説明

中枢神経系の損傷

本出願は、ミエリンタンパク質Nogo、TNR、およびMAGの阻害性ドメインと相互作用するペプチドを提供する。これらは、CNS損傷の治療において、およびさらなる治療の開発のために使用してもよい。また、CNS損傷を治療するために、ミエリンタンパク質の阻害性ドメインに対して被検体を免疫するための方法および物質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCNS損傷、たとえば脊椎傷害もしくは脳卒中の治療に、またはそのための治療の開発に有用な材料および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
皮膚、肝臓、および末梢神経などの体のほとんどの組織は、傷害後にそれ自体を修復するすぐれた能力を有する。対照的に、脳および脊髄を含む中枢神経系(CNS)は、修復のための生得的な能力をほとんど有さない。成体の脳または脊髄において軸索の結合が損傷を受けたとき、軸索は、胚CNSにおいて、および成体末梢神経系において効率的に成長し、かつ再生することができる場合であっても、これらは極めて限られた再生能力しか示さない。CNS軸索が再生することができないことを説明する要因は、これらを再生できなくするであろうCNSニューロンの内因性の性質、および軸索の伸長に対して阻害性であるCNS環境中の外性因子の2つのカテゴリーにグループ化することができる。
【0003】
CNS環境中の因子が再生を防げることができるという考えは、20世紀初期にさかのぼる。Ramon y Cajalは、成人CNSニューロンが軸索突起を伸張することができないのは、末梢神経の許容される環境をこれらに与えることによって克服することができることを観察した。次いで、約20年前、David and Aguayoは、網膜のニューロンが末梢神経移植片に長い突起を形成することができることを示した。後に、Schwabは、培養中の後根神経節ニューロンがシュワン細胞を超えてこれらの軸索を伸張するが、オリゴデンドロサイトおよび脂肪髄鞘を回避することを発見した(Schwab et al 1993)。
【0004】
これらの結果は、単に中枢神経系ニューロンの内因性の欠陥により再生できないのではなく、CNS環境中の阻害因子も重要な役割を果たしていることを示す。これらの阻害因子は、主に傷害の領域に形成するグリア瘢痕に、および白質トラック(white matter track)内の軸索を被鞘するミエリンのそばに位置している。
【0005】
CNS傷害後、壊死の中心的領域では、グリアおよびその他の非ニューロン細胞による浸潤があり、繊維性の瘢痕を形成する。軸索は瘢痕を通って伸長せず、これらの増殖は、これによって阻害されるように見える。この阻害活性に関与しているであろう分子成分は、細胞外マトリックス糖タンパク質テネイシン-R(TN-R)、ミエリン結合神経突起成長阻害剤のミエリン結合糖タンパク質(MAG)、およびNogoを含む。
【0006】
TN-R
TN-Rは、CNSの発生および再生の間の軸索誘導および神経細胞遊走の分子制御に関与する種々の細胞-マトリックス相互作用に関係していた(Erickson, 1993; Chiquet-Ehrismann et al., 1994; Pesheva et al., 2000; 2001によって概説)。TN-Rは、テネイシン・ファミリーの最も小さなメンバーであり、4つの構造モチーフ:N末端のシステインリッチなセグメントに続く4.5 EGF様の繰り返しで構成される。この領域は、9つの連続したフィブロネクチン・タイプIII様ドメインに続き、C末端のTN-Rは、フィブリノーゲンのβおよびγ鎖に関係がある。
【0007】
TN-Rは、ミエリン形成の開始および初期の間に、主にオリゴデンドロサイトによって発現され、成人の一部のオリゴデンドロサイトでは発現されたままとなる。また、TN-Rは、脊髄、網膜、小脳、および海馬のいくつかのニューロンおよび介在ニューロンで発現している(Fuss et al., 1991; 1993)。TN-Rは、CNSの有髄軸索のランビエ絞輪内に高密度で、その他のグリア由来分子(すなわち、ミエリン結合糖タンパク質およびホスファカン(phosphacan)関連分子)と共に局在する(Xiao et al., 1997: Yang et al, 1999)。
【0008】
TN-Rは、ニューロン細胞のタイプおよびこれが存在する環境に応じて、神経突起成長を阻害または促進することができる。TN-Rが示されたとき、はっきりした基質境界として作用し、後根神経節(DRG)、小脳、および網膜神経節ニューロン成長円錐は、これらの分子の増大を防げるが、崩壊は誘導されなかった。一方TN-Rは、均一の基質としてラミニン(これは、強力に胚および成人の軸索の増殖を促進する)との混合物で提供されたときに、DRG成長円錐は崩壊した形態を示し、ラミニン単独よりも速い割合で進行することができた。
【0009】
テネイシン分子上の異なるエピトープに結合するいくつかのモノクローナル抗体を使用して、上皮増殖因子様(EGF-L)の繰り返し、およびフィブロネクチンIII型に相同な4〜5回の繰り返しが、成長円錐の反発原因となることが同定された。
【0010】
インビトロで、マウス網膜外植片からの胚および成人網膜神経節細胞軸索の成長は、テネイシン-RまたはEGF-Lドメインを含む細菌に発現したテネイシン-R断片の均一な基質で有意に減少する。両分子が存在するときは、はっきりした基質境界線として作用し、再成長する成人軸索は、テネイシン-RまたはEGF-Lを含む領域内では交差しない。全てのインビトロ実験は、ラミニンの存在下でなされており、テネイシン-RおよびEGF-Lが、能動的に軸索成長を阻害することを示唆する。神経突起および成長円錐は、TN-RのEGF-L(アミノ末端のシステインリッチ・ドメインさらにEGF-様の繰り返し)、FN(フィブロネクチン)1-2、FN3-5、およびFG(フィブリノーゲン)ドメインを含む断片でおおわれた領域を忌避し、EGF-Lは、海馬ニューロンの神経突起成長を防げる。
【0011】
また、TN-Rは、EGF-Lドメインを介してインビトロでの軸索の脱線維束形成(defasciculation)を誘導する(Taylor et al., 1993; Xiao et al., 1996, 1997, 1998; Becker et al, 1999; Becker et al, 2000)。
【0012】
3-アセチルピリジンで誘導された成熟ラットのオリーブ小脳系の病変後、TN-R転写物を含む細胞の密度は、下オリーブ核において、および小脳皮質の白質において有意に増大される。免疫組織化学的調査により、タンパク質レベルでこれらの観察を確認した。
【0013】
ラットの脊髄の機械的傷害後、TN-R mRNAもアップレギュレートされた(Wintergerst et al, 1997; Deckner et al, 2000)。
【0014】
これらの知見は、傷害したCNSにおけるTN-Rの継続的過剰発現がインビボでの成人軸索の再生不全に関与しているかもしれないことを示唆した。
【0015】
テネイシン-Rは、テネイシン・ファミリーのメンバーであり、ニューロンの遊走、神経突起生成、およびニューロンの再生などの発達中の神経系細胞相互作用において重要な役割を果たす。テネイシン-Rは、ミエリン形成の開始および初期の間に主にオリゴデンドロサイトによって発現され、成人の一部のオリゴデンドロサイトでは発現されたままとなる(Pesheva et. al., 1989; Fuss et al., 1991, 1993; Wintergerst et. al., 1993; Ajemian A. et. al., 1994)。TN-Rは多機能性分子であり(Lochter and Schachner, 1993; Pesheva et. al., 1993; Taylor et. al., 1993; Xiao et. al., 1996, 1997, 1998)、これは、ミエリン抽出の阻害成分であることを示した。Xiaoは、TN-RのEGF-Lドメインが、神経突起成長を阻害することができることを見いだした。
【0016】
MAG
MAGは、中枢神経系および末梢神経系のグリア細胞を有髄化することによって発現される免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫通タンパク質であり、MAGは、総ミエリンタンパク質の1〜0.1%を示す(Heape at al, 1999)。MAGは、軸索再生の強力な阻害剤であって、更にニューロンの年齢およびタイプに応じて、軸索成長を促進することができる。MAGは、網膜、上頚神経節、脊髄、および海馬、並びに全ての出産後年齢の後根神経節(DRG)ニューロンの神経突起成長を阻害するが、胚脊髄ニューロンおよび新生児DRGニューロンの神経突起成長を増強することができる(DeBellard at al, 1996; Turnley et al, 1998; Shen et al, 1998; Yang et al, 1999)。
【0017】
また、MAGは、成長円錐の崩壊を誘導することができる。生後1日の海馬ニューロンの軸索の成長円錐の60%は、これらが被覆された組換えMAG(rMAG)に遭遇したときに崩壊した。このような崩壊は、変性されたrMAGでは観察されなかった(Li et al, 1996)。可溶性dMAG(ミエリンから豊富に放出され、インビボで見いだされるMAGの細胞外ドメインのタンパク分解性の断片)およびキメラMAG-Fcは、強力にP6 DRGニューロンからの神経突起成長を阻害することができる。この阻害は、MAGモノクローナル抗体が含まれたときには遮断された。
【0018】
これらの結果は、インビボで検出される可溶性dMAGが、傷害後に哺乳類CNSの再生がないことに寄与し得ることを示す(Tang et al, 1997; 2001)。
【0019】
MAGは、ニューロンのための2つの認識部位、R118のシアル酸結合部位、および最初の3つのIgドメインがない異なった阻害部位を有する(Tang et al, 1997)。
【0020】
MAGは、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのよく特徴づけられたメンバーであり、これは、若い小脳ニューロンおよび成体後根神経節(DRG)ニューロンからの神経突起成長に対して強い阻害作用を及ぼす(Mukhopadhyay et al., 1994)。MAGは、626アミノ酸を有する膜タンパク質である。可溶性MAGは、細胞外ドメインからなっており、神経突起成長に対して阻害作用を有することが報告された(Mckerracher et. al., 1994)。MAGの細胞外ドメインは、5つのIg様ドメインからなり、最初の2つのIg様ドメインは、MAGとニューロン膜との間の相互作用にとって重要であることが証明されているが、その他の3つのIg様ドメインも、阻害作用に関与しているかもしれない(Collins et al., 1997)。
【0021】
Nogo
Nogoは、高分子量の必須膜タンパク質であり、PNSミエリンではなく、CNSミエリンに局在化している。Nogoは、選択的スプライシングによって生じるNogo-A、-B、および-Cという名の3つのアイソフォームを有する。NI-250およびNI-35は、最初に同定され、Nogoの2つのアイソフォームとして名づけられた。現在、NI-250はNogo-Aであり、NI-35は、Nogo-Bであることが確立されている。Nogoは、CNSの白質のオリゴデンドロサイトによって発現され、ミエリンの内と外の小葉において、および小胞体において見いだされる。
【0022】
Nogoのインビトロでの特徴付けにより、軸索伸長の強力な阻害剤としての機能が証明された。インビボでのNogo活性の中和により、CNS傷害後の軸索の再生および機能的な回復が増強し、並びに無傷のCNS繊維の可塑性が増大した。モノクローナル抗体mAb IN-1は、脊髄が傷害した生体ラットに適用したときに、インビボで長期の再生および機能的な回復を促進することが示された(Chen et al, 2000; GrandPre et al; Merkler et al)。
【0023】
これらの知見は、NogoがCNS環境の非許容的な性質の主な一因であろうことを示唆する。2つの異なるNogoの阻害性ドメイン:Nogo Aの細胞内アミノ末端ドメイン(NogoN)並びに3つのアイソフォームNogo-A、Nogo-B、およびNogo-Cの2つの疎水性ドメインの間に位置する短い66残基の領域(Nogo-66)が同定された(Chen et al, 2000; GrandPre et al, 2000; Fournier et al, 2001; Filbin, 2003)。これらのドメインは、Science, Vol 297 (5584), 16 Aug 2002, p. 1132-1134に図示されている。
【0024】
Nogo-Aは、オリゴデンドロサイトによって発現されるが、シュワン細胞によっては発現されない。Nogo-Aは、軸索の伸張を阻害し、後根神経節成長円錐を崩壊させることができる(GrandPre et. al., 2000)。Nogoの神経突起成長の阻害力は、モノクローナル抗体IN-1によって中和することができ、これにより脊椎傷害後の軸索の再生および機能的な回復が可能になる(Chen et. al., 2000)。Nogoは、1163アミノ酸を有する膜タンパク質である。C末端の尾部は、66残基の親水性の細胞外ドメインによって分離された2つの疎水性の膜貫通ドメインを含む。この66残基の細胞外ドメインは、軸索成長を阻害することができる(Fournier et. al., 2001)。
【0025】
Huang et al. (1999)は、成体の脊髄における軸索の再生を刺激するために、治療用ワクチン・アプローチを開示する。
【0026】
本発明の目的は、軸索の再生に対するミエリンの阻害作用を克服することにより、CNS損傷、たとえば脊椎傷害の治療に、またはそのための治療法の開発に有用な材料および方法を提供することである。
【発明の開示】
【0027】
発明の概要
第1の一般的な局面において、本発明者は、CNS損傷のための補助治療として、およびさらなる治療の開発のために、主要ミエリンタンパク質の阻害性ドメインと相互作用する分子を使用することを提案する。
【0028】
第2の一般的な局面において、本発明者は、CNS損傷のための補助治療として、主要ミエリンタンパク質の阻害性ドメインで被検体を免疫化することを提案する。
【0029】
このアプローチは、自己免疫性の脱髄性疾患を誘導して、容認できない副作用を引き起こすかもしれないので、ミエリン抗原に対して被検体を免疫することは非実用的であるかもしれない。また、いくつかのミエリン抗体は、再ミエリン化を促進し(Rodriguez et al., 1987)、軸索の再生の間には利益がない。しかし、本発明者のアプローチは、全ミエリンタンパク質の代わりに、主要ミエリンタンパク質の特異的阻害性部分に対するワクチンの基礎を形成することである。阻害性部分に対して生じる抗体は、軸索の再生に対するミエリンの阻害作用を遮断する。
【0030】
第1の局面
従って本発明は、アミノ酸配列が以下からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する:

