説明

中央処理装置用ソケット

【課題】CPUを無半田で電気的・機械的にソケットと接続できるような安価な構造を得ること。
【解決手段】配線基板上で該基板の配線と接続する端子片を有する接点基板上にスペースを介して上面ロック板をスライド自在に設け、この上面ロック板には、中央処理装置の端子足と同一の位置に端子足を挿通する貫通孔を設け、該上面ロック板を接点基板上でスライド駆動させる様に構成したので、上面ロック板が第1の位置にある時には、この貫通孔とスルーホール部が垂直方向に一致して、CPU本体の端子足は、貫通孔を楽に挿通し、上面ロック板をロックさせる位置では、端子足と接点片が接触すると共に、接触片が接触足を挟持するので、CPU本体はソケットに堅く保持され、端子足と端子片の電気的接触は良好に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータに用いる中央処理装置(以下、CPUと略記する。)と回路基板との間の電気的・機械的接続を司るソケットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ・コンピュータは内部記憶装置、I/O装置その他の内部装置、表示装置、外部記憶装置、等の外部装置を持ち、これらの間をバスにより接続し、これら内部装置、外部装置を、バスに接続された中央処理装置(以下、CPUという。)により、動作制御され、コンピュータに課せられた演算機能・読み出し書き込み機能等のコンピュータ機能を果たす。CPUは、通常数十本の足と称する端子を一面に有し、これらの足を配線基板に開けられた端子孔に貫通されて、半田付け等の固定接続方法で、接続されていたが、CPUを基板から取り外したり、交換するようなことが行われるようになってから、基板上にCPU用のソケットを設け、このソケットにCPUの足を差し込むことによって、CPUをコンピュータから着脱自在とするようになった。また、CPU自体を、マザーボードに設けたソケットの上部から押しつけてCPUとマザーボードの接触を図るものも特許文献1に示されて公知であるが、CPU自体を押しつけているので、電気的な接触などが不安定になる欠点を有する。
【0003】
前記の通りCPUには多くの足が設けられているので、全部の足をソケットあるいはマザーボードに設けられた端子に半田付けすると、電気的機械的な接続を良好にするが、CPUを取り外すことが出来なくなる。またソケットもマザーボードに対して通常の押圧型の接続構造では、電気的・機械的に安定に接続させることは極めて困難なことであった。
【特許文献1】特開2004−63448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の不都合を解消しようとするものであって、その目的は、配線基板に取り付けられたCPUのソケットに対し、CPUを自由に着脱自在にできるようにするとともに、ソケットに取り付けたCPUがソケットに安定に機械的に装着できるとともに、装着されたCPUの端子とソケットの間の電気的な接続が可及的に安定するようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような本発明の目的を達成するために、本願の請求項1に記載の発明は、中央処理装置を配線基板の配線と接続するソケットにおいて、配線基板上で該基板の配線と接続する端子片を有する接点基板を設けた下部枠と、該接点基板上にスペースを介して配置され、中央処理装置の端子足と同一の位置に端子足を挿通する貫通孔を有し、該接点基板に対してこの平面方向にスライド自在な上面ロック板と、該上面ロック板を接点基板上でスライド駆動させる移動駆動手段と、を有し、該端子片は、上部にはスペース内に位置し端子足を挿通するスルースリット部とこれと接触する接触部を有し、該スペース内で上面ロック板の一の位置では、この貫通孔とスルースリット部が垂直方向に一致し、上面ロック板の他の位置では、この貫通孔と接触部とが一致して、貫通孔を貫通する端子足と接点片が接触して接点片を保持することを特徴とする中央処理装置用ソケットを提供する。
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、前記移動駆動手段は、L型の水平部に駆動山を有し接点基板に枢支されるスライドバーと、上記上面ロック板に形成され、該駆動山を嵌合させる溝を有することを特徴とする中央処理装置用ソケットを提供する。
本願請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、上記上面ロック板には、上記移動駆動手段のスライドバーを掛け止める係止部を形成したことを特徴とする中央処理装置用ソケットを提供する。
本願請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、上面ロック板に開けられた貫通孔は、これの挿通する端子足の断面形状とほぼ同じで、これを挿通させることを特徴とする中央処理装置用ソケットを提供する。
本願請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、配線基板上の配線と接触する端子片はバネ性を有する薄い金属板により形成されていることを特徴とする中央処理装置用ソケットを提供する。
