説明

並設トンネル構造およびその構築方法

【課題】工期の短縮化と工費の低減化とを可及的に図れる並設トンネル構造及びその構築方法を提供する。
【解決手段】トンネル本坑をなす先進坑4と後進坑6との側部同士が隣接されて並設される並設トンネル2において、先進坑4と後進坑6とに配設するそれぞれの支保工10,10の互いに隣接する側の脚部102,102を、トンネル幅方向に分裂する分裂脚102a,102bとする。当該分裂脚102a,102bの分裂基部101a,101bは本坑上半部4a,6aの下端部に配し、該分裂基部101a,101bより下方の本坑下半部4b,6bには、並設された該分裂脚102a,102bにこれらを結合して補強する補強部材16を設けてセンターピラー18として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、隣接して並行配設されるトンネルの側部同士がセンターピラーを介して結合されている並設トンネル構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
並行する2本のトンネル本坑を隣接させて構築する場合には、両トンネル本坑間に地山の上載荷重が集中するため、当該上載荷重に対処する必要がある。これ故、従来にあっては、両トンネル本坑間の中央部に位置させて、予め中央先進導坑を掘削し、この中央先進導坑内に両トンネル本坑の共有支持構造体としてセンターピラーを形成するようにしている。そして、当該センターピラーの形成後に、中央先進導坑に沿わせてその一方側に先進本坑を掘削してその内周に支保工を設置し、当該支保工の中央先進導坑側の端部はセンターピラーに一体的に結合させてあずけ、爾後、中央先進導坑に沿わせてその他方側に後進本坑を掘削し、同様にして当該後進本坑の支保工をセンターピラーに一体的に結合させてあずけるようにしている(下記の特許文献等を参照)。
【特許文献1】特開2002−322898号公報
【特許文献2】特開2005−344318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構築方法にあっては、並行設置するトンネル本坑の掘削に先だって、両トンネル本坑間の中央部に小断面の中央先進導坑を予め先行掘削し、その狭い空間の内部にて両トンネル本坑の支保工を支持する共有のセンターピラーを予め形成しておくようにしたものであるため、中央先進導坑の掘削形成に時間と工費とを費やされてしまう。また、そればかりか、当該中央先進導坑の狭い空間内でセンターピラーを形成する作業は甚だ面倒なものであって、このセンターピラーの形成にも時間と工費とを要することになり、もって工期が長期化するとともに、工費が非常に嵩んでしまうとい課題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トンネル本坑の掘削に先だって中央先進導坑を掘削することなく、大断面の先進坑及び後進坑の広い空間内部にてそれらトンネル本坑間の中央部側に位置した側壁部にそれぞれセンターピラーを形成して、両トンネル本坑間に集中する地山の上載荷重を支持することができ、もって工期の短縮化と工費の低減化とを可及的に図ることができる並設トンネル構造およびその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る並設トンネル構造にあっては、トンネル本坑の側部同士が隣接されて並設される並設トンネル構造において、両トンネル本坑に配設するそれぞれの支保工の互いに隣接する側の脚部をトンネルの幅方向に分裂する分裂脚とし、該分裂基部はトンネル本坑上半部の下端部に位置させ、該分裂基部より下方のトンネル本坑下半部には、該分裂基部に一体的に結合された複数の分裂脚間にこれらを結合して補強する補強部材が設けられてセンターピラーが形成されていることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記補強部材は吹き付けコンクリートとなし得る。あるいは、前記補強部材は前記分裂脚間を繋ぐ鋼材となし得る。さらに、前記補強部材は前記分裂脚部の下端部間を繋いで本坑のインバートと一体に形成される床版となし得る。また、前記補強部材として、前記吹きつけコンクリートと前記鋼材及び前記床版とのいずれか2つ以上を適宜に組み合わせるようにしても良い。
【0007】
