説明

中性子検出用シンチレーター及び中性子線検出器

【課題】 小型・軽量なシリコンフォトダイオードが高感度な発光波長を有し、有効原子番号が比較的小さくγ線によって発光を起こしにくい中性子検出用シンチレーターを提供する。
【解決手段】 Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有し、Liを0.80atom/nm以上含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる中性子検出用シンチレーター、及び該中性子検出用シンチレーター及び光検出器を備えた中性子線検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線の検出に用いる中性子検出用シンチレーターに関し、詳しくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる中性子検出用シンチレーター及び該中性子検出用シンチレーターを用いた中性子線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレーターとは、α線、β線、γ線、X線、中性子線等の放射線が当たった時に当該放射線を吸収して蛍光を発する物質のことであり、光電子増倍管などの光検出器と組み合わせることで放射線検出に用いられ、断層撮影などの医療分野、非破壊検査などの工業分野、所持品検査などの保安分野、高エネルギー物理学などの学術分野等の多彩な応用分野を持っている。
【0003】
このシンチレーターとしては、放射線の種類や使用目的に応じてさまざまな種類のシンチレーターがあり、BiGe12、Ce:GdSiOなどの無機結晶、アントラセンなどの有機結晶、有機蛍光体を含有させたポリスチレンやポリビニルトルエンなどの高分子体、または液体シンチレーターや気体シンチレーターがある。
【0004】
従来の中性子線検出には、Heと中性子線とのHe(n,p)T反応を利用するHeガスを用いた検出器が主に用いられてきた。中性子線はエネルギーに応じて呼称があり、熱中性子(約0.025eV)、熱外中性子(約1eV)、低速中性子(0.03〜100eV)、中速中性子(0.1〜500keV)、高速中性子(500keV以上)などに分類される。He(n,p)T反応の発生確率はエネルギーの高い高速中性子では著しく低く、Heガスを用いた中性子線検出器では検出感度が低いため、該中性子線検出器の主な検出対象はエネルギーの低い熱中性子線である。高速中性子を検出する場合は、ポリエチレンなどの減速材を用いて、高速中性子を熱中性子まで減速させてから検出する方法が用いられており、例えばHeを用いた中性子線検出器部を球形ポリエチレン減速材で覆うレムカウンターやボナー球スペクトロメーターが使用されている。
【0005】
このように熱中性子に感度の高いHeガスを用いた中性子線検出器が長らく用いられてきたが、近年は希少なHeガスの価格高騰により、代替技術への置き換えが求められている。固体の中性子検出用シンチレーターを用いた中性子線検出器は、代替技術として有力な候補の一つである。
【0006】
本発明において、中性子線が衝突した際に蛍光を発する物質からなるものを中性子検出用シンチレーターと称する。
【0007】
固体の中性子検出用シンチレーターはLiを含有するシンチレーターが有望な材料の一つである。該シンチレーターは熱中性子とLiの核反応により生成するα線の励起により発光するが、α線による励起発光は、X線・γ線・β線とは機構が異なり、例えば材料によってα線励起による発光量とX線励起による発光量の比であるα/β比が異なるなどの違いが生じる。ゆえに、Liを含有するシンチレーターの中性子検出用シンチレーターとしての性能を調べるには、α線励起による発光を評価することが望ましく、中性子線励起による発光を評価することがより望ましい。
【0008】
固体の中性子検出用シンチレーターの一例としては、潮解性がなく、高速応答性を有する材料としてLiガラスシンチレーターが用いられてきたが、製作工程が複雑であるため高価で、大型化にも限界があった。
【0009】
かかる問題に対して、本発明者らは、いくつかのフッ化物単結晶について、その中性子検出用シンチレーターとしての応用を試みるべく、中性子線を照射した評価を行った。その結果、Liおよび2価以上の金属元素を含むフッ化物結晶に、ランタノイド及び単位体積当たり1.1〜20原子(atom/nm)のLiを含有させ、さらに有効原子番号10〜40とすることで、中性子検出用シンチレーターとして比較的良好な特性を有することを見出した(特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、従来の材料は、光検出器として光電子増倍管を用いるのに好適な中性子検出用シンチレーターが主として検討されており、光電子増倍管によるフォトンカウンティング方式の中性子線検出器に搭載する光検出器として十分に用いることができるが、サーベイメーターなどの用途に対する光検出器に好適な小型で軽量なシリコンフォトダイオードと組み合わせて用いるのに好適な中性子検出用シンチレーターという観点からは検討されていなかった。
【0011】
