説明

中枢機能改善薬

【課題】GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物(GIRKチャネル抑制化合物)を、有効成分として含有する中枢機能改善薬を提供すること。
【解決手段】この発明に係る中枢機能改善薬は、GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物(GIRKチャネル抑制化合物)を、有効成分として含有し、かつ、特に既存薬、つまりフルボキサミンなどのSSRIでは効果がなかった強迫性モデルに対して有効であるとともに、副作用が少ない薬剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中枢機能改善薬に関するものであり、更に詳細には、GIRKチャンネル活性化電流抑制作用を有するGIRKチャンネル活性化電流抑制化合物を有効成分として含有する中枢機能改善薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不安障害のサブタイプの1つである強迫性障害は、不要な考えが心の中に繰り返し起こる「強迫観念」と、それを打ち消す「強迫行為」の2つの症状に特徴づけられ(非特許文献1、2)、有病率が0.7%〜8.0%と非常に高く、不安障害の中でも特に治りにくい難病の1つである(非特許文献3)。
【0003】
1980年以降、ある種の抗うつ薬が強迫性障害に有効であるとの報告がなされてきたが、わが国では、強迫性障害の治療薬として認可されている医薬品は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)の2剤(フルボキサミンおよびパロキセチン)のみである。しかし、その効果は、40%〜60%もの患者が満足には応答しないことから、十分な治療が行われていないのが現状である(非特許文献4)。これらのSSRIは、セロトニンレベルを上昇させ、5HT1A受容体を活性化することにより、強迫性障害モデルであるマウスのガラス玉覆い隠し行動(非特許文献5)を抑制する作用を有している。
【0004】
強迫性障害の症状は、ストレスに曝されると、その発症(非特許文献6)や重篤度(非特許文献7、8)が影響されるとの報告がある。この強迫性障害のストレス応答性は、視床下部―下垂体―副腎皮質(hypothalamic-pituitary-adrenal axis: HPA)系が主要なストレス系であるので、このHPA系によっておそらく仲介されていると考えられる。このHPA系は、大うつ病(非特許文献9)や外傷後ストレス障害(非特許文献10)などのいくつかの精神障害において変化しているのが分かっている。最近の研究結果は、HPA系の強迫性障害の病態生理学における役割を示している(非特許文献11)。さらに、セロトニン系の障害は、強迫性障害における仲介的役割をおそらく果たしていると考えられる(非特許文献12、13)。また、すべての結果が支持しているわけではないが、治療抵抗性強迫性障害患者においてHPA系がセロトニンに対して低反応性であることが報告されている(非特許文献14、15、16)。神経内分泌形質マーカーという考えは、難治性強迫性障害患者においての静脈内薬理学的治療に対する臨床応答におけるコルチゾル反応の予測的効果を示す結果によって支持されている(非特許文献17)。神経解剖学的には、前帯状回は、強迫性障害の病態生理学(非特許文献18、19)ならびにHPA系の制御に関与しているとの提案がなされている(非特許文献20)。上述したように、前帯状回でのセロトニンバランスと変化における既知の不安を有する別の障害(非特許文献21)である大うつ病の成人患者は、一貫してHPA過剰反応性を示した(非特許文献22)。
【0005】
つまり、強迫性障害患者における基礎的な条件下でのHPA系の役割を直接的にまたは間接的に示すほとんどの研究では、副腎皮質ホルモン(adrenocorticotropic hormone: ACTH)(非特許文献23)とコルチゾル(非特許文献24、25、26、27)の基礎分泌過多を含む中枢機能亢進が指摘されている(非特許文献28)。
【0006】
本発明者らは、過去20数年にわたる中枢性鎮咳薬に関する研究の結果、鎮咳薬であるチペピジン(tipepidine)がGタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)を抑制することを既に報告している(非特許文献29)。
【0007】
さらに、本発明者らは、長年に亘る研究成果を、このGIRKチャネル活性化電流を抑制する作用を有する化合物を活性成分として含有する、うつ病や治療抵抗性うつ病などの気分障害または感情障害の治療薬(特許文献1)、注意欠陥・多動性障害の治療薬(特許文献2)、治療薬のない脳硬塞に伴う排尿障害を改善する薬剤(特許文献3)、環境化学物質に起因する脳機能障害の機能改善薬(特許文献4)、および排尿障害治療薬(特許文献5)として特許出願をしている。
【0008】
ところで、GIRKチャンネルは、心筋などに加えて脳内に広く分布し、様々な受容体と共役していて、この共役する受容体を介して、活性化され、細胞の興奮性を抑制する作用に関与していることが知られている。このGIRKチャンネル活性は細胞内の様々な要因により調節を受けていることも知られている。またGIRKチャンネルは、セロトニン(5-HT)やノルアドレナリンなどの様々な神経伝達物質受容体と共役しており、例えば5-HT1A受容体やアドレナリン受容体をそれぞれ刺激するセロトニンやノルアドレナリンにより活性化されることが知られている。
【0009】
