説明

両面粘着テープ用基材

【課題】低坪量でかつ紙厚が小さくても、粘着剤の浸透性に優れ、十分な引張強度を有する両面粘着テープ用基材の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の両面粘着テープ用基材は、ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分とした原料を抄紙することによって得られ、坪量が3g/m以上8g/m以下、紙厚が15μm以上40μm以下である両面粘着テープ用基材である。上記芯鞘構造繊維の繊度が1.1dtex以上2.2dtex以下、繊維長が3mm以上10mm以下であり、上記未延伸単一構造繊維の繊度が0.1dtex以上1.2dtex以下、繊維長が1mm以上10mm以下であり、上記芯鞘構造繊維の繊度が上記未延伸単一構造繊維の繊度よりも大きいとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープ用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
基材と、この基材の両面に含浸されている粘着剤とを有する両面粘着テープは、物品を別の物品に固定する用途に用いられる。この両面粘着テープの基材としては、一般に、パルプ繊維を抄紙して得られる紙のほか、ポリエステル樹脂から形成されるシートやフィルム等が用いられる。
【0003】
このような両面粘着テープは、電子機器の部品の固定にも用いられており、電子機器に用いられる場合には優れた粘着性が必要とされる。また近年では、電子機器の小型化に伴い、両面粘着テープにも薄物化が求められている。このような用途に用いられる両面粘着テープにおいては、粘着強度を上げるため粘着剤の浸透性が良い粘着テープ基材が求められ、厚み斑が小さく均一にシート化できるポリエステル基材の使用が増えている。例えば、未延伸ポリエステル繊維と延伸ポリエステル繊維を特定配合した延伸性が高く、地合いが良好で粘着剤が均等に浸透可能な粘着テープ用基材が考案されている(特開2010−180513号公報等参照)。
【0004】
しかしながら、上記公報に開示された粘着テープ用基材は、粘着剤の浸透性及び延伸性に優れているものの、携帯電話など小型の電子機器や薄型テレビなどの部品を固定する用途に用いられるように薄物化した場合には粘着テープ用基材の引張強度が低下して加工性や取扱い性が低下する。また、引張強度の低下を改善するため抄紙後の粘着テープ用基材を熱カレンダー処理すると、繊維間の隙間が小さくなって高密度となり、粘着剤の浸透性が低下して高い粘着強度が得られない。そのため、上述のような要求を十分に満足することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低坪量でかつ紙厚が小さくても、粘着剤の浸透性に優れ、十分な引張強度を有する両面粘着テープ用基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分とした原料を抄紙することによって得られ、
坪量が3g/m以上8g/m以下、紙厚が15μm以上40μm以下である両面粘着テープ用基材である。
【0008】
当該両面粘着テープ用基材は、熱融着性を有するポリエステル製の芯鞘構造繊維と、熱融着性を有するポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分として抄紙されることによって、基材を構成する繊維がランダムに配向しやすくなり、繊維間の隙間が大きくなるため、低坪量でありながら低密度かつ均一な基材とすることができる。また、抄紙時のドライヤー工程において芯鞘構造繊維の鞘部と未延伸単一構造繊維が融着後硬化することによって繊維同士が強力に接着されるため、低坪量でも十分な引張強度を有することができる。従って、当該両面粘着テープ用基材は坪量及び紙厚が上記範囲と小さくても、優れた粘着剤の浸透性を発揮し、十分な引張強度を有することができる。
【0009】
また、上述のポリエステル製の芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維を用いることによって、熱カレンダー加工をすることなく低坪量でかつ紙厚の小さい両面粘着テープ用基材を抄紙することができる。そのため、当該両面粘着テープ用基材は、抄紙後に熱カレンダー加工を省略することができ、密度を低く抑えて粘着剤の浸透性を高めることができる。さらに、抄紙後に熱カレンダー加工を実施しない場合には、当該両面粘着テープ用基材の生産性を向上させることができる。
【0010】
