説明

並列ミラー/偏光子ゾーンを有する多層光学フィルム

反射性フィルムは、強め合う又は弱め合う干渉によって光を選択的に反射する内側層を含み、層はフィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延びる。第1ゾーンにおいて、層は実質的に反射性偏光子として動作し、第2ゾーンにおいてこれらは実質的にミラーとして動作する。層はしたがって、第1ゾーンにおいて、1つの偏光状態の垂直入射光が実質的に反射され、垂直な偏光状態の垂直入射光が実質的に透過する第1反射特性、及び第2ゾーンにおいて、任意の偏光状態の垂直入射光が実質的に反射される第2反射特性を提供する。フィルムは、第2ゾーンにおける第2厚さと実質的に同じである第1ゾーンにおける第1厚さを有し得る。あるいは、第2厚さは、第1厚さよりも実質的に薄い場合がある。関連する方法、物品及びシステムもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年12月22日に出願された米国特許仮出願第61/139,736号「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」及び2009年3月6日に出願された米国特許仮出願第61/157,996号「Multilayer Optical Films Having Side−by−Side Mirror/Polarizer Zones」及び2009年3月6日に出願された米国特許仮出願第61/158,006号「Multilayer Optical Films Suitable for Bi−Level Internal Patterning」の利益を主張し、これらの開示は本明細書において参照によって組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に、その反射特性が、フィルム内に、すなわちフィルムの内部に配置される層間の境界面から反射する光の建設的及び破壊的干渉によって大部分が決定されるようなフィルムに対する特定の用途を有する光学フィルムに関する。本発明はまた、関連するシステム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
多層光学フィルム、すなわち層間の境界面における反射光の建設的及び破壊的干渉の結果として、光を選択的に反射及び透過するために、異なる屈折率及び好適な厚さの多数の別個の層を含むフィルムが既知である。いくつかの場合において、このようなフィルムは、二酸化チタンなどの高屈折率無機材料及び二酸化ケイ素などの低屈折率無機材料の交互の層をガラス基材又は他の剛性の基材上に真空蒸着することによって形成される。
【0004】
他の場合において、このようなフィルムは、交互の層構成の異なる有機高分子材料をダイを通じて共押出し、押出品を冷却してキャストウェブを形成し、ウェブを好適な最終厚さまで薄くするためにキャストウェブを伸張することによって形成される。いくつかの場合において、伸張はまた、交互の高分子材料の一方又は両方を複屈折性(すなわち、所与の材料が一方向に沿った偏光において、異なる方向に沿った偏光の屈折率とは異なる屈折率を有する)にするような方法で実行されてもよい。
【0005】
この複屈折性は、第1面内方向(場合によってx軸又は遮蔽軸と称される)に沿って隣接する層の間に大きな屈折率不整合を、かつ第2面内方向(場合によってy軸又は透過軸と称される)に沿って隣接する層の間に実質的な屈折率整合を有する最終的なフィルムを生じることがあり、ここで第1方向に沿って偏光された垂直入射光は高度に反射し、第2方向に沿って偏光された垂直入射光は高度に透過する。米国特許第3,610,729号(Rogers)、同第4,446,305号(Rogersら)及び同第5,486,949号(Schrenkら)を参照。このようなフィルムは典型的には反射性偏光子と称される。
【0006】
複屈折性はまた、一方の又は両方の面内方向に沿った隣接する層間の屈折率差から著しく異なる、面外方向に沿った(すなわち、フィルムと垂直な軸に沿った)隣接する層間の屈折率差を生じ得る。この後者の場合の例は、任意の偏光の垂直入射光は高度に反射されるが、面外方向(z)に沿った隣接する層の屈折率が実質的に整合しており、それによっていわゆる「p偏光」の光(入射面において偏光される光)に関する境界面の反射率が実質的に一定であるように、両方の面内方向(x及びy)に沿った隣接する層間で実質的に同じ大きさの屈折率不整合を有するフィルムである。例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)を参照されたい。このようなフィルムは典型的には、任意の偏光の垂直入射光におけるその高い反射率のために、ミラー又はミラー様フィルムと称され得る。Jonzaらはとりわけ、隣接するミクロ層間の屈折率におけるz軸の不整合(より簡潔にz屈折率不整合すなわちΔnz)が、ブリュースター角(境界面におけるp偏光の反射率がゼロになる角度)が非常に大きいか又は存在しない多層積み重ね体の構成を可能にするためにどのように調整され得るかを教示する。これはひいては、その境界面におけるp偏光に関する反射率が、入射角の増加に伴って緩慢に減少するか又は入射角と独立しているか又は入射角が垂直方向から遠ざかるにつれて増加する、多層ミラー及び偏光子の構成を可能にする。結果として、ミラーの場合における任意の入射方向及び偏光子の場合における選択された方向において、広範な帯域幅にわたり、s偏光(入射面と垂直に偏光された光)及びp偏光の両方に関して高い反射率を有する多層フィルムが達成され得る。
【0007】
多層光学フィルムにパターンを付与してしるしを形成することもまた既知である。米国特許第6,045,894号(Jonzaら)「Clear to Colored Security Film」、同第6,531,230号(Weberら)「Color Shifting Film」及び同第6,788,463号(Merrillら)「Post−Formable Multilayer Optical Films and Methods of Forming」を参照されたい。所望のパターンを生成するために、選択された領域又はゾーンのフィルムを薄化するためエンボス加工ダイなどにより、フィルムに圧力が選択的に適用される。5%超又は約10%超の厚さ低減を生じ得る選択的薄化は、選択された領域のフィルムの厚さ全体にわたって有効であり、それによってフィルムの内部の光学的に薄い層(「ミクロ層」)の積み重ね体(これらのミクロ層は観察される反射及び透過特性を司る)はまた選択された領域においてフィルムの隣接領域に対して薄化される。このミクロ層の薄化は、より短いミクロ層を通じた光学距離の差の結果として、ミクロ層に関する任意の反射帯域をより短い波長にシフトする。反射帯域におけるシフトはパターンが容易に知覚されるように、エンボス加工領域と非エンボス加工領域との間の反射する色又は透過する色における差として観察者に顕在化する。
【0008】
例えば、‘463 Merrillらの特許は、418の内部ミクロ層(209のミクロ層の2つのパケットそれぞれ)を含む多層高分子フィルムが選択された領域でエンボス加工された、エンボス加工されたカラーシフトセキュリティフィルムを記載する。エンボス加工前及びエンボス加工後の非エンボス加工領域において、ミクロ層は垂直入射における720nmから45°視野における640nmまで、60°視野における更に短い波長まで(垂直における透明な外観から45°におけるシアン、60°における鮮明なシアンに対応する)、入射角(観察角)と共にその短波長帯域端がシフトする反射帯域を生成する屈折率及び厚さを有した。これらの非エンボス加工領域において、フィルムは3.4ミル(86.4マイクロメートル)すなわち、0.0034インチ(0.086mm)の厚さを有した。フィルムはその後、149℃のロールと予備加熱されたエンボス加工プレートとの間でエンボス加工されて、フィルムを選択された領域において約3.0ミル(76.2マイクロメートル)まで薄化した。エンボス加工された領域は、720nmからより短い波長への帯域端シフトの指標である、垂直入射における鮮明な金色を呈した。エンボス加工された領域における観察された色は斜めの観察角においてシアン又はより深い青色に変化した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、とりわけ、少なくとも面内方向において偏光子からミラーへと連続的であるか又は一体型である、フィルム構成体内の並列構成にある偏光子及びミラーの両方を組み込み得る多層光学フィルムが記載される。したがって、フィルムの1つのゾーンにおいて偏光子の全て又は実質的な部分を形成する同じミクロ層が、別の、例えば、フィルムの隣接する又は隣り合うゾーンにおけるミラーの全て又は実質的な部分を形成し得る。偏光子及びミラーは両方とも、広帯域(例えば可視スペクトルを含むより広い波長帯域にわたって反射する)であってもよく、又は両方が反射性狭帯域(例えば、可視スペクトルの一部にわたってのみ反射する)であってもよく、反射及び/又は透過光において色付きの外観を提供する。偏光子に関して、当然ながら、このような反射はいずれの場合においても、第1偏光状態と垂直な第2偏光状態(透過偏光状態又は単純に透過状態と称される)の光においてではなく、第1偏光状態(遮蔽偏光状態又は単純に遮蔽状態と称される)の光において主に又は専ら生じる。偏光子及びミラーは、例えばしるしなどの所望のパターンを画定する面内形状を有するゾーンに配置され得る。これらのゾーンはフィルムの少なくともいくつかの部分にわたって補完的であり得、それによって偏光子は例えば背景を形成してもよく、ミラーはしるしの前景を形成してもよい。
【0010】
一体型偏光子/ミラーフィルムは、複数のポリマー層を共押出する工程と、層化した押出品をキャストする工程と、キャストフィルムを伸張するかないしは別の方法で配向して光学的に薄い層の干渉性積み重ね体又はパケットを形成する少なくともいくつかの層の複屈折性を誘起する工程とを含むプロセスを使用して製作され得る。伸張したフィルムはこの時点において、実質的にその全体領域にわたって狭帯域又は広帯域の反射性偏光子であり得、遮蔽偏光状態の選択された波長の垂直入射光における高い反射率及び透過偏光状態の選択された波長の垂直入射光における低い反射率を有する。透過及び遮蔽偏光状態の反射率の差は、フィルム内の光学的に薄い層の屈折性の結果である。続く工程において、フィルムの選択される部分又はゾーンは、選択される(又は「処理」)ゾーンのフィルム内の層構造の物理的一体性を維持する一方で、フィルムの残りの部分の複屈折性を低減することなく選択されるゾーンのこの複屈折性低減又は排除するように、選択的に加熱され得る。適切な材料選択により、及び適切なフィルム設計により(例えば、パケット内の十分な数の光学的に薄い層)、低減した複屈折性は、いずれかの偏光を実質的に反射する、すなわち狭帯域又は広帯域ミラーとして機能する、選択又は処理されたゾーン内の修正された層パケットを生じ得る。
【0011】
いくつかの場合において、以下で広範に記載されるように、処理ゾーン内に低減した複屈折性を提供する選択的な加熱は、少なくとも部分的に、吸収加熱を提供するためにそのフィルム又は選択される層によってその後吸収される、高強度の放射線で、フィルムのそのようなゾーンを照射することによって達成され得る。この吸収加熱技術は、処理ゾーンへの外部圧力又は力のいかなる選択的適用もなく、かついくつかの場合においては処理ゾーンにおけるフィルムのいかなる顕著な薄化もなく実行することができる。構成層の構造的一体性(しかしながら厚さではない)を維持する一方で処理ゾーンの構成層の複屈折性を低減するために処理ゾーンを選択的に加熱するのに利用ために所望され得る代替的な技術は、適切なエンボス加工工具温度、適用圧力及び滞留時間で慎重に制御した条件下において、加熱したエンボス加工ツールでフィルムをエンボス加工することを含む。この可能な代替的な技術は当然、処理ゾーンへの圧力及び力の選択的適用を含み、処理ゾーンにおけるフィルムの薄化を(対応するより短い波長への帯域シフトと共に)生成する。圧力の適用を含む又は含まない対流加熱、伝導加熱及び放射加熱のいずれかの好適な組み合わせを含む、処理ゾーンを選択的に加熱するための更に他の技術もまた利用され得る。
【0012】
吸収加熱技術により、選択的な複屈折性の低減は、内部の内側層の少なくともいくらかを、フィルム内の層構造の物理的一体性を維持するのに十分に低い一方で既存の光学的複屈折性を低減するか又は排除する材料内の緩和を生成するのに十分高い温度まで選択的に加熱するように、フィルムの第2ゾーンに適切な量のエネルギーを慎重に供給することによって達成される(非処理第1ゾーンにこのようなエネルギーを供給することなく)。複屈折性の低減は部分的であってもよく又はこれは完全であってもよく、この場合、第1ゾーンの複屈折性である内側層が第2ゾーンにおいて光学的に等方性にされる。代表的な実施形態において、選択的な加熱は、少なくとも部分的には光又は他の放射エネルギーのフィルムの第2ゾーンへの選択的供給によって達成される。光は、紫外線、可視若しくは赤外線波長、又はこれらの組み合わせを含み得る。供給される光の少なくともいくらかがフィルムによって吸収されて所望の加熱を提供し、吸収される光の量は、供給される光の強度、持続時間及び波長分布並びにフィルムの吸収特性の関数である。多層光学フィルムを内部パターン化するためのこの吸収加熱技術は、既知の光強度光源及び電子的に処理可能な光線操作システムと適合し、したがって、画像特定的なエンボス加工プレート又はフォトマスクなどの専用ハードウェアを必要とすることなく、単純に光線を適切に操作することにより、フィルム内の事実上あらゆる所望のパターン又は画像の生成を可能にする。
【0013】
強め合う又は弱め合う干渉によって光を選択的に反射するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムが記載され、層はフィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延びる。第1ゾーンにおいて、複数の層が、反射性偏光子に典型的な第1反射特性を提供する(すなわち、1つの偏光状態の垂直入射光が実質的に反射され、垂直な状態の垂直入射光が実質的に透過する)。第2ゾーンにおいて、複数の層が、ミラーに典型的な第2反射特性を提供する(すなわち、任意の偏光状態の垂直入射光が実質的に反射される)。
【0014】
吸収加熱技術が使用されて第1反射特性を第2反射特性に転換する場合、これらの反射特性の間の差は、第1ゾーンのフィルムの第1厚さと、第2ゾーンのフィルムの第2厚さとの間のいかなるさ差にも実質的に起因せず、この厚さの差はゼロであり得る。一実施例において、フィルムは、第1ゾーンにわたって厚さのばらつきΔdを呈することがあり(例えば、通常の処理のばらつきから予測され得る)、第2厚さは、第1厚さとΔd以下で異なる場合があり、第1及び第2厚さはそれぞれ、第1及び第2ゾーンにわたるフィルム厚さの空間的平均をとられる。いくつかの場合において、フィルムはその1つ以上の構成層において1つ以上の吸収剤を含み、パターン化手順中の加熱を促進し得る。
【0015】
第1反射特性の実質的な反射は、第1スペクトル帯域に限定されている場合があり、第2反射特性の実質的な反射は、第2スペクトル帯域に限定されている場合がある。吸収加熱技術が使用されてフィルムをパターン化する場合、第1ゾーンと第2ゾーンとの間にフィルム厚さの差が実質的に存在せず、第1スペクトル帯域及び第2スペクトル帯域はまた、実質的に同じであり得る。代わりにエンボス加工技術が利用され、それによって第1ゾーンと第2ゾーンとの間に実質的なフィルム厚さの差が存在する場合、第1スペクトル帯域及び第2スペクトル帯域は実質的に異なる。
【0016】
いくつかの場合において、第1反射特性は、1つの偏光状態の第1波長の垂直入射光を、少なくとも70%、又は80%、又は90%反射するようなものであり得る。第1反射特性はまた、垂直な偏光状態の第1波長の垂直入射光を例えば、30%、又は20%、又は10%以下反射するようなものであり得る。第2反射特性は、任意の偏光状態の第1波長の垂直入射光を少なくとも50%、又は70%、又は80%反射するようなものであり得る。
【0017】
光の強め合う又は弱め合う干渉と関連し、1つの偏光の垂直入射光における高い反射率及び垂直な偏光の垂直入射光における低い反射率によって特徴付けられる、第1反射特性を提供するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムを提供する工程であって、内側層はフィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延び、第1及び第2ゾーンはそれぞれ第1反射特性を呈する、工程を含む、パターン化多層光学フィルムの作製方法が記載される。本方法はまた、第2ゾーンが、やはり光の強め合う又は弱め合う干渉と関連するが、任意の偏光の垂直入射光における高い反射率によって特徴付けられる、第2反射特性を呈するのに十分な量で、第2ゾーンにおいてフィルムを選択的に加熱する工程を含む。選択的加熱は、第2ゾーンにおけるフィルムの厚さのいかなる実質的な低減もなく、かつフィルムに対する圧力のいかなる選択的適用もなく実行され得る。あるいは、選択的加熱は、フィルムへの圧力の選択的適用と共に実行されてもよい。
【0018】
第1反射特性は1つの偏光の、第1波長の垂直入射光において第1反射率を有してもよく、垂直な偏光の、第1波長の垂直入射光において第2反射率を有してもよい。第2反射特性は1つの偏光の、第1波長の垂直入射光において第3反射率を有してもよく、垂直な偏光の、第1波長の垂直入射光において第4反射率を有してもよい。代表的な実施形態において、第3反射率は第1反射率よりも低く、第4反射率は第3反射率よりも高い。
【0019】
関連する方法、システム、及び物品も述べられる。
【0020】
本願のこれらの態様及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかし、決して、上記要約は、請求された主題に関する限定として解釈されるべきでなく、主題は、手続処理の間補正することができるような特許請求の範囲によってのみ規定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】しるしを形成するために、フィルムの異なる部分又はゾーンにおいて反射性ミラー特性を提供するように内部パターン化された反射性偏光子特性を有する多層光学フィルムのロールの斜視図。
【図2】多層光学フィルムの一部の概略側面図。
【図3】図1の多層光学フィルムの一部の概略断面図。
【図4】内部パターン化を有する別の多層光学フィルムの一部の概略断面図。
【図5A】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5B】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5C】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5D】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5E】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5F】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図5G】様々な内部パターン化一体型偏光子/ミラーフィルムの製造の異なる状態における、2層光学反復単位の各層の各屈折率(nx、ny、nz)を示す、理想化されたプロット。
【図6】内部パターン化を達成するために多層光学フィルムを選択的に加熱するための構成の概略側面図。
【図7A】パターン化多層フィルムの異なる第2ゾーンの概略平面図。表されるゾーンを形成することができるフィルムに対し、光線の可能な経路がその上に重ねられている。
【図7B】パターン化多層フィルムの異なる第2ゾーンの概略平面図。表されるゾーンを形成することができるフィルムに対し、光線の可能な経路がその上に重ねられている。
【図7C】パターン化多層フィルムの異なる第2ゾーンの概略平面図。表されるゾーンを形成することができるフィルムに対し、光線の可能な経路がその上に重ねられている。
【図8A】3つの異なる多層光学フィルムに対して3つの曲線が提供されている、光線のフィルム内への伝搬の深さの関数として光線の相対強度を図示する理想化されたプロット。
【図8B】3つの曲線が図8Aの3つの曲線と対応する、フィルム内の深さ及び軸位置の関数として極部吸収係数を図示する理想化されたプロット。
【図9】製作された異なるキャスト多層ウェブの%透過率対波長のグラフ。
【図10】図9のキャストウェブの1つを使用して作製した多層光学フィルムにおける%透過率対波長のグラフ。
【図11】図9のキャストウェブの1つを使用して作製した内部パターン化偏光子/ミラー多層光光学フィルムを含む複合多層光学フィルムの処理及び非処理ゾーンの%透過率対波長のグラフ。%透過率は第1又は遮蔽偏光状態の光に関して測定される。
【図12】図11のものと同じ複合多層光学フィルムの同じ処理及び非処理ゾーンの%透過率対波長のグラフ。%透過率は、第2又は透過偏光状態の光に関して測定される。
【0022】
図中、同様の参照数字は同様の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
