説明

中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システム

【課題】BNCTに適した中性子を効率的に発生させること。
【解決手段】この中性子発生装置100は、20MeV以上のエネルギーを持つ陽子が照射されて中性子を発生するターゲット1と、前記陽子の照射によって前記ターゲット1から発生した中性子を減速する中性子減速部3と、鉛で構成され、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍させて前記中性子減速部3へ導く反射体5と、を含んで構成される。陽子は、例えばサイクロトロン等の加速器により、ターゲット1へ照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子を発生する技術に関し、さらに詳しくは、ホウ素中性子補足療法に適した中性子を発生できる中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は、ホウ素化合物が癌細胞に集まることを利用して、ホウ素が中性子を吸収するときに生じる7Liやα粒子を用いて癌細胞を選択的に破壊し、治療する治療法である。ホウ素中性子補足療法(以下BNCTという)では、患部に中性子を照射する必要があり、BNCTを施術する際には、必ず中性子照射設備が必要である。BNCTに用いる中性子照射設備に関して、例えば特許文献1には、熱外スペクトラムの中性子を低エネルギー中性子ビームから特定のエネルギーにまでろ過するフィルタを備えた中性子放射設備が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2002−524219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来BNCTでは、原子炉で発生する中性子が用いられてきた。しかし、燃料供給の問題、老朽化による原子炉の閉鎖により、中性子源として原子炉を利用することが困難な状況になりつつある。このような現状に対して、特許文献1には、中性子源として原子炉の他に加速器が開示されている。しかしながら、加速器を用いた場合における具体的な中性子の取り出し方には言及されておらず、加速器を用いた場合に、どのようにしてBNCTに適した中性子を安定して発生させるかは不明である。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、BNCTの中性子源として加速器を用いた場合において、BNCTに適した中性子を効率的に発生させることを達成できる中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中性子発生装置は、高エネルギーの陽子が照射されて中性子を発生するターゲットと、前記陽子の照射によって前記ターゲットから発生した中性子を減速する中性子減速部と、(n、xn)反応を生ずる物質で構成され、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍させて前記中性子減速部へ導く反射体と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
この中性子発生装置は、高エネルギーの陽子(例えば20MeV以上)によって発生した中性子を、(n、xn)反応を生ずる物質により反射するとともに増倍して減速するので、効率よくBNCTに適した熱外中性子を得ることができる。
【0008】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記ターゲットの厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする。
【0009】
この中性子発生装置は、ターゲットの最大厚さを陽子の停止距離よりも小さくしたので、陽子はターゲットを透過する。これにより、この中性子発生装置は、ターゲットの発熱を抑えて長時間の使用でも安定してBNCTに適した中性子を発生することができるとともに、効率よくBNCTに適した熱外中性子を得ることができる。
【0010】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とする。
【0011】
このような構成により、陽子照射領域内におけるターゲットの発熱分布を均一化できるので、ターゲットの熱歪を抑制して、ターゲットの耐久性を向上させることができる。これにより、この中性子発生装置は、陽子をターゲットに長時間照射しても、安定して、効率よくBNCTに適した中性子を取り出すことができる。
【0012】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットに前記陽子が照射される面とは反対側の面に対して冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この中性子発生装置は、ターゲットを噴射冷却するので、ターゲットを効率よく冷却することができる。その結果、この中性子発生装置は、長時間にわたってターゲットに陽子を照射した場合でも、ターゲットの昇温を抑えて、安定して効率よくBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【0014】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、前記ターゲットは、前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブが設けられ、この複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とする。
【0015】
この中性子発生装置は、リブにより仕切られた冷却流路を備えるターゲットを用いるので、ターゲットを効率よく冷却することができる。その結果、この中性子発生装置は、長時間にわたってターゲットに陽子を照射した場合でも、ターゲットの昇温を抑えて、安定して効率よくBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【0016】
次の本発明に係る中性子発生装置は、前記中性子発生装置において、さらに、前記陽子からなる陽子線の断面積を拡大して前記ターゲットに照射する陽子線拡大手段を含んで構成されることを特徴とする。
【0017】
この中性子発生装置は、陽子線の断面積を広げてターゲットに照射することにより、ターゲットの単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。その結果、陽子を長時間照射しても、安定して効率よくBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【0018】
次の本発明に係るターゲットは、加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、前記陽子が照射される面とは反対側の面に対して冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とする。
【0019】
このターゲットは、陽子が照射されて中性子を発生するに当たって、噴射冷却手段により冷却されるので、ターゲットを効率よく冷却することができる。その結果、長時間にわたってこのターゲットに陽子を照射した場合でも、昇温を抑え、安定して中性子を発生することができる。
