説明

両面粘着シート

【課題】ディスプレイとディスプレイの前面側に配置された光学部材との間に電磁波シールド材を簡便に設けることができる両面粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の両面粘着シート10は、透明導電基材11と、透明導電基材11の一方の面に設けられた第1の粘着剤層12と、透明導電基材11の他方の面に設けられた第2の粘着剤層13とを備える。第1の粘着剤層12はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は35万〜80万であり、第2の粘着剤層13はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は90万〜200万である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性を有する両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイを構成する液晶パネルの前面側には、他の光学部材が取り付けられ、例えば、液晶パネルの前面側に静電容量式のタッチパネルが取り付けられることがある(特許文献1)。
近年、ディスプレイから発生する電磁波が問題になりつつあり、電磁波発生量の多いプラズマディスプレイのみならず、小型の液晶ディスプレイについても電磁波シールド性が求められるようになってきている。特に、液晶パネルの前面側に静電容量式のタッチパネルを取り付ける場合には、液晶パネルで生じる電磁波によってタッチパネルに誤作動を生じるおそれがあるため、液晶パネルからの電磁波を遮蔽することが求められている。
また、外部からの電磁波あるいはタッチパネルから発生した電磁波によって液晶パネルの表示不良を生じることもあるため、液晶パネルにその外部から電磁波が進入しないように電磁波を遮蔽することが求められている。
その要求に対し、透明樹脂フィルムの片面に透明無機導電層を設けた電磁波シールド材を、ディスプレイの前面側に貼着することがあった(特許文献2)。特許文献2に記載の電磁波シールド材を液晶ディスプレイの前面側に貼着する場合には、液晶パネルの前面側に粘着剤の塗工や両面粘着シートによって粘着剤層を設け、その粘着剤層に電磁波シールド材を貼着していた。また、液晶パネルに電磁波シールド材を貼着した後には、電磁波シールド材の前面側に粘着剤の塗工や両面粘着シートによって粘着剤層を設け、その粘着剤層にタッチパネル等の光学部材を貼着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−170530号公報
【特許文献2】特開平5−323101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の電磁波シールド材を用いた場合には、ディスプレイとその前面側の光学部材との間に電磁波シールド材を設ける工程の工数が多く、煩雑であった。
本発明は、ディスプレイとディスプレイの前面側に配置された光学部材との間に電磁波シールド材を簡便に設けることができる両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]透明導電基材と、該透明導電基材の一方の面に設けられた第1の粘着剤層と、該透明導電基材の他方の面に設けられた第2の粘着剤層とを備えることを特徴とする両面粘着シート。
[2]第1の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は35万〜80万であり、第2の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は90万〜200万である[1]に記載の両面粘着シート
[3]第1の粘着剤層および第2の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方がカルボキシ基を有し、他方がカルボキシ基を有さない[1]または[2]に記載の両面粘着シート。
[4]第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方が金属腐食防止剤を含有し、他方が金属腐食防止剤を含有しない[1]〜[3]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[5]第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方が酸化防止剤を含有し、他方が酸化防止剤を含有しない[1]〜[4]のいずれかに記載の両面粘着シート
【発明の効果】
【0006】
本発明の両面粘着シートは、ディスプレイとディスプレイの前面側に配置された光学部材との間に電磁波シールド材を簡便に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の両面粘着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の両面粘着シートを備える剥離シート付き両面粘着シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<両面粘着シート>
本発明の両面粘着シートの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の両面粘着シートの断面図を示す。本実施形態の両面粘着シート10は、静電容量式のタッチパネルと液晶パネルとを接着する際に使用されるものであり、透明導電基材11と、透明導電基材11の一方の面に設けられた第1の粘着剤層12と、透明導電基材11の他方の面に設けられた第2の粘着剤層13とを備える。
本実施形態における第1の粘着剤層12の露出面にはタッチパネルが接着され、第2の粘着剤層13の露出面には液晶パネルが接着される。
なお、タッチパネルは、透明基材の片面に導電層が形成された透明導電シートを複数有して構成されている。透明導電シートとしては、具体的には、透明樹脂フィルムの片面に金属端子、金属配線およびITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の片面に金属端子、金属配線およびITO膜が設けられたITOガラスが挙げられる。本実施形態では、タッチパネルの液晶パネル側に、金属端子、金属配線およびITO膜が配置されるように透明導電シートが設けられている。したがって、第1の粘着剤層12は、タッチパネルの液晶パネル側の、金属端子、金属配線およびITO膜が露出している面に接着される。
【0009】
(透明導電基材)
透明導電基材11は、導電性を有する材料を含有し且つ透明なものである。
