説明

中枢神経系の障害の処置における肺送達

【課題】中枢神経系の障害の処置における肺送達の提供。
【解決手段】中枢神経系の障害を処置するための方法は、患者の気道に、肺系、例えば、肺胞または深肺へ送達される薬物を投与することを含む。薬物を含む粒子が使用され得る。好ましい粒子は、約0.4g/cm3未満の嵩密度を有する。この医薬に加えて
、粒子は、例えば、リン脂質、アミノ酸、それらの組み合わせなどの他の物質を含み得る。この薬物は、経口投与に必要とされる用量の約2倍少ない用量で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年9月19日に提出された米国特許出願第09/665,
252号の一部継続出願である、2001年6月8日に提出された米国特許出願
第09/877,734号の継続出願である。これらの両出願の全内容は参照に
より本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
パーキンソン病は、神経病理学的には基底神経節におけるドパミンニューロン
の変性により特徴付けられ、神経学的には消耗性震せん、緩慢な動作、および平
衡問題により特徴付けられる。100 万人を超える人がパーキンソン病を患ってい
ると推定されている。ほぼ全ての患者がドパミン前駆体であるレボドパ、すなわ
ちL-ドパ投与を受けており、しばしばドパデカルボキシラーゼインヒビターであ
るカルビドパと併用される。パーキンソン病の症状は、該疾患の初期段階ではL-
ドパにより充分抑制される。しかしながら、該疾患過程において、ある期間後(
数ヶ月から数年であり得る)は、あまり有効でなくなる傾向がある。
【0003】
パーキンソン病患者においてL-ドパの効果が様々であるのは、少なくとも一部
は、L-ドパの血漿半減期(カルビドパと同時投与した場合でさえ非常に短い傾向
にあり、1〜3時間の範囲である)に関連していると考えられる。該疾患の初期
段階において、この因子は、標的の線条体ニューロンのドパミン貯蔵能により緩
和される。L-ドパはニューロンにより取り込まれ、かつ貯蔵され、経時的に放出
される。しかしながら、該疾患が進行するにつれてドパミン作用性ニューロンが
変性し、ドパミン貯蔵能の低下がもたらされる。したがって、L-ドパの正の効果
は、L-ドパの血漿レベルの変動にますます関連してくる。また、患者は、胃が空
になったり、L-ドパの腸管摂取不良を伴う問題を発現する傾向にある。患者は、
パーキンソン病症状において、ますます顕著な震え(swing )(血漿レベルが低
下するときの古典的パーキンソン病症状への回帰から、L-ドパ投薬後に血漿レベ
ルが一時的に非常に高値まで上昇するときの、いわゆる運動障害(dyskinesis)
にいたる)を発現する。
【0004】
該疾患が進行するにつれて、従来のL-ドパ療法は、ますます頻繁ではあるが、
より低用量での計画で行われる。多くの患者は、例えば、L-ドパを2〜3時間毎
に投与される。しかしながら、パーキンソン病症状の抑制において、L-ドパの頻
繁な投薬は不十分であることがわかっている。また、それらは、患者にとって不
便さを感じさせ、しばしばコンプライアンスが得られない。
【0005】
また、1日に6〜10回ものL-ドパ投薬でさえ血漿L-ドパレベルは危険なほどな
お低下し得、患者は非常に重篤なパーキンソン病症状を経験し得ることがわかっ
ている。この場合、脳のドパミン活性を速やかに増加させるための介在治療とし
て、さらにL-ドパが投与される。しかしながら、経口投与療法は、約30〜45分間
の奏効(onset)時間を伴い、その間、患者は不必要に苦しむ。また、定期的な
計画投薬と介在治療との併用効果は、過剰投薬をもたらし得、これは入院を必要
とし得る。例えば、ドパミン誘導性の吐気を抑制するためのドパミン受容体作動
薬(アポモルフィン)の皮下投与は、しばしば末梢作用性ドパミン拮抗薬、例え
ばドンペリドンを必要とし、不都合で、侵襲性である。
【0006】
てんかん、パニック発作および片頭痛など(これらに限定されない)の中枢神
経系(CNS )が関与する他の医学的徴候は、治療薬の迅速送達を必要とする。例
えば、米国では約200万人の人がなんらかの形態のてんかんを患っており、その
大部分が、数種類の異なる抗発作薬のうちの少なくとも1種の投薬を受けている
。てんかん重積持続状態(より重篤なてんかんの形態)の発生数は約250000 例
である。また、最初の発作が一連のさらなる発作が比較的短時間内に起こること
を予告する、いわゆる「群発性発作」をかなりの数の人が患っている。いくつか
の報告により、慢性的に投薬を受けているにもかかわらず、すべての患者の75%
は、発作の経験が継続している。処方された投薬のコンプライアンス不良は、(
単独ではないが)重要な原因因子であると考えられる。発作の頻度および強度を
抑制および最小化することの重要性は、発作の発生が、ニューロンの欠乏と相関
しており、かつ脳内のニューロンの損失を引き起こすと考えられていることにあ
る。
【0007】
慢性的な処置にもかかわらず、すべての患者の75%もが周期的な発作を起こし
続ける。抑制不可能な発作は、多様な形態で起こる。「群発性発作」の場合、1
回の発作が、一連の発作をもたらすカスケードが始まったことを全エピソードが
経過する前に通知する役割をする。一部の患者においては、重篤な発作が起こる
前に、患者がなんらかの主観的な感情および徴候を感知する(前兆と定義される
)。両方の場合において、これらの患者には「セルフ・メディケーション(self
medication)」により発作の起こりやすさを大きく低減する機会が存在する。
多くの患者がそうなるように指導されるが、有効なセルフ・メディケーションを
可能にするために現在利用可能な薬物は限定されている。
【0008】
米国だけで少なくとも約250万人がパニック発作に襲われるとされている。こ
の障害は、不安の急性エピソードにより特徴付けられ、呼吸困難、めまい、心臓
の動悸および恐怖感のコントロール不能をもたらす。該障害は、交感神経系(誇
張された覚醒応答を伴い、アドレナリン放出および/またはアドレナリン作用性
ニューロンの過剰刺激をもたらす)の問題を伴うと考えられている。現行の薬物
療法では、選択的セロトニン再摂取インヒビター(SSRI)または他の抗鬱薬を、
ベンゾジアザピン類の同時使用と併用する。
【0009】
現在使用されている薬物療法の制限は、処置の開始時における有効性発現の遅
れである。鬱の処置と同様、SSRIの作用の発現は数日よりもむしろ数週間を要す
る。継続的な予防処置に対して生じる必要条件は、今度は、処置があまり有効で
なくなるという重要なコンプライアンスの問題をもたらす。したがって、パニッ
ク発作の心配に対処するための処置開始時における迅速奏効治療の必要性、およ
び該発作が起こった後、いかなる発作をもできるだけ早く阻止する処置の必要性
がある。
【0010】
片頭痛に関しては、単なる血管原性(vasogenic)の病因/病原が1930年代に
最初に提案されたが、1980年代までには、神経原性の病因/病原にとって代わり
、これは、片頭痛研究者の間で一時的に支持された。しかしながら、今日、血管
原性要素および神経原性要素の両方が関与しており、正のフィードバックシステ
ムとして相互作用し、各々が継続的に他方を誘発していると一般的に認識されて
いる。関与している主な神経伝達物質としては、セロトニン(トリプタン類の作
用部位)、サブスタンスP(痛みの緩和に関連するといわれている)、ヒスタミ
ン(炎症に関連するといわれている)およびドパミンが挙げられる。片頭痛発作
に関連する主な病理学には、硬膜の炎症、髄膜管を衰弱させる枝を含む、髄膜管
の直径の増加、三叉脳神経の過敏が挙げられる。トリプタン類は、片頭痛病因カ
スケードの神経性要素および血管性要素の両方に影響するため、有効であると考
えられている。片頭痛には、古典的片頭痛および普通片頭痛、群発性頭痛および
緊張性頭痛が挙げられる。
【0011】
スマトリプタイン(sumatriptain)の初期の研究では、静脈内(IV)投与する
と、90%の有効率が達成されることが示された。しかしながら、有効率は、経
口形態では(プラセボでは30%に対して)わずか約60%である。鼻腔内形態では
、非常に変動しやすく、患者の該部分に対して訓練と技術を要することが示され
ており、患者の一部はこれを習得(master)していないようである。また、該処
置は口内に不快な味覚を誘導し、多くの患者が非常に不快に感じている。最近の
より選択的な5HT1受容体作動薬のいずれかがスマトリプタン(これは多くの受容
体サブタイプ、例えば1B、1Dおよび1Fを刺激する)よりも有効であるという明白
な証拠は現在、存在しない。
【0012】
充分な有効性を提供しないことに加えて、現行のトリプタン類投薬は、少なく
とも2つの他の欠点(1)一部の被験体において胸の締付け感や痛みを生じる胸
筋および心筋の血管収縮;この効果はまた、高血圧患者及び他のCV患者に対し
て許容され得ない危険を提示する、ならびに(2)現行の処方の作用持続時間は
限定的であり、多くの患者において最初の処置から約4時間後に頭痛の再発が引
き起こされる、を有する。
【0013】
催眠薬の迅速奏効はまた、夜中に目覚めたり、いったん目覚めると再度眠りに
就くのが困難であるのは中年から高齢者によくあるため、非常に望ましく、睡眠
修正(restoration)療法に特に有用であり得る。
【0014】
例えば、躁、双極性障害、精神分裂病、食欲減退、乗物酔い、吐気などの当該
技術分野で公知のCNSに関連する他の適応症もまた、その作用部位への治療薬の
迅速送達が必要とされる。
【0015】
したがって、従来の治療法と少なくとも同等に有効であるが上記問題を最小化
または削減する治療薬の送達方法の存在が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、中枢神経系(CNS)障害の処置方法に関する。より具体的には、本
発明は、CNS 障害の処置に適した薬物を肺系に送達する方法に関し、処置の必要
のある患者の気道に、有効量の治療薬を含有する粒子を投与する工程を含む。一
態様において、患者は処置の迅速奏効の必要がある、例えば救急治療の必要があ
る;治療薬は、患者の血流中に放出され、救急治療または迅速処置奏効を提供す
るのに充分短い時間間隔で治療薬作用部位に到達する。別の態様において、本発
明は、CNS の障害を患う患者に、継続中の(ongoing)非救急治療を提供するこ
とに関する。
【0017】
神経系の障害としては、例えば、パーキンソン病、てんかん性および他の発作
、パニック発作、睡眠障害、片頭痛、注意欠陥多動障害、アルツハイマー病、双
極性障害、強迫性障害などが挙げられる。
【0018】
本発明の方法は、パーキンソン病の過程における継続中の処置において、およ
び救急治療のために特に有用である。本発明の方法に使用される薬物または治療
薬はドパミン前駆体またはドパミン作動薬、例えば、レボドパ(L-ドパ)である

【0019】
一態様において、本発明は、処置または救急治療の必要のある患者の気道に、
パーキンソン病処置のための薬物、例えば、L-ドパを投与する工程を含む、パー
キンソン病の処置方法に関する。該薬物は、肺系、例えば、肺の肺胞領域に送達
される。経口投与と比べ、少なくとも約2倍の投薬量低減が採用される。投薬量
は、一般に、経口投与で必要とされる投薬量の約2倍〜約10倍少ない。
【0020】
他の態様において、CNSの障害の処置方法は、処置の必要のある患者の気道に
、該疾患の処置のための薬物を投与する工程を含む。該薬物は、経口投与で必要
とされる投薬量の少なくとも約2倍少ない投薬量で投与され、肺系に送達される

【0021】
本発明で用いられる投薬量はまた、一般に、例えば皮下注射、筋肉内注射、腹
腔内、口内、直腸および鼻腔内などの静脈内以外の投与経路で必要とされる投薬
量より少なくとも約2倍少ない。
【0022】
本発明は、さらに、肺系に治療投薬量の治療薬を少ない工程数で、好ましくは
一回の呼吸活性化工程(breath activated step )で投与する方法に関する。
本発明はまた、治療投薬量の薬物を肺系に、少ない呼吸回数で、好ましくは一回
の呼吸で送達する方法に関する。該方法は、粒子の塊を有する容器から被験体の
気道に粒子を投与する工程を含む。好ましくは、該容器は、少なくとも約0.37cm
3 の体積を有し、乾燥粉末吸入器での使用に適したデザインを有し得る。少なく
とも約0.48cm3、0.67cm3 、または0.95cm3 の体積を有する、より大きな容器も
また使用し得る。該容器は、単回投薬量呼吸活性化乾燥粉末吸入器内に保持され
得る。
【0023】
本発明の一態様において、該粒子は少なくとも約10ミリグラム(mg)の薬物を
送達する。他の態様において、該粒子は、少なくとも約15、20、25、30ミリグラ
ムの薬物を送達する。より多くの量もまた送達し得、例えば、該粒子は少なくと
も約35、40または50ミリグラムの薬物を送達し得る。
【0024】
本発明はまた、肺系への粒子の効率的な送達のための方法に関する。一態様に
おいて、本発明は、名目粉末投薬量の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも
約80%に相当する粒子の肺系への送達に関する。本発明の別の態様では、一回の
呼吸活性化工程での肺系への治療薬の送達方法は、粒子の塊を有する容器から被
験体の気道に粒子を投与する工程を含み、ここで、粒子の塊の少なくとも約50%
が送達される。
【0025】
好ましくは、気道への投与は、乾燥粉末吸入器により、または定量吸入器によ
るものである。本発明の粒子はまた、当該技術分野で公知のものなどの肺系への
送達に適した組成物において用いられ得る。
【0026】
一態様において、本発明の方法で用いられる粒子は、肺系、特に肺胞または肺
深部への治療薬の送達に適した粒子である。好ましい態様において、該粒子は、
0.4g/cm3未満の嵩密度を有する。別の好ましい態様では、該粒子は、少なくとも
5μm(ミクロン)、好ましくは約5μm〜30μmの幾何学(geometric )直径
を有する。さらに別の好ましい態様では、該粒子は、約1μm〜約5μmの空力
学的直径を有する。別の態様では、該粒子は、5μmよりも大きい、好ましくは
約10μm程度以上の質量メジアン幾何学直径(MMGD)を有する。さらに別の態様
では、該粒子は、約1μm〜約5μmの範囲の質量メジアン空力学的直径(MMAD
)を有する。好ましい態様では、該粒子は、約1μm〜約3μmの範囲のMMADを
有する。
【0027】
粒子は、治療薬を構成し得るか、または1種以上のさらなる成分をさらに含み
得る。治療薬の血流への迅速放出およびその作用部位、例えば中枢神経性への送
達が好ましい。本発明の一態様において、粒子は、治療薬の放出速度論を増強す
る物質を含有する。かかる物質の好適な例としては、ある種のリン脂質、アミノ
酸、多価金属の塩と結合したカルボキシレート部位などが挙げられるが、これら
に限定されない。
【0028】
好ましい態様において、凝集状態の乾燥粉末の粒子を保持するエネルギーは、
吸入流速の妥当な生理学的範囲にわたって、患者の呼吸により容器内に含まれる
粉末を吸入可能な粒子に解離するのに充分となっている。解離された粒子は、患
者の呼吸を介して気道および/またはは肺深部内に高効率で浸透し、沈着し得る

