説明

中性領域の卵黄含有液状調味料

【課題】 常温で長期保存が可能であり、開封後も一定期間保存が可能である、生の卵黄風味をもった中性領域の液状調味料を提供すること。
【解決手段】 卵黄を含有する液状調味料において、卵黄を調味料全体の5質量%以上45質量%未満、糖類の固形分量及び油類の合計で調味料全体の35質量%以上90質量%以下含有し、該糖類は固形分量として該卵黄質量の50質量%以上を含み、且つ甘味度換算で調味料全体の20質量%以下の量で含有しており、該油類は調味料全体の10質量%以上70質量%以下の量で含有している調味料であって、水中油型に乳化され、pH5.5〜8.0に調整されていることを特徴とする卵黄含有液状調味料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で長期保存が可能であり、尚且つ開封後も一定期間保存が可能である、生の卵黄風味をもった中性領域の液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は、その優れた栄養価に加え、特徴ある風味・色・物性、または卵のもつ乳化作用などからさまざまな料理や加工食品に利用されている。例えば、茶碗蒸しやプリンなどは卵が加熱により凝固する性質を利用している。マヨネーズやドレッシングでは、水、酢、油などを卵黄で乳化させることでコクのある風味やなめらか食感・物性を作り出している。
このような、卵黄を加熱により凝固・変性させた加工食品や、酸性領域の調味料は今まで数多く提供されてきた。
【0003】
一方で、卵のもつコクやまろやかさを味わうため、何も調理せず生のまま食したり、温泉たまごのようにわずかな加熱で食することも好まれる。
このような、中性領域で、且つコクのある液状をした卵本来の物性を味わうためには、生卵そのものや、賞味期限の短いチルド食品を利用するしかないのが現状であった。
ただ、それらを利用するにしても、サルモネラなどの食中毒菌をはじめとする衛生面の問題や、冷蔵保存が必要で日持ちがしないなどの実用面での不便さがあった。
【0004】
それを解決する手段として、例えば特許文献1乃至3のような提案がなされている。
特許文献1(保存性に優れた卵黄組成物およびそれを用いた食品)では、卵黄に糖アルコールおよびトレハロースを配合し、65〜90℃で加熱殺菌した卵黄組成物をカルボナーラソースに用いることが提案されている。
しかしながら、このものは、油類が含有されていないため糖類の甘みが引き立ちすぎ、生の卵黄の風味として好ましくないものであった。さらに、このものは、卵黄含有量が50%以上と多いために微生物耐性が低く、未開封状態での長期常温保存は可能であっても、開封後に一定期間保存することはできない処方であった。
【0005】
特許文献2(カルボナーラ用レトルトソース)では、卵黄に糖アルコールと乳化剤を配合することでレトルト処理しても食感がなめらかで褐変の少ないカルボナーラ用ソースが提案されている
しかしながら、このものは、凝固はしないものの、レトルト加熱により生の卵黄の風味・食感は損なわれてしまっている。
【0006】
特許文献3(卵黄含有食品用原料及びその製造方法)では、レトルト処理されても卵黄が凝集して塊状となることがなく、滑らかな食感用を有する卵黄含有食品用原料の製造方法が提案されているが、凝固させた卵黄を微細化する方法であり、卵黄の風味・食感は損なわれてしまっている。
【0007】
このように引用文献1〜3記載の発明は、常温で長期保存が可能な、生の卵黄風味をもった液状卵黄組成物としてはいずれも改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−178417号公報
【特許文献2】特開平10−257871号公報
【特許文献3】特開2008−199900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、生の卵黄風味を付与する加工食品は、提案が散見されるものの、生の卵黄風味を付与する調味料であって、開封後の保存性にも優れる調味料は未だ提案されておらず改良の余地があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、マヨネーズなどの酸性調味料とは異なり、中性領域で卵黄本来の風味を保持しながら、常温で長期保存が可能であり、且つ開封後も冷蔵下にて一定期間日持ちがする卵黄含有液状調味料を提供することである。
