中枢神経系病変の治療のための物質の使用
中枢神経系病変の治療のための方法および物質が開示される。好ましい方法および物質は、ニューロン前駆体細胞および/または骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、中枢神経系病変の治療に、特に卒中の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
病変は、多数の理由のために、中枢神経系(「CNS」)組織に生じ得る。CNS病変の主因の1つは、卒中である。卒中は、脳の領域への循環の突然の損失により特性化され、神経学的機能の対応する損失を生じる。脳血管性偶発症候または卒中症候群とも呼ばれる卒中は、雑多な群の病理生理学的原因、例えば血栓症、塞栓症および出血を包含する非特定的用語である。近年の報告は、年間、すべての種類の500,000例を超える新規の卒中の発生率を示す。卒中は、主要な致死因子および不能因子である。すべての型の卒中を組合せると、それは死亡の第三の誘導原因および不能性の第一の誘導原因である。最新の傾向では、この数は2050年までに年間100万に急増すると推定される。卒中の直接経費(看護および治療)および間接経費(生産性損失)を合わせて考えた場合、卒中は米国社会で年間433億ドルを要する。卒中は一般に、出血性または虚血性として分類される。急性虚血性卒中は血栓症または塞栓症により引き起こされる卒中を指し、そして全卒中の80%を占める。
【0003】
4つの主な神経解剖学的虚血性卒中症候群は、それらのそれぞれの脳血管分布の崩壊により引き起こされる。
【0004】
前方脳動脈閉塞は主として前頭葉機能に作用して、精神状態変容、判断障害、対側性下肢衰弱および感覚減退、ならびに歩行失行症を生じる。
【0005】
中脳動脈(MCA)閉塞は一般に、対側性片側麻痺、対側性感覚減退、同側性半盲(視野の半分の失明)、ならびに病変側に対する注視偏好を生じる。失認症がよく起こり、そして病変が優性大脳半球に起こる場合には、知覚性または表現的失語症が生じ得る。MCAは上肢運動ストリップを供給するため、腕および顔面の衰弱は通常は下肢の衰弱より悪化する。
【0006】
後脳動脈閉塞は視覚および思考に作用して、同側性半盲、皮質盲、視覚失認症、精神状態変容および記憶障害を生じる。
【0007】
椎骨脳底動脈閉塞は、それらが広範な種々の脳神経、小脳および脳幹欠損を引き起こすため、検出するのは周知のように困難である。これらの例としては、眩暈、眼振、複視、視野欠損、嚥下障害、構音障害、顔面感覚減退、失神および運動失調症が挙げられる。疼痛および温度感覚の損失は、同側顔面および対側身体で起こる。それに反して、前方卒中は、身体の一側面のみに関する知見を生じる。
【0008】
これらの閉塞は、種々の理由のために起こり得る。塞栓は、心臓、頭蓋外動脈、あるいはまれに右側循環(奇異性塞栓)から生じ得る。心原性塞栓の供給源としては、弁膜血栓(例えば僧帽弁狭窄、心内膜炎、人工弁における);心壁血栓(例えば心筋梗塞(MI)、心房細動、拡張心筋症における);ならびに心房粘液腫が挙げられる。MIは、塞栓性卒中の2〜3%の発生率に関連し、この85%はMI後1ヶ月で起こる。
【0009】
ラクナ梗塞は全脳梗塞の13〜20%を占め、そして通常は皮質下大脳および脳幹の小末端血管構造に影響を及ぼす。ラクナ梗塞は一般に、小血管疾患、例えば糖尿病および高血圧症を有する患者に起こる。小塞栓または脂肪硝子様変性症と呼ばれるin situプロセスは、ラクナ梗塞を引き起こすと考えられる。最も一般的なラクナ症候群としては、純運動、純感覚および運動失調性片側麻痺性卒中が挙げられる。それらの小サイズおよび明確な皮質下位置のために、ラクナ梗塞は、認知、記憶、発語、または意識レベルの障害をもたらさない。
【0010】
血栓性閉塞のもっとも一般的部位は、特に内頚動脈の分布における脳動脈枝点である。動脈狭窄(即ち、乱流血流)、アテローム硬化症(即ち、潰瘍化プラーク)ならびに血小板粘着は、動脈を塞栓形成するかまたは閉塞する血餅の形成を生じる。血栓のあまり一般的でない原因としては、赤血球増加症、鎌状赤血球貧血、プロテインC欠乏症、脳動脈の繊維筋性異形成、ならびに片頭痛障害による長期血管収縮が挙げられる。脳動脈の切開を生じる任意のプロセスは、血栓性卒中も引き起こし得る(例えば外傷、胸大動脈切開、動脈炎)。時折、狭窄または閉塞動脈に遠位の低還流、あるいは2つの脳動脈領域間の傷つき易い分水領域の低還流は、虚血性卒中を引き起こし得る。
【0011】
出血性卒中に関しては、脳内出血(ICH)および出血性卒中という用語は、この考察では互換的に用いられ、そして虚血性卒中の出血性転換とは別個の存在であるとみなされる。ICHは全卒中の約20%を占め、そして脳梗塞より高い死亡率に関連する。出血性卒中患者は類似の病巣性神経学的欠陥を呈するが、しかし虚血性卒中患者より加減が悪い傾向がある。脳内出血患者はたいてい、頭痛、精神状態変容、癲癇発作、悪心および嘔吐、および/または顕著な高血圧を有する;しかしながらこれらの知見の中で、出血性卒中と虚血性卒中との間を確かに区別するものはない。
【0012】
ICHにおいて、出血は直接、脳実質中に生じる。通常メカニズムは、慢性高血圧により損傷された小脳内動脈からの漏出であると考えられる。その他のメカニズムとしては、出血素因、医原性抗凝血、大脳アミロイドーシスおよびコカイン乱用が挙げられる。ICHは、脳のある種の部位、例えば視床、被殻、小脳および脳幹に見出される傾向がある。出血により損傷される脳の領域のほかに、周囲の脳は血腫の質量作用により作り出される圧力により損害され得る。頭蓋内圧の全般的増大が起こり得る。出血性卒中に関する30日死亡率は、40〜80%である。全死亡の約50%は、最初の48時間以内に起こる。
【0013】
CNS病変に関するその他の原因、例えば外傷およびCNSの種々の疾患は、寛容的に既知である。
【0014】
CNS病変の治療は、神経形成、即ち問題の患者の組織の領域におけるニューロンの(再)生成、例えば中枢神経系病変における損傷ニューロンの置換(これに限定されない)に関係する。残念ながら、ニューロン(CNS)組織は、その限定修復/再生能力に関して周知である。成人における新規のニューロンの生成は、2つの領域、即ち側脳室を裏打ちするSVZおよび歯状回の顆粒下域に大きく限定される。SVZから移動した内因性前駆体幹細胞に起因する限定ニューロン置換が実証されている。
【0015】
ある種の神経形成方法を用いていくつかの初期の成功が報告されているが、しかしこれらの方法は臨床的に上首尾であったわけではない。したがって必要なものは、中枢神経系の治療のために当該技術分野で特筆された問題を克服する方法および組成物である。
【発明の開示】
【0016】
発明の要約
一態様では、本発明は、ニューロン前駆体細胞を提供し;そして患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患した患者にニューロン前駆体細胞を投与することを包含する方法に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、患者へのニューロン前駆体細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在するニューロン前駆体細胞;ならびに製薬上許容可能な担体を含む移植片形成単位に関する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を提供し;そして患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患している患者に骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を投与することを包含する方法に関する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、患者への骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在する骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞;ならびに製薬上許容可能な担体を含む移植片形成単位に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
A. 序論
上記の問題および制限は、本明細書中に開示される本発明を実施することにより克服され得る、ということを、本発明人等は、意外にもそして驚いたことに、発見した。特に、NPCおよび/またはMNCを提供し、中枢神経系病変を罹患している患者に、患者の機能的回復を促すのに十分な量でそれらのNPCおよび/またはMNCを投与することが可能である、ということを、本発明人等は意外にも発見した。
【0021】
本明細書中で開示されるアプローチは、従来技術を上回るいくつかの利点を有する。先ず、それは、患者別ベースで中枢神経系病変を修復するよう医者に外科的手法を適応させ得る用量‐応答関係を提供する。第二に、それは、移植への同種異系アプローチを提供する。これは、NPCおよび/またはMNCおよび/または移植片形成単位を特性化し、そして細胞バッチおよび移植手順の両方に関してGFU対GFU(あるいはNPC対NPCまたはMNC対MNC)一貫性を提供するために有用である。さらにNPCの使用は、他の多能性細胞の使用と比較して、中枢神経系のより精確な再構築を可能にする。これは、分化する場合、他の細胞型に分化するというよりむしろ、他の型の多能性細胞より多くの有意の大多数のニューロン前駆体細胞がニューロン細胞の細胞運命を受け入れるためである。これは、移植結果全体に制御を提供使用とする場合に重要であり得るし、そして移植細胞の望ましくない(または非分化)増殖の可能性を制限する。さらに、その細胞が機能的回復改善を提供し得るより分化した多能性細胞であるため、MNCの使用が望ましい。
【0022】
ここで、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
定義
本明細書中に引用される出版物はすべて、各々の個々の出版物が特定的に且つ個別に参考文献により援用されることが示されたように、すべての目的のためにそしてそれらの全記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0024】
「投与する」とは、患者にNPCおよび/または本発明の移植片を提供することを意味する。
【0025】
「領域」とは、区域または限定容積を意味する。例えば中枢神経系の領域は、中枢神経系中に位置する区域または限定容積である。
【0026】
「中枢神経系虚血性事象」または「CNS虚血性事象」とは、患者の中枢神経系の領域への血流の欠如または生理学的有意の低減を生じる任意の出来事を意味する。好ましい一実施形態では、CNS虚血性事象は虚血性卒中を含む。
【0027】
「中枢神経系病変」または「CNS病変」とは、CNS虚血性事象によりまたは出血(例えば好ましい一実施形態では、出血性卒中)により損害される、損害、機能不全または罹患中枢神経系組織の領域、あるいはこのような損害、機能不全または罹患中枢神経系組織周囲の境界域を意味する。
【0028】
「中枢神経系組織」とは、中枢神経系に慣用的に関連する組織を意味する。脳組織および脊髄組織は、中枢神経系組織の非限定例である。本発明のある種の実施形態は、虚血性事象により損害された中枢神経系組織に関する。このような損害は、慣用的に理解されるように、酸素剥奪、ならびにその他の関連カスケードおよびこのような剥奪および関連カスケードの副産物により起こり得る。
【0029】
「機能的回復」とは、その機能に特徴的な神経生物学的パラメーター(即ちCBF、EEG、皮質拡張等)の測定により、あるいは挙動機能(例えば本明細書中に開示されるかまたは当該技術分野で既知のねずみモデルまたはその他のモデルにおける立ち上がりまたは聴覚性驚愕)の測定により確定した場合のCNS病変に関するCNS機能の回復を意味する。回復は、正常または対照集団において観察される値を概算するための測定変数の傾向により確定される。機能的回復は完全であり得る、即ち、適切な統計学的方法により測定した場合、回復は測定パラメーターの値を正常または対照集団で観察される値に戻す。機能的回復は、不完全であるかまたは部分的でもあり得る。例えば患者は、測定パラメーターの完全な機能的回復、あるいは75%回復または50%回復等を経験し得る。
【0030】
「中枢神経系の機能的回復領域」とは、以前は病変に関与し、その後、本発明の実施により機能的に回復されるCNS組織を意味する。
【0031】
「移植片形成単位」または「GFU」とは、(1)NPCおよび/またはMNCを製薬上許容可能な担体と一緒に含み、(2)患者への投与のために意図される組成物を意味する。好ましい一実施形態では、NPCおよびMNCの混合物は意図されたように発現される。他の好ましい実施形態では、NPCは実質的にMNCを伴わずに存在する。さらに他の好ましい実施形態では、MNCは実質的にNPCを伴わずに存在する。
【0032】
「骨髄付着幹細胞」とは、種々の細胞型:骨細胞(osteocyte)、軟骨細胞(chondrocyte)、脂肪細胞(adipocyte)、ならびに他の種類の結合組織細胞、例えば腱中の細胞:を生じる有糸分裂的多能性細胞の一型を意味する。
【0033】
「MASC由来ニューロン細胞(MNC)」とは、(1)骨髄付着幹細胞に由来する、ならびに(2)ニューロンマーカーを免疫組織化学的に発現氏、そして電気生理学的分析においてニューロン特性を示す有糸分裂後ニューロンを意味する。in vitroでMNCを生成する適切な方法は、PCT/JP03/01260に見出され得る。当該技術分野で既知の他の技法を用いて産生されるMNCも、それらが本明細書中に記述されるMNCの定義を満たす限り、本発明の実施に用いられ得る。一実施形態では、ヒトMNCは、MAP‐2+、神経細繊維‐M+およびベータチューブリンIII+(即ちTuJ‐1+)である。これらのマーカーは、PCT/JP03/01260中に開示された技法を用いたMNCの産生後にFACSを用いてMNCを単離するために用いられ得る。MNCの取り扱いの適切な方法は慣用的に既知であり、例としては、米国特許第6,833,269号(Carpenter)に開示された方法が挙げられる。
【0034】
「MCAo」とは、大脳中央動脈閉塞を意味する。
【0035】
「MCAl」とは、大脳中央動脈結紮を意味する。
【0036】