【0029】
本発明は多くの利点を有する。例えば、肺系送達は、不便な注射を伴わない即
時の(on-demand)処置を提供する。治療薬の中枢神経系への選択的送達は、他
の投与経路、特に従来の経口投薬計画では得られ得ない時間枠内で得られ得る。
したがって、循環系への治療薬の「初回通過」で有効投薬量が作用部位へ送達さ
れ得る。本発明を実施することにより、従来の経口療法ではなお作用部位に移動
している時間枠内に、症状のある患者に対して緩和がもたらされ得る。本発明の
方法で用いられる低減された投薬量は、経口投薬量で得られるものと同等の血漿
薬物レベルをもたらす。静脈内投与で観察されるものに近い血漿レベルが得られ
得る。他の投与経路、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、口内、直腸および鼻腔内
に対する投薬量の利点もまた得られ得る。さらに、1回または少数の工程または
呼吸数で肺系に治療量の薬物が送達され得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 救急治療を必要とする患者の気道に有効量の薬物を含有して
なる粒子を投与することを含み、粒子が約0.4g/cm3未満の嵩密度を有し、肺系の
肺胞領域へ送達されるものである、中枢神経系の障害のための救急治療を提供す
る方法。
(項目2) 救急治療を必要とする患者の気道に有効量の抗パーキンソン
病薬物を含有してなる粒子を投与することを含み、粒子が肺系の肺胞領域へ送達
されるものである、パーキンソン病のための救急治療を提供する方法。
(項目3) 粒子が約0.4g/cm3未満の嵩密度を有するものである項目2
記載の方法。
(項目4) 粒子が約0.1g/cm3未満の嵩密度を有するものである項目3
記載の方法。
(項目5) 粒子が約5ミクロン未満の質量メジアン空気力学的直径を有
するものである項目3記載の方法。
(項目6) 粒子が約3ミクロン未満の空気力学的直径を有するものであ
る項目5記載の方法。
(項目7) 粒子が約5〜約30ミクロンの範囲の体積メジアン幾何学的直
径を有するものである項目3記載の方法。
(項目8) 薬物がレボドパである項目2記載の方法。
(項目9) レボドパが粒子中に約1〜約90重量%の範囲の量で存在する
ものである項目8記載の方法。
(項目10) レボドパが粒子中に少なくとも約20重量%の量で存在する
ものである項目9記載の方法。
(項目11) 薬物がカルビドパである項目2記載の方法。
(項目12) 薬物がアポモルフィンである項目2記載の方法。
(項目13) 粒子がさらにリン脂質を含有するものである項目2記載
の方法。
(項目14) リン脂質が粒子中に少なくとも10重量%の量で存在する
ものである項目13記載の方法。
(項目15) 粒子が患者の生理的温度より高くないマトリクス転移温度
を有するものである項目13記載の方法。
(項目16) 粒子がさらにアミノ酸を含有するものである項目2記載
の方法。
(項目17) アミノ酸が粒子中に少なくとも約10重量%の量で存在す
るものである項目16記載の方法。
(項目18) 粒子がさらにクエン酸塩を含有するものである項目2記
載の方法。
(項目19) クエン酸塩が粒子中に少なくとも約10%の量で存在する
ものである項目18記載の方法。
(項目20) 粒子がさらに二価金属塩を含有するものである項目18
記載の方法。
(項目21) 二価金属塩が塩化カルシウムである項目20記載の方法

(項目22) 薬物が経口送達に必要とされる用量の少なくとも約2倍少
ない用量で投与されるものである項目2記載の方法。
(項目23) 薬物がその作用部位に到達するものであり、それにより約
30分未満に救急治療を提供する項目2記載の方法。
(項目24) 薬物がその作用部位に到達するものであり、それにより約
15分未満に救急治療を提供する項目23記載の方法。
(項目25) 粒子が乾燥粉末として投与されるものである項目2記載
の方法。
(項目26) 薬物が乾燥粉末中に少なくとも20重量%の量で存在するも
のである項目25記載の方法。
(項目27) 薬物が乾燥粉末中に少なくとも40重量%の量で存在するも
のである項目26記載の方法。
(項目28) 薬物が乾燥粉末粒子中に少なくとも50重量%の量で存在す
るものである項目27記載の方法。
(項目29) 粒子を投与することが継続治療と組み合わせられるもので
ある項目2記載の方法。
(項目30) 粒子がさらに少なくとも1つの生物活性因子を含有するも
のである項目2記載の方法。
(項目31) 処置または救急治療を必要とする患者の気道にケトプロフ
ェンを投与することを含み、ケトプロフェンが経口投与に必要とされる用量の少
なくとも約2倍少ない用量で投与されるものであり、送達が肺系の肺胞領域に対
するものである、中枢神経系の障害を処置する方法。
(項目32) 継続処置または救急治療を必要とする患者の気道にベンゾ
ジアゼピン薬物を投与することを含み、ベンゾジアゼピン薬物が経口投与に必要
とされる用量の少なくとも約2倍未満である用量で投与されるものであり、送達
が肺系の肺胞領域に対するものである、中枢神経系の障害を処置する方法。
(項目33) 有効量のベンゾジアゼピン薬物を含有してなる救急治療粒
子を必要とする患者の気道に投与することを含み、粒子が約0.4g/cm3未満の嵩密
度を有し、肺系の肺胞領域へ送達されるものである、中枢神経系の障害を処置す
る方法。
(項目34) 粒子が約0.1g/cm3未満の嵩密度を有するものである項目
33記載の方法。
(項目35) 粒子が約5ミクロン未満の質量メジアン空気力学的直径を
有するものである項目33記載の方法。
(項目36) 粒子が約3ミクロン未満の質量メジアン空気力学的直径を
有するものである項目33記載の方法。
(項目37) 粒子が約5〜約30ミクロンの範囲の体積メジアン幾何学的
直径を有するものである項目33記載の方法。
(項目38) 薬物がアルプラゾラムである項目33記載の方法。
(項目39) ベンゾジアゼピンが粒子中に約1〜約90重量%の範囲の量
で存在するものである項目38記載の方法。
(項目40) ベンゾジアゼピンが粒子中に少なくとも約20重量%の量で
存在するものである項目39記載の方法。
(項目41) 粒子がさらにリン脂質を含有するものである項目2記載
の方法。
(項目42) リン脂質が粒子中に少なくとも10重量%の量で存在する
ものである項目41記載の方法。
(項目43) 粒子が患者の生理的温度より高くないマトリクス転移温度
を有するものである項目41記載の方法。
(項目44) 粒子がさらにアミノ酸を含有するものである項目33記
載の方法。
(項目45) アミノ酸が粒子中に少なくとも約10%の量で存在するも
のである項目44記載の方法。
(項目46) 粒子がさらにクエン酸塩を含有するものである項目33
記載の方法。
(項目47) クエン酸塩が粒子中に少なくとも約10%の量で存在する
ものである項目46記載の方法。
(項目48) 粒子がさらに二価金属塩を含有するものである項目46
記載の方法。
(項目49) 二価金属塩が塩化カルシウムである項目48記載の方法

