説明

中性子線発生装置及び中性子線発生方法

【課題】中性子線源におけるホットスポットの発生を抑制することができる中性子線発生装置及び中性子線発生方法を提供する。
【解決手段】
中性子線発生装置1は、固体重金属ターゲットに陽子ビームを照射することで、核破砕反応を起こし、中性子線を発生させる中性子線発生装置であり、陽子ビームを加速する陽子ビーム加速器10と、陽子ビームが照射されることで中性子線を発生する固体重金属ターゲット11と、固体重金属ターゲット11の被照射面に対して陽子ビームを走査照射する陽子ビーム走査部12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核破砕反応により高密度の中性子線を発生させる中性子線発生装置及び中性子線発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線を得る方法として、高エネルギーの粒子線をターゲットに照射することで生じる核破砕反応を利用する方法がある。この方法では、粒子線をターゲットの一部分に集中して照射するため、粒子線の被照射部において発熱が生じる。この発熱はターゲットの損傷又は破壊の原因となるため、ターゲットを冷却する必要がある。
【0003】
このターゲットの冷却方法として、ウラン、タンタル、タングステン等の固体重金属をターゲットとして用いた場合に、当該固体重金属ターゲットの周囲に冷却材を循環させることで冷却を行う方法が知られている。
【0004】
また、別のターゲット冷却方法として、ターゲットに水銀又は鉛ビスマス等の液体金属を利用した方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。この方法では、液体金属ターゲットを循環させながら粒子線を照射するため、当該液体金属ターゲット自身が冷却材としての役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−90500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒子線を一部に集中して照射する場合、粒子線の照射及びターゲットの核破砕反応により、粒子線の照射部においてホットスポットと呼ばれる膨大な発熱が生じる。このホットスポットで発生する熱量は、中性子線の大強度化を目的とする粒子線の高出力化に伴って増加しており、従来の技術では除熱が困難となってきている。また、ホットスポットが発生してしまった場合、以下のような問題が生じる。
【0007】
固体重金属ターゲットを用いた場合の冷却方法では、ホットスポットの発生により、被照射部で固体重金属ターゲットの溶融が生じ、ターゲット自身が破損してしまう。
【0008】
他方、液体金属ターゲットを用いた場合の冷却方法では、ホットスポットの発生により、液体金属ターゲットの温度が上昇してしまい、その液体金属ターゲットによって中性子線発生装置の構造材が腐食されてしまう。また、ホットスポットが発生することにより、粒子線の被照射部とその近傍とで大きな温度差が生じ、被照射部で過大な熱応力が発生する。この熱応力により、被照射部が破損し、液体金属ターゲットが流出してしまう。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる中性子線発生装置及び中性子線発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の中性子線発生装置は、粒子線が照射される被照射面を有し、被照射面に粒子線が照射されることで中性子線を発射する中性子線源と、前記中性子線源の被照射面に粒子線を走査照射する粒子線走査照射手段と、を備える。
【0011】
この態様において、前記粒子線走査照射手段は、加速した粒子線を前記粒子線走査照射手段に対して発射する粒子線加速器の動作と同期して、粒子線を走査照射するように構成されていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記粒子線加速器は、粒子線を通過させ、通過する粒子線を加速するための電極管と、粒子線が前記電極管を通過するタイミングに応じて、当該電極管に対して粒子線を加速するための電圧を印加する駆動回路とを具備しており、前記粒子線走査照射手段は、前記駆動回路の動作と同期して、粒子線を走査照射するように構成されていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記粒子線走査照射手段は、粒子線を偏向することにより、粒子線が前記中性子線源の被照射面を走査照射するように構成されていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記粒子線走査照射手段は、静電偏向又は電磁偏向により、粒子線を偏向するように構成されていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、前記粒子線走査照射手段を複数備え、前記中性子線源が、複数の前記粒子線走査照射手段それぞれに対応する複数の前記被照射面を有しており、粒子線を複数の前記粒子線走査照射手段に分配輸送する粒子線分配輸送手段をさらに備え、前記粒子線分配輸送手段により分配輸送された粒子線が、前記複数の粒子線走査照射手段それぞれから対応する前記被照射面に走査照射された場合に、前記中性子線源から発射される複数の中性子線が同一の中性子線照射対象に照射されるように、前記中性子線源が前記中性子線照射対象に対して配設されていてもよい。
【0016】
また、本発明の位置の態様の中性子線発生方法は、粒子線を中性子線源の被照射面に走査照射する粒子線走査照射ステップと、前記粒子線走査照射ステップによる粒子線の走査照射を受けて、中性子線源より中性子線を発生させる中性子線発生ステップと、を有する。
【0017】
また、上記態様において、前記中性子線源が複数の被照射面を有しており、前記複数の被照射面それぞれに粒子線を走査照射できるよう、粒子線を分配輸送する粒子線分配輸送ステップをさらに有し、前記粒子線走査照射ステップにおいて、前記粒子線分配輸送ステップにより分配輸送された粒子線を前記複数の被照射面それぞれに走査照射し、前記中性子線発生ステップにおいて、前記粒子線走査照射ステップによる前記複数の被照射面それぞれへの粒子線の走査照射を受けて、同一の中性子線照射対象に対して中性子線を発生させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る中性子線発生装置及び中性子線発生方法によれば、中性子線発生源の粒子線の照射によるホットスポットの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1に係る中性子線発生装置の構成を示す模式図。
【図2】実施の形態1に係る中性子線発生装置の陽子ビーム走査部の構成を示す模式図。
【図3】実施の形態2に係る中性子線発生装置の構成を示す模式図。
【図4】実施の形態2に係る中性子線発生装置の陽子ビーム走査部の構成を示す模式図。
【図5】実施の形態2に係る中性子線発生装置の陽子ビーム加速器の概略構成を示す模式図。
【図6】実施の形態2に係る陽子ビーム加速器の構成の一部を示す模式図。
【図7】加速電極管とダミー電極管との間のギャップに電界を形成するための回路を示す模式図。
【図8】実施の形態2に係る陽子ビーム加速器が有する加速制御部の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】スイッチング素子の切替制御を示すタイミングチャート。
【図10】加速電極管とダミー電極間との間のギャップにおける電圧の時間的変化を示すグラフ。