上記芯鞘構造繊維の繊度が1.1dtex以上2.2dtex以下、繊維長が3mm以上10mm以下であり、上記未延伸単一構造繊維の繊度が0.1dtex以上1.2dtex以下、繊維長が1mm以上10mm以下であり、上記芯鞘構造繊維の繊度が上記未延伸単一構造繊維の繊度よりも大きいとよい。芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維の繊度及び繊維長を上記範囲とすることによって、繊維同士の絡みを多くして接着強度を高めつつ基材を構成する繊維間の空隙を多くすることができる。その結果、当該両面粘着テープ用基材は、さらに優れた粘着剤の浸透性と引張強度とを有することができる。
【0011】
上記芯鞘構造繊維の含有率が50質量%以上90質量%以下であり、上記未延伸単一構造繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であるとよい。芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維の含有率を上記範囲とすることによって、低坪量でも繊維間の空隙を保ち、繊維間の接着強度をより高めることができる。その結果、当該両面粘着テープ用基材は、さらに優れた粘着剤の浸透性と引張強度を有することができる。
【0012】
当該両面粘着テープ用基材は、密度が0.1g/cm以上0.25g/cm以下であり、透気度が0.8秒/300ml・100枚以下であり、引張強度が67N/m以上であるとよい。当該両面粘着テープ用基材の密度及び透気度をそれぞれ上記範囲とすることによって、当該両面粘着テープ用基材はより高い浸透性を有することができる。また、引張強度を上記範囲とすることによって、当該両面粘着テープ用基材は、低坪量かつ紙厚が小さくても断紙が生じにくく良好な加工性及び取扱い性を有する。
【0013】
ここで、「坪量」とは、JIS−P8124に準拠して測定される値である。「紙厚」及び「密度」とは、JIS−P8118に準拠して測定される値である。「繊度」とは、JIS−L1095に準拠して測定される値である。「繊維長」とは、数平均繊維長を意味し、JIS−P8226に準拠して測定される値である。「透気度」とは、JIS−P8117に準拠して両面粘着テープ用基材を100枚重ねたものを空気300mlが通過する時間(秒)を測定した値である。「引張強度」とは、両面粘着テープ用基材の縦目方向の引張強度を意味し、JIS−P8113に準拠して測定される値である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の両面粘着テープ用基材は、低坪量でかつ紙厚が小さくても、粘着剤の浸透性に優れ、十分な引張強度を有する。そのため、特に携帯電話など小型の電子機器や薄型テレビの部品の固定用途に用いられる薄物両面粘着テープ用基材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳説する。
【0016】
本発明の両面粘着テープ用基材は、ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分とした原料を抄紙することによって得られ、坪量が3g/m以上8g/m以下、紙厚が15μm以上40μm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
当該両面粘着テープ用基材は、熱融着性を有するポリエステル製の芯鞘構造繊維と、熱融着性を有するポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分として抄紙されているため、基材を構成する繊維がランダムに配向しやすくなり、繊維間の隙間が大きくなるため、低坪量でありながら低密度かつ均一な基材とすることができる。また、抄紙時のドライヤー工程において芯鞘構造繊維の鞘部と未延伸単一構造繊維が融着後硬化することによって繊維同士が強力に接着されるため、低坪量でも十分な引張強度を有することができる。従って、当該両面粘着テープ用基材は坪量及び紙厚が上記範囲と小さくても、優れた粘着剤の浸透性を発揮し、十分な引張強度を有することができる。そのため、特に携帯電話など小型の電子機器や薄物テレビの部品の固定用途に用いられる薄物両面粘着テープ用基材として好適に用いることができる。
【0018】
以下、当該両面粘着テープ用基材を構成するのに好適な原料及び当該両面粘着テープ用基材の製造方法について説明する。
【0019】
<ポリエステル繊維>
当該両面粘着テープ用基材に用いることができるポリエステル繊維(芯鞘構造繊維、未延伸単一構造繊維)の材質としては、ポリエステルである限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等のグリコール・ジカルボン酸重縮合系、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等のポリラクチド類、ポリラクトン類等からなるポリエステル繊維を用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0020】