【0020】
次の本発明に係るターゲットは、加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とする。
【0021】
このターゲットは、陽子が照射されて中性子を発生するにあたって、ターゲットに設けたリブにより仕切られる冷却流路により冷却されるので、ターゲットを効率よく冷却することができる。その結果、長時間にわたってこのターゲットに陽子を照射した場合でも、昇温を抑え、安定して中性子を発生することができる。
【0022】
次の本発明に係るターゲットは、前記ターゲットにおいて、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する前記ターゲットの最大厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする。
【0023】
このように、ターゲットの最大厚さを陽子の停止距離よりも小さくしたので、中性子を発生させるために照射される陽子はターゲットを透過する。これにより、ターゲットの発熱が抑えられるので、長時間の使用でも安定して中性子を発生することができる。
【0024】
次の本発明に係るターゲットは、前記ターゲットにおいて、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する前記リブ以外の前記ターゲットの最大厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする。
【0025】
このように、リブ以外のターゲットの最大厚さを陽子の停止距離よりも小さくしたので、中性子を発生させるために照射される陽子は、少なくともターゲットのリブ以外の部分では透過する。なお、前記リブにおいては陽子が停止して発熱することもあるが、複数のリブによって仕切られる冷却通路に冷却媒体を流すことにより、リブの両側面を冷却媒体が流れて前記リブは冷却される。これにより、ターゲットの発熱が抑えられるので、長時間の使用でも安定して中性子を発生することができる。
【0026】
次の本発明に係るターゲットは、前記ターゲットにおいて、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とする。
【0027】
このような構成により、陽子照射領域内におけるターゲットの発熱密度分布を均一化できるので、ターゲットの熱歪を抑制して、ターゲットの耐久性を向上させることができる。これにより、このターゲットは陽子を長時間照射されても、安定して中性子を発生することができる。
【0028】
次の本発明に係るターゲットは、前記ターゲットにおいて、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、少なくとも前記陽子の進行方向に対する前記リブ以外の部分での前記ターゲットの厚さが大きくなることを特徴とする。
【0029】
このような構成により、陽子照射領域内におけるターゲットの発熱密度分布を均一化できるので、ターゲットの熱歪を抑制して、ターゲットの耐久性を向上させることができる。これにより、このターゲットは陽子を長時間照射されても、安定して中性子を発生することができる。
【0030】
次の本発明に係るターゲットは、加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくするとともに、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とする。
【0031】
このような構成により、ターゲットの最大厚さを陽子の停止距離よりも小さくしたので、中性子を発生させるために照射される陽子はターゲットを透過するとともに、陽子照射領域内におけるターゲットの発熱分布を均一化できる。これにより、ターゲットの熱歪を抑制して、ターゲットの耐久性を向上させることができる。その結果、このターゲットは陽子を長時間照射されても、安定して中性子を発生することができる。
【0032】
次の本発明に係る中性子照射システムは、高エネルギーの陽子が照射されるターゲットと、前記陽子の照射により前記ターゲットから発生した中性子が導かれ、これを減速する中性子減速部と、(n、xn)反応を生ずる物質で構成され、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍して前記中性子減速部へ導く反射体と、を含んで構成される中性子発生装置と、前記中性子発生装置の前記ターゲットに、加速した陽子を照射する加速器と、を備え、前記中性子発生装置から取り出される熱外中性子を中性子照射対象に照射することを特徴とする。
【0033】
この中性子照射システムは、高エネルギーの陽子(例えば20MeV以上)によって発生した中性子を、(n、xn)反応を生ずる物質により反射するとともに増倍して減速するので、BNCTに適した熱外中性子を効率よく照射することができる。
【0034】
次の本発明に係る中性子照射システムは、前記中性子照射システムにおいて、前記ターゲットに陽子が照射される面とは反対面に、冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とする。
【0035】
このように、ターゲットの冷却に噴射冷却を用いるので、ターゲットを効率よく冷却することができる。その結果、長時間にわたって陽子を照射した場合でも、ターゲットの昇温を抑えて、安定して、かつ効率よくBNCTに適した熱外中性子を照射することができる。
【0036】
次の本発明に係る中性子照射システムは、前記中性子照射システムにおいて、前記ターゲットは、前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブが設けられ、この複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とする。
【0037】
この中性子照射システムは、ターゲットに設けたリブにより仕切られる冷却流路に冷却媒体を流すことでターゲットを効率よく冷却する。その結果、長時間にわたってこのターゲットに陽子を照射した場合でも、昇温を抑え、安定して中性子を発生することができる。
【0038】
次の本発明に係る中性子照射システムは、前記中性子照射システムにおいて、さらに、前記陽子からなる陽子線の断面積を拡大して前記ターゲットに照射する陽子線拡大手段を含んで構成されることを特徴とする。
【0039】
この中性子照射システムは、陽子線の断面積を広げてターゲットに照射するので、ターゲットの単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。その結果、陽子を長時間照射しても、安定して効率よくBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、BNCTに適した中性子を効率的に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0042】
実施例1に係る中性子発生装置は、BNCTに用いるものであり、加速器により20MeV以上に加速された陽子をターゲットに衝突させたときに得られる中性子を、(n、xn)反応を生ずる物質を反射体として用いて反射するとともに増幅し、中性子減速部で減速して熱外中性子を取り出す点に特徴がある。
【0043】
