中枢神経系活動に用いるシクロプロパン
CNS活性に用いられる芳香族シクロプロパン化合物について開示する。これらの化合物は、CNS障害の症状を緩和するために用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な中枢神経系障害に関するものであり、より具体的には、中枢神経系障害の症状を緩和することに関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)障害は、経済的、社会的に多大な損失を与える。例えば、統合失調症は、高い罹患率及び致死率という特徴を有しており、0.6〜1.3%の生涯有病率である世界的な前記障害の主要な原因の一つである。この障害の患者は、競争力を有する被雇用者となり得るのは、ほんの15%以下だけで、約20%の人は自立した生活ができない。
【0003】
統合失調症は、一般的に、陽性症状(妄想、幻覚、解体された行動など)、陰性症状(アネルギー等)、感情症状(抑うつなど)、または認知障害によって分類される。
【0004】
このような障害の典型的な治療は、モナニン受容体系に作用する薬物を用いるものである。例えば、第1世代抗精神病薬の主要な効果は、ドーパミン(D2受容体)の遮断である。これらの薬は、統合失調症の陽性症状の治療に効果的ではあるものの、陰性症状及び認知障害についてはわずかな効果しか発揮しない。統合失調症のようなCNS障害の治療にいくつかの薬は有効であるが、CNS障害を治療するための方法及び化合物は、改良するべき多くの問題を有している。
【特許文献1】米国特許第5763455号明細書
【非特許文献1】Remington’s Pharmaceutical Sciences (18th Edition, A. R. Gennaro et al. Eds., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、芳香族シクロプロパン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される構造、またはその鏡像異性体(式中、アミノ含有基を支えるシクロプロパン炭素は、R配置(式(1)におけるS配置とは反対)であり、アリール基に結合している他方のプロパン炭素は、S配置(式(1)におけるR配置とは反対)である。)またはそれら両鏡像異性体のラセミ混合物である。
【0007】
R1は、炭素数が3個以下のアルカン基からなる群から選択され、任意に、アミノ窒素は、例えば、塩酸塩のような塩として存在する。R2およびR3は、水素、ハロゲン、炭素数が3個以下のアルカン、または、例えば、多重環、共役基からなるRを支える環のような隣接する環からなる群から選択される少なくとも1つ以上の置換基である。
【0008】
また、CNS障害の症状を緩和するシクロプロパン化合物を用いるための方法を提供する。前記方法は、前記CNS障害の症状を軽減するために効果的な量のシクロプロパン化合物を患者に投与する工程を備える。このような障害は、広域スペクトル精神病に限らず、双極性障害、抑うつ症、気分障害、薬物嗜癖、認知障害、及び、例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような神経変性疾患を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、CNS障害に対する治療薬として、また、薬物を常用することができる新規化合物を提供することを目的とする。前記化合物は、下記に詳しく説明するように芳香族シクロプロパン化合物を含む。
【0010】
[1,2−ジアリールシクロプロピルメチルアミン]
モノアミントランスポータ阻害剤は、優れた治療効果を示している。選択的セロトニントランスポータ(SERT)阻害剤は、最も広く用いられている抗うつ薬のいくつかである。ノルエピネフリントランスポータ(NET)と同様に、SERTに結合している非選択的リガンドは、抗うつ薬としても用いられ始めている。ドーパミントランスポータ(DAT)阻害剤は、注意力欠如障害の治療に用いられるが、コカインのように乱用される虞がある。セロトニン受容体は、いくつかのサブタイプに分けられ、これらのサブタイプに対する選択的リガンドの多くは、治療薬として有用である。5−HT2A拮抗剤は、抗うつ薬として、また、他のCNS障害のための有益な治療可能性を示している。近年、コカイン中毒者のための治療薬として、5−HT2A拮抗剤の使用における有望な結果が発見された。
【0011】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される構造、またはその鏡像異性体(式中、アミノ含有基を支えているシクロプロパン炭素は、R配置(式(1)におけるS配置とは反対)であり、アリール基に結合している他方のプロパン炭素は、S配置(式(1)におけるR配置とは反対)である。)またはそれら両鏡像異性体のラセミ混合物である。
【0012】
R1は、炭素数が3個以下のアルカン基からなる群から選択され、任意に、アミノ窒素は、例えば、塩酸塩のような塩として存在する。R2およびR3は、水素、ハロゲン、炭素数が3個以下のアルカン、または、例えば、多重環、共役基を備えるRを支える環のような隣接する環からなる群から選択される少なくとも1つ以上の置換基である。
【0013】
好ましくは、R1はメチル基であり、R2またはR3は、1)水素、または2)メタ位及びパラ位の塩素置換であり、または、R3は、ナフチル基を備えるR3を有するアリール環のようなR3を支えるアリール環の2位及び3位に隣接する環である。
【0014】
また、上記構造に示された1つまたは両方の芳香族環の代わりに、複素環/化合物/縮合環構造を包含することを除いて、本発明の化合物は上述した化合物に含まれる。このような構造として、例えば、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェンなどを挙げることができる。
【0015】
前記芳香族環/複素環/縮合環構造は、置換されていてもよい。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボン酸塩、またはそれらの組合せからなる置換基によって、1つ、2つまたは3つ置換された置換体である。
【0016】
本発明はまた、前述のR,S鏡像異性体またはS,R鏡像異性体のどちらか一方からなる鏡像異性的に純粋な化合物を含む。上述で説明したように、所要の鏡像異性体の製造は、下記の反応式1における環形成反応において、触媒Rh2(DOSP)4を適当な鏡像異性体に用いることで達成することができる。本発明は、前記R,S鏡像異性体及びS,R鏡像異性体のラセミ混合物もまた含む。このような混合物は、単に所望の割合で前記鏡像異性体を混合するのと同様に、触媒−鏡像異性体の混合物を用いることで製造することができる。
【0017】
具体例として、本発明は、CNS障害に対する治療薬として用いられるシス−1,2−ジアリールシクロプロパンメチルアミンを提供する。前記モノアミントランスポータへの選択的に結合によって結合される前記5−HT2aへの結合は、この種の化合物のある部位において得ることができる。その生物活性は、前記シクロプロパンメチルアミンの2つの芳香族環の官能性及びどの鏡像異性体(鏡像)を用いるかに関連する。
