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中低温原子間力顕微鏡用サンプルホルダー
説明

中低温原子間力顕微鏡用サンプルホルダー

【課題】原子間力顕微鏡(AFM)において、高分解能観察ができる水準のノイズレベルを達成し、試料を中低温領域に冷却できるサンプルホルダーを提供する。
【解決手段】ペルチェ素子1の冷却側に測定対象物2を接着し、放熱側に銅を含む金属材料からなるヒートシンク14を有する。ペルチェ素子1及び測定対象物2の温度を制御する直流電源8と温度測定部10を有し、温度測定部10によって測定される温度が一定となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:略称AFM)において測定対象物を冷却し、温度を制御して観察するためのサンプルホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、プローブ(以下「探針」ともいう)を測定対象物表面に接近させ、走査することによって、測定対象物の表面形状像や、表面の磁場分布、表面電位分布などの測定対象物の物性情報を得ることが出来る顕微鏡のことである。
【0003】
AFMは走査型プローブ顕微鏡の一種であり、カンチレバーの先端部に設けられるプローブを試料表面に接近させ、試料表面との間で働く力を一定に制御しながら、試料表面を走査して、試料表面の凹凸を測定するものである。
【0004】
固体表面は一般にその内部とは異なる構造、性質を示す。AFMは、現在、真空中、溶液中、大気中など様々な環境に置かれた測定対象物の表面および測定対象物の表面上の溶液構造の高分解能観測ができるとして注目されている。このとき、測定対象物を冷却して観察される場合がある。
【0005】
測定対象物を冷却する目的は、冷却による測定対象物表面の組成変化、反応性の変化や分子運動を低減させて測定するためである。また、溶液中でのAFM測定では、水中測定など常温で溶液が揮発する場合に、測定対象物を冷却することで水の揮発に由来するドリフトを低減させ、より正確な表面形状像を得るためや、高分解能観測を可能にするために冷却することがある。
【0006】
従来のAFM用のサンプルホルダーとしてペルチェ素子を使用して、測定対象物を冷却できるサンプルホルダーが提案されている。ペルチェ素子とは冷却効果のある電子部品の1つであり、2種類の金属の接合部に電流を流すと片方の金属からもう片方の金属へ熱が移動するという「ペルチェ効果」を利用した素子のことである。可動部が無いため、騒音、振動の発生がなく冷却できるため、AFM観測における測定対象物の冷却に適している。
非特許文献1において、ペルチェ素子を用いて観察試料を冷却することが提案され、AFM観察が行われている。ペルチェ素子の放熱面には、銅製ヒートアンカーが接着されており、ヒートアンカーは氷水に浸すことによって冷却されている。これを図1に示す。
【0007】
図1の示すようにペルチェ素子1上に冷却される測定対象物2を接着し、ペルチェ素子1の放熱側にはヒートアンカー6に接着される。ヒートアンカー6は常時氷水9によって冷却されている。ペルチェ素子に直流電源8から電流を流すことによりペルチェ素子1の冷却側が冷却され、測定対象物2が冷却され、ペルチェ素子1の放熱側に熱が供給され、前記熱はヒートアンカー6を介して氷水9に熱が伝達される。測定対象物2の表面と探針3の間の相互作用力を検出し、圧電スキャナー7に探針3と測定対象物2の距離が一定に制御するように電圧を加えながら、測定対象物2表面を走査することにより測定対象物の表面形状が検出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】 K.Ogawa,A.Majumdar,Microscale Thermo.Eng.3:10−11 10(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、図1のサンプルホルダーはヒートアンカー6を常時氷水9により冷却することが必要となる。このため、従来のAFM用サンプルホルダーではスキャナーを制御する際に、常時氷水を用意する必要があり、装置全体の小型化に不向きである。また、氷水中の氷が完全に溶解するのに要する時間が、連続測定可能な時間限界となる。長時間、安定に低温に保つことが可能なAFM用サンプルホルダーが求められている。
【0010】
本発明はこのような点を鑑みて成されたもので、その目的は、AFMにおいて、高分解能観察ができる水準のノイズレベルを達成し、試料を中低温領域に冷却できるサンプルホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、測定対象物2を冷却する冷却サンプルホルダーであって、測定対象物2を冷却する冷却部11と、冷却によって発生する熱を放熱する放熱部12と、測定対象物2の温度を測定する温度測定部10と、温度測定部10によって測定される温度が一定となるように制御する温度制御部13を備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の冷却サンプルホルダーであって、前記冷却部11がペルチェ素子1である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2記載の冷却サンプルホルダーであって、前記放熱部12が、銅を含む金属材料からなるヒートシンク14である
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3項に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記ヒートシンク14が、前記冷却部11を越える表面積を持つ。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4いずれか1項に記載の冷却サンプルホルダーであって、走査型プローブ顕微鏡のプローブ3を接近させる機構を有し、プローブ3と測定対象物2との相互作用を検出する相互作用検出器を有し、走査型プローブ顕微鏡のプローブ3を測定対象物2の表面上で走査する機構を有し、測定対象物2の各点における前記相互作用を記録し、画像表示するデータ入出力、表示システムを有する顕微鏡撮像部を備える。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記、顕微鏡撮像部を保持する顕微鏡保持部を有し、前記顕微鏡保持部の中心に測定対象物2を搬入する搬入部を有する。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記搬入部内に前記ヒートシンク14を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、走査型プローブ顕微鏡の保持部の中心に測定対象物2を冷却できる冷却部11を搬入し、走査型プローブ顕微鏡のプローブを測定対象物2に接近させ、前記プローブ3を走査することにより、測定対象物2の表面形状像を取得することができる。
【0019】
本発明によれば、測定対象物3の温度を温度測定部10で測定し、温度制御部13を制御することによって冷却部11の温度を制御することができ、測定対象物2を目標とする温度に冷却し、制御することができる。
【0020】
本発明によれば、前記冷却部11は、ペルチェ素子1に直流電流を流すことによって測定対象物2を冷却し、直流電流を制御することによって温度を制御できるため、測定対象物2を振動させることなく冷却できる。
【0021】
本発明によれば、放熱部12はヒートシンク14を用い、顕微鏡保持部によって保持されるため、測定対象物2を冷却するときに加わる負荷は、冷却部11と温度制御部13を接続する導線の接続にかかる負荷のみとなり、測定対象物2を振動させることなく、原子・分子スケール観察が可能なノイズレベルで顕微鏡測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】非特許文献1に記載されているAFM用冷却ステージを示した図である。
【図2】請求項1記載の冷却サンプルホルダーを示した図である。
【図3】請求項2記載の冷却サンプルホルダーを示した図である。
【図4】請求項3記載の冷却サンプルホルダーを示した図である。
【図5】請求項4記載の冷却サンプルホルダーを示した図である。
【図6】請求項4記載の冷却サンプルホルダーをAFMで使用する際の一例を示した図である。
【図7】図6を横方向から見たときを示した図である。
【図8】請求項4記載の冷却サンプルホルダーを使用して得られたmica表面の顕微鏡画像の一例を示した図である。
【図9】請求項4記載の冷却サンプルホルダーを使用して得られたhexadecane表面の顕微鏡画像の一例を示した図である。
【図10】FM−AFMの動作原理を示した図である。
【発明実施の形態】
【0023】
図6及び図7は、本発明の冷却サンプルホルダーの一例を示した図である。
【0024】
ペルチェ素子1の冷却側に冷却される測定対象物2が接着され、ペルチェ素子1の放熱側にはヒートシンク14が接着される。ヒートシンク14はペルチェ素子1よりも大きな表面積を有し、顕微鏡保持部上に測定対象物2が搬入されるようにペルチェ素子1と測定対象物2が設置される。ペルチェ素子1に直流電源8から電流を流すことによりペルチェ素子1の冷却側が冷却され、ペルチェ素子1の放熱側に熱が供給され、ヒートシンク14から放熱される。測定対象物2の表面とカンチレバー4の間の相互作用力を検出し、圧電スキャナー7で相互作用力を制御するように走査することにより測定対象物2の表面形状が画像化される。
【0025】
ペルチェ素子1に流す電流量に対応して測定対象物の温度を制御することができる。ペルチェ素子1冷却側に温度測定部10を設置することにより測定対象物の温度を観測できる。
【0026】
図8は、本発明の中低温AFM用サンプルホルダーを用いて溶液中でAFM観察をするときの一例を示した図である。
【0027】
本発明のサンプルホルダーの利用の一例である周波数変調方式原子間力顕微鏡(Fre