<芯鞘構造繊維>
当該両面粘着テープ用基材に用いる芯鞘構造繊維は、芯部及び鞘部が上述のポリエステル繊維で構成される。
【0021】
芯鞘構造繊維の繊度は、1.1dtex以上2.2dtex以下であることが好ましく、1.5dtex以上2.0dtex以下がさらに好ましい。芯鞘構造繊維の繊度が1.1dtex未満では、繊維間の空隙が少なくなって、粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。逆に、芯鞘構造繊維の繊度が2.2dtexを超えると、繊維同士の絡みが少なくなって接着強度が弱くなり、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれや、抄紙ができないおそれがある。
【0022】
芯鞘構造繊維の長さは、3mm以上10mm以下であることが好ましく、4mm以上7mm以下がさらに好ましい。芯鞘構造繊維の長さが3mm未満では、繊維間の空隙が少なくなって、粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。逆に、芯鞘構造繊維の長さが10mmを超えると、繊維同士の絡みが少なくなって接着強度が弱くなり、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれがあるほか、紙厚が増加するおそれや、水中での分散性が好ましくなくなって均一なウェブを得るのが困難になるおそれがある。
【0023】
この芯鞘構造繊維の鞘部の融点は、110℃以上140℃以下が好ましい。鞘部の融点が110℃未満では、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時にドライヤーに繊維が貼付き、生産性が低下するおそれがある。逆に、鞘部の融点が140℃を超えると、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時のドライヤー工程において鞘部が融解せず、繊維が接着されないため、当該両面粘着テープ用基材が十分な引張強度を有さないおそれがある。
【0024】
上記芯鞘構造繊維の芯部の融点は150℃以上が好ましい。芯部の融点が150℃未満では、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時のドライヤー工程において、芯鞘構造繊維全体が融解し、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれや、基材がフィルム状になり繊維間の空隙が少なくなって粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。
【0025】
上記芯鞘構造繊維の芯部の質量に対する鞘部の質量の比が0.2以上3以下であるとよい。上記芯鞘構造繊維の芯部の質量に対する鞘部の質量の比が0.2未満では、芯鞘構造繊維の接着力が不足し、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれがある。逆に、上記芯鞘構造繊維の芯部の質量に対する鞘部の質量の比が3を超えると、芯鞘構造繊維の融解部が多くなり、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれや、繊維間の空隙が少なくなって粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。
【0026】
<未延伸単一構造繊維>
当該両面粘着テープ用基材に用いる未延伸単一構造繊維は、紡糸後に延伸を行っていない上述のポリエステル繊維であり、芯鞘構造を有さない単一構造の繊維である。未延伸単一構造繊維は、分子が不規則的に存在するため、熱を加えると繊維が軟化することによって接着性を有する。この未延伸単一構造繊維を用いると、抄紙時のドライヤー工程で繊維が軟化し接着性を有するものの、融解はしないため、繊維間の空隙を保ちながら引張強度を向上させることができる。
【0027】
未延伸単一構造繊維の繊度は、0.1dtex以上1.2dtex以下であることが好ましく、0.15dtex以上0.5dtex以下がさらに好ましい。未延伸単一構造繊維の繊度が0.1dtex未満では、繊維間の空隙が少なくなって、粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。逆に、未延伸単一構造繊維の繊度が1.2dtexを超えると、繊維同士の絡みが少なくなって接着強度が弱くなり、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれや、抄紙ができないおそれがある。さらに、未延伸単一構造繊維の繊度を芯鞘構造繊維の繊度よりも小さくすることにより、すなわち芯鞘構造繊維の繊度を未延伸単一構造繊維の繊度よりも大きくすることにより、芯鞘構造繊維と未延伸単一構造繊維が絡まりやすくなり、繊維間の空隙を保ちながら引張強度を高めることができるため好ましい。特に、上記芯鞘構造繊維の繊度が上記未延伸単一構造繊維の繊度より0.5dtex以上大きいと芯鞘構造繊維と未延伸単一構造繊維の絡みがより良くなり接着強度を高めつつ繊維間の空隙を多くすることができるため好ましい。