【0018】
[化学反応]
前記シクロペンタンの合成に用いられる基本体系を、1−フェニル−2−ナフチル誘導体5として示す(反応式1)。第1段階は、フェニルジアゾ酢酸塩2とビニルナフタレン1とのロジウム触媒反応である。シクロプロパン3のいずれの鏡像異性体も、触媒Rh2(DOSP)4のいずれの鏡像異性体が用いられるかに依存して形成される。シクロプロパン3のシクロプロパンメチルアミン5への変換は、アルコールに還元し、アルデヒドに酸化し、その後還元的アミノ化を行うことによって達成される。前記体系は、アリールジアゾ酢酸塩及びビニル置換された領域の範囲が用いられるため、非常に順応性を有する。さらに、第1及び第2アミンの範囲は、還元的アミン化工程において導入される。
【0019】
本発明のもう1つの態様では、CNS障害の症状を緩和するための方法を提供する。前記方法は、前記CNS障害の症状を軽減するために効果的な量の芳香族シクロプロパンからなる組成物を患者に投与することからなる。
【0020】
本発明の方法は、CNS障害の様々な症状の1つ以上を緩和するために適切である。CNS障害の患者は、しばしば特定の障害に特徴的な1つ以上の症状を示す。また、同一の患者における複数のCNS障害による症状群は、本方法によって緩和されうる。この点に関して、現行の方法による治療の間またはその後に、CNS障害による症状の認識、及び前記症状の緩和を確定することは、当業者にとってよく行われていることの範囲であり、適切な臨床技術、診断技術、観察技術または他の技術を用いて行われることができる。例えば、統合失調症の症状は、これに限定するものではないが、妄想、幻覚、緊張病性行動を含む。本発明の方法を行うことによって生じるこれら特定の症状の減少は、前記症状の緩和であると考えられる。本発明によって緩和するのに適した症状を示す特定のCNS障害は、これに限るものではないが、例えば、双極性障害のような広域スペクトル精神病、抑うつ症、気分障害、薬物嗜癖、認知障害、及び、例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような神経変性疾患、及びそれらの組合せである。これらの障害の各症状については、よく知られている。これら特定の障害のいずれかの症状軽減を認識し、確定することは、当業者によって容易に行われる。
【0021】
有効量の化合物からなる組成物は、従来の経路で投与される。前記投与は、これに限るものではないが、経口投与、非経口投与、筋注投与、静注投与、及び粘膜投与を挙げることができる。本発明の第1の態様では、経口投与が用いられる。
【0022】
前記化合物投与の用量・用法は、当業者によく知られている範囲である。服用レベルは、例えば、体重1kg当たり4μg〜50mgの範囲であってよい。他の例として、服用レベルは、体重1kgあたり20μg〜15mgの範囲であってよい。このような服用パラメータは、患者の体重に加えて、該患者の年齢、障害の段階を考慮され、従来の工程を考慮して決定することができると認識される。
【0023】
前記化合物は、本発明の方法に用いるために、他の成分と結合して製剤を形成してもよい。このような構成要素は、とりわけ、これに限定するものではないが、投薬形態、患者特有の必要性、及び製造方法などの要因に応じて選択することができる。前記構成要素として、例えば、これに限定するものではないが、結合材、潤滑油、充填剤、香味料、防腐剤、着色料、希釈剤などを含む。本発明の方法に用いるための医薬品組成物成分に関する付加的情報が知られている(例えば、非特許文献1参照)。従って、本発明の組成物と共に用いる特定の物質の選択及びその互換性は、当業者であれば容易に確認することができる。また、付加的な詳細についても、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0024】
次に、本発明について以下の実施例を用いて説明するが、これは例示的に説明するためのものであり、いかなる形であれ本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0025】
本実施例では、本発明の化合物を生成するための代表的な技術を提供する。
【0026】
[(1S,2R)−メチル2−(ナフタレン−2−イル)−フェニルシクロプロパンカルボン酸塩]
2−ビニルナフタレン1.05g(6.82mmol)、メチル2−ジアゾ−2−ナフチル酢酸塩1.01g(5.71mmol)、及びRh2(DOSP)4 0.075g(0.040mmol)を出発物質として、エステル26を白色固体の化合物として得た。収量は、1.28g(4.23mmmol、74%)であった。前記化合物をヘキサンを用いて再結晶し、>99%の鏡像異性体過剰率の該化合物を得た。Rf:0.15(9:1 ヘキサン/エチルエーテル)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.78−7.91(m,2H),7.71(d,J=8.5Hz,1H),7.50−7.61(m,3H),7.24−7.37(m,5H),7.04(dd,J=8.5,1.1Hz,1H),3.85(s,3H),3.56(dd,J= 8.8,7.7Hz,1H),2.48(dd,J=4.9,9.3Hz,1H),2.46(dd,J=7.1,5.2Hz,1H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 174.0(C),134.5(C),133.9(C),131.7(CH),127.5(CH),127.3(CH),126.9(CH),125.8(CH),125.6(CH),125.1(CH),52.3(CH3),37.4(C),33.1(CH),20.6(CH2)、IR(neat) cm−1 3064,3027,1714,1257,729,699、[α]25D=−25.5°(c0.65,CHCl3)、HPLCRR−Whelk,5%i−PrOH/ヘキサン,1ml/分 tR=9.3分(minor),10.7分(major)、mp84−87℃、Anal.calcd for C21H18O2:C,83.42、H,6.00.Found C,83.29、H,5.94。
【0027】
[(1S,2R)−2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルシクロプロパンカルボン酸塩]
試料であるエステル26 0.65g(2.2mmol)及びLiAlH4 2.2mmolから、無色油であるアルコールを得た。収量は0.58g(2.1mmol、97%)であった。Rf:0.12(4:1 ヘキサン/エチル酢酸)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.58−7.73(m,2H),7.20−7.40(m,2H),7.07−7.19(m, 5H), 6.82(dd,J=8.5,1.7Hz,1H),3.95(d,J=11Hz,1H),3.68(d,J=11Hz,1H),2.55(dd,J=8.8,6.0Hz,1H),1.63(dd J=11,5.8Hz,1H),1.55(m,2H)、IR(neat) cm−13350(br)。
【0028】