バー4の変位を、レーザーダイオード15から出射されるレーザー16の反射光の位置を測定することによって検出する。レーザー16のカンチレバー4の背面での反射光の位置は、分割型のフォトダイオード17によって測定される。フォトダイオード17の出力は、プリアンプ18によって電圧信号に変換後、増幅され、自動利得制御回路19と周波数検出回路21に送られる。自動利得制御回路19に送られた信号は、位相シフター20に送られ、その出力は圧電アクチュエーター5に加わり、探針3を備えるカンチレバー4を振動させる信号となる。位相シフター20において、出力の位相を調整することによって、探針3を備えるカンチレバー4を自励発振させることができ、自励発振状態におけるカンチレバー4の共振周波数を周波数検出回路21にて測定する。周波数検出回路21にて測定された、カンチレバー4の共振周波数に相当する出力は、帰還制御回路22に送られ、探針3と試料間を制御する信号として圧電スキャナー7に加わる。圧電スキャナー7はステッピングモータによる粗い探針3と測定対象物2間の調整の後、探針3と測定対象物2の高精度な距離制御を担う。
【0028】
図8は本発明の請求項4記載の中低温原子間力顕微鏡用サンプルホルダーを図10の例のように用いて8℃に冷却した純水中でのmica基板のFM−AFMを使用して得られた表面形状像である。使用したペルチェ素子1は外形寸法L=4.0mm、W=4.0mm、H=2.2mm(アイシン精機社製)のものを使用し、その放熱側を熱伝導性の高いシリコーン接着剤を用いて銅製ヒートシンク14に接着した。ペルチェ素子冷却側には、熱伝導性の高いシリコーン接着剤を用いて4 mm角に切り出したmica基板を接着した。ペルチェ素子1には直流電源8(TEXIO社製)より、+1.3Vの電圧を印可し、0.5Aの電流が流れるように制御した。カンチレバー4はNCH(nanoworld社製)を背面金コートして使用した。走査時間は6秒/枚、走査領域は5nm×5nm、カンチレバー4の振動振幅は0.5nm、周波数シフトを400Hzに保つようにフィードバック制御した。試料温度はFM−AFM測定終了直後、溶液中に熱電対を差し込むことにより測定した。図8より、測定対象物2を冷却しても原子分解能観察が可能であることを確認した。純水中での観察の場合、冷却することにより揮発が低減し、15μlの純水中でのAFM観察は室温では30分程度で完全に揮発してしまうが、8℃では3時間継続して観察できた。例えば、微結晶上での水中観測などのような、少量の揮発性のある溶液中のAFM観察を行う時に簡便に測定対象物2を冷却できる。
【0029】
図9は本発明の請求項4記載中低温原子間力顕微鏡用サンプルホルダーを使用して、グラファイト基板上にhexadecane溶液を滴下して、12℃に冷却して結晶化させ、

