説明

中層浮魚礁の回収方法及びそれに用いる回収具

【課題】複雑な操作を行うことなく、水中の係留索に簡便かつ確実に回収索を取り付けることができ、短時間で中層浮魚礁を回収することができる作業性、確実性に優れた中層浮魚礁の回収方法の提供。
【解決手段】中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を魚礁本体の上方から外挿して魚礁本体と係留索の接続位置に保持する係止部保持工程と、係止部を縮径させて係留索の外周に巻着する係止部装着工程と、係止部を牽引して係留索と共に魚礁本体を水上に引き上げる回収工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留索によって水中に係留された中層浮魚礁の回収方法及びそれに用いる回収具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浮魚礁は、魚礁本体と海底などに沈設したシンカーを係留索によって接続、係留して水中に浮遊させる構造となっている。
この浮魚礁は、10年程度の耐用年数に達した後に、係留索に回収索を取り付け、その回収索を台船に装備したウインチなどで巻き上げることにより回収される。
浮魚礁の中で、魚礁本体を水面上に浮遊させる表層浮魚礁の場合、ダイバーが潜水して回収索の取り付けを行うことができるが、魚礁本体を水面下に浮遊させる中層浮魚礁の場合は、例えば水深100m程度の位置にある魚礁本体と係留索との接続位置に回収索を取り付ける必要があり、ダイバーによる取り付け作業が困難であるという問題があった。
そこで、(特許文献1)には、「作業船から吊り下げた案内索の先端側を移動しながら魚礁本体の適宜位置に掛止させて作業船を固定した後、作業船から繰り出す回収索の一端側と結合する回収用金具が着脱可能に取り付けられた無人潜水機を、案内索を利用しながら魚礁本体の近くまで吊り降ろし、無人潜水機を操作してその回収用金具を魚礁本体の下方にある係留索に結合させた後に回収用金具と無人潜水機とを分離し、無人潜水機を引き揚げた後、作業船上で回収索を巻き上げて中層浮魚礁を引き揚げることを特徴とする中層浮魚礁の回収方法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−207106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、(特許文献1)の方法では、無人潜水機を操作してその回収用金具を魚礁本体の下方にある係留索に結合させなければならず、操作が困難で、回収用金具を所定の位置(係留索)に結合させるのに時間がかかり、操作性、作業性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、複雑な操作を行うことなく、水中の係留索に簡便かつ確実に回収索を取り付けることができ、短時間で中層浮魚礁を回収することができる作業性、確実性に優れた中層浮魚礁の回収方法の提供、及び操作が簡単で、容易に位置決めを行うことができ、係留索と回収索との接続の作業性、確実性に優れた回収具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の中層浮魚礁の回収方法及びそれに用いる回収具は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の中層浮魚礁の回収方法は、係留索によって水中に係留された中層浮魚礁の回収方法であって、前記中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を前記魚礁本体の上方から外挿して前記魚礁本体と前記係留索の接続位置に保持する係止部保持工程と、前記係止部を縮径させて前記係留索の外周に巻着する係止部装着工程と、前記係止部を牽引して前記係留索と共に前記魚礁本体を水上に引き上げる回収工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を魚礁本体の上方から外挿して魚礁本体と係留索の接続位置に保持する係止部保持工程と、係止部を縮径させて係留索の外周に巻着する係止部装着工程と、係止部を牽引して係留索と共に魚礁本体を水上に引き上げる回収工程を有することにより、係止部を所定の位置に保持した後、縮径させるだけで確実に係留索に装着することができるので、複雑な操作を行うことなく、短時間で中層浮魚礁を回収することができ、作業の効率性、確実性に優れる。
(2)係止部保持工程において、中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を魚礁本体の上方から外挿するので、魚礁本体の外形に応じて予め係止部の大きさを調整するだけで、様々な大きさや形状の中層浮魚礁に対応することができ、汎用性に優れる。
(3)係止部装着工程において、係止部を縮径させて係留索の外周に巻着するので、係留索に確実に係止部を装着でき、回収工程において、係止部を牽引した際に、係止部が係留索から外れることがなく、係止部の固定の安定性、確実性に優れる。
【0007】
ここで、係止部は、縮径自在な環状に形成されていればよい。係止部は、係止部を牽引するための回収索の先端に一体に形成してもよいし、別途形成したものをリングやフックなどの連結部材を用いて回収索の先端に連結してもよい。例えば、回収索の先端に係止部を形成する場合は、挿通孔を有するシャックルなどの環状部材を回収索の一端に取り付け、回収索の他端を環状部材の挿通孔に挿通すればよい。回収索の他端側をウインチなどで牽引すれば、自動的に係止部が縮径されて係留索に巻着され、さらに牽引することにより、係留索と共に魚礁本体を水上に引き上げることができる。
