説明

中性セルラーゼ触媒コア及びそれを生産する方法

本発明は宿主細胞において新しいセルラーゼタンパク質及びその誘導体をクローンし、そして高度なレベルで発現させることに関する。更に本発明は新しいセルラーゼタンパク質を発現させる形質転換体、及び遺伝子工学技術を用いてアクチノミセテズ(Actinomycetes)に由来する新しいセルラーゼをコードするDNA遺伝子断片及びその変異体を含む発現ベクターに関する。本発明はまた新しいセルラーゼ組成物及びその工業的な使用方法にも関する。特に本発明はアクチノミセテズ種に由来する新しいセルラーゼにより織物を処理することに関する。本発明はまた、動物の飼料の消化、洗剤中での使用、パルプ及び紙の処理、及びでんぷんの生産及びこれらの副産物の処理の改善にアクチノミセテズ種に由来する新しいセルラーゼを用いることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は宿主細胞において、新規な短縮セルラーゼタンパク質を高レベルで生成する方法、遺伝子工学技術により作られる宿主形質転換細胞、及びその様な形質転換細胞により作られる新しいセルラーゼタンパク質に関する。新しいセルラーゼタンパク質は新しいセルラーゼ触媒コアである。セルロースを含む繊維を本発明のセルラーゼコア領域(cellulase ore domains)で処理することにより、染料の再堆積を減らし及び対磨耗性を増大させるという特定の利益を提供することが明らかとなる。
【0002】
本出願は2004年12月23日に出願された米国特許出願番号60/638,953の一部継続出願であり、及びそれに基づき優先権を主張するものである。この出願の全ては参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
セルラーゼはセルロースのβ−D−グルコシド結合を加水分解する酵素である。 セルロース分解酵素は伝統的に3つの主要なクラスに分類されている: エンドグルカナーゼ(endoglucanase)、エキソグルカナーゼ(exoglucanase)又はセルビオヒドロラーゼ(cellobiohydrolase)及びβグルコシダーゼ(β-glucosidase)である (J. Knowles他、TIBTECH 5:255-261 (1987))。セルラーゼは多数の細菌、イースト及び糸状菌により作り出されることが知られている。
【0004】
セルロース分解酵素を用いるために開発された応用面での主要なものには、(バイオ)エタノールを生成するために(木材)セルロースパルプを砂糖に分解すること、ストーンウオッシング(stone washing)及びバイオポリッシング(bipolishing)のような繊維処理、及び洗剤組成物中での応用を含む。また、セルラーゼは汚れを除去する、すなわち、クリーニングのための洗剤組成物中で有用であることも知られている。例えば、英国特許出願第2,075,028号、第2,095,275号及び第2,094,826号は、セルラーゼを組み入れた洗剤を用いてクリーニング効果が向上することを例示している。更に、英国特許出願第1,358,599号は綿を含む織物の荒い感じを和らげるために、洗剤中にセルラーゼを用いることを説明している。
【0005】
繊維の処理において、セルラーゼの他の有用な特徴には、その色彩をより鮮やかにすることにより使用された織物を再生するという能力がある。例えば、綿を含む織物を繰り返し洗濯することにより、繊維は灰色がかった外観を帯びる。これは、或るときは「毛玉」と呼ばれる、機械的な動作によって引起される断絶、不規則となった小繊維によるものである。この灰色がかった外観は特に色の付いた織物で目立つ。その結果、繊維の不規則となった最上層を除去し、繊維の全体の見掛けを改善するセルラーゼの能力が意味を持つことが分かった。セルラーゼの主要な応用の対象である洗剤は、通常アルカリ性の条件で作用するため、pH7-10で高い活性を示すセルラーゼへの需要は強い。フミコラインソレンス(Humicola insolens)及びトリコデルマ レーセイ(Trichoderma reesei)種の様な、良くその特性の知られた真菌セルラーゼは中性から低いアルカリ性のpHで十分活動する。高いアルカリ性のpHでセルラーゼ活性を示す多くの酵素がバチルス(Bacillus)及び他の原核生物より分離された(例えば、PCT公報WO 96/34092及びWO 96/34108を参照)。この様に、真菌及び細菌性セルラーゼは十分に調査されている。しかし、第三のセルラーゼグループ、アクチノミセテズ(Actinomycetes)から分離されたものは余り注目を集めていなかった。Wilson他はCritical Reviews in Biotechnology、12:45-63(1992)において、テルモノスポラ フスカ(Thermomonospora fusca), テルモノスポラ クルバタ(Thermonomospora curvata)及びミクロビスポラ(Microbispora bispora)により生成されるセルラーゼを調査し、これらのセルラーゼの多くが広い範囲のpH及び温度に対して安定性が良いことを示している。同様に、Nakai他はAgric. Bioi. Chem, 51:3061-3065 (1987) 及びGene, 65:229-238 (1988)においてストレプトミセス(Streptomyces)株KSM-9から得られるアルカリ耐性のあるcas Aセルラーゼを示している。このセルラーゼはアルカリpHに対する適性、及び優れた温度安定性を持っている。
【0006】
アクチノミセテズ(Actinomycetes)の例の幾つかを含み、望ましい特性を持つ多くのセルラーゼ組成物に関する技術上の知識は存在するにもかかわらず、例えば、繊維の処理、洗剤組成物の成分、パルプ及び製紙の処理、動物の飼料のサプリメント、ベーキングの加工補助剤、及びバイオマス変換剤(biomass converters)として有用な種々の広範な特徴を持つ新しいセルラーゼに対する需要が依然として存在する。出願人はその様な特徴を補完し、セルラーゼの知られている応用分野で有用なセルラーゼを発見した。
【発明の概要】
【0007】
本発明はセルラーゼ触媒のコア領域、構築、ベクター及び非相同コード配列に動作可能にリンクされた一以上のプロモータ配列を含む宿主細胞に関する。
【0008】
本発明では、アクチノミセテズ(Actinomycetes)から得られる新しいセルラーゼ又は、そのセルラーゼの誘導体を提供する。好ましくは、本発明のセルラーゼは図1Eのアミノ酸配列(配列番号: )又は、それと95%より大きい配列同一性を持つその誘導体を含むのが良い。
【0009】
更に、本発明は洗剤、織物の処理、飼料のサプリメント、パルプ及び製紙での使用において優れた特性を示す新しいセルラーゼを提供することを目的とする。
【0010】
ある実施の形態においては、図1Eに示すアミノ酸配列をコードするDNAが提供される。この実施の形態のある特徴としてDNA配列が図2に示される。
【0011】
ある実施の形態においては、本発明のセルラーゼをコードするDNAを含む組成物が提供される。好ましくはDNAは、図1Eのアミノ酸配列(配列番号: )又は、そのアミノ酸と配列が76%を超えて同一であるその誘導体、好ましくは配列が80%を超えて同一、より好ましくは90%を超えて同一であるその誘導体、及びそれによって生成されるセルラーゼをコードする。本発明は更に、図2に示すDNAから適当な条件でプローブで採られたDNAと交配したDNA、及びそれにより生成されたセルラーゼを具体的に示す。
【0012】
他の実施の形態においては、図1Eに示すアミノ酸配列をコードするDNAを含むベクターを提供する。この実施の形態においては、ベクターはpKB107である。
【0013】
ある実施の形態においては、本発明は図1Eに示すアミノ酸配列をコードするDNAを含むベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞がストレプトミセス(Streptomyces)種である場合においては、宿主細胞は任意選択的にcyc2遺伝子(ジオスミン経路遺伝子(geosmin pathway gene))が欠失していることもある。
【0014】
ある最終の実施の形態においては、本明細書に記載の新しいセルラーゼ触媒のコア領域の使用方法が提供される。
【0015】
これらの方法は、本発明のセルラーゼコア領域によりセルロースを含む織物を処理に用いることができる。これらの方法は、染料の再堆積を減らし、対磨耗性を増し、織物風合度(すなわち、軟らかさ)の向上、滑らかな織物の表面、毛玉の除去及び/又は毛玉を防止するという特徴的な有利な点を提供する。
【0016】
本発明の他の特徴として、本方法は動物の飼料の消化を向上させ、洗剤、パルプ及び紙の処理及びでんぷんの生産及びこれらの副産物の処理に用いられる。
【0017】
本発明の他の目的、特徴及び優位な点については以下の詳細な説明において明らかになるであろう。しかしながら、本発明の好ましい実施の形態について、詳細な説明及び特定の実施例が開示されているが、これらは単に説明のために示したものであり、この詳細な説明に基づいて、本発明の範囲及び本発明の精神に沿って、当業者であれば種々の変更及び修飾を加えることができることは明らかであることは理解されるべきである。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明は、以下に示す定義及び実施例を用いて、単に説明の意味で詳細に記述する。本明細書に記載の全ての特許及び刊行物は、その様な特許及び刊行物に開示された全ての配列を含めて、参照により明確に本明細書に組み入れられる。
【0019】
本明細書において異なる意味を持つものとして記載されていない限り、本明細書で用いる全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の通常の知識を持った者により通常理解されている意味を持つ。Singleton他、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 第2版, John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial, NY (1991)は、当業者に本発明で用いられている多くの用語について一般的な辞書を提供する。本明細書で用いる方法及び材料に類似する、又は同等な方法及び材料は本発明の実施又は試験で用いることができるが、本明細書では好ましい方法及び材料が記載されている。数値範囲はその範囲を定義する数値を含む。異なる意味として示されない限り、核酸は5’から3’の方向に、左から右方向に記載され;アミノ酸配列は、アミノ基からカルボキシ基方向へ左から右方向に、おのおの記載される。実務者は技術分野での定義及び用語については特にSambrook 他、(1989), 及びAusubel FM 他、(1993)を参照するべきである。方法、手順、試薬は変わりうるものであり、本発明は、記載された特定の方法、手順、試薬に限定されるものではないことは了解されるべきである。
【0020】
本明細書で用いるヘッディングは、本発明の種々の特徴又は、実施の形態を限定するものではなく、本発明は明細書全体を参照して理解することが出来るものである。したがって、以下に続けて定義する用語は明細書全体を参照することによって、より完全な定義となる。
【0021】
定義
