説明

中性子イメージ検出方法及びその方法を用いた中性子イメージ検出器

【課題】小型かつ極めて安価であると同時に、中性子イメージ作成の処理速度が極めて高速である中性子イメージ検出器を提供すること。
【解決手段】中性子入射によって生じた蛍光を、一定の間隔で1次元的にまたは2次元的に収集し、収集した蛍光を検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法であって、蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、出力された各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした計数分布を求め、得られた計数分布に基づき重心計算を行い中性子の入射位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次元や2次元の中性子イメージを高速にかつ位置精度良く作成する中性子イメージ検出方法及びその方法を用いた中性子イメージ検出器に関する。本発明は、大強度陽子加速器施設(例えば、J-PARC)での強いパルス中性子の計測や、原子炉や核融合炉等における様々な動的事象の把握、中性子の強い透過性を利用しての非破壊検査、新材料の物性測定など、さまざまな用途に使用できる。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子炉/加速器を用いた中性子源などを利用した中性子散乱実験に使用される中性子二次元イメージ検出器としては、中性子シンチレータ、あるいは蛍光体と中性子コンバータを組み合わせた蛍光体中性子検出シートと波長シフトファイバを組み合わせた検出器が使用されてきた(特許文献1及び2、非特許文献1を参照)。これらの二次元イメージ検出器はクロスファイバ読み取り方式を用いて位置情報を得ることを特徴とし、蛍光体シートまたはシンチレータ板の上面と下面に波長シフトファイバ束を面状に直角方向に配置し、同時計数法により入射位置を決定する方法、クロスファイバ読み取り方式を改良しシンチレータの背面に波長シフトファイバ束を面状に直角方向に配置し同時計数法により入射位置を決定する方法、あるいは波長シフトファイバ束を面状に直角方向に配置しその上部と下部にシンチレータを配置した方法などが使用されてきた。
【0003】
また、本発明と同様に重心計算法を用いて中性子の入射位置を決定する方法に関連しては、アンガーカメラ方式と呼ばれ、γ線や中性子用のシンチレータからの蛍光を直接多数の光電子増倍管で検出し、アナログ/デジタル変換器(以下、ADCと言う)を用いて蛍光強度のデジタル値を基に重心計算法を用いて入射位置を決定する検出器が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-187077号公報
【特許文献2】特開2002-71816号公報
【特許文献3】特開2009-8675号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nucl. Instr. and Meth., A430(1999)311-320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、これらの2次元中性子イメージ検出器においては、シンチレータから放出された蛍光は光電子増倍管で電気信号に変換された後、波形整形増幅器を用いて信号波形を積分し増幅しアナログパルス信号として出力し、ADC回路を用いて信号波形のピーク値をデジタル信号化し最大値を示す光ファイバあるいは波長シフトファイバを入射位置として決定していた。しかし、ADC回路を用いてデジタル値を得る必要があるため、信号処理回路は複雑となり、非常に大きなコストがかかるという欠点があった。
【0007】
また、1次元中性子イメージ検出器としては、等間隔に反射板に区切られたシンチレータから放出される蛍光を光ファイバを用いて光電子増倍管に導き、蛍光に基づく信号を積分し、あらかじめ設定した値以上の信号を中性子とし1次元の中性子イメージを得ていた。
【0008】
これらの中性子イメージ検出器においては、波長シフトファイバが面上に配置されていることからピクセルの境界がないため、また、光ファイバの場合には反射板の隙間からの漏洩により、蛍光体シートから放出される蛍光が散乱されて広がり、一本以上の波長シフトファイバあるいは光ファイバに入射するため、入射位置の決定には特殊な回路技術が必要とされていた。このため、上記で述べたように主に入射位置の決定にはADC回路を用いることが必要となり、回路が複雑であり、非常に大きなコストがかかるという欠点があった。また、決定した位置の精度も十分ではなかった。
【0009】
また、シンチレータから放出される蛍光を波長シフトファイバあるいは光ファイバで光電子増倍管まで導く場合その効率は数%となり、光電子増倍管からの信号を波形整形し増幅しADC回路を用いてデジタル信号化する際多くのフォトンが必要となり、中性子の検出効率が低下してしまうという問題点もあった。
【0010】
これらの欠点を補うためフォトン計測法を用いて、各波長シフトファイバから出力されるフォトン信号のパターンを用いて中性子入射位置を求める方法が開発され使用されているが、中性子の入射位置を正確に求められないという問題があった。
【0011】
また、上述したような、γ線や中性子用のシンチレータからの蛍光を直接多数の光電子増倍管で検出しADCを用いて蛍光強度のデジタル値を基に重心計算法を用いて入射位置を決定する方法は、上記と同様に、ADCを用いてデジタル値を得る必要があるため、信号処理回路は複雑となり、非常に大きなコストがかかってしまうという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの観点に係る中性子イメージ検出方法あるいはその方法による中性子イメージ検出器は、基本的には、中性子入射によって生じた蛍光を、一定の間隔で1次元的に収集し、収集した蛍光を検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした計数分布を求め、得られた計数分布に基づき重心計算を行い中性子の入射位置を決定するという考え方に基づいている。
【0013】
また、本発明の別な観点に係る中性子イメージ検出方法あるいはその方法による中性子イメージ検出器は、基本的には、中性子入射によって生じた蛍光を、縦軸及び横軸においてそれぞれ一定の間隔で2次元的に収集し、収集した蛍光を検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした計数分布を縦軸及び横軸毎に求め、得られた計数分布に基づいて縦軸及び横軸毎に重心計算を行い、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定するという考え方に基づいている。
【0014】
また、本発明のさらに別な観点に係る中性子イメージ検出方法あるいはその方法による中性子イメージ検出器は、基本的には、中性子入射によって生じた蛍光を、縦軸及び横軸においてそれぞれ一定の間隔で2次元に収集し、収集した蛍光を検出して、あるいは直接に2次元的に蛍光を検出し、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置に対する2次元計数分布を求め、あるいは、直接に検出して2次元計数分布を求め、得られた2次元計数分布に基づいて、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定するという考え方に基づいている。
【0015】
上述の位置計算は、具体的には、集積回路技術の発展により可能となった比較的多くの入力ピンを持つFPGA(Free Programable Gate Array )を用いることにより、極めて高速に行うことができる。重心計算を行うことにより、正確に中性子の入射位置を決定することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の中性子イメージ検出方法及び検出器では、中性子の入射位置計算に工夫を施しているため、従来技術のように高価なアナログ/デジタル変換器(ADC)を多数使用することなく、小型に、極めて安価な専用ハードウエアで実現することができる。したがって、本発明の中性子イメージ検出器は、極めて安価であると同時に、中性子イメージ作成の処理速度が極めて高速である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図。
