説明

中性新聞用紙の抄紙方法

【課題】
新聞用紙を中性の抄紙条件で製造する抄紙法に関するものであり、地合いを損なうことなく、歩留の向上や生産性の向上ができる中性新聞用紙の抄紙方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
抄紙前の製紙原料において、ビニル系単量体あるいはビニル系単量体混合物を乳化重合することにより得た油中水型エマルジョンからなる高分子量両性重合体が、中性新聞用紙の抄紙方法に適合する製紙薬剤であり、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙を中性の抄紙条件で製造する抄紙法に関するものであり、地合いを損なうことなく、製紙原料の歩留向上や生産性の向上ができる中性新聞用紙の抄紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙の抄紙工程において中性抄造化が進行しており、それに伴い酸性抄造時とは大きく抄造条件が異なるために安定して品質の高い紙を抄紙し更に生産効率を上げることは極めて困難な状況になっている。中性抄造時では、填料として安価で且つ高品質な紙を製造することができるため炭酸カルシウムの使用割合が増加している。しかし、酸性抄造時に使用されていた硫酸バンドが炭酸カルシウムと反応し硫酸カルシウムを生成、系内汚れや断紙の要因となるため中性抄造では添加量低減或いは無添加となっている。従来、硫酸バンドは抄紙系内のアニオントラッシュとして歩留効果の阻害要因となるアニオン成分を凝結作用により封鎖する役割も担っていたが、中性抄造ではその役割が低下し、炭酸カルシウムが微粒なこともありワイヤー上での歩留率が低下、品質及び生産性の低下を招く要因の一つとなっている。更に中性新聞用紙の抄紙工程においては、古紙配合比率の増加による微細繊維分の増加、抄紙機の抄紙速度の高速化、低坪量化等によりワイヤーでの歩留が著しく低下している。最近の経済状況の観点から生産性の向上が求められており、特に中性新聞の抄紙速度としては高速化が進行しており、中には1500m/分以上の抄紙マシンも出現しており歩留の低下が問題視されている。そこで、中性新聞用紙の歩留率の向上を図るため、極限粘度法による重量平均分子量が1000万以上を有する従来よりも高分子量のポリマーが適用されるようになってきている。例えば、特許文献1では重量平均分子量が500万以上、2000万以下の四級アンモニウム塩基を有する重合系カチオン性水溶性高分子を添加する方法が開示されている。特許文献2には、極限粘度法による重量平均分子量が1500万以上のエマルション型のカチオン性ポリアクリルアミド系物質を添加する製造方法が開示されている。しかし、特許文献1では重合系カチオン性水溶性高分子を添加する前に重量平均分子量が10万以上、200万以下の四級アンモニウム塩基を有する重合系カチオン性水溶性高分子及び/または重量平均分子量が500以上、200万以下の四級アンモニウム塩基を有する重縮合系カチオン性物質を添加することが必須であり、ある程度の歩留効果を得るには二液を用いることが必要である。特許文献2に関しても、歩留効果の改善はある程度は得られるが、中性新聞用紙において抄紙機の抄速1000m/分以上でのワイヤーの歩留率は未だ十分な効果が得られていない状況にある。又、何れの方法も歩留向上剤として用いる物質のイオン性はカチオン性であり、それ以外のイオン性の記載はない。
【特許文献1】特開2002−227090号公報
【特許文献2】特開2006−16716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新聞用紙を中性の抄紙条件で製造する抄紙法に関するものであり、地合いを損なうことなく、製紙原料の歩留向上や生産性の向上ができる中性新聞用紙の抄紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体と下記一般式(3)で表される単量体、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体を含有する単量体混合物水溶液を、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、該単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後、適宜転相剤を添加して製造された油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を歩留向上剤として中性新聞用紙の製紙原料に使用した場合、地合いを損なうことなく、歩留の向上、生産性の向上を図ることが可能であることが分かり本発明に到達した。
【化1】