(項目50) ベンゾジアゼピンが、血漿レベルによって測定される場合
、経口送達に必要とされる用量の少なくとも約2倍少ない用量で投与されるもの
である項目33記載の方法。
(項目51) 薬物がその作用部位に到達するものであり、それにより約
30分未満に救急治療を提供する項目33記載の方法。
(項目52) 薬物がその作用部位に到達するものであり、それにより約
15分未満に救急治療を提供する項目51記載の方法。
(項目53) 粒子が乾燥粉末として投与されるものである項目33記
載の方法。
(項目54) 薬物が乾燥粉末中に少なくとも20重量%の量で存在するも
のである項目53記載の方法。
(項目55) 薬物が乾燥粉末中に少なくとも40重量%の量で存在するも
のである項目54記載の方法。
(項目56) 薬物が乾燥粉末粒子中に少なくとも50重量%の量で存在す
るものである項目55記載の方法。
(項目57) 粒子を投与することが継続治療と組み合わせられるもので
ある項目33記載の方法。
(項目58) 粒子がさらに少なくとも1つの生物活性因子を含有するも
のである項目33記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1Aは、経口胃管栄養投与または肺への直接投与後のラットにおけるL-ドパの血中レベル(質量分析計で測定)のプロットを示す図である。図1Bは、経口胃管栄養投与または肺への直接投与後のラットにおけるL-ドパの血中レベル(HPLCで測定)のプロットを示す図である。
【図2】図2Aは、経口送達または肺への直接送達後のラットにおける血中L-ドパレベルのプロットを示す図である。図2Bは、L-ドパの経口送達または肺への直接送達後のラットにおける線条体ドパミンレベルのプロットを示す図である。
【図3】図3は、経口または肺への直接のいずれかでの14C−L-ドパ投与後の14Cの血中レベルおよび線条体レベルのプロットを示す図である。
【図4】図4は、経口(胃管栄養)、気管切開または人工呼吸器での14C−L-ドパ投与後のラットにおける14Cの血漿レベルのプロットを示す図である。
【図5】図5は、経口(胃管栄養)、気管切開または人工呼吸器での14C−L-ドパ投与後のラットにおける脳14Cレベルのプロットを示す図である。
【図6】図6Aは、静脈内(IV)投与および肺系(肺)投与後の脳の領域内における絶対14C−カルボプラチンレベルを示す棒グラフである。図6Bは、静脈内(IV)投与および肺系(肺)投与後の脳の領域内における相対14C−カルボプラチンレベルを示す棒グラフである。
【図7】図7Aは、静脈内(IV)投与または肺系(肺)投与後の動物器官における絶対14C−カルボプラチンレベルを示す棒グラフである。図7Bは、静脈内(IV)投与または肺系(肺)投与後の動物器官における相対14C−カルボプラチンレベルを示す。
【図8】図8は、経口または肺系投与(8mg投薬量に正規化)後のL-ドパの血漿濃度対時間を示すプロットを示す図である。
【図9】図9は、経口群および肺系群についてケトプロフェンの血漿濃度対時間を示すプロットを示す図である。
【図10】図10は、経口群についてケトプロフェンの血漿濃度対時間を示すプロットを示す図である。
【図11】図11は、肺系群についてケトプロフェンの血漿濃度対時間を示す図である。
【図12】図12は、L-ドパを含有する異なる粉末製剤についてのRODOS曲線を示すプロットを示す図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、ブランク試料(図13B)と比較した、粉末(図13A)からのL-ドパ回収を示すHPLCクロマトグラムである。
【図14】図14Aは、肺系(肺)経路および経口経路後のL-ドパ血漿レベルを示す。図14Bは、肺系(肺)投与、経口投与および静脈内投与後のL-ドパ血漿レベルを示す図である。
【図15】図15Aおよび図15Bは、それぞれ、経口(p.o.)L-ドパおよび肺系(肺)L-ドパのパーキンソン病のラットモデルにおける機能的「位置課題」に関する結果を示す図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは、それぞれ、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的「踏ん張り課題」に関する経口(p.o.)L-ドパおよび肺系(肺)のL-ドパの結果を示す図である。
【図17】図17Aおよび図17Bは、それぞれ、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的無動試験に関する経口(p.o.)L-ドパおよび肺系(肺)のL-ドパの結果を示す図である。
【図18】図18は、パーキンソン病のラットモデルにおける機能的回転に関するL-ドパの経口(p.o.)および肺系(肺)送達の結果を示す図である。
【図19】図19Aは、PZT投与の10分前でのアルプラゾラムの肺系および経口送達後の発作発生までの時間を示す図である。図19Bは、PZT投与の10分前でのアルプラゾラムの肺系および経口送達後の発作持続時間を示す図である。
【図20】図20Aは、PZT投与の30分前でのアルプラゾラムの肺系および経口送達後の発作発生までの時間を示す図である。図20Bは、PZT投与の30分前でのアルプラゾラムの肺系および経口送達後の発作持続時間を示す図である。
【図21】図21Aは、PZT投与の10分前および30分前での肺系アルプラゾラムについての発作発生までの時間を示す図である。図21Bは、PZT投与の10分前および30分前での肺系アルプラゾラムについての発作持続時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の工程として、または本発明の部分の組み合わせとしての、本発明の特
徴および他の詳細を以下により具体的に記載し、特許請求の範囲に示す。本発明
の具体的な態様は例示のために示すのであって、本発明を限定するものとして示
すのではないことを理解されたい。本発明の原理的特徴は、本発明の範囲を逸脱
することなく種々の態様において用いられ得る。
【0032】
本発明は、一般に、CNSの障害を処置する方法に関する。特に、本発明は、薬
物、治療剤または生物活性剤の肺系送達のための方法に関する。
【0033】
本発明の方法により処置され得る好ましい医学的適応症の1つは、パーキンソ
ン病、特に該疾患の後期段階であり、この場合、救急治療を提供するために本明
細書に記載の方法が特に適切である。本明細書で使用する「救急治療」は、疾患
症状を低減または抑制するのを補助するための、患者への即時の迅速な薬物送達
を意味する。本発明の方法はまた、CNS の障害で観察される急性窮迫状態の患者
における使用に適する。他の態様において、本明細書で開示される方法および粒
子は、パーキンソン病の継続中の(非救急の)処置において使用し得る。
【0034】
パーキンソン病に加え、進行性および若年性を含むミオクローヌスてんかん;
複雑、部分、前頭葉、運動および感覚、ローランドおよび側頭葉のものを含む部
分てんかん;良性新生児てんかん;外傷後てんかん;反射性てんかん;ランドー
−クレッフナー症候群;ならびに熱性、ステイタス(status)てんかん、および
持続性部分てんかん(Epilepsia Partialis Continua)を含む発作において生じ
るものなどのてんかん性発作の形態もまた、本発明の方法を用いて処置し得る。
【0035】
注意欠陥多動障害(ADHD)もまた、本発明の方法および製剤を用いて処置し得
る。
【0036】
本発明により恩恵を被り得る睡眠障害としては、睡眠不全、睡眠不足、日周期
睡眠障害、過度の傾眠の障害、特発性過剰傾眠、クライン−レビン症候群、ナル
コレプシー、夜間ミオクローヌス症候群、不穏下肢症候群、睡眠無呼吸症候群、
睡眠開始および維持(Sleep Initiation and Mainenance )障害、錯眠、夜間ニ
オクローヌス(Nyoclonus)症候群、夜間発作性失調症、REM 睡眠錯眠、睡眠覚
醒障害、睡眠時歯ぎしりおよび睡眠−覚醒移行障害を含む、内因性睡眠障害が挙
げられる。睡眠の中断は、しばしば午前2時〜3時頃に起こり、効果が約3〜4
時間持続する処置を必要とする。
【0037】
本発明の方法により処置され得る中枢神経系の他の障害の例としては、食欲減
退、乗物酔い、パニック障害または不安発作障害、吐気抑制、躁、双極性障害、
精神分裂病などの、救急治療を必要とする当該技術分野で公知のものが挙げられ
るが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の方法により送達され得る治療薬としては、神経系の障害の救急治療に
おいて一般に処方されるものなどの医薬製剤が挙げられる。好ましい態様におい
て、該治療薬は、ドパミン前駆体、ドパミン作動薬またはそれらの任意の組み合
わせである。好ましいドパミン前駆体としては、レボドパ(L-ドパ)が挙げられ
る。パーキンソン病の処置において一般に投与される、本発明の方法に適し得る
他の薬物としては、例えば、エトスクシミド、カルビドパ、アポモルフィン、ソ
ピニロール(sopinirole)、プラミペクソル(pramipexole)、ペルゴリン(pe
rgoline )、ブロナオクリプチン(bronaocriptine)など(これらに限定されな
い)のドパミン作動薬が挙げられる。L-ドパまたは他のドパミン前駆体またはド
パミン作動薬は、処置される患者において生物学的に活性である任意の形態また
は誘導体であり得る。
【0039】
抗痙薬の例としては、ジアゼパム、バルプロ酸、ジバルプロ酸ナトリウム、フ
ェニトイン、フェニトインナトリウム、クロアナゼパム(cloanazepam )、プリ
ミドン、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、カルバマゼピン
、アモバルビタールナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メフォバル
ビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、
フェナセミド、セコバルビトール(secobarbitol)ナトリウム、クロラゼペート
二カリウム、トリメタジオンが挙げられるが、これらに限定されない。他の抗痙
性薬物としては、例えば、アセタゾラミド、カルバマゼピン、クロルメチアゾー
ル(chlormethiazole)、クロナゼパム、クロラゼペート二カリウム、ジアゼパ
ム、ジメタジオン、エスタゾラム、エトスクシミド、フルナリジン、ロラゼパム
、硫酸マグネシウム、メダゼパム、メラトニン、メフェニトイン、メフォバルビ
タール、メプロバメート、ニトラゼパム、パラアルデヒド、フェノバルビタール
、フェニトイン、プリミドン、プロポフォール、リルゾール(riluzole)、チオ
ペンタール、チレタミン(tiletamine)、トリメタジオン、バルプロ酸、ビガバ
トリンが挙げられる。ベンゾジアゼピン類は、好ましい薬物である。例としては
、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート二カリウム、エスタ
ゾラム、メダゼパム、ミダゾラム、トリアゾラム、ならびにアントラマイシン、
ブロマゼパム、クロナゼパム、デバゼピド(devazepide)、ジアゼパム、フルマ
ゼニル、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサ
ゼパム、ピレンセピン(pirensepine )、プラゼパム、およびテマゼパムなどの
ベンゾジアゼピノン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
片頭痛の症状緩和を提供するための薬物の例としては、非ステロイド系抗炎症
薬(NSAID )が挙げられる。一般に、非経口NSAIDは片頭痛に対して経口形態よ
りも有効である。種々のNSAID の中でも、ケトプロフェンは、多くの人が片頭痛
に対してより有効であるものの1つであるとみなしている。しかしながら、経口
経路でのそのT maxは、約90分である。他のNSAID としては、アミノピリン、ア
モジアキン、アムピロン(ampyrone)、アンチピリン、アパゾン(apazone )、
アスピリン、ベンジダミン、ブロメライン、ブフェキサマク(bufexamac )、BW
-755C 、クロファジミン、クロニキシン(clonixin)、クルクミン、ダプソン、
ジクロフェナク、ジフニサル、ジピロン、エピリゾール(epirizole )、エトド
ラク(etodolac)、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、
グリシルリジン酸、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、ケトロラク
トロメタミン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メサラミン、ナプロキセン、
ニフルム酸(niflumicacid )、オキシフェンブタゾン、ペントサン硫酸ポリエ
ステル、フェニルブタゾン、ピロキシカム、プレナゾン(prenazone )、サリチ
ル酸塩、サリチル酸ナトリウム、スルファザラジン、スリンダク、スプロフェン
、およびトルメチンが挙げられる。
【0041】
他の抗片頭痛剤としては、トリプタン類、酒石酸エルゴタミン、塩酸プロパノ
ロール(propanolol)、イソメテプテンムケート(mucate)、ジクロラルフェナ
ゾン(dichloralphenazone)などが挙げられる。
【0042】
ADHDの処置において投与される薬剤としては、とりわけ、メチルペニデート(
methylpenidate)、デキストロアンフェタミン、ペモリン、イミプラミン、デシ
プラミン、チオリダジンおよびカルバマゼピンが挙げられる。
【0043】
睡眠障害のための好ましい薬物としては、ベンゾジアゼピン類、例えば、アル
プラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート二カリウム、エスタゾラム
、メダゼパム、ミダゾラム、トリアゾラム、ならびにアントラマイシン、ブロマ
ゼパム、クロナゼパム、デバゼピド、ジアゼパム、フルマゼニル、フルニトラゼ
パム、フルラゼパム、ロラゼパム(lorasepam )、ニトラゼパム、オキサゼパム
、ピレンゼピン、プラゼパム、テマゼパムおよびトリアゾラムを含むベンゾジア
ゼピノン類が挙げられる。別の薬物は、現在のところ5mg錠剤として投与され、
Tmax =1.6時間;半減期=2.6 時間(1.4 〜4.5 時間の範囲)であるゾルピデ
ム(Ambien(登録商標)、Lorex社)である。ピーク血漿レベルには約2時間で
到達し、半減期は約1.5〜5.5 時間である。さらに別の薬物は、アルコールに溶
解するが水にはあまり溶解しない、分子量が343 の複素環ベンゾジアゼピン誘導
体であるトリアゾラム(Halcion (登録商標)、Pharmacia 社)である。経口に
よる通常の投薬量は、0.125 〜0.25mgである。テマゼパムは、夜間の睡眠を維持
するのに充分な、より長い作用持続時間のため、睡眠障害に良い候補であり得る
。ザレプロン(Sonata)(登録商標)、WyethAyerst社)は、作用持続時間が短
いため、夜中の睡眠修正のための現在承認されている薬物の1つである。
【0044】
他の治療薬としては、鎮痛薬/解熱薬、例えば、ケトプロフェン、フルビプロ
フェン、アスピリン、アセタミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリ
ウム、塩酸ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシ
レート(napsylate)、塩酸メペリジン、塩酸ヒドロモルホン、硫酸モルフィン
、塩酸オキシコドン、リン酸コデイン、二酒石酸ジヒドロコデイン、塩酸ペンタ
ゾシン、二酒石酸ヒドロコドン、酒石酸レボルファノール、ジフルニサール、サ
リチル酸トロラミン、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、酒石酸ブトルファノー
ル、サリチル酸コリン、ブタルビタール、クエン酸フェニトロキサミン、クエン
酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸シンナメドリン、メプロバメ
ートなどが挙げられる。
【0045】
抗不安治療薬としては、例えば、ロラゼパム、塩酸ブスピロン、プラゼパム、
塩酸クロルジゼポキシド(chlordizepoxide )、オキサゼパム、クロラゼペート
二カリウム、ジアゼパム、ヒドロキシジンパモエート(pamoate )、塩酸ヒドロ
キシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノンなど
が挙げられる。
【0046】
抗精神病薬の例としては、ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸ロキサ
ピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、塩酸フルフェナジン、
デカン酸フルフェナジン、フルフェナジンエナンタート、塩酸トリフルオペラジ
ン、塩酸クロルプロマジン、ペルフェナジン、クエン酸リチウム、プロクロルペ
ラジンなどが挙げられる。
【0047】
抗有糸分裂剤(antimonic)の一例は、炭酸リチウムであり、アルツハイマー
剤の例としては、テトラアミノアクリジン、ドナペゼール(donapezel )などが
挙げられる。
【0048】
鎮静剤/精神機能減退剤(hypnotics)としては、バルビツレート類(例えば
、ペントバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、セコバルビタールナト
リウム)、ベンゾジアゼピン類(例えば、塩酸フルラゼパム、トリアゾラム、ト
マゼパム(tomazeparm)、塩酸ミダゾラム)などが挙げられる。
【0049】
血糖降下剤(hypoglycemicagent)としては、例えば、オンダンセトロン、グ
ラニセトロン、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリ
ネート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジン、スコポラミンなどが挙げられる
。乗り物酔い止め剤(antimotion sickness agent )としては、例えば、シンノ
リジン(cinnorizine)が挙げられる。
【0050】
薬物の組み合わせもまた用い得る。
【0051】
本発明の一態様において、粒子は、例えば、上述の治療薬の1つなどの治療薬
からなる。別の態様において、粒子は、1種以上のさらなる成分を含む。これら
の粒子中に存在する薬物または治療薬の量は、1.0 〜約90.0重量パーセントの範
囲であり得る。
【0052】
救急治療のためには、血流への治療薬の高速放出を促進する1種以上の成分を
含む粒子が好ましい。本明細書で使用する血流への治療薬の迅速放出とは、救急
治療を提供するのに好適な放出速度論をいう。一態様において、至適治療血漿濃
度は、10分未満に達成される。至適治療血漿濃度は、約2分という速さで、およ
びそれ以下でさえ達成され得る。至適治療濃度は、しばしば、静脈投与で観察さ
れるのと類似または近似の時間枠以内で達成され得る。一般に、至適治療血漿濃
度は経口投与で可能なものよりかなり速く、例えば2〜10倍速く達成される。
【0053】
好ましい態様において、粒子は、例えば、ホスファチジジルコリン、ホスファ
チジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン
、ホスファチジルイノシトール、またはそれらの組み合わせなどの1種以上のリ
ン脂質を含む。一態様では、リン脂質は肺に内在性のものである。リン脂質の組
み合わせもまた用い得る。リン脂質の具体的な例を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
リン脂質は、約0〜約90重量%の範囲の量で該粒子内に存在し得る。好ましく
は、リン脂質は、約10〜約60重量%の範囲の量で該粒子内に存在し得る。
【0056】
リン脂質またはその組み合わせは、該粒子に徐放性を付与するように選択され
得る。徐放性を有する粒子および生物学的活性剤の放出を調節する方法は、1999
年8月25日に提出された米国特許仮出願第60/150,742号、発明の名称「マトリッ
クス移行の制御による乾燥粉末製剤からの放出の調節(Modulation of Release
From Dry PowderFormulations by Controlling Matrix Transition)」、2000
年8月23日に提出された米国特許出願第09/644,736号、発明の名称「乾燥粉末製
剤からの放出の調節(Modulation of Release From Dry Powder Formulations)
」および代理人整理番号2685.1012-004 の下で2001年2月23日に提出された米国
特許出願第09/792,869号、発明の名称「乾燥粉末製剤からの放出の調節」に開示
されている。3つのすべての出願の内容は、参照によりそのまま本明細書に取り
込まれる。救急治療用治療薬の送達において好ましい迅速放出は、例えば、低転
移温度により特徴付けられるリン脂質を該粒子内に含めることにより得られ得る
。別の態様において、迅速放出粒子と徐放粒子との組み合わせは、治療の単一の
原因においてより持続的な放出と組合わせた救急治療を可能にする。徐放性は、
CNS の障害の非救急の継続中の治療で利用し得る。
【0057】
本発明の別の態様において、該粒子は界面活性剤を含み得る。本明細書で使用
する「界面活性剤」という用語は、水と有機系ポリマー溶液間の界面、水/空気
界面または有機系溶剤/空気界面などの2つの非混和性相間の界面に優先的に吸
収される任意の薬剤をいう。界面活性剤は、一般に、ミクロ粒子に吸収されると
、同様にコートされた粒子は引き付けない部分を外部環境に対して提示する傾向
にあるような親水性部分および親油性部分を有し、それにより粒子の凝集が低減
される。界面活性剤はまた、治療剤または診断剤の吸収を促進し得、該薬剤のバ
イオアベイラビリティーを増加し得る。
【0058】
例えば、上述したリン脂質などの肺界面活性剤以外で、好適な界面活性剤とし
ては、限定されないが、ヘキサデカノール;ポリエチレングリコール(PEG )な
どの脂肪族アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチ
ン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;グリココール酸塩;サーファクチ
ン(surfactin);ポロキソマー(poloxomer) ;トリオレイン酸ソルビタン(Span
85)などのソルビタン脂肪酸エステル;チロキサポールなどが挙げられる。
【0059】
前記界面活性剤は、約0〜約90重量%の範囲の量で粒子内に存在し得る。好ま
しくは、約10〜約60重量%の範囲の量で粒子中に存在し得る。
【0060】
界面活性剤、特にリン脂質を含む粒子を調製し、投与する方法は、Hanes らに
1999年1月5日に交付された米国特許第5,855,913号およびEdwards らに1999年
11月16日に交付された米国特許第5,985,309号に開示されている。両方の教示は
、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
本発明の別の態様では、前記粒子は、アミノ酸を含む。疎水性アミノ酸が好ま
しい。適切なアミノ酸としては、天然疎水性アミノ酸および非天然疎水性アミノ
酸が挙げられる。使用され得るアミノ酸の例としては、限定されないが、グリシ
ン、プロリン、アラニン、システイン、メチオニン、バリン、ロイシン、チロシ
ン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファンが挙げられる。好ましい
疎水性アミノ酸としては、限定されないが、ロイシン、イソロイシン、アラニン
、バリン、フェニルアラニン、グリシンおよびトリプトファンが挙げられる。ア
ミノ酸としては、疎水性アミノ酸の組合せも用いられ得る。非天然アミノ酸とし
ては、例えば、β−アミノ酸が挙げられる。疎水性アミノ酸のDおよびL立体配
置ならびにラセミ混合物の両方が使用され得る。また、適切な疎水性アミノ酸と
しては、アミノ酸類似体をも挙げられる。本明細書で使用するとき、アミノ酸類
似体としては、下記式:-NH-CHR-CO- 、[式中、Rは、脂肪族基、置換脂肪族基
、ベンジル基、置換ベンジル基、芳香族基または置換芳香族基であり、Rは、天
然アミノ酸の側鎖に対応しない]を有するDまたはL立体配置のアミノ酸が挙げ
られる。本明細書で使用するとき、脂肪族基としては、完全に飽和しており、窒
素、酸素または硫黄などの1個または2個のヘテロ原子を含む、および/または
1個以上の不飽和単位を含むものである、直鎖、分枝または環状C1−C8炭化水素
が挙げられる。芳香族基としては、フェニルおよびナフチルなどの炭素環式芳香
族基、並びにイミダゾリル、インドリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピラ
ニル、オキサゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノ
リニルおよびアクリジンチルなどの複素環式芳香族基が挙げられる。
【0062】
脂肪族、芳香族またはベンジル基上の適切な置換基としては、-OH 、ハロゲン
(-Br 、-Cl、-Iおよび-F)、-O(脂肪族、置換脂肪族、ベンジル、置換ベンジ
ル、アリールまたは置換アリール基)、-CN 、-NO2、-COOH 、-NH2、-NH (脂肪
族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリ
ール基)、-N(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリー
ル基または置換アリール基)2 、-COO(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、
置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基)、-CONH2、-CONH (脂肪族
基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリー
ル基)、-SH 、-S(脂肪族基、置換脂肪族基、ベンジル基、置換ベンジル基、芳
香族基または置換芳香族基)および-NH-C(=NH)-NH2が挙げられる。また、置換ベ
ンジル(benzylic)基または芳香族基は、脂肪族または置換脂肪族基を置換基と
して有し得る。また、置換脂肪族基は、ベンジル、置換ベンジル、アリールまた
は置換アリール基を置換基として有し得る。置換脂肪族、置換芳香族または置換
ベンジル基は、1個またはそれ以上の置換基を有し得る。アミノ酸置換基を修飾
することは、例えば、親水性である天然アミノ酸の脂質親和性または疎水性を高
めることができる。
【0063】
多くの適切なアミノ酸、アミノ酸類似体およびその塩が商業的に入手され得る
。その他のものは、当該技術分野において公知の方法によって合成され得る。合
成手法は、例えば、GreenとWuts、「有機合成における保護基(Protecting Gro
ups in Organic Synthesis)」、JohnWiley and Sons ,第5および7章、1991
に述べられている。
【0064】
疎水性は、一般に、非極性溶媒と水との間でのアミノ酸の分配に関して定義さ
れる。疎水性アミノ酸は、非極性溶媒に選択性を示す酸である。アミノ酸の相対
的疎水性は、疎水性スケールで表わすことができ、グリシンは、0.5 の値を有す
る。かかるスケールでは、水に選択性を有するアミノ酸は、0.5 より低い数値を
有し、非極性溶媒に選択性を有するアミノ酸は、0.5 より大きい数値を有する。
本明細書で使用するとき、疎水性アミノ酸の語は、疎水性スケールで0.5 または
それ以上の数値を有する、すなわち、少なくともグリシンに等しい、非極性酸中
に分配する傾向を有するアミノ酸を指す。
【0065】
疎水性アミノ酸の組合せも使用され得る。さらに、疎水性と親水性(水に選択
的に分配する)アミノ酸の組合せも、全体としての組合せが疎水性である場合に
は、使用され得る。1以上のアミノ酸および1以上のリン脂質または界面活性剤
の組合せも用いられ得る。薬物に対して速い放出速度論を付与する物質が好まし
い。
【0066】
アミノ酸は、少なくとも10重量%の量で本発明の粒子中に存在し得る。好まし
くは、アミノ酸は、約20〜約80重量%の範囲の量で粒子中に存在し得る。疎水性
アミノ酸の塩は、少なくとも10重量%の量で本発明の粒子中に存在し得る。好ま
しくは、アミノ酸の塩は、約20〜約80重量%の範囲の量で粒子中に存在する。ア
ミノ酸を含む粒子の形成および送達方法は、噴霧乾燥の間における多孔性粒子の
形成のための単純アミノ酸の使用なる表題の1999年8月25日に提出された米国特
許出願第09/382,959号および多孔性粒子の形成のための単純アミノ酸の使用なる
表題の2000年8月23日に提出された米国特許出願第09/644,320号に記載されてお
り、両方の教示は、参照により、その全体が本明細書に取り込まれる。
【0067】
本発明の別の態様では、粒子はカルボキシレート部位および多価金属塩を含む
。1種以上のリン脂質もまた含まれ得る。かかる組成物は、噴霧乾燥多孔性大粒
子の製剤化なる表題の1999年8月25日に提出された米国特許仮出願第60/150,662
号および噴霧乾燥多孔性大粒子の製剤化なる表題の2000年8月23日に提出された
米国特許出願第09/644,105号に記載されており、両方の教示は、参照により、そ
の全体が本明細書に取り込まれる。好ましい態様では、粒子はクエン酸ナトリウ
ムおよび塩化カルシウムを含む。
【0068】
他の物質、好ましくは、治療薬の高速放出速度論を促進する物質もまた使用し
得る。例えば、生体適合性の、好ましくは生分解性のポリマーを使用し得る。か
かる高分子物質を含む粒子は、Edwards らに1999年2月23日に交付された米国特
許第5,874,064号に述べられており、その教示は、その全体が参照により本明細
書に組み込まれる。
【0069】
前記粒子は、例えば、デキストラン、多糖類、ラクトース、トレハロース、シ
クロデキストリン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、脂肪酸、無機化合物
、リン酸塩などの物質をも含み得る。
【0070】
1つの特定の例では、粒子は(重量パーセントで)50%L-ドパ、25%DPPC、15
%クエン酸ナトリウムおよび10%塩化カルシウムを含む。別の特定の例では、粒
子は(重量パーセントで)50%L-ドパ、40%ロイシンおよび10%スクロースを含
む。さらに別の態様では、粒子は(重量パーセントで)10%ベンゾジアゼピン、
20%クエン酸ナトリウム、10%塩化カルシウムおよび60%DPPCを含む。
【0071】
好ましい態様では、本発明の粒子は、約0.4g/cm3未満の嵩密度を有する。約0.
4g/cm3未満の嵩密度を有する粒子は、本明細書において、「空気力学的に軽い粒
子」と称される。約0.1g/cm3未満の嵩密度を有する粒子がより好ましい。嵩密度
は、デュアルプラットホームマイクロプロセッサ制御嵩密度テスター(Dual Pla
tformMicroprocessor Controlled Tap Density Tester)(Vankel,NC )または
GeoPycTM装置(MicrometricsInstrument Corp.,Norcross,GA 30093 )など(こ
れらに限定されない)の当業者に公知の装置を用いて測定され得る。嵩密度は、
エンベロープ質量密度の標準測定値である。嵩密度は、「USPかさ密度および
嵩密度」、米国薬局方協約、Rockville,MD, 第10版補遺、4950〜4951、1999の方
法を用いて測定できる。低嵩密度に寄与することができる特徴としては、不規則
な表面テクスチャーと多孔性構造が挙げられる。
【0072】
等方性粒子のエンベロープ質量密度は、それを内部に包み込むことができる最
小球体エンベロープ体積で割った粒子の質量と定義される。本発明の1つの態様
では、前記粒子は、約0.4g/cm3未満のエンベロープ質量密度を有する。
【0073】
空気力学的に軽い粒子は、好ましいサイズ、例えば、少なくとも約5ミクロン
(μm)の体積メジアン幾何学的直径(VMGD)を有する。1つの態様では、VMGD
は、約5μm〜約30μmである。本発明の他の態様では、前記粒子は、約10μm
〜約30μmの範囲のVMGDを有する。他の態様では、前記粒子は、少なくとも5μ
m、例えば、約5μm〜約30μmのメジアン直径、質量メジアン直径(MMD )、
質量メジアンエンベロープ直径(MMED)または質量メジアン幾何学的直径(MMGD
)を有する。
【0074】
噴霧乾燥粒子の直径、例えば、VMGDは、マルチサイザー(Multisizer )IIe
(CoulterElectronic,Luton,Beds,England )のような電気的ゾーンセンシング
装置またはレーザー回折装置(例えばSympatec,Princeton,NJ によって製造され
ているHelos )を用いて測定できる。粒子直径を測定するための他の装置は当該
技術分野において周知である。サンプル中の粒子の直径は、粒子組成物および合
成の方法などの因子に依存して変化する。サンプル中の粒子のサイズ分布は、気
道内の標的部位における至適沈着を可能にするように選択できる。
【0075】
空気力学的に軽い粒子は、好ましくは約1μm〜約5μmの、本明細書では「
空気力学的直径」とも称される「質量メジアン空気力学的直径」(MMAD)を有す
る。本発明の別の態様では、MMADは、約1μm〜約3μmである。さらなる態様
では、MMADは約3μm〜約5μmである。
【0076】
実験的には、空気力学的直径は、重力沈降法を用いて測定することができ、か
かる方法により、粒子全体が一定の距離を沈降するのに要する時間を使用して、
直接粒子の空気力学的直径を推定する。質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を
測定するための間接的方法は、多段液体インピンジャー(MSLI)である。
【0077】
空気力学的直径、daer は、式:
【数1】