得られた粗アルコールを、スワーン酸化し、白色固体であるアルデヒドを得た。収量は0.49g(1.8mmol、95%)であった。Rf:0.38(4:1 ヘキサン/エチル酢酸)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 9.7(s,1H),7.60−7.70(m,2H),7.57(d,J=8.5Hz,1H), 7.40−7.43(m,3H),7.13−7.19(m,4H)6.9(d,J=8.5Hz,2H),3.2(dd,J=8.5,8.5Hz,1H),2.20−2.30(m,2H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 200.6(CH),133.8(C),133.1(C),132.9(C),132.1(C),131.2(CH),128.3(CH),127.5(CH),127.4(CH)127.3(CH),127.9(CH),125.9(CH)125.8(CH),125.5(CH),46.5(C),35.8(CH),20.0(CH2)。
【0029】
[N−メチル((1R,2S)−2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルシクロプロピル)メタンアミン(5)]
過剰メチルアミンで還元的アミン化したアルデヒド0.49g(1.8mmol)を出発物質として、淡黄色油であるアミン5を得た。収量は0.23g(0.88mmol,44%)であった。Rf:0.30(9:1 エチルエーテル/トリエチルアミン)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.6−7.7(m,1H)、7.55−7.57(m,1H)7.47(d,J=8.5,1H),7.20−7.30(m,3H),7.00−7.10(m,4H),6.76(dd,J=8.5,1.3Hz,1H),2.39−2.43(m,4H),1.65(dd,J=11.5Hz,1H),1.47(dd,J=8.8,5.5Hz,1H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 138.7(CH),128.0(CH),124.8(CH),63.0(CH),36.4(CH3),36.0(C),28.5(CH),18.2(CH2)。
【0030】
試料である前記アミン0.20g(0.73mmol)を、エーテル中、HClで塩酸塩に変換した。このようにして得られた黄色固体を酢酸エチル/メタノールを用いて再結晶し、白色プリズムである塩を得た。収量は0.090g(0.28mmol,39%)であった。Rf:1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.36−7.59(m,3H),6.95−7.27(m,8H),6.84(d,J=8.2Hz,1H),3.73(d,J=12.9Hz,1H),3.32−3.55(m,2H),2.96(d,J=12.9Hz,1H),2.62(dd,J=7.5,7.5Hz,4H),2.54(s,3H),1.91(dd,J=6.0,6.0Hz,1H),1.56(dd,J=6.8,6.8Hz,1H)、Anal.calcd for C21H22ClN:C,77.88、H,6.85、N,4.32。Found:C,77.74、H,7.00、N,4.33。
【実施例2】
【0031】
本実施例では、神経性受容体に対する本発明の実施形態の効果の実証を提供する。
【0032】
[モノアミン再取り込み結合法]
未知物質を計量し、DMSOに溶解し、10mMの原液を作成した。結合のため試験緩衝液中に50μMになるように、または水中に1mMになるように初期希釈された。次に、DMSOが補充された試験緩衝液で希釈し、最終濃度を0.1%DMSOに維持した。ピペット操作は、Biomek 2000 robotic workstationを用いて行った。
【0033】
[Colonla細胞中における[125I]RTI−55のhDAT,hSERTまたはhNETへの放射性リガンド結合の阻害]
細胞の準備:hDAT,hSERTまたはhNETが挿入され、発現するHEK293細胞を150mm直径の組織培養皿に80%コンフルエントにし、組織源として用いた。細胞膜を、以下の通りに準備した。前記培養皿から培地を捨て、該培養皿をカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝食塩水を用いて洗浄した。次に、前記洗浄された培養皿に、溶解緩衝液(1mM EDTAを含む2mM HEPES)を10ml添加した。前記添加の10分後、前記培養皿中の細胞をかき集め、遠心管に注ぎ、30,00xgで20分間遠心分離した。次に、上澄み液を取り除き、沈渣に12〜32mlの範囲の量の0.32Mショ糖溶液を加え、Polytronを7〜10秒間作動させて再懸濁した。再懸濁量は、細胞株中における結合部位の密度に依存し、総放射能活性に対して10%以下の結合を反映するように決定される。
【0034】
試験条件:各試験管に、膜画分50μl(タンパク量として約10〜15μg)と、非特異的結合を規定するための未知化合物または緩衝液(Krebs−HEPES,pH7.4、122mM NaCl、2.5mM CaCl2,1.2mM MgSO4、10μM パーギリン、100μM トロポロン、0.2%グルコースおよび0.2%アスコルビン酸、25mM HEPESを有する緩衝液)25μlと、[125I]RTI−55(最終濃度40〜80pM)を25μlとを収容し、緩衝液を加えて最終体積を250μlとした。前記膜は、[125I]RTI−55を添加する前に、10分間未知物質と共に予め温置した。前記試験管は、25℃に90分間温置した。結合は、Tomtec−96穴(well)用細胞ハーベスタを用いて、GF/Fフィルタで濾過することによって終了させた。次に、前記フィルタを氷冷食塩水で6秒間洗浄した。シンチレーション(scintillation)流体を方形セル(square)に加え、前記フィルタに残存する放射活性をWallac μ−またはベータプレートリーダ(beta plate reader)を用いて計測した。特異的結合は、5μM マジンドール(HEK−hDAT及びHEK−hNET)または5M イミプラミン(HEK−hSERT)の有無により観察される結合の相違として確認される。2つまたは3つの独立競合実験は二重反復測定によって行われる。取得されたデータは、GraphPAD Prismにより分析し、Cheng−Prusoff式(Ki=IC50/(1+([125I]RTI−55/KdRTI55)))からIC50値をKi値に変換した。
【0035】
[受容体結合試験方法]
5−HT1A受容体
HA7細胞(ヒト受容体)を10%ウシ胎児血清(FBS)、0.05%ペニシリン−ストレプトマイシン(pen−strep)及び400μg/mlのジェネティシン(G418)を含むDMEM中で100×20mmプレートにおいてコンフルエント(confluence)にした。前記細胞は該プレートからかき集められ、500xgで5分間遠心分離した。前記遠心分離により得られた沈渣は、50mM Tris−HCl(pH7.7)中で、ポリトロンを用いて均一化処理し、次に、27,000xgで遠心分離した後、該Tris−HClで1ml中のタンパク量が10mgとなるように再懸濁した。前記再懸濁で得られた均等質を、その後1mlずつに分注し、−70℃で保存した。