一般式(1)
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす。

【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす。

【化3】

一般式(3)
R8は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素又はCOOY2、Y1あるいはY2は水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【0005】
また本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体は、前記単量体混合物水溶液が、前記一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体3〜35モル%、前記一般式(3)で表される単量体1〜10モル%、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体55〜96モル%からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体は、前記一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体と前記一般式(3)で表される単量体、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体を含有する単量体混合物水溶液を、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、該単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後、適宜転相剤を添加して製造された油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体である。抄紙前の中性新聞用紙製紙原料中に本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を添加すると高分子量を有するため凝集力が強く、更に両性高分子中に有するアニオン基の存在により破壊されたフロック間で再凝集が起こり、カチオン性高分子より地合いを損なうことなく高い歩留効果が得られる。特に紙料スラリーに掛かるせん断力が強い場合において再凝集性が生じやすいため、抄紙機の抄速が高い中性新聞抄造において高い歩留効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体は、前記単量体混合物水溶液が、前記一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体3〜35モル%、前記一般式(3)で表される単量体1〜10モル%、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体55〜96モル%からなる単量体を必須として含有する単量体混合物の水溶液を、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、該単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後、適宜転相剤を添加して製造することができる。
【0008】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を製造する際使用するイオン性単量体のうち、カチオン性単量体、即ち一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体は3〜35モル%であり、好ましくは5〜25モル%の範囲である。
【0009】
本発明で使用するカチオン性単量体は、以下の様なものがある。すなわち、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミン等の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である。その例として一般式(1)で表わされる単量体は、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物である。一般式(2)で表わされる単量体は、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物などがある。
【0010】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を製造する際使用するイオン性単量体のうち、アニオン性単量体、即ち
前記一般式(3)で表される単量体は1〜10モル%の範囲である。
【0011】
本発明で使用するアニオン性単量体は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸あるいはp−カルボキシスチレン酸等が挙げられる。
【0012】
本発明で使用する非イオン性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0013】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体の重合時に架橋性単量体を添加することができる。架橋性単量体の具体例としてはN,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミドなどのビニル系メチロール化合物、アクロレインなどのビニル系アルデヒド化合物あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でもN,N’−メチレンビスアクリルアミドの使用が好ましい。
【0014】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体において無機塩を添加することができる。塩を添加するタイミングは、イオン性単量体と非イオン性単量体からなる単量体混合物を混合した水溶液中や共重合後の油中水型エマルジョン中或いは油中水型エマルジョン希釈液中、等である。
【0015】
添加する無機塩は、ナトリウムやカリウムの様なアルカリ金属イオンやアンモニウムイオン等の陽イオンと、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとを組み合わせた塩が使用可能である。これら塩類の濃度としては、0.5重量%〜15重量%である。
【0016】
油中水型エマルジョンの製造方法としては、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び非イオン性単量体からなる単量体混合物を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0017】
また、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類或いは灯油、軽油、中油等の鉱油、或いはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、或いはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0018】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜11のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0019】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行ない、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
【0020】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては0〜100℃の範囲で行なう。特に油中水型エマルジョン重合法を適用する場合は、20〜80℃、好ましくは20〜60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性或いは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、4、4’−アゾビス−(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0021】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。またレドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0022】
単量体の重合濃度は20〜50質量%の範囲であり、好ましくは25〜40質量%の範囲であり、単量体の組成、重合法、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
【0023】
背景技術で述べた様に生産性の向上の観点から中性新聞用紙の抄紙速度の高速化が進行しており、1000m/分以上の高速、中には1500m/分を超える場合もある。抄紙速度が速くなると製紙原料に掛かるせん断力が強くなるため、歩留向上剤が添加され凝集、形成したフロックが壊れやすくなる。特に1000m/分以上の高速においてその傾向が大きく、高いシェアにおいてもフロックを保持する歩留向上剤が求められており、本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体の性能は高シェアにおいてより発揮される。
【0024】