少なくともいくつかの実施形態において、開示される一体型偏光子/ミラー多層光学フィルムは、パターン化を達成するためにフィルムの選択的薄化に依存しないパターン化技術を使用して作製され得る。例えば、1つ以上のミラーゾーンが、少なくともいくらかの内部層の屈折率が選択されるゾーンにおいて低減されるか排除されるが、隣接するゾーンではされず、一方で選択された(処理)ゾーンにおいて層構造の物理的一体性を実質的に維持し、フィルムの反射特性を選択されたゾーンにおいて隣接するゾーンに対して変更するような方法で、いずれの圧力をも選択的に適用することなく、フィルムを好適な方向の放射線に曝露することにより、多層光学フィルムが少なくとも1つのゾーンにおいて選択的に加熱される、上記の吸収加熱技術を使用して、初期の空間的に均一な反射性偏光フィルム内に形成されてもよい。フィルムの様々な処理及び非処理ゾーンは、実質的に同じ全体フィルム厚さを有してもよく又はいずれにせよ異なるゾーン間の反射特性における差は、ゾーン間のフィルム厚さの差のいずれにも実質的に起因しないことがある。2008年12月22日に出願された米国特許出願第61/139,736号「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」(代理人整理番号第64847US002号)及びこれと同日付けで出願された国際出願番号第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第64847WO003号)「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」(これらはそれぞれ、本明細書において参照として組み込まれる)を参照する。しかしながら、読者は、記載される一体型偏光子/ミラー多層光学フィルムは、吸収加熱製作技術で作製されるものに限定することを意図されず、他の好適な技術、例えば好適に実施されるエンボス加工技術によって作製される実施形態を包含することに留意すべきである。
【0024】
図1は、内部層(図1に図示されない)の少なくともいくらかの空間的な選択的な複屈折性の減少を使用して内部パターン化された又は空間的に調整された多層光学フィルム110を表す。内部パターン化は、図示されるしるし「3M」を形成するように成形された別個のゾーン112、114、116を画定する。フィルム110は、本明細書において記載される方法は高容積のロールツーロールプロセスと有利に適合するため、ロールに巻かれた長い可撓性材料として図示される。しかしながら、この方法は可撓性ロール物品に限定されず、小さい断片又はサンプル並びに非可撓性フィルム及び物品に実施することができる。
【0025】
「3M」のしるしは、異なるゾーン112、114、116が異なる反射特性を有するために、可視である。示される実施形態において、ゾーン112は反射性偏光子に典型的な第1反射特性を有し、ゾーン114、116は第1反射特性とは異なる第2反射特性を有し、第2反射特性はミラーの典型である。この点において、本出願の目的のため、反射性偏光子は、波長がパケットの反射帯域内にある場合に1つの面内軸(「遮蔽軸」と称される)に沿って偏光された垂直入射光を強力に反射し、垂直な面内軸(「透過軸」と称される)に沿って偏光されるこのような光を強力に透過する光学体とみなされ得る。「強力に反射する」及び「強力に透過する」は、意図される用途又は使用分野により異なる意味を有する場合があり、多くの場合反射性偏光子は遮蔽軸において少なくとも70、80又は90%の反射率及び透過軸において少なくとも70、80又は90%の透過率(30、20又は10%未満の反射率)を有する。同様に、本出願の目的のため、ミラー又はミラー様フィルムは、波長がパケットの反射帯域内にある場合に、任意の偏光の垂直入射光を強力に反射する光学体とみなされ得る。再び、「強力に反射する」は意図される用途又は使用分野によって異なる意味を有する場合があるが、多くの場合において、ミラーは、関心の波長の任意の偏光の垂直入射光に関して少なくとも50、60、70、80又は90%の反射率を有する。ミラーは、垂直入射での、全ての偏光に対して同じ反射率を有する必要はないが(すなわちこれは、1つの偏光状態が垂直な偏光状態よりも若干多く又は少なく反射され得るという意味で非対称であり得る)、垂直な偏光状態の反射率における差が、ミラーにおいて、偏光子よりも一般的に小さい。
【0026】
典型的に、必要ではないが、フィルム110は少なくとも部分的に光透過性であり、この場合ゾーン112、114、116はまた、これらそれぞれの反射特性に対応する異なる透過特性を有する。一般的に、当然ながら、透過率(T)+反射率(R)+吸収率(A)=100%、すなわち、T+R+A=100%である。いくつかの実施形態において、フィルムは、波長スペクトルの少なくとも一部にわたり低い吸収率を有する材料から全体的に構成される。このことは、熱供給性を促進するために吸収染料又は顔料を組み込むフィルムに対してさえも妥当し得るがこれは、ある吸収性材料がこれらの吸収率において、波長特定的であるためである。例えば、近赤外波長領域において選択的に吸収するが、可視スペクトルにおいてほとんど吸収しない赤外染料が利用可能である。スペクトルのもう一方の端部において、多層光学フィルムの文献において低損失であるとみなされる多くの高分子材料は可視スペクトルにわたって低損失を有するがまた、一定の紫外線波長において著しい吸収率を有する。したがって多くの場合、多層光学フィルム110は可視スペクトルなどの波長スペクトルの少なくとも限定された部分にわたり、少ないか又は極僅かな吸収率を有し得るが、この場合この限定された領域にわたる反射率及び透過率は、T+R=100%−AでありAは小さいために、相補的な関係性を有する。
【0027】
T+R≒100%
以下で更に説明されるように、第1反射特性及び第2反射特性はそれぞれ、フィルムの表面又は他の表面機構に適用されるコーティングの結果ではなく、フィルム110の内部の構造的特徴の結果である。内側機構は複製又は偽造するのが困難であるため、開示されるフィルムのこの態様は、セキュリティ上の用途(例えば、フィルムが信頼性の指標として製品、パッケージ又は文書への適用を意図される場合)においてこれらを有益にする。
【0028】
第1反射特性及び第2反射特性は、観察者又は機械によるパターンの検出を可能にするために、少なくともいくつかの観察条件下において知覚可能な様式において異なる。いくつかの場合において、パターンがほとんどの観察及び照明条件下において、人間の観察者にとって顕著であるように、可視波長における第1反射特性と第2反射特性との間の差異を最大化することが望ましい場合がある。他の場合において、第1反射特性と第2反射特性との間の微妙な差のみを提供するか又は一定の観察条件下においてのみ顕著な差異を提供することが望ましい場合がある。第1反射特性と第2反射特性との間における差異は、いくつかの場合において、フィルムの異なる隣接するゾーンにおける多層光学フィルムの内側層の屈折率特性における差異に主に起因し得るが、隣接するゾーンの間の厚さの差異に主に起因することはない。
【0029】
人間の観察者又は他の観察システムは、分析偏光子又は単に分析器と称される分離偏光子を利用して、第1反射特性及び第2反射特性を識別することを助けてもよい、すなわち、フィルム110の偏光子部分をミラー部分から識別することを助けてもよい。分析器は、その透過軸がフィルムの偏光子部分(ゾーン112)の透過軸と位置合わせされるか又は平行である第1配置から、その透過軸がフィルムの偏光子部分の遮蔽軸と位置合わせされるか又は平行である第2配置へと回転され得る。ゾーン112、114、116が色付きに見えるように、フィルム110の第1反射特性及び第2反射特性が電磁スペクトルの狭帯域に限定される場合、可視領域において部分的に遮蔽される偏光成分のみを観察することにより、第2配置における分析器を通じたフィルム110の観察は、偏光子(ゾーン112)のみかけの彩度を増加させることを助け得る。これらの観察条件はまた、フィルム110(ゾーン112)の偏光子部分とフィルム110(ゾーン114、116)のミラー部分との間のコントラストを増加させ得る。分析器を90°回転させる、すなわち、第1位置に戻すことが、代表的な実施形態において、観察される色を生じないことのある、ゾーン112の偏光子を透過する(通過する)偏光成分の観察を可能にする。偏光子を取り除き、フィルム110により透過又は反射する全ての偏光を観察することによって、分析器を使用する際に観察される2つの極端の間に存在する彩度及び色コントラストが結果的に観察される。
【0030】
一般的に、多層光学フィルムの設計によって、ゾーン間における屈折率の差が、第1反射特性と第2反射特性との間の様々な差を生じ得る。いくつかの場合において、第1反射特性は、所与の中央波長、帯域端及び最大反射率を有する第1反射帯域を含んでもよく、第2反射特性は、中央波長及び/又は帯域端が第1反射帯域と同様であるが、第1反射帯域とは実質的に異なる最大反射率(より大きいか又はより小さい)を有する第2反射帯域を有することによって第1とは異なってもよく又は第2反射帯域は第2反射特性において実質的に不在であってもよい。これらの第1及び第2反射帯域は、フィルムの設計により、1つのみの偏光状態の光と関連してもよく又は任意の偏光状態の光と関連してもよい。
【0031】
いくつかの場合において、第1反射特性及び第2反射特性は、これらの観察角への依存性において異なってもよい。例えば、第1反射特性は、垂直入射において所与の中央波長、帯域端及び最大反射率を有する第1反射帯域を含んでもよく、第2反射特性は、垂直入射において第1反射帯域のこれらの態様と非常に似た第2反射帯域を含んでもよい。しかしながら入射角が増加すると、第1反射帯域及び第2反射帯域の両方がより短い波長へとシフトし得るにもかかわらず、これらの各最大反射率は互いに大きくずれる場合がある。例えば、第1反射帯域の最大反射率は第1反射帯域の最大反射率は一定のままであるか又は入射角の増加に伴って増加し得るが、一方で第2反射帯域又は少なくともそのp偏光成分の最大反射率は入射角の増加に伴って減少し得る。
【0032】
第1反射特性と第2反射特性との間の上記の差異が可視スペクトルの一部をカバーする反射帯域と関連する場合、この差異はフィルムの第1ゾーンと第2ゾーンとの間における色の差異として知覚され得る。
【0033】
ここで図2を参照すると、概略的側面図における多層フィルム210の一部がその内側層を含むフィルムの構造を示すのが確認される。フィルムは局部的なx−y−zデカルト座標との関連において図示され、フィルムはx及びy軸と平行に延び、z軸はフィルム及びその構成層と垂直でありフィルムの厚さ軸と平行である。フィルム210は完全に平坦である必要はなく、平面からずれるように湾曲するかないしは別の形状であってもよく、これらの場合であってもフィルムの任意の小部分又は領域は、図示される局部的なデカルト座標系と関連し得る。フィルム210は一般的に、図1のフィルム110の、そのゾーン112、114、116のいずれかを表すものとみなすことができるがこれは、フィルム110の個別の層が好ましくは各このようなゾーンから隣のゾーンへと連続的に延びるためである。
【0034】
多層光学フィルムは異なる屈折率を有する個別の層を含み、それによって隣接する層の間の境界面においていくらかの光が反射する。場合により「ミクロ層」と称されるこれらの層は、多数の境界面で反射された光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けて多層光学フィルムに所望の反射又は透過特性を提供するために十分に薄い。紫外線波長、可視光波長、又は近赤外線波長の光を反射するように設計された多層光学フィルムの場合、各ミクロ層は、一般に、約1μm未満の光学厚さ(物理的厚さ×屈折率)を有する。しかしながら、多層光学フィルムの外側表面のスキン層、又はミクロ層の凝集性の一群(「積み重ね体」又は「パケット」として既知)を分離する、多層光学フィルム内に配置される保護境界層(PBL)などの、より厚い層もまた含まれ得る。図2において、ミクロ層は「A」又は「B」として標識され、「A」層は1つの材料から構成され、「B」層は異なる材料から構成され、これらの層は図示される光学反復単位又は単位セルORU 1、ORU 2〜ORU 6を形成するように交互の配置で積み重ねられる。典型的に、完全に高分子材料から構成される多層光学フィルムは、高反射率が所望される場合、6光学反復単位よりも遙かに多くを含む。この代表的な実施例においてその上面がフィルム210の外側表面210aと一致する最上部の「A」層を除き、図2に図示される「A」及び「B」の全てがフィルム210の内側層であることに留意する。図の底部における実質的により厚い層212は、図に示されるミクロ層の積み重ね体を、ミクロ層の別の積み重ね体又はパケット(図示されない)から分離する外側スキン層又はPBLを表し得る。所望により、例えば、2つ以上の厚い接着剤層で又は圧力、熱又は他の方法の使用により2つ以上の別個の多層光学フィルムが一緒に積層され、積層体又は複合フィルムを形成し得る。
【0035】
いくつかの場合において、ミクロ層は1/4波積み重ね体に対応する厚さ及び屈折率値を有し得る。すなわち、それぞれ同じ光学的厚さの2つの隣接するミクロ層を有する光学反復単位に配置されており(f比=50%であり、f比は構成層「A」の光学的厚さ対完全な光学反復単位の光学的厚さの比である)、このような光学反復単位は、その波長λが光学反復単位の全体的な光学厚さの2倍である強め合う干渉光により反射するために有効であり、本体の「光学的厚さ」とは、その物理的厚さにその屈折率を掛けたものである。他の場合において、光学反復単位のミクロ層の光学的厚さは互いに異なり、f比は50%超又は50%未満であり得る。図2の実施形態において、「A」層は、一般的に、「B」層よりも遥かに薄いものとして表される。それぞれ表される光学反復単位(ORU 1、ORU 2など)は構成層「A」及び「B」の光学的厚さの合計と等しい光学的厚さ(OT、OTなど)を有し、各光学反復単位は、その波長λがその全体的な光学的厚さの2倍である光を反射する。多層光学フィルムで一般的に使用されるミクロ層積み重ね体又はパケットにより及び特に本明細書において記載される内部パターン化多層フィルムにおいて提供される反射性は、ミクロ層間のほぼ平滑で明確な境界面及び典型的な構成体において使用される低いヘーズ値の材料の結果として拡散性ではなく典型的には実質的に鏡面反射性の性質である。しかしながら、いくつかの場合において完成した物品は、例えば、スキン層及び/若しくはPBL層内の拡散材料を使用して、並びに/又は1つ以上の表面拡散性構造若しくは非平坦な表面を使用して、任意の所望の度合いの散乱を組み込むように調整され得る。
【0036】
いくつかの場合において、層積み重ね体における光学反復単位の光学的厚さは、全て互いに同じであり、各光学反復単位の光学的厚さの2倍と等しい波長の中央に合わせた狭い反射帯域の高い反射性を提供し得る。他の実施形態では、光学反復単位の光学的厚さは、z軸又はフィルムの厚さ方向に沿った厚さ勾配によって異なってもよく、これにより積み重ね体の一方の側(例えば、頂部)から積み重ね体の他方の側(例えば、底部)に1つ前進するにつれて、光学反復単位の光学的厚さは増加するか、減少するか又は他の何らかの機能的関係に従う。このような厚さ勾配はより広い反射帯域を提供し、実質的にスペクトルの平坦な透過性及び関心のより広い波長帯域にわたり、かつまた関心の全ての角度にわたる光の反射を提供するために使用され得る。米国特許第6,157,490号(Wheatleyら)「Optical Film With Sharpened Bandedge」に記載されるように、高い反射率と高い透過率との間の波長遷移における帯域端を急峻にするように調整された厚さ勾配もまた使用され得る。高分子多層光学フィルムに関し、反射帯域は、急峻な帯域端、加えて反射特性が適用される波長範囲にわたって本質的に一定である「フラットトップ」反射帯域を有するように設計され得る。50%ではないf比を有する2つのミクロ層光学反復単位を有する多層光学フィルム、又は光学反復単位が3つ以上のミクロ層を含むフィルムなどの他の層配列も意図される。これらの代替的な光学反復単位設計が構成されて、一定の高次の反射を低減するか又は誘起することができ、これは所望の反射帯域が近赤外波長に存在するかこの付近まで延びる場合に有用であり得る。例えば、米国特許第5,103,337号(Schrenkら)「Infrared Reflective Optical Interference Film」、同第5,360,659号(Arendsら)「Two Component Infrared Reflecting Film」、同第6,207,260号(Wheatleyら)「Multicomponent Optical Body」及び同第7,019,905号(Weber)「Multi−layer Reflector With Suppression of High Order Reflections」を参照。
【0037】
厚さ勾配及び光学反復単位設計はしたがって、限定されたスペクトル帯域において実質的な反射率(偏光子の場合は遮蔽偏光状態、ミラーの場合は2つの垂直な偏光状態)を有する開示される実施形態のミラー及び偏光子を提供するように、所望によって調整され得る。例えば、実質的な反射率は、実質的に1つのスペクトル帯域のみにわたって(帯域は可視又はスペクトルの他の任意の所望の位置に配置される)、少なくとも50%又は少なくとも60、70、80又は90%以上であり得る。帯域は、例えば、200未満又は150又は100又は50nm以下の帯域幅を有してもよく、これは半値全幅(FWHM)反射率の全幅として測定され得る。上記のように、帯域は、光学反復単位が好適に設計されていれば、ゼロ次反射又は望ましい高次の反射と関連し得る。
【0038】
上記のように、多層光学フィルムの隣接するミクロ層は、いくらかの光が隣接する層間の境界面において反射するように、異なる屈折率を有する。主軸x、y及びz軸に沿って偏光される光に関する、ミクロ層(例えば、図2の「A」層)の1つの屈折率をそれぞれn1x、n1y及びn1zと称する。同じ軸に沿った隣接するミクロ層(例えば、図2の「B」層)の屈折率をそれぞれ、n2x、n2y、n2zと称する。x、y及びz軸は例えば、材料の誘電テンソルの主方向に対応し得る。典型的に及び説明の目的のために、異なる材料の主方向は一致するが、これは一般的に妥当する必要はない。これらの層間の屈折率の差をx方向に沿ってΔnx(=n1x−n2x)、y方向に沿ってΔny(=n1y−n2y)及びz方向に沿ってΔnz(=n1z−n2z)と称する。フィルム(又は所与のフィルムの積み重ね体の)のミクロ層の数及びこれらの厚さ分布と組み合わせたこれらの屈折率差の性質は、フィルムの(又は所与のフィルムの積み重ね体の)所与のゾーンにおける反射特性及び透過特性を制御する。例えば、隣接するミクロ層が1つの面内方向に沿って大きな屈折率不整合(Δnx large)を有し、垂直な面内方向に沿って小さな屈折率不整合(Δny≒0)を有する場合、フィルム又はパケットは、垂直入射光に関して反射性偏光子として機能し得る。
【0039】
本出願の目的のため、材料が関心の波長領域(例えば、スペクトルのUV、可視及び/又は赤外部分の選択される波長又は帯域)にわたって異方性の誘電テンソルを有する場合、材料は「複屈折性」とみなされる。換言すると、材料は、材料の主軸屈折率(例えば、n1x、n1y、n1z)が全て同じではない場合、「複屈折性」とみなされる。
【0040】
別の実施例では、隣接するミクロ層は両方の面内軸に沿って大きな屈折率不整合(Δnx large及びΔny large)を有し得るが、この場合、フィルム又はパケットは軸上ミラーとして機能し得る。
【0041】
先行の実施形態のバリエーションにおいて、隣接するミクロ層は、z軸に沿って屈折率整合又は不整合(Δnz≒0又はΔnz large)を呈してもよく、不整合は、面内屈折率不整合と同じ又は反対の極性又は符合であり得る。このようなΔnzの調整は、斜めの入射光線のp偏光成分の反射率が入射角の増加に伴って増加するか、減少するか又は同じままであるかということにおいて、重要な役割を担う。
【0042】
異なる軸に沿った可能な屈折率差の多くの置換を考慮し、層の総数及びこれらの厚さ分布並びに多層光学フィルム内に含まれるミクロ層パケットの数及び種類、可能な多層光学フィルム210及びそのパケットの種類は広範である。本明細書において引用される特許文献(特許又は非特許及び米国特許庁によって又はいずれかの別の国若しくは特許権利者によって公開される)、加えて以下の文献のいずれかに開示される多層光学フィルムを参照し、これらは全て本明細書において参照として組み込まれる:米国特許第5,486,949号(Schrenkら)「Birefringent Interference Polarizer」、同第5,882,774号(Jonzaら)「Optical Film」、同第6,045,894号(Jonzaら)「Clear to Colored Security Film」、同第6,179,949号(Merrillら)「Optical Film and Process for Manufacture Thereof」、同第6,531,230号(Weberら)「Color Shifting Film」、同第6,939,499号(Merrillら)「Processes and Apparatus for Making Transversely Drawn Films with Substantially Uniaxial Character」、同第7,256,936号(Hebrinkら)「Optical Polarizing Films with Designed Color Shifts」、同第7,316,558号(Merrillら)「Devices for Stretching Polymer Films」、PCT国際公開特許WO 2008/144136(A1)号(Nevittら)「Lamp−Hiding Assembly for a Direct Lit Backlight」、同第WO 2008/144656(A2)号(Weberら)「Backlight and Display System Using Same」。
【0043】
多層光学フィルムの少なくとも1つのパケットにおけるミクロ層の少なくともいくらかが、フィルムの少なくとも1つのゾーン(例えば、図1のゾーン112)において複屈折性であることに留意する。したがって、光学反復単位内の第1層が複屈折性であってもよく(すなわち、n1x≠n1y又はn1x≠n1z又はn1y≠n1z)若しくは光学反復単位内の第2層が複屈折性であってもよく(すなわち、n2x≠n2y又はn2x≠n2z又はn2y≠n2z)又は第1層及び第2層の両方が複屈折性であってもよい。更に、1つ以上のこのような層の複屈折性は、少なくとも1つの層において、隣接するゾーンよりも低減する。いくつかの場合において、これらの層の複屈折率はゼロまで低減してもよく、それによってこれらはゾーンの1つにおいて光学的に等方性であるが(すなわち、n1x=n1y=n1z又はn2x=n2y=n2z)、隣接するゾーンでは複屈折性である。材料の選択及びプロセス条件により、両方の層が最初に複屈折性である場合、これらは、層の1つのみの複屈折性が実質的に低減するか、両方の層の複屈折性が低減し得るような方法で処理され得る。
【0044】
