層等が付与されている。基材表面の投錨性は、かかる処理によっても改善し得る。下塗り層は、表面が未処理の基材に付与してもよく、基材に上述のような表面改質処理を施してから付与してもよい。また、下塗り層の厚さは、好ましくは0.01μm以上3μm未満である。これにより、望ましい粘着特性を維持しつつ、粘着剤層の投錨性が向上された両面粘着シートを実現し得る。
【0015】
他の好ましい一態様では、上記プラスチックフィルム基材の表面における水接触角が0度以上90度以下である。これにより、粘着剤層の投錨性に優れた両面粘着シートを実現し得る。
【0016】
他の好ましい一態様では、上記プラスチックフィルム基材がポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルムは、寸法安定性、経済性(コスト)、加工性、引張強度、耐熱性等の観点から好ましい。
【0017】
ここに開示される技術により提供される両面粘着シートは、上述のように金属腐食ガスの放散量が極めて少ないことから、電子機器の内部で用いられる両面粘着シートとして好適である。例えば、回路基板、配線等の金属材料と共存する内部空間において接合に用いられる両面粘着シートとして好ましく使用され得る。したがって本発明は、他の側面として、上記粘着シートによる接合箇所を内部に有する電子機器を提供する。
【0018】
なお、本明細書により開示される内容には、以下のものが含まれる。
水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、その粘着剤層を支持するプラスチックフィルム基材と、を備える両面粘着シートであって、
該粘着剤組成物は、3級メルカプタンおよび芳香族メルカプタンからなる群から選択される少なくとも一種のメルカプタンを用いて合成されたアクリル系重合体を含み、
当該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄含有ガスの放散量が0.043μgSO2−/cm以下である、両面粘着シート。
【0019】
また、ここに開示されるいずれかの両面粘着シート(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて製造された両面粘着シートであり得る。)の好ましい一態様では、該粘着シートが以下の条件(a)〜(e)のうち少なくとも一つを満たす。したがって、この明細書により開示される内容には、ここに開示されるいずれかの両面粘着シートであって、さらに、以下の条件(a)〜(e)のうち少なくとも一つを満たす両面粘着シートが含まれる。
(a)トルエン放散量が粘着シート1g当たり20μg以下である。
(b)酢酸エチル放散量が粘着シート1g当たり20μg以下である。
(c)揮発性有機化合物(VOC)類の総放散量が粘着シート1g当たり500μg以下である。
(d)基材の流れ方向(Machine Direction;MD)の破断強度が130MPa以上500MPa以下である。
(e)基材の流れ方向(Machine Direction;MD)の破断伸度が50%以上300%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】金属腐食性試験を行う方法を模式的に示す説明図である。
【図4】曲面追従性試験において被着体に貼り付けられた試験片を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明において、同様の作用を奏する部材または部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0022】
本発明により提供される両面粘着シートは、ここに開示されるいずれかの水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を、プラスチックフィルム基材(支持体)の各面それぞれに有する形態の基材付き両面粘着シートである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本発明により提供される両面粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の両面粘着シートであってもよい。
【0023】
ここに開示される両面粘着シートは、例えば、図1〜図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す粘着シート1は、プラスチックフィルム基材10の第1および第2の面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22が設けられ、それらの粘着剤層が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す粘着シート2は、プラスチックフィルム基材10の第1および第2の面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22が設けられ、それらのうち粘着剤層21が、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有している。この種の粘着シート2は、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層22を剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、粘着剤層22もまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
【0024】
ここに開示される技術により提供される粘着シートは、当該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄含有ガスの放散量が0.043μgSO2−/cm以下(より好ましくは0.03SO2−/cm以下)であることによって特徴付けられる。このように金属腐食性および粘着特性に優れる粘着シートは、例えば、電子機器の内部において使用される粘着シートとして好適である。
【0025】
上記硫黄含有ガス放散量は、例えば、粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において当該粘着シートから放散した硫黄含有ガス(HS、SO等であり得る。)の質量をSO2−の質量として求め、その質量を上記粘着シートの面積で割ることにより算出することができる。より具体的には、例えば、後述する実施例に記載した硫黄含有ガス放散量測定方法により求めることができる。好ましい一態様では、粘着シートの硫黄含有ガス放散量が実質的にゼロ(例えば、後述のように0.1g程度の粘着シートを測定試料とする硫黄含有ガス放散量測定において検出限界未満、典型的には0.02μgSO2−/cm未満)である。
【0026】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、容積50mLの容器に該粘着シート1gと銀板(例えば、99.95%を超える純度の銀からなり、サイズが1mm×10mm×10mmの銀板を使用する。)とを互いに接触しないように収容し、該容器を密閉して85℃に一週間保持する金属腐食性試験(より具体的には、例えば、後述する実施例に記載の手順で行われる金属腐食性試験)において、上記銀板に腐食が認められない(特性D)。このように金属腐食防止性に優れた粘着シートは、電子機器の内部において使用される粘着シートとして特に好適である。なお、本発明において「銀板を腐食させない」とは、上記金属腐食性試験後(一週間経過後)の銀板と未使用(試験前)の銀板とを目視観察により比較して、外観変化(金属光沢の消失、着色等)が認められないことをいうものとする。
【0027】
粘着剤層の形成に使用される水分散型粘着剤組成物は、水分散型アクリル系重合体を含む。この水分散型アクリル系重合体は、アクリル系重合体が水に分散しているエマルション形態のアクリル系重合体組成物である。ここに開示される技術において、上記アクリル系重合体は、粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマー(粘着剤の基本成分)として用いられる。例えば、該粘着剤の50質量%以上が上記アクリル系重合体であることが好ましい。かかるアクリル系重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートを主構成単量体成分(モノマー主成分、すなわちアクリル系重合体を構成するモノマーの総量のうち50質量%以上を占める成分)とするものを好ましく採用し得る。
【0028】
なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0029】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基が挙げられる。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、これらのうちRが炭素原子数2〜14(以下、このような炭素原子数の範囲を「C2−14」と表すことがある。)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、RがC2−10のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。特に好ましいRとして、ブチル基および2−エチルヘキシル基が例示される。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが例示される。
【0031】
好ましい一つの態様では、アクリル系重合体の合成に使用するアルキル(メタ)アクリレートの総量のうち凡そ50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば凡そ90質量%以上)が、上記式(1)におけるRがC2−14(好ましくはC2−10、より好ましくはC4−8)のアルキル(メタ)アクリレートである。このようなモノマー組成によると、常温付近における貯蔵弾性率が粘着剤として好適な範囲となるアクリル系重合体が得られやすい。使用するアルキル(メタ)アクリレートの実質的に全部がC2−14アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0032】
