説明

中屈折及び高屈折シロキサン系ハードコーティング組成物、その製造方法、及びこれから製造される光学レンズ

本発明は、中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物、その製造方法、及びこれから製造される光学レンズに関し、より詳細には、オルガノシラン、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸、アルミニウムアセチルアセトン、C−Cのアルキルセロソルブ、及び溶媒を含むシロキサン系コーティング組成物、その製造方法、及びこれから製造される光学レンズに関する。
前記シロキサン系コーティング組成物は、透明でべたつきがなく、長期間の保存安定性が優れていて、光学レンズ、産業安全ゴーグル、またはレジャー用ゴーグルなどのプラスチックレンズの表面のコーティング膜として適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物、その製造方法、及びこれから製造される光学レンズに関し、より詳細には、透明でべたつきがなく、長期間の保存安定性が優れていて、光学レンズ、産業安全ゴーグル、またはレジャー用ゴーグルなどのプラスチックレンズの表面のコーティング膜として適用可能な、中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物、その製造方法、及びこれから製造される光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガラスレンズは、圧縮効果が高く、度数の高いレンズの製作が容易で、物質そのものの耐摩耗性が優れているため、幅広く使用されてきた。しかし、前記ガラスレンズは、外部の衝撃によって破損しやすく、染料の着色が困難であり、紫外線の遮断などの機能の付与が容易でないため、透明なプラスチックレンズに代替されつつある。
【0003】
プラスチック材質は、透明で軽いだけでなく、耐破損性及び染料の着色性が優れていて、多様な機能の付与が容易な長所がある。そのため、プラスチックレンズは、光学レンズ、特に産業安全ゴーグル及びレジャー用ゴーグルなどに適用されている。
【0004】
しかし、プラスチック材質の特性上、表面が軟質で、外部の衝撃によって簡単にキズができて、クラック(crack)が発生するので、レンズとしての使用範囲に制限がある。そこで、このような短所を補完するために、プラスチックレンズの表面に耐摩耗性が優れている有機物またはシリコンコーティング剤などのコーティング組成物をコーティングして使用している。
【0005】
前記プラスチックレンズ用コーティング組成物は、耐摩耗性、着色性、耐溶剤性、耐熱湯性、付着性、光沢性、透明性、作業性、及び保存安定性などの特性を全て有しているのが好ましいが、このうちの1つ以上の特性が不十分であるために、その使用に制限がある。
【0006】
大韓民国公開特許第1998−2185号では、保存安定性、耐摩耗性、及び着色性が優れているシロキサン系コーティング組成物を開示している。しかし、このようなシロキサン系コーティング組成物は、透明性が低く、光学レンズなどの微細部品への適用は不適切である。
【0007】
大韓民国公開特許第2000−20026号では、耐衝撃性が優れている高屈折耐摩耗性コーティング組成物を開示している。このようなコーティング組成物は、着色性及び光沢性が低く、レジャー用ゴーグルに適用する場合、製品の品質が低下する。
【0008】
大韓民国公開特許第2002−9786号では、付着性、光沢性、保存及び作業安定性が優れているシロキサン系コーティング組成物を開示している。このようなシロキサン系コーティング組成物は、前記の特性は優れているが、着色性が若干低く、耐熱湯性の実験時にコーティング膜の表面にクラック(crack)が発生するので、プラスチックレンズのコーティング膜としては不適切である。
【特許文献1】大韓民国公開特許第1998−2185号
【特許文献2】大韓民国公開特許第2000−20026号
【特許文献3】大韓民国公開特許第2002−9786号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、透明性が優れていて、べたつきがなく、長期間の保存安定性が優れている、中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記コーティング組成物から形成されるコーティング膜を含む光学レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、a)下記の化学式1で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物0.1乃至50重量部、b)下記の化学式2で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物10乃至60重量部、c)屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物1.0乃至100重量部、d)アルミニウムアセチルアセトン0.01乃至10重量部、e)C−Cのアルキルセロソルブ1.0乃至30重量部、及びf)溶媒10乃至130重量部を含む、シロキサン系コーティング組成物を提供する。
【0013】
[化学式1]
(SiOR4−a
【0014】
[化学式2]
Si(OR4−b
【0015】
前記化学式で、R及びRは各々独立的にC−Cのアルキル基、C−Cのアルケニル基、C−Cのハロゲン化アルキル基、アリル基、及びC−Cの芳香族基からなる群より選択され、R
【化1】