ここで、「透明」とは、JIS K7105に従って測定した際の可視光の全光線透過率が80%以上である。好ましくは、透明導電基材11の全光線透過率は90%以上である。全光線透過率が前記下限値未満であると、液晶パネルによって表示される画像の視認性が損なわれることがある。
また、「導電性」とは、JIS K7194に従って測定した際の表面抵抗が1000Ω/□以下のことである。好ましくは、透明導電基材11の表面抵抗は500Ω/□以下である。表面抵抗が前記上限値を超えると、電磁波シールド性が不充分になる。
具体的に、透明導電基材11は、透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に導電層が設けられたものが挙げられる。
【0010】
透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム等が挙げられる。
これらのうち、透明性、耐候性、耐溶剤性、剛度、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
透明樹脂フィルムの厚みは12〜250μmであることが好ましく、25〜188μmであることがより好ましく、38〜125μmであることが特に好ましい。透明樹脂フィルムの厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、両面粘着シート10を容易に薄型化できる。
【0011】
導電層としては、導電性高分子を含有する層、導電性金属酸化物からなる層、金属からなる層、金属粒子およびバインダ樹脂を含有する層、導電性金属酸化物粒子およびバインダ樹脂を含有する層、金属メッシュおよびバインダ樹脂を含有する層が挙げられる。
【0012】
導電性高分子を含有する層において、導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられ、なかでも、導電性の点から、ポリチオフェンが好ましく、ポリチオフェンのなかでも、PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンのポリマー)が好ましい。また、PEDOTは水分散性を向上させるためにポリスチレンスルホン酸が共存していることが好ましい。
【0013】
導電性金属酸化物からなる層において、導電性金属酸化物としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウム、酸化亜鉛、これらの混合物等が挙げられ、これらのなかでも、導電性の点から、ITOが好ましい。
導電性金属酸化物からなる層は、公知の蒸着法によって透明樹脂フィルムの表面に形成することができる。
【0014】
金属からなる層において、金属としては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、これらの2種以上を含む合金が挙げられる。これらのなかでも、導電性およびコストの点から、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケルが好ましい。
金属からなる層は、公知の蒸着法によって透明樹脂フィルムの表面に形成することができる。
【0015】
金属粒子およびバインダ樹脂を含有する層において、金属粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、これらの2種以上を含む合金で構成された粒子が挙げられる。これらのなかでも、導電性およびコストの点から、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケルが好ましい。
金属粒子の体積平均1次粒子径は10〜500nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。金属粒子の体積平均1次粒子径が前記下限値以上であれば、充分に高い電磁波シールド性を容易に得ることができ、前記上限値以下であれば、充分に高い透明性を容易に確保できる。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
導電性金属酸化物粒子およびバインダ樹脂を含有する層において、導電性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、導電性金属酸化物からなる層と同様のものを使用することができる。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
金属メッシュおよびバインダ樹脂を含有する層において、金属メッシュとしては、銅、銀、アルミニウムで構成されたメッシュが挙げられる。
金属メッシュの目開きは50〜500μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。金属メッシュの目開きが前記下限値以上であれば、充分に高い透明性を容易に確保でき、前記上限値以下であれば、充分に高い電磁波シールド性を容易に得ることができる。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
導電層が、導電性金属酸化物からなる層、金属からなる層、金属粒子を含有する層、金属メッシュを含有する層のいずれかである場合には、導電層の金属腐食を防止する点で、導電層は透明樹脂フィルムの一方の面に設けられ、第1の粘着剤層12に接触していることが好ましい。
【0019】
導電層が導電性高分子を含有する層である場合には、導電層の厚さは10〜1000nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましい。導電層が導電性金属酸化物を含有する層である場合には、導電層の厚さは1〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。導電層が金属粒子又は導電性金属酸化物粒子を含有する層である場合には、導電層の厚さは0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましい。導電層が金属メッシュを含有する層である場合には、導電層の厚さは0.5〜20μmであることが好ましく、1.0〜10μmであることがより好ましい。いずれの場合も、導電層の厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い電磁波シールド性を得ることができ、前記上限値以下であれば、充分に高い透明性を確保できる。
【0020】
(第1の粘着剤層)
本実施形態における第1の粘着剤層12は、アクリル系粘着剤と金属腐食防止剤と酸化防止剤とを含有する。