「核酸分子」(nucleic acid molecule)はRNA, DNA 及びcDNA分子を含む。遺伝子コードの縮重の結果、セルラーゼの様なある特定のタンパク質をコードする多くのヌクレオチド配列が生成されることが理解されるであろう。本発明は、特許請求の範囲に記載されたセルラーゼをコードして、全ての可能なヌクレオチド配列の変異体を含むことを意図しており、遺伝子コードの縮重を考慮すれば、それらの全てが可能である。
【0022】
「アミノ酸」(amino acid)はタンパク質、ポリペプチド又はペプチド(集合的にポリペプチド)に組み入れられるアミノ酸を含む。アミノ酸は、自然発生的アミノ酸、又は他の限定した意味を持つものとされない限り、自然発生的アミノ酸と同様に機能する天然のアミノ酸の知られたアナログを含んでもよい。
【0023】
「誘導体」(derivative)は、天然タンパク質に一以上のアミノ酸を、天然タンパク質のC又はN端末に追加し、天然アミノ酸配列中の一又は多くの異なる部位の一以上のアミノ酸を置換し、天然タンパク質の一方又は両方の端、又はアミノ酸配列の一以上の部位で一以上のアミノ酸を欠失させ、又は天然アミノ酸配列の一以上の部位で一以上のアミノ酸を挿入することにより天然タンパク質より誘導される、ペプチド又はタンパク質を指す。酵素の誘導体を生成することは、好ましくは天然タンパク質をコードするDNA配列を修飾し、そのDNA配列を適当な宿主に形質転換し、及び誘導体酵素を生成するために修飾されたDNA配列を発現させることにより実施される。誘導体を作るための代替的方法は技術分野で周知であり、例えば、天然タンパク質又はその誘導体のタンパク質分解的切断を含む。本発明のセルラーゼの誘導体は、前駆体酵素に特徴的な酵素の性質を保持しているが、ある特異な面において改変された特質を持つ前駆体酵素アミノ酸配列(例えば、本発明における野生型又は天然の状態の酵素)と比べて改変されたアミノ酸を含むペプチドを含む。例えば、改変されたセルラーゼは、pH最適条件が拡がり、又は温度抵抗が増しているが、その特徴的なセルロース分解活性を保持することもある。更に本明細書で用いる発現ベクター要素との関係において「由来する」(derived from)の用語は、参照配列と同一であって、天然に発生する又は人工的な変異体であり、又は化学的に合成されたコピー又はその変異体である配列を意味し、その配列は望ましい機能を保持している。この様にアクチノプレーン グルコース イソメラーゼ(Actinoplanes glucose isomerase)遺伝子由来のプロモータ配列を指す場合は、アクチノプレーン ミズリエンシス(Actinoplanes missouriensis,)由来のグルコース イソメラーゼ遺伝子の機能的プロモータ配列、GIT等の様なタンパク質を改変した誘導体由来の機能的プロモータ配列を含む。(欧州特許出願第351029号を参照)。また同時係属する米国特許出願第10/992,149号に記載のプロモータも本発明で用いることができる。
【0024】
特定のアミノ酸配列の「保存的置換」(conservative substitution)はアミノ酸の機能的活動にとり決定的でないアミノ酸の置換、又はアミノ酸を同様な特性(例えば、酸性、塩基性、陽性又は陰性に帯電した、極性を持つ、又は極性を持たない等)を持つ他のアミノ酸で置換することを言い、決定的なアミノ酸を置換した場合でも本質的に活性を変えることはない。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表はその技術分野でよく知られている。
【0025】
「プロモータ」(promoter)の用語はRNAポリメラーゼと結合し、ポリメラーゼを、対象とするコード配列の正しい下流転写開始部位に向け、転写を実施させるDNA配列と定義される。「プロモータ」(promoter)の用語は又mRNA及びエンハンサーの様なシス作用転写調節エレメントに転写後の、翻訳のための5’非コード領域(プロモータと翻訳開始部位の間)を含むと理解される。プロモータは対象とするコード領域を発現させるストレプトミセス(Streptomyces)において効果的であろう。
【0026】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係におかれる場合に「動作可能にリンクされて」(operably linked)いる。例えば、分泌リーダ(secretory leader)すなわち、シグナルペプチドをコードするDNAは、もしポリペプチドの分泌に与る全タンパク質(preprotein)として発現するばあいには、ポリペプチドのDNAと動作可能にリンクされており、プロモータ又はエンハンサーは、もし配列の転写に影響を与える場合は、コード配列に動作可能にリンクされており、リボソーム結合部位は、翻訳を促進する様に位置している場合は、コード配列に動作可能にリンクされている。通常「動作可能にリンクされて」いるは、リンクされたDNA配列が連続であり、分泌リーダの場合、連続し、そして読取相(reading・phase)にある。しかし、エンハンサーは連続である必要はない。リンクは適当な制限部位で結紮により実現されている。もしその様な部位が存在しない場合は、従来の慣行に従い合成オリゴヌクレオチド アダプター又はリンカーを用いる。
【0027】
本明細書で用いる「遺伝子」(gene)は、個々のコードセグメントの間の介在配列(intervening sequence)(イントロン(intron))のみならずコード領域に先行し、又はそれに続く領域、例えば、5’非翻訳(5’UTR)又は「リーダ」(leader)配列及び3’UTR又は「トレーラー」(trailer)配列を含み、又は含まないポリペプチド鎖を生成することに関与するDNAのセグメントを意味する。
【0028】
核酸の部分について用いられる場合の「非相同の」(heterologous)の用語は、核酸が天然においては、通常お互いに同じ関係あるとは見られない二以上のサブ配列を含むことを言う。例えば、核酸は、例えば、新しい機能的核酸を作るために配置された非関連の遺伝子、例えば、あるソースよりプロモータを、他のソースよりコード領域を作る様に、典型的には組換え操作により生成され、二以上の配列を持つ。同様に、非相同タンパク質は、しばしば、天然においてお互いに同じ様な関係にあるとは見られない二以上のサブ配列を指す(例えば、融合タンパク質)。
【0029】
本明細書で用いる「分離された」(isolated)又は「精製された」(purified)の用語は、それが自然に関連している少なくとも一つの成分から除去された核酸又はアミノ酸を指す。
【0030】
本明細書で用いる「本質的に純粋なポリペプチド」(substantially pure polypeptide)の用語は、それが自然において関連する他のポリペプチド材料を最大10重量%を含むポリペプチド製剤を含む(他のポリペプチド材料は、その%がより低いことが望ましく、例えば、最大重量%で8%、最大重量%で6%、最大重量%で5%、最大重量%で4%、最大重量%で3%、最大重量%で2%、最大重量%で1%及び最大重量%で1/2%)。このように、実質的に純粋なポリペプチドは少なくとも92%純粋であり、すなわち、ポリペプチドは製剤中の全ポリペプチド材料の92重量%を占め、より高い%が好ましく、例えば、少なくとも94%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、少なくとも99.5%純粋であるのが好ましい。本明細書に記載のポリペプチドは、好ましくは本質的に純粋な形であるのが良い。特に、本明細書に記載のポリペプチドは「基本的に純粋な形」(essentially pure form)である、すなわち、ポリペプチド製剤は基本的にそれが天然に関連している他のポリペプチド材料を基本的に含まない。これは、例えば、周知の組換え方法によりポリペプチドを生成することにより実現することができる。本明細書で用いる「本質的に純粋なポリペプチド」(substantially pure polypeptide)は、「分離されたポリペプチド」(isolated polypeptide)及び「分離された形のポリペプチド」(polypeptide in isolated form)と同義である。
【0031】
例えば、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターとの関連で用いられる場合、「組換え体」(recombinant)は、非相同核酸、又はタンパク質の導入により、又は天然核酸又はタンパク質が変質を受けて、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが修飾された、又はその細胞が、その様に修飾された細胞に由来することを示す。この様に、組換え細胞は、例えば、天然(非組換え体(non-recombinant))の形の細胞内で見られない遺伝子を発現させ、そうでなければ異常に発現し、又は発現が不十分、又は発現しない天然遺伝子を発現させる。
【0032】
「分泌シグナル配列」(secretory signal sequence)の用語はより大きなポリペプチドの成分として、それが合成される細胞の分泌経路を通して、そのより大きなポリペプチドに方向付けをするポリペプチド(分泌ペプチド(secretory peptide)をコードするDNA配列を指す。より大きなペプチドは、分泌経路を通して移動する間に分泌ペプチドを除去するために通常開裂される。
【0033】
「ベクター」(vector)は一以上の細胞タイプに核酸を導入するようにデザインされたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローンベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセット等を含む。
【0034】
本明細書で用いる「発現ベクター」(expression vector)は、適当な宿主でDNAの発現させることのできる適当な制御配列に動作可能にリンクされているDNA配列を含むDNA構築をさす。その様な制御配列は、転写を実施するプロモータ、転写を制御する任意選択のオペレーター配列、mRNA上の適当なリボソーム結合部位をコードする配列、転写及び翻訳の終了を制御するエンハンサー及び配列を含むこともある。「発現ベクター」は、標的細胞において特定の核酸の転写を認める一連の特定された核酸要素を用いて、組換え又合成により生成しても良い。
【0035】
「選択マーカー」(selective marker)は、導入された核酸又はベクターを含む宿主の選択を容易にする、宿主中で発現させることを可能にする遺伝子を言う。
【0036】
選択マーカーの例には、抗菌剤(antimicrobial),(例えば、ハイグロマイシン(hygromycin)、ブレオマイシン(bleomycin)、又はクロラムフェニコール(chloramphenicol)及び/又は宿主細胞に栄養上の利益の様な代謝利益を与える遺伝子を含むがこれに限定されるものではない。
【0037】
「宿主株」(host strain)又は「宿主細胞」(host cell)は、本発明のセルラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター又はDNA構築体に適する宿主を指す。特に宿主株は、ストレプトミセス(Streptomyces)種、又はバチルス(Bacillus)種のような細菌であることもある。本発明のある実施の形態においては、「宿主細胞」は、糸状菌株及び特にトリコデルマ(Trichoderma)種、又はアスペルギルス(Aspergillus)種の細胞から作られる細胞及びプロトプラスとの両方を指す。
