説明

中枢を介する悪心および嘔吐を治療するための組成物および方法関連出願の相互参照本出願は、2009年11月18日に出願された米国仮特許出願第61/262,470号および2010年9月14日に出願された米国仮特許出願第61/382,709号の利益を主張する。これらの出願第61/262,470号および第61/382,709号は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。

化学療法、放射線療法、または手術を受ける患者において悪心および嘔吐を治療または予防するための組成物および方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪心および嘔吐、特に高度に催吐性の化学療法により誘発される悪心および嘔吐を治療するための中枢作用性NKアンタゴニストの使用、ならびに複数の連続日数にわたるこのような悪心および嘔吐の治療に関する。本発明はまた、パロノセトロンおよびネツピタントの組合せ経口剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代初期における5−HTアンタゴニストの開発により、化学療法(CINV)、手術(PONV)、および放射線療法(RINV)を含む種々の医療処置により引き起こされる悪心および嘔吐をより良好に管理するための医学界における新規戦略が現れた。いくつかの5−HTアンタゴニストは、ステロイド、例えばデキサメタゾンに添加された場合、催吐性医療処置を受ける患者の生活水準を顕著に改善することが実証されている。5−HTアンタゴニストの例としては、GlaxoSmithKlineにより市販されているオンダンセトロン、およびHelsinn Healthcareにより開発されたパロノセトロンが挙げられる。
【0003】
パロノセトロン塩酸塩は、高度に有効な抗悪心剤(anti−nauseant)および制吐剤として近年現れた。Helsinn HealthcareからのPCT国際公開第2004/045615号および同第2004/073714号を参照のこと。パロノセトロン塩酸塩は、ALOXI(登録商標)商品名のもと無菌注射液として合衆国において販売されており、無菌単位用量バイアルは0.075または0.25mgのパロノセトロン塩酸塩を含有する。パロノセトロン塩酸塩はまた、0.5mgのパロノセトロン塩酸塩を含有する経口投与軟質ゲル剤形としても販売されている。
【0004】
パロノセトロン塩酸塩の公式化学名は、(3aS)−2−[(S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1−オキソ−1Hベリズ[de]イソキノリン塩酸塩(CAS番号119904−90−4)であり;その実験式はC1924O・HClであり、その分子量は332.87である。この化合物は、以下の化学構造
【0005】
【化1】

により表される。
【0006】
パロノセトロンを合成する方法は、米国特許第5,202,333号明細書および同第5,510,486号明細書に記載されている。薬学的に許容可能な剤形は、Helsinn HealthcareからのPCT国際公開第2004/067005号および同第2008/049552号に記載されている。
【0007】
NKアンタゴニストも、催吐性医療処置からの悪心および嘔吐を撲滅するためのツールとして近年現れた。つい最近、中程度および高度に催吐性の化学療法からの悪心および嘔吐の予防のために他の制吐剤との組合せにおいて使用されるアプレピタントが食品医薬品局(「FDA」)により承認された。しかしながら、アプレピタントの効果は主として悪心ではなく嘔吐に制限されること、およびアプレピタントはCINVの急性期の間にそれほど利益を提供しないことが急速に明らかになった。アプレピタントは、ヒトにおける悪心に対して試験した場合、5−HTアンタゴニスト単独と比較した場合、中程度または高度に催吐性の化学療法後の悪心の発生率または重症度の顕著な低減を誘発することができなかった。Emend(登録商標)についてのFDA承認ラベリングを参照のこと。したがって、アプレピタントはヒトにおける悪心および嘔吐の予防のためにFDAにより承認されている一方で、この適応症はいくぶん語弊がある。それというのも、アプレピタントは、制吐レジメンの他の構成成分により制御される悪心を超えるほどアプレピタントについて実施された臨床試験において悪心を低減しなかったからである。さらに、Grunberg et al.,SUPPORT CANCER CARE(2009)17:589−594においてアプレピタントおよびパロノセトロンの組合せ治療から報告された結果は、見込みとはかけ離れたものだった。
【0008】
Merck & Co.は、合衆国においてアプレピタントをEMEND(登録商標)として市販している。製品はカプセル剤形において承認されており、他の制吐剤、例えばオンダンセトロンおよびメトクロプラミドとの組合せにおいてCINV(急性および遅発性)の予防のために市販されている。この製品は、報告によれば、9から13時間の終末相半減期を有する。アプレピタントが悪心に対するいくつかの効果を実証している一方、この効果は一貫性に欠ける。カソピタントは、ヒトにおける悪心および嘔吐に対して試験された別のNKアンタゴニストである。カソピタントの臨床試験は、Ruhlmann et al.のTherapeutics and Clinical Risk Management 2009:5 pp375−384およびPellegatti et al.のDrug Metabolism and Disposition,vol.37,No.8,2009,pp.1635−1645に考察されている。THERAPEUTICS AND CLINICAL RISK MANAGEMENT,2009:5 375−384においてRuhlmann et al.により報告されているとおり、カソピタントは、中程度に催吐性の化学療法に応答して投与された場合に悪心に対する統計的に有意な効果を有さず、さらには副作用として悪心を誘発した。カソピタントは、式(2R,4S)−4−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−N−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−N−メチルピペリジン−1−カルボキサミド、および以下の化学構造を有する:
【0009】
【化2】

ネツピタントは、式2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−N,2−ジメチル−N−[4−(2−メチルフェニル)−6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−イル]プロパンアミド、またはベンゼンアセトアミド、N,a,a−トリメチル−N−[4−(2−メチルフェニル)−6−(4−メチル−1−ピペラジニル)−3−ピリジニル]−3,5−ビス(トリフルオロメチル)−、および以下の化学構造を有する、Helsinn Healthcareにより開発中の別の選択的NK受容体アンタゴニストである:
【0010】
【化3】

ネツピタントおよびそのプロドラッグを合成および配合する方法は、Hoffmann La Rocheの米国特許第6,297,375号明細書、同第6,719,996号明細書および同第6,593,472号明細書に記載されている。
【0011】
他の代表的なNKアンタゴニストとしては、ZD4974(AstraZenecaにより開発)、CGP49823(Ciba−Geigyにより開発)、ラネピタントおよびLY686017(Eli Lillyにより開発)、FK888(Fujisawaにより開発)、ボホピタント、ベスチピタントおよびオルベピタント(GlaxoSmithKlineにより開発)、ベフェツピタント(Hoffmann−La Rocheにより開発)、R116031(Janssenにより開発)、L−733060およびL−736281(Merckにより開発)、TKA731、NKP608およびDNK333(Novartisにより開発)、CP−96345、CP−99994、CP−122721、CJ−17493、CJ−11974およびCJ−11972(Pfizerにより開発)、RP67580およびダピタント(Rhone−Poulenc Rorerにより開発)、ノルピタンチウムおよびSSR240600(Sanofi−Aventisにより開発)、SCH388714およびロラピタント(Schering−Ploughにより開発)、TAK637(Takedaにより開発)、HSP117(Hisamitsuにより開発)、KRP103(Kyorin Pharmにより開発)ならびにSLV317(Solvayにより開発)が挙げられる。上記NKアンタゴニストの化学構造は下記に示され、それらの化合物および他のNKアンタゴニストの考察は、Huang et al.によるExpert Opin.Ther.Patents(2010)20(8),pp1019−1045に存在する。
【0012】
米国特許第6,297,375号明細書の背景技術は、NKアンタゴニストがサブスタンスP(NK受容体についての天然リガンド)が活性である種々の病態の治療に有用であることを示唆している。これらの病態としては、うつ病、疼痛(特に、炎症性病態、例えば、偏頭痛、関節リウマチ、喘息、および炎症性腸疾患から生じる疼痛)、中枢神経系(CNS)障害、例えば、パーキンソン病およびアルツハイマー病、頭痛、不安、多発性硬化症、モルヒネ離脱の減弱、心血管変化、浮腫、慢性炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、喘息/気管支過敏性ならびにアレルギー性鼻炎を含む他の呼吸器疾患、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む消化管の炎症性疾患、眼外傷および眼炎症性疾患が挙げられる。この背景技術は、乗り物酔いおよび嘔吐にも言及するが、特に悪心には触れていない。
【0013】
