説明

中和エピトープベースの増殖増強性ワクチン

【課題】抗GDF8免疫応答を誘発するための改善された抗原および免疫原、ならびにGDF8に対して高度に特異的に結合し得る改善されたGDF8抗体を提供すること。
【解決手段】抗GDF8免疫応答を誘発するための改善された抗原および免疫原、ならびにGDF8に対して高度に特異的に結合し得る改善されたGDF8抗体に対する、長期にわたる必要性が存在する。本発明は、タンパク質GDF8由来の、新規な特異的抗原性ペプチドを提供する。本発明はまた、この新規ペプチドを含む融合タンパク質、この新規ペプチドおよび/または融合タンパク質に基づく免疫原およびワクチン、GDF8の新規ペプチドに特異的に結合する抗体、ならびに、本発明のワクチンまたは抗体を利用してGDF8の活性を調節するために動物を処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)のもと、米国特許仮出願番号60/533,719(2003年12月31日出願;この内容は、その全体が本明細書によって参考として援用される)の優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、タンパク質成長分化因子8、および成長分化因子8の抗原性ペプチドフラグメント、ならびに関連する免疫原、ワクチン、および成長分化因子8の活性を調節するために動物を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
成長分化因子8は、トランスフォーミング成長因子−β(「TGF−β」)スーパーファミリーとともに分類されるタンパク質である。一般的に、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質は、最初に、タンパク質C末端から約110〜140アミノ酸の塩基性残基の一団においてタンパク質分解性の切断を受ける前駆体(別名プロホルモン)として発現される。各々の場合において、活性または成熟TGF−β種は、切断された前駆体タンパク質C末端領域のジスルフィド結合されたダイマーであると考えられている。
【0004】
成長分化因子8(本明細書においてこれ以降、GDF8)はまた、GDF−8またはミオスタチン(myostatin)として当該分野で公知である。GDF8の前駆体(本明細書においてこれ以降、「前駆体GDF8」)をコードする遺伝子は、多岐にわたる生物体からクローニングされている。これらとしては、ヒトおよびマウス前駆体GDF8が挙げられる[非特許文献1;特許文献1(これらの内容は、本明細書によってその全体が参考として援用される)]。GDF8免疫反応性が、ヒト骨格筋において、I型線維およびII型線維の両方において検出可能であることが、また報告されている。GDF8を検出するための抗体およびアッセイは、例えば、特許文献2によって記載されている。
【0005】
GDF8ノックアウトマウスによって確認されたように、GDF8が骨格筋の成長および発達をダウンレギュレートまたは阻害することに役割を果たすことが、さらに報告されている(非特許文献2)。この理由のため、特に動物管理の分野において、種々の食用動物の成長および/または相対的な筋の質量を増強するためにGDF8活性をダウンレギュレートさせることを目標として、数種の手段によって動物中のGDF8活性を調節する試みがこれまでになされてきた。
【0006】
例えば、特許文献3は、前駆体GDF8遺伝子プロモーターおよびアッセイを記載し、このアッセイが、そのプロモーターの理論的インヒビターを同定するために使用されることを提唱する。特許文献4は、細胞を、GDF8レセプターに対して競合するGDF8プロドメインと接触させることによって、その細胞上でGDF8の効果を阻害する方法を記載し、そして成熟GDF8のC末端が変動し得ることを報告する。特許文献5は、GDF8の可能性のあるアンタゴニストとしてのフォリスタチンの使用を記載する。これらの方法からは、動物管理の分野における実際的な適用、または臨床適用(ヒトでも獣医学的にも)という結果は得られなかった。
【0007】
他はまた、GDF8機能をダウンレギュレートするために抗体およびワクチン技術を利用することを試みた。例えば、特許文献6[その内容は、本明細書によってその全体が参考として援用される]は、抗GDF8抗体を誘発するためのペプチド(すなわち、GDF8タンパク質のフラグメント)およびワクチンを記載する。この特許はまた、数種の報告されたGDF8ペプチドフラグメントで免疫されたげっ歯類における、コントロールに対して明らかでない程度の成長および重量の増加を報告した。
【0008】
GDF8に関する他の生理学的役割もまた記載されている。例えば、特許文献7[その内容は、本明細書によってその全体が参考として援用される]は、GDF8機能を阻害すること(例えば、この状態を有する患者に抗GDF8抗体または抗GDF8ワクチンを投与することによって)は、II型糖尿病を処置するために有用であることが示唆している。
【0009】
それにもかかわらず、当該分野において、抗GDF8免疫応答を誘発するための改善された抗原および免疫原、ならびにGDF8に対して高度に特異的に結合し得る改善されたGDF8抗体に対する、長期にわたる必要性が未だ存在する。
【0010】
本明細書におけるあらゆる参考文献の引用は、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,827,733号明細書
【特許文献2】米国特許第6,096,506号明細書
【特許文献3】米国特許第6,399,312号明細書
【特許文献4】米国特許第6,656,475号明細書
【特許文献5】米国特許第6,004,937号明細書
【特許文献6】米国特許第6,369,201号明細書
【特許文献7】米国特許第6,368,597号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nestorら,「Proc.Natl.Acad.Sci.」,1998年,95:14938−43
【非特許文献2】McPherronら,「Nature」,1997年,387:83−90
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、GDF8に関する特異的中和エピトープを含むGDF8ペプチド(例えば、50残基以下のGDF8のペプチドフラグメント)を提供することによって、当該分野におけるこれらの欠点および他の欠点を解決する。
【0014】
本発明の一実施形態において、例えば、天然のヒト前駆体GDF8(配列番号1)の残基約312〜残基約361を含む単離されたペプチドを含む、GDF8ペプチドが提供される。好ましくは、本発明のGDF8ペプチドは、天然のヒト前駆体GDF8の残基約320〜残基約350を含み、より好ましくは残基約321〜残基約346を含み、最も好ましくは残基約327〜残基約346を含む。例示的なGDF8ペプチドは、本明細書においてこれ以後DJ5と標識され、以下のように、便宜上配列番号1の前駆体GDF8に基づく残基番号付けに従って、1文字コードおよび3文字コードの両方で示される。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明のさらなる実施形態において、GDF8ペプチドは、必要に応じて、保存的単一アミノ酸置換を含む。単純に例として、これらは、上記ペプチド内の1〜少なくとも5アミノ酸位置にわたり得る。特定の実施形態において、例えばGDF8の残基327〜346の間に、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換が存在する。別の実施形態において、GDF8ペプチドは、上記ペプチド内のわずか5アミノ酸位置において、保存的アミノ酸置換を含む。さらに別の実施形態において、GDF8の残基327〜346の間に2つの保存的アミノ酸置換が存在する。なお別の実施形態において、GDF8の残基327〜346の間に3つの保存的アミノ酸置換が存在する。さらに別の実施形態において、GDF8の残基327〜346の間に4つの保存的アミノ酸置換が存在する。
【0017】
好ましくは、アミノ酸残基置換は、天然のヒト前駆体GDF8(配列番号1)に対して1つ以上の位置にあり、これは、図2の種間アラインメントのアミノ酸変異によって特徴付けられる。これらは、残基328、残基329、残基331、残基333および残基335、ならびにそれらの組み合わせにおいて存在し、ここで、
(a)アミノ酸残基328は、His、LeuもしくはAsnであり;
(b)アミノ酸残基329は、GlnもしくはLysであり;
(c)アミノ酸残基331は、AsnもしくはSerであり;
(d)アミノ酸残基333は、ArgもしくはLysであり;そして/または
(e)アミノ酸残基335は、Ser、ProもしくはThrである。
【0018】
好ましくは、このような改変GDF8ペプチドは、抗GDF8抗体についての特異的中和エピトープを含み、したがって、本明細書において以下に例示されるように、抗GDF8抗体(この抗体は、mAb 788および/またはヤギ抗GDF8ポリクローナル抗血清のIgG分画である)に特異的に結合する特性を保持する。
【0019】
本発明のなおさらなる実施形態において、上述のGDF8ペプチドをコードする核酸分子(すなわち、ポリヌクレオチド)が提供される。
【0020】