尚、係止部としては、ワイヤやロープ等が好適に用いられるが、ナイロンスリングを用いることもできる。回収索は、ウインチのドラムに巻回されたワイヤやロープをそのまま使用してもよいし、先端に別途、ワイヤやロープを連結してもよい。
【0008】
係止部保持工程において、係止部を魚礁本体の上方から外挿する際には、形状保持性を有する枠体などに係止部を取り付けて、その形状を保持することが好ましい。例えば、枠体の環状部などに沿わせて係止部を取り付ければ、枠体と共に係止部を容易に魚礁本体の上方から外挿することができ、作業性に優れる。また、係止部保持工程では、係止部を魚礁本体と係留索の接続位置に保持する必要があるが、枠体が、ある程度の質量を有することにより、回収船に搭載したクレーンなどで吊り下げて、係止部を所定の位置(高さ)に保持することができる。尚、必要に応じて、枠体に重錘などを取り付けてもよい。
係止部と環状部(枠体)は、切れ易い糸や紐などの固定部材で固定することが好ましい。係止部装着工程において、係止部を縮径させる際に、固定部材が切断され、環状部(枠体)から取り外すことができるためである。
尚、中層浮魚礁の回収を行うには、予め中層浮魚礁の位置を確認する必要がある。よって、回収作業を行う前日などに、GPS受信機、水深器、ソナーなどを搭載した測量船で中層浮魚礁の位置や深さを検出する位置確認工程を行うことが好ましい。
【0009】
本発明の請求項2に記載の回収具は、請求項1に記載の中層浮魚礁の回収方法に用いる回収具であって、一端側に縮径自在な環状に形成された係止部を有する回収索と、前記回収索の前記係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有する枠体と、前記枠体に配設され回収船から前記枠体を吊り下げるための吊り下げ部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)一端側に縮径自在な環状に形成された係止部を有する回収索と、回収索の係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有する枠体と、枠体に配設され回収船から枠体を吊り下げるための吊り下げ部を有するので、回収船から簡便に吊り下げることができ、中層浮魚礁との位置合わせを容易に行うことが可能で、回収索の他端側を回収船に搭載したウインチなどで牽引するだけで係止部を縮径させて係留索に確実に装着することができ、係留索と回収索との接続の作業性、確実性に優れる。
(2)枠体が、回収索の係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有するので、枠体を吊り下げた状態で、環状部によって係止部の形状を保持することができ、魚礁本体の上方から係止部を外挿して魚礁本体と係留索の接続位置に確実に保持することができ、施工性に優れる。
(3)回収索の係止部が、枠体の環状部に着脱自在に取り付けられているので、係止部が完全に収縮して環状部から外れるまでの間、係止部の一部を環状部で保持しながら確実に縮径させることができ、動作の安定性、確実性に優れる。
【0010】
ここで、係止部及び回収索は、請求項1で説明した通りであるので、説明を省略する。
また、枠体は、請求項1でも説明したが、少なくとも環状部を有するものであればよい。環状部や枠体全体の形状は適宜、選択することができるが、環状部は円形状や楕円形状に形成されたものが好適に用いられる。係止部の取り付けが容易で、量産性に優れると共に、形状安定性、耐久性に優れるためである。尚、四角形状や多角形状に形成してもよい。分解、組立が容易で搬送性や収納性に優れるためである。
枠体の材質は、適宜、選択することができるが、金属や合成樹脂が好適に用いられる。尚、枠体の各部は中空のパイプ状の部材で形成してもよいし、中実の棒状の部材で形成してもよい。枠体を金属で形成する場合は形鋼や鋼管を用いてもよい。
吊り下げ部は、回収船に搭載したクレーンなどに枠体を吊り下げることができればよく、環状やフック状に形成された連結部材のみを有するものでもよいし、連結部材にワイヤやロープなどが接続されたものでもよい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回収具であって、前記回収索の前記係止部を前記枠体の前記環状部に沿わせて固定し、前記係止部の縮径時に切断される係止部固定部材を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)回収索の係止部を枠体の環状部に沿わせて固定し、係止部の縮径時に切断される係止部固定部材を有することにより、係止部が縮径するに従って、徐々に係止部固定部材が切断され、最後の係止部固定部材が切断された時に、係止部が環状部(枠体)から切り離されるので、確実に係止部を縮径させることができ、動作の安定性、確実性に優れる。
【0012】
ここで、係止部固定部材としては、請求項1でも説明したように、切れ易い糸や紐などが好適に用いられる。特に、係止部や枠体の環状部よりも弾性の低い材質を用いることにより、係止部の縮径時に小さな力で確実に切断することができ、係止部の縮径を妨げることがなく、環状部の変形や係止部の破損などが発生することがなく、信頼性に優れる。
具体的には、ポリプロピレンロープ、クレモナロープ(登録商標)、トワインロープ等の合成繊維製のロープ等が好適に用いられる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の回収具であって、前記吊り下げ部が前記回収船に搭載されたクレーンに連結され、前記回収索の他端側が前記回収船に搭載されたウインチに巻上げ可能に接続された構成を有している。