代表的な多層光学フィルムは、高分子材料から構成され、共押出、キャスト、及び配向プロセスを使用して作製され得る。米国特許第5,882,774号第(Jonzaら)「Optical Film」、同第6,179,949号(Merrillら)「Optical Film and Process for Manufacture Thereof」及び同第6,783,349号(Neavinら)「Apparatus for Making Multilayer Optical Films」を参照する。多層光学フィルムは、前述の参照文献のいずれかに記載されるポリマーの共押出によって形成され得る。様々な層のポリマーは、好ましくは、著しい流れの障害なく共押出され得るように同様のレオロジー的特性(例えば、溶融粘度)を有するように選択される。押出条件は、各ポリマーを供給流及び溶解流として、連続的かつ安定した様式で、適切に供給、溶解、混合及びポンプ注入するように選択される。各溶解流を形成及び維持するために使用される温度は、温度範囲の最低における、凍結、結晶化又は不当に大きな圧力の低下を避け、範囲の最高における材料の分解を避けるような範囲内で選択され得る。
【0045】
概要として、製作方法は、(a)最終的なフィルムに使用される第1ポリマー及び第2ポリマーと対応する樹脂の少なくとも第1流れ及び第2流れを提供する工程と、(b)(i)第1流路及び第2流路を含む勾配プレートであって、第1流路が流路に沿って第1位置から第2位置まで変化する断面積を有する勾配プレート、(ii)第1流路と流体連通する第1の複数の導管及び第2流路と流体連通する第2の複数の導管を有するフィーダーチューブプレートであって、各導管はその各独自のスロットダイに供給し、各導管は第1端部及び第2端部を有し、導管の第1端部は流路と流体連通し、導管の第2端部はスロットダイと流体連通するフィーダーチューブプレート、並びに(iii)任意により、上記導管の近位に位置する軸方向棒状ヒーターを含むものなどの、好適なフィードブロックを使用して、第1流れ及び第2流れを複数の層内に分割する工程と、(c)複合的な流れを押出ダイに通過させて、各層が隣接する層の主表面とほぼ並行である多層ウェブを形成する工程と、(d)多層ウェブを場合によりキャストホイール又はキャストドラムと称される冷却ロール上にキャストしてキャスト多層フィルムを形成する工程とを含み得る。このキャストフィルムは最終的なフィルムと同じ数の層を有してもよいが、キャストフィルムの層は典型的にはこれらの最終的なフィルムのものよりも遥かに厚い。更に、キャストフィルムの層は典型的には等方性である。
【0046】
キャスト多層ウェブを製作する多くの別の方法が使用され得る。やはりポリマーの共押出を利用する1つのこのような別の方法が米国特許第5,389,324号(Lewisら)に記載される。
【0047】
冷却後、多層ウェブが延伸又は伸張されてほぼ最終的な多層光学フィルムを生成し、この詳細は上記で引用された参照文献に見出すことができる。延伸又は伸張は2つの目標:これが層をこれらの所望の最終的な厚さまで薄化すること及びこれが層の少なくともいくらかが複屈折性となるように層を配向させること、を達成する。配向又は伸張は、クロスウェブ方向に沿って(例えば、幅出機により)、ダウンウェブ方向に沿って(例えば、長さ配向装置)又はこれらの任意の組み合わせにより、同時的又は順次的に達成され得る。一方向にのみに沿って伸張される場合、伸張は「非拘束」(フィルムは伸張方向と垂直な面内方向で寸法的に弛緩させられる)又は「拘束」(フィルムは拘束され、したがって伸張方向と垂直な面内方向において寸法的に弛緩させられない)であり得る。両方の面内方向に沿って伸張される場合、伸張は対称(すなわち、垂直な面内方向に沿って等しい)又は非対称であり得るが、反射性偏光フィルムを作製するために、対称な伸張は通常利用されない。あるいは、フィルムはバッチプロセスにおいて伸張されてもよい。いずれにせよ、順次的又は同時的な延伸変形、圧力又は歪み平衡、熱硬化及び他の処理作業がまたフィルムに適用され得る。
【0048】
多層光学フィルム及びフィルム体は、これらの光学的、機械的又は化学的特性のために選択された追加的な層及びコーティングを含むことができる。例えば、UV吸収層はフィルムの主要外側表面の一方又は両方に追加されて、フィルムをUV光により生じる長期にわたる劣化から保護し得る。追加の層及びコーティングは、引っ掻き抵抗性層、引き裂き抵抗性層、及び硬化剤も含むことができる。例えば、米国特許第6,368,699号(Gilbertら)を参照されたい。
【0049】
いくつかの場合において、多層光学フィルムを構成する構成高分子材料の1つ、いくつか又は全ての自然の又は固有の吸収性が、吸収性加熱手順のために利用され得る。例えば、可視領域にわたって低損失である多くのポリマーは、一定の紫外及び/又は赤外波長において実質的により高い吸収性を有する。このような波長の光へのフィルムの部分の曝露は、このようなフィルムの部分を選択的に加熱するために使用され得る。
【0050】
他の場合において、吸収性染料、顔料又は他の剤が、多層光学フィルムの個別の層のいくつか又は全てに組み込まれて、上記の吸収加熱を促進してもよい。いくつかの場合において、このような吸収剤はスペクトル選択的であり、それによってこれらはある波長領域において吸収するが別の波長領域において吸収しない。例えば、開示されるフィルムのいくつかは、偽造防止セキュリティラベルで又は液晶ディスプレイ(LCD)装置又は他のディスプレイ装置の構成要素として、可視領域における使用を意図され得るが、この場合、赤外又は紫外波長において吸収するが可視波長において実質的に吸収しない吸収剤が使用され得る。更に、吸収剤はフィルムの1つ以上の選択される層に組み込まれ得る。例えば、フィルムは保護境界層(PBL)、積層接着剤層、1つ以上のスキン層などの光学的に厚い層によって分離される2つの別個のミクロ層パケットを含んでもよく、吸収剤はパケットの一方に組み込まれるが他方には組み込まれないことがあり又は両方のパケットに組み込まれるが一方において他方よりも濃度が高いことがある。
【0051】
様々な吸収剤が使用され得る。可視スペクトルで機能する光学フィルム、染料、顔料又は紫外及び赤外(近赤外を含む)領域において吸収する他の添加剤が使用され得る。いくつかの場合において、フィルムの高分子材料が実質的により低い吸収性を有するスペクトル領域において吸収する剤を選択することが有利である場合がある。このような吸収剤を多層光学フィルムの選択される層に組み込むことにより、方向付けられた放射線が、フィルムの全体的厚さに対してよりも選択された層に優先的に熱を供給することができる。代表的な吸収剤は、これらが関心の選択される層の組へと埋め込まれ得るように溶融押出可能であり得る。この目的のために、吸収剤は、押出のために要求されるプロセス温度及び滞留時間において、好ましくは適度に安定である。いくつかの潜在的なIR染料としては、Epolin,Inc.から商標名Epolight(商標)として入手可能なニッケル、パラジウム及びプラチナベースの染料のいずれかが挙げられる。他の好適な候補としては、ColorChem International Corp.(Atlanta,Georgia)から入手可能なAmaplast(商標)商標の染料が挙げられる。好適な吸収剤の更なる情報に関しては、米国特許第6,207,260号(Wheatleyら)「Multicomponent Optical Body」を参照する。
【0052】
いくつかの場合においては、吸収剤は非線形吸収剤であってもよく、すなわち、これは光エネルギー吸収係数が強度又はフルーエンスと独立である組成物であるか又はこれを含み得る(強度とは単位面積単位時間当たりのエネルギーを指し、フルーエンスは単位面積当たりのエネルギー密度又はエネルギーを指す)。非線形光吸収剤は、例えば、二光子吸収型又は逆可飽和吸収型であり得る。
【0053】
二光子吸収プロセスは、光子エネルギーが材料の線形励起のために必要とされるエネルギーのおよそ半分に相当する、非線形光吸収プロセスである。吸収性材料の励起はしたがって、2つの低エネルギー光子の同時的な吸収を必要とする。有用な二光子吸収剤の例としては、大きな多光子断面積を呈するもの、例えば、PCT国際公開特許WO 98/21521号(Marderら)及び同WO 99/53242(Cumptsonら)に記載される、Rhodamine B(すなわち、N−[9−(2−カルボキシフェニル)−6−(ジエチルアミノ)−3H−キサンテン−3−イリデン]−N−エチルエタンアミニウムクロライド及びRhodamine Bのヘキサフルオロアンチモネート塩)及び4種類の光増感剤が挙げられる。
【0054】
逆可飽和吸収プロセスはまた、場合により、励起状態吸収とも称され、基底状態から励起状態への誘起のための断面積よりも遥かに大きい、吸収プロセスに含まれる励起状態のための吸収断面積によって特徴付けられる。合計光吸収率は基底状態吸収率及び励起状態吸収率の両方を含む。逆可飽和吸収材料の例としては、例えば、メタロフタロシアニン、ナフタロシアニン、シアニン、フラーレン、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、金属クラスター化合物、ポルフィリン、インダンスロン誘導体及びオリゴマー又はこれらの組み合わせが挙げられる。メタロフタロシアニンの例としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPC)及び第IIIA族(Al、Ga、In)及び第IVA族(Si、Ge、Sn、Pb)の金属又は半金属を含むフタロシアニンが挙げられる。ナフタロシアニンの例としては、例えば、ケイ素(SiNC)スズ(SnNC)及び鉛(PbNC)のフタロシアニン誘導体が挙げられる。シアニンの例としては、例えば、1,3,3,1’,3’,3’−ヘキサメチルインドカルボシアニンイオダイド(HITCI)が挙げられる。フラーレンの例としてはC60及びC70フラーレンが挙げられる。金属ナノ粒子の例としては、金、銀、アルミニウム及び亜鉛ナノ粒子が挙げられる。金属酸化物ナノ粒子の例としては、二酸化チタン、アンチモンスズ酸化物及び二酸化ジルコニウムナノ粒子が挙げられる。金属クラスターの実施例としては、鉄トリコバルト金属クラスター例えば、HFeCo(CO)12及びNEtFeCO(CO)12が挙げられる。ポルフィリンの例としては、テトラフェニルポルフィリン(H2TPP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)及びコバルトテトラフェニルポルフィリン(CoTPP)が挙げられる。インダンスロン誘導体の例としては、非置換インダンスロン、酸化インダンスロン、クロロインダンスロン及びインダンスロンオリゴマーが挙げられる。
【0055】
ここで図3を参照し、これはゾーン112及びゾーン116の境界における、領域118の付近の、図1の多層光学フィルム110の一部の概略断面図を図示し、これは、ゾーン116を形成するために、エンボス加工技術ではなく吸収加熱技術が使用されたことを想定している。フィルム110のこの展開図において、狭い移行ゾーン115は、ゾーン112を隣接するゾーン116から分離するものとして見ることができる。このような移行ゾーンはプロセスの詳細によって存在してもしなくてもよく、かつこれが存在しない場合、ゾーン116は、有意に介在する機構なしに、ゾーン112と直接隣接してもよい。フィルム110の構成の詳細がまた見られ、フィルムはその相対する側に光学的に厚いスキン層310、312を含み、複数のミクロ層314及び別の複数のミクロ層316がスキン層310、312の間に配置される。ミクロ層314、316は全て、外側スキン層によりフィルム110の内側にある。図面において、ミクロ層314と316との間の空間は開いたままであり、ミクロ層314、316が、1つのスキン層310で始まり、反対側のスキン層312で終わる単一のミクロ層パケットの部分であるような場合及びまたミクロ層314、316が1つ以上の光学的に厚い保護境界層(PBL)又は別の光学的に厚い内側層によって互いに分離する2つ以上の別個のミクロ層パケットの部分である場合を可能にする。いずれにせよ、ミクロ層314、316は好ましくはそれぞれ光学反復単位に配置された2つの交互の高分子材料を含み、各ミクロ層314、316は図示されるようにゾーン112から隣接するゾーン116まで横方向又は横断方向様式で連続的に延びる。ミクロ層314、316は、ゾーン112において、強め合う又は弱め合う干渉によって第1反射特性を提供し、ミクロ層314、316の少なくともいくらかは複屈折性である。ゾーン115、116は、ゾーン112と同じ特性を前に有し得るが、ゾーン112におけるミクロ層の複屈折性を維持する一方で、ゾーン116においてミクロ層314、316のいくらかの複屈折を低減又は排除するのに十分な量でここに選択的に熱を適用することによって処理されており、熱はまた、処理ゾーン116においてミクロ層314、316の構造的一体性を維持するのに十分低い。ゾーン116におけるミクロ層314、316の低減した複屈折性は、ゾーン112の第1反射特性とは異なるゾーン116の第2反射特性を主に司る。
【0056】
図に示されるように、フィルム110は、ゾーン112における特徴的な厚さd1、d2及びゾーン116における特徴的な厚さd1’、d2’を有する。厚さd1、d1’は各ゾーンにおける、フィルムの前部外側表面からフィルムの後部外側表面まで測定される物理的厚さである。厚さd2、d2’は、フィルムの前面の最も近くに配置されるミクロ層(ミクロ層パケットの一端)から、フィルムの後面の最も近くに配置されるミクロ層(同じ又は異なるミクロ層パケットの端部の)まで測定される物理的厚さである。したがって、ゾーン112におけるフィルム110の厚さとゾーン116におけるフィルムの厚さを比較しようとする場合、いずれの測定がより便利であるかによって、d1とd1’又はd2とd2’の比較を選択してもよい。ほとんどの場合において、d1とd1’との間の比較は、d2とd2’との間の比較と実質的に同じ結果(比例的に)を生じ得る。(当然フィルムが外側スキン層を含み、ミクロ層パケットがフィルムの両方の外側表面で終わる場合、d1及びd2は同じになる。)しかしながら、著しい不一致が存在する場合、例えば、スキン層がある場所と別の場所で有意な厚さの変化を経験するが、下部のミクロ層において対応する厚さの変化が存在しない場合、又はその逆の場合、スキン層は典型的に、ミクロ層パケットと比較してフィルムの反射特性に僅かな効果しか有さないという事実を考慮し、異なるゾーンにおける全体的なフィルム厚さをより代表するものとしてd2及びd2’パラメーターを使用することが望ましい場合がある。
【0057】
当然、光学的に厚い層によって互いに分離する2つ以上の別個のミクロ層パケットを含む多層光学フィルムに関し、任意の所定のミクロ層パケットの厚さもまた、z軸に沿ったパケットの最初のミクロ層から最後のミクロ層までの距離として測定し特徴付けることができる。この情報は、フィルム110の、異なるゾーン112、116の物理的特性を比較する、より徹底した分析においてより顕著となり得る。
【0058】
上記のように、図3は、ゾーン116が熱の選択的な適用により処理され、それによってミクロ層314、316の少なくともいくらかが、これらの複屈折性を隣接するゾーン112のこれらの複屈折性と比較して一部又は全部を失い、その結果ゾーン116は、ミクロ層からの光の強め合う又は弱め合う干渉から生じる、ゾーン112の反射特性とは異なる反射特性を呈することを想定している。選択的な加熱プロセスは、ゾーン116に対する選択的な圧力の適用を含まないことがあり、これはフィルムに対する厚さの変化を実質的に生じないことがある(パラメーターd1/d1’又はパラメーターd2/d2’のいずれを使用しても)。例えば、フィルム110は、ゾーン116において、ゾーン112又は非処理のフィルムで観察される厚さの通常の変動を超えない範囲でゾーン112の平均厚さからずれる、平均厚さを呈することがある。したがって、ゾーン116の熱処理の前に、フィルム110は、ゾーン112又はゾーン112及びゾーン116の一部を包含するフィルムの領域にわたり、厚さのばらつき(d1又はd2)Δdを呈することがあり、ゾーン116はゾーン112の空間的な平均厚さd1、d2(それぞれ)とΔdを超えない範囲で異なる空間的な平均厚さd1’、d2’を有し得る。パラメーターΔdは、例えば、厚さd1又はd2の空間的分布における、1つ、2つ又は3つの標準偏差を表し得る。
【0059】
いくつかの場合において、ゾーン116の熱処理は、ゾーン116におけるフィルム厚さに一定の変化を生じ得る。これらの厚さの変化は例えば、多層光学フィルムを構成する異なる材料の局部的な収縮及び/又は拡大から生じることがあり又は他のいくつかの熱により誘起される現象から生じることがある。しかしながら、このような厚さの変化は、生じる場合、処理ゾーン116の反射特性へのこれらの影響において、処理ゾーンにおける複屈折性の低減又は排除が担う主な役割と比較して、二次的な役割のみを担う。多くの場合において、フィルムに皺ができるのを避けるため、又は他の理由のために、内部パターン化を達成する選択的な熱処理の間、フィルムの縁部を張力下において保持することが望ましい場合がある。適用される張力の程度、及び熱処理の詳細はまた、処理ゾーンにおいてある程度の厚さの変化を生じ得る。
【0060】
当然、吸収加熱技術ではなくエンボス加工技術が使用される場合、ゾーン112に対してゾーン116の顕著な薄化が生じる場合があり、これに伴ってスペクトル特性がより短い波長にシフトする。
【0061】
いくつかの場合において、フィルムの反射特性を分析することにより、複屈折性の変化から厚さの変化の効果を見分けることが可能である。例えば、非処理ゾーン(例えば、ゾーン112)のミクロ層が左帯域端(LBE)、右帯域端(RBE)、中央波長λ及びピーク反射率Rによって特徴付けられる反射帯域を提供する場合、これらのミクロ層の所与の厚さの変化(ミクロ層の屈折率は変化しない)は、Rとおよそ同じピーク反射率Rを有するが、非処理ゾーンの反射帯域のこれらの特徴に対して波長が比例的にシフトしたLBE、RBE及び中央波長を有する処理ゾーンの反射帯域を生成し、このシフトが測定され得る。一方で、複屈折率の変化は典型的に、複屈折率の変化によって生じる光学的厚さの変化(通常は非常に小さい)の結果として、LBE、RBEの波長及び中央波長の非常に小さなシフトのみを生成する。(光学的厚さは物理的厚さ×屈折率であることを想起されたい。また、反射性偏光フィルムは遮蔽状態の光のみに反射帯域を呈し得るのではなくまた、透過状態の光においても比較的弱い反射帯域を有し得ることに留意されたい)複屈折性の変化はしかしながら、ミクロ層積み重ね体の設計によって、反射帯域のピーク反射率に大きな、又は少なくとも有意な影響を有する。したがって、いくつかの場合において、複屈折性の変化は、修正ゾーンの反射帯域においてRと実質的に異なるピーク反射率Rを提供してもよく、当然R及びRは、同じ照明条件及び観察条件下で比較される。R及びRが百分率で表現される場合、RはRと少なくとも10%又は少なくとも20%又は少なくとも30%異なってもよい。明確な例として、Rは70%であり得、Rは60%、50%、40%以下であり得る。あるいは、Rは10%であり得、Rは20%、30%、40%以上であり得る。R及びRはまた、これらの比率を取ることによって比較され得る。例えば、R/R又はその逆数は、少なくとも2、又は少なくとも3であり得る。
【0062】
複屈折性の変化による、隣接する層間の屈折率の差の変化から生じる境界面反射率(場合により光学能と称される)の変化の指標となる程度の、ピーク反射率の有意な変化はまた、典型的には反射帯域の帯域幅における少なくともいくらかの変化を伴い、帯域幅はLBEとRBEとの間の分離を指す。
【0063】
記載したように、いくつかの場合において処理ゾーン116におけるフィルム110の厚さ、すなわちd1’又はd2’は、選択的な圧力が熱処理中にゾーン116に実際に適用されなくても、非処理ゾーン112のフィルムの厚さとは若干異なる場合がある。この理由のために、図3はd1’をd1と僅かに異なるものとして、d2’をd2と僅かに異なるものとして記載する。移行ゾーン115はまた、一般的に図示され、「突出部」又は他の検出可能なアーチファクトが、選択可能な熱処理の結果としてフィルムの外側表面に存在し得る。しかしながらいくつかの場合において、処理は、隣接する処理ゾーンと非処理ゾーンとの間に検出可能なアーチファクトを生じない場合がある。例えば、いくつかの場合において、ゾーン間の境界を横断するように指を滑らせる観察者がゾーン間に突出部、隆起部又は他の物理的アーチファクトを検出しない場合がある。
【0064】
いくつかの場合において、処理ゾーンと非処理ゾーンとの間の厚さの差がフィルムの厚さを通じて比例的でない可能性がある。例えば、いくつかの場合において、外側スキン層が、処理ゾーンと非処理ゾーンとの間の、百分率の変化として表現される比較的小さな厚さの差を有する一方で、1つ以上の内部ミクロ層パケットが、同じゾーンの間でやはり百分率の変化として表現されるより大きな厚さの差を有し得る可能性がある。
【0065】
図4は、内部パターン化を組み込む別の多層光学フィルム410の一部の概略断面図を図示する。フィルム410は、スキン層412、414の間に狭持された階層又は層416内に存在するミクロ層のパケットを含む。全てのミクロ層がフィルム410の内部にある。(別の実施形態では、一方又は両方のスキン層が省略され、この場合パケット内の一方の又は両方のPBL又は最も外側のミクロ層が外部層と成り得る。)ミクロ層はフィルムの少なくともいくつかのゾーン又は領域において複屈折性であり、フィルムの少なくとも隣接するゾーン間で横方向又は横断方向の様式で延びる少なくともいくつかのミクロ層を含む。ミクロ層は、フィルムの少なくとも第1の非処理ゾーン422の光の強め合う又は弱め合う干渉に関する第1反射特性を提供する。フィルム410は、やはり光の強め合う又は弱め合う干渉と関連するが第1反射特性とは異なる第2反射特性を提供するため、隣接するゾーン420、424において、いくつかの場合において、これらのゾーンにいずれの圧力も選択的に適用することなく選択的に加熱された。これらの反射特性の差は、反射光又は透過光において、処理ゾーンと非処理ゾーンとの間の色の差として観察者に知覚され得る。それぞれの色及びその間の差はまた、典型的には入射角と共に変化又はシフトする。フィルム410はゾーン420、422、424で実質的に同じフィルム厚さを有してもよく又はフィルム厚さはこれらのゾーン間で若干変化してもよいが、少なくともいくつかの場合において、ゾーンの間のフィルム厚さのいずれかの差は、第1反射特性と第2反射特性との間の差の主な原因とはならない。ゾーン420、422、424は、階層又は層416内の平行線模様によって示されるように、フィルムの内部又は内側にあるパターンを形成する。平行線模様の領域のミクロ層の少なくともいくつかは、ゾーン422又は他の非処理ゾーンにおけるこれらの複屈折性と比較して低減した複屈折性(ゼロ複屈折性を含む)を有する。