シリコンフォトダイオードは長波長(概ね350nm〜400nm以上)に高感度であり、短波長の発光波長の光を受光する場合は十分な発光強度が必要となる。特許文献1に記載のCeを含有するLiCaAlFはその発光波長領域が280〜320nmであり、光検出器としてシリコンフォトダイオードを用いるには波長が短い。比較的長い発光波長を有する中性子検出用シンチレーターの一例としては発光波長540nmであるTb:GdSが挙げられるが、当材料の有効原子番号は61であり、有効原子番号が14のLiCaAlFや有効原子番号30のLiSrAlF等と比べて非常に高く、γ線に対しても有感であるため、中性子線だけを検出するのが困難であった。
【0012】
また、単結晶材料の放射線励起発光は、様々な要因で消光(クエンチング)を起こすため、実際に作製して評価するまで、どのような発光が得られるかは不明であり、どのような発光を有するかを、事前に予測するのは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開2009/119378号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
小型・軽量なシリコンフォトダイオードが高感度な発光波長を有し、有効原子番号が比較的小さくγ線によって発光を起こしにくい中性子検出用シンチレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、種々の組成でフッ化物単結晶を作製し、中性子線シンチレーターとしての性能を評価するため、α線励起時の発光スペクトルをシリコンフォトダイオードからなるCCDにより測定し、中性子線照射時の発光をシリコンフォトダイオードによって測定した。その結果、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる中性子検出用シンチレーターにおいて、シリコンフォトダイオードで受光可能な発光が得られることを見出し、さらに本発明の結晶をシリコンフォトダイオードと組み合わせることで中性子線検出器として動作できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有し、Liを0.80atom/nm以上含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる中性子検出用シンチレーター、及び該中性子検出用シンチレーター及び光検出器を備えることを特徴とする中性子線検出器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中性子検出用シンチレーターは、シリコンフォトダイオードで発光を受光可能な中性子検出用シンチレーターである。当該シンチレーターとシリコンフォトダイオードを組み合わせることで環境中の中性子線の有無の判別などの用途に用いることのできる、サーベイメーターなどの用途に好適な小型、軽量の中性子線検出器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本図は、本発明のシンチレーターに使用される結晶のマイクロ引下げ法による製造装置の概略図である。
【図2】本図は、本発明の中性子検出用シンチレーターのα線励起発光の検出方法の模式図である。
【図3】本図は、実施例1、2の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図4】本図は、実施例3、4の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図5】本図は、実施例5、6の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図6】本図は、実施例7、8の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図7】本図は、実施例9、10の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図8】本図は、実施例11、12の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図9】本図は、実施例13、14の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図10】本図は、実施例15、16の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図11】本図は、実施例17、18の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図12】本図は、実施例19の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図13】本図は、実施例20の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図14】本図は、実施例21の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図15】本図は、実施例22の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図16】本図は、実施例23の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図17】本図は、実施例24の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図18】本図は、実施例25の中性子検出用シンチレーターのα線励起による発光スペクトルである。