「神経形成」とは、問題の患者の組織の領域におけるニューロンおよびニューロン組織の(再)生成、例えば中枢神経系病変における損傷ニューロンの置換(これに限定されない)を意味する。
【0037】
「ニューロン前駆体細胞(NPC)」とは、有糸分裂的であり、ニューロン前駆体/神経始原細胞に特異的ネスチンおよびその他の細胞マーカーを発現し、そしてMASC由来である細胞を意味する。NPCは、ニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞、ならびに前期のいずれかの前駆体に分化し得る。一実施形態では、NPCは、PCT/JP03/01260に開示された方法に従って骨髄付着幹細胞(MASC)から産生され得る。当該技術分野で既知の他の技法を用いて産生されるNPCも、それらが本明細書中に記述されたNPCの定義を満たす限り、本発明の実施に用いられ得る。好ましくはNPCはヒトNPCを含むが、しかし他の哺乳類種のNPCも本発明の範囲内に包含される。一実施形態では、NPC、好ましくはヒトNPCは、CD29+、CD90+、CD105+、CD31−、CD34−およびCD45−である。これらのマーカーは、PCT/JP03/01260中に開示された技法を用いたNPCの産生後にFACSを用いてNPC、好ましくはヒトNPCを単離するために用いられ得る。NPCの取り扱いの適切な方法は慣用的に既知であり、例としては、公開済み米国特許出願第20020012903号(Goldman等)に開示された方法が挙げられる。
【0038】
「ニューロン(単数または複数)」とは、1つまたは複数の樹状突起および単一軸索を有する有核細胞体からなる、脳、脊柱および神経を構成するインパルス伝達細胞のいずれかを意味する。生化学的に、ニューロンは、Map、神経細繊維‐Mおよびベータ・チューブリンIII(TuJ‐1)に対する抗体との反応により特性化される。神経細胞は、神経伝達物質シンセターゼまたは神経伝達物質関連タンパク質の存在により、そして神経伝達物質、例えば神経ペプチドYおよびサブスタンスPの分泌によっても特性化される。
【0039】
「ニューロンの」とは、ニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞、ならびに前記のいずれかの前駆体を意味する。
【0040】
「患者」とは、疾患または障害のための治療を必要とする動物、典型的には哺乳類、さらに典型的にはヒトを意味する。
【0041】
「製薬上許容可能な担体」とは、NPCの、またはMNCの製剤投与と適合性である任意のおよびすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌薬、抗真菌薬、凍結保護物質、等張および吸収遅延薬等を意味する。このような媒質および作用物質の使用は、当該技術分野で周知である。任意の慣用的媒質または作用物質がNPCと、またはMNCと非適合性である限りを除いて、本発明のGFU中でのその使用が意図される。
【0042】
「全身的に」とは、患者の至るところ、あるいは患者の実質的部分の至るところを意味する。
【0043】
「組織」とは、類似の構造および機能を有する細胞の集合体から成る生物体の一部を意味する。本発明による好ましい組織は、神経組織である。
【0044】
「TGI」とは、一過性全虚血を意味する。
【0045】
「移植(transplantation)」(「(engraftment)」と同義的に用いられる)は、患者の一領域における非内因性細胞の配置を意味する。移植は同種異系であり得るし、あるいは非自己細胞が移植される。移植は自己由来でもあり得るし、あるいは例えば同一患者において、一組織から別の組織に、自己細胞が移植される。
【0046】
「分化転換される(transdifferentiated)」とは、その細胞型と古典的に関連したものとは異なる系列に沿った細胞の発達を意味する。
【0047】
A. NPCならびにその製剤組成物
一実施形態では、NPCは、患者に移植されるGFUの一部として、本発明の実施に用いられる。その意図は、NPCは増殖し、患者の中枢神経系病変の機能的回復において一役を演じるニューロン細胞に分化する、ということである。例えばNPCは、損害内因性ニューロンに取って代わるニューロンに分化し得る。あるいはNPCは、増殖因子を分泌する神経膠細胞またはニューロンに分化し得る。これらの増殖因子は、損害ニューロンに及ぼす栄養活性を有し、そしてそれらの機能的回復を手助けし得る。そのようにして、中枢神経系病変の治療が可能である。
【0048】
好ましいNPCならびにこのようなNPCを提供する好ましい方法は、PCT/JP03/01260(Dezawa等)(表題:Method of Differentiating/Inducing Bone Marrow Interstitial Cells into Nerve Cells and Skeleton Muscle Cells by Transferring Notch Gene (“Dezawa”))に開示されている。特に、Dezawa全体に、そして特に実施例7に記載されるようなDezawaの「ニューロン前駆体細胞」は、本発明のNPCとして用いられ得る。MASCは、その場合、本発明のNPCとして有用であるニューロン前駆体細胞に分化転換され得る、ということを、Dezawaは開示する。
【0049】
実施形態では、GFUは、本発明の実施において有用であり得る。本発明のGFUに有用な製薬上許容可能な担体としては、以下のものが挙げられる:滅菌等張緩衝液、FRS、イソライト、滅菌希釈液、例えば水、通常生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗細菌または抗真菌薬、例えばアスコルビン酸、チメロサール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、ナリジクス酸、馬尿酸メセナミンまたはニトロフラントインマクロクリスタル等;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整され得る。
【0050】
一実施形態では、本発明で用いるのに適した移植片形成単位は、NPCを含む滅菌組成物を含む。静脈内投与に関して、適切な製薬上許容可能な担体としては、生理食塩溶液、ノルマゾル(normasol)、イソライト、プラズマライトまたはリン酸塩緩衝生理食塩溶液(PBS)が挙げられる。すべての場合、GFUは滅菌性でなければならず(存在する任意のNPCまたはMNC以外)、そして易注射可能性が存在する程度に流動性である必要がある(適正な流動性は、例えばレシチンのような物質を用いることにより、分散液の場合はある粒子サイズを保持することにより、そして界面活性剤を含むことにより、保持され得る)。GFUは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして上記のような微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。ある種の場合、GFU中に、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、塩化ナトリウム、LiCl、酪酸Naおよびオルトバナジウム酸ナトリウムを含むことが好ましい。一般的に、本発明のGFUは、塩基性分散媒質および任意に上で列挙されたものからの他の成分を含有する滅菌ビヒクル中にNPCを組入れることにより調製され得る。
【0051】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、移植片形成単位剤形中に本発明のGFUを処方することは、特に有益である。移植片形成単位剤形は、本明細書中で用いる場合、治療されるべき被験者に関する単位投薬量として適合される物理的離散単位を指す。一実施形態では、各GFU剤形は、必要な製剤担体と関連して所望の治療作用を生じるよう算定された予定量のNPCを含有する。本発明の移植片形成単位剤形に関する細目は、NPCの独特の特質、達成されるべき特定の治療作用、ならびに個体の治療のためのNPCの調合の技術分野に固有の制限によって、ならびに直接的に、指図される。各移植片単位剤形中のNPCの数は、好ましくは約1000細胞から約10億細胞、好ましくは約10,000細胞から約1億細胞、さらに好ましくは約50,000細胞から約5000万細胞まで変わり得る。各移植片単位剤形中のNPCの濃度は、好ましくは約100細胞/μL〜約100,000細胞/μL、さらに好ましくは約1,000細胞/μL〜約50,000細胞/μLまで変わり得る。
【0052】
GFUは、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための計器と一緒に含まれ得る。移植片は、好ましくは約37℃で保存される。
【0053】
ある種の実施形態では、移植前にNPCを標識することが望まれ得る。これは、移植NPCの移動、移植NPCの分化、移植NPCの生存等を追跡するために、前臨床的(即ち非ヒト)モデルにおいて望まれ得る。種々の細胞標識方法が、標識が読み取られるものである前臨床環境によって用いられ得る。例えば蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質等)は、検出器が移植片部位近くに適切に配置され得る環境においてと同様に用いられ得る。
【0054】
非臨床状況において移植脳を分析する場合、免疫組織化学分析が有用であり得る。一実施形態では、脳切片は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその他の細胞標識、β‐チューブリンIII、NeuN(ニューロン特異的タンパク質)、神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)またはO4(乏突起神経膠細胞特異的タンパク質)に関して二重免疫染色されて、ニューロン、星状細胞、神経膠細胞または乏突起神経膠細胞プロフィールを同定し得る。所定の抗体に関する陽性プロフィールの数、ならびにGFPを発現する細胞の数は、Abercrombie校正基準に従って概算され得る。分布容積および総GFP(または他の標識)陽性プロフィールは、5切片毎における少なくとも10%のGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の面積を確定し、そしてGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の前面からの距離を掛けることにより、算定され得る。
【0055】
一実施形態では、GFPを用いてNPCを標識する場合、以下の物質が有用である:
【0056】
物質:冷凍保存NPC、PBS(Invitrogen 14190-136)、HTS‐FRS(BioLife Solution 99-609-DV)、GFP‐レンチウイルスストック懸濁液(約107/mlの力価を有する)、臭化ヘキサミジン(ポリブレン)(Sigma(H-9268)-1
または2凍結アリコート@10 mg/ml)、滅菌水、USP、Opti‐MEM(Invitrogen)、およびウシ胎仔血清(Hyclone)。
【0057】
GFP‐レンチウイルスストック懸濁液は市販されているし、あるいは市販のキット、例えばViraPowerレンチウイルス発現系(Invitrogen, Carlsbad、 CAから入手可能)を用いて作製され得る。特にpLenti6/V5 Gatewayベクターは、メーカーの指示に従って、GFPカセットと組合せされて、結局、適切なGFP‐レンチウイルス懸濁液を生じ得る。
【0058】
一実施形態では、標識は、上記のInvitrogen系のようなメーカーから入手可能なトランスフェクションプロトコールに従って実施され得る。
【0059】
別の実施形態では、GFPを用いて標識する場合、以下の方法が有用であり得る:細胞取り扱い手順は、遠心分離ステップを除いて、好ましくはBiohazard Safety Cabinet Level-2で実施される。ポリブレンストック溶液は、滅菌水、USP1 ml中にポリブレン10 mgを溶解し、そして0.25ミクロンフィルターを通して濾過することにより調製され得る。その結果生じる濾過ストック溶液は、アリコートに分けられて、−20℃で光から保護されて保存され得る。
【0060】
ウイルス感染前日、200万細胞/フラスコの密度で細胞培地30 mlを含有するT225フラスコ中でNPCをプレート化し;そして37℃/5%CO2インキュベーター中で一晩、細胞を培養する。
【0061】
ウイルス感染当日、室温でレンチウイルスストックを、そして37℃水浴中でポリブレンストック溶液を解凍する。50 mlファルコン管中で、アルファMEM中加温前(37℃)10%FBS45 mlおよび解凍ウイルスストック5 mlを付加して、約10のMOIを有する培地を得る。10 ug/ml(1,000×希釈)の最終濃度で解凍ポリブレンを付加する。T225フラスコから古い培地を除去し、ウイルス混合物をフラスコに付加し、静かに3〜4回前後に揺する。フラスコを37℃/5%CO2インキュベーター中に戻す。
【0062】
翌日、フラスコからウイルス培地を完全に除去する。アルファMEM中の10%FBSで6×30 mlを洗浄する。感染性試験のために、各洗浄から5 mlを収集する。新しい培地に取り替えて、フラスコをインキュベーター中に戻す。
【0063】
次の日、ウイルス感染細胞を収穫し、計数して、それらをHTS‐FRS中の総容積360 ulに再懸濁して、1.5 ml滅菌DNアーゼ無含有RNアーゼ無含有、発熱物質無含有遠心分離管に移す。適切な移植容積と釣り合うよう、感染細胞濃度が設定され得る。次に細胞は、移植片投与のために用いるまで、湿潤氷上に保持され得る。
【0064】
B. MNC、およびその製剤組成物
一実施形態では、MNCは、患者に移植される移植片の一部として、本発明の実施に用いられる。その意図は、MNCは、問題の患者の組織の領域の機能的回復において一役を演じる、ということである。そのようにして、中枢神経系病変の治療が可能である。
【0065】
好ましいMNCならびにこのようなMNCを提供する好ましい方法は、PCT/JP03/01260(Dezawa等)(表題:Method of Differentiating/Inducing Bone Marrow Interstitial Cells into Nerve Cells and Skeleton Muscle Cells by Transferring Notch Gene (“Dezawa”))に開示されている。特に、Dezawa全体に、そして特に実施例1に記載されるようなDezawaの「神経細胞」は、本発明のMNCとして用いられ得る。骨髄付着幹細胞は、その場合、本発明のMNCとして有用であるニューロン細胞に分化転換され得る、ということを、Dezawaは開示する。