アクリル系粘着剤は、アクリル系粘着主剤を主成分とし、架橋剤を含有するものである。ここで、「主成分」とは、50質量%以上のことである。好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のことである。また、アクリル系粘着剤は、耐候性、透明性等に優れ、広範な用途に使用できる利点を有する。
アクリル系粘着剤は、溶剤系、エマルジョン系、水系のいずれであってもよい。
【0021】
[アクリル系粘着主剤]
アクリル系粘着主剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有するアクリル重合体からなる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するものである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
【0022】
また、アクリル系粘着主剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他のアクリル系単量体単位(例えば、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位、アミノ基含有アクリル系単量体単位、グリシジル基含有アクリル系単量体単位)を有してもよい。これら単量体単位は1種でもよいし、2種以上でもよい。
ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位は、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体に由来するものである。ヒドロキシ基含有アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有アクリル系単量体単位は、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミド等のアミノ基含有アクリル系単量体に由来するものが挙げられる。
グリシジル基含有アクリル系単量体単位は、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有アクリル系単量体に由来するものが挙げられる。
【0023】
アクリル系粘着主剤が他のアクリル系単量体単位を有する場合、アクリル系粘着主剤における架橋性アクリル単量体単位の含有量は0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。架橋性アクリル単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、凝集力を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な粘着力を確保できる。
【0024】
本実施形態では、第1の粘着剤層12に含まれるアクリル系粘着主剤が、カルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含有しない。ここで、「カルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含有しない」とは、第1の粘着剤層12に含まれるアクリル系粘着主剤のカルボキシ基の含有割合が1質量%以下のことである。カルボキシ基の含有割合が1質量%以下であれば、架橋剤によってアクリル系粘着主剤を架橋する際にほぼ消費されるため、該粘着剤から形成される粘着剤層にはカルボキシ基がほぼ含まれない。第1の粘着剤層12に含まれるアクリル系粘着主剤のカルボキシ基の含有割合は0〜0.5質量%であることが好ましい。
カルボキシ基含有アクリル系単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物に由来するものが挙げられる。
【0025】
第1の粘着剤層12におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量は35万〜80万であることが好ましく、40万〜70万であることがより好ましい。本明細書において、平均分子量(質量平均分子量および数平均分子量)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。第1の粘着剤層12におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、充分な凝集力が得られ、耐久性が向上する。一方、第1の粘着剤層12におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、金属端子および金属配線等によって凹凸が形成されていても、凹凸に対する追従性(以下、「凹凸追従性」という。)が高くなり、第2の粘着剤層13の露出面を容易に平坦化できる。
また、アクリル系粘着主剤の分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。アクリル系粘着主剤の分散度が前記上限値以下であれば、分子量10万未満の低分子成分が少なくなり、凝集力が高くなり、耐久性が向上する。
【0026】
[架橋剤]
架橋剤は、上記アクリル系粘着主剤を架橋させるものである。
架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物が挙げられる。
ここで、イソシアネート化合物は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
エポキシ化合物は、ヒドロキシ基、アミノ基、グリシジル基、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
オキサゾリン化合物は、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
アジリジン化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
金属キレート化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
ブチル化メラミン化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシ基と反応する架橋剤である。
架橋剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋剤の含有量は、所望とする粘着物性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0027】