【図11】スイッチング素子のオン/オフ制御を説明するための図。
【図12】陽子ビームの半径方向への縮小の原理を説明する模式図。
【図13】実施の形態3に係る中性子線発生装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る中性子線発生装置1の構成を示す模式図である。中性子線発生装置1は、固体重金属ターゲットに陽子ビームを照射することで、核破砕反応を起こし、中性子線を発生させる中性子線発生装置である。この中性子線発生装置1は、陽子ビームを加速する陽子ビーム加速器10と、陽子ビームが照射されることで中性子線を発生する固体重金属ターゲット11と、固体重金属ターゲット11の被照射面に対して陽子ビームを走査照射する陽子ビーム走査部12と、固体重金属ターゲット11を格納する固体重金属ターゲット容器13と、固体重金属ターゲット容器13に充填され、固体重金属ターゲット11を冷却する冷却水14と、冷却水14を循環させるための冷却水循環ポンプ15と、冷却水14が固体重金属ターゲット11を冷却する際に受ける熱を取り除くための熱交換器16と、冷却水14の温度上昇による体積膨張を吸収するサージタンク17と、陽子ビーム加速器10から発射された陽子ビームを検知し、陽子ビーム加速器10から陽子ビームが発射されたことを示す情報を陽子ビーム走査部12へ送信する陽子ビーム検出器18を備えている。
【0022】
図2は陽子ビーム走査部12の構成を示す模式図である。陽子ビーム走査部12は、陽子ビームを水平方向に偏向する偏向電磁石12aと、陽子ビームを垂直方向に偏向する偏向電磁石12bと、それぞれの偏向電磁石12a,12bに磁界を発生させるための励磁電流を出力する励磁電流電源12c,12dと、励磁電流電源の出力それぞれを独立に制御が可能な励磁電流制御部12eとを備えている。
【0023】
偏向電磁石12a,12bは、それぞれの励磁電流電源12c,12dから励磁電流が入力されることで、磁界を発生させる。それぞれの偏向電磁石12a,12bで発生する磁界の中を陽子ビームが連続的に通過すると、陽子ビームは偏向される。この陽子ビームの偏向方向は、偏向電磁石12a,12bそれぞれから発生している磁界の磁束密度及び磁界の向きによって決まる。磁界の磁束密度及び向きは励磁電流によって決まるため、偏向電磁石12a,12bそれぞれに対応する励磁電流電源12c,12dが出力する励磁電流を、励磁電流制御部12eによって制御することで、陽子ビームの偏向方向を制御することができる。
【0024】
以下、本実施の形態における中性子線発生装置1の動作について説明する。まず、中性子線発生装置1に入射された陽子ビームを、陽子ビーム加速器10によって加速する。加速された陽子ビームは、陽子ビーム走査部12に向けて射出される。ここで、陽子ビーム加速器10から射出された陽子ビームを、陽子ビーム検出器18によって検出する。陽子ビーム検出器18は陽子ビームを検出すると、陽子ビーム加速器10から陽子ビームが発射されたことを示す情報を陽子ビーム走査部12に送信する。当該情報を受信した陽子ビーム走査部12は、励磁電流電源12c,12dからそれぞれに対応する偏向電磁石12a,12bに励磁電流を出力し、磁界を発生させる。磁界が発生している状態で陽子ビーム加速器10によって加速された陽子ビームが陽子ビーム走査部12に入射される。陽子ビーム加速器10から入射された陽子ビームが、陽子ビーム走査部12を通過すると、偏向電磁石12a及び12bで発生している磁界によって陽子ビームが偏向される。ここで陽子ビーム検出器18から陽子ビームが発射されたことを示す情報を受信する毎に、陽子ビーム走査部12は励磁電流制御部12eから励磁電流電源12c,12dそれぞれに制御信号を送信し、励磁電流の出力を徐々に変化させていく。すると、これに伴って陽子ビームの偏向方向が連続的に変化する。以上の動作によって、陽子ビーム加速器10の動作と同期しながら、固体重金属ターゲット11の被照射面に陽子ビームが走査照射される。
【0025】
本実施の形態では、まず、陽子ビーム走査部12から水平方向に1次元的に陽子ビームを走査照射することで走査線を得る。次に、走査線を垂直方向にずらしていくことで、固体重金属ターゲット11に対して2次元的に陽子ビームを走査照射することができる。本実施の形態では、各走査線における陽子ビームの走査方向が走査線毎に逆転するように、陽子ビーム走査部12から陽子ビームを走査照射する。具体例として、水平方向の走査線を垂直方向にずらしていくことで陽子ビームを走査照射する場合の動作を説明する。1番目の走査線では、陽子ビーム走査部12は左から右の方向に陽子ビームを走査照射する。2番目の走査線では、1番目の走査線における終端から直下に移動した点を始端として、陽子ビーム走査部12は1番目の走査線とは逆の右から左の方向に陽子ビームを走査照射する。3番目の走査線では、2番目の走査線における終端から直下に移動した点を始端として、陽子ビーム走査部12は2番目の走査線と逆、すなわち1番目の走査線と同じ方向となる、左から右の方向に陽子ビームを走査照射する。これらの動作を繰り返すことで、陽子ビーム走査部12は固体重金属ターゲット11の被照射面に陽子ビームを走査照射する。
【0026】
このように固体重金属ターゲット11の被照射面を走査照射することで、陽子ビームがターゲットの一部分に集中して照射されることを避けることができ、ホットスポットの発生を防ぐことができる。また、被照射面に陽子ビームを走査照射することから、固体重金属ターゲット11における発熱は被照射面全体で生じる。このため、実際に陽子ビームが照射された面における単位面積当たりの発熱量は、一部に集中して陽子ビームを照射したときと比較して低くなるため、水のような安価で且つ取り扱いの容易な冷却材を利用することも可能となる。
【0027】
なお、本実施の形態における陽子ビーム検出器18は、陽子ビーム加速器10から射出される陽子ビームを検出するように構成されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、陽子ビーム検出器18を陽子ビーム加速器10の前方に設置し、陽子ビーム加速器10に陽子ビームが入射することを検知することで、陽子ビームが陽子ビーム走査部12に入射するタイミングを推定し、そのタイミングを示す情報を陽子ビーム走査部12に送信することで、陽子ビーム加速器10からの陽子ビームの射出と同期するように構成されていてもよい。
【0028】
なお、本実施の形態における上記の走査方式は一例であり、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、被照射面を走査照射することができれば、一般的な走査方式であるラスタースキャン又はラジアルスキャン等の方式を採用してもよい。
【0029】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2に係る中性子線発生装置2の構成図である。中性子線発生装置2は、陽子ビームを加速する陽子ビーム加速器20と、陽子ビームが照射されることで中性子線を発生する固体重金属ターゲット21と、固体重金属ターゲット21の被照射面に対して陽子ビームを走査照射する陽子ビーム走査部22と、固体重金属ターゲット21を格納する固体重金属ターゲット容器23と、固体重金属ターゲット容器23に充填され、固体重金属ターゲット21を冷却する冷却水24と、冷却水24を循環させるための冷却水循環ポンプ25と、冷却水が固体重金属ターゲット21を冷却する際に受ける熱を取り除くための熱交換器26と、冷却水24の温度上昇による体積膨張を吸収するサージタンク27と、を備えている。なお、本実施の形態において、陽子ビーム走査部22は実施の形態1の陽子ビーム走査部12と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0030】