図1は、実施例1に係る中性子発生装置を含む中性子照射システム示す全体図である。この中性子照射システム200は、加速器2と、実施例1に係る中性子発生装置100とを含んで構成される。加速器2から中性子発生装置100へ陽子が照射されると、中性子発生装置100はBNCT治療室4の方向へ熱外中性子を発生する。BNCT治療室4内にはBNCTを受ける患者がおり、前記熱外中性子は患者の患部へ照射される。ここで、患部はホウ素化合物の集まった癌細胞であり、中性子照射対象である。加速器2は、例えばサイクロトロン等を使用することができ、実施例1ではサイクロトロンを用いる。
【0044】
次に、実施例1に係る中性子発生装置100について説明する。図2は、実施例1に係る中性子発生装置を示す説明図である。なお、図面中の符号p(小文字)は陽子を、n(小文字)は中性子を表す(以下同様)。この中性子発生装置100は、ターゲット1と、中性子減速部3と、反射体5とを含んで構成される。ターゲット1、中性子減速部3、及び反射体5は、中性子減速材9a及び中性子遮蔽体9b内に配置されており、中性子発生装置100の外部に漏れる中性子量を極小にするように構成される。ここで、中性子減速材9aは、例えばポリエチレンのような高分子で構成されており、中性子減速体9bは、例えばコンクリートにより構成される。また、中性子減速材9aの外側には、減速された熱中性子を吸収するためにLi層9dが配置される。
【0045】
ターゲット1は、タンタル(Ta)やタングステン(W)等の重核核種である。加速器2によって加速された陽子は、真空の陽子通路8を通ってターゲット1へ照射されて、ターゲット1から中性子が発生する。発生した中性子は中性子減速部3へ導かれ、ここで減速されてエネルギーが4eV〜40keV程度の熱外中性子となる。この熱外中性子は、患部以外の部分へ照射される量をできるだけ低減するため、コリメータ7によって絞られるとともに中性子の方向を定められ、照射対象の癌細胞へ照射される。
【0046】
前記中性子減速部3は、例えば、鉄(Fe)3aとフッ素化合物3fとから構成することができる。そして、ターゲット1から発生した中性子は、鉄3a、次いでフッ素化合物3fにより減速されて、熱外中性子となる。フッ素化合物3fとしては、例えば、AlF3(69重量%)−Al(30重量%)−LiF(1重量%)を用いることができる(Liの組成は限定されない)。この中性子減速部3により、ターゲット1で発生した中性子から、高い熱外中性子束を取り出すことができる。なお、ターゲット1から発生するγ線やその他の部分から発生する2次γ線を遮蔽する目的で、中性子減速部3の熱外中性子出射側にはビスマス(Bi)層9cが配置されている。
【0047】
実施例1において、中性子減速部3へ導かれる中性子は、陽子の進行方向(陽子線の方向)Xに対して90度近傍、あるいは90度近傍よりも大きい角度の方向に発生する中性子とすることが好ましい。この理由について説明する。図3−1は、減速材出口での陽子の進行方向Zと中性子の発生方向との関係を示す概念図である。図3−2は、中性子の収率と中性子のエネルギーとの関係を、ターゲットから発生した中性子の発生方向をパラメータとして表した説明図である。ターゲット1から発生した中性子の発生方向(中性子線の方向)は、陽子の進行方向Zに対する傾き角度で表す(図3−1参照)。なお、陽子の進行方向Zが0度を意味する。
【0048】
図3−2から分かるように、107eV程度の高いエネルギーを持つ高速中性子の収率は、陽子の進行方向Zに対して傾き角度が90度近傍に発生する中性子が最も少ない(図3−2中、Aで示す部分)。したがって、前記傾き角度が90度近傍に発生する中性子を中性子減速部3へ導けば、中性子発生装置100からBNCT治療室4側へ透過する高速中性子の量を低減することができるので、BNCTに際して有利となる。
【0049】
前記高速中性子の透過量を低減するため、中性子減速部3へ導くための中性子を取得する方向は、ターゲット1から発生した中性子の発生方向と陽子の進行方向Zとの傾き角度は、90度−0、+90度内が好ましい。また、図3−1に示すように、ターゲット1は、陽子の進行方向Zに直交する方向に対して傾けて配置することが好ましい。これは、ターゲット1からの高速中性子の含有率を低下させるともに、陽子線に対するターゲット1の照射面積を増加させ、ターゲット1の熱負荷を下げるためである。
【0050】
すなわち、ターゲット1が陽子の進行方向Zに直交して配置されていると、陽子の進行方向Zに対して傾き角度が90度近傍に発生する中性子は、中性子減速部3へ到達するまでにターゲット1中を進行して減衰する。その結果、熱外中性子として取り出すことのできる中性子数が低減するからである。ターゲット1を陽子の進行方向Zに直交する方向に対して傾けて配置すれば、中性子がターゲット1中を進む距離を短くできるので、それだけ効率よく中性子減速部3へ発生した中性子を導くことができる。
【0051】
また、ターゲット1が陽子の進行方向Zに直交して配置されていると、陽子がターゲットに衝突したときの形状は略円形であるが、陽子の進行方向Zに直交する方向に対して傾けてターゲット1を配置すると、陽子がターゲットに衝突したときの形状は楕円形になる。これにより、陽子がターゲット1に衝突したときの面積を大きくできるので、ターゲット1の発熱密度を低くできる。その結果、例えば同じ冷却能の冷却媒体を用いれば、ターゲット1の冷却がより容易になる。
【0052】
したがって、上記観点からは、ターゲット1は、陽子の進行方向Zに対して傾けて配置することが好ましい。しかし、ターゲット傾き角度βが大きくなると、ターゲット1内を進行する陽子の距離が大きくなり、陽子がターゲット1中で完全停止してしまうおそれがある。陽子がターゲット1中で完全停止すると、ターゲット1の発熱量が極めて大きくなるため、ターゲット傾き角度βは陽子の完全停止距離tcよりも小さくする必要がある。したがって、陽子の進行方向Zに対するターゲット厚さtpは(=t/cosβ)<tcの関係を満たす。
【0053】
ターゲット1から発生した中性子は中性子減速部3の方向のみならず、ターゲット1に陽子が照射される部分を中心として360度すべての方向へ向かう。このため、ターゲット1から発生した中性子をより効率的に中性子減速部3へ導くため、ターゲット1は反射体5の内部に配置される。実施例1において、反射体5は、中性子を反射する際に(n、xn)反応を生ずる物質で構成される。(n、xn)反応を生ずる物質は、重核種であるとともに、中性子の照射により分裂反応を起こさない核種を含む物質であることが必要で、例えば、鉛(Pb)や鉄(Fe)等を用いることができる。特に、鉛はγ線の遮蔽機能も備えているので、鉛を反射体5に使用すれば、ターゲット1へ陽子が衝突した際に僅かながら発生するγ線を遮蔽することもでき、好ましい。
【0054】
このような物質で構成される反射体5は、高エネルギーの陽子をターゲット1に照射することにより得られた中性子を反射する際に、単に中性子を反射するのみでなく、1個の中性子を反射するとともに、x個の中性子を新たに発生する。すなわち、反射体5は、ターゲット1で発生した中性子を反射するのみならず、前記中性子を増倍させることができる。その結果、実施例1に係る中性子発生装置100は、より多くの中性子を中性子減速部3へ導いて、高い中性子束で熱外中性子を発生させることができる。
【0055】