上記架橋剤のうち、反応性が高い点では、イソシアネート化合物が好ましい。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
イソシアネート化合物系架橋剤を用いた場合には、架橋剤の反応を促進するために、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、アミン触媒(例えば、トリエチレンジアミン、ノルマルエチルモルフォリン、エチレンジアミン等)、有機錫触媒(例えばジブチルチンジラウレート等)が挙げられる。
【0028】
[金属腐食防止剤]
金属腐食防止剤は、金属と接触した際に金属錯体皮膜を形成可能な化合物である。具体的な金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンズイミダゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、中でも、金属腐食防止効果が高いことから、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物は、分子中にベンゾトリアゾール骨格を有する化合物である。ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールおよびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。ベンゾトリアゾール化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ベンゾトリアゾール化合物の中でも、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールおよびベンゾトリアゾールのナトリウム塩が好適である。
【0029】
第1の粘着剤層12中の金属腐食防止剤の濃度は、金属腐食防止剤による金属腐食防止効果に影響を及ぼす。すなわち、金属腐食防止剤の濃度が高くなる程、金属腐食防止性が高くなる。
そのため、第1の粘着剤層12における金属腐食防止剤の含有量は、アクリル系粘着主剤の固形分100質量部に対し、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。金属腐食防止剤の含有量が前記下限値以上であれば、充分に高い金属腐食防止効果を得ることができ、前記上限値以下であれば、粘着力の低下を防止できる。
【0030】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、第1の粘着剤層12が接着されるITO膜を保護して、ITO膜の導電性低下を防止できる。
酸化防止剤としては公知のものを特に制限なく使用できるが、ITO膜の導電性低下効果がより発揮されることから、ヒンダードフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0031】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、フェノールのヒドロキシ基のオルトの位置に置換基を有する化合物からなる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ITO膜の導電性低下をより抑制できることから、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0032】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、アクリル系粘着主剤の固形分100質量部に対し、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が前記下限値以上であれば、ITO膜の導電性低下をより抑制でき、前記上限値以下であれば、粘着力の調整が容易になる。一方、第1の粘着剤層12中のヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が多いと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が再結晶化して析出することがあるが、前記上限値以下であれば、再結晶化による析出は生じない。
【0033】
リン系酸化防止剤は、リン酸、亜リン酸、またはこれらのエステル(ホスファイト、ホスフォナイト)からなる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
リン系酸化防止剤の中でも、ITO膜の導電性低下をより抑制できることからトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0034】
リン系酸化防止剤の含有量は、アクリル系粘着主剤の固形分100質量部に対し0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。リン系酸化防止剤の含有量が前記下限値以上であれば、ITO膜の導電性低下をより抑制でき、前記上限値以下であれば、粘着力の調整が容易になる。一方、粘着剤層中のリン系酸化防止剤の含有量が多いと、リン系酸化防止剤が再結晶化して析出することがあるが、前記上限値以下であれば、再結晶化による析出は生じない。
【0035】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との質量比率は1:1〜1:3であることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の質量比率が前記範囲であれば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することによる相乗効果を充分に発揮して、ITO膜の導電性の低下をより抑制できる。
【0036】
[添加剤]
また、粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、充填剤などの他の添加剤が含まれてもよい。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0037】
[厚さ]
第1の粘着剤層12の厚さは10〜250μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。第1の粘着剤層12の厚さが前記下限値以上であれば、より高い凹凸追従性が得られる。一方、第1の粘着剤層12の厚さが前記上限値以下であれば、充分に低コストにできる。
【0038】
(第2の粘着剤層)
本実施形態における第2の粘着剤層13は、粘着剤を含有し、金属腐食防止剤および酸化防止剤を含有しない層である。