即ち、本発明は、常温で長期保存が可能であり、尚且つ開封後も一定期間保存が可能である、生の卵黄風味をもった中性領域の液状調味料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、比較的少量の卵黄と、糖類、油類を必須材料として用い、尚且つそれらを絶妙な割合に調整した場合に、初めて従来では達成できていなかった卵黄の風味・物性と保存性の両方を同時に満足させることができる調味料が製造し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、次のとおりのものである。
(1):卵黄を含有する液状調味料において、卵黄を調味料全体の5質量%以上45質量%未満、糖類の固形分量及び油類の合計で調味料全体の35質量%以上90質量%以下含有し、該糖類は固形分量として該卵黄質量の50質量%以上を含み、且つ甘味度換算で調味料全体の20質量%以下の量で含有しており、該油類は調味料全体の10質量%以上70質量%以下の量で含有している調味料であって、水中油型に乳化され、pH5.5〜8.0に調整されていることを特徴とする卵黄含有液状調味料。
(2):水分活性が0.88以下に調整されていることを特徴とする、前記(1)に記載の卵黄含有液状調味料。
(3):90℃以上の高温殺菌による卵黄変性がされていないことを特徴とする、前記(1)〜(2)のいずれか1項に記載の卵黄含有液状調味料。
(4):食塩を調味料全体の1質量%以上6質量%以下の量で含有していることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに1項に記載の卵黄含有液状調味料。
(5):再密封可能な密封容器に充填されたことを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに1項に記載の卵黄含有液状調味料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中性領域で卵黄本来の風味を保持しながら、常温で長期保存が可能であり、且つ開封後も冷蔵下にて一定期間日持ちがする卵黄含有液状調味料を提供することができる。
本発明の卵黄含有液状調味料は、納豆、山芋、うどん、そば、ラーメンなどを食する際に、卵黄の代替として本調味料を用いることで、卵黄と同じような風味やコク、食感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、卵黄含有液状調味料に関し、卵黄を含有する液状調味料において、卵黄を調味料全体の5質量%以上45質量%未満、糖類の固形分量及び油類の合計で調味料全体の35質量%以上90質量%以下含有し、該糖類は固形分量として該卵黄質量の50質量%以上を含み、且つ甘味度換算で調味料全体の20質量%以下の量で含有しており、該油類は調味料全体の10質量%以上70質量%以下の量で含有している調味料であって、水中油型に乳化され、pH5.5〜8.0に調整されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明において用いる卵黄としては、鶏卵をはじめ、その他の鳥類、家禽の卵の卵黄も使用することができる。全卵から卵白を分離して得られる生卵黄あるいは、乾燥卵黄を水戻しした卵黄液であってもよい。また、その過程で卵黄の他に卵白等が少量入っていてもよい。また、糖や食塩を加えて冷凍耐性を付与した冷凍原料であってもよい。
【0016】
本発明の調味料には、卵黄風味を与える調味料としては比較的少量の卵黄を含有する。
具体的には、調味料全体のうち卵黄を5質量%以上45質量%未満含有する。卵黄がこれより少なくなると、卵黄本来の風味の乏しい調味料となってしまう。卵黄が多すぎると、相対的に水分活性が高い調味料となり、特に開封後の保存性の悪い調味料となってしまう。卵黄は好ましくは8質量%以上30質量%以下、さらには10質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
本発明には糖類は必須である。糖類を添加することによって、加熱殺菌時に卵黄を凝固・変性しにくくするためである。
本発明に用いる糖類としては、結果として加熱殺菌時に卵黄の凝固・変性を回避できるもので、食品として一般に使用されるものであればいずれもかまわない。