好ましくは、この核酸分子は、天然に存在するヒト前駆体GDF8遺伝子の一部分、(Genebank登録番号NM_005259,ヒトGDF8遺伝子;配列番号2)のおよそヌクレオチド1112〜およそヌクレオチド1171を含む。この部分は、上記のとおり、ペプチドDJ5をコードする。NM_005259の記録が、実際のコード領域に隣接する大量の配列を含むことに注意すること。当業者はまた、DJ5が、GDF8プロホルモンの実際のコード領域のヌクレオチド979〜1038に対応することを理解する。
【0021】
上記核酸分子を含む複製可能なクローニングベクターおよび原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞もまた、GDF8ペプチドを生成する方法に従って提供される。上記方法は、以下の工程を包含する:宿主細胞を培養する工程;そのコードされたペプチドを発現させる工程;および、そのペプチドを回収する工程。当業者はまた、本発明のGDF8ペプチドがまた、標準的な当該分野で公知の化学合成方法によって容易に生成されること理解する。
【0022】
本発明のなおさらなる実施形態において、本発明のGDF8ペプチド(またはその融合タンパク質)を含むワクチン組成物が、また提供される。
これは、例えば好ましくは、1種以上のアジュバンド、および他の当該分野で標準的なペプチドベースもしくはタンパク質ベースのワクチン組成物の構成要素を含む。動物において抗GDF8免疫応答を誘発する方法もまた提供され、この方法は、その動物に有効量のワクチン組成物を投与する工程を包含する。
【0023】
別のさらなる実施形態において、複数の抗体または抗体フラグメントの中から抗GDF8抗体または抗体フラグメントを選択するためのスクリーニング方法が提供される。この方法は、ペプチドと1つまたは複数の抗体または抗体フラグメントとを接触させて、このペプチドに選択的に結合する抗体または抗体フラグメントを検出する工程を包含する。
【0024】
なお別の局面において、本発明は、動物においてGDF8活性をダウンレギュレートさせる方法を提供する。一つのこのような実施形態において、この方法は、抗体または抗体フラグメントを、動物においてGDF8活性を(抗体がこのペプチドに特異的に結合するか、または本明細書において記載されるようにワクチン組成物でこの動物を免疫することによって)ダウンレギュレートするのに有効な量および期間、その動物に投与する工程を包含する。この動物は、好ましくは、脊椎動物であり、より好ましくは哺乳動物、鳥類または魚類である。好ましくは、この哺乳動物は、家畜(domesticated)動物(例えば、家畜業(animal husbandry)に使用される動物、あるいは、コンパニオン動物)であるが、必要に応じて、このようなGDF8ダウンレギュレーションを必要とするヒトであり得る。
【0025】
本発明はまた、本発明のGDF8ペプチドを組み込んだ融合タンパク質を企図する。この融合タンパク質は、GDF8融合タンパク質の分泌もしくは細胞表面発現を増強し、そして/または選択的結合システムによる精製を可能にするシグナルペプチドであるドメインを含み得る。さらに、この融合タンパク質は、GDF8ペプチドドメインの免疫原性を増強するために、シグナルキャリアタンパク質中の1つ以上のGDF8ペプチドに結合することを企図される。特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基327〜346を含む50以下のアミノ酸残基からなるGDF8ペプチドを含む。この型の関連する実施形態において、この融合タンパク質は、GDF8ペプチドの免疫原性サブフラグメン(例えば、DJ5(配列番号8)由来の約10個の保存的連続するアミノ酸残基を含むGDF8ペプチド)を含む。
【0026】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
50以下のアミノ酸残基からなる単離されたペプチドであって、該アミノ酸残基は、配列番号1のアミノ酸残327〜346基を含む、単離されたペプチド。
(項目2)
配列番号1のアミノ酸残基321〜346を含む、項目1に記載の単離されたペプチド。
(項目3)
配列番号1のアミノ酸残基320〜350を含む、項目2に記載の単離されたペプチド。
(項目4)
配列番号1のアミノ酸残基312〜361を含む、項目3に記載の単離されたペプチド。
(項目5)
50以下のアミノ酸残基からなる単離されたペプチドであって、該アミノ酸残基は、アミノ酸置換を含む配列番号1のアミノ酸残基327〜346を含み、
ここで、アミノ酸残基327〜アミノ酸残基346の間にわずかに5個のアミノ酸置換が存在し;そして
ここで、該ペプチドは、ラットモノクローナル抗体788に特異的に結合する、
単離されたペプチド。
(項目6)
項目5に記載の単離されたペプチドであって、以下:
残基328、残基329、残基331、残基333および残基335、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される位置にアミノ酸置換を含み、ここで、
(a)アミノ酸残基328は、His、LeuもしくはAsnであり;
(b)アミノ酸残基329は、GlnもしくはLysであり;
(c)アミノ酸残基331は、AsnもしくはSerであり
(d)アミノ酸残基333は、ArgもしくはLysであり;そして/または
(e)アミノ酸残基335は、Ser、ProもしくはThrである、
単離されたペプチド。
(項目7)
項目6に記載の単離されたペプチドであって、前駆体GDF8の残基327〜残基346の間にわずか1個のアミノ酸置換を含み、ただし、該ペプチドは、ラットモノクローナル抗体788に特異的に結合する、単離されたペプチド。
(項目8)
抗GDF8抗体に対する特異的中和エピトープを含む、項目1に記載の単離されたペプチド。
(項目9)
前記抗体が、ラット抗GDF8モノクローナル抗体788およびヤギ抗GDF8ポリクローナル抗血清のIgG分画からなる群より選択される、項目8に記載の単離されたペプチド。
(項目10)
項目1に記載のペプチドまたは該ペプチドの抗原性サブフラグメントを含む、融合タンパク質。
(項目11)
項目10に記載の融合タンパク質をコードする、核酸分子。
(項目12)
項目6に記載のペプチドをコードする、核酸分子。
(項目13)
項目1に記載のペプチドをコードする、核酸分子。
(項目14)
配列番号2のヌクレオチド1112〜ヌクレオチド1171の核酸配列を含む、項目13に記載の核酸分子。
(項目15)
項目13に記載の核酸分子を含む、複製可能なクローニングベクター。
(項目16)
項目15に記載の複製可能なクローニングベクターを含む、宿主細胞。
(項目17)
前記クローニングベクターによって形質転換された、項目16に記載の宿主細胞。
(項目18)
真核生物細胞である、項目16に記載の宿主細胞。
(項目19)
GDF8ペプチドを生成する方法であって、項目18に記載の宿主細胞を培養する工程、コードされたペプチドを発現させる工程、および該ペプチドを回収する工程を包含する、方法。
(項目20)
項目1に記載のペプチドを含む、ワクチン組成物。
(項目21)
項目10に記載の融合タンパク質を含む、ワクチン組成物。
(項目22)
アジュバントをさらに含む、項目20に記載のワクチン組成物。
(項目23)
動物における抗GDF8免疫応答を誘発する方法であって、該動物に、有効量の項目20に記載のワクチン組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
複数の抗体または抗体フラグメント中から抗GDF8抗体または抗体フラグメントを選択するためのスクリーニング方法であって、項目1に記載のペプチドと1種もしくは複数の抗体または抗体フラグメントを含むサンプルとを接触させる工程、ならびに該ペプチドに選択的に結合する抗体または抗体フラグメントを検出する工程を包含する、方法。
(項目25)
動物においてGDF8活性をダウンレギュレートさせる方法であって、該動物に、該動物においてGDF8活性をダウンレギュレートさせるのに有効な量および有効な期間、抗体または抗体フラグメントを投与する工程を包含し、ここで、該抗体は、項目1に記載のペプチドに特異的に結合する、方法。
(項目26)
動物においてGDF8活性をダウンレギュレートさせる方法であって、有効量の項目20に記載のワクチン組成物で該動物を免疫する工程を包含する、方法。
(項目27)
動物においてGDF8活性をダウンレギュレートさせる方法であって、有効量の項目21に記載のワクチン組成物で該動物を免疫する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、GDF8活性領域(すなわち、成熟GDF8)中の重複ペプチドDJ1〜DJ7を示す。これは、前駆体GDF8配列の残基266〜375である。
【図2】図2は、記載されたさらなる動物種の前駆体GDF8タンパク質中に配置された場合の、類似する20残基ペプチドと比較したヒトDJ5ペプチド配列(配列番号8)のアラインメントを示す。アミノ酸残基位置321〜347は、ヒト前駆体GDF8に基づく。Genebank登録番号(本明細書において参考として援用される)は、その種に関する全体が公開されたタンパク質配列を識別する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
アラインメントされたペプチドは、以下の配列番号を有する。
【0029】
【化2】

