説明

並設トンネル構造およびその構築方法

【課題】工期の短縮と工費の低減が図れる並設トンネル構造及びその構築方法を提供する。
【解決手段】隣接して並行配設されるトンネルを構築するにあたり、先進坑4を掘削してその内周に沿って支保工10を設置した後に、該先進坑4に設けた支保工10の内側に、未掘削の後進坑6の支保工14の脚部14aをその上端部を該先進坑4の支保工脚部10aの上端部に結合させて先行設置し、該後進坑6の支保工脚部14aと先進坑4の支保工脚部10aとの間には補強部材16を設けてセンターピラー18を形成する。爾後、該センターピラー形成部位の側方に後進坑6を並行掘削し、該センターピラー18を構成する後進坑4の支保工脚部14aに連続させて、後進坑6の内周に沿って支保工14を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、隣接して並行配設されるトンネルの側部同士がセンターピラーを介して結合されている並設トンネル構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂地山において、並行する2本の本坑トンネルを隣接させて構築する場合には、両本坑トンネル間部に地山の上載荷重が集中するため、当該上載荷重に対処する必要がある。これ故、従来にあっては、両本坑トンネル間の中央部に位置させて、予め中央先進導坑を掘削し、この中央先進導坑内に両本坑トンネルの共有支持構造体としてセンターピラーを形成するようにしている。そして、当該センターピラーの形成後に、中央先進導坑に沿わせてその一方側に先進本坑を掘削してその内周に支保工を設置し、当該支保工の中央先進導坑側の端部はセンターピラーに一体的に結合させてあずけ、爾後、中央先進導坑に沿わせてその他方側に後進本坑を掘削し、同様にして当該後進本坑の支保工をセンターピラーに一体的に結合させてあずけるようにしている(下記の特許文献等を参照)。
【特許文献1】特開2002−322898号公報
【特許文献2】特開2005−344318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構築方法にあっては、並行設置するトンネルの本坑掘削に先だって、両トンネル間の中央部に小断面の中央先進導坑を予め先行掘削し、その狭い空間の内部にて両トンネルの支保工を支持する共有のセンターピラーを予め形成しておくようにしたものであるため、中央先進導坑の掘削形成に時間と工費を費やされるばかりか、狭い空間内でセンターピラーを形成する作業も面倒なものであって、このセンターピラーの形成にも時間と工費を要することになり、もって工期が長期化するとともに、工費が非常に嵩んでしまうとい課題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、本坑の掘削に先だって中央先進導坑を掘削することなく、大断面の先進坑の内部にてその並設トンネル間の中央部側に位置した側部に共有のセンターピラーを予め形成して、後進坑の掘削をすることができ、もって工期の短縮化と工費の低減化とを可及的に図ることができる並設トンネル構造およびその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明に係る並設トンネル構造にあっては、隣接して並行に配設されるトンネルの側部同士がセンターピラーを介して結合される並設トンネル構造において、 一方のトンネルの支保工と他方のトンネルの支保工とが互いに脚部の上方部で交差し、該交差部から下方に延びる両支保工の脚部間には補強部材が設けられて前記センターピラーが形成されることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記補強部材は打ち込みコンクリートとなし得る。
【0007】
また、前記センターピラー近傍の地山を、ロックボルトや薬液注入等によって補強して改良地盤とする構成ともなし得る。
【0008】
また、上記の目的を達成するために本発明に係る並設トンネルの構築方法にあっては、先行掘削した先進坑の側方に隣接させて後進坑を並行掘削し、該先進坑と後進坑との側部同士をセンターピラーを介して結合して構築する並設トンネルの構築方法において、先進坑を先行掘削して形成する先進坑掘削工程と、該先進坑の内周に沿って設置される支保工を、該先進坑の長手方向に所定間隔で設置する支保工設置工程と、該先進坑に設けた支保工の内側に、未掘削の後進坑の支保工の脚部をその上端部を該先進坑の支保工脚部に結合させて先行設置する後進坑の支保工脚部設置工程と、該先行設置した後進坑の支保工脚部と先進坑の支保工脚部との間に補強部材を設けてセンターピラーを形成するセンターピラー形成工程と、該センターピラー形成部位の側方に後進坑を並行掘削する後進坑掘削工程と、該先進坑に予め設置されて該センターピラーを構成する該後進坑の支保工脚部に連続させて、該後進坑の内周に沿って支保工を設置する後進坑の支保工設置工程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記補強部材には打ち込みコンクリートを採用し得る。