【図2(A)】1次元中性子イメージ検出器の重心計算の前半のフロー図。
【図2(B)】1次元中性子イメージ検出器の重心計算の後半のフロー図。
【図3】1次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の計算例を示す説明図。
【図4】2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図。
【図5(A)】2次元中性子イメージ検出器の重心計算の前半のフロー図。
【図5(B)】2次元中性子イメージ検出器の重心計算の後半のフロー図。
【図6】2次元中性子イメージ検出器の重心計算のピーク解析結果の一例を示す図。
【図7】2次元中性子イメージ検出器の重心計算のピーク解析結果の3次元表示図。
【図8】2次元処理方式の2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図。
【図9】2次元処理方式の2次元中性子イメージ検出器の重心計算のフロー図。
【図10】2次元中性子イメージ検出器のフォトン数弁別機能を持つ重心計算回路の構成図。
【図11(A)】2次元中性子イメージ検出器のフォトン数弁別機能を持つ重心計算の前半のフロー図。
【図11(B)】2次元中性子イメージ検出器のフォトン数弁別機能を持つ重心計算の後半のフロー図。
【図12】2次元中性子イメージ検出器のフォトン数弁別機能を持つ重心計算回路によりフォトン数を変化させた場合のピーク解析結果の一例を示す図。
【図13】2次元中性子イメージ検出器のフォトン数弁別機能を持つ重心計算回路によりフォトン数を変化させた場合のピークの位置分解能の改善例を示す図
【図14】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器のフォトン計数の非直線性補正機能を持つ重心計算回路の構成図。
【図15(A)】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器のフォトン計数の非直線性補正機能を持つ重心計算の前半のフロー図。
【図15(B)】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器のフォトン計数の非直線性補正機能を持つ重心計算の後半のフロー図。
【図16】英国AST社製中性子検出シートの蛍光を光電子増倍管で検出し、そのフォトンの波高分布特性を測定した結果を示す図。
【図17】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器のフォトン計数の非直線性補正の原理説明図。
【図18】2次元中性子イメージ検出器のフォトン計数の非直線性補正を行う際にフォトン数に対する補正量を示した計算例を示す図。
【図19】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器の重心演算後に時間遅延を行ってアフターグローによるマルチ計数を除去する回路構成図。
【図20(A)】図19に示されたマルチ計数除去回路の前半の動作フロー図。
【図20(B)】図19に示されたマルチ計数除去回路の後半の動作フロー図。
【図21】図19に示されたマルチ計数除去回路を設け、遅延時間を変えて計数値を測定した場合の計数値の実測例を示す図。
【図22】ZnS:Agをシンチレータに用いた2次元中性子イメージ検出器の重心演算後に時間遅延を行って得た実験値を用いて、アフターグローによるマルチ計数割合と遅延時間との関係を示す実測データを示す図。
【図23】ZnS:Ag蛍光体を用いたシンチレータの波高分布を基に計算したアフターグローによるマルチ計数の計算例を示す図。
【図24】遅延時間に関する実験結果に基づいて求めたフォトン数に対する最適な遅延時間の関係を示す図。
【図25】フォトン同期化信号を位置番号数に変化して掛け算回路を用いることなく重心計算を行う重心計算回路の構成図。
【図26】図25に示された重心計算回路の計算フロー図。
【図27】図25に示された重心計算回路の計算例を示す図。
【図28】半透明のシンチレータと波長シフトファイバを有する中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図。
【図29(A)】図28に示された重心計算回路の計算の前半のフロー図。
【図29(B)】図28に示された重心計算回路の計算の後半のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
(実施例1)
【0019】
実施例1として、本発明を適用した、シンチレータと波長シフトファイバを用いた1次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図1に示す。また、中性子が入射し、5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合についての重心計算のフローを図2(A)及び図2(B)に示す。なお、以下同様であるが、(A)及び(B)に分離して示されているフロー図では、(A)が前半のフローを示し、(B)が後半のフローを示している。そして、前半と後半のフローの関係がわかり易いように、(A)の図の最後のフローと、(B)の図の最初のフローは重複して示されている。また、本発明の重心計算の基本的な原理に基づく重心位置の計算例を図3に示す。実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた1次元中性子イメージ検出器は、以下の構造を持つ。
【0020】
中性子が入射すると蛍光を放出する中性子用シンチレータとしては、厚さ0.3mmのZnS:Ag/10シンチレータを用いる。ZnS:Ag蛍光体から放出される蛍光の波長は450nmを中心として390nmから520nmまで分布している。また、中性子検出に実際に使用されるZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命は約0.3μsである。波長シフトファイバとしては350nmから440nmまでの蛍光に感度があり、490nmの蛍光に波長変換するサンゴバン社製BCF−92MCを用いる。波長シフトファイバの形状は正方形としてその一辺の長さは0.5mmとする。本波長シフトファイバを1次元に並べて64本配置し、本波長シフトファイバ束の上部にZnS:Ag/10シンチレータを配置することにより、検出幅32mmの1次元中性子イメージ検出器とする。
【0021】
波長シフトファイバから波長シフトされてきた蛍光を検出する光検出器としては、一つのチャネルの有感サイズが2mm x2mmの64チャンネル光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用いることができる。本光電子増倍管から出力された各フォトン電気信号は高速増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路によりフォトンデジタルパルス信号となる。
【0022】
上記において、波長シフトファイバからの蛍光を64チャンネル光電子増倍管で検出する際には、フォトン計測法を用いて検出できる能力を持つフォトン信号増幅器及びフォトン信号弁別回路から構成する。フォトン信号増幅器としては、各回路に高速ICであるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとして米国のアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0023】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0024】