ここで、高エネルギーの陽子とは、20MeV以上500MeV以下に加速された陽子をいう。そして、このような陽子をターゲット1に照射して得られる中性子が(n、xn)反応を生ずる物質へ入射したときに、(n、xn)反応が生ずる。このように、実施例1に係る中性子発生装置では、高エネルギーの陽子をターゲット1に照射して中性子を発生させるとともに、(n、xn)反応を生ずる反射体5を用いて、発生した中性子を増倍させる。これにより、中性子減速部3から出射する熱外中性子の量を、(n、xn)反応を生じない反射体を用いた場合と比較して1桁程度多くすることができる。その結果、より多くの中性子を中性子減速部3へ導くことができるので、効率的に熱外中性子を得ることができる。
【0056】
陽子の照射を受けるターゲット1は、そのエネルギーにより温度が上昇する。このため、中性子発生装置100の稼動中においては、水(H2O)や液体金属(例えば水銀(Hg))等の冷却媒体によりターゲット1を冷却する。実施例1の中性子発生装置100では、加速器2により加速された陽子がターゲット1に照射される面とは反対側の面から、ターゲット1を冷却する。より具体的には、ターゲット1の陽子照射面1pの反対側に設けられる伝熱面1hに冷却媒体を接触させて、ターゲット1を冷却する。昇温した冷却媒体は、中性子発生装置100の外へ取り出された後、熱交換器50により温度を下げられて、ポンプ52により再びターゲット1へ送られる。
【0057】
図4−1は、実施例1に係るターゲットを示す断面図である。図4−2は、実施例1に係るターゲットを示す平面図である。図4−1の点線は、加速器2から照射される陽子の進行方向に垂直な断面における、前記陽子の強度分布を示している。このように、加速器2から照射される陽子の強度は、ターゲット1の場所によって異なる。このため、ターゲット1の陽子照射面1pにおいて、陽子の強度が強くなる部分(図4−1、図4−2中Hで示す部分)は、それだけターゲット1の発熱量が大きくなる。そして、陽子の強度が弱くなる部分(図4−1、図4−2中Lで示す部分)は、前記部分と比較してターゲット1の発熱量が小さくなる。すなわち、加速器2から照射される陽子の強度が強くなるにしたがってターゲット1の発熱量が大きくなり、前記陽子の強度が弱くなるにしたがってターゲット1の発熱量が小さくなる。なお、陽子の強度とは、単位面積、単位時間当たりに到達する陽子数をいう。
【0058】
ここで、陽子が衝突したターゲット1の発熱について説明する。図5−1は、ターゲットの発熱密度とターゲットの厚さとの関係を示す説明図である。図5−2は、ターゲットの厚さをパラメータとした場合における中性子の収率とエネルギーとの関係を示す説明図である。ターゲット1に衝突した陽子は、ターゲット1の内部を進行する過程でターゲット1にエネルギーを与え、これによりターゲット1は発熱する。
【0059】
陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが所定の閾値tc(タンタルの場合、約2.8mm)よりも小さい場合、ターゲット1に衝突した陽子は、ターゲット1を透過して陽子の衝突面とは反対側の面からターゲット1の外へ出射する。そして、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが所定の閾値tcになると、ターゲット1に衝突した陽子は、ターゲット1内で停止する。この閾値tcを、陽子の飛程という。なお、図4−1に示す例においては、陽子の進行方向Zに対してターゲット1の陽子照射面1pは直交しているので、ターゲット1の実厚さtと陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpとは一致する。
【0060】
陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが前記閾値tcを超えると、陽子はターゲット1内で停止する。そして、陽子の全エネルギーはターゲット1に与えられるので、ターゲット1の発熱は大きくなる。図5−1に示すように、ターゲットの発熱密度は、ターゲット1の陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが前記閾値tcに近づくにしたがって急激に上昇することが分かる。なお、図5−1のデータは、タンタルをターゲット1として用いたものであるが、タングステンをターゲットに用いても同様の結果を示す。
【0061】
このように、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが所定の閾値tcを超えると、ターゲット1に照射された陽子はターゲット1内で停止する結果、ターゲット1の発熱量が極めて増大する。この発熱の増大は、ブラッグピークと呼ばれる。このブラッグピークを避けるため、実施例1の中性子発生装置100で用いるターゲット1は、図4−1に示すように、ターゲット1に陽子が照射される領域内において、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpが最も大きい部分を、前記閾値tcよりも小さくしてある。図4−1に示すターゲット1では、ターゲット1の端縁部の厚さが最も大きいが、この部分の厚さtpmaxをtcよりも小さくする。
【0062】
このような構成により、ターゲット1に衝突した陽子を透過させ、ターゲット1内で陽子が停止することを防止する。そして、ターゲット1から出射した陽子は、出射面(伝熱面1h)を流れる冷却媒体により冷却して、ターゲット1の発熱を抑制する。これにより、ターゲット1の耐久性を向上させることができる。なお、図5−2に示すように、陽子をターゲット1内で停止させた場合と透過させた場合とでは、発生する中性子数にほとんど変化はない。なお、図5−2のデータは、タングステンをターゲットとして用いたものであるが、タンタルをターゲットに用いても同様の結果を示す。
【0063】
また、図4−1に示すように、ターゲット1の陽子照射面1pにおいて、陽子の強度が強くなる部分(図4−1中Hで示す部分)のターゲット1の実厚さtHを、陽子の強度が弱くなる部分(図4−1中Lで示す部分)の実厚さtLよりも薄くする。すなわち、陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtp(この例では実厚さt)を厚くする。
【0064】
例えば、実施例1のターゲット1では、tH=<tLとする。そして、tHからtLに向かっては、陽子の強度に反比例させてターゲット1の実厚さtを変化させたり、2次、3次、あるいはそれ以上の次数の多項式で近似した曲線で伝熱面1hを形成したりする。このような構成によって、ターゲット1の陽子照射面1pにおける陽子照射領域内の発熱分布を均一化できる。その結果、ターゲット1の熱歪を抑制して、ターゲット1の耐久性を向上させることができる。これにより、陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置100から熱外中性子を取り出すことができる。なお、実施例1に係る中性子発生装置100は、厚さが一定のターゲットを用いることを排除するものではない。
【0065】
ここで、中性子の発生効率という観点からは、陽子がターゲット1通過する距離を2.0〜2.2mm程度とするようにターゲット1の実厚さtを決定することが好ましい。なお、タンタルやタングステンをターゲット1として用いる場合、陽子がターゲット1を通過する距離が2.0〜2.2mm程度の場合に、ターゲット1からは最も効率よく中性子が発生する。
【0066】