【0010】
また、前記後進坑掘削工程を施工する前に、前記センターピラー近傍の地山にロックボルトや薬液注入等による地山補強処理を施して地盤改良する地盤改良工程を行う構成ともなし得る。
【発明の効果】
【0011】
上記のようにしてなる本発明の並設トンネル構造及びその構築方法によれば、先進坑と後進坑とを並設して掘削するにあたって、それらの中央部間に小断面の中央先進導坑を先がけて掘削して、その狭い空間内にセンターピラーを先行設置するという作業工程を行うことなく、大断面に掘削した先進坑の広い空間内でその側部にセンターピラーを先行設置することができ、センターピラーの形成を容易に行うことが出来る。このため、工期の短縮化と工費の削減化とを可及的に図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る並設トンネル構造およびその構築方法の好適な一実施の形態について、本線道路の上下線をなす2つのトンネルを土砂地山に隣接させて並行に設ける場合を例にして、図1〜図9の添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は並設トンネルの構築途中状態を概略的に示す概略平断面図である。また、図2(I)〜(V)及び図3(VI)〜(IX)はそれぞれ図1中においてI−I線乃至IX−IX線にて示す部位の矢視断面図であり、施工工程順に示してある。
【0014】
図1に示すように、並設トンネル2は本線道路の上下線をそれぞれ画成する2つのトンネルが隣接されて並行に設けられてなる。当該並設トンネル2を構築するにあたっては、一方のトンネルを先進坑4として先行掘削し、この先進坑4に対して所定の工程遅れを持たせて追従させながら他方のトンネルを後進坑6として後行掘削していく。
【0015】
先ず、最初の工程として先進坑掘削工程とこれに続く支保工設置工程とが順次に行われる。先進坑掘削工程では、所定のトンネル設置計画ラインに沿って掘削機械等を用いて切り羽5を掘削・ズリ出しして先進坑4を形成していく。そして、掘削した先進坑4の内周には、逐次にコンクリートを1次吹き付けして土砂の崩落の防止を図る。爾後、当該1次吹き付け層の内側に沿わせてH型鋼による支保工10を逐次に建て込んで設置していく。この支保工10は先進坑4の長手方向に所定の間隔を空けて設けられる。当該支保工10の設置後には、支保工10,10間を埋めるようにしてコンクリートの2次吹き付けが行われて、この2次吹き付け層により吹き付けコンクリート層の強度向上が図られる。
【0016】
ここで、図2の(I)及び(II)に示すように、当該先進坑4の掘削から2次吹き付け迄の工程は、先進坑4の上半部4aと下半部4bとに区分けされて2段階で行われるようになっている。図4〜図9は、その1段階目に行われる先進坑4の上半部4aの掘削から2次吹き付け迄と、その後のロックボルトの打設工程との1段階目における各施工工程をより詳しく説明したものである。なお、これら図4〜図9の各図において(a)は横断面、(b)は平断面、(C)は側断面を示している。即ち、図4の前進掘削開始前状態と図5の掘削・ズリ出し工程との図に示すように、先進坑4はその上半分4aが先に掘削される。そして、上半部4aが所定形状に掘削されると、図6の1次吹き付け工程に示すように、その内周面にコンクリートが1次吹き付けされて1次吹き付け層8aが形成される。
【0017】
当該1次吹き付け層8aが形成されると、次ぎに図7に示すように、内周面に沿ってH型鋼製の支保工10の建て込みが行われる。そして、支保工10が建て込まれると、図8に示すように、既に先行して建て込まれている支保工10との間にコンクリートの2次吹き付けが行われて2次コンクリート層8bが形成され、もって吹き付けコンクリート層8の強度向上が図られる。
【0018】