同期化された64チャネルの全ての同期化フォトン信号は、まずOR回路によりOR演算を行い、中性子が入射して検出・信号処理がなされたフォトンデジタルパルス信号の中で最初にOR回路に入ったパルス信号のタイミングを中性子が入射した時間とし、計数時間発生回路に入力される。計数時間発生回路においては、この最初のパルス信号をスタート時間信号として多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り各チャネルの計数を開始する。
【0025】
また、計数時間発生回路においては、あらかじめ設定しておいた計数時間を監視する回路が同時にスタートし、計数時間が終了した時ストップ信号を生成し多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り、計数を終了して、計数値を確定する。本実施例では、計数時間としては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命である0.3μsの3倍に当たる1μsとし、ほとんどの短寿命蛍光成分を利用できる時間幅とした。このようにする事により、1つの中性子がシンチレータに入射した時、入射点を中心として広がった蛍光の量に比例したフォトンの計数分布を求めた。
【0026】
本発明においては、得られたフォトン計数分布に基づき重心計算を行うことによって中性子の一次元での入射位置を決定する。重心計算の実施例については図3を参照して説明する。本計算例では、ファイバ位置3から位置7の5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合について行う。まず、1つの中性子に対して波長シフトファイバで計数した積算計数Aは位置3から位置7の計数値の和として求められ、本計算例では11となる。次に重心計算総和Bを求める。総和は該当する位置とその位置の入ったフォトン計数値の積を各位置毎に求め、その和として求められる。本計算例では、重心計算総和は54となる。重心計算法を用いた場合に求められる中性子入射位置は本計算例の場合、重心計算総和Bを積算計数Aで割った値、即ちB/A=54/11=4.9となる。位置を整数で表す場合四捨五入により位置5が入射位置となる。入射位置の精度を上げた場合実数の4.9の位置としても良い。
【0027】
なお、本計算例は各位置でのフォトン計数値の重みを全て同じ1としたが、蛍光の検出形態が一様でない場合には計数値に重みをかけた値を使い、位置精度を上げることも可能である。
(実施例2)
【0028】
実施例2として、本発明によるシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図4に示す。また、中性子が入射し、横軸及び縦軸それぞれの5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合についての重心計算のフローを図5(A)及び図5(B)に示す。実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、以下の構造を持つ。
【0029】
中性子が入射すると蛍光を放出する中性子用シンチレータとしては、厚さ0.3mmのZnS:Ag/10シンチレータを用いる。ZnS:Agから放出される蛍光の波長は450nmを中心として390nmから520nmまで分布している。また、中性子検出に実際に使用される短寿命の蛍光成分の蛍光寿命は約0.3μsである。波長シフトファイバとしては350nmから440nmまでの蛍光に感度があり、490nmの蛍光に波長変換するサンゴバン社製BCF−92MCを用いる。波長シフトファイバの形状は正方形としてその一辺の長さは0.5mmとする。
【0030】
本波長シフトファイバを下部に1次元的に並べて64本配置し、横軸読み出し用の波長シフトファイバ束とする。この波長シフトファイバ束の上にその直角方向に本波長シフトファイバを1次元的に並べて64本配置し、縦軸読み出し用の波長シフトファイバ束とする。この本波長シフトファイバ束の上部にZnS:Ag/10シンチレータを配置する。本構成とすることにより縦32mm、横32mmの有感面積を持つ2次元中性子イメージ検出器とする。波長シフトファイバから波長シフトされてきた蛍光を検出する光検出器としては、横軸及び縦軸用として一つのチャネルの有感サイズが2mm x2mmの64チャンネル光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用いることができる。横軸及び縦軸用の光電子増倍管から出力された各フォトン電気信号は、それぞれの軸に用意された高速増幅器で構成されたフォトン信号増幅器により増幅した後、それぞれディスクリミネータ回路から構成されたフォトン信号弁別回路により、横軸用及び縦軸用フォトンデジタルパルス信号となる。
【0031】
上記においては、波長シフトファイバからの蛍光を64チャンネル光電子増倍管で検出する際には、フォトン計測法を用いて検出できる能力を持つフォトン信号増幅器及びフォトン信号弁別回路から構成する。フォトン信号増幅器としては、各回路に高速ICであるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0032】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0033】
横軸及び縦軸にそれぞれ出力された同期化された64チャネルの全ての同期化フォトン信号は、まずOR回路によりOR演算を行い、中性子が入射して検出・信号処理がなされたフォトンデジタルパルス信号の中で最初にOR回路に入ったパルス信号のタイミングを中性子が入射した時間とし、計数時間発生回路に入力される。計数時間発生回路においては、この最初のパルス信号をスタート時間信号として横軸及び縦軸用の多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り各チャネルの計数を開始する。また、計数時間発生回路においては、あらかじめ設定しておいた計数時間を監視する回路が同時にスタートし、計数時間が終了した時ストップ信号を生成し、横軸及び縦軸用の多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り、計数を終了しそれぞれ横軸及び縦軸用の計数値を確定する。本実施例では、計数時間を、短寿命成分の蛍光寿命である0.3μsの3倍に当たる1μsとし、ほとんどの短寿命蛍光成分を利用できるようにした。このようにする事により、1つの中性子がシンチレータに入射した時、入射点を中心として広がった蛍光の量に比例したフォトンの計数分布を求めた。
【0034】
本発明においては、このようにして得られたフォトン計数分布に基づき重心計算を行うことによって中性子の二次元の入射位置を決定する。重心計算の実施例については、実施例1において図3を参照して説明した方法と同じ方法を使って、縦軸及び横軸の2次元での中性子入射位置をそれぞれ独立に求める。独立に求めた縦軸及び横軸の位置結果は、あらかじめ設定しておいた時間の間に縦軸及び横軸に信号が入射したことを確認する同時計数回路を用いてコインシデンスを取り、有効である場合には中性子信号として、中性子入射位置信号を出力し、無効である場合には信号出力はされない。同時計数時間(コインシデンス時間)としては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命の約3倍の1μsとする。
【0035】
なお、本実施例の説明においてもは、各位置でのフォトン計数値の重みを全て同じ1としたが、蛍光の検出形態が一様でない場合には計数値に重みをかけた値を使い、位置精度を上げることも可能である。
【0036】
本実施例の2次元中性子イメージ検出器の位置決定特性を調べるため、日本原子力機構のJRR−3原子炉のCHOP中性子実験施設において、4Åの波長の冷中性子を用いて中性子照射実験を行った。本実施例の中性子イメージ検出器の前に、直径1.1mmの穴のあいたCd(カドミウム)コリメータ板を置き、生成した直径1.1mmの中性子ビームを照射した。本中性子ビームにより得られた、フォトン計数分布を本発明の重心計算法で信号処理した場合と、従来法であるパターンマッチング法で信号処理した場合とを比較して図6に示す。本図は二次元の位置分布データを横軸方向に投影した結果である。
【0037】