図6−1、図6−2は、実施例1に係るターゲットの他の例を示す断面図である。図6−1に示すターゲット1では、ターゲット1の伝熱面1h側を凹状に形成することによって、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtp(この例ではターゲットの実厚さt)を、陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって厚くしている。しかし、図6−1に示すように、陽子照射面1p側を凹状に形成してもよいし、図6−2に示すように、陽子照射面1p及び伝熱面1hの両方を凹状に形成してもよい。
【0067】
図6−3〜図6−5は、陽子が照射される領域を拡大する例を示す説明図である。例えば、加速器2の陽子出射部分で陽子の進行方向(Z軸とする)に対して垂直な方向(X軸又はY軸)に磁界又は電界をかければ、陽子の進行方向を変化させることができる。例えば、図6−3に示すように、水平及び垂直ワブラー電磁石(Wobbler Magnet;以下ワブラー電磁石60という)とで陽子線Bp1をスイープすることによって、ターゲットに照射される陽子線Bp1の断面積を拡大することができる。この方法はワブラー(Wobbler)法と呼ばれ、高エネルギーの陽子の場合には、ワブラー電磁石60と、鉛等の重金属で作られる板からなる散乱体を用いる方法がある。
【0068】
ワブラー法では、陽子線を平行にスイープしてその断面積を拡大する他(図6−3、矢印J1)、コントローラ61によりワブラー電磁石60の振幅を連続的に変化させ、陽子線Bp1をらせん状にスイープしてその断面積を拡大する方法(図6−4、矢印J2)がある。これらの方法により、陽子線Bp1単体での断面積(図6−3等の領域70)を拡大して(図6−3の領域71)、ターゲットに照射することができる。
【0069】
また、図6−5に示すように、4重極電磁石(以下Qマグネット:Quadruple Magnet)62を用いる方法もある。Qマグネットは、陽子線Bp1の進行方向をZ方向としたときに、X方向に収束作用(凸レンズ)があるものは、Y方向には発散作用(凹レンズ)があり、逆にX方向に発散作用があるものは、Y方向に収束作用がある。焦点距離が同じ凹凸光学レンズを組み合わせると弱い収束レンズとなるように、凹凸のQマグネット62を組み合わせて用いることにより、X−Y両方向に収束作用を与えることができる。このQマグネット62により、オーバーフォーカスさせることで、図6−5に示すように、陽子線Bp1を適度に広げて照射することができる(図6−5中の照射領域72)。上記の方法により、陽子線Bp1の断面積を広げてターゲット1に照射して、ターゲット1の単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。その結果、陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置100から熱外中性子を取り出すことができる。
【0070】
図7−1は、ターゲットが陽子の進行方向に直交する方向に対して傾いている場合を説明する断面図である。図7−2は、図7−1に示すB領域の拡大図である。ターゲット1が陽子の進行方向Zに直交する方向に対してターゲット傾き角度βだけ傾いている場合、ターゲット1の実厚tさと、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtpとは異なる。より具体的には、tp=t/cosβとなる。したがって、ターゲット1が陽子の進行方向Zに対して直交するターゲット傾き角度βだけ傾いている場合には、陽子の進行方向に対するターゲット厚さtp、すなわちt/cosβが上述した関係を満たすように、ターゲット1の実厚さtを決定する。
【0071】
[評価例]
表1に、実施例1に係る中性子発生装置100の中性子減速部3の出口における中性子強度の分布を評価した一例を示す。この評価は、中性子減速部3を3次元モデル化し、50MeV、300μAで加速した陽子をタンタルのターゲットに照射した場合を想定して、中性子減速部3の出口における中性子スペクトルをモンテカルロシミュレーションにより求めたものである。ここで、1時間のBNCTを想定すると、1.00×109(n/cm2/sec.)程度の中性子束が必要である。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から分かるように、エネルギーが4eV〜40eVでの中性子の中性子束割合が全体の約90%である中性子束が、1.8×109(n/cm2/sec.)得られた。このように、実施例1の中性子発生装置100によれば、BNCTに適した熱外中性子が9割程度得られることが分かった。これにより、実施例1に係る中性子発生装置100及びこれを備える中性子照射システム200(図1参照)を用いれば、BNCTに適した熱外中性子が効率よく得られるので、効率のよいBNCTが実現できる。また、この程度のエネルギー及び中性子束の熱外中性子を得ることができれば、脳の深部約8cm程度まで、治療が可能となる。その結果、従来であれば開頭手術が必要な場合でも、これが不要になる可能性が高い。
【0074】
(変形例)
実施例1の変形例に係る中性子発生装置は、実施例1に係る中性子発生装置と略同様の構成であるが、陽子照射面の反対面に、隔壁で仕切られた冷却流路を備えるターゲットを用いるとともに、ブロードビームの陽子ビームをターゲットに照射する点が異なる。他の構成は実施例1と同様なのでその説明を省略するとともに、同一の構成に対しては同一の符号を付す。なお、この変形例において、中性子照射システムについては説明しないが、実施例1に係る中性子照射システム200(図1参照)が備える放射性発生装置を、この変形例に係る中性子発生装置に置換できることはいうまでもない。
【0075】
図8は、実施例1の変形例に係るターゲット及び冷却系を示す説明図である。図9−1は、図8のX−X断面図である。図9−2は、図8のY−Y断面図である。図10−1は、実施例1の変形例に係るターゲットを示す平面図である。図10−2は、図10−1のZ−Z断面図である。図8に示すように、ターゲット1aは、タンタルで製造されるとともに、バックプレート30に取り付けられて陽子通路8の一端に支持される。また、ターゲット1aは、中性子発生装置内へ、陽子の進行方向Zに直行する方向に対して傾けて配置される(この変形例では45度)。このため、ターゲット1aの平面形状は、図10−1に示すように、楕円形状となっている。
【0076】
図8に示すように、ターゲット1aには、上述したワブラー電磁石60により、陽子線Bp1の断面積が拡大された陽子線Bp2が照射される。陽子線Bp1の直径dは数mm程度であるが、陽子線Bp2の直径Dは、ワブラー電磁石60によって拡大される(この例の場合、直径8cm)。ワブラー電磁石60は、コントローラ61により制御される。このように、陽子線Bp1の断面積を広げてターゲット1aに照射するので、ターゲット1aの単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。その結果、陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置から熱外中性子を取り出すことができる。
【0077】