【0028】
未延伸単一構造繊維の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。未延伸単一構造繊維の長さが1mm未満では、繊維間の空隙が少なくなって、粘着剤の浸透性が悪化するおそれや、引張強度が低下するおそれがある。逆に、未延伸単一構造繊維の長さが10mmを超えると、繊維同士の絡みが少なくなって接着強度が弱くなり、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれや、水中での未延伸単一構造繊維の分散が好ましくなくなって均一なウェブを得るのが困難になるおそれがある。
【0029】
以上のように、ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを材料として用い、基材の紙厚を15μm以上40μm以下とすることに加えて、芯鞘構造繊維の繊度を1.1dtex以上2.2dtex、繊維長を3mm以上10mm以下とし、未延伸単一構造繊維の繊度を0.1dtex以上1.2dtex以下、繊維長を1mm以上10mm以下とし、かつ芯鞘構造繊維の繊度を未延伸単一構造繊維の繊度よりも大きくすることにより、繊維間の空隙を保ちながら引張強度を高め、優れた粘着剤の浸透性と十分な引張強度とを有した両面粘着テープ用基材が得られるため好ましい。特に、上記芯鞘構造繊維の繊度が上記未延伸単一構造繊維の繊度より0.5dtex以上大きいと芯鞘構造繊維と未延伸単一構造繊維の絡みがより良くなり接着強度を高めつつ繊維間の空隙を多くすることができるため好ましい。
【0030】
上記未延伸単一構造繊維の軟化点は110℃以上140℃以下が好ましい。未延伸単一構造繊維の軟化点が110℃未満では、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時にドライヤーに繊維が貼付き生産性が低下するおそれや、ドライヤーで接着した後に収縮することによって繊維間の空隙が少なくなり粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。逆に、未延伸単一構造繊維の軟化点が140℃を超えると、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時のドライヤー工程において未延伸単一構造繊維が軟化せず、繊維が接着されないため、当該両面粘着テープ用基材が十分な引張強度を有さないおそれがある。
【0031】
上記未延伸単一構造繊維の結晶化度が10%以下であるとよい。未延伸単一構造繊維の結晶化度が10%を超えると、当該両面粘着テープ用基材の抄紙時のドライヤー工程において軟化する繊維が減少し、繊維の接着効果が弱化して、基材の引張強度が低下するおそれがある。
【0032】
当該両面粘着テープ用基材においては、芯鞘構造繊維の含有率が50質量%以上90質量%以下であり、未延伸単一構造繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、芯鞘構造繊維の含有率が70質量%以上85質量%以下であり、未延伸単一構造繊維の含有率が15質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。芯鞘構造繊維の含有率が50質量%未満では、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が低下するおそれがある。逆に、芯鞘構造繊維の含有率が90質量%を超えると、繊維間の空隙が減少し、粘着剤の浸透性が悪化するおそれがある。
【0033】
以上のように、ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを材料として用い、基材の紙厚を15μm以上40μm以下とすることに加えて、芯鞘構造繊維の繊度を1.1dtex以上2.2dtex、繊維長を3mm以上10mm以下とし、未延伸単一構造繊維の繊度を0.1dtex以上1.2dtex以下、繊維長を1mm以上10mm以下とし、さらに、芯鞘構造繊維の含有率を50質量%以上90質量%以下、未延伸単一構造繊維の含有率を10質量%以上50質量%以下とすることにより、さらに優れた粘着剤の浸透性と十分な引張強度とを有した紙厚の小さい両面粘着テープ用基材が得られるため好ましい。
【0034】
