説明

中・高粘度用撹拌翼

【課題】槽内の液体への伝熱が良好であると共に、該液体の撹拌が十分行われて液温の均一化が図れ、構造が簡単で洗浄性が良好な撹拌翼を提供する。
【解決手段】下方に向うに従って幅広に形成されている内側の主撹拌翼部2と槽5の内周面の近傍を回転移動する外側辺3aを有する外側の強制流動発生翼部3とこれら主撹拌翼部2と強制流動発生翼部3とを下方部において連設する連設部4とからなり、これら主撹拌翼部2と強制流動発生翼部3と連設部4とを板状体により一体に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業、化学工業等において中・高粘度の難流動性液体の伝熱混合に好適な中・高粘度用撹拌翼に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の撹拌翼として図4に示す如きアンカー翼aや図5に示す如きヘリカルリボン翼bが知られている。尚、これら図中cは槽、dは回転軸、eは該槽cの外壁に設けられている加熱手段を示す(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】佐竹化学機械工業株式会社編「撹拌技術」、佐竹化学機械工業株式会社発行、1992年12月18日、P13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記アンカー翼aによれば、該アンカー翼aが槽cの内周面の近傍を回転するので、該内周面の近傍で液体が強制的に流動させられ、加熱手段eから槽c内への液体への伝熱が良好に行われるが、該槽c内での液体の撹拌及び上下循環流が不十分で該液体の温度ムラが生ずる問題点があり、又前記ヘリカルリボン翼bによれば、槽c内の液体の撹拌は十分行われるが、部分的な混合不良に伴う熱混合不良部の発生及び構造が複雑で作業後の洗浄が行いにくい問題点があった。
【0005】
本発明は、これらの問題点を解消し、槽内の液体への伝熱が良好であると共に該液体の撹拌が十分行われて液温の均一化が図れ、構造が簡単で洗浄性が良好な撹拌翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の目的を達成すべく、下方に向うに従って幅広に形成されている内側の主撹拌翼部と槽の内周面の近傍を回転移動する外側辺を有する外側の強制流動発生翼部とこれら主撹拌翼部と強制流動発生翼部とを下方部において連設する連設部とからなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、槽内へ液体が中・高粘度の難流動性の液体であっても該液体への伝熱が良好であると共に撹拌が十分行われて該液体が均一の温度になり、更に撹拌翼自体が垂直平面の簡単な構造で洗浄性が良好となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の撹拌翼の実施例1の正面図である。
【図2】本発明の撹拌翼による撹拌の場合の加熱時間と槽内代表温度の関係を示すグラフである。
【図3】従来のアンカー翼による撹拌の場合の加熱時間と槽内代表温度の関係を示すグラフである。
【図4】従来の撹拌翼でアンカー翼の例の正面図である。
【図5】従来の撹拌翼でヘリカルリボン翼の例の正面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0010】
本発明の撹拌翼の実施例1を図1により説明する。
【0011】
図1は撹拌翼の実施例1の正面図である。
【0012】
1は撹拌翼を示し、該撹拌翼1は、内側の主撹拌翼部2と外側の強制流動発生翼部3とこれら主撹拌翼部2と強制流動発生翼部3とを下方部で連設する連設部4とを板状体により一体に形成されている。
【0013】
前記主撹拌翼部2は、内側辺2aが垂直で外側辺2bが上端から下方に向うに従って斜外方に傾斜して順次幅広の三角形状に形成され、又前記強制流動発生翼部3は外側辺3aが垂直で下方に向って幅広となる傾斜する内側辺3bを有する鋭い頂角の三角形状に形成され、更に前記連設部と主撹拌翼部2と強制流動発生翼部3の下辺即ち撹拌翼1の下辺1aが後述する槽5の内底面に沿って湾曲状に形成されている。
【0014】