本実施形態において、第2の粘着剤層13を構成する粘着剤は、アクリル系粘着主剤がカルボキシ基含有アクリル系単量体単位を有すること、および好ましい質量平均分子量の範囲が異なること以外は、第1の粘着剤層12を構成する粘着剤と同様のものである。
第2の粘着剤層13に含まれるアクリル系粘着主剤のカルボキシ基の含有割合は1質量%を超え20質量%以下であることが好ましく、2.0〜15質量%であることがより好ましい。カルボキシ基の含有量が1質量%を超えると、液晶パネルとの密着性がより高くなり、空気溜まりが生じにくくなる。しかし、アクリル系粘着主剤におけるカルボキシ基の含有割合が20質量%を超えると、金属腐食性がより高くなるおそれがある。
【0039】
第2の粘着剤層13におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量は90万〜200万であることが好ましく、100万〜180万であることがより好ましい。第2の粘着剤層13におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、凝集力が高くなり、変形しにくくなるため、第2の粘着剤層13と液晶パネルとの間にガスが溜まりにくくなり、膨れを防止できる。一方、第2の粘着剤層13におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、凹凸追従性が向上し、また、粘着剤の塗工液の粘度が適度に低くなるため、塗工性が向上する。
さらに、第2の粘着剤層13におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量を前記好ましい範囲にすると共に、第1の粘着剤層12におけるアクリル系粘着主剤の質量平均分子量を前記好ましい範囲にすると、第1の粘着剤層12側で凹凸追従性が高く、第2の粘着剤層13側で膨れ防止性が高い両面粘着シート10とすることができる。
また、アクリル系粘着主剤の分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は10未満であることが好ましく、6未満であることがより好ましい。アクリル系粘着主剤の分散度が前記上限値以下であれば、低分子成分が少なくなり、凝集力が高くなって、膨れ防止性がより高くなる。
【0040】
[厚さ]
第2の粘着剤層13の厚さは10〜250μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。第2の粘着剤層13の厚さが前記下限値以上であれば、液晶パネルの接着性がより高くなり、前記上限値以下であれば、両面粘着シート10におけるカルボキシ基の量が少なくなるため、第2の粘着剤層13に金属が接触する場合に金属腐食性を防止できる。
【0041】
<剥離シート付き両面粘着シート>
上記両面粘着シート10を用いた剥離シート付き両面粘着シートの実施形態について説明する。
図2に、本実施形態の剥離シート付き両面粘着シートの断面図を示す。本実施形態の剥離シート付き両面粘着シート1は、上記両面粘着シート10と、第1の粘着剤層12の外側の面に積層された第1の剥離シート20と、第2の粘着剤層13の外側の面に積層された第2の剥離シート30とを備える。
【0042】
(第1の剥離シートおよび第2の剥離シート)
第1の剥離シート20および第2の剥離シート30は、少なくとも片面に離型性を有するシートである。
第1の剥離シート20および第2の剥離シート30としては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材としては、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニング社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
第1の剥離シート20と第2の剥離シート30とは、剥離性が異なることが好ましい。第1の剥離シート20と第2の剥離シート30との剥離性が異なれば、一方の剥離シートから容易に剥離できるため、両面粘着シート10によってタッチパネルと液晶パネルとを貼り合わせる作業を容易にできる。なお、剥離性は、剥離剤の種類によって調整される。
【0043】
(接着方法)
上記両面粘着シート10を用いたタッチパネルと液晶パネルとの接着方法としては以下の方法が挙げられる。
すなわち、第1の剥離シート20を剥離して第1の粘着剤層12を露出させた後、第1の粘着剤層12をタッチパネルの金属露出面に貼り合せる。次いで、第2の剥離シート30を剥離して第2の粘着剤層13を露出させ、その第2の粘着剤層13に液晶パネルを貼り合せる。これにより、タッチパネルと液晶パネルとを接着する。
【0044】
(剥離シート付き両面粘着シートの製造方法)
前記剥離シート付き両面粘着シート1の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(1)、(2)等が挙げられる。
【0045】
製造方法(1):第1の剥離シート20上に第1の粘着剤層12を形成して第1粘着シートを得る工程と、第2の剥離シート30上に第2の粘着剤層13を形成して第2粘着シートを得る工程と、透明導電基材11の一方の面に第1粘着シートを、第1の粘着剤層12の露出面が接するように積層し、圧着する工程と、透明導電基材11の他方の面に第2粘着シートを、第2の粘着剤層13の露出面が接するように積層し、圧着する工程と、を有する製造方法。
【0046】
各粘着剤層を形成する方法するためには、各粘着剤層を形成する粘着剤を含有する塗工液を塗工し、加熱すればよい。塗工方法としては、ナイフコータ、マイクロバーコータ、エアナイフコータ、リバースロールコータ、リバースグラビアコータ、バリオグラビアコータ、ダイコータ、カーテンコータ等から適宜選択することができる。
塗工液には溶媒が含まれる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
製造方法(2):透明導電基材11の一方の面に第1の粘着剤層12を形成する工程と、第1の粘着剤層12の露出面に第1の剥離シート20を積層する工程と、透明導電基材11の他方の面に第2の粘着剤層13を形成する工程と、第2の粘着剤層13の露出面に第2の剥離シート30を積層する工程と、を有する製造方法。
【0048】
(作用効果)
上記実施形態における両面粘着シート10は透明導電基材11を備えるため、電磁波シールド性を有する。また、透明導電基材11の両面に粘着剤層(第1の粘着剤層12、第2の粘着剤層13)を備えるため、タッチパネルと液晶パネルとの間に電磁波シールド材を設ける際に、粘着剤の塗工や両面粘着シートの貼着等によって粘着剤層を形成する工程を省略できる。したがって、タッチパネルと液晶パネルとの間に電磁波シールド材を簡便に設けることができる。