また、前記センターピラー近傍の地山は、鋼棒や薬液注入等によって補強した改良地盤となしても良い。ここで、当該改良地盤は、前記センターピラーの下方部の地山に形成し、該改良地盤には、並設されたトンネル本抗の双方からトンネル幅方向と軸方向との2方向に指向して斜めに延び、相互に三次元的に絡み合って網状体をなす多数の補強ボルト等の鋼棒が設けられている構成となし得る。あるいは、前記改良地盤は、前記センターピラーの上方部の地山に形成し、該改良地盤には、並設されたトンネル本抗におけるそれぞれの上半部の支保工同士を繋いで締結固定する複数のタイロッド等の鋼棒が上下に並行に設けられている構成となし得る。
【0008】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る並設トンネルの構築方法にあっては、先行掘削した先進坑の側方に後進坑を隣接させて並行に後行掘削し、該先進坑と後進坑との隣接する側壁同士にセンターピラーを形成してトンネル本坑を並設構築して行く並設トンネルの構築方法において、該先進坑と該後進坑とのトンネル本坑の内周に沿って支保工を設置するに際して、該先進坑と該後進坑とが隣接する側の各支保工脚部をトンネルの幅方向に分裂させて複数の分裂脚を形成し、爾後、該分裂脚間にこれらを結合して補強する結合部材を設けてセンターピラーを形成することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記補強部材としては、前記分裂脚間に吹き付けコンクリートを充填して施工する構成となし得る。あるいは、前記補強部材としては、前記分裂脚間を繋いで鋼材を設置する構成となし得る。さらに、前記補強部材としては、前記分裂脚部の下端部間を繋いで本坑のインバートと一体に床版を形成する構成となし得る。また、前記補強部材としては、前記分裂脚間への吹きつけコンクリートの施工と、前記分裂脚間を繋ぐ鋼材の設置と、前記分裂脚部の下端部間を繋いで本坑のインバートに一体形成する床版の設置とのいずれか2つ以上を適宜に組み合わせるようにしても良い。
【0010】
また、前記後進坑の掘削をする前に、前記センターピラー近傍の地山に鋼棒や薬液注入等による地山補強処理を施して地盤改良を行うようにしても良い。ここで、前記改良地盤は前記センターピラーの下方部の地山に形成し、該改良地盤は、並設された先進坑と後進抗との双方から、トンネル幅方向と軸方向との2方向に斜めに指向させて多数の補強ボルト等の鋼棒を打設して、該多数の補強ボルトを相互に三次元的に絡み合わせて網状体に配して形成する構成となし得る。あるいは、前記改良地盤は前記センターピラーの上方部の地山に形成し、該改良地盤は、並設された先進坑と後進抗とのそれぞれの上半部の支保工同士を繋いで締結固定する複数のタイロッド等の鋼棒を上下に並行に打設して形成する構成となし得る。
【発明の効果】
【0011】
上記のようにしてなる本発明の並設トンネル構造及びその構築方法によれば、先進坑と後進坑とを並設して掘削するにあたって、それらの中央部間に小断面の中央先進導坑を先がけて掘削して、その狭い空間内にセンターピラーを先行設置するという作業工程を行うことなく、大断面に掘削した先進坑及び後進坑の広い空間内でその隣接する側の側壁部にそれぞれセンターピラーを設置して、両トンネル本坑間に集中する地山の上載荷重を支持することができるとともに、当該センターピラーの形成を容易に行うことが出来る。このため、工期の短縮化と工費の削減化とを可及的に図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る並設トンネル構造およびその構築方法の好適な一実施の形態について、本線道路の上下線をなす2つのトンネルを土砂地山に隣接させて並行に設ける場合を例にして、図1〜図9の添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は並設トンネルの構築途中状態を概略的に示す概略平断面図である。また、図2(I)〜(V)及び図3(VI)〜(IIX)はそれぞれ図1中においてI−I線乃至IIX−IIX線にて示す部位の矢視断面図であり、施工工程順に示してある。
【0014】
図1に示すように、並設トンネル2は本線道路の上下線をそれぞれ画成する2つのトンネル本坑が隣接されて並行に設けられてなる。当該並設トンネル2を構築するにあたっては、一方のトンネル本坑を先進坑4として先行掘削し、この先進坑4に対して所定の工程遅れを持たせて追従させながら他方のトンネル本坑を後進坑6として後行掘削していく。
【0015】
