説明

両面粘着テープ又はシート、および被着体の加工方法

【課題】 被着体に反りがあっても、台座に固定した状態を有効に保持でき、加圧工程があっても、加圧による横ズレを防止でき、加熱により加工品を剥離できる両面粘着テープ又はシートを得る。
【解決手段】 基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着層が有し、且つ基材の他方の面に仮固定用粘着層を有している両面粘着テープ又はシートであって、仮固定用粘着層の引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅であり、且つズレ量が0.3mm/20mm幅以下であり、且つ仮固定用粘着層がイソシアネート系もしくはエポキシ系架橋剤で架橋されていることを特徴とする両面粘着テープ又はシートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープ又はシート、および被着体の加工方法に関し、さらに詳細には、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼着した状態で被着体に加工処理を施す際に、被着体に反りによる応力が生じていても、台座に固定した状態を有効に保持することができ、また、被着体の加工時に加圧工程があっても、加圧による横ズレを抑制又は防止することができ、しかも、被着体に加工処理を施した後は、加熱により加工品を損傷なく容易に剥離させることができる両面粘着テープ又はシート、および該両面粘着テープ又はシートを用いた被着体の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品への要求は、部品自体の小型化や精密化であり、例えば、セラミックコンデンサでは、いわゆる「0603」や、いわゆる「0402」に代表される小型化や数百層を大きく超える高積層化による高容量化が顕著となってきている。特にセラミックコンデンサ等のセラミックの焼成前シート(グリーンシート)の積層分野では、小型化や精密化で、加工時の精度が要求されるようになってきた。
【0003】
例えば、セラミックコンデンサの製造工程を一例に挙げると、(1)グリーンシートへの電極印刷工程、(2)積層工程、(3)加圧工程(加圧プレス工程)、(4)切断工程、(5)焼成工程の工程があり、積層工程(2)と加圧工程(3)とは、所定回数繰り返された後、切断工程(4)に移る製造工程が挙げられる。
【0004】
現在、積層工程(2)では、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)や、クリーン紙、粘着テープの上に積層していくのが一般的であるが、搬送性や精度向上の観点から、金属製の台座を用い、その上にPETフィルムや、クリーン紙、粘着テープを固定し、積層する場合がある。
【0005】
また、積層工程(2)と切断工程(4)とは別工程であり、積層工程(2)において、PETフィルムや、クリーン紙、粘着テープ上で積層した積層体を、切断工程(4)では、別の粘着テープ等に移し替え、切断を行うことがある。しかしながら、この方法では、積層工程(2)と切断工程(4)とで別々の部材を使用することになってしまう。
【0006】
このため、熱剥離型粘着テープ又はシート上で、積層から切断まで行う方法が非常に有効な手段として注目され、実際に実用化して生産している実績がある。このような粘着テープとしては、常温では粘着力を有し、積層工程(2)、加圧工程(3)、切断工程(4)までをしっかりと粘着(固定)し、切断工程(4)の後は、加熱により、粘着性を低下させて、剥離させることができる機能を有する熱剥離型粘着テープ又はシート(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭50−13878号公報
【特許文献2】特公昭51−24534号公報
【特許文献3】特開昭56−61468号公報
【特許文献4】特開昭56−61469号公報
【特許文献5】特開昭60−252681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の高積層化に伴い、グリーンシートの積層時に生じるグリーンシート積層体の反りが大きくなったため、台座に貼り合わせるための仮固定用粘着層の粘着力が弱い場合、グリーンシート積層体の反りを抑えきれず、工程中に剥がれてしまうという問題が生じるようになった。この問題に関しては、仮固定用粘着層を形成するための粘着剤として強粘着性の粘着剤を用いればよいのだが、例えば、従来の一般的な強粘着型の粘着テープ又はシートを用いると、グリーンシートの積層時のプレス圧力などの力が継続的に加わった場合、仮固定用粘着層自体に横ズレが生じやすくなり、グリーンシートの積層時の電極精度の低下などの問題が生じる場合がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼着した状態で被着体に加工処理を施す際に、被着体に反りによる応力が生じていても、台座に固定した状態を有効に保持することができ、また、被着体の加工時に加圧工程があっても、加圧による横ズレを抑制又は防止することができ、しかも、被着体に加工処理を施した後は、加熱により加工品を損傷なく容易に剥離させることができる両面粘着テープ又はシート、および該両面粘着テープ又はシートを用いた被着体の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱剥離型粘着層と、特定の特性を有している仮固定用粘着層とを備えた両面粘着テープ又はシートを用いると、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼着した状態で、被着体に加工処理を施す際に、被着体が、グリーンシートが高積層化されたグリーンシート積層体であり、被着体に反りによる大きな応力が生じていても、台座に強固に固定した状態を有効に保持して、被着体の反りを抑えることができ、また、被着体の加工時に、プレス圧力等による加圧工程があっても、加圧による横ズレを抑制又は防止して、優れた加工精度で加工工程を実施することができ、しかも、被着体に加工処理を施した後は、加熱により加工品を損傷なく容易に剥離させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着層を有し、且つ基材の他方の面に仮固定用粘着層を有している両面粘着テープ又はシートであって、仮固定用粘着層の引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅であり、且つズレ量が0.3mm/20mm幅以下であり、且つ仮固定用粘着層がイソシアネート系もしくはエポキシ系架橋剤で架橋されていることを特徴とする両面粘着テープ又はシートを提供する。