【0066】
ここで、図5A〜Gの理想化されたグラフを参照する。これらのグラフは、多層光学フィルムのパターン化のプロセスの説明を助ける。これらはまた、非処理及び処理ゾーンそれぞれにおける第1反射特性及び第2反射特性の異なる可能な組み合わせのいくつか、並びにこれらがどのように達成されるかを説明することを助ける。記載の目的のために、光学フィルムの非処理及び処理ゾーンの両方の反射特性は、以下の3つの種類:ミラー様反射特性、ウィンドー様反射特性及び偏光子様反射特性の1つに分類され得る。ミラー様反射特性は全ての偏向状態の垂直入射光に関して高い反射率(例えば、いくつかの場合において、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%超)を呈し、ウィンドー様反射特性は全ての偏光状態の垂直入射光に関して低い反射率(例えば、いくつかの場合において20%、10%、5%、3%又は1%未満)を呈し、偏光子様反射特性は、一方の偏光状態の垂直入射光に関して高い反射率(例えば、いくつかの場合において、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%超)及び異なる偏光状態の垂直入射光に関して低い反射率(例えば、いくつかの場合において30%、20%、10%、5%、3%又は1%未満)を呈する。(反射性偏光子様特性は、あるいは一方の偏光状態の他方の偏光状態に対する反射率の差という観点から表現され得る)読者は、多層光学フィルム又は積み重ね体と関連する、本明細書において記載される反射率値は、特に指定されない限り、外側空気/ポリマー境界面におけるフレネル反射を含まないとみなされるべきことに留意する。
【0067】
これらの異なる特性の境界又は限度(例えば、何が「高い」反射率であり、何が「低い」反射率であるか)及びこれらの間の区別は、最終用途及び/又はシステム要件に依存し得る。例えば、全ての偏光状態に関する中程度の反射率を呈する多層光学フィルム又はそのミクロ層パケットは、いくつかの用途の目的においてミラーとしてみなされ、他の用途の目的においてウィンドーとみなされ得る。同様に、垂直入射光の異なる偏光状態において、中程度で異なる水準の反射性を提供する多層光学フィルム又はそのミクロ層パケットは、正確な反射率値及び所与の最終用途の異なる偏光状態における反射率の差に対する感度によって、いくつかの用途において偏光子とみなされ、他の用途においてミラーとみなされ、更に他の用途においてウィンドーとみなされ得る。特に指定されない限り、ミラー、ウィンドー、及び偏光子の分類は、垂直入射光に関して特定される。読者は斜角の特性は、垂直入射における光学フィルムの特性と、いくつかの場合においては同じ又は同様であり、他の場合においては大幅に異なり得ることを理解する。
【0068】
図5A〜Gは、上記の一体型偏光子/ミラー多層光学フィルムの典型である。反射特性の他の組み合わせを有する多層光学フィルム、例えば、一体型ミラー/ウィンドーフィルム、一体型偏光子/ウィンドーフィルム、一体型ミラー/ミラーフィルム、一体型偏光子/偏光子フィルムなどは、本明細書において参照として組み込まれる以下の出願の1つ以上においてより完全に記載される:国際出願番号第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第64847WO003)「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」、同第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65848WO002号)「Internally Patterned Multilayer Optical Films With Multiple Birefringent Layers」及び同第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65849WO002号)「Multilayer Optical Films Having Side−by−Side Polarizer/Polarizer Zones」。
【0069】
図5A〜Gの各グラフにおいて、相対的屈折率「n」が垂直軸上にプロットされる。水平軸において、2層光学反復単位を特徴付ける6つの屈折率それぞれに位置又は印が提供される:「1x」、「1y」及び「1z」はx、y及びz軸に沿った第1層の屈折率を表し、これらは上記においてn1x、n1y及びn1zと称された。同様に「2x」「2y」及び「2z」はx、y、及びz軸に沿った第2層の屈折率を表し、これらは上記においてn2x、n2y及びn2zと称された。図面における菱形の記号(◇)は第1処理段階における材料の屈折率を表す。この第1段階は例えば、共押出され、急冷されたか又はキャストホイール上にキャストされたが、まだ伸張されるかないしは別の方法で配向されていないポリマー層に対応し得る。図面における白い(塗り潰されていない)円形の記号(○)は、第1段階より後の第2段階の処理における材料の屈折率を表す。第2段階は、フィルム内のミクロ層の間の境界面から強め合う又は弱め合う干渉によって光を反射する多層光学フィルムへと、伸張されるかないしは別の方法で配向されたポリマー層に対応し得る。図面における小さな塗り潰された円形の記号又は点(●)は、第1及び第2段階より後の第3段階の処理における材料の屈折率値を表す。以下でより詳細に記載されるように、第3段階は、押し出され、配向された後に、選択的に熱処理されたポリマー層に対応し得るこのような熱処理は典型的に、処理ゾーンと称される1つ以上の特定の部分又はゾーンに限定される。
【0070】
所与の図面における様々な記号の垂直座標を比較することにより、読者は、光学フィルム、その製造方法並びにその処理及び非処理部分の光学特性に関する多くの情報を容易に確認することができる。例えば、読者は、一方又は両方の材料層が、選択的な熱処理の前又は後に複屈折性であるか又はあったか、複屈折性が一軸的であるか又は二軸的であるか及び複屈折性が大きいか又は小さいかを確認することができる。読者はまた、図5A〜Gから、各3つの処理段階(キャスト状態、伸張状態及び処理状態)における、2層間の屈折率の差Δnx、Δny、Δnzそれぞれの相対的な規模を確認することができる。
【0071】
上記のように、最終的な内部パターン化多層光学フィルムの前駆物品は、高分子材料のキャストウェブであり得る。キャストウェブは、最終的なフィルムと同じ数の層を有する場合があり、層は最終的なフィルムにおいて使用されるものと同じ高分子材料から構成されてもよいが、キャストウェブはより厚く、その層は通常全て等方性である。いくつかの場合において、しかしながら図面に表されないが、キャストプロセスそれ自体が1つ以上の材料にあるレベルの配向及び複屈折性を付与し得る。図5A〜Gにおける菱形の記号は、その後の伸張手順の後に、多層光学フィルムの光学反復単位内のミクロ層になるキャストウェブ中の2つのポリマー層の屈折率を表す。伸張後、層のうちの少なくともいくらかが配向されて複屈折性となり、配向された(しかしながら、依然としてパターン化されていない)多層光学フィルムが形成される。これは図5A〜Gにおいて、菱形の記号によって表されるこれらの各元の値から垂直にずれ得る白丸によって例示される。例えば、図5Aにおいて、伸張手順は、第2層の屈折率値をx軸に沿って上げるが、その屈折率をy及びz軸に沿って下げる。このような屈折率のシフトは、正に複屈折のポリマー層を好適に一軸的にx軸に沿って伸張し、一方でフィルムをy軸及びz軸に沿って寸法的に弛緩させることによって得られる場合がある。図5C〜5Gにおいて、伸張手順は、第1層の屈折率値をx及びy軸に沿って上げるが、その屈折率をz軸に沿って下げる。このような屈折率シフトは、x及びy軸に沿って正の複屈折性ポリマー層を好適に二軸方向に伸張することによって得ることができる。(これらの図において、伸張操作によって第2材料の屈折率が第1材料とは異なる方法でシフトし、これを達成するための技術が以下で更に記載される。)図5Bにおいて伸張手順は、第1層の複屈折率をx軸に沿って上げ、その屈折率をz軸に沿って下げ、同じ屈折率をy軸に沿って維持する。いくつかの場合においてこの屈折率シフトは、x軸に沿ってy軸と比較してより高度の伸張を使用して、正の複屈折ポリマー層をx軸及びy軸に沿って非対称に、二軸的に伸張することによって得られる場合がある。他の場合において、これは、x軸に沿って一軸的に伸張し、一方でy軸においてフィルムを拘束する(拘束した一軸伸張)ことによっておよそ得られる場合がある。n1x、n1y及びn1zの白丸の少なくとも2つが異なる値の屈折率nを有するため、各図5B〜Gにおいて、配向されているが非処理の状態(白丸)の第1層は複屈折性であることに留意する。図5Bにおいて、第2のポリマー層は伸張後、キャスト状態及び配向しているが伸張していない状態に関し、同じ屈折率値(n2x=n2y=n2z)によって示されるように、等方性に留まる。
【0072】
第1反射特性を提供するために光学反復単位に構成されたミクロ層を有する少なくとも部分的な複屈折性多層光学フィルムを形成した後、フィルムは上記の選択的な加熱に備えた状態となる。ミクロ層の少なくともいくらかにおいて複屈折性を低減又は排除し、一方で第1(非処理)ゾーンにおいてその複屈折性を不変に留めるため、加熱は多層光学フィルムの第1ゾーンに隣接する第2ゾーンにおいて選択的に実行され、ミクロ層パケット内の少なくとも1つの複屈折材料の一部又は全体において選択的に溶解及び脱配向するように調整される。選択的加熱はまた、第2ゾーンの層の構造的一体性を維持するために実行される。処理された第2ゾーンにおける複屈折材料は、全体的に、すなわち、完全に脱配向され、その後複屈折ミクロ層は等方性状態に戻り(例えば、キャストウェブの)、一方で光学的に薄いままである。これは例えば、図5Aに見られ、熱処理が第2層の屈折率を生じ(n2x、n2y及びn2zと関連する小さい黒点参照)、キャストウェブ状態のこれらの値に戻る(同じ屈折率n2x、n2y、n2zの菱形の記号参照)。菱形の記号が、等方性状態(例えば、キャストウェブ)の層の屈折率を表し、小さい黒点が最終的な内部パターン化フィルムにおける処理又は選択的に加熱したゾーンのミクロ層の屈折率を表し、白丸が最終的な内部パターン化フィルムの非処理ゾーンにおけるミクロ層の屈折率を表すことを想起されたい。
【0073】
処理第2ゾーンの複屈折材料が部分的にのみ、すなわち不完全に脱配向している場合、複屈折ミクロ層は、加熱前の複屈折状態よりも低いが、等方性ではない複屈折状態へと緩和する。この場合、複屈折材料の処理第2ゾーンにおける屈折率は、図5A〜Gに図示される菱形の記号と白丸との間のいずれかの値を得る。このような不完全な複屈折性緩和のいくつかの例は、同日付けで出願された譲受人共通の国際出願番号第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65848WO002号、「Internally Patterned Multilayer Optical Films With Multiple Birefringent Layers」により詳細に説明され、本明細書において参照として組み込まれる。
【0074】
図5Aにおいて、比較的低い屈折率を有する第1高分子材料が選択され、より高い屈折率を有し、正の応力−光学係数を有する第2高分子材料が選択される。材料は、好適な数の層で、交互の層構成で共押出され、菱形の記号によって示される屈折率を有する多層キャストウェブを形成する。キャストウェブはその後、好適な条件下でx軸に沿って一軸的に伸張されて、第2高分子材料中において複屈折性を誘起し、一方で第1高分子材料は等方性に留まる。屈折率値n2xが更に増加してn1xとの大きな屈折率差Δnxを形成する。屈折率値n2y及びn2zは減少して、それぞれn1y及びn1zとの小さな屈折率差Δny及びΔnzを形成する。例えば、Δny及びΔnzはゼロであり得る。屈折率のこの組は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、遮蔽軸であるx軸及び透過軸であるy軸を有する反射性偏光子を提供し得る。反射性偏光子は、ミクロ層の層厚さ分布によって広帯域又は狭帯域であり得る。
【0075】
この反射性偏光子フィルムは、その後上記のように第2ゾーンにおいて内部パターン化され、一方で反射性偏光フィルムを第1ゾーンにおいて損なわれていない状態に留め得る。放射エネルギーを第2ゾーンへと選択的に供給して選択的に加熱することにより、複屈折層がその元の等方性状態に、又は脱配向が不完全な場合には中間的な複屈折状態へと緩和する。緩和が不完全であると、第2ゾーンは、ミラー様フィルムとなり(ミクロ層パケットが適切な数の層を有する場合)、Δnx≒Δny≒Δnzである。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける反射性偏光子及び隣接するゾーンにおけるミラー様フィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Aにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(すなわち、偏光子→ミラー)。
【0076】
図5Aのものと同様のパターン化多層光学フィルムが、様々な方法によって作製され得る。実質的に真の一軸的特性を有する反射性偏光子フィルムが、例えば、米国特許出願公開第US2004/0227994号(Maら)又は同第6,949,212号(Merrillら)に記載される伸張方法を使用して作製され得る。例えば、PEN及びEastar(商標)コポリエステル、いわゆる「PETG」を含むフィルム(Eastman Chemical(Kingsport,TN)から入手可能)が、共押出によって作製され得る。本明細書において記載されるレーザー加熱方法の影響を受けやすいフィルムを作製するために、キャストウェブ2及び3に関する以下の実施例において記載される方法によって、選択される吸収染料を含むマスターバッチが、共押出中に樹脂流れの1つに組み込まれ得る。あるいは、図5Aの第1材料の等方性屈折率は、伸張(配向)状態の図5Aの第2材料のn2y及びn2zの屈折率よりも低い場合がある。例えば、coPET(例えば、先に参照した‘994 Maら参照文献のパラグラフ0076を参照)又は他のより低い屈折率の非配向(等方性)材料、例えばPMMA又はcoPMMAは、上記の低い屈折率のEastar(商標)材料と置換され得る。これらの場合における結果は、処理ゾーンにおけるより強い反射率のミラー及び非処理ゾーンにおけるいわゆる部分偏光子(低減した透過率及び増加した反射率を有する透過状態を有し、以下の部分偏光子の説明を参照されたい)特性である。
【0077】
図5Bにおいて、実質的に異なる屈折率を有する第1及び第2高分子材料がまた選択され、第1材料はまた第2材料よりも低い屈折率を有する。しかしながらここで、第1高分子材料は正の応力−光学係数を有する。材料は、好適な数の層で、交互の層構成で共押出され、菱形の記号によって示される屈折率を有する多層キャストウェブを形成する。キャストウェブはその後、拘束された一軸的伸張(x軸に沿って伸張され、y軸に沿って拘束される)で、好適な条件下において配向され、第1高分子材料において複屈折性を誘起し、一方で第2高分子材料は等方性のままである。拘束された一軸的伸張により屈折率n1xが屈折率n2xと実質的に整合するまで増加し、一方で屈折率n1zは実質的に低下し、n1yはほとんど又は全く変化を経験しない(僅かに減少するものとして図5Bに示される)。これは、非常に小さい屈折率差Δnx、遙かにより大きい屈折率差Δny及びΔnyと同じ極性又は符合を有する更により大きい屈折率差Δnzを生じる。この屈折率の組は、十分な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、x方向において透過軸を、y方向において遮蔽軸を有する反射性偏光子を提供し得る。フィルムによって提供される反射(遮蔽状態の偏光の光に関し)は、ミクロ層の層厚さ分布によって広帯域又は狭帯域であり得る。斜めの入射光に関し、p偏光におけるミクロ層境界面の反射率は、ブリュースター角に達するまで、入射角の増加に伴って減少し、その後入射角がブリュースター角より大きくなると増加する。
【0078】
この反射性偏光子フィルムは、その後上記のように第2ゾーンにおいて内部パターン化され、一方で偏光子フィルムを第1ゾーンにおいて損なわれていない状態に留め得る。放射エネルギーを第2ゾーンへと選択的に供給して選択的に加熱することにより、複屈折層がその元の等方性状態に、又は脱配向が不完全な場合には中間的な複屈折状態へと緩和する。緩和が完全である場合、第2ゾーンは多層ミラー様フィルムとなりΔnx≒Δny≒Δnz≠0である。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層反射性偏光子フィルム及び隣接するゾーンにおける多層ミラーフィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Bにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(偏光子→ミラー)。
【0079】
図5A及び図5Bそれぞれに関し、光学材料の一方が伸張後(及び選択的熱処理後)に等方性のままである。これはしかしながら、一般的に妥当する必要はなく、選択的熱処理技術を使用して一体型ミラー/偏光子フィルムへと転換され得る多くの関心のかつ有用な多層光学フィルム設計が、光学反復単位の構成層のための2つの異なる光学材料を含み、キャストウェブが伸張ないしは別の方法で配向された際に、これらの構成材料層の両方(1つのみではなく)が複屈折性となる。このような多層光学フィルムは、このようなフィルムの光学反復単位が、伸張後に複屈折性である少なくとも2つの構成ミクロ層をそれぞれ含むため、本明細書において「二重複屈折性」光学フィルムと称される。このような二重複屈折性多層光学フィルムが選択的熱処理に曝露される場合、材料特性及び加熱条件によって処理ゾーンにおける多くの異なる反応が可能であり、例えば、両方の材料層が完全に緩和して等方性になってもよく又は一方の材料が完全に若しくは部分的に緩和し一方で他方の材料層がその複屈折性を維持するか又は両方の材料層が異なる程度で緩和してもよい(例えば、一方の材料層が完全に緩和して等方性になり、一方で他方の材料が部分的に緩和してその複屈折性の一部のみを維持する)。いずれにせよ、一方又は両方の材料層の複屈折性の変化は、フィルムの第1(非処理)ゾーンの反射特性と実質的に異なる、光学フィルムの第2(処理)ゾーンの反射特性を生じる。二重複屈折多層光学フィルムの更なる詳細及びこれらを内部パターン化するために使用される選択的加熱技術は、同日付けで出願され、本明細書において参照として組み込まれる以下の譲受人共通の国際出願に提供される:PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65848WO002号)「Internally Patterned Multilayer Optical Films With Multiple Birefringent Layers」及び同第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65849WO002号「Multilayer Optical Films Having Side−by−Side Polarizer/Polarizer Zones」。一体型ミラー/偏光子フィルムを提供するための、選択的熱処理による内部パターン化のために好適な二重複屈折性多層光学フィルムのいくつかの例が、本出願において、図5C及び5Gに図示される。
【0080】
図5C〜5Gの実施形態はまた、米国特許第6,179,948号(Merrillら)に記載される2工程延伸プロセスを使用する。このプロセスにおいて、キャストフィルムの伸張又は配向は、一組の層(例えば、各光学反復単位の第1材料層)が両方の延伸工程において実質的に配向し、一方で他方の組の層(例えば、各光学反復単位の第2材料層)が一方の延伸工程中においてのみ実質的に配向するように、注意深く制御された2工程延伸プロセスを使用して実行される。結果は、延伸後に実質的に二軸的に配向された一組の材料層を有し、かつ延伸後に実質的に一軸的に配置される材料層の別の組を有する多層光学フィルムである。この区別は、2つのプロセス延伸工程の温度、歪み速度及び歪み程度などの、1つ以上の好適に異なるプロセス条件を使用することにより、2つの材料の異なる粘弾特性及び結晶化特性に作用することによって達成される。したがって、例えば、第1延伸工程は第1材料を第1方向に沿って実質的に配向させ、一方で第2材料をこの方向に沿って多くても極僅かにのみ配向させ得る。第1延伸工程の後、1つ以上のプロセス条件が好適に偏光され、それによって第2延伸工程において第1及び第2材料の両方が第2方向に沿って実質的に配向される。この方法により、第1材料層は本質的に二軸配向特性(例えば、屈折率は関係式n1x≒n1y≠n1zを満たしてもよく、場合により一軸的複屈折材料と称される)を想定することができ、一方で全く同じ多層フィルム内の第2材料層は、本質的に一軸配向特性(例えば、屈折率は関係式n2x≠n2y≠n2z≠n2xを満たし、場合により二軸的複屈折材料と称される)を想定することができる。
【0081】