であり、この時、RはC−Cのアルキレン基であり、Rは水素、C−Cのアルキル基、及び
【化2】

からなる群より選択され、この時、Rは水素、C−Cのアルキレン基、及びC−Cのアルキル基からなる群より選択され、RはC−Cのアルキル基であり、aは0乃至3の整数であり、bは0乃至3の整数である。
【0016】
また、本発明は、a)溶媒及び触媒存在下で、前記化学式1で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物から選択される少なくとも1種の化合物と、前記化学式2で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物から選択される少なくとも1種の化合物とを混合した後、ゾル−ゲル反応を行って、有機−無機ゾルを生成する段階;b)前記有機−無機ゾルに、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物を添加する段階;を含み、前記段階a)またはb)の少なくとも1つの段階で、アルミニウムアセチルアセトン及びC−Cのアルキルセロソルブを添加する、シロキサン系コーティング組成物の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記シロキサン系コーティング組成物で形成された中屈折または高屈折コーティング膜を含む、光学レンズを提供する。
【0018】
[発明の実施の形態]
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明によるシロキサン系コーティング組成物は、オルガノシラン及びアルミニウムアセチルアセトンを含み、前記オルガノシランのヒドロキシ基とキレートを形成して、長期間の保存安定性及び透明性が向上するだけでなく、安定化剤であるC−Cのアルキルセロソルブを含んで、べたつきがない。
【0020】
したがって、前記シロキサン系コーティング組成物は、各種光学レンズ、特に産業安全ゴーグルまたはレジャー用ゴーグルなどの表面にコーティング膜として適用されるのに適切である。
【0021】
本発明のコーティング組成物に使用可能なオルガノシランは、前記化学式1で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物と、前記化学式2で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物とを含む。
【0022】
ただし、前記化学式1の化合物は、aが1以上である場合にはRがメチル基であるのが最も好ましい。前記Rのアルキル基が長くなるほど、形成されたコーティング膜が強い軟質特性を有して、コーティング膜としての物性が低下する。ここで、必要に応じて、メチル基を含む化合物及びこれと異なる置換基を含む化合物を併用することもできるが、メチル基を含むシラン化合物のモル数が他のシラン化合物のモル数より大きくなければならない。また、aが0である場合にはRがC−Cのアルキル基であるのが好ましい。
【0023】
具体的に、前記化学式1の化合物は、メチルトリメトキシシラン(methyl trimethoxy silane)、メチルトリエトキシシラン(methyl triethoxy silane)、ビニルトリメトキシシラン(vinyl trimethoxy silane)、ビニルトリエトキシシラン(vinyl triethoxy silane)、ジメチルジメトキシシラン(dimethyl dimethoxy silane)、ジメチルジエトキシシラン(dimethyl diethoxy silane)、ビニルメチルジメトキシシラン(vinyl methyl dimethoxy silane)、ブチルトリメトキシシラン(butyl trimethoxy silane)、ジフェニルエトキシビニルシラン(diphenyl ethoxy vinylsilane)、メチルトリイソプロポキシシラン(methyl triisopropoxy silane)、メチルトリアセトキシシラン(methyl triacetoxy silane)、テトラフェノキシシラン(tetraphenoxy silane)テトラプロポキシシラン(tetrapropoxy silane)、及びビニルトリイソプロポキシシラン(vinyl triisopropoxy silane)からなる群より選択される1種以上である。
【0024】
前記化学式1のオルガノシラン化合物は、組成物全体で0.1乃至50重量部、好ましくは1.0乃至30重量部で含まれている。万が一、前記範囲未満である場合には、コーティング膜の耐摩耗性が低下し、これとは反対に、前記範囲を超過する場合には、むしろ耐熱湯性の実験時にコーティング膜にクラックが発生する問題点が発生するようになるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0025】
また、前記化学式2のオルガノシラン化合物は、官能基としてエポキシ官能基を含むことによって、本発明のコーティング組成物を基材上に硬化させる時に、有機染料の着色または染色を可能にする。
【0026】
具体的に、前記化学式2の化合物は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−glycydoxy propyl trimethoxy silane)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(3−glycydoxy propyl triethoxy silane)、3−グリシドキシプロピルメチルメトキシシラン(3−glycydoxy propyl methylmethoxy silane)、3−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン(3−glycydoxy propyl methylethoxy silane)、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(β−(3,4−epoxycy clohexyl)ethyl trimethoxy silane)からなる群より選択される1種以上である。