(式中、dg は、幾何学的直径、例えば、MMGDであり、ρは、粉体密度である)
から算出され得る。
【0078】
約0.4g/cm3未満の嵩密度、少なくとも約5μmのメジアン直径、および約1μ
m〜約5μm、好ましくは約1μm〜約3μmの空気力学的直径を有する粒子は
、口腔咽頭領域における慣性および重力沈着をより多く免れることができ、気道
、特に深肺(deeplung) に標的される。より大きな、より多孔性の粒子は、吸入
治療のために現在使用されているようなより小さく密なエーロゾル粒子よりも効
率的にエーロゾル化することができるので、それらの使用は好都合である。
【0079】
また、より小さな、比較的密な粒子に比べて、好ましくは、少なくとも約5μ
mのメジアン直径を有するより大きな空気力学的に軽い粒子はまた、食細胞の細
胞質ゾル空隙からの粒子のサイズ排除により、潜在的に肺胞マクロファージによ
る食作用吸収と肺からのクリアランスをより成功裡に回避することができる。肺
胞マクロファージによる粒子の食作用は、粒子直径が約3μmを超えると急激に
低下する。Kawaguchi,H.ら、Biomaterials7:61 〜66(1986);Krenis,L.J.とStra
uss,B.,Proc.Soc.Exp.Med.,107:748〜750(1961);およびRudt,S.とMuller,R.H.,
.J.Contr.Rel.,22:263〜272(1992)。粗表面を有する球体のような統計的に等方
性の形態の粒子に関しては、粒子エンベロープ体積は、完全な粒子食作用のため
にマクロファージ内で必要とされる細胞質ゾル空隙の体積とほぼ等しい。
【0080】
当該粒子は、深肺または上気道または中央気道のような気道の選択された領域
への局所送達のために、適切な材料、表面粗度、直径および嵩密度で作製され得
る。例えば、上気道送達のためにはより高密度またはより大きな粒子が使用され
得るか、あるいは同じまたは異なる治療薬である場合、サンプル中における異な
るサイズの粒子の混合物が1回の投与で肺の異なる領域を標的とするように投与
され得る。約3〜約5μmの範囲の空気力学的直径を有する粒子が中央気道およ
び上気道への送達にとって好ましい。深肺への送達のためには約1〜約3μmの
範囲の空気力学的直径を有する粒子が好ましい。
【0081】
エーロゾルの慣性嵌入と重力沈降が通常の呼吸条件での気道および肺細葉にお
ける主要な沈着機序である。Edwards,D.A.,J.Aerosol Sci.,26:293〜317(1995)
。両方の沈着機序の重要性は、粒子(またはエンベロープ)体積ではなくエーロ
ゾルの質量に比例して上昇する。肺におけるエーロゾル沈着部位はエーロゾルの
質量によって決定されるので(少なくとも平均空気力学的直径が約1μmをこえ
る粒子については)、粒子表面の不規則性と粒子の多孔性を高めることによって
嵩密度を低下させることは、他の物理的パラメータがすべて等しければ、より大
きな粒子エンベロープ体積を肺に送達することができる。
【0082】
嵩密度が低い粒子は、実際のエンベロープ球体直径に比べて小さな空気力学的
直径を有する。空気力学的直径、daer は、式:
【数2】


[式中、エンベロープ質量ρは、g/cm3 の単位である]
によってエンベロープ球体直径、dに関係づけられる(Gonda,I. 「エーロゾル送
達における物理−化学的原理(Physico-chemical principles in aerosol delive
ry) 」Topics inPharmaceutical Sciences 1991より(D.J.A.Crommeli とK.K.Mi
dha 編集) 、p.95〜117,Stuttgart:MedpharmScientific Publishers,1992)。ヒ
ト肺の肺胞領域における単分散エーロゾル粒子の最大沈着(約60%)は、約dae
r =3μmの空気力学的直径について起こる。Heyder,J. ら、J.AerosolSci.,1
7:811 〜825(1986)。その小さなエンベロープ質量密度により、最大深肺沈着を
示す単分散吸入粉末を含む空気力学的に軽い粒子の実際の直径dは:
【数3】