【発明の効果】
【0006】
配線基板上で該基板の配線と接続する端子片を有する接点基板上にスペースを介して上面ロック板をスライド自在に設け、この上面ロック板には、中央処理装置の端子足と同一の位置に端子足を挿通する貫通孔を設け、該上面ロック板を接点基板上でスライド駆動させる様に構成したので、上面ロック板が第1の位置にある時には、この貫通孔とスルーホール部が垂直方向に一致して、CPU本体の端子足は、貫通孔を楽に挿通し、上面ロック板をロックさせる位置では、端子足と接点片が接触すると共に、接触片が接触足を挟持するので、CPU本体はソケットに堅く保持され、端子足と端子片の電気的接触は良好に行われると共に、CPU本体のソケットへの装着は安定なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の一実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のソケットを示す斜視図であり、図2は、その中央部分の断面図である。図1、図2において、ソケット1は、その周囲にこれを基板に固定するための足2、3、4、5を有している。これら足は、方形の窓枠状の下部枠6から伸びている。下部枠6が形成する中央の方形孔には、絶縁材料の板材からなる接点基板7が嵌め込まれ、ねじ、かしめ等適当手段で下部枠6に固定されている。なお、この接点基板7には、多数の接点部材が配置されているが、その詳細な構造は後述する。
【0008】
接点基板7の上部には、スペース8を介して、上面ロック板9が配置されている。この上面ロック板9は、下部枠6の両側をガイドにして、矢印方向にスライドする。10はスライドバーであり、このスライドバー10は、図3に示すように、L型をした金属棒からなる。スライドバー10の水平部分の端部10aと根部10bは下部枠6の一部に、枢支部11、12で回転自在に枢支されている。スライドバー10の水平部分中央には、駆動山10cが形成されている。10dはハンドル部である。スライドバー10の駆動山10cは、図2に示すように、上面ロック板9の端部に設けられた移動機構13裏側に設けられた溝14に嵌め込まれている。10dはハンドル部である。
【0009】
図2に示すように、スライドバー10はハンドル部10dを垂直に立てた時には、駆動山10cが移動機構13を図2の右方向に押圧し、上面ロック板9を右方向に押しやる。スライドバー10のハンドル部10dを水平方向に倒せば、駆動山10cが駆動機構13を左方向に押圧し、上面ロック板9を左方向に押しやる。そして、ハンドル部10dをハンドル部10dから延ばした係止部15に引き掛ければ、上面ロック板9は、その位置にロックされる。そして、これらスライドバー10、駆動機構13の溝14により、移動駆動手段を形成する。
【0010】
図1において、点線で四角に囲った部分は、CPU配置部16で、CPU端子足を貫通させ、かつ端子足の直径とほぼ同じ大きさの貫通孔17がCPUの端子足の位置に併せて設けられる。図2において、18はCPU本体であり、19はCPU本体下面から延びる端子足である。
図4に示すように、下部枠6に取り付けられている接点基板7には、CPUから延びる端子足位置にこれらと接触する端子片を嵌め込み保持する凸形をした保持孔24があけられ、それら保持孔24には端子片20が嵌め込まれて接点基板7に保持されている。図5は端子片20を示す斜視図である。端子片20には、その中央に、接点基板7に開けられた保持孔24に填り込む胴部21があり、その左右には、保持孔24から端子片20が抜け出すのを防ぐ係止片21'が2カ所形成されている。胴部21の下面には、端子片20から延びる接続端子22が形成されている。胴部21の上部には、CPUから延びる端子足19と接続する受け部23が形成されている。受け部23は、胴部21から直角に折り曲げられた2本の腕からなり、その腕の先端近くには、CPUから延びる端子足19が挿通するスルースリット部23'が形成され、それら腕の根部近くには、端子足19の直径よりやや小さい接触部23"が形成されている。
この端子片20は、断面凸字状の保持孔24に保持される。そして、ソケット1が接点基板7下面に配置されたマザーボード等の配線基板25に取り付けられるとき、図2に示すように、接点基板7下面に突出する端子片20の接続端子22部分はL字型に折り曲げられて、配線基板25のパッド26に押しつけられ、無半田付けで、端子片20とパッド26は電気的に接続される。
【0011】
次に、本発明にかかるソケットにCPU本体18を装着する動作について説明する。該ソケット1に設けられたスライドバー10のハンドル10dを係止部15から外し、図2に示すように、これを垂直に立てる。この動作により、スライドバー10の駆動山10cが上面ロック板9の溝14内で回転し、上面ロック板9を図2において右方向に少しスライドさせる。この動作により、上面ロック板9に開けられた貫通孔17と端子片20のスルースリット部23'とが、垂直方向の位置が一致する。そして、この状態からCPU本体18の下部から延びる端子足19を貫通孔17に挿入する。この挿入により、端子足19は、貫通孔17を貫通し、接点基板7に装着された端子片20のスルースリット部23'を貫通する。