【0027】
前記化学式2のオルガノシラン化合物は、組成物全体で10乃至60重量部、好ましくは20乃至40重量部で含まれている。万が一、前記範囲未満である場合には、耐熱湯性の実験時にコーティング膜の表面にクラックが発生し、これとは反対に、前記範囲を超過する場合には、むしろコーティング膜の耐摩耗性が低下する問題点が発生するようになるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0028】
しかし、オルガノシランを含むコーティング組成物を長期間保存する場合、有機−無機ゾルの表面にあるヒドロキシ基(OH)間の縮合反応によって、ゾルの凝集現象が発生したり、べたつきが発生する。
【0029】
本発明では、シロキサン系コーティング組成物のコーティング作業性及び保存安定性を向上させるために、アルミニウムアセチルアセトンを添加する。前記アルミニウムアセチルアセトンは、前記オルガノシランのヒドロキシ基とキレートを形成して、ゾルの保存安定性を向上させる役割を果たす。
【0030】
前記アルミニウムアセチルアセトンは、組成物全体で0.01乃至10重量部、好ましくは0.1乃至5重量部で含まれている。万が一、前記範囲未満である場合には、効果が微小で、コーティング膜の乾燥時にべたつきが発生して、作業性が大きく低下し、これとは反対に、前記範囲を超過する場合には、むしろコーティング膜の耐摩耗性が低下して、製品の品質が低下するので、前記範囲内で適切に調節する。
【0031】
また、前記アルミニウムアセチルアセトンと共に、保存安定性を向上させるための安定化剤としてC−Cのアルキルセロソルブを含む。
【0032】
本発明のコーティング組成物に使用可能なアルキルセロソルブは、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びイソプロピルセロソルブからなる群より選択される1種以上がある。
【0033】
前記アルキルセロソルブは、組成物全体で1.0乃至30重量部、好ましくは5乃至20重量部で含まれている。万が一、前記範囲未満である場合には、保存安定性が低下して、ゾルの凝集現象が発生し、これとは反対に、前記範囲を超過する場合には、むしろ乾燥時にべたつきが発生して、コーティング作業性が低下する問題点が発生するようになるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0034】
また、本発明のシロキサン系コーティング組成物は、中屈折及び高屈折特性を有し、耐摩耗性を向上させるために、無機酸化物を一定の含有量で含む。
【0035】
使用可能な複合酸化物は、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物であり、より好ましくは、酸化チタン(TiO)(屈折率2.5〜2.7)、酸化シリコン(SiO)(屈折率1.5)、酸化ジルコニウム(ZrO)(屈折率2.2)、酸化錫(SnO)(屈折率2.0)、酸化セリウム(Ce)(屈折率2.2)、チタン酸バリウム(BaTiO)(屈折率2.4)、酸化アルミニウム(Al)(屈折率1.73)、及び酸化イットリウム(Y)(屈折率1.92)からなる群より選択される2種以上の酸化物を含む複合酸化物である。
【0036】
前記複合酸化物は、屈折率によって組成を適切にして使用することができ、好ましい例としては、TiO−ZrO−SnO、TiO−ZrO−SiO、及びTiO−SnO−SiOなどがある。
【0037】
このような無機酸化物は、コーティング組成物から形成されるコーティング膜の屈折率を1.5乃至1.65に調節して、コーティング膜が中屈折及び高屈折特性を有するようにする。
【0038】
このような無機酸化物は、シロキサン系コーティング組成物で安定した分散状態を維持し、形成されたコーティング膜の透明性を考慮して、粒子が5乃至30nmのナノサイズ水準であるのが好ましい。
【0039】
前記無機酸化物は、組成物全体で1.0乃至100重量部、好ましくは5乃至80重量部で含まれている。万が一、前記範囲未満である場合には、屈折率が適切な水準のコーティング膜の形成が困難であり、これとは反対に、前記範囲を超過する場合には、むしろコーティング膜のクラック点となってコーティング膜がひび割れたり破れて、膜の硬度が深刻に低下するので、前記範囲内で適切に調節する。
【0040】
本発明のシロキサン系コーティング組成物は、保存安定性及び耐摩耗性などの諸般の物性を考慮して、そのpH及び反応速度を調節する必要がある。
【0041】
このような目的で触媒を使用し、その例としては、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸、クロロスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ポリリン酸、ヨウ素酸、無水ヨウ素酸、過塩素酸などの酸触媒系、及び苛性ソーダ、水酸化カリウム、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イミダゾール、アンモニウムパークロレートなどの塩基触媒系がある。これらは、コーティング液の最終pHまたは成分による反応速度、そして適用基材に対する付着性などを考慮して、単独または2種以上を併用することができる。