したがって、悪心および嘔吐、特に化学療法、放射線療法および手術から生じる悪心および嘔吐のより有効な治療が当分野において必要とされている。さらに、これらの催吐性イベントにより誘発される悪心および嘔吐の発生が延長されるので、このような悪心および嘔吐の延長された期間の治療が必要とされている。さらに、薬物−薬物相互作用を低減させるため、安定性を改善させるため、および組合せ剤形の各構成成分の効果を強化するための剤形の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2004/045615号
【特許文献2】国際公開第2004/073714号
【特許文献3】米国特許第5,202,333号明細書
【特許文献4】米国特許第5,510,486号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/067005号
【特許文献6】国際公開第2008/049552号
【特許文献7】米国特許第6,297,375号明細書
【特許文献8】米国特許第6,719,996号明細書
【特許文献9】米国特許第6,593,472号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Grunberg et al.,SUPPORT CANCER CARE(2009)17:589−594
【非特許文献2】Ruhlmann et al.Therapeutics and Clinical Risk Management 2009:5 pp375−384
【非特許文献3】Pellegatti et al.Drug Metabolism and Disposition,vol.37,No.8,2009,pp.1635−1645
【非特許文献4】Huang et al.Expert Opin.Ther.Patents(2010)20(8),pp1019−1045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、NKアンタゴニスト、特にネツピタントを使用して悪心および嘔吐を治療または予防する新規方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、化学療法、放射線療法、または手術を受ける患者において悪心および嘔吐を治療または予防する方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、ステロイドおよび5−HTアンタゴニストによるCINV、RINVまたはPONVのための既存の治療を増強させることであり、これにより、特に急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐の両方に対する追加の保護を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、単回組合せ用量のネツピタントおよび5−HTアンタゴニストを提供すること、ならびにCINV、RINVまたはPONVの急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐の治療のための、さらなる投与を用いないその単回用量の使用を提供することである。
【0020】
別の目的は、中程度に催吐性および高度に催吐性の化学療法(「MECおよびHEC」)、特にHECからの悪心、嘔吐、および他の不所望な効果をこのような治療後の急性期および遅発期の間に治療する新規方法を提供することである。
【0021】
別の目的は、悪心および嘔吐の治療または予防において、薬物−薬物相互作用を低減させるため、安定性を改善するため、バイオアベイラビリティを向上させるためおよびネツピタントおよび/または5−HTアンタゴニストおよび/またはデキサメタゾンを含む組合せ剤形の各構成成分の治療効果を強化するための新規剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
ネツピタントの臨床効果への広範な試験後、意外なことに、ネツピタントが悪心に対して活性であること、ならびに単回用量のネツピタントが高度および中程度に催吐性の化学療法に応答する悪心および嘔吐を5日間連続で治療することができることが発見された。全く意外なことに、ネツピタントが脳内のNK受容体への特有の結合性を示すことも発見された。特に、ネツピタントが線条体内のNK受容体に長期にわたり結合すること、および投与96時間後でさえネツピタントの20または30%未満が線条体NK受容体から解放されることが発見された。このことは、受容体結合が経時的に急速に降下し、遅発期全体にわたり悪心嘔吐制御が所望される場合に繰り返し投与しなければならず;悪心に対して有意な効果を示さないアプレピタントとは全く対照的である。
【0023】
これらの発見は、悪心嘔吐誘発イベント後1日目、さらにこのような誘発後2、3、4および5日目の間の悪心を治療するための特有の投与レジメンの開発を導いた。したがって、一実施形態において、本発明は、悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続の期間治療する方法であって、前記患者にネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐に対して治療的に有効であり、全身循環に入るのに有効であり、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する量で投与することを含む方法を提供する。
【0024】
別の実施形態において、ネツピタントは、悪心に対してよりいっそう大きい有効性が生じるように5−HTアンタゴニスト、例えばパロノセトロンおよびコルチコステロイド、例えばデキサメタゾンを含む他の制吐剤と組み合わされる。パロノセトロンは、Grunberg et al.,Support Cancer Care(2009)17:589−594により報告されているとおり、アプレピタントとの組合せよりもネツピタントとの組合せにおいてよりいっそう有効であることが発見されている。さらに、パロノセトロンは、パロノセトロンがネツピタントと組み合わされる場合、単回用量投与におけるパロノセトロンとは異なり、改善された薬物動態プロファイル(例えば、より良好なバイオアベイラビリティ)を示す。これらの発見に基づき、急性および遅発性悪心嘔吐の治療のための、ネツピタントまたは別のNK1アンタゴニストおよびパロノセトロンを組み合わせる固体経口剤形が開発されている。
【0025】
デキサメタゾンが治療用量未満(すなわち、デキサメタゾンがそれ自体投与された場合に無効であろう用量)において投与された場合でさえ有効であるように、ネツピタントがデキサメタゾンの効果を強化することも発見されている。したがって、別の実施形態において、本発明は、悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続で治療するための組合せ療法であって、
1日目 ネツピタント−−1日目に前記患者に、ネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐に対して治療的に有効であり、全身循環に入るのに有効であり、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する量で投与すること;
1日目 パロノセトロン−−1日目に前記患者に、急性期および遅発期の間の前記悪心および嘔吐を治療するために有効な5−HTアンタゴニスト(好ましくはパロノセトロン)の治療有効量を投与すること;
1日目 デキサメタゾン−−1日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントおよびパロノセトロンとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第1の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第1の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の50から70%を含む);ならびに
2から5日目 デキサメタゾン−患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、2、3および4日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第2の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第2の用量は、2、3および4日目に単独で投与される場合の最小有効用量の40から60%を含む)
から本質的になる方法を提供することである。
【0026】
剤形はこれらの特有の設計および配合のためかなり多用途であり、安定である。この多用途性および安定性は、NK1アンタゴニストおよびパロノセトロンを別個の剤形で配合し、剤形を1個のカプセル剤中で組み合わせることにより達成される。したがって、例えば、パロノセトロンは、小型ゲルキャップ剤中で約0.5mgの用量において配合することができ、ネツピタントまたは他のNK1アンタゴニストは錠剤中で約100から150mgの用量において配合することができる。次いで、製品についての治療目的に応じてカプセル剤に1個以上のパロノセトロンゲルキャップ剤および1個以上のネツピタント(または他のNK1アンタゴニスト)錠剤を充填することができる。パロノセトロンおよびNK1アンタゴニストは別個の剤形中に存在するので、これらは他方の安定性を考慮することなく、および副生物、例えばパロノセトロンの分解副生物である(3S)−3−[(3aS)−1−オキソ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−2−イル]−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オレートに分解することなく配合することができる。結果として、目下発見された剤形は、利点、例えば悪心嘔吐の治療または予防における薬物−薬物相互作用の低減、安定性の改善、および剤形の各構成成分の強化を提供する。
【0027】
