説明

中和物の製造方法

【課題】脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を中和させる際における中和凝集物の形成を抑制する。
【解決手段】脂肪酸配合液とアルカリ配合液とを接触させた後、それらを混合中和用細孔に流通させて混合すると共に中和させる中和物の製造方法は、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触から混合中和用細孔への流入までの滞留時間を1秒以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物の製造方法及びそれに用いられる中和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸とアルカリとを中和させる技術が種々の分野で応用されている。
【0003】
特許文献1には、脂肪酸とアルカリとの中和反応によって得られる脂肪酸のアルカリ金属塩を界面活性剤として石鹸等に用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、汚泥等の懸濁水に凝集剤を添加して中和反応により凝集処理する方法において、凝集反応槽に接続された導入配管に細径配管を設け、その細径配管の直前の移送配管に凝集剤を注入することが開示されている。
【特許文献1】特開2000−119243号公報
【特許文献2】特開2004−160353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を中和させる際における中和凝集物の形成を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の中和物の製造方法は、脂肪酸配合液とアルカリ配合液とを接触させた後、それらを混合中和用細孔に流通させて混合すると共に中和させるものであって、
脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔への流入までの滞留時間を1秒以下とする。
【0007】
本発明の中和装置は、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物の製造に用いられるものであって、
装置内に、
脂肪酸配合液を供給するための脂肪酸供給路と、
上記脂肪酸供給路とは独立して設けられた、アルカリ配合液を供給するためのアルカリ供給路と、
上記脂肪酸供給路及び上記アルカリ供給路のそれぞれが連通するように設けられた、該脂肪酸供給路からの脂肪酸配合液と該アルカリ供給路からのアルカリ配合液とを接触させるための液滞留室と、
上記液滞留室から連続して設けられた、脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を流通させて混合すると共に中和させるための混合中和用細孔と、
が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔への流入までの滞留時間を1秒以下と非常に短くすることにより、混合中和用細孔の手前において、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物が成長して中和凝集物が形成されるのを抑制することができ、その結果、中和凝集物による中和装置流路の圧力損失の増大を抑制したり、混合中和用細孔が中和凝集物によって閉塞されるのを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(中和工程設備システム)
図1は、実施形態に係る中和工程設備システムSを示す。
【0011】
この中和工程設備システムSは、中和装置10の液供給側に脂肪酸貯槽20から延びる脂肪酸供給管21が接続されていると共に、それとは独立してアルカリ貯槽30から延びるアルカリ供給管31が接続され、また、中和装置10の液排出側に接続された中和物回収管41が回収槽40まで延びている。なお、脂肪酸供給管21及びアルカリ供給管31のそれぞれには、図示しないポンプ、圧力ゲージ、及び開閉弁等が介設されている。また、この中和工程設備システムSには、これらのポンプ等を制御する図示しない制御部が設けられている。
【0012】
図2は、中和装置10の一例を示す。
【0013】
この中和装置10は、装置本体を構成するハウジング部材11を備えている。
【0014】
ハウジング部材11は、ステンレス等により円柱状に形成されており、また、内部に円柱状空間のブロック収容部12が形成されている。ハウジング部材11は、温調機能を備えていることが好ましい。ハウジング部材11は、例えば、長さが20〜400mm、及び内径が15〜500mmにそれぞれ形成されている。ブロック収容部12は、例えば、長さが10〜390mm、及び内径が15〜500mmにそれぞれ形成されている。