【0031】
これらの配列は、それぞれ、ニューロンの増殖阻害性分子Nogo(特に、Nogo-66ドメイン)、MAG、およびTN-R(特に、TNR-EGFL)の1つまたは複数に結合することができることがファージ・ディスプレイによって同定された、いくつかのペプチドの推定アミノ酸配列を表す。
【0032】
SEQ ID NO.1は、Nogo-66に結合することができる43の同一のペプチドの配列、更にはMAGに結合することができる19の同一のペプチド配列を表す。
【0033】
SEQ ID NO.2は、Nogo-66に結合することができる8の同一のペプチドの配列を表す。
【0034】
SEQ ID NO.3は、TNR-EGFLに結合することができる18の同一のペプチドの配列を表す。
【0035】
SEQ ID NO.4は、TNR-EGFLに結合することができる3つの同一のペプチドの配列を表す。
【0036】
SEQ ID NO.5は、TNR-EGFLに結合することができる1つのペプチドの配列を表す。
【0037】
SEQ ID NO.6は、TNR-EGFLに結合することができる1つのペプチドの配列を表す。
【0038】
SEQ ID NO.7は、MAGに結合することができる5つの同一のペプチドの配列を表す。
【0039】
これらのうち、SEQ ID NO.1は、インビトロでのアッセイ法において、ニューロン細胞接着に対するNogo-66およびMAGの阻害作用を遮断することが、ファージ結合によって示された。同様に、SEQ ID NO.3は、TNR-EGFLの阻害作用を遮断することが示された。従って、好ましいペプチドはSEQ ID NO.1からなり、もう一つの好ましいペプチドはSEQ ID NO.3からなる。
【0040】
本発明は、Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)に結合することができる、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む60アミノ酸までの長さのペプチドをさらに提供する:

【0041】
好ましくは、ペプチドは50アミノ酸までの長さ、より好ましくは、40まで、30まで、25まで、20まで、19まで、18まで、17まで、16まで、15まで、14まで、13まで、12まで、11まで、10まで、9まで、または8までの長さのアミノ酸である。
【0042】
好ましいペプチドはSEQ ID NO.1を含み、もう一つの好ましいペプチドはSEQ ID NO.3を含む。
【0043】
本発明は、Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)に結合することができる、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列を含む60アミノ酸までの長さのペプチドをさらに提供する:

【0044】
ペプチドの好ましいサイズは、前述のとおりである。SEQ ID NO.1の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するペプチド、またはSEQ ID NO.3の対応する残基と同一の少なくとも5残基が好ましい。
【0045】
好ましくは、同一の残基の最小数は6である。
【0046】
本発明は、本発明の1つまたは複数のペプチドを1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に含む組成物をさらに提供する。
【0047】
好ましくは、組成物は、インビボでの注射のために、好ましくはCNSへの直接注射のために処方される。
【0048】
本発明は、治療方法に使用される本発明のペプチドをさらに提供する。このような使用は、CNS損傷、特に脊椎傷害および脳卒中の治療におけるものであってもよい。
【0049】
また、本発明は、CNS損傷、特に脊椎傷害および脳卒中の治療のための薬物の調製における本発明のペプチドの使用を提供する。
【0050】
また、本発明は、CNS損傷を治療するための方法であって、本発明のペプチドを患者に対して患者のCNS損傷の部位に、またはその近くに投与する段階を含む方法を提供する。特に、本発明は、SCIまたは脳卒中を治療するための方法であって、SEQ ID NO.1または3からなるアミノ酸配列を有するペプチドを、患者に対して患者のSCIまたは脳卒中損傷の部位に直接注射することによって投与する段階を含む方法を提供する。
【0051】
また、本発明は、ニューロン増殖阻害性分子Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)の1つまたは複数に結合することができる擬態のデザインにおける、本発明のペプチドおよび/またはこれらのコンピュータで作製されたモデルの使用を提供する。
【0052】
同様に、本発明は、本発明のペプチドの擬態をデザインする方法であって、擬態が、ニューロン増殖阻害性分子Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)の1つまたは複数に結合することができ、該方法が:
(i)ニューロン増殖阻害性分子Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)の1つまたは複数に結合することができる本発明のペプチドを解析して、ファルマコフォアを定義する活性に必須なおよび重要なアミノ酸残基を決定する段階;並びに、
(ii)生物活性を有する候補擬態をデザインし、および/またはスクリーニングするためにファルマコフォアをモデリングする段階を含む方法を提供する。
【0053】
好ましくは、本方法および/または使用は、インビトロでNogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)に対する候補擬態の結合をアッセイする工程を含む。候補擬態がこのようなインビトロでの結合ができることを同定したのち、好ましくは候補擬態をインビボ使用のために最適化する。このような最適化後、最適化された擬態を好ましくは1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方する。
【0054】
本発明は、ペプチドおよびバクテリオファージ・コートタンパク質からなる融合タンパク質を、ペプチドがバクテリオファージ・ビリオンの表面上にディスプレイされるように発現するバクテリオファージであって、ペプチドが60アミノ酸までの長さであり、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも4残基を有するアミノ酸配列を含むバクテリオファージを提供する:

【0055】
好ましくは、本発明のペプチドは50アミノ酸までの長さ、より好ましくは40まで、30まで、25まで、20まで、または15までの長さのアミノ酸である。さらにより好ましくは、本発明のペプチドは8〜12、より好ましくは6〜10アミノ酸の長さである。好ましくは、同一の残基の最小数は5または6である。
【0056】
本発明は、Nogo(好ましくはNogo-66)、MAGおよび/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)に結合することができるペプチドのためのスクリーニング法であって:
それぞれ異なるペプチドを発現する本発明のバクテリオファージを提供する段階;並びに、
Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)と結合する能力についてバクテリオファージをスクリーニングする段階を含む方法をさらに提供する。
【0057】
Nogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)、またはこれらをディスプレイするペプチドに結合可能なことが同定されたバクテリオファージは、次いでインビトロでのアッセイ法においてニューロン細胞接着力に対するNogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)の阻害作用を遮断する能力についてスクリーニングしてもよい。インビトロでのアッセイ法においてニューロン細胞接着力に対するNogo(好ましくはNogo-66)、MAG、および/またはTN-R(好ましくはTNR-EGFL)の阻害作用を遮断することができるペプチド(またはペプチドをディスプレイするファージ)の同定後、ペプチドは、好ましくはインビボ投与のための1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される。
【0058】
本発明は、TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる可能性が高い因子を探索する方法であって、配列データベースに問い合わせて、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸を同定することを含む方法をさらに提供する:

【0059】
データベースは、好ましくはcDNAデータベースである。これは、ESTデータベースであってもよい。好ましくは、哺乳類CNSに発現される配列のデータベースである。あまり特異的でないデータベースを使用してもよいが、より多くの偽陽性結果を生じるであろう。
【0060】
本発明はTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる可能性が高い因子を探索する方法であって、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを有するcDNAライブラリーをスクリーニングする段階を含む方法をさらに提供する:

【0061】
cDNAライブラリーは、好ましくは哺乳類(より好ましくは、ヒト)である。ライブラリーは、好ましくはCNS組織に由来する。
【0062】
前の各々の2つの方法は、好ましくは候補ポリペプチド、または候補ポリペプチドをコードする核酸の同定に続いて、ポリペプチドがTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる能力を試験する工程をさらに含む。好ましいさらなる工程は、上記の通りである。
【0063】
第2の局面
この局面において、本発明は、以下からなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチド・ドメインをコードする核酸を含む核酸ベクターを提供する:
(a)Nogo-AのN末端ドメイン(NogoN);
(b)Nogo-B(またはNogo-AおよびNogo-Cに存在する)の細胞外ループ(Nogo66);
(c)MAGの第3〜5免疫グロブリン様の繰り返し;および、
(d)TN-RのEGF様ドメイン。
【0064】
TN-R EGF-Lドメインは、神経細胞系および一次ニューロンでインビトロでの神経突起成長を阻害することができるものとしてXiao et al. (1996) において同定された。
【0065】
ベクターは、哺乳動物細胞における該核酸の発現のために必要な制御配列を含む。好ましくはベクターは、その中に該核酸が挿入された、商業的に入手可能なワクチン・ベクターである。適切かつ好ましい商業的に入手可能なワクチンのベクターは、pcDNA3.1ファミリーのベクター、特にpcDNA3.1+、およびpVAX1(Invitrogen, San Diego, California, USからの全て)を含む。
【0066】
通常、核酸はDNAである。
【0067】
好ましくは核酸は、ドメインのうちの少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つをコードし、より好ましくは、4つ全てをコードする。核酸は、1つまたは複数のドメインのいずれの複数のコピーをコードしていてもよい。
【0068】
核酸が複数のドメインをコードする場合、ドメインは、好ましくは融合ポリペプチドとして発現される。好ましくはドメインは、ドメインの適切な折りたたみを容易にするために、柔軟なリンカー(好ましくはポリ-Alaリンカー、たとえばAla3リンカー)によって互いに分離される。
【0069】
タンパク質Nogo A、Nogo B、TN-R、および/またはMAG(および/または好ましくはNogo-C)の中で、ベクターは、好ましくは示したドメインだけを実質的に発現することができる。NogoNは、Nogo Aアイソフォームのドメインである。Nogo66は、3つのアイソフォーム、Nogo-A、Nogo-BおよびNogo-C全てにおいて見いだされるドメインである。特にベクターは、好ましくはタンパク質のその他のエピトープを含む部分を発現することができない。タンパク質Nogo A、Nogo B、TN-R、および/またはMAG(および/または好ましくはNogo-C)の中で、ベクターは、好ましくは上記一覧を示したドメインの外側にあるタンパク質の20%未満、より好ましくは15%未満、12%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満しか発現しない。これは特に、タンパク質のうちの1つだけのドメインまたはドメイ群を含むベクターにとって好ましい。
【0070】
Nogo A、Nogo B、Nogo C、TN-R、およびMAGのアミノ酸配列は、たとえば以下のアクセッション番号の下でGenBankから入手可能である。

【0071】
ドメインは好ましくは、下記に示したアミノ酸配列、すなわちドメイン(c)はMAG(1-508)の508残基のアミノ酸配列;ドメイン(d)はTNR(125-329)の205残基のアミノ酸配列;ドメイン(a)はNogoN(1-185)の185アミノ酸配列;およびドメイン(b)はNogo66(823-888)の66アミノ酸配列を有する。

【0072】
ベクターは、好ましくはアミノ酸配列

を有するポリペプチドであって、Alanは、ポリアラニン・リンカーを表すポリペプチドをコードする。nは、好ましくは3である。
【0073】
ドメインは、好ましくは以下の配列、すなわちドメイン(c)はMAG(126-1649)の508コドンの核酸配列;ドメイン(d)はTNR(454-1068)の205コドンの核酸配列;ドメイン(a)はNogoN(1-555)の185コドンの核酸配列;および/またはドメイン(b)はNogo66(2467-2664)の66コドンの核酸配列:によってコードされる。

【0074】
この配列は、開始コドンで始まる。他の配列が核酸の5'末端で使用される場合、開始コドンが必要であろう。これを関心対象の任意の核酸配列内に工作することはもちろんルーチンのものであるが、Nogo(1-555)も、開始コドンで始まる点に注意されたい。