したがって、一実施形態において、本発明は、パロノセトロンおよびNK1アンタゴニスト(好ましくはネツピタント)、または薬学的に許容可能なそれらの塩もしくはプロドラッグの組合せを含む経口投与剤形を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、(a)外部シェル;(b)前記外部シェル内に収容された1個以上の錠剤(それぞれが、NK1アンタゴニスト(好ましくはネツピタント)または薬学的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む);ならびに(c)前記外部シェル内に収容された1個以上の軟質ゲルカプセル剤(それぞれが、パロノセトロンまたは薬学的に許容可能なそのエステルもしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む)を含む経口投与カプセル剤形であって;前記剤形が、(3S)−3−[(3aS)−1−オキソ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−2−イル]−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オレートを、3重量%を超過しない量で含む剤形を提供する。
【0029】
さらに他の実施形態において、本発明は、本発明の剤形を急性および遅発発症嘔吐の治療が必要とされるヒトに、好ましくは悪心嘔吐誘発イベント直前に投与することにより急性および遅発発症性悪心嘔吐を治療する方法を提供する。
【0030】
本発明の追加の実施形態および利点は、部分的には以下の詳細な説明において説明され、部分的には詳細な説明から明らかになり、または本発明の実施により理解することができる。本発明の実施形態および利点は、添付の特許請求の範囲に特定して指摘された要素および組合せにより実現され、達せられる。上記の一般的記載および以下の詳細な説明は両方とも例示および説明にすぎず、特許請求されている本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0031】
本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を構成する付属の図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明し、詳細な説明と一緒に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】1個のパロノセトロンの軟質ゲルカプセル剤および3個のネツピタントの錠剤を含有するカプセル剤を示す図である。
【図2】ネツピタント単独およびネツピタントをパロノセトロンと一緒に経口投与した後のヒトにおけるネツピタントの薬物動態プロファイルをプロットする二次元グラフである。
【図3】パロノセトロン単独およびパロノセトロンをネツピタントと一緒に経口投与した後のヒトにおけるパロノセトロンの薬物動態プロファイルをプロットする二次元グラフである。
【図4】ネツピタントを用いたおよび用いない投与後の経時的なデキサメタゾンの平均血漿濃度をプロットする二次元グラフである。
【図5】ポジトロン放出断層撮影を使用して計測した線条体および後頭皮質内での100、300および450mgのネツピタント(各用量についてN=2)の単回経口投与6、24、48、72および96時間後における平均NK受容体占有率を示す2種の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、以下の定義および本発明の好ましい実施形態の詳細な説明ならびに詳細な説明に含まれる非限定的な実施例を参照することによってより容易に理解することができる。
【0034】
用語の定義および使用
単数形「a」、「an」および「the」または同様の用語が本明細書において使用される場合、これらは、文脈が特に明記しない限り複数の指示対象を含むものと理解される。したがって、例えば「医薬担体」という言及は、2種以上のこのような担体の混合物などを含む。本明細書において使用される単語「または」または同様の用語は、特定のリストの任意の1個のメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組合せも含む。
【0035】
本明細書において使用される用語「約」または「およそ」は、医薬産業について許容され、医薬生成物における固有の変動性、例えば製造バリエーションおよび時間誘発性生成物分解に起因する生成物強度およびバイオアベイラビリティの差異を相殺する。この用語は、文脈が要求する場合、評価される生成物が特許請求される生成物の列記強度と医薬的に等価もしくは生物学的に等価またはこの両方であるとみなされるのを許容する、医薬の実務における任意のバリエーションについて許容する。
【0036】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲全体にわたり、単語「含む」およびこの単語のバリエーション、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが限定されない」を意味し、例えば他の添加剤、構成成分、整数または工程を除外しないものとする。
【0037】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容可能な」は、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にも他の点でも不所望でない医薬組成物の調製において有用であることを意味し、獣医学的使用およびヒト医薬的使用に許容可能であることを含む。さらに、用語「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な非毒性酸から調製された投与すべき化合物の塩を指す。好適な無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸である。好適な有機酸は、脂肪酸、芳香族酸、カルボン酸およびスルホン酸クラスの有機酸から選択することができ、この例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸塩)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0038】
パロノセトロンの薬学的に許容可能な塩としては、パロノセトロン塩酸塩が挙げられる。ネツピタントの薬学的に許容可能なプロドラッグとしては、米国特許第6,593,472号明細書、同第6,747,026号明細書および同第6,806,370号明細書に記載のものが挙げられ、ネツピタントのN−オキシドを含む。これらの刊行物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。分子が本明細書においてその塩基または塩形態で言及される場合、この分子の他の薬学的に許容可能な塩形態も包含するものと理解される。
【0039】
本明細書において使用される「治療有効量」は、所望の生物学的応答を誘引するために十分な量を指す。治療有効量または用量は、患者の年齢、性別および体重、ならびに患者の現在の医学的状態に依存する。当業者は、本開示に加えてこれらのおよび他の要因に応じて適切な投与量を決定することができる。
【0040】
デキサメタゾンの最小有効用量は、高度に催吐性の化学療法により誘発されるCINVを治療するために使用される場合、1日目に経口投与または注射により投与される20mg、ならびに2、3および4日目に経口投与または注射により投与される16mgであると実証された。Jordan et al.,THE ONCOLOGIST,Vol.12,No.9,1143−1150,September 2007。中程度に催吐性の化学療法により誘発されるCINVを治療するために使用される場合、デキサメタゾンの最小有効用量は、1日目に経口投与または注射により投与される20mg、ならびに2、3および4日目における0mgである。
【0041】
本明細書において使用される用語「治療する」および「治療」は、疾患、病状、または障害の治癒、改善、安定化、または予防を目的とする患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、特に疾患、病状、または障害の改善に向けて行われる治療を含み、原因治療、すなわち、関連疾患、病状、または障害の原因の除去に向けて行われる治療も含む。さらに、この用語は、緩和治療、すなわち、疾患、病状、または障害の治癒ではなく症状の軽減のために設計される治療;予防的治療、すなわち、関連疾患、病状、または障害の発症を最小化または部分的にもしくは完全に阻害するために行われる治療;ならびに支持治療、すなわち、関連疾患、病状、または障害の改善に向けて行われる別の特異的療法を補助するために用いられる治療を含む。
【0042】
本明細書において使用される用語「有意に」は、統計的に有意なレベルを指す。統計的に有意なレベルは、例えば、少なくともp<0.05、少なくともp<0.01、少なくともp<0.005、または少なくともp<0.001のものであり得る。特に記載のない限り、統計的に有意なレベルはp<0.05である。計測可能な結果または効果が本明細書において表現または同定される場合、この結果または効果は、ベースラインに対するその統計的有意性に基づき評価されることが理解される。同様に、治療が本明細書において記載される場合、この治療は、統計的に有意な程度まで有効性を示すことが理解される。
【0043】
5−HTアンタゴニストは、種々のセトロン、例えば、パロノセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、およびグラニセトロンなど、ならびにそれらの薬学的に許容可能な塩を含む。好ましい5−HTアンタゴニストは、パロノセトロン、特にその塩酸塩である。
【0044】
「高度に催吐性の化学療法」は、高程度の催吐潜在性を有する化学療法を指し、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド≧1500mg/m、ダカルバジン、ダクチノマイシン、メクロレタミン、およびストレプトゾトシンをベースとする化学療法を含む。
【0045】
「中程度に催吐性の化学療法」は、中程度の催吐潜在性を有する化学療法を指し、カルボプラチン、シクロホスファミド<1500mg/m、シタラビン>1mg/m、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、およびオキサリプラチンをベースとする化学療法を含む。