先ず、最初の工程として先進坑掘削工程とこれに続く支保工設置工程とが順次に行われる。先進坑掘削工程では、所定のトンネル設置計画ラインに沿って掘削機械等を用いて切り羽5を掘削・ズリ出しして先進坑4を形成していく。そして、掘削した先進坑4の内周には、逐次にコンクリートを1次吹き付けして土砂の崩落の防止を図る。爾後、当該1次吹き付け層の内側に沿わせてH形鋼による支保工10を逐次建て込んで設置していく。この支保工10は先進坑4の長手方向に所定の間隔を空けて設けられる。当該支保工10の設置後には、支保工10,10間を埋めるようにしてコンクリートの2次吹き付けが行われて、この2次吹き付け層により吹き付けコンクリート層の強度向上が図られる。
【0016】
ここで、図2の(I)及び(II)に示すように、当該先進坑4の掘削から2次吹き付け迄の施工工程は、先進坑4の上半部4aと下半部4bとに区分けされて2段階で行われるようになっている。図4〜図9は、その1段階目に行われる先進坑4の上半部4aの掘削から2次吹き付け迄と、その後のロックボルトの打設工程との各施工工程をより詳しく説明したものである。なお、これら図4〜図9の各図において(a)は横断面、(b)は平断面、(C)は側断面を示している。即ち、図4の前進掘削開始前状態と図5の掘削・ズリ出し工程との図に示すように、先進坑4はその上半部4aが先に掘削される。そして、上半部4aが所定形状に掘削されると、図6の1次吹き付け工程に示すように、その内周面にコンクリートが1次吹き付けされて1次吹き付け層8aが形成される。
【0017】
当該1次吹き付け層8aが形成されると、次ぎに図7に示すように、内周面に沿ってH型鋼製の支保工10の建て込みが行われる。ここで、当該先進坑4の上半部4aの支保工10の両側下端部には、図2及び図10に示してあるように、この後に掘削される下半部4bの両側部に建て込まれる支保工脚部102を結合させるためのブラケット101が設けられている。即ち、このブラケット101は先進坑4の下半部4bよりもやや上方に位置されることになる。
【0018】
そして、先進坑4の上半部4aに支保工10が建て込まれると、図8に示すように、既に先行して建て込まれている支保工10との間にコンクリートの2次吹き付けが行われて2次コンクリート層8bが形成され、もって吹き付けコンクリート層8の強度向上が図られる。爾後、必要に応じて図9に示すように、支保工10,10間のコンクリート層8を貫通して多数のロックボルト12等の鋼棒が地山中に放射状に打設されて地盤の補強が行われる。ここで、ロックボルト12は後進坑6と干渉しないようにその掘削予定領域を避けて配設することになるが、地山の上載荷重が集中する先進坑4と後進坑6との間の中央部近傍の地山部分を重点的に地盤補強するのが効果的である。この様にして先進坑4と後進坑6との間の中央部近傍の地山部分を改良地盤13となして固化させておくことで、上記地山の上載荷重の集中を軽減し得る。なお、当該地盤改良は必須のものではない。
【0019】
そして、上記の各施工工程を経て先進坑4の上半部4aの掘削形成が終了したならば、引き続いて下半部4bの掘削形成を行う。この下半部4bの掘削形成も上半部4aと同様に、掘削・ズリだし施工工程、1次吹き付け施工工程、支保工建て込み施工工程、2次吹き付け施工工程を経て行う。
【0020】
ところで、上記先進坑4の上半部4aに建て込まれた支保工10の下端部に設けられるブラケット101はトンネル本坑の幅方向に複数に分岐された形状とされている。即ち、本図示例の実施の形態では、上記ブラケット101は、先進坑4の下方の内外に2本の分裂脚102a,102bを支保工脚部102として結合可能とすべく2股状に分岐形成されて分裂基部101a,101bとして構成されている。そして、先進坑4の下半部4bの支保工建て込み設置工程では、2つのトンネル本坑同士が隣接することになる並設トンネル2の中央部側に配される支保工脚部102を建て込むに際して、ブラケット101の2股状に分岐された外側の分裂基部101bには下方に向けて垂直に延びる外側分裂脚102bが一体的に結合されるとともに、内側の分裂基部101aにはやや内方に向けて湾曲する内側分裂脚102aが一体的に結合される。一方、並設トンネル2全体としての外側に位置する支保工脚部102を建て込む際には、2股状のブラケット101の内側の分裂基部101a側に対して湾曲した内側分裂脚102aのみが単独で建て込まれて結合される。
【0021】
そして、支保工脚部102の設置が終わるとセンターピラー形成工程が行われる。即ち、このセンターピラーの形成工程では、並設トンネル2中央部側に設置された内側分裂脚102aと外側分裂脚102bとの間にこれらを結合して補強する補強部材16が一体的に設けられてセンターピラー18が形成される。ここで本実施の形態では、当該補強部材16としては、内側分裂脚102aと外側分裂脚102bとの下端部同士を繋ぐ鋼材161、及び内側分裂脚102aと外側分裂脚102bとの間に吹き付け充填される吹き付けコンクリート162の双方が採用されている。