位置分解能を計算すると、従来法であるパターンマッチング法では1.08mmであったものが、本発明の重心計算法では0.92mmとなり、0.16mm改善することが確認できた。また、ピークの形状については、従来法では、形が左側に寄った形となり、ピーク位置も1つの波長シフトファイバの位置分ずれているのに対して、本発明の方法ではピークの形が左右対称のガウス分布に近い形となり、かつそのピーク位置も中心となることが確認できた。図7には、従来法により得られた中性子ピークの3次元画像と本発明の重心計算法により得られた中性子ピークの3次元画像を示す。上記でも述べたようにピーク形状が改善され、3次元的にも本発明の方法の場合全方位に対して対称になることが確認できた。
(実施例3)
【0038】
実施例3として、本発明によるシンチレータの蛍光を、直接に2次元光検出器で検出し、中性子の入射位置を決定する2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図8に示す。また、本発明の2次元での重心計算の基本的な原理に基づく重心位置の計算フローを図9に示す。実施例とするシンチレータを用いた2次元中性子イメージ検出器は、以下の構造を持つ。
【0039】
中性子が入射すると蛍光を放出する中性子用シンチレータとしては、厚さ0.3mmのZnS:Ag/10シンチレータを用いる。ZnS:Agから放出される蛍光の波長は450nmを中心として390nmから520nmまで分布している。中性子検出に実際に使用される短寿命の蛍光成分の蛍光寿命は約0.3μsである。
【0040】
また、本発明では、フォトン計数をベースとして信号処理を行うため、シンチレータの光量が直接感度の良い光検出器である光電子増倍管で検出する場合フォトンのかたまりを計測する事になり、実施例5において詳しく説明するが、フォトン計数分布の精度を得ることが困難となる。このため、光電子増倍管の前に減光兼拡散用光学板を配置した。減光率は、実施例1及び2で述べた波長シフトファィバの検出効率が良いもので4%であることから、同等の減光率とするため1/25とする。ここでは、シンチレータから放出された蛍光を減光兼拡散用光学板で減光して使用しているが、例えば、光ファイバを用い、あるいは反射板を組み合わせて集める光ガイド方式により、数10分の1の減光して光電子増倍管で検出することは可能である。
【0041】
使用する光電子増倍管としては、一つのチャネルの有感サイズが2mm x2mmの64チャンネル光電子増倍管である浜松ホトニクス製H7546を用いることができる。
【0042】
64チャンネル光電子増倍管の有感部分の大きさが18.1mmx18.1mmなので中性子用シンチレータと減光フィルタの大きさは20mmx20mmとする。
【0043】
蛍光を64チャンネル光電子増倍管で検出する際には、フォトン計測法を用いて検出できる能力を持つフォトン信号増幅器及びフォトン信号弁別回路から構成する。フォトン信号増幅器としては、各回路に高速ICであるアナログデバイセス社製AD8001を2個用いて、増幅帯域幅200MHzで60倍のゲインの性能を持つ増幅器を構成する。フォトン信号弁別回路としては、高速のディスクリミネータICとしてアナログデバイセス社製AD8611を用いる。このような構成の電子回路を用いることによりフォトン1個の信号としてパルス時間幅が約5nsのフォトンデジタルパルス信号とすることができる。
【0044】
次に、各光電子増倍管から出力されたフォトンにより生成されたフォトンデジタルパルス信号は、そのパルス時間幅に合致した間隔幅のクロック信号を用いて、ゲート回路から構成される同期信号化回路を用いてクロック信号と同期を取った信号として取り出し、同期化フォトン信号とする。クロック信号の周波数は、フォトンデジタルパルス信号のパルス時間幅が5nsであることから、同じパルス時間幅の5nsを生成する100MHzとする。
【0045】
出力された同期化された64チャネルの全ての同期化フォトン信号は、まずOR回路によりOR演算を行い、中性子が入射して検出・信号処理がなされたフォトンデジタルパルス信号の中で最初にOR回路に入ったパルス信号のタイミングを中性子が入射した時間とし、計数時間発生回路に入力される。計数時間発生回路においては、この最初のパルス信号をスタート時間信号として多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り各チャネルの計数を開始する。また、計数時間発生回路においては、あらかじめ設定しておいた計数時間を監視する回路が同時にスタートし、計数時間が終了した時ストップ信号を生成し多チャンネルフォトンデジタル計数回路に送り、計数を終了し計数値を確定する。本実施例では、計数時間としてとしては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命である0.3μsの3倍に当たる1μsとしほとんどの短寿命蛍光成分を利用できるようにした。
【0046】
この結果、1つの中性子がシンチレータに入射した時、入射点を中心として広がった蛍光の量に比例したフォトンの計数分布が2次元的に図8の紙面最上部に示す「2次元図」のように求められる。
【0047】
本発明においては、このようにして得られたフォトン計数分布に基づき2次元的に重心計算を行うことによって中性子の2次元での入射位置を決定する。重心計算の実施例については図9の二次元処理方式の重心計算のフローを参照して説明する。本計算例では、最初に最大の計数値を持つ位置を求める。本実施例では、位置5とする。次に、位置5を中心に4方向、つまり横方向、斜め方向1、斜め方向2そして縦方向について重心計算を行う。
【0048】
斜め方向1と斜め方向2については、横軸成分と縦軸成分の2つの成分に寄与分を分ける。求められた値を使って横軸成分、縦軸成分毎に平均値処理を行いそれぞれ横軸入射位置と縦軸入射位置を求め、中性子入射位置として出力する。
【0049】
なお、本計算例は各成分でのフォトン計数値の重みを全て同じ1としたが、蛍光の検出形態が一様でない場合には計数値に重みをかけた値を使い、位置精度を上げることも可能である。
(実施例4)
【0050】
実施例4として、本発明によるシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図10に示す。また、中性子が入射し、横軸及び縦軸それぞれの5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合についての重心計算のフローを図11A及び図11Bに示す。
【0051】
実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、実施例2と同じ構造とし、重心演算回路以降が本発明の追加機能であるので、追加部分について説明する。
【0052】
まず、実施例2と同じ方法を用いて得られたフォトン計数分布に基づいて重心計算を行い、中性子の二次元の横軸及び縦軸の入射位置を決定する。重心計算を行う際得られた横軸計数積算値及び縦軸計数積算値をそれぞれ弁別用の信号として取り出す。次に、この横軸計数積算値信号とあらかじめ設定しておいた横軸弁別設定値と比較し、横軸計数積算値が同じか大きい場合にはAND回路がONとなり横軸入射位置を同時計数回路に送る。一方、縦軸計数積算値信号についてもあらかじめ設定しておいた横軸弁別設定値と比較し、縦軸計数積算値が同じか大きい場合にはAND回路がONとなり縦軸入射位置を同時計数回路に送る。送られた縦軸及び横軸の位置結果は、あらかじめ設定しておいた時間の間に縦軸及び横軸に信号が入射したことを確認する同時計数回路においてコインシデンスを取り、有効である場合には中性子信号として、中性子入射位置信号を出力し、無効である場合には信号出力はされない。同時計数時間(コインシデンス時間)としては、ZnS:Agの短寿命成分の蛍光寿命の約3倍の1μsとする。
【0053】
なお、本実施例では横軸及び縦軸毎にあらかじめ設定値を決めて、同じか大きい場合に信号が有効であることを示したが、横軸計数積算値と縦軸計数積算値の和を用いて、あらかじめ設定した1つのフォトン計数弁別設定値を用いて、横軸及び縦軸の位置信号の有効性を弁別しても良い。
【0054】