【0066】
好ましい一実施形態では、MNCは、神経栄養性作用物質を用いてNPCから生成され得る。有用な神経栄養作用物質としては、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)および毛様体神経栄養因子(CNTF)が挙げられるが、これらに限定されない。神経栄養作用物質をin vitroでNPCとともに用いる適切な方法は、PCT/JP03/01260に見出され得る。
【0067】
実施形態では、GFUは、本発明の実施において有用であり得る。本発明のGFUに有用な製薬上許容可能な担体としては、以下のものが挙げられる:滅菌等張緩衝液、FRS、イソライト、滅菌希釈液、例えば水、通常生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗細菌または抗真菌薬、例えばアスコルビン酸、チメロサール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、ナリジクス酸、馬尿酸メセナミンまたはニトロフラントインマクロクリスタル等;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整され得る。
【0068】
一実施形態では、本発明で用いるのに適した移植片形成単位は、MNCを含む滅菌組成物を含む。静脈内投与に関して、適切な製薬上許容可能な担体としては、生理食塩溶液、クレモフォアEL.TM.(BASF;Parsippany, N.J.)、ノルマゾル(normasol)、イソライト、プラズマライトまたはリン酸塩緩衝生理食塩溶液(PBS)が挙げられ得る。すべての場合、GFUは滅菌性でなければならず(存在する任意のNPCまたはMNC以外)、そして易注射可能性が存在する程度に流動性である必要がある(適正な流動性は、例えばレシチンのような物質を用いることにより、分散液の場合はある粒子サイズを保持することにより、そして界面活性剤を含むことにより、保持され得る)。GFUは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして上記のような微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。ある種の場合、GFU中に、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、塩化ナトリウム、LiCl、酪酸Naおよびオルトバナジウム酸ナトリウムを含むことが好ましい。一般的に、本発明のGFUは、塩基性分散媒質および任意に上で列挙されたものからの他の成分を含有する滅菌ビヒクル中にNPCを組入れることにより調製され得る。
【0069】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、移植片形成単位剤形中に本発明のGFUを処方することは、特に有益である。移植片形成単位剤形は、本明細書中で用いる場合、治療されるべき被験者に関する単位投薬量として適合される物理的離散単位を指す。一実施形態では、各GFU剤形は、必要な製剤担体と関連して所望の治療作用を生じるよう算定された予定量のMNCを含有する。本発明の移植片形成単位剤形に関する細目は、MNCの独特の特質、達成されるべき特定の治療作用、ならびに個体の治療のためのMNCの調合の技術分野に固有の制限によって、ならびに直接的に、指図される。各移植片単位剤形中のMNCの数は、好ましくは約1000細胞から約10億細胞、好ましくは約10,000細胞から約1億細胞、さらに好ましくは約50,000細胞から約5000万細胞まで変わり得る。各移植片単位剤形中のMNCの濃度は、好ましくは約100細胞/μL〜約100,000細胞/μL、さらに好ましくは約1,000細胞/μL〜約50,000細胞/μLまで変わり得る。
【0070】
GFUは、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための計器と一緒に含まれ得る。移植片は、好ましくは約4℃で保存される。
【0071】
ある種の非臨床的実施形態では、移植前にMNCを標識することが望まれ得る。これは、移植MNCの移動、移植MNCへのさらなる変化、移植MNCの生存等を追跡するために、望まれ得る。種々の細胞標識方法が、標識が読み取られるものである前臨床環境によって用いられ得る。例えば蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質等)は、検出器が移植片部位近くに適切に配置され得る環境においてと同様に用いられ得る。標識は、慣用的方法、例えば上記のInvitrogenGFP‐レンチウイルス系を用いて実施され得る。
【0072】
非臨床状況において移植脳を分析する場合、免疫組織化学分析が有用であり得る。一実施形態では、脳切片は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその他の細胞標識、β‐チューブリンIII、NeuN(ニューロン特異的タンパク質)、神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)またはO4(乏突起神経膠細胞特異的タンパク質)に関して二重免疫染色されて、ニューロン、星状細胞、神経膠細胞または乏突起神経膠細胞プロフィールを同定し得る。所定の抗体に関する陽性プロフィールの数、ならびにGFPを発現する細胞の数は、Abercrombie校正基準に従って概算され得る。分布容積および総GFP(または他の標識)陽性プロフィールは、5切片毎における少なくとも10%のGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の面積を確定し、そしてGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の前面からの距離を掛けることにより、算定され得る。一実施形態では、MNCは、pBabe neo‐GFPベクターを介してレトロウイルス感染を用いて蛍光的に標識され得る(M. Dezawa et al., ”Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of in vitro differentiated bone-marrow stromal cells.” Eur J Neurosci. 2001; 14: 1771-6)。本手順は、他の蛍光タンパク質がベクター中に組入れられ得るよう、修正され得る。
【0073】
C. NPC移植
一実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され得るし、そして患者に投与されるべきNPCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のNPCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0074】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0075】
本発明のNPCおよび/またはGFUは患者に全身投与され得るが、この場合、非経口投与、例えば静脈内(i.v.)または動脈内(例えば内頸または外頸動脈を介する)投与が好ましい全身投与経路である。全身投与技法は、前駆体細胞、一般的に例えばD Lu et al., ”Intraarterial administration of marrow stromal cells in a rat model of traumatic brain injury.” J Neurotrauma. 2001 Aug; 18 (8): 813-9に開示されたものを投与するために用いられる技法から適合され得る。
【0076】
実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所的に投与され得る。好ましい実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にNPCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるNPCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのNPCのより精確なターゲッティングである。
【0077】
中枢神経系病変に移植する場合、移植は、定位的外科的手順を用いて実行され得る。このような手順では、患者は麻酔される。患者の頭部はMRI適合性定位枠中に置かれ、そしてマイクロインジェクターを有するマイクロポジショナーは頭蓋上に配置される。標的部位の真上の硬膜の領域を露出するために、歯科用ドリルまたはその他の適切な器具を用いて、患者の頭蓋骨にバー・ホール(burr hole)を作り得る。
【0078】
一実施形態では、26‐ゲージ針およびHamilton微量注射器(またはその他の適切なサイズの注射器)を用いた針通路が作製され、この場合、針はMRI画像を用いて移植片部位に手動で導かれて、NPCおよび/またはGFUの適正な配置を保証する。注射、好ましくはボーラス注射は、移植片部位(単数または複数)になされ得る。注入速度は変わり得るし、好ましくは注入容積は約0.1〜約10 μL/分、さらに好ましくは約0.5〜約5 μL/分、さらに好ましくは約1.0〜約3.0 μL/分である。一実施形態では、針は、注入後一定期間、好ましくは約1〜約10分間、さらに好ましくは約5分間、適所に残され得る。その期間後、針が適所に残される場合、針は短距離、好ましくは約1 mm〜約10 mm、さらに好ましくは約2 mm、引張り上げられ、そして次に、さらなる期間、好ましくは約5分〜約30分、さらに好ましくは約15分間、適所に保持され得る。次に注射器が患者から除去され、創傷部位が解剖層中に閉鎖され、患者は麻酔からの回復のためにモニタリングされ得る。
【0079】
鎮痛薬(例えばブプレノルフィン)および抗生物質(例えばセファゾリン、50 mg/kg、IM、1日2回×5日)が、必要な場合、外科手術/術後手順の一部として投与され得る。抗生物質治療は、術後、長期間、好ましくは術後30日まで継続されて、日和見感染を抑制し得る。
【0080】
移植のための付加的技法は、K S Bankiewicz et al., ”Technique for bilateral intracranial implantation of cells in monkeys using an automated delivery system.” Cell Transplantation, 9 (5): 595-607 (2000)に見出され得る。
【0081】
ある種の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の移植片および/またはNPCと一緒に投与され得る。これらの薬は、特に移植片および/またはNPCが全身投与される場合、患者の免疫系によるNPCの拒絶を抑制するのを手助けし得る。本発明の実施に有用な免疫抑制薬の例としては、抗代謝物質、例えばアザチオプリン、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセートまたはメルカプトプリン(6‐MP)、ミコフェノレート(CellCept)、シクロスポリン‐Aおよびタクロリムス(FK‐506)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい免疫抑制薬はCsAである。CsAは、例えばSandimmune(登録商標), Injection;Novartis Pharmaceuticals Corporation(Novartis), East Hanover, NJ;製造元:Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandのように種々の供給元から入手し得る。
【0082】
免疫抑制薬は、種々の経路により、例えば経口的、腹腔内および静脈内により投与され得る。免疫抑制薬の用量投与は、免疫抑制薬の性質および患者により変わり得る。一実施形態では、免疫抑制薬は、移植当日に開始し(処置後約4時間)、その後24時間間隔で継続して用量投与され得る。投薬量範囲は、好ましくは約0.5 mg/kg/日から約100 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約50 mg/kg/日まで変わり得る。静脈内注射は、好ましくは約0.005〜約0.100 μL/分、さらに好ましくは約0.050 μL/分の範囲の流量で、ボーラスとして投与され得る。
【0083】
本発明のNPCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され、そして患者に投与されるべきNPCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のNPCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0084】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0085】
実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所投与され得る。好ましい一実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にNPCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるNPCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのNPCのより精確なターゲッティングである。
【0086】
D. MASC由来ニューロン細胞移植
一実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され得るし、そして患者に投与されるべきMNCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のMNCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0087】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0088】