【0046】
急性悪心嘔吐は、悪心嘔吐誘発性イベント後の第1の24時間周期を指す。遅発性悪心嘔吐は、悪心嘔吐誘発性イベント後の第2、第3、第4および第5の24時間周期を指す。治療が遅発期の間に有効であると考えられる場合、治療が遅発期の任意の特定の24時間周期の間で有効であるか否かにかかわらず、治療の有効性は遅発期全体の間で統計的に有意であることを意味することが理解される。本方法は、遅発期の24時間周期のいずれか1つの間でのその有効性に基づき定義することができることも理解される。したがって、特に記載のない限り、本明細書に記載の遅発期の間の悪心および/または嘔吐を治療する方法のいずれかを、悪心嘔吐誘発性イベント後の第2、第3、第4および第5の24時間周期またはそれらの組合せの間の悪心および/または嘔吐を治療するために実施することもできる。
【0047】
範囲が範囲の上限とは別個に範囲の下限を規定することにより与えられる場合、下限可変部のいずれか1つを数学的に可能な上限可変部のいずれか1つと選択的に組み合わせることにより範囲を定義することができることが理解される。
【0048】
治療方法
上記のとおり、本発明はいくつかの特有の発見を前提とし、本発明に従って実施することができる以下の独立した方法を提供する:
第1の主な実施形態において、本発明は、悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続の期間治療する方法であって、前記患者にネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐を治療するために治療的に有効であり、全身循環に入り、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する量で投与することを含む方法を提供する。
【0049】
第2の主な実施形態において、本発明は、悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続で治療するための組合せ療法であって、
(i)1日目に前記患者に、ネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐を治療するために治療的に有効であり、全身循環に入り、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する量で投与すること;
(ii)1日目に前記患者に、急性期および遅発期の間の前記悪心および嘔吐を治療するために有効である治療有効量の5−HTアンタゴニスト(好ましくはパロノセトロン塩酸塩、より好ましくは、0.5mgのパロノセトロン塩酸塩としての経口パロノセトロン)を投与すること;
(iii)1日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントおよびパロノセトロンとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第1の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第1の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の50から70%を含む);ならびに
(iv)患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、2、3および4日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第2の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第2の用量は、2、3および4日目に単独で投与される場合の最小有効用量の40から60%を含む)
を含む組合せ療法を提供する。
【0050】
種々の下位実施形態は、これらの主な実施形態について想定される。例えば、ネツピタントは、遊離塩基または薬学的に許容可能なその塩として投与することができるが、好ましくは、遊離塩基として投与される。さらに、ネツピタントは、好ましくは遊離塩基の重量に基づき約50から約500mg、約200から約400mgの範囲、好ましくは約300mgの量で投与される。ネツピタントについての好ましい投与経路は、経口である。NK受容体への結合に関して、ネツピタントは、好ましくは、投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも80またはさらには85%に結合する。投与96時間後の場合、ネツピタントは、好ましくは、前記NK受容体の70、60、50またはさらには40%未満に結合する。
【0051】
本発明の方法は、中程度または高度に催吐性の化学療法からの化学療法誘発性悪心および嘔吐(「CINV」)、放射線療法誘発性悪心および嘔吐(「RINV」)、ならびに術後悪心および嘔吐(「PONV」)を含む多数のイベントにより誘発される悪心および嘔吐の治療または予防において全て有効である。本方法は、好ましくは、悪心嘔吐誘発性イベント直前(すなわち、イベント前1または2時間未満)に実施される。本方法は、悪心嘔吐の急性期の間または遅発期の間の悪心および嘔吐を治療するために使用することができる。
【0052】
個々の実施形態により規定される薬物は、当分野において周知である任意の好適な投与レジメンにより投与することができるが、好ましい実施形態において、ネツピタント、5−HTアンタゴニストおよびステロイドは経口投与される。パロノセトロンの好ましい経口用量は、約0.075から約1.0mg、または約0.25から約0.75mgの範囲であるが、好ましくは、約0.5mgである。ネツピタントの好ましい経口用量は、約50から500mg、または約200から約400mgの範囲であるが、好ましくは、約300mgである。コルチコステロイド、好ましくはデキサメタゾンの好ましい用量は、治療の1日目に経口投与または注射を介して投与される12mg、ならびに前記治療の2、3および4日目後に経口投与または注射を介して投与される8mgである。
【0053】
ネツピタントはプロドラッグ形態で投与することができることがさらに理解され、この場合において、本発明は、ネツピタントの血漿レベルを誘発することにより治療する方法を提供し、それぞれの場合において、プロドラッグ投与により誘発されるネツピタントの血漿レベルは、本明細書に記載の用量および投与経路でのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩の投与により達せられるレベルに対応する。
【0054】
医薬組成物
本明細書に記載の組合せを使用する種々の医薬組成物を開発することができる。本組成物は、任意の適切な経路、例えば、経口投与、非経口投与、または静脈内投与により液体または固体形態で投与することができる。
【0055】
活性化合物の好ましい投与方式は、注射剤および/または経口である。これらの組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル剤(経口使用について)中に封入することができ、または錠剤(経口またはバッカル使用について)に圧縮することができ、またはトローチ剤(バッカル使用について)に配合することができる。これらの目的のため、活性化合物は、賦形剤とともに取り込むことができ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。医薬的に適合性の結合剤、および/または補助剤材料を組成物の一部として含めることができる。
【0056】
錠剤、ピル剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、または同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes;グライディング剤(gliding)、例えばコロイダル二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースもしくはサッカリン;または着香剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバリング。単位剤形がカプセル剤である場合、カプセル剤は、上記タイプの材料に加え、液体担体、例えば脂肪油を含有することができる。さらに、単位剤形は、単位剤形の物理的形態を改変する種々の他の材料、例えば糖、シェラックのコーティング、または他の腸溶性薬剤を含有することができる。
【0057】
本化合物は、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート剤、経口崩壊フィルム、経口崩壊錠剤、チューインガムなどの構成成分として投与することができる。シロップ剤は、活性化合物に加え、甘味剤としてのスクロースならびにある種の保存剤、色素および着色剤ならびにフレーバーを含有することができる。
【0058】
注射に使用される液剤または懸濁剤は、以下の構成成分を含むことができる:無菌希釈剤、例えば注射水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および等張性の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウム、マンニトールおよびデキストロース。注射製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは多用量バイアル中に封入することができる。
【0059】
組合せ経口剤形
上記のとおり、本発明は、治療目的に応じて容易に改変することができ、安定性および分解の問題を示さないパロノセトロンおよびNK1アンタゴニストの多用途組合せ経口剤形を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、1個以上のNK1アンタゴニスト錠剤および1個以上のパロノセトロン軟質ゲルカプセル剤を収容する硬質外部シェルから作製された経口投与のためのカプセル剤を提供する。最終カプセル剤ならびにカプセル剤シェル内に収容される錠剤および軟質ゲルカプセル剤は、好ましくは、全て速放剤形として配合される。ネツピタントおよびカソピタント、ならびにそれらの薬学的に許容可能な塩は、本発明の組合せ経口剤形に特に好ましいNK1アンタゴニストである。