【0036】
次に、前記細胞を融解した後、一度洗浄し、10μM ニアラミド中、100μM アスコルビン酸を含む25mM Tris−HCl、pH7.4で、10mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁した。前記アッセイは、96穴プレートで3重に(triplicate)行った。100μlの試験化合物または緩衝液、及び、細胞均等質(homogenate)0.80ml(0.10mgタンパク質/穴)を[3H]8−OH−DPAT10μlに添加した(最終濃度0.5nM)。非特異的結合は、10mMジヒドロエルゴタミンにより決定した。前記プレートを、25℃で60分間温置し、その後、Tomtec細胞ハーベスタを用い、ガラス繊維濾紙により濾過した。前記濾紙を、冷やした50mM Tris−HCl(pH7.7)で4回洗浄した後、一晩乾燥させ、シンチレーションカクテル10mlを加えた後、Wallacベータプレート1205液体シンチレーターセンターで2分間計測した。
【0037】
[5−HT2A受容体]
NIH−3T3-GF6細胞(ラット受容体)を、前記HA7細胞と同様に成長させた。前記細胞を融解し、50mM Tris−HClに再懸濁して、27,000xgで12分間遠心分離した。前記遠心分離により得られた沈渣を、その後、25mM Tris−HCL(pH7.7)で1mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁し、得られた細胞均等質(0.01mgタンパク質/穴)0.80mlを、前記試験化合物または緩衝液100μlと、[3H]ケタンセリン(最終濃度0.4nM)100μlとを含む穴中に加えた。前記プレートを、25℃で60分間温置した。非特異的結合は、1.0μMケタンセリンにより決定された。
【0038】
[5−HT2C受容体]
NIH−3T3-Pφ細胞(ラット受容体)を、前記HA7細胞と同様に成長させた。最終沈渣を、50mM Tris−HCl(pH7.7)、4mM CaCl2、10μMパーギリン及び0.1%アスコルビン酸により3mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁した。試験化合物または緩衝液100μl、[3H]メスレルギン(最終濃度0.40nM)100μl、及び、細胞均等質(0.03mgタンパク質/穴)を含む穴を、25℃で60分間温置した。非得的結合は、10μMメスレルギンにより決定された。
【0039】
[生物活性]
本実施形態で上述したように検定されたジアリールシクロプロパンメチルアミン再懸濁液の生物学的データを、表1に示す。表1は、鏡像異性体の対で構成され、各々に対する選択性の相違を示す。これは、第1項目、第2項目でみることができる。(1S,2R)鏡像異性体は、SERT,NET及び5−HT2aに適度な有効性で結合する一方で、(1R,2S)鏡像異性体は、SETに対して選択的である。1-アリール基は、前記モノアミントランスポータ親和性に計り知れない影響を有する。非常に高い親和性を、前記1-アリール基が3,4-ジクロルフェニル基及び2-ナフチル基である場合に得ることができる。前記1,2-ジアリールシクロプロパンメチルアミンがCNS障害の治療薬として有益である薬剤群であることを、前記生物学的データは示している。
[表1]
【0040】
上述した特定の実施形態は、本発明を説明することを目的としたものであり、これに限定して解釈されるものではない。本発明の教示から、当業者によって認識される多様な改良及び改変は、本発明の思想から逸脱するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な中枢神経系障害に関するものであり、より具体的には、中枢神経系障害の症状を緩和することに関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)障害は、経済的、社会的に多大な損失を与える。例えば、統合失調症は、高い罹患率及び致死率という特徴を有しており、0.6〜1.3%の生涯有病率である世界的な前記障害の主要な原因の一つである。この障害の患者は、競争力を有する被雇用者となり得るのは、ほんの15%以下だけで、約20%の人は自立した生活ができない。
【0003】
統合失調症は、一般的に、陽性症状(妄想、幻覚、解体された行動など)、陰性症状(アネルギー等)、感情症状(抑うつなど)、または認知障害によって分類される。
【0004】
このような障害の典型的な治療は、モナニン受容体系に作用する薬物を用いるものである。例えば、第1世代抗精神病薬の主要な効果は、ドーパミン(D2受容体)の遮断である。これらの薬は、統合失調症の陽性症状の治療に効果的ではあるものの、陰性症状及び認知障害についてはわずかな効果しか発揮しない。統合失調症のようなCNS障害の治療にいくつかの薬は有効であるが、CNS障害を治療するための方法及び化合物は、改良するべき多くの問題を有している。
【特許文献1】米国特許第5763455号明細書
【非特許文献1】Remington’s Pharmaceutical Sciences (18th Edition, A. R. Gennaro et al. Eds., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、芳香族シクロプロパン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される構造、またはその鏡像異性体(式中、アミノ含有基を支えるシクロプロパン炭素は、R配置(式(1)におけるS配置とは反対)であり、アリール基に結合している他方のプロパン炭素は、S配置(式(1)におけるR配置とは反対)である。)またはそれら両鏡像異性体のラセミ混合物である。
【0007】
R1は、炭素数が3個以下のアルカン基からなる群から選択され、任意に、アミノ窒素は、例えば、塩酸塩のような塩として存在する。R2およびR3は、水素、ハロゲン、炭素数が3個以下のアルカン、または、例えば、多重環、共役基からなるRを支える環のような隣接する環からなる群から選択される少なくとも1つ以上の置換基である。
【0008】
また、CNS障害の症状を緩和するシクロプロパン化合物を用いるための方法を提供する。前記方法は、前記CNS障害の症状を軽減するために効果的な量のシクロプロパン化合物を患者に投与する工程を備える。このような障害は、広域スペクトル精神病に限らず、双極性障害、抑うつ症、気分障害、薬物嗜癖、認知障害、及び、例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような神経変性疾患を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、CNS障害に対する治療薬として、また、薬物を常用することができる新規化合物を提供することを目的とする。前記化合物は、下記に詳しく説明するように芳香族シクロプロパン化合物を含む。
【0010】
[1,2−ジアリールシクロプロピルメチルアミン]