爾後、図9に示すように、支保工10,10間のコンクリート層8を貫通して多数のロックボルト12が地山中に放射状に打設される。ここで、ロックボルト12は後進坑6と干渉しないようにその掘削予定領域を避けて配設することになるが、地山の上載荷重が集中する先進坑4と後進坑6との間の中央部近傍の地山部分を重点的に補強するのが効果的である。また、地山の状況によっては薬液注入を行って先進坑4と後進坑6との間の中央部近傍の地山部分を地盤改良する。そして、上記の各施工工程を経て先進坑4の上半部4aの掘削形成が終了したならば、同様に下半部4bの掘削形成を、掘削・ズリだし施工工程、1次吹き付け施工工程、支保工建て込み施工工程、2次吹き付け施工工程を経て行う。
【0019】
以上のようにして、先進坑4の掘削形成が終了したならば、次ぎに図1及び図2(III)に示すように、まだ未掘削の後進坑6の支保工14の脚部14aを、上記先進坑4に設けた支保工10の後進坑設置側の内側に位置させて、後進坑6の掘削に先がけて設置する支保工脚部設置工程が行われる。この支保工脚部14aは先進坑4の支保工脚部10aと対称形をなしていて、その上端側が湾曲している。この後進坑6の支保工脚部14aを先行配設するにあたり、当該支保工脚部14aはその下端部が先進坑4の支保工脚部10aの下端部に対して所定距離を離間され、湾曲した上端側の端部が先進坑4の支保工脚部10aの上端部に結合されて一体的に設置される。この結合部は先進坑4の下半部4bよりもやや上方に位置している。
【0020】
そして、支保工脚部14aの設置が終わるとセンターピラー形成工程が行われる。このセンターピラー形成工程では、上記先行設置した後進坑6の支保工脚部14aと先進坑4の支保工脚部10aとの間に、これら両支保工脚部10a,14aと一体化させて補強部材16を設けてセンターピラー18を形成する。本実施の形態では、当該補強部材16としては打ち込みコンクリートが採用されており、この打ち込みコンクリートは下半部4bの高さ位置まで打ち込まれている。
【0021】
次ぎに、図2(IV)に示すように、先進坑4の底面にコンクリートを打設して先進坑インバート20を施工し、先進坑4に床部を形成する。先進坑インバート20は支保工10の両脚部10a,10b及び支保工14の脚部14aと一体化させて施工する。これにより、支保工10と先進坑インバート20とは環状に一体的に繋がって閉断面部となり、耐荷重能力が向上する。
【0022】
そして、上記先進坑インバート20のコンクリートが強度発現した時点で、図2(V)と図3(VI)とに示すように、その強度発現した部位の側方部分の地山を並行掘削して後進坑6の掘削工程及び支保工設置工程とを行う。この後進坑6の掘削工程と支保工設置工程にあっても、先進坑4の場合と同様に、上半部6aと下半部6bとが2段階で施工され、各段階毎に掘削・ズリ出し、1次吹き付け、支保工建て込み、2次吹き付けの各施工工程が順次に行われる。ここで、1次吹き付け施工後の後進坑6の支保工設置工程では、先進坑4内に予め設置されてセンターピラー18を構成する後進坑の支保工脚部14aに連続させて後進坑6の内周に沿って支保工14を建て込んで設置し、並設トンネル2の中央部側の一端部は支保工脚部10a,14aの結合部に結合させて一体化させる。
【0023】
次に、図3(VII)に示すように、後進坑6の底面にコンクリートを打設して後進坑インバート22を施工し、後進坑6の床部を形成する。後進坑インバート22は支保工14の両脚部14a,14b及び支保工10の脚部10aと一体化させて施工する。これにより、先進坑4の場合と同様に、支保工14と後進坑インバート22とは環状に一体的に繋がって閉断面部となり、耐荷重能力が向上する。爾後、図3(IIX)に示すように、先進坑4の支保工10と吹きつけコンクリート層8とを覆って先進坑覆工24を、先進坑インバート20に連続させて一体的に打設形成し、引き続いて図3(IX)に示すように、後進坑6の支保工14と吹きつけコンクリート層8とを覆って後進坑覆工26を、後進坑インバート22に連続させて一体的に打設形成する。
【0024】
従って、隣接して並行配設されるトンネルの側部同士がセンターピラー18を介して結合される並設トンネル2を、以上の様にして構築することにより、 一方のトンネルの支保工10と他方のトンネルの支保工14とが互いに脚部10a,14aの上方部で交差し、当該交差部から下方に延びる両支保工10,14の脚部10a,14a間には補強部材16が設けられてセンターピラー18が形成されている構造の並設トンネル2を、その工期を可及的に短縮化させて、かつ工費を可及的に低減させて得ることができるようになる。
【0025】