ここに開示される技術におけるアクリル系重合体を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレート(BA)単独であってもよく、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)単独であってもよく、BAと2EHAとの二種であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートとしてBAおよび2EHAを組み合わせて用いる場合、それらの使用比率は特に制限されない。
【0033】
アクリル系重合体を構成するモノマー成分としては、アルキル(メタ)アクリレートが主成分となる範囲で、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマー(「共重合性モノマー成分」と称する場合がある。)が用いられていてもよい。アクリル系重合体を構成するモノマー成分の総量に対するアルキル(メタ)アクリレートの割合は、凡そ80質量%以上(典型的には80〜99.8質量%)とすることができ、好ましくは85質量%以上(例えば85〜99.5質量%)である。アルキル(メタ)アクリレートの割合が90質量以上(90〜99質量%)であってもよい。
【0034】
上記共重合性モノマー成分は、アクリル系重合体に架橋点を導入したり、アクリル系重合体の凝集力を高めたりするために役立ち得る。かかる共重合性モノマーは、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
より具体的には、アクリル系重合体に架橋点を導入するための共重合性モノマー成分として、各種の官能基含有モノマー成分(典型的には、熱により架橋する架橋点をアクリル系重合体に導入するための、熱架橋性官能基含有モノマー成分)を用いることができる。かかる官能基含有モノマー成分を用いることにより、被着体に対する接着力を向上させ得る。このような官能基含有モノマー成分は、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能であり、且つ架橋点となる官能基を提供し得るモノマー成分であればよく、特に制限されない。例えば、以下のような官能基含有モノマー成分を、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
カルボキシル基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の、エチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イコタン酸等)。
水酸基含有モノマー:例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の、不飽和アルコール類。
【0037】
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
アミノ基含有モノマー:例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
【0038】
エポキシ基を有するモノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル。
ケト基含有モノマー:例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
【0039】
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン。
【0040】
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0041】
このような官能基含有モノマー成分のうち、カルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物から選択される一種または二種以上を好ましく用いることができる。官能基含有モノマー成分の実質的に全部がカルボキシル基含有モノマーであってもよい。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸が例示される。これらの一方を単独で用いてもよく、アクリル酸とメタクリル酸とを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記官能基含有モノマー成分は、例えば、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対して凡そ12質量部以下(例えば凡そ0.5〜12質量部、好ましくは凡そ1〜8質量部)の範囲で用いることが好ましい。官能基含有モノマー成分の使用量が多すぎると、凝集力が高くなりすぎて粘着特性(例えば接着力)が低下傾向となることがあり得る。
【0043】
また、アクリル系ポリマーの凝集力を高めるために、上述した官能基含有モノマー以外の他の共重合成分を用いることができる。かかる共重合成分としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の、ビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の、芳香族ビニル化合物;シクロアルキル(メタ)アクリレート[シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート等]、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート[例えばフェニル(メタ)アクリレート]、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート]、アリールアルキル(メタ)アクリレート[例えばベンジル(メタ)アクリレート]等の、芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等の、オレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、イソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の、アルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等の、ビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。
【0044】
共重合性モノマー成分の他の例として、一分子内に複数の官能基を有するモノマーが挙げられる。かかる多官能モノマーの例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0045】
このようなモノマーを重合させて水分散型アクリル系重合体を得る方法としては、公知乃至慣用の重合方法を採用することができ、エマルション重合法を好ましく用いることができる。エマルション重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマーの一部または全部(典型的には全部)をあらかじめ水(典型的には、水とともに適当量の乳化剤が使用される。)と混合して乳化し、その乳化液(モノマーエマルション)を反応容器内に一括、連続あるいは分割して供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
【0046】
重合時に用いる重合開始剤としては、重合方法の種類に応じて、公知乃至慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、エマルション重合法において、アゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0047】
重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の、過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の、置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等が挙げられる。
【0048】
このような重合開始剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100質量部に対して0.005〜1質量部(典型的には0.01〜1質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0049】
ここに開示される技術の典型的な態様では、上記エマルション重合の際に、硫黄を構成原子として含む化合物からなる連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用する。かかる硫黄含有連鎖移動剤の種類および使用量は、粘着シートの目標性能、該粘着シートを構成する他の材料等を考慮して、上記硫黄含有ガス放散量が0.043μgSO2−/cm以下(好ましくは0.03μgSO2−/cm以下)となるように設定することができる。上記硫黄含有ガス放散量は、粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において当該粘着シートから放散した硫黄含有ガス(HS、SO等であり得る。)の質量をSO2−の質量に換算して求め、その質量を粘着シートの面積で割ることにより求められる。より具体的には、例えば、後述する実施例に記載した硫黄含有ガス放散量測定方法により求めることができる。好ましい一態様では、硫黄含有連鎖移動剤の使用に拘わらず、粘着シートの硫黄含有ガス放散量が実質的にゼロ(例えば、後述のように0.1g程度の粘着シートを測定試料とする硫黄含有ガス放散量測定において検出限界未満、典型的には0.02μgSO2−/cm未満)である。
【0050】
なお、所望の粘着性能を発揮するためには、モノマー成分100質量部に対する硫黄含有連鎖移動剤の使用量を凡そ0.001質量部以上(典型的には凡そ0.001〜5質量部)とすることが好ましい。通常は、モノマー成分100質量部に対して凡そ0.005〜2質量部(典型的には凡そ0.01〜1質量部)程度の硫黄含有連鎖移動剤を使用することにより好適な結果が実現され得る。例えば、両面粘着シート用の水分散型アクリル系重合体の合成において、上記範囲の使用量を好ましく採用し得る。
【0051】