【図19】本図は、本発明の中性子線検出用シンチレーターとフォトダイオードを備えた中性子線検出器を示す概略図である。
【図20】本図は、実施例16の中性子線検出用シンチレーターに熱中性子を照射した際の発光をシリコンフォトダイオードにより受光した場合の、電流電圧特性を示す図である。
【図21】本図は、実施例18の中性子線検出用シンチレーターに熱中性子を照射した際の発光をシリコンフォトダイオードにより受光した場合の、電流電圧特性を示す図である。
【図22】本図は、実施例19の中性子線検出用シンチレーターに熱中性子を照射した際の発光をシリコンフォトダイオードにより受光した場合の、電流電圧特性を示す図である。
【図23】本図は、本発明の、中性子線検出用シンチレーターと光電子増倍管を備えた中性子線検出器を示す概略図である。
【図24】本図は、実施例19の中性子検出用シンチレーターと光電子増倍管を備えた中性子線検出器に熱中性子を照射した際の波高分布スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の中性子検出用シンチレーターは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有し、Liを0.80atom/nm以上含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる。
【0020】
本発明においてコルキライト型フッ化物単結晶とは、Mの化学式で表される化合物の単結晶体で、MはLiを必ず含む、Li、Na、K、Rb、Cs、から選ばれる少なくとも一種類の元素、Mは、Ca、Mg、Ba、Sr、Cd、Be、から選ばれる少なくとも一種類の元素、Mは、Al、Ga、In、から選ばれる少なくとも一種類の元素を表す。Mは中性子を検出するのに必要なLiを必ず含み、電荷調整を行う場合はNaを含むことが好ましい。
【0021】
当該コルキライト型単結晶は、空間群P31cに属する六方晶であって、粉末X線回折の手法によって容易に同定することができる。
【0022】
前記コルキライト型結晶の中でも、化学式LiCaAlF、LiSrAlF、LiCa1−xSrAlF(0<x<1)で表わされるコルキライト型結晶が、大型の結晶を作製しやすく、また、シンチレーターとして用いた際の発光量を高めることができ、好ましい。中でもLiCaAlFは、有効原子番号が小さく、γ線に対する感度を低減することができるため、最も好ましい。なお、本発明において、有効原子番号とは下式で定義される指標である。
【0023】
有効原子番号=(ΣW1/4
式中、Wi及びZiは、それぞれシンチレーターを構成する元素のうちのi番目の元素の質量分率及び原子番号である。
【0024】
本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶にはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有する。該元素を含有することにより、中性子照射時にシリコンフォトダイオードで受光しやすい350nm以上の波長域の光を含有する発光が得られる。コルキライト型フッ化物単結晶に含有させる、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素の含有量は、中性子照射時に高い発光強度が得られやすいため、0.01モル%以上であることが好ましく、更には0.1モル%以上であることが好ましい。また、含有量が高すぎる場合、発光強度が低下することもあるため、含有量の上限はTi、V、Fe、Co、Ni、Cuの場合は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。Cr、Mn、Znの場合、50モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0025】
また、本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶は更に希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいても良い。なお、本発明において、希土類元素とは、Ce、Eu、Pr、Nd、Er、Tm、Ho、Dy、Tb、Gd、Sm、Yb、La、Lu、Y、Sc、Pmである。
【0026】
希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有させることで、350nm以上の波長域の発光が増加したコルキライト型フッ化物単結晶や、光電子増倍管では受光可能な350nm未満の波長域の発光を有するコルキライト型フッ化物単結晶を作製できる。希土類元素の中でもEu、Ceは発光量が高く、光電子増倍管で受光するのに好ましい。
【0027】