例えば、単糖では、グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、リボース、アラビノースなどが挙げられる。二糖では、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどが挙げられる。また、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類、その他澱粉の加水分解物や水素添加した還元水あめなどが挙げられる。中でも、甘味度が小さく、変色を抑制できるトレハロースや糖アルコール類を使用するのが好ましい。これらのうちの1種類または2種類以上を組み合わせてもよい。
本発明の調味料に用いる糖類の形態としては、粉末等の固形状のものであっても、液状のものであってもよい。ただし、本発明では糖類を固形分量としての数値で表すため、液状のものを用いる場合は固形分量を考慮して含有量を設計する必要がある点に留意が必要である。
【0018】
本発明の調味料には、糖類を固形分量として該卵黄質量の50質量%以上(好ましくは60質量%以上の量)を含み、且つ甘味度換算で調味料全体の20質量%以下の量(好ましくは15質量%以下の量)で含有する。糖類の含有量が少なすぎると、加熱殺菌(例えば、65℃以上90℃未満)時に卵黄の凝固・変性を回避しにくくなり、生の卵黄本来の風味・食感を損ねてしまう。また、甘味度換算で糖類の量が多すぎると、甘みを強く感じてしまい、卵黄本来の風味を損なうことになってしまう。
ここで、糖類の含有量は固形分量としての数値であるため、固形(粉末等)の糖類の場合には糖類全体の質量が含有量となり、液状の糖類の場合はその固形分の質量分のみが含有量となる。つまり、例えば、糖類としてソルビトール70%の液を40質量%含ませる場合は、糖類(この場合はソルビトール)を固形分量として28質量%含むことになる。
また、甘味度とは甘さの指標であり、蔗糖の甘さを基準として各種糖類の甘さの強さを数値化したものである。蔗糖の甘味度は1であり、例えば、スクラロースの甘味度は600であり、ソルビトール(固形分100%)は0.6である。また、トレハロースの甘味度は0.45であり、フルクトースの甘味度は1.5であり、グルコースの甘味度は0.67である。従って、例えば、蔗糖を10質量%含有する場合は甘味度換算でも10質量%含有することになり、スクラロースを0.01質量%含有すると甘味度換算では6質量%含有することになり、ソルビトールを固形分量として10質量%含有すると甘味度換算では6質量%含有することになる。
なお、卵黄として、糖類を加えて冷凍耐性を付与した冷凍卵黄を用いるなど、原料に糖類が予め含まれている場合は、それらの糖類も含めて上記の含有量に調整すべきである。
【0019】
本発明には油類は必須である。油類によって、糖類の甘みを抑制することができ、さらに生の卵黄らしいコク及び食感を付与することができるようになるからである。さらに、油類を卵黄、糖類などとともに乳化することで外観上も卵黄様とすることが可能となる。
本発明に用いる油類としては、食品として一般に使用されるものであればいずれもかまわない。例えば、植物油であれば、ナタネ油、大豆油、ごま油、こめ油、オリーブ油、コーン油、ベニバナ油、パーム油、綿実油などが挙げられる。動物油であれば、卵黄油、魚油、鯨油などが挙げられる。中でも卵黄の風味を阻害せず、常温または冷蔵下で液状を呈するために、ナタネ油、大豆油、卵黄油などを使用するのが好ましい。上記の油類を1種類または2種類以上を組み合わせてもよい。
【0020】
本発明の調味料は、油類を卵黄、糖類などとともに水中油型に乳化した液状調味料である。水中油型に乳化することにより水相と油相が分離を生じずに、風味、外観ともに卵黄本来のものに近い調味料とすることができる。乳化は疑乳化の状態であっても構わない。
本発明の調味料には、油類を10質量%以上70質量%以下の量で含有する。油類の量が少なすぎると、糖類の甘みを抑制できず、さらに卵黄らしいコク及び食感を付与することができなくなってしまう。また、油類の量が多すぎると十分に乳化できない恐れがあり風味、食感、外観において好ましくない。好ましくは油類を調味料全体の25質量%以上50質量%以下の量で含有するとよい。
【0021】
本発明の調味料には食塩を含有してもよい。食塩とは食用の塩類を意味し、一般的には塩化ナトリウムを用いることが好ましいが、塩化カリウムや塩化マグネシウムなど、他の食用塩類であっても、またはそれらが塩化ナトリウムに混合されたものであっても構わない。