当該両面粘着テープ用基材は、原料の繊維として、上記芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維のみを含有することが好ましいが、これら以外の繊維を原料として含有していてもよい。この繊維としては、ポリエステルの他に、例えば、レーヨン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル等の合成繊維や木材パルプ等の天然パルプ繊維を用いることができる。上記芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維以外の繊維の含有量としては、例えば10%以下が好ましい。
【0035】
<分散剤>
当該両面粘着テープ用基材は、表面に塗布される粘着剤等が均一に浸透するように、繊維を分散させる目的で分散剤が添加されることが好ましい。当該両面粘着テープ用基材を形成する原料(ポリエステル繊維)に配合する分散剤としては、親水性と疎水性とを有する分散剤が好ましい。このような分散剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、陰イオン性分散剤(アニオン性分散剤)、陽イオン性分散剤(カチオン性分散剤)、両性分散剤(双性分散剤)、非イオン性分散剤(ノニオン性分散剤)等を用いることができる。これらの中でもカチオン性分散剤がポリエステル繊維に対する分散力に優れているため、特に好ましい。
【0036】
上記分散剤の配合量は、ポリエステル繊維100質量部に対して、0.2質量部以上0.8質量部以下が好ましく、0.3質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。分散剤の配合量が0.2質量部未満では、十分な分散効果が得られないおそれがある。逆に、分散剤の配合量が0.8質量部を超えると、ポリエステル繊維のスラリーが発泡しやすくなり、抄紙時に基材に穴を発生させるおそれがある。
【0037】
<消泡剤>
当該両面粘着テープ用基材は、断紙等の製造不具合を防止する目的で消泡剤が添加されることが好ましい。当該両面粘着テープ用基材を形成する原料(ポリエステル繊維)に配合する消泡剤としては、例えば、界面活性剤系やシリコン系の消泡剤を用いることができる。
【0038】
上記消泡剤の配合量は、ポリエステル繊維100質量部に対して、0.4質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上0.7質量部以下がより好ましい。消泡剤の配合量が0.4質量部未満では、十分な消泡効果が得られず接着強度が低下し、基材が断紙しやすくなるおそれがある。逆に、消泡剤の配合量が1.0質量部を超えると、地合が悪化するおそれがある。
【0039】
なお、当該両面粘着テープ用基材には、上記分散剤及び消泡剤の他に、顔料や充填剤等の種々の添加剤を配合することができる。
【0040】
<両面粘着テープ用基材>
当該両面粘着テープ用基材の坪量は、3g/m以上8g/m以下が好ましく、4g/m以上6g/m以下がより好ましい。当該両面粘着テープ用基材の坪量が3g/m未満では、引張強度が十分得られずシート形状を維持できないおそれがある。逆に、当該両面粘着テープ用基材の坪量が8g/mを超えると、紙厚が大きくなり、当該両面粘着テープ用基材を用いた両面粘着テープが薄物化に反し電子機器等の微細部品の固定用途に適さなくなるおそれがある。
【0041】
当該両面粘着テープ用基材の紙厚は、15μm以上40μm以下であり、20μm以上30μm以下がより好ましい。当該両面粘着テープ用基材の紙厚が15μm未満では、引張強度が低下し、断紙しやすくなる。逆に、当該両面粘着テープ用基材の紙厚が40μmを超えると、紙厚のムラが発生するおそれがあり、また粘着剤の浸透性が低下する。また、当該両面粘着テープ用基材を用いた両面粘着テープが電子機器等の微細部品の固定用途に適さなくなるおそれがある。当該両面粘着テープ用基材の紙厚は、例えば、繊維の種類、繊度、繊維長、配合質量割合や、坪量等を変化させることによって調節することができる。
【0042】
当該両面粘着テープ用基材の密度としては、0.10g/cm以上0.25g/cm以下が好ましく、0.15g/cm以上0.20g/cm以下がより好ましい。当該両面粘着テープ用基材の密度が0.10g/cm未満では、引張強度が十分得られずシート形状を維持できないおそれがある。逆に、当該両面粘着テープ用基材の密度が0.25g/cmを超えると、粘着剤の浸透性が悪化し、当該両面粘着テープ用基材を用いた両面粘着テープの粘着性が十分得られないおそれがある。
【0043】