ここに開示される技術では、硫黄含有連鎖移動剤として、C−SHで表わされる構造部分を有する化合物、すなわちメルカプタンを使用することができる。上記硫黄含有ガス放散量を満足する粘着シートを実現するためには、メルカプト基(−SH)の結合している炭素原子(C)に結合する水素原子(H)が一つのみであるメルカプタン(例えば、メルカプト基が2級炭素原子に結合しているメルカプタン、すなわち2級メルカプタン)、上記炭素原子に水素原子が結合していないメルカプタン(例えば、メルカプト基が3級炭素原子に結合しているメルカプタン)、および、上記炭素原子が共鳴構造をとるメルカプタン(芳香族メルカプタン等)、から選択される一種または二種以上のメルカプタンを主成分とする硫黄含有連鎖移動剤の使用が好ましい。かかる構造のメルカプタンは、該メルカプタンを用いて合成されたアクリル系重合体において硫黄含有ガスの発生源となり難い。したがって、かかるアクリル系重合体を含む水分散型粘着剤組成物によると、粘着性能がよく且つ金属腐食が防止された粘着シートが形成され得る。以下、上記のような構造をとるメルカプタンを「腐食防止型メルカプタン」ということもある。かかる腐食防止型メルカプタンは、メルカプト基の結合している炭素原子が、水素原子以外の任意の原子と結合した構造であり得る。例えば、メルカプト基の結合している炭素原子が他の2個または3個の炭素原子と結合した構造のメルカプタンを好ましく用いることができる。
【0052】
腐食防止型メルカプタンの一好適例として、メルカプト基が3級炭素原子(例えば、3級アルキル基)に結合した構造のメルカプタン、すなわち3級メルカプタンが挙げられる。3級メルカプタンの具体例としては、ターシャリーブチルメルカプタン、ターシャリーオクチルメルカプタン、ターシャリーノニルメルカプタン、ターシャリーラウリルメルカプタン、ターシャリーテトラデシルメルカプタン、ターシャリーヘキサデシルメルカプタン等が挙げられる。炭素原子数が4以上の3級アルキルメルカプタンを好ましく用いることができる。粘着剤組成物および粘着シートの臭気低減の観点からは、炭素原子数が6以上(より好ましくは8以上)の3級アルキルメルカプタンを選択することが有利である。炭素原子数の上限は特に限定されないが、典型的には20以下である。例えば、ターシャリーラウリルメルカプタンを好ましく使用し得る。
【0053】
腐食防止型メルカプタンの他の好適例として、芳香環またはヘテロ芳香環を構成する炭素原子にメルカプト基が結合した構造のメルカプタン、すなわち芳香族メルカプタンが挙げられる。例えば、炭素原子数が6〜20程度の芳香族メルカプタン、または炭素原子数が2〜20程度であってヘテロ原子を含むヘテロ芳香族メルカプタンを、好ましく用いることができる。
【0054】
上記芳香族メルカプタンは、芳香族性をもつ構造部分(典型的には芳香環)とメルカプト基との結合を骨格の少なくとも一部に有する化合物、その異性体、またはメルカプト基をもつ誘導体であり得る。芳香族メルカプタンの具体例としては、フェニルメルカプタン、4−トリルメルカプタン、4−メトキシフェニルメルカプタン、4−フルオロベンゼンチオール、2,4−ジメチルベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、4−フルオロベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、4−ブロモベンゼンチオール、4−ヨードベンゼンチオール、4−t−ブチルフェニルメルカプタン、1−ナフチルメルカプタン、1−アズレンチオール、1−アントラセンチオール、4,4’チオベンゼンチオール、等が挙げられる。
【0055】
上記ヘテロ芳香族メルカプタンは、ヘテロ原子を含む芳香環(ヘテロ芳香環)とメルカプト基との結合を骨格の少なくとも一部に有する化合物、その異性体、またはメルカプト基をもつ誘導体であり得る。ヘテロ芳香族メルカプタンの具体例としては、2−ピリジルメルカプタン、2−ピロリルメルカプタン、2−インドリルメルカプタン、2−フラニルメルカプタン、2−チオフェンチオール、2−ベンゾチオフェンチオール、2−メルカプトピリミジン、等が挙げられる。
【0056】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、アクリル系重合体の合成に使用する硫黄含有連鎖移動剤のうち腐食防止型メルカプタンの占める割合が凡そ60質量%以上であり、より好ましくは凡そ75質量%以上、さらに好ましくは凡そ90質量%以上である。硫黄含有連鎖移動剤の実質的に全部が腐食防止型メルカプタンであってもよい。ここに開示される技術において使用する硫黄含有連鎖移動剤に含まれる腐食防止型メルカプタンの種類は、一種類であってもよく、二種類以上であってもよい。例えば、実質的にターシャリーラウリルメルカプタン(複数の構造異性体の混合物であり得る。)からなる連鎖移動剤を好ましく用いることができる。
【0057】
このような腐食防止型メルカプタンの使用により粘着シートの硫黄含有ガス放散量を効果的に低減し得る理由は、例えば以下のように推察される。メルカプタンを用いて合成されたアクリル系重合体は、該メルカプタンの残基として、硫黄を含む構造部分を有するものとなり得る。この構造部分が化学変化を受けると、低分子量の硫黄含有ガスとなってアクリル系重合体から脱離し、金属を腐食させる要因となり得るものと考えられる。しかし、上記腐食防止型メルカプタンでは、硫黄に隣接する炭素原子が、嵩高い原子団や、π電子をもつ原子または原子団と結合しているため、硫黄を含む構造部分がアクリル系重合体から脱離し難いものと考えられる。
【0058】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、硫黄含有連鎖移動剤として、上記ガス発生試験において硫黄含有ガスを実質的に発生しないもの(換言すれば、該試験における硫黄含有ガス発生量に実質的に寄与しない硫黄含有連鎖移動剤)を使用する。上述のような3級メルカプタン(例えば3級アルキルメルカプタン)および芳香族メルカプタンは、硫黄含有ガス発生量に実質的に寄与しない硫黄含有連鎖移動剤として採用し得る材料の典型例である。
【0059】
なお、上記以外の硫黄含有連鎖移動剤についても、ここに開示される好ましい硫黄含有ガス放散量を実現し得る限り、使用することは可能である。かかる連鎖移動剤としては、n−ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等の、1級炭素原子に結合したメルカプト基を少なくとも一つ有する構造のメルカプタン(以下、1級メルカプタンともいう。)が例示される。ただし、連鎖移動剤として1級メルカプタンのみを使用する態様では、硫黄含有ガス放散量をここに開示される好ましい範囲にまで低減しつつ所望の粘着性能を実現することは困難である。したがって、1級メルカプタンを用いる場合には、上述のような腐食防止型メルカプタンまたは硫黄含有ガスの発生に寄与しないメルカプタンと組み合わせて使用することが望ましい。あるいは、1級メルカプタンを実質的に使用しなくてもよい。
【0060】
また、硫黄含有連鎖移動剤に加えて、硫黄を構成原子としない構造の連鎖移動剤(硫黄フリー連鎖移動剤)を使用してもよい。例えば、α−メチルスチレンダイマー;α−ピネン、リモネン、テルピノーレン等のテルペン類;等を用いることができる。
【0061】
かかるエマルション重合によると、アクリル系重合体が水に分散したエマルション形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における水分散型アクリル系重合体としては、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施したものを好ましく用いることができる。あるいは、エマルション重合方法以外の重合方法(例えば、溶液重合、光重合、バルク重合等)を利用してアクリル系重合体を合成し、該重合体を水に分散させて調製された水分散型アクリル系重合体を用いてもよい。
【0062】
水分散型アクリル系重合体の調製に当たっては、必要に応じて乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれも使用可能である。通常は、アニオン系またはノニオン系の乳化剤の使用が好ましい。このような乳化剤は、例えば、モノマー成分をエマルション重合させる際や、他の方法で得られたアクリル系重合体を水に分散させる際等に好ましく使用することができる。
【0063】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム等の、アルキル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の、スルホン酸塩型アニオン系乳化剤;スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等の、スルホコハク酸型アニオン系乳化剤;等が挙げられる。
【0064】
また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー;等が挙げられる。上記のようなアニオン系またはノニオン系乳化剤にラジカル重合性基(プロペニル基等)が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。
【0065】
このような乳化剤は、一種を単独で用いてもよく、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量は、アクリル系ポリマーをエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であればよく、特に制限されない。例えば、アクリル系共重合体100質量部当たり、固形分基準で例えば凡そ0.2〜10質量部(好ましくは凡そ0.5〜5質量部)程度の範囲から選択することが適当である。
【0066】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、水分散型アクリル系重合体に加えて、さらに粘着付与樹脂を含有し得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等、の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
具体的には、ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0068】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂;これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂としては、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等が例示される。