以下、実施の形態2に係る陽子ビーム加速器の構成について説明する。図5は、実施の形態2に係る陽子ビーム加速器20の概略構成を示す模式図である。当該実施の形態に係る陽子ビーム加速器20は、線形加速器である。図5に示すように、陽子ビーム加速器20は、陽子ビームを発射する陽子ビーム発射部201と、複数の加速電極管T,T,T,…,T28を備えている。以下の説明では、陽子ビーム発射部201の陽子ビーム発射方向を「前方」といい、前記陽子ビーム発射方向の反対方向を「後方」という。
【0031】
陽子ビーム発射部201の前方には、加速電極管T,T,T,…,T28が並べて配置されている。陽子ビーム発射部201に最も近接した加速電極管Tの前後それぞれには、ダミー電極管DT,DTが設けられている。つまり、加速電極管Tは、ダミー電極管DT及びDTによって挟まれた状態で配置されている。後側のダミー電極管DTのさらに後方には、加速電極管T,T,…,T28が順番に配置されている。
【0032】
図6は、実施の形態2に係る陽子ビーム加速器の構成の一部を示す模式図である。図6に示すように、陽子ビーム加速器20は、2つの高電圧直流電源P1,P2を備えている。高電圧直流電源P1の出力電圧は60kVであり、高電圧直流電源P2の出力電圧は20kVである。
【0033】
高電圧直流電源P1は、陰極がスイッチング素子SWRを介して加速電極管Tに接続されている。また、高電圧直流電源P1の陰極は、スイッチング素子SWRを介して加速電極管Tに接続され、スイッチング素子SWRを介して加速電極管Tに接続され、同様にスイッチング素子SWR,SWR,…,SWR28のそれぞれを介して加速電極管T,T,…,T28のそれぞれに接続されている。一方、高電圧直流電源P1の陽極は接地されている。
【0034】
高電圧直流電源P2は、陽極がスイッチング素子SWFを介して加速電極管Tに接続されている。また、高電圧直流電源P2の陽極は、スイッチング素子SWFを介して加速電極管Tに接続され、スイッチング素子SWFを介して加速電極管Tに接続され、同様にスイッチング素子SWF,SWF,…,SWF28のそれぞれを介して加速電極管T,T,…,T28のそれぞれに接続されている。一方、高電圧直流電源P2の陰極は接地されている。
【0035】
加速電極管Tは浮遊容量を持っており、浮遊容量によるコンデンサCの一方の電極は加速電極管Tに接続されており、コンデンサCの他方の電極は接地されている。
【0036】
これにより、スイッチング素子SWRをオンにし、スイッチング素子SWFをオフにすると、高電圧直流電源P1と加速電極管Tとが接続されて、加速電極管Tの電位が変化する。ここで、後述するように、加速電極管T、高電圧直流電源P1、及びコンデンサCを含む回路は一次遅れ系となっている。このため、スイッチング素子SWRをオンにし、スイッチング素子SWFをオフにした後、加速電極管Tの電位は一次遅れで変化し、最終的に−60kVとなる。
【0037】
他方、スイッチング素子SWRをオフにし、スイッチング素子SWFをオンにすると、高電圧直流電源P1と加速電極管Tとの接続は遮断され、高電圧直流電源P2と加速電極管Tとが接続されて、加速電極管Tの電位が変化する。ここでも、加速電極管T、高電圧直流電源P2、及びコンデンサCを含む回路は一次遅れ系を構成する。このため、スイッチング素子SWRをオフにし、スイッチング素子SWFをオンにした後、加速電極管Tの電位は一次遅れで変化し、最終的に20kVとなる。
【0038】
他の加速電極管T〜T28についても同様に浮遊容量を持っており、スイッチング素子SWRをオンにし、スイッチング素子SWFをオフにすると、加速電極管Tの電位は一次遅れで−60kVに漸近する(nは2〜28の整数)。また、スイッチング素子SWRをオフにし、スイッチング素子SWFをオンにすると、加速電極管Tの電位は20kVに漸近する。
【0039】
図6に示すように、加速電極管Tとダミー電極管DTとの間には所定距離の間隙が設けられている。この空間(以下、「ギャップ」という。)GDが設けられていることにより、加速電極管Tとダミー電極管DTとは絶縁されている。同様に、加速電極管Tとダミー電極管DTとの間にもギャップGDが設けられている。また、ダミー電極管DTと加速電極管Tとの間にもギャップGが設けられており、隣り合う加速電極管T〜T28のそれぞれの間にも、ギャップG〜G27が設けられている。さらに、ダミー電極管DT及びDTのそれぞれは接地されている。
【0040】
このように、加速電極管Tとダミー電極管DT,DTとの間にギャップGD,GDが設けられていることにより、加速電極管Tに電圧が印加されると、ギャップGD,GDには電界が形成される。同様に、隣り合う加速電極管T及びTn+1に電位差が生じると、これらの加速電極管T及びTn+1の間に設けられたギャップGに電界が形成される。この電界により、ギャップを通過する陽子ビームが加速される。
【0041】
図7は、加速電極管Tとダミー電極管DT,DTとの間のギャップGD,GDに電界を形成するための回路を示す模式図である。スイッチング素子SWRは、オン抵抗RR及びRRを有している。図7に示すように、スイッチング素子SWRは加速電極管Tの後部に接続されており、抵抗RR、スイッチング素子SWR、及び抵抗RRは直列接続されているものとして示される。また、抵抗RRには、高電圧直流電源P1の陰極が接続されており、高電圧直流電源P1の陽極は接地されている。一方、加速電極管Tの前部には、スイッチング素子SWFが接続されている。スイッチング素子SWFはオン抵抗RF及びRFを有しており、抵抗RF、スイッチング素子SWF、及び抵抗RFのそれぞれは直列接続されているものとして示される。抵抗RFには、高電圧直流電源P2の陽極が接続されており、高電圧直流電源P2の陰極は接地されている。また、加速電極管Tには、上述したように浮遊容量としてのコンデンサCが存在する。等価回路として、この浮遊容量であるコンデンサCの一方の電極が加速電極管T接続されており、コンデンサCの他方の電極が接地されていると考えることができる。したがって、スイッチング素子SWRがオンとされ、スイッチング素子SWFがオフとされると、コンデンサC、加速電極管T、抵抗RR、スイッチング素子SWR、抵抗RR、及び高電圧直流電源P1の回路が形成される。この回路は一次遅れ系であるため、加速電極管Tには一次遅れで負の電位が印加される。また、スイッチング素子SWRがオフとされ、スイッチング素子SWFがオンとされると、コンデンサC、加速電極管T、抵抗RF、スイッチング素子SWF、抵抗RF、及び高電圧直流電源P2の回路が形成される。この回路もまた一次遅れ系であるため、加速電極管Tには一次遅れで正の電位が印加される。
【0042】
陽子ビーム加速器20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により構成された加速制御部202を有している。この加速制御部202は、スイッチング素子SWR及びSWFに接続されており、スイッチング素子SWR及びSWFを駆動することが可能である。また、図では省略したが、加速制御部202は、各スイッチング素子SWR〜SWR28,SWF〜SWF28にも接続されており、これらのスイッチング素子SWR〜SWR28,SWF〜SWF28も駆動することができる。さらに、加速制御部202は、陽子ビーム発射部201にも接続されており、陽子ビーム発射部201を制御することができる。
【0043】