この構成により、請求項2又は3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)吊り下げ部が回収船に搭載されたクレーンに連結され、回収索の他端側が回収船に搭載されたウインチに巻上げ可能に接続されるので、吊り下げ部を介して枠体がクレーンに吊り下げられた状態で、係止部を所定の位置に保持することができ、ウインチで回収索を他端側から牽引することによって、係止部を縮径させて係留索に確実に巻着することができ、操作が容易で、動作の安定性、確実性、係止部の固定の信頼性に優れる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の回収具であって、前記枠体に配設されたカメラを備えた構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)枠体に配設されたカメラを備えることにより、枠体や係止部と中層浮魚礁の魚礁本体や係留索との位置関係を確認しながら、係止部を所定の位置に配置して保持することができ、遠隔からの作業が容易で、省力性、操作性に優れる。
【0015】
ここで、カメラの数や配置は適宜、選択することができるが、枠体の周縁部から中心方向を撮影できるように配設することが好ましい。枠体を魚礁本体に確実に外挿し、係留索の位置を確認し易いためである。特に、複数のカメラを備えた場合、枠体が魚礁本体と緩衝することを防ぐことができると共に、係留索の位置を確実に把握することができ、操作性、位置決めの確実性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)所定の位置に保持した係止部を縮径させるだけで確実に係留索に装着することができ、複雑な操作が不要で、短時間で中層浮魚礁を回収することができる作業の効率性、確実性に優れた中層浮魚礁の回収方法を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)回収船から吊り下げた状態で、中層浮魚礁との位置合わせを容易に行うことができ、回収索の他端側を回収船に搭載したウインチなどで牽引するだけで係止部を縮径させて係留索に確実に装着することができる係留索と回収索との接続の作業性、確実性に優れた回収具を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)係止部を所定の位置に保持した状態で、徐々に係止部固定部材を切断しながら、確実に係止部を縮径させることができる動作の安定性、確実性に優れた回収具を提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)吊り下げ部を介してクレーンに吊り下げられた状態で、係止部を所定の位置に保持することができ、ウインチで回収索を他端側から牽引することによって、係止部を縮径させて係留索に確実に巻着することができる操作が容易で、動作の安定性、確実性、係止部の固定の信頼性に優れた回収具を提供することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)中層浮魚礁の魚礁本体や係留索の位置を確認しながら遠隔操作を行うことができ、係止部を所定の位置に配置して保持することができる省力性、操作性に優れた回収具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の位置確認工程を示す模式側面図
【図2】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部保持工程を示す模式側面図
【図3】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部保持工程を示す模式平面図
【図4】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法に用いる回収具を示す模式斜視図
【図5】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部装着工程を示す模式側面図
【図6】実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の回収工程を示す模式側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における中層浮魚礁の回収方法及びそれに用いる回収具について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の位置確認工程を示す模式側面図である。
図1中、1は海10などの水中に係留された中層浮魚礁、1aは中層浮魚礁1の魚礁本体1bと海底などに沈設したシンカー(図示せず)を接続して係留する係留索、20は水深器21、ソナー22、GPS受信機23などを搭載し、実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の位置確認工程に用いられる測量船である。
実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法では、まず、図1に示すように、回収作業を行う前日などに、位置確認工程によって、測量船20に搭載した水深器21、ソナー22、GPS受信機23などを用いて、中層浮魚礁1の位置や深さを検出し、記録する。
【0023】
図2は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部保持工程を示す模式側面図であり、図3は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部保持工程を示す模式平面図である。
図2及び図3中、30は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法に用いる回収船、35は回収船30に搭載されたクレーン、40は回収船30に搭載されたウインチ、45は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法に用いられる回収具である。