【0022】
センターピラー18の形成が終了したならば、次ぎに、図1及び図2(III)に示すように、先進坑4の底面にコンクリートを打設して先進坑インバート20を施工し、先進坑4に床部を形成する。この先進坑インバート20は支保工10の両側に設けられた内側分裂脚102aの下端部に連続させて一体化して施工する。これにより、支保工脚部102を含んで支保工10と先進坑インバート20とが環状に一体的に繋がって閉断面部となり、耐荷重能力が向上する。
【0023】
そして、上記先進坑インバート20のコンクリートが強度発現した時点で、図1及び図2(IV),(V)に示すように、その強度発現した部位の側方部分の地山を並行掘削して後進坑6の掘削工程及び支保工設置工程とを行う。この後進坑6の掘削工程と支保工設置工程にあっても、先進坑4の場合と同様に、上半部6aと下半部6bとが2段階で施工され、各段階毎に掘削・ズリ出し、1次吹き付け、支保工建て込み、2次吹き付けの各施工工程が順次同様の手順で行われる。
【0024】
次に、図3(VI)に示すように、後進坑6の底面にコンクリートを打設して後進坑インバート22を施工し、後進坑6の床部を形成する。この後進坑インバート22も先進坑インバートと全く同様に施工される。これにより、先進坑4の場合と同様に、支保工脚部102を含む支保工10と後進坑インバート22とが環状に一体的に繋がって閉断面部となり、耐荷重能力が向上する。爾後、図3(VII)に示すように、先進坑4の支保工10と吹きつけコンクリート層8とを覆って先進坑覆工24を、先進坑インバート20に連続させて一体的に打設形成し、引き続いて図3(IIX)に示すように、後進坑6の支保工10と吹きつけコンクリート層8とを覆って後進坑覆工26を、後進坑インバート22に連続させて一体的に打設形成する。
【0025】
従って、並行配設されるトンネル本坑の側壁部同士が隣接する並設トンネル2を、以上の様にして構築すると、先進坑4と後進坑6とを並設して掘削するにあたって、それらの中央部間に小断面の中央先進導坑を先がけて掘削して、その狭い空間内にセンターピラーを先行設置するという作業工程を全く行うことなく、大断面に掘削した先進坑4及び後進坑6の広い空間内でその隣接する側の側壁部にそれぞれセンターピラー18,18を設置して、両トンネル本坑間に集中する地山の上載荷重を支持することができるようになるとともに、当該センターピラー18の形成を容易に行うことが出来るようになる。このため、並設トンネル2の構築工期を可及的に短縮化できるばかりか、工費の可及的な低減化を図れるようになる。
【0026】
図11は前記センターピラー18を構成する分裂脚102a,102bの補強部材16として、当該分裂脚102a,102bの下端部間を繋いでトンネル本坑のインバート20,22と一体に床版163を設置した例を示すものである。この場合、当該床版163はインバート20,22の施工と同時に行う。そして、内側分裂脚102aと外側分裂脚102bとは共に下方に延長してその延長端同士を鋼材161で結合するとともに、床版163内に埋め込むようにする。また、内側分裂脚102aはその下端部側の湾曲を大きくしてインバート20,22の外形状に沿わせるようにするのが好ましい。この様な床版163を補強部材16として設けることにより、センターピラー18の強度を一段と高めることができるばかりか、センターピラー18にかかる荷重をインバート20,22にスムーズに伝達することで、当該センターピラー18の下方部の地山への荷重集中を低減することができる。また、補強部材16としては、前記分裂脚102a,102b間への吹きつけコンクリート162の充填施工と、前記分裂脚102a,102b間を繋ぐ鋼材161の設置と、前記分裂脚102a,102bの下端部間を繋いで本坑のインバート20,22に一体形成する床版163の設置とのいずれか2つ以上を適宜に組み合わせるようにしても良い。
【0027】
図12は並設トンネル2の中央部間に形成されたセンターピラー18下方部の地山に地盤補強処理を施して改良地盤13となした例を示すものである。図示するように、この改良地盤13は補強ボルト12A等の鋼棒が多数打設されて形成されている。当該補強ボルト12Aは並設された先進坑4側と後進坑6側との双方から打設されている。ここで、先進坑4と後進抗6とから打設される各補強ボルト12Aは、それぞれ斜め下方に指向されるとともに、トンネル軸方向にも斜めに指向されて配され、トンネル幅方向と軸方向との2方向において相互にクロスされて設けられている。つまり、これにより多数の補強ボルト12Aは相互に三次元的にクロスして絡み合う網状体に形成され、当該網状体により地盤補強を行う。