実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所的に投与され得る。好ましい実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にMNCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるMNCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのMNCのより精確なターゲッティングである。
【0089】
中枢神経系病変に移植する場合、移植は、定位的外科的手順を用いて実行され得る。このような手順では、患者は麻酔される。患者の頭部はMRI適合性定位枠中に置かれ、そしてマイクロインジェクターを有するマイクロポジショナーは頭蓋上に配置される。標的部位の真上の硬膜の領域を露出するために、歯科用ドリルまたはその他の適切な器具を用いて、患者の頭蓋骨にバー・ホールを作り得る。
【0090】
一実施形態では、26‐ゲージ針およびHamilton微量注射器(またはその他の適切なサイズの注射器)を用いた針通路が作製され、この場合、針はMRI画像を用いて移植片部位に手動で導かれて、MNCおよび/またはGFUの適正な配置を保証する。注射、好ましくはボーラス注射は、移植片部位(単数または複数)になされ得る。注入は変わり得るし、好ましくは注入容積は約0.1〜約10 μL/分、さらに好ましくは約0.5〜約5 μL/分、さらに好ましくは約1.0〜約3.0 μL/分である。一実施形態では、針は、注入後一定期間、好ましくは約1〜約10分間、さらに好ましくは約5分間、適所に残され得る。その期間後、針が適所に残される場合、針は短距離、好ましくは約1 mm〜約10 mm、さらに好ましくは約2 mm、引張り上げられ、そして次に、さらなる期間、好ましくは約5分〜約30分、さらに好ましくは約15分間、適所に保持され得る。次に注射器が患者から除去され、創傷部位が解剖層中に閉鎖され、患者は麻酔からの回復のためにモニタリングされ得る。
【0091】
鎮痛薬(例えばブプレノルフィン)および抗生物質(例えばセファゾリン、50 mg/kg、IM、1日2回×5日)が、必要な場合、外科手術/術後手順の一部として投与され得る。抗生物質治療は、術後、長期間、好ましくは術後30日まで継続されて、日和見感染を抑制し得る。
【0092】
移植のための付加的技法は、K S Bankiewicz et al., ”Technique for bilateral intracranial implantation of cells in monkeys using an automated delivery system.” Cell Transplantation, 9 (5): 595-607 (2000)に見出され得る。
【0093】
ある種の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の移植片および/またはMNCと一緒に投与され得る。これらの薬は、患者の免疫系によるMNCの拒絶を抑制するのを手助けし得る。本発明の実施に有用な免疫抑制薬の例としては、抗代謝物質、例えばアザチオプリン、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセートまたはメルカプトプリン(6‐MP)、ミコフェノレート(CellCept)、シクロスポリン‐Aおよびタクロリムス(FK‐506)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい免疫抑制薬はCsAである。CsAは、例えばSandimmune(登録商標), Injection;Novartis Pharmaceuticals Corporation(Novartis), East Hanover, NJ;製造元:Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandのように種々の供給元から入手し得る。
【0094】
免疫抑制薬は、種々の経路により、例えば経口的、腹腔内および静脈内により投与され得る。免疫抑制薬の用量投与は、免疫抑制薬の性質および患者により変わり得る。一実施形態では、免疫抑制薬は移植の2日前に用量投与され、その後、適切な間隔で継続する。一実施形態では、免疫抑制薬は、移植当日に開始し(処置後約4時間)、その後24時間間隔で継続して用量投与され得る。投薬量範囲は、好ましくは約0.5 mg/kg/日から約100 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約75 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約50 mg/kg日まで変わり得る。静脈内注射は、好ましくは約0.005〜約0.100 μL/分、さらに好ましくは約0.050 μL/分の範囲の流量で、ボーラスとして投与され得る。
【0095】
E. NPCの実験的観察および利点
NPCを含む製剤組成物を含めたNPCの自家および異系間移植の両方は本発明により意図されるが、しかし異系間移植(同一種移植片形成単位)が好ましい。一実施形態では、異系間移植は、中枢神経系病変に罹患している患者におけるNPCの異系間移植が起こり得る臨床設定を模倣する。本明細書中に開示されるのは、中脳動脈閉塞(MCAo)、中脳動脈結紮(MCAl)または一過性全虚血(TGI)に付された成体雄Sprague-Dawleyラットの脳への本発明によるNPCの定位的移植からの結果である。これらのモデルは、中枢神経系病変の治療における本発明の効能を理解するのに有用である。これらのモデルのさらなる考察は、文献中に、特にC. Borlongan et al., ”Transplantation of cryopreserved human embryonal carcinoma-derived neurons (NT2N cells) promotes functional recovery in ischemic rats.” Exp Neurol. 1998; 149: 310-21;およびC. Borlongan et al., ”Glial cell survival is enhanced during melanonin-induced neuroprotection against cerebral ischemia.” FASEB J. 2000; 14: 1307-17に見出され得る。各卒中動物は、3つの細胞投与量:すなわち約40,000、100,000および200,000生育可能NPC(これらの数は、本明細書中で以後用いられる場合、およその数値であると理解される):のうちの1つを含む移植片を受容した。移植は、卒中後約6週間で実行され、そして動物は、移植後生存期間中ずっと、シクロスポリンA(10 mg/kg、腹腔内)で毎日免疫抑制された。移植ラットの運動および認知遂行が移植後4週間の期間に亘って毎週、そして移植後12週目にもう一度、特性化された。脳虚血および移植片生存の程度についての組織学的検査は、移植後5週および12週目に無作為選択動物で検査した。
【0096】
以下でさらに詳細に記述されるような卒中手術および移植手順の両方の結果確定に、以下の試験が用いられた。これらの試験の実施方法は本明細書中の他の箇所に記述されており、さらにまた当業者に理解され得る。
【0097】
【表1】
【0098】
以下の実施例で得られるデータは、試験したモデルにおいて、NPCを移植された動物は、それらの移植前ベースライン遂行と比較して、運動および認知遂行の両方において有意の改善を示す、ということを明示した。約100,000および200,000細胞というより高いほうの2つの用量は、約40,000細胞という低いほうの細胞投与量と比較して、より良好な挙動作用を促し、したがって用量‐応答関係を示唆する。卒中誘導性挙動欠陥からの強靭な回復は、移植後1週間という早期に認められ、そして移植後4週間の期間に亘って持続される。運動遂行における有意の改善(上昇体スウィング試験およびBenderson試験を使用)は、3つの卒中型すべてで観察された。これに対して、認知遂行における有意の改善(Morris水迷路使用)は、MCAI移植動物と比較して、MCAoおよびTGI移植動物では、より強く且つ安定していた。卒中移植動物はすべて健康そうに見え、そして試験期間中に観察可能な挙動に顕れる悪作用を認められなかった。
【0099】
卒中の型は機能的回復における一因子であると思われ、この場合、卒中動物はすべて運動遂行における有意の改善を示すが、一方、MCAoおよびTGI移植動物は、MCAl移植動物と比較して、認知遂行におけるより良好な回復を示した。MCAoおよびTGI移植動物における運動および認知機能の両方の有意の回復の実証は、基底核および海馬損害を生じたこれら2つの卒中モデルはそれぞれ、NPC移植に対して応答性である、ということを示唆する。これらの観察の臨床的適用への外挿は、固定基底核および海馬卒中を有する患者はNPC移植から利益を得る、ということを示す。
【0100】
移植後5および12週目の組織学的結果は、NPC移植片生存が観察された機能的作用に介在した、ということを示す。データは、100,000および200,000NPCの移植が40,000細胞という低用量よりも良好な挙動回復を生じた、ということを示唆する。移植片生存および挙動作用間の相関分析は、NPCの生存が卒中動物における運動および認知回復を促進した、ということをさらに支持する。注釈のうち、移植片生存はレンチウイルス標識アプローチを用いて確定され、そしてこの戦略は移植NPCのマーキングに関して信頼がおけることが示された。さらにまた、この方法を用いて、NPC移動が容易に追跡された。
【0101】
卒中型によって、MCAoおよびMCAlの両方において認められるような、脳損害が重症であるほど、NPCの移動は良好である、と思われる。これに対して、TGIにより引き起こされる軽症脳損害は、より少ない細胞移動を生じたように見える。損傷の部位への長距離を移動するNPCの観察される能力は、特定卒中標的部位に移動するそしてそれに及ぼす修復作用を発揮するその能力を示す。以下の実施例で提供される結果は、移動するNPCがニューロン表現型により分化するように思われる、という見地を支持する。移動細胞のこの好ましい分化に清得た多数の因子が存在し、例としては宿主微小環境および卒中の型(細胞死の位置および程度/型)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
F. MNCの実験的観察および利点
MNCを含む製剤組成物を含めたMNCの自家および異系間移植の両方は本発明により意図されるが、しかし異系間移植(同一種移植片形成単位)が好ましい。一実施形態では、異系間移植は、中枢神経系病変に罹患している患者におけるMNCの異系間移植が起こり得る臨床設定を模倣する。卒中の動物モデルにおけるMNCの異系間委嘱の動物試験からの結果は、以下のセクションJに提示される。これらのモデルは、中枢神経系病変の治療における本発明の効能を理解するのに有用である。
【0103】
セクションJにおける結果は、対照およびMASC群と比較して、MNC群が挙動査定試験において有意の改善を示した、ということを示唆する。組織学的分析では、MCAo後41日目に測定された梗塞容積は3つの群の間の有意差を示さなかった。MASCと比較して、MNCはより高い生存率を実証し、そして大きな割合のMNCが宿主脳におけるニューロンマーカー陽性および神経突起延長を示した。
【0104】
MASC群は、対照群と比較して挙動査定試験におけるわずかな改善を実証したが、しかしNMC群ほど大きな改善ではなかった。
【0105】
本発明によるMNC移植の別の利点は、例えば多能性MASCと比較した場合の、MNCのより大きな生存率である。移植1ヵ月後、移植MNCの約30〜45%が検出されたが、一方、移植MASCは10〜20%が検出されただけであった。MNCのより大きな生存率が、機能的回復における利点を提供し得る。
【0106】
近年の研究では、皮質、線条体および海馬におけるいくつかのMNCは、宿主脳における神経炎の拡張を実証したが、これは、MASC群においては観察され得なかった。それゆえ、MNC群における有意の挙動改善は、移植MNCが宿主脳におけるニューロン特質を保持し、そしてMCAOラットモデルにおける機能的回復に寄与する、ということを示唆した。
【0107】
G. NPC実施例
本明細書中に記述される実施例は、本発明の範囲を例証するよう意図されるが、いかなる点においても本発明を限定するものではない。
【0108】
実験手順: 全動物に、最初にMCAo、MCAlまたはTGI卒中外科手術を施した。手術後約6週間目に、上昇体スウィング試験、Bederson試験およびMorris水迷路仕事で、動物を試験した。有意の運動欠陥を示す動物のみを、移植手術のためにその後用いて、以下の処置のうちの1つに無作為に割り当てた。試験の各部門に関する試料サイズを、表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
卒中手術を受けた動物すべてに、3針通路(MCAoおよびMCAl)または2針通路(TGI)の移植片を施して、シクロスポリンA(10 mg/kg、腹腔内)で毎日処置した。
【0111】
動物を、移植後最初の4週間、毎週試験した。脳梗塞、ならびに移植片生存、表現型発現および移動の組織学的分析のために、移植後5週目に、動物の半数を安楽死させた。残りの動物を再び挙動試験して、その後、NPCの長期挙動的および組織学的作用を査定するために、卒中後12週目に安楽死させた。明らかにするために、模式図を以下に提示する。
【0112】
【表3】
【0113】
GFP‐レンチウイルスベクター系を用いた細胞標識: GFP‐レンチウイルス系は、ジュネーブ大学(Geneva, Switzerland)のDidier Trono博士に提供して頂いた。以下の一般スキームに従って、NPCを標識した。方法には小変更を加えた。
【0114】
必要な材料
10 mg/mL ポリブレン・ストック溶液/滅菌濾過(Sigma)
Opti‐MEM培地(Gibco/Invitrogen)