ne結晶の表面形状像である。使用したペルチェ素子1は外形寸法L=4.0mm、W=4.0mm、H=2.2mm(アイシン精機社製)のものを使用し、前記ペルチェ素子1の放熱側を熱伝導性の高いシリコーン接着剤を用いて銅製ヒートシンク14に接着した。ペルチェ素子1の冷却側には、熱伝導性の高いシリコーン接着剤を用いて4mm角に切り出したグラファイト基板を接着し、前記グラファイト表面に、hexadecane溶液を5μl滴下し、ペルチェ素子1に直流電源8(TEXIO社製)より、+1.3Vの電圧を印可し、0.9Aの電流が流れるように制御した。カンチレバー4はNCH(nanoworld社製)を背面金コートして使用した。走査時間は6秒/枚、走査領域は8n

後、hexadecane結晶表面に熱電対を接触させて測定した。図9より、測定対象物2を冷却して結晶化させて分子分解能観察が可能であることを確認した。例えば、様々な溶液を簡便に冷却し、結晶化させてAFM観察を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ペルチェ素子
2 測定対象物
3 探針
4 カンチレバー
5 圧電アクチュエーター
6 ヒートアンカー
7 圧電スキャナー
8 直流電源
9 氷水
10 温度測定部
11 冷却部
12 放熱部
13 温度制御部
14 ヒートシンク
15 レーザーダイオード
16 レーザー
17 フォトダイオード
18 プリアンプ
19 自動利得制御回路
20 位相シフター
21 周波数検出器
22 帰還制御部
23 AFMヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を冷却する冷却サンプルホルダーであって、測定対象物を冷却する冷却部と、冷却によって発生する熱を放熱する放熱部と、測定対象物の温度を測定する温度測定部と、温度測定部によって測定される温度が一定となるように制御する温度制御部を備えることを特徴とする冷却サンプルホルダー。
【請求項2】
請求項1記載の冷却サンプルホルダーであって、前記冷却部がペルチェ素子であることを特徴とする冷却サンプルホルダー
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の冷却サンプルホルダーであって、前記放熱部が、銅を含む金属材料からなるヒートシンクであることを特徴とする冷却サンプルホルダー。
【請求項4】
請求項3項に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記ヒートシンクが、前記冷却部を越える表面積を持つことを特徴とする冷却サンプルホルダー。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載の冷却サンプルホルダーであって、走査型プローブ顕微鏡のプローブを接近させる機構を有し、プローブと測定対象物との相互作用を検出する相互作用検出器を有し、走査型プローブ顕微鏡のプローブを測定対象物の表面上で走査する機構を有し、測定対象物の各点における前記相互作用を記録し、画像表示するデータ入出力、表示システムを有する顕微鏡撮像部を備えることを特徴とする冷却サンプルホルダー。
【請求項6】
請求項5に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記顕微鏡撮像部を保持する顕微鏡保持部を有し、前記顕微鏡保持部の中心に測定対象物を搬入する搬入部を有することを特徴とする冷却サンプルホルダー。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却サンプルホルダーであって、前記搬入部内に前記ヒートシンクを備えることを特徴とする冷却サンプルホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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