【0028】
即ち、この改良地盤13には、並設されたトンネル本抗である先進坑4と後進抗6との双方から、それぞれトンネル幅方向と軸方向との2方向に指向して斜めに延びて相互に三次元的に絡み合って網状体をなす多数の補強ボルト12A等の鋼棒が設けられている。また、必要に応じ、当該補強ボルト12Aには中空な管体製のものを用い、これを利用して更に地山中に薬液を注入して地盤改良を行う様にしても良い。
【0029】
図13は図2(IV)に示す後進坑6の上半部6aの掘削形成工程の終了段階にて、当該後進坑6と先進坑4との間の中央部分上方に位置したセンターピーラー18近傍の地山に地盤補強を施した例を示すものである。この地盤補強は、並設された先進坑4と後進坑6とのそれぞれの上半部4a,6aの支保工10,10同士を繋ぐように複数のタイロッド12B等の鋼棒を上下に並行に打設して締結固定することで、改良地盤13を形成している。
【0030】
即ち、この改良地盤13には、並設されたトンネル本抗である先進坑4と後進抗6とにおけるそれぞれの上半部の支保工同士を繋いで締結固定する複数のタイロッド等の鋼棒が上下に並行に設けられている。また、この場合にあっても、必要に応じて当該タイロッド12Bには中空な管体製のものを用い、これを利用して更に地山中に薬液を注入して地盤改良を行う様にしても良い。
【0031】
この様に、センターピラー18の上方部や下方部等の近傍の地山を補強して地盤改良し、その地耐力を高めることで、地山の上載荷重のセンターピラー18部への集中やセンターピラー18部下方の地盤沈下を抑制し得る。
【0032】
なお、図示した実施の形態例では、並行する2本のトンネル本坑を隣接させて構築する場合を例示しているが、本発明はこれに限らず、3本以上のトンネル本抗を並行に隣接させて構築する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る並設トンネルの構築途中状態を概略的に示す概略平断面図である。
【図2】同図(I)〜(V)はそれぞれ図1中においてI−I線乃至V−V線にて示す各部位の矢視断面図である。
【図3】同図(VI)〜(IIX)はそれぞれ図1中においてVI−VI線乃至IIX−IIX線にて示す各部位の矢視断面図である。
【図4】先進坑の前進掘削前の状態を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図5】先進坑上半部の掘削・ズリ出し工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図6】先進坑上半部の1次吹き付け工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図7】先進坑上半部の鋼製支保工建て込み工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図8】先進坑上半部の2次吹き付け工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図9】先進坑上半部のロックボルト打設工程を示すもので、(a)は横断面図、(b)は平断面図、(C)は側断面図である。
【図10】図3(VI)中に示すA部の拡大図である。
【図11】図10に相応する部位の拡大図で、補強部材として床版を設けた場合の変形例を示す図である。
【図12】図10に相応する部位の拡大図で、センターピラー下方部位の地山に地盤改良を施した場合の変形例を示す図である。
【図13】先進坑と後進坑との間の中央部分上方の地山に地盤改良を施した場合の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
2 並設トンネル
4 先進坑
4a 上半部
4b 下半部
6 後進坑
6a 上半部
6b 下半部
8 吹き付けコンクリート層
8a 1次吹き付け層
8b 2次吹き付け層
10 支保工
101 ブラケット
101a 内側の分裂基部
101b 外側の分裂基部
102 支保工脚部
102a 内側の分裂脚
102b 外側の分裂脚
12 ロックボルト
16 補強部材
161 鋼材
162 吹き付けコンクリート
163 床版
18 センターピラー
20 先進坑インバート
22 後進坑インバート
24 先進坑覆工
26 後進坑覆工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル本坑の側部同士が隣接されて並設される並設トンネル構造であって、