【0060】
NK1アンタゴニストは、好ましくは固体錠剤中に配合される一方、このアンタゴニストは、例えば、錠剤またはカプセル剤(硬質または軟質ゲル)を含む経口投与に好適である任意の固体形態中に配合することができることが理解される。好ましい実施形態において、NK1アンタゴニストは、錠剤中に配合される。組合せ剤形内に含有されるNK1アンタゴニスト単位の数は、例えば、1から10個、1から5個、または1から3個であり得る。組合せ剤形内のネツピタント単位は、一括基準で50から500mg、好ましくは100から350mgのネツピタントの範囲を提供することができる。各ネツピタント単位は、好ましくは50から200mgのネツピタント、より好ましくは100から150mgのネツピタント、最も好ましくは100または150mgのネツピタントを含む。
【0061】
パロノセトロンは、経口投与に好適である任意の固体形態中に配合することもできるが、好ましくは、軟質ゲルカプセル剤として配合される。好適なパロノセトロン軟質ゲルカプセル剤の非限定的な例は、内容が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開WO2008/049552に提供されている。組合せ剤形内のパロノセトロン単位の数は、例えば、1から5個、1から3個または1個ちょうどであり得る。組合せ剤形内のパロノセトロン単位のそれぞれは、一括基準で0.01から5.0mgのパロノセトロン、好ましくは0.1から1.0mgのパロノセトロンの範囲を提供することができる。各パロノセトロン単位は、好ましくは、0.1から1.0mgのパロノセトロン、最も好ましくは約0.25、0.5、0.75または1.0mgのパロノセトロンを含む。
【0062】
図1は、パロノセトロンおよびネツピタントの組合せ経口剤形の例示的実施形態を説明する。剤形10は、本体20およびキャップ22を含むツーピース硬質外部シェルを含む。剤形10は、1個のパロノセトロン軟質ゲルカプセル剤30(好ましくは0.5mgのパロノセトロンを含有する)および3個のネツピタント錠剤40(それぞれは、好ましくは100mgのネツピタントを含有する)を含有する。
【0063】
硬質外部シェル
本発明の硬質外部シェルは、胃液中で溶解する任意の薬学的に許容可能な材料から作製することができる。硬質外部シェルに好ましい材料としては、例えばゼラチン、セルロース、デンプン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、硬質外部シェルは最大酸素透過性を有する。好ましくは、酸素透過性は、約1.0×10−3、5.0×10−4、1.0×10−4、5.0×10−5、またはさらには2.0×10−5ml・cm/(cm・24時間.atm)未満である。
【0064】
硬質外部シェルは連続構造であり得る。代替的に、硬質外部シェルはツーピース硬質カプセル剤であり得る。
【0065】
軟質ゲルカプセル剤
パロノセトロンに使用される軟質ゲルカプセル剤は、好ましくは、軟質外部シェルおよびパロノセトロン塩酸塩を含む液体内部充填組成物を含む。好適なパロノセトロン軟質ゲルカプセル剤の非限定的な例は、内容が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開WO2008/049552に提供されている。
【0066】
軟質ゲルカプセル剤の軟質外部シェルは、胃液中で溶解する任意のタイプの材料を含有することができる。軟質外部シェルに好ましい材料としては、例えば、ゼラチン、セルロース、デンプン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が挙げられる。軟質ゲルカプセル剤は、シェル賦形剤、例えばグリセリン、ソルビトールおよび着色剤/乳白剤、例えば二酸化チタンをさらに含むことができる。軟質ゲルカプセル剤は、溶媒、例えば精製水をさらに含むことができる。本発明の特定の実施形態において、外部シェルは、好ましくは1.0×10−3、5.0×10−4、1.0×10−4、5.0×10−5、またはさらには2.0×10−5ml・cm/(cm・24時間.atm)を超えない最大酸素透過性を有する。好適な軟質ゲルカプセル剤としては、Catalent Pharma Solutionsにより製造されている1.5オーバルのゼラチンカプセルシェルが挙げられる。
【0067】
液体充填物は、好ましくは、主として50重量%から99重量%、好ましくは75重量%から98重量%の量の1種以上の脂溶性構成成分から構成される。好ましい脂溶性構成成分としては、例えば、特にカプリル/カプリン酸のモノ−およびジ−グリセリドを含む脂肪酸のモノ−およびジ−グリセリドが挙げられる。液体充填物は、グリセリンを、好ましくは1から15重量%、より好ましくは2から10重量%の量で含有することもできる。1つの好ましい実施形態において、シェルおよび内部充填組成物は、両方ともグリセリンを含む。別の好ましい実施形態において、液体充填物は、約0.25、0.50、0.75mg以上のパロノセトロン塩酸塩としてのパロノセトロンを含む。
【0068】
充填組成物は、パロノセトロンを血流中により容易に吸収させることができるように、剤形から胃腸管の胃腸液へのパロノセトロンの転移を促進する種々の手段を含むことができる。例えば、液体充填組成物は、界面活性剤を、最適には0.1重量%から6重量%、0.5重量%から5重量%、または1.0重量%から3.0重量%の量で含有することができる。液体充填組成物は、好ましくは、0.1、0.5、または1.0重量%超の界面活性剤であり、10、8、5、4重量%未満または4重量%ちょうどの界面活性剤を含む。特に好ましい界面活性剤は、オレイン酸ポリグリセリルである。
【0069】
代替的にまたは付加的に、液体充填カプセル剤のための転移手段は、単相または賦形剤基剤中の他の液体成分とマイクロエマルションを形成する水を含むことができる。液体充填組成物は、好ましくは0.05重量%から30重量%の水、1重量%から20重量%の水、または2重量%から10重量%の水を含む。液体充填物は、好ましくは0.1、0.5または1.0重量%超の水であり、20、15、10、8または5重量%未満の水を含む。
【0070】
活性剤は、好ましくはパロノセトロン塩酸塩であり、好ましくは充填組成物中に0.01から10.0重量%、0.05から5.0重量%、または0.1重量%から2.0重量%の範囲の量で存在する。代替的に、特に安定な配合物は、パロノセトロンの濃度が、好ましくは1重量%を超えない濃度において0.3%を超過する場合に見出された。
【0071】
錠剤
本発明の錠剤は、20から95重量%のNK1アンタゴニスト(好ましくはネツピタント)を含むことができ、好ましくは60から80重量%のネツピタントを含む。さらに、錠剤は、希釈剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、流動促進剤、および/または滑沢剤を含有することができる。特定の実施形態において、錠剤は、5から25重量%の微結晶性セルロースを含む。微結晶性セルロースは、希釈剤および崩壊剤として機能することができ、好ましくは錠剤の15重量%をなす。別の好適な崩壊剤は、クロスカラメロースナトリウムであり、錠剤中に1から5重量%、好ましくは2重量%の量で存在し得る。
【0072】
錠剤中で使用される好適な結合剤はポリビニルピロリドンであり、これは錠剤中で錠剤の1から10重量%、好ましくは5重量%の量で存在し得る。錠剤中で使用される好適な流動促進剤はコロイダル二酸化ケイ素であり、これは錠剤中で2重量%の量で存在し得る。錠剤中で使用される好適な滑沢剤としては、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが挙げられ、これらは錠剤中でそれぞれ0.7重量%および0.35重量%の量で存在し得る。
【0073】
組合せ経口剤形の適用
本発明は、悪心嘔吐を罹患する患者または悪心嘔吐を罹患するリスクを有する患者に、本発明の剤形を経口投与することを含む、悪心嘔吐を治療する方法をさらに提供する。いっそうさらなる実施形態において、本発明は、本明細書に記載の剤形の1種以上を投与することにより悪心嘔吐を治療する方法を提供する。剤形は、好ましくは悪心嘔吐誘発性イベント直前(すなわち、イベント前2時間を超えない)に投与される。悪心嘔吐は、急性期悪心嘔吐(すなわち、悪心嘔吐誘発性イベントの約24時間以内に経験される悪心嘔吐)でも、遅発期悪心嘔吐(すなわち、急性期後であるが、悪心嘔吐誘発性イベントの7、6、5または4日以内に経験される悪心嘔吐)でもよい。悪心嘔吐は、中程度もしくは高度に催吐性の化学療法からの化学療法誘発性悪心および嘔吐(「CINV」)、放射線療法誘発性悪心および嘔吐(「RINV」)、または術後悪心および嘔吐(「PONV」)を構成することができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本明細書において特許請求される化合物がいかに作製され、評価されるかの完全な開示および説明を当業者に提供するために説明されるものであり、純粋に本発明の例示であるにすぎず、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定するものではない。数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するための試みをなしたが、一部の誤差および偏差が占めるはずである。特に示さない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、または室温におけるものであり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧におけるものである。
[実施例1]
【0075】
経口剤形の調製
好ましい実施形態において、組合せは、カプセル経口剤形で投与され、カプセル剤は、パロノセトロンについての1個以上の軟質ゲルカプセル剤およびネツピタントについての1個以上の硬質錠剤を収容する。以下の表1は、このような硬質外部シェル中での包含に好適である0.5mgのパロノセトロンを含有する軟質ゲルカプセル剤についての代表的な配合を記載する。