モノアミントランスポータ阻害剤は、優れた治療効果を示している。選択的セロトニントランスポータ(SERT)阻害剤は、最も広く用いられている抗うつ薬のいくつかである。ノルエピネフリントランスポータ(NET)と同様に、SERTに結合している非選択的リガンドは、抗うつ薬としても用いられ始めている。ドーパミントランスポータ(DAT)阻害剤は、注意力欠如障害の治療に用いられるが、コカインのように乱用される虞がある。セロトニン受容体は、いくつかのサブタイプに分けられ、これらのサブタイプに対する選択的リガンドの多くは、治療薬として有用である。5−HT2A拮抗剤は、抗うつ薬として、また、他のCNS障害のための有益な治療可能性を示している。近年、コカイン中毒者のための治療薬として、5−HT2A拮抗剤の使用における有望な結果が発見された。
【0011】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される構造、またはその鏡像異性体(式中、アミノ含有基を支えているシクロプロパン炭素は、R配置(式(1)におけるS配置とは反対)であり、アリール基に結合している他方のプロパン炭素は、S配置(式(1)におけるR配置とは反対)である。)またはそれら両鏡像異性体のラセミ混合物である。
【0012】
R1は、炭素数が3個以下のアルカン基からなる群から選択され、任意に、アミノ窒素は、例えば、塩酸塩のような塩として存在する。R2およびR3は、水素、ハロゲン、炭素数が3個以下のアルカン、または、例えば、多重環、共役基を備えるRを支える環のような隣接する環からなる群から選択される少なくとも1つ以上の置換基である。
【0013】
好ましくは、R1はメチル基であり、R2またはR3は、1)水素、または2)メタ位及びパラ位の塩素置換であり、または、R3は、ナフチル基を備えるR3を有するアリール環のようなR3を支えるアリール環の2位及び3位に隣接する環である。
【0014】
また、上記構造に示された1つまたは両方の芳香族環の代わりに、複素環/化合物/縮合環構造を包含することを除いて、本発明の化合物は上述した化合物に含まれる。このような構造として、例えば、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェンなどを挙げることができる。
【0015】
前記芳香族環/複素環/縮合環構造は、置換されていてもよい。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボン酸塩、またはそれらの組合せからなる置換基によって、1つ、2つまたは3つ置換された置換体である。
【0016】
本発明はまた、前述のR,S鏡像異性体またはS,R鏡像異性体のどちらか一方からなる鏡像異性的に純粋な化合物を含む。上述で説明したように、所要の鏡像異性体の製造は、下記の反応式1における環形成反応において、触媒Rh2(DOSP)4を適当な鏡像異性体に用いることで達成することができる。本発明は、前記R,S鏡像異性体及びS,R鏡像異性体のラセミ混合物もまた含む。このような混合物は、単に所望の割合で前記鏡像異性体を混合するのと同様に、触媒−鏡像異性体の混合物を用いることで製造することができる。
【0017】
具体例として、本発明は、CNS障害に対する治療薬として用いられるシス−1,2−ジアリールシクロプロパンメチルアミンを提供する。前記モノアミントランスポータへの選択的に結合によって結合される前記5−HT2aへの結合は、この種の化合物のある部位において得ることができる。その生物活性は、前記シクロプロパンメチルアミンの2つの芳香族環の官能性及びどの鏡像異性体(鏡像)を用いるかに関連する。
【0018】
[化学反応]
前記シクロペンタンの合成に用いられる基本体系を、1−フェニル−2−ナフチル誘導体5として示す(反応式1)。第1段階は、フェニルジアゾ酢酸塩2とビニルナフタレン1とのロジウム触媒反応である。シクロプロパン3のいずれの鏡像異性体も、触媒Rh2(DOSP)4のいずれの鏡像異性体が用いられるかに依存して形成される。シクロプロパン3のシクロプロパンメチルアミン5への変換は、アルコールに還元し、アルデヒドに酸化し、その後還元的アミノ化を行うことによって達成される。前記体系は、アリールジアゾ酢酸塩及びビニル置換された領域の範囲が用いられるため、非常に順応性を有する。さらに、第1及び第2アミンの範囲は、還元的アミン化工程において導入される。
【0019】
本発明のもう1つの態様では、CNS障害の症状を緩和するための方法を提供する。前記方法は、前記CNS障害の症状を軽減するために効果的な量の芳香族シクロプロパンからなる組成物を患者に投与することからなる。
【0020】
本発明の方法は、CNS障害の様々な症状の1つ以上を緩和するために適切である。CNS障害の患者は、しばしば特定の障害に特徴的な1つ以上の症状を示す。また、同一の患者における複数のCNS障害による症状群は、本方法によって緩和されうる。この点に関して、現行の方法による治療の間またはその後に、CNS障害による症状の認識、及び前記症状の緩和を確定することは、当業者にとってよく行われていることの範囲であり、適切な臨床技術、診断技術、観察技術または他の技術を用いて行われることができる。例えば、統合失調症の症状は、これに限定するものではないが、妄想、幻覚、緊張病性行動を含む。本発明の方法を行うことによって生じるこれら特定の症状の減少は、前記症状の緩和であると考えられる。本発明によって緩和するのに適した症状を示す特定のCNS障害は、これに限るものではないが、例えば、双極性障害のような広域スペクトル精神病、抑うつ症、気分障害、薬物嗜癖、認知障害、及び、例えば、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような神経変性疾患、及びそれらの組合せである。これらの障害の各症状については、よく知られている。これら特定の障害のいずれかの症状軽減を認識し、確定することは、当業者によって容易に行われる。
【0021】
有効量の化合物からなる組成物は、従来の経路で投与される。前記投与は、これに限るものではないが、経口投与、非経口投与、筋注投与、静注投与、及び粘膜投与を挙げることができる。本発明の第1の態様では、経口投与が用いられる。
【0022】
前記化合物投与の用量・用法は、当業者によく知られている範囲である。服用レベルは、例えば、体重1kg当たり4μg〜50mgの範囲であってよい。他の例として、服用レベルは、体重1kgあたり20μg〜15mgの範囲であってよい。このような服用パラメータは、患者の体重に加えて、該患者の年齢、障害の段階を考慮され、従来の工程を考慮して決定することができると認識される。
【0023】
前記化合物は、本発明の方法に用いるために、他の成分と結合して製剤を形成してもよい。このような構成要素は、とりわけ、これに限定するものではないが、投薬形態、患者特有の必要性、及び製造方法などの要因に応じて選択することができる。前記構成要素として、例えば、これに限定するものではないが、結合材、潤滑油、充填剤、香味料、防腐剤、着色料、希釈剤などを含む。本発明の方法に用いるための医薬品組成物成分に関する付加的情報が知られている(例えば、非特許文献1参照)。従って、本発明の組成物と共に用いる特定の物質の選択及びその互換性は、当業者であれば容易に確認することができる。また、付加的な詳細についても、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0024】