両トンネル本坑に配設するそれぞれの支保工の互いに隣接する側の脚部を、トンネルの幅方向に分裂する分裂脚とし、
該分裂基部はトンネル本坑上半部の下端部に位置させ、該分裂基部より下方のトンネル本坑下半部には、該分裂基部に一体的に結合された複数の分裂脚間にこれらを結合して補強する補強部材が設けられてセンターピラーが形成されていることを特徴とする並設トンネル構造。
【請求項2】
前記補強部材が吹き付けコンクリートであることを特徴とする請求項1に記載の並設トンネル構造。
【請求項3】
前記補強部材が前記分裂脚間を繋ぐ鋼材であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の並設トンネル構造。
【請求項4】
前記補強部材が前記分裂脚部の下端部間を繋いで本坑のインバートと一体に形成される床版であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の並設トンネル構造。
【請求項5】
前記センターピラー近傍の地山が、鋼棒や薬液注入等によって補強された改良地盤とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の並設トンネル構造。
【請求項6】
前記改良地盤が前記センターピラーの下方部の地山に形成され、該改良地盤には、並設されたトンネル本抗の双方からトンネル幅方向と軸方向との2方向に指向して斜めに延び、相互に三次元的に絡み合って網状体をなす多数の補強ボルト等の鋼棒が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の並設トンネル構造。
【請求項7】
前記改良地盤が前記センターピラーの上方部の地山に形成され、該改良地盤には、並設されたトンネル本抗におけるそれぞれの上半部の支保工同士を繋いで締結固定する複数のタイロッド等の鋼棒が上下に並行に設けられていることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の並設トンネル構造。
【請求項8】
先行掘削した先進坑の側方に後進坑を隣接させて並行に後行掘削し、該先進坑と後進坑との隣接する側部同士にそれぞれセンターピラーを形成してトンネル本坑を並設構築して行く並設トンネルの構築方法であって、
該先進坑と該後進坑とのトンネル本坑の内周に沿って支保工を設置するに際して、該先進坑と該後進坑とが隣接する側の各支保工脚部をトンネルの幅方向に分裂させて複数の分裂脚を形成し、
爾後、該分裂脚間にこれらを結合して補強する結合部材を設けてセンターピラーを形成することを特徴とする並設トンネルの構築方法。
【請求項9】
前記補強部材として、前記分裂脚間に吹き付けコンクリートを充填して施工することを特徴とする請求項8に記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項10】
前記補強部材として、前記分裂脚間を繋いで鋼材を設置することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項11】
前記補強部材として、前記分裂脚部の下端部間を繋いで本坑のインバートと一体に床版を設置することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項12】
前記後進坑の掘削をする前に、前記センターピラー近傍の地山に鋼棒や薬液注入等による地山補強処理を施して地盤改良を行うことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項13】
前記改良地盤を前記センターピラーの下方部の地山に形成し、該改良地盤は、並設された先進坑と後進抗との双方から、トンネル幅方向と軸方向との2方向に斜めに指向させて多数の補強ボルト等の鋼棒を打設して、該多数の補強ボルトを相互に三次元的に絡み合わせて網状体に配して形成することを特徴とする請求項12に記載の並設トンネルの構築方法。
【請求項14】
前記改良地盤を前記センターピラーの上方部の地山に形成し、該改良地盤は、並設された先進坑と後進抗とのそれぞれの上半部の支保工同士を繋いで締結固定する複数のタイロッド等の鋼棒を上下に並行に打設して形成することを特徴とする請求項12または13のいずれかに記載の並設トンネルの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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