【0012】
本発明の両面粘着テープ又はシートにおいて、仮固定用粘着層としては、さらに、ゲル分率が50重量%以上である特性を有していることが好ましい。
【0013】
本発明は、さらに、両面粘着テープ又はシートを用いて被着体を加工する方法であって、前記の両面粘着テープ又はシートを、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し、且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼り合わせた状態で、被着体に加工処理を施すことを特徴とする被着体の加工方法を提供する。該被着体の加工方法では、被着体としては、電子系部品類を好適に用いることができる。また、被着体が、セラミックコンデンサ用のグリーンシートであり、且つグリーンシートの積層工程を有していてもよい。
【0014】
本発明は、さらにまた、前述の被着体の加工方法を利用して製造されたことを特徴とする電子部品や、積層セラミックコンデンサを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両面粘着テープ又はシートは、前記構成を有しているので、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼着した状態で被着体に加工処理を施す際に、被着体に反りによる応力が生じていても、台座に固定した状態を有効に保持することができ、また、被着体の加工時に加圧工程があっても、加圧による横ズレを抑制又は防止することができ、しかも、被着体に加工処理を施した後は、加熱により加工品を損傷なく容易に剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の両面粘着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。
【図2】実施例において、台座保持性を評価する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材や部分などには同一の符号を付している場合がある。
【0018】
[両面粘着テープ又はシート]
本発明の両面粘着テープ又はシートは、基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着層を有し、且つ基材の他方の面に仮固定用粘着層を有している両面粘着テープ又はシートであって、仮固定用粘着層の引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅であり、且つズレ量が0.3mm/20mm幅以下であり、且つ仮固定用粘着層がイソシアネート系もしくはエポキシ系架橋剤で架橋されていることを特徴とする。
【0019】
図1は、本発明の両面粘着テープ又はシートの例を部分的に示す概略断面図である。図1において、1は両面粘着テープ又はシート、2は基材、3はゴム状有機弾性層(中間層)、4は熱剥離型粘着層、5は仮固定用粘着層、6はセパレータ、7はセパレータである。図1で示される両面粘着テープ又はシート1は、基材2の一方の面に、ゴム状有機弾性層3と、熱剥離型粘着層4とがこの順で形成され、且つ基材2の他方の面に、仮固定用粘着層5が形成された構成を有している。なお、ゴム状有機弾性層3は任意に設けられた層である。また、熱剥離型粘着層4の表面(粘着面)はセパレータ6により保護されており、仮固定用粘着層5の表面(粘着面)はセパレータ7により保護されているが、これらのセパレータ6やセパレータ7も任意で使用されたものである。
【0020】
<仮固定用粘着層>
本発明の両面粘着テープ又はシートにおいて、仮固定用粘着層は、引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅であり、且つズレ量が0.3mm/20mm幅以下であり、且つ仮固定用粘着層がイソシアネート系もしくはエポキシ系架橋剤で架橋されている。なお、本明細書中において、「引張粘着力」の値は「対SUS304BA板、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、温度:23±2℃、湿度:65±5%RH」の条件で、後述の測定方法により測定した値を指し、「ズレ量」は「被着体:SUS304BA板、貼付面積:20mm幅×10mm長さ、荷重前の放置条件:23±2℃×30分間、荷重:200g、荷重後の放置条件:23±2℃×60分間」の条件で、後述の測定方法により測定した値を指す。仮固定用粘着層の引張粘着力が2.0N/20mm幅より小さいと、仮固定用粘着層を利用して台座に貼着させた場合、被着体に反り等による応力が生じていると、熱剥離型粘着層上に貼着された被着体の加工処理中に、両面粘着テープ又はシートが台座から剥離してしまい、前記被着体の加工により得られる被加工体(加工品)の精度不良などが生じ、歩留まりが低下する。仮固定用粘着層の引張粘着力が20N/20mm幅より大きいと、剥がす時に糊残りやテープ切れが発生しやすくなる。
【0021】
仮固定用粘着層の引張粘着力は、例えば、アクリル系粘着剤等の粘着剤の粘着性成分(ベースポリマー)をイソシアネート系架橋剤もしくはエポキシ系架橋剤を粘着性成分100重量部に対して0.01〜20重量部のうち、適宜の量を添加して架橋することにより、2.0〜20(N/20mm幅)となるようにコントロールすることができる。架橋剤の添加量は、架橋するモノマーの官能基と架橋剤の種類によって異なり、より架橋し易い組み合わせの場合には、少ない架橋剤の量でもゲル分が大きくなる。
【0022】
また、加工中は、被着体の加工精度を維持するため、両面粘着テープ又はシートの横ズレが少ないことが重要である。そのため、仮固定用粘着層は、ズレ量が0.3mm/20mm幅以下(例えば0〜0.3mm/20mm幅)となっている特性を有している。仮固定用粘着層のズレ量が0.3mm/20mm幅より大きいと、熱剥離型粘着層上に貼着された被着体の加工処理中に、両面粘着テープ又はシートまたは被着体の横ズレが発生し、加工精度が低下する。
【0023】
一方、仮固定用粘着層のズレ量としては、0.2mm/20mm幅以下であることが好ましく、さらには0.15mm/20mm幅以下であることが好適である。なお、仮固定用粘着層のズレ量の下限としては、特に制限されず、小さければ小さいほど好ましく、0mm/20mm幅であってもよい。
【0024】
なお、仮固定用粘着層のズレ量は、例えば、アクリル系粘着剤等の粘着剤の粘着性成分(ベースポリマー)をイソシアネート系架橋剤もしくはエポキシ系架橋剤を粘着性成分100重量部に対して0.01〜20重量部添加して架橋することにより、0.3mm/20mm幅以下となるようにコントロールすることができる。架橋剤の添加量は、架橋するモノマーの官能基と架橋剤の種類によって異なり、より架橋し易い組み合わせの場合には、少ない架橋剤の量でもゲル分が大きくなる。