次に、本発明について以下の実施例を用いて説明するが、これは例示的に説明するためのものであり、いかなる形であれ本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0025】
本実施例では、本発明の化合物を生成するための代表的な技術を提供する。
【0026】
[(1S,2R)−メチル2−(ナフタレン−2−イル)−フェニルシクロプロパンカルボン酸塩]
2−ビニルナフタレン1.05g(6.82mmol)、メチル2−ジアゾ−2−ナフチル酢酸塩1.01g(5.71mmol)、及びRh2(DOSP)4 0.075g(0.040mmol)を出発物質として、エステル26を白色固体の化合物として得た。収量は、1.28g(4.23mmmol、74%)であった。前記化合物をヘキサンを用いて再結晶し、>99%の鏡像異性体過剰率の該化合物を得た。Rf:0.15(9:1 ヘキサン/エチルエーテル)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.78−7.91(m,2H),7.71(d,J=8.5Hz,1H),7.50−7.61(m,3H),7.24−7.37(m,5H),7.04(dd,J=8.5,1.1Hz,1H),3.85(s,3H),3.56(dd,J= 8.8,7.7Hz,1H),2.48(dd,J=4.9,9.3Hz,1H),2.46(dd,J=7.1,5.2Hz,1H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 174.0(C),134.5(C),133.9(C),131.7(CH),127.5(CH),127.3(CH),126.9(CH),125.8(CH),125.6(CH),125.1(CH),52.3(CH3),37.4(C),33.1(CH),20.6(CH2)、IR(neat) cm−1 3064,3027,1714,1257,729,699、[α]25D=−25.5°(c0.65,CHCl3)、HPLCRR−Whelk,5%i−PrOH/ヘキサン,1ml/分 tR=9.3分(minor),10.7分(major)、mp84−87℃、Anal.calcd for C21H18O2:C,83.42、H,6.00.Found C,83.29、H,5.94。
【0027】
[(1S,2R)−2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルシクロプロパンカルボン酸塩]
試料であるエステル26 0.65g(2.2mmol)及びLiAlH4 2.2mmolから、無色油であるアルコールを得た。収量は0.58g(2.1mmol、97%)であった。Rf:0.12(4:1 ヘキサン/エチル酢酸)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.58−7.73(m,2H),7.20−7.40(m,2H),7.07−7.19(m, 5H), 6.82(dd,J=8.5,1.7Hz,1H),3.95(d,J=11Hz,1H),3.68(d,J=11Hz,1H),2.55(dd,J=8.8,6.0Hz,1H),1.63(dd J=11,5.8Hz,1H),1.55(m,2H)、IR(neat) cm−13350(br)。
【0028】
得られた粗アルコールを、スワーン酸化し、白色固体であるアルデヒドを得た。収量は0.49g(1.8mmol、95%)であった。Rf:0.38(4:1 ヘキサン/エチル酢酸)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 9.7(s,1H),7.60−7.70(m,2H),7.57(d,J=8.5Hz,1H), 7.40−7.43(m,3H),7.13−7.19(m,4H)6.9(d,J=8.5Hz,2H),3.2(dd,J=8.5,8.5Hz,1H),2.20−2.30(m,2H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 200.6(CH),133.8(C),133.1(C),132.9(C),132.1(C),131.2(CH),128.3(CH),127.5(CH),127.4(CH)127.3(CH),127.9(CH),125.9(CH)125.8(CH),125.5(CH),46.5(C),35.8(CH),20.0(CH2)。
【0029】
[N−メチル((1R,2S)−2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルシクロプロピル)メタンアミン(5)]
過剰メチルアミンで還元的アミン化したアルデヒド0.49g(1.8mmol)を出発物質として、淡黄色油であるアミン5を得た。収量は0.23g(0.88mmol,44%)であった。Rf:0.30(9:1 エチルエーテル/トリエチルアミン)、1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.6−7.7(m,1H)、7.55−7.57(m,1H)7.47(d,J=8.5,1H),7.20−7.30(m,3H),7.00−7.10(m,4H),6.76(dd,J=8.5,1.3Hz,1H),2.39−2.43(m,4H),1.65(dd,J=11.5Hz,1H),1.47(dd,J=8.8,5.5Hz,1H)、13C NMR(75MHz,CDCl3) δ 138.7(CH),128.0(CH),124.8(CH),63.0(CH),36.4(CH3),36.0(C),28.5(CH),18.2(CH2)。
【0030】
試料である前記アミン0.20g(0.73mmol)を、エーテル中、HClで塩酸塩に変換した。このようにして得られた黄色固体を酢酸エチル/メタノールを用いて再結晶し、白色プリズムである塩を得た。収量は0.090g(0.28mmol,39%)であった。Rf:1H NMR(300MHz、CDCl3) δ 7.36−7.59(m,3H),6.95−7.27(m,8H),6.84(d,J=8.2Hz,1H),3.73(d,J=12.9Hz,1H),3.32−3.55(m,2H),2.96(d,J=12.9Hz,1H),2.62(dd,J=7.5,7.5Hz,4H),2.54(s,3H),1.91(dd,J=6.0,6.0Hz,1H),1.56(dd,J=6.8,6.8Hz,1H)、Anal.calcd for C21H22ClN:C,77.88、H,6.85、N,4.32。Found:C,77.74、H,7.00、N,4.33。
【実施例2】
【0031】
本実施例では、神経性受容体に対する本発明の実施形態の効果の実証を提供する。
【0032】
[モノアミン再取り込み結合法]
未知物質を計量し、DMSOに溶解し、10mMの原液を作成した。結合のため試験緩衝液中に50μMになるように、または水中に1mMになるように初期希釈された。次に、DMSOが補充された試験緩衝液で希釈し、最終濃度を0.1%DMSOに維持した。ピペット操作は、Biomek 2000 robotic workstationを用いて行った。