【0038】
好ましい実施の形態
A. 宿主組織
本発明で用いられる宿主細胞は、細菌及び糸状菌細胞を含む。好ましい糸状菌宿主細胞には、アスペルギルス(Aspergillus)及びトリコデルマ(Trichoderma)細胞の様な糸状菌細胞を含む。好ましい細菌宿主細胞には、バチルス(Bacillus)、マイコバクテリウム(Macrobacterium)、アクチノミセズ(Actinomyces)及びストレプトミセス(Streptomyces)細胞を含む。 特に好ましい宿主細胞には、大腸菌、バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス レンツス(Bacillus lentus)、バチルス ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amylloliquefaciens)、バチルス コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス ランツス(Bacillus lautus)、バチルス メガテリウム(Bacillus megatherium)、及びバチルス ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を含む。特に好ましい宿主細胞には、ストレプトミセス グリセウス(Streptomyces griseus), ストレプトミセス リビダンス (Streptomyces lividans) ストレプトミセス ルビギノシス (Streptomyces rubiginosis)、ストレプトミセス ナタレンシス (Streptomyces natalensis)、ストレプトミセス コエリコロール (Streptomyces coelicolor)及びストレプトミセス アベルミチリス (Streptomyces avermitilis)の様なストレプトミセス種も含む。ある特に好ましい実施の形態においては、宿主細胞はストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)株であり、最も好ましい株はTK23 及び/又は TK24である。
【0039】
ある実施の形態においては、宿主細胞はゲオスミン(geosmin)、又はゲオスミンの様な(geosmin-like)化合物の生成が低減又は除去されるように修飾されていた。ゲオスミンは、普通の細菌、ストレプトミセス種により生成される化学品である。この言葉はギリシャ語であり、「土のにおい」(smell of the earth)と訳される。したがって、ゲオスミン又はゲオスミンの様な化合物の生成を低減又は除去することにより臭わない組成物と成る。
【0040】
B. DNA構築体及びベクター
新しいセルラーゼをコ−ドする配列を含む本発明の核酸構築体は、例えば、Beaucage 及び Caruthers,(1981)Tetrahedron Letters 22: 1859-1869 によるホスホアミド法、又はMatthes 他、(1984)EMBO Journa/3:801-805による方法の様な確立された標準的方法により合成することもできる。核酸構築体は合成及びゲノム起源の混合したものであっても良く、合成又はゲノムDNAの断片を結紮することにより生成してもよい。核酸構築体はまた、特異プライマ、例えば、米国特許第4,683,202号 又はSaiki 他、Science 239 (1988)487-491に記載の様な特異なプライマを用いてポリメラーゼ連鎖反応により生成しても良い。
【0041】
本発明のDNA構築体は発現ベクターの様なベクターに挿入しても良い。糸状菌、イースト及び細菌中でポリペプチドをクローン、形質転換及び発現させるのに適したベクターは当業者に種々知られている。典型的には、ベクター又はカセットは本発明のプロモータ、任意選択的にシグナル配列、関心の対象となるコード領域、及びターミネータ配列を含む。好ましい実施の形態においては、ベクターはシグナル配列及びターミネータ配列の間にある一以上のクローン部位を含む。
【0042】
ある好ましい実施の形態においては、セルラーゼ遺伝子がストレプトミセス宿主細胞に転移される場合、形質転換には、本発明のプロモータを含むベクター、ストレプトミセス セルラーゼ遺伝子に由来するシグナル配列をコードする核酸、好ましくはストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)セルラーゼ遺伝子及びバクテリアセルラーゼをコードするポリヌクレオチド、特にストレプトミセス株、最も好ましくはストレプトミセス リビダンス セルラーゼ遺伝子に由来するセルラーゼ遺伝子を用いることを含む。シグナル配列はまたストレプトミセス株の他のシグナル配列、特にストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)のシグナル配列に由来することもある。
【0043】
本発明の実施に用いることの出来る代表的なベクターには、pSEGCT、 pSEGCT11AG8, 及び pSEACTがある。その様なベクターの構築体は技術分野でよく知られており、米国特許第6,287,839号、第6,562,612号及び国際出願公開WO 02/50245に記載がある。pSEGCTの構築には二つのプラスミド、plJ486これはWard 他、(1986)Mol. Gen. Genet.203:468-478 に記載があり、及び plJ488、これはYanjsch−Peron 他、(1985) Gee 33: 103-119に記載がある。更にHopwood 他、(1983) J. Gen. Microbiol. 129:2257も参照すべきである。他に用いられるベクターには、実施例に記載の様にpSEA4CT-11AGB, pKB105及び pKB107を含む。
【0044】
C.宿主細胞の形質転換
本発明のベクターは宿主細胞に形質転換される。通常の形質転換技術は技術分野で良く知られている(Ausubel 他、(1994) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 及び Campbell 他、1989 Curr. Genet 16:53-56)。これらの一般的な技術には、これに限定されるものではないが、粒子又は遺伝子銃(バイオリスチック、biolistics)、形質転換プロセス前に糸状菌細胞壁の浸透(例えば、高濃度のアルカリ、例えば、0.05 M から0.4 M のCaCl2 又は酢酸リチウムを用いて)、プロトプラスト融合、電気穿孔法又は農業用細菌仲介の形質転換(米国特許第6,255,115号)を含み、及びプロトプラスト又はスフェロプラスト(spheroplast)をポリエチレングリコール及びCaCl2で処理することはCampbell他、(1989) Curro Genet. 16:53−56, (1989) Penttila, M. 他、(1988) Gene, 63:11-22に記載がある。
【0045】
細菌の形質転換及び発現方法はBrigidi,DeRossi, Bertarini, Riccardi 及びMatteuzzi により(1990)FEMS Microbiol. Lett. 55: 135-138 に開示されている。プロテアーゼが欠失したバチルス株の形質転換及び発現の好ましい一般的な手順はFerrari 他により米国特許第5,264,366号に開示されている。
【0046】
ストレプトミセス中での形質転換及び発現はHopwood他により、GENETIC MANIPULATION OF STREPTOMYCES: A LAsoRATORYMANUAL), 1985 John Innis Foundation, Norwich UKに記載されている。
【0047】
他の実施の形態においては、アスペルギルス(Aspergillus)及びトリコデルマ (Trichoderma)中での形質転換及び発現は、例えば、米国特許第5,364,770号及び第6,022,725号及びNevalainen 他、(1992), The Molecular Biology of Trichoderma And its Application to the Expression of Both Homologous and Heterologous Genes, MOLECULAR INDUSTRIAL MYCOLOGY, Eds. Leon and Berka, Marcel Dekker, Inc. 129 -148ページに記載がある。
【0048】
D. 細胞培養
宿主細胞及び形質転換細胞は通常の栄養媒体中で培養することができる。形質転換された宿主細胞の培養媒体はプロモータを活性化し、形質転換細胞を選択するのに適する様に修飾することができる。温度、pH等の特定の培養条件は、発現のために選択される宿主細胞に適用されるものでも良く、その技術分野の当業者にとって明らかである。更に、好ましい培養条件はSambrook, (1982) 上記;Kieser,T, MJ. Bibb, MJ. Buttner, KF Chater, 及び D.A. Hopwood (2000) PRACTICAL STREPTOMYCESGENETICS. John Innes Foundation, Norwich UK; Harwood他、(1990) MOLECULAR BIOLOGICAL METHODS FOR BACILLUS, John Wiley 及び/又はAmerican Type Culture Collection (ATCC;www.atcc.org)の様な技術文献に記載されている。トリコデルマ (Trichoderma)細胞の様な糸状菌宿主細胞の安定的な形質転換体は、その成長速度が速く、又は固形培養媒体における円状コローニの形成が、その外形がギザギザでなく滑らかであることで通常不安定な形質転換体とは区別することが出来る。
【0049】
E. 発現されたポリペプチドの回収
形質転換された宿主細胞により生成されたポリペプチドは、遠心分離又はろ過により培養体から宿主細胞を分離し、又はもし必要なら、細胞を分断し、細胞分画及び破片から浮遊物を除去することを含む従来の手続きにより培養媒体から回収しても良い。
【0050】
F. タンパク質の精製方法
通常清澄の後に、浮遊物又はろ液のタンパク質成分は、塩の形、例えば、硫酸アンモニウムの形で沈殿させられる。沈殿したタンパク質はその後可溶化せられ、種々のクロマトグラフ法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、及びその技術分野で認められたその他の方法により精製しても良い。ある好ましい実施の形態においては、セルラーゼを生成するためには、セルラーゼベースのエネルギー源を含む媒体を用いてアルカリ条件下で宿主細胞を培養するのが好ましい。
【0051】
G. 応用