【0075】
しかし、これらの特異的なドメインの断片、誘導体、または変種も、有効なワクチンを生じると思われる。従って、本発明の意味の範囲内のポリペプチド・ドメインは、上に与えられる4アミノ酸配列のいずれか1つであってもよく、断片は、好ましくは該配列に由来する少なくとも15の隣接するアミノ酸、より好ましくは少なくとも17アミノ酸、より好ましくは少なくとも20、25、30、40、50、または60アミノ酸からなる。MAG、NogoN、およびTNRについては、断片のサイズは、より好ましくは少なくとも80アミノ酸、より好ましくは100、120、140、160、または180アミノ酸である。TNRおよびMAGについては、長さは、より好ましくは、200アミノ酸である。MAGについては、長さは、より好ましくは、250、300、350、400、または450アミノ酸である。断片は上記の配列であり、かつドメインがインビボで抗体反応を生じる能力を保持する特異的なドメインの1つまたは複数のエピトープを含むであろう。従って断片は、インビボで対応するドメインと交差反応する抗体を生じることができる。線形エピトープマッピングは、当業者のルーチン事項である。
【0076】
同様に、本発明の意味の範囲内のポリペプチド・ドメインは、上記のアミノ酸配列(参照アミノ酸配列)のいずれか1つの変種であってもよい。この文脈において、変種は、参照アミノ酸配列と異なるが、参照配列の対応する部分に対して少なくとも65%のアミノ酸で同一性を有する、少なくとも15アミノ酸配列の部分を含む配列を有するポリペプチドである。好ましくは、同一性のレベルは、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%である。好ましくはその部分は、少なくとも17アミノ酸の長さであり、より好ましい長さは、断片の長さについての前述の段落で示したものである。また、変種は通常、その配列が上記の特定のドメインの1つまたは複数のエピトープを含み、ドメインがインビボで抗体反応を生じる能力を保持しているであろう。従って変種は、インビボで対応するドメインと交差反応する抗体を生じるであろう。
【0077】
また、本発明は、(治療的な)ワクチンとして使用するための1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、本発明のベクターを含む組成物を提供する。好ましくは組成物は、注射投与のために処方される。
【0078】
本発明は、治療方法に使用される、本発明のベクターをさらに提供する。治療は、CNS損傷、特にSCIまたは脳卒中のものであってもよい。
【0079】
また、本発明は、CNS損傷、特にSCIおよび脳卒中を治療するための薬物の製造における本発明のベクターの使用を提供する。
【0080】
また、本発明は、患者のCNS損傷を治療するための方法であって、治療用ワクチンとして患者に本発明のベクターを投与する段階を含む方法を提供する。
【0081】
本発明のベクターは、典型的には注射によって投与されるが、その他のワクチンのデリバリー法も当該技術分野において公知であり(経口または経皮の送達および「無針(needle-free)」注射など)、本発明に従って使用してもよい。注射は、典型的には筋肉内注射である。血液脳関門は、通常、抗体の通過に対して障害をもたらすが、CNS損傷(特に傷害、たとえば外傷)は通常、損傷部位で血液脳関門を超えた抗体の通過が可能である。従って、本発明のベクターでのワクチン接種に応答して生じる抗体を血液脳関門を超えて通過させるために、特別な施策は必要とされないことが考えられる。
【0082】
本発明は、本質的に以下からなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチド・ドメインからなるポリペプチドをさらに提供する:
(a)Nogo-AのN末端ドメイン(NogoN);
(b)Nogo-B(Nogo-AおよびNogo-Cにも存在する)の細胞外ループ;
(c)MAGの第3〜5免疫グロブリン様の繰り返し;および
(d)TN-RのEGF様のドメイン。
【0083】
ポリペプチドの好ましい特徴は、ベクターによってコードされるポリペプチドに対して上に記載した通りである。
【0084】
また、本発明は、(治療的な)ワクチンとして使用するための1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、本発明のポリペプチドを含む組成物を提供する。好ましくは組成物は、注射投与のために処方される。
【0085】
本発明は、治療方法に使用される本発明のポリペプチドをさらに提供する。治療は、CNS損傷、特にSCIまたは脳卒中のものであってもよい。
【0086】
また、本発明は、CNS損傷、特にSCIまたは脳卒中を治療するための薬物の製造における本発明のポリペプチドの使用を提供する。
【0087】
また、本発明は、患者のCNS損傷を治療するための方法であって、治療用ワクチンとして患者に本発明のポリペプチドを投与する段階を含む方法を提供する。投与は、好ましくはベクターについて記載されている通りである。
【0088】
本発明は、CNS損傷、特にSCIまたは脳卒中を治療するための、ドメイン(a)〜(d)のいずれか1つ、または好ましくはドメイン(a)〜(d)のうちの2つ、3つ、もしくは4つ全てに対して共に結合することができる抗体の混合物に特異的に結合することができる抗体の類似の方法および使用をさらに提供する。核酸またはポリペプチド・ワクチンを投与して抗体反応を生じさせる代わりに、抗体が直接患者に投与される(好ましくは、第1の局面のペプチドに関しては、たとえばCNSへ、損傷の部位へ、または脳脊髄液へ直接注射することによる)。特異的に結合できる抗体断片は、この目的のための抗体であるとみなされる。
【0089】
詳細な説明
ペプチド
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって連結されているいくつかのアミノ酸、アミノ酸の隣接対からなる分子を指すことが企図される。ペプチド結合は、-CO-NH-構造を有する。アミノ酸は、天然に存在しても、または天然に存在しなくてもよい。末端アミノ酸は、末端修飾を含んでいてもよい。天然に存在するキラルなアミノ酸(すなわち、非キラルなグリシン以外のアミノ酸)は、L-アイソフォームである。しかし、本発明のペプチドは、D-アイソフォームのアミノ酸を含んでいても、またはD-アイソフォームのアミノ酸からなっていてもよい。このようなD-アミノ酸は、天然に存在するL-アミノ酸のD-アイソフォームであってもよく、または天然に存在するL-アイソフォームを有していなくてもよい。本発明のペプチド中のD-アミノ酸の包含は、インビボでペプチドのクリアランスの減少を助けるであろう。
【0090】
ペプチドの合成
ペプチドは、化学合成によって、完全にまたは部分的に作製されてもよい。本発明のペプチドは、十分に確立された標準的な液相、または好ましくは固相ペプチド合成法に従って容易に調製することができ、これらの一般的な記述は、広範に利用することができる(たとえば、J.M. Stewart and J.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois (1984)、 M. Bodanzsky and A. Bodanzsky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York (1984);および Applied Biosystems 430A Users Manual, ABI Inc., Foster City, Californiaを参されたい)。または本発明のペプチドは、液相法によって、もしくは固相、液相、および溶液化学の任意の組み合わせによって、たとえば最初にそれぞれのペプチド部分を完成させ、次いで必要に応じて、および適切であれば、存在する任意の保護基も除去した後に、それぞれの炭酸もしくはスルホン酸、またはこれらの反応性の誘導体の反応によって残基Xを導入することにより、溶液中で調製されてもよい。
【0091】
ファージ・ディスプレイ法
ファージ・ディスプレイ法は、抗体受容体またはその他の結合タンパク質に対するしっかりとした結合について、何千万もの短いペプチド類を概観することができる生体分子工学における最近の有望な技術である。ファージ・ディスプレイ法は、最初に1985年に記載されており(Smith et al, 1985)、ペプチドまたはタンパク質がバクテリオファージのコートタンパク質との融合として発現されて、ビリオンの表面上に融合タンパク質がディスプレイされ、融合物をコードするDNAがビリオン内に存在するという選択技術である。ファージ・ディスプレイ法では、ランダムなペプチド配列の莫大なライブラリーとそれぞれの配列をコードするDNAとの間の物理的な結合を生じ、パニングと呼ばれるインビトロでの選択プロセスによって種々の標的分子に対するペプチド・リガンドの迅速な同定が可能である(Scott et al, 1990; Arap et al 1998)。
【0092】
特定のタンパク質ドメインを含む相互作用(タンパク質/タンパク質またはタンパク質/非タンパクのいずれかの相互作用)は、典型的には、8〜12アミノ酸を必要とするだけであり、その中で、5〜8アミノ酸が重要な役割を果たす。6〜10アミノ酸残基のペプチドを示すファージ・ディスプレイ・ライブラリーは、エピトープマッピング、タンパク質-タンパク質接触のマッピング(mapping protein-protein contacts)、非ペプチド・リガンドのペプチド擬態の同定、並びに新規ワクチンおよび新薬の設計を含む多くの適用において首尾よく使用されてきた(Scott et al, 1990; Cwirla et al, 1990; Devlin et al 1990 Felici et al, 1991; Motti et al, 1994; Hong et al, 1995; Arap et al, 1998; Nilsson et al, 2000)。
【0093】
最近の研究では、標的として広範な酵素を使用して単離された一連のペプチドが、それぞれの標的に類似するアミノ酸を含み、競合解析によって標的につき1つまたは2つの部位に結合したことを示した。試験した17のペプチドのうちの13が、酵素機能の特異的な阻害剤であることが見いだされた。ファージ・ディスプレイを使用して同定されたペプチド様代理リガンド(peptidic surrogate ligand)は、酵素機能を阻害する限られた数の部位に優先してターゲットされる(Hyde-DeRuyscher et al 2000)。
【0094】
擬態