【0025】
本発明において、仮固定用粘着層の引張粘着力は、次の(引張粘着力の測定方法)により求められる。
(引張粘着力の測定方法)
両面粘着テープ又はシートを幅20mm、長さ100mmのサイズに切断し、常温(23℃±2℃)且つ湿度:65±5%RH)の条件下で、仮固定用粘着層がSUS304BA板(ステンレス板)に接触する形態で、SUS304BA板に、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせた後、30分間放置する。放置後、温度:23±2℃、湿度:65±5%RHの条件下、JIS Z 0237に準じて、SUS304BA板より両面粘着テープ又はシートを、剥離角度:180°、引張速度:300mm/minの条件で引き剥がした時の荷重(最大荷重)を測定し、引張粘着力(N/20mm幅;対SUS304BA板、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min、温度:23±2℃、湿度:65±5%RH)を求める。
【0026】
また、仮固定用粘着層のズレ量は、次の(ズレ量の測定方法)により求められる。
(ズレ量の測定方法)
両面粘着テープ又はシートを幅20mm、長さ100mmのサイズに切断し、常温(23℃±2℃)且つ湿度:65±5%RHの条件下で、仮固定用粘着層がSUS304BA板に接触する形態で、SUS304BA板に、20mm幅×10mmの接着面積で2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせ、23±2℃で30分間放置する。放置後、両面粘着テープ又はシートの端部に200gの荷重をかけ、JIS Z 0237にある保持力の測定方法に準じて、圧着時からのズレの大きさ(ズレ量)を測定し、23±2℃で30分間後のズレ量(mm/20mm幅;被着体:SUS304BA板、貼付面積:20mm幅×10mm長さ、荷重前の放置条件:23±2℃×30分間、荷重:200g、荷重後の放置条件:23±2℃×60分間)を求める。
【0027】
仮固定用粘着層を形成するための粘着剤としては、上記特性を発揮する粘着層を形成することが可能な粘着剤であれば特に制限されず、公知の粘着剤の中から、適宜選択することができる。このような公知の粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤や、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などが挙げられる(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
粘着剤としては、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤の具体例としては、熱剥離型粘着層の項で具体的に例示されているゴム系粘着剤(天然ゴムや、各種の合成ゴムをベースポリマーとするゴム系粘着剤など)やアクリル系粘着剤[(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤など]などが挙げられる。
【0029】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや各種の合成ゴム[例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SIBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体など]をベースポリマーとしたゴム系粘着剤が挙げられる。
【0030】
また、アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体[単独重合体(ホモポリマー)又は共重合体(コポリマー)]をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。
【0031】
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換又は無置換)アミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(置換又は無置換)アミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有環を有するモノマー;N−ビニルカルボン酸アミド類;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの酸素原子含有複素環を有するモノマー;フッ素系(メタ)アクリレートなどのフッ素原子を含有するアクリル酸エステル系モノマー;シリコーン系(メタ)アクリレートなどのケイ素原子を含有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
【0032】
なお、粘着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)等のポリマー成分などのほかに、粘着剤の種類等に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、エポキシ化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
【0033】
本発明では、仮固定用粘着層は、熱剥離型粘着層上に貼着されている被着体の加工中の横ズレを抑制又は防止するために、ゲル分率が50重量%以上となっていることが好ましく、特に60重量%以上(中でも70重量%以上)であることが好適である。仮固定用粘着層のゲル分率が50重量%未満であると、プレス時などで、高温長時間の過酷な条件下では、粘着層自体が非常に変形し易くなる場合があり、仮固定用粘着層自体が横ズレを発生し易くなり、被着体の加工精度に悪影響を及ぼす場合がある。
【0034】
仮固定用粘着層のゲル分率は、次の(ゲル分率の測定方法)により求められる。
(ゲル分率の測定方法)
両面粘着テープ又はシートから仮固定用粘着層のみの部分を集め秤量して、その重量を測定し、該重量を浸漬前重量(A)とする。次に、この仮固定用粘着層のみの部分を、トルエン中に常温(23±2℃)で72時間浸漬させた後、未溶解部分を取り出し、オーブン等を用いてトルエンを完全に蒸発させ、乾燥された未溶解部分を秤量して、その重量を測定し、該重量を浸漬後重量(B)とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100 (1)
(式(1)において、Aは浸漬前重量であり、Bは浸漬後重量である。)
【0035】