本発明による織物の処理では、本発明のセルラーゼを含む組成物で織物を処理又は洗浄することを意図する。その様な処理には、これに限定されるものではないが、布地のストーウオッシング、修飾、セルロースを含む繊維の感触及び/又は外観、又はセルロースを含む繊維の製造、洗浄・再調整中に用いられる他の技術を含む。更に、本発明の文意における処理においては、セルロース系織物又は繊維から「未熟」綿(immature cotton)又は「死」綿(dead cotton)を除去することを意図する。未熟綿は、熟成綿より遥かに不定形であり、そのため、例えば、均一に染まらない。織物は、その厚さ、柔らかさ、剛性、滑らかさ及び織物の豊かさの様なある基準を用いて主観的に評価される。織物風合(fabric hand)は、触った感触、特に軟らかさからある人の受ける織物材料についての主観的評価を言い、パネルの個人による評価が、パネルの点数となる。代替的に、風合はカワバタ評価システムを用いて客観的に評価することが出来る。例えば、Kawabata, S.、The Standardization and Analysis of Hand Evaluation,・ Textile Machinery Society of Japan, Osaka, 1980を参照願いたい。
【0052】
本発明で意図されている組成物は、更に、汚れた、セルロースを含む織物製品を洗濯するのに用いられるセルラーゼ成分を含む。例えば、本発明のセルラーゼは洗濯物を洗う洗剤組成物に用いることができる。本発明において有用な洗剤組成物には、前洗い洗剤、つけおき洗剤及び家庭用の色彩復元組成物のような特殊な製剤を含む。その様な処理組成物は、本明細書に記載の様に、希釈を必要とする濃縮形、又は希釈液又はセルロースを含む織物に直接使用することのできる形であっても良い。織物のセルラーゼによる処理の一般的な処理技術は、例えば、EP 公開公報第220 016号、英国出願第1,368,599号 及び第2,095,275号に記載されている。
【0053】
本発明によるセルロース材料の処理方法は、更に技術分野で知られている目的のために、動物の飼料、パルプ及び/又は紙、食料及び穀物の処理を図るものがある。例えば、セルラーゼは動物の飼料の価値を高め、木材パルプの排水性を向上させ、食料品の品質を高め、及び穀物の湿式粉砕、又は乾式粉砕プロセスで穀物中の繊維を低減させる。
【0054】
廃紙を本明細書に記載のセルラーゼで処理することにより、紙からインクを除去することが出来る。この様に本明細書に記載のセルラーゼを、廃紙からリサイクル紙を製造するプロセスで用いることにより、インクが残っている繊維を大きく減少させることが出来、それにより廃紙の白さを向上させることができる。
【0055】
本発明で用いることのできる廃紙の例には、使用済み新聞用紙、使用済み雑誌用紙、及び機械パルプ及び化学パルプを含む低品質又は中品質使用済み印刷用紙、化学パルプより成る木材を含まない使用済み用紙及びそのコート紙を含む。本明細書で用いる「脱インク剤」(deinking agent)は廃紙のインクを取除くのに通常用いられる薬剤を指し、例えば、NaOH又は Na2CO3のようなアルカリ、ケイ酸ソーダ、過酸化水素、燐酸塩、アニオン性又は非イオン性界面活性剤、オレイン酸の様な捕捉剤、補助剤としてのpH安定剤、キレート剤、又は分散剤を含む。
【0056】
紙パルプを本明細書に記載のセルラーゼで処理することにより、その強度を大幅に減少させることなくパルプの自由度((freeness); 排水性(drainage))を極めて大きく向上させることができる。この様に、本発明のセルラーゼは紙パルプの自由度を向上させる方法を提供し、それには紙パルプを本明細書に記載のセルラーゼで処理するステップを含む。本発明の方法により処理することの出来るパルプの例には、廃紙パルプ、リサイクル厚紙、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ又は加工/熱処理されたパルプ及び他の高収率パルプを含む。
【0057】
更に、飼料に本明細書に記載のセルラーゼを用いることにより動物の飼料のグルカン(glucan)の消化を向上させることができる。この様に、本明細書に記載の発明は、動物の飼料を本明細書に記載のセルラーゼで処理するステップを含む、動物の飼料の消化を向上させる方法である。
【0058】
本発明による処理は、効果的な量のセルラーゼ、又はセルラーゼを他の任意選択的な成分、例えば、緩衝剤、界面活性剤及び/又は分散剤を含む成分と組み合わせたものを含む水性溶液を作ることを含む。セルラーゼ酵素組成物の効果的な量とは、その目的に適した十分な濃度のセルラーゼ酵素の量を言う。この様に、例えば、本発明のストーンウオッシング組成物でのセルラーゼの「効果的な量」(effective amount)は、所望の効果、例えば、継目及び織物パネルにおいて擦り切れた及び色あせた外観を生じさせる効果をもたらせる量である。同様に、セルロースを含む織物の手触り及び/又は外観を向上させるための組成物中のセルラーゼの「効果的な量」は、手触りをはっきり分かる程度に向上させる量、例えば、織物の滑らかさ、又は外観、例えば、織物の外観の鮮明さを低減させる毛玉及びひげ根を除去する量である。用いられるセルラーゼの量は、使用される装置、用いられるプロセスのパラメータ(セルラーゼ処理溶液の温度、セルラーゼ溶液への露出時間等)、セルラーゼの活性(例えば、ある特定の溶液で、より活性の高い組成物が用いられる場合は、より活性の低い組成物に比べてセルラーゼの濃度は低くとも良い)及び織物のタイプにもよる。処理される織物が浸される水性処理溶液中のセルラーゼの厳密な濃度は、所望の成果のみならず上記の要因に基づき当業者が容易に決定することができる。ストーンウオッシングプロセスでは、通常水性処理溶液中に存在するセルラーゼの濃度は、全タンパク質の、約0.5から5,000 ppmが好ましく、最も好ましくは約10 から200 ppmの範囲であった。セルロースを含む織物の手触り及び/又は外観を向上させるための組成物においては、通常水性処理溶液中に存在するセルラーゼの濃度は全タンパク質の、好ましくは約0.1から2,000 ppm、及び最も好ましくは約0.5 から200 ppmの範囲であった。
【0059】
好ましい処理の実施の形態においては、緩衝液は処理組成物中で、使用されるセルラーゼが活性を示す範囲内において溶液のpHを維持するに十分な濃度である程度に用いられる。
【0060】
セルラーゼが活性を示すpHは使用されるセルラーゼの性質による。
【0061】
使用される緩衝液の厳密な濃度は、当業者が容易に考えることのできる幾つかの要因による。
【0062】
例えば、ある好ましい実施の形態においては、緩衝液濃度及び緩衝液は、最適なセルラーゼ活性を得るために必要なpHの範囲内で、最終的なセルラーゼ溶液のpHを維持するよう選択される。本発明のセルラーゼの最適なpHの範囲の決定は周知の技術により確認することができる。セルラーゼの活性の範囲内のpHを持つ適用な緩衝液もまた、技術分野で周知である。
【0063】
セルラーゼ及び緩衝液に加えて、処理組成物は任意選択的に界面活性剤を含んでも良い。適当な界面活性剤には、用いられるセルラーゼ及び織物に干渉しない界面活性剤、例えば、アニオン、ノンーイオン及び両性界面活性剤を含む。好適なアニオン界面活性剤には、これに限定されるものではないが、直線又は枝分かれアルキルベンゼンスルフォン酸塩;直線又は枝分かれアルキル基又はアルケニル基を含むアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩;アルキル又はアルケニル硫酸塩;オレフィンスルフォン酸塩;アルケンスルフォン酸塩等を含む。アニオン界面活性剤に好適な対イオンには、これに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウムの様なアルカリ金属イオン;カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属イオン;アンモニアイオン;及び炭素数が2又は3の1から3級アルカノール基を持つアルカノールアミンを含む。両性界面活性剤には、例えば、第4級アンモニア塩スルフォン酸、及びベタイン(betaine)タイプ両性界面活性剤を含む。その様な両性界面活性剤は、同じ分子中にプラス及びマイナスに帯電した基を共に含む。ノン イオン界面活性剤は、通常高度脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物のみならずポリオキシアルキレン エーテル、及び脂肪酸グリセリンモノエステルを含む。界面活性剤の混合物もまた、当業者に知られている方法により用いることができる。
【0064】
濃縮セルラーゼ組成物は、本明細書に記載の方法の使用のために生成することが出来る。その様な濃縮物は上に記載の濃縮された量のセルラーゼ組成物、緩衝液及び界面活性剤を、好ましくは水性溶液中に含むのが良い。この様に製剤されると、セルラーゼ濃縮物は水で希釈して容易に各構成成分が必要な濃度を持つセルラーゼの調合を迅速且つ正確に生成することができる。水性濃縮物が製剤されると、これらの濃縮物は、上記したセルラーゼ溶液中で必要な成分濃度となる様に希釈させることが出来る。容易に明らかになるように、その様なセルラーゼ濃縮物はその組成物が用いられる場所への輸送を容易にするばかりでなく、セルラーゼ溶液を容易に生成することができる。濃縮物の処置は技術分野で認められているどの様な形式のもの、例えば、液体、乳液、ゲル又はペーストの様なものでも良い。その様な形式は当業者に良く知られている。
【0065】
固体のセルラーゼ濃縮物が用いられる場合は、セルラーゼ組成物は顆粒、粉末、塊、又は固体円盤状であっても良い。顆粒は洗濯媒体中で顆粒が溶解する速度を減少させる材料を含む様に製剤される。その様な材料及び顆粒は米国特許第5,254,283号に開示されており、本文献は参照によりその全てが本明細書に組み入れられる。
【0066】
他の材料も、所望により本発明のセルラーゼ組成物と共に用いられ、又は成分中に入れることもできる。その様な材料には、組成物の最終的な用途に応じて、石、軽石、充填剤、溶媒、酵素活性剤及び再付着防止剤を含む。
【0067】
例示として、ストーンウオッシング法を詳細に説明するが、これらに記載するパラメータは他に応用するために、例えば、織物の手触り及び/又は外観を向上させるために、当業者が容易に修飾することができる。セルロースを含む織物は、処理組成物をストーンウオッシング組成物と混ぜ、そうすることでセルラーゼ酵素を織物の近くまで送ることにより、効果のある量のセルラーゼを含むストーンウオッシング組成物を含むセルラーゼと接触する。その結果、セルラーゼ及び織物を含む水溶液は攪拌される。もし処理組成物が水溶液であれば、織物が溶液中に直接浸されることもある。同様に、ストーンウオッシング組成物が濃縮物である場合、濃縮物は水槽にセルロースを含む織物と共に浸し希釈される。ストーンウオッシング組成物が固形である場合、例えば、前洗いゲル又は固形棒状である場合、ストーンウオッシング組成物は、組成物を直接織物又は洗剤液に当てることで接触させても良い。
【0068】
セルロースを含む織物は、セルロースを含む織物にストーンウオッシュされた外観を与える酵素の作用を効果的に生じさせうる条件の下で、ストーンウオッシュ溶液と共に温置される。例えば、ストーンウオッシング中に、pH、液体比(liquor ratio)、温度及び反応時間は、ストーンウオッシング組成物が作用するに最も好ましい条件に調整されることもある。「効果的な条件」(effective conditions)とは、セルラーゼ酵素を、セルロースを含む織物と効果的に反応させる、(この場合はストーンウオッシング効果を作り出す反応であるが)、pH, 液体比及び温度を言う。本発明のストーンウオッシング組成物を用いるための条件を最大化する方法は当業者の技術常識に属する。