【0042】
この時、使用される溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチルアセテート、メチルアセテート、キシレン、及びトルエンからなる群より選択される1種以上の単独溶媒または混合溶媒がある。前記溶媒は、組成物全体で10乃至130重量部、好ましくは30乃至100重量部で使用される。
【0043】
本発明のシロキサン系コーティング組成物は、基材との付着性、加工性、反射防止性などをより向上させるために、本発明の効果が低下しない範囲で各種の添加剤を追加的に使用することもできる。
【0044】
このような添加剤の例としては、ポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロヘキサンオキシド、ポリグリシジルエステル類、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、またはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系などの紫外線吸収剤などがある。また、塗布性を向上させるために、各種界面活性剤を添加することもでき、このような界面活性剤としては、ジメチルシロキサン及びポリエーテルのブロック共重合体やグラフト共重合体、またはフッ素系界面活性剤などがある。
【0045】
前記シロキサン系コーティング組成物は、通常のコーティング組成物の製造に使用される方法で製造され、代表的に、a)溶媒及び触媒存在下で、前記化学式1で示される化合物及び前記化学式2で示される化合物を混合した後、ゾル−ゲル反応を行う段階;b)生成されたゾルに、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物を添加する段階;を含み、前記段階a)またはb)の少なくとも1つの段階で、アルミニウムアセチルアセトン及びC−Cのアルキルセロソルブを添加する。
【0046】
具体的に、段階a)では、反応器で溶媒及び触媒存在下で、化学式1で示される化合物及び化学式2で示される化合物を混合した後、20乃至40℃の温度でゾル−ゲル反応を行う。
【0047】
前記ゾル−ゲル反応によって生成された有機−無機ゾルは、化学式1及び化学式2の化合物が3次元網状構造からなって、分子の状態が安定していて、低温度で短時間で付着力が優れているコーティング膜を形成することができる。
【0048】
段階b)では、前記段階a)で生成された有機−無機ゾルに、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物を添加する。
【0049】
特に、本発明のアルミニウムアセチルアセトン及びアルキルセロソルブは、前記段階a)、段階b)、または段階a)及びb)で添加され、好ましくは段階a)のゾル−ゲル反応の前または後で添加する。ただし添加順序はアルミニウムアセチルアセトンをアルキルセロソルブより先に添加する。
【0050】
前記ゾル−ゲル反応後に、生成された有機−無機ゾルの表面のヒドロキシ基及びアルミニウムアセチルアセトンがキレートを形成して、ヒドロキシ基間の縮合反応を抑制することによって、有機−無機ゾルの凝集現象を防止する。
【0051】
前記のように、本発明の組成物から形成されたコーティング膜は、屈折率が1.5乃至1.65の範囲であるので、中屈折及び高屈折コーティング膜として使用可能で、各種光学レンズ、特に産業安全ゴーグル及びレジャー用ゴーグルなどのプラスチックレンズの表面にコーティングされて、プラスチックレンズの品質を向上させることができる。
【0052】
本発明による組成物は、長期間保存してもゾルの保存安定性が低下することなく、基材コーティング後の乾燥が容易であり、工程中にホコリによる汚染が少なく、作業安定性が優れている。
【0053】
このような組成物から形成されたコーティング膜は、硬度が4H乃至8Hであり、耐熱湯性の実験による付着性が優れているだけでなく、染色後の透過率が30乃至70%である。これと共に、高硬度で耐摩耗性及び耐溶剤性が優れていて、硬化時に変色がなく、光学的透明性が優れている特徴がある。
【0054】
前記コーティング膜は、前記で説明したように、通常のコーティング方法を利用して、光学レンズ、産業安全ゴーグル、レジャー用ゴーグルなどのプラスチックレンズの表面にコーティング及び乾燥した後で硬化されて形成される。
【0055】
この時、コーティング後の硬化条件は、組成物の配合比や成分によって多少異なるが、一般的には、基材の軟化点未満の温度である60乃至150℃で20分乃至10時間硬化させることによって、目的とする特性を有するコーティング膜を形成することができる。
【0056】
前記使用されるコーティング方法は、通常の湿式コーティング法であり、一例として、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、またはスピンコーティングを使用することができるが、本発明ではこれに限定されない。
【0057】
前記シロキサン系コーティング組成物によって形成されたコーティング膜は、分散染料で染色可能である。このような染色は、分散染料の濃度、温度、時間などの条件を任意に決定することができ、一般的には、0.1乃至1重量%の濃度の染料水溶液を使用して、80乃至100℃の温度で5乃至10分間浸漬して染色する。
【0058】
以下、本発明の実施例及び比較例を提示して、本発明をより詳細に説明する。しかし、実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明はこれに限定されない。