仮固定用粘着層のゲル分率は、例えば、架橋剤を用いて調整することができる。仮固定用粘着層の製造に使用する架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤もしくはエポキシ系架橋剤を用いる。架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
具体的には、イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0037】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0038】
このような架橋剤の使用量としては、仮固定用粘着層の目的とするゲル分率、架橋剤の種類や、粘着剤の種類などに応じて適宜設定することができる。具体的には、架橋剤の使用量としては、例えば、粘着剤中のベースポリマー100重量部に対して0.01〜20重量部(好ましくは0.02〜10重量部)の範囲から選択することができる。架橋剤の使用量は、架橋剤を2種以上使用する場合には、その総量を示す。
【0039】
なお、本発明では、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施して、仮固定用粘着層を形成することも可能である。
【0040】
仮固定用粘着層の厚さとしては、特に制限されないが、例えば、0.5〜100μm(好ましくは2〜50μm)の範囲から適宜選択することができる。仮固定用粘着層の厚さが薄すぎると、十分な粘着性が得られず、台座からの剥がれや横ズレの原因となる場合があり、また、厚すぎると、粘着層の変形が大きくなり、横ズレによる加工時の精度低下の原因となる場合がある。なお、仮固定用粘着層は単層、複層の何れの形態を有していてもよい。
【0041】
仮固定用粘着層の形成方法としては、特に制限されず、公知の粘着層の形成方法の中から適宜選択することができる。具体的には、仮固定用粘着層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、所定の面(基材など)上に塗布し、必要に応じて乾燥乃至硬化させる方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥乃至硬化させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を所定の面(基材など)上に転写(移着)させる方法などが挙げられる。
【0042】
<熱剥離型粘着層>
熱剥離型粘着層(熱膨張性粘着層)は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤組成物により形成することができる。このように、熱剥離型粘着層は、熱膨張性微小球を含有しているので、加熱によって熱膨張性微小球が発泡乃至膨張し、この熱膨張性微小球の発泡乃至膨張により剥離性を発揮することができる。なお、熱剥離型粘着層は、所定の剥離開始温度が発揮されるような含有割合で、熱膨張性微小球を含んでいることが重要である。熱膨張性微小球は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
熱膨張性微小球としては、特に制限されず、公知の熱膨張性微小球(種々の無機系熱膨張性微小球や、有機系熱膨張性微小球など)から適宜選択することができる。熱膨張性微小球としては、混合操作が容易である観点などより、マイクロカプセル化されている発泡剤を好適に用いることができる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質(熱膨張性物質)を、弾性を有する殻内に内包させた微小球などが挙げられる。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法などにより製造できる。なお、熱膨張性微小球には、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」[松本油脂製薬(株)製]などの市販品もある。
【0044】
なお、熱膨張性微小球において、付与する剥離開始温度は、熱膨張性物質の種類(特に、気化温度)、殻を形成する物質の種類、殻の厚みや、熱膨張性微小球の粒子径などにより、適宜な温度に調整することができる。
【0045】
熱膨張性微小球としては、加熱処理により、熱剥離型粘着層の接着力を効率よく且つ安定して低下させるため、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する熱膨張性微小球が好ましい。
【0046】
熱剥離型粘着層において、熱膨張性微小球の含有割合(配合量)としては、熱剥離型粘着層の膨張倍率や、接着力の低下性などに応じて適宜設定することができるが、例えば、熱剥離型粘着層を形成する粘着剤のベースポリマー100重量部に対して1〜150重量部(好ましくは10〜130重量部、さらに好ましくは25〜100重量部)の範囲から適宜選択することができる。
【0047】
なお、熱膨張性微小球の粒径(平均粒子径)としては、熱剥離型粘着層の厚みなどに応じて適宜選択することができる。熱膨張性微小球の平均粒子径としては、例えば、100μm以下(好ましくは80μm以下、さらに好ましくは1〜50μm、特に1〜30μm)の範囲から選択することができる。
【0048】
熱剥離型粘着層を形成するための粘着剤(感圧接着剤)としては、熱剥離型粘着層の加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を許容する粘着剤を用いることができ、加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないようなものが好ましい。粘着剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
熱剥離型粘着層において、粘着剤としては、公知の粘着剤の中から適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤や、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)などが挙げられる。これらの粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)等のポリマー成分などのほかに、粘着剤の種類等に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。
【0050】
粘着剤としては、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤としては、上記仮固定用粘着層の項で例示のものが使用できる。
【0051】