図10−1、図10−2に示すように、ターゲット1aの陽子照射面に対する反対側の面には、複数のリブ41が設けられている。リブ41は、例えば、タンタルの板を切削加工することにより、ターゲット1aと一体で製造される。上述したように、ターゲット1aは楕円形状であり、リブ41は、楕円の長辺と平行に形成されている。図10−2に示すように、ターゲット1aの厚さtは、陽子の飛程tpと、tp=t/cosβ(図7−1、図7−2)の関係にある。この変形例において、ターゲット傾き角度βは45度であり、また、tpを2.6mm(ブラッグピークを避けるための大きさ;図5−1参照)とすると、tは1.8mm程度になる。また、リブ41の幅Wと、高さhとは、ターゲット1aの強度や発熱等を考慮して決定される。
【0078】
図8に示すように、バックプレート30と、ターゲット1aに陽子が照射される面の反対側の面との間には空間が形成される。そして、図10−1、図10−2に示すように、ターゲット1aに設けられる前記リブ41で仕切られる前記空間が、それぞれ冷却通路40となる。この冷却通路40に冷却媒体(この例では水)が流れることによって、ターゲット1aが冷却される。また、リブ41により、ターゲット1a全体の強度を向上させることができる。
【0079】
図8に示すように、バックプレート30の内部には、冷却媒体を貯留して分配する第1ヘッダ31、及び、冷却流路40を通過した冷却媒体を貯留してバックプレート30内から排出するための第2ヘッダ32が設けられている。図8、図10−1に示すように、第1ヘッダ31には、冷却媒体供給管33が接続されており、ここから冷却媒体が第1ヘッダ31へ供給される。第1ヘッダ31へ供給された冷却媒体は、第1ヘッダ31に設けられた各分配孔31nから各冷却通路40へ流入して、ターゲット1aを、その陽子照射面とは反対側の面から冷却する。ターゲット1を冷却した後の冷却媒体は、第2ヘッダ32へ流れ込み、ここに取り付けられる冷却媒体排出管34からバックププレート30の外に取り出される。
【0080】
実施例1の変形例に係る中性子発生装置が備えるターゲット1aを評価した。評価は、冷却流路41を含む冷却部を簡易流動解析して、ターゲット1aの温度分布及び応力を求めた。その結果、中性子発生装置によれば、ターゲット1aの温度、熱応力及び冷却媒体の圧力に対する応力いずれも十分に余裕があることが分かった。このように、ターゲット1aに照射する陽子線の断面積を広げるとともに、ターゲット1aに設けた冷却流路により積極的にターゲット1aを冷却することにより、ターゲット1aの単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。そして、ターゲット1aに陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置から熱外中性子を取り出すことができる。
【0081】
以上、実施例1及びその変形例によれば、高エネルギーの陽子によって発生した中性子を、(n、xn)反応を生ずる物質により反射するとともに増倍して減速するので、効率よくBNCTに適した熱外中性子を得ることができる。また、実施例1に係るターゲットは、最大厚さを陽子の停止距離よりも小さくしたので、ターゲットの発熱を抑えて長時間の使用でも安定して中性子を発生することができる。
【0082】
また、実施例1では、ターゲットに照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、ターゲットの厚さが大きくなるようにしてある。これにより、陽子照射領域内におけるターゲットの発熱分布を均一化できるので、ターゲットの熱歪を抑制して、ターゲットの耐久性を向上させることができる。これにより、陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置からBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【0083】
さらに、実施例1の変形例では、ターゲットに照射する陽子線の断面積を広げるとともに、ターゲットに設けた冷却流路により積極的にターゲットを冷却することにより、ターゲットの単位面積当たりにおける熱負荷を低減することができる。これにより、ターゲットに陽子を長時間照射しても、安定して中性子発生装置から熱外中性子を取り出すことができる。なお、実施例1で開示した構成は、以下の実施例に対しても適宜適用でき、また、実施例1及びその変形例に開示した構成と同一の構成を備えていれば、実施例1及びその変形例と同様の作用・効果を奏する。
【実施例2】
【0084】
実施例2に係る中性子発生装置101は、実施例1に係る中性子発生装置100(図2参照)と略同一の構成であるが、ターゲットの冷却に噴射冷却を利用する点が異なる。その他の構成は実施の形態1と同様なのでその説明を省略するとともに、同一の構成要素には同一の符号を付する。なお、実施例2において、中性子照射システムについては説明しないが、実施例1に係る中性子照射システム200(図1参照)が備える放射性発生装置を、実施例2に係る中性子発生装置101に置換できることはいうまでもない。
【0085】
図11は、実施例2に係る中性子発生装置を示す説明図である。図11に示すように、ターゲット1は、中性子発生装置101内へ、陽子の進行方向に直行する方向に対して傾けて配置される。なお、ターゲット1は、厚さが一定のものを用いてもよい。この構成は実施例1に係る中性子発生装置100(図2参照)と同様である。陽子の衝突により発熱したターゲット1は、陽子が照射される面の反対側の面から冷却媒体が噴射されて冷却される。ターゲット1を冷却した冷却媒体は、熱交換器50で冷却されて、ポンプ52により再びターゲット1の冷却に用いられる。次にターゲット1の冷却手段について説明する。
【0086】
図12−1、図12−2は、実施例2に係る中性子発生装置が備えるターゲットの冷却手段を示す断面図である。この中性子発生装置101のターゲット1が備える冷却手段10は、導管11によって冷却媒体を導き、ターゲット1の伝熱面1hへ噴射するものである。冷却媒体を噴射する部分は、伝熱面1hの中心C近傍であり、この反対側は、照射される陽子の強度が最も大きい部分である。すなわち、ターゲット1の発熱量が最も多い部分へ冷却媒体を噴射する。これにより、ターゲット1を効率的に冷却することができる。ターゲット1の伝熱面1hへ衝突した冷却媒体は、冷却媒体ガイド12と伝熱面1hとの間の冷却媒体通路13を流れる。その過程で、冷却媒体はターゲット1全体を冷却する。
【0087】
図12−2に示すように、冷却媒体ガイド12とターゲット1の伝熱面1hとの間隔sは、冷却媒体通路13の入口13iから出口13oに向かって小さくなるように形成される(si>sr>so)。伝熱面1hへ噴射された冷却媒体は、冷却媒体通路13の入口13iから出口13oに向かって放射状へ流れるため、前記間隔sが一定だと冷却媒体の流速が低下して伝熱効率が低下する。このため、上記構成によって、冷却媒体の流速低下を抑制して、伝熱効率の低下を抑制する。
【0088】
前記間隔sは、半径rが異なるそれぞれの位置において、冷却媒体通路13の通路断面積が略等しくなるように構成することが好ましい。すなわち、2×π×ro×so≒2×π×r×sr≒2×π×ri×siとなるように構成することが好ましい。このようにすれば、冷却媒体通路13の全領域にわたって、冷却媒体の流速を略一定にできる。なお、冷却媒体の昇温や、冷却媒体通路13内の圧力損失等を考慮して、半径rが異なるそれぞれの位置において、冷却媒体通路13の通路断面積が変化するように構成してもよい。
【0089】