当該両面粘着テープ用基材の透気度としては、0.01秒/300ml・100枚以上0.8秒/300ml・100枚以下が好ましく、0.01秒/300ml・100枚以上0.7秒/300ml・100枚以下がより好ましい。当該両面粘着テープ用基材の透気度が0.8秒/300ml・100枚を超えると、粘着剤の浸透性が悪化し、当該両面粘着テープ用基材を用いた両面粘着テープの粘着性が十分得られないおそれがある。一方で、当該両面粘着テープ用基材の透気度を0.01秒/300ml・100枚未満とするには、坪量や密度等を著しく低減する必要があり、製造上困難である。
【0044】
当該両面粘着テープ用基材の密度及び透気度は、例えば、繊維の種類、繊度、繊維長、配合質量割合や、坪量等を変化させることによってそれぞれ調節することができる。
【0045】
当該両面粘着テープ用基材は、縦目方向の引張強度が67N/m以上667N/m以下であることが好ましく、100N/m以上300N/m以下であることがより好ましい。当該両面粘着テープ用基材の引張強度が67N/m未満では、当該両面粘着テープ用基材が断紙しやすくなり、加工性や取扱い性が低下する。逆に、当該両面粘着テープ用基材の引張強度が667N/mを超えると、伸縮性が無くなるため被貼着面に対する追従性が低下するおそれがある。当該両面粘着テープ用基材の縦目方向の引張強度は、例えば、繊維の繊度、繊維長、配合質量割合や、坪量等を変化させることによって調節することができる。
【0046】
<両面粘着テープ用基材の製造方法>
当該両面粘着テープ用基材は、上述のポリエステル製の芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維を原料とした抄紙によって製造することができる。
【0047】
具体的には、上記芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維に、好ましくは上記分散剤及び消泡剤等を配合した原料を用いて両面粘着テープ用基材を抄紙する。この抄紙方法としては、通常の製紙に用いられる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、傾斜短網抄紙機等による抄紙方法を用いることができる。この中でも、円網抄紙機を用いると、流れ方向に繊維が配向されやすく、得られる紙の縦目方向の引張強度が高くなるため、低坪量化しても縦目方向の引張強度を高くでき、また、均一な紙厚にすることができるため好ましい。なお、抄紙で用いられるドライヤーの温度としては、110℃以上140℃以下が好ましい。
【0048】
当該両面粘着テープ用基材の製造においては、カレンダー加工を実施しないことが好ましい。カレンダー加工を行うと、当該両面粘着テープ用基材の密度が高くなり浸透性が低下するおそれがある。逆に、カレンダー加工を行わないことによって、当該両面粘着テープ用基材の密度を低減することができるとともに、生産性を向上させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
【0051】
[繊度(単位:dtex)]
JIS−L1095(2010)「一般紡績糸試験方法」に準拠して測定した。
【0052】
[繊維長(単位:mm)]
JIS−P8226(2006)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第1部:偏光法」に準拠して数平均繊維長を測定した。
【0053】
[坪量(単位:g/m)]
JIS−P8124(1998)「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0054】
[紙厚(単位:mm)]
JIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0055】
[密度(単位:g/cm)]
JIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0056】
[透気度(単位:秒/300ml・100枚)]
JIS−P8117(1998)「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー試験機法」に準拠し、両面粘着テープ用基材を100枚重ねたものを空気300mlが通過する時間(秒)を測定した。
【0057】
[引張強度(単位:N/m)]
JIS−P8113(2006)「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して縦目方向の引張強度を測定した。
【0058】
本実施例においては、以下の各品質について評価を行った。
【0059】
[粘着剤浸透性]
アクリル系粘着剤(日本合成化学工業株式会社製、品名:コーポニール5411)をフィルムに100μmの厚さで塗布し、このフィルムの粘着剤塗布面に両面粘着テープ用基材を重ねて配設し、さらにこの両面粘着テープ用基材の上記粘着剤塗布フィルムと反対側の面に粘着剤を塗布していないフィルムを重ねて配設し試験体を形成した。この試験体をガラス板で挟み、50kg/mで圧着した後の試験体の厚みをマイクロメーターで測定し、粘着剤浸透性を以下の基準で評価した。