【0033】
[Colonla細胞中における[125I]RTI−55のhDAT,hSERTまたはhNETへの放射性リガンド結合の阻害]
細胞の準備:hDAT,hSERTまたはhNETが挿入され、発現するHEK293細胞を150mm直径の組織培養皿に80%コンフルエントにし、組織源として用いた。細胞膜を、以下の通りに準備した。前記培養皿から培地を捨て、該培養皿をカルシウム及びマグネシウムを含まないリン酸緩衝食塩水を用いて洗浄した。次に、前記洗浄された培養皿に、溶解緩衝液(1mM EDTAを含む2mM HEPES)を10ml添加した。前記添加の10分後、前記培養皿中の細胞をかき集め、遠心管に注ぎ、30,00xgで20分間遠心分離した。次に、上澄み液を取り除き、沈渣に12〜32mlの範囲の量の0.32Mショ糖溶液を加え、Polytronを7〜10秒間作動させて再懸濁した。再懸濁量は、細胞株中における結合部位の密度に依存し、総放射能活性に対して10%以下の結合を反映するように決定される。
【0034】
試験条件:各試験管に、膜画分50μl(タンパク量として約10〜15μg)と、非特異的結合を規定するための未知化合物または緩衝液(Krebs−HEPES,pH7.4、122mM NaCl、2.5mM CaCl2,1.2mM MgSO4、10μM パーギリン、100μM トロポロン、0.2%グルコースおよび0.2%アスコルビン酸、25mM HEPESを有する緩衝液)25μlと、[125I]RTI−55(最終濃度40〜80pM)を25μlとを収容し、緩衝液を加えて最終体積を250μlとした。前記膜は、[125I]RTI−55を添加する前に、10分間未知物質と共に予め温置した。前記試験管は、25℃に90分間温置した。結合は、Tomtec−96穴(well)用細胞ハーベスタを用いて、GF/Fフィルタで濾過することによって終了させた。次に、前記フィルタを氷冷食塩水で6秒間洗浄した。シンチレーション(scintillation)流体を方形セル(square)に加え、前記フィルタに残存する放射活性をWallac μ−またはベータプレートリーダ(beta plate reader)を用いて計測した。特異的結合は、5μM マジンドール(HEK−hDAT及びHEK−hNET)または5M イミプラミン(HEK−hSERT)の有無により観察される結合の相違として確認される。2つまたは3つの独立競合実験は二重反復測定によって行われる。取得されたデータは、GraphPAD Prismにより分析し、Cheng−Prusoff式(Ki=IC50/(1+([125I]RTI−55/KdRTI55)))からIC50値をKi値に変換した。
【0035】
[受容体結合試験方法]
5−HT1A受容体
HA7細胞(ヒト受容体)を10%ウシ胎児血清(FBS)、0.05%ペニシリン−ストレプトマイシン(pen−strep)及び400μg/mlのジェネティシン(G418)を含むDMEM中で100×20mmプレートにおいてコンフルエント(confluence)にした。前記細胞は該プレートからかき集められ、500xgで5分間遠心分離した。前記遠心分離により得られた沈渣は、50mM Tris−HCl(pH7.7)中で、ポリトロンを用いて均一化処理し、次に、27,000xgで遠心分離した後、該Tris−HClで1ml中のタンパク量が10mgとなるように再懸濁した。前記再懸濁で得られた均等質を、その後1mlずつに分注し、−70℃で保存した。
【0036】
次に、前記細胞を融解した後、一度洗浄し、10μM ニアラミド中、100μM アスコルビン酸を含む25mM Tris−HCl、pH7.4で、10mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁した。前記アッセイは、96穴プレートで3重に(triplicate)行った。100μlの試験化合物または緩衝液、及び、細胞均等質(homogenate)0.80ml(0.10mgタンパク質/穴)を[3H]8−OH−DPAT10μlに添加した(最終濃度0.5nM)。非特異的結合は、10mMジヒドロエルゴタミンにより決定した。前記プレートを、25℃で60分間温置し、その後、Tomtec細胞ハーベスタを用い、ガラス繊維濾紙により濾過した。前記濾紙を、冷やした50mM Tris−HCl(pH7.7)で4回洗浄した後、一晩乾燥させ、シンチレーションカクテル10mlを加えた後、Wallacベータプレート1205液体シンチレーターセンターで2分間計測した。
【0037】
[5−HT2A受容体]
NIH−3T3-GF6細胞(ラット受容体)を、前記HA7細胞と同様に成長させた。前記細胞を融解し、50mM Tris−HClに再懸濁して、27,000xgで12分間遠心分離した。前記遠心分離により得られた沈渣を、その後、25mM Tris−HCL(pH7.7)で1mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁し、得られた細胞均等質(0.01mgタンパク質/穴)0.80mlを、前記試験化合物または緩衝液100μlと、[3H]ケタンセリン(最終濃度0.4nM)100μlとを含む穴中に加えた。前記プレートを、25℃で60分間温置した。非特異的結合は、1.0μMケタンセリンにより決定された。
【0038】
[5−HT2C受容体]
NIH−3T3-Pφ細胞(ラット受容体)を、前記HA7細胞と同様に成長させた。最終沈渣を、50mM Tris−HCl(pH7.7)、4mM CaCl2、10μMパーギリン及び0.1%アスコルビン酸により3mgタンパク質/80mlとなるように再懸濁した。試験化合物または緩衝液100μl、[3H]メスレルギン(最終濃度0.40nM)100μl、及び、細胞均等質(0.03mgタンパク質/穴)を含む穴を、25℃で60分間温置した。非得的結合は、10μMメスレルギンにより決定された。
【0039】
[生物活性]
本実施形態で上述したように検定されたジアリールシクロプロパンメチルアミン再懸濁液の生物学的データを、表1に示す。表1は、鏡像異性体の対で構成され、各々に対する選択性の相違を示す。これは、第1項目、第2項目でみることができる。(1S,2R)鏡像異性体は、SERT,NET及び5−HT2aに適度な有効性で結合する一方で、(1R,2S)鏡像異性体は、SETに対して選択的である。1-アリール基は、前記モノアミントランスポータ親和性に計り知れない影響を有する。非常に高い親和性を、前記1-アリール基が3,4-ジクロルフェニル基及び2-ナフチル基である場合に得ることができる。前記1,2-ジアリールシクロプロパンメチルアミンがCNS障害の治療薬として有益である薬剤群であることを、前記生物学的データは示している。
[表1]
【0040】
上述した特定の実施形態は、本発明を説明することを目的としたものであり、これに限定して解釈されるものではない。本発明の教示から、当業者によって認識される多様な改良及び改変は、本発明の思想から逸脱するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式(1)またはその鏡像異性体を有することを特徴とする化合物。
【請求項2】