【0030】
(発明の詳細な説明)
したがって、本発明は、ポリクローナル抗GDF8ヤギ抗血清について、および他の特異的抗GDF8抗体についての特異的中和エピトープとして役立つGDF8ドメインを同定する。これらのエピトープはまた、GDF8タンパク質に対する活性かつ特異的な免疫応答を、インビトロ(例えば、GDF8タンパク質の検出のため)およびインビボ(GDF8活性をダウンレギュレートするため)の両方において誘発するために有用な、GDF8タンパク質のフラグメントを提供するために役立つ。これらのフラグメントは、概して、本明細書においてGDF8ペプチドまたはGDF8ペプチドフラグメントと称される。これらのGDF8ペプチドの有用性は、動物において抗GDF8免疫応答を誘発するための免疫原としての使用、およびGDF8関連アッセイにおける高度に特異的な抗体結合標的としての使用を包含する。
【0031】
GDF8の特異的結合エピトープを、抗GDF8抗血清を一連の重複GDF8ペプチドと接触させて、ペプチドと抗血清IgG抗体との間の結合活性の程度を決定することによって同定した。発現および抗原性に関して最適化された構造を有する前駆体GDF8タンパク質で免疫されたヤギから、抗GDF8抗血清を得た。
【0032】
本発明をより十分に理解するために、以下の定義が提供される。説明中の便宜的な単数形の使用は、そのように限定することを決して意図しない。従って例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」を含む組成物への参照は、1以上のそのようなポリペプチドに対する参照を包含する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「およそ(approximately)」は、用語「約(about)」と交換可能に使用され、示された値の20%以内の値を意味する。すなわち、「およそ」50アミノ酸残基を含むペプチドは、40と60との間のアミノ酸残基を含み得る。
【0034】
本発明が、本明細書中で開示された特定の構成、プロセス工程、および材料に限定されず、したがって、そのような構成、プロセス工程、および材料がいくらか変動し得ることが、また理解されるべきである。本明細書中で利用される用語法が、特定の実施形態を説明する目的のみのために使用されること、そして限定のために意図されるのではないことが、また理解されるべきである。なぜなら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるからである。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、用語「タンパク質」と交換可能に使用され、そしてペプチド結合によって連結された2以上のアミノ酸を含むポリマーを指す。好ましくは、本明細書において他に述べられない限り、用語「ポリペプチド」は、本明細書中で使用される場合の用語「ペプチド」と、サイズおよび鎖の長さによって区別される。ここで、「ペプチド」とは、約50以下のアミノ酸のポリマー鎖をいい、ポリペプチドまたはタンパク質とは、約50アミノ酸より長いポリマー鎖をいう。必要に応じて、ペプチドまたはポリペプチドは、遺伝子またはmRNAによってコードされた特定のアミノ酸残基を欠いていてもよい。例えば、遺伝子またはmRNA分子は、最終タンパク質から切断され、したがって最終タンパク質の一部ではない可能性がある、ポリペプチドのN末端上のアミノ酸残基の配列(すなわち、シグナル配列)をコードし得る。
【0036】
本発明による「GDF8ペプチド」は、GDF8タンパク質に由来する相対的に短いフラグメントである。そのようなペプチドのサブフラグメントでも、GDF8ペプチドと称され得る。本発明のGDF8ペプチドの最大サイズを限定することを意図しないが、ペプチドの最大サイズは、約50残基であることが好ましく、より好ましくは、最大サイズは約40残基であり、さらにより好ましくは、最大サイズは約30残基であり、なおより好ましくは、最大サイズは約25残基である。より一般的には、GDF8ペプチドは、好ましくは、約10〜約50アミノ酸残基長のサイズの範囲であり、より好ましくは、約15〜約30アミノ酸残基であり、特に、約20アミノ酸残基長である。本発明の他のGDF8ペプチドのより小さなサブフラグメントであるGDF8ペプチド(例えば、DJ5(配列番号8)由来の約10個の連続するアミノ酸残基を含むGDF8ペプチドは、好ましくは、より大きなGDF8ペプチド由来の抗原性部分(例えば、エピトープ)を含む。
【0037】
特定の実施形態において、GDF8ペプチドは、天然に存在するGDF8(配列番号1)のヒト前駆体の残基番号327〜346(配列番号8)によって規定されるペプチドに対して約50%相同〜約100%相同の範囲に及ぶ相同の程度を有する、ペプチドドメインを含む。上記の相同性の変動は、好ましくは、特定の特異的抗GDF8抗体によって特異的に認識される本発明の抗原性構造を保有する、保存的置換および/または保存的変動である。これらの保存された置換は、種間相同性比較(例えば、図2参照)によってGDF8機能を保存することが示される残基置換を表し、そして/または、類似の化学的(例えば、物理学的)および電気的構造のアミノ酸の間における、したがって、本発明のGDF8ペプチドの抗体結合特異性を保存するおよび/もしくは最適化する残基置換を表す。このような保存的アミノ酸置換の例としては、以下が挙げられる:1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、メチオニン)の別のものに対する置換;または、1つの等電荷の極性残基の別のものに対する置換(例えば、リジンに対するアルギニンの置換、アスパラギン酸に対するグルタミン酸の置換、もしくはアスパラギンに対するグルタミンの置換)。
【0038】
特に、本発明のGDF8ペプチドはまた、抗GDF8抗体に対する特異的中和エピトープ(すなわち、以下の実施例によって記載される、PGA 抗GDF8 IgGポリクローナル抗体に特異的に結合する、および/または市販のラットモノクローナル抗体(「mAb」)[Cat.No.MAB788(R & D Systems Inc.,Minneapolis,MN)]に特異的に結合する、エピトープまたは抗原ドメイン)を含む。
【0039】
本明細書において利用される場合、用語「精製された」または「単離された」とは、関係のない物質(すなわち、夾雑物、上記物質が得られるネイティブの物質を含む)の存在を減少もしくは消失させる条件下で分離された物質をいう。例えば、精製されたタンパク質または単離されたタンパク質は、好ましくは、細胞内でともに見出され得る他のタンパク質または核酸を含まない。精製された物質は、元々関連していた細胞成分の、約50%未満、好ましくは約75%未満、そして最も好ましくは約90%未満を含み得る。精製は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、成分分析、生物学的アッセイ、および当該分野で公知の他の方法によって評価され得る。機能的局面から、本発明の単離されたGDF8ペプチドは、前駆体GDF8タンパク質および/もしくは成熟GDF8タンパク質を含む他の物質から十分に分離され、その結果、GDF8ペプチドに対して特異的な免疫応答を誘発し得るものである。
【0040】
精製のための方法は、当該分野で周知である。例えば、核酸は、沈殿、クロマトグラフィー、超遠心、および他の手段によって精製され得る。タンパク質およびポリペプチド、ならびにペプチドは、種々の方法によって精製され得る。この方法としては、分取ディスクゲル電気泳動(preparative disc−gel electrophoresis)、等電点電気泳動、HPLC、逆相HPLC、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび分配クロマトグラフィー、沈殿および塩析クロマトグラフィー、抽出および向流分配が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの目的のためには、タンパク質が精製を容易にするさらなる配列タグを含む組み換え系においてポリペプチドを精製することが、好ましい。このような配列タグは、例えば、ポリヒスチジン配列または抗体に特異的に結合する配列(例えば、FLAG(登録商標)およびGST)であるが、これらに限定されない。次いで、ポリペプチドは、宿主細胞の粗溶解物から、適切な固相マトリックス上でのクロマトグラフィーによって精製され得る。あるいは、上記ポリペプチドに対して生成された抗体またはその結合フラグメントが、精製試薬として使用され得る。
【0041】
用語「実質的に純粋」は、当該分野で公知の従来の精製技術を用いて達成され得る最高度の純度を示し、そして、元の供給源の生物体または組み換えDNA発現系に由来する夾雑タンパク質、核酸および他の生物学的物質を含まない核酸、ポリペプチド、ペプチドまたは他の物質を意味する。実質的純度は、標準的な方法によってアッセイされ得、そして代表的に、少なくとも約75%の純度、好ましくは少なくとも約90%の純度の純度、より好ましくは少なくとも約95%の純度、そして最も好ましくは少なくとも約99%の純度を超える。純度の評価は、質量ベースまたはモル濃度ベースで行われ得る。
【0042】
「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、ヌクレオチドを含む分子であり、これらとしては、RNA配列、cDNA配列、ゲノムDNA配列そしてさらに合成DNA配列が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、DNAおよびRNAの任意の当該分野で公知の塩基アナログを含む核酸分子を包含することを企図される。
【0043】
「ベクター」または「複製ベクター」は、レプリコン(例えば、プラスミド、ファージ、もしくはコスミド)であり、そこに別のDNAセグメントが結合するかまたは組み込まれて、結合されたセグメントの複製を生じ得る。この用語はまた、組み込まれたかまたは結合された、目的のDNAセグメントを含むレプリコンを包含する。
【0044】
本発明で使用される得るベクターとしては、微生物プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組み込み可能なDNAフラグメント、および宿主のゲノムへの核酸の組み込みを促進し得る他のビヒクルが挙げられる。プラスミドは、最も一般的に使用される形態のベクターである。しかし、等価な機能を果たし、かつ当該分野で公知のあらゆる他の形態のベクターが、本明細書における使用に適切である。例えば、Pouwelsら,Cloning Vector:A Laboratory Manual,1985 and Supplements,Elsevier,N.Y.,およびRodriguezら(編),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vector and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,MAを参照のこと。
【0045】
本発明のGDF8ペプチドをコードするDNAのベクターへの挿入は、DNAおよびベクターの両方の末端が適合性のある制限部位を含む場合、容易に達成される。これができない場合、制限エンドヌクレアーゼ切断によって生成される単鎖化されたDNA突出部(overhang)を消化して、もとの平滑末端を生成することによってDNAおよび/もしくはベクターの末端を修飾すること、または適切なDNAポリメラーゼを用いて上記単鎖化した末端を充填することによって同じ結果を達成することが必要であり得る。あるいは、所望される部位が、例えば、ヌクレオチド配列(リンカー)を末端に連結することによって作製され得る。このようなリンカーは、所望の制限部位を規定する特異的オリゴヌクレオチド配列を含み得る。制限部位はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を通じて生成され得る。例えば、Saikiら,Science 239:487(1988)を参照のこと。切断されたベクターおよびDNA フラグメントはまた、必要な場合、ホモポリマーのテイルで修飾され得る。
【0046】
本発明で使用される組み換え発現ベクターは、代表的に、本発明のGDF8ペプチドの1つをコードする核酸を含み、通常、宿主細胞の核酸の発現を調節し得る適切な遺伝子制御エレメントに作動可能に連結された、自己複製性のDNAまたはRNA構築物である。遺伝子制御エレメントは、原核生物プロモーター系もしくは真核生物プロモーター発現制御系であり得、そして代表的に、転写プロモーター、転写の開始を制御する任意的なオペレーター、mRNA発現のレベルを上昇させる転写エンハンサー、適切なリボゾーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳を終止させる配列を含む。発現ベクターはまた、ベクターを宿主細胞とは独立に複製させる複製起点を含み得る。