なお、図示した実施の形態例では、並行する2本の本坑トンネルを隣接させて構築する場合を例示しているが、本発明はこれに限らず、3本以上の本抗トンネルを並行に隣接させて構築する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る並設トンネルの構築途中状態を概略的に示す概略平断面図である。
【図2】同図(I)〜(V)はそれぞれ図1中においてI−I線乃至V−V線にて示す各部位の矢視断面図である。
【図3】同図(VI)〜(IX)はそれぞれ図1中においてVI−VI線乃至IX−IX線にて示す各部位の矢視断面図である。。
【図4】先進坑の前進掘削前の状態を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図5】先進坑上半部の掘削・ズリ出し工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図6】先進坑上半部の1次吹き付け工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図7】先進坑上半部の鋼製支保工建て込み工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図8】先進坑上半部の2次吹き付け工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図9】先進坑上半部のロックボルト打設工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
2 並設トンネル
4 先進坑
4a 上半部
4b 下半部
6 後進坑
6a 上半部
6b 下半部
8 吹き付けコンクリート層
8a 1次吹き付け層
8b 2次吹き付け層
10 先進坑の支保工
10a 支保工脚部(中央部側)
12 ロックボルト
14 後進坑の支保工
14a 支保工脚部(中央部側)
16 補強部材
18 センターピラー
20 先進坑インバート
22 後進坑インバート
24 先進坑覆工
26 後進坑覆工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して並行配設されるトンネルの側部同士がセンターピラーを介して結合される並設トンネル構造であって、
一方のトンネルの支保工と他方のトンネルの支保工とが互いに脚部の上方部で交差し、該交差部から下方に延びる両支保工の脚部間には補強部材が設けられて前記センターピラーが形成されていることを特徴とする並設トンネル構造。
【請求項2】
前記補強部材が打ち込みコンクリートでなることを特徴とする請求項1に記載の並設トンネル構造。
【請求項3】
前記センターピラー近傍の地山が、ロックボルトや薬液注入等によって補強された改良地盤とされていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の並設トンネル構造。
【請求項4】
先行掘削した先進坑の側方に隣接させて後進坑を並行掘削し、該先進坑と後進坑との側部同士をセンターピラーを介して結合して構築する並設トンネルの構築方法であって、
先進坑を先行掘削して形成する先進坑掘削工程と、
該先進坑の内周に沿って設置される支保工を、該先進坑の長手方向に所定間隔で設置する支保工設置工程と、
該先進坑に設けた支保工の内側に、未掘削の後進坑の支保工の脚部をその上端部を該先進坑の支保工脚部に結合させて先行設置する後進坑の支保工脚部設置工程と、
該先行設置した後進坑の支保工脚部と先進坑の支保工脚部との間に補強部材を設けてセンターピラーを形成するセンターピラー形成工程と、
該センターピラー形成部位の側方に後進坑を並行掘削する後進坑掘削工程と、
該先進坑に予め設置されて該センターピラーを構成する該後進坑の支保工脚部に連続させて、該後進坑の内周に沿って支保工を設置する後進坑の支保工設置工程と、
を備えていることを特徴とする並設トンネルの構築方法。
【請求項5】
前記補強部材が打ち込みコンクリートであることを特徴とする請求項4に記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項6】
前記後進坑掘削工程を施工する前に、前記センターピラー近傍の地山にロックボルトや薬液注入等による地山補強処理を施して地盤改良する地盤改良工程を行うことを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の並設トンネルの構築方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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