【0069】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂としては、炭素数4〜5程度のオレフィンおよびジエンから選択される一種または二種以上の脂肪族炭化水素の重合体等が例示される。上記オレフィンの例としては、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂としては、炭素数8〜10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等が例示される。脂肪族系環状炭化水素樹脂としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂;環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物;芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂;等が例示される。
【0070】
ここに開示される技術では、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。かかる粘着付与樹脂によると、より高性能な(例えば、接着性の高い)粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ170℃以下(典型的には凡そ160℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902に規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0071】
このような粘着付与樹脂は、該樹脂を水に分散させたエマルションの形態で好ましく使用され得る。上記粘着付与樹脂エマルションは、必要に応じて乳化剤を用いて調製されたものであり得る。乳化剤としては、水分散型アクリル系重合体の調製に使用し得る乳化剤と同様のものから、一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。通常は、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤の使用が好ましい。なお、水分散型アクリル系重合体の調製に用いる乳化剤と、粘着付与樹脂エマルションの調製に用いる乳化剤とは、同一でもよく異なってもよい。例えば、いずれのエマルションの調製にもアニオン系乳化剤を用いる態様、いずれにもノニオン系乳化剤を用いる態様、一方にはアニオン系、他方にはノニオン系の乳化剤を用いる態様、等を好ましく採用し得る。乳化剤の使用量は、粘着付与樹脂をエマルションの形態に調製可能な量であれば特に制限されず、例えば、粘着付与樹脂100質量部(固形分基準)に対して0.2〜10質量部(好ましくは0.5〜5質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0072】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、アクリル系重合体100質量部に対して、粘着付与樹脂を凡そ10〜100質量部(より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜60質量部)の割合で使用することが好ましい。
【0073】
上記水分散型粘着剤組成物には、必要に応じて架橋剤が用いられていてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、公知乃至慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等)から適宜選択して用いることができる。ここで使用する架橋剤としては、油溶性および水溶性のいずれも使用可能である。架橋剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系重合体100質量部に対して凡そ10質量部以下(例えば凡そ0.005〜10質量部、好ましくは凡そ0.01〜5質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0074】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤(増粘剤等)、レベリング剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、界面活性剤、帯電防止剤、防腐剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。
【0075】
ここに開示される技術における粘着剤層は、上述のような水分散型粘着剤組成物を所定の面上に付与して乾燥または硬化させることにより好適に形成することができる。粘着剤組成物の付与(典型的には塗布)に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等)を用いることができる。粘着剤層の厚みは特に限定されず、例えば凡そ2μm〜200μm(好ましくは凡そ5μm〜100μm)程度であり得る。
【0076】
かかる粘着剤層を備える両面粘着シートは種々の方法で作製され得る。例えば、基材の各面それぞれに粘着剤組成物を直接付与して乾燥または硬化させることで粘着剤層を形成し、それらの粘着剤層それぞれに剥離ライナーを積層する方法;剥離ライナー上に形成した粘着剤層を基材の各面それぞれに貼り合わせ、該粘着剤層を基材にそれぞれ転写するとともに上記剥離ライナーをそのまま粘着剤層の保護に利用する方法;等を採用することができる。また、基材の第1面と第2面とで異なる方法を採用してもよい。
【0077】
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)製フィルム、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)製フィルム、塩化ビニル系樹脂製フィルム、酢酸ビニル系樹脂製フィルム、ポリイミド系樹脂製フィルム、ポリアミド系樹脂製フィルム、フッ素系樹脂製フィルム、その他セロハン類等のプラスチックフィルム類を用いることができる。上記プラスチックフィルム類は、無延伸タイプであってもよく、延伸タイプ(一軸延伸タイプまたは二軸延伸タイプ)であってもよい。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0078】
特に好ましい基材として、ポリエステルフィルムが例示される。ポリエステルフィルムは、寸法安定性、経済性(コスト)、加工性、引張強度等の観点から好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエステルを主体とする樹脂材料(典型的には、かかる重縮合体を主成分とする樹脂材料)をフィルム状に成形してなる種々のフィルムを使用可能である。ここでポリエステルとは、多価カルボン酸とポリアルコール(典型的には、ジカルボン酸とジオール)との重縮合体をいう。好ましく使用されるポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が例示される。なかでもPETフィルムの使用が好ましい。
【0079】
上記基材としては、該基材のヤング率をY(kPa)、厚さをh(mm)としたときに、数式(A):E=Yhで表される曲げ弾性係数Eが凡そ5×10以下(より好ましくは0.001以上4.5×10以下、更に好ましくは0.01以上4×10以下)であることが好ましい。上記範囲より高すぎると、曲がりや段差のある接合面に貼付する際の該接合面に対する追従性(曲面追従性)が低下し、剥がれやすくなる場合がある。なお、ここでいうヤング率Yとしては、ASTM D882に準拠して測定された値を採用するものとする。
【0080】
上記のプラスチックフィルム基材としては、破断強度が好ましくは凡そ130MPa以上500MPa以下(より好ましくは凡そ140MPa以上480MPa以下、更に好ましくは凡そ150MPa以上460MPa以下)のものを用いる。これにより、加工時や貼付時において粘着シートが切れたり伸びたりしにくくなる。従って、家電やOA機器等の各種電子機器における部品の接合等にも好適な両面粘着シートが実現され得る。破断強度が上記範囲より低すぎると、貼付する際粘着シートに破れや伸びが生じ、取扱性が低下する場合がある。また、上記範囲より高すぎると、曲面に貼る際の該曲面への追従性(曲面追従性)が低下し、剥がれやすくなる場合がある。なお、ここでいう破断強度は、流れ方向(MD)に対し、JIS C 2151に準拠して測定された値として定義される。
【0081】
また、破断伸度は、凡そ50%以上300%以下(より好ましくは凡そ60%以上270%以下、更に好ましくは70%以上250%以下)であることが好ましい。これにより、曲面追従性に優れ、かつ寸法安定性の高い両面粘着シートを形成し得る。したがって、家電やOA機器等の各種電子機器における部品の接合等にも好適な両面粘着シートが実現され得る。破断伸度が上記範囲より低すぎると、曲面追従性が低下する場合がある。また、上記範囲より高すぎると、貼付時に伸びる等の不都合が生じやすく、取り扱いにくくなる場合がある。なお、ここでいう破断伸度は、流れ方向(MD)に対し、JIS C 2151に準拠して測定された値として定義される。
【0082】
なお、上記基材の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択できるが、通常は1μm〜500μm程度である。
【0083】
上記基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。基材の表面(特に、粘着剤層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、イトロ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、粘着剤層の基材投錨性を高めるための処理であり得る。
【0084】
下塗り剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する化合物の水分散液等を用いることができる。下塗り層は、かかる下塗り剤を基材に付与した後、適温で乾燥することにより形成され得る。下塗り層の厚さは、凡そ0.001μm以上3μm未満(好ましくは0.01μm〜2μm、より好ましくは0.03μm〜1μm)であることが好ましい。これらの表面処理は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて行うことができる。例えば、コロナ放電処理を施した基材上に下塗り層を付与することができる。