【0047】
本発明のGDF8ペプチドをコードする核酸の発現は、原核細胞または真核細胞のいずれかにおいて従来の方法で行われ得る。
【0048】
DNA「コード配列」または特定のタンパク質もしくはペプチドを「コードする配列」は、適切な調節エレメントの制御下で配置される場合にインビボもしくはインビトロで転写されて、ポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5’末端における開始コドンおよび3’末端における終止コドンによって決定される。コード配列としては、懸隔生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)由来のゲノムDNA配列、そしてさらに合成DNA配列が挙げられ得るが、これらに限定されない。転写末端配列は、通常、コード配列に対して3’に配置される。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「融合タンパク質」および「融合ペプチド」は、交換可能に使用され、そして「キメラタンパク質および/またはキメラペプチド」、ならびに融合「インテインタンパク質/ペプチド」を包含する。融合タンパク質は、ペプチド結合を介して別のタンパク質の少なくとも一部分に結合された本発明のGDF8ペプチドの少なくとも一部分を包含する。例えば、融合タンパク質は、マーカータンパク質もしくはマーカーペプチド、または本発明のGDF8ペプチド単離および/もしくは精製および/もしくは抗原性を補助するタンパク質もしくはペプチドを含み得る。GDF8融合タンパク質は、ペプチド結合を介してGDF8ポリペプチドの少なくとも一部分に対して結合された、非GDF8タンパク質の少なくとも一部分を含み得る。好ましい実施形態において、GDF8の一部分は、機能性である(すなわち、その抗原性を保有する)。非GDF8配列は、GDF8配列に対するアミノ末端またはカルボキシ末端であり得る。
【0050】
そのような融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子は、GDF8コード配列に対してインフレームに結合された非GDF8タンパク質の少なくとも一部をコードする配列を含み、特異的プロテアーゼ(例えば、トロンビンもしくはXa因子)のための切断部位を、好ましくは、GDF8配列と非GDF8配列との間の接合部、またはその近くにコードし得る。特定の実施形態において、融合タンパク質はCHO細胞中で発現される。そのような融合タンパク質は、GDF8ペプチドに融合されたタンパク質および/またはタグに特異的なアフィニティーカラムの使用を通じて、本発明のGDF8ペプチドを単離するために使用され得る。精製されたGDF8ペプチドは、例えば、次に、上記に参照したようなタンパク質分解酵素および切断部位の使用を通じて、融合タンパク質から放出され得る。
【0051】
そのような一実施形態において、キメラGDF8ペプチドが調製され得る(例えば、任意の細胞または無細胞系における発現のための、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、マルトース結合(MBP)タンパク質融合タンパク質、またはポリ−ヒスチジン−タグ化融合タンパク質)。例えば、GSTは、固体支持体マトリックスに結合したグルタチオンに結合し、MBPは、マルトースマトリックスに結合し、そしてポリ−ヒスチジンは、Ni−キレート化支持マトリックスにキレート化する。融合タンパク質は、適切な緩衝液によってか、以下に例示されるようなまたはGDF8ペプチドと融合パートナー(例えば、GST、MBP、FLAG(登録商標))との間に通常設計される切断部位に特異的なプロテアーゼで処理することによって、または上記のポリ−Hisのように、特異的マトリックスから溶出され得る。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「異種ヌクレオチド配列」は、組み換え法によって本発明のヌクレオチド配列に付加されて、天然においては自然に形成されない核酸を形成するヌクレオチド配列である。このような核酸は、融合(例えば、キメラ)タンパク質をコードし得る。したがって、異種ヌクレオチド配列は、調節的特性および/または構造的特性を含むペプチドおよび/またはタンパク質をコードし得る。このような別の実施形態について、異種ヌクレオチド配列は、組み換え核酸が発現された後、本発明のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質またはペプチドを検出する手段として機能するタンパク質またはペプチドをコードし得る。さらに別の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、本発明のヌクレオチド配列を検出する手段として機能し得る。異種ヌクレオチド配列は、制限部位、調節部位、プロモーターなどの非コード配列を含み得る。
【0053】
「宿主細胞」は、外来核酸分子を、一過性または永久的に、含むかまたは含み得、そして発現する細胞である。細胞は、外来DNAが細胞膜の内部に導入されている場合、そのような外来DNAによって「形質転換」されている。外来DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNA中に(共有結合性に)組み込まれていてもいなくてもよい。原核生物および酵母においては、例えば、外来DNAは、エピソームエレメント(例えば、プラスミド)上に維持され得る。真核生物細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、外来DNAが染色体に組み込まれて、その結果、染色体複製を介して娘細胞により遺伝されるものである。この安定性は、真核生物細胞の、外来DNAを含む娘細胞の集団で構成される細胞株またはクローンを確立する能力によって示される。
【0054】
原核生物は、グラム陰性生物体およびグラム陽性生物体の両方(例えば、E.coli
およびB.subtilis)を含む。高等真核生物は、動物細胞(非哺乳動物起源(例えば、昆虫細胞および鳥類)と哺乳動物起源(ヒト、霊長類およびげっ歯類)との両方)から確立された組織培養細胞株を包含する。
【0055】
原核生物宿主ベクター系は、多くの異なる種に関する、多岐にわたるベクターを含む。本明細書中で使用される場合、E.coliおよびそのベクターは、他の原核生物において使用される等価なベクターを含むように一般的に使用される。DNAを増幅するための代表的なベクターは、pBR322またはその誘導体である。GDF8および/またはGDF8ペプチドを発現するために使用され得るベクターとしては、lacプロモーター(pUCシリーズ);trpプロモーター(pBR322−trp);Ippプロモーター(pINシリーズ);λ−pPまたはpRプロモーター(pOTS);またはptac(pDR540)のようなハイブリッドプロモーターを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。Brosiusら,「Expression Vectors Employing Lambda−,trp−,lac−,and Ipp−derived Promoters」(RodriguezおよびDenhardt(編)Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,pp.205−236)を参照のこと。
【0056】
酵母は、高等真核生物組織培養細胞は、本発明のGDF8ペプチド、ならびに/または抗GDF8抗体および/もしくはこれらの抗体のフラグメントの組み換え産物のための、好ましい宿主である。任意の高等真核組織培養細胞が使用され得るが(昆虫baculovirus発現系を含む)、哺乳動物細胞が好ましい。このような細胞の形質転換またはトランスフェクション、および増殖は、慣習的な手順となっている。有用な細胞株の例としては、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、新生仔ラット腎臓(BRK)細胞株、昆虫細胞株、トリ細胞株、およびサル(COS)細胞株が挙げられる。
【0057】
このような細胞株のための発現ベクターとしては通常、例えば、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAが使用される場合)、ポリアデニル化部位、そして転写終止部位が挙げられる。これらのベクターはまた、通常、選択的遺伝子または複製遺伝子を含む。適切な発現ベクターは、例えば、アデノウイルス、SV40、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、またはサイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターを保有するプラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスであり得る。適切な発現ベクターの代表的な例としては、pCR(登録商標)3.1、pCDNA1、pCD[Okayamaら,Mol.Cell Biol.5:1136(1985)]、pMC1neoポリ−A[Thomasら,Cell 51:503(1987)]、pUC19、pREP8、pSVSPORTおよびそれらの誘導体、ならびにバキュロウイルスベクター(例えば、pAC 373もしくはpAC 610)が挙げられる。
【0058】
代表的に使用される原核生物発現制御配列としては、プロモーター(β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーターに[Changら,Nature,198:1056(1977)]、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddelら,Nucleic Acids Res.8:4057(1980)]、λPプロモーター系[Shimatakeら,Nature,292:128(1981)]およびtacプロモーター[De Boerら,Proc.Natl.Acad.Sci USA 292:128(1983)]由来するものを含む)が挙げられる。このような制御配列を含む多数の発現ベクターは、当該分野で公知であり、市販されている。
【0059】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成成分がそれらの通常の機能を行うように構成されたエレメントの配置をいう。したがって、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コード配列の発現に影響し得る。制御エレメントは、それらが制御配列の発現に関するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在性の、翻訳されないが転写される配列がプロモーターとコード配列との間に存在し得、そしてプロモーターはなお、コード配列に対して「作動可能に連結されている」とみなされる。
【0060】
本発明はまた、本発明のGDF8ペプチドに特異的に結合されたポリクローナル抗体およびモノクローナル(mAb)抗体を含む。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリンおよび/またはそのフラグメントをいう。天然に存在する免疫グロブリンは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドから構成される。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。本発明の抗体(単数または複数)はまた、抗体フラグメント(すなわち、抗原結合フラグメント、例えば、Fv、FabおよびF(ab’))、操作された単鎖結合タンパク質(例えば、Hustonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879−5883(1988)およびBirdら,Science,242,423−426(1988)、これらは、本明細書中によってその全体が参考として援用される)、ならびに二機能性ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchiaら,Eur。J.Immunol.17,105(1987))を包含する。[全体的には、Hoodら,Immunology,Benjamin,N.Y.,第2版(1984)、HarlowおよびLane,Antibodies.A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、ならびにHunkapillerおよびHood,Nature,323,15−16(1986)、これら全ての内容は、本明細書によってその全体が参考として援用される]。