[式中、dは常に3μmより大きい]
である。例えば、エンベロープ質量密度、ρ=0.1g/cm3を示す空気力学的に軽い
粒子は、9.5 μmの大きさのエンベロープ直径を有する粒子について最大沈着を
示す。粒子サイズが大きくなると粒子間接着力が低下する。Visser,J.,Powder T
echnology,58:1〜10。従って、大きな粒子サイズは、より低い食作用損失に寄与
することに加えて、エンベロープ質量密度の低い粒子に関して深肺へのエーロゾ
ル適用の効率を高める。
【0083】
空気力学的直径は、肺内での最大沈着を提供するように算出され得る。以前、
これは、直径約5ミクロン未満、好ましくは約1〜約3ミクロンの非常に小さな
粒子の使用によって達成されており、当該粒子は次いで食作用に供される。より
大きな直径を有するが十分に軽い(すなわち「空気力学的に軽い」特徴の)粒子
を選択することは、肺への等しい送達をもたらすが、より大きなサイズの粒子は
食作用を受けない。滑面を有するものに比べて、粗面または不均質面を有する粒
子を使用することによって改良された送達が得られ得る。
【0084】
本発明の別の態様では、前記粒子は、約0.4g/cm3未満の「質量密度」としても
本明細書中で称されるエンベロープ質量密度を有する。また、約5μm〜約30μ
mの平均直径を有する粒子が好ましい。質量密度、ならびに質量密度と平均直径
と空気力学的直径との間の関係は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ
る、1996年5月24日に提出された米国出願第08/655,570号の中で論じられている
。好ましい態様では、約0.4g/cm3未満の質量密度と約5μm〜約30μm質量平均
空気力学的直径の平均直径を有する粒子の空気力学的直径は、約1μm〜約5μ
mである。
【0085】
適切な粒子は、予め選択されたサイズ分布を有する粒子サンプルを提供するた
めに、例えば、濾過または遠心分離により作製または分離され得る。例えば、サ
ンプルにおける約30%、50%、70%または80%を超える粒子は、少なくとも約5
μmの選択範囲内の直径を有し得る。特定の割合の粒子が含まれるべき選択範囲
は、例えば、約5〜約30μmまたは最適には、約5〜約15μmであってもよい。
1つの好ましい態様では、前記粒子の少なくとも1部が、約9〜約11μmの直径
を有する。また、任意に、少なくとも約90%、または任意に、約95%もしくは約
99%が選択範囲内の直径を有するものである粒子サンプルが、作製され得る。前
記粒子サンプル中におけるより高い割合での空気力学的に軽く、かつより大きな
直径の粒子の存在は、該粒子中に取り込まれた治療薬または診断薬の深肺への送
達を増強する。大きな直径の粒子とは、一般的に、少なくとも約5μmのメジア
ン幾何学的直径を有する粒子を意味する。
【0086】
好ましい態様において、本発明の方法に使用され得る適切な粒子は、噴霧乾燥
により作製される。1つの態様において、この方法は、L-ドパまたは他の薬剤、
あるいはそれらの組み合わせ、および例えば上記界面活性剤などの界面活性剤を
含む混合物を形成することを含む。好ましい態様において、混合物は、例えば、
上記リン脂質などのリン脂質を含む。噴霧乾燥に使用される混合物としては、有
機溶媒または水性−有機溶媒が挙げられ得る。
【0087】
使用され得る適切な有機溶媒としては、アルコール、例えば、エタノール、メ
タノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられるが、
それらに限定されない。他の有機溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ジクロ
ロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチル-tert-ブチルエーテル
などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
共溶媒は、水性溶媒と、限定されないが上記の有機溶媒などの有機溶媒とを含
む。水性溶媒としては、水および緩衝溶液が挙げられる。1つの態様において、
エタノール:水が約50:50〜約90:10の範囲のエタノール:水の比を有するエタ
ノール水溶媒が好ましい。
【0089】
噴霧乾燥混合物は、中性、酸性またはアルカリ性のpHを有し得る。任意に、pH
緩衝液は、溶媒もしくは共溶媒にまたは形成された混合物に添加され得る。好ま
しくは、pHは、約3〜約10の範囲であり得る。
【0090】
適切な噴霧乾燥技術が、例えば、K.Mastersによる「噴霧乾燥ハンドブック(S
pray DryingHandbook) 」, John Wiley & Sons, New York, 1984 に記載されて
いる。一般に、噴霧乾燥の間に、加熱空気または加熱窒素などの熱ガス由来の熱
を使用して、連続液体フィードを噴霧することにより形成された液滴由来の溶媒
をエバポレートする。他の噴霧乾燥技術が、当業者に周知である。好ましい態様
において、ロータリーアトマイザーが使用される。回転噴霧を使用する適切な噴
霧ドライヤーの例としては、Niro, Denmark により製造されたMobile Minor噴霧
ドライヤーが挙げられる。熱ガスは、例えば、空気、窒素またはアルゴンであり
得る。
【0091】
具体的な例としては、500mgのL-ドパ、150mg のクエン酸ナトリウムおよび10
0mg の塩化カルシウムを含む300mlの水と、700 ミリリットル(ml)のエタノール
中250 ミリグラム(mg)のL-ドパとをあわせ、得られた混合物を噴霧乾燥する。他
の例は、500mgのL-ドパ、100 スクロースおよび400mg のロイシンを含む700ml
の水と300ml のエタノールとをあわせ、得られた混合物を噴霧乾燥する。
【0092】
粒子は、粒子凝集を低減し、粉体の流動性を改善するために、粗面テクスチャ
ーで作製され得る。噴霧乾燥粒子は、エアゾール化特性を改善する。噴霧乾燥粒
子は、乾燥粉体吸入デバイスを介してエアゾール化を増強する特性を有するよう
作製され得、口、喉および吸入デバイスへのより低い沈着をもたらす。
【0093】
本発明の粒子は、肺系への薬物送達に適切な組成物中で使用され得る。例えば
、かかる組成物は、患者への投与、好ましくは吸入を介する投与のための粒子お
よび薬学上許容され得るキャリアを含み得る。粒子は、呼吸系への投与のために
、それのみで、または液体(例えば生理食塩水)もしくは粉体などの任意の適切
な薬学上許容され得るキャリア中で投与され得る。それらは、治療剤を含まない
より大きなキャリア粒子と共に同時送達され得、後者は、例えば約50μm 〜約10
0 μm の範囲の質量メジアン直径を有する。
【0094】
エアゾール用量、処方および送達系は、例えば、Gonda,I. 「気道への治療剤
および診断剤の送達のためのエアゾール」Critical Reviews in Therapeutic Dr
ug CarrierSystems, 6: 273-313, 1990; およびMoren 「エアゾール用量型およ
び処方」Aerosolsin Medicine, Principles, Diagnosis and Therapy, Morenら
編、Esevier,Amsterdam, 1985に記載されているような、粒子治療適用に対して
選択され得る。
【0095】
本発明の方法は、肺系への例えば上記医薬などの医薬の有効量の送達を含む。
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望の効果または効力を達成す
るのに必要な量を意味する。薬物の実際の有効量は、利用される具体的な薬物ま
たはその組合せ、特に処方される組成物、投与の形態、患者の年齢、体重、状態
、ならびに治療される症状の発現の重篤度により変化し得る。救出(rescue)治療
において、有効量は、症状の減少または症状の発現の停止を達成するのに必要な
量のことを言う。ドパミン前駆体、アゴニストまたはその組合せの場合、救出治
療を必要とするパーキンソン症状を低減する量である。特定の患者に対する用量
が本明細書に記載されており、従来の考察を用いて(例えば、適切な従来の薬理
学的プロトコルによる)1人の当業者により決定され得る。例えば、経口L-ドパ
の有効量は、約50ミリグラム(mg)〜約500mgの範囲である。多くの場合、一般に
継続している(経口)L-ドパ治療スケジュールは、1日8回100mg である。救出
治療の間に、経口L-ドパの有効用量は、継続治療において投与されるものに一般
に類似している。
【0096】
救出治療の間の有効性に対して、L-ドパの血漿レベルは、継続(非救出治療)
L-ドパ治療の間に標的化されるものに一般に類似する。L-ドパの有効量は、一般
に、約 0.5マイクログラム(μg)/リットル(l) 〜約 2.0μg/l の範囲の血漿血
液濃度を生じる。
【0097】
L-ドパ用量の肺系送達は、体重に対して正規化される場合、血漿レベルにおい
て少なくとも2倍増加を生じ、ならびに経口投与と比較して治療的利点を生じる
ことが、本発明において発見された。有意により高い血漿レベルおよび治療的利
点が、経口投与と比較して起こり得る。ある例において、L-ドパの肺系送達は、
経口投与と比較した場合、約2倍〜約10倍の範囲の血漿レベルの増加を生じる
。静脈内投与で得られるものに近づくまたは類似する血漿レベルが、得られ得る
。類似する知見が、CNSの障害を治療するのに適切な他の薬物、例えばケトプロ
フェンなどでなされた。
【0098】
投薬が増加する場合バイオアベイラビリティーが同じままであると仮定すると
、本発明の方法による肺系送達の結果生じる血漿レベルに匹敵する血漿レベルを
達成するのに必要とする経口薬物、例えば、L-ドパ、ケトプロフェンの量が、投
与後の所定の点で決定され得る。具体的な例において、経口および本発明の方法
による投与の2分後の血漿レベルは、それぞれ 1μg/mlのL-ドパおよび 5μg/ml
のL-ドパである。したがって、5倍の経口用量が、本発明の方法を使用する薬物
の投与により得られる 5μg/mlレベルを達成するのに必要とされる。他の例にお
いて、投与 120分後のL-ドパ血漿レベルは、経口投与と比較した場合、本発明の
方法で2倍高い。したがって、2倍多いL-ドパが、本発明の方法を用いて投与さ
れる量と比較して、経口投与に従う 1μg/ml投与後に必要とされる。
【0099】
所定の薬物血漿濃度を得るために、投与後所定の点で、薬物が経口投与される
場合よりも薬物が本発明の方法により送達される場合に、より少ない薬物が必要
とされる。一般に、少なくとも2倍の用量の低減が、従来の経口投与に使用され
る用量と比較して本発明の方法で使用され得る。非常に高い用量の低減が可能で
ある。本発明のある態様において、用量における5倍の低減が使用され、経口用
量と比較して約10倍高い低減が使用され得る。
【0100】
少なくとも2倍の用量低減がまた、静脈内以外の他の投与経路、例えば筋内、
皮下、頬、鼻、腹腔内、直腸と比較して使用される。
【0101】
上記薬物動態学的作用(例えば、血清レベル、用量平均)に加えてまたは代替
的には、CNS の障害を治療するのに使用される薬物(例えばL-ドパ)の肺系送達
から生じる用量利点がまた、薬力学的応答に関して記載され得る。経口経路と比
較して、本発明の方法は、腸による一貫しない薬物取り込み、食後の遅延した取
り込みの回避、循環における薬物の初回通過異化の回避および大動脈を介する肺
から脳への迅速な送達を避ける。
【0102】
上記のように、医薬の作用部位への迅速な送達が、しばしば所望される。好ま
しくは、作用部位への血液の「初回通過」で有効量が送達される。「初回通過」
は、肺から血管系に薬物が通過する点から、標的器官におよび標的器官内に血液
が薬物を運ぶ第1回である。一般に、医薬は、血流から放出され、治療される患
者に救出治療を提供するのに十分短い期間内にその作用部位に送達される。多く
の場合において、医薬は、約10分未満で、しばしば2分およびそれより速いほど
迅速に中枢神経系に届き得る。
【0103】
好ましくは、患者の症状は数分内、一般に1時間未満で減じる。本発明の1つ
の態様において、医薬の放出動力学は、静脈内経路を介して達成される薬物の動
力学に実質的に類似する。本発明の他の態様において、血流における医薬のTma
x は、約1〜約10分の範囲である。本明細書で使用される場合、用語Tmaxは、
レベルが最高濃度に達する点を意味する。多くの場合において、本発明の方法を
用いて得られる治療の開始は、経口送達で得られる治療の開始より、少なくとも
2倍速い。有意に速い治療の開始が、得られ得る。1つの例において、治療の開
始は、経口投与で観察されるものよりも約2〜約10倍速い。
【0104】
所望の場合、救出治療に適切な速い放出動力学を有する粒子は、状態の慢性的
な面を治療するのに適切な、徐放性を有する粒子と組み合わされ得る。例えば、
パーキンソン病の場合、救出治療を提供するように設計された粒子は、制御され
た放出特性を有する粒子と同時投与され得る。
【0105】
1つ以上のドパミン前駆体、アゴニストまたはその組合せ、特にL-ドパ、カル
ビドパ、アポモルヒネおよび他の薬物の投与が、ちょうどよい時に同時にまたは
逐次的にのいずれかで提供され得る。カルビドパは、例えば、末梢カルボキシラ
ーゼ活性が完全に妨げられることを確実にするために、しばしば投与される。筋
内、皮下、経口および他の投与経路が使用され得る。1つの態様において、これ
らの他の薬剤が肺系に送達される。これらの化合物または組成物は、その前、そ
の後または同時に投与され得る。好ましい態様において、気道に投与される粒子
は、L-ドパおよびカルビドパの両方を含む。用語「同時投与」は、特定のドパミ
ン前駆体、アゴニストまたはその組合せおよび/または他の組成物が、症状の発
現ならびに本明細書に記載される基礎となる状態を治療するために、同時に投与
されることを意味するために本明細書で使用される。
【0106】
1つの態様において、規則的な慢性(非救出)L-ドパ治療は、経口カルビドパ
と組み合わされたL-ドパの肺系送達を含む。他の態様において、L-ドパの肺系送
達が症状の発現の間に提供される一方、慢性治療がL-ドパ/カルビドパの通常の
経口投与に使用され得る。
【0107】
好ましくは、気道に投与された粒子は、上気道(中咽頭および喉頭)、その後
に気管支および細気管支への分岐部に続く気管を含む下気道を通過し、その後、
最終的な呼吸領域である肺胞または深肺へと至る呼吸細気管支に順番に分かれる
末端細気管支を通過して運ばれる。本発明の好ましい態様において、粒子の質量
のほとんどは、深肺または肺胞に沈着する。
【0108】
呼吸系への粒子の投与は、例えば、当該分野で公知の手段により得る。例えば
、粒子は、吸入デバイスにより送達される。好ましい態様において、粒子は、乾
燥粉体吸入器(DPI)を介して投与される。メーター用量吸入器(MDI) 、ネブライ
ザーまたは点滴注入技術もまた使用され得る。
【0109】
患者の気道に粒子を投与するために使用され得る種々の適切なデバイスおよび
方法は、当該分野で公知である。例えば、適切な吸入器が、1976年8 月5 日にVa
lentini らに発行された米国特許第4,069,819号明細書、1991年2 月26日にVale
ntini らに発行された米国特許第4,995,385号明細書、および1999年12月7 日に
Pattonらに発行された米国特許第5,997,848号明細書に記載されている。他の例
としては、限定されないが、Spinhaler(登録商標)(Fisons, Loughbo
rough, U.K.)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo-Wellcome,Research Tr
iangleTechnology Park, North Carolina) 、FlowCaps(登録商標)(H
ovione, Loures,Portugal) 、Inhalator(登録商標)(Boeringer-Ing
elheim,Germany)、およびAerolizer(登録商標)(Novartis, Switzer
land) 、diskhaler(Glaxo-Wellcome,RTP, NC) および当業者に公知の
他のものが挙げられる。1つの態様において、使用される吸入器は、代理人管理
番号00166.0109.US00のもとで、2001年4月16日に提出されたDavid A. Edwards
らによる「吸入デバイスおよび方法」と題する米国特許願に記載されている。こ
の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本発明は、さらに肺系に医薬の治療用量を少数のステップ、および好ましくは
単回の呼吸活性化ステップで投与する方法に関する。本発明はまた、少数の呼吸
、および好ましくは1回または2回の単回の呼吸で、薬物の治療用量を肺系に送
達する方法に関する。この方法は、粒子の質量を有する、保持する、含む、保管
するまたは封入する容器(receptacle)から被験体の気道に粒子を投与することを
含む。
【0111】
本発明の1つの態様において、粒子の肺系への送達は、2000年6 月9 日に提出
された米国特許出願「大きな治療用質量エアゾールの非常に有効な送達」、米国
出願第09/591,307号に記載されている方法、および代理人管理番号2685.2001-00
3 のもとでこれと同時に提出された米国出願第09/591,307号の一部継続出願に記
載されているものによる。これらの両方の出願の全内容は、参照により本明細書
に取り込まれる。本明細書に開示されるように、粒子は、容器に、保持される、
含まれる、保管されるまたは封入される。好ましくは、容器、例えば、カプセル
またはブリスターは、少なくとも約0.37cm3 の体積を有し、乾燥粉体吸入器にお
ける使用に適切なデザインを有し得る。少なくとも約0.48cm3 、0.67cm3 または
0.95cm3 の体積を有するより大きな容器もまた、使用され得る。
【0112】
1つの例において、吸入器容器に保管された粒子の質量の少なくとも50%が、
被験体の呼吸系に単回の呼吸活性化ステップで送達される。他の態様において、
医薬の少なくとも10ミリグラムが、単回呼吸で、容器に封入された粒子を被験体
の気道に投与することにより送達される。15、20、25、30、35、40および50ミリ
グラム程の高量が送達され得る。
【0113】
1つの態様において、単回の呼吸作動性ステップでの粒子の肺系への送達は、
例えば、被験体の吸入によって代表的に供給されるエネルギーなどの比較的低い
エネルギーで分散される粒子を使用することによって高められる。かかるエネル
ギーは、本明細書中において「低い」といわれる。本明細書中で使用される場合
、「低いエネルギー投与」とは、粒子を分散するおよび/または吸入するために
適用されるエネルギーが、吸入の間に被験体によって代表的に供給される範囲内
である投与をいう。
【0114】
本発明はまた、肺系に粉体粒子を有効に送達する方法に関する。本発明の1つ
の態様において、少なくとも約70%および好ましくは少なくとも約80%の名目上
(nominal) の粉体用量が、実際に送達される。本明細書で使用される場合、用語
「名目上の粉体用量」は、吸入器デバイス内で使用されるように、容器に保持さ
れる粉末の全量である。本明細書で使用される場合、用語名目上の薬物用量は、
粉体の名目上の量に含まれる医薬の全量である。名目上の粉体用量は、粉体にお
ける薬物の負荷パーセントによる名目上の薬物用量に関する。
【0115】
具体的な例において、乾燥粉体吸入器容器由来の乾燥粉体、例えば50%L-ドパ
負荷を有する25mgの名目上の粉体用量を保持するカプセル、すなわち12.5mgのL-
ドパが、単回呼吸で投与される。伝統的な4倍の用量利点に基づくと、1回の呼
吸で送達される12.5mgは、経口投与で必要なL-ドパの約50mgと等しい。いくつか
のかかるカプセルが、より高い用量のL-ドパを送達するために使用され得る。例
えば、サイズ4のカプセルが、200mg の経口用量の代わりに(伝統的な4倍用量
利点と同一とみなされる)50mgのl-ドパを肺系に送達するために使用され得る。
【0116】
粒子の特性は、若年患者、老年患者、虚弱患者または喘息もしくは他の呼吸障
害を有する患者などの強い吸入能力を欠如する患者に他の粒子が効果がないこと
が判明した高度に障害を生じた肺を有する患者への送達を可能にする。さらに、
病気の組合せを罹患している患者は、十分な吸入能力を単に欠如し得る。したが
って、本発明の方法および粒子を用いると、弱い吸入であっても、所望の用量の
送達に十分である。中枢神経系の衰弱疾患、例えば、限定されないが、偏頭痛、
不安、精神病、うつ病、双極性障害、強迫性障害(OCD) 、痙攣、発作、てんかん
、アルツハイマー病、および特にパーキンソン病を罹患している患者に対する救
出治療として本発明の粒子を使用する場合、これは特に重要である。
【0117】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参考にして、さらに理解されるであろう