【0059】
実施例1
(組成物の製造)
常温に維持されているジャケット反応器(jacket reactor)に、テトラエトキシシラン100g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン250g、及びメタノール100gを入れた後、5分間攪拌した。ここに、アルミニウムアセチルアセトン10gを入れて5分間攪拌して、pH2.5の酢酸水溶液80gを入れて3時間攪拌して、ゾル−ゲル反応を行った。
次に、反応器の温度を25℃にした後、前記ゾル−ゲル反応によって生成されたゾル溶液に、メタノールに分散されたTiO−SiO−ZrO(日産化学社製造 DH−40、粒径7〜9nm、球形、結晶状、屈折率2.0、固形分30重量%)350gを添加して1時間攪拌した。次に、ブチルセロソルブ100gを添加して、シロキサン系コーティング組成物を製造した。
【0060】
(コーティング膜の形成)
眼鏡用高屈折レンズ(ケミグラス社製造、MR−8、屈折率1.59)をエッチングした後、前記製造されたシロキサン系コーティング組成物に浸漬してコーティングし、110℃で2時間硬化させて、コーティング膜を形成した。
【0061】
実施例2
ブチルセロソルブの代わりにメチルセロソルブを添加することを除いては、前記実施例1と同一に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0062】
実施例3
ブチルセロソルブの代わりにエチルセロソルブを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0063】
実施例4
ブチルセロソルブの代わりにイソプロピルセロソルブを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0064】
実施例5
アルミニウムアセチルアセトン5gを添加することを除いては、前記実施例1と同一に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0065】
実施例6
アルミニウムアセチルアセトン20gを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0066】
実施例7
オルガノシランのゾル−ゲル反応後に、アルミニウムアセチルアセトンを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0067】
実施例8
オルガノシランのゾル−ゲル反応前に、ブチルセロソルブ50gを添加して反応を行い、反応後に、残りの300gを添加したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0068】
実施例9
TiO−SiO−ZrO(日産化学社製造 DH−40、粒径7〜9nm、球形、結晶状、屈折率2.0、固形分30重量%)170gを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0069】
比較例1
アルミニウムアセチルアセトンを添加しないことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0070】
比較例2
ブチルセロソルブを添加せずにアセチルアセトン100gを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0071】
比較例3
アルミニウムアセチルアセトン及びブチルセロソルブの代わりにアセチルアセトン100gを添加することを除いては、前記実施例1と同一に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0072】
比較例4
アルミニウムアセチルアセトンの代わりにアルミニウムイソプロポキシド10gを添加することを除いては、前記実施例1と同様に実施して、シロキサン系コーティング組成物及びコーティング膜を製造した。
【0073】
〔実験例1:シロキサン系コーティング組成物の物性の測定〕
前記実施例及び比較例で製造された各々のシロキサン系コーティング組成物の保存安定性及び作業性を測定して、その結果を下記の表1に示した。
【0074】
A:保存安定性
25℃で1ヶ月保存した場合の粘度変化及び沈殿度を測定した。
◎:1cP以下の粘度変化または0.1%未満の沈殿がある場合。
○:1cP超過3cP以下の粘度変化または0.1%以上0.5%未満の沈殿がある場合。
△:3cP超過の粘度変化または0.5%以上の沈殿がある場合。
【0075】
B:作業性
コーティング後に60℃で10分間乾燥した後、観察した。
○:表面が完全に乾燥され、手で触った時にべたつきがない場合。
△:表面の乾燥が若干不足して、手で触った時にべたつきがある場合。
×:表面の乾燥が不良で、手で触った時に手につく場合。
【0076】
【表1】

【0077】
前記表1を参照すれば、本発明によってブチルセロソルブ及びアルミニウムアセチルアセトンが添加された組成物の場合、時間が経過しても組成物に沈殿が発生せずに保存安定性が向上し、コーティング膜の形成時に乾燥が容易で、べたつきが発生せずに作業性が向上した。
【0078】
これに比べて、比較例1の組成物の場合、時間の経過に伴って沈殿が若干発生し、特に、アルミニウムアセチルアセトンを使用しないので、コーティング膜の形成時に乾燥が不良で、べたつきが非常に深刻に発生した。
【0079】
比較例2の組成物の場合、保存安定性は良好であったが、ブチルセロソルブの代わりにアセチルアセトンを使用するので、コーティング膜の形成時に乾燥が若干不足して、べたつきが発生して作業性が低下した。
【0080】