【0061】
例えば、本発明のGDF8ペプチドによって免疫された動物から、標準的な方法を用いて生成された血清は、直接的に使用され得るか、またはIgG分画が、標準的な方法(例えば、プラスマフェレーシス(plasmaphoresis)、もしくはIgG特異的吸着体(例えば、固定されたプロテインAおよびプロテインG)を用いた吸着クロマトグラフィー)を用いて血清から分離され得る。あるいは、モノクローナル抗体が調製され得る(および必要に応じて、そのようなmAbに由来するフラグメントまたは組み換え結合タンパク質)。そのようなMAbまたはそのフラグメントは、必要に応じて、当該分野で公知の方法によってヒト化され得る。
【0062】
本発明のGDF8ペプチドに選択的に結合するmAbを産生するハイブリドーマは、周知の技術によって産生される。通常、このプロセスは、不死化細胞株と、所望の抗体を産生するBリンパ球との融合を包含する。あるいは、不死の抗体産生細胞株を生成するための非融合技術が使用され得る(例えば、ウイルス誘導性形質転換[Casaliら,Science 234:476(1986)])。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞(特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞)である。最も頻繁には、ラットまたはマウスミエローマ細胞株が、便宜上および利用可能性の点で、利用される。
【0063】
抗原を注射された哺乳動物から抗体産生性リンパ球を得るための技術は、周知である。一般的に、ヒト起源の細胞が利用される場合、末梢血リンパ球(PBL)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物供給源からは脾臓またはリンパ節の細胞が使用される。宿主動物は、精製抗原の反復投薬を用いて注射され(ヒト細胞は、インビトロで感作され)、そしてその動物は、それの細胞が不死化細胞株との融合のために収集される前に、所望の抗体産生性細胞を作らされる。融合のための技術は、当該分野で周知であり、一般的に、細胞を融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)と混合する工程を包含する。
【0064】
ハイブリドーマは、標準的手順(例えば、HAT(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン)選択)によって選択される。所望の抗体を分泌するものは、標準的イムノアッセイ(例えば、ウエスタンブロッティング、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、RIA(放射免疫アッセイ)など)を用いて選択される。抗体は、標準的タンパク質生成技術を用いて培地から回収される[Tijssen,Practice and
Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985)].
多くの参考文献が利用可能であり、上記技術の適用における指針を提供する [Kohlerら,Hybridoma Techniques(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1980);Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985);Campbell,Monoclonal Antibody Technology(Elsevier,Amsterdam,1984); Hurrell,Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications(CRC Press,Boca Raton,FL,1982)]。モノクローナル抗体はまた、周知のファージライブラリ系を用いて生成され得る。例えば、Huseら,Science 246:1275(1989);Wardら,Nature,341:544(1989)を参照のこと。
【0065】
したがって、ポリクローナルかモノクローナルかのいずれかで生成された抗体は、例えば、周知の方法によって固体支持体に結合された固定形態で使用されて、イムノアフィニティークロマトグラフィーによってGDF8ペプチドを精製し得る。
【0066】
GDF8ペプチドに対する抗体もまた、イムノアッセイの基準として使用され(標識されないかまたは標準的方法で標識され)、GDF8を検出または定量化し得る。使用される特定の標識は、イムノアッセイの型に依存する。使用され得る標識の例としては、が挙げられるが、放射性標識(例えば、32P、125I、Hおよび14C);蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシルおよびアンベリフェロン(umbelliferone));化学ルミネッサー(chemiluminescer)(例えば、ルシフェリア(luciferia)および2,3−ジヒドロフタラジンジオン);ならびに酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リゾチームおよびグルコース−6−ホスファターゼデヒドロゲナーゼ)これらに限定されない。
【0067】
抗体は、公知の方法によって、このような標識でタグ化され得る。例えば、カップリング剤(例えば、アルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、イミデート、スクシンイミド、ビスジアゾ化ベンザジンなど)が、蛍光、化学発光、または酵素標識で抗体をタグ化するために使用され得る。関連する一般的な方法は、当該分野で周知であり、例えば、Immunoassay:A Practical Guide,1987,Chan(編),Academic Press,Inc.,Orlando,FLに記載される。このようなイムノアッセイは、例えば、レセプターの精製の間に得られた分画で実行され得る。
【0068】
本発明の抗体はまた、発現クローニング系において、GDF8関連ペプチドを発現する特定のcDNAクローンを同定するために使用され得る。レセプターのリガンド結合部位に対して特異的な中和抗体は、GDF8機能をブロックまたはダウンレギュレートするアンタゴニスト(インヒビター)として使用され得る。そのような中和抗体は、以下の実施例によって例示されるような慣習的な実験を通じて、容易に同定され得る。
【0069】
GDF8活性の拮抗作用は、完全な抗体分子、または周知の抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fc、F(ab)およびFvフラグメント)を用いて達成され得る。このようなフラグメントの定義は、本明細書において上述されるように、またはKlein,Immunology(John Wiley,New York,1982);Parham,第14章、Weir編、Immunochemistry,第4版(Blackwell Scientific Publishers,Oxford,1986)において見出され得る。抗体フラグメントの使用および生成もまた記載されている、例えば:Fabフラグメント[Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985)]、Fvフラグメント[Hochmanら,Biochemistry 12:1130(1973);Sharonら,Biochemistry 15:1591(1976);Ehrlichら,米国特許第4,355,023号]、および抗体半分子(antibody half molecule)(Auditore−Hargreaves,米国特許第4,470,925号)。公知の抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列に基づく組み換えFvフラグメントを作製する方法が、さらに記載されている(例えば、Mooreら(米国特許第4,642,334号)およびPlueckthun[Bio/Technology 9:545(1991)]。あるいは、これらは、標準的な方法によって化学的に合成され得る。
【0070】
本発明はまた、抗イディオタイプ抗体(ポリクローナルとモノクローナルの両方)を包含する。これらは、上述の抗体を抗原として使用して生成される。これらの抗体は、リガンドの構造を模倣し得るので、有用である。
【0071】
(ペプチド合成)
本発明のGDF8ペプチド(例えば、本明細書において以下に例示されるDJ5ペプチド)は、比較的短く(例えば、好ましくは50アミノ酸残基以下)、ペプチド合成の公知の方法によって調製され得る。合成ペプチドまたはポリペプチド(周知の固相技術、液相技術もしくはペプチド縮合技術,またはそれらの任意の組み合わせを用いて調製される)は、天然もしくは非天然のアミノ酸を含み得る。ペプチド合成のために使用されるアミノ酸は、Merrifield[J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2154(1963)]の元々の固相手順の、標準的脱保護、中和、カップリングおよび洗浄プロトコールを用いた標準的Boc(Nα−アミノ保護化Nα−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、またはCarpinoおよびHan[J.Org.Chem.,37:3403−3409(1972)]によって最初に記載された、塩基不安定Nα−アミノ保護化9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であり得る。FmocもBoc Nα−保護化アミノ酸も、Fluka,Bache,Advanced Chemtech,Sigma,Cambridge Research Biochemical,BachemまたはPeninsula Labs、または当業者が精通する他の化学企業から得ることができる。さらに、本発明の方法は、当業者が精通する他のNα−保護基とともに使用され得る。固相ペプチド合成は、当業者が精通する技術によって達成され得、そして、例えば、StewartおよびYung、SOLID PHASE SYNTHESIS、第2版、Pierce Chemical Co.,Rockford,III.(1984);FieldsおよびNoble,Int.J.Pept.Protein Res.35:161−214(1990)において、またはABS[Applied Biosystems,850 Lincoln Centre Drive,Foster City,CA 94404 USA]によって販売されるような自動合成機を用いて提供され得る。したがって、本発明のGDF8ペプチドは、D−アミノ酸、D−アミノ酸とL−アミノ酸との組み合わせ、および種々の「娘」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸およびNα−メチルアミノ酸など)を含み、特定の特性を伝え得る。合成アミノ酸としては、リジンに対するオルニチン、フェニルアラニンに対するフルオロフェニルアラニン、そしてロイシンもしくはイソロイシンに対するノルロイシンが挙げられる。さらに、特定のカップリング工程において特定のアミノ酸を割り当てることによって、α−ヘリックス、β−ターン、β−シート、γ−ターン、および環状ペプチドが生成され得る。
【0072】
(抗GDF8抗血清)
本発明の方法は、ポリクローナル抗GDF8抗血清に対するGDF8ペプチドをスクリーニングするプロセスを含んだ。このプロセスは、特定の抗GDF8抗体が高度に特異的な様式で結合するエピトープを同定した。抗GDF8抗血清は、前駆体GDF8で動物を免疫することによって得られた。前駆体GDF8遺伝子は、発現および免疫原性について最適化された形態を提供するように改変された。例えば、GDF8プロホルモンの天然のDNA配列(配列番号2)は、哺乳動物中での発現およびウイルス発現系に関して最適化された。さらに、ウイルス宿主遮断機構のネガティブな効果を回避するように変更がなされた。代表的に、ウイルス宿主遮断機構は、転写制御、RNA安定性(スプライシング)などに関する。これらの変更は、核酸をより宿主様でなくし、そしてよりウイルス様にした。
【0073】
