説明

中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤

【課題】優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb)の抽出物、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)の抽出物、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)の抽出物、バタグルミ(Juglans cinerea)の抽出物及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn)の抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つの抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪や手足の体毛は本来、頭部、胸部、手足等の重要な器官を保護するためのものであるが、現代では生活環境の変化や技術の進歩発展とともに、保護機能の重要性は薄れつつある。体毛本来の保護機能が衣服等の保護手段によって代替されたり、生活環境の変化に伴い身体を損傷しうる外的な危険性が薄れたこと等によるものである。
これらに加え、最近では手足の体毛は美的外観上できるだけ少ない方が好まれる傾向にあり、特に女性においては、手足等の体毛を除去することが盛んに行われている。また、男性においても、従来から髭処理が一般的に行われている。
体毛を除去する除毛・脱毛方法としては、シェーバー等の器具を用いるもの、電気やレーザー等を用いるもの又は皮膚に脱毛剤を塗布して化学的に処理するものが一般的である。しかしながら、これらの方法は皮膚表面を傷つける、皮膚に炎症が起こる、薬剤によって皮膚がかぶれる等の弊害がある。また、処理に痛みを伴うという問題もある。
【0003】
このような背景から、発毛抑制効果を謳った発毛抑制剤や化粧料等が提案されているが、効果等の面で十分とは言い難く、発毛抑制効果を有する素材のさらなる探索が望まれている。近年、中性エンドペプチターゼ活性を阻害すれば体毛の成長を抑制出来ることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。皮膚組織内における中性エンドペプチダーゼの活性の上昇は、毛包形成およびその成長にとって重要な影響を及ぼしており、皮膚組織内の中性エンドペプチダーゼ活性を抑制することで、体毛の成長を抑制できる。
しかし、従来知られている中性エンドペプチダーゼ阻害剤は活性阻害効果が十分とはいえない等の問題点を有していた。そのため、新たな中性エンドペプチダーゼ阻害剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−351716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb)、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)、バタグルミ(Juglans cinerea)及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn.)の抽出物が、優れた中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb.)の抽出物、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)の抽出物、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)の抽出物、バタグルミ(Juglans cinerea)の抽出物及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn.)の抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つの抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供するものである。
また、本発明は、キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb.)の抽出物、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)の抽出物、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)の抽出物、バタグルミ(Juglans cinerea)の抽出物及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn.)の抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つの抽出物を有効成分として含有する発毛抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた活性阻害効果を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供することができる。また、本発明によれば、優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有する発毛抑制剤を提供することができる。
キンミズヒキ、ジャーマンダー、ムラサキウマゴヤシ、バタグルミ及びダッタンソバは生薬の原料や食用植物等として長年使用されてきている植物である。したがって、本発明により、安全性の高い中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、その好ましい実施態様の基づき詳細に説明する。
キンミズヒキは、バラ科キンミズヒキ属に属する植物で、学名はアグリモニア ピロサ レデブ(Agrimonia pilosa Ledeb.)である。キンミズヒキは別名、仙鶴草(センカクソウ)又は竜牙草(リュウガソウ)とも呼ばれる。キンミズヒキは従来から浴用剤として用いられているが、キンミズヒキの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0010】
ジャーマンダーは、シソ科テウクリウム属に属する植物で、学名はテウリクム カマエドリス(Teucrium chamaedrys)である。ジャーマンダーは従来からハーブとして用いられているが、ジャーマンダーの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0011】
ムラサキウマゴヤシは、マメ科ウマゴヤシ属に属する植物で、学名はメディカゴ サチバ エル.(Medicago sativa L.)である。ムラサキウマゴヤシは別名、アルファルファ又はモクシュクとも呼ばれる。ムラサキウマゴヤシは主にスプラウトで生鮮野菜として食用にされている。ムラサキウマゴヤシの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0012】
バタグルミは、クルミ科ジュグランス属に属する植物で、学名はジュグランス シネレア(Juglans cinerea)である。バタグルミは別名、シログルミ、バターナット又はホワイトウォルナットとも呼ばれる。バタグルミの抽出物は、染料や下剤として用いられているが、中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0013】
ダッタンソバは、タデ科ソバ属に属する植物で、学名はファゴピルム タタリクム (エル.) ゲルトン(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn.)である。ダッタンソバは別名、苦蕎頭(クキョウトウ)とも呼ばれる。ダッタンソバは食用に用いられるが、ダッタンソバの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0014】
本発明におけるキンミズヒキの抽出物、ジャーマンダーの抽出物、ムラサキウマゴヤシの抽出物、バタグルミの抽出物及びダッタンソバの抽出物は、各植物の任意の部位、例えば、全草、根塊、葉、樹皮、花などから抽出することができるが、キンミズヒキ、ジャーマンダーおいては全草、ムラサキウマゴヤシおいては葉、バタグルミにおいては樹皮、ダッタンソバにおいては根塊から抽出することが好ましい。
【0015】
本発明において、上記各抽出物の調製に、上記植物の各部位をそのまま、又は乾燥粉砕して用いることもできるが、その水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもできる。また、上記各抽出物の調製に市販品を用いることもできる。上記植物の部位又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、本発明における抽出物は、キンミズヒキの抽出物、ジャーマンダーの抽出物、ムラサキウマゴヤシの抽出物、バタグルミの抽出物及びダッタンソバの抽出物からなる群から選ばれる2種以上の抽出物の混合物であってもよい。
【0017】
本発明において、キンミズヒキの抽出物、ジャーマンダーの抽出物、ムラサキウマゴヤシの抽出物、バタグルミの抽出物及びダッタンソバの抽出物を得る方法は特に限定されず、適当な溶媒を用いた常法の抽出方法によって調製することができる。
抽出に用いる溶媒としては、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;及びピリジン類等が挙げられ、これら2種以上混合溶媒であってもよい。本発明において、抽出に用いる溶媒は水性アルコールが好ましく、90質量%以上の水性アルコールがより好ましく、95質量%以上の水性アルコールがさらに好ましく、95質量%以上のエタノールが特に好ましい。
また、抽出条件も通常の条件を適用でき、例えば抽出物が抽出される材料を3〜100℃で数時間〜数週間浸漬又は加熱還流するのが好ましく、室温付近の温度で1日〜7週間浸漬するのが特に好ましい。
また、本発明における抽出物は、市販の抽出物であってもよい。