【0015】
ハウジング部材11のブロック収容部12には、各々、ステンレス等により円盤状に形成された複数のブロック部材13a,13bが液排出側から重ねて詰めるように収容されている。複数のブロック部材13a,13bのそれぞれは、外径がブロック収容部12の内径と同一であり、厚さが例えば2〜20mmに形成されている。
【0016】
複数のブロック部材13a,13bは、一対で1ユニットが構成されている。複数のブロック部材13a,13bのそれぞれには複数の混合中和用細孔14が形成されており、1ユニットを構成する一対のブロック部材13a,13bは、混合中和用細孔14の配設パターンが相互に相異している。従って、複数のブロック部材13a,13bは、混合中和用細孔14の配設パターンが異なるものが交互に設けられている。ブロック部材13a,13bのユニット数は例えば1〜50ユニット、従って、ブロック部材13a,13bの枚数は例えば2〜100枚である。
【0017】
一対のブロック部材13a,13bのうち一方の第1ブロック部材13aには、図3に示すように、正方配置となるように混合中和用細孔14が4つ配設されている。他方の第2ブロック部材13bには、図3に示すように、混合中和用細孔14が十字配置となるように5つ配設されている。そして、これらが図示しない位置決め部によって位置決めされて重ね合わせられると、第1ブロック部材13aの各混合中和用細孔14と第2ブロック部材13bの3つの混合中和用細孔14とが連通することとなる。
【0018】
複数の混合中和用細孔14のそれぞれは、図4に示すように、円錐台の上面間を円柱で連結したような杵型形状に形成されている。混合中和用細孔14は、例えば、最大孔径d1が1〜50mm、最小孔径d2が0.5〜5mm、最小孔径部分の長さlが0〜10mmに形成されている。
【0019】
以上の構成により、第1ブロック部材13aの4つの混合中和用細孔14のそれぞれに流入した流体は、図5に示すように、そこの最小孔径部分で縮流された後、第2ブロック部材13bの3つの混合中和用細孔14に分割されて流入し、そして、その第2ブロック部材13bの3つの混合中和用細孔14のそれぞれでは、第1ブロック部材13aの他の混合中和用細孔14から流入した流体と合流して最小孔径部分で縮流された後、次のユニットの第1ブロック部材13aの2つ又は4つの混合中和用細孔14に分割されて流入し、同様の動作がブロック部材13a,13bのユニット数だけ繰り返され、縮流と分割とを繰り返して圧力変化を受けながら流動することとなる。そして、流体に酸及びアルカリが含まれていれば、それらが混合されると共に中和反応を起こすこととなる。
【0020】
ハウジング部材11のブロック収容部12には、複数のブロック部材13a,13bが収容された部分の液供給側にステンレス等により環状に形成されたスペーサ部材15が嵌め入れられている。そして、これにより複数のブロック部材13a,13bが固定され、複数のブロックの液供給側に内部空間16が形成されている。スペーサ部材15は、外径がブロック収容部12の内径と同一であり、例えば、内径が15〜500mm、及び厚さが2〜20mmにそれぞれ形成されている。
【0021】
ハウジング部材11には、液供給側の端面中央に上記の内部空間16に連通した脂肪酸供給孔11a(脂肪酸供給路)が形成されており、その脂肪酸供給孔11aに脂肪酸供給管21が接続されている。脂肪酸供給孔11aは、孔径が例えば5〜500mmに形成されている。
【0022】
ハウジング部材11には、側面の液供給側に上記の内部空間16に連通したアルカリ供給孔11b(アルカリ供給路)が形成されており、そのアルカリ供給孔11bにアルカリ供給管31が接続されている。アルカリ供給孔11bは、孔径が例えば2〜100mmに形成されている。アルカリ供給孔11bは、孔中心位置から内部空間16の内壁を構成する第1ブロック部材13a,13bの面までの距離L、従って、混合中和用細孔14の流入口までの距離が1〜100mmとなる位置に設けられていることが好ましく、それが1〜20mmとなる位置に設けられていることがより好ましく、それが1〜10mmとなる位置に設けられていることが更に好ましい。
【0023】
図2に示すようにアルカリ供給孔11bにはアルカリ液の出口が内部空間16の中央部になるように導管17が設けられていることが好ましい。また、ブロック収容部12の内径が大きな中和装置10の場合、具体的には、例えば内径が30mm以上のものの場合には、脂肪酸配合液とアルカリ配合液をより均一に混合する観点から、アルカリ液の出口を複数設けることが好ましい。
【0024】