1%ウシ胎仔血清(抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)含有)
6ウエルプレート約1×106 San-Bio細胞
ウイルス懸濁液
【0115】
詳細な手順
1. 37℃インキュベーター中で細胞培地を暖める。
2. ポリブレンを付加して、10 μg/mLとする(10 mg/mLポリブレン・ストック溶液10 μLを培地10 mLに付加する。ウエルを混合する)。
3. 別個の試験管中で、ポリブレンを含有する培地1 mLにウイルス懸濁液1 mLを付加する。
4. 37℃水浴中でSanBio細胞アリコートを迅速に解凍する。70%エタノールでウイルスをすすぐ;拭き取り乾燥する。
5. 全内容物を、予熱PBS10 mLを含有する15 mL遠心管に付加し;静かに混合して、低速臨床遠心分離機で、室温で5分、1000 RPMで回転する。
6. 上清を静かにピペット分取し、そしてウイルスを含有する予熱培地(ステップ3から)2 mL中に細胞ペレットを再懸濁する。
7. 6‐ウエルプレートの1ウエルに内容物を移し;37℃インキュベーター中に入れて;3時間インキュベートする。
8. 予熱PBS10 mL中で細胞を2回洗浄する。
9. 選択するPBSまたは培地20 μL中に細胞を再懸濁する。1.5 mLエッペンドルフ管に移す。氷上に保持する。細胞は移植の容易ができている。
【0116】
挙動試験: 本発明によるNPCの薬理学的試験において、動物を以下の感覚運動および認知挙動測定に付した:
上昇体スウィング試験(EBST)
Morris水迷路(MWM)
Bederson神経学的スケール
【0117】
上昇体スウィング試験(EBST)
上昇体スウィング試験(EBST)は、基本姿勢反射および非対称的体幹機能を測定する。EBST試験は、齧歯類におけるMCAoおよびMCAl虚血後の長期永続性欠陥を示すために実証された(C. Borlongan et al., ”Locomotor and passive avoidance deficits following occlusion of the middle cerebral artery.” Physiol Behav. 1995, 58: 909-17)。C. Borlongan et al., ”Early assessment of motor dysfunctions aids in successful occlusion of the middle cerebral artery.” Neuroreport. 1998b; 9: 3615-21も参照されたい。それは、慢性卒中に関する神経移植範例でも評価されている(C. Borlongan et al., ”Early assessment of motor dysfunctions aids in successful occlusion of the middle cerebral artery.” Neuroreport. 1998; 9: 3615-21)。
【0118】
EBSTは、その尾を持って動物を取り扱い、そしてスウィングの方向を記録することを包含する。試験装置は、透明プレキシガラス箱(40×40×35.5 cm)で構成された。動物を尾の基部で静かに摘み上げて、そして動物の鼻が表面上2インチ(5 cm)の高さになるまで、尾を持って上げた。動物の頭が身体の正中線位置から横に約10度移動したら1回、スウィングの方向(左または右)を計数した。1回スウィング後、動物をプレキシガラス箱に戻し入れ、そして30秒間自由に動かせた後、再試験する。通常、無傷ラットは50%スウィングバイアスを示し、即ち左へのスウィングと右へのスウィングは同数である。75%スウィングバイアスは、20試験中、一方向に15スウィングそして他方向に5スウィングを示す。EBSTを用いた前研究は、黒質線条体病変後1ヶ月目に、病変動物は>75%偏向スウィング活性を示し;非対称は6ヶ月までの間安定である、ということに注目した。
【0119】
Bederson神経学的検査
Bederson神経学的スケールは、感覚運動仕事を測定する(J. Bederson et al., ”Rat middle cerebral artery occlusion: evaluation of the model and development of a neurologic examination.” Stroke. 1986; 17: 472-6;M. Altumbabic, ”Intracerebral hemorrhage in the rat: effects of hematoma aspiration.” Stroke. 1998; 29: 1917-22)。前研究は、ラットにおけるMCAoおよびMCAl卒中モデルの両方においてBedersonモデルにより測定した場合の長時間に亘る測定可能な欠陥を示した。
【0120】
EBST後約1時間に、上記の手順に従ってBederson神経学的検査を実施する。以下を含めた4つの試験を用いて、各ラットに関する神経学的スコアを得る:
(a)0(旋回なし)から3(連続旋回)まで等級分けした同側性旋回の観察;
(b)対側性後肢退縮。これは、0(即時置換)から3(数分後置換または置換なし)まで等級分けした2〜3 cm側方に転置された後、後肢を置換する動物の能力を測定する;
(c)ビームウォーキング能力。0(幅2.4 cm、長さ80 cmのB無を容易に横断するラット)から3(10秒間ビーム上に留まることができないラット)まで等級分け;
(d)両側性前肢把握。これは、直径2 mmスチール棒上に保持する能力を測定する。0(正常前肢把握挙動を有するラット)から3(前肢で把握できないラット)まで等級分け。
【0121】
各査定日に約15分の時間に亘って実行する4つの試験すべてからのスコアを加えて、神経学的欠陥スコアを得る(最大可能スコア 12)。
【0122】
Morris水迷路(MWM)
Morris水迷路は、認知機能のいくつかの態様、例えば仕事習得および保持、検索戦略、ならびに保存を査定する。水迷路仕事は、線条体および前頭皮質を含めてMCAoにより罹患したいくつかの脳領域における損害に感受性であると推定される。
【0123】
Bederson神経学的検査の約1時間後、空間記憶を査定するために、動物をMorris水迷路に導入する。Morris水迷路は、直径6フィート、深さ3フィートの可膨張性タンクからなる。タンクに水を12 cm充填し、ミルク300 mlを付加することにより不透明にした。直径10 cmの円形表面を有する透明プレキシガラス製の高さ11 cmプラットホームを、プール中の1〜4つの位置に配置した。プラットホームは水の表面下1 cmにあり、したがって水中の動物の視野からは隠れている。プールを等表面積の4分円に分割する。試験ラットをタンクの側面に面するプール中に入れて、4つの出発位置(北、南、東または西)のうちの1つ(無作為に確定)に放し、プール縁上に等距離で随意に配置した。プラットホームをプール縁から25 cmの南‐西4分円の中心に置いた。各試行後、出発点を変更した。無作為に確定した出発位置からの合計3つの試行に関して、プラットホームを見つけ出すために約60秒を動物に与え、そして約30秒間プラットホーム上に休ませて、出発位置に戻した。ラットが隠れたプラットホームを約60秒以内に見つけ出すことができない場合、それをプラットホーム上に載せ、約30秒間、プラットホーム上で休ませた。休憩期間後、ラットをタンク中に戻して、さらに2回の試験のために再び試験した。訓練日は、3つの試験で構成された。試験日は、2日目に実行した(プローブ試験のため。下記参照)。各訓練試行および試験後、次にラットを加熱パッドの上部上のケージ中に入れた。画像分析器を介してコンピューターに接続したビデオカメラにより、遊泳経路をモニタリングした。プラットホームに到達するための逃避待ち時間ならびにプラットホームを見つけ出すために動物が遊泳する経路長を用いて、水迷路仕事の習得を査定した。遊泳速度=経路長/逃避待ち時間を用いて、この仕事におけるラットの運動活性を査定した。プラットホーム位置の想起を査定するために、プール中にプラットホームを用いない60秒プローブ試行に2日目に着手して;前者プラットホーム位置で費やされる時間のパーセンテージをモニタリングした。
【0124】
MCAo卒中外科手術: 無菌条件下で、全外科手術手順を実行した。MCAo卒中手順は、文献から、特にC. Boriongan et al., ”Chronic cyclosporine-A injection in rats with damaged blood-brain barrier does not impair retention of passive avoidance.” Neurosci Res. 1998, 32: 195-200から採用した。1時間閉塞中の脳血流における有意の(>75%)低減を明示するレーザードップラーを用いて、上首尾の閉塞の各動物における確定を得た。MCAoは、一貫した線条体損害を生じた。
【0125】
MCAl卒中外科手術: MCAl外科手術手順は、Y. Wang et al., ”Glial Cell-Derived Neurotrophic Factor Protects Against Ischemia-Induced Injury in the Cerebral Cortex.” 1997, J. Neuroscience; 17 (11): 4341-4348に一般的に記載されている。レーザードップラーは、動脈結紮を立証するためにも用いた。MCAlは、一貫した皮質損害を生じる。
【0126】
TGI卒中外科手術: 4‐血管閉塞技法を用いた。深い麻酔下で、動物に腹部正中線頚部切開を施した。脊椎動脈を第一頚椎のalar foraminaを通して分離し、マイクロクリップを用いて両総頚動脈を15分間結紮した。この技法は、全脳虚血を生じ、一貫した海馬損害を伴うことが示された。
【0127】
ニューロン前駆体細胞: ニューロン前駆体細胞は、SanBio, Inc. (Mountain View CA)により提供された。一般的にPCT/JP03/01260の技法に従って、これらの細胞を産生した。
【0128】
移植手順: 滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(3 ml/kg、腹腔内)麻酔(疼痛反応に関して動物を検査)下で、26‐ゲージ移植カニューレを用いて、MCAoに関しては線条体に、MCAlに関しては皮質に、またはTGIに関しては海馬に直接、NPCを直接動物に移植した(一般的には、Y. Wang et al., ”Glial Cell-Derived Neurotrophic Factor Protects Against Ischemia-Induced Injury in the Cerebral Cortex.” 1997, J. Neuroscience; 17 (11): 4341-4348およびC. Borlongan et al., ”Transplantation of cryopreserved human embryonal carcinoma-derived neurons (NT2N cells) promotes functional recovery in ischemic rats.” Exp Neurol. 1998; 149: 310-21参照)。本明細書中に開示される方法を用いて、凍結保存NPCを得た。トリパンブルー排除法を用いた生存可能性細胞計数を、移植前および移植直後に、最終動物レシピエントに関して実行した。予定細胞投与量(40,000、100,000および200,000)は、生存可能細胞の数を指した。細胞を解凍後2時間以内に、移植手術を実行した。注入速度は細胞溶液1 ul/分であった。注入後、針が引っ込められる前に、3分吸収期間が与えられた。加熱パッドおよび直腸温度計は、外科手術中ならびに麻酔からの回復まで、体温を約37℃に保った。
【0129】
統計学的分析: p<0.05に設定したANOVAの反復測定を用いて、挙動データを分析した。事後検定は、処置条件間の有意差(p<0.05)を明示するために、折衷型t検定を包含した。
【0130】
実施例1: MCAo結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなMCAo手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0131】
EBST: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=57.60、p<0.0001)(図1)。用量依存性有意作用(200,000>100,000>40,000)も観察された(p<0.01)。運動非対称は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、最も強い回復は、移植後1週間に認められ(p<0.0001)、そして安定回復はその後の移植後3週間に示された。事後試験は、移植後1週間での運動非対称の有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし用量依存性作用が移植後2、3および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図2)。
【0132】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=9.65、p<0.001)(図3)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.01)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後1週間目の神経学的欠陥スコアの有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし2週目では低用量40,000細胞より高用量100,000および200,000の方がより良好な回復を生じ(p<0.05)、そして用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後3および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図4)。