本実施例の2次元中性子イメージ検出器の位置決定特性を調べるため、独立行政法人日本原子力研究開発機構のJRR−3原子炉のCHOP中性子実験施設において、4Åの波長の冷中性子を用いて中性子照射実験を行った。本実施例の中性子イメージ検出器の前に、直径1.1mmの穴のあいたCd(カドミウム)コリメータ板を置き、生成された直径1.1mmの中性子ビームを照射した。横軸計数積算値及び縦軸計数積算値のフォトン計数弁別値をそれぞれ同じ値として2個から6個まで変化させた場合に、本発明の重心計算法により測定され、信号処理された中性子ビームの測定結果を図12に示す。本図は二次元の位置分布データを横軸方向に投影した結果である。横軸計数積算値及び縦軸計数積算値のフォトン計数弁別値を2個から7個まで変えた場合のピークの形状の変化が示されている。フォトン計数弁別値を変えてもピーク形状はほとんど変わらず、増加するに従いピーク面積が減少し中性子に対する検出効率が下がることが確認できた。
【0055】
フォトン計数弁別値を2個から7個までのピーク形状について位置分解能について解析を行い求めた結果を図13に示す。フォトン数が2個の場合には1.04mmであったものが6個の場合には0.81mmとなり、0.23mm改善することが確認できた。
(実施例5)
【0056】
実施例5として、本発明によるZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFあるいは10を混合して製作した半透明のシンチレータと波長シフトファイバとを組み合わせた2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図14に示す。また、中性子が入射し、横軸及び縦軸それぞれの5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合についての重心計算のフローを図15(A)及び図15(B)に示す。
【0057】
実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、実施例2と同じ構造とし、同時信号化回路以降が本発明の追加機能であるので、追加部分について説明する。
【0058】
シンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFを混合して製作した半透明のシンチレータを用いた場合について説明する。シンチレータとしては、蛍光体としてZnS:Agを用い、ZnS:AgとLiFの混合比が4:1を用いバインダで混合し作製されている英国AST社製中性子検出シートを用いる。厚さは0.45mmである。本中性子用シンチレータの蛍光を光電子増倍管で検出しそのフォトンの波高分布特性を測定した結果の例を、図16に示す。本シンチレータが半透明であることから中性子が入射して波長シフトファイバで検出されフォトンデジタル信号を生成されたときには、重心計算に使用されるフォトンは2個から100個程度まで2桁近いダイナミックレンジで分布することがわかる。
【0059】
このような場合、短時間にフォトンが生成されるとフォトンが重畳するため、本来計数されるフォトン数を正確に計数することができなくなる。その様子をフォトンが非常に多い場合、ある程度多い場合、数個がバラバラに来た場合に分けて、この現象によるフォトン計数の非直線性についての説明と補正方法を図17に示す。
【0060】
蛍光が多い場合には、図に示すようにディスクリ出力は1個の長いパルス時間幅のデジタルパルスが出力される。その後バラバラのフォトン信号が現れる。この長いパルス時間幅をクロック信号を使った同期信号化回路を用いて時間幅に応じたフォトン計数を求める。しかし、フォトンが重畳した分については正しく計数することができない。
【0061】
このため、蛍光体の寿命がわかっていることと、フォトン電気信号を入力し取り出すフォトン信号弁別回路の弁別レベルとデジタルパルスの連続して取り出される時間幅との関係がわかっていることをベースにして、蛍光寿命を使って重畳したフォトン信号パルスに含まれる正確なフォトン数を逆算することが可能である。また、蛍光が比較的に少ない場合でも、図の中間部分に示すように補正する事は可能である。
【0062】
ZnS:Agの短寿命成分の蛍光寿命が0.3μsであることから、この寿命とあらかじめ測定しておいたフォトン信号弁別回路の弁別レベルとでデジタル信号の時間幅との関係をもとにフォトン数との関係をベースとして重畳したフォトン信号パルス中に含まれるフォトン数を求めた。崩壊曲線の式としては単純な指数関数を用いた。弁別レベルとしては、増幅器から出力されるバラバラのフォトン信号を90%の割合でフォトンデジタル信号とするレベルに設定している。
【0063】
この条件で計算した実際に入射したフォトン数と同期化されて出力されるフォトン数の関係を図18に示す。理想的には図中に示す比例直線であるので計算により得られた曲線との差が補正する必要があるフォトン数である。例えば、図中に示すように、実際に入射したフォトン数が60個の場合には、33個とほぼ入力された数とほぼ同じ数を補正する必要があることが確認できた。
【0064】
実際には、図14に示す直線性補正回路において図15の重心計算フローに示すように、重心計算を行う際に補正変換式あるいは変換テーブルを用いて、図17の原理説明図中に示すように入力したフォトン計数に対応した擬似パルスを発生し、非直線性を補正することができる。
(実施例6)
【0065】
実施例6として、本発明によるZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFあるいは10を混合して製作した半透明のシンチレータと波長シフトファイバとを組み合わせた2次元中性子イメージ検出器の重心演算後に時間遅延回路を設けてZnS:Ag蛍光体のアフターグロー(遅い成分の蛍光寿命は70μs)によるマルチ計数を除去する回路の構成を図19に示す。また、中性子が入射し、横軸5本そして縦軸5本の波長シフトファイバにそれぞれ蛍光が入射した場合の回路構成例のフローを図20(A)及び図20(B)に示す。
【0066】
本実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、実施例2と同じ構造とし重心演算回路以降が本発明の追加機能であるので、追加部分について説明する。
【0067】
実施例5と同様にシンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFを混合して製作した半透明のシンチレータを用いた場合について説明する。シンチレータとしては、蛍光体としてZnS:Agを用い、ZnS:AgとLiFの混合比が4:1を用いバインダで混合し作製されている英国AST社製中性子検出シートを用いる。厚さは0.45mmである。本中性子用シンチレータの蛍光を光電子増倍管で検出しそのフォトンの波高分布特性を測定した結果は図16を参照のこと。本シンチレータが半透明であることから中性子が入射して波長シフトファイバで検出されフォトンデジタル信号を生成されたときには、重心計算に使用されるフォトンは、2個から100個程度まで2桁近いダイナミックレンジが必要となる。
【0068】
このような場合、フォトン数が多いほどZnS:Ag蛍光体はアフターグローが残され、この成分が本発明のようにフォトン計数法を用いて信号処理する場合、マルチ計数(一個の中性子の入射に対して2個以上の中性子入射計数を得る)が生じる。
【0069】
これを除去するには、中性子入射計数が確定した後、次の中性子に対して信号処理回路系を準備状態にするわけであるが、すぐに準備状態にするのではなく、入力されフォトン数に応じた遅延時間の間、遅延回路により遅らせることにより最適な遅延時間でこのマルチ計数を除去することができる。
【0070】
一方、マルチ計数が生ずる確率については、実際に準備状態にするまでの遅延時間を実験により変化させることにより実際の中性子イメージ検出器を用いて実測で求めることができる。まず、実験結果の生のデータとして、遅延時間と実際に得られた中性子計数について図21に示す。測定条件としては中性子イメージ検出器の横軸に1個以上のフォトンが入り、縦軸に1個以上のフォトンが入った場合であり、最も検出条件が低い場合である。2μsの遅延時間の場合100秒で8200個あった中性子計数が20μsの遅延時間の場合7000個とほぼ一定となる。2μsの遅延時間では16%がマルチ計数として計数されることがわかった。