従って、ハウジング部材11の内部空間16は、脂肪酸供給孔11a及びアルカリ供給孔11bのそれぞれが連通し、且つ混合中和用細孔14へと連続する液滞留室を構成している。
【0025】
ハウジング部材11には、液排出側の端面中央に中和物回収孔11cが形成されており、その中和物回収孔11cに中和物回収管41が接続されている。
【0026】
脂肪酸貯槽20及びアルカリ貯槽30のそれぞれは、密閉式タンクで構成されており、槽下部に脂肪酸供給管21或いはアルカリ供給管31が接続されている。これらの脂肪酸貯槽20及びアルカリ貯槽30は、攪拌機能及び温調機能を備えていることが好ましい。
【0027】
回収槽40は、密閉式タンクで構成されており、上部に中和物回収管41が接続されている。
【0028】
脂肪酸供給管21、アルカリ供給管31、及び中和物回収管41のそれぞれは、熱可塑性樹脂や金属等で形成された管で構成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、混合中和用細孔14が4つ形成されたブロック部材13a,13bと5つ形成されたブロック部材13a,13bとで1ユニットを構成するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、さらに多くの混合中和用細孔が形成されたものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態では、ハウジング部材11にブロック部材13a,13b及びスペーサ部材15が収容された構成の中和装置10としたが、特にこれに限定されるものではなく、装置内に、脂肪酸供給路、アルカリ供給路、液滞留室、及び混合中和用細孔14が形成されたものであれば、他の構成のものであってもよい。
【0031】
(中和方法)
次に、上記中和工程設備システムSを用いた中和物の製造方法について説明する。
【0032】
この中和物の製造方法では、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔14への流入までの滞留時間を1秒以下とすることが好ましく、0.4秒以下とすることがより好ましく、0.2秒以下とすることが特に好ましい。
【0033】
このようにすれば、混合中和用細孔14の手前において、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物が成長して中和凝集物が形成されるのを抑制することができ、その結果、中和凝集物による中和装置流路の圧力損失の増大を抑制したり、混合中和用細孔14が中和凝集物によって閉塞されるのを回避することができる。
【0034】
具体的には、まず、脂肪酸貯槽20に脂肪酸配合液を、及びアルカリ貯槽30にアルカリ配合液をそれぞれ仕込む。
【0035】
このとき、脂肪酸配合液に含まれる脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、純粋脂肪酸等が挙げられる。これらのうち炭素数が10〜24である脂肪酸について上記効果が有効であり、炭素数が12〜22である脂肪酸が更に有効で有り、炭素数が12〜20である脂肪酸が特に有効で有る。脂肪酸として、単一種のみを含めてもよく、また、複数種を含めてもよい。脂肪酸の濃度については、粘度と生産性の観点から5〜80質量%が好ましく、20〜70質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0036】
脂肪酸配合液には、その他に溶媒、ソルビトールなどの清涼剤、保湿剤、酸化防止剤、電解質、界面活性剤等を含有させてもよい。
【0037】
溶媒としては、例えば、水、グリセリン、グリコール等が挙げられる。溶媒として、単一種のみを用いてもよく、また、複数種を混合して用いてもよい。
【0038】
脂肪酸貯槽20では、例えば、脂肪酸配合液を40〜90℃に調温する。
【0039】
アルカリ配合液として、アルカリを水に溶解させたものを用いる。
【0040】
アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン化合物等が挙げられる。これらのうち水酸化カリウムについて上記効果が特に有効である。アルカリとして、単一種のみを含めてもよく、また、複数種を含めてもよい。アルカリの濃度については、例えば5〜50質量%が好ましい。
【0041】
水としては、例えば、イオン交換水、精製水等が挙げられる。
【0042】
アルカリ配合液には、その他にポリオール、電解質、界面活性剤、キレート剤等を含有させてもよい。
【0043】
アルカリ貯槽30では、例えば、アルカリ配合液を40〜90℃に調温する。
【0044】
次に、中和装置10に対して、脂肪酸貯槽20から脂肪酸供給管21を介して脂肪酸配合液を供給すると共に、アルカリ貯槽30からアルカリ供給管31を介してアルカリ配合液を供給する。