本実施の形態において、陽子ビーム走査部22は後述するように、陽子ビーム加速器20の加速制御部202と同期することで、陽子ビーム加速器20からの陽子ビームの射出と同期するように励磁電流制御部21eは設定されている。
【0044】
次に、本実施の形態に係る中性子線発生装置2の動作について説明する。本実施の形態では、まず、陽子ビーム加速器20により、陽子ビームを加速する。図8は、実施の形態2に係る陽子ビーム加速器20が有する加速制御部202の処理の流れを示すフローチャートである。まず、加速制御部202は、スイッチング素子SWRをオンにし、スイッチング素子SWFをオフにする。これと共に、スイッチング素子SWR,SWR,SWR,…,SWR28をオンにし、スイッチング素子SWF,SWF,SWF,…,SWF28をオフにする(ステップS1)。スイッチング素子SWRがオンとされ、スイッチング素子SWFがオフとされると、加速電極管Tと高電圧直流電源P1とが接続され、加速電極管Tと高電圧直流電源P2との接続が遮断される。したがって、加速電極管Tには、負の電位が印加される。また、ステップS1の処理が実行された後、加速電極管Tに印加される電位の変化が収束するのに十分な時間が経過してから、ステップS2の処理が実行される。このため、加速電極管Tの電位は−60kVとなる。
【0045】
また、スイッチング素子SWR,SWR,SWR,…,SWR28がオンとされ、スイッチング素子SWF,SWF,SWF,…,SWF28がオフとされると、加速電極管T,T,T,…,T28のそれぞれと高電圧直流電源P2との接続が遮断され、加速電極管T,T,T,…,T28のそれぞれと高電圧直流電源P1とが接続される。したがって、加速電極管T,T,T,…,T28のそれぞれの電位は、−60kVとされる。
【0046】
次に加速制御部202は、陽子ビーム発射部201を制御して、陽子ビームを発射させる(ステップS2)。陽子ビーム発射部201は、設定で定められたイオン電流値、直径、及び長さを有する陽子ビームを発射する。陽子ビーム発射部201から発射された陽子ビームは、ダミー電極管DTを通過し、ギャップGDに進入する。この時点において、ダミー電極管DTの電位はアース電位であり、加速電極管Tの電位は−60kVであるため、ギャップGDには、電界が形成されている。この電界の向きは、ダミー電極管DTから加速電極管Tへ向かう方向、即ち前方である。陽子ビームは正の電荷を有しているため、陽子ビームはギャップGDを通過する間にこの電界によって加速され、加速電極管Tに進入する。ギャップGDでは陽子ビーム全体が等電界で加速を受けるため、後述するような陽子ビームの軸長方向への収束作用は働かない。
【0047】
次に加速制御部202は、所定の切替時間に到達したか否かを判別し(ステップS3)、切替時間に到達していないと判断した場合には(ステップS3においてNO)、再度ステップS3の処理を繰り返す。この切替時間は、予め設定された値であり、陽子ビームが発射されてから、陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの中央に到達するまでの時間である。つまり、ステップS3において、切替時間に到達したと判断された時点では、陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの中央部分に位置していることになる。
【0048】
ステップS3において、切替時間に到達している場合には(ステップS3においてYES)、加速制御部202はスイッチング素子SWRをオフにし、同時にスイッチング素子SWFをオンにする(ステップS4)。こうすることで、加速電極管Tと高電圧直流電源P1との接続が遮断され、加速電極管Tと高電圧直流電源P2とが接続される。したがって、加速電極管Tには、正の電位が印加される。
【0049】
図9は、スイッチング素子SWR及びSWFの切り替え制御を示すタイミングチャートである。図において、横軸は時間を、縦軸はスイッチング素子SWR及びSWFのオン/オフ状態を示している。t0は陽子ビーム発射部201から陽子ビームが発射される時刻を、t1は陽子ビームのリーディングエッジがダミー電極管DTの後端に到達する時刻を、t2は陽子ビームのリーディングエッジがダミー電極管DTの前端に到達する時刻を、t3は陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの後端に到達する時刻を、t4は陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの中央に到達する時刻を、t5は陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの前端に到達する時刻を、t6は陽子ビームのリーディングエッジがダミー電極管DTの後端に到達する時刻を、t7は陽子ビームのリーディングエッジがダミー電極管DTの前端に到達する時刻を、それぞれ示している。また、ts1は時刻t1から時刻t2に至る期間を、ts2は時刻t2から時刻t3に至る期間を、ts3は時刻t3から時刻t5に至る期間を、ts4は時刻t5から時刻t6に至る期間を、ts5は時刻t6から時刻t7に至る期間を、それぞれ示している。
【0050】
図9に示すように、陽子ビームが発射される時刻t0において、スイッチング素子SWRはオンとされ、スイッチング素子SWFはオフとされている。陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの中央に位置する時刻t4において、スイッチング素子SWRがオフに切り替えられ、スイッチング素子SWFがオンに切り替えられる。
【0051】
図10は、ギャップGDにおける電圧の時間的変化を示すグラフである。図に示すように、時刻t0〜t4においては、スイッチング素子SWRがオンとされ、スイッチング素子SWFがオフとされているため、加速電極管Tの電位は−60kVである。また、ダミー電極管DTの電位は0であるから、ギャップGDにおける電位差は60kVとなる。上述したように、時刻t4において、スイッチング素子SWRがオフに切り替えられ、スイッチング素子SWFがオンに切り替えられることで、加速電極管Tと高電圧直流電源P1との接続が遮断され、加速電極管Tと高電圧直流電源P2とが接続される。これにより、加速電極管Tの電位は上昇する。
【0052】
コンデンサC、加速電極管T、抵抗RF、スイッチング素子SWF、抵抗RF、及び高電圧直流電源P2の回路は一次遅れ系であるため、加速電極管Tの電位(つまり、ギャップGDにおける電位差)は、時間の経過に応じて上昇する。
【0053】
ここで、ダミー電極管DTの電位は0であるため、ギャップGDにおける電位差は、時間の経過に応じて上昇する。陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの後端に位置する時点t5において、加速電極管Tの電位は0V以上となっている。すなわち、加速電極管Tの長さ、ギャップGDの長さ、コンデンサCの容量、抵抗RF及びRFの抵抗値等は、時刻t5においてギャップGDに陽子ビームを加速させる電界を発生させ、且つ、その電界の強さが更に過渡現象による上昇過程の途中となるように設定される。つまり、時刻t5においては、ギャップGDにおける電位差は20kVに到達していない。本実施の形態においては、時刻t6においても、ギャップGDにおける電位差は20kVに到達せず、時刻t7の付近において20kVとなるように設定されている。
【0054】