【0071】
この生データを基にマルチ計数の割合と遅延時間の関係を求めフィッティングした図を図22に示す。この図より遅延時間を一律に2μsとした場合16%ものマルチ計数が生ずることになる。一方、一律に20μsとした場合マルチ計数は1%程度になるが、デッドタイムが増加するため、高計数率での中性子イメージ検出ができなくなってしまう。
【0072】
このため、本発明においては、測定された全フォトン計数をベースとしてその最適なフォトン計数値に対応した遅延時間を設定することとした。実際の動作は、図19の回路構成図と図20の信号の流れを示すフローに示すように、重心計算回路において既に求めた縦軸及び横軸のフォトン計数積算値の和に応じた遅延時間を設定し、次の中性子の検出準備状態にする時間を遅延回路により遅らせる事にした。
【0073】
遅らせる時間は、以下の実験結果の解析を行うことにより求めた。まず、必要なのは遅延時間とマルチ計数割合の関係でこれについては前記で述べた図22で求めた関係式を使うことができる。
【0074】
一方、全フォトン計数とマルチ計数の関係は、図16に示すZnSシンチレータのフォトン分布を用いてマルチ計数の割合がフォトン数の2乗に比例するとして、フォトン数が2個の時に0.16になるように規格化し求めた。計算条件としては、中性子イメージ検出器の横軸に1個以上のフォトンが入り、縦軸に1個以上のフォトンが入った場合を仮定した。求めたフォトン数とマルチ計数確率の関係を図23に示す。
【0075】
図22で求めたマルチ計数割合と遅延時間の関係式と図23で求めたマルチ計数確率とフォトン数の関係式をマルチ計数割合とマルチ計数確率が同じとなると仮定すると、この関係式を組みあわせることにより、フォトン数と必要となる遅延時間との関係を求めることができる。計算結果を図24に示す。フォトン数が20までは2μsの遅延時間で問題なく、それ以上になるとほぼリニアにフォトン計数の増加と伴に遅延時間を増加させる必要があることが確認できた。
【0076】
この関係式を図19の遅延時間設定回路にテーブルあるいは関係式で入れることにより図20に示すフローに基づいて、測定されたフォトン数に応じて遅延時間を変えることができる中性子イメージ検出器が実現する。このようにする事により、デッドタイムによる損失を限りなく小さくして、ZnS:Ag蛍光体によるアフターグローによるマルチ計数を除去し、高計数率測定に対応できる性能を持つ2次元中性子イメージ検出器が得られた。
(実施例7)
【0077】
実施例7として、本発明によるシンチレータと波長シフトファイバを用いた1次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図25に示す。また、中性子が入射し、5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合についての重心計算のフローを図26に示す。また、本発明のフォトン同期化信号を位置番号数に変化して掛け算回路を用いることなく重心計算を行う原理に基づく重心位置の計算例を図27に示す。
【0078】
実施例とするシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、実施例1と同じ構造とし、同期信号化回路以降が本発明の追加機能であるので、追加部分について説明する。
【0079】
上記の実施例1から実施例6で述べてきた重心演算回路においては図3の重心計算回路における計算例に述べたように、多チャンネルフォトンデジタル計数回路に蓄積された各入射位置に対するフォトン計数値を基に、まず各位置におけるフォトン数の和の演算を行いフォトン積算計数を得ている。次に各位置のフォトン計数値とその位置番号値の掛け算を行いその結果の和の演算を行いフォトン重心計算総和を得ている。これらの演算には複雑な回路を必要としかつ計算時間がかかるため、全体の重心演算による位置決定までの時間がかかり、デッドタイムを増加させ高計数率測定ができない。
【0080】
本発明においては、同期化された64チャネルの全ての同期化フォトン信号は、まずOR回路によりOR演算を行い、中性子が入射して検出・信号処理がなされたフォトンデジタルパルス信号の中で最初にOR回路に入ったパルス信号のタイミングを中性子が入射した時間とし、計数時間発生回路に入力される。計数時間発生回路においては、この最初のパルス信号をスタート時間信号として、多チャンネルフォトンデジタル計数積算回路に送り各チャネルを計数しその和を直接積算する動作を開始すると共に位置番号値積算回路に送り位置番号値を積算する動作を開始する。
【0081】
また、全ての同期化フォトン信号は、多チャンネルフォトンデジタル計数積算回路に入力され、結果としてフォトン積算計数値を得る。同時、フォトン同期信号−位置番号変換回路にも入力される。フォトン同期信号−位置番号変換回路においては、フォトン同期信号の入射位置に対応した位置番号値を発生する。発生したそれぞれの位置番号値は位置番号値積算回路に入力され、結果としてフォトン重心計算総和を得る。
【0082】
また、計数時間発生回路においては、あらかじめ設定しておいた計数時間を監視する回路が同時にスタートし、計数時間が終了した時ストップ信号を生成し、多チャンネルフォトンデジタル計数積算回路及び位置番号値積算回路に送り、それぞれ積算を終了して、それぞれフォトン計数積算値及びフォトン重心計算総和を確定する。
【0083】
本実施例では、計数時間としては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命である0.3μsの3倍に当たる1μsとしほとんどの短寿命蛍光成分を利用できる時間幅とした。
【0084】
次に割り算回路を用いて、得られたフォトン重心計算総和をフォトン計数積算値で割ることにより中性子入射位置を求めることができる。
【0085】
本発明による重心計算の計算例については、図27を参照して説明する。本計算例では、ファイバ位置3から位置7の5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合について行う。まず、1つの中性子に対して波長シフトファイバで計数した積算計数Aは位置3から位置7の計数の積算値として求められ、本計算例では11となる。
【0086】
次に重心計算総和Bを求める。ファイバ位置3から位置7のフォトン同期信号によりそれぞれ3から7までの位置番号値が発生する。発生したそれぞれの位置番号値は位置番号値積算回路に入力され、図に示すように一度にその総和である重心計算総和Bとしてとして54を得ることができる。重心計算法を用いた場合に求められる中性子入射位置は本計算例の場合、重心計算総和Bを積算計数Aで割った値、即ちB/A=54/11=4.9となる。位置を整数で表す場合四捨五入により位置5が入射位置となる。入射位置の精度を上げた場合実数の4.9の位置としても良い。本実施例によって求めた位置は、実施例の図3において求めた結果と同じ値となる。
【0087】
このようにする事により、複雑な掛け算回路と積算回路を使うことなく重心演算により入射位置を求めることができる1次元中性子イメージ検出器あるいは2次元中性子イメージ検出器が実現できる。
(実施例8)
【0088】
実施例8として、本発明によるZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFあるいは10を混合して製作した半透明のシンチレータと波長シフトファイバとを組み合わせた2次元中性子イメージ検出器の重心計算回路の構成図を図28に示す。また、中性子が同時に2個入射し、入射したうち、蛍光量即ち総フォトン数の大きいものを中性子1とし、小さいものを中性子2とし、中性子1については横軸及び縦軸それぞれの5本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合について、中性子2については横軸及び縦軸それぞれの3本の波長シフトファイバに蛍光が入射した場合について、2つの中性子を弁別して行う重心計算のフローを図29(A)及び図20(B)に示す。
【0089】
本実施例のシンチレータと波長シフトファイバを用いた2次元中性子イメージ検出器は、実施例2と同じ構造とし、同時信号化回路以降が本発明の追加機能であるので、追加部分について説明する。