実施例2に係るターゲット1が備える冷却手段10によれば、ターゲット1の発熱量が最も多い部分へ冷却媒体を噴射するので、この部分を効率的に冷却することができる。また、噴射冷却を利用するので、強制対流熱伝達と比較して高い伝熱効率を得ることができる。これらの作用により、ターゲット1を効率よく冷却することができる。また、冷却媒体通路13を流れる冷却媒体の流速低下を抑制できるので、ターゲット1全体を効率よく冷却できる。その結果、長時間にわたって陽子を照射した場合でも、ターゲット1の昇温を抑えて安定して中性子発生装置101から熱外中性子を取り出すことができる。
【0090】
[変形例]
図13−1は、実施例2の変形例に係るターゲットの冷却手段を示す説明図である。図13−2は、図13−1を矢印D方向から見た平面図である。図13−3は、ターゲットの伝熱面に衝突する冷却媒体を示す説明図である。この変形例に係るターゲット1が備える冷却手段10aは、ターゲット1の中心軸Ztに対して冷却手段10aが可動する構成になっており、導管11から噴射される冷却媒体の噴射中心をターゲット1の伝熱面1hに対して変化できるように構成される点に特徴がある。図13−1に示すように、冷却手段10aの中心軸Zcは、ターゲット1の中心軸Zcに対してΔr離れて配置されている。
【0091】
図13−2に示すように、冷却手段10aの中心軸Zcはターゲット1の中心軸Ztの周囲を旋回する。これにより、冷却手段10aは、ターゲット1の中心軸Ztの周囲を旋回運動するので、導管11から噴射される冷却媒体の噴射中心(冷却手段10aの中心軸Zcと一致)は常に変動する。冷却媒体の噴射中心が、常に伝熱面1hの同じ場所に位置すると、図13−3に示すように、伝熱面1hには冷却媒体Jのよどみ点Stが生ずることがある。よどみ点Stでは、伝熱効率が低下するので、この部分が昇温する危険性がある。
【0092】
この変形例に係るターゲットの冷却手段10aでは、冷却媒体の噴射中心がターゲット1の伝熱面1hに対して常に変化するので、前記伝熱面1hへのよどみ点Stの発生を抑制することができる。これにより、ターゲット1の局所的な昇温を抑えることができるので、このターゲット1を備える中性子発生装置101は、長時間の運転でも安定して熱外中性子を発生することができる。次に、冷却媒体の噴射中心を変化させる構成についてより詳細に説明する。
【0093】
図14−1は、実施例2の変形例に係るターゲットの冷却手段を示す説明図である。図14−2は、実施例2の変形例に係る回転体を陽子の照射方向から見た平面図である。この冷却手段10aは、本体15と、回転体20とで構成される。本体15の内部には導管11が形成される。また、本体15の導管出口11oが開口する面には、冷却媒体ガイド12が形成される。冷却媒体ガイド12が形成される面の反対側には突起部14が設けられる。この突起部14は、冷却手段10aの中心軸Zcを中心とする円柱である。
【0094】
回転体20には凹部21が形成されており、冷却手段10aの中心軸Zcを中心としている。この凹部21の、回転体20の中心軸に垂直な断面内形状は円形であり、本体に設けられる突起部14がこの凹部21へはめ込まれる。凹部21の中心は、冷却手段10aの中心軸Zcと一致している。すなわち、円柱で構成された前記突起部14の中心とも一致している。このため、突起部14を凹部21へはめ込むと、突起部14は凹部21内を自由に回転でき、本体15は回転体20に対して冷却手段10aの中心軸Zcを中心として自由に回転できる。
【0095】
回転体20の凹部21が形成された側とは反対側には、回転軸22が設けられる。図14−2に示すように、この回転軸22は、その回転中心Zrが冷却手段10aの中心軸Zcに対してオフセットして設けられる。回転軸22はベルト23を介して、駆動手段であるモータ24によって回転させられる。これにより、回転体20は、回転軸22の回転中心Zrを中心に偏心して回転するので、回転体20に取り付けられた本体15も回転体20とともに偏心して回転する。すなわち、冷却手段10aの中心軸Zcは、回転軸22の回転中心Zrの周囲を回転することになる。
【0096】
ここで、導管11から噴射される冷却媒体の噴射中心は、冷却手段10aの中心軸Zcと一致するので、冷却媒体の噴射中心も回転中心Zrの周囲を回転することになる。これにより、冷却媒体の噴射中心をターゲット1の伝熱面1hに対して常に変化させることができるので、前記伝熱面1hへのよどみ点Stの発生を抑制することができる。その結果、ターゲット1の局所的な昇温を抑えて、安定して中性子発生装置101を運転することができる。
【0097】
以上、実施例2及びその変形例によれば、ターゲットを噴射冷却により冷却するので、強制対流熱伝達と比較して高い伝熱効率を得ることができる。また、ターゲットの発熱量が最も多い部分へ冷却媒体を噴射するので、この部分を効率的に冷却することができる。これらの作用により、ターゲットを効率よく冷却することができる。また、冷却媒体通路を流れる冷却媒体の流速低下を抑制できるので、ターゲット全体を効率よく冷却できる。その結果、長時間にわたって陽子を照射した場合でも、ターゲットの昇温を抑えて、中性子発生装置から安定してBNCTに適した熱外中性子を取り出すことができる。
【0098】
なお、実施例2及びその変形例に係る冷却手段は、中性子発生手段に関わらず適用することができる。実施例2では、20MeV以上の高エネルギーの陽子をタンタルやタングステンのターゲットへ照射することによって中性子を発生させる。しかし、これに限られず、2.5MeV程度の低エネルギー陽子をLiのターゲットに照射して中性子を発生させる場合にも、実施例2及びその変形例に係る冷却手段を適用することができる。低エネルギー陽子をLiに照射する場合、電流値は25mA程度必要になるので、ターゲットの発熱量は高エネルギーの陽子を照射する場合以上になる。このような場合に、実施例2及びその変形例に係る冷却手段を用いれば、ターゲットを効率的に冷却して、長時間の運転でも安定して中性子を取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明に係る中性子発生装置及びターゲット、並びに中性子照射システムは、BNCTに有用であり、特に、BNCTに適した中性子を効率的に発生させることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1に係る中性子発生装置を含む中性子照射システム示す全体図である。
【図2】実施例1に係る中性子発生装置を示す説明図である。
【図3−1】減速材出口での陽子の進行方向と中性子の発生方向との関係を示す概念図である。
【図3−2】中性子の収率と中性子のエネルギーとの関係を、ターゲットから発生した中性子の発生方向をパラメータとして表した説明図である。
【図4−1】実施例1に係るターゲットを示す断面図である。
【図4−2】実施例1に係るターゲットを示す平面図である。
【図5−1】ターゲットの発熱密度とターゲットの厚さとの関係を示す説明図である。
【図5−2】ターゲットの厚さをパラメータとした場合における中性子の収率とエネルギーとの関係を示す説明図である。
【図6−1】実施例1に係るターゲットの他の例を示す断面図である。
【図6−2】実施例1に係るターゲットの他の例を示す断面図である。
【図6−3】陽子が照射される領域を拡大する例を示す説明図である。
【図6−4】陽子が照射される領域を拡大する例を示す説明図である。
【図6−5】陽子が照射される領域を拡大する例を示す説明図である。
【図7−1】ターゲットが陽子の進行方向に直交する方向に対して傾いている場合を説明する断面図である。
【図7−2】図7−1に示すB領域の拡大図である。
【図8】実施例1の変形例に係るターゲット及び冷却系を示す説明図である。