非ペプチド「小分子」は、たいていインビボでの薬学的使用のためのペプチドに好ましい。従って、本発明のペプチドの擬態は、薬学的使用のためにデザインされてもよい。
【0095】
公知の薬学的に活性な化合物に対する擬態をデザインすることは、「リード」化合物に基づく医薬の開発では公知のアプローチである。これは、活性化合物を合成するのが困難または高価な場合、または特定の投与方法に不適当な場合に(たとえばペプチドは、これらが消化管のプロテアーゼによって迅速に分解される傾向があるので、経口組成物には不適当な活性薬剤である)望ましいかもしれない。擬態の設計、合成、および試験は、通常、ターゲット特性について多数の分子をランダムにスクリーニングするのを避けるために使用される。
【0096】
所与のターゲット特性を有する化合物に由来する擬態の設計には、一般にいくつかの工程が取り入れられる。第1に、ターゲット特性の決定に不可欠な、および/または重要である化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合、これは、系統的にペプチド中のアミノ酸残基を変化させることによって、たとえば次々にそれぞれの残基を置換することによって行うことができる。ペプチドのアラニン・スキャンは、このようなペプチドのモチーフを洗練するために一般に使用される。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア」として知られている。
【0097】
一旦ファルマコフォアが見いだされると、その構造は、供与源の範囲からのデータ、例えば分光技術、X線回折データ、およびNMRを使用して、その物性、例えば立体化学、結合、サイズおよび/または電荷に従ってモデリングされる。計算解析、類似性マッピング(これは、原子間の結合以外にファルマコフォアの電荷および/または体積をモデリングする)、およびその他の技術をこのモデリング過程に使用することができる。
【0098】
このアプローチの変種では、リガンドおよびその結合パートナーの三次元構造をモデリングする。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが結合により高次構造を変化する場合に特に有用であり、擬態のデザインにおいてこれをモデル中で考慮することができる。
【0099】
次いで、ファルマコフォアを模倣する化学基をグラフトすることができるかについて、鋳型分子を選択する。鋳型分子およびこれにグラフトされた化学基は、擬態が容易に合成され、薬理学的に許容される可能性が高く、かつインビボで分解されないが、リード化合物の生物活性を保持しているように都合よく選択することができる。または、擬態がペプチドに基づいたものである場合、ペプチドを環化し、その剛性を増大することによってさらなる安定性を達成することができる。次いで、このアプローチによって見いだされる擬態を、これらが標的の特性を有するかどうか、またはどんな範囲でそれを示すかについて調べるためにスクリーニングすることができる。次いで、インビボまたは臨床で試験するための1つまたは複数の最終的な擬態に達するために、さらなる最適化または修飾を行うことができる。
【0100】
配列同一性
参照配列に関するパーセント(%)アミノ酸配列同一性は、必要に応じて最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整列させてギャップを導入した後に、および配列同一性の部分としていずれの保存的置換も考慮せずに、参照配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。%同一性値は、WU-BLAST-2(Altschul et al., Methods in Enzymology, 266:460-480 (1996))によって決定してもよい。WU-BLAST-2は、いくつかの探索パラメーターを使用し、そのほとんどはデフォルト値に設定される。調節可能なパラメーターは以下の値で設定される:重なりの幅(overlap span)=1、重なり画分(overlap fraction)=0.125、ワード閾値(word threshold)(T)=11。%アミノ酸配列同一性値はWU-BLAST-2によって決定されるマッチする同一の残基の数を、参照配列の総残基数によって除算し(配列スコアを最大にするために参照配列にWU-BLAST-2によって導入されるギャップは無視される)、100を乗ずることによって決定される。
【0101】
ストリンジェントな条件
ストリンジェントな条件は、以下のものによって同定されるであろう:(1)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で使用する;(2)ハイブリダイゼーションの間に、ホルムアミドなどの変性剤、たとえば50%の(v/v)ホルムアミドを0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のフィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液と共にpH6.5で、760mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムと共に42℃で使用する;または、(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理したサーモン精液DNA(50μg/ml)、0.1%のSDS、および10%デキストラン硫酸を42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)溶液中で42℃で洗浄し、および50%のホルムアミドを55℃で、続いてEDTAを含む0.1×SSCからなるストリンジェンシーの高い洗浄を55℃で行う。
【0102】
被検体
本発明の組成物および/または治療薬が投与される被検体は、哺乳類、好ましくは齧歯類(たとえば、ウサギ、ラット、またはマウス)、イヌ、ネコ、サル、もしくは類人猿、またはウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、もしくはヤギなどの家畜などの実験動物である。より好ましくは、被検体は、ヒトである。
【0103】
一般に、被検体はCNS損傷、通常CNS傷害(たとえば頭部外傷)を有するであろう。しかし、より好ましくは損傷は、脊髄、たとえばSCIに対するものである。実験動物では、損傷は実験的でもよい。また、CNS損傷は、疾患または障害、たとえば癲癇、脳卒中、もしくは神経変性症状、学習記憶に関連した症状、および/またはアルツハイマー病もしくはパーキンソン病などの痴呆によって生じてもよい。
【0104】
本発明の治療は通常、手術および/またはリハビリテーションなどのその他の治療法と連動して使用することが企図される。
【0105】
製剤
上記記載の通り、少なくとも1つの活性化合物を、当業者に周知の1つまたは複数のその他の薬学的に許容される成分(薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、緩衝液、防腐剤、および安定剤を含むが、これらに限定されない)と共に含む薬学的製剤(たとえば、組成物、製剤、薬物)として本発明のペプチド、擬態、およびベクターを提示することが好ましい。製剤は、その他の活性薬剤をさらに含んでもよい。
【0106】
従って、本発明は、以前に定義したとおりの薬学的組成物を作製する方法であって、当業者に周知の薬学的に許容される成分、たとえば担体、アジュバント、賦形剤などの1つまたは複数と共に、本発明の少なくとも1つのペプチドまたはベクターを混合することを含む方法をさらに提供する。
【0107】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書に使用されるものとして、堅実な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症を伴わずに、妥当な利益/リスクに相応して、問題の被検体(たとえば、ヒト)の組織と接触させて使用するために適した化合物、成分、材料、組成物、剤形、その他に属する。また、それぞれの担体、アジュバント、賦形剤、その他は、製剤のその他の成分と適合性を持つという意味において「許容され」なければならない。
【0108】
適切な担体、アジュバント、賦形剤、その他は、標準的な薬学的テキスト、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams &Wilkins;および Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994に見いだすことができる。
【0109】
製剤は、適切には、活性化合物が溶解された注射用の製剤で、たとえば水性、等張性、発熱性物質なしの、無菌溶液の形態であってもよい。このような液体は、抗酸化剤、緩衝液、防腐剤、安定剤、細菌発育阻止因子、懸濁剤、糊料、および製剤を、血液または脳脊髄液と等張にする溶質などのその他の薬学的に許容される成分をさらに含んでいてもよい。このような製剤に使用される適切な等張性の担体の例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル溶液、または乳酸リンゲル注射を含む。典型的には、液体中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、たとえば約10ng/ml〜約1μg/mlである。製剤は、単位用量または多用量の密封容器、例えばアンプルおよびバイアル中に提示してもよく、凍結乾燥した(freeze-dried、lyophilized)条件で貯蔵して、使用直前に滅菌液状担体、例えば注射用の水を添加することが必要なだけにしてもよい。即時注射溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、およびタブレットから調製してもよい。
【0110】
投与
本発明のペプチドは、通常注射によって、好ましくは直接CNSに投与される。注射は、直接損傷の部位内に、たとえば損傷の部位内であってもよい。あるいは、注射は脳脊髄液に、典型的には傷害部位の近くに注射してもよい。
【0111】
本発明の基礎をなす実験研究および本発明の態様をここに例示のためだけに記載し、タンパク質MAG、TN-R、およびNogo由来の阻害性ドメインを単離するために使用したプライマーを示す添付の図1を参照する。コード配列(または相補鎖)は、太字で示してある。開始(Met)および終止(***)コドンは、二重下線を引いてある。制限部位は、下線を引いてある。SEQ ID NOは、以下の通りである。