【0069】
本明細書で用いるストーンウオッシング中の液体比、すなわち、ストーンウオッシング組成物溶液(すなわち、洗剤液)の織物に対する重量比は、通常デニム織物中で所望のストーンウオッシング効果を得るのに十分な量であり、使用されるプロセスに依る。好ましくは液体比率は約3:1 から約50:1、より好ましくは約5:1 から約20:1、最も好ましくは約10:1から約15:1が良い。
【0070】
本発明のストーンウオッシング組成物を用いるストーンウオッシング中の反応温度は二つの競合する要因により決定される。まず、より高い温度は、通常より高い反応速度に対応し、すなわち、より速い反応がおき、そのためより低い温度での反応時間に比べて反応時間が短い。したがって、反応温度は通常、少なくとも約10℃以上である。次に、セルラーゼは、ある反応温度を超えると活性を失うタンパク質であり、その温度は、用いられるセルラーゼの性質に依存する。この様に、もし反応温度が余りに高くなると、セルラーゼ活性はセルラーゼの変性のため失われる。技術分野でのセルラーゼの標準使用温度は通常35℃から65℃であり、これらの条件は本発明のセルラーゼにとっても適切であると思われるが、最適な温度条件は、周知技術に従い用いられる特定のセルラーゼについて確認すべきである。
【0071】
反応時間はストーンウオッシングが起きるその特定の条件による。例えば、pH、温度及びセルラーゼの濃度はすべて最適反応時間に影響を与える。通常、反応時間は約5分から約5時間であり、好ましくは約10分から約3時間、より好ましくは約20分から約1時間であるのが良い。
【0072】
本発明の他の実施の形態においては、本発明のセルラーゼは洗剤組成物中で用いることができる。本発明の洗剤組成物は前洗い組成物、つけおき洗剤組成物、又は通常の洗濯又はリンスサイクルでの洗浄に有用である。好ましくは本発明の洗剤組成物は効果的な量のセルラーゼ、界面活性剤及び任意選択的に以下に述べる他の成分を含むのが良い。
【0073】
本発明の洗剤組成物で用いられるセルラーゼの効果的な量は、セルラーゼによりセルロースを含む織物に生成するものとして知られている好ましい効果、例えば、けば立ち除去、軟らかくすること、けば立ち防止、表面繊維の除去、灰色化の防止及び清浄を行うのに十分な量である。好ましくは洗剤組成物中のセルラーゼは洗剤の約10ppmから約20,000 ppmの濃度で用いられるのが良い。
【0074】
洗剤組成物で用いられるセルラーゼ酵素の濃度は、洗濯媒体に希釈した場合セルラーゼ酵素の濃度が全タンパク質の約0.01ppmから約1000 ppmの範囲、好ましくは約0.02ppmから約500 ppm、最も好ましくは約0.5 ppmから約250 ppmの範囲であるのが良い。洗剤組成物中に用いられるセルラーゼ酵素の量は、洗濯液を作るために洗剤が水に加えられ希釈される程度による。
【0075】
本発明の洗剤組成物は、例えば、液状、顆粒状、乳液状、ゲル状、ペースト状のような一般的に認められている形であればどの様な形式でも良い。その様な形式は当業者に良く知られている。固形洗剤組成物が用いられる場合は、セルラーゼは好ましくは顆粒に製剤されるのが良い。好ましくは、顆粒はセルラーゼを保護する剤を更に含む様に製剤されるのが良い。顆粒は、顆粒が洗濯媒体に溶解する速度を低減させる材料を含むように製剤することが出来る。その様な材料及び顆粒は米国特許第5,254,283号に開示されており、本文献の全ては参照により本明細書に組み入れられる。
【0076】
本発明の洗剤組成物は表面活性剤、すなわち、洗剤組成物においての使用が良く知られているアニオン性、ノン−イオン性及び両性界面活性剤を含む界面活性剤を用いる。
【0077】
本発明の洗剤組成物で用いられる好適なアニオン界面活性剤には、直線又は枝分かれアルキルベンゼンスルフォン酸塩;直線又は枝分かれアルキル基又はアルケニル基を含むアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩;アルキル又はアルケニル硫酸塩;オレフィンスルフォン酸塩;及びアルカンスルフォン酸塩を含む。アニオン界面活性剤に好適な対イオンには、ナトリウム、カリウムの様なアルカリ金属イオン;カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属イオン;アンモニアイオン;及び炭素数が2又は3の1から3級アルカノール基を持つアルカノールアミンを含む。両性界面活性剤には、第4級アンモニア塩スルフォン酸、及びベタイン(betaine)タイプ両性界面活性剤を含む。その様な両性界面活性剤は、同じ分子中にプラス及びマイナスに帯電した基を含む。ノン イオン界面活性剤は、通常高度脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物及び脂肪酸グリセリンモノエステル等のみならず、ポリオキシアルキレン エーテルを含む。本発明で用いられる好適な界面活性剤は英国特許出願第2 094 826 A号に開示されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。その様な界面活性剤の混合物もまた用いることができる。界面活性剤又は界面活性剤の混合物は、通常本発明の洗剤組成物中で、全洗剤組成物の約1重量%から重量95%の量で、好ましくは約5重量%から45重量%の量で用いられるのが良い。セルラーゼ組成物及び界面活性剤に加え、本発明の洗剤組成物は任意選択的に一以上の以下の成分を含むこともあり得る:
【0078】
セルラーゼを除く加水分解酵素
好適な加水分解酵素には、エステル結合に作用するカルボン酸エステルヒドロラーゼ、チオトステル ヒドロラーゼ、リン酸モノエステル ヒドロラーゼ及びリン酸ジエステルヒドロラーゼ;グリコシル化合物に作用するグリコシドヒドロラーゼ;Nグリコシル化合物を加水分解する酵素;エーテル結合に作用するチオエ−テル ヒドロラーゼ; 及び ペプチド結合に作用するa−アミノ−アシル−ペプチド ヒドロラーゼ、ペプチジル−アミノ酸ヒドロラーゼ、アシル−アミノ酸ヒドロラーゼ、ジペプチド ヒドロラーゼ及びペプチジル−ペプチドヒドロラーゼを含む。これらの中で、カルボン酸エステル ヒドロラーゼ、グリコシド ヒドロラーゼ、及びペプチジル−ペプチド ヒドロラーゼが好ましい。好適なヒドロラーゼには、(1)、例えば、ペプシン(pepsin), ペプシンB(pepsin B), レンニン(rennin), トリプシン(trypsin), キモトリプシンA(chymotrypsin A), キモトリプシンB(chymotrypsin B), エラスターゼ(elastase), エンテロキナーゼ(enterokinase), カテプシンC (cathepsin C), パパイン(papain), キモパパイン(chymopapain), フィシン(ficin), トロンビン(thrombin), フィブリノリシン(fibrinolysin), レニン(renin), スブチリシン(subtilisin), アスペルギロペプチダーゼA (aspergillopeptidase A), コラゲナーゼ(collagenase), クロストリジオペプチダーゼ(clostridiopeptidase B), カリクレイン(kallikrein),ガストリシン (gastrisin), カテプシンD(cathepsin D), ブロメリン(bromelin), ケラチナーゼ(keratinase), キモトリプシンC(chymotrypsin C), ペプシンC(pepsin C), アスペルギロペプチダーゼB(aspergillopeptidase B), ウロキナーゼ (urokinase), カルボキシペプチダーゼA及びB(carboxypeptidase A and B), 及びアミノペプチダーゼ(aminopeptidase)の様なペプチジル−ペプチド ヒドロラーゼ(peptidyl-peptide hydrolase)に属するプロテアーゼを含み、
(2) グリコシド ヒドロラーゼ(glycoside hydrolase), 必須の成分であるセルラーゼはこのグループから除かれる)、αアミラーゼ(α-amylase), β−アミラーゼ(β-amylase), グルコアミラーゼ(gluco amylase), インベルタ−ゼ(invertase), リソザイム(lysozyme), ペクチナーゼ(pectinase), チチナーゼ(chitinase), 及びデキストラナーゼ(dextranase)を含み、この中でも αアミラーゼ(α-amylase), β−アミラーゼ(β-amylase)が好ましい。これらは酸性から中性のシステムで機能するが、細菌から得られるものがアルカリシステムで高い活性を示す; (3) カルボキシル エステラーゼ(carboxyl esterase), リパーゼ(lipase), ペクチンエステラーゼ(pectin esterase), 及びクロロフィラーゼ(chlorophyllase)を含むカルボン酸エステル ヒドロラーゼ(carboxylate ester hydrolase)(特に効果的なのはリパーゼである)を含む。
【0079】
セルラーゼを除くヒドロラーゼは、その目的に沿って必要なだけ洗剤組成物に組み入れてよい。好ましくは、純粋タンパク質の量で、0.001から5重量%の量で組み入れられるべきであり、より好ましくは0.02から3重量%であるのが良い。この酵素は洗剤組成物中で粗酵素のみの顆粒の形、又は他の成分と組み合わされた形で用いられるべきである。粗酵素の顆粒は、精製酵素が顆粒中に0.001から50重量%である様な量で用いられる。顆粒は0.002から20及び好ましくは0.1から10重量%で用いられるのが良い。セルラーゼの場合と同様に、これらの顆粒は酵素保護剤及び溶解遅延材料を含む様に製剤されても良い。
【0080】
カチオン性界面活性剤及び長鎖脂肪酸塩
その様なカチオン性界面活性剤及び長鎖脂肪酸塩は、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニル エーテル カルボン酸塩、αスルホン脂肪酸塩又はエステル、アミノ酸タイプ界面活性剤、リン酸エステル界面活性剤、3から4のアルキル置換基及び1までのフェニル置換のアルキル置換基を持つアンモニア塩を含む第4級アンモニア塩を含む。適当なカチオン性界面活性剤及び長鎖脂肪酸塩は、英国特許出願第2 094 826 A号に開示されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。この組成物はその様なカチオン性界面活性剤及び長鎖脂肪酸塩を約1から20重量%含んでも良い。
【0081】
ビルダー(builders)
A. 二価の隔離剤(Divalent sequestering agent)