オキサゾリン下塗り層の形成に使用可能な市販品としては、株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスWS−500」、同「エポクロスWS−700」、同「エポクロスK−1000」シリーズ、同「エポクロスK−2000」シリーズ、同「エポクロスK−3000」シリーズ等が例示される。
【0085】
基材表面における水の接触角は、0度以上90度以下(例えば0度以上88度以下)であることが好ましい。通常は、上記接触角が30度以上90度以下であることが好ましく、50度以上90度以下がより好ましい。上記接触角が80度〜90度であってもよい。このような接触角が実現されるように基材を選択し、あるいは必要に応じて上記のような表面処理を施すことができる。
なお、ここで水接触角の測定対象となる基材表面は、粘着剤層が形成される表面である。従って、例えば、上述のような表面処理が施された基材では、表面処理が行われた後の基材表面において水接触角を測定する。
【0086】
基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般には凡そ10μm〜500μm程度であり、好ましくは凡そ1μm〜300μm(より好ましくは1μm〜250μm、更に好ましくは1μm〜200μm)程度である。上記範囲より厚すぎると、曲面追従性が不足しがちとなる場合があり、薄すぎると、粘着シートの取扱性が低下する、被着体から剥がす際に粘着シートが破れる等の不具合が生じることがある。
【0087】
粘着剤層を保護または支持する剥離ライナー(保護および支持の機能を兼ね備えるものであり得る。)としては、その材質や構成に特に制限はなく、公知の剥離ライナーから適当なものを選択して用いることができる。例えば、基材の少なくとも一方の表面に剥離処理が施された(典型的には、剥離処理剤による剥離処理層が設けられた)構成の剥離ライナーを好適に用いることができる。この種の剥離ライナーを構成する基材(剥離処理対象)としては、各種プラスチックフィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体等を適宜選択して用いることができる。上記剥離処理層を形成する剥離処理剤としては、公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤)を用いることができる。また、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等)または低極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等)からなる低接着性の基材を、該基材の表面に剥離処理を施すことなく剥離ライナーとして用いてもよい。あるいは、かかる低接着性基材の表面に剥離処理を施したものを剥離ライナーとして用いてもよい。
【0088】
剥離ライナーを構成する基材や剥離処理層の厚みは特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。剥離ライナーの総厚み(基材表面に剥離処理層を有する構成の剥離ライナーでは、基材および剥離処理層を含む全体の厚さ)は、例えば凡そ15μm以上(典型的には凡そ15μm〜500μm)であることが好ましく、凡そ25μm〜500μmであることがより好ましい。
【0089】
また、粘着剤層を形成する際に架橋を行う場合、架橋剤の種類(例えば、加熱により架橋する熱架橋タイプの架橋剤、紫外線照射により架橋する光架橋タイプの架橋剤など)に応じて、所定の製造過程で、公知乃至慣用の架橋方法により架橋を行うことができる。例えば、用いられている架橋剤が、熱架橋タイプの架橋剤である場合、水分散型アクリル系粘着剤を塗布した後、乾燥させる際に、この乾燥と並行して又は同時に、熱架橋反応を進行させて架橋を行うことができる。具体的には、熱架橋タイプの架橋剤の種類に応じて、架橋反応が進行する温度以上の温度に加熱することにより、乾燥とともに架橋を行うことができる。
【0090】
ここに開示される技術では、粘着剤層を構成する粘着剤の溶剤不溶分(アクリル系重合体の架橋体)の割合は特に制限されないが、通常は、例えば粘着剤層全体の凡そ15〜70質量%程度であることが望ましい。上記溶剤不溶分とは、架橋後の粘着剤を酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合を指す。また、この場合、上記粘着剤の溶剤可溶分(該粘着剤をテトラヒドロフランで抽出して得られたアクリル系重合体)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算の値として、例えば凡そ10万〜200万(好ましくは凡そ20万〜160万)の範囲にあることが望ましい。この質量平均分子量は、一般的なGPC装置(例えば、TOSOH社製のGPC装置、型式「HLC−8120GPC」、使用カラム「TSKgel GMH−H(S)」)により測定することができる。なお、上記溶剤不溶分の割合や、溶剤可溶分の質量平均分子量は、例えば、モノマー成分全量に対する官能基含有モノマー成分の割合、連鎖移動剤の種類やその割合、架橋剤の種類やその割合などを適宜調整することにより、任意に設定することができる。
【0091】
ここに開示される両面粘着シートは、該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄含有ガスの放散量が0.043μgSO2−/cm以下(好ましくは0.03μgSO2−/cm以下)であることによって特徴づけられる。金属腐食防止性の観点からは、粘着シートからの硫黄含有ガス放散量が、上記値以下であってなるべく低い値であることが望ましい。そのため、ここに開示される両面粘着シートの構成材料およびその製造過程で使用される材料としては、アクリル系重合体の合成に使用される連鎖移動剤に限らず他の材料についても、硫黄含有ガスの発生源となり得る材料の使用を避けるかその使用量を抑えることが望ましい。例えば、アクリル系重合体の合成に用いられる連鎖移動剤以外の材料(乳化剤、重合開始剤等)、粘着付与樹脂、粘着付与樹脂エマルションに含有され得る乳化剤その他の各種添加剤、架橋剤、水分散型粘着剤組成物に配合し得る各種添加剤、両面粘着シートの基材およびその添加剤等について、硫黄含有ガスを発生し難いものを選定することが好ましい。このことによって、硫黄含有連鎖移動剤を用いて良好な粘着性能を確保しつつ、該粘着シートの金属腐食防止性を一層高めることができる。好ましい一態様では、上記ガス発生試験において、両面粘着シートからの硫黄含有ガス放散量のうち、連鎖移動剤以外の材料の寄与分(すなわち、連鎖移動剤以外の材料に由来する硫黄含有ガス発生量)が実質的にゼロである。
【0092】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様では、上記ガス発生試験において、両面粘着シートからの硫黄含有ガス放散量のうち、硫黄含有連鎖移動剤の寄与分(すなわち、硫黄含有連鎖移動剤に由来する硫黄含有ガス発生量)が0.03μgSO2−/cm以下(より好ましくは0.02μgSO2−/cm未満)である。かかる態様によると、両面粘着シートから放散する硫黄含有ガスの総量を0.043μgSO2−/cm以下に抑えることが容易である。例えば、硫黄含有連鎖移動剤の材料およびその使用量の選択肢がより広がるので好ましい。好ましい一態様では、硫黄含有連鎖移動剤に由来する硫黄含有ガス発生量が実質的にゼロ(典型的には0.02μgSO2−/cm未満)である。
【0093】
ここに開示される技術は、硫黄含有ガス(HS、SO等)と反応して変質(硫化物の形成等)し得る各種金属の腐食防止に適用され得る。このような腐食対象金属としては、銀、銅、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛等の遷移金属類;アルミニウム、インジウム、スズ、鉛等の、典型元素に含まれる金属類;等が挙げられる。硫黄含有ガスによる腐食を受けやすいこと、基板や配線の構成材料として広く用いられていることから、特に好ましい腐食防止対象金属として銀および銀合金(銀を主成分とする合金)が挙げられる。ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様によると、該粘着シート(粘着剤層および基材を含むが剥離ライナーを含まない。)1.0gと銀板とを、容積50mLの密閉空間内に非接触の状態で配置して85℃に1週間保持した場合に、目視観察において上記銀板に腐食を示す外観変化(例えば、金属光沢の低下または消失、黒ずみ等の着色)が認められない程度の金属腐食防止性が実現され得る。
【0094】
ここに開示される両面粘着シートによると、上述のように硫黄含有ガスの放散が高度に抑制されていることにより、金属の腐食およびそれに伴う不具合(接触不良、外観品質の低下等)を確実に防止または抑制することができる。そのため、上記粘着シートは、例えば、テレビ(液晶テレビ、プラズマテレビ、ブラウン管テレビ等)、コンピュータ(ディスプレイ、本体等)、音響機器、その他の各種家電製品、OA機器等の筐体内部において、部品の接合、隙間の封止(シーリング)、振動や衝撃の緩衝、等の目的に好ましく使用することができる。特に、電子機器の使用により筐体内の温度が上がりやすく、このため硫黄含有ガスの発生や金属の腐食が促進されやすい環境(液晶テレビの筐体内等)で使用される粘着シートとして好適である。ここに開示される粘着シートによると、かかる使用態様においても高い金属腐食防止性が発揮され得る。
【0095】
ここに開示される両面粘着シートは、水分散型アクリル系重合体を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備え、上記アクリル系重合体の合成に硫黄含有連鎖移動剤が用いられることから、高レベルの金属腐食防止性とともに、優れた粘着性能を示すものとなり得る。したがって、かかる粘着シートは、電子機器の内部その他の箇所において、高い粘着性能(例えば接着力)が要求される部品接合用両面粘着シートとして好適に使用され得る。両面粘着シートでは、基材によく接着させて粘着剤層を形成することが重要であり、また高い粘着性能を要求される傾向にあることから、硫黄含有連鎖移動剤を使用して分子量を調節し得ることが特に有意義である。特に限定するものではないが、両面粘着シートを構成する粘着剤層の厚みは、片面当たり、例えば凡そ20μm〜150μm程度であり得る。