【0076】
【表1】

以下の表2は、硬質シェル中での包含に好適である、100mgのネツピタントを含有する錠剤のための代表的な配合を記載する。
【0077】
【表2】

[実施例2]
【0078】
組合せ剤形の薬物動態
目的
ネツピタントの薬物動態(PK)に対するパロノセトロンの効果およびパロノセトロンのPKに対するネツピタントの効果を健常被験者において試験した。
【0079】
方法
無作為オープン三元クロスオーバー試験を実施した。各対象は、それぞれ約12日間(1日目から11日目)継続する3つの治療期間において参加した。治療期間を14日間超(任意の2つの連続する治療期間の1日目の間)のウオッシュアウト期間により分離した。
【0080】
以下の治療を調査した:
治療A:経口ネツピタント450mgを3個の150mgのカプセル剤の単回用量として投与した。
【0081】
治療B:経口パロノセトロン0.75mgおよび経口ネツピタント450mgを同時に150mgのネツピタントの3個のカプセル剤に続く0.75mgのパロノセトロンの1個のカプセル剤として投与した。
【0082】
治療C:経口パロノセトロン0.75mgを1個の0.75mgのカプセル剤としての単回用量として投与した。
【0083】
用量は、絶食条件下で投与した。対象は、約10時間一晩絶食した。しかしながら、水は投与1時間前まで許可した。食料摂取は、投与4時間後に許可し、水は、投与1時間後に自由に許可した。
【0084】
用量は、対象に立位で投与した。対象は、立位を投与後4時間維持した。カプセル剤は、250mLの室温水道水により全部飲み込ませた。繰り返しPK血液サンプリング(ネツピタントおよび/またはパロノセトロンについて)を実施した。
【0085】
結果
ネツピタントおよびパロノセトロンについて評価した主要PK項目は、観察された最大血漿濃度(Cmax)、0時間から最終定量化可能サンプリング時点(t)までの血漿濃度時間曲線下面積(AUC0−t)、および0時間から無限大時間までの血漿濃度時間曲線下面積(AUC0−inf)であった。評価した副次的PK項目は、最終排出半減期(t1/2,z)、および最大血漿濃度が観察された時間(tmax)であった。結果を以下の表3および4、ならびに図2および3に示す。
【0086】
【表3】

以下の表4から理解することができるとおり、パロノセトロンは、単回用量のパロノセトロンとして投与された場合とは異なり、ネツピタントと組み合わされた場合、より良好な薬物動態プロファイル、例えば、より広いAUC、より大きいCmax、より短いtmax(中央値tmaxは、ネツピタントとの組合せにおけるパロノセトロンの投与後に0.5時間短かった)、およびより長いt1/2,zを示す。
【0087】
【表4】

[実施例3]
【0088】
ネツピタント+デキサメタゾン薬物相互作用試験
経口投与されるデキサメタゾンの薬物動態に対するネツピタントの効果を本試験において評価した。この試験は、対象にデキサメタゾン単独、または経口ネツピタント100mg、300mgまたは450mgをそれぞれデキサメタゾンとともに与える不完全ラテン方格計画を利用する無作為オープン3期間クロスオーバー試験であった。ネツピタントは、1日目にのみ経口により与えた。各治療についてのデキサメタゾンレジメンは、1日目に経口20mg、次いで2日目から4日目まで12時間ごとに経口8mgであった。19人の対象(12人の男性および7人の女性)がこの試験(すなわち、3つ全ての治療期間)を完了した。
【0089】
デキサメタゾンの平均血漿濃度は、デキサメタゾンをネツピタントと同時投与した場合により高かった(図4)。この増加は、ネツピタント曝露に依存すると考えられた。
【0090】
デキサメタゾンのAUC0−24(1日目)は、100、300および450mgのネツピタントの同時投与とともにそれぞれ1.5、1.7および1.8倍増加した。デキサメタゾンのAUC24−36(2日目)は、100、300および450mgのネツピタントの同時投与とともにそれぞれ2.1、2.4および2.6倍増加し、AUC84−108およびAUC84−inf(4日目)は、1.7、2.4および2.7倍増加した。1日目のデキサメタゾンCmaxは、ネツピタントの同時投与によりわずかに影響を受けたにすぎなかった(100および300mgのネツピタントとの同時投与の間にそれぞれ1.1倍増加、450mgのネツピタントとの同時投与の間に1.2倍増加)。2日目および4日目のCmaxは、ネツピタントを投与した対象において約1.7倍増加した。2から4日目のデキサメタゾンCminは、100、300および450mgのネツピタントの同時投与とともにそれぞれ約2.8、4.3および4.6倍増加した。このことは、ネツピタントおよびデキサメタゾンの同時投与がデキサメタゾンのバイオアベイラビリティを向上させ、デキサメタゾンのより良好な治療域を提供することを明確に示す。
[実施例4]
【0091】
ネツピタントPET受容体占有率試験
本試験は、単回用量のネツピタント(100、300または450mg)を受容する6人の健常男性被験者(用量レベル当たり2人)において11C−GR205171をトレーサーとして使用してヒト脳内のNK受容体の占有度を調査し、ネツピタントの血漿濃度とNK受容体占有率(RO)との関係を決定する、無作為オープンラベルのポジトロン放出断層撮影(PET)試験であった。
【0092】
期待されたCmaxに近い予期された高いNK−RO(90%以上)(投与6時間後)が、6人の対象のうち3人(1人は300mg、2人は450mgのネツピタントを単回経口用量として受容した)において線条体、後頭皮質、前頭皮質および前帯状領域について達せられた。
【0093】
全ての用量は比較的長い持続期間のNK受容体の遮断を示し、経時的下降は用量依存的であった。100mg用量群において、6人の被験者のうち4人は、投与96時間後において70%を超える平均NK−ROを依然として有した。最大用量群(450mg)において、6人の被験者のうち5人は、投与96時間後に80%以上の平均NK−ROを有した。用量群(100mg、300mgおよび450mg)についての結果の比較は、一貫するがネツピタント用量の増加とともにNK−ROの小さい増加を示した(図5)。
[実施例5]
【0094】
臨床有効性試験
第2相試験は、パロノセトロン単独およびデキサメタゾンと比較してパロノセトロンおよびデキサメタゾンと組み合わせた3種の単回用量のネツピタントを評価してCINV患者母集団において経口パロノセトロンとともに使用するネツピタントについての用量範囲情報を得た。
【0095】
本試験の目的は、経口パロノセトロンと組み合わせ、デキサメタゾンとともに与える3種の単回経口用量のネツピタントの有効性および安全性を、デキサメタゾンとともに与える経口パロノセトロン単独(ネツピタントなし)と、高度に催吐性の化学療法(HEC)誘発性悪心および嘔吐の予防について比較することであった。静脈内投与オンダンセトロンおよびデキサメタゾンとともに与えられるFDA承認経口アプレピタントレジメンを、探索目的のための活性比較物として本試験に含めた。FDA承認経口パロノセトロン0.5mg用量を本試験においてそれぞれの適用可能な治療群において使用した。
【0096】
本試験は、多施設無作為二重盲検ダブルダミー並行群層別試験であった。適格な患者を以下の治療群の1種に無作為化(性別により層別化)した:
第1群−1日目における0.5mg経口パロノセトロン(経口デキサメタゾン標準レジメン:1日目20mgおよび2日目から4日目まで1日2回8mgを用いる)
第2群−1日目における100mg経口ネツピタントと0.5mg経口パロノセトロン(経口デキサメタゾン調整レジメン:1日目12mgおよび2日目から4日目まで毎日8mgを用いる)
第3群−1日目における200mg経口ネツピタントと0.5mg経口パロノセトロン(経口デキサメタゾン調節レジメン:1日目12mgおよび2日目から4日目まで毎日8mgを用いる)
第4群−1日目における300mg経口ネツピタントと0.5mg経口パロノセトロン(デキサメタゾン調節レジメン:1日目12mgおよび2日目から4日目まで毎日8mgを用いる)
第5群−125mg経口アプレピタントと静脈内投与オンダンセトロン32mg(両方とも1日目)、次いで2日目および3日目における80mg経口アプレピタント(全て、経口デキサメタゾン調節レジメン:1日目12mgおよび2日目から4日目まで毎日8mgを用いる)
さらに、第6群を、Grunberg et al.,Support Cancer Care(2009)17:589−594により報告されている結果に基づく比較目的のための分析に付加した:
第6群−285mg経口アプレピタントと20mg経口デキサメタゾンと0.2mgパロノセトロン静脈内投与(全て1日目)、次いで80mg経口アプレピタント
主要有効性エンドポイントは、高度に催吐性の化学療法施与の開始後120時間以内の完全奏功率(悪心嘔吐事象なし、救済投薬なしと定義)であった。副次的有効性エンドポイントは以下のものであった:
0から24時間間隔(急性期);および25から120時間間隔(遅発期)についての完全奏功;
完全抑制(悪心嘔吐なし、救済治療なし、有意な悪心なしと定義);総制御(悪心嘔吐なし、救済治療なしおよび悪心なしと定義);悪心なし(最大VAS<5mm);有意な悪心なし(最大VAS<25mm);救済投薬なし;悪心嘔吐なし。これらのエンドポイントを、0から120時間間隔(全期間)、急性期および遅発期にわたり評価した。
【0097】
初回嘔吐性事象までの時間、初回救済投薬までの時間、治療成功期間(初回嘔吐性事象までの時間または初回救済投薬までの時間のいずれか早く発生したものに基づく);
全期間、急性期および遅発期についての悪心の重症度;・それぞれ24時間間隔にわたるVASを介する制吐治療による患者の全体的な満足度。
【0098】
完全奏功率を表5にまとめる。シスプラチン投与開始0から120時間後にわたり完全奏功を有する患者の割合は、パロノセトロン単独群において76.5%であり、ネツピタント100mg、200mg、および300mgの群においてそれぞれ87.4%、87.6%、および89.6%であった。パロノセトロン単独との差は、10%超であった(10.9%から13.2%)。ネツピタントの全ての用量は、パロノセトロン単独よりも統計的に優れていた(ネツピタント300mg組合せ群についてp値=0.004)。