この背景により、図5Cは第1及び第2高分子材料が、同じ又は同様の等方性屈折率を有し、延伸後に両方が複屈折性となり、同じ極性の応力−光学係数(図面においてこれらは両方とも正として表されているが、かわりにこれらは両方とも負であってもよい)を有するように選択される実施形態を表す。第1及び第2材料は、上記の2工程延伸プロセスが実施され得るように、異なる溶解又は軟化温度を有し、異なる粘弾及び/又は結晶化特性を有する。材料は、好適な数の層で、交互の層構成で共押出され、菱形の記号によって示される屈折率を有する多層キャストウェブを形成する。キャストウェブはその後、第1材料がx軸及びy軸の両方に沿って同等に配向されるように、上記の2工程プロセスを使用してx軸及びy軸に沿って二軸的に伸張され、ここで第2材料はy軸に沿って優先的に配向され、x軸に沿ってより弱い配向である(いくつかの場合においては配向しない)。正味の結果は、その第1及び第2ミクロ層が両方とも複屈折性である多層光学フィルムであるが、第1材料層は、実質的な二軸配向特性を有し、第2材料層は非対称な二軸配向特性又は更に実質的な一軸配向特性を有する。示されるように、材料及びプロセス条件は、伸張により屈折率値n1x及びn1yが同程度増加し、一方でn1zが大きく減少するように選択される。また伸張により、屈折率値n2yはn1x及びn1yの値と同等かこれ近くの値まで増加し、屈折率n2zが減少し、屈折率n2xがほぼ同じままである(第2材料がx軸配向工程の間低い度合いで配向する場合、n2xは図に示されるように僅かに増加し得る)。これは、1つの大きな面内屈折率不整合(Δnx)、1つの著しくより小さい面内屈折率不整合(Δny≒0)及びΔnxと反対の極性の中間的な面外屈折率不整合(Δnz)を有する2つの材料層の屈折率を生じる。第2材料がより二軸的に配向する場合、処理後のx方向の屈折率整合は、等方性屈折率が第2材料よりも高い第1材料と組み合わせることによって達成され得る。屈折率のこの組は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、x方向に沿った遮蔽軸及びy方向に沿った透過軸を有する反射性偏光子フィルムを提供し得る。フィルムによって提供される反射性は(遮蔽軸と平行に偏光した光に関し)、ミクロ層の層厚さ分布により、広帯域又は狭帯域であり得る。この反射性偏光子フィルムは、反対の極性のz反射率不整合により、入射角の増加と共に高い反射率を維持する。
【0082】
この多層偏光子フィルムは、その後上記のように第2ゾーンにおいて内部パターン化され、一方で反射性偏光子フィルムを第1ゾーンにおいて損なわれていない状態に留め得る。放射エネルギーを第2ゾーンに選択的に供給することによる選択的な加熱により、複屈折層の少なくともいくらかが緩和し、より低い複屈折性となる。この場合、加熱は第2材料層の溶解又は軟化点よりも高く、第1材料層の溶解又は軟化点よりも低い温度に注意深く制御される。このように、選択的加熱により第2ゾーンの第2複屈折層は、これらの元の等方性状態に、脱配向が不完全な場合は中間的な複屈折状態に緩和し、一方で第2ゾーンにおける第1複屈折性層はこれらの複屈折性を実質的に維持する。第2材料の緩和が完全である場合、第2ゾーンは、比較的大きい面内屈折率不整合(Δnx及びΔny)及びΔnx及びΔnyと比較して反対の極性又は符合の大きな面外屈折率差Δnzによって特徴付けられる。これらの屈折率関係は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、第2ゾーンにおける多層ミラーフィルムを提供し得る。ミラーフィルムは、z屈折率不整合Δnzの反対の極性により、入射角の増加に伴って反射率の増加を提供する。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層反射性偏光子フィルム及び隣接するゾーンにおける多層ミラーフィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Cにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(偏光子→ミラー)。
【0083】
図5Dは、図5Cのものに対する代替的な実施形態を表し、図5Cのものと同じ第1高分子材料が使用され得るが、僅かに異なる第2高分子材料が使用される。特に、図5Dの第2材料は、対応するキャスト、延伸及び熱処理状態において、図5Cの第2材料のものよりも全て若干低い、キャストウェブ、延伸フィルム及び熱処理フィルムの屈折率を有する。第2材料の屈折率のシフトは延伸(伸張)フィルムにおけるΔnx及びΔnyのより大きな値、並びにΔnzのより小さな値を生成するが、ΔnxはΔnyより著しく大きいままである。これらの屈折率の関係が適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される場合、結果は本明細書において部分偏光子と称される非対称の反射性フィルムであり得る。このようなフィルムは、1つの偏光の垂直入射光において高い度合いの反射性を提供し、反対の偏光の垂直入射光において遥かに低いが依然として実質的な度合いの反射性を提供する。このような偏光フィルムは、いくつかの高効率、例えば低損失ディスプレイ用途において並びに光リサイクリング及び空間的均一化システム並びに他の用途において特に有用であり得る。このようなフィルム(これはこの公開において非対称反射性フィルム(ARF)と称される)及びこのようなフィルムの用途の更なる開示のために、PCT国際公開特許WO 2008/144656号(Weberら)「Backlight and Display System Using Same」が参照される。図5Dにおいて、この偏光子フィルムの遮蔽軸はx軸と平行であり、透過軸(これは中程度の軸上反射率を呈し得る)はy軸と平行である。
【0084】
第2ゾーンにおける図5Dの多層フィルムの内部パターン化は、図5Cと同じ方法で実行され、すなわち放射エネルギーの第2ゾーンへの選択的な供給が、第2材料層の溶解又は軟化点を超えるが第1材料層の溶解又は軟化点を下回る温度へとミクロ層を加熱するように慎重に制御される。したがってまた選択的加熱により、第2ゾーンの第2複屈折層は、これらの元の等方性状態に、脱配向が不完全な場合は中間的な複屈折状態に緩和し、一方で第2ゾーンにおける第1複屈折性層はこれらの複屈折性を実質的に維持する。第2材料の緩和が完全である場合、第2ゾーンは、比較的大きい面内屈折率不整合(Δnx及びΔny)及びΔnx及びΔnyと比較して反対の極性又は符合の実質的な面外屈折率差Δnzによって特徴付けられる。これらの屈折率関係は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、第2ゾーンにおける多層ミラーフィルムを提供し得る。ミラーフィルムは、z屈折率不整合Δnzの反対の極性により、入射角の増加に伴って反射率の増加を提供する。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層反射性偏光子フィルム及び隣接するゾーンにおける多層ミラーフィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Dに関して、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(偏光子→ミラー)。
【0085】
図5Eは、図5Dのものと非常に近い実施形態を表す。例えば、同じ2工程配向プロセスが使用されて、実質的な二軸配向特性を有する第1材料層及び実質的な一軸配向特性を有する第2材料層を提供する。例えば、図5Eに使用される第1及び第2高分子材料は、図5Dのものとほぼ同一であってよく、これらは図5Dの材料と同じ屈折率及び同じ応力−光学係数を有し得る。したがって、伸張プロセス後、Δnxの比較的大きな値、Δnyの小さいが実質的な値及びΔnzの更により小さい値を有する多層光学フィルムがまた形成される。適切な数の層が使用される場合、ミクロ層フィルム又はパケットは、上記のように、本明細書において部分偏光子と称される非対称な反射性フィルムであり得る。この偏光子フィルムの遮蔽軸はまたx軸と平行であり、透過軸(これは中程度の軸上反射率を呈し得る)はまたy軸と平行である。
【0086】
図5Eにおいて使用される材料は、図5Dのものと1つの顕著な点において異なる:図5Eの第1及び第2材料は、図5Dの第1及び第2材料に関して交換した相対的溶解又は軟化温度を有する。したがって、図5Eにおいて、第1材料の溶解又は軟化点は第2材料の対応する温度よりも低い。この材料特性の変更は、内部パターン化操作(多層光学フィルムの第2ゾーンにおいて)に使用される選択的な加熱が、第1材料層の溶解又は軟化点を超えるが、第2材料層の溶解又は軟化点を下回る温度へと慎重に制御されることを可能にする。したがって、この場合、選択的加熱により第2ゾーンの第1複屈折層は、これらの元の等方性状態に、又は脱配向が不完全な場合は中間的な複屈折状態に緩和し、一方で第2ゾーンにおける第2複屈折性層はこれらの複屈折性を実質的に維持する。第1材料の緩和が完全である場合第2ゾーンは、中間的な面内屈折率不整合(Δnx及びΔny)及びより小さい面外屈折率差(Δnz)によって特徴付けられる。面内不整合Δnx及びΔnyは同様の規模を有するが反対の極性を有することに留意する。面内不整合はフィルムの第1(非処理)ゾーンにおける偏光子フィルムの遮蔽軸不整合よりも小さいが、これらはそれでも、ミクロ層パケット又はフィルムが適切な数のミクロ層を有する場合、第2ゾーンにおける実質的な多層ミラーフィルムを提供することができる。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層反射性偏光子フィルム及び隣接するゾーンにおける多層ミラーフィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Eにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(すなわち、偏光子→ミラー)。
【0087】
面内不整合Δnx及びΔnyが同様の規模(同じ又は実質的に同じ規模を含む)であるが反対の符合であり、面外不整合Δnzがゼロでなく、面内不整合の一方のみと同じ極性を有する、図5Eの第2(処理)ゾーンによって特徴付けられる多層ミラーフィルムは、独自の光学特性を有する。このようなミラーフィルムは、積み重ね体の反射帯域における垂直入射光の全ての偏光状態に関して所望されるほど高い又は低い(積み重ね体で使用される層の数による)反射率を有し得る。しかしながら、斜めの入射光に関し、ミラーフィルムは、光の入射面によって非常に異なる方法で機能する。面内不整合及び面外不整合と同じ極性を有する面内の入射光に関し(図5Eのミラーフィルムにおいて、これはx−z平面となる)、光のs変更成分の反射率は、入射角の増加に伴って増加するが、光のp変更成分の反射率は、入射角の増加に伴って減少する。ブリュースター角は、空中から(又は多層光学フィルムが浸漬される他の媒体から)フィルムへの入射光にとってアクセス可能であるものと想定し、このp偏光反射率はブリュースター角でゼロ値まで減少し、その後更に高い入射角において急速に増加する。面内不整合及び面外不整合と反対の極性を有する面内の入射光に関し(図5Eのミラーフィルムにおいて、これはy−z平面となる)、光のs偏光成分の反射率は、入射角の増加に伴って増加し、光のp偏光成分の反射率もまた、入射角の増加に伴って増加する。異なる入射方向における斜角のp偏光における非常に異なる反射率は、垂直及びほぼ垂直な入射光における全ての偏光状態における均一又は対称な反射率と組み合わせて、様々なシステム及び用途において有利に利用され得る。
【0088】
図5Fは、一体型ミラー/偏光子多層フィルムを作製するために使用され得る材料特性の更に別の組を示す。この実施形態はまた、図5Dのものと非常に似ているが、図5Eとは異なる様式である。図5Fにおいて、第1材料は、丁度図5Dにおけるように、第2材料の対応する温度よりも高い溶解又は軟化温度を有する。更に、第1及び第2材料は、材料が共押出及び急冷されてキャストウェブを形成するとき、図5Dにおけるように同じ等方性屈折率を有してもよい。なお更に、第1及び第2材料は、異なる粘弾性及び/又は結晶化特性を有し、それによって丁度図5Dにおけるように、上記の2工程延伸プロセスがまた実施され得、それによって第1材料層は実質的に二軸配向特性を有し、第2材料層はより一軸配向の特性を有する。図5Fにおいて使用される材料は、1つの顕著な点において図5Dのものとは異なる:図5Fの第2材料は、正ではなく負の応力−光学係数を有する。(より一般的に、図5Fの第2材料は、第1材料のものとは反対の極性の応力−光学係数を有すると言ってもよい。)この差は、配向された多層光学フィルムにおける対応する差を生成する。したがって、図5Fにおいて、配向後、延伸した多層フィルムは、大きな面内屈折率不整合Δny及びより小さいが実質的な屈折率不整合Δny及びΔnzによって特徴付けられる。適切な数の層が使用される場合、ミクロ層フィルム又はパケットは、上記のように、本明細書において部分偏光子と称される非対称な反射フィルムであり得る。図5Dとは異なり、図5Fの偏光子フィルムの遮蔽軸はまたy軸と平行であり、透過軸(これは中程度の軸上反射率を呈し得る)はx軸と平行である。
【0089】
第2ゾーンにおける図5Fの多層フィルムの内部パターン化は、図5Dと同じ方法で実行され、すなわち放射エネルギーの第2ゾーンへの選択的な供給が、第2材料層の溶解又は軟化点を超えるが第1材料層の溶解又は軟化点を下回る温度へとミクロ層を加熱するように慎重に制御される。したがってまた選択的加熱により、第2ゾーンの第2複屈折層は、これらの元の等方性状態に、脱配向が不完全な場合は中間的な複屈折状態に緩和し、一方で第2ゾーンにおける第1複屈折性層はこれらの複屈折性を実質的に維持する。第2材料の緩和が完全である場合、第2ゾーンは、比較的大きい面内屈折率不整合(Δnx及びΔny)及びΔnx及びΔnyと比較して反対の極性又は符合の実質的な面外屈折率差Δnzによって特徴付けられる。これらの屈折率関係は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際、第2ゾーンにおける多層ミラーフィルムを提供し得る。ミラーフィルムは、z屈折率不整合Δnzの反対の極性により、入射角の増加に伴って反射率の増加を提供する。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層反射性偏光子フィルム及び隣接するゾーンにおける多層ミラーフィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Fにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層反射性偏光子フィルムを、多層反射性ミラーフィルムに変えることができる(偏光子→ミラー)。
【0090】
図5Gは、一体型ミラー/偏光子多層フィルムを作製するために使用され得る材料特性の更に別の組を示す。この場合において、非処理フィルムは、ミラー様多層フィルムであり、処理フィルムは偏光子フィルムである。第1及び第2高分子材料は、同様の等方性屈折率を有するように選択されるが、第2材料の屈折率は第1材料のものより僅かに低い。延伸後に両方の材料が複屈折性となり、両方が同じ極性の応力−光学係数(図面においてこれらは両方とも正として表されているが、かわりにこれらは両方とも負であってもよい)を有する。第1及び第2材料は、2工程延伸プロセスが実施され得るように、異なる溶解又は軟化温度を有し、異なる粘弾及び/又は結晶化特性を有する。材料は、好適な数の層で、交互の層構成で共押出され、菱形の記号によって示される屈折率を有する多層キャストウェブを形成する。キャストウェブはその後、第1材料がx軸及びy軸の両方に沿って同等に配向されるように、2工程プロセスを使用してx軸及びy軸に沿って二軸的に伸張され、ここで第2材料はy軸に沿って優先的に配向され、x軸に沿っては僅かに配向する。正味の結果は、その第1及び第2ミクロ層が両方とも複屈折性である多層光学フィルムであるが、第1材料層は、実質的な二軸配向特性を有し、一方で第2材料層はより一軸配向の特性を有する。材料及びプロセス条件は、伸張により屈折率値n1x及びn1yが同程度増加し、一方でn1zが大きく減少するように選択される。また伸張により、屈折率値n2yはn1yのものを超える値まで増加し、n2xはn1xのもの未満の値まで増加し、n2zはn1zのもの付近の値まで減少する。これは、2つの実質的な面内屈折率不整合(Δnx及びΔny、これらは反対の極性又は符合である)及びΔnyと同じ極性を有するより小さな面外屈折率不整合(Δnz)によって特徴付けられる2つの材料層の面内屈折率を生じる。この屈折率の組は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施されるとき、反射性ミラーフィルムを提供することができる。このフィルムによって提供される反射性は、ミクロ層の層厚さ分布によって広帯域又は狭帯域であり得る。この反射性ミラーフィルムは、Δnxに対して反対の極性であるΔnzにより、x−z面内の斜めの入射光において、入射角の増加に伴って高い反射率を維持する。垂直なy−z入射面内のp偏光の反射率は、小さいがΔnyと同じ極性であるΔnzのために、入射角の増加と共に緩慢に減少し得る。
【0091】
第2ゾーンにおける図5Gの多層フィルムの内部パターン化は、図5Eと同じ方法で実行され、すなわち放射エネルギーの第2ゾーンへの選択的な供給が、第2材料層の溶解又は軟化点を超えるが第1材料層の溶解又は軟化点を下回る温度へとミクロ層を加熱するように慎重に制御される。したがって選択的加熱により、第2ゾーンの第1複屈折層は、これらの元の等方性状態に、又は脱配向が不完全な場合は中間的な複屈折状態に緩和し、一方で第2ゾーンにおける第2複屈折性層はこれらの複屈折性を実質的に維持する。第1材料の緩和が完全である場合、第2ゾーンは、1つの比較的大きい面内屈折率不整合(Δny)、1つの小さい又はゼロの面内屈折率不整合(Δnx)及びΔnyに対して反対の極性又は符合の実質的な面外屈折率差(Δnz)によって特徴付けられる。これらの屈折率の関係は、適切な数の層を有するミクロ層パケットにおいて実施される際に、その透過軸がx軸と平行であり、その遮蔽軸がy軸と平行な、第2ゾーンにおける多層偏光子フィルムを提供し得る。偏光子フィルムは、Δnyに対するΔnzの反対の極性により、入射角の増加に伴って増加する反射率を提供する。最終的なフィルムはしたがって、一体型フィルム内において、1つのゾーンにおける多層ミラーフィルム及び隣接するゾーンにおける多層反射性偏光子フィルムを組み合わせ、1つのゾーンから次のゾーンへと連続的に延びるミクロ層を有する。この図5Gにおいて、選択的熱処理プロセスは、多層ミラーフィルムを、多層反射性偏光子フィルムに変えることができる(ミラー→偏光子)。
【0092】
上記のシナリオは、一体型ミラー/偏光子多層光学フィルムを生成するために使用され得る材料特性及び処理パラメーターの多数の可能な組み合わせのいくつかのみを含み、限定としてみなされるべきではない。正の複屈折性材料だけではなく、負の複屈折性材料及びこれらの組み合わせも使用され得る。複屈折性及び等方性ポリマーの組み合わせが使用される場合、複屈折性ポリマーは、等方性ポリマーの屈折率より低い、高い又は同等の事前伸張の等方性屈折率を有し得る。上記のシナリオ(図5A〜Gと関連する)は、第2ゾーンに力又は圧力をほとんど又は全く適用せずに、したがってフィルムの第1ゾーンと第2ゾーンとの間に厚さの差がほとんど又は全くなく、レーザー又は同様の放射線源を利用する、第2ゾーンにおける選択的な熱処理で達成され得るが(例えば、図6、7A〜C及び8A〜Bに関連する以下の説明を参照されたい)、読者はまた、第2ゾーンへの力又は圧力の選択的な適用を含み、かつ第1ゾーンと第2ゾーンとの間に実質的な厚さの差を生じる他の技術が使用され得ることを理解する。例えば、熱工具エンボス加工手法において、上記の屈折率の関係を生じるように、フィルムの第2ゾーンに熱が選択的に適用され得る一方で、同じ第2ゾーンに圧力がまた適用される。このような手法において、第2ゾーンにおけるミクロ層の一部が、第1ゾーンにおける部分に対して薄化され、上記の反射特性の変化に加えて、第2ゾーンにおけるより短い波長へのスペクトルシフトが生じる。
【0093】
図6において、開示される内部パターン化フィルムを提供するため、多層光学フィルムの第2ゾーンを選択的に加熱するために使用され得る構成600が図示される。簡潔に、フィルム全体にわたって又は少なくともその第1ゾーンから第2ゾーンまで延びる少なくとも1つのミクロ層パケットを含む多層光学フィルム610が提供される。ミクロ層はフィルムの内側にあり、フィルムに第1反射特性を提供する。高放射光源620は、好適な波長、強度及び光線サイズの方向付けられた光線622を提供し、入射光のいくらかを吸収により熱に転換することにより、フィルムの照明された部分624を選択的に加熱する。好ましくは、フィルムの吸収は、適度な電力の光源で十分な加熱を提供するために十分に大きいが、フィルムの初期表面で過度の光が吸収されて表面に損傷を生じ得るほど大きくない。これは以下で更に記載される。いくつかの場合において、斜めに位置付けられる光源620a、方向付けられた光線622a及び照明される部分624aによって示される斜角θで光源を配置することが望ましい場合がある。多層光学フィルム610が、所望の量の吸収及びこれに伴う加熱を阻害するような方法で方向付けられた光線622を実質的に反射する、垂直入射における反射帯域を有するミクロ層パケットを含む場合においてこのような斜めの照明が望ましいことがある。したがって、入射角の増加に伴う反射帯域のより短い波長へのシフトを利用し、方向付けられた光線622aが(シフトした)反射帯域を避ける斜角θで供給され、所望の吸収及び加熱を可能にし得る。
【0094】
いくつかの場合において、方向付けられた光線622又は622aは、照明された部分624又は624aが所望の最終的な第2ゾーンの形状を有するような方法で成形することができる。他の場合において、方向付けられた光線は所望の第2ゾーンよりも大きさが小さい形状を有してもよい。後者の状況において、処理されるゾーンの所望の形状をなぞるために、多層光学フィルムの表面にわたる所望の光線を走査するため、光線指向装置が使用される場合がある。ビームスプリッター、レンズ配列、ポッケルスセル、音響光学変調器などの装置及び当業者によって既知の技術及び装置による、方向付けられた光線の空間的及び時間的調節もまた利用され得る。
【0095】