(評価基準)
浸透性=[加圧前試験体厚さ(上下2枚のフィルム厚さ+基材紙厚+粘着剤塗布厚さ)−加圧後試験体厚さ]/基材紙厚×100(%)
○:浸透性が40%以上。
△:浸透性が20%以上40%未満。
×:浸透性が20%未満。
【0060】
[実施例1]
繊度が1.7dtex、長さが5mmの芯鞘構造繊維(芯鞘ポリエステル繊維、ユニチカファイバー株式会社製、芯部:融点255℃、鞘部:融点110℃)を80質量%、繊度が0.2dtex、長さが3mmの未延伸単一構造繊維(ポリエステル繊維、帝人ファイバー株式会社製:軟化点125℃)を20質量%配合した原料を調製した。
【0061】
上記原料には分散剤としてカチオン性分散剤(竹本油脂株式会社製)を、ポリエステル繊維100質量部に対して0.4質量部添加し、消泡剤として界面活性剤系消泡剤(伯東株式会社製)を、ポリエステル繊維100質量部に対して0.6質量部添加した。
【0062】
上記原料を用いて、円網抄紙機にて両面粘着テープ用基材を製造した。なお、両面粘着テープ用基材の坪量は4.5g/mとし、ドライヤーの温度は約120℃とした。また、熱カレンダー加工は実施していない。
【0063】
得られた両面粘着テープ用基材の紙厚、密度、透気度及び縦目方向の引張強度を計測した結果、紙厚は25μmであり、密度は0.18g/cmであり、透気度は0.5秒/300ml・100枚であり、引張強度は201N/mであった。
【0064】
[実施例2〜12及び比較例1〜6]
実施例2〜12及び比較例1〜6における原料の芯鞘構造繊維及び未延伸単一構造繊維の繊度及び含有率並びに坪量は表1の通りとした。また、添加剤(分散剤及び消泡剤)の種類及び添加量は実施例1と同様とした。
【0065】
上記原料を用いて実施例1と同様に、円網抄紙機を用いて両面粘着テープ用基材を製造した。また、実施例1と同様に、得られた両面粘着テープ用基材の紙厚、密度、透気度及び縦目方向の引張強度を計測した。各計測結果については表1に示す。なお、比較例3の両面粘着テープ用基材は抄紙後に加熱温度200℃で熱カレンダー加工を施した。
【0066】
[品質評価]
実施例1〜12及び比較例1〜6で得られた各両面粘着テープ用基材について、上述の粘着剤浸透性について評価を行った。評価結果について、表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の結果から示されるように、実施例1〜12の両面粘着テープ用基材は、一定の引張強度を有しながら、優れた粘着剤浸透性を発揮する。一方で、比較例1〜3の両面粘着テープ用基材は、十分な粘着剤浸透性が発揮されず実使用に適さない。また、比較例4〜6の両面粘着テープ用基材は、引張強度が低く実使用に適さない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明の両面粘着テープ用基材は、低坪量でかつ紙厚が小さくても、粘着剤の浸透性に優れ、十分な引張強度を有する。そのため、特に携帯電話など小型の電子機器や薄型テレビの部品の固定用途に用いられる薄物両面粘着テープ用基材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル製の芯鞘構造繊維と、ポリエステル製の未延伸単一構造繊維とを主成分とした原料を抄紙することによって得られ、
坪量が3g/m以上8g/m以下、紙厚が15μm以上40μm以下である両面粘着テープ用基材。
【請求項2】
上記芯鞘構造繊維の繊度が1.1dtex以上2.2dtex以下、繊維長が3mm以上10mm以下であり、上記未延伸単一構造繊維の繊度が0.1dtex以上1.2dtex以下、繊維長が1mm以上10mm以下であり、上記芯鞘構造繊維の繊度が上記未延伸単一構造繊維の繊度よりも大きい請求項1に記載の両面粘着テープ用基材。
【請求項3】
上記芯鞘構造繊維の含有率が50質量%以上90質量%以下であり、上記未延伸単一構造繊維の含有率が10質量%以上50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の両面粘着テープ用基材。
【請求項4】
密度が0.1g/cm以上0.25g/cm以下であり、透気度が0.8秒/300ml・100枚以下であり、引張強度が67N/m以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の両面粘着テープ用基材。

【公開番号】特開2013−79476(P2013−79476A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221323(P2011−221323)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】