シリコンフォトダイオードは光電子増倍管に比べ、小型・軽量であるという利点がある反面、増幅率が低い・応答速度が遅い・受光面の面積が小さいなどの欠点もある。そのため、シリコンフォトダイオードと光電子増倍管は使用に適する用途が異なり、両者の光検出器に搭載可能な中性子検出用シンチレーターは、汎用性が高く非常に有用である。
【0028】
希土類元素の含有量は、0.005モル%以上であると中性子照射時に発光が得られやすいため好適である。さらに0.02モル%以上含有する場合に中性子照射時に高い発光強度が得られやすいため、より好ましい。また、含有量が高すぎる場合、単結晶の育成が困難になることもあるため、含有量の上限は5モル%以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明において、希土類元素を含有するコルキライト型フッ化物単結晶のLi含有量は0.80atom/nm以上であることが好ましい。Li含有量が0.80atom/nm以上とすることにより、中性子検出用シンチレーターとして用いるのに必要な、中性子線に対する感度が得られる。さらに中性子線に対する感度をより高めるためには、該Li含有量を約4〜9atom/nmとすることが特に好ましい。
【0030】
Li含有量の上限は約9atom/nmである。コルキライト型フッ化物単結晶におけるLi含有量は、計算上最大で約9atom/nm程度であり、これ以上のLi含有量のものを得ることはできない。
【0031】
本発明において、上記Li含有量とはシンチレーター1nmあたりに含まれるLi元素の個数をいう。入射した中性子は、このLiと核反応を起こしてα線を生じる。従って、該Li含有量は中性子線に対する感度に影響し、Li含有量が多いほど中性子線に対する感度が向上する。
【0032】
かかるLi含有量は、中性子検出用シンチレーターの化学組成を選択し、また、Li原料として用いるLiF等のLi含有率を調整することによって適宜調整できる。ここで、Li含有率とは、全Li元素に対するLi同位体の元素比率であって、天然のLiでは約7.6%である。Li含有率を調整する方法としては、天然の同位体比を有する汎用原料を出発原料として、Li同位体を所期のLi含有率まで濃縮して調整する方法、或いはあらかじめLiが所期のLi含有率以上に濃縮された濃縮原料を用意し、該濃縮原料と前記汎用原料を混合して調整する方法が挙げられる。
【0033】
なお、上記Li含有量は、下式〔1〕によって求めることができる。
【0034】
Li含有量=A×C×ρ×10−21/M 〔1〕
(式中、ρは希土類元素を含有させたコルキライト型フッ化物単結晶の密度[g/cm]、Mは分子量[g/mol]、CはLi元素中のLi含有率[%]、Aはアボガドロ数[6.02×1023]を示す)
本発明の中性子検出用シンチレーターは単結晶からなっているので、格子欠陥に起因する非輻射遷移や結晶粒界でのシンチレーション光の散逸などによるロスを生じることがなく、発光強度が高い。
【0035】
本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶は、無色ないしはわずかに着色した透明な結晶であり、シンチレーション光の透過性に優れる。また、良好な化学的安定性を有しており、通常の使用においては短期間での性能の劣化は認められない。更に、機械的強度及び加工性も良好であり、所望の形状に加工して用いることが容易である。
【0036】
本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶の製造方法は特に限定されず、公知の結晶製造方法によって製造することができるが、チョクラルスキー法、またはマイクロ引き下げ法によって製造することが好ましい。チョクラルスキー法、またはマイクロ引き下げ法で製造することにより、透明性等の品質に優れた希土類を含有させたコルキライト型フッ化物単結晶を製造することができる。マイクロ引下げ法によれば、結晶を特定の形状にて直接製造することができ、しかも短時間で製造することができる。一方、チョクラルスキー法によれば、直径が数インチの大型結晶を製造することが可能となる。
【0037】
マイクロ引き下げ法とは、図1に示すような装置を用いて、坩堝5の底部に設けた穴より原料融液を引き出して結晶を製造する方法である。
【0038】
以下、マイクロ引き下げ法によって本発明のフッ化物結晶を製造する際の、一般的な方法について説明する。
【0039】
まず、所定量の原料を、底部に孔を設けた坩堝5に充填する。坩堝底部に設ける孔の形状は、特に限定されないが、直径が0.5〜4mm、長さが0〜2mmの円柱状とすることが好ましい。
【0040】
本発明において原料の純度は特に限定されないが、それぞれ99.99%以上のMF、M、M及び、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素のフッ化物、更に希土類元素を含有させる場合には希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素のフッ化物、を混合した混合原料を用いることが好ましい。かかる混合原料を用いることにより、結晶の純度を高めることができ、発光強度等の特性が向上する。混合原料は、粉末状あるいは粒状の原料を用いても良く、あらかじめ焼結或いは溶融固化させてから用いてもよい。
【0041】