R1はメチル基であり、任意に、アミノ窒素は、塩酸塩として存することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2またはR3のいずれか一方は、水素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2またはR3のいずれか一方は、パラ位及びメタ位に塩素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R2及びR3の両方は、パラ位及びメタ位に塩素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項6】
R3は、R3を支えるアリール基の2位及び3位に隣接する環を有し、ナフチル基を形成することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造式(1)を有する化合物のS,RまたはR,S鏡像異性体のラセミ混合物であることを特徴とするラセミ混合物。
【請求項8】
R1はメチル基であり、任意に、アミノ窒素は塩酸塩として存することを特徴とする請求項7記載のラセミ混合物。
【請求項9】
R2またはR3のいずれか一方は、パラ位及びメタ位の塩素置換基であることを特徴とする請求項8記載のラセミ混合物。
【請求項10】
R2及びR3の両方は、パラ位及びメタ位の塩素置換基であることを特徴とする請求項8記載のラセミ混合物。
【請求項11】
R3は、R3を支えるアリール基の2位及び3位に隣接する環を有し、ナフチル基を形成することを特徴とする請求項7記載のラセミ混合物。
【請求項12】
以下の構造式(2)の構造またはその鏡像異性体を有することを特徴とする化合物。
【請求項13】
前記複素環または縮合環構造は、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、及びナフチル基からなる群から選択されることを特徴とする請求項12記載の化合物。
【請求項14】
前記複素環または縮合環構造は、置換されたまたは置換されていない構造であり、前記置換された複素環または縮合環構造は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボン酸塩、またはそれらの組合せからなる群から選択される置換基で、1つ、2つまたは3つ置換されていることを特徴とする請求項13記載の化合物。
【請求項15】
CNS障害の症状を軽減するために効果的な量の請求項1記載の化合物を備える組成物を患者に投与し、該組成物の投与により該CNS障害の症状の1つ以上を緩和する工程を備えることを特徴とする患者のCNS障害の症状の1つ以上を緩和する方法。
【請求項1】
以下の構造式(1)またはその鏡像異性体を有することを特徴とする化合物。
【請求項2】
R1はメチル基であり、任意に、アミノ窒素は、塩酸塩として存することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2またはR3のいずれか一方は、水素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2またはR3のいずれか一方は、パラ位及びメタ位に塩素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R2及びR3の両方は、パラ位及びメタ位に塩素置換基を有することを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項6】
R3は、R3を支えるアリール基の2位及び3位に隣接する環を有し、ナフチル基を形成することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造式(1)を有する化合物のS,RまたはR,S鏡像異性体のラセミ混合物であることを特徴とするラセミ混合物。
【請求項8】
R1はメチル基であり、任意に、アミノ窒素は塩酸塩として存することを特徴とする請求項7記載のラセミ混合物。
【請求項9】
R2またはR3のいずれか一方は、パラ位及びメタ位の塩素置換基であることを特徴とする請求項8記載のラセミ混合物。
【請求項10】
R2及びR3の両方は、パラ位及びメタ位の塩素置換基であることを特徴とする請求項8記載のラセミ混合物。
【請求項11】
R3は、R3を支えるアリール基の2位及び3位に隣接する環を有し、ナフチル基を形成することを特徴とする請求項7記載のラセミ混合物。
【請求項12】
以下の構造式(2)の構造またはその鏡像異性体を有することを特徴とする化合物。
【請求項13】
前記複素環または縮合環構造は、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、及びナフチル基からなる群から選択されることを特徴とする請求項12記載の化合物。
【請求項14】
前記複素環または縮合環構造は、置換されたまたは置換されていない構造であり、前記置換された複素環または縮合環構造は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボン酸塩、またはそれらの組合せからなる群から選択される置換基で、1つ、2つまたは3つ置換されていることを特徴とする請求項13記載の化合物。
【請求項15】
CNS障害の症状を軽減するために効果的な量の請求項1記載の化合物を備える組成物を患者に投与し、該組成物の投与により該CNS障害の症状の1つ以上を緩和する工程を備えることを特徴とする患者のCNS障害の症状の1つ以上を緩和する方法。
【公表番号】特表2009−536644(P2009−536644A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509560(P2009−509560)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006170
【国際公開番号】WO2008/127223
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508271551)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステート・ユニバーシティ・オブ・ニューヨーク (5)
【氏名又は名称原語表記】THE RESEARCH FOUNDATION OF STATE UNIVERSITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/006170
【国際公開番号】WO2008/127223
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508271551)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステート・ユニバーシティ・オブ・ニューヨーク (5)
【氏名又は名称原語表記】THE RESEARCH FOUNDATION OF STATE UNIVERSITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】
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