【0045】
このとき、脂肪酸配合液及びアルカリ配合液の総流量の設定により、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔14への流入までの滞留時間Tを1秒以下に制御する。つまり、液滞留室たる内部空間16で脂肪酸配合液とアルカリ配合液とが接触するが、アルカリ供給孔11b出口の孔中心位置を液接触点として、そこよりも下流側の部分における内部空間容量に対する液体量を制御することにより、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔14への流入までの滞留時間を制御する。
【0046】
具体的には、アルカリ供給孔11bの孔中心位置よりも下流側の内部空間16の部分の容積をこの総流量で除すことにより算出することができる。
【0047】
脂肪酸配合液に対するアルカリ配合液の質量割合については、例えば、アルカリ配合液/脂肪酸配合液=1/50〜10/1とする。
【0048】
中和装置10における温調については、例えば40〜90℃に設定する。
【0049】
内部空間16で接触した脂肪酸配合液及びアルカリ配合液は、第1ブロック部材13aの4つの混合中和用細孔14のそれぞれに流入し、そこの最小孔径部分で縮流された後、第2ブロック部材13bの3つの混合中和用細孔14に分割されて流入し、そして、その第2ブロック部材13bの3つの混合中和用細孔14のそれぞれで、第1ブロック部材13aの他の混合中和用細孔14から流入したものと合流して最小孔径部分で縮流された後、次のユニットの第1ブロック部材13aの2つ又は4つの混合中和用細孔14に分割されて流入し、同様の動作がブロック部材13a,13bのユニット数だけ繰り返され、縮流と分割とを繰り返して圧力変化を受けながら流動し、そして、混合されると共に中和反応を起こす。
【0050】
混合されて中和した中和物は、中和物回収孔11cから中和物回収管41を介して回収槽40に回収される。
【0051】
製造回収された中和物からは、例えば、抗菌剤、香料、顔料、染料、油剤、その他の低刺激化剤等の添加剤が配合されて石鹸等が製造される。
【実施例】
【0052】
(中和工程設備システム)
以下のシステム1及び2を用いて試験評価を行った。
【0053】
<システム1>
図6は、システム1の構成を示す。なお、上記実施形態と同一名称の部分については上記実施形態と同一符号で示す。
【0054】
このシステム1は、上記実施形態と同様に、ブロック収容部に4ユニットのブロック部材を収容すると共に環状のスペーサ部材を収容して内部空間(液滞留室)を形成した中和装置10(株式会社フジキン社製 商品名:分散君25D、最小孔径1mm、4穴と5穴で1ユニット)に対し、その液供給側の脂肪酸供給孔及びアルカリ供給孔に脂肪酸供給管21及びアルカリ供給管31をそれぞれ接続する一方、液排出側の中和物回収孔に中和物回収管41を接続したものである。アルカリ供給孔の孔中心位置(液接触位置)から混合中和用細孔の流入口位置までの距離Lは5mmであり、アルカリ供給孔の孔中心位置よりもブロック部材側の内部空間の部分の容積は3.2mLである。なお、各配管の内径は28.4mmである。
【0055】
<システム2>
図7は、システム2の構成を示す。なお、上記実施形態と同一名称の部分については上記実施形態と同一符号で示す。
【0056】
このシステム2は、ブロック収容部に1ユニットのブロック部材を収容した中和装置10(株式会社フジキン社製 商品名:分散君25D、最小孔径1mm、12穴と13穴で1ユニット)に対し、その液供給側の脂肪酸供給孔及びアルカリ供給孔に反応液供給管51及びアルカリ供給管31をそれぞれ接続する一方、液排出側の中和物回収孔に反応液排出管52を接続したものである。アルカリ供給孔の孔中心位置(液接触位置)から混合中和用細孔の流入口位置までの距離Lは5mmであり、アルカリ供給孔の孔中心位置よりもブロック部材側の内部空間の部分の容積は3.2mLである。なお、各配管の内径は28.4mmである。
【0057】
このシステム2では、反応液排出管52が脂肪酸貯槽20に接続されており、従って、反応液が、脂肪酸貯槽20、反応液供給管51、中和装置10、及び反応液排出管52を順に循環し、そして、中和装置10において、反応液にアルカリ配合液が供給されるように構成されている。
【0058】
<システム3>
図8は、システム3の構成を示す。なお、上記実施形態と同一名称の部分については上記実施形態と同一符号で示す。
【0059】