【0096】
ここに開示される技術によると、ステンレス板(SUS:BA304)に対する粘着力(後述する粘着力測定により把握され得る。)が凡そ1.5N/20mm以上(典型的には1.5N〜20N/20mm以上)の両面粘着シートが提供され得る。好ましい態様によると、上記粘着力が凡そ3N/20mm以上(より好ましくは凡そ4N/20mm以上、例えば5N/20mm以上)の両面粘着シートが提供され得る。また、ここに開示される技術によると、フェノール樹脂板に貼り付けた場合に40℃における1時間後のズレ距離が20mm未満となる程度の保持力(後述する保持力測定により把握され得る。)を示す両面粘着シートが提供され得る。好ましい態様によると、上記ズレ距離が15mm以下(より好ましくは10mm以下、例えば1mm以下)となる程度の保持力を示す両面粘着シートが提供され得る。上記粘着力および保持力の両方を満足する両面粘着シートが好適である。
【0097】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートを80℃で30分間加熱したとき、トルエンが放散されないか、あるいはトルエン放散量(以下、単に「トルエン放散量」ということもある。)が該粘着シート1g当たり20μg以下(以下、これを「20μg/g」等と表記することもある。)である。
なお、トルエン放散量としては、下記のトルエン放散量測定方法により得られた値を採用する。
【0098】
[トルエン放散量測定方法]
各両面粘着シートから所定のサイズ(面積:5cm)を切り取って試料を作製し、該試料をバイアル瓶に入れて密栓する。その後、試料を入れたバイアル瓶を80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mLをヘッドスペースオートサンプラーによりガスクロマトグラフ測定装置(GC測定装置)に注入してトルエンの量を測定し、試料(両面粘着シート)1g当たりのトルエンの含有量(放散量)[μg/g]を算出し、定量する。
なお、ここで両面粘着シート1g当たりのトルエン含有量を算出する基準となる両面粘着シートの質量は、基材と該基材の各面それぞれに設けられた粘着剤層とを含む全体の質量とし、剥離ライナーの質量は含まない。
【0099】
ここに開示される両面粘着シートの他の好ましい一態様では、該粘着シートを80℃で30分間加熱したとき、酢酸エチルが放散されないか、あるいは酢酸エチル放散量(以下、単に「酢酸エチル放散量」ということもある。)が該粘着シート1g当たり20μg以下(以下、これを「20μg/g」等と表記することもある。)である。
なお、酢酸エチル放散量としては、上記のトルエン放散量測定方法に準じて酢酸エチル放散量を測定して得られた値を採用するものとする。
【0100】
また、他の好ましい一態様では、両面粘着シートを80℃で30分間加熱したときの揮発性有機化合物(VOC)類の総放散量(以下、「TVOC量」ともいう。)が該粘着シート1g当たり500μg以下である。
なお、TVOC量としては、下記のTVOC量測定方法により得られた値を採用する。
【0101】
[TVOC量測定方法]
上記トルエン放散量測定方法と同様に作製した試料を入れたバイアル瓶を80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mLをヘッドスペースオートサンプラーによりGC測定装置に注入する。得られたガスクロマトグラムに基づいて、粘着剤組成物の作製に使用した材料から予測される揮発物質(残存モノマー、粘着付与樹脂エマルジョンに含まれる溶剤等)については標準物質によりピークの帰属および定量を行い、その他の(帰属困難な)ピークについてはトルエン換算として定量することにより、試料(粘着シート)1g当たりのTVOC量[μg/g]を求める。
なお、ここで両面粘着シート1g当たりのTVOC量を算出する基準となる両面粘着シートの質量は、基材と該基材の各面それぞれに設けられた粘着剤層とを含む全体の質量とし、剥離ライナーの質量は含まない。
【0102】
なお、上記トルエン放散量、酢酸エチル放散量およびTVOC量のいずれの測定についても、ガスクロマトグラフの条件は次の通りとする。
・カラム:DB−FFAP 1.0μm(直径0.535mm×30m)
・キャリアガス:He 5.0mL/min
・カラムヘッド圧:23kPa(40℃)
・注入口:スプリット(スプリット比12:1、温度250℃)
・カラム温度:40℃(0min)−<+10℃/min>−250(9min)[40℃より、昇温速度10℃/minで250℃まで昇温させた後、250℃で9分間保持させるという意味]
・検出器:FID(温度250℃)
【0103】
トルエン放散量、酢酸エチル放散量およびTVOC量のうち一または二以上が上述した好ましい特性を示す両面粘着シートは、高度な低VOC化が求められる分野を含む種々の分野において好適に利用され得る。例えば、該粘着シートが閉空間で使用される用途、より具体的には車両内装材等の車両(典型的には自動車)用材料や住宅建材等の住宅用材料を固定する用途等に好適である。
【0104】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0105】
<例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水30部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌して窒素置換を行った。この反応容器に、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社製品、商品名「VA−057」)0.1部を加えた。系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションとしては、ブチルアクリレート70部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、アクリル酸5部、ターシャリーブチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.03部、およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.5部(固形分換算)を、イオン交換水70部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、さらに3時間60℃に保持し、次いで過酸化水素水0.075部およびアスコルビン酸0.15部を添加し、水分散型アクリル系重合体を合成した。上記で得られた重合反応液を室温まで冷却した後、10%アンモニア水の添加によりpHを7に調整した。固形分換算で、この反応液100部に対し荒川化学工業株式会社製の商品名「タマノルE−100」(テルペンフェノール系樹脂含有粘着付与剤)20部を加え、本例に係る水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0106】
上記粘着剤組成物を、両面にコロナ放電処理を施した厚さ23μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)の第1面に乾燥後の厚さが60μmになるように塗布し、120℃で3分間乾燥して粘着剤層を形成した。その粘着剤層に、両面がシリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離面となっている剥離ライナーの重剥離面(他方の面に比べて弱く剥離処理された面)を貼り合わせた。次いで、この基材の第2面(第1面とは反対側の面)にも、第1面と同様にして粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着シートを作製した。
【0107】
<例2>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水30部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌して窒素置換を行った。この反応容器に、過硫酸アンモニウム0.3部を加えた。系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションとしては、ブチルアクリレート80部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、アクリル酸3部、メタクリル酸2部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製品、商品名「KBM−503」)0.05部、ターシャリーラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)(東京化成工業株式会社製、商品名「ターシャリーラウリルメルカプタン」)0.05部、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(乳化剤)(第一工業製薬株式会社製、商品名「ハイテノールLA−16」)1.5部(固形分換算)を、イオン交換水70部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、さらに3時間60℃に保持し、次いで過酸化水素水0.075部およびアスコルビン酸0.15部を添加し、水分散型アクリル系重合体を合成した。上記で得られた重合反応液を室温まで冷却した後、10%アンモニア水の添加によりpHを7に調整した。固形分換算で、この反応液100部に対し荒川化学工業株式会社製の商品名「スーパーエステルE−720」(安定化ロジンエステル樹脂脂含有の水分散型粘着付与剤)20部を加え、本例に係る水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0108】
両面にコロナ放電処理を施した厚さ50μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)の第1面に、下塗り剤として株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスK−2020E」(オキサゾリン基含有アクリル系エマルション)を乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布し、100℃で乾燥して下塗り層を形成した。基材の第2面にも同様にして下塗り層を形成した。基材第1面の下塗り層上に、上記粘着剤組成物を乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、120℃で3分間乾燥して第1の粘着剤層を形成した。この第1の粘着剤層に、例1で用いたものと同じ剥離ライナーの重剥離面を貼り合わせた。基材第2面の下塗り層上にも、第1面と同様にして第2の粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着シートを作製した。