【0133】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,21=2.87、p=0.08)(図5)。ベースラインおよび移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目での長期習得時間により明示されるように、移植後4週間に亘るより長いMWM習得時間傾向があると思われる(p<0.01)(図6)。
【0134】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=61.33、p<0.0001)(図7)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に短時間でのプラットホーム位置発見を促した(p<0.0001)。プラットホームを発見する時間の改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後4週間に亘って低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に短いプラットホーム発見時間を生じ、そして明らかな用量依存性応答(200,000>100,000>40,000)が移植後1および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図8)。
【0135】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=15.19、p<0.0001)(図9)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に長いプラットホーム領域上消費時間を促した(p<0.01)。プラットホーム領域上で消費される時間は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に増大され(p<0.0001)、移植後1および2週目と比較して、移植後3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後4週間に亘って低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じる、ということを明示した(p<0.05)(図10)。
【0136】
実施例2: MCAl結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなMCAl手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0137】
EBST: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,24=76.30、p<0.0001)(図11)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも運動非対称からのより良好な回復を生じた(p<0.0001)。運動非対称は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、より良好な回復が、移植後2、3および4週目に示された。事後試験は、高い方の用量が低用量より良好に運動非対称を有意に低減し、用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後1週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図12)。
【0138】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,24=3.65、p<0.05)(図13)。200,000細胞という最高用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.05);100,000細胞の中用量と40,000細胞の低用量との間には、有意差は見出されなかった(図13)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、週毎の神経学的スコア全体の細胞投与量間に有意差が見出されなかった時間の間、安定であった(p>0.005)。事後試験は、3および4週間目には200,000細胞の最高用量は低用量40,000細胞より良好な回復を生じた(p<0.01);移植後より早期の時点では、細胞投与量間に他の有意差は見出されない、ということを明示した(p>0.05)(図14)。
【0139】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=5.78-16、p>0.05)(図15)。ベースラインと比較して、移植後1、2、3および4週目での長期習得時間により明示されるように、移植後4週間に亘るより長いMWM習得時間傾向があると思われる(p<0.0001)(図16)。
【0140】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=0.62、p=0.55)(図17)。移植後長時間、有意に長いプラットホーム発見時間が認められた(p<0.001)(図18)。
【0141】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=2.01、p=0.16)(図19)。プラットホーム領域上の時間は、ベースラインと比較して移植後4週間に亘ってより長い時間が費やされる傾向がある(p<0.001)が、しかし一過性用量依存性作用は移植後1週目に認められただけで(p<0.05)、他の週試験期間では認められなかった(p>0.05)(図20)。
【0142】
実施例3: TGI結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなTGI手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0143】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=47.33、p<0.001)(図21)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.0001)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減された(p<0.0001)。事後試験は、移植後1週目の神経学的欠陥スコアにおける有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし高用量100,000および200,000は、2、3および4週間目では低用量40,000細胞より良好な回復を生じ(p<0.005);そして用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図22)。
【0144】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=9.88、p<0.001)(図23)。しかしながらこの有意の治療作用は、200,000細胞という最高用量が、他の2つの用量100,000および40,000細胞と比較して、移植後1週目での仕事獲得の有意の一過性改善を生じた(p<0.005)ためにのみ、達成された。その後、ベースラインおよび移植後1週目と比較して移植後2、3および4週目でのより長い習得時間が注目された(p<0.005)(図24)。
【0145】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=30.98、p<0.0001)(図25)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に短時間でのプラットホーム位置発見を促した(p<0.0001)。プラットホームを発見する時間の改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1および2週目と比較して、移植後3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、高用量200,000の方が移植後2および3週目に100,000および40,000細胞の他の2つの用量より有意に短いプラットホーム発見時間を生じ(p<0.05)、一方、移植後4週目では、2つの高い方の用量は低細胞投与量と比較して、プラットホーム発見のより良好な改善を発揮する、ということを明示した(p<0.05)(図26)。
【0146】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=54.06、p<0.0001)(図27)。有意の用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)は、移植後4週間に亘って観察された(p<0.0001)。さらに、移植後4週間の間、より長いプラットホーム領域上時間が消費された(p<0.0001)。事後試験は、移植後3および4週目には、低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じる、ということを明示した(p<0.05)。移植後2週目では、最高細胞投与量のみが、他の2つの細胞投与量と比較して有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じた(p<0.05)(図28)。
【0147】
実施例4: 移植後5週目の組織学的検査
移植後5週目に、無作為選択動物を安楽死させた(表3参照)。組織学的検査は、各用量および卒中型に関して2〜3例の脳試料に限定した。したがって定量分析は、GFPエピ蛍光に基づいて移植片生存および移動に関して実施しただけであった。他の組織学的パラメーターに関しては、特に表現型発現を検出するための異なる抗体マーカーの使用に関しては、一般的説明のみを提示する。
【0148】
NPC移植片生存: GFPエピ蛍光は、3つの卒中型すべての間の用量依存性移植片生存(200,000>100,000>40,000)を明示した(F8,32=33.9、p<0.0001)(図29)。GFP陽性細胞の平均細胞数は、40,000細胞という低い方の用量が小さい数の生存GFP陽性移植片を生じ、一方、100,000および200,000という高い方の用量はより大きい数の生存GFP陽性移植片を生じる、ということを明示した。これらの観察は、MCAo、MCAlおよびTGI移植動物に関して一貫していた。しかしながら各細胞投与量に関するパーセンテージを算定した場合、移植片生存%における有意差(F8,32=1.67、p>0.05)(図30)は3つの用量間に認められなかった。
【0149】
【表4】
【0150】
移植片生存および機能的回復間の正の相関: 回帰分析は、生存NPC移植片の数が多いほど(200,000>100,000>40,000)、機能的改善は良好である、ということを明示した(図31)。
【0151】
NPC移植片移動: GFPエピ蛍光は、大多数(約55%〜85%)の移植細胞が本来の移植片部位内に留まる、ということを明示した(図32)。MCAo移植動物において、いくつかのGFP陽性細胞が本来の線条体移植片部位内で容易に同定され得た(62%);MCAl移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の皮質移植片部位内に留まった(53%);そしてTGI移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の海馬部位内に留まった(86%)。しかしながら、MCAoおよびMCAl移植動物はともに、TGI移植動物と比較して、移植細胞のより多くの移動を示した、と思われる。それにもかかわらず、移動が観察された場合、移植細胞は全身標的領域内に残存し、この場合、MCAoの移植片移動は線条体内に、MCAlでは皮質内に、そしてTGIでは海馬内に残存した。MCAoおよびMCAlの両方における移植片移動は、それぞれ線条体および皮質における虚血性境界域を裏打ちする移植細胞により特性化された。さらに、MCAoに関しては、線条体虚血性境界域に沿った細胞の内側から外側への(1.8 mm)、および腹側から背側への(2.3 mm)移動が観察された。MCAlに関しては、細胞の内側から外側への(4.4 mm)移動が観察された。TGI移植動物に関しては、移植片移動は、CA2およびCA3区域で同定されるGFP陽性SBDPにより特性化された(本来のCA1移植片部位からそれぞれ1.6 mmおよび0.7 mm離れた)。
【0152】
NPC表現型発現: 移植NPC細胞はGFAPに対して陽性であり(約5%)、そして極少数の細胞(2〜5細胞/脳)もNeuNに対して陽性であった。これらのマーカーはともに、GFPと同時局在した。これらの観察は、全用量ならびに卒中の3つの型すべてに関して一貫していた。
【0153】
実施例5: 移植後12週目のMCAo結果
移植後12週目に、上記のようなTGI手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0154】
EBST: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=11.84、p<0.005)(図32)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の運動非対称の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0155】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=41.83、p<0.001)(図32)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0156】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.36、p=0.071)(図33)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0157】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=6.18、p<0.05)(図33)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム発見時間の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0158】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=6.18、p<0.05)(図33)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム領域での時間の有意の増大を明示した(p<0.001)。