このように、ギャップGDに発生した電界は、陽子ビームがギャップGDを通過する期間ts4において単調増加する。ギャップGDにおける電位差が正であれば、ギャップGDにおける電界の向きは陽子ビームの進行方向と一致している。このため、ギャップGDにおける電界の強さが大きい程、陽子ビームはその進行方向へ強く加速される。つまり、ギャップGDに発生する電界によって、陽子ビームの後端が進行方向へより強く加速される。したがって、陽子ビームがギャップGDを通過することにより、当該陽子ビームは軸方向に凝縮されバンチが形成される。
【0055】
図8に示す加速制御部202の処理の説明に戻る。加速制御部202は、ステップS4を実行した後、変数qに2を代入し(ステップS5)、次に進入する加速電極管Tに対応する所定の切替時間に到達したか否かを判別し(ステップS6)、切替時間に到達していないと判断した場合には(ステップS6においてNO)、再度ステップS6の処理を繰り返す。加速電極管T,T,T,…,T28毎に、対応する切替時間が予め定められている。各切替時間は、陽子ビームが発射されてから、陽子ビームのリーディングエッジが当該切替時間に対応する加速電極管Tの中央に到達するまでの時間である。つまり、ステップS6において、切替時間に到達したと判断された時点では、陽子ビームのリーディングエッジが加速電極管Tの中央部分に位置していることになる。
【0056】
ステップS6において、切替時間に到達している場合には(ステップS6においてYES)、加速制御部202はスイッチング素子SWRをオフにし、同時にスイッチング素子SWFをオンにする(ステップS7)。こうすることで、加速電極管Tと高電圧直流電源P2とが接続され、加速電極管Tと高電圧直流電源P1との接続が遮断される。したがって、加速電極管Tには、正の電位が印加される。したがって、スイッチング素子SWRをオフにし、同時にスイッチング素子SWFをオンにすると、加速電極管Tに含まれる浮遊容量の影響で加速電極管Tの電位は+20kVに漸近する。
【0057】
ここで、加速電極管Tに後続する加速電極管Tq+1には、高電圧直流電源P2に接続されておらず、高電圧直流電源P1に接続されている。このため、加速電極管Tq+1の電位は−60kVである。したがって、加速電極管TとTq+1との間のギャップGにおける電位差は80kVであり、ギャップGにおける電界の向きは加速電極管Tから加速電極管Tq+1へ向かう方向、即ち前方である。これにより、陽子ビームはギャップGを通過する間にこの電界によって加速されることになる。加速電極管Tの場合と異なり、加速電極管Tではスイッチング素子SWRのオン抵抗が小さな値に設定されており、一次遅れの時定数が5ナノ秒未満の非常に小さい値となっている。このため、陽子ビームがギャップGを通過する時刻では加速電極管Tの電位はほぼ20kVに近い値となっている。従って、ギャップGを通過することで陽子ビームが軸方向に凝縮される効果は殆どないと言ってよい。
【0058】
加速制御部202は、その時点での変数qの値が28であるか否かを判別する(ステップS8)。変数qの値が28でない場合には(ステップS8においてNO)、加速制御部202は変数qの値を1だけインクリメントし(ステップ9)、ステップS6へ処理を戻す。これにより、陽子ビーム加速器20の動作初期には−60kVに印加されていた加速電極管T,T,T,…,T28の電位が順次20kVに切り替えられる。
【0059】
図11は、スイッチング素子SWR,SWF,SWR,SWF,…,SWR28,SWF28のオン/オフ制御を説明するための図である。以下の説明では、nが2〜26の整数を示すものとする。陽子ビームが加速電極管Tの軸長方向中央を通過するときには(図中、1行目)、スイッチング素子SWRがオンとされ、スイッチング素子SWFがオフとされる。このため、加速電極管Tの電位は+20kVとなっている。一方、スイッチング素子SWRn+1及びSWRn+2はオフ(初期状態)とされ、スイッチング素子SWFn+1及びSWFn+2がオン(初期状態)とされている。つまり、加速電極管Tに後続する加速電極管Tn+1,加速電極管Tn+2の電位は−60kVとなっている。このため、ギャップGには80kVの電位差が生じており、ギャップGにおける電界の向きは陽子ビームの進行方向と一致している。なお、ギャップGn+1の電位差は0であり、ギャップGn+1には電界が生じていない。
【0060】
陽子ビームはギャップGを通過し、このときギャップGの電界により加速される。加速された陽子ビームは、次の加速電極管Tn+1に進入する(図中、2行目)。陽子ビームが加速電極管Tn+1の軸長方向中央を通過するときには(図中、3行目)、スイッチング素子SWRn+1がオンに切り替えられ、スイッチング素子SWFn+1がオフに切り替えられる。このため、加速電極管Tn+1の電位は+20kVに変化する。このとき、スイッチング素子SWRn+2及びSWFn+2のそれぞれは初期状態から変化しない。したがって、加速電極管Tn+2の電位は−60kVとなっている。このため、ギャップGn+1には80kVの電位差が生じ、ギャップGn+1における電界の向きは陽子ビームの進行方向と一致する。
【0061】
陽子ビームはギャップGn+1を通過し、ギャップGn+1の電界により加速される。加速された陽子ビームは、次の加速電極管Tn+2に進入する(図中、4行目)。陽子ビームが加速電極管Tn+2の軸長方向中央を通過するときには(図中、5行目)、スイッチング素子SWRn+2がオンに切り替えられ、スイッチング素子SWFn+2がオフに切り替えられる。このため、加速電極管Tn+2の電位は+20kVに変化する。
【0062】
このように、ギャップG,G,G,…,G27の電位差が次々に0から80kVに切り替わり、ギャップG,G,G,…,G27を通過することで、陽子ビームが加速される。
【0063】
陽子ビームは、静電レンズ又は4極電場回路を設けなければ、空間電荷効果によってその半径方向(軸長方向に直交する方向)に拡大される。本実施の形態においては、各ギャップGD,GD,及びG,G,…,G27に発生する電界が静電レンズとして機能する。つまり、陽子ビームがギャップGを通過するとき、ギャップGに生じている電界の静電レンズ効果によって、陽子ビームが半径方向に縮小される。図12は、陽子ビームの半径方向への縮小の原理を説明する模式図である。加速電極管Tの電位が20kVであり、加速電極管Tn+1の電位が−60kVである場合、図に示すように、ギャップGには電界が発生する。この電界は、静電凸レンズとして機能し、ギャップGを通過する陽子ビームをその半径方向に収束させる。陽子ビームの収束作用の強さ、つまり、静電レンズの焦点距離は、電界の強さにより変化する。電界の強さは、加速電極管T及びTn+1の電位差の大きさ、ギャップGの軸長方向の長さにより定まる。したがって、加速電極管T及びTn+1の電位差、又は、ギャップGの軸長方向の長さを調整することで、陽子ビームが加速電極管の内壁に衝突しないよう、陽子ビームの半径方向の大きさを適切に設定することができる。
【0064】
ステップ8において、変数qの値が28である場合には(ステップS8においてYES)、加速制御部202は、処理を終了する。
【0065】
以上のように、本実施の形態においては、陽子ビーム発射部201から発射された陽子ビームがギャップGDを通過するときに、ギャップGDには時間に応じて変化しない電界が発生している。この電界の向きは、陽子ビームの進行方向と一致しており、陽子ビームはこの電界を通過するときに加速される。また、陽子ビームがギャップGDを通過するときには、軸長方向へのビーム凝縮(収束)は行われない。また、陽子ビームがギャップGDを通過するときに、ギャップGDには時間に応じて強度が大きくなる電界が発生している。この電界の向きは、陽子ビームの進行方向と一致しており、陽子ビームはこの電界を通過するときに加速される。また、陽子ビームはギャップGDを通過するときに、電界の強さの時間的変化により、その軸長方向に凝縮される。