【0109】
<例3>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水30部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌して窒素置換を行った。この反応容器に、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社製品、商品名「VA−057」)0.1部を加えた。系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションとしては、ブチルアクリレート70部、2−エチルヘキシルアクリレート25部、アクリル酸5部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製品、商品名「KBM−503」)0.05部、フェニルメルカプタン(連鎖移動剤)0.03部、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.5部(固形分換算)を、イオン交換水70部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、さらに3時間60℃に保持し、次いで過酸化水素水0.075部およびアスコルビン酸0.15部を添加し、水分散型アクリル系重合体を合成した。上記で得られた重合反応液を室温まで冷却した後、10%アンモニア水の添加によりpHを7に調整した。固形分換算で、この反応液100部に対し荒川化学工業株式会社製の商品名「タマノルE−100」(テルペンフェノール系樹脂含有粘着付与剤)20部を加え、本例に係る水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0110】
両面にコロナ放電処理を施した厚さ23μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)の第1面に、下塗り剤として株式会社日本触媒製の商品名「エポクロスK−2020E」(オキサゾリン基含有アクリル系エマルション)を乾燥後の厚さが0.1μmになるように塗布し、100℃で乾燥して下塗り層を形成した。基材の第2面にも同様にして下塗り層を形成した。基材第1面の下塗り層上に、上記粘着剤組成物を乾燥後の厚さが60μmになるように塗布し、120℃で3分間乾燥して第1の粘着剤層を形成した。この第1の粘着剤層に、例1で用いたものと同じ剥離ライナーの重剥離面を貼り合わせた。基材第2面の下塗り層上にも、第1面と同様にして第2の粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着シートを作製した。
【0111】
<例4>
本例では、例1のターシャリーブチルメルカプタンに代えて、ターシャリーラウリルメルカプタン(東京化成工業株式会社製、商品名「ターシャリーラウリルメルカプタン」)0.05部を使用した。その他の点については例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物および両面にコロナ放電処理を施した厚さ2μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)を使用した以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0112】
<例5>
本例では、例4の粘着剤組成物および両面にコロナ放電処理を施した厚さ188μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)を使用した以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0113】
<例6>
本例では、例1のターシャリーブチルメルカプタンに代えて、n−ラウリルメルカプタン0.05部を使用した。その他の点については例1と同様にして水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を使用した以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0114】
<例7>
本例では、例1の基材に代えて、両面にコロナ放電処理を施した厚さ250μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)を用いた以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0115】
<例8>
本例では、例1の基材に代えて、両面にコロナ放電処理を施した厚さ342μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)を用いた以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0116】
<例9>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にブチルアクリレート95部、アクリル酸5部、ターシャリーブチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.01部、およびトルエン150部を入れ、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して容器内を窒素置換した。この反応液を60℃に加熱し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.1部を加えた。系を63℃に保ちつつ重合反応を7時間行い、アクリル系重合体を合成した。このアクリル系重合体の重量平均分子量は4.5×10であった。固形分換算で、この反応液100部に対し、商品名「二カノールH−80」(三菱ガス化学株式会社製、水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド系粘着付与樹脂)30部、商品名「EDP−300」(旭電化株式会社製、窒素原子含有ヒドロキシ化合物)0.05部、および商品名「コロネートL」(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート化合物)4部を添加し、よく混合して本例に係る粘着剤組成物を得た。
【0117】
両面無処理の厚さ23μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)の第1面に、この粘着剤組成物を乾燥後の厚さが60μmになるように塗布し、110℃で3分間乾燥して第1の粘着剤層を形成した。この第1の粘着剤層に、例1で用いたものと同じ剥離ライナーの重剥離面を貼り合わせた。この基材の第2面にも、第1面と同様にして第2の粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせて両面粘着シートを作製した。
【0118】
<例10>
本例では、例9のトルエン150部に代えて酢酸エチル250部を使用した以外は例8と同様にしてアクリル系重合体を合成した。得られたアクリル系重合体の重量平均分子量は7.0×10であった。
この反応液を使用した以外は例9と同様にして、両面粘着シートを作製した。
【0119】
<例11>
本例では、例1の基材に代えて両面無処理の厚さ23μmのPETフィルム基材(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)を使用した以外は例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0120】
上記で得られた各粘着シートについて、以下の測定または評価を行った。それらの結果を表1および2に示す。表1には、各例において使用した連鎖移動剤の種類を、表2には、プラスチック基材の特性(厚さ、ヤング率、曲げ弾性係数、破断強度、破断伸度)を合わせて示している。なお、トルエン放散量、酢酸エチル放散量およびTVOC量の測定は、それぞれ上述した方法により行った。
【0121】
<粘着力測定>
両面粘着シートの第1の剥離ライナー(基材の第1面に設けられた粘着剤層を保護する剥離ライナー)を剥がし、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを試験片とした。上記試験片の第2の剥離ライナーを剥がし、2kgのローラーを1往復させてステンレス(SUS:BA304)板に圧着した。これを23℃に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、温度23℃、RH50%の測定環境にて引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力を測定した。
【0122】
<硫黄含有ガス放散量の測定>
両粘着面から剥離ライナーを剥がした各粘着シート約0.1gを燃焼装置用試料ボートに載せ、燃焼装置(ダイアインスツルメンツ社製の自動試料燃焼装置、型式「AQF−100」)を用いて85℃で1時間加熱した。このとき粘着シートから発生したガスを10mLの吸収液に通過させた。この吸収液は、純水に30ppmの過酸化水素を含ませたものであって、上記発生ガスに含まれ得る硫黄含有ガス(HS、SO等)をSO2−に変換して捕集することができる。上記発生ガスを通過させた後の吸収液に純水を加えて20mLの容量に調整し、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、商品名「DX−320」)を用いてSO2−の定量分析を行うことにより、粘着シート1g当たりのSO2−発生量を求めた。なお、上記試料ボートが空の状態で同様の操作を行ったものをブランクとした。得られた結果を、各粘着シートの面積当たりのSO2−発生量に換算した。これらの結果を表1に示す。
【0123】
[自動試料燃焼装置の運転条件]
温度:Inlet 85℃、Outlet 85℃
ガス流量:O 400mL/分、Ar(送水ユニット:目盛0)150mL/分