さらに、DNA配列は、好ましくは、哺乳動物核酸配列からできるだけ相違するように設計された。例えば、前駆体GDF8のアミノ酸配列は、酵母好適コドン(yeast preferred codon)を用いて逆翻訳された。得られた配列を、ヒトGDF8核酸配列に対して相同性を保持していたコドンに関して調査した。可能であれば、これらのコドンは、同じアミノ酸をコードする次に最も好ましい酵母コドンで置換されていた。
【0074】
得られた最適な遺伝子(配列番号3)は、任意の適切な宿主系(公知の昆虫、哺乳動物、細菌、ウイルス、および酵母発現系が挙げられる)において発現され得る。例えば、昆虫細胞発現系(例えば、バキュロウイルス系)は公知であり、そして例えば、SummersおよびSmith,Texas Agricultural Experiment
Station Bulletin No.1555(1987)によって記載されている。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系に関する材料および方法は、inter alia,Invitrogen,San Diego Calif.からキット形態で市販されている(「MaxBac」キット)。同様に、細菌細胞発現系および哺乳動物細胞発現系は当該分野で周知であり、例えば、Sambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL;DNACloning,Vols.IおよびII;D.N.Glover編)によって記載されている。酵母発現系もまた当該分野で公知であり、例えば、YEAST GENETIC ENGINEERING(Barrら(編),1989),Butterworths,Londonによって記載されている。多くの他のこのような発現系は、当該分野で公知であり、キットの形態で市販されている。本明細書において例示されるように、改変前駆体GDF8遺伝子(配列番号3)は、以下の実施例1において詳述されるように、Flp−InTMCHO発現系(Invitrogen,Carlsbad,CA)において発現された。
【0075】
前駆体GDF8タンパク質、および成熟GDF8タンパク質のペプチドは、任意のタンパク質もしくはペプチドの適合性ワクチン組成物に組み込まれ得る。このようなワクチン組成物は、当該分野で周知であり、そして例えば、本明細書において以下に詳述されるように、生理学的に適合性の緩衝液および生理食塩水など、ならびにアジュバントを含む。前駆体GDF8タンパク質を含むワクチン組成物は、抗GDF8抗体に対する特異的中和エピトープをスクリーニングおよび同定するための抗血清を誘発するために利用される。
【0076】
本明細書において例示されるように、配列番号3を含むベクターによって発現される精製前駆体GDF8タンパク質は、フロイント完全アジュバント(CFA)中に乳化された1gの前駆体GDF8タンパク質を含有するワクチン組成物中において、ヤギに注射される。このワクチン組成物は、好ましくは、ヤギの皮下に皮下(SC)注射される。この後の追加免疫が好ましい。これらは、同じもしくは低下したタンパク質の量(dosage)を用いて適切なさらなる間隔で(例えば、最初の注射後2〜5週間の範囲の間隔で)投与され得る。
【0077】
最初の注射後の約2週間から始めて、好ましくは、より長期間(例えば、3〜15週間以上)の後で開始して、免疫された動物から、必要に応じて、血清が回収される。次いで、回収された血清は、好ましくは、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−セファロース、プロテインG−アガロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、適切なリガンドを用いたアフィニティークロマトグラフィーなど)によって精製および/もしくは分画される。本明細書において例示されるように、血清のIgG分画は、プロテインG−アガロースカラム上でさらに分画化される。
【0078】
抗GDF8抗血清IgG分画は、本明細書において以下の実施例3で詳述されるように、成熟GDF8のある範囲のペプチドに対してスクリーニングするために利用可能である。
【0079】
(GDF8結合エピトープ)
適切な抗GDF8モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を、抗体がタンパク質に選択的に結合するために十分な時間、GDF8タンパク質と接触させた。その後、GDF8バイオアッセイは、その抗体がGDF8タンパク質活性の実質的に全てを中和したことを確証した。任意のGDF8バイオアッセイが、この目的のために使用され得るが、本明細書において以下の実施例3で例示されるように、Thiesら,2001,(Growth Factors 18,251)によるインビトロ転写活性アッセイが好ましい。
【0080】
一般的に、本発明の、抗原または結合エピトープとして有用なGDF8ペプチドは、GDF8(配列番号1)のおよそ残基312〜およそ残基361を含む。特に、本発明のペプチドは、GDF8(配列番号1)のおよそ残基320〜およそ残基350を含む。このペプチドは、好ましくは、GDF8(配列番号1)のおよそ残基327〜およそ残基346を含む。
【0081】
当業者は、本発明のGDF8ペプチドが、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含むように、任意の位置で容易に改変され得ることを理解する。好ましくは、ペプチドは、本明細書において以下に例示されるように、ラットモノクローナル抗体788に特異的に結合する。このような保存的置換としては、例えば、残基328、残基329および残基335、およびそれらの組み合わせにおける改変が挙げられる(ここで、アミノ酸残基328は、His、Leu、AsnもしくはValであり、;アミノ酸残基329は、Lysもしくは Leuであり;そしてアミノ酸残基335は、SerもしくはProもしくはThrである)。前駆体GDF8の残基328、残基329および残基335は、図2に示されるように、GDF8タンパク質配列内で、種にわたって変動するが、それにもかかわらず、成熟GDF8は機能を残している。
【0082】
図1は、その前駆体タンパク質の状態における、(成熟タンパク質を形成する)GDF8活性領域の地図を示す。GDF8活性領域の地図上に重ねられているのは、7つの重複するペプチドの位置である。これらの重複するペプチドは、GDF8の抗体結合エピトープ(単数または複数)を同定するための標的を提供するために設計された。DJ5として標識されたペプチドは、例示された抗血清に対する唯一の有意なGDF8の結合エピトープとして例示された、ヤギ抗GDF8抗血清のIgG分画を用いたスクリーニングによって同定された。このペプチドは、前駆体GDF8(配列番号1)の残基327〜残基346に対応する配列(配列番号8)を有する。
【0083】
(GDF8ペプチドワクチン組成物)
上記のGDF8ペプチドは、好ましくは、ワクチン組成物へと処方され得る。これらのワクチン組成物は、高度に特異的な抗GDF8免疫応答を誘発する目的で動物を免疫するために利用され得る。免疫化の結果は、免疫された動物におけるGDF8機能のダウンレギュレーションである。このようなワクチン組成物は、当該分野で周知であり、例えば、生理学的に適合性のある緩衝液、保存剤、および生理食塩水など、ならびにアジュバントを含む。
【0084】
「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を非特異的に増大させ、それによって、所与のワクチンにおいて必要な抗原の量、および/または目的の抗原に対する適切な免疫応答を生じるために必要な注入の頻度を低減させる因子である。動物のワクチン接種のために適切なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Adjuvant 65(ピーナッツ油、マンニドモノオレエート(mannide monooleate)およびアルミニウムモノステアレートを含有する;フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント;鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびミョウバン);界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシメチル)プロパンジアミン、メトキシヘキサデシルグリセロールおよびプルロニックポリオール(pluronic
polyol);ポリアニオン(例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸およびカルボポール);ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシンおよびタフトシン;ならびに油乳濁液。タンパク質またはペプチドはまた、リポソ−ムまたは他のマイクロキャリア中への組み込みの後に投与され得る。アジュバントおよびイムノアッセイの種々の局面に関する情報は、例えば、P.Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,第3版(1987,Elsevier,New York)によるシリーズ(本明細書において参考として援用される)に開示されている。
【0085】
ワクチン組成物は、免疫応答を誘発するのに十分な量の所望される免疫原(例えば、本発明のGDF8ペプチド)を含む。投与される量は、動物の質量に対して、約0.0001g/kg〜約1.0g/kgの範囲であり得る。任意の適切な獣医学的動物が、ポリクローナル抗血清を得るために容易に利用され得る。好ましくは、動物は、哺乳動物であり、これには、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ(ovine)(例えば、ヤギおよびヒツジ(sheep))、霊長類(例えば、サル、大型類人猿およびヒト)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
ワクチン組成物は、任意の標準的経路(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、卵内(特に家禽に対して)、および/または経口が挙げられる)によって容易に投与される。魚類の種については、ワクチン組成物または免疫原性組成物を投与する方法は、上述、ならびに抗原性濃度のペプチドを含む水に魚を浸す工程、魚を水から短時間離している間に抗原性濃度のペプチドを魚に噴霧する工程、などを包含する。当業者は、ワクチン組成物が、各型のレシピエント動物および各型の投与経路に対して適切に処方されることが好ましいことを理解する。
【0087】
適切な動物被験体としては、野生のもの、家畜(例えば、肉、乳、バター、卵、毛皮、皮革、羽毛、および/もしくは羊毛のために育てられたもの)、荷役用の動物、研究用動物、コンパニオン動物、ならびに動物園用/動物園内、野生生息環境用/野生生息環境内、および/またはサーカス用/サーカス内で育てられた動物が挙げられ得る。特定の実施形態において、動物は、大型類人猿(例えば、ゴリラ)またはヒトである。
【0088】
1つの好ましい実施形態において、動物は、「食物生産用」動物であり、免疫の結果、この動物の重量、特に筋肉量は、免疫されない動物に対して増加する。本発明の目的に関して、用語「食物生産用」動物は、ヒトおよび/もしくは他の動物によって消費されるため、または消耗品(consumable)(例えば、卵または乳)を生産するために繁殖させられるあらゆる動物を含むと理解されねばならない。このような動物の非限定的な列挙としては、以下が挙げられる:トリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ)、ウシ(例えば、肉牛(beef/veal cattle)、乳牛、繁殖用の種ウシ、バッファロー)、ブタ(例えば、雄ブタ(hog)もしくはブタ(pig))、ヒツジ(ovine)(例えば、ヤギもしくはヒツジ(sheep))、ウマ(equine)(例えば、ウマ(horse))、ならびに水生動物(甲殻類およびマスもしくはサケのような魚を含む)、そしてヒト消費のために生育もしくは収穫される他の種。
【0089】
本発明の目的に関して、用語「魚」は、限定されることなく、魚の真骨下綱(Teleosti)群(すなわち、硬骨魚(teleost))を包含することが理解されねばならない。サケ目(サケ科を含む)およびスズキ目(クロマス科を含む)は、真骨下綱群に含まれる。
【0090】
考えられる魚レシピエントの例としては、サケ科、ハタ科、タイ科、カワスズメ科、クロマス科、イサキ(three−Line Grunt)(Parapristipoma trilineatum)、およびブルーアイ・プレコストマス(Blue−Eyed Plecostomus)(Plecostomus種)が挙げられる。
【0091】
【化3】