【0118】
実施例
実施例1
ラットモデルにおいてL-ドパの経口投与と気管投与とを比較するために、イン
ビボ試験を行なった。L-ドパの投与の1時間前に末梢デカルボキシラーゼインヒ
ビターカルビドパ(Sigma,St. Louis, MO)のIP注射(200mg/kg)を動物に与えた。
ケタミン麻酔の下で、動物を2群に分けた。動物の第1群(N=4)において、L-ド
パ(8mg) を2%メチルセルロースを含む生理食塩水に懸濁し、経口胃管栄養を介
して与えた。第2群(N=5)において、小さい気管切開を行なって、少し変えた2m
m の開口を有するピペットチップの気管を通して肺への配置を可能にした。ピペ
ットチップを粉体化L-ドパ(8mg)を用いてプレ充填し、シリコン管を使用して酸
素タンクに連結した。動物の呼吸サイクルと同時に、酸素の噴出(5リットル/分
)を用いて肺にL-ドパを押し出した。血液サンプル(200μl)を、以前に配置した
大腿部のカニューレから、以下の時点で回収した:L-ドパ投与後0 分(L- ドパ投
与の直前) 、1 分、5分、15分、30分、45分および60分。
【0119】
経口胃管栄養を介する投与または肺への直接投与後、質量分析またはHPLCによ
りそれぞれ測定されるL-ドパの血液レベルを、図1Aおよび1Bに示す。経口投与後
の経時的なL-ドパの血液レベルにおける増加は、穏やかであった。対照的に、肺
への投与は、L-ドパレベルにおける強く迅速な増加を生じ、それは薬物投与後1
〜5分でピークに達する。この群におけるL-ドパレベルは、 5〜15分で減少し、
その後安定したままである。データを平均±SEM ng L-ドパレベル/ml血液とし
て表す。
【0120】
上記のような経口または肺へ直接のいずれかのL-ドパの送達後の血液L-ドパレ
ベルおよび線条体ドパミンレベルの関係を、図2Aおよび図2Bに示す。図2Aは、L-
ドパ直前(ベースライン)、ならびにL-ドパ後2 分、15分および45分の血液L-ド
パレベルを示す(各群に対して時点当たり N= 4〜6)。再び、肺への投与後のレ
ベルは、経口投与後の穏やかな増加と比較して、L-ドパレベルにおいて強く迅速
な増加を示す。
【0121】
図2Bは、図2Aに示される同一の動物に由来する線条におけるドパミンレベルを
示す。血液サンプルの回収後直ちに、脳を取り出し、線条を自由に解剖した。ド
パミンの組織レベルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて決定した。
2つの治療の間に見られる2分での血液L-ドパレベルにおける顕著な差異は、そ
のうち、ドパミンの線条体レベルにおいてより穏やかではあるが有意な差異に続
くことに注目のこと。血液レベルを平均±SEM ng L-ドパレベル/ml血液として
表す。ドパミンの線条レベルを平均±SEM ngドパミン/mgタンパク質として表す

【0122】
上に一般的に記載したように14C-L-ドパの投与後の14C の血液および線条レベ
ルをまた決定し、図3に示した。合計25μCiの放射能標識L-ドパを非標識L-ドパ
と混合し、8mg/ラットの全薬物濃度を提供した。L-ドパ薬物投与後2、5 および
15分に血液サンプルを取り出した(各群に対して時点当たりN=6)。L-ドパ後5
分または15分に、線条を取り出し、血液および組織の両方のサンプルを、シンチ
レーションを用いて14C レベルに対してアッセイした。放射能薬剤を用いる他の
多くの研究から、0分の血漿値を推論する。
【0123】
再び、血漿レベルにおける強く迅速な増加を肺経路を介して達成し、これは5
分と15分の両方の時点で脳における増加したドパミン活性を反映した(経口投与
と比較)。
【0124】
経口胃管栄養、気管切開を用いる吸入(上記)または人工呼吸器(Harvard App
aratus, Inc.,Holliston, MA)を介する14C-L-ドパ投与後の血漿14C の直接比較
を、図4 に示す。対応する脳14C-L-ドパレベルを、図5に示す。1 %イソフルラ
ンを用いて全動物に簡単に麻酔をかけ、固定用ベルトに固定して予め配置してお
いた大腿部カニューレを介する血液採取を可能にした。投与後0 分、2 分、5 分
および15分に血液サンプルを取り出した。人工呼吸器を用いるL-ドパ投与に対し
て、24ゲージカテーテルを気管内に配置し、1mlおよび100 鼓動/分の1 回の呼
吸量を用いて3 〜5秒間かけてL-ドパ(25 μCi) を投与した。シンチレーション
カウントを用いる放射能レベルの決定のために線条体組織サンプルを処理した。
14C の血漿レベルと脳レベルの両方を、従来の気管切開法と人工呼吸器の両方を
用いて同等に高めた。
【0125】
実施例2
IVまたは肺投与のいずれかを介する14C-カルボプラチンの投与後、14Cの血液
レベル、脳レベルおよび末梢器官レベルを決定した。100 μCiの放射能標識カル
ボプラチンの全部を非標識カルボプラチンと混合し、8mg/ラットの全薬物濃度を
提供した。ケタミンを用いて全動物に麻酔をかけた。IV投与に対して、予め配置
した大腿部カニューレを介してカルボプラチンを投与した。肺投与に対して、24
ゲージカテーテルを気管内に配置し、3 〜5 秒間かけて1ml および100 鼓動/分
の1 回の呼吸量を用いるHarvard人工呼吸器を用いてカルボプラチンを投与した
。血液サンプルを薬物投与後10分に取り出した(各群に対して時点当たり N=6)
。脳を取り出し、嗅覚皮質、前頭皮質、後頭皮質、海馬、線条、および小脳を含
む種々の領域に解剖した。末梢器官は、腎臓、脾臓、心臓、精巣および筋肉を含
む。次に、シンチレーションを用いる14C レベルの決定のために全サンプルを処
理した。
【0126】
14C-カルボプラチン(100μCi/8mg) 投与後の血漿、脳、末梢器官における14C-
レベルのシンチレーションカウントを示す表2 、ならびに図6A〜6Bおよび図7A〜
7Bに結果を示す。14Cの絶対血漿レベルは、IV投与後、より高かった。しかしな
がら、絶対脳レベルは、この時点での脳への送達が比較的選択的であることを同
等に示唆していた。血液14C レベルに対する脳14C レベルの比を計算した場合、
この点は、より明らかである。肺送達後、14C レベルは、IV投与後観察されるも
のより、2833%高かった。末梢組織における14Cの絶対レベルはまた、肺投与後
、より低かった(IVと比較して92%低い) 。脳で見られた選択性における大きな
差異と対照的に、相対末梢選択性(末梢器官における放射能レベルを血液におけ
る放射能レベルで割ることにより導かれる)は肺群において47%高いのみであっ
た。興味深いことであるが、末梢組織における14C の最も高いレベルは、心臓に
おいて見出された。あわせると、これらのデータは、脳および心臓が、肺薬物送
達直後の時点での優先的な送達部位を表し得ることを示唆する。
【0127】
【表2】

【0128】
実施例3
L-ドパを含み、かつ吸入に適した粒子を、以下のように生成した。2.001
23g DPPC(Avanti Polar Lipids、ロット番号G160
PC−25)を、2.80Lのエタノールヘ添加し、そして溶解するまで攪拌し
た。0.0817g L-ドパ(Spectrum、ロット0Q0128、Lag
una Hills、CA)、0.9135g クエン酸ナトリウム(無水物)
(Spectrum ロットNX0195)、および0.5283g 塩化カル
シウム(無水物)(Spectrum ロットNT0183)を、1.2Lの水
へ添加して、そして溶解した。この水溶液をエタノール溶液へ添加することによ
って、これらの溶液を合わせて、次いでこの溶液を、溶液が澄明になるまで攪拌
した。この製剤の重量%は、約:20% L-ドパ、50% DPPC、20%クエン
酸ナトリウム、10%塩化カルシウムであった。
【0129】
次いで、最終溶液を、以下の噴霧条件を使用して、製造業者の指示に従ってロ
ータリーアトマイザーおよび窒素乾燥ガスを使用してNiroドライヤー(Ni
ro、Inc.、Columbus、MD)中で噴霧乾燥した:Tinlet =12
0℃、Toutlet=54℃、供給速度=65ml/分、加熱窒素=38mmH2
、アトマイザー速度=20,000rpm(V24アトマイザーを使用)。
【0130】
得られた粒子特徴は:質量メジアン空気力学的直径(MMAD)=2.141μm
および体積メジアン幾何学的直径(VMGD)=10.51μmであった。
【0131】
ケタミン麻酔下で、6匹のラットは、上記の製剤(20/50/20/10
L-ドパ/DPPC/クエン酸ナトリウム/塩化カルシウム)の肺投与を受けた。
【0132】
結果を、図8に示す。この図は、経口胃管栄養を介する投与または吸入を介す
る肺への直接投与後のL-ドパの血液レベルを示す。L-ドパレベルを、共にHPL
Cを使用して測定した。動物は、L-ドパの投与1時間前に、末梢デカルボキシラ
ーゼインヒビター、カルビドパ(200mg/kg)のIP注射を受けた。ケタ
ミン麻酔下で、この動物を、2群に分けた。第1群において、動物を一晩絶食し
、そしてL-ドパ(8mg)を1%メチルセルロース含有生理食塩水に懸濁し、そ
して経口胃管栄養を介して与えた。第2群において、吸入を使用して、L-ドパ製
剤を直接肺へ送達した。血液サンプル(200μl )を、以前に配置した大腿部
カテーテルから、以下の時点で回収した:L-ドパ投与後0分(L-ドパ投与直前)
、2分、5分、15分および30分。経口投与後の経時的なL-ドパの血液レベル
の増加は、あまり大きくなかった。対照的に、肺への投与は、L-ドパレベルにお
いて強くかつ急な増加を生じた。この群におけるL-ドパレベルは、薬物投与後3
0分で経口送達と比較して上昇したままであった。データを、8mg/kgの用
量(総経口胃管栄養用量)に対して標準化した。データを、平均(±SEM)n
g L-ドパ/ml血液として示す。
【0133】
実施例4
ケトプロフェン/DPPC/マルトデキストリン(maltodextrin)粒子を調製し、
そしてインビボで投与した。
【0134】
ケトプロフェン(99.5%)を、Sigma(St.Louis、MO)か
ら、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を、Avanti Pola
r Lipids(Alabaster、AL)から、そしてマルトデキストリ
ン、M100を、(Grain Processing Corp.、Musc
atine、IA)から入手した。
【0135】
ケトプロフェン/DPPC/マルトデキストリン溶液を調製するため、マルトデキ
ストリン(0.598g)を、0.60LのUSP水へ添加した。DPPC(0.9
01g)を、1.40Lのエタノールへ添加し、そして溶解するまで攪拌した。
水およびエタノール溶液を合わせて、濁った溶液を得た。500mLのこのスト
ック溶液を、各ランに使用した。DPPC/マルトデキストリンのストック溶液への
ケトプロフェンの添加を、表3に記載する。
【0136】
Niro AtomizerPortable Spray Dryer(Niro, Inc., Columbus, MD)を用いて
乾燥粉体を作製した。可変性の圧力(1〜5bar )で加圧した空気によりドライ
ヤー上に位置するロータリーアトマイザー(2,000 〜30,000rpm )を作動させた
。種々の速度(20〜66ml/分)でのケトプロフェン/DPPC/マルトデキストリン溶
液の液体フィードを、電気的自動計量ポンプ(LMI 、モデル番号A151-192s )に
よりアトマイザーに連続的にポンピングした。入り口および出口の両方の温度を
測定した。入り口の温度を手動で調節した;これは、5℃の制御限界で100 ℃〜
400 ℃の間で変化し得た。出口の温度を、入り口の温度ならびにガスおよび液体
のフィード速度等の要素により決定した:これは50℃〜130 ℃の間で変化した。
粉体生成物を回収するために、コンテナを6'' サイクロンに緊密に取り付けた。
各溶液に関する噴霧条件を表4に示す。これは、噴霧条件が研究を通してほとん
ど一定に保たれていたことを示す。各溶液に関する総計の回収量および収率を表
5に示す。
【0137】
粒子を、製造業者に指示されるようにしてAerosizer (TSI, Inc., Amherst,
MA)およびRODOS 乾燥粉体分散器(Sympatec Inc.,Princeton, NJ )を用いて
特徴づけた。RODOSについて、幾何学的直径を2bar で測定した。また、ラン番
号5由来の物質を重量崩壊Andersen Cascade Impactor (ACI, 2stage, Anderso
n Inst.,Sunyra, GA )を用いて特徴づけた。前記サンプルを、走査型電子顕微
鏡(SEM )を用いて調査した。
【0138】
表5は、ケトプロフェンの重量%の増大は、収率の減少を導くことを示す。ス
トック溶液へのケトプロフェンの添加は、直線的に収率を減少させた。これは、
ケトプロフェンと混合したときのDPPCの融点における減少によるものであるかも
しれず、収率の減少を導びく。
【0139】
表6は、粒子が8.8μm 〜10.2μm(VMGD)および2.65μm 〜3.11μm(MMAD)の
直径の範囲であることを示す。最も低いMMAD粒子は、8.4 %の負荷物質(ラン番
号5)についてであった。
【0140】
表7は、ラン番号5由来の物質(8.4 %負荷物質)のAnderson Collapsed Imp
actor 研究(ACI, 重量測定、n =2)の結果を示す。5.6 μm 未満および3.4
μm未満の微粒子画分(FPF) は、呼吸可能であることが予期される粉体と一致す
る。
【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
60/40 DPPC/ マルトデキストリン中に8%ケトプロフェンを含む粒子350mgを上
記のように作製し、20匹のSpragueDawleyラットに投与した。8匹のラットそれ
ぞれに吸入により7mgの粉体を与え、7匹のラットそれぞれに50%エタノールに
溶解させた7mgの粉体を経口で与えた。時点を、0、5、15、30、60、120、24
0 、360 および480 分に設定した。t=0については、4匹の動物を投薬なしで
試験した。その後の各時点については、サンプルを3または4匹のラットのいず
れかから採取した。各ラットを、4群の各々3または4匹の動物を用いて4時点
に対して使用した。動物を以下のように分配した:3匹の動物、経口、5、30、
120 、360 分;4匹の動物、吸入、15、60、240、480 分。ケトプロフェン血漿
アッセイのために各時点で十分な血液を採取した。血液サンプルを遠心分離し、
血漿を回収し、次いで解析のために契約研究室に発送する前に−20℃で凍結させ
た。この研究に使用したアッセイは、1.0mg/mlより低い検出限界を有する。
【0147】
肺経路が最大血漿濃度を達成するために必要な時間を変化させるかどうかを決
定するために、ラットに、経口または肺投与のいずれかによりケトプロフェンを
投与した。この結果(図9〜11)は、肺送達経路が、非常に迅速な取り込みを
導き、Cmaxを≦10分で生じることを示す。ケトプロフェンの経口用量を受けた
ラットは、肺経路により投与されたラットについて示されるバイオアベリラビリ
ティの約半分の相対的バイオアベリラビリティとともに、幾分異常な薬物動態学
的挙動を示した。ケトプロフェンがヒトモデルにおいて90%経口的に生物利用可
能であるというこの結果は予想外であった。しかし、経口投与したラットに関す
るこの例外は、肺経路により投与したラットについて見られた初期のCmax の有
意性を無効にするものではない。
【0148】
結果を表8に示す。平均を、標準誤差およびp値とともに計算した。また、こ
の結果を、図9〜11にグラフで示す。ここで、図9は両方のデータセットを示し
、図10は経口投与の結果を示し、図11は吸入の結果を示す。図9については、p
<0.05の点を「*」でマークし、p<0.01の点を「**」でマークする。図10およ
び11については、AUC(曲線下面積)を、スムーズな補間を用いて曲線の数的積
分により行った。
【0149】
t=0で、全てのラットは、アッセイの検出限界未満のケトプロフェンレベル
を示した。t=5分〜t=60分まで、吸入したラットは、有意に高い血漿レベル
のケトプロフェンを有していた。t=120 分およびt=240 分で、2つの群のケ
トプロフェンの血漿レベルは、統計学的に等価であった。t=360 分およびt=
480 分で、両方の群に関するケトプロフェンの血漿レベルは、アッセイの検出限
界に接近した。
【0150】
吸入したラット対経口投与したラットに関するAUC の比は、約2であった。初
期の時点でのケトプロフェンの血漿濃度も同様に統計学的に有意であった。
【0151】
吸入させたラットについてのCmax は<15分に明白に生じ、経口投与したラッ
トについてのCmax は15〜60分に生じた。この群に関する大きな標準誤差および
相対的に低い血漿レベルのために、Cmax に必要とされる時間を正確に決定する
ことはできない。
【0152】
肺投与は、経口投与(t=15〜60分)に比べて非常に迅速(<15分)に起こる
maxを生じた。
【0153】
吸入させたラットは、経口投与したラットに比べてより高いバイオアベイラビ
リティを示した。これは、以前の研究が経口投与、皮下投与または直腸投与した
場合、ヒトにおいて一貫して高い(>90%)バイオアベイラビリティを有するケ
トプロフェンを示していることからは予測できない。経口により送達されるケト
プロフェンの薬学動態学的挙動は周知であるので、経口投与群についてここで見
られた異例の結果は、吸入群について見られた結果を無効にするものではない。
【0154】
【表8】