【0124】
[イオンクロマトグラフ(アニオン)による測定条件]
分離カラム:IonPac AS18(4mm×250mm)
ガードカラム:IonPac AG18(4mm×50mm)
除去システム:ASRS-ULTRA(エクスターナルモード、75mA)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:13mM KOH(0〜20分)
30mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量:1.0mL/分
試料注入量:250μL
【0125】
<金属腐食性試験>
両粘着面から剥離ライナーを剥がした各粘着シート(基材およびその両面に設けられた粘着剤層からなる。)1.0gと、研磨した銀板(銀純度>99.95%、サイズ1mm×10mm×10mm)とを用意し、図3に示す金属腐食性試験器50を使用して粘着シートの金属腐食性を評価した。すなわち、容積50mLの透明ガラス製スクリュー管瓶52内に、上記粘着シート54と上記銀板56とを、直接接触しないように入れて密閉した。より具体的には、スクリュー管瓶52の底面上に銀板56を配置し、スクリュー管瓶蓋53の裏に粘着シート54を貼り付け、蓋53を閉めてスクリュー管瓶52を密閉した。これを85℃に1週間保持した。試験後(一週間経過後)の銀板を未使用(試験前)の銀板と比較して、腐食発生(金属光沢の消失、着色等の外観変化により判断した。)の有無を目視で確認することにより金属腐食性を評価した。その結果を、腐食が認められた場合には金属腐食性「有」、腐食が認められなかった場合には金属腐食性「無」として表1に示した。
【0126】
<破断強度および破断伸度>
粘着剤層を形成する前の基材(表面が処理された基材については、表面処理後の基材)
のMD方向の破断強度および破断伸度を、JIS C 2151に準拠して測定した。
【0127】
<投錨性>
両面粘着シートの第1の剥離ライナーを剥がし、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを試験片とした。上記試験片の第2の剥離ライナーを剥がし、2kgのローラーを1往復させて表面を粒度360番の研磨紙で磨いたステンレス(SUS:BA304)板に圧着した。これを80℃に1時間保持した後、23℃に1時間保持した。温度23℃、RH50%の測定環境にて剥離速度30m/分、剥離角度180°の条件で上記試験片を剥離し、上記ステンレス板に残った粘着剤層の面積を測定し、この面積を粘着剤層の総面積で除して糊残り面積の割合(%)を算出した。
【0128】
<接触角>
両面粘着シートの作製に用いられた基材について、自動接触角計(協和界面科学社製、型式「CA−V」)を用い、液適法に準じて粘着剤層が形成される表面(すなわち、表面処理が施された基材では処理後の表面)に水の液滴が着敵してから10秒後の接触角を測定した。
【0129】
<曲面追従性>
両面粘着シートを幅10mm×長さ80mmのサイズにカットして試験片を作製した。この試験片から第1の剥離ライナーを剥がして露出した粘着面(粘着剤層21)を、直径35mm×長さ(高さ)80mmのガラス製の円柱61の円周に沿って貼り合わせ、該円周に沿って1kgのローラーを一往復させて圧着した(図4)。これを23℃の環境下に24時間保持した後、試験片が上記円柱から剥がれて浮き上がった各末端部の長さa,b(mm)を測定し、それらの和(a+b)を曲面追従性とした。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
これらの表に示されるように、連鎖移動剤として3級アルキルメルカプタンまたは芳香族メルカプタンを用いた例1〜5および7〜11に係る両面粘着シートは、いずれも良好な粘着力を示し、且つ硫黄含有ガス発生量が0.043μgSO2−/cm以下(より具体的には、0.02μgSO2−/cm未満)であった。そして、これら例1〜5および7〜11に係る両面粘着シートは、いずれも上記金属腐食性試験において銀を腐食させないことが確認された。一方、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタン(1級アルキルメルカプタン)を用いた例6では、例1〜5および7〜11と同程度の粘着力は得られたものの、硫黄含有ガス発生量が多く、上記金属腐食性試験において銀を腐食させることが確認された。すなわち、例1〜5および7〜11によると、例6と同程度の粘着性能を維持しつつ金属腐食性の問題を解消するという顕著な効果が実現された。
【0133】
また、表2に示されるように、基材表面をコロナ放電処理や下塗り層付与等により改質してなる例1〜10に係る両面粘着シートは、表面処理が施されていない基材を用いてなる例11の両面粘着シートと比べ、いずれも優れた投錨性を有することが認められた。中でも、オキサゾリン基含有の下塗り層が基材上に付与されてなる例2および3の両面粘着シートは、下塗り層を有さない例1および4〜10に係る両面粘着シートと比べ、その基材表面における水接触角がいずれも明らかに上昇した。従って、更に厳しい条件下で糊残り面積の測定が行われた場合、これらの両面粘着シートはより優れた投錨性を示し得ると推測される。
【0134】
また、プラスチック基材の曲げ弾性係数が5×10以下である例1〜6および9〜11の両面粘着シートは、該曲げ弾性係数が5×10を超える例7〜8の両面粘着シートに比べ、より良好な曲面追従性を示した。
また、水分散系粘着剤組成物を用いてなる例1〜8および11の両面粘着シートは、溶剤型粘着剤組成物を用いてなる例9および10の両面粘着シートと比べて、トルエン放散量および/または酢酸エチル放散量が著しく低く、TVOC量においてもいずれも500μg/g以下という良好な結果を示した。
【0135】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0136】
1,2:粘着シート
10:基材
21,22:粘着剤層
31,32:剥離ライナー
50:金属腐食性試験器
52:スクリュー管瓶(容器)
53:蓋
54:粘着シート
56:銀板
61:ガラス製円柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基材と、水分散型粘着剤組成物から形成され前記基材の各面それぞれに設けられた粘着剤層と、を備える両面接着性粘着シートであって、
該粘着剤組成物は、硫黄を構成原子として含む連鎖移動剤を用いて合成された水分散型アクリル系重合体を含み、
当該粘着シートを85℃で1時間加熱するガス発生試験において、硫黄を構成原子として含むガスの放散量が、前記シートの面積1cm当たり、SO2−換算で0.043μg以下である、両面接着性粘着シート。
【請求項2】
前記連鎖移動剤は、前記ガス発生試験において、前記ガスを実質的に発生しない連鎖移動剤である、請求項1に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項3】
前記連鎖移動剤は、メルカプト基の結合している炭素原子上に水素原子を有しない構造のメルカプタンを主成分とする、請求項1または2に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項4】
前記メルカプタンは、3級メルカプタンおよび芳香族メルカプタンからなる群から選択される一種または二種以上である、請求項3に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項5】
前記粘着シートを80℃で30分間保持したときに該シートから放散されるトルエン量が、該シート1g当たり20μg以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートを80℃で30分間保持したときに該シートから放散される酢酸エチルの量が、該シート1g当たり20μg以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートを80℃で30分間保持したときに該シートから放散される揮発性有機化合物類の総量が、該シート1g当たり500μg以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項8】
前記プラスチックフィルム基材は、そのヤング率をY(kPa)、厚さをh(mm)としたとき、数式(A):E=Yhで表される曲げ弾性係数Eが、5×10以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項9】
前記プラスチックフィルム基材の厚さが1μm以上300μm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項10】
前記プラスチックフィルム基材の各面それぞれに、コロナ放電処理、プラズマ処理、およびイトロ処理からなる群から選択される少なくとも一つの処理が施されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項11】
前記プラスチックフィルム基材の各面それぞれが、オキサゾリン基を含有する下塗り層を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項12】
前記下塗り層の厚さが0.01μm以上3μm未満である、請求項11に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項13】
前記粘着剤層の形成される前記プラスチックフィルム基材表面は、水接触角が0度以上90度以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項14】
前記プラスチックフィルム基材がポリエステルフィルムである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。
【請求項15】
電子機器の内部で用いられる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の両面接着性粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−68718(P2011−68718A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219118(P2009−219118)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】