【0090】
シンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFを混合して製作した半透明のシンチレータを用いた場合について説明する。シンチレータとしては、蛍光体としてZnS:Agを用い、ZnS:AgとLiFの混合比が4:1を用いバインダで混合し作製されている英国AST社製中性子検出シートを用いる。厚さは0.45mmである。本中性子用シンチレータの蛍光を光電子増倍管で検出しそのフォトンの波高分布特性を測定した結果の例を、図16に示す。本シンチレータが半透明であることから中性子が入射して波長シフトファイバで検出されフォトンデジタル信号を生成されたときには、重心計算に使用されるフォトンは2個から100個程度まで2桁近いダイナミックレンジで計数される。
【0091】
一方、本中性子イメージ検出器に同時に(フォトン計測時間内)2個のフォトンが異なった場所に生じた場合横軸及び縦軸のそれぞれ2箇所にフォトンが検出されるため、検出位置の特定が不可能となり、通常は中性子信号を出力しない。このため、特に高計数率で測定した場合、数え落としが多くなってしまう。
【0092】
本発明においては、シンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFとして使用した場合、中性子入射によって発生するフォトン数が上記で述べたように2から100までと非常に大きい。もし、2個の中性子が入射しても2個の中性子が発生するフォトン数が異なった場合、横軸と縦軸のそれぞれの計数値を比較し、多いものは多いもの同士、小さいものは小さいもの同士を組み合わせることにより2つの中性子を弁別する。
【0093】
実施例においては、2つの中性子を弁別して行う重心計算の流れを、図29(A)及び図29(B)をもとに回路の説明を含めて説明する。
【0094】
中性子1と中性子2の2個の中性子が同時に入り、中性子1のフォトン発生量が中性子2のフォトン発生量に比較し大きい場合について説明する。フォトン発生量に従い、中性子1で検出される横軸及び縦軸のファイバ数は5本であり、中性子2で検出される横軸及び縦軸のファイバ数は3本となる。
【0095】
その後は実施例2と同じに、多チャンネルフォトンデジタル計数回路を用いて横軸及び縦軸のフォトン計数分布が得られる。本実施例の場合、横軸のフォトン計数分布の2カ所に、中性子1と中性子2に伴って、入射位置が異なる場所に中性子フォトン分布が得られる。同様に、縦軸のフォトン計数分布の2カ所に、中性子1と中性子2に伴い入射位置が異なる場所に中性子フォトン分布が得られる。
【0096】
次に、横軸用2中性子判別回路を用いて、横軸のそれぞれの2つの入射位置について計数値を足し算し、総フォトン数NA及び総フォトン数NBを求める。得られた総フォトン数NAと総フォトン数NBを比較し大きい方を中性子1による計数分布とし、小さい方を中性子2による計数分布とする。もし、同じ場合には判別がつかないため中性子信号出力はなしとする。本実施例では総フォトン数NAの方が大きいので中性子1によるもので、NBの方は中性子2によるものと判別する。
【0097】
同様に、縦軸用2中性子判別回路を用いて、縦軸のそれぞれの2つの入射位置について計数値を足し算し、総フォトン数NC及び総フォトン数NDを求める。得られた総フォトン数NCと総フォトン数NDを比較し大きい方を中性子1による計数分布とし、小さい方を中性子2による計数分布とする。もし、同じ場合には判別がつかないため中性子信号出力はなしとする。本実施例では総フォトン数NDの方が大きいので中性子1によるもので、NCの方は中性子2によるものと判別する。
【0098】
その後、横軸用高計数積算値用及び低積算値用重心演算回路を用いて、それぞれ重心総和及び総フォトン計数値を使ってわり算し、2つの中性子入射位置XA及びXBを求める。すでに、上記の判別結果により、入射位置XAは中性子1によるものであり、入射位置XBは中性子2によるものと確定している。
【0099】
縦軸用高計数積算値用及び低積算値用重心演算回路を用いて、それぞれ重心総和及び総フォトン計数値を使ってわり算し、2つの中性子入射位置YC及びYDを求める。すでに、上記の判別結果により、入射位置YDは中性子1によるものであり、入射位置YCは中性子2によるものと確定している。
【0100】
フォトン量の多い中性子1に基づく中性子入射位置XAとYDの同時性を確認するため、同時計数回路を用いて同時計測を行い有効である場合には、中性子1信号として入射位置信号(X1,Y1)を出力し、無効である場合には信号出力はされない。同時計数時間(コインシデンス時間)としては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命の約3倍の1μsとする。
【0101】
また、フォトン量の少ない中性子2に基づく中性子入射位置XBとYCの同時性を確認するため、同時計数回路を用いて同時計測を行い有効である場合には、中性子2信号として入射位置信号(X2,Y2)を出力し、無効である場合には信号出力はされない。同時計数時間(コインシデンス時間)としては、ZnS:Ag蛍光体の短寿命成分の蛍光寿命の約3倍の1μsとする。
【0102】
以上の信号処理を行うことによって、中性子イメージ検出器に同時に2つの中性子が入射しても弁別して位置信号を出力できるため、高計数率で中性子が入射しても、計数損失の少ない検出器を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子入射によって生じた蛍光を、一定の位置間隔で1次元的に収集し、収集した蛍光を検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、
蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、出力された各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした計数分布を求め、得られた計数分布に基づき重心計算を行い中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出方法。
【請求項2】
中性子入射によって生じた蛍光を、縦軸及び横軸においてそれぞれ一定の位置間隔で2次元的に収集し、収集した蛍光を検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、
蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした計数分布を縦軸及び横軸毎に求め、得られた計数分布に基づいて縦軸及び横軸毎に重心計算を行い、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出方法。
【請求項3】
中性子が入射すると蛍光を放出するシンチレータ、シンチレータからの蛍光を、縦軸及び横軸においてそれぞれ一定の間隔で2次元に収集し、収集した蛍光を検出して、あるいは直接に2次元検出し、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出方法において、
蛍光を検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数し、1つの中性子が入射した際得られる入射位置を変数とした2次元計数分布を求め、あるいは、直接に検出して2次元計数分布を求め、得られた2次元計数分布に基づいて、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出方法。
【請求項4】
中性子が入射すると蛍光を放出するシンチレータ、シンチレータからの入射によって生じた蛍光を、一定の間隔で1次元的に並列に配置した光ファイバあるいは波長シフトファイバを用いて収集し、収集した蛍光あるいは波長シフトされた蛍光を光検出器でを検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出器において、