【0155】
実施例5
以下の実験方法および器具を使用して、L-ドパを含有し、かつ肺送達に適切な
粒子の物理的特徴を測定した。
【0156】
空気力学的直径を、標準的な手順(Alkermes SOP番号 MS-034-005 )に従って
APIAeroDisperser およびAerosizer (TSI,Inc.,St.Paul,MN )を使用して解析
した。サンプル粉末をAeroDisperser に導入して分散し、次いでAerosizer のノ
ズルを介して加速した。直接飛行時間測定を、Aerosizer 中の各粒子について行
った。この直接飛行時間測定は、粒子の慣性に依存する。次いで、飛行時間分布
を、Stokesの法則に基づく動力平衡を用いて質量ベースの空気力学的粒子サイズ
分布に書き換えた。
【0157】
幾何学的直径をレーザー回折技術を用いて測定した(Alkermes SOP番号 MS-02
1-005 )。この器具は、HELOS回折計およびRODOS 分散器(Sympatec,Inc.,Prin
ceton,NJ)からなる。RODOS分散器は、粒子のサンプルに入圧空の調節器圧力に
よって制御された剪断力を働かせる。分散した粒子は、レーザービームを通り抜
け、その場合、生じる回折光パターンが一連の検出器によって収集される。次い
で、全体回折パターンを、より小さい粒子がより大きな角で光を回折するこれに
基づいてFraunhofer回折モデルを用いて体積ベース粒子サイズ分布に書き換える

【0158】
吸入器デバイスから分散された粉末の空気力学的特性を、2-段階MkII Anderso
n CascadeImpactor(Anderson Instruments,Inc.,Smyrna,GA )を用いて評価し
た。この装置は、空気力学的直径に基づいてエアロゾル粒子を分離する2段階か
らなる。各段階で、エアロゾル流れは、一連のノズルを通過し、付随の埋状プレ
ートに衝突する。十分な小さな慣性を有する粒子は、エアロゾル流れとともに次
の段階へ続くが、残存粒子はプレートに衝突する。各連続段階で、エアロゾルは
、より高い速度でノズルを通過し、空気力学的により小さい粒子は、プレートに
収集される。エアロゾルが最終段階を通過した後、フィルターは、残存する最も
小さい粒子を収集する。
【0159】
乾燥粉末中の薬物の負荷を測定する前に、この薬物を、粉末中の賦形剤から初
めに分離しなければならなかった。L-ドパを賦形剤DPPCから分離する抽出技術を
開発した。初めに、粒子を50%クロロホルム/50%メタノールに溶解した。不溶
性L-ドパをペレット化し、同じ溶媒系を用いて洗浄し、次いで0.5M塩酸に可溶化
した。DPPCをL-ドパに加えて、回収率を測定した。サンプルを分析のために逆相
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入した。
【0160】
分離を、WatersSymmetry C18 5 μm カラム(150mm ×4.6mm ID)を用いて達
成した。このカラムを30℃で維持し、サンプルを25℃で維持した。注入体積は10
μL であった。移動相を、2.5%メタノールおよび97.5%水溶液(10.5g/L クエ
ン酸、20mg/LEDTA 、20mg/L 1- オクタンスルホン酸ナトリウム塩一水和物)か
ら調製した。移動相を、攪拌プレート上で継続的に攪拌し、Watersインライン脱
気システムを介して脱気した。L-ドパをアイソクラチック(isocratic )条件下
で溶出した。検出を紫外線検出器セットを用いて波長245nm で実施した。
【0161】
L-ドパの平均単回経口用量は、一般的に100〜150mg の範囲なので、実験を、
高負荷のL-ドパを含有する吸入に適切な粒子を調製するために行った。20%およ
び40%L-ドパ負荷の製剤を研究した。カルビドパ(L-ドパと共に与えられて末梢
脱カルボキシル化を妨げるデカルボキシラーゼインヒビター)をまた、いくつか
の製剤中に4:1 の重量/重量(w/w)比で含有させた。L-ドパおよびL-ドパとカ
ルビドパの組み合わせを、DPPC製剤と共に首尾よく噴霧した。最適製剤は、L-ド
パおよび/またはカルビドパ、20%(w/w )クエン酸ナトリウム、ならびに10%
(w/w )塩化カルシウム、ならびに残りはジパルミトイルホスファチジルコリン
(DPPC)からなった。
【0162】
製剤の詳細および得られた粒子の物理的特性を表9にまとめる。空気力学的サ
イズまたは質量メジアン空気力学的直径(MMAD)をAerosizer を用いて測定し、
幾何学的サイズまたは体積メジアン幾何学的直径(VMGD)をレーザー回折を用い
て測定し、微細粒子画分(FPF )を2-段階Andersen Cascade Impactor を用いて
測定した。図12および表9のVMGD比によって示すように、粉末はフロー速度独立
であった。走査型電子顕微鏡写真撮影法を、粒子を観察するために使用した。
【0163】
【表9】

【0164】
L-ドパ完全性は、製剤化および噴霧乾燥プロセスを介して保護されると考えら
れた。L-ドパをL-ドパ粉末から抽出し、逆相HPLCによって分析した。不純物はL-
ドパ粉末中に検出されなかった(図13A );1〜2分あたりに溶出された初期ピ
ークは、図13B からわかり得るようにL-ドパを含有しないブランクサンプルであ
る溶媒に起因する。粒子から回収されたL-ドパの純度は、20%および40%負荷粒
子についてそれぞれ99.8%および99.9%であった。
【0165】
粉末中のL-ドパの負荷(重量%)を測定するために、初めに、L-ドパを製剤中
の賦形剤から分離し、次いで逆相HPLCによって分析した。粉末からのL-ドパ回収
率および最終負荷計算の結果を表10に与える。抽出回収率および負荷測定は共に
、良好であった。測定された粉末中のL-ドパの実際の重量%は、理論上の薬物負
荷の約87%であった。
【0166】
【表10】

【0167】
実施例6
L-ドパの血漿レベルの測定を、IV注射、経口胃管栄養法、または肺への吸入後
に行った。カルビドパを一般的に投与して、抹消デカルボキシラーゼ活性を完全
に妨げることを確実にする。この実施例において、動物に、L-ドパの投与の1時
間前に末梢カルボキシラーゼインヒビターカルビドパの腹腔内(IP)注射(200m
g/kg)を与えた。ケタミン麻酔下で、動物を3群に分けた。第一群の動物におい
て、1%メチルセルロースおよび1%アスコルビン酸を含有する生理食塩水にL-
ドパ(2mg )を懸濁し、経口胃管栄養法を介して与えた。第二群において、吸入
技術をL-ドパを含有する粒子(20%負荷密度)の肺投与のために使用した。喉頭
鏡を使用して、ラットの喉頭蓋を視覚化し、鈍先端(blunt-tip )デバイス(Pe
nnCenturyInsufflation粉末送達デバイス)を気道に挿入した。装着シリンジか
らの空気(3cc )のボーラスを使用して、予め充填した粉末をデバイスのチャン
バから動物の肺へ送達した。合計10mgの粉末(2mg L-ドパ)を送達した。第三群
において、予め配置した大腿部カテーテルを使用して、L-ドパ(2mg )のボーラ
ス(2〜3秒)を送達した。血液サンプル(200 μL )を以下の時点で大腿部カ
テーテルを用いて各動物から抜き取った:0(L-ドパ投与の直前)、L-ドパ投与
後2、5、15、30、60、120、および240 分。全てのサンプルをHPLCを用いてL-
ドパ測定のために処理した。
【0168】
記載の手順を使用した薬物動態学研究の結果を図14A および14B に示す。L-ド
パの肺送達と経口投与の比較の結果を図14A に示す。吸入後、L-ドパのピーク血
漿レベルは最も早い測定時点(2分)で見られ、投与の15分以内に減少を始めた
が、経口投与と比較して120 分までの間上昇したままであった。対照的に、L-ド
パの経口投与は血漿L-ドパレベルにおいてより漸増を生じた。これは投与後15〜
30分でピークに達し、次いで次の1〜2時間にわたって徐々に減少した。
【0169】
静脈内、経口および肺送達をまた比較した。結果を図14B に示す。このパネル
は、図14A で示したのと同じデータにIV投与群を追加したものを示し、これによ
り、全ての3つの投与経路(肺、経口、およびIV)後に得られた血漿L-ドパレベ
ルの直接比較が可能になる。データを平均±SEM μg L-ドパ/mL 血液として示す
。L-ドパの血漿レベルは、静脈内(IV)投与後、速やかに増加した。L-ドパの最
も高いレベルは、2分で見られ、その後速やかに減少した。
【0170】
生物学的利用能を、血中薬物濃度時間曲線下面積(AUC )計算を実施すること
によって評価した。研究の全時間経過にわたって(0〜240 分)、肺L-ドパの相
対的生物学的利用能(IVとの比較)は、約75%であり、経口L-ドパについての比
較では33%であった。投与15分後および60分後での肺L-ドパの相対的生物学的利
用能は、それぞれ38%および62%であり、一方、経口L-ドパの相対的生物学的利
用能は、それぞれ9%および24%であった。
【0171】
実施例7
L-ドパを与えられたラットの薬物動態学的評価をまた実施した。ラットに、神
経毒6-OHDA(脳においてドーパミンニューロンに特異的)の片側注射を内側前脳
束に与えた。次いで、ラットをスクリーニングして、成功した線条体ドーパミン
欠損を標準的なアポモルフィン誘導回転パラダイムを用いて確かめた。手術2週
後から始め、動物をアポモルフィン誘導回転行動について3週間毎週試験した。
この試験のため、動物は、アポモルフィンのIP注射(第一試験では0.25mg/kg お
よび次の2つの試験では0.1mg/kg)を受け、円柱状のプレキシグラスs バケット
に配置した。各360度回転を、30分間計数し、>200 回転/30分を示す動物(12
/30 障害ラット)のみを行動試験に使用した。
【0172】
障害ラットを、L-ドパ投与後にいくつかの運動課題に挑戦させた。研究(位置
課題、踏ん張り課題、無運動)からのデータは、経口送達を上回る肺送達の利点
をさらに強調した。
【0173】
1つの試験において、アポモルフィンチャレンジを通過した動物を、「位置課
題」を用いて試験した。各試験日の前に、動物に末梢デカルボキシラーゼインヒ
ビターカルビドパのIP注射(200mg/kg)を与えた。次いで、動物に経口L-ドパ
(0、20または30mg/kg)または肺L-ドパ(0、0.5 、1.0 または2.0mg のL-ド
パ)を与え、15、30、60および120分後に試験した。L-ドパの経口送達および肺
送達を用いた試験の間、各動物に無作為化した様式で全ての可能な薬物組み合わ
せを与えた。
【0174】
薬力学「位置課題」は、感覚刺激に応答して直接的な前肢運動を動物にさせる
ことを要した。ラットを、その肢を補助なしでつるす(hangging)ように保持し
た。次いで、ラットの体がテーブルの縁に平行になるようにこのラットをテーブ
ルの端に上げた。各ラットに各前肢での10回の継続的な試行を与え、ラットがそ
の前肢をテーブルの上に置いた総回数を記録した。
【0175】
「位置課題」試験からの結果を図15A および15B に示す。ベースライン(t=
0;L-ドパ投与の直前)では、動物は、障害のない肢でこの課題をほぼ完全に行
い、9/10よりも多く正確な応答を行った。対照的に、動物は、障害のある肢で同
じ課題を行う能力においては顕著に欠陥を示し、10回の試行にわたっておおよそ
1回の正確な応答を行った。
【0176】
経口L-ドパ(図15A)は、障害のある肢での動作において用量関連性改善を生
じた。試験した最も高い用量(30mg/kg )では、動作は生理食塩水対照と比べて
30分以内に改善され、薬物投与後の1〜2時間の間にピークに達した。より低い
用量(20mg/kg)もまた、60分に最大効果、およびその後の安定な動作をともな
ってわずかに動作を改善した。生理食塩水対照の投与後に変化は見られなかった