組成物は、以下の化合物のアルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩より成る群から選択される約0から約50重量%の一以上のビルダー成分を含むこともある:すなわち、リン酸塩(phosphates), ホスホン酸塩(phosphonates), ホスホノカルボン酸塩(phosphonocarboxylates), アミノ酸塩(salts of amino acids), アミノポリ酢酸高分子電解質(aminopolyacetates high molecular electrolytes), 非解離ポリマー(non-dissociating polymers), ジカルボン酸塩(salts of dicarboxylic acids), 及びアルミノケイ酸塩(aluminosilicate salt)。適当な二価隔離剤は英国特許出願第2 094 826 A号に開示されており、本文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0082】
B. アルカリ又は無機電解質
この組成物は、アルカリ又は無機電解質としての、以下の化合物の一以上のアルカリ金属塩の組成物に基づき、約1から約50重量%、好ましくは約5から約30重量%のトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミンの様な有機アルカリのみならずケイ酸塩、炭酸塩、及びサルフェートを含む。
【0083】
再付着防止剤
この組成物は、再付着防止剤として約1から約50重量%の一以上の以下の化合物、すなわち、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol), ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol), ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)及びカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)を含んでも良い。
【0084】
これらの中で、カルボキシメチルセルロース及び/又はポリエチレングリコールと本発明のセルラーゼ組成物を組み合わせたものが、汚れを落とすのに特に有用な組成物を提供する。
【0085】
漂白剤
本発明のセルラーゼを、漂白剤、例えば、モノ過硫酸燐塩(potassium monopersulfate), 過炭酸ナトリウム(sodium percarbonate), 過ホウ酸ナトリウム(sodium perborate), 硫酸ナトリウム/過酸化水素付加化合物(sodium sulfate/hydrogen peroxide adduct)及び塩化ナトリウム/過酸化水素付加化合物(sodium chloride/hydrogen peroxide adduct)、及び/又はスルホン酸フタロシアニン塩(salt of sulfonated phthalocyanine)の亜鉛又はアルミニウム塩の様な感光性漂白染料(photo-sensitive bleaching dye)の様な漂白剤と組み合わせたものは洗剤効果を更に向上させる。
【0086】
同様に、EP 684 304 に記載されている漂白剤及び漂白触媒も用いることもできる。
【0087】
青味剤及び蛍光染料
種々の青味剤及び蛍光染料は、もし必要なら組成物に組み入れても良い。好適な青味剤及び蛍光染料は英国特許出願第2 094 826 A号に開示されており、本文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
凝結抑制剤
次の凝結抑制剤を粉末洗剤に組み入れても良い:p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酢酸塩、スルホコハク酸塩、タルク、微粉末シリカ、アモルフォスシリカ、粘度、ケイ酸カルシウム(Johns Manville Co.の MicroCellの様な)炭化カルシウム及び酸化マグネシウム。
【0089】
抗酸化剤
抗酸化剤は、例えば、tert−ブチルーヒドロキシトルエン(tert-butyl-hydroxytoluene), 4,4'- ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール (4,4'- butylidenebis(6-tert-butyl-3-methylphenol), 2,2'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(2,2'-butylidenebis (6-tert-butyl-4-methylphenol), モノスチレン化クレゾール(monostyrenated cresol), ジスチレン化クレゾール (distyrenated cresol), モノスチレン化フェノール(monostyrenated phenol), ジスチレン化フェノール(distyrenated phenol)及び1,1-bis(4-ヒドロキシ−フェニル)シクロヘキサン(1 ,1-bis(4-hydroxy-phenyl)cyclohexane)を含む。
【0090】
可溶化剤
可溶化剤には、例えば、エタノール(ethanol), ベンゼンスルホナート塩(benzenesulfonate salts)の様な下級アルコール(lower alcohol)、 p-トルエンスルホナート塩(p-toluenesulfonate salts)の様な下級アルキルベンゼンスルホナート塩(lower alkylbenzenesulfonate salt), プロピレングリコール(propylene glycol) の様なグリコール(glycol), アセチルベンゼン−スルホん酸塩(acetylbenzene-sulfonate salts), アセトアミド(acetamides), ピリジンジカルボン酸アミド(pyridinedicarboxylic acid amides), 安息香酸塩(benzoate salt)及び尿素(urea)を含む。
【0091】
本発明の洗剤組成物は酸性からアルカリ性pHまでの広い範囲のpHで用いることができる。ある好ましい実施の形態においては、本発明の洗剤組成物は約5から約12を超えないpHを持つ弱酸性、中性又はアルカリ性洗剤洗濯媒体で用いることができる。
【0092】
上記の成分とは別に、香水、緩衝液、防腐剤、染料などは、もし所望する場合は本発明の洗剤組成物と共に用いることができる。その様な成分は技術分野でこれまで用いられてきた量で使用することができる。
【0093】
本発明で用いられる洗剤のベースが粉末の形である場合は、噴霧乾燥法、及び造粒法を含むどの様な知られている生成法で生成されたものであっても良い。特に噴霧乾燥法、凝集法、乾燥混合法又は非タワールート法(non-tower route method)で得られる洗剤ベースが特に好ましい。噴霧乾燥法により得られる洗剤ベースは調剤条件での制約はない。噴霧乾燥法により得られる洗剤ベースは、表面活性剤、及びビルダーの様な耐熱性成分の水性スラリーを熱い空間(hot space)に噴霧することで得られる中空の顆粒である。噴霧乾燥の後に、香水、酵素、漂白剤、無機アルカリビルダーが加えられることもある。例えば、噴霧乾燥顆粒法又は凝集法により得られる様な高密度の顆粒状洗剤ベースと共に、種々の成分がベースの調剤後に追加されることもある。
【0094】
洗剤ベースが液体である場合は、液体は均一な溶液であるか又は非均一な分散液である。洗剤中で、セルラーゼによりカルボキシメチルセルロースの分解物を除去するために、カルボキシメチルセルロースは組成物に組み込まれる前に顆粒状とされるか又は被覆されるのが望ましい。
【0095】
本発明の洗剤組成物は、産業上又は家庭で用いられる場合、セルロースを含む織物、例えば、汚れた織物と共に、これらの環境で通常上用いられる温度、反応時間及び液体比率で温置しても良い。
【0096】
本発明の洗剤は、所望の改善された柔軟性、毛玉除去、毛玉発生防止、表面繊維の除去又は洗浄を行うに十分な活性を持つように、中間のpHを持つ適当な溶液中で前洗い剤として更に調剤されても良い。洗剤組成物が液体、スプレー、ゲル又はペースト組成物の様なつけおき洗剤(例えば、前洗い、又は事前処理)組成物である場合、セルラーゼ酵素は、つけおき洗剤又は事前処理組成物の全重量に基づき、通常その約0.0001から約1重量%で用いられる。その様な組成物では、任意選択的に界面活性剤を用いることができ、界面活性剤が用いられる場合には、界面活性剤はつけおき洗剤の全重量に基づき、通常約0.005から約20重量%の濃度で存在する。組成物の残りの部分はつけおき洗剤で用いられる通常の組成物、すなわち、希釈剤、緩衝剤、他の酵素(プロテアーゼ)等を通常の濃度で含む。
【0097】
本明細書に記載のセルラーゼ酵素を含む組成物は家庭において、色のあせた織物(例えば、米国特許第4,738,682号を参照、本文献は参照によりその全てが本明細書に組み入れられる)に、それ自身で色彩を再生するに適した組成物として用いられると同時に、しみ抜き、毛玉除去及び毛玉発生防止(毛玉防止)のために用いることが出来る。
【0098】
本発明のセルラーゼの使用は、パルプ及び紙の原料の添加物中で、及び加工工程において特に効果的であることもある。これらの更なる工業分野での応用については、例えば、PCT公報第95/16360号及びフィンランド特許第87372号に夫々記載がある。
【0099】
本発明及びその有利な点を更に説明するために、以下の特徴的な実施例が示されるが、これらは本発明を説明するために提供されるものであり、発明の範囲を限定するためであると解してはならない。
【0100】
以下に開示する実験では、次の略号が用いられる:等量(eq (equivalents)), モルの(M (Molar)), μモル(μM (micromolar)),規定(N (Normal)), モル(mol (moles)),ミリモル (mmol (millimoles)), μモル(μmol (micromoles)), ナノモル(nmol (nanomoles)),g(g (grams)), mg (mg (milligrams)), kg (kg (kilograms)), μg(μg (micrograms)), リットル(L (liters)), ミリリットル(ml (milliliters)), μリットル(μl (microliters)),cm (cm (centimeters)), mm(mm (millimeters)),μm (micrometers), nm (nanometers), ℃(degrees Centigrade)), 時間(h (hours)), 分(min (minutes)), 秒(sec (seconds)), ミリセコンド(msec (milliseconds)),キューリ (Ci (Curies)), ミリキューリ(mCi (milliCuries))、μキューリ(μCi (microCuries)), 薄層クロマトグラフィー(TLC (thin layer chromatography)), トシル(Ts (tosyl)),ベンジル (Bn (benzyl)),フェニル (Ph (phenyl)), メシル(Ms (mesyl)), エチル (Et (ethyl)), メチル(Me (methyl))。
【0101】
実施例
本発明は更に詳細に以下の実施例において記述されるが、これらは本発明の範囲を限定するものと解してはならない。添付の図面は明細書及び本発明の記述の不可欠の一部を為すものと解されねばならない。特に、本明細書に記載の全ての引用文献は、本明細書に記載された全ての引用によって組み入れられる。以下の実施例は、これに限定されるものではないが、特許請求の範囲の発明の説明のために記載される。