このシステム3は、ブロック収容部に5ユニットのブロック部材を収容した中和装置10(株式会社フジキン社製 商品名:分散君25D、最小孔径1mm、4穴と5穴で1ユニット)に対し、その液供給側に脂肪酸供給管21及びアルカリ供給管31のそれぞれが結合した混合液供給管61を接続する一方、液排出側の中和物排出孔に中和物回収管41を接続したものである。脂肪酸供給管21及びアルカリ供給管31の混合液供中和物給管61への結合位置(液接触位置)から中和装置10の流入口位置までの距離Lは300mmであり、その間の容積は190mLである。なお、各配管の内径は28.4mmである。
【0060】
(試験評価方法)
以下の実施例1〜4、並びに比較例1及び2のそれぞれの条件で脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を中和装置に供給し、それら混合性について、回収槽40入口における中和物の電気伝導度S/m(ここにSはジーメンスである)を5分間測定し、波形の振れの偏差で評価した。電気伝導度の測定には(株)堀場製作所製、導電率計ES−51を用いた。
【0061】
また、中和物中の中和凝集物量を目視で評価した。
【0062】
<実施例1>
上記システム1を用い、中和装置に対し、総流量が1.6L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。
【0063】
このとき、滞留時間Tは0.12秒と算出される。電気伝導度の偏差は0.04(S/m)であった。
【0064】
脂肪酸配合液としては、表1の割合で混合したものを用い、液温を70℃とした。
【0065】
アルカリ配合液としては、表1の割合で混合したものを用い、液温を70℃とした。
【0066】
中和装置に供給する脂肪酸配合液に対するアルカリ配合液の質量割合については、アルカリ配合液/脂肪酸配合液=1/2とした。
【0067】
【表1】

【0068】
<実施例2>
上記システム1を用い、中和装置に対し、総流量が2.2L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。その他の条件は実施例1と同一である。
【0069】
このとき、実施例1と同様にして滞留時間Tは0.09秒と算出される。電気伝導度の偏差は0.09(S/m)であった。
【0070】
<実施例3>
上記システム1を用い、中和装置に対し、総流量が0.8L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。その他の条件は実施例1と同一である。
【0071】
このとき、実施例1と同様にして滞留時間Tは0.24秒と算出される。電気伝導度の偏差は0.51(S/m)であった。
【0072】
<実施例4>
上記システム1を用い、中和装置に対し、総流量が1.0L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。その他の条件は実施例1と同一である。
【0073】
このとき、実施例1と同様にして滞留時間Tは0.19秒と算出される。電気伝導度の偏差は0.31(S/m)であった。
【0074】
<実施例5>
上記システム2を用いた。脂肪酸貯槽に表1の割合で混合した脂肪酸配合液50Kgを仕込み、液温を70℃とした。またアルカリ貯槽に表1の割合で混合したアルカリ配合液30Kgを仕込み、液温を70℃とした。
【0075】
中和装置に対し、総流量が7.5L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。中和装置に供給する脂肪酸配合液に対するアルカリ配合液の質量割合については、アルカリ配合液/脂肪酸配合液=1/10とした。このとき、滞留時間Tは0.03秒と算出される。
【0076】
中和運転開始から52分後、アルカリ貯槽中のアルカリ配合液量がゼロになった時点で運転を終了した。
【0077】
中和物を採取し中和凝集物の有無を目視で行った。凝集物は全く認められなかった。
【0078】
<実施例6>
上記システム2を用い、中和装置に対し、総流量が29.5L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給し、中和装置に供給する脂肪酸配合液に対するアルカリ配合液の質量割合については、アルカリ配合液/脂肪酸配合液=1/30とした。その他の条件は実施例5と同一である。このとき、滞留時間Tは0.01秒と算出される。
【0079】
中和運転開始から39分後、アルカリ貯槽中のアルカリ配合液量がゼロになった時点で運転を終了した。
【0080】
中和物を採取し中和凝集物の有無を目視で行った。凝集物は全く認められなかった。
【0081】
<比較例1>
上記システム3を用い、混合液供給管に対し、総流量が2.2L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。その他の条件は実施例1と同一である。
【0082】