【0177】
経口投与とは対照的に、「位置課題」における動作は、図15B からわかるよう
に、L-ドパの肺送達の後に速やかに改善した。試験した最も高い用量では、10分
以内に有意な改善が起こり、15〜30分以内(経口投与での1〜2時間とは対照的
に)に最大効果(benefit)が観察された。これらの効果は用量関連性であり、
有意な改善が0.5mgという低い用量のL-ドパで見られた。経口送達で示された回
復と比べて、肺経路を用いた場合、顕著により低い総用量で行動改善が見られた
。例えば、経口で与えた30mg/kg のL-ドパでの回復の程度は、肺経路で与えた1
mgのL-ドパで見られた回復と同等であった(動物の体重が約300gであると仮定
すると、1mgの肺L-ドパは約3mg/kgと等価であることに留意)。従って、L-ドパ
用量が体重により標準化された場合、これは等価な有効性を生じるのに必要な薬
物においてほぼ10倍の差を示した。最終的に、2つの送達経路を用いた行動改善
の持続は、同等であった。
【0178】
踏ん張り課題の結果を図16A および16B に示す。この試験は、上記の「位置課
題」試験と同一の動物を使用し、同時に行った。ラットを、滑らかなステンレス
スチール表面に配置し、約20cm/秒で側方に90cm穏やかに押した。ラットが移動
した側の前肢でラットが要したステップ数を記録した。各試行は、それぞれの方
向にラットを2回移動させることを含んだ。
【0179】
この動物は、図16Aに示すように、障害のある前肢でこの課題を実行する能力
において深い障害を示した(障害のない前肢で約7応答と比較して約3応答した
)。さらに、経口投与は、用量関連様式で、この課題に対する動作を改善した。
30mg/kg の投与(約10mgのL-ドパ)は、30分以内に行動を改善した。最大の効果
は、60分以内に見られ、その後安定なままであった。より低用量の経口L-ドパ
(20mg/kg または約7mgのL-ドパ)は、行動をわずかに改善した。さらに、生理
食塩水対照の投与は、行動に影響を及ぼさなかった。
【0180】
経口投与とは対照的に、L-ドパの肺投与後、この課題に対する行動は、図16B
に示すように、速やかに改善した。有意な改善は、10分以内に見られ、15〜30分
以内に(経口投与での30〜60分とは対照的に)最大効果が観察された。これらの
効果は用量相関であり、中程度ではあるが統計的に有意な改善が、0.5mg (約1
.5mg/kg と等価)の低さでさえ見られた。他の機能試験に関して、肺L-ドパ後に
達成された動作改善は、経口送達後の類似の程度の効果を達成するのに必要な用
量よりもずっと低い用量で生じる。最終的に、2つの送達経路を使用した動作改
善の持続性は、同等であった。
【0181】
機能性無運動薬力学研究をまた行った。この結果を図17A および17B に示す。
この試験を、2つの先行実験と同じ動物を使用して、かつ同時に実行した。この
課題において、動物を、一方の前肢で立たせ、そしてその片足で移動できるよう
に保持した。ラットが立っている前肢でとるステップ数を、各前肢について30秒
試験の間に記録した。
【0182】
位置課題および踏ん張り課題で見られたように、この動物は、障害を有する肢
でこの無運動課題を実行する能力において深い障害を示した。この動物は、正常
な肢で約17ステップするが、障害を有する肢ではこの数の半分よりも少ないステ
ップであった(範囲=0〜10ステップ)。経口投与(図17A )は、用量相関様式
でこの課題に対する行動を改善した。30mg/kg の投与(約10mg L-ドパ)は、30
分以内に行動を改善し、最大の効果は、60分以内に見られた。より低用量の経口
L-ドパ(20mg/kg または約6.8mgのL-ドパ)は、同じパターンの回復を生じたが
、改善の絶対的な程度は、より高用量のL-ドパで見られた改善よりもわずかに少
なかった。行動は、両用量の投与後60〜120 分の間、安定なままであった。生理
食塩水対照の投与は、行動に影響を及ぼさなかった。
【0183】
経口投与とは対照的に、L-ドパの肺投与後、この課題に対する行動は、図17B
に示すように、速やかに改善した。有意な改善は10分以内に見られ、15〜30分以
内に(経口投与での60分とは対照的に)最大効果が観察された。これらの効果は
、1.0mg 程度の低さで見られる用量相関の統計的に有意な(p<0.05)改善であ
った。他の機能試験に関して、肺L-ドパ後に達成された動作改善は、経口送達後
の類似の程度の効果を達成するのに必要な用量よりもずっと低い用量で生じた。
最終的に、2つの送達経路を使用した動作改善の持続性は、同等であった。
【0184】
動物をまた、脳におけるドーパミン活性の感受性の高いかつ信頼性のある測定
であることが知られる標準的な薬力学的回転試験で試験した。この試験について
、動物に、経口L-ドパ(30mg/kgまたは総量約10mg)あるいは肺L-ドパ(総量2m
g )のいずれかを与えた。これらの用量をこの試験のために選択した。なぜなら
、これらの用量は、以前の機能試験において最大の効力を生じることが示された
L-ドパの用量を示すからである。投薬後、動物を、円筒プレキシグラスバケット
へ配置した。各360°回転を計数し、120 分試験期間にわたって5つの精密ビン
へグループ分けした。動物をまた、カルビドパで予め処置された、および処置さ
れていない場合の回転動作について試験した。
【0185】
これらの研究に使用した全ての動物に、6-OHDAの一惻性注射(unilateral inj
ection)を与えた。ドーパミン消耗が一惻性であるので、注射されていない側は
、インタクトなままであり、さらにドーパミン活性における変化に応答し得た。
これらの動物を、ドーパミンアゴニスト(すなわち、L-ドパ)を用いて注射する
場合、脳ドーパミン活性は、インタクトな側で優先的に刺激された。これは、旋
回動作または回転動作として現れる運動活性の非対称な刺激を生じた。回転の開
始および数は、時間経過および増加したドーパミン活性の程度の両方の指標を提
供した。
【0186】
この結果を図18に示す。L-ドパの経口投与は、L-ドパ投与後、最初の10〜15分
の間は中程度の著しい右回りの回転動作を生じた(<5回転/動物)。次の20分
の間、回転の数は、著しく増加し、L-ドパ約30分後でピークレベルを生じ、これ
により、脳のインタクトな線条においてドーパミン活性が増加したことを示した
。次の90分の間、回転の数は、徐々に減少したが、この減少は、ピークレベルと
比較して統計的な有意性(p>0.05)に到達しなかった。
【0187】
経口投与とは対照的に、L-ドパの肺送達は、速やかに回転動作を増加し、これ
により、インタクトな線条におけるL-ドパのドーパミンへのずっと速やかな変換
を示した。この群における回転は、最初の10〜15分以内の経口送達によって生じ
た回転の3倍より大きかった。回転の数は、わずかに増加し、25〜30分でピーク
に達し、その後も比較的安定なままであった。経口送達と比較して回転が増加す
る傾向は、投薬120分後に見られるが、統計的な有意性(p>0.05)に到達しな
かった。回転動作は、カルビドパでの前処置を受けていない動物においては事実
上、消えた(データは示さない)。
【0188】
実施例8
肺対経口ベンゾジアゼピン型薬物であるアルプラゾラムの薬力学的影響を、抗
不安薬の薬物作用の標準的な全臨床試験を使用して評価した。この試験において
、齧歯類において十分な特徴付けられた発作を生じることが公知の化学痙攣薬ペ
ンチレンテトラゾール(PZT )をラットに投与した。この試験を広範囲のベンゾ
ジアゼピンに対するその感受性およびPZT 誘導痙攣をブロックする際のベンゾジ
アゼピンの相対潜在能力がヒトにおける抗不安効果の程度と類似であると考えら
れる事実に基づいて選択した。アルプラゾラムがPZT 誘導痙攣をブロックする能
力を、アルプラゾラムの薬力学的効果の指標として使用した。
【0189】
アルプラゾラムの抗不安活性の測定を、経口胃管栄養法またはラットの肺への
直接吸入の後に行った。アルプラゾラム(Sigma,St.Louis,MO )を、10%アルプ
ラゾラム、20%クエン酸ナトリウム、10%塩化カルシウムおよび60%DPPCを含有
する空気力学的に軽い粒子を介して投与した。経口送達のため、アルプラゾラム
を薄い(light)コーンシロップに懸濁し、胃管栄養法を介して投与した。肺送
達のため、吸入技術を使用した。動物をイソフルラン(1〜2%)を用いて簡単
に麻酔し、喉頭鏡を使用して、喉頭蓋を視覚化し、鈍先端デバイス(PennCentur
y Insufflation粉末送達デバイス)を気道に挿入した。装着シリンジからの空気
(3cc )のボーラスを使用して、予め充填した粉末をデバイスのチャンバから動
物の肺へ送達した。肺送達用の用量は、0(20%クエン酸ナトリウム、10%塩化
カルシウムおよび70%DPPCを含有するブランク粒子)、0.088、0.175 、または
0.35mgの総アルプラゾラムであり、経口用の用量は、0、0.088、0.175 、0.35
、0.70、1.75、または3.50mgの総アルプラゾラムであった。これらの用量を、有
効な経口用量と無効な経口用量の範囲を包含するために選択した。従って、肺送
達の任意の潜在的な利益を、アルプラゾラムに対する経口用量応答曲線と直接比
較し得た。
【0190】
経口および肺送達の両者について、アルプラゾラムをPZT (Sigma,St.Louis,M
O から入手)(60mg/kgをi.p で与える)の10または30分前のいずれかで投与し
た。アルプラゾラムとイソフルランとの間の潜在的相互作用についての対照のた
め、経口アルプラゾラムを与えた全ての動物にまた、上記投薬直後にイソフルラ
ンを与えた。全ての動物について、痙攣の回数ならびに痙攣開始までの時間およ
び痙攣持続の時間をPZTの投与後45分間記録した。痙攣活性を示さない任意の動
物に痙攣開始の最大可能時間(45分)および痙攣持続時間の最小可能時間(0秒
)を与えた。
【0191】
アルプラゾラムの肺送達は、表11に示すように、痙攣の発生の速やかなかつ強
力な減少を生じた。80%の対照動物(ブランク粒子)は痙攣を示し、肺アルプラ
ゾラムは、PZT10分前投与する場合、痙攣を示す動物の数において強力なかつ用
量関連性の減少を生じた。0.088mg ほどの低いアルプラゾラム用量では、たった
33%の動物が痙攣を有した。0.35mgアルプラゾラムまでのさらなる用量段階的拡
大では、痙攣活性を事実上消し、たった13%の動物が痙攣を示した。
【0192】
肺アルプラゾラムの速やかな強力な効果とは対照的に、経口アルプラゾラムの
効果は、遅延した(表11)。PZT30 分前に与えた場合、経口アルプラゾラムは痙
攣において用量関連減少を生じた。最も高い用量(0.35mg)試験後、27%の動物
のみが痙攣を有したが、このアルプラゾラムの同じ用量では、PZT のたった10分
前に投与した場合、無効であった(すなわち、肺経路によって投与した場合の最
大に有効な用量)。これらの研究はまた、PZT の10分前に与えた場合、肺送達と
同等の痙攣抑制を達成するためにはアルプラゾラムの経口用量の約10倍を必要と
することを示した。アルプラゾラムを含有する0.35mgの粒子を与えられた動物の
うち13%のみが痙攣を有したが、この効果を生じるために必要な経口用量は、3.
50mgであった。
【0193】
経口送達以上の肺送達の利益はまた、痙攣開始時間を試験した場合に、明白で
あった(表11および図19A)。経口アルプラゾラムの効果はまた、肺投与と比較
して遅延した。上記に示したように、経口送達は、アルプラゾラムがPZT の前30
分に与えられる場合に対して10分与えられる場合に、著しく有効性が少なかった
。対照的に、肺アルプラゾラムの全ての用量は、PZT のたった10分前に与える場
合も速やかなかつ強力な効果を生じた。肺送達の効果は、より速やかなだけでは
なく、有効な肺用量は、有効な経口用量よりも著しく低かった。例えば、アルプ
ラゾラム(0.35mg)と同等な用量が経口および肺系路の両方によってPZTの10分
前に投与される場合、肺投与は、ほぼ最大(>42分)の痙攣開始時間を生じた。
しかし、アルプラゾラムの同じ用量の経口投与は、対照動物と比較して痙攣開始
時間までの潜伏を増加しなかった。事実、経口アルプラゾラムは、用量を1.75mg
に上昇するまで有意に痙攣開始までの時間を増加せず、肺送達で得られた効果と
同等な効果は、肺用量よりも10倍高い経口用量を必要とした(0.35対3.50mg)。
【0194】
類似の結果がまた、痙攣の持続へのアルプラゾラム投与の経路の効果を定量す
る場合に、観察された(表11および図19B )。肺投与は、より速やかな効果を働
かせ、また実質的に経口アルプラゾラムと比較して少ない総薬物を必要とした。
また、経口送達は、アルプラゾラムがPZT の10分前に与えられる場合、30分前に
与えられる場合と比較して痙攣の持続を減少する際に著しく効果が少なかった。
さらに、PZT の10分前に送達される場合、最大有効経口用量は、3.50mgのアルプ
ラゾラムであった。対照的に、たった0.088mg のアルプラゾラム(最大有効経口
用量よりもほぼ40倍低い)の肺送達が痙攣持続時間において同等の減少を生じた

【0195】
経時分析は、アルプラゾラムとPZT との間隔が増加する場合、経口アルプラゾ
ラム以上の肺アルプラゾラムの相対的な利点は減少するが、肺送達は経口送達と
同様の効果のままであることを示した。一方、アルプラゾラム処置とPZT 処置と
の間の合間が10から30分に増加する場合、経口アルプラゾラムは、だんだんより
有効になるが、肺送達の効果は、同じ期間を通して相対的に一定なままであった
。事実、比較可能なアルプラゾラムの経口用量および肺用量がPZT の30分前に送
達される場合、痙攣活性における差は見られなかった。痙攣がより少なくなる傾
向が肺送達で見られるが、これらの差は、中程度であり、統計的な有意性(表11
B ;p>0.05)に到達しなかった。さらに、痙攣開始までの時間とその痙攣の持
続を比較する場合、統計的に有意な差をいずれの経口用量と肺用量との間にも観
察しなかった(図20Aおよび11B )。
【0196】
図21A および21Bは、肺アルプラゾラムの効果はアルプラゾラム処置とPZT 処
置間の時間が増加する場合、相対的に一定なままであることをさらに示す。重要
なことであるが、結果の詳細な分析は、アルプラゾラムとPZT との間隔が最小に
維持される場合、アルプラゾラムが適度により有効であることを示した。試験し
た各用量で、アルプラゾラムがPZT の10分前に送達された場合、30分前と比較し
てより少ない動物が痙攣を有した(この効果は統計的な有意性(p>0.05)に達
しなかったが)。アルプラゾラムとPZT との間の密接な時間的関係を維持する利
益はまた、痙攣開始までの時間および痙攣活動の持続を試験する場合に現れ始め
ていた。差はより高用量のアルプラゾラム(0.175 および0.35mg)では見られな
かったが、最も低用量のアルプラゾラムをPZT の10分前に与えられた動物は、PZ
T の30分前に処置された動物と比較して痙攣開始に対する時間の有意な増加、お
よび痙攣持続時間の有意な減少を示した(図3)。
【0197】
【表11】

【0198】
本発明は、その好ましい実施態様を参照して、詳細に示され、そして記載され
ているが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せず
に、形態および詳細において種々の変化がなされ得ることは、当業者によって理
解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−180378(P2012−180378A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144071(P2012−144071)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2002−528195(P2002−528195)の分割
【原出願日】平成13年9月19日(2001.9.19)
【出願人】(512154943)シビタス セラピューティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】