熱剥離型粘着層は、例えば、粘着剤と、熱膨張性微小球と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法により形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤、熱膨張性微小球、および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材やゴム状有機弾性層上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して熱剥離型粘着層を形成し、これを基材又はゴム状有機弾性層上に転写(移着)する方法などにより、熱剥離型粘着層を形成することができる。なお、熱剥離型粘着層は単層、複層の何れの形態を有していてもよい。
【0052】
熱剥離型粘着層の厚さは、接着力の低減性などにより適宜に選択することができ、例えば、500μm以下の範囲から選択することができ、好ましくは300μm以下(さらに好ましくは100μm以下)である。熱剥離型粘着層の厚さが厚すぎると(過大であると)、加熱処理による膨張乃至発泡後に、熱剥離型粘着層に凝集破壊が生じやすくなり、剥離後に被着体(被着物)に汚染の原因となる糊残り(粘着成分の残存)が発生する場合がある。一方、熱剥離型粘着層の厚さが薄すぎると(過小であると)、加熱処理による熱剥離型粘着層の変形度が小さく、接着力が円滑に低下しにくくなり、また、添加する熱膨張性微小球の粒径を過度に小さくする必要が生じる。そのため、熱剥離型粘着層の厚さとしては、5μm以上(好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上)であることが好適である。もちろん、熱剥離型粘着層の厚さは、含まれている熱膨張性微小球の最大粒径よりも厚いことが重要である。
【0053】
<基材>
基材は熱剥離型粘着層等の支持母体として用いることができる。なお、基材は単層の形態又は積層された形態のいずれの形態を有していてもよい。
【0054】
基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、熱剥離型粘着層の加熱処理温度で溶融しない耐熱性に優れるものが、加熱後の取扱性等の点より好ましい。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。
【0056】
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm、特に好ましくは5〜250μm程度であるが、これらに限定されない。
【0057】
基材の表面は、熱剥離型粘着層や仮固定用粘着層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0058】
<セパレータ>
本発明では、セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用できる。セパレータは熱剥離型粘着層や仮固定用粘着層の保護材として用いられており、両面粘着テープ又はシートを被着体や台座などに貼着する際に剥がされる。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。
【0059】
セパレータとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
【0060】
なお、セパレータは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に制限されない。
【0061】
<中間層>
本発明では、基材と熱剥離型粘着層との間に1層又は2層以上の中間層を設けることもできる。該中間層は、前述のように、剥離性の付与を目的とした剥離剤のコーティング層や、密着力の向上を目的とした下塗り剤のコーティング層などが挙げられる。なお、剥離剤のコーティング層や下塗り剤のコーティング層以外の中間層としては、例えば、良好な変形性の付与を目的とした層、被着体への接着面積の増大を目的とした層、接着力の向上を目的とした層、被着体の表面形状に良好に追従させることを目的とした層、加熱による接着力低減の処理性の向上を目的とした層、加熱後の被着体よりの剥離性の向上を目的とした層などが挙げられる。
【0062】
特に、両面粘着テープ又はシートの変形性の付与や加熱後の剥離性の向上などの点より、基材と熱剥離型粘着層との間の層(中間層)として、例えば、ゴム状有機弾性層を設けることができる。ゴム状有機弾性層を設けることにより、両面粘着テープ又はシートを被着体に接着する際に、前記両面粘着テープ又はシートにおける熱剥離型粘着層の表面を被着体の表面形状に良好に追従させて、接着面積を大きくすることができ、また、前記両面粘着テープ又はシートを被着体から加熱剥離する際に、熱剥離型粘着層の加熱膨張を高度に(精度よく)コントロールし、熱剥離型粘着層を厚さ方向へ優先的に且つ均一に膨張させることができる。なお、ゴム状有機弾性層は、必要に応じて設けられる層であり、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0063】
ゴム状有機弾性層は、熱剥離型粘着層の基材側の面に、熱剥離型粘着層に重畳させた形態で設けることが好ましい。なお、基材と熱剥離型粘着層との間の中間層以外の層としても設けることができる。ゴム状有機弾性層は、基材の片面又は両面に介在させることができる。
【0064】
ゴム状有機弾性層は、例えば、ASTM D−2240に基づくD型シュアーD型硬度が、50以下、特に40以下の天然ゴム、合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂により形成することが好ましい。
【0065】
前記合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂としては、例えば、ニトリル系、ジエン系、アクリル系などの合成ゴム;ポリオレフィン系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂などが挙げられる。なお、ポリ塩化ビニルなどのように本質的には硬質系ポリマーであっても、可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組み合わせによりゴム弾性が発現しうる。このような組成物も、前記ゴム状有機弾性層の構成材料として使用できる。また、熱剥離型粘着層を構成する粘着剤等の粘着性物質などもゴム状有機弾性層の構成材料として好ましく用いることができる。
【0066】