【0102】
実施例1ベクターの構築
この実施例は新しいセルラーゼ触媒コアを含むプラスミドの構築について説明する。
【0103】
図3に示され、米国特許第6,562,612号の実施例6に記載されている GIプロモータを含むpSEGCT11AG8ベクターは本発明で用いられるベクターの生成のベースとして用いられた。 pSEA4CT-11AG8ベクター構築は米国特許出願第10/992,149号(2004年11月18日出願)に記載され, 及び本出願の図4に記載されている(pSEA4CT-11AG8の遺伝子地図)。
【0104】
pKB105プラスミドは、全長11AG8セルラーゼをコードするセグメントを、新しいセルラーゼ触媒コアをコードする配列により置換することにより、プラスミドpSEA4CT-11AG8から構築された。図5を参照(新しいセルラーゼ触媒コアをコードする配列は“11AG8 Core I“と命名される)。図6はpKB105ベクターを示す。
【0105】
新しいセルラーゼ触媒コア発現ベクターpKB107はpKB105に由来する。pKB105で大腸菌のDNA配列を除去することによりpKB107プラスミドが生成された。pKB105大腸菌配列を除去することは、37℃でSphI, EcoRI 及びHindIIIにより一夜分解により行われた。分解されたDNAはQiagenキットを用いて精製され、その後ストレプトミセス(Streptomyces)宿主細胞の形質転換のため再結紮された。図7はpKB107ベクターを示す。
【0106】
実施例2
発現及び活性
以下の実施例は新しいセルラーゼの発現及び活性を示す。
【0107】
2A形質転換及び発現
実施例1で構築された発現ベクターpSEA4CT-11AG8 及び pKB107がこの実施例で用いられた。
【0108】
これらの実験では、ストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans) 宿主細胞は、上に記載のベクターにより形質転換された。形質転換技術はHopwood他による、GENETIC MANIPULATION OF STREPTOMYCES, A LABORATORY MANUAL. The John Innes Foundation, Norwich, United Kingdom (1985)に記載のプロトプラスト法を用いた。
【0109】
ストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)、細胞は上に記載の様に発現ベクターの一つにより形質転換された。形質転換された細胞はazo-CMCプレートに平板培地され、セルラーゼを発現させるコロニーが「ハロー」(halo)を生成することにより同定された。ハローを形成するコロニーは、試液(TS)中の振とうフラスコで3日間、50μg/mlのチオストレプトン(thiostrepton)の存在下で30℃で成長させた。細胞は抗生物質を含まない生産媒体に移され、更に3日成長が続けられた。サンプルが酵素活性アッセイのため採取された。
【0110】
試液、TS = 16 g Difcoトリプトン、4g Difcoソイトーン、20gカゼイン (加水分解生成物)(sigm)及び5gのK2HPO4を1リットルとした。オートクレーブの後、50%ろ過滅菌したグルコースを加え最終濃度を1.5%とした。
【0111】
生産媒体:2.4g クエン酸*H2O; 8.3g Biospringer Yeast Extract; 2.4 g(NH42SO4; 72.4g MgSO4*7H2O; 0.1g CaCl2*2H2O; 0.3 ml Mazu DF204 (消泡剤)、5 ml ストレプトミセス(Streptomyces)、修飾微量元素(1リットル原液は;250gクエン酸*H2O;3.25 g FeSO4*7H2O; 5 g ZnSO4*7H2O; 5 g MnSO4* H2O; 0.25 g H3BO3を含む)、10 g グルコース、容量を1リットルにして、pHをNaOHにより6.9に調整する。
【0112】
2B 回収
1mlのサンプルが各振とうフラスコから採取され、14,000rpmで遠心分離された。浮遊物の一部が酵素アッセイに用いられた。
【0113】
更に、醗酵培養体が形質転換された培養体により培養された。各時間の経過点で醗酵液のサンプルが取り出され分析された。細胞物質は遠心分離により取り出された。
【0114】
2C セルラーゼ活性の修飾アッセイ
この実施例では、簡単な、直接的、信頼性の高い及び時間を要としないアッセイにより、マイクロタイタープレートを用いてセルラーゼ活性を評価することが出来る。
【0115】
2201 Unit/mLの活性を持つ、事前に数値化された醗酵サンプルから採った標準酵素参考例を用いた。希釈緩衝液:100mMのリン酸ナトリウム、pH 8.0 及び0.2umフィルター滅菌を用いてサンプル及び基質を希釈した。希釈緩衝液は、800mflの脱イオン化水に12g NaH2PO4 を混合して作り、6NのNaOHでpHを8までに調整して、最終1.0リットル容量として0.2umフィルター滅菌した。
【0116】
標準酵素参考例は、40倍に希釈され、その後2倍の希釈を、続けて3から5回行った。振とうフラスコサンプルに、続けて、2倍の希釈を3から5回行った。醗酵器サンプルは20から50倍に希釈され、続けて2倍の希釈を、3から5回行った。この様に、各実験サンプル及び標準酵素参考例について、異なるタンパク質濃度を持った合計3から50のサンプルを作った。
【0117】
このアッセイでは、希釈緩衝液(上記記載を参照)中の180uLの0.5 mg/ml 2-Nitrophenyl −β−D-cellobioside (Sigma)が96ウエルプレート(Model “9017”,Costar, Cambridge, MA) の20ulサンプルと室温で混合された。
【0118】
セルラーゼ活性はSpectra MAX250分光光度計(Spectra Sunnyvale CA, U.S.A.)を用い、405nmの吸光度で、9秒間隔で8分間測定し平均速度を決定した。
【0119】
結果を図8に示す。Y軸はNPC単位/mlである。図より明らかな様に、CBDを除去することにより、手を加えないセルラーゼに比べ、中性セルラーゼ活性が劇的に増加していることが分かる。
【0120】
実施例3
洗濯における効果
以下の例は、顆粒の実験新触媒コアサンプルKB107Cブレンド(95 % KB107C+ 5% IndiAge(登録商標)Neutra L)を市場で販売されている11 AG8製品(IndiAge(登録商標) Neutra G(Genencor International))と比べた洗濯の効果を示す。酵素は各実験毎に同じ合計量のONPC活性量を用いた。
【0121】
35kgデニム基材での実験手順を纏めると以下の通りである;
ステップ1:湯通し(55 ℃/20 分)
ステップ2:液滴(drop)及びリンス(rinse)
ステップ3:セルラーゼ処理(55 ℃/pH 6.5/60分)
ステップ4:冷温リンス(1-2分)
ステップ5:高温リンス(70 ℃/5 分)
ステップ6:冷温リンス(1-2分)
ステップ7:抽出機で抽出
ステップ8:回転ドライヤで乾燥
ステップ9:評価
試験
湯通しは0.57 g/L の調合Optisize 及び0.25g1L Trit0n X-100を用いて55℃で20分間実施された。
【0122】
湯通しされたデニム基材は、生産規模のベリー(belly)洗濯機で、以下の条件で新しい顆粒(95 % KB107C+ 5% IndiAge(登録商標)Neutra L) 及びIndiAge(登録商標)Neutra Gを用いて処理された:
・ 液比率(LR):15:1(525リットルの水、35kgの湯通しされたデニムジーンズ)
・ 界面活性剤:Lutensol AT80 @ 0.14 g/l
・ 処理温度:55℃、pH::6.5±0.2(酢酸でpHが調整されたリン酸モノナトリウム緩衝液)
・ 処理時間:60分
・ 3回リンス
以下の酵素用量を用いて種々のラン試験を行った。1) IndiAge(登録商標) Neutra G@ 1,702 X 10 単位/ラン; 2) 0.65X顆粒@ 1,106 X 10単位/ラン(ラン1の65% 活性) ; 3) IndiAge (登録商標)NeutraG @ 1,702 X 10単位/ラン- #1の繰返し; 4) 0.65X 顆粒@ 1106 X 103単位/ラン(ラン3の65 %の活性), #2の繰返し;5) 0.65X 顆粒@ 1,702 X10単位/ラン。
【0123】
5個のデニムの脚が、試験1-5の各ランから、セルラーゼ処理の後に任意に選択され、デニムの前面側のバックステイニング(backstaining)を除くために軽く漂白された。
【0124】
選択されたデニムの脚の漂白は全て10g/リットルの次亜塩素酸ナトリウム(6.15%活性)、及びソーダ灰と共にUnimac中で65℃で20分間実施され、その後界面活性剤で洗浄された。
【0125】
バックステイニング(backstaining)及び摩耗(abrasion)の評価
セルラーゼ処理の後のバックステイニング及び摩耗レベルを数値化するために、MinoltaのChroma Meter CR-200を用いて各デニムの脚から6つの反射率測定値を採った。
【0126】
CIE L*値が摩耗を数値化するために、CIE b*値がバックステイニングを数値化するために用いられた。L*は明るさ(lightness)を示し、b*はGIELAB色空間での青さ(blueness)を示す。この様にL*が高い数値を示すほど摩耗は大きく、b*が高いほどバックステイニングは大きい。
【0127】
測定は、Minolta Camera Co., Ltd.の"Precise Color Communication", 1993, 2. Hunter, R. S. abd G+Harold, R. " The measurement of Appearance", J. Wiley and Sons, NY, 第2版(1987)に記載の様に行われた。
【0128】
結果
試験の結果は、市場で販売されている1x活性のIndiAge(登録商標)Neutra G の洗浄力は新しいNeutra G(95 % KB107C+ 5% IndiAge(登録商標)Neutra L)の0. 65x 活性と略等しい。以下の表1及び図9及び10にその結果を示す。
【表1】

【0129】
試験の条件では、65 %活性の新しいNeutra G(95 % KB107C+ 5% IndiAge(登録商標)Neutra L) は100 %活性のIndiAge(登録商標) Neutra Gと同様な摩耗効果を示し、100 %活性の新しいNeutra Gは100 %活性のIndiAge(登録商標)Neutra Gより極めて高い摩耗効果を示した。同様な摩耗効果を示した新しいNeutra G 及びIndiAge(登録商標)Neutra Gの間にはバックステイニング効果については大きな差は観察されなかった。
【0130】
実施例4
示差走査熱量計
以下の例は新しいセルラーゼの熱安定性の決定について記述する。
【0131】
KB 107Cは上の実施例2に記載の様に調剤され、そして以下の様に製剤された:
蔗糖 40.0%
クエン酸ナトリウム二水和物 2.84% (2.50% 無水物.)
リン酸ナトリウム二塩基七水和物 4.72% (2.50%無水物.)