5は槽を示し、該槽5は有底の円形筒状に形成され、且つ底面は下方に突出する湾曲状に形成され、該槽5の中心部に回転軸6が垂下して設けられ、該回転軸6の下端部に1対の前記撹拌翼1をボス7を介して固定し、該撹拌翼1の前記強制流動発生翼部3の外側辺3aを前記槽5の内周面に対して近傍に位置させると共に、前記撹拌翼1の下辺1aを該槽5の内底面に対して近傍に位置させている。
【0015】
8は該槽5の周面から底面にわたって外方に設けた伝熱ジャケット等からなる加熱手段を示す。
【0016】
次に本実施例の撹拌翼1の作用とその効果について説明する。
【0017】
槽5内に中・高粘度の難流動性の液体を所定の上方のレベルまで満たしてからモータ(図示せず)により回転軸6を回転駆動すると、該回転軸6と共に撹拌翼1が回転する。
【0018】
該撹拌翼1の回転において、槽5内の液体の上方部においては、主撹拌翼部2はその幅が狭くしかも回転軸6の近傍に存するのみであるので、該主撹拌翼部2による液体の回転力が小さくて負圧が小であるのに対して、槽5内の液体の下方部においては、主撹拌翼部2の幅が大となって回転軸6から離れた個所でも主撹拌翼部2により液体に回転力が大きく作用して負圧が大となり、かくて液体は、該液体の負圧差により下方に向う強力な流動を生ずると共に回転力が付与され、その後液体は連設部4においても回転力を付与されて槽5内の底面に沿って外方に流動してから該槽5の内周面に沿って上方に流動して循環流Aとなる。
【0019】
このとき、撹拌翼1の下辺及び強制流動発生翼部3の外側辺3aは槽5の内底面及び内周面の近傍を回転移動するので強制的に強い流動が発生し、かくて加熱手段8から液体への熱の伝達が良好に行われ、前述の循環流Aによって液体が全体にわたって均一に昇温する。
【0020】
ここで前記撹拌翼1は主撹拌翼部2と強制流動発生翼部3と連設部4とが板状体により一体に形成されているので、該撹拌翼1は構造が簡単で、洗浄が行い易い。
【0021】
尚、本実施例では、強制流動発生翼部3の内側辺3bが傾斜する例を示したが、該内側辺3bを外側辺3aと同様に垂直に形成してもよい。又、撹拌翼1を2枚以上使用することが好ましい。
【0022】
次に、槽の内周の上部と下部に熱電対を設置し、、槽内で本発明の撹拌翼により撹拌した場合の加熱時間の経過に応じた槽内の温度変化の実験結果を図2に示す一方、従来のアンカー翼により撹拌した場合の加熱時間の経過に応じた槽内の温度変化の実験結果を図3に示す。
【0023】
これらの実験結果より、アンカー翼の撹拌と比べて本発明の撹拌翼の場合は、加熱時間の早い段階から槽上部温度Tと槽下部温度Tとが一致して、槽内の温度のバラツキが小さく一様となり、熱混合性能に優れていることが実証された。
【0024】
いずれの場合も撹拌レイノルズ数は約20である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の撹拌翼は、食品工業や化学工業等において、中・高粘度の難流動性の液体であっても撹拌を良好に行いながら均一の昇温や冷却を達成できる。
【符号の説明】
【0026】
1 撹拌翼
2 主撹拌翼部
2b 外側辺
3 強制流動発生翼部
3a 外側辺
4 連設部
5 槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向うに従って幅広に形成されている内側の主撹拌翼部と槽の内周面の近傍を回転移動する外側辺を有する外側の強制流動発生翼部とこれら主撹拌翼部と強制流動発生翼部とを下方部において連設する連設部とからなる中・高粘度用撹拌翼。
【請求項2】
前記主撹拌翼部と前記強制流動発生翼部と前記連設部とを板状体により一体に形成した請求項1に記載の中・高粘度用撹拌翼。
【請求項3】
前記主撹拌翼部は、その外側辺が傾斜している三角形状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の中・高粘度用撹拌翼。
【請求項4】
前記強制流動発生翼部は内側辺を下方に向って内方に傾斜するか垂直に形成した請求項1又は請求項2に記載の中・高粘度用撹拌翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251236(P2011−251236A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125965(P2010−125965)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】