図7A〜Cは、パターン化多層フィルムの異なる第2ゾーンの概略平面図を提供し、表されるゾーンを形成することができるフィルムに対し、方向付けられた光線の可能な経路がその上に重ねられている。図7Aにおいて、光線が多層光学フィルム710で方向付けられ、経路716に沿って始点716aから終点716bまで制御された速度で走査され、任意の形状のゾーン714においてフィルムを選択的に加熱してこれを第1ゾーン712から区別する。図7B及び図7Cは同様である。図7Bにおいて、光線が多層光学フィルム720で方向付けられ、経路726に沿って始点726aから制御された速度で走査され、矩形のゾーン724においてフィルムを選択的に加熱してこれを隣接する第1ゾーン722から区別する。図7Cにおいて、光線が多層光学フィルム730で方向付けられ、不連続な経路736〜742などに沿って制御された速度で走査され、フィルムを矩形ゾーン734内で選択的に加熱してこれを隣接する第1ゾーン732から区別する。各図7A〜Cにおいて、加熱は、第2ゾーンにおける少なくともいくらかの内側ミクロ層の複屈折性を低減又は排除し、一方で第1ゾーンにおけるこれらの層の複屈折性を維持するのに十分であり、第2ゾーンにおけるミクロ層の構造的一体性を維持しながら、第2ゾーンへのいずれの選択的な圧力の適用もなく達成される。
【0096】
方向付けられた光線はまた、破線、点線ないしは別の方法により断続的な又は不連続な経路を生成するように調節されてもよい。調節は完全であってもよく、光線強度は100%すなわち「完全にオン」から0%すなわち「完全にオフ」まで変化する。あるいは、調節は部分的であってもよい。更に、調節は、光線強度の急峻な(例えば、段階的な)変化を含んでもよく及び/又はこれは光線強度のより漸増的な変化を含んでもよい。
【0097】
図8A及び8Bは、多層光学フィルムの吸収率が、最適な極部加熱を提供するためにどのように調整され得るか又はされるべきかという問題に対処する。図8A及び図8Bのグラフは、同じ水平方向の縮尺でプロットされ、これは放射光線がフィルムを伝搬する際のその深さ又は位置を表す。0%の深さはフィルムの前面に対応し、100%の深さがフィルムの後面に対応する。図8Aは放射光線の相対的強度I/Iを垂直軸に沿ってプロットする。図8Bは、フィルム内の各深さにおける局部的吸収係数(放射光線の選択される波長又は波長帯域)をプロットする。
【0098】
3つの異なる多層光学フィルムの実施形態に関し、3つの曲線が各図においてプロットされる。第1実施形態において、フィルムは、方向付けられた光線の波長において、その厚さ全体にわたり、実質的に均一で低い吸収率を有する。この実施形態は、図8Aの曲線810及び図8Bの曲線820としてプロットされる。第2実施形態において、フィルムは、その厚さ全体にわたり、実質的に均一かつ高い吸収率を有する。この実施形態は、図8Aの曲線812及び図8Bの曲線822としてプロットされる。第3実施形態において、フィルムはその厚さの領域815a及び815c全体にわたり比較的低い吸収率を有するが、その厚さの区域815bにおいて中間的な吸収率を有する。
【0099】
第1実施形態は、多くの場合において低すぎる吸収係数を有する。方向付けられた光線は、曲線810の一定の傾斜によって示されるように、深さの関数として均一に吸収され、これはいくつかの場合において望ましい場合があるが、100%の深さにおける曲線810の高い値によって示されるように、極僅かな光が実際に吸収され、これは高い割合の方向付けられた光が無駄になることを意味する。それでもなお、いくつかの場合においてこの第1実施形態は、いくつかのフィルムの処理において依然として非常に有用であり得る。第2実施形態は、多くの場合において高すぎる吸収係数を有する。実質的に全ての方向付けられた光線が吸収され、無駄がないが、高吸収率により過剰な量の光がフィルムの前面で吸収されて、これがフィルムの表面に損傷を生じ得る。吸収率が高すぎると、フィルムの前面又はその付近における層を損傷することなく、関心の内側層に適切な量の熱を供給することができない。第3実施形態は、例えば、フィルムの選択される内側層内に吸収剤を組み込むことによって達成され得る不均一な吸収特性を利用する。吸収率のレベル(局部的な吸収係数によって制御される)は、望ましくは中間的なレベルに設定され、それによって方向付けられた光線の適切な部分がフィルムの調整された吸収領域815bに吸収されるが、吸収率は、反対側の端部と比較して過剰な量の熱が領域815bの入射端部に供給されるほど高くはない。多くの場合において吸収領域815bの吸収率は依然として適度に弱く、例えば、この領域における相対的な強度特性814は、例えば815a及び815cなどの他の領域よりも単純により急な傾斜を有し、より直線として見える場合がある。以降で更に記載されるように、吸収率の適切さは、この吸収率を、所望の効果を達成するための入射する方向付けられた光線のパワー及び持続時間に対して調和させることによって決定される。
【0100】
第3実施形態の基本的な実施例において、多層フィルムは、2つの厚いスキン層とその間のミクロ層の1つ以上のパケットの構成を有してもよく(2つ以上のミクロ層パケットが含まれる場合、保護境界層によって分離される)、フィルムは2つの高分子材料A及びBのみで構成されてもよい。その吸収率を中程度のレベルまで増加させるために吸収剤が高分子材料Aに組み込まれるが、ポリマーBには吸収剤は組み込まれない。両方の材料A及びBが、ミクロ層パケットの交互の層に提供されるが、スキン層及び保護境界層は、存在する場合ポリマーBのみから構成される。このような構成体は、弱い吸収性材料Bの使用のために、フィルムの外側表面、すなわちスキン層において低い吸収率を有するが、また光学的に厚いPBL(存在する場合)においても低い吸収率を有する。この構成体は、交互のミクロ層(より弱い吸収性材料Bの交互のミクロ層と)中のより強い吸収性材料Aの使用により、ミクロ層パケット内のより高い吸収率を有する。このような構成体は、外側表面層ではなく、フィルムの内側層、特に内側ミクロ層パケットに熱を優先的に供給するために使用され得る。好適に設計されたフィードブロックでは、多層光学フィルムは3つ以上の異なる種類の高分子材料(A、B、Cなど)を含む場合があり、フィルムの選択される内側層、パケット又は領域に熱を供給するように広範な種類の異なる吸収特性を提供するため、吸収剤が、1つ、いくつか又は全ての材料に組み込まれ得るということに留意されたい。他の場合では、PBL又は更にスキン層(存在する場合)に吸収剤を含むことが有用であり得る。いずれの場合においても、充填量又は濃度は同じ又は異なる(ミクロ層内におけるよりも高い又は低いのいずれか)場合がある。
【0101】
先行の実施形態のものと同様の吸収特性が、多層光学フィルムにおいて使用される様々な本来の材料の固有の吸収特性を使用して得ることができる。したがって、多層フィルム構成体は、フィルムの様々な層又はパケットにおいて異なる吸収特性を有する異なる材料を含んでもよく、これらの様々な層又はパケットはフィルム形成中に一緒に形成されていてもよく(例えば、共押出により)又は例えば積層によって後に組み合わせられる別個の前駆フィルムとして形成されていてもよい。
【0102】
ここで先行の教示及び開示のいくらかの態様について反復及び補足する。
【0103】
先行の開示はとりわけ、その最初の製造の後の、非接触の放射手段によって変えることができる、「書き込み可能な」多層光学フィルムを記載するものとみなすことができる。多層光学フィルム(MOF)は、交互の層の少なくとも2つの材料及び第1の選択される入射角において可視スペクトル帯域などのスペクトルの選択される部分を反射するように微調整されたこのような層の少なくとも1つの光学パケットを含んでもよく、更に任意により、選択される光学パケットのいずれか又は両方の層内に分散する、本記載の目的のために第3材料と称され得る吸収剤を含み、これは第2の選択される入射角においてMOF反射帯域によって主に反射されないか又はMOFの他の材料によって有意に吸収されない電磁放射を優先的に吸収する。これらの層内の複屈折性を低減するか又は排除するための吸収性材料を含む光学パケット内の少なくとも1つの複屈折性材料を部分的に又は全体的に、選択的に溶解又は脱配向させるために、特定のスペクトル帯域の方向付けられた放射エネルギー処理を使用したプロセスがまた開示される。処理は、フィルム面にわたる、選択された空間位置に適用される。処理後に空間的に調整された光学的変動を有する最終的な光学フィルム自体がまた開示される。開示されるフィルムは、最初に均一にキャストされ、延伸した光学体が、所与の用途の個別の要件に適合するように空間的に調整されるビジネスプロセスにおいて使用され得る。
【0104】
特定の関心の一態様は、パルス赤外線レーザー光源又は他の好適な高発光光源での続く処理により、選択された内側光学層の複屈折性を選択的に排除する一方で、他の内側又は表面層を比較的不変に留めることにより、例えば近赤外線吸収染料又は他の吸収剤を含む多層光学フィルムの制御された空間的パターン化である。
【0105】
初期又は第1反射特性とは異なる第2反射特性を提供するために、その内部ミクロ層の少なくともいくらかの複屈折性が、フィルムの1つ以上のゾーンにおいて低減され得る、本明細書において開示されるフィルム(選択的熱処理の前及び選択的熱処理の後の両方)は、STOF(空間的に調整された光学フィルム)と称され得る。
【0106】
フィルム、方法及びビジネスプロセスは、空間的に制御されたレベルの配向が所望される任意の用途において一般的に有用であり得る。関心の領域としては、例えば、ディスプレイ、装飾及びセキュリティ用途が挙げられる。いくつかの用途は、複数の領域に跨る場合がある。例えば、いくらかの物品は、例えば、しるしの形態の従来的なパターン化を含むフィルム、基材又は他の層と組み合わせた、本明細書において開示される内部パターン化フィルムを組み込み得る。得られる物品は、セキュリティ用途において有用であり得るが、その型はまた装飾的であるとみなすこともできる。このような物品の選択的な熱処理は、内部パターン化フィルムの設計によって、他のフィルムの従来的なパターンの部分を選択的に阻害するか(反射率を増加させることにより)又は曝露する(反射率を低減させることにより)、内部パターン化フィルムにおけるゾーンを生成し得る。開示される内部パターン化フィルムの色シフト特性はまた、例えば、米国特許第6,045,894号(Jonzaら)「Clear to Colored Security Film」及び同第6,531,230号(Weberら)「Color Shifting Film」に開示されるように、色付き又は白黒の背景のしるしと組み合わせて利用され得る。
【0107】
更にセキュリティ用途に関し、開示されるフィルムは、IDカード、運転免許証、パスポート、アクセス制御パス、金融取引カード(クレジット、デビット、プリペイド又は他の)、ブランド保護又はIDラベルなどを含む様々なセキュリティ構成体において使用され得る。フィルムは、セキュリティ構成体の他の層又は部分の内側又は外側層として積層されるかないしは別の方法で接着され得る。フィルムがパッチとして含まれるとき、これは、カード、ページ又はラベルの主表面の一部のみを被覆し得る。いくつかの場合において、セキュリティ構成体の基材又は唯一の要素としてフィルムを使用することが可能であり得る。フィルムは、ホログラム、印刷画像(凹版、オフセット、バーコードなど)、再帰反射性機構、UV又はIR活性化画像などの、セキュリティ構成体の多くの機構の1つとして含まれ得る。いくつかの場合において、開示されるフィルムはこれらの他のセキュリティ機構と組み合わせて層化され得る。フィルムは、例えば、署名、画像、個人用コード番号などの個人化可能な機構をセキュリティ構成体に提供するために使用され得る。個人化可能な機構は、個人用文書ホルダー又は特定の製品、例えば、製造者タグ、ロット認証タグ、不正開封防止コードなどの場合、に関連し得る。個人化可能機構は線及び点のパターンを含む様々な走査パターンで作製され得る。パターンは、フィルム構成によって、書き込み可能パケットにおいて同じ又は異なる場合がある。
【0108】
例えば、最初に知覚可能な色を呈し、その後処理又はパターン化の際に透明となる第1書き込み可能パケットの場合を想定する。1つ以上のこのような色付きパケットが使用され得る。セキュリティ構成体に含まれるフィルム構成体を形成するための第2多層光学フィルムパケットの追加を想定する。第1パケットのパターン化又は書き込みは、組み合わせた2つのパケットの色特性を表す背景の第2のパケットの色における設計又は画像を生じる。スペクトル帯域が十分に狭いとき、前景(パターン化領域)及び背景の両方が、観察角によってカラーシフトし得る。透過光又は反射光の観察を選ぶため、例えば、白又は黒の背景などの背景を有する知覚される色のバリエーションがセキュリティ機構として使用され得る。例えば、文書、例えばパスポートにおけるフィルムのページ又は紙葉をめくって、フィルムを文書の異なる背景又は部分を背に見ることができる。
【0109】
フィルムは顕在的な(例えば、通常の観察者に対して明確に可視である)及び潜在的な機構の両方をセキュリティ構成体に提供し得る。例えば、書き込み可能な(色付き)反射性偏光子層は、偏光分析器によって可視の潜在的機構(例えば、分析器の偏光状態によって色を変えるか又は消える機構)を提供することができる。赤外反射パケットがパターン化されて赤外線検出可能な(例えば、機械で読取り可能な)個人化されたコード化機構を作製することができる。
【0110】
この点において、開示される一体型のミラー/偏光子多層光学フィルムのいずれかがまた、これらのセキュリティ用途のいずれかに使用され得る。
【0111】
多層光学フィルムは、放射吸収性材料を含み得る光学的干渉層の少なくとも1つの選択されるパケットによって形成される少なくとも1つの状態の直線偏光の、少なくとも1つの選択される反射帯域を含み得る。パターン化方法は、選択される材料層の組みにおける複屈折性の排除又は低減を可能にし、したがって選択されたスペクトル帯域にわたる光学積み重ね体の干渉特性を変更する。この方法において、フィルムは、例えば、ピクセルで構成されたディスプレイなどの所望の用途のために空間的に調整され得る。光学フィルムはしたがって、空間的に変化するカラーフィルターに作製されてもよく、あるいは透過性、反射性ミラー及び/若しくは反射性偏光子の間で変化するか又はカラーフィルタリング及びこれらの反射状態、又はこれらの状態の強さ若しくは質の組み合わせであるように作製されてもよい(例えば、強いミラーから弱いミラー又は偏光子若しくは部分偏光子からミラーへ)。1つの有用な用途は、液晶ディスプレイ(LCD)装置において使用されるカラーフィルターであり得る。別の用途は、波長選択的透過率又は反射率以外の又はこれの他の目的のためにフィルム及び同様の光学体の内側又は内部に構造体をつくるか又は「書き込む」ための開示される材料及び技術を使用することであり得る。フィルム内の光案内構造に影響を与えるために、本明細書において記載される光学特性の空間的な調整及び材料が使用されてもよく、例えば、案内部材をフィルムに通し、表面まで断続的に引く。異方性及び選択的吸収性材料とレーザー書き込みプロセスとの組み合わせが、より長いレーザーパルス幅、より少ない開口及び潜在的により高い書き込み速度などの追加的なプロセス利益を有する、高機能光学構造を生成し得る。
【0112】
特に有用な種類の構成体は、光学的機能層の2つ以上の組を含む高分子光学体であり、各組は同様の機能を有するが(例えば、光学変換、これが反射するか又は透過するか)、各特定の組が含まれてスペクトル帯域の特定の部分に作用する。少なくとも1つの組が放射吸収剤を有し、少なくとも他の1つ組が有さない。いくつかの場合において、2つ以上の組が放射吸収剤を含み得る。例えば、多層光学フィルムは2つ以上の光学干渉パケットを含み得る。これらのパケットは(光学的機能層の組)は交互の材料の多くの層を含み得る。1つの光学パケットは放射吸収剤を含む場合があり、別のものは含まない場合がある。
【0113】
様々な光学吸収剤が使用され得る。可視スペクトルで機能する光学フィルムでは、紫外線及び赤外線吸収染料、顔料又は他の添加剤が有用であり得る。構成体のポリマーによって大きく吸収されない、吸収のスペクトル領域を選択することが望ましい場合がある。この方法において、方向付けられた放射線は、光学体の厚さ全体を通じ、選択された関心の領域に集中させることができる。吸収剤は望ましくはこれらが関心の選択される層の組へと埋め込まれ得るように溶融押出可能である。この目的のために、吸収剤は、押出のために要求されるプロセス温度及び滞留時間において、適度に安定であるべきである。
【0114】
開示されるフィルム及び光学体は、選択される関心の用途において、光学体によって通常変換されるスペクトル帯域外の選択されるスペクトル領域内で放射処理され得る。放射処理は、選択されるスペクトル帯域の光をフィルムの選択される位置に十分な強度において収束させることができる、任意の様々な手段によって達成され得る。放射処理のための特に好適な手段はパルスレーザーである。これは増幅したパルスレーザーであり得る。いくつかの状況において、レーザーは微調整可能であり得る。例えば、可視帯域において動作可能に反射性である光学フィルムは、近赤外線又は近紫外線において、ポリマーがそこで特に吸収性で無い場合、吸収剤を有してもよい。多層光学フィルムに関し、処理のための吸収帯域の選択はフィルムの光学帯域に関連して選択され得る。好ましくは、この方向付けられた放射エネルギーの選択された入射角に関して、フィルムは方向付けられた放射エネルギーを反射するべきではないが、反射率が十分に低い場合、処理は依然として可能であり得る。レーザーからの放射エネルギーは多くの場合実質的に偏光している。外側表面において、ブリュースター角と一致する角度に衝突する光線を配置し、エネルギー損失を最小化することが有用であり得る。MOF反射帯域もまた高い入射角においてより短い波長にシフトするため、垂直入射角における帯域配置のみにより期待されるよりも短い吸収波長が使用され得る。
【0115】
例えば、屈折率1.75(632nmの波長)及び約60°の対応するブリュースター角、約800nmの急峻な垂直入射右帯域端を有する二軸配向スキン層を有するMOFミラーフィルムは、ブリュースター角において約700nmを超える方向付けられた光線を許容し、垂直入射において反射されるにもかかわらず、この波長を使用した処理を可能にし得る。この右帯域端は、全ての関心の角度における反射を確実にするために部分的に選択される。880nmにおいて、反射帯域は依然として、すれすれの入射における約700nmまでカバーする。この帯域位置において、この場合におけるブリュースター角付近において750nmまでカバーする。帯域端と方向付けられた放射の波長との間に、いくらかのヘッドルームがあることが望ましい場合がある。光線が潜在的な層のいずれかによって方向付けられることが所望される場合、これは、光学帯域を超える方向付けられたエネルギーに関し、この場合約750〜800nm(真空)の実際的な下限を設ける。あるいは、フィルムにおける介在する波長帯域が特定の関心のエネルギーを遮蔽しないように、フィルムの好ましい側を通じて放射エネルギーを方向付けることを選択してもよい。例えば、532nmにおける緑色のレーザーが、これが緑色の反射性パケットを通じて垂直入射で透過する必要がない限り又はこの光線が帯域シフトによってこのパケットにもはや反射されないように十分な斜角でこれを透過し得る場合、青色のパケットを処理するために使用されてもよい。
【0116】
近紫外線がパターン化に使用される場合(これはまた材料吸収特性に依存する)、より長い波長の反射帯域を有するパケットの帯域シフトが光線を阻害し得る。垂直入射の方向付けられた放射線は次に、フィルムの固定された左帯域端に対して最も高い波長を有する場合があり、斜角の処理が帯域シフトによって阻害され得る。左帯域端のシフトはまた、光線真空波長よりも高い帯域シフト反射帯域を有する構成体で使用される他の可視又はIR光線においても関連がある。
【0117】
フィルムの厚さを通じて吸収された放射エネルギー及び厚さを通じて生じる熱パルスの管理は、本開示の一態様である。フィルム厚さの選択された部分にわたる選択的な層において材料の複屈折性の低減又は排除を生じる制御された溶解は、均一な効果を確実にするために、方向付けられた放射線の適度に低いレベルの吸収を必要とする。選択される層の材料は、過剰なイオン化又は熱分解のいずれかを生じるため、時間パルス又は熱的見地のいずれからも、過熱するべきではない。例えば、純粋に熱容量が要因となる場合を想定すると、25℃から所望される300℃にした材料は、275℃加熱される。選択される層が方向付けられた放射線の10%を吸収する場合、方向付けられた放射線源に最も近い前部は、後部が所望の300℃まで加熱されるために、約330℃まで加熱される必要がある。フィルムの最も熱い部分と有害な温度又はイオン化条件との間の十分なヘッドルームが維持されるべきである。例えば、過熱を防ぐため、厚さを通じた温度の制御が、1つの材料のみから複屈折性を選択的に排除するために重要であり得る。いくつかの場合において、予備加熱が所望され得る。レーザーエネルギーの視点から、プロセスの有効性が、レーザー曝露前及びその間にフィルムを予備加熱することによって増加し得る。フィルムの予備加熱温度は、室温より高いが、光学パケットに使用されるポリマーの融解温度よりも低いべきである。典型的に、フィルムがその厚さを通じて予備加熱されると、大量の方向付けされた放射線が、熱的なヘッドルームと同じレベルだけ吸収され得る。例えば、200℃の選択されるフィルム領域の後部が、100℃の差で300℃まで加熱される場合、光線の入射エネルギーの約10%が吸収される場合、前部は310℃までのみ過熱される。この場合、選択される領域は方向付けられた放射線の約23%まで吸収することができ、また結果として約330℃まで加熱し、前部において130℃の温度上昇、後部において100℃上昇してやはり所望の300℃に到達する。予備加熱の量は、選択された領域を超えた顕著な融解を生じる、冷却中の熱パルスの流出を防ぐために制御される必要があり得る。一般的に予備加熱が高いほど、フィルム厚さの残部が溶解に近付く。これらの選択されない部分は、熱パルスが広がるにつれて融解しやすくなる場合がある。方向付けられた放射線によって誘発される最大温度、その様々な層厚さによるフィルム構成の不均衡、フィルムを通じた予備加熱勾配及び方向付けられた放射線の経路は全て、フィルム及びプロセスを最適化するために一緒に考慮される必要があり得る。実際、材料をその融解領域まで加熱するためだけではなくまた融解を実際に生じさせるために十分なエネルギーが好ましくは吸収されるため、熱管理は更により複雑である。融解が実際に生じ得ること、望ましくない融解を防ぐため、例えば別のミクロ層パケットの複屈折性層を融解することなく一方のミクロ層パケットの複屈折性層を融解するため、厚さ又はz軸に沿って熱波が適切に含まれることを確実にするため、方向付けられた放射線のエネルギーパルスの管理は、時間的要因を含むべきである。特に、パルスの順序及び持続時間は慎重に制御される必要があり得る。