比較例3の組成物の場合、アルミニウムアセチルアセトン及びブチルセロソルブを使用せずにアセチルアセトンだけを使用するので、保存安定性及び作業性の両方が低い結果を示した。
【0081】
比較例4の組成物の場合、アルミニウムアセチルアセトンの代わりに従来公知されたアルミニウムイソプロポキシドを使用するので、コーティング膜の形成時に乾燥は容易であったが、時間の経過に伴って沈殿が深刻に発生した。
【0082】
〔実験例2:コーティング膜の物性の測定〕
前記実施例及び比較例から形成された各々のコーティング膜の物性を下記の表2のように測定して、その結果を表3に示した。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
前記表3を参照すれば、本発明によってアルミニウムアセチルアセトン及びアルキルセロソルブが添加されて製造された実施例1乃至4のコーティング膜は、屈折率が1.58乃至1.59で高屈折コーティング膜であり、外観、耐摩耗性、付着性、耐溶剤性、耐熱湯性、及び硬化時の変色性の全ての面で優れた結果を示した。染色性も70%以下と良好な数値を示した。
【0086】
比較例1のコーティング膜の場合、常温での付着性は優れていたが、耐摩耗性が低く、耐熱湯性の実験でコーティング膜及び基材の分離が深刻に発生した。また、染色性も75%と比較的高い数値を示し、染料がコーティング膜に安定的に付着しないことを示した。
【0087】
比較例2のコーティング膜の場合、耐熱湯性の実験による付着性は優れていたが、コーティング組成物そのもののコーティング性の不良によって耐摩耗性が低く、表面に簡単に擦り傷ができて、コーティング膜としての使用には不適切であった。
【0088】
比較例3のコーティング膜の場合、外観及び常温での付着性は優れていて、硬化時に変色が発生しなかったが、耐摩耗性及び耐熱湯性が非常に低い。特に、乾燥時にべたつきが深刻に発生してコーティング性が非常に不良であり、硬化後に形成されたコーティング膜の耐摩耗性が非常に低く、耐熱湯性の実験でも基材から簡単に分離された。染色性も73%で、染料そのものがコーティング膜に均一に分散及び付着しないことを示した。
【0089】
比較例4のコーティング膜の場合、常温及び耐熱湯性の実験による付着性が優れていて、硬化時に変色が発生しなかった。しかし、保存安定性が低く、沈殿の発生によって硬化後に形成されたコーティング膜の透明性が低くて、不透明であった。さらに、耐摩耗性も2等級の結果を示し、染色性も78%で、非常に不適切な結果を示した。
【0090】
前記のように、本発明の中屈折及び高屈折シロキサン系コーティング組成物は、保存安定性が優れていて、乾燥が容易で、工程中にホコリによる汚染が少ないので、作業安定性が優れている。また、硬化後に形成されたコーティング膜は、透明性を維持し、耐摩耗性、耐溶剤性、及び耐熱湯性の実験による付着性が優れていて、硬化時に変色が発生しないので、光学レンズ、産業安全ゴーグル、及びレジャー用ゴーグルなどのプラスチックレンズの表面のコーティング膜として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記の化学式1で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物0.1乃至50重量部、
b)下記の化学式2で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物10乃至60重量部、
c)屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物1.0乃至100重量部、
d)アルミニウムアセチルアセトン0.01乃至10重量部、
e)C−Cのアルキルセロソルブ1.0乃至30重量部、及び
f)溶媒10乃至130重量部を含む、シロキサン系コーティング組成物。
[化学式1]
(SiOR4−a
[化学式2]
Si(OR4−b
前記化学式で、
及びRは各々独立的にC−Cのアルキル基、C−Cのアルケニル基、C−Cのハロゲン化アルキル基、アリル基、及びC−Cの芳香族基からなる群より選択され、

【化1】

であり、この時、RはC−Cのアルキレン基であり、Rは水素、C−Cのアルキル基、及び
【化2】

からなる群より選択され、この時、Rは水素、C−Cのアルキレン基、及びC−Cのアルキル基からなる群より選択され、
はC−Cのアルキル基であり、
aは0乃至3の整数であり、
bは0乃至3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジフェニルエトキシビニルシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラプロポキシシラン、及びビニルトリイソプロポキシシランからなる群より選択される、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項3】
前記化学式2の化合物は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群より選択される、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物は、酸化チタン、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化セリウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、及び酸化イットリウムからなる群より選択される2種以上の酸化物を含む複合酸化物である、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項5】