【0066】
また、加速電極管T,T,T,…,T28では、オン抵抗が小さなスイッチング素子で電位が切り替えられるため、時定数が5ナノ秒未満と小さく、実質的に遅れを生じることなく加速電極管Tの電位が20kVになる。したがって、陽子ビームがギャップGを通過するとき、このギャップGにおける電位差が時間的に変化することがない。したがって、陽子ビームはギャップGを通過するときに、陽子ビーム全体が均等に所定の加速電圧を受けることになる。このように、本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20は、陽子ビームを均等に加速する要素と、陽子ビームを軸長方向に凝縮する要素とを有しているので、陽子ビームの加速及び適切なバンチ形成の両立が可能となる。
【0067】
以上の動作により、陽子ビームは軸長方向に適切な長さを保ったまま加速される。加速された陽子ビームは、陽子ビーム走査部22に向けて射出される。ここで、陽子ビーム走査部22は励磁電流電源22c,22dからそれぞれに対応する偏向電磁石22a,22bに励磁電流を出力し、予め磁界を発生させておく。磁界が発生している状態で陽子ビーム加速器20によって加速された陽子ビームが陽子ビーム走査部22に入射される。陽子ビーム加速器20から入射された陽子ビームが、陽子ビーム走査部22を通過すると、偏向電磁石22a及び22bで発生している磁界によって陽子ビームが偏向される。陽子ビーム走査部22は、励磁電流制御部22eから励磁電流電源22c,22dそれぞれに制御信号を送信し、励磁電流の出力を徐々に変化させていく。すると、これに伴って陽子ビームの偏向方向が連続的に変化する。以上の動作によって、固体重金属ターゲット21の被照射面に陽子ビームが走査照射される。
【0068】
ここで、励磁電流制御部22eは、陽子ビーム加速器20の加速制御部202の加速制御と同期して励磁電流電源22c,22dを制御する。これにより本実施の形態では、陽子ビーム走査照射部22の動作と陽子ビーム加速器20の動作とが同期することになる。具体的な同期方法を以下に説明する。加速制御部202は予め設定された切替時間に基づいて、スイッチング素子SWR,SWF,SWR,SWF,…,SWR28,SWF28のオン/オフ制御を行っている。これらの切替時間から、陽子ビームが陽子ビーム走査部22に到達する時刻を予測しておく。予測された時刻を予め励磁電流制御部22eに記憶させておき、この時刻に基づいて励磁電流制御部を動作させることで、励磁電流制御部22eと陽子ビーム加速器20の加速制御部202を同期させる。
【0069】
本実施の形態によれば、陽子ビーム加速器20の加速制御部202及び陽子ビーム走査部22の励磁電流制御部22eを単純なシーケンス制御によって制御することができるため、陽子ビームの射出を検出するための陽子ビーム検出器等を設置する必要がなく、装置全体の構成を簡易なものとすることができ、制御も容易となる。
【0070】
また、本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20は、陽子ビームの軸長方向を制御することができる。このため、本実施の形態によれば、陽子ビーム加速器20で固体重金属ターゲット21の被照射面に対応した長さに陽子ビームの長さを制御することができ、固体重金属ターゲット21への陽子ビームの走査照射をより効率的に行うことが可能となる。
【0071】
本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20において、加速電極管T,T,T,…,T28の少なくとも1つに、オン抵抗の大きなスイッチング素子を接続してもよい。このようにすることで、当該スイッチング素子が接続された加速電極管の浮遊容量とオン抵抗とによって一次遅れ系が構成される。これにより、その加速電極管Tに対応するスイッチング素子SWRがオフにされ、同時にスイッチング素子SWFがオンにされると、加速電極管Tの電位が−60kVから一次遅れで20kVに変化する。このように、オン抵抗の大きなスイッチング素子を取り付ける加速電極管の数を調節することで、陽子ビームを凝縮する電界を発生させるギャップの数を調節することが可能となる。
【0072】
このような構成とすることにより、陽子ビーム加速器20に高周波電源を備える必要がない。また、従来の陽子ビーム加速器では、高周波の位相を陽子ビームのギャップ通過と同期させる必要があり、このため、加速電極管の長さを精密に調整することが必要であった。本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20では、加速電極管の長さを調整することで、陽子ビームのギャップ通過と加速電界の発生タイミングとの同期を取るのではなく、陽子ビームがギャップを通過する間に加速電界の強さが増加するように、スイッチング素子のオン/オフ切替のタイミングを調整すればよい。このため、従来に比べて加速電極管の長さを精密に調整する必要がなく、加速電極管の製造コストを低減することが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20では、高周波電源を必要としない。高周波電源を使用する場合、ギャップを通過する微少な時間に陽子ビームを加速するためには、数百メガHz以上の周波数の高周波電圧が必要であり、長距離にわたる加速器を駆動するためには水冷クライストロン管(真空管)を用いた高周波電源装置が不可欠である。このような高価な高周波電源を使用する必要がないため、本実施の形態に係る陽子ビーム加速器20では、従来に比して大幅なコスト低減が可能となる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、ダミー電極管DT,DTの間に加速電極管Tを配置し、ダミー電極管DTと加速電極管Tとの間のギャップGDでは、陽子ビームが通過する間において時間的に変化しない電界を形成し、この電界によって陽子ビームを加速し、加速電極管Tとダミー電極管DTとの間のギャップGDでは、陽子ビームが通過する間において時間的に強さが増大する電界を形成し、この電界によって陽子ビームを加速する構成としたがこれに限定されるものではない。例えば、前側のダミー電極管DTに代えて、高電圧直流電源P1,P2のそれぞれに接続可能な加速電極管を配置してもよい。この場合、加速電極管Tの前側に配置された加速電極管に初期状態として−60kVの電位を印加しておく。加速電極管Tの軸長方向中央を陽子ビームのリーディングエッジが通過する時点で、スイッチング素子SWRをオンからオフに切り替え、スイッチング素子SWFをオフからオンに切り替えることで、加速電極管Tの電位が一次遅れで増大する。これにより、加速電極管Tとその隣の加速電極管との間のギャップにおける電界の強さが一次遅れで変化し、変化している間に当該ギャップを陽子ビームが通過することで、陽子ビームを軸長方向に短縮することができる。
【0075】
また、本実施の形態においては、加速電極管Tの浮遊容量であるコンデンサCにより、一次遅れ回路を形成する構成について述べたが、これに限定されるものではない。加速電極管Tにコンデンサを接続し、これによって一次遅れ回路を形成する構成としてもよい。
【0076】