【0118】
レーザー源の出力、走査速度及び光線形状(レーザー源が選択的な過熱に使用される場合)及び染料の充填(又は実際に何らかの吸収剤が使用される場合は別の吸収剤の充填)が組み合わせられて、断熱条件下でフィルムの処理領域に透過される効果的なエネルギーを提供する。実際に熱的条件は一般的に断熱性ではないが、およそのレーザープロセス条件は、フィルム構成体の仕様、背景温度並びに適切な材料の様々な熱容量、融解熱及び融解点の情報での、断熱条件を想定した変換ために必要とされるエネルギーを決定することによって推定することができる。IR吸収剤又は他の吸収剤の分散は重要な考察事項であり得る(染料溶解限度及び溶解構造を含む)。非溶解の染料及び顔料、粒径及び形状分布が重要であり得る。例えば、過剰な大きさの吸収性粒子は、これらの周囲のフィルムマトリックスと比較して過熱する場合があり、分解、しわ、気泡、層剥離又は他の損傷などのフィルムの欠陥を生じる。表面及び埋め込まれた埃及び同様の粒子状物質がまた無作為的な又は予期しない欠陥を生じ得るため、フィルム透明性もまた重要であり得る。他の考察事項としては、レーザー源の光線形状及び周波数(パルス源が使用される場合)、走査パターン、フィルムの搭載(例えば接着剤での積層による又は他の手段によるカード又は他の基材への)及び熱伝導(例えば、フィルム内の様々な熱伝導率及びフィルムからの熱伝導係数によって制御される)が挙げられる。
【0119】
フィルム面にわたって吸収される放射エネルギーの管理はまた、所望の空間的特徴を確実にするために重要であり得る。光線の寸法及び収束もまた重要なプロセス制御法である。いくつかの場合において、光線がその最小寸法に収束する位置にフィルムを定置することが望ましい場合があるが、他の場合においては、光線が所望の程度焦点から外れる位置に意図的に定置され得る。フィルムを走査する方法及び領域の処理中に方向付けられた光線の経路がそれ自体にどれだけ早く重複する又は折り返し得るかは、表面粗さ、平滑度、ヘーズ、皺及び他の現象を変えることができる。上記のフィルム予備加熱に関し、光線は、現在照射されているフィルムの部分が最近照射されたフィルムの部分に近くなるような方法で制御され得、それによってレーザー自体によって提供される熱は、現在照射されているフィルムの部分を予備加熱するものと考えることができる。これは、例えば、光線が第1経路に沿って走査され、直後に(第1経路に沿って近接する部分が依然として高温である間に)第1経路に隣接するか又は更に若干重複している第2経路に沿って走査される場合に生じ得る。
【0120】
方向付けられた放射線の持続時間などの、時間に関する態様もまた重要であり得る。比較的短いパルス動作が多くの場合有利であることが見出された。例えば、いくつかの典型的な場合において、レーザー曝露の持続時間によって決定される加熱時間は、好ましくは10ナノ秒〜10ミリ秒の範囲であることが見出された。上方の曝露持続時間は、所与の用途において許容され得る、厚さを通じたフィルムの他の部分への熱拡散の程度の関数である。持続時間がより短いと、エネルギーの関心の所望のフィルム領域への供給はより小さく、例えば、ほとんどが所望のパケット内に含まれる瞬間的な熱パルスを形成することが可能であり得る。熱拡散の詳細は、材料、特定の材料配向条件における不均等な熱伝導性、密度、熱容量、関心の領域の厚さ、光線持続時間などの関数である。代表的な実施形態において、光学パケットによって吸収されるエネルギーは、光学パケットの光学反復単位を融解するために十分な密度及び持続時間であるが、フィルムの構成成分を蒸発させる、有意に化学的に修正する又は焼灼するには不十分な密度及び持続時間である。
【0121】
レーザー曝露が第2ゾーンにおけるパケット複屈折性を修正するために、高密度(高出力/単位面積)及び高エネルギー密度の両方が望ましいが必要ではない。これらの特性は、パケット内の材料による方向付けられた放射線の吸収により生じる熱の実質的な量が、処理に必要な時間を低減することによってパケット内に留まるのを確実にすることを助ける。熱拡散はパケット内におけるエネルギー濃度を低減し、それによってプロセスの効率を低減し得る。この点において、僅かな量の熱のみがパケットの外側、第1(非処理)ゾーン内へと横方向に又は(処理)第2ゾーン内でフィルムの他の層に放散することが多くの場合望ましい。第2ゾーンにおいてフィルムの厚さの一部のみを加熱することが望ましい場合において、第2ゾーン内の吸収性パケットの外側に放散する熱が多いほど、プロセスが非効率となる。
【0122】
冷却方法もまた、慎重に考慮される必要があり得る。いくつかの場合においては急冷が有用であり得る。フィルムの一方又は両方の側面からの冷却が望ましいことがある。
【0123】
方向付けられた放射線の適度に低いレベルの吸収がまた、最終用途において重要であり得る。環境曝露がフィルムを不当に加熱しないことが望ましい。特に、直射日光に曝露された際に近赤外線吸収が、フィルムの加熱を生じ得る。好ましくは、予測される光束がフィルムの温度を不当に上昇させない。例えば、通常使用においてフィルムのガラス転移温度未満のシステムの温度を維持することが望ましい場合がある。エネルギー吸収の量は、所与のレベルの予備加熱から必要な温度差を達成するために、パルスから捕捉されなくてはならないエネルギーの量に部分的に関連する。
【0124】
システムにおける望ましい吸収はしたがって光束レベルの調和、熱拡散(流出)、予備加熱及び冷却によって最適化され得、望ましい均一性及び処理程度を達成する一方で、色、灰色度又は環境放射線吸収などの最終用途の懸念を最小化する。
【0125】
フィルムの機能層若しくは機能領域の間にエネルギー吸収緩衝層又は領域を組み込むことが有用であり得る。これらの緩衝領域は、加熱されて更に部分的に又は全体的に融解し、一方でフィルムの別の機能領域を熱拡散(流出)による加熱から保護し得る。一実施例において、この緩衝領域は、光学層において使用されるものと同様又は異なる材料のパケットの間の層(例えば、PBL)であり得る。別の実施例において、より低い融解温度の材料が、より高い融解温度の材料の機能層の間で「熱減速バンプ」として使用され得る。多層光学フィルムにおいて、1つの単純な例は、いわゆる低融解PEN(LmPEN)(例えば、90%/10%ナフタレート/テレフタレートカルボキシレート副単位を含み得る)などのより低融解の配向されたcoPEN保護境界層(PBL)によって分離される、光学パケットを含むPEN:PMMA又はPEN:等方性coPENミラー構成体である。
【0126】
ポリマーフィルムにおける材料層の融点及び/又は軟化点(例えば、ガラス転移温度)が、示差走査熱量計(DSC)技術を使用して測定及び分析され得る。このような技術において、試験前に、例えば、200mTorr(26.7Pa)未満の真空下で、約48時間にわたり、60℃で最初に好適に乾燥され得る。約5mgのサンプルがその後計量され、気密密閉したアルミニウムTzeroパン内に密封され得る。加熱−冷却−加熱ランプ(ramp)がその後、好適な温度範囲(例えば、30〜290℃)にわたって行われ得る。20℃/分の一定の加熱速度又は他の好適な加熱速度がランプに使用され得る。走査後、第1加熱の熱トレースが、軟化工程の変化及び融解ピークについて分析され得る。分析は融解温度及び融解温度と関連する特徴的な帯域幅の両方を示すことがあり、帯域幅は半値幅(PWHH)と称される。PWHHの有限な値は、単一の正確な温度ではなく有限な範囲の温度にわたって融解し得るという事実を反映している。PWHHは、その異なる材料が互いに近い(ピーク)融解温度を有する物品にとって重要になり得る。DSC技術は、多層光学フィルムにおける使用に好適な3つの代表的な材料:ポリエチレンナフタレート(PEN);実施例7に記載のPENのナフタレート系コポリマー、米国特許出願公開第US2009/0273836号(Yustら)のいわゆるPEN−CHDM10(本明細書において「PEN−Gb」と称される);及び20%のジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート(NDC)が4,4’ビフェニルジカルボン酸ジメチルエステルと置換されたPEN系ポリマー(本明細書においてPENBB20と称される)の融解温度及びPWHHを測定するために使用された。これらの材料のサンプルが測定され、PEN,PEN−Gb及びPENBB20サンプルに関してそれぞれ261、248及び239℃の融点を呈した。サンプルのPWHHもまた測定された。PENサンプルのPWHHは7℃であるが、ポリマーのプロセス条件によってこれは5〜10℃の範囲であり得る。PEN−GpサンプルのPWHHは6℃であるが、プロセス条件によってこれは5〜15℃の範囲であり得る。PENBB20サンプルのPWHHは10.4℃であるが、プロセス条件によってこれは5〜15℃の範囲であり得る。一般的にポリマーフィルムのPWHHは、融点より低い好適な温度で好適な時間にわたってフィルム熱処理することによって低下させることができる。
【0127】
一般的に、方向付けられた放射線の任意の特定の波長帯域に関し、厚さ方向に沿ったフィルムの残部の吸収力が、これらの非選択部分の望ましくない過熱及び望ましくない変更を防ぐため、この放射線においてフィルムの選択部分に対して十分に低くなるように調整され得る。フィルム押出プロセスは、フィルムの選択部分の活性の吸収性材料の、フィルムのこの部分から別の機能的部分への移動が有意な程度で生じないことを確実にするように設計され得る。また、このような移動を阻害する緩衝層(例えば、化学的非親和性により)が使用され得る。層接触などのための滞留時間を含む処理方法もまた使用され得る。
【0128】
方向付けられた放射線処理は、シート化の後あるいはガラスプレート又はプラスチック若しくは紙のカードストックなどの別の基材に取り付けた後に、別個であるが依然としてロール形態の、フィルム製造の後又は更にその間に直接達成され得る。正確性のレベルは、プロセスの変動に対して調整されるべきである。例えば、ロールプロセスにおいて、ウェブの細動が十分に対処されるべきである。方向付けられた放射線処理は、おそらくはニップの間で、フィルムが張力下にある間にローラーを移動する際に達成され得る。ローラーを連続的に清浄化し、及び別の方法で擦り傷などの審美的欠陥を防ぐため、フィルムとローラーとの間に保護フィルムが定置され得る。別の実施例において、フィルムは、シート化後に固定した基材上に取り付けられるか又はセミバッチ方式で、一時的な裏材上に取り付けられるか若しくは固定され得る。例えば、フィルムロールの部分が、保護フィルムと連続的に接触してプレート上を摺動し得る。フィルムロールの運搬は停止することができ、プレート上の指定部分が所望により僅かに引っ張られる場合があり、その後方向付けられた放射線処理が、プレートによって支持される指定部分にわたって適用される。最終的なロール部分がその後、連続的な運搬によりプレート処理ゾーン外に移動されてもよく、これによってロールの連続的な部分が処理され、ロール全体が処理されるまで続き得る。
【0129】
本明細書において記載される内側パターン化方法はまた、例えば、焼灼、表面非晶質化技術、収束法、エンボス加工、熱成形などの既知の技術と組み合わされてもよい。
【0130】
様々な溶融押出可能な吸収性添加物が、様々な供給源から入手可能である。添加物は、有機、無機又は混成であり得る。これらは染料、顔料、ナノ粒子等であり得る。いくつかの潜在的なIR染料としては、Epolin,Inc.から商標名Epolight(商標)として入手可能なニッケル、パラジウム及びプラチナベースの染料のいずれかが挙げられる。他の好適な候補としては、ColorChem International Corp.(Atlanta,Georgia)から入手可能なAmaplast(商標)商標の染料が挙げられる。線形及び非線形吸収性添加物の両方が考慮され得る。
【0131】
いくつかの要因の組み合わせが、本出願に特に好適な染料を作り得る。押出プロセスを通じた熱安定性が特に望ましい。一般的に、押出プロセスは望ましくは、溶解させ、かつ好適な管理可能な圧力低下において溶解粒の運搬を可能にするために十分に熱い。例えば、ポリエステル系システムは、最高約280℃において非常に高い安定性を必要とする場合がある。これらの要件は、例えば、約250℃の処理により、coPENなどの様々なポリマーのコポリマーを使用して低減され得る。ポリプロピレン及びポリスチレンなどのオレフィン系は典型的にはより要求が少ない。特定の多層光学フィルム構成体における樹脂の選択は、潜在的な吸収性材料の候補の選択を狭める場合があり、染料の移動傾向、所望の材料層において均一に分散する能力、染料の様々な材料に対する化学的親和性なども同様である。
【実施例】
【0132】
キャストウェブ1、2及び3
用語「キャストウェブ」は、続く延伸及び配向の前、初期キャストプロセスの後の、キャスト及び形成された多層体を指す。第1多層ポリマーウェブ又はキャストウェブは、ナフタレート系コポリマーを使用して構成された。第1のこのようなコポリマーは、PEN−Gbと称され、第2のこのようなコポリマーはcoPEN 55/45 HDと称される。第1コポリマー、PEN−Gbは実施例7に記載される、米国特許出願公開第US 2009/0273836号(Yustら)の、いわゆるPEN−CHDM10である。PEN−Gbはしたがって、参照される米国特許出願の表1により、38.9lbs(17.6kg)のNDC(例えば、BP Amoco(Naperville,Illinois)から入手可能なジメチル2,6−ナフタレンジカルボン酸)と20.8lbs(9.4kg)のEG(例えば、ME Global,Midland,Michiganから入手可能なエチレングリコール)及び2.23lbs(0.01kg)のCHDM(例えば、Eastman Chemical(Kingsport,Tennessee)から入手可能なシクロヘキサンジメタノール)の比率の初期モノマー量で作製されコポリマーである。第2コポリマーcoPEN 55/45 HDは、米国特許第6,352,761号(Hebrinkら)の実施例10に記載されるように、55モル%ナフタレンジカルボキシレート、45モル%テレフタレートをカルボキシレートとして、並びに95.8モル%エチレングリコール、4モル%ヘキサンジオール及び0.2トリメチロールプロパンをグリコールとして含む、コポリエチレンナフタレートである。
【0133】
多層ポリマーウェブは、米国特許第6,830,713号(Hebrinkら)に一般的に記載される共押出プロセスを使用して形成された。様々なポリマーは例えば、85℃で60時間にわたりほぼ乾燥され、その後一軸押出又は二軸押出構成のいずれかの別個の押出成形機内に送達された。光学層を形成する第1及び第2ポリマーはそれぞれ最終押出成形機ゾーン温度を有するその独自の押出成形機で共押出され、フィルム厚さを通じて層厚さ勾配を提供する勾配供給プレートを使用する151交互層フィードブロックを含むメルトトレーンを通じて供給される。これらの層は、最終的な多層フィルムのいわゆる光学積み重ね体又はミクロ層パケットを形成する。層の流れの質を改善するため、2つのより厚いいわゆる保護境界層(PBL)が光学積み重ね体の最外層に隣接し、フィードブロックの壁部における最高剪断速度から光学積み重ね体を保護する。PBLもまた、押出成形機の1つによって供給される。これらの実施例の目的のため、PBLを供給する材料は材料1と称され、他方が材料2と称され、押出成形機についても同様である。各PBLは光学積み重ね体の厚さの約4%である。ダイ設定値温度にてダイ内で拡散する前に、材料3で押出成形機3によって供給される追加的なスキン層が、ダイ内で流れる間の追加的な層安定性のために、頂部及び底部で共押出多層流れに接合される。これらの記載される実施例において、材料3は、材料1又は2と同じであってもよい。(実施例に関連して使用される用語「材料1」、「材料2」及び「材料3」は本文献(例えば、図5A〜Gに関連して)で別に使用される用語「第1材料」及び「第2材料」に関連していずれかの所定の方法で解釈されるべきではなく、例えば、本実施例の「材料1」は図5A〜Gの「第1材料」に対応してもよく、あるいは本実施例の「材料2」がそのような「第1材料」に対応してもよい。)第1キャスト多層ウェブの場合において、材料1は第1コポリマー、いわゆるPEN−Gbであり、材料2は第2コポリマー、いわゆるcoPEN 55/45 HDであり、材料3はまたPEN−Gbであった。多層構成体がダイからキャストされ、急冷され、静電気的にキャストホイールに固定されて、第1キャスト多層光学ウェブのロールを形成した。この第1キャストウェブは、少なくとも10cmの幅を有する使い捨てコアの上に、中央部分の上に幅寸法において所望のおよその厚さ(又はキャリパー)で巻かれた。第1の構成体の他の詳細は、以下の表Aに提供される。
【0134】
【表1】

【0135】
キャストウェブ2及び3は、キャストウェブ1と同様の方法で作製されたが、ただし吸収剤が材料2の押出成形機供給に追加され、キャストホイール速度は、キャストウェブの全体厚さを調節するように調節された。吸収剤は続く書き込みプロセスにおいて放射エネルギーを補足するために使用されるIR染料であった。IR染料は、いわゆる「マスターバッチ」の材料2に混合され、このマスターバッチはその後未加工材料2に対する規定の割合で、押出成形機供給流れに組み込まれた。キャストウェブ2及び3において、規定の割合は1:13(1部マスターバッチ:13部未加工材料)。キャストウェブ1と丁度同じように、キャストウェブ2及び3において、材料1はいわゆるPEN−Gであり、材料2はいわゆるcoPEN 55/45 HDであり、材料3もまたPEN−Gであった。
【0136】
樹脂の最小の劣化を確実にするために必要に応じて追加的な真空を適用し又は適用せずに、二軸押出成形機内に規定の重量比で染料及びポリマー樹脂を供給することにより、多層押出成形の前にマスターバッチが作製された。押出品はその後、供給のためにペレットに細断された。これらの実施例のキャストウェブ2及び3において使用される染料は、プラチナ系染料、Epolin,Inc.,Newark,NJから入手可能なEpolite(商標)4121であった。この染料におけるピーク吸収波長は約800nmである。Epolite(商標)4121染料と混合されるマスターバッチにおいて、公称最終ゾーン押出成形温度は240℃〜260℃であった。典型的なマスターバッチ公称染料濃度はポリマーにおいて1.0重量%染料であった。
【0137】
キャストウェブ2及び3における押出成形及びプロセスの詳細は以下の表Bに提供される。キャストウェブ2とキャストウェブ3との間の厚さの差が、キャストホイールの速度を単に変えることによって達成されたことに留意する。
【0138】
【表2】

【0139】
表面屈折率(キャストウェブの外側におけるPEN Gbの)が、Metriconのプリズム結合器を使用して測定された。屈折率は、キャスト(MD)、幅(TD)及び厚さ方向においてそれぞれ1.638、1.639及び1.634の値を有し、本質的に等方性であった。coPEN 55/45 HD層の屈折率は、全ての方向において公称1.610であった。キャストウェブ1、2及び3の透過特性がまた、Perkin−Elmer Lambda 950分光光度計を使用して測定された。結果が図9に提供され、波長に対して%透過率がプロットされ、曲線910はキャストウェブ1のものであり、曲線912はキャストウェブ2のものであり、曲線914はキャストウェブ3のものである。キャストウェブ2及び3における吸収剤によって提供される赤外線吸収は約800nmにおいて容易に明らかであり、キャストウェブ2の吸収は、キャストウェブ2がキャストウェブ3よりも厚いために、キャストウェブ3よりも強い。IR染料は、約530nmで二次吸収率ピークを有し、これはキャストウェブ2及び3にバラ色の色相を提供する。
【0140】
キャストウェブ1、2及び3を使用して作製される複屈折性多層フィルム
多層キャストウェブはその後、複屈折性ミクロ層を含む多層光学フィルムを形成するように延伸又は伸張された。KARO IV(Brueknerから入手可能)などの実験用伸張機が本実施例に使用された。キャストウェブが一般的に予備加熱され(予備加熱時間及び温度で)、その後初期歪み速度(%歪み速度により提供される)に対応する把持部の均一な分離速度で公称延伸比率まで(最初の把持部の分離と最後の把持部の分離の比率)まで、2つの垂直な面内方向(「x」方向及び「y」方向と称される)で伸張された。規定の持続時間(ヒートセット時間)にわたり高温(ヒートセット温度)で延伸した後、フィルムのいくつかがその後ヒートセットされた。キャストウェブ1、2及び3を伸張するために使用されたプロセス条件が選択され、その結果、生じる多層光学フィルム(以下で多層光学フィルム1、2、3、4、5、6及び7と称される)において、PEN Gbミクロ層は正の複屈折性であり、coPEN 55/45 HDミクロ層は、約1.610の屈折率で実質的に等方性に留まった。
【0141】
多層フィルム1及び2は、キャストウェブ1からこの方法で、以下の条件で作製された。
【0142】
【表3】

【0143】
放射エネルギープロセスの前及び/又は後に、様々な物理的及び光学的方法を使用して最終フィルムが分析され得る。スキン層(配向されたPEN Gb材料から構成される)の外側の屈折率は、示される場合、Metricon(Piscataway,New Jersey)から入手可能なプリズム結合器を使用して、632.8nmで測定された。要約すると、これらの値は、1.69〜1.75の範囲のnx及びny、1.50〜1.52の範囲のnz(以下に記載される多層光学フィルム3〜6の全てに関して)、nx=1.723、ny=1.733、nz=1.507(以下に記載される多層光学フィルム6に関して)かつnx=1.841、ny=1.602、nz=1.518(以下に記載される多層光学フィルム7に関して)と測定された。
【0144】
様々なキャストウェブ及び最終フィルムの透過率帯域特性が、Perkin−Elmer Lambda 950分光光度計で測定された。透過光及び/又は反射光の知覚を導く条件下において、色特性がまた視覚的に観察された。
【0145】