このとき、脂肪酸供給管及びアルカリ供給管の混合液供給管への結合位置から中和装置の流入口位置までの間の滞留時間Tは5.2秒と算出される。電気伝導度の偏差は測定できなかった。運転中、中和装置の圧力損失の増加と減少が繰返しおこり安定した運転はできなかった。圧力損失の増加と減少は中和凝集物による中和装置流路の閉塞と解除によると考えられた。
【0083】
<比較例2>
上記システム3を用い、混合液供給管に対し、総流量が3.1L/minとなるように脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を供給した。その他の条件は実施例1と同一である。
【0084】
このとき、比較例2と同様にして滞留時間は3.7秒と算出される。電気伝導度の偏差は測定できなかった。運転中、中和装置の圧力損失の増加と減少が繰返しおこり安定した運転はできなかった。圧力損失の増加と減少は中和凝集物による中和装置流路の閉塞と解除によると考えられた。
【0085】
(試験評価結果)
表2は、試験評価結果を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表2によれば、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔への流入までの滞留時間が0.12秒、0.09秒、0.24秒、0.19秒、0.03秒、及び0.01秒である実施例1〜6は、滞留時間が5.2秒及び3.7秒である比較例1及び2に比べて、混合性が優れることが分かる。さらに実施例1〜6では安定した運転を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物の製造方法及びそれに用いられる中和装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】中和工程設備システムの構成を示す図である。
【図2】中和装置の縦断面図である。
【図3】ブロック部材の斜視図である。
【図4】混合中和用細孔を示す斜視図である。
【図5】流体の流動を示す説明図である。
【図6】システム1の構成を示す図である。
【図7】システム2の構成を示す図である。
【図8】システム3の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
S 中和工程設備システム
10 中和装置
11 ハウジング部材
11a 脂肪酸供給孔(脂肪酸供給路)
11b アルカリ供給孔(アルカリ供給路)
12 ブロック収容部
13a,13b (第1,第2)ブロック部材
14 混合中和用細孔
15 スペーサ部材
16 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸配合液とアルカリ配合液とを接触させた後、それらを混合中和用細孔に流通させて混合すると共に中和させる中和物の製造方法であって、
脂肪酸配合液とアルカリ配合液との接触からそれらの混合中和用細孔への流入までの滞留時間を1秒以下とする中和物の製造方法。
【請求項2】
上記脂肪酸の炭素数が10〜24である請求項1に記載された中和物の製造方法。
【請求項3】
上記アルカリが水酸化カリウムである請求項1又は2に記載された中和物の製造方法。
【請求項4】
上記混合中和用細孔の最小孔径が0.5〜5mmである請求項1乃至3のいずれかに記載された中和物の製造方法。
【請求項5】
脂肪酸配合液とアルカリ配合液との中和物の製造に用いられる中和装置であって、
装置内に、
脂肪酸配合液を供給するための脂肪酸供給路と、
上記脂肪酸供給路とは独立して設けられた、アルカリ配合液を供給するためのアルカリ供給路と、
上記脂肪酸供給路及び上記アルカリ供給路のそれぞれが連通するように設けられた、該脂肪酸供給路からの脂肪酸配合液と該アルカリ供給路からのアルカリ配合液とを接触させるための液滞留室と、
上記液滞留室から連続して設けられた、脂肪酸配合液及びアルカリ配合液を流通させて混合すると共に中和させるための混合中和用細孔と、
が形成された中和装置。
【請求項6】
内部にブロック収容部が形成されたハウジング部材と、
上記ハウジング部材内部の上記ブロック収容部に収容されたブロック部材と、
上記ハウジング部材内部の上記ブロック収容部における上記ブロック部材が収容された部分の液供給側に設けられ、該ブロック部材を固定すると共に該ハウジング部材内部に内部空間を形成するスペーサ部材と、
を備え、
上記ハウジング部材の上記内部空間が上記液滞留室を構成していると共に、上記ブロック部材に上記混合中和用細孔が形成されている請求項5に記載された中和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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