【0112】
また、生じるPCR産物の消化および逐次の結合によって得られる構築物(SEQ ID NO:25)を図式的に示してある。制限部位には、下線を引いてある。Alaをコードするコドンは、ラベルしてある。それぞれの阻害性ドメインのコード配列は、括弧に入れたドメインの名前によって表される。終止コドンは***でラベルしてある。
【0113】
局面1 実施例1
阻害性の性質を有する原因となるNogoドメインの同定
反発アッセイ法
NG108細胞(マウス神経芽細胞腫-ラット・グリオーマハイブリッド細胞、American Tissue Type Culture Collection, Manassas, VA, USAからアクセッション番号ATCC HB-12317下で商業的に入手可能)を、Nogo1-25、Nogo1-50、Nogo1-66、およびGST-Nogo-66並びに対照としてGSTを使用して、被覆した基体上にまいた。Nogoの組換えドメインの生成および精製は、単独で、またはGSTとの融合タンパク質として、前述したように行った(Xiao ZC et al, 1996)。
【0114】
NG108細胞は、Nogo1-50、Nogo1-66、およびGST-Nogo-66から有意に反発したが、Nogo1-25およびGSTでは反発しなかった。
【0115】
神経突起成長アッセイ法
NG108細胞を、Nogo1-25、Nogo1-50、Nogo1-66、およびGST-Nogo-66並びに対照としてGSTを使用して、被覆した基体上にまいた。
【0116】
NG108細胞の神経突起成長は、Nogo1-50、Nogo1-66、およびGST-Nogo-66から有意に阻害されたが、Nogo1-25およびGSTでは阻害されなかった。
【0117】
局面1 実施例2
ファージ・ディスプレイ技術によるニューロン増殖阻害性分子TN-R、MAG、およびNogoに対する新規の短いペプチドのスクリーニング
成体マウス脳からのTN-R、MAG、およびNogoの精製は、以前に記載したとおりに免疫アフィニティークロマトグラフィーによって行った(Pesheva, P et al, 1989)。GSTとの融合タンパク質としてのTN-R、MAG、Nogoの組換えドメインの生成および精製は、以前に記載したとおりに行った(Xiao ZC et al, 1996)。全てのこれらのタンパク質は、Ph.D-7TMファージディスプレイ・ペプチド・ライブラリ・キット(New England Biolabs, Ltd)を使用して、製造業者の説明書に従って、迅速なスクリーニングのためのファージ結合標的として使用した。
【0118】
簡潔には、異なるペプチド配列を示すファージライブラリーを標的タンパク質で覆われているプレートに曝露した。結合していないファージを洗い流し、特異的に結合したファージをpHを低下させることによって溶出した。溶出されたファージのプールを増幅し、このプロセスを3〜4回繰り返した。
【0119】
3〜4ラウンドのアフィニティー選択後、いくつかの特異的なファージ・クローンを7-merのランダム・ペプチドのファージ・ディスプレイ・ライブラリーから単離し、ELISAによって同定した。特異的なファージ・クローンのペプチドをコードする配列を自動シーケンシングによって決定した。標的とされたタンパク質と特異的に結合したペプチドの配列が得られた。
【0120】
ファージ・コート・タンパク質(7-merのペプチドをコードする配列がそれぞれのファージに挿入されている)のフレームワーク配列は、以下の通りである。