一方、うつ病の治療は、抗うつ薬を主体とする薬物療法が中心であり、多くの患者は抗うつ薬の服用で時間症状が改善し社会生活への復帰が可能になっているが、十分な治療を行ったにも拘らずうつ症状の改善が認められない治療抵抗性うつ病の存在が問題となっている。これまで、うつ病は、中枢神経系の機能異常のみならず、HPA系の機能異常を含む中枢神経系―内分泌系の機能異常が関与していることが知られている。そこで、HPA系の過活動モデルが治療抵抗性うつ病の病態像の一部を反映していると仮定して、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反復投与によるHPA系のHPA系過活動モデルの作製が試みられ、そのモデル動物を用いた抗うつ薬のスクリーニング系であるラット強制水泳法による不動時間を指標とした検討の結果、ACTH反復投与ラットでは、いくつかの既存の抗うつ薬の抗うつ効果が消失し、薬物反応性から治療抵抗性うつ病を反映していると考えられている(非特許文献30)。
【0010】
そこで、本発明者らは、GIRKチャンネルが、セロトニン(5-HT)などの様々な神経伝達物質受容体と共役しており、かつ、5-HT1A受容体などを刺激するセロトニンによって活性化されることに注目して、GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有するチペピジンについて鋭意研究をした結果、チぺピジンが、これまで既存薬、つまりフルボキサミンなどのSSRIでは効果がなかった強迫性モデルに対して効果的であることを見出した。また、本発明者らは、ACTHの連続投与によって、ガラス玉覆い隠し行動に対して、SSRIであるフルボキサミンでは抵抗性が惹起されるのに対して、チぺピジンではその抵抗性が惹起されないことを見出した。したがって、この発明は、これらの発見に基づいて完成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−227631
【特許文献2】WO2007/037258
【特許文献3】WO2005/084709
【特許文献4】WO2007/139153
【特許文献5】特開2007−204366
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Rasmussen, S.A., et al., Psychiatr. Clin. North Am 1992; 15:743-758
【非特許文献2】Sasson, Y., et al., J. Clin. Psychiatry 1997; 58 Suppl 12:7-10
【非特許文献4】Pallanti, S., et al., Prog. Neuropsychopharmacol. Biol. Psychiatry 2006; 30:400-412
【非特許文献5】今西泰一郎他、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)126, 94-98 (2006)
【非特許文献6】Gothelf,2004
【非特許文献7】Coles,2005
【非特許文献8】Cromer 2007
【非特許文献9】Parker 2003
【非特許文献10】Yahuda 1998
【非特許文献11】Gustafsson 2008
【非特許文献12】Rosenberg 1998
【非特許文献13】Pigott 1996
【非特許文献14】Monteleone 1995
【非特許文献15】Millet 1999
【非特許文献16】Khanna 2001
【非特許文献17】Mathew 2001
【非特許文献18】Rosenberg 1998
【非特許文献19】Ursu 2003
【非特許文献20】Herman 2003
【非特許文献21】Caetano 2006
【非特許文献22】Parker 2003
【非特許文献23】Kluge 2007
【非特許文献24】Kluge 2007
【非特許文献25】Catapano 1902
【非特許文献26】Monteleone 1994
【非特許文献27】Brambilla 2000
【非特許文献28】Altemus 1992
【非特許文献29】Takahama, K., et al., Handb. Exp. Pharmacol. 2009:219-240
【非特許文献30】日本薬理学雑誌 Vol. 132, No. 6, pp. 329-333 (J-STAGE) (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物(以下、「GIRKチャネル抑制化合物」という場合もある)を、強迫性障害の治療に有効な活性成分として含有する中枢機能改善薬およびその用途を提供することを目的としている。
【0014】
この発明は、その好ましい態様として、GIRKチャネル抑制化合物が、ACTH連続投与によるガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗作用を有していない中枢機能改善薬およびその用途を提供することを目的としている。
【0015】
この発明は、その好ましい態様として、GIRKチャネル抑制化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジンおよびクエン酸イソアミニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である中枢機能改善薬およびその用途を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、この発明は、GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物(以下、「GIRKチャネル抑制化合物」という場合もある)を、強迫性障害の治療に有効な活性成分として含有する中枢機能改善薬およびその用途を提供する。