【図9−1】図8のX−X断面図である。
【図9−2】図8のY−Y断面図である。
【図10−1】実施例1の変形例に係るターゲットを示す平面図である。
【図10−2】図10−1のZ−Z断面図である。
【図11】実施例2に係る中性子発生装置を示す説明図である。
【図12−1】実施例2に係る中性子発生装置が備えるターゲットの冷却手段を示す断面図である。
【図12−2】実施例2に係る中性子発生装置が備えるターゲットの冷却手段を示す断面図である。
【図13−1】実施例2の変形例に係るターゲットの冷却手段を示す説明図である。
【図13−2】図13−1を矢印D方向から見た平面図である。
【図13−3】ターゲットの伝熱面に衝突する冷却媒体を示す説明図である。
【図14−1】実施例2の変形例に係るターゲットの冷却手段を示す説明図である。
【図14−2】実施例2の変形例に係る回転体を陽子の照射方向から見た平面図である。
【符号の説明】
【0101】
1、1a ターゲット
1h 伝熱面
1p 陽子照射面
2 加速器
3 中性子減速部
4 治療室
5 反射体
10、10a 冷却手段
11 導管
12 冷却媒体ガイド
13 冷却媒体通路
100、101 中性子発生装置
200 中性子照射システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギーの陽子が照射されて中性子を発生するターゲットと、
前記陽子の照射によって前記ターゲットから発生した中性子を減速する中性子減速部と、
(n、xn)反応を生ずる物質で構成され、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍させて前記中性子減速部へ導く反射体と、
を含んで構成されることを特徴とする中性子発生装置。
【請求項2】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記陽子の進行方向に対する厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項3】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とする請求項2に記載の中性子発生装置。
【請求項4】
前記ターゲットに前記陽子が照射される面とは反対側の面に対して冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中性子発生装置。
【請求項5】
前記ターゲットは、前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブが設けられ、この複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中性子発生装置。
【請求項6】
さらに、前記陽子からなる陽子線の断面積を拡大して前記ターゲットに照射する陽子線拡大手段を含んで構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中性子発生装置。
【請求項7】
加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、
前記陽子が照射される面とは反対側の面に対して冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とするターゲット。
【請求項8】
加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、
前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とするターゲット。
【請求項9】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する前記ターゲットの最大厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする請求項7に記載のターゲット。
【請求項10】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する前記リブ以外の部分での前記ターゲットの最大厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくすることを特徴とする請求項8に記載のターゲット。
【請求項11】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項12】
前記ターゲットに前記陽子が照射される領域は、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、少なくとも前記陽子の進行方向に対する前記リブ以外の部分での前記ターゲットの厚さが大きくなることを特徴とする請求項10に記載のターゲット。
【請求項13】
加速器により加速された陽子が照射されて中性子を発生するターゲットであり、
前記陽子が照射される領域においては、前記陽子の進行方向に対する厚さを前記陽子の停止距離よりも小さくするとともに、前記ターゲットに前記陽子が照射される領域においては、前記加速器から照射される陽子の強度が強い部分から弱い部分に向かって、前記陽子の進行方向に対する厚さが大きくなることを特徴とするターゲット。
【請求項14】
高エネルギーの陽子が照射されるターゲットと、前記陽子の照射により前記ターゲットから発生した中性子が導かれ、これを減速する中性子減速部と、(n、xn)反応を生ずる物質で構成され、前記ターゲットから発生した前記中性子を反射させるとともに増倍して前記中性子減速部へ導く反射体と、を含んで構成される中性子発生装置と、
前記中性子発生装置の前記ターゲットに、加速した陽子を照射する加速器と、を備え、
前記中性子発生装置から取り出される熱外中性子を中性子照射対象に照射することを特徴とする中性子照射システム。
【請求項15】
前記ターゲットに陽子が照射される面とは反対側の面に対して冷却媒体を噴射する噴射冷却手段を備えることを特徴とする請求項14に記載の中性子照射システム。
【請求項16】
前記ターゲットは、前記陽子の照射面とは反体側の面に複数のリブが設けられ、この複数のリブによって仕切られる冷却通路を備えることを特徴とする請求項15に記載の中性子照射システム。
【請求項17】
さらに、前記陽子からなる陽子線の断面積を拡大して前記ターゲットに照射する陽子線拡大手段を含んで構成されることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の中性子照射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【公開番号】特開2006−47115(P2006−47115A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228638(P2004−228638)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月11日 社団法人日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2004年(第42回)春の年会要旨集 第1分冊(総論、放射線工学と加速器・ビーム科学、核融合工学、保健物理と環境科学)」に発表
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】