ソルビン酸カリウム 0.25%
メチルパラベン 0.03%
プロピルパラベン 0.01%
―――――――――――――――――――――
合計 47.85%
活性 7500 - 9000 U/g
pH 5.8 - 6.2
パラベンは原液として加えられた:15%メチル;5%プロピルパラベン;80%プロピレングリコール。上記の製剤は市場販売品IndiAge(登録商標)Neutra Lと同じである。
【0132】
IndiAge(登録商標) Neutra L及びKB107Cは、1.2M硫酸アンモニアを用いて製剤から沈殿させた。沈殿物は再浮遊させ、20mMリン酸ナトリウム、pH6.8中に透析させた。透析にはSlide-A-Lyzer 7K透析カセット(Pierce, IL)を使用し、透析は緩衝液を4度交換して24時間以上掛けて行った。最終的な透析物はタンパク質サンプルを希釈するのに用いた。サンプルの過剰熱容量(excessive heat capacity)が最終透析物を参考に用いて測定された。
【0133】
過剰熱容量曲線は、超高感度走査ミクロカロリー計VP-DSC E-2000(Micracal, Inc., Northhampton, Ma)を用いて測定された。90℃/分の加熱量により加熱し、タンパク質濃度は0.2mg/mlの範囲であった。DSC測定の標準的手順、及び技術に関する理論については既に(Freire, E. (1995) Differential Scanning Calorimetry Methods. M0l. Bi0i. 41,191−218)に公開されている。
【0134】
IndiAge(登録商標)Neutra L及びKB107Cの温度(20−100℃)の関数としての熱安定性は、IndiAge(登録商標)Neutra L及びKB107Cの熱中間点(thermal midpoint(Tm)が各々67.8 及び68.7 ℃であることを示していた(図11を参照)。KB107Cの遷移温度が1℃高いことは、この機器の感度を考慮すると重要な意味を持つ。このことは、KB107Cの熱力学特性がIndiAge(登録商標)Neutra Lのそれとは異なっており、本件発明の適用の研究で示された改善された効果と一致している。
【0135】
本明細書に記載の実施例及び実施例の態様は説明のためにのみ記載したものであり、当業者であればその種々の修飾又は変更が可能であり、それらは本願及び特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び目的の範囲に含まれると解されるべきである。本明細書に引用された、全ての刊行物、特許、及び特許出願は、参照によりその全てが本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1は種々のセルラーゼタンパク質を示す。
【図1A】はタンパク質の前タンパク質(preprotein)である。
【図1B】は成熟11AG8セルラーゼタンパク質である。
【図1C】はCBDを持たない233アミノ酸11AG8セルラーゼタンパク質である。
【図1D】はCBDを持たない230アミノ酸11AG8セルラーゼタンパク質である。
【図1E】は221アミノ酸11AG8セルラーゼ触媒コア、すなわち、CBD又はリンカーを持たないコアである。シグナル配列はピンクで示す。リンカーは9つの茶色の残基及び3つの赤で示した残基を持つ12の長さのアミノ酸である。233のアミノ酸タンパク質中の3つのアミノ酸を赤で示す(図1Aのみ下線を付す)。CBDは青で示す。
【図2】は11AG8セルラーゼの221アミノ酸触媒コアをコードするDNA配列である。
【図3】はpSEGCT11 AG8ベクターを示し、ベクターは以下を含む:アクチノプラネス ミズリエンシス(Actinoplanes missouriensis)に由来するグルコース イソメラーゼ プロモータストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)セルラーゼのシグナル配列、celAアクチノミセス(Actinomyces)種のセルラーゼ11 AG8遺伝子をコードするポリヌクレオチドセルラーゼ11AG3ターミネータ配列
【図4】はpSEA4CT -11 AG8ベクターを示し、ベクターは以下を含む:アスペルギルス ニージャー(Aspergillus niger)由来のA4プロモータストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)セルラーゼのシグナル配列、celAアクチノミセズ(Actinomyces)種のセルラーゼ11 AG8遺伝子をコードするポリヌクレオチドセルラーゼ11AG3ターミネータ配列pSEGCT11AG8のGIプロモータはアスペルギルス ニージャー(Aspergillus niger)TA4プロモータにより置き換えられた。
【図5】はpKE105の構築ストラテジーを示す。
【図6】はpKE105ベクターを示し、ベクターは以下を含む:アスペルギルス ニージャー(Aspergillus niger)由来のA4プロモータストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)セルラーゼのシグナル配列、celAアクチノミセズ(Actinomyces)種の11AG8セルラーゼの221a.a.触媒コアをコードするポリヌクレオチドセルラーゼ11AG3ターミネータ配列
【図7】は、大腸菌配列が除去されたpKB105であるpKB107ベクターを示す。
【図8】は、本明細書に記載のNPCアッセイの種々のセルラーゼサンプルの活性を示す。50A6 はIndiAge(登録商標)Neutra L名で商業生産されている株から得られたタンパク質サンプルである。pKB105及びpKB107は各ベクターから発現されたタンパク質サンプルである。触媒コアはこの商品よりも高い活性を示す。
【図9】は、新しいNeutra Gの磨耗性能を示すグラフである(市場製品、IndiAge(登録商標) Neutra Gの性能と比較して)。65% のNPC活性を持つ新しいNeutra Gは、そのデニムのタイプに関わらず、100% 活性のIndiAge(登録商標) Neutra Gの磨耗効果に非常に近い効果を示す。新しいNeutra G は、IndiAge(登録商標)Neutra Gと同じ活性で投与された場合にはそれよりも極めて高い磨耗効果を示す。
【図10】は、市場での製品IndiAge(登録商標) Neutra Gの効果と比較した新しいNeutra Gのバックステイニング効果を示すグラフである。新しいNeutra Gと現在市場で販売されている製品IndiAge(登録商標) Neutra Gの間では、同様な磨耗効果水準においては、バックステイニング効果は実質的に変わるところは観察されなかった。
【図11】は、IndiAge(登録商標) Neutra L及びKB107CのDSCサーモグラムを示す。KB107C分子はIndiAge(登録商標) Neutra Lの溶融温度(Tm)67.87℃に対して68.7℃であり、KB107Cはより安定していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号…に記載のアミノ酸配列、又はセルロース分解活性及び配列番号…と少なくとも95%配列同一性を持つその誘導体を含む分離されたセルラーゼ。
【請求項2】
前記セルラーゼが配列番号…に記載のアミノ酸配列を持つ、請求項1のセルラーゼ。
【請求項3】
前記セルラーゼが、配列番号…(図2)と少なくとも90%の配列の同一性を持つDNA配列によりコードされる、請求項1のセルラーゼ。
【請求項4】
前記セルラーゼがアクチノミセテズ(Actinomycetes)から得られる、請求項1のセルラーゼ。
【請求項5】
SDS-PAGEで測定された分子量が約23kD及び計算された等電点が約5.16である、アクチノミセテズ(Actinomycetes)由来の分離されたセルラーゼ。
【請求項6】
図1E(配列番号…)に記載のアミノ酸配列をコードする分離されたDNA配列。
【請求項7】
前記DNA配列が図2(配列番号…)に記載されているものである、請求項6のDNA配列。
【請求項8】
請求項6のDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターが更に、DNA分子に動作可能にリンクされているaprEプロモータ又はglaAプロモータ又はA4プロモータを含む、請求項8の発現ベクター。
【請求項10】
前記発現ベクターが更に、DNA分子に動作可能にリンクされているA4プロモータを含む、請求項8の発現ベクター。
【請求項11】
配列番号…を持つアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項12】
前記発現ベクターがpKB107である、請求項11の発現ベクター。
【請求項13】
請求項8に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項14】
前記宿主細胞がストレプトミセス(Streptomyces)種又はバチルス(Bacillus)種である請求項13の宿主細胞。
【請求項15】
前記宿主細胞がストレプトミセス(Streptomyces)種である、請求項13の宿主細胞。
【請求項16】
前記宿主細胞が、cyc2遺伝子(ジオスミン経路遺伝子(geosmin pathway gene)が欠失しているストレプトミセス(Streptomyces)種である、請求項15の宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主細胞がアスペルギルス(Aspergillus)又はトリコデルマ(Trichoderma)の様な糸状菌、又はサッカロミセス(Saccharomyces)の様なイーストである、請求項13の宿主細胞。
【請求項18】
請求項1のセルラーゼを含む組成物。
【請求項19】
前記組成物が洗剤組成物である請求項18の組成物。
【請求項20】
請求項1のセルラーゼを含む洗剤組成物。
【請求項21】
セルラーゼ活性を持つ酵素を生成する方法であって、
(a) 請求項6に規定のポリヌクレオチドを含む発現ベクターで、分離された宿主細胞を安定的に形質転換し:
(b) 前記宿主細胞が前記酵素を生成するために適した条件で前記形質転換された宿主細胞を培養し;及び
(c) 前記酵素を回収する
ことを含む前記方法。
【請求項22】
請求項21のセルラーゼを生成する方法であって、
(a) 前記セルラーゼをコードする前記DNAの発現に適した条件の下で、請求項13の形質転換された宿主細胞を成長させ;及び
(b) 前記セルラーゼを含む結果水性混合物を回収すること、
を含む前記方法。
【請求項23】
前記セルラーゼが更に前記水性混合物から精製される、請求項22の方法。
【請求項24】
前記宿主細胞がバチルス(Bacillus)種又はストレプトミセス(Streptomyces)種である請求項21の方法。
【請求項25】
セルロースを含む織物を請求項1のセルラーゼに接触させるステップを含む、セルロースを含む織物の処理方法。
【請求項26】
前記処理がストーンウオッシング(stonewashing)である、請求項25の方法。
【請求項27】
前記処理が、着色されたセルロースを含む織物を、部分により異なる着色をする、請求項25の方法。
【請求項28】
前記処理が、セルロースを含む織物に表面光沢効果を与える、請求項25の方法。
【請求項29】
前記処理が、セルロースを含む織物の手触りを向上させる、請求項25の方法。
【請求項30】
前記処理が、セルロースを含む織物の色彩の鮮明にすることである、請求項25の方法。
【請求項31】
前記織物の処理が、織物を浸すこと、洗濯すること又は濯ぐことにより行われる、請求項25の方法。
【請求項32】
紙パルプを請求項1のセルラーゼと接触させるステップを含む紙パルプの処理方法。
【請求項33】
セルロースを含む飼料を請求項1のセルラーゼで処理するステップを含む動物の飼料の消化を向上させる方法。
【請求項34】
動物の飼料の添加物としての請求項1のセルラーゼの使用。
【請求項35】
繊維製品の処理のための請求項1のセルラーゼの使用。
【請求項36】
パルプ及び紙の処理における請求項1のセルラーゼの使用。
【請求項37】
洗剤組成物における請求項1のセルラーゼの使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−525027(P2008−525027A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548352(P2007−548352)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045859
【国際公開番号】WO2006/071598
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】