また、MFに必ず含有するLiFの原料には、コルキライト型フッ化物単結晶のLi含有量の調整のしやすさの点からLiを濃縮したものを用いることが好ましい。熱中性子の検出感度を高めるためには、Li元素中のLiの割合が7.6%を超えるものを用いることが好ましい。Liの割合が高いほど、育成した結晶を中性子検出用シンチレーターとして用いる際の中性子検出効率が高くなるため好ましい。
【0042】
上記混合原料における原料粉末の混合比は、作製する化学式の比率で秤量することができる。
【0043】
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、及び希土類元素のフッ化物の秤量値は、偏析現象を考慮し、目標とする含有量よりも多めに秤量しても良い。秤量値から実際の添加元素の含有量を決める偏析係数は、添加元素の種類や成長速度など育成条件によっても変動するため、結晶作製条件ごとに元素分析などで実際の濃度を調べて決定することが好ましい。
【0044】
また、高温で揮発性が高い原料粉末は、多めに混合しても良い。揮発量は、結晶育成条件(温度・雰囲気・工程)によって全く異なるため、予め揮発量を調べて秤量値を決めることが望ましい。
【0045】
次いで、上記原料を充填した坩堝5、アフターヒーター1、ヒーター2、断熱材3、及びステージ4を図1に示すようにセットする。真空排気装置を用いて、チャンバー6内を1.0×10−3Pa以下まで真空排気した後、高純度アルゴン等の不活性ガスをチャンバー6内に導入してガス置換を行う。ガス置換後のチャンバー内の圧力は特に限定されないが、大気圧が一般的である。
【0046】
該ガス置換操作によって、原料或いはチャンバー内に付着した水分を除去することができ、かかる水分に由来する結晶の劣化を妨げることができる。上記ガス置換操作によっても除去できない水分による影響を避けるため、フッ化亜鉛等の固体スカベンジャー或いは四フッ化メタン等の気体スカベンジャーを用いることが好ましい。固体スカベンジャーを用いる場合には原料中に予め混合しておく方法が好適であり、気体スカベンジャーを用いる場合には上記不活性ガスに混合してチャンバー内に導入する方法が好適である。
【0047】
ガス置換操作を行った後、高周波コイル7で原料を加熱して溶融させ、溶融した原料融液を坩堝底部の孔から引き出して、結晶の育成を開始する。
【0048】
ここで、金属ワイヤーを引き下げロッドの先端に設け、該金属ワイヤーを坩堝底部の孔から坩堝内部に挿入し、該金属ワイヤーに原料融液を付着させた後、原料融液を金属ワイヤーと共に引き下げることによって結晶の育成が可能となる。
【0049】
即ち、高周波の出力を調整し、原料の温度を徐々に上げながら、該金属ワイヤーを坩堝底部の孔に挿入し、引き出しを行う。この操作を、原料融液が金属ワイヤーと共に引き出されるまで繰り返して、結晶の育成を開始する。該金属ワイヤーの材質は、原料融液と実質的に反応しない材質であれば制限無く使用できるが、W−Re合金等の高温における耐食性に優れた材質が好適である。
【0050】
上記金属ワイヤーによる原料融液の引き出しを行った後、一定の引き下げ速度で連続的に引き下げることにより、結晶を得ることができる。
【0051】
該引き下げ速度は、特に限定されないが、速過ぎると結晶性が悪くなりやすく、遅過ぎると、結晶性は良くなるものの、結晶育成に必要な時間が膨大になってしまうため、0.5〜10mm/hrの範囲とすることが好ましい。
【0052】
本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶の製造において、熱歪に起因する結晶欠陥を除去する目的で、単結晶の製造後にアニール操作を行っても良い。
【0053】
得られた単結晶は、良好な加工性を有しており、所望の形状に加工して用いることが容易である。加工に際しては、公知のブレードソー、ワイヤーソー等の切断機、研削機、或いは研磨盤を何ら制限無く用いることができる。光検出器に対して適切な形状に加工研磨することでシンチレーターとして使用することができる。
【0054】
本発明の中性子検出用シンチレーターの形状は特に制限されないが、後述する光検出器に対向する光出射面を有し、当該光出射面は光学研磨が施されていることが好ましい。かかる光出射面を有することによって、シンチレーターで生じた光を効率よく光検出器に入射できる。
【0055】
なお、前記光出射面の形状は限定されず、一辺の長さが数mm〜数百mm角の四角形、或いは直径が数mm〜数百mmの円など、用途に応じた形状を適宜選択して用いることができる。
【0056】
また、シンチレーターの中性子線入射方向に対する厚さは、検出対象とする中性子線のエネルギーによって異なるが、一般に数百μm〜数百mmである。
【0057】
また、光検出器に対向しない面に、アルミニウム或いはテフロン(登録商標)等からなる光反射膜を施すことにより、シンチレーターで生じた光の散逸を防止することができ、好ましい。
【0058】
本発明の中性子検出用シンチレーターの発光は、任意の回折格子とCCDを用いて波長分解して発光スペクトルを測定することにより、検出することができる。CCDから出力される電気信号は任意のインターフェイスでパーソナルコンピューターに入力し、解析しても良い。このように波長分解する場合は、用いたシンチレーターの発光による電気信号とノイズによる電気信号とを分離しやすい点では好ましい。CCDには任意のものを使用できるが、受光可能な波長を考慮するとシリコンフォトダイオードからなるものを用いるのが特に好ましい。