前記無機酸化物は、TiO−ZrO−SnO、TiO−ZrO−SiO、及びTiO−SnO−SiOからなる群より選択される1種以上の複合酸化物である、請求項4に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項6】
前記無機酸化物は、平均粒径が5乃至30nmである、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項7】
前記C−Cのアルキルセロソルブは、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びイソプロピルセロソルブからなる群より選択される1種である、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項8】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチルアセテート、メチルアセテート、キシレン、及びトルエンからなる群より選択される1種以上の単独溶媒または混合溶媒である、請求項1に記載のシロキサン系コーティング組成物。
【請求項9】
a)溶媒及び触媒存在下で、下記の化学式1で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物から選択される少なくとも1種の化合物と、前記化学式2で示される化合物、その加水分解物、または部分縮合物から選択される少なくとも1種の化合物とを混合した後、ゾル−ゲル反応を行う段階;及び
b)生成された有機−無機ゾルに、屈折率が1.7乃至3.0である無機酸化物を添加する段階;を含み、
前記段階a)またはb)のすくなくとも1つの段階で、アルミニウムアセチルアセトン及びC−Cのアルキルセロソルブを添加する、シロキサン系コーティング組成物の製造方法。
[化学式1]
(SiOR4−a
[化学式2]
Si(OR4−b
前記化学式で、
及びRは各々独立的にC−Cのアルキル基、C−Cのアルケニル基、C−Cのハロゲン化アルキル基、アリル基、及びC−Cの芳香族基からなる群より選択され、

【化3】

であり、この時、RはC−Cのアルキレン基であり、Rは水素、C−Cのアルキル基、及び
【化4】

からなる群より選択され、この時、Rは水素、C−Cのアルキレン基、及びC−Cのアルキル基からなる群より選択され、
はC−Cのアルキル基であり、
aは0乃至3の整数であり、
bは0乃至3の整数である。
【請求項10】
前記段階a)は、20乃至40℃の温度で行われる、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウムアセチルアセトンは、段階a)のゾル−ゲル反応前または後に添加される、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項12】
前記アルキルセロソルブは、段階a)のゾル−ゲル反応前または後に添加される、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項13】
前記アルキルセロソルブは、アルミニウムアセチルアセトン添加後に添加される、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項14】
前記触媒は、酸触媒または塩基触媒である、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項15】
前記酸触媒は、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸、クロロスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ポリリン酸、ヨウ素酸、無水ヨウ素酸、及び過塩素酸からなる群より選択される1種以上である、請求項14に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項16】
前記塩基触媒は、苛性ソーダ、水酸化カリウム、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イミダゾール、及びアンモニウムパークロレートからなる群より選択される1種以上である、請求項14に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項17】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチルアセテート、メチルアセテート、キシレン、及びトルエンからなる群より選択される1種以上の溶媒である、請求項9に記載のシロキサン系コーティング組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載のシロキサン系コーティング組成物で形成され、屈折率が1.5乃至1.65であるコーティング膜を含む、光学レンズ。
【請求項19】
前記光学レンズは、産業安全ゴーグルまたはレジャー用ゴーグルである、請求項18に記載の光学レンズ。

【公表番号】特表2009−517522(P2009−517522A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543184(P2008−543184)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004987
【国際公開番号】WO2007/064108
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】