図10は実施例1のフィルム1の典型的なスペクトルを例示し、曲線1010及び1012が、フィルムにおける異なる位置で取られた。両方の曲線は、フィルム1において非常に典型的である。曲線の間の差は、押出成形、フィルムキャスト及び延伸の間のダウンウェブ及びクロスウェブにおける流れの変動による、厚さの変動加えて層外形の変動の結果であり得る。約85%の基準透過率に対する50%の半最小値における左帯域端及び右帯域端によって画定される、反射帯域の主要部分は一般的に560nm〜670nmに存在する。100%からの基準透過率の低下は、構成体の2つの主要表面(前及び後)からの表面反射の結果である。
【0146】
キャストウェブ2及び3はその後また、延伸又は伸張され、複屈折性ミクロ層を含む他の多層光学フィルムを形成する。フィルム3〜7と称される、生じる多層光学フィルム及びこれらのプロセス条件が表Dに記載される。
【0147】
【表4】

【0148】
内部パターン化を有する多層フィルム
偏光子/ミラーフィルム1
未加工の一体型偏光子/ミラー多層光学フィルムが、フィルム7(これは透過軸及び垂直な遮蔽軸を有する狭帯域反射性偏光フィルムであった)と2片のフィルム1(これは狭帯域ミラーフィルムであった)を組み合わせて作製され、フィルム7がフィルム1の断片の間に狭持された複合多層光学フィルムを生成し、次に上記の吸収加熱技術を使用してゾーン内でフィルム7の内側層を選択的に加熱し、フィルム7の反射性偏光特性を、処理ゾーン内のミラーのより典型的な反射特性に変える。ミラー様フィルム1の断片の追加は、パターン化偏光子/ミラーフィルムを実証するために必要ではなかったが、下記のように視覚的に関心の色の組み合わせを提供するために含まれた。
【0149】
特に、3つのフィルム積層積み重ね体の形態の複合多層光学フィルムが、フィルム1の断片をフィルム7の断片へと連続的に手で積層し、その後フィルム7の露出した側をフィルム1の別の断片に積層することによって形成され、ここで各積層体は3M Company(St.Paul,Minnesota)から入手可能な3M(商標)8141 Optically Clear Adhesiveを使用した。生じた複合フィルムは非偏光において緑色に見えた。フィルムを透過する光を強調するライトボックス上でフィルムを観察することが特に有利であった。
【0150】
別個の偏光子、すなわち分析器(反射性又は吸収性型)を、フィルムを視覚的に又はスペクトル的に分析するために使用することができた。広帯域分析器が得られ、ライトボックス上に位置する複合フィルムが分析器を通じて観察された。分析器が、その遮蔽軸がフィルム7の透過軸と位置合わせされる(かつ分析器の透過軸がフィルム7の遮蔽軸と位置合わせされる)ように配置された際、複合フィルムを透過した光は分析器が無い場合よりも深い緑色に見えた。分析器が、その遮蔽軸がフィルム7の遮蔽軸と位置合わせされる(かつ分析器の透過軸がフィルム7の透過軸と位置合わせされる)ように配置された際、偏光フィルム7の色に対する寄与は本質的に排除され、複合フィルムはシアン色を呈した。
【0151】
複合フィルムはその後、250mWの平均レーザー出力で、20mm/秒の走査速度において、Coherent Micra超高速発振器レーザー(波長=800nm、パルス速度=70MHz)で選択された部分又はゾーンにおいて処理された。この方法において、フィルム7の内側層の複屈折性は、処理ゾーンにおいて部分的に排除されて、偏光子/ミラーフィルム1と称されるパターン化複合フィルムを生成した。複合フィルムはしたがって、フィルムを見るためにいずれの偏光子も使用せずに、処理ゾーン内においてよりシアンの外観を呈した。その後、広帯域分析器が再び使用されて、フィルムを視覚的及びスペクトル的に分析した。分析器の遮蔽軸が偏光フィルム7の透過軸と位置合わせされた際、処理ゾーンにおける複合フィルムがシアンのままであった一方で背景の非処理ゾーンは、既に観察されたより深い緑色の外観を有した。分析器の遮蔽軸が偏光フィルム7の遮蔽軸と位置合わせされた際、フィルム7の色に対する寄与が再び本質的に排除され、処理及び非処理ゾーンの両方が、同じ基本的なシアン色を呈した。これらの観察条件下において、処理ゾーンの色は、非処理背景ゾーンの色へと調和した。
【0152】
視覚的外観の変化は、複合フィルムの処理及び非処理部分の透過スペクトルにおける、これに伴う変化を有する。図11は、フィルム7の遮蔽軸と平行な偏光に関する、偏光子/ミラーフィルム1を通じ、測定された垂直角スペクトル透過率を示す(すなわち、分光光度計は、その透過軸がフィルム7の遮蔽軸と位置合わせされた広帯域分析器を使用した)。レーザー処理前の偏光子/ミラーフィルム1において曲線1110が得られ(したがってまた、レーザー処理後の偏光子/ミラーフィルム1の非処理ゾーンの典型である)、曲線1112は、偏光子/ミラーフィルム1の処理ゾーンにおいて得られた。図12は、フィルム7の透過軸と平行な偏光に関する、偏光子/ミラーフィルム1を通じ、測定された垂直角スペクトル透過率を示す(すなわち、分光光度計は、その透過軸がフィルム7の透過軸と位置合わせされた広帯域分析器を使用した)。曲線1210はレーザー処理の前に偏光子/ミラーフィルム1において得られ(したがってまた、レーザー処理後の偏光子/ミラーフィルム1の非処理ゾーンの典型である)、曲線1212は偏光子/ミラーフィルム1の処理ゾーンにおいて得られた。図11及び図12において、約550〜725に配置される反射帯域は、主に複合フィルムのフィルム1の2つの断片により、約400〜550nmに配置される反射帯域(これは図11において、図12におけるよりも強い)は、主に複合フィルムのフィルム7の単一の断片によることに留意する。図の検討は、フィルム7の偏光強度、すなわち、400〜550nmのスペクトル帯域における遮蔽状態における最大透過率と透過状態における最大透過率の差又は400〜550nmのスペクトル帯域における遮蔽状態における最大反射率と透過状態における最大反射率との差は、処理ゾーンにおいて低減し、非処理ゾーンよりも、処理ゾーンの透過状態は多く反射し、処理ゾーンの遮蔽状態は少なく反射したことを示す。当業者は、処理条件の更なる最適化が、処理ゾーンにおけるより調和したミラー特性を提供するために容易に実行され得ることを理解する。当業者はまた、偏光子/ミラーフィルム1と同様の一体型の偏光子/ミラー多層光学フィルムが作製され得るが、フィルム1の外側断片は省略されることを理解する。
【0153】
追加的な実施形態(予測)
多層光学フィルム8及び偏光子/ミラーフィルム2
別の一体型偏光子/ミラー多層光学フィルムは、多層光学フィルム7と同様の多層光学フィルムを使用して、偏光子/ミラーフィルム1と同様の方法で作製され得る。新しい多層光学フィルムは、本明細書において多層光学フィルム8と称され(又は単純にフィルム8)、選択的熱処理によるパターン化の後、フィルムは偏光子/ミラーフィルム2と称される。
【0154】
新しいフィルムが、上記のキャストウェブ1〜3と同様にキャストウェブから作製され得るが、ただし新しいキャストウェブは、材料1及び3にPENを、材料2にPET BBを使用することができる。PET BBとは、カルボキシレートサブユニット置換を含むPETのコポリエステルを指す。すなわち、ジメチルテレフタレート(DMT)のいくらかが、4,4’ビフェニルジカルボキシル酸ジメチルエステルである。好適な置換比率を決定する際に、当業者は、BB含有量の増加が、ポリマーのガラス転移温度の増加(これは、第1処理工程ウィンドーをより狭くし得る)、屈折率の増加及び溶解点の低下をもたらす効果を考慮すべく所望する場合がある。PET BBのマスターバッチ及び吸収剤、例えば、Epolite(商標)4121又はAmaplast(商標)IR 1050などのIR染料が材料流れ2に送達され得る。PEN及びPET BB材料は、好適なフィードブロックを使用して共押出されて、好適な数の交互の層を有するキャストポリマーウェブを形成し得る。それぞれPEN及びPET BB高分子材料によって構成されるキャストウェブの第1及び第2層は、図5Dに示される菱形の記号と同様の、異なる等方性屈折率を有する。
【0155】
このキャストウェブはその後、実質的に図5Dと関連して先に記載されたように処理され得る。使用される2工程延伸プロセスに関連し、米国特許第6,179,948号(Merrillら)の実施例1〜3において説明される条件が特に関心である。延伸プロセスは、多層光学フィルム8を生成し、これは図5Dの白丸の形状の記号と同様の屈折率を呈し、したがってx軸と平行な遮蔽軸、y軸と平行な透過状態を有し、かつ、残留不整合Δnyにより透過状態の偏光の実質的な反射率を有する反射性偏光子フィルムを提供し得る。部分偏光子フィルム8はその後、偏光子/ミラーフィルム1を製作するために使用されるものなどの技術を使用して又は本明細書において記載される他の任意の好適な技術によって、その1つ以上の第2ゾーンにおいて選択的に加熱されて1組の高分子材料層中の複屈折性を実質的に緩和し、一方で他の組の層(図5D参照)における複屈折性を維持する。このような熱処理は、フィルムの第2(処理)ゾーンにおいて高い反射性多層ミラーを提供する。生じるパターン化フィルムは、一体型偏光子/ミラーフィルムであり、本明細書において偏光子/ミラーフィルム2と称される。
【0156】
本出願の教示は、以下の譲受人共通の出願のいずれか又は全ての教示と組み合わせて使用され得、これらは本明細書において参照として組み込まれる:2008年12月22日に出願の米国特許仮出願番号第61/139,736号第「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」、2009年5月6日に出願された、同第61/157,996「Multilayer Optical Films Having Side−by−Side Mirror/Polarizer Zones」及び2009年5月6日に出願された同第61/158,006号「Multilayer Optical Films Suitable for Bi−Level Internal Patterning」。
【0157】
本出願の教示は同日付けで出願された以下の譲受人共通の出願のいずれか又は全ての教示と組み合わせて使用され得、これらは本明細書において参照として組み込まれる:国際出願番号第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第64847WO003号)「Internally Patterned Multilayer Optical Films Using Spatially Selective Birefringence Reduction」、同第PCT/US2009/XXXXXX(代理人整理番号第65038WO003号)「Multilayer Optical Films Suitable for Bi−Level Internal Patterning」、同第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号65848WO002号)「Internally Patterned Multilayer Optical Films With Multiple Birefringent Layers」及び同第PCT/US2009/XXXXXX号(代理人整理番号第65849WO002号)「Multilayer Optical Films Having Side−by−Side Polarizer/Polarizer Zones」。
【0158】
特記しない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」で使用されている量、性質の測定などを表現する全ての数は、用語「約」により改変されていると理解されるべきである。したがって、反することが示されない限り、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」に記載の数値的パラメーターは、本発明の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の性質に応じて変化する近似値である。均等論を「特許請求の範囲」の範疇に適用することを制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメーターは少なくとも、記録された有効数字の桁数を考慮して、又通常の四捨五入を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似であるにもかかわらず、いかなる数値も本明細書で述べられる具体的な例で示される程度に、これらは妥当に可能な限り精確に報告される。しかしながら、いかなる数値も試験及び測定の限界に関連する誤差を含み得る。
【0159】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明の様々な改変及び変形が当業者には明らかであり、本発明が本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されるものではないことは理解されるはずである。本明細書で触れた全ての米国特許、米国特許出願公開、並びに他の特許及び非特許文献を、これらが上記の開示と矛盾しない限りにおいて本明細書に援用するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強め合う又は弱め合う干渉によって光を選択的に反射するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムであって、前記層は前記フィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延び、
前記第1ゾーンにおいて、前記複数の層が、1つの偏光状態の垂直入射光が実質的に反射され、垂直な偏光状態の垂直入射光が実質的に透過する第1反射特性を提供し、
前記第2ゾーンにおいて、前記複数の層が、任意の偏光状態の垂直入射光が実質的に反射される第2反射特性を提供する、多層光学フィルム。
【請求項2】
前記フィルムは前記第1ゾーンにおいて第1厚さ及び前記第2ゾーンにおいて第2厚さを有し、前記第1厚さは、前記第2厚さと実質的に同じである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムは前記第1ゾーンにおいて第1厚さ及び前記第2ゾーンにいて第2厚さを有し、前記第1反射特性と前記第2反射特性との間の差は、前記第1厚さと前記第2厚さとの間のいかなる差にも実質的に起因しない、請求項1のフィルム。
【請求項4】
前記複数の内側層が光学反復単位に配置されるミクロ層の少なくとも1つの積み重ね体を含み、各光学反復単位は、前記第1ゾーンにおいて複屈折性であり、前記第2ゾーンにおいてより低い複屈折性又は等方性である第1ミクロ層を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記第1反射特性の前記実質的な反射が、第1スペクトル帯域に限定される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第2反射特性の前記実質的な反射が、第2スペクトル帯域に限定される、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記第1スペクトル帯域及び前記第2スペクトル帯域が実質的に同じである、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記第1反射特性が、前記1つの偏光状態の第1波長の垂直入射光を少なくとも70%反射するようなものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記第1反射特性が、前記1つの偏光状態の前記第1波長の垂直入射光を少なくとも80%反射するようなものである、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記第1反射特性が、前記1つの偏光状態の前記第1波長の垂直入射光を少なくとも90%反射するようなものである、請求項8に記載のフィルム。
【請求項11】
前記第1反射特性が、前記垂直な偏光状態の第1波長の垂直入射光を30%以下反射するようなものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
前記第1反射特性が、前記垂直な偏光状態の前記第1波長の垂直入射光を20%以下反射するようなものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記第2反射特性が、任意の偏光状態の第1波長の垂直入射光を少なくとも50%反射するようなものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
前記第2反射特性が、任意の偏光状態の前記第1波長の垂直入射光を少なくとも70%反射するようなものである、請求項13に記載のフィルム。
【請求項15】
前記第2反射特性が、任意の偏光状態の第1波長の垂直入射光を少なくとも80%反射するようなものである、請求項13に記載のフィルム。
【請求項16】
強め合う又は弱め合う干渉によって光を選択的に反射するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムであって、前記層は前記フィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延び、
前記第1ゾーンにおいて、前記複数の層が反射性偏光子を含み、前記第2ゾーンにおいて前記複数の層がミラーを含む、多層光学フィルム。
【請求項17】
パターン化多層光学フィルムの作製方法であって、
光の強め合う又は弱め合う干渉と関連し、1つの偏光の垂直入射光における高い反射率及び垂直な偏光の垂直入射光における低い反射率によって特徴付けられる、第1反射特性を提供するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムを提供する工程であって、前記内側層は前記フィルムの第1ゾーンから第2ゾーンまで延び、前記第1及び第2ゾーンはそれぞれ前記第1反射特性を呈する、工程と、
前記第2ゾーンが、やはり光の強め合う又は弱め合う干渉と関連するが、任意の偏光の垂直入射光における高い反射率によって特徴付けられる、第2反射特性を呈するのに十分な量で、前記第2ゾーンにおいてフィルムを選択的に加熱する工程と、を含む、方法。
【請求項18】
前記選択的に加熱する工程が、前記第2ゾーンへの圧力の実質的な適用をなくして実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記選択的に加熱する工程が、前記第1ゾーンに対する、前記第2ゾーンにおける前記フィルムの厚さの実質的な低減が生じないように実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1反射特性が前記1つの偏光の、第1波長の垂直入射光において第1反射率を有し、前記垂直な偏光の、前記第1波長の垂直入射光において第2反射率を有し、前記第2反射特性が、前記1つの偏光の、前記第1波長の垂直入射光において第3反射率を有し、前記垂直な偏光の、前記第1波長の垂直入射光において第4反射率を有し、前記第3反射率は前記第1反射率よりも低く、前記第4反射率は前記第3反射率よりも高い、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
パターン化多層光学フィルムの作製方法であって、
前記フィルムの第1ゾーン及び第2ゾーンにおける反射性偏光子を提供するように配置された複数の内側層を含む多層光学フィルムを提供する工程であって、前記内側層が前記第1ゾーンから前記第2ゾーンまで延びる、工程と、
前記複数の内側層が前記第2ゾーンにおけるミラーを提供する一方で、前記複数の内側層が前記第1ゾーンにおける前記反射性偏光子を提供するために十分な量で前記第2ゾーンにおいて前記フィルムを選択的に加熱する工程と、を含む、作製方法。
【請求項22】
強め合う又は弱め合う干渉によって光を選択的に反射するように配置されて第1反射特性を提供する複数の内側層を含む多層光学フィルムであって、
前記複数の内側層が第1材料から構成される第1組の層及び前記第1材料とは異なる第2材料から構成される第2組の層を含み、前記第1組の層及び第2組の層の少なくとも一方が複屈折性であり、
前記フィルムは、前記複数の内側層の構造的一体性を維持する一方で、前記内側層の少なくともいくらかの複屈折性を変更するため、十分に、好適な光線で照射された前記フィルムに反応して、前記内側層を加熱するように調整された吸収特性を有し、このような複屈折性の変化は、前記第1反射特性を異なる第2反射特性に変えるのに十分であり、
前記第1反射特性が実質的に偏光子特性であり、前記第2反射特性が実質的にミラー特性であるか又は前記第1反射特性が実質的にミラー特性であり、前記第2反射特性が実質的に偏光子特性である、多層光学フィルム。
【請求項23】
前記第1材料が、第1ポリマー及び吸収染料又は顔料を含む、請求項22に記載のフィルム。
【請求項24】
前記吸収染料又は顔料が700nmを超える波長の光を優先的に吸収する、請求項23に記載のフィルム。
【請求項25】
前記第1反射特性が実質的に偏光子特性であり、前記第2反射特性が実質的にミラー特性である、請求項22に記載のフィルム。
【請求項26】
第1面内屈折率不整合Δnx、第2面内不整合Δny及び面外屈折率不整合Δnzを有する交互の第1層及び第2層を含む多層光学フィルムであって、前記Δnx及びΔnyは同様の規模であるが反対の符合であり、前記Δnzはゼロではなく、前記Δnx及びΔnyの一方のみと同じ極性を有する、多層光学フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図5G】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2012−513623(P2012−513623A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543624(P2011−543624)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069120
【国際公開番号】WO2010/075340
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】