【0024】
ここで、実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法に用いられる回収具の詳細について説明する。
図4は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法に用いる回収具を示す模式斜視図である。
図4中、50はワイヤやロープなどの回収索、51は回収索50の一端側に環状に形成された係止部、52は回収索50の一端に取り付けられ挿通孔52aに回収索50の他端が挿通されて係止部51を縮径自在に保持するシャックルを用いた環状部材、60は合成樹脂製や金属製のパイプや棒体で形成された回収具45の枠体、61は枠体60の底部に形成され係止部51が着脱自在に取り付けられる環状部、62は環状部61の要所に立設された枠体60の複数の柱部、63は環状に形成され複数の柱部62の上端を接続する枠体60の環状連結部、63aは環状連結部63の内側に十字状に配設された補強部、64は環状連結部63に配設された回収具45のカメラ、65は回収索50の係止部51を枠体60の環状部61に沿わせて固定するポリプロピレンロープを用いた係止部固定部材、66は環状連結部63とクレーン35の間を連結して回収船30から枠体60を吊り下げるための吊り下げ部(図2、3参照)である。
【0025】
以上のように構成された回収具を用いて行われる実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の各工程について説明する。
図2に示すように、係止部保持工程において、クレーン35を用いて回収具45の枠体60を水中に降下させることにより、中層浮魚礁1の魚礁本体1bの外形よりも大きな環状に形成された係止部51を魚礁本体1bの上方から外挿して魚礁本体1bと係留索1aの接続位置に保持する。
このとき、カメラ64により、枠体60や係止部51(環状部61)と中層浮魚礁1の魚礁本体1bや係留索1aとの位置関係を確認しながら操作することができる。尚、カメラ64の数や配置は適宜、選択することができるが、枠体60の周縁部から中心方向(環状部61の中心部)を撮影できるように配設することにより、係留索1aの位置を確認し易く、遠隔作業性に優れる。特に、複数のカメラ64を備えることにより、枠体60が魚礁本体1bと緩衝することを防ぐことができると共に、係留索1aの位置を確実に把握することができ、操作性、位置決めの確実性に優れる。
【0026】
図5は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の係止部装着工程を示す模式側面図である。
図5において、ウインチ40で回収索50の他端側を牽引することにより、回収索50が環状部材52の挿通孔52aを通過して係止部51が絞られ(図4参照)、縮径して係留索1aの外周に巻着される。
このとき、係止部51は枠体60の環状部61に沿うように係止部固定部材65によって固定されているが、係止部固定部材65として、切れ易いポリプロピレンロープなどを用いることにより、係止部51の縮径に伴って環状部材52から遠い位置の係止部固定部材65から徐々に切断され、全ての係止部固定部材65が切断された時に、係止部51が枠体60から切り離される。その後、クレーン35によって枠体60を魚礁本体1bの上方に吊り上げて回収する。
尚、係止部固定部材65としては、糸状や紐状に形成されたものが好適に用いられるが、その材質は適宜、選択することができる。特に、係止部51や枠体60の環状部61よりも剛性の低い材質で形成されたものを用いることにより、係止部51の縮径時に小さな力で確実に切断することができ、係止部51の縮径を妨げることがなく、環状部61の変形や係止部51の破損などが発生することがなく、信頼性に優れる。
【0027】
図6は実施の形態1の中層浮魚礁の回収方法の回収工程を示す模式側面図である。
図5の係止部装着工程において、係止部51が係留索1aの外周に巻着した後、回収工程において、さらに回収索50をウインチ40で牽引して巻き取ることにより、係留索1aと共に魚礁本体1bを水上(船上)に引き上げて回収することができる。その後、ウインチ40で係留索1aを巻き取り、係留索1a及びシンカーを回収する。
【0028】
以上説明したように、実施の形態1における中層浮魚礁の回収方法によれば、以下の作用を有する。
(1)中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を魚礁本体の上方から外挿して魚礁本体と係留索の接続位置に保持する係止部保持工程と、係止部を縮径させて係留索の外周に巻着する係止部装着工程と、係止部を牽引して係留索と共に魚礁本体を水上に引き上げる回収工程を有することにより、係止部を所定の位置に保持した後、縮径させるだけで確実に係留索に装着することができるので、複雑な操作を行うことなく、短時間で中層浮魚礁を回収することができ、作業の効率性、確実性に優れる。
(2)係止部保持工程において、中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を魚礁本体の上方から外挿するので、魚礁本体の外形に応じて予め係止部の大きさを調整するだけで、様々な大きさや形状の中層浮魚礁に対応することができ、汎用性に優れる。
(3)係止部装着工程において、係止部を縮径させて係留索の外周に巻着するので、係留索に確実に係止部を装着でき、回収工程において、係止部を牽引した際に、係止部が係留索から外れることがなく、係止部の固定の安定性、確実性に優れる。
【0029】
以上説明したように、実施の形態1における中層浮魚礁の回収方法に用いる回収具によれば、以下の作用を有する。