食塩は防腐性を高める意味でも含有することは好ましいが、食塩の含有量を多くしすぎると塩辛さが際立ち過ぎてしまうため、比較的少量用いることが好ましい。よって、防腐性及び風味の両方の観点から、食塩の含有量としては、調味料全体の1質量%以上6質量%以下とすることが望ましく、さらには2質量%以上5質量%以下とすることが最も好ましい。
【0022】
本発明の調味料は、上記の糖類の固形分量及び油類を合計で35質量%以上90質量%以下含有することが必須である。
本発明の調味料は卵黄の風味とするためにpH5.5〜8.0の中性域に調整されていることから、マヨネーズ等の酸性調味料に比べて防腐性が劣る。そのため、糖類及び油類の合計量が上記量より少ないと水分活性が高くなりすぎやすく、結果として保存性が低下してしまう。具体的には、開封後に一定期間冷蔵保管をすることができないものとなってしまう。水分活性(Aw)としては、0.88以下に調整することが好ましく、さらには0.84以下に調整することが好ましい。先に卵黄の含有量について、調味料全体の5〜45質量%、好ましくは8〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%含有させることを説明したが、卵黄が少なすぎると、卵黄本来の風味の乏しい調味料となってしまう。卵黄が多すぎると、相対的に糖類及び油類の量が少なくなって水分活性が高い調味料となり、特に開封後の保存性の悪い調味料となってしまう。
なお、本発明の調味料は、開封後であっても冷蔵で保管をした場合、使用環境にもよるが、おおよそ2週間から1ヶ月程度は問題なく消費できるものである。
【0023】
本発明の調味料は液状調味料であるが、ここで言う「液状」とは固形状を排除した意味合いであり、水のようなさらさらした性状のものだけでなく、粘性のある性状、例えば一般にペースト状と呼ばれるものも含むものである。
【0024】
また、本発明の調味料は、pH5.5〜8.0(好ましくはpH6.0〜7.0)の中性領域に調整された調味料である。pH5.5を下回ると、酸味が感じられ、pH8.0を超えると苦味が感じられ、いずれも生の卵黄本来の風味が損なわれてしまう。例えば、マヨネーズなどは一般にはpHが3〜4程度であり、酸味が強く、生の卵黄本来の風味を付与するための調味料ではない。そのため、本発明の課題を解決するものではない。
【0025】
本発明の調味料には、上記した卵黄、糖類、油類、食塩以外に、味付けや保存性向上、その他の目的のため、水、醤油、酢、酒、みりん、味噌、だし液、エキス類、香料、調味料、酸味料などを、pHが中性領域になる範囲で加えても良い。また、物性調整のため、キサンタンガムなどの増粘剤、でんぷんなどの糊料、レシチンなどの乳化剤を加えても良い。さらに、外観調整のため、カロテノイド色素、果実色素、野菜色素などの着色料を加えても良い。ただし、水分当りの卵黄比率は高い方が卵黄風味を強くできるため、卵黄、糖類、油類、食塩以外の材料はなるべく少量用いることが好ましい。例えば、卵黄、糖類、油類、食塩以外の材料は、調味料全体の30質量%以下、好ましくは20質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
ここで、本調味料の殺菌について説明すると、調味料品温で65℃以上90℃未満、より好ましくは75℃以上80℃以下で殺菌することが好ましい。調味料品温が90℃以上になると卵黄の蛋白変性がおこり、生の卵黄の風味が損なわれてしまう。調味料品温が65℃より低くなると、殺菌効果が得られにくくなる。殺菌方法は、充填包装前の加温式タンクによる加熱や、チューブ式連続加熱、マイクロ波連続過熱などが用いられ、充填はホットパック充填などの方法で行う。充填密封後にボイル殺菌をしても良い。
【0027】
本発明の調味料は、再密封可能な密封容器に充填されているような、開封後も冷蔵保管するようなコンセプトの商品において好適に用いることができる。使い切りの商品であれば、本発明のように高い保存性は求められないからである。
再密封可能な密封容器とは、口部開閉機構などを採用することにより、一度開封しても再度密封でき、再密封後に容器を横倒しにしても漏れでにくい構造とした容器である。