【0059】
本発明の中性子検出用シンチレーターは、光検出器と組み合わせて中性子線検出器とすることができる。
【0060】
即ち、中性子線の照射により中性子検出用シンチレーターから発せられた光(シンチレーション光)を、光検出器によって電気信号に変換することによって、中性子線の有無及び強度を電気信号として捉えることができる。本発明のシンチレーターから発せられるシンチレーション光は、添加元素によって異なるが、シリコンフォトダイオードで受光しやすい350nm以上のシンチレーション光を含んでいる。
【0061】
光検出器にはフォトダイオード、光電子増倍管などが好適に使用できる。光検出器の感度の波長依存性は種類によってそれぞれ異なり、例えばシリコンフォトダイオードは一般に、概ね350〜400nm以上の波長の光に対して感度が高い。本発明の中性子検出用シンチレーターは、350nm以上の長波長の発光が得られるためフォトダイオード、特にシリコンフォトダイオードに対して好適に使用できる。光電子増倍管は光電材料や光電窓の材質の違いによって光検出器の感度の波長依存性は異なり、シンチレーターの発光波長に応じて使用する光検出器の種類を選択する必要がある。
【0062】
フォトダイオードは、小型・軽量な中性子線検出器の用途に好適に使用できる。フォトダイオードには任意のものを用いることができるが、電気信号の増幅機能を有するAPD(アバランシェフォトダイオード)を用いることで高感度にシンチレーターの光を受光できる。一例を挙げると浜松ホトニクス社製アバランシェフォトダイオードS8664シリーズを用いることができる。
【0063】
フォトダイオードの受光面には、本発明の中性子検出用シンチレーターをシリコングリースなどの任意の光学グリースを用いて接着して本発明の中性子線検出器とすることができる。中性子検出用シンチレーターを接着したフォトダイオードの受光面は、環境中の光の入射を防ぐ目的で、光を通しにくい任意の材質の遮光材で覆っても良い。中性子検出用シンチレーターの、フォトダイオードの受光面に対する接着面以外を、アルミニウム、テフロン(登録商標)、硫酸バリウムなどからなる反射材で覆って集光効率を高めても良く、前記した遮光材と反射材の機能を併せ持つもので全体を覆っても良い。該検出器は任意の電流測定器(例えばピコアンメーター)に接続して電流値の変化を調べ、受光量の変化に応じた電流値の変化を確認することができる。その際に受光感度を向上させる目的で、シリコンフォトダイオードには逆バイアスに電圧を印加してもよく、その場合、電圧または電流の印加と測定を同時に行うことのできる任意の計測器(例えば、KEITHLEY 237 HIGH VOLTAGE SOURCE MEASURE UNIT)を用いてもよい。印加する電圧値は、シリコンフォトダイオードの性能や測定する中性子のフラックスに応じて設定することが好ましい。例えば、浜松ホトニクス社製アバランシェフォトダイオードS8664シリーズを使用する場合は300〜400Vの電圧の印加が特に好ましい。設定した動作電圧において、事前に照射された熱中性子のフラックスと電流値の関係を測定しておくことで、定量性を有する中性子検出器として用いることもできる。
【0064】
本発明の中性子検出用シンチレーターに希土類元素を含有させた場合は、フォトダイオードと同様に光電子増倍管に対しても、受光面に任意の光学グリース等で接着して、中性子線検出器として用いることができる。中性子検出用シンチレーターを接着した光電子増倍管の受光面は、環境中の光の入射を防ぐ目的で、光を通しにくい任意の材質の遮光材で覆っても良い。中性子検出用シンチレーターの、光電子増倍管の受光面に対する接着面以外を、アルミニウム、テフロン(登録商標)、硫酸バリウムなどからなる反射材で覆って集光効率を高めても良く、前記した遮光材と反射材の機能を併せ持つもので全体を覆っても良い。光電子増倍管は、高電圧を印加することで高感度に用いることができ、出力される電気信号を観測することで、中性子線の検出を確認できる。
【0065】
光電子増倍管から出力される電気信号は、ピコアンメーターなどの電流計に入力し、電流電圧特性を評価し、電流量の変化を確認することで中性子線の強度を判別してもよい。また、出力される電気信号は、増幅器や多重波高分析器等に入力し、フォトンカウンティング(光子計数法)によって測定してもよい。ただし、シンチレーターの蛍光寿命が長い場合等は、フォトンカウンティングでは測定が難しいこともある。本発明の中性子検出用シンチレーターの内、希土類元素(特にCe、Eu)を含有するものは、フォトンカウンティングによる測定に対しても好適に使用できる。
【0066】
更に、光検出器として、数mm角の有感領域を有する検出部をアレイ状に配列してなるシリコンフォトダイオードアレイもしくは位置敏感型光電子増倍管を用い、光電面の一部または全部を覆う本発明の結晶を接合することで、中性子線撮像装置とすることができる。
【0067】