(1)一端側に縮径自在な環状に形成された係止部を有する回収索と、回収索の係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有する枠体と、枠体に配設され回収船から枠体を吊り下げるための吊り下げ部を有するので、回収船から簡便に吊り下げることができ、中層浮魚礁との位置合わせを容易に行うことが可能で、回収索の他端側を回収船に搭載したウインチなどで牽引するだけで係止部を縮径させて係留索に確実に装着することができ、係留索と回収索との接続の作業性、確実性に優れる。
(2)枠体が、回収索の係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有するので、枠体を吊り下げた状態で、環状部によって係止部の形状を保持することができ、魚礁本体の上方から係止部を外挿して魚礁本体と係留索の接続位置に確実に保持することができ、施工性に優れる。
(3)回収索の係止部が、枠体の環状部に着脱自在に取り付けられているので、係止部が完全に収縮して環状部から外れるまでの間、係止部の一部を環状部で保持しながら確実に縮径させることができ、動作の安定性、確実性に優れる。
(4)回収索の係止部を枠体の環状部に沿わせて固定し、係止部の縮径時に切断される係止部固定部材を有することにより、係止部が縮径するに従って、徐々に係止部固定部材が切断され、最後の係止部固定部材が切断された時に、係止部が環状部(枠体)から切り離されるので、確実に係止部を縮径させることができ、動作の安定性、確実性に優れる。
(5)吊り下げ部が回収船に搭載されたクレーンに連結され、回収索の他端側が回収船に搭載されたウインチに巻上げ可能に接続されるので、吊り下げ部を介して枠体がクレーンに吊り下げられた状態で、係止部を所定の位置に保持することができ、ウインチで回収索を他端側から牽引することによって、係止部を縮径させて係留索に確実に巻着することができ、操作が容易で、動作の安定性、確実性、係止部の固定の信頼性に優れる。
(6)枠体に配設されたカメラを備えることにより、枠体や係止部と中層浮魚礁の魚礁本体や係留索との位置関係を確認しながら、係止部を所定の位置に配置して保持することができ、遠隔からの作業が容易で、省力性、操作性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、複雑な操作を行うことなく、水中の係留索に簡便かつ確実に回収索を取り付けることができ、短時間で中層浮魚礁を回収することができる作業性、確実性に優れた中層浮魚礁の回収方法の提供、及び操作が簡単で、容易に位置決めを行うことができ、係留索と回収索との接続の作業性、確実性に優れた回収具の提供を行い、中層浮魚礁の回収作業の効率化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 中層浮魚礁
1a 係留索
1b 魚礁本体
10 海
20 測量船
21 水深器
22 ソナー
23 GPS受信機
30 回収船
35 クレーン
40 ウインチ
45 回収具
50 回収索
51 係止部
52 環状部材
52a 挿通孔
60 枠体
61 環状部
62 柱部
63 環状連結部
63a 補強部
64 カメラ
65 係止部固定部材
66 吊り下げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留索によって水中に係留された中層浮魚礁の回収方法であって、
前記中層浮魚礁の魚礁本体の外形よりも大きな環状に形成された係止部を前記魚礁本体の上方から外挿して前記魚礁本体と前記係留索の接続位置に保持する係止部保持工程と、前記係止部を縮径させて前記係留索の外周に巻着する係止部装着工程と、前記係止部を牽引して前記係留索と共に前記魚礁本体を水上に引き上げる回収工程と、を備えたことを特徴とする中層浮魚礁の回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の中層浮魚礁の回収方法に用いる回収具であって、
一端側に縮径自在な環状に形成された係止部を有する回収索と、前記回収索の前記係止部が着脱自在に取り付けられる環状部を有する枠体と、前記枠体に配設され回収船から前記枠体を吊り下げるための吊り下げ部と、を備えたことを特徴とする回収具。
【請求項3】
前記回収索の前記係止部を前記枠体の前記環状部に沿わせて固定し、前記係止部の縮径時に切断される係止部固定部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の回収具。
【請求項4】
前記吊り下げ部が前記回収船に搭載されたクレーンに連結され、前記回収索の他端側が前記回収船に搭載されたウインチに巻上げ可能に接続されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の回収具。
【請求項5】
前記枠体に配設されたカメラを備えたことを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の回収具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−231732(P2012−231732A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102210(P2011−102210)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【特許番号】特許第4838906号(P4838906)
【特許公報発行日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(594200150)株式会社廣瀬産業海事工業所 (2)
【Fターム(参考)】