【0159】
実施例6: 移植後12週目のMCAl結果
移植後12週目に、上記のようなMCAl手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0160】
EBST: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=23.02、p<0.0005)(図34)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の運動非対称の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0161】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=9.29、p<0.01)(図34)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0162】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=1.37、p=0.30)(図35)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0163】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.26、p=0.78)(図35)。これらの結果は、即ちプラットホームが利用可能な場合の、ベースラインと移植後12週目との間のMWMプローブ試験において有意差は認められなかったことを示す。
【0164】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.15、p=0.86)(図35)。これらの結果は、即ちプラットホームを用いずに、ベースラインと移植後12週目との間のMWMプローブ試験において有意差は認められなかったことを示す。
【0165】
実施例7: 移植後12週目のTGI結果
移植後12週目に、上記のようなTGI手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0166】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=184.02、p<0.0001)(図36)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0167】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.31、p=0.74)(図37)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0168】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=5.14、p<0.05)(図37)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム発見時間の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0169】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=4.39、p<0.05)(図37)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム領域での時間の有意の増大を明示した(p<0.0001)。
【0170】
実施例8: 移植後12週目の組織学的検査
移植後12週目に、すべての残存動物を安楽死させた(表4参照)。GFPエピ蛍光およびその他の免疫組織化学パラメーターに、特に表現型発現を検出するための異なる抗体マーカーの使用に基づいた移植片生存および移動の定量分析を、実行した。
【0171】
【表5】
【0172】
NPC移植片生存: GFPエピ蛍光は、3つの卒中型すべての間の部分的用量依存性移植片生存(200,000>100,000>40,000)を明示した(F8,27=14.88、p<0.0001)(図38)。GFP陽性細胞の平均細胞数は、40,000細胞という低い方の用量が小さい数の生存GFP陽性移植片を生じ、一方、100,000および200,000という高い方の用量はより大きい数の生存GFP陽性移植片を生じる、ということを明示した。これらの観察は、MCAo、MCAlおよびTGI移植動物に関して一貫していた。しかしながら各細胞投与量に関するパーセンテージを算定した場合、移植片生存%における有意差(F8,27=1.37、p>0.05)(図39)は3つの用量間で得られなかった。これは、おそらくはCsA免疫抑制により低および高用量の両方における移植片生存%が保持された、ということを示唆する。
【0173】
NPC移植片移動: 5週間組織学結果と一致して、GFPエピ蛍光は、大多数(約65%〜90%)の移植細胞が本来の移植片部位内に留まる、ということを明示した。MCAo移植動物において、いくつかのGFP陽性細胞が本来の線条体移植片部位内で容易に同定され得た(72%);MCAl移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の皮質移植片部位内に留まった(64%);そしてTGI移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の海馬部位内に留まった(91%)。MCAoおよびMCAl移植動物はともに、TGI移植動物と比較して、移植細胞のより多くの移動を示した、と思われる。さらに、移動が観察された場合、移植細胞は全身標的領域内に残存し、この場合、MCAoの移植片移動は線条体内に、MCAlでは皮質内に、そしてTGIでは海馬内に観察された。さらにMCAoおよびMCAlの両方における移植片移動は、それぞれ線条体および皮質における虚血性境界域を裏打ちする移植細胞により特性化された。さらに、MCAoに関しては、線条体虚血性境界域に沿った細胞の内側から外側への(2.0 mm)、および腹側から背側への(2.5 mm)移動が観察された。MCAlに関しては、細胞の内側から外側への(4.5 mm)移動が観察された。TGI移植動物に関しては、移植片移動は、CA2およびCA3区域で同定されるGFP陽性SBDPにより特性化された(本来のCA1移植片部位からそれぞれ1.6 mmおよび0.8 mm離れた)。
【0174】
NPC表現型発現: 卒中型および用量の間で、およその生存率は15%である。これらの本来の移植片部位内では、ほとんどの細胞がそれらのビーズ状の外観を保持し、そしてNeuNまたはGFAPに対して陽性でない。しかしながらMCAo移植動物では、これらの細胞のうちの2〜3がNeuNおよびGFAPを示す。それぞれMCAo、MCAlおよびTGI移植動物の線条体境界域、皮質境界域およびCA3に沿って移動するGFP陽性細胞が検出された。実際、NeuN免疫染色は、これらの細胞が成熟ニューロンに対してこのようなマーカーを発現する、ということを明示する。全体的に、生存GFP陽性細胞の約25%が、卒中型および用量間で、NeuN陽性である;移植部位から離れて移動した細胞では、約60%がNeuN陽性である。これらの細胞は、複雑な且つ長いプロセスにより特性化されるニューロン形態を示したが、これは、MCAo移植動物に豊富である。さらにGFPエピ蛍光顕微鏡は、各発作型に見出される別個のニューロン形態、ならびにNPC移植片細胞対細胞接触を明示した。いくつかの細胞(卒中型および用量の全体で及び間で約5%)は、GFAP染色により確証された神経膠細胞の形態を示す。ほとんどの(全部でないとしても)GFAP陽性細胞は、血管付近または血管内に見出された。
【0175】
移植片‐宿主組織病理学: 線条体;皮質;または海馬におけるニッスル染色を用いて、腫瘍形成の証拠は認められなかった。
【0176】
実施例9: 発作モデルにおける付加的NPC試験
この試験の目的は、発作動物におけるNPCの治療的利益を検査することであった。挙動試験を用いて、移植発作動物の運動および神経学的機能を明示した。移植を発作後1ヶ月目に実行し、そして移植後1ヶ月生存時間を通して、シクロスポリンA(CsA、10 mg/kg、腹腔内)で毎日動物を免疫抑制した。移植ラットの運動および神経学的遂行を、移植後7、14および28日目に特性化した。有効なNPC用量範囲の確定により明示されるような上首尾の移植片結果を、運動挙動および神経学的遂行を用いて評価した。
【0177】
3つの処置条件;即ち0(培地単独)、低用量90k NPCおよび高用量180k NPCが存在した。各処置条件に関する動物の数は、統計学的分析のための必要試料サイズに対応した(n=10/群)。挙動的欠陥に関する判定基準に到達していない動物(75%偏向スウィング活性ならびに神経学的検査における2.5のスコア)は、本試験には含まれなかった。したがってこれらの判定基準に到達した動物そしてこれらの判定機銃を超えているものは、試験に含めた。典型的には、ほとんどの卒中動物はこのような判定基準に到達し、少なくとも8被験者は最終的統計学的分析を提供することを要した。試験中ずっと、全動物を免疫抑制した(10 mg/kgCsA、腹腔内、毎日)。
【0178】
全動物に、最初にMCAo卒中手術を施した。術後4週目に、EBSTで、そして1時間後にBederson神経学的検査により試験した。有意の運動および神経学的欠陥を示した動物のみを、その後、移植手術のために用いて、以下の処置のうちの1つに無作為に割り当てた:
【0179】
【表6】
【0180】
移植後7、14および28日目に、動物を再び挙動試験の同一バッテリーに導入した。平明にするために、模式図を以下に提示する。
【0181】
【表7】
【0182】
滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(300 mg/kg、腹腔内)を用いて動物を麻酔し、疼痛反応に関して検査した。深い麻酔下で、動物にMCA閉塞手術を施した。MCA閉塞技術は、MCAの接合部に到達し、したがって総頚動脈からの、ならびにウィリス動脈環からの血流を遮断するための頚動脈を通した縫合フィラメントの挿入を包含する。右総頚動脈を同定し、腹側正中線頚部切開により分離した。フィラメントサイズは4-0で、滅菌非吸収性縫合糸(Ethicon, Inc.)製で、縫合糸先端の直径はゴムセメントを用いて24〜26‐ゲージサイズに先細にされた。約15〜17 mm縫合フィラメントを外および内頚動脈の接合部から挿入して、MCAを遮断した。右MCAを1時間閉塞した;MCAの1時間閉塞は一般に、最大梗塞を生じる。さらに、塞栓の先端の長さおよびサイズは、250〜350 gの重量の動物において完全MCA閉塞を生じることが判明している。加熱パッドおよび直腸温度計は、正常限界内の体温の保持を促す。上首尾の閉塞および再還流を確定するために、レーザードップラーを用いた。ドップラープローブを予測梗塞線条区域の直ぐ上の硬膜のレベル(AP:+2.0、ML:±2.0およびDV:−4.0 mm)に置いて、閉塞の前、最中および後に脳血流を測定した。
【0183】
滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(3 ml/kg、腹腔内)麻酔(疼痛反応に関して動物を検査)下で、28‐ゲージ移植カニューレを用いて、線条体(十字縫合前0.5 mm、正中線外側2.8 mmおよび硬膜表面した5.0 mm)に直接、NPCまたはビヒクルを動物に移植した。凍結保存ヒトNPCをSanBio, Inc.から入手して、移植手術直前に解凍した。トリパンブルー排除法を用いた生存可能性細胞計数を、移植前および移植直後に、最終動物レシピエントに関して実行した。予定細胞投与量(90,000および180,000)は、これらの投与量が治療的有効投与量範囲内であることを実証するパイロット試験に基づいた。
【0184】
細胞を解凍後2時間以内に、移植手術を実行した。注入速度は細胞溶液1 ul/分であった。注入後、針が引っ込められる前に、3分吸収期間が与えられた。1針通路を用いたが、しかし3つの背腹沈渣が存在し、各部位に3-ul細胞溶液を投与した。加熱パッドおよび直腸温度計は、外科手術中ならびに麻酔からの回復後、体温を約37℃に保った。
【0185】
1時間MCAo卒中手術は、EBSTおよびBederson検査における動物の卒中前遂行と比較して、それぞれ両検査における有意の偏向スウィング活性および神経学的欠陥により明示されるように、卒中後1ヶ月目に一貫した挙動障害を生じた。動物の卒中前および卒中後遂行間の対比較は、この試験に含まれるすべての卒中動物における両試験における有意の障害を明示した(p<0.0001)。
【0186】
ビヒクル、低用量90k NPCまたは高用量180k NPCに卒中動物を無作為に割り当てた後、ANOVAは、両試験に関する有意の処置作用を明示した(kP<0.0001)。処置群間の対比較は、移植後7日目という早期に、NPCを移植された卒中動物は、用量と関係なく、ビヒクル処置卒中動物と比較して、挙動欠陥の有意の改善を示す(p<0.05)、ということを明示した。NPC移植卒中動物によるこの挙動回復は移植後14日目および28日目に持続されたが、この場合、NPC GFUは、再び用量と関係なく、ビヒクル処置と比較して、運動および神経学的障害の有意の減衰を促した(p<0.0001)。2つのNPC用量のより厳密な検査は、EBSTに関して全移植後試験日数間(p<0.01)で、そしてBedersonに関して移植後日数14および28日目(p<0.0005)で、低用量90kと比較して、高用量180kが挙動欠陥の有意に良好な改善を生じる、ということを明示した。結果を、図44〜45に示す。
【0187】
本発明の挙動データは、挙動回復が移植後7日目という早期に検出されたNPCの強固な治療利益を実証した。結果はさらに、NPC移植片の陽性結果は移植後28日目(試験中断期間)まで安定である、ということを明示した。低および高用量の両方のNPCは機能的利益を促したが、しかし高用量は低用量より有意に良好な挙動回復を提供した。
【0188】