ゴム状有機弾性層は、例えば、前記天然ゴム、合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂などのゴム状有機弾性層形成材を含むコーティング液を基材上に塗布する方式(コーティング法)、前記ゴム状有機弾性層形成材からなるフィルム、又は予め1層以上の熱剥離型粘着層上に前記ゴム状有機弾性層形成材からなる層を形成した積層フィルムを基材と接着する方式(ドライラミネート法)、基材の構成材料を含む樹脂組成物と前記ゴム状有機弾性層形成材を含む樹脂組成物とを共押出しする方式(共押出し法)などの形成方法により形成することができる。
【0067】
ゴム状有機弾性層の厚さは、一般的には500μm以下(例えば、1〜500μm)、好ましくは3〜300μm、さらに好ましくは5〜150μm程度である。ゴム状有機弾性層は単層であってもよく、2以上の層で構成してもよい。
【0068】
なお、ゴム状有機弾性層は、天然ゴムや合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂を主成分とする粘着性物質で形成されていてもよく、また、かかる成分を主体とする発泡フィルム等で形成されていてもよい。発泡は、慣用の方法、例えば、機械的な攪拌による方法、反応生成ガスを利用する方法、発泡剤を使用する方法、可溶性物質を除去する方法、スプレーによる方法、シンタクチックフォームを形成する方法、焼結法などにより行うことができる。
【0069】
本発明の両面粘着テープ又はシートは、基材の一方の面上に、熱剥離型粘着層を、必要に応じて他の層(ゴム状有機弾性層など)を介して形成するとともに、基材の他方の面に、仮固定用粘着層を形成することにより作製することができる。両面粘着テープ又はシートは、シート状の形態や、ロール状に巻回されたテープ状の形態などの適宜な形態を有することができる。
【0070】
本発明の両面粘着テープ又はシートは、特定の特性を有している仮固定用粘着層が設けられているので、該仮固定用粘着層を利用して台座に貼着させると、剥離や横ズレを生じさせずに、台座に強固に貼着させることができる。そのため、本発明の両面粘着テープ又はシートは、被着体の加工に際して、熱剥離型粘着層上に被着体を貼り付けるとともに、仮固定用粘着層を台座に貼り付けることにより、被着体を台座上に固定させた時には、被着体に反り等による応力が生じていても、また、加圧工程などで横ズレが生じるような圧力がかかっても、各種加工工程(積層工程、切断工程や加圧工程など)中で、優れた接着性を発揮して、被着体を台座上に剥離や横ズレを生じさせずに、安定した位置で固定させることができ、しかも加工後は、被着体の加工により得られた加工品(被加工体)を容易に剥離させることができる。従って、被着体の加工の際の固定用として優れた接着性を発揮して、被着体に優れた加工精度の加工性を付与することができ、また、粘着目的達成後に、接着状態を解きたいときには、加熱により粘着力を低減して被着体又は加工品を、容易に剥離乃至分離することができる。
【0071】
このように、本発明の両面粘着テープ又はシートは、被着体を加工する際に用いられる熱剥離型の両面粘着テープ又はシートとして好適に用いることができる。すなわち、本発明の両面粘着テープ又はシートは、例えば、加工時には、強い接着力で被着体(被加工物)を接着することができ、加工後には、その接着状態を迅速に解除することができる用途で好適に用いることができる。前記両面粘着テープ又はシートを用いると、被着体を、優れた加工精度で加工することが可能となる。
【0072】
なお、このような被着体の加工方法としては、任意に選択することができ、下記に示されるように、例えば、切断加工(研磨処理加工、ダイシング加工など)、グリーンシートへの電極印刷加工(パターン形成加工など)、組み立て加工などの加工が挙げられ、その他に、積層工程での加工、加圧工程での加工、焼成工程での加工なども挙げられる。
【0073】
また、本発明の両面粘着テープ又はシートは、被着体を搬送する際の保護材としても用いることができる。
【0074】
[被着体の加工方法]
本発明の被着体(被加工品)の加工方法では、前記両面粘着テープ又はシートを、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し、且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼り合わせた状態で、被着体に加工処理を施すことにより、被着体を加工している。被着体の加工処理する際の工程としては、任意に選択することができ、電子部品の製造時の加圧工程(加圧プレス工程)、積層工程、切断工程や、半導体部品の製造時の研削工程、切断工程を有していてもよい。より具体的には、被着体の加工処理する際の工程としては、グリーンシートへの電極印刷工程(パターン形成工程など)、積層工程、加圧工程(加圧プレス工程)、切断工程(研磨処理工程、ダイシング工程など)、研削工程(バックグラインド工程など)、焼成工程などが挙げられ、その他に、組み立て工程なども挙げられる。
【0075】
そして、被着体に加工処理を施した後(特に、粘着目的達成後、又は接着状態を解きたいとき)には、熱剥離型粘着層中の熱膨張性微小球の発泡開始温度又はそれ以上の温度に加熱することにより、粘着力を低減させて、加工処理が施された被着体(加工品)を剥離乃至分離して、加工処理が施された被着体を単離することができる。
【0076】
なお、両面粘着テープ又はシートを、加工処理が施された被着体(加工品)より剥離乃至分離する際の加熱処理は、例えば、ホットプレート、熱風乾燥機、近赤外線ランプ、エアードライヤーなどの適宜な加熱手段を利用して行うことができる。加熱温度は、熱剥離型粘着層中の熱膨張性微小球の熱膨張開始温度(発泡開始温度)以上であればよいが、加熱処理の条件は、被着体の表面状態や、熱膨張性微小球の種類等による接着面積の減少性、基材や被着体の耐熱性、加熱方法(熱容量、加熱手段等)などにより適宜設定できる。一般的な加熱処理条件としては、温度100〜250℃で、5〜90秒間(ホットプレートなど)または5〜15分間(熱風乾燥機など)である。かかる加熱条件で、通例、熱剥離型粘着層中の熱膨張性微小球が膨張及び/又は発泡して熱剥離型粘着層が膨張変形することにより凹凸状変形し、接着力が低下ないし喪失する。なお、加熱処理は使用目的に応じて適宜な段階で行うことができる。また、加熱源としては、赤外線ランプや加熱水を用いることができる場合もある。
【0077】
本発明において、両面粘着テープ又はシートを、仮固定用粘着層を利用して貼り合わせる台座(支持台座)としては、熱剥離型粘着層上に貼着されている被着体を支持することができるものであれば特に制限されず、前記被着体を加工する際に用いられている公知乃至慣用の台座を用いることができる。具体的には、台座としては、例えば、ステンレス板、ガラス板、ダミーウエハなどが挙げられる。台座は、被着体の種類、被着体の加工方法などに応じて適宜選択することができる。
【0078】
[被着体]