シリコンフォトダイオードアレイもしくは位置敏感型光電子増倍管には、本発明の結晶から発せられるシンチレーション光を検出可能なものを用いる。受光面と結晶の接合には光学グリース等を用いてもよい。結晶の形状は任意の形状で良く、板状、ブロック状、もしくは四角柱形状の結晶を規則的に配列させたシンチレーターアレイとすることができる。
【0068】
シリコンフォトダイオードアレイもしくは位置敏感型光電子増倍管から出力される電気信号は、任意のインターフェイスを用いて読み出すことができ、パーソナルコンピューターで制御用プログラムを用いて制御してもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0070】
実施例1〜25
(中性子検出用シンチレーターの製造)
以下、実施例1についてコルキライト型フッ化物単結晶の製造方法を説明するが、表1に示すように、添加する元素の種類及び原料秤量値が異なることを除いて実施例2〜25についても同様の方法で作製した。
【0071】
図1に示すマイクロ引下げ法による結晶製造装置を用いて、本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶を製造した。原料としては、純度が99.99%以上のLiF、CaF、AlF、CuFの高純度フッ化物粉末を用いた。なお、LiFは、Li含有率が95%のものを用いた。アフターヒーター1、ヒーター2、断熱材3、ステージ4、及び坩堝5は、高純度カーボン製のものを使用し、坩堝底部に設けた孔の形状は直径2.2mm、長さ0.5mmの円柱状とした。
【0072】
まず、表1に示す通りに原料をそれぞれ秤量し、よく混合して得られた混合原料を坩堝5に充填した。原料を充填した坩堝5を、アフターヒーター1の上部にセットし、その周囲にヒーター2、及び断熱材3を順次セットした。次いで、油回転ポンプ及び油拡散ポンプからなる真空排気装置を用いて、チャンバー6内を5.0×10−4Paまで真空排気した後、四フッ化メタン−アルゴン混合ガスをチャンバー6内に大気圧まで導入し、ガス置換を行った。
【0073】
高周波コイル7に高周波電流を印加し、誘導加熱によって原料を加熱して溶融させ、引き下げロッド8の先端に設けたW−Reワイヤーを、坩堝5底部の孔上記孔に挿入し、原料の融液を上記孔より引き下げ、結晶化を開始した。高周波の出力を調整しながら、3mm/hrの速度で連続的に17時間引き下げ、希土類元素とし本発明に用いるコルキライト型フッ化物単結晶を得た。
【0074】
該結晶は直径が2.1mm、長さが60mmであり、白濁やクラックの無い良質な結晶であった。
【0075】
該結晶を、ダイヤモンドワイヤーを備えたワイヤーソーによって10mmの長さに切断した後、研削及び鏡面研磨を行い、長さ7mm、幅2mm、厚さ1mmの形状に加工し、本発明の中性子検出用シンチレーターを得た。
【0076】
該シンチレーターの密度、分子量、及びリチウム原料のLi含有率は、それぞれ3.4g/cm、235g/mol、及び95%であり、したがって、Li含有量は8.3atom/nmであった。また、該中性子用シンチレーターのCuの含有量はLiCaAlFに対し、0.5モル%であった。
【0077】
実施例2〜25についても同様にして結晶を作製、切断、研磨し、本発明の中性子検出用シンチレーターを得た。それぞれ、Li含有量は8.3atom/nmで、実施例2〜25の添加物の含有量は表2の通りであった。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
得られた中性子検出用シンチレーターは、下記の方法によって、α線励起発光の検出試験を行った。
【0081】
(α線励起発光の検出)
実施例1〜25の中性子検出用シンチレーターのα線励起発光を下記の方法によって検出した。
【0082】
図2に示す模式図のように、中性子検出用シンチレーター9の近傍に241Am密封線源10を設置してα線を照射し、励起されて生じたシンチレーション光11をCCD分光器12に入射して200nm〜800nmの発光スペクトルを取得した。241Am密封線源10には4MBqの放射能を有するものを用い、CCD分光器12には、入射光を回折格子で分光してCCDで受光する構造の分光計器社製のKV−MV型分光器を使用した。該分光器は、CCDとしてANDOR TECHNOLOGY社製のnewtonを搭載している。
【0083】
図3〜18に、得られた実施例1〜25の発光スペクトルを示す。横軸が発光波長、縦軸が発光強度を示しており、それぞれ、発光波長は異なるものの350nm以上の光を含んでおり、CCDで検出可能な発光強度で発光していることがわかる。これにより、本発明の中性子検出用シンチレーターが、熱中性子とLiの核反応により生じるα線の励起によって発光し、中性子検出用シンチレーターとして使用できることがわかる。
【0084】
実施例26〜28
(シリコンフォトダイオードを備えた中性子線検出器の作製)
実施例16の本発明の中性子用シンチレーターを、図19に示す模式図のように、シリコンフォトダイオード13と組み合わせることによって、中性子検出器とした。
【0085】