この状態から、スライドバー10のハンドル10dを倒し、これを上面ロック板9の横から延びる係止部15に係止する。この動作により、スライドバー10の駆動山10cが上面ロック板9の溝14内で回転し、上面ロック板9を図2において左方向に少しスライドさせる。この動作により、上面ロック板9に開けられた貫通孔17を貫通する端子足19は、図6に示すように、スルースリット部23'から接触部23"に移動させられ、端子足19と接触部23"とは、完全に接触すると共に、接触部23"は端子足19を機械的に保持する。これで、CPU本体18はソケット1に完全に装着され、端子足19はソケット1の端子片20と接続する。
CPU本体18をソケット1から取り外す時は、上記の動作と逆の動作を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0012】
上記の実施例で、本発明をCPU本体とソケットの接続に適用して説明したが、このような実施例に限定することはなく、例えば、電子部品のプリント配線板への取り付けに本発明を適用した場合、半田付け工程を省略して回路基板を構成することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ソケット全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、ソケットの断面図である。
【図3】図3は、スライドバーの構造を説明する斜視図である。
【図4】図4は、端子片の取り付け構造を示す斜視図である。
【図5】図5は、端子片の構造を説明する斜視図である。
【図6】図6は、端子足と端子片の接触状態を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0014】
1・・・ソケット
2・・・足
3・・・足
4・・・足
5・・・足
6・・・下部枠
7・・・接点基板
8・・・スペース
9・・・上面ロック板
10・・・スライドバー
10a・・端部
10b・・根部
10c・・駆動山
10d・・ハンドル部
11・・・枢支点
12・・・枢支点
13・・・移動機構
14・・・溝
15・・・係止部
16・・・CPU
17・・・貫通孔
18・・・CPU本体
19・・・端子足
20・・・端子片
21・・・胴部
21'・・係止片
22・・・接続端子
23・・・受け部
23'・・スルースリット部
23"・・接触部
24・・・保持孔
25・・・配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央処理装置を配線基板の配線と接続するソケットにおいて、
配線基板上で該基板の配線と接続する端子片を有する接点基板を設けた下部枠と、
該接点基板上にスペースを介して配置され、中央処理装置の端子足と同一の位置に端子足を挿通する貫通孔を有し、該接点基板に対してこの平面方向にスライド自在な上面ロック板と、
該上面ロック板を接点基板上でスライド駆動させる移動駆動手段と、
を有し、該端子片は、上部にはスペース内に位置し端子足を挿通するスルースリット部とこれと接触する接触部を有し、該スペース内で上面ロック板の一の位置では、この貫通孔とスルースリット部が垂直方向に一致し、上面ロック板の他の位置では、この貫通孔と接触部とが一致して、貫通孔を貫通する端子足と接点片が接触して接点片を保持させ、かつ接点基板の端子片を構成する接続端子が、配線基板上の配線に圧接して端子片と配線を接続させたことを特徴とする中央処理装置用ソケット。
【請求項2】
前記移動駆動手段は、L型の水平部に駆動山を有し接点基板に枢支されるスライドバーと、上記上面ロック板に形成され、該駆動山を嵌合させる溝を有することを特徴とする請求項1に記載の中央処理装置用ソケット。
【請求項3】
上記上面ロック板には、上記移動駆動手段のスライドバーを掛け止める係止部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の中央処理装置用ソケット。
【請求項4】
上面ロック板に開けられた貫通孔は、これの挿通する端子足の断面形状とほぼ同じで、これを挿通させることを特徴とする請求項1に記載の中央処理装置用ソケット。
【請求項5】
配線基板上の配線と接触する端子片はバネ性を有する薄い金属板により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の中央処理装置用ソケット。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−234836(P2008−234836A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67986(P2007−67986)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000103493)オータックス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】