また、両面粘着シート10では、第1の粘着剤層12にはカルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含まないアクリル系粘着剤が用いられ、第2の粘着剤層13にはカルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含むアクリル系粘着剤が用いられている。タッチパネルと液晶パネルとは全く異なる材質で構成され、1種の粘着剤で接着することが困難になることもあるが、第1の粘着剤層12の粘着剤と第2の粘着剤層13の粘着剤の種類を異なるものとすることによって、全く異なる材質で構成されているタッチパネルと液晶パネルとを容易に接着できる。特に、カルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含むアクリル系粘着剤が用いられた第2の粘着剤層13は、表面処理が施されて接着性が低くなっている液晶パネルの偏光板に対しても密着性が高くなっている。
【0049】
また、上記実施形態における両面粘着シート10の第1の粘着剤層12はカルボキシ基を有さないから、金属を腐食させにくい。しかも、第1の粘着剤層12には金属腐食防止剤が含まれているため、タッチパネルの表面に第1の粘着剤層12を接着した際には、第1の粘着剤層12のタッチパネルとの接触面に、金属端子および金属配線等の金属と金属腐食防止剤との錯体の皮膜を形成できる。この皮膜はバリア膜になるため、両面粘着シート10の内部に腐食性成分(例えば、水分等)が含まれている場合でも、その腐食性成分がタッチパネル表面の金属に接触しにくくなる。したがって、第1の粘着剤層12に接着されたタッチパネルの金属の腐食を防止できる。
また、透明導電基材11の導電層として、導電性金属酸化物からなる層、金属からなる層、金属粒子を含有する層、金属メッシュを含有する層を用い、導電層に第1の粘着剤層12が接着される場合でも、上記のように第1の粘着剤層12の金属腐食防止性が高くなっているため、導電層の金属の腐食を防止できる。
さらに、第1の粘着剤層12には酸化防止剤が含まれているため、ITO膜の導電性低下を防止できる。
【0050】
<他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態において、第1の粘着剤層12に接着されるタッチパネルの面に、金属端子、金属配線およびITO膜が露出していなくてもよい。
また、上記実施形態において、第1の粘着剤層12に酸化防止剤が含まれていなくてもよく、第2の粘着剤層13に酸化防止剤が含まれていてもよい。
また、第1の粘着剤層12を構成する粘着剤がカルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含有してもよいし、第2の粘着剤層13を構成する粘着剤がカルボキシ基含有アクリル系単量体単位を含有しなくてもよい。
また、第1の粘着剤層12および第2の粘着剤層13を構成する粘着剤は、所望の粘着力を得ることができれば、アクリル系粘着剤に限定されず、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを使用することもできる。
【0051】
また、第2の粘着剤層13が液晶パネルの偏光板に接着される場合には、第2の粘着剤層を構成する粘着剤として、応力緩和性を有する粘着剤を使用してもよい。偏光板は寸法安定性が低いため、環境条件の変化によって寸法が変化するが、第2の粘着剤層を構成する粘着剤として、応力緩和性を有する粘着剤を使用すれば、その寸法変化を吸収することができる。
応力緩和性を有する粘着剤としては、質量平均分子量が80万〜200万のアクリル系粘着主剤と、質量平均分子量が0.1万〜30万のアクリル系粘着主剤とを含有するアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0052】
本発明の両面粘着シートは、例えば、プラズマディスプレイと前面板(例えば、アクリル樹脂板、ポリカーボネート板、ガラス板等)との接着にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の両面粘着シートは、中間層に透明導電基材を有しており、帯電防止性を発現するため、帯電防止性能が必要な部材同士の接着にも使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 剥離シート付き両面粘着シート
10 両面粘着シート
11 透明導電基材
12 第1の粘着剤層
13 第2の粘着剤層
20 第1の剥離シート
30 第2の剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電基材と、該透明導電基材の一方の面に設けられた第1の粘着剤層と、該透明導電基材の他方の面に設けられた第2の粘着剤層とを備えることを特徴とする両面粘着シート。
【請求項2】
第1の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は35万〜80万であり、第2の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、該アクリル系粘着主剤の質量平均分子量は90万〜200万である請求項1に記載の両面粘着シート
【請求項3】
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層はアクリル系粘着主剤を主成分とし、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方がカルボキシ基を有し、他方がカルボキシ基を有さない請求項1または2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方が金属腐食防止剤を含有し、他方が金属腐食防止剤を含有しない請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の一方が酸化防止剤を含有し、他方が酸化防止剤を含有しない請求項1〜4のいずれか1項に記載の両面粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−219208(P2012−219208A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87587(P2011−87587)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(309033127)新タック化成株式会社 (11)
【Fターム(参考)】