ここで、密封という語は完全な密封のみを意味しない。再密封可能な密封容器としては、例えば、キャップ付きの、ビン、ペットボトル、パウチ、ラミネートチューブ、などを用いることができる。
【実施例】
【0028】
実施例1(各種配合割合での物性評価)
(1)調味料の調製
表1〜5の<原料割合>の欄に示す原料を所定量用いて卵黄含有液状調味料を作成した。なお、表1〜5の<原料割合>の欄は全て質量%で表示している。
糖類は表中に記載したものを用い、固形の糖類(固形分量が100%)を使用した(ソルビトールは、粉末ソルビトールを使用)。また、だし液は、鰹と昆布でとっただしを用いた。
まず、卵黄と、水、糖類、食塩、だし液、キサンタンガム(少量ずつ添加)を混合し溶解した後、高速で撹拌しながら、油類を少しずつ添加することによって、水中油型に乳化した。
その後、一度開封した後に再度密封することが可能な容器としてのキャップ付きパウチに、それぞれ100mlずつ充填し、70℃、30分でボイル殺菌(ただし、調味料22〜24は90℃、30分の殺菌とした。)をして、調味料1〜24を製造した。
【0029】
なお、各調味料の水分活性及びpHは、製造後の調味料サンプルを開封し、水分活性は、Novasina 社TH500型を用いて、pHはガラス電極式pHメーターは、(株)堀場製作所、pHメーターF−13を用いて、それぞれ測定した。測定した値を表1〜5の<製造された調味料のpHと水分活性>の欄に示した。
【0030】
(2)調味料の評価
上記(1)で製造した調味料サンプル1〜24について、風味、物性、保存性を以下の要領で評価し、結果は表1〜5の<製造された調味料の評価>の欄に記載した。
【0031】
ここで、「風味」については、製造直後のサンプルを、熟練の官能検査員にて、「卵黄の味」、「甘味」、「油脂感」について評価し、それぞれ以下の評点を付した。
<卵黄の味>
・卵黄特有の風味がし、卵黄代替調味料として十分なレベル:○
・卵黄特有の風味は薄いが、卵黄代替調味料としては許容できるレベル:△
・卵黄特有の風味が不十分であり、卵黄代替調味料としては使えないレベル:×
<甘味>
・甘味は弱いか感じられないため、卵黄代替調味料として適した甘味である:○
・若干の甘味は感じるが、卵黄代替調味料として許容できる甘味である:△
・卵黄代替調味料としては適さない甘味を感じる:×
<油脂感>
・油脂特有の風味は弱く、卵黄代替調味料の油脂感として適している:○
・若干の油脂特有の風味は感じるが、卵黄代替調味料として許容できる油脂感である:△
・卵黄代替調味料としては適さない油脂特有の風味を感じる:×
【0032】
「物性」については、製造直後のサンプルを、熟練の官能検査員にて、「卵黄の変性」、「乳化程度」について評価し、それぞれ以下の評点を付した。
<卵黄の変性>
・卵黄の変性が起きておらず、卵黄特有の滑らかな食感が感じられる:○
・卵黄の変性が起きてしまっており、卵黄特有の食感が感じられずにざらつきを感じる:×
<乳化程度>
・油分が十分に乳化されており、卵黄代替調味料として外観上、食感上ともに優れている:○
・油分が十分に乳化されておらず、卵黄代替調味料として外観上または食感上において好ましくない:×
【0033】
「保存性」については、製造直後のサンプルを常温で1ヶ月保管した後に容器を開封して少量サンプルを採取し、さらにそのサンプルを再密封して冷蔵(5℃)で1ヶ月間保管した後に少量サンプルを採取した。それぞれサンプル採取後すぐに一般性菌数・真菌数を調べた。
評価は、一般性菌数・真菌数がともに10/g未満の場合を○とし、10/g以上の場合を×とした。
また、備考として、特記事項を記載した。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】


【0036】
【表3】


【0037】
【表4】


【0038】
【表5】


【0039】
(3)考察
上記(2)の結果から以下のことがわかった。
風味(卵黄の味)の比較から、卵黄は調味料全体の5質量%未満(調味料1)では卵黄の味が弱く、5質量%以上含有している(調味料2など)ことが必要であることがわかった。好ましくは8質量%以上(調味料3など)、さらには10質量%以上(調味料4、5など)が好ましいことがわかった。
【0040】
保存性(未開封、常温保管後)の評価結果から、糖類及び油類の合計が調味料全体の35質量%に満たないと(調味料7〜10)、開封後の保存性が悪いことがわかった。一方、糖類及び油類の合計が調味料全体の35質量%以上になると(調味料6など)、保存性が良いことがわかった。