【0018】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤の有効成分は、上記のように抽出された抽出物そのものであってもよいし、上記のように抽出された抽出物をさらに適当な分離手段、例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーや精密蒸留等により分画したものであってもよい。また、本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤及び発毛抑制剤の有効成分は、前記抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状にしたものであってもよい。すなわち、本発明における抽出物には、前記抽出方法で得られた各種溶剤抽出液の他、その希釈液、濃縮液や乾燥末等も含まれる。
【0019】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、本発明における抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤に含まれる抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0020】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができる。
【0021】
前述のように、中性エンドペプチターゼ活性を阻害することで、体毛の成長を抑制できることが知られている。後述の実施例で実証しているように、キンミズヒキの抽出物、ジャーマンダーの抽出物、ムラサキウマゴヤシの抽出物、バタグルミの抽出物及びダッタンソバの抽出物を有効成分として含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する。そのため、前記抽出物を有効成分として含有する本発明の発毛抑制剤は、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害し体毛の成長を抑えることができる。
【0022】
本発明の発毛抑制剤は、本発明における抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の発毛抑制剤に含まれる抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0023】
本発明の発毛抑制剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができるが、皮膚外用剤の剤形をとることが好ましい。本発明の発毛抑制剤を皮膚外用剤として皮膚に直接塗布することで、発毛を抑制したい部位のみに発毛抑制剤を効果的に作用させることができる。前記皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧料でありうるが、通常は医薬部外品や化粧料として用いられ、除毛、脱毛、又は髭剃り関連化粧料とすることが好ましい。
【0024】
本発明の発毛抑制剤を皮膚外用剤とする場合には、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、ゲル系、軟膏系、クリーム、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、幅広い形態を取りうる。例えば、ペースト状、クリーム状、エアゾール状等の除毛剤、ワックス状、ジェル状、シート状等の脱毛剤、除毛又は脱毛の後処理に用いるローション、クリーム等の後処理剤、プレシェーブローション等の髭剃り前処理料、シェービングクリーム等の髭剃り料、アフターシェーブローション等の髭剃り後処理料などが挙げられる。
【0025】
本発明の発毛抑制剤を皮膚外用剤として使用する場合の使用量は、有効成分である抽出物の含有量により異なるが、例えばクリーム状、軟膏状の場合、皮膚面1cm当たり1〜20mg、液状製剤の場合、1〜20mg使用するのが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
製造例1 キンミズヒキ抽出液の調製
キンミズヒキ(全草)(仙鶴草、新和物産より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で41日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をキンミズヒキ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は1.61gであり、抽出液の固形分濃度は0.74%(w/v)であった。
【0028】
製造例2 ジャーマンダー抽出液の調製
ジャーマンダー(全草)(American botanicals社より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で21日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をジャーマンダー抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は1.07gであり、抽出液の固形分濃度は0.36%(w/v)であった。
【0029】
製造例3 ムラサキウマゴヤシ抽出液の調製
ムラサキウマゴヤシ(葉)(Mountain Rose Harbs社より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で23日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をムラサキウマゴヤシ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は3.48gであり、抽出液の固形分濃度は1.12%(w/v)であった。
【0030】
製造例4 バタグルミ抽出液の調製
バタグルミ(樹皮)(Mountain Rose Harbs社より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で27日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をバタグルミ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は4.14gであり、抽出液の固形分濃度は1.24%(w/v)であった。
【0031】
製造例5 ダッタンソバ抽出液の調製
ダッタンソバ(根塊)(苦蕎麦、新和物産より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で17日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をダッタンソバ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は1.79gであり、抽出液の固形分濃度は0.53%(w/v)であった。
【0032】
実施例 中性エンドペプチダーゼ活性抑制試験
Cell System社より市販されている正常ヒト線維芽細胞を、10%牛胎児血清を含むDME培地で継体培養し、以下の試験に供した。試験方法は、The Journal of Biological Chemistry, 266(34), 23041−23047(1991)に記載の方法を参照した。
【0033】
ラバーポリスマンを用いてシャーレから剥がした細胞を、リン酸緩衝食塩水中に浮遊させ、低速の遠心分離器を使って細胞を集めた後、同生理食塩水で3回洗浄した。得られた細胞を0.1% Triton X−100/0.2M Tris−HClバッファー(pH 8.0)に浮遊させ、超音波粉砕し、これをヒト線維芽細由来酵素液とした。
ヒト線維芽細由来酵素液100μLに、蒸発残分0.5%(w/v)に調整した前記各抽出液(評価サンプル)を2.0μL又は0.6μL、中性エンドペプチダーゼ基質(10mMグルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシ−β−ナフチルアミン)を2.0μL添加し、37℃にて1時間インキュベートした。これにより、ヒト線維芽細胞由来酵素液に含まれる中性エンドペプチダーゼ(NEP)が基質をAla−Phe間で切断してNEP分解産物を生じる。その後、ホスホラミドン(Phosphoramidon)を最終濃度1μMとなるように添加して反応を停止させた。
続いて、反応系にロイシンアミノペプチダーゼ(Leucine aminopeptidase)を最終濃度が0.50mU/mLとなるように添加し、37℃で1時間インキュベートした。これにより、NEP分解産物がロイシンアミノペプチダーゼによってさらに切断され、4−メトキシ−2−ナフチルアミンを生じる。生じた4−メトキシ−2−ナフチルアミンの蛍光強度を、蛍光分光光度計を用いて、励起波長340nm、蛍光波長425nmにて測定した。
コントロールとして、上記反応系において、評価サンプルの代わりに95%エタノール水溶液を2μL又は0.6μL加え、同様の操作を行った。
得られた測定値をもとに、以下の式から評価サンプルの中性エンドペプチダーゼ活性阻害率を求めた。
中性エンドペプチダーゼ活性阻害率(%)=100−{(評価サンプル添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)/(コントロール添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)}×100
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から本発明における抽出物が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することがわかり、該抽出物を含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することが示された。
前述のように、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害すると体毛の成長が抑制されることが知られている。したがって、表1の結果から、前記抽出物を含有する本発明の発毛抑制剤が優れた発毛抑制作用を有することがわかる。
【0036】
(処方例)
本発明の発毛抑制剤の形態の例として、下記に示す組成のローション、クリーム、パック剤を常法により各々調製した。
【0037】
1.発毛抑制ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。