【0092】
【化4】

【0093】
さらなる好ましい実施形態において、動物は、コンパニオン動物またはヒトであり、ワクチンは、GDF8の長期ダウンレギュレーションを提供するように、そのようなGDF8ダウンレギュレーションに応答する任意の獣医学的目的または医療目的のために、投与される。本発明の目的に関して、用語「コンパニオン」動物が、あらゆる動物−ウマ(horse(equine))、ネコ(cat(feline))、イヌ(dog(canine))、げっ歯類(マウス、ラット、モルモットを含む)、ウサギ種、およびトリ(例えば、ハト、オウムなど)−を含むことが理解されねばならない。
【0094】
このようなワクチン接種または抗体を受容する他の鳥類は、販売されている鳥類飼養または販売されていない鳥類飼養のいずれかに関連し得る。これらとしては、例えば、ガンカモ類(例えば、ハクチョウ)、ハト科(Columbidae)(例えば、ハト(dove)およびハト(pigeon)(例えばドバト))、キジ科(例えば、ヤマウズラおよびライチョウ)、Thesienidae,Psittacines(例えば、インコ、コンゴウインコおよびオウム(例えば、ペットもしくは収集家の市場のために生育されたもの))、ならびに平胸類の科の任意のメンバーが挙げられる。
【0095】
別の好ましい実施形態において、任意の上記の動物(好ましくは、非ヒト)が、 本発明のペプチドに特異的に結合する抗GDF8抗体を得るために免疫され、そして誘発された抗体は、アッセイ、および/または獣医学もしくはヒト医療において、例えば、GDF8のダウンレギュレーションに応答する任意の獣医学的もしくは医学的目的のためにGDF8のダウンレギュレーションを提供する目的で使用するために、収集される。
【0096】
本発明は、本発明の例示として提供される、以下の非限定的な実施例を参照することによって、よりよく理解され得る。以下の実施例は、本発明の実施形態をより十分に説明するために提示され、決して、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
(材料および方法)
(A.前駆体GDF8(GDF8プロホルモン)の発現および精製)
前駆体GDF8またはプロホルモンの天然DNA配列(配列番号2)を、哺乳動物発現系およびウイルス発現系における発現のために最適化した。ウイルス宿主遮断機構のネガティブな効果を回避するため、DNA配列を、哺乳動物核酸とはできる限り相違するように設計した。これを達成するため、GDF8プロホルモンのアミノ酸配列を、酵母好適コドンを使用して逆翻訳した。得られた配列を、ヒトGDF8核酸配列に対する相同性を保持しているコドンに関して調査した。可能であれば、これらのコドンを、同じアミノ酸をコードする次に最も好ましい酵母コドンで置換した。得られた核酸分子(配列番号3)を、適切な発現ベクター中に組み込むために、業者に合成させた。
【0098】
Flp−InTMCHO発現系(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、最適化されたGDF8プロホルモンを発現させた。簡単にいうと。C末端FLAG(登録商標)(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)エピトープ融合体を含むGDF8プロホルモン構築物を、改変GDF8プロホルモンをコードする遺伝子をプラスミドpCMVtag4B(Stratagene,San Diego,CA.)に挿入することによって構築した。FLAG融合タグは、抗FLAG(登録商標)ゲルカラム上でのFLAG(登録商標)融合タンパク質の分離を容易にする。次いで、改変GDF8プロホルモン−FLAG(登録商標)遺伝子を含むPCR DNAフラグメントをプラスミド発現ベクターpcDNA5/FRT(Invitrogen,Carlsbad,CA)中にクローニングした。GDF8プロホルモン−FLAG(登録商標)融合タンパク質を発現するFlp−InTMCHO細胞株の生成を、Flp−InTMCHO細胞株の、GDF8−FLAG(登録商標)遺伝子を含むFlp−InTM発現ベクターとFlpリコンビナーゼ発現プラスミドPOG44との同時トランスフェクションによって達成した。Flpリコンビナーゼは、部位特異的DNA組み換えによって、組み込まれたFRT部位におけるFlp−In発現カセットのゲノムへの挿入を媒介する。ハイグロマイシンB選択を用いて、FLAG(登録商標)エピトープを含むGDF8プロホルモンを発現および分泌する安定細胞株を得た。
【0099】
FLAG(登録商標)タグを含むGDF8プロホルモンを発現する安定CHO細胞株を、標準的技術を用いて、無血清培地中での懸濁培養に適応化した。分泌GDF8プロホルモンを含む条件培地を、WAVEバイオリアクターシステム(WAVE Biotech
LLC,Bridgewater,NJ)を使用して作製した。FLAG(登録商標)タグ化GDF8プロホルモンの精製を、抗FLAG(登録商標)M2アフィニティーゲル(Sigma−Aldrich Corp.,St.Louis,MO)を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって達成した。
【0100】
(B.DJ5特異的抗体の精製)
DJ5(配列番号8;以下の表2を参照のこと)特異的抗体分画を、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製した。アフィニティーカラムを、10mgのDJ5合成ペプチドを0.8gの臭化シアン活性化Sepharose 4B(Sigma Genosys,Woodlands,TX)に結合させることによって調製した。このカラムを、PBSで洗浄し、平衡化した。およそ11mlのヤギIgG分画(10mg/ml)をこのアフィニティーカラムに適用し、そして25mlのPBSで洗浄した。1.0mlの分画を収集し、280nmでの吸光についてモニタリングした。結合した材料を、およそ10mlの0.2Mグリシン(pH 1.85)で溶出した。1.0mlの分画を収集し、0.25mlの0.5Mリン酸ナトリウム、0.75M NaC(pH 7.4)で中和した。未結合分画1〜10および結合分画25〜35のおよそ25μlのアリコートを、DJ5ペプチドに対するELISA反応性についてアッセイした。未結合分画が、DJ5反応性に関してネガティブであることを見出した。結合分画は、DJ5ペプチドに対する反応性の強いピークを示した。未結合分画1〜11および結合分画26〜34をプールした。プールしたサンプルを濃縮し、それらの緩衝液を、以下に示されるようにリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)と交換した。サンプル濃縮物を、OD280法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY.2.7.3,John
Wiley & Sons,Inc.)によって判定した。以後の使用のために、未結合サンプルを10mg/mlに調整し、結合サンプルを1mg/mlに調整した。
【0101】
(実施例2)
(ヤギ抗GDF8ポリクローナルIgG血清)
以下の方法によって免疫したヤギから、ヤギ抗前駆体GDF8 IgGを得た。
【0102】
(A.ヤギの免疫化)
ザーネン(Saanen)(乳)ヤギ(およそ2歳の雄)を、精製した組み換えGDF8プロホルモン(上記の実施例1に記載するように得たもの)で、以下のように免疫した。0.5mgのタンパク質をフロイント完全アジュバント(CFA)中に乳化し、そしてヤギの皮膚の下に皮下(SC)注射した。続いて、3週、6週、および10週において追加免疫をSCに投与し、これはフロイント不完全アジュバント(IFA)中に乳化した0.3mgのタンパク質を含んだ。シリンジと針とによって頚静脈から血液を採取し、そして真空瓶および真空管に採った。この血液を抗凝固剤を含む瓶に集め、2500RPMで20分間遠心分離して、赤血球を除去した。血漿を再石灰化して、血清を生成した。最初の免疫の15週後に集めた血清サンプルを、さらなる分析に使用した。
【0103】
(B.ヤギポリクローナルIgGの収集および精製)
15週後、ヤギから血清を回収し、この血清から、以下のようにIgG分画を精製した。ヤギ血清のIgG分画を、プロテインGアガロースカラム上で、製造者(Kirkegaard and Perry Laboratories,Inc.,Gaithersburg,MD)のプロトコールに従って精製した。溶出分画をプールし、濃縮し、そして緩衝液を、Centriprep遠心分離フィルター(Centriprep YM−10,Millipore Corporation,Billerica,MA)を利用してリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)と交換した。サンプル濃縮物を、OD280法(CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,同上)で判定し10mg/mlに調整した。
【0104】
(実施例3)
(ヤギ抗血清の特徴付け)
上記の実施例2によって提供されたヤギ抗血清を、PGAと称する。PGA IgG分画がGDF8プロホルモン分子上の種々のエピトープに指向する抗体を含むことが、予測される。PGA抗血清を、以下のように、インビトロ転写活性アッセイによって特徴付けた。GDF8生体中和を定量的に測定するために使用されるインビトロ転写活性アッセイは、本質的に、Thiesら(Growth Factors 18,251(2001))のアッセイである。96ウェル組織培養処理されたルミノメーターViewPlateTMアッセイプレート(PerkinElmer Life and Analytical Sciences,Inc.,Boston,MA)に、1.0×10細胞/ウェルのA24横紋筋肉腫細胞(ATCC HTB−82)を播種し、37℃、5%COで、加湿されたチャンバー内でインキュベートした。完全A204培養培地は、McCoy’s 5A培地、10%ウシ胎仔血清、2%L−グルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンから構成される。80%を超えるコンフルエンスに達した場合、FUGENEトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN)の製造者によって推奨されるプロトコールを用いて、プラスミドpDPC4−ルシフェラーゼとHCMV IE−lacZとの混合物で細胞を一過性にトランスフェクトし、37℃、5%COで、加湿されたチャンバー内で16時間インキュベートした。プラスミドpDPC4−ルシフェラーゼは、4コピーのヒトプラスミノーゲン活性化因子インヒビター(PAI−1)に由来するCAGAボックスを含む(これは、異種プロモーターレポーター構築物にGDF8反応性を与える)。
【0105】
プラスミドHCMV IE−lacZは、構成的ヒトサイトメガロウイルス即時初期プロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含む。この遺伝子は、トランスフェクション効果を標準化するためのコントロールとして、添加される。次いで、細胞を100ng/ウェルのGDF8タンパク質(R & D Systems Inc.,Minneapolis,MN)で処理し、37℃、5%COで、加湿されたチャンバー内で16時間さらにインキュベートした。処理細胞において、Dual−Light Luciferase Assay(Tropix,Applied Biosystems,Foster City CA)を使用して、ルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼを定量化した。
【0106】
各サンプルを2つ組(2ウェル)で実行した。各ウェルのシグナルを、ルシフェラーゼのシグナル÷β−ガラクトシダーゼシグナル×100として計算した。サンプルシグナルを2つのウェルの平均として計算した。
【0107】
抗体サンプルの生体中和活性を試験するため、細胞の処理の前に、種々の濃度の精製IgG分画をGDF8タンパク質とともに(およそ16時間、4℃で)インキュベートした。パーセント阻害を、100−(100×サンプルシグナル)/(GDF8単独でのシグナル−GDF8添加なしのシグナル)として計算した。このインビトロ転写活性アッセイの結果を、以下の表1にまとめる。
【0108】
(表1)
(ヤギ血清PGAに関するGDF8中和力価)
【0109】
【表1】