高シェアにおいて高い凝集力を得るには高分子量のカチオン性高分子が有効であるが、せん断力が掛かると形成したフロックが壊れていき、歩留率は低下していく。一方、本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を添加すると高分子量であるため高い凝集力を有するが、せん断力が強いと高分子量のカチオン性高分子と同様に形成したフロックが壊れるが、両性高分子中に有するアニオン基の存在により破壊されたフロック間で再凝集が起こり、カチオン性高分子より高い歩留効果が得られると考えられる。低シェアではこの再凝集は生じ難いが高シェアにおいてアニオン基との再凝集が促進された結果、歩留効果は高くなる。又、この再凝集性により緻密なフロックを形成するため地合いが良好になる。
【0025】
高い凝集力を得るには高分子量が必要であるため、本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体の分子量は、固有粘度で表わすと、油中水型エマルジョンを構成する水溶性重合体の1規定NaCl水溶液中、25℃で測定した固有粘度が15〜25dl/gであることが好ましいが、更に好ましくは17〜25dl/gである。固有粘度が15dl/gより低いと歩留向上効果が低下する場合があり、25dl/gより高いと紙の品質、特に地合いが低下する場合がある。
【0026】
高分子中のアニオン基の含有量としては、1モル%より低いと再凝集性は認められず、10モル%より多いと高い分子量のものが得られないため、高分子中の含有量としては1〜10モル%が望ましい。
【0027】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体の製紙工程における添加場所は、従来の歩留向上剤として、せん断工程であるファンポンプやスクリーンの前後が一般的であり、本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体も同様な添加場所が適用される。少ない添加率で最も歩留率を向上させるには最終せん断工程であるスクリーン前後に添加するのが好ましい。
【0028】
本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体は、紙力剤、サイズ剤、硫酸バンド、凝結剤やその他の製紙用薬品と同時に添加することができ、アニオン性水溶性高分子、ベントナイトあるいはコロイダルシリカなどとも併用することができる。
【0029】
以下に示す合成例によって本発明の油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を具体的に説明するが、本発明は以下の合成例に限定されるものではない。
【0030】
(合成例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン127.5gにソルビタンモノオレート7.5g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5.0gを仕込み溶解させた。別に80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)58.1g、80質量%アクリル酸(AACと略記)4.3g、50質量%アクリルアミド(AAMと略記)300.1g、イソプロピルアルコール0.4g(対単量体0.2質量%)を各々採取し添加した。油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで2分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/AAc/AAM=10/2/88(モル%)である。
【0031】
得られたエマルジョン単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬V−601)0.7g(対単量体0.35質量%)を加え、重合反応を開始させた。42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレンデシルエーテル10.0g(対液1.9質量%)を添加混合した。この分散液は、顕微鏡観察の結果、1〜30μmの粒子であり、固有粘度は15.2dl/gであった。これを試作−1とする。更に試作−1の製造と同様の操作によりDMQ/AAC/AAM=10/2/88(モル%)、固有粘度 18.2dl/g(試作−2)、DMQ/DMC/AAC/AAM=10/2/88(モル%)、固有粘度 24.8dl/g(試作−3)、DMQ/AAC/AAM=5/2/93(モル%)(試作−4)、DMQ/AAC/AAM=20/4/76(モル%)(試作−5)、DMQ/AAC/AAM=20/8/72(モル%)(試作−6)、DMQ/DMC/AAC/AAM=10/10/4/76(モル%)(試作−7)、DMQ/DMC/AAC/AAM=20/10/8/62(モル%)(試作−8)である水溶性高分子を合成した。結果を表1に示す。
【0032】
(合成例2)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン127.5gにソルビタンモノオレート7.5g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5.0gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水13.2g、80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物101.3g、80質量%アクリル酸7.5g、50質量%アクリルアミド225.9g、イソプロピルアルコール0.4g(対単量体0.2質量%)及びメチレンビスアクリルアミド0.2%水溶液1.0g(対単量体0.001質量%)を各々採取し添加した。油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで2分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/AAC/AAM=20/4/76(モル%)である。
【0033】
得られたエマルジョン単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬V−601)0.7g(対単量体0.35質量%)を加え、重合反応を開始させた。42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレンデシルエーテル10.0g(対液2.0質量%)を添加混合した。この分散液は、顕微鏡観察の結果、1〜30μmの粒子であり、試作−9とする。更に試作−9の製造と同様の操作によりDMQ/AAC/AAM=20/8/72(モル%)(試作−10)である水溶性高分子を合成した。結果を表1に示す。
【0034】
(合成例3)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン127.5gにソルビタンモノオレート7.5g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5.0gを仕込み溶解させた。別に80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物101.3g、80質量%アクリル酸7.5g、50質量%アクリルアミド225.9g、イソプロピルアルコール0.4g(対単量体0.2質量%)及び硫酸アンモニウム25.6g(対液5質量%)を各々採取し添加した。油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで2分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/AAC/AAM=20/4/76(モル%)である。
【0035】
得られたエマルジョン単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬V−601)0.7g(対単量体0.35質量%)を加え、重合反応を開始させた。42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレンデシルエーテル10.2g(対液2.0質量%)を添加混合した。この分散液は、顕微鏡観察の結果、1〜30μmの粒子であり、試作−11とする。更に試作−11の製造と同様の操作によりDMQ/AAC/AAM=20/8/72(モル%)(試作−12)である水溶性高分子を合成した。結果を表1に示す。
【0036】
(比較合成例)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン127.5gにソルビタンモノオレート7.5g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート5.0gを仕込み溶解させた。別に80質量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)93.0g、50質量%アクリルアミド(AAMと略記)307.0g、イソプロピルアルコール0.4g(対単量体0.2質量%)を各々採取し添加した。油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで2分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/AAM=10/90(モル%)である。
【0037】
得られたエマルジョンを単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)1.9g(対単量体0.34質量%)を加え、重合反応を開始させた。42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレンデシルエーテル10.0g(対液1.9質量%)を添加混合した。この分散液は、顕微鏡観察の結果、1〜30μmの粒子であり、試作−13とする。結果を表1に示す。更に試作−13の製造と同様の操作によりDMQ/AAM=20/80(モル%)である水溶性高分子を合成した(試作−14)。
【0038】
(表1)

DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
DMC:メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド
無機塩;AS:硫酸アンモニウム、SC:塩化ナトリウム
【実施例1】
【0039】
ブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留率の測定試験を行なった。200メッシュワイヤー使用。使用原料は、固形分濃度1.3質量%で、軽質炭酸カルシウム等Ash分として33.4%対固形分濃度含んだ新聞用紙抄造原料を用いた。製紙原料の物性値は、pH7.2、Whatman No.41濾紙濾過液のミューテック社製PCD−03型を使用したカチオン要求量は、0.023meq/Lである。ブリット式ダイナミックジャーテスターの攪拌回転数は1500rpmに設定した。これは、製紙会社の抄紙マシンや抄紙条件によって様々であるが、少なくとも抄紙速度1000m/分は超える高速抄紙のせん断力に匹敵する攪拌回転数である。合成例の試作−1〜12を対紙料固形分に対して200ppm添加し、攪拌回転数1500rpmで30秒間攪拌後、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。結果を表2に示す。
【実施例2】
【0040】
実施例1と同様な製紙原料を所定量採取、合成例の試作−1〜12を対紙料固形分に対して200ppm添加し、攪拌回転数1500rpmで30秒間攪拌した。その後、TAPPIスタンダード抄紙機(60メッシュワイヤー使用)により坪量40g/mの紙を抄いた。抄紙した湿紙を4.1kgf/cmで5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、25℃、RH65%の条件で18時間調湿し、地合い指数及びJIS P8149不透明度試験方法に則り不透明度を測定した。地合い指数はM/K System Inc.社製「3−D Sheet Analyzer」により測定した。この数値は高い程、地合い性は良いことを表わしている。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例1)実施例1と同様な製紙原料を用いて、比較合成例の試作−13及び試作−14を対紙料固形分に対して200ppm添加し、攪拌回転数1500rpmで30秒間攪拌後、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例2)実施例1と同様な製紙原料を所定量採取、合成例の試作−13及び試作−14を対紙料固形分に対して200ppm添加し、攪拌回転数1500rpmで30秒間攪拌した。その後、TAPPIスタンダード抄紙機(60メッシュワイヤー使用)により坪量40g/mの紙を抄いた。抄紙した湿紙を4.1kgf/cmで5分間、プレス機にてプレス脱水し、回転式ドラムドライヤーで105℃、3分間乾燥後、25℃、RH65%の条件で18時間調湿し、地合い指数及び不透明度を測定した。結果を表2に示す。
(表2)