【0121】
「…」は、7-merのペプチドをコードする配列の挿入部位を表す。Kpn1部位には、下線を引いてあり、Eag1部位には二重下線を引いてある。
【0122】
例示的な7-merのペプチドをコードする配列を以下に示す。「n」は、示した配列を有するペプチドをディスプレイする単離されたファージの数を指す(コードする核酸配列の中には、もちろんいくつかの多様性があるが、遺伝暗号の縮重によるものである)。「SIN」は、「SEQ ID NO」の略語であり、ペプチド配列を指す。核酸配列のSEQ ID NOは、28〜35である。

【0123】
局面1 実施例3
ニューロンの接着に対するNogo、MAG、およびTN-Rの阻害作用を減少させるファージ・ディスプレイ・ペプチドのインビトロ・アッセイ法
3.5cmの直径を有する組織培養ペトリ皿(Becton Dickinson)をLagenaur and Lemmon(1987)に従ってメタノールで可溶化したニトロセルロースで被覆し、無菌フード下で空気乾燥した。次いで、ペトリ皿を5μg/mlのポリ-DL-オルニチンを含むPBSと共に37℃で2時間インキュベートした。その後、ディッシュをPBSで3回洗浄し、無菌フード下で乾燥した。
【0124】
タンパク質のスポット(1.5μlの5μM GST、5μM GST-Nogo66、100μM Nogo66、100μM Nogo1-50、または100μM Nogo1-25)をペトリ皿のニトロセルロース被覆した表面に適用し、加湿された雰囲気中で2時間37℃においてインキュベートした。その後、スポットをPBSで3回洗浄した。次いで、ディッシュを2%の熱不活性化した脂肪酸のないBSA(Sigma)を含むPBSで満たし、一晩インキュベートして残りの非特異的なタンパク質結合部位を遮断した。
【0125】
次いで、ディッシュをPBSで洗浄し、NG108細胞を10%ウシ胎児血清を含む2mlのダルベッコ修正イーグル培地に2.5×105細胞/mlの密度でまき、加湿された雰囲気中で37℃においてインキュベートした。12時間後に、ディッシュをPBSで3回穏やかに洗浄し、2.5%のグルタルアルデヒドを含むPBSで満たすことによって細胞を固定した。固定後、培養物を2.5%の炭酸ナトリウム溶液中の0.5%のトルイジンブルー(Sigma)で染色した。次いで、染色した培養物を水で3回洗浄し、空気乾燥した。
【0126】
種々のスポットに付着する細胞を撮影し、計数した。全ての実験は、少なくとも3回行った。統計解析は、スチューデント検定によって行った。有意水準は、p<0.05として選んだ。
【0127】
GST-Nogo66、Nogo66、およびNogo1-50は全て、GSTと比較して有意に減少したNG108細胞数を示したが;Nogo1-25では、減少しなかった。
【0128】
NG108細胞を単一細胞懸濁液として、ポリ-DL-オルニチン処理した組織培養ペトリ皿にまいた。上で同定されたNogo66-、MAG-、およびTNR-結合ペプチドをディスプレイする特異的なファージを細胞培養に添加した。固定およびトルイジンブルーでの染色の前に、細胞を24時間維持した。細胞接着は、前述したように決定した。
【0129】
ペプチドYLTQPQS(SEQ ID NO.1)をディスプレイするファージは、NG108細胞結合に対するNogo-66およびMAGの阻害作用を遮断することができた;ペプチドTQLFPPQ(SEQ ID NO.3)をディスプレイするファージは、NG108細胞結合に対するTNR-EGFLの阻害作用を遮断することができた。
【0130】
局面1 実施例4
ニューロンの接着に対するNogo、MAG、およびTN-Rの阻害作用を減少させるペプチドのインビトロ・アッセイ法
スクリーニングされたコンセンサス・ペプチドの全てをPeptide Synthesizer Model 1000によって固相法を使用して合成した。神経突起成長および成長円錐反発アッセイ法は、以前に記載されている通りに行った(Xiao ZC et al, 1997)。精製した無処理のTN-R、MAG、およびNogo、並びにTN-R、MAG、およびNogoの組換えドメインを基質として被覆して、TN-R、MAG、およびNogoの阻害性ドメインを同定した。さらなるアッセイ法において、合成されたペプチドを関連するタンパク質/ドメインとコーティングの前に混合し、インビトロでのTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を中和することができるペプチドを同定した。
【0131】
局面1 実施例5
脊椎傷害を軽減させることができるペプチドのインビボ試験
インビトロでTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を中和することができるこれらのコンセンサス・ショート・ペプチドを使用して、これらが脊椎傷害を軽減することを決定した(Bregman et al, 1995)。これらのペプチドを脊髄負傷した成体ラットに注射した。軸索の再生は、未処置の対照と比較して免疫組織化学によってアッセイした。また、機能改善も解析した。
【0132】
局面1 実施例6
TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を消失させることができる候補因子のスクリーニング
インビトロおよび/またはインビボ(好ましくは両方とも)においてTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を中和することができるペプチドについて、縮重オリゴヌクレオチド配列を決定した。縮重オリゴヌクレオチド配列を使用してESTデータベース(好ましくはCNS由来ESTのデータベース)を検索した。標識した縮重オリゴヌクレオチドプローブを使用してCNS cDNAライブラリーをスクリーニングした。ヒットは、TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を消失させることができる候補因子を表す。これらの候補因子をGST融合タンパク質として精製し、ペプチドについて以前に記載されているように、中和効果を試験した。
【0133】
インビボでの中和効果を試験するための他の方法は、候補因子をトランスフェクトしたニューロンを実験動物の傷ついた脊髄に移植し、中和結果を観察する方法である。
【0134】
こうして、TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を消失させることができる新たな因子が得られ、CNS損傷、特に脊髄傷害の治療のために、または治療薬の開発に有用である。
【0135】
局面2 実施例1
ベクターの構築
以下のドメインをコードする核酸を、PCRによって得た:Nogo-AのN末端の66-Aa細胞外ドメイン、MAGの第3〜5 Ig様のドメインおよびヒトTNRのEGF様ドメイン。
【0136】
PCRプライマーは、制限酵素部位を含み、かつサブクローニングされた配列の末端にAlaリンカーをコードするようにデザインした(図1を参照されたい)。従って、PCR産物を二重制限酵素によって消化し、次いで逐次連結した場合、AlaリンカーをコードするDNAは、隣接するドメインの各対の間に位置した(再び、図1を参照されたい)。Alaリンカーは、ドメインの適切な折りたたみを容易にする。
【0137】
次いで、逐次連結したDNAをBamH IおよびXbaIで二重消化し、pcDNA 3.1ベクター(Invitrogen)に挿入して組換えベクターを作製した。組換えベクターをアガロースゲルおよび配列分析によって検査した。
【0138】
局面2 実施例2
インビトロでの組換えベクターの阻害機能の検証
DNAワクチンを試験動物に注射し得る前にインビトロでの試験を行って、ワクチンが哺乳動物細胞によって発現させることができること、および細胞から分泌されて宿主の免疫系を刺激することができることを確認しなければならない。
【0139】
これをチェックするために、COS-1細胞に組換えベクターをトランスフェクトした。一過性発現の後、細胞および培地をそれぞれ収集して、阻害分子に対する抗体(Xiao et al, 1996)を使用してウェスタンブロットを行って、ベクターをワクチンとしてインビボで投与したときに、組換えタンパク質が細胞外へ分泌されて、宿主免疫系を刺激するための抗原として作用することができることを確かめた。
【0140】
トランスフェクトした細胞は、非トランスフェクト細胞と比較してMAGおよびTNR抗体に対して陽性で検出された。Nogoについての免疫反応性をトランスフェクトした細胞およびトランスフェクトしていない細胞の両者において検出した。
【0141】
組換えプラスミドでの一過性のトランスフェクションの48時間後に培地を収集し、タンパク質A-アガロースを使用して抗-NogoNまたは抗-TNR-EGFL抗体で免疫沈降した。沈殿を10%および6%のSDS-PAGEによって分離して、NogoおよびTNRについてそれぞれ調査した。それぞれの沈殿は、対応する抗体に対する免疫反応性を示し、タンパク質が分泌されていることを示した。
【0142】
局面2 実施例3
免疫前の血清および抗血清でのGST融合タンパク質のドット-ブロット
組換えプラスミドでのワクチン接種の2月後に、抗血清をルイス・ラットから収集した。GST-Nogo66、GST-NogoN、GST-TNR/EGFL、GST-MAG Ig 3〜5、およびGSTの段階的濃度を基質としてドットにし、その後に血清でブロットした。抗血清は、GSTではなく、GST融合タンパク質を特異的に認識した。免疫前の血清は、融合タンパク質もGSTも認識しなかった。
【0143】
局面2 実施例4
DNAワクチンとしての組換えベクターの治験
DNAワクチンで免疫化後の傷害した脊髄の再生をチェックするために、組換えDNAベクターを試験動物に注射した。免疫動物の抗血清をアッセイして、DNAワクチンの注射後の免疫応答を検証した。
【0144】
脊椎傷害のための半切除したモデルを使用した。しばらくして、傷害した脊髄のニューロン/軸索の形態学的な研究、および動物の行動の研究を行った。
【0145】
(1)免疫化および脊髄の傷害
6週齢の雌のルイス・ラットに前述の実施例からの100μgの組換えベクターを毎週免疫した。挿入のないpcDNA3.1ベクターを対照として使用した。ベクターをラットの背中に注射した。ラットが抗血清を産生したあと、脊髄を傷害した。ラットには、さらに6週間、毎月2回の免疫化を受け続けさせた。
【0146】
ラットをソムニトール(Somnitol)(1mg/20g体重)で麻酔して、胸の低部の椎弓切除術を行った(T9)。次いで、脊髄の背面の半分を一対のミクロはさみ(microscissors)で切断して、皮質脊髄路を切断した。それぞれの傷害の深さ(約1mm)をミクロはさみの先端に配置したマークによって推定した。傷害後6週間の生存期間の後、ラットを麻酔して、WGA-HRP(コムギ胚芽凝集素-西洋わさびペルオキシダーゼ)の5%溶液を、記載されているとおりに(Li et al., 1996)、感覚-運動皮質に注射した。WGA-HRPの注射の48時間後に、動物を心臓内灌流によって屠殺し、HRP組織化学のために、脊髄の縦のクリオスタット切片を記載されているとおりに(Li et al., 1996)反応させた。
【0147】
(2)免疫化された動物の免疫応答の検証
免疫動物の抗血清が神経突起成長に対する阻害性ドメインの阻害作用を遮断する機能を有することを確かめるために、神経突起増殖アッセイ法を使用して免疫動物の血清を試験した。最初に4-ウェルのディッシュを可溶化されたニトロセルロースで被覆し、5μg/mlポリ-L-リジンと共にプレインキュベートした。GST融合阻害性ドメインまたはペプチドを2μlの液滴としてウェルに配置し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、これらのウェルを対照マウスまたはDNAワクチンで免疫したマウスのいずれかからの血清と共に4℃で一晩インキュベートした。血清を除去して、パーコール密度勾配遠心分離によって精製した生後10日のラット小脳系ニューロンをウェルにつき1×106細胞の密度でまいた。細胞を無血清の化学的に定義された培地中で24時間培養し、4%パラホルムアルデヒドで固定して、クーマシーブルーで染色した。神経突起長をUniversal Image Iイメージ分析システムを使用して測定した。データは、スチューデント-ニューマン-クール試験(student-Newman-Keul's test)を使用して解析して統計学的に有意な相違を決定した(Li et. al., 1996)。
【0148】
(3)傷害された脊髄の形態学的な研究
切断した軸索の再生をチェックするために、ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、10μmの厚さの脊髄の縦のクリオスタット切片をゼラチン被覆したガラススライド上に拾いあげた。切片をビオチン化したヤギ抗ラット抗体と共に一晩、次いでストレプトアビジン結合フルオレッセインと共に1時間インキュベートし、循環抗体を検出した。
【0149】
(4)動物の機能的試験
実験ラットの機能的な回復も行った。接触配置反応(Contact placing response)は、関節のずれを引き起こすことなく、軽く後肢の背面を触診することによって試験した。次いで、動物が足を上げ、これを支持体表面上に置く能力を3〜6回繰り返して評価した。30%以上の反応を陽性として記録した(Kukel-Bagden et. al., 1993)。
【0150】
(5)安全性試験
このワクチン接種アプローチの安全性を、試験動物(障害を起こしていないものおよび障害を起こしたもの)にワクチンを投与し、有害事象、特に感覚または運動機能の欠落および行動または認識障害を探すことによって評価した。
【0151】
CNS組織を組織学的に検査して、たとえばモノクローナル抗-CNPase(Sigma C5922、lot 71k4889)を使用する免疫染色によって自己免疫性損傷を探した。CNPaseは、オリゴデンドロサイト、2’,3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼによって発現されるタンパク質である。
【0152】
前述の本発明は、明快さおよび理解のために図と例とをあげていくつかの詳細において記載したが、添付の請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、これに対して一定の変更と改変がなされてもよいことは、本発明の教示を考慮して当業者には直ちに明らかであろう。
【0153】
本明細書に引用される全ての文書は、これらの全体において、および全ての目的について、参照として組み入れられる。
【0154】
参照





【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】タンパク質MAG、TN-R、およびNogo由来の阻害性ドメインを単離するために使用したプライマーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド:

【請求項2】
アミノ酸配列が以下からなる群より選択される、請求項1記載のペプチド:

【請求項3】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、60アミノ酸までの長さのペプチドであって、Nogo、MAG、および/またはTN-Rに結合することができるペプチド:

【請求項4】
アミノ酸配列YLTQPQS(SEQ ID NO.1)またはTQLFPPQ(SEQ ID NO.3)を含む、請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列を含む60アミノ酸までの長さのペプチドであって、Nogo、MAG、および/またはTN-Rに結合することができるペプチド:

【請求項6】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有する、請求項5記載のペプチド:

【請求項7】
同一の残基の数が少なくとも6である、請求項5または請求項6記載のペプチド。
【請求項8】
Nogo-66および/またはTNR-EGFLに結合することができる、請求項3〜7のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項9】
40アミノ酸までの長さである、請求項3〜8のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項10】
20アミノ酸までの長さである、請求項9記載のペプチド。
【請求項11】
10アミノ酸までの長さである、請求項10記載のペプチド。
【請求項12】
前述の請求項のいずれか1項記載の1つまたは複数のペプチドを、1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に含む組成物。
【請求項13】
治療方法に使用される、請求項1〜11のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項14】
CNS損傷を治療するための薬物の調製における、請求項1〜11のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項記載のペプチドを、患者に対して患者のCNS損傷の部位に、またはその近くに投与することを含む、CNS損傷を治療するための方法。
【請求項16】
以下からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有するペプチドを、患者に対して患者の脊椎傷害または脳卒中損傷の部位に直接注射することによって投与することを含む、脊椎傷害または脳卒中を治療するための方法:

【請求項17】
ニューロン増殖阻害性分子Nogo、MAG、および/またはTN-Rの1つもしくは複数に結合することができる擬態のデザインにおける、請求項1〜11のいずれか1項記載のペプチドおよび/またはこれらのコンピュータで作製されたモデルの使用。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項で定義されたペプチドの擬態をデザインする方法であって、擬態が、ニューロン増殖阻害性分子Nogo、MAG、および/またはTN-Rの1つもしくは複数に結合することができ、該方法が:
(i)ニューロン増殖阻害性分子Nogo、MAG、および/またはTN-Rの1つもしくは複数に結合することができる請求項1〜11のいずれか1項で定義されたペプチドを解析して、ファルマコフォアを定義する活性に必須かつ重要なアミノ酸残基を決定する段階;並びに、
(ii)生物活性を有する候補擬態を、デザインおよび/またはスクリーニングするためにファルマコフォアをモデリングする段階、
を含む方法。
【請求項19】
インビトロでのNogo、MAG、および/またはTN-Rに対する候補擬態の結合をアッセイする工程を含む、請求項17もしくは請求項18記載の使用または方法。
【請求項20】
インビトロで結合することができる候補擬態を同定したのち、インビボでの使用のために候補擬態を最適化する工程を含む、請求項の17〜19のいずれか1項記載の使用または方法。
【請求項21】
最適化された擬態が、1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、請求項20記載の使用または方法。
【請求項22】
ペプチドおよびバクテリオファージ・コートタンパク質からなる融合タンパク質を、ペプチドがバクテリオファージ・ビリオンの表面上にディスプレイされるように発現するバクテリオファージであって、ペプチドが、請求項1〜11のいずれか1項で定義したとおりであるバクテリオファージ。
【請求項23】
Nogo、MAG、および/またはTN-Rに結合することができるペプチドのスクリーニング法であって;
異なるペプチドをそれぞれ発現する請求項22記載のバクテリオファージを提供する段階;並びに、
Nogo、MAG、および/またはTN-Rと結合する能力についてバクテリオファージをスクリーニングする段階、
を含む方法。
【請求項24】
Nogo、MAG、および/またはTN-Rに結合することができると同定されたバクテリオファージ、またはこれらがディスプレイするペプチドを、次いでインビトロでのアッセイ法におけるニューロン細胞接着力に対するNogo、MAG、および/またはTN-Rの阻害作用を遮断する能力についてスクリーニングする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項24の全ての工程、およびインビトロでのアッセイ法におけるニューロン細胞接着力に対するNogo、MAG、および/またはTN-Rの阻害作用を遮断することができるペプチド、またはペプチドをディスプレイするファージの同定に続いて、インビボでの投与のために1つもしくは複数の薬学的に許容される成分と共にペプチドを処方するさらなる工程を含む方法。
【請求項26】
TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる可能性が高い因子を探索する方法であって、配列データベースに問い合わせて、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸を同定する段階を含む方法:

【請求項27】
TN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる可能性が高い因子を探索する方法であって、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列の対応する残基と同一の少なくとも5残基を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブを有するcDNAライブラリーをスクリーニングする段階を含む方法:

【請求項28】
候補ポリペプチドまたは候補ポリペプチドをコードする核酸の同定に続いて、ポリペプチドがTN-R、MAG、および/またはNogoの阻害作用を減少させる能力を試験する工程を含む、請求項26または請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項28の全ての工程、およびインビトロでのアッセイ法におけるニューロン細胞接着力に対するNogo、MAG、および/またはTN-Rの阻害作用を遮断することができるポリペプチドの同定に続いて、インビボでの投与のために1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共にポリペプチドを処方するさらなる工程を含む方法。
【請求項30】
以下からなる群より選択される1つまたは複数のポリペプチド・ドメインをコードする核酸を含む核酸ベクターであって、
(a)Nogo-AのN末端ドメイン(NogoN)、またはその変種もしくは断片;
(b)Nogo-Bの細胞外ループ(Nogo66)、またはその変種もしくは断片;
(c)MAGの第3〜5免疫グロブリン様の繰り返し、またはその変種もしくは断片;および、
(d)TN-RのEGF様ドメイン、またはその変種もしくは断片:
該断片が、該ドメインに由来する少なくとも15の隣接するアミノ酸を含み、該ドメインの1つまたは複数のエピトープを含み、かつインビボで抗体反応を生じさせる能力を保持し、および
該変種が、該ドメインの対応する部分に対して少なくとも65%のアミノ酸同一性を有する、少なくとも15アミノ酸の部分を含む核酸ベクター。
【請求項31】
核酸がドメインのうちの少なくとも2つをコードする、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
ドメインが融合ポリペプチドとして発現される、請求項31記載のベクター。
【請求項33】
ドメインが柔軟なリンカーによって互いに分離される、請求項32記載のベクター。
【請求項34】
タンパク質Nogo A、Nogo B、TN-R、および/またはMAGの中で、ベクターが、好ましくは実質的に請求項30に列挙したドメイン(a)、(b)、(c)、および/または(d)のみを発現することができる、請求項30〜33のいずれか1項記載のベクター。
【請求項35】
ベクターがタンパク質のその他のエピトープ含有部分を発現することができない、請求項34記載のベクター。
【請求項36】
タンパク質Nogo A、Nogo B、TN-R、および/またはMAGの中で、ベクターが、好ましくは請求項30に列挙したドメイン(a)〜(d)の外側に存在するタンパク質の20%未満を発現する、請求項34または請求項35記載のベクター。
【請求項37】
請求項30〜36のいずれか1項記載のベクターであって、ドメイン(a)は、NogoN(1-185)(SEQ ID NO:10)のアミノ酸配列を有し、ドメイン(b)は、Nogo66(823-888)(SEQ ID NO:11)のアミノ酸配列を有し、ドメイン(c)は、MAG(1-508)(SEQ ID NO:8)のアミノ酸配列を有し、およびドメイン(d)は、TNR(125-329)(SEQ ID NO:9)のアミノ酸配列を有するベクター。
【請求項38】
アミノ酸配列

を有するポリペプチドであって、Alanが、ポリアラニン・リンカーを表すポリペプチドをコードする、請求項30記載のベクター。
【請求項39】
治療用ワクチンとして使用するための1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、請求項30〜38のいずれか1項記載のベクターを含む組成物。
【請求項40】
治療方法に使用される、請求項30〜38のいずれか1項記載のベクター。
【請求項41】
CNS損傷を治療するための薬物の製造における、請求項30〜38のいずれか1項記載のベクターの使用。
【請求項42】
請求項30〜38のいずれか1項記載のベクターを治療用ワクチンとして患者に投与する段階を含む、患者のCNS損傷を治療するための方法。
【請求項43】
本質的に請求項30において定義された1つまたは複数のポリペプチド・ドメインからなるポリペプチド。
【請求項44】
請求項30〜38のいずれか1項記載のベクターによってコードされる、請求項43記載のポリペプチド。
【請求項45】
治療用ワクチンとして使用するための1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、請求項43または請求項44記載のポリペプチドを含む組成物。
【請求項46】
治療方法に使用される、請求項43または請求項44記載のポリペプチド。
【請求項47】
CNS損傷を治療するための薬物の製造における、請求項43または請求項44記載のポリペプチドの使用。
【請求項48】
治療用ワクチンとして患者に請求項43または請求項44記載のポリペプチドを投与する段階を含む、患者のCNS損傷を治療するための方法。
【請求項49】
治療方法に使用するための、請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のいずれか1つに特異的に結合することができる抗体、または請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のうちの2つ、3つ、もしくは4つ全てに対して共に結合することができる抗体の混合物。
【請求項50】
CNS損傷を治療するための薬物の製造における、請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のいずれか1つに特異的に結合することができる抗体、または請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のうちの2つ、3つ、もしくは4つ全てに対して共に結合することができる抗体の混合物の使用。
【請求項51】
治療用ワクチンとして、請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のいずれか1つに特異的に結合することができる抗体、または請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のうちの2つ、3つ、もしくは4つ全てに対して共に結合することができる抗体の混合物を患者に投与する段階を含む、患者のCNS損傷を治療するための方法。
【請求項52】
治療用ワクチンとして使用するための、1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に処方される、請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のいずれか1つに特異的に結合することができる抗体、または請求項37で定義したドメイン(a)〜(d)のうちの2つ、3つ、もしくは4つ全てに対して共に結合することができる抗体の混合物を含む組成物。
【請求項53】
注射投与のために処方される、請求項12、39、45、および52のいずれか1項記載の組成物。
【請求項54】
治療がCNS損傷の治療である、請求項13記載のペプチド、請求項40記載のベクター、請求項46記載のポリペプチド、または請求項49記載の抗体。
【請求項55】
治療が脊椎傷害または脳卒中の治療である、請求項13記載のペプチド、請求項40記載のベクター、請求項46記載のポリペプチド、または請求項49記載の抗体。
【請求項56】
治療が脊椎傷害または脳卒中のものである、請求項14、41、47、および50のいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−526382(P2006−526382A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558794(P2004−558794)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005323
【国際公開番号】WO2004/052922
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505211329)シンガポール ジェネラル ホスピタル ピーティーイー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】