シリコンフォトダイオード13には約350nm〜1000nmに感度を有する浜松ホトニクス社製アバランシェフォトダイオードS8664−1010を使用し、受光面に本発明の中性子検出用シンチレーター9を、シリコングリースを用いて接着し、黒色のビニールシートからなる遮光材14で覆い本発明の中性子検出器とした。該検出器は、電流計15と接続して用いた。電流計15には、電圧を印加しながら電流値を読み取ることのできるKEITHLEY 237 HIGH VOLTAGE SOURCE MEASURE UNITを用い、パーソナルコンピューター上のプログラムによる制御で、逆バイアスで300〜400Vの電圧を印加しながら電流値の計測を行い、電流電圧特性のグラフを描画した。
【0086】
熱中性子源としては、252Cf密封線源をポリエチレン容器に入れたものを用いた。図20に本発明の中性子検出器に熱中性子を直接照射した場合と、熱中性子源と本発明の中性子検出器の間に熱中性子に対して高い吸収効率を持つCd(カドミウム)の厚み1mmの板を設置して熱中性子のフラックスを低減させて照射した場合の、電流電圧特性を示す。350Vにおける電流値は、Cd板を挟んで熱中性子を遮蔽した場合は1.24×10−8Aだったのに対し、熱中性子をそのまま照射した場合は1.53×10−8Aであり、熱中性子のフラックスの増加に伴って電流値が増加することがわかる。
【0087】
実施例18、19についても同様にして測定した結果をそれぞれ図21、22に示す。それぞれ熱中性子の照射により電流値が増加することがわかる。
【0088】
以上により、本発明の中性子検出用シンチレーターとシリコンフォトダイオードを組み合わせることで熱中性子の検出が可能であることが確認された。
【0089】
実施例29
(光電子増倍管を備えた中性子線検出器の作製)
図23に本発明の中性子線検出器の構成を示す。光電子増倍管16には約250nm〜750nmの光に感度を有する浜松ホトニクス社製R7600Uを用い、中性子検出用シンチレーター9として実施例19の中性子検出用シンチレーターの長さ7mm、幅2mmの面を光電子増倍管16の光電面に対して光学グリースで接着した後、外部からの光が入らないように黒色のビニールシートからなる遮光材14で遮光した。
【0090】
熱中性子源としては、252Cf密封線源をポリエチレン容器に入れたものを用いた。次いで、シンチレーターより発せられたシンチレーション光をフォトンカウンティングによって計測した。まず、600Vの高電圧を印加した光電子増倍管16を介して、シンチレーション光を電気信号に変換した。ここで、光電子増倍管16より出力される電気信号は、シンチレーション光を反映したパルス状の信号であり、パルスの波高がシンチレーション光の発光強度を表し、また、その波形はシンチレーション光の減衰時定数に基づいた減衰曲線を呈する。このようにして光電子増倍管から出力された電気信号を整形増幅器で整形、増幅した後、多重波高分析器に入力して解析し、波高分布スペクトルを作成した。
【0091】
本発明の中性子検出器に熱中性子を直接照射した場合と、熱中性子源と本発明の中性子検出器の間に厚み1mmのCd板を設置して熱中性子のフラックスを低減させて照射した場合に得られた波高分布スペクトルを図24に示す。該波高分布スペクトルの横軸は、電気信号の波高値すなわちシンチレーション光の発光強度を表している。また、縦軸は各波高値を示した電気信号の頻度を表し、ここでは、電気信号が計測された回数(counts)で示した。
【0092】
該波高分布スペクトルにおいて、図24より実施例19の中性子検出用シンチレーターを用いた中性子線検出器に熱中性子を照射した場合に得られる中性子線検出ピークは波高値100チャンネル以下に見られるノイズから十分に分離されている。そのため、本発明の中性子検出用シンチレーターが十分な発光量を有することが分かる
以上により、本発明の中性子検出用シンチレーターと光電子増倍管を組み合わせることで、中性子線検出器として動作することがわかる。
【符号の説明】
【0093】
1 アフターヒーター
2 ヒーター
3 断熱材
4 ステージ
5 坩堝
6 チャンバー
7 高周波コイル
8 引き下げロッド
9 中性子検出用シンチレーター
10 241Am密封線源
11 シンチレーション光
12 CCD分光器
13 フォトダイオード
14 遮光材
15 電流計
16 光電子増倍管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有し、Liを0.80atom/nm以上含有するコルキライト型フッ化物単結晶からなる中性子検出用シンチレーター。
【請求項2】
希土類元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する請求項1記載の中性子検出用シンチレーター。
【請求項3】
希土類元素がCe、Euから選ばれる少なくとも一種の元素である請求項2記載の中性子検出用シンチレーター。
【請求項4】
請求項1記載の中性子検出用シンチレーター及び光検出器を備えることを特徴とする中性子線検出器。
【請求項5】
光検出器がシリコンフォトダイオードである請求項4記載の中性子検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−162596(P2012−162596A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21753(P2011−21753)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】