蛍光を光検出器で検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各光検出器から出力された各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生したクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数回路で計数し、1つの中性子がシンチレータに入射した際得られる各光ファイバあるいは各波長シフトファイバに対する入射位置を変数とした計数分布を求め、得られた計数分布に基づき重心計算を行い中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項5】
中性子が入射すると蛍光を放出するシンチレータ、シンチレータからの入射によって生じた蛍光を、縦軸及び横軸においてそれぞれ一定の間隔で並列に配置した光ファイバあるいは波長シフトファイバを用いて2次元的に収集して縦軸とし、かつ、この光ファイバあるいは波長シフトファイバの配置方向に対し直角に並列に配置した光ファイバあるいは波長シフトファイバを用いて収集して横軸とし、縦軸及び横軸の光ファイバあるいは波長シフトされた蛍光を縦軸用光検出器及び横軸用光検出器で検出して、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出器において、
蛍光を光検出器で検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各光検出器から出力された各フォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数回路で計数し、1つの中性子がシンチレータ検出器に入射した際得られる各光ファイバあるいは波長シフトファイバへの入射位置を変数とした計数分布を縦軸及び横軸毎に求め、得られた計数分布に基づいて縦軸及び横軸毎に重心計算を行い、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項6】
中性子が入射すると蛍光を放出するシンチレータ、シンチレータからの蛍光を、縦軸及び横軸に一定の間隔で2次元に配置した光ファイバあるいは光ガイドを用いて収集し二次元で配置された光検出器で検出して、あるいは直接に2次元光検出器で検出し、中性子の入射位置を決定する中性子イメージ検出器において、
蛍光を光検出器で検出する際、フォトン計測法を用いて検出し、各光検出器から出力されたフォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数回路で計数し、1つの中性子がシンチレータに入射した際得られる各光ファイバあるいは各光ガイドに対する2次元計数分布を求め、あるいは、直接に2次元光検出器で検出して2次元計数分布を求め、得られた2次元計数分布に基づいて、縦軸及び横軸毎に中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項において、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数回路で計数する際に、使用したクロック信号と同期して得られたパルス信号を、あらかじめ設定した計数時間計数し、横軸計数分布の総計数と縦軸計数分布の総計数を求め、求めた横軸の総計数があらかじめ設定しておいた横軸弁別設定値と同じあるいは以上の場合には横軸信号を有効とし、求めた縦軸の総計数があらかじめ設定しておいた縦軸弁別設定値と同じあるいは以上の場合には縦軸信号を有効とし、両者が有効の場合に中性子信号を出力することにより、中性子信号の弁別レベルを変更することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか1項において、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出し、出力されたパルス信号を計数回路で計数する際に、使用したクロック信号と同期して得られたパルス信号が連続する場合には、連続したパルス信号個数に従ってあらかじめ設定したパルス信号個数を加算する回路を用意し、フォトンが重なって計測された場合のフォトン計測法の非線形性を改善して中性子の入射位置を決定することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項9】
請求項5において、シンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFあるいは10を混合して製作した半透明のシンチレータを用いた場合に、1つの中性子が入射した際放出される蛍光の個数がその半透明性に基づいて幅広く分布することを利用して、あらかじめ設定した計数時間内に、同時に2つの中性子が2次元中性子イメージ検出器の異なった位置に入射した場合に、2つの中性子入射した場所の縦軸計数分布の総計数と縦軸計数分布の総計数を求め、縦軸の総計数と横軸の総計数の大きい総計数同士と小さい総計数同士を組み合わせることにより、2つの同時に入射した中性子のそれぞれ縦軸及び横軸の入射位置を分離して決定することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項10】
請求項4から8のいずれか1項において、シンチレータとしてZnS:Ag蛍光体と中性子コンバータとしてLiFあるいは10を混合して製作した半透明のシンチレータを用いた場合に、中性子がシンチレータに入射した際得られる各光ファイバあるいは波長シフトファイバに対する計数分布を縦軸及び横軸毎に求め、得られた計数分布に基づいて横軸計数分布の総計数と縦軸計数分布の総計数を求めた後、横軸及び縦軸の総計数の和である全計数値を求め、この全計数値に基づいてあらかじめ設定した時間幅、計数回路の計数を停止し、ZnS:Ag蛍光体のアフターグローに起因するマルチ計数を除去することを特徴とした中性子イメージ検出器。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか1項において、蛍光を光検出器で検出し信号処理を行う際、フォトン計測法を用いて検出し、各検出位置に対応した光検出器から出力されたフォトンにより生成されたパルス信号を、フォトン一個により生成されるパルス信号の時間幅と同一の間隔幅で発生させたクロック信号を基に取り出した同期化信号とした後、各位置の同期化信号を積算し総フォトン計数値を求め、同時に、各位置の同期化信号によりそれぞれ位置に対応した位置番号値を発生し、発生した位置番号値を積算し重心計算の総和を求め、得られた重心計算総和を総フォトン計算値で割ることにより、重心位置を求めることを特徴とした中性子イメージ検出器。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(A)】
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【図11(B)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15(A)】
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【図15(B)】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20(A)】
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【図20(B)】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29(A)】
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【図29(B)】
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【公開番号】特開2011−179863(P2011−179863A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42209(P2010−42209)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(510055057)株式会社豊伸電子 (1)
【Fターム(参考)】