本発明では、前記両面粘着テープ又はシートにより接着保持する物品(被着体又は被加工物)は、任意に選択することができる。具体的には、被着体(被加工物)としては、半導体ウエハ(シリコンウエハなど)や半導体チップなどの電子系部品類;セラミックコンデンサや発振子などの電気系物品類;液晶セルなどの表示デバイス類の他、サーマルヘッド、太陽電池、プリント基板(積層セラミックシートなど)、いわゆる「グリーンシート」などの種々の物品が挙げられる。被着体は単独であってもよく、又は2種以上組み合わせられていてもよい。
【0079】
[加工された被着体;加工品]
また、本発明では、両面粘着テープ又はシートを介して、被着体として被加工物(被加工体)を台座に貼着させた後、加工を施すことにより各種加工品を得ることができる。例えば、被着体(被加工品)として、半導体ウエハなどの電子系部品類を用いた場合、加工品として電子部品や回路基板などを得ることができる。また、被着体として、セラミックコンデンサ用のグリーンシートを用いた場合、加工品として積層セラミックコンデンサなどを得ることができる。すなわち、本発明では、電子部品や、積層セラミックコンデンサは、前記両面粘着テープ又はシートを用いて製造されており、また、前述のような被着体の加工方法を利用して製造されている。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:100重量部、アクリル酸エチル:40重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル:6重量部、およびメタクリル酸メチル:7重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2重量部が配合された構成を有する感圧性接着剤を含むトルエン溶液を調製し、該トルエン溶液を、基材としてのポリエステル製フィルム(厚さ:100μm)の一方の面に、乾燥乃至硬化後の厚さが10μmとなるように塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、仮固定用粘着層を得た。
【0082】
次に、アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:100重量部、アクリル酸エチル:40重量部、メタクリル酸メチル:6重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル:7重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2重量部が配合された構成を有する感圧性接着剤を含むトルエン溶液を調製し、該トルエン溶液を、基材としてのポリエステル製フィルム(厚さ:100μm)の他方の面(前記仮固定用粘着層が形成された面に対して反対側の面)に、乾燥乃至硬化後の厚さが15μmとなるように塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、ゴム状有機弾性層を得た。
【0083】
次いで、アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:100重量部、アクリル酸エチル:40重量部、メタクリル酸メチル:6重量部、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル:7重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2重量部、テルペン系粘着付与樹脂(商品名「YSポリスターT130」ヤスハラケミカル社製):20重量部、熱膨張性微小球(商品名「F50D」松本油脂製薬株式会社製):40重量部が配合された構成を有する熱膨張性微小球含有感圧性接着剤を含むトルエン溶液を調製し、該トルエン溶液を、セパレータ上に、乾燥乃至硬化後の厚さが35μmとなるように塗布し、70℃で3分間加熱乾燥して、熱剥離型粘着層を得た後、該熱剥離型粘着層を、前記ゴム状有機弾性層に貼り合わせて、「仮固定用粘着層/基材/ゴム状有機弾性層/熱剥離型粘着層」の層構成を有する両面粘着テープ又はシート(加熱剥離型両面粘着シート)を得た。
【0084】
(比較例1)
仮固定用粘着層を形成するための感圧性接着剤を含むトルエン溶液として、アクリル系共重合体(アクリル酸n−ブチル:100重量部、およびアクリル酸:5重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2重量部、重合ロジン系樹脂(商品名「ハリエスター KT−2」ハリマ化成(株)製):15重量部、水添ロジン系樹脂(商品名「ステベライトE」イーストマンケミカル製):5重量部が配合された構成を有する感圧性接着剤を含むトルエン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、「仮固定用粘着層/基材/ゴム状有機弾性層/熱剥離型粘着層」の層構成を有する両面粘着テープ又はシート(加熱剥離型両面粘着シート)を得た。
【0085】
(比較例2)
仮固定用粘着層を形成するための感圧性接着剤を含むトルエン溶液として、アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル:100重量部、アクリル酸エチル:40重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル:6重量部、およびメタクリル酸メチル:7重量部をモノマー成分とするアクリル系共重合体):100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2重量部、可塑剤(商品名「モノサイザー W−700」大日本インキ化学工業(株)製;DOP):15重量部が配合された構成を有する感圧性接着剤を含むトルエン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、「仮固定用粘着層/基材/ゴム状有機弾性層/熱剥離型粘着層」の層構成を有する両面粘着テープ又はシート(加熱剥離型両面粘着シート)を得た。
【0086】
(評価)
実施例1および比較例1〜2で得られた各両面粘着テープ又はシートについて、以下の測定方法又は評価方法により、引張粘着力、ズレ量、X/Y比、ゲル分率、台座保持性、横ズレ防止性を測定又は評価した。
【0087】
(引張粘着力の測定方法)
実施例又は比較例に係る各両面粘着テープ又はシートを幅20mm、長さ100mmのサイズに切断し、常温(23℃±2℃)且つ湿度:65±5%RH)の条件下で、仮固定用粘着層がSUS304BA板に接触する形態で、SUS304BA板に、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせた後、30分間放置した。放置後、温度:23±2℃、湿度:65±5%RHの条件下、SUS304BA板より両面粘着テープ又はシートを、剥離角度:180°、引張速度:300mm/minの条件で引き剥がした時の荷重(最大荷重)を測定し、引張粘着力(N/20mm幅)を求めた。