また、本実施の形態においては、ギャップにおける電界の強さを一次遅れで増加させる構成について述べたが、これに限定されるものではない。隣り合う電極管の間のギャップにおいて、電界の強さを2次遅れにより変化させる構成としてもよい。例えば、加速電極管Tに2つのコンデンサを接続し、加速電極管T、高電圧直流電源P1、及び2つのコンデンサを含む回路を二次遅れ系とすることもできる。但し、この場合には、陽子ビームがギャップを通過する間に、当該ギャップにおける電界が増加するように構成する必要があり、減衰比が1以下となるようにすることが特に好ましい。
【0077】
また、本実施の形態においては、陽子ビーム加速器20を線形加速器としたが、これに限定されるものではない。複数の加速電極管を非線形に配置し、隣り合う加速電極管の間に偏向磁石を配置して、当該偏向磁石によって進行中の陽子ビームの進行方向を変化させて、非線形に配置された加速電極管に順次陽子ビームを通過させる構成としてもよい。この場合、少なくとも1つの加速電極管に大きなオン抵抗を有するスイッチング素子を接続し、このスイッチング素子をオン/オフ制御することで、当該加速電極管と、その隣の加速電極管との間のギャップに、時間的に強さが増加する電界を形成する。この電界の強さが増加している途中において、当該ギャップに陽子ビームを通過させる構成とすることができる。
【0078】
また、サイクロトロンの電極(ディー)に印加する電圧を制御することによって、陽子ビームの長さを調整するように構成することもできる。例えば、サイクロトロンの電極の一方にオン抵抗の大きなスイッチング素子を接続して一次遅れ系とし、当該スイッチング素子を介して直流電源に電極を接続する。イオン発射部から発射された陽子ビームが1つの電極の内部を通過している間に、スイッチを切り替えることで前記一方の電極に負の電位を印加し、前記他方の電極に正の電位を印加する。ギャップの電界の強さが一次遅れにより増加する間に、陽子ビームにギャップを通過させる。
【0079】
また、本実施の形態においては、陽子ビームが加速電極管Tを進行している間に、スイッチング素子SWRをオンからオフに切り替え、スイッチング素子SWFをオフからオンに切り替えることで、加速電極管Tに正の電位を印加し、接地されているダミー電極管DTと加速電極管Tとの間のギャップGDに時間に応じて強さが増加する電界を形成する構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、次のような構成とすることもできる。ダミー電極管DTに一定の負の電位を印加しておき、負の電位が印加されている加速電極管に接続されたスイッチング素子をオフに切り替えることで、加速電極管と直流電源との接続を遮断する。これにより加速電極管の電位が0へ向かって変化し、ダミー電極管DTと加速電極管Tとの間のギャップGDに時間に応じて強さが増加する電界が形成される。
【0080】
(実施の形態3)
図13は実施の形態3にかかる中性子線発生装置3の構成図である。本実施の形態では、陽子ビームを加速する陽子ビーム加速器30と、二つの固体重金属ターゲット31a,31bと、固体重金属ターゲット31a,31bそれぞれに対応する二つの陽子ビーム走査部32a,32bと、陽子ビーム走査部32a,32bそれぞれに陽子ビームを分配輸送するための高エネルギービーム輸送(HEBT:High Energy Beam Transportation)ライン38と、中性子線が照射されることで核分裂反応を起こす未臨界炉心39と、固体重金属ターゲット31a,31b及び未臨界炉心39を格納する格納容器33と、格納容器33に充填され、固体重金属ターゲット31a,31b及び未臨界炉心39を冷却する冷却水34と、冷却水34を循環させるための冷却水循環ポンプ35と、冷却水34が固体重金属ターゲット31a,31bを冷却する際に受ける熱を取り除くための熱交換器36と、冷却水34の温度上昇による体積膨張を吸収するサージタンク37と、を備えている。なお、陽子ビーム走査部32a,32bは実施の形態1における陽子ビーム走査部12と同様の構成であるので、その説明を省略する。また、陽子ビーム加速器30は実施の形態1における陽子ビーム加速器20と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0081】
本実施の形態においては、固体重金属ターゲット31a,31bは、未臨界炉心39を挟んで相対するように配置されている。陽子ビーム走査部32a,32bは、それぞれが対応する固体重金属ターゲット31a,31bに対して陽子ビームを走査照射することができるよう配置されている。
【0082】
以下、本実施の形態における中性子線発生装置3の動作について説明する。まず、中性子線発生装置3に入射した陽子ビームは、陽子ビーム加速器30によって加速される。陽子ビーム加速器30によって加速された陽子ビームは、高エネルギービーム輸送ライン38によって、陽子ビーム走査部32a,32bそれぞれに分配輸送される。各陽子ビーム走査部32a,32bへ分配輸送された陽子ビームは、各陽子ビーム走査部に対応する固体重金属ターゲット31a,31bの被照射面に対して、各陽子ビーム走査部32a,32bから走査照射される。なお、陽子ビーム走査部32a,32bから走査照射する際の動作については、前記実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
本実施の形態によれば、未臨界炉心39に対して複数の方向から中性子線を発射することができるため、未臨界炉心39の複数の面に中性子線を分散させることができる。これにより、未臨界炉心39の中性子線が照射される部分において、急激な温度上昇を抑えることができ、水のような安価且つ取り扱いの容易な冷却材で冷却することが可能になる。
【0084】
また、従来の技術では、固体重金属ターゲット及び未臨界炉心の冷却には溶融金属ナトリウム等が用いられており、発電するには熱交換器をさらに設置し、そこで発生する蒸気を用いて蒸気タービンを回す必要があった。しかし、本実施の形態では、冷却材として水を採用することができるため、固体重金属ターゲット31a,31b及び未臨界炉心39を冷却する際に発生する蒸気によって、直接蒸気タービンを回すことが可能となる。
【0085】
本実施の形態においては、固体重金属ターゲット31a,31bが未臨界炉心39を挟んで相対するようにして配置されている。このように配置すれば、各固体重金属ターゲット31a,31bから未臨界炉心39の対向する面それぞれに対して中性子線が照射されるため、各固体重金属ターゲット31a,31bから発射される中性子線が重複せずに、未臨界炉心39に対して照射される。これにより、未臨界炉心39に対して中性子線を偏りなく分散して照射することができるため、未臨界炉心39の中性子線が照射される部分における急激な温度上昇を抑えることができる。
【0086】
本実施の形態においては、二つの固体重金属ターゲットを用いているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、三つ以上の固体重金属ターゲットを用いてもよい。この他、複数の被照射面を有するのであれば、角筒のような形状の固体重金属ターゲットを一つだけ用いるような構成でもよい。
【0087】
本実施の形態においては、固体重金属ターゲットは未臨界炉心を挟んで相対するように配置されているが、本発明はこれに限定されるわけではなく、未臨界炉心に対して複数の方向から中性子線が照射されるように固体重金属ターゲットが配置されていればよい。
【0088】
本実施の形態においては、中性子線を照射する対象として未臨界炉心を用いているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、中性子線治療対象となる癌患部又は非破壊検査対象となる金属材料等でもよい。
【0089】