【0099】
【表5】

表6は、主な副次的エンドポイントについての結果をまとめる。全期間において、パロノセトロン単独群における患者の76.5%が悪心嘔吐を経験しなかった一方、ネツピタント100mg、200mg、および300mgの組合せ群における患者のそれぞれ87.4、87.6、および91.1%が悪心嘔吐を経験しなかった(全ての用量についてp<0.05)。
【0100】
【表6】

[実施例7]
【0101】
アプレピタント投与レジメンの比較結果
以下の表8は、とりわけ、アプレピタントが悪心に対して有意な効果を有しないことを実証する、アプレピタントについてのFDA承認処方情報に記載のアプレピタント投与レジメンについて観察された結果を報告する。表7は、投与レジメンを報告する:
【0102】
【表7】

【0103】
【表8】

本出願全体にわたり、種々の刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示をそれらの全体において本出願に参照することにより本明細書に組み込んで、本発明が関係する技術水準をより完全に記載する。本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく本発明において種々の改変および変更をなすことができることは、当業者に明らかである。本発明の他の実施形態は、本明細書に開示の本発明の明細書および実施を考慮すると、当業者に明らかである。明細書および実施例は単なる例示として考慮されるものとし、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続で治療する方法であって:
a)1日目に前記患者に、ネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、悪心嘔吐の急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐を治療するために有効であり、全身循環に入り、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する治療有効量で投与すること;
b)1日目に前記患者に、急性期および遅発期の間の前記悪心および嘔吐を治療するために有効である治療有効量の5−HTアンタゴニストまたは薬学的に許容可能なその塩を投与すること;ならびに
c)1日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第1の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第1の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の50から70%を含む);
を含む方法。
【請求項2】
d)2、3および4日目に、前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第2の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第2の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の40から60%を含む)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネツピタントが、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも80%を占有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1回用量のみのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を前記5日間の間に投与する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1回用量のみのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を前記5日間の間に投与し、前記1回用量を経口投与する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記治療有効量のネツピタントが、約200から約400mgのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療有効量のネツピタントが、約300mgの遊離塩基としてのネツピタントを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
単独で投与される場合の前記治療最小有効用量のデキサメタゾンが、約16mgから約20mgのデキサメタゾンを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1回用量のみの5−HTアンタゴニストまたは薬学的に許容可能なその塩を前記5日間の間に投与する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
5−HTアンタゴニストが、オンダンセトロンまたはパロノセトロンである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療有効量の5−HTアンタゴニストが、約0.25から約0.75mgのパロノセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療有効量の5−HTアンタゴニストが、約0.5mgの遊離塩基としてのパロノセトロンに対応する約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記パロノセトロンを経口投与する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
a)1日目に約300mgの遊離塩基としてのネツピタント;
b)1日目に約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩(約0.5mgの遊離塩基としてのパロノセトロンに対応する);および
c)1日目に約12mgのデキサメタゾン
を経口投与することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
a)1日目に約300mgの遊離塩基としてのネツピタント;
b)1日目に約0.5mgの遊離塩基としてのパロノセトロンに対応する約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩;
c)1日目に約12mgのデキサメタゾン;ならびに
d)2、3、および4日目に約8mgのデキサメタゾン
を経口投与することを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
悪心および嘔吐の治療が必要とされる患者において悪心および嘔吐を5日間連続の期間治療する方法であって、前記患者にネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を、悪心嘔吐の急性期および遅発期の間の悪心および嘔吐を治療するために有効であり、全身循環に入り、血液脳関門を越え、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも70%を占有する治療有効量で投与することを含む方法。
【請求項17】
前記ネツピタントが、前記投与72時間後に線条体内のNK受容体の少なくとも80%を占有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
a)1日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第1の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第1の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の50から70%を含む);ならびに
b)前記患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、2、3および4日目に前記患者に、単独で投与される場合に悪心および嘔吐に対して無効であるが、前記ネツピタントとの組合せにおいて投与される場合に悪心および嘔吐に対して有効である第2の用量のデキサメタゾンを投与すること(前記第2の用量は、単独で投与される場合の最小有効用量の40から60%を含む)
をさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
治療有効量の5−HTアンタゴニストを投与することをさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療有効量のネツピタントが、約200から約400mgのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を含み、前記治療有効量の5−HTアンタゴニストが、約0.25から約0.75mgのパロノセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩を含み、単独で投与される場合の前記治療最小有効用量のデキサメタゾンが、約16mgから約20mgのデキサメタゾンを含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
a)約300mgの遊離塩基としてのネツピタントを含む1回用量のみのネツピタントを前記5日間の間に1日目に投与し;
b)1日目に約12mgのデキサメタゾンを投与し;
c)前記患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、2、3および4日目に約8mgのデキサメタゾンを投与する、
請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