【0041】
風味(甘味)の評価結果から、油類の量が大きく影響することがわかり、油類が調味料全体の10質量%に満たないと(調味料7、8、10)、甘味を制御することができないことがわかった。つまり、油類は調味料全体の10質量%以上含有(調味料6、9など)すれば糖類の甘味を抑制する効果があり、さらには25質量%以上含有すること(調味料5など)が好ましいことがわかった。
【0042】
また、甘味度換算で調味料全体の20質量%を超えて糖類を含有すると(調味料20)、卵黄代替調味料として好ましくないため、甘味度換算で20質量%以下(調味料19、21、24など)が好ましいことがわかった。さらには、甘味度換算で15質量%以下(調味料22など)がより好ましいことがわかった。
【0043】
物性(乳化程度)及び風味(油脂感)の評価結果から、油類が70質量%を超えると(調味料12)、油脂感が強くなり風味上好ましくなく、また乳化状態が不安定となることから、70質量%以下(調味料11、13、14など)とすることが必要であり、好ましくは50質量%以下(調味料15など)がよいことがわかった。
【0044】
物性(卵黄の変性)の評価結果から、糖類が卵黄質量の50質量%に満たないと(調味料8、13、15、17)卵黄の変性が起きてしまうため、少なくとも糖類は卵黄質量の50質量%以上(調味料9、14など)は必要であることがわかった。
ここで、調味料17を見ると、糖類は、甘味度換算では卵黄質量の60質量%であるが、糖類量として卵黄質量の40質量%であるため、卵黄変性を抑制できていないことがわかる。つまり、卵黄変性を抑制する効果は甘味度が影響しているのではなく、糖類の含有量が影響することもわかった。
【0045】
また、90℃殺菌をすると(調味料22〜24)、未開封時の保存性は満たされるが、卵黄変性が起きてしまうため好ましくないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、納豆、山芋、うどん、そば、ラーメンなどを食する際に、卵黄の代替品として手軽に用いることができ、且つ比較的保存性のよい(日持ちのする)今までにない調味料を提供することができる。
ここで、保存性について詳しくは、開封後であっても冷蔵で保管をした場合、使用環境にもよるが、おおよそ2週間から1ヶ月程度は問題なく消費できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵黄を含有する液状調味料において、卵黄を調味料全体の5質量%以上45質量%未満、糖類の固形分量及び油類の合計で調味料全体の35質量%以上90質量%以下含有し、該糖類は固形分量として該卵黄質量の50質量%以上を含み、且つ甘味度換算で調味料全体の20質量%以下の量で含有しており、該油類は調味料全体の10質量%以上70質量%以下の量で含有している調味料であって、水中油型に乳化され、pH5.5〜8.0に調整されていることを特徴とする卵黄含有液状調味料。
【請求項2】
水分活性が0.88以下に調整されていることを特徴とする請求項1に記載の卵黄含有液状調味料。
【請求項3】
90℃以上の高温殺菌による卵黄変性がされていないことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の卵黄含有液状調味料。
【請求項4】
食塩を調味料全体の1質量%以上6質量%以下の量で含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の卵黄含有液状調味料。
【請求項5】
再密封可能な密封容器に充填されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の卵黄含有液状調味料。

【公開番号】特開2010−227070(P2010−227070A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80927(P2009−80927)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【特許番号】特許第4436432号(P4436432)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【Fターム(参考)】