【0017】
この発明は、その好ましい態様として、GIRKチャネル抑制化合物が、ACTH連続投与によるガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗作用を有していない中枢機能改善薬およびその用途を提供する。
【0018】
この発明は、その好ましい態様として、GIRKチャネル抑制化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジンおよびクエン酸イソアミニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である中枢機能改善薬およびその用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る中枢機能改善薬およびその用途は、特に既存薬、つまりフルボキサミンなどのSSRIでは効果がなかった強迫性モデルに対して有効であるとともに、副作用が少ないという極めて大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】チペピジンのマウスガラス玉覆い隠し行動の実験結果を示す図。
【図2】フルボキサミンのマウスガラス玉覆い隠し行動の実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明に係る中枢機能改善薬は、GIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物(GIRKチャネル抑制化合物)を、有効成分として含有し、かつ、特に既存薬、つまりフルボキサミンなどのSSRIでは効果がなかった強迫性モデルに対して有効であるとともに、副作用が少ない薬剤である。
【0022】
この発明において使用可能なGIRKチャネル活性化電流抑制作用を有する化合物は、ACTH連続投与によるガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗性を有しないとともに、細胞内のGIRKチャネル活性化電流を抑制することができる化合物であって、例えば、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジンおよびクエン酸イソアミニルから選択することができ、これらの化合物は有効成分として単独でもまたは2種以上を併合しても使用することができる。
【0023】
この発明において使用する薬剤が、中枢機能に対して改善効果を有するかどうかの試験は、副腎皮質ホルモン(ACTH)の連続投与によりホルモンレベルを一定に維持した状態の動物モデルを使用して、ガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗性を調べることによって実施することができる。
【0024】
ガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗性を調べる試験は、行動的類似性に基づいた強迫性障害の有力なモデルと考えられている。実際、ヒトの強迫性障害の症状を処置するために適用されているフルボキサミンやパロキセチン等のSSRIは、運動症状には悪影響を及ぼすことなく、ガラス玉覆い隠し行動を抑制することができる。
【0025】
この発明に係る中枢機能改善薬は、経口的(舌下投与を含む)または非経口的に投与される。このような薬剤の形態としては、錠剤 、カプセル剤 、細粒剤 、丸剤 、トローチ剤 、輸液剤 、注射剤 、坐剤 、軟膏剤 、貼付剤等を挙げることができる。
【0026】
この発明の中枢機能改善薬を輸液剤として生体内に投与する際には、生理食塩水に、必要に応じて他の水溶性の添加剤、薬液を配合したものを用いることができる。このような水に添加される添加剤としては、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属イオン、乳酸、各種アミノ酸、脂肪、グルコース、フラクトース、サッカロース等の糖質等の栄養剤、ビタミンA、B、C、D等のビタミン類、リン酸イオン、塩素イオン、ホルモン剤、アルブミン等の血漿蛋白、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ等の高分子多糖類等を挙げることができる。このような水溶液における化合物の濃度は、10-7Mから10-5Mの濃度の範囲とすることが好ましい。
【0027】
この発明による中枢機能改善薬はまた、固形剤として生体に投与することができる。固形剤としては、粉末、細粒、顆粒、マイクロカブセル、錠剤等を挙げることができる。このような固形剤の中では、好ましくは嚥下しやすい錠剤の形状をしていることが好ましい。
【0028】
錠剤を形成するための充填剤、粘結剤としては公知のもの、例えばオリゴ糖等を使用することが出来る。錠剤の直径は2〜10mm、厚さは1〜5mmの範囲にあることが好ましい。また、他の治療薬と混合して使用してもよい。
【0029】
固形剤には通常用いられる種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、甘味剤、抗酸化剤、着香剤、着色剤、保存剤、無機充填剤等を挙げることができる。
【0030】