(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B キンミズヒキ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス

【0038】
2.発毛抑制クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。

(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B キンミズヒキ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス

【0039】
3.発毛抑制パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。

(組成) (配合:質量%)
キンミズヒキ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス

【0040】
4.発毛抑制ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。

(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B ジャーマンダー抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス

【0041】
5.発毛抑制クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。

(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B ジャーマンダー抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス

【0042】
6.発毛抑制パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。

(組成) (配合:質量%)
ジャーマンダー抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス

【0043】
7.発毛抑制ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。

(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B ムラサキウマゴヤシ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス

【0044】
8.発毛抑制クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。

(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B ムラサキウマゴヤシ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス

【0045】
9.発毛抑制パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。

(組成) (配合:質量%)
ムラサキウマゴヤシ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス

【0046】
10.発毛抑制ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。

(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B バタグルミ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス

【0047】
11.発毛抑制クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。

(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B バタグルミ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス

【0048】
12.発毛抑制パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。

(組成) (配合:質量%)
バタグルミ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス
【0049】
13.発毛抑制ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。

(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B ダッタンソバ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス

【0050】
14.発毛抑制クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。

(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B ダッタンソバ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス

【0051】
15.発毛抑制パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。

(組成) (配合:質量%)
ダッタンソバ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb)の抽出物、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)の抽出物、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)の抽出物、バタグルミ(Juglans cinerea)の抽出物及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn)の抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つの抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤。
【請求項2】
キンミズヒキ(Agrimonia pilosa Ledeb)の抽出物、ジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)の抽出物、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa L.)の抽出物、バタグルミ(Juglans cinerea)の抽出物及びダッタンソバ(Fagopyrum tataricum (L.) Gaertn)の抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つの抽出物を有効成分として含有する発毛抑制剤。

【公開番号】特開2011−190214(P2011−190214A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57554(P2010−57554)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】