【0110】
中和アッセイは、回収されたヤギ血清のIgG分画が、この活性アッセイにおいて使用されたGDF8の少なくとも95%を中和し得る抗体を含むことを確証した。
【0111】
(実施例4)
(ヤギポリクローナル抗体は、GDF8タンパク質の特異的中和エピトープを規定する)
中和性免疫応答の特異性を決定するために、PGA IgG分画を、活性GDF8タンパク質の全コード領域にわたる7つの重複ペプチドのセット(DJ1〜7、表2および図1を参照のこと)を用いて、その反応性についてアッセイした。各個別のペプチドに対するヤギPGA IgGの反応性を、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって決定した。GDF8ペプチドELISAを、本質的に、Protein DetectorTMELISA Kit HRP ABTS System(Kirkegaard and Perry Laboratories,Inc.,Gaithersburg,MD)において記載されるように行った。このアッセイにおいて、以下の改変を用いた。合成ペプチドDJ1〜7(以下の表2を参照のこと)は、本発明者らの指示の下、ProSci,Inc.(Poway,CA)によって注文合成された。プレートを500ng/ウェルの合成ペプチドおよび250ng/ウェルの精製GDF8プロホルモンによってコーティングした。一次抗体は、種々のサンプル由来のIgG分画であった。二次抗体を、1:2000希釈で使用した。ヤギ一次抗体サンプルに対しては、二次抗体は、ヤギIgGに対するウサギペルオキシダーゼ標識抗体であった。ラット一次抗体サンプルに対しては、二次抗体は、ラットIgGに対するヤギペルオキシダーゼ標識抗体であった。OD405nmをELISAプレートリーダーで15分間読み取った。ELISA反応性をOD405/分×1000として計算した。
【0112】
(表2)
(GDF8活性領域ペプチド)
【0113】
【表2】

【0114】
ヒトGDF8プロホルモン(Genebank登録番号NP_005250)に対して
ELISAの結果を以下の表3にまとめる。
【0115】
(表3)
(GDF8活性領域ペプチドに対するPGA IgG(10mg/ml)のELISA反応性)
【0116】
【表3】

【0117】
ペプチド、**プロホルモン
PGA IgG分画は、精製GDF8プロホルモンおよびDJ5ペプチドの両方に特異的に反応した。GDF8活性領域ペプチドの中でも、IgG分画は、特異的かつ排他的にDJ5ペプチドに反応する。これは、この結成の中和能がDJ5ペプチドによって規定されるエピトープに対して指向することを強く示す。この仮説を確認するため、PGA IgGのDJ5特異的分画を精製した。材料および方法において記載されるようなアフィニティークロマトグラフィーによって、これを達成した。PGA抗体を、DJ5ペプチド結合分画とDJ5ペプチド未結合分画とに分離した。両分画を、GDF8タンパク質に対する中和活性についてアッセイした。
【0118】
表4の結果は、大部分のGDF8中和能が、DJ5ペプチドに特異的に結合する抗体とともに存在することを示す。このことは、DJ5ペプチドがGDF8タンパク質の中和エピトープを規定することを、明確に実証する。
【0119】
(表4)
(DJ5特異的抗体のGDF8中和活性)
【0120】
【表4】

【0121】
**正常ヤギIgGは、非免疫ヤギ血清(業者から購入)から精製されたネガティブコントロールであった。
【0122】
興味あることに、予備実験において、2羽のウサギをキーホールリンペットヘモシニアンに結合したヒトDJ5抗原を用いて注射した場合、中和GDF8抗体は得られなかった。図2において見ることができるように、ウサギについてのDJ5に対応するアミノ酸配列とヒトGDF8に対応するアミノ酸配列とは、同一であるが、一方、ヤギDJ5のアミノ酸配列は異なっている。したがって、ヤギについて上記で提供されたデータに関して、予備的なウサギのデータは、宿主動物GDF8の対応する領域/部分のアミノ酸配列異なるアミノ酸配列を含むDJ5抗原を使用することが有利であり得ることを示唆する。したがって、この場合、組み換えヒトGDF8プロホルモンの、ヤギにおいて生体中和抗体を誘導する能力は、少なくとも部分的に、使用された抗原が、GDF8のDJ5領域/部分における一アミノ酸置換によって、宿主配列のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含んだという事実に起因し得る[図2のアミノ酸残基333を参照のこと]。より詳細には、図2に示すように、ヒト配列におけるArg333は、ヤギ配列においてLys333残基によって置換されている。この孤立した保存的アミノ酸置換は、ヤギの免疫学的監視系に対してタンパク質の「外来性」を与えるのに十分に有意な変更を構成し得る。
【0123】
(実施例5)
(GDF8中和性Rat mAB 788は、GDF8タンパク質の特異的中和エピトープを規定する)
ラットモノクローナル抗体 788がマウスGDF8生物活性を中和することが報告されている(R & D SystemsInc.,Cat.No.MAB788,Minneapolis,MN)。この結果を確認するために、本発明者らは、GDF8タンパク質に対する中和活性について、モノクローナル抗体をアッセイした。抗体を上記の実施例2に記載されるように特徴付けた。このアッセイの結果を、以下の表5にまとめる。
【0124】
(表5)
(モノクローナル抗体 788に対するGDF8中和力価)
【0125】
【表5】

【0126】
表5は、この抗体が、GDF8タンパク質の活性を中和し得ることを確証する。この中和免疫応答の特異性を決定するため、ラットモノクローナル抗体を、活性GDF8タンパク質のコード領域全体にわたる7つの重複ペプチドのセット(DJ1〜7、表2および図1を参照のこと)との、その反応性に関してアッセイした。各個別のペプチドに対するモノクローナル抗体の反応性を、ELISAアッセイによって決定した(材料および方法を参照のこと)。
【0127】
(表6)
(Rat MAB 788(10mg/ml)のGDF8活性領域ペプチドに対するELISA反応性)
【0128】
【表6】

【0129】
ペプチド、**タンパク質
ラットモノクローナル抗体は、精製GDF8プロホルモンとDJ5ペプチドとの両方に特異的に反応した。代表的に、モノクローナル抗体は、単一のエピトープに対する単特異性(mono specificity)を有する。GDF8活性領域ペプチドの中で、このモノクローナル抗体は、DJ5ペプチドと特異的かつ排他的に反応する。この結果は、DJ5ペプチドがGDF8タンパク質の中和エピトープを規定するというさらなる独立した証拠を提供する。
【0130】
本発明の多くの改変および変更は、当業者に理解されるように、その精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書において記載される特定の実施形態は、例示の目的でのみ提供され、そして本発明は、添付の特許請求の範囲の条件、合わせてそのような特許請求の範囲が権利付与する等価物の全範囲の条件によってのみ限定されるべきである。本明細書において、刊行された、および/もしくはインターネットで公開された核酸配列およびポリペプチド/タンパク質配列のGenebank登録番号を含む、多くの参考文献が引用される。これらの開示は、その全体が、参考として援用される。
【0131】
(配列表)
【0132】
【数1】

【0133】
【数2】

【0134】
【数3】

【0135】
【数4】

【0136】
【数5】

【0137】
【数6】

【0138】
【数7】

【0139】
【数8】

【0140】
【数9】

【0141】
【数10】

【0142】
【数11】

【0143】
【数12】

【0144】
【数13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−83290(P2011−83290A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−10279(P2011−10279)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2006−547309(P2006−547309)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(503442097)シェーリング−プラウ・リミテッド (47)
【住所又は居所原語表記】Weystrasse20,Lucerne6,CH−6000,Switzerland
【Fターム(参考)】