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレン型、多価アルコールエステル型、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等の非イオン界面活性剤があるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
嚥下性等の改良等の目的のため配合される無機充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、二酸化チタン等を挙げることができる。
【0032】
安定剤としては、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸等を挙げることができる。可溶化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール等の界面活性剤、アスパラギン、アルギニン等を挙げることができる。甘味剤として、アスパルテーム、アマチャ、カンソウ等、ウイキョウ等を挙げることができる。
【0033】
懸濁化剤としては、カルボキシビニルポリマー等を、抗酸化剤としては、アスコルビン酸等を、着香剤としては、シュガーフレーバー等を、pH調整剤としてはクエン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0034】
この発明による中枢機能改善薬は、通常1回1〜40mg、好ましくは10mg〜20mg、1日3回までの範囲で体内に投与される。
【0035】
以下の実施例によりこの発明を更に詳しく説明するが、この発明はこれらの実施例によって一切限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
各実験薬剤のガラス玉覆い隠し行動についての実験は、次のようにして実施した。
(実験動物)
実験には、4〜8週齢の雄ddYマウスを使用した(日本SLC社または九動社)。実験マウスは、ケージ当たり6匹または7匹のグループで飼育し、3〜5日間、室温23±1℃、12:12 時間明暗サイクル(8:00 am 〜 8:00 pm)に維持した室内で、水道水と飼料(標準ペレット、クレア社製)を自由に摂取させた。本実験は、熊本大学動物実験委員会の承認を受け、日本薬理学会の実験動物の飼育および使用ガイドラインに従って実施した。
【0037】
(実験薬剤)
実験薬剤としては、チペピジンクエン酸塩(三菱田辺)、フルボキサミンマレイン酸塩(シグマ社)およびACTH-(1-24)−zinc(Cortrosyn-Z;第一三共)を使用した。チペピジンクエン酸塩とフルボキサミンマレイン酸塩は生理食塩水(0.9% NaCl)に溶解し、行動試験前に皮下投与した。ACTH-(1-24)−zincは、1日当たり20 μgを10日間連続皮下投与した。コントロールとして等量の生理食塩水(0/15 mL/マウス)を10日間投与した。
【0038】
(実験方法)
ガラス玉覆い隠し行動実験は次のようにして実施した。各マウスを、床に5 cm厚におかくずを敷き詰めたプラスチックケージ(17 x 28 x 12 cm)に入れた。このおかくずの上に20個の青色ガラス玉(25 mm)を、5個ずつ4列に等間隔に配置した。マウスをこのケージの中に飼料も水も与えずに30分間入れて、おかくずに覆い隠されていないガラス玉を数えた。ガラス玉が3分の2程おかくずに覆い隠されていたら、「覆い隠された」と判断した。覆い隠されたガラス玉の数は、強迫性障害の行動の指標であると考えられる。ガラス玉の数は、処理グループに対して盲検の観察者によって分析した。図1は、チぺピジンのガラス玉覆い隠し行動に対する効果を示す図である。コントロールとしては生理食塩水を用いた。図2には、SSRI薬であるフルボキサミンのガラス玉覆い隠し行動に対する効果を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明に係る中枢機能改善薬は、GIRKチャンネル活性化電流抑制作用により強迫性障害などの中枢機能を改善することができることから、強迫性障害などに有効な医薬品の開発に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GIRKチャンネル活性化電流抑制作用を有し、かつ、中枢機能を改善することができるGIRKチャンネル抑制化合物を有効成分として含有することを特徴とする中枢機能改善薬。
【請求項2】
請求項1に記載の中枢機能改善薬であって、前記GIRKチャネル抑制化合物が、ACTH連続投与によるガラス玉覆い隠し行動に対する抵抗作用を有していないことを特徴とする中枢機能改善薬。
【請求項3】
請求項1または2に記載の中枢機能改善薬であって、前記GIRKチャンネル活性化電流抑制化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジン、及びクエン酸イソアミニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする中枢機能改善薬。
【請求項4】
GIRKチャンネル活性化電流抑制作用を有し、かつ、中枢機能を改善することができるGIRKチャンネル抑制化合物を有効成分として含有する中枢機能改善薬を使用して中枢機能を改善することを特徴とするチ有数機能改善薬の用途。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−62272(P2012−62272A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207225(P2010−207225)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】