約0.5mgの遊離塩基としてのパロノセトロンに対応する約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩を含む1回用量のみの5−HTアンタゴニストを前記5日間の間に1日目に投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記悪心および嘔吐が、化学療法誘発性悪心および嘔吐(「CINV」)、放射線療法誘発性悪心および嘔吐(「RINV」)、または術後悪心および嘔吐(「PONV」)である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記悪心および嘔吐が、中程度または高度に催吐性の化学療法により誘発される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩の前記投与の約1時間から約2時間以内に中程度または高度に催吐性の化学療法を施与することを含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
急性期の間の高度に催吐性の化学療法に応答する、もしくは遅発期の間の高度に催吐性の化学療法に応答する、または急性期の間の中程度に催吐性の化学療法に応答する、もしくは遅発期の間の中程度に催吐性の化学療法に応答する悪心および嘔吐を治療することを含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
中程度または高度に催吐性の化学療法に応答するCINVの急性期および/または遅発期の間に悪心および嘔吐の治療が必要とされるヒト対象において悪心および嘔吐を治療する方法であって、治療有効量のネツピタント、または薬学的に許容可能なその塩、および治療有効量のパロノセトロン、または薬学的に許容可能なその塩を前記化学療法前に投与することを含む方法。
【請求項28】
約200から約400mgのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩、および約0.25から約0.75mgのパロノセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩を経口投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
約300mgの遊離塩基としてのネツピタント、および約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩を経口投与することを含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、1、2、3および4日目に治療用量未満のデキサメタゾンを投与することをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が高度に催吐性の化学療法を受けている場合、1日目に12mgのデキサメタゾンを、2、3および4日目に8mgのデキサメタゾンを経口投与することをさらに含む、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ネツピタントがデキサメタゾンの治療効果を強化する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ネツピタントが、パロノセトロンのバイオアベイラビリティを促進する、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
パロノセトロンおよびNK1アンタゴニスト、または薬学的に許容可能なそれらの塩もしくはプロドラッグの組合せを含む経口投与剤形であって:
a)外部シェル;
b)前記外部シェル内に収容された1個以上のNK1アンタゴニスト単位(それぞれが、前記ネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む);ならびに
c)前記外部シェル内に収容された1個以上のパロノセトロン単位(それぞれが、前記パロノセトロンまたは薬学的に許容可能なそのエステルもしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む)
を含み;
前記剤形が、(3S)−3−[(3aS)−1−オキソ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−2−イル]−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オレートを、3重量%を超過しない量で含む経口投与剤形。
【請求項35】
約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩および約100から約500mg、または約200から約400mg、または約300mgのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、請求項34に記載の剤形。
【請求項36】
前記1個以上のNK1アンタゴニスト単位が、1個以上の経口投与錠剤の形態であり、前記パロノセトロン単位が1個以上の経口投与軟質ゲルカプセル剤の形態である、請求項34または35に記載の剤形。
【請求項37】
前記錠剤のそれぞれが、約50から約200mg、または約100から約150mg、または約100mgのネツピタントを含む、請求項34から36のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項38】
前記カプセル剤の前記外部シェルが、1.0×10−3ml・cm/(cm・24時間.atm)未満の酸素透過性を有する、請求項34から37のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項39】
前記軟質ゲルカプセル剤のそれぞれが、0.1から2.0mgのパロノセトロン塩酸塩を含む内部充填組成物を含む、請求項34から38のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項40】
前記軟質ゲルカプセル剤のそれぞれが、75から98重量%の1種以上の脂溶性構成成分を含む内部充填組成物を含む、請求項34から39のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項41】
前記軟質ゲルカプセル剤のそれぞれが、1.0×10−3ml・cm/(cm・24時間.atm)未満の酸素透過性を有する外部シェルを含む、請求項34から40のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項42】
経口投与カプセル剤形であって:
a)外部シェル;
b)前記外部シェル内に収容された1個以上の錠剤(それぞれが、NK1アンタゴニストまたは薬学的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む);ならびに
c)前記外部シェル内に収容された1個以上の軟質ゲルカプセル剤(それぞれが、パロノセトロンまたは薬学的に許容可能なそのエステルもしくはプロドラッグおよび1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む)
を含み;
前記剤形が、(3S)−3−[(3aS)−1−オキソ−2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1H−ベンゾ[de]イソキノリン−2−イル]−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン−1−オレートを、3重量%を超過しない量で含む経口投与カプセル剤形。
【請求項43】
約0.56mgのパロノセトロン塩酸塩および約100から約500mg、または約200から約400mg、または約300mgのネツピタントを含む、請求項42に記載のカプセル剤。
【請求項44】
前記カプセル剤の前記外部シェルが、1.0×10−3ml・cm/(cm・24時間.atm)未満の酸素透過性を有する、請求項42または43に記載のカプセル剤。
【請求項45】
前記錠剤のそれぞれが、約50から約200mg、または約100から約150mg、または約100mgのネツピタントまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、請求項42から44のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項46】
前記軟質ゲルカプセル剤のそれぞれが、1.0×10−3ml・cm/(cm・24時間.atm)未満の酸素透過性を有する外部シェルを含む、請求項42から45のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項47】
前記軟質ゲルカプセル剤が、0.1から2.0mgのパロノセトロン塩酸塩を含む内部充填組成物を含む、請求項42から46のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項48】
前記軟質ゲルカプセル剤が、75から98重量%の1種以上の脂溶性構成成分を含む内部充填組成物を含む、請求項42から47のいずれか一項に記載のカプセル剤。
【請求項49】
ネツピタントおよびパロノセトロンが別個の形態で配合され、次いで1回の投与量に組み合わせられた、請求項34から48のいずれか一項に記載の剤形またはカプセル剤。
【請求項50】
悪心嘔吐の治療が必要とされるヒトに、請求項34から51のいずれか一項に記載の剤形を投与することを含む、悪心嘔吐を治療する方法。
【請求項51】
前記悪心嘔吐が遅発発症性悪心嘔吐である、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511507(P2013−511507A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539433(P2012−539433)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003106
【国際公開番号】WO2011/061622
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512128449)ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】