【0088】
(ズレ量の測定方法)
実施例又は比較例に係る各両面粘着テープ又はシートを幅20mm、長さ100mmのサイズに切断し、常温(23℃±2℃)且つ湿度:65±5%RHの条件下で、仮固定用粘着層がSUS304BA板に接触する形態で、SUS304BA板に、20mm幅×10mmの接着面積で2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせ、23±2℃で30分間放置した。放置後、両面粘着テープ又はシートの端部に200gの荷重をかけ、JIS Z 0237にある保持力の測定方法に準じて、圧着時からのズレの大きさ(ズレ量)を測定し、23±2℃で60分間後のズレ量(mm/20mm幅)を求めた。
【0089】
(ゲル分率の測定方法)
仮固定用粘着層を形成するための粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗工した後、乾燥乃至硬化させて、仮固定用粘着層を形成した。該仮固定用粘着層を秤量して、その重量を測定し、該重量を浸漬前重量(A)とした。次に、この仮固定用粘着層を、トルエン中に常温(23±2℃)で72時間浸漬させた後、未溶解部分を取り出し、オーブン等を用いてトルエンを完全に蒸発させ、乾燥された未溶解部分を秤量して、その重量を測定し、該重量を浸漬後重量(B)とした。
そして、下記の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=(B/A)×100 (1)
(式(1)において、Aは浸漬前重量であり、Bは浸漬後重量である。)
【0090】
(台座保持性の評価方法)
実施例又は比較例に係る各両面粘着テープ又はシートを幅20mm、長さ100mmのサイズに切断してサンプルを作製し、該サンプルを、SUS304BA板に、仮固定用粘着層がSUS304BA板に接触する形態で、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせた後、図2(a)で示されるように、サンプルの一端に50gの重りを付けた。これを、図2(b)で示されるように、サンプル側(両面粘着テープ又はシート側)が下になるようにして、図2(c)で示されるように、サンプル(両面粘着テープ又はシート)における重りを付けた方の端を50mm剥がした。この後、重りを静かに離し、この離した時の位置を原点(ゼロ)として、1分後の剥離距離(mm)を測定した。そして、下記の評価基準により、台座保持性を評価した。
・台座保持性の評価基準
○:剥離距離が10mm未満である。
×:剥離距離が10mm以上である。
【0091】
なお、図2は、実施例において、台座保持性を評価する方法を示す概略図であり、図2(a)はSUS304BA板に貼着されているサンプルの一端に50gの重りを付けた状態を示す概略図であり、図2(b)はサンプル側が下になるようにセットした状態を示す概略図であり、図2(c)はサンプルの重りを付けた方の端を50mm剥がした状態を示す概略図である。図2(a)〜(c)において、8はサンプル(両面粘着テープ又はシート)、9はSUS304BA板(ステンレス板)、10は50gの重りである。
【0092】
(横ズレ防止性の評価方法)
実施例又は比較例に係る各両面粘着テープ又はシートを幅10mm、長さ100mmのサイズに切断してサンプルを作製し、該サンプルを、SUS304BA板に、幅10mm×長さ20mmの接着面積で、仮固定用粘着層がSUS304BA板に接触する形態で、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼り合わせた後、40±2℃の雰囲気下で貼り合わせた部分に5Nの荷重をのせ、さらに、両面粘着テープ又はシートのSUS304BA板に貼着されていない端部側に、5Nの力でせん断方向に荷重をかけ、この状態で1時間放置した後、両面粘着テープ又はシートのズレ量(mm)を測定した。そして、下記の評価基準により、横ズレ防止性を評価した。
・横ズレ防止性の評価基準
○:ズレ量が0.3mm未満である。
×:ズレ量が0.3mm以上である。
【0093】
【表1】

【0094】
表1より、実施例1に係る両面粘着テープ又はシートは、仮固定用粘着層が、引張引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅である特性とともに、ズレ量が0.3mm/20mm幅以下である特性を有しているので、台座保持性が良好であるとともに、横ズレが有効に抑制又は防止されていることが確認された。
【符号の説明】
【0095】
1 両面粘着テープ又はシート
2 基材
3 ゴム状有機弾性層
4 熱剥離型粘着層
5 仮固定用粘着層
6 セパレータ
7 セパレータ
8 サンプル
9 SUS304BA板
10 50gの重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着層を有し、且つ基材の他方の面に仮固定用粘着層を有している両面粘着テープ又はシートであって、仮固定用粘着層の引張粘着力が2.0〜20N/20mm幅であり、且つズレ量が0.3mm/20mm幅以下であり、且つ仮固定用粘着層がイソシアネート系もしくはエポキシ系架橋剤で架橋されていることを特徴とする両面粘着テープ又はシート。
【請求項2】
仮固定用粘着層が、さらに、ゲル分率が50重量%以上である特性を有している請求項1記載の両面粘着テープ又はシート。
【請求項3】
両面粘着テープ又はシートを用いて被着体を加工する方法であって、請求項1又は2記載の両面粘着テープ又はシートを、仮固定用粘着層を利用して台座に固定し、且つ熱剥離型粘着層上に被着体を貼り合わせた状態で、被着体に加工処理を施すことを特徴とする被着体の加工方法。
【請求項4】
被着体が、電子系部品類である請求項3記載の被着体の加工方法。
【請求項5】
被着体が、セラミックコンデンサ用のグリーンシートであり、且つグリーンシートの積層工程を有する請求項3記載の被着体の加工方法。
【請求項6】
請求項4記載の被着体の加工方法を利用して製造されたことを特徴とする電子部品。
【請求項7】
請求項5記載の被着体の加工方法を利用して製造されたことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−149181(P2012−149181A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9255(P2011−9255)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】