【0043】
合成例の試作−1〜12を実機の抄紙マシンの抄紙速度1000m/分以上の高速条件を想定し添加した場合、比較合成例の試作−13及び試作−14を添加した場合よりも高い歩留効果を示した。試作−13及び試作−14は固有粘度が20dl/g以上で高分子量を有するにも関わらず低下を示した。中性新聞用紙抄造原料に対しては、高速条件下では高分子量カチオン性高分子により形成したフロックが経時と共に壊れていくのに対して本発明の高分子量両性高分子では壊れたフロック間の再凝集性により、カチオン性高分子よりも本発明の両性高分子の方の歩留率が高くなったことが確認できた。又、地合い指数は合成例の試作−1〜12の方が試作−13及び試作−14よりも高く地合いが良好であることが確認できた。これは、合成例の試作−1〜12の再凝集性により緻密なフロックを形成した結果であると考えられる。更に合成例の試作−1〜12の方が試作−13及び試作−14よりも高い不透明度を示した。これは、地合いが良好なため新聞用紙の重要な品質項目である不透明度も高い値を示したと推察される。
【実施例3】
【0044】
中性新聞用紙抄紙マシンで抄速1170m/分、坪量41.5g/m2の条件で、スクリーン通過前に極限粘度法による重量平均分子量1500万のカチオン性油中水型エマルジョンポリマーを240ppm対紙料固形分添加していたが、現行油中水型エマルジョンポリマー使用時のワイヤー総歩留率41%、灰分歩留率19%であった。これに対して本発明の合成例、試作−9の両性水溶性重合体を、同添加場所に240ppm添加した結果、ワイヤー総歩留率44%、灰分歩留率26%に向上した。実施例1と同様な傾向が確認された。又、カチオン性油中水型エマルジョンポリマーに対して本発明の合成例、試作−9添加時では地合いの低下は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙前の製紙原料に下記一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体と下記一般式(3)で表される単量体、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体を含有する単量体混合物水溶液を、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、該単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後、適宜転相剤を添加して製造された油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を添加することを特徴とする中性新聞用紙の抄紙方法。
【化1】

一般式(1)
R1は水素又はメチル基、R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基、R4は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1は陰イオンをそれぞれ表わす。

【化2】

一般式(2)
R5は水素又はメチル基、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2は陰イオンをそれぞれ表わす。

【化3】

一般式(3)
R8は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO3、C6H4SO3、CONHC(CH3)2CH2SO3、C6H4COOあるいはCOO、R9は水素又はCOOY2、Y1あるいはY2は水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記両性水溶性重合体の一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体を3〜35モル%、と前記一般式(3)で表される単量体を1〜10モル%、及び共重合可能な非イオン性水溶性単量体を55〜96モル%を含有する単量体混合物水溶液を、界面活性剤により水に非混和性有機液体を連続相、該単量体混合物水溶液を分散相となるよう乳化し、重合した後、適宜転相剤を添加して製造された油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体を添加することを特徴とする前記請求項1に記載の中性新聞用紙の抄紙方法。
【請求項3】
前記油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体が1規定NaCl水溶液中、25℃で測定した固有粘度が15〜25dl/gであることを特徴とする請求項1或いは2に記載の中性新聞用紙の抄紙方法。
【請求項4】
前記油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体が架橋性単量体を含有する単量体混合物水溶液を重合したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の中性新聞用紙の抄紙方法。
【請求項5】
前記油中水型エマルジョンからなる両性水溶性重合体が無機塩を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の中性新聞用紙の抄紙方法。
【請求項6】
前記中性新聞用紙の抄紙機の抄紙速度が1000m/分であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の中性新聞用紙の抄紙方法。





【公開番号】特開2011−184818(P2011−184818A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49983(P2010−49983)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】