本実施の形態においては、陽子ビーム加速器は実施の形態2と同様であるとしたが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、陽子ビームの位置を検出する陽子ビーム検出器をさらに備えることで、実施の形態1と同様の構成としてもよい。
【0090】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態においては、中性子線を発生させるためにターゲットに照射するビームとして陽子ビームを用いているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、核破砕反応により中性子線を発生させることができるのであれば、重イオンビーム等であってもよい。
【0091】
上記の各実施の形態においては、中性子線を発生させる中性子線源として、固体重金属ターゲットを用いているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、被照射部が面状になっており、陽子ビームを走査照射することができるよう構成された容器内に格納することで、水銀又は鉛ビスマス等のような液体金属ターゲットを用いてもよい。
【0092】
上記の各実施の形態においては、電磁石を用いた電磁偏向により陽子ビームを偏向しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、静電偏向によって陽子ビームを偏向するように構成されていてもよい。
【0093】
上記の各実施の形態においては、陽子ビームを走査照射するために、陽子ビームを偏向していたが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、中性子線源を移動させることにより、中性子線源の被照射面に陽子ビームを走査照射するように構成されていてもよい。
【0094】
上記の各実施の形態においては、陽子ビームを面状に走査照射するように構成しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、線状に走査照射するように構成されていてもよい。
【0095】
上記の各実施の形態においては、陽子ビーム加速器からの陽子ビームの射出を検出する、又は陽子ビーム加速器の加速制御部と同期することで、陽子ビーム加速器からの陽子ビームの射出と同期して、陽子ビーム走査照射部は走査照射を行うように構成されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、陽子ビーム加速器からの陽子ビームの射出に関係なく、陽子ビーム走査照射部は常時動作するように構成されていてもよい。
【0096】
上記の各実施の形態においては、固体重金属ターゲット及び未臨界炉心の冷却材として冷却水を用いているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、金属ナトリウム等を冷却材として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の中性子線発生装置及び中性子線発生方法は、核破砕反応を利用した中性子線発生装置及び中性子線発生方法として有用である。
【符号の説明】
【0098】
1,2,3 中性子線発生装置
10,20,30 陽子ビーム加速器
11,21,31a,31b 固体重金属ターゲット
12,22,32a,32b 陽子ビーム走査部
13,23,33 固体重金属ターゲット容器
14,24,34 冷却水
15,25,35 冷却水循環ポンプ
16,26,36 熱交換器
17,27,37 サージタンク
18 陽子ビーム検出器
38 高エネルギービーム輸送ライン
39 未臨界炉心
11a,11b,21a,21b 偏向電磁石
11c,11d,21c,21d 励磁電流電源
11e,21e 励磁電流制御部
201 陽子ビーム発射部
202 加速制御部
C コンデンサ
GD,GD ギャップ
DT,DT ダミー電極管
P1,P2 高電圧直流電源
RR,RR,RF,RF 抵抗
SWR,SWR,…,SWR28 スイッチング素子
SWF,SWF,…,SWF28 スイッチング素子
,T,…,T28 加速電極管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線が照射される被照射面を有し、被照射面に粒子線が照射されることで中性子線を発射する中性子線源と、
前記中性子線源の被照射面に粒子線を走査照射する粒子線走査照射手段と、
を備える、中性子線発生装置。
【請求項2】
前記粒子線走査照射手段は、加速した粒子線を前記粒子線走査照射手段に対して発射する粒子線加速器の動作と同期して、粒子線を走査照射するように構成されている、
請求項1に記載の中性子線発生装置。
【請求項3】
前記粒子線加速器は、
粒子線を通過させ、通過する粒子線を加速するための電極管と、
粒子線が前記電極管を通過するタイミングに応じて、当該電極管に対して粒子線を加速するための電圧を印加する駆動回路とを具備しており、
前記粒子線走査照射手段は、前記駆動回路の動作と同期して、粒子線を走査照射するように構成されている、
請求項2に記載の中性子線発生装置。
【請求項4】
前記粒子線走査照射手段は、粒子線を偏向させることで被照射面における粒子線を照射する位置を順次変えていくように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の中性子線発生装置。
【請求項5】
前記粒子線走査照射手段は、静電偏向又は電磁偏向を用いることで粒子線を偏向させるように構成されている、
請求項4に記載の中性子線発生装置。
【請求項6】
前記粒子線走査照射手段を複数備え、
前記中性子線源が、複数の前記粒子線走査照射手段それぞれに対応する複数の前記被照射面を有しており、
粒子線を複数の前記粒子線走査照射手段に分配輸送する粒子線分配輸送手段をさらに備え、
前記粒子線分配輸送手段により分配輸送された粒子線が、前記複数の粒子線走査照射手段それぞれから対応する前記被照射面に走査照射された場合に、前記中性子線源から発射される複数の中性子線が同一の中性子線照射対象に照射されるように、前記中性子線源が前記中性子線照射対象に対して配設されている、
請求項1乃至5の何れかに記載の中性子線発生装置。
【請求項7】
粒子線を中性子線源の被照射面に走査照射する粒子線走査照射ステップと、
前記粒子線走査照射ステップによる粒子線の走査照射を受けて、中性子線源より中性子線を発生させる中性子線発生ステップと、
を有する、中性子線発生方法。
【請求項8】
前記中性子線源が複数の被照射面を有しており、
前記複数の被照射面それぞれに粒子線を走査照射できるよう、粒子線を分配輸送する粒子線分配輸送ステップをさらに有し、
前記粒子線走査照射ステップにおいて、前記粒子線分配輸送ステップにより分配輸送された粒子線を前記複数の被照射面それぞれに走査照射し、
前記中性子線発生ステップにおいて、前記粒子線走査照射ステップによる前記複数の被照射面それぞれへの粒子線の走査照射を受けて、同一の中性子線照射対象に対して中性子線を発射させる、
請求項7に記載の中性子線発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−16283(P2013−16283A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146684(P2011−146684)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511143553)株式会社Quan Japan (3)
【Fターム(参考)】