この試験における卒中動物はすべて、免疫抑制された。ビヒクル処置卒中動物はいかなる観察可能な挙動回復も示さなかったので、これは卒中前期間、卒中の最中または直後の送達を包含する試験において前に観察されるような免疫抑制薬CsAの考え得る困惑性有益作用を排除した。NPC移植卒中動物に限定されている観察された挙動回復は、免疫抑制それ自体からでなく、移植細胞からであると思われる。
【0189】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにニッスル染色を実行して、NIH画像解析系を用いて各動物における最大梗塞面積を測定した。梗塞容積を算定するために、以下の式を用いた:=2 mm(薄片厚)×[全能薄片中の梗塞面積の和(mm2)]。
【0190】
移植後1ヶ月目に、無作為選択動物を免疫組織化学用に安楽死させた。以下の手順を用いて、標準ABC方を用いて組織を処理した。20 μmクリオスタット切断組織を4×倍率で検査し、PCベース画像ツールコンピュータープログラムを用いてデジタル化した。脳切片をブラインド・コード化し、そしてAbercrombieの式を用いて免疫陽性細胞の総数を算定した。
【0191】
齧歯類細胞表面マーカーまたは他の齧歯類タンパク質と交差反応しないヒト細胞表面マーカーであるモノクローナルヒト特異的抗体HuNuを用いて、移植後のNPC生存を査定した。細胞移植片中のニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞表現型の発現を検出するために、免疫組織化学的分析Neu‐NおよびGFAPをそれぞれ用いた。これらの細胞表面マーカーは、移植NPCの移動も明示した。
【0192】
一般的に、NPCは、移植後1ヶ月目にMAP2発現に対して陽性の2〜3のニューロンを有する線条体中で良好に生存した。移植片生存は、NPCの2つの用量レベル間で有意に異ならなかった。NPCは、卒中境界域における虚血性細胞損失を低減した。2つの用量レベルは、ほぼ同程度のニューロレスキュー作用を示した。これらの分析からのデータを、図46〜48に提示する。
【0193】
H. MNC実施例
本実施例は、本発明の範囲を例証するよう意図されるが、いかなる点においても本発明を限定するものではない。
【0194】
実験手順
MASCの培養およびニューロン誘導
一般的に、S. Azizi et al. ”Engraftment and migration of human bone marrow stromal cells implanted in the brains of albino rats-similarities to astrocyte grafts.” Proc Natl Acad Sci U S A, 1998; 95: 3908-13に前に記載されたように、WisterラットからMASCを単離した。M. Dezawa et al., ”Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of invitro differentiated bone-marrow stromal cells.” Eur J Neurosci. 2001; 14: 1771-6に一般的に記載されたように、pBabe neo‐GFPベクターを用いたレトロウイルス感染により、緑色蛍光タンパク質(GFP)でMASCを標識した。
【0195】
MASCからのニューロン誘導は、一般的にM. Dezawa et al., ”Specific induction of neuronal cells from bone-marrow stromal cells and application for autologous transplantation” J Clin Invest. 2004; 113: 1701-10に記載されている。要するに、リポフェクタミン2000(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用いて、Notch細胞内ドメイン(NICD)を含有するベクター(pCI neo‐NICD)をMASC中にトランスフェクトした。11日後にG418により、細胞を選択した。MNCの誘導のために、NICDトランスフェクト化MASCを1回継代培養(集密度60〜70%)し、10%FBS、5 μMFSK(Calbiochem, La Jolla, California)、10 ng/mlbFGF(Peprotech, London, UK)および10 ng/mlCNTF(R&D Systems, Minneapolis, Minnesota)を含有するアルファ‐MEM中でインキュベートした。5日後、細胞をMCAOラットモデル中に移植した。誘導MNCをin vitroで特性化するために、免疫細胞化学試験を実施した。抗MAP‐2ab(Sigma, St. Louis, Missouri)、ニューロフィラメント‐M(NF‐M)(Chemicon, Temecula, California)およびベータチューブリン・アイソタイプ3(β‐チューブリン3)(Sigma, St. Louis, Missouri)をニューロンマーカーとして用い、そしてMNCの90〜95%はこれらのマーカーに対して免疫陽性であることが示された。
【0196】
MCAOラットモデル:
体重200〜250 gの雄Wistarラットを室温(24℃)で、12時間明暗周期で保持し、食餌および水を自由に摂取させた。MCAO手順は、J. Koizumi et al., ”Experimental studies of ischemic brain edema. 1. A new experimental model of cerebral embolism in rats in which recirculation can be introduced in the ischemic area.” Jpn J Stroke. 1986; 8: 1-8;およびE. Longa et al., ”Reversible middle cerebral artery occlusion without craniectomy in rats.” Stroke. 1989; 20: 84-91に記載された方法の変法であった。要するに、1.0〜1.5%ハロタン、10%O2および空気の混合物により誘導される深い麻酔下で、正中線頚部切開を実施し、左頚動脈二分岐を同定した。直径0.3 mmのシリコンゴム被覆頭部を有する4-0ナイロン糸製のプローブを結紮外頚動脈中に挿入し、二分岐から16〜18 mmの位置まで内系動脈中を進めた。外科手術中、フィードバック加熱パッド(BWT‐100、Bio Research Center Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用いて直腸温度を37.5〜38℃に保持した。動脈血ガス分析を実施し、p02を麻酔装置の制御により85〜120 mmHgに保持した。プローブの10 mm引っ込めによる閉塞から4時間後に、再還流を実施した。
【0197】
移植
MCAO手順の7日後に、50 mg/kgペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射でラットを麻酔し、定位枠上に置いた。予備実験では、正中線の外側約3.5 mmからの側方領域に梗塞領域を作り出した。非壊死性能実質中への移植のために、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)3 μl中の8000〜16000個の培養細胞から成る細胞懸濁液を以下の3つの位置:十字縫合前方+2 mm、0 mmおよび−2 mm、ならびに正中線外側2 mm、そして各場合、皮質表面から1.2 mmの深さ:から左前脳中に定位注入した。移植細胞の総数は24000〜48000であった。
【0198】
動物の3つの群を調製した;対照群(PBSのみを摂取(細胞移植を伴わず)(n=7));MASC群(非処置無傷MASCの移植を受けた(n=10));ならびにNMC群(MNCが移植された(n=10))。
【0199】
挙動試験
以下の試験を用いて、神経学的損害の重症度を評価した:ビーム平衡試験、肢置き直し試験およびMorris水迷路試験。ビーム平衡試験および肢置き直し試験を、MCAO後7日目(移植直前)、14、21、28および35日目に実施した。Morris水迷路私権は、MCAO手順後36日から40日まで実施した。
【0200】
ビーム平衡試験
ビーム平衡試験は、肉眼的前庭運動機能を査定するために用いられ、そして一般的にC. Dixon et al., ”A fluid percussion model of experimental brain injury in the rat.” J Neurosurg. 1987; 67: 110-9に前に記載されたように実行された。スコアリングは、以下の判定基準に基づいた:ビームの上面で肢で定常姿勢でバランスを取る:スコア0;ビームの側面を把握するおよび/またはぐらつき:1;1つまたは複数の肢がビームから滑り落ちる:2;ビーム上で平衡を試みるが、しかし落ちる:3;そして平衡を取ろうとしたりぶら下がろうとすることなくビームから落下:4。
【0201】
肢置き直し試験
肢置き直し試験は、視覚的、触覚的および自己受容的刺激に対する肢置き直し応答における感覚運動統合を検査し、そして一般的には、M. De Ryck et al. ”Photochemical stroke model: flunarizine prevents sensorimotor deficits after neocortical infarcts in rats.” Stroke, 1989; 20: 1383-1390に前に記載されたように実施された。同じく一般的には、M. De Ryck et al.の論文に列挙された手順に従って、自己受容的内転試験も実施した。各試験に関して、スコアリングは、以下の判定基準に基づいた:肢を直ちに且つ完全に置き直す:スコア0;不完全および/または遅延(>2秒)置き直し、例えば分散型動揺:1;ならびに置き直しなし:2。視覚的、前方触覚および側方触覚、自己受容的刺激を右前肢に与えた。前方触覚および側方触覚および自己受容的刺激を右後足に与えた。自己受容的内転試験を、前肢および後肢の両方で実施した。総スコアは、0〜8の範囲である。
【0202】
Morris水迷路試験
Morris水迷路試験は、認知機能を査定するための有用な方法である。この試験のいくつかの修正が報告されている。一般的にA. Fukunaga et al., ”Differentiation and angiogenesis of central nervous system stem cells implanted with mesenchyme into ischemic rat brain.” Cell Transplant. 1999; 8: 435-41に報告されたような試験のバージョンが用いられた。この試験を、MCAO後36日目から40日目まで実施した。プール(直径150 cm、深さ35 cm)を調製した。逃避プラットホーム(直径10 cm)を、不透明乳白色にさせた水の表面下1 cmに置いた。プールの縁周囲の4つの出発点に、N、E、SおよびWを充てる。プラットホームを、中心およびプールの縁から等距離の4分円の中央に保持した。ラットを各出発点から水中に放して、プラットホームに到達するまで遊泳させて、プラットホームに到達するのに要した時間を記録した(最大120秒)。各5連続日で4試行の2組を用いる仕事で、ラットを訓練した。初日の第1組の後に、第2組の代わりに、空間プローブ試行を実施した。この試験は、短時間記憶保持を概算するためである。プラットホームを除去し、ラットを60秒間遊泳させた。各動物がプラットホーム配置領域を横断した時間数を測定した。プラットホーム配置4分円で費やした時間も測定した。
【0203】
組織学的分析
41日目に、ペントバルビタール過剰用量の投与によりラットを屠殺し、0.9%生理食塩水で、その後、過ヨウ素酸‐リシン‐パラホルムアルデヒド固定溶液で頭蓋内還流した(I. McLean et al., ”Periodate-lysine-paraformaldehyde fixative. A new fixation for immunoelectron microscopy.” J Histochem Cytochem. 1974; 22: 1077-83に一般的に記載)。Brain Matrix(BAS Inc. Warwickshire, UK)を用いて、2 mm厚の冠状ブロックに脳を切断した。各ブロックから、10 μm厚クリオスタット切片を作製した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色して、梗塞領域を評価した。光学顕微鏡下で1×対物レンズを用いて切片の画像を捕獲し、Scion Image(Scion Corporation, Frederick, MD)を用いて病変域を追跡した。梗塞容積を算定し(一般的にR. Swanson et al., ”A semiautomated method for measuring brain infarct volume.” J Cereb Blood Flow Metab. 1990; 10: 290-29で前に記載されたように)、そして対側半球の容積のパーセンテージとして表わした。
【0204】
免疫染色するために、切片を、MAP‐2(1:100, Boehringer Mannheim, Germany)、β‐チューブリン3(1:400, Sigma, Missouri)、NF‐M(1:200, Boehringer Mannheim, Germany)、Tuj‐1(1:100, BAbCO, CA)またはGFAP(1:400, Dako, CA)に対する一次抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。Alexa Fluor 546-接合抗マウスIgG(Molecular Probes, Eugene, OR)(MAP‐2に対する)または抗ウサギIgG(Molecular Probes, Eugene, OR)(β‐チューブリン3、NF‐M、Tuj‐1およびGFAPに対する)を、二次抗体として用いた。TOTO‐3を核染色のために用いた。共焦点レーザー走査顕微鏡(CLMS)(Radiance 2000, Bio-Rae, Hertfordshire, UK)を用いて、検体を検査した。
【0205】
各ラットにおいて、全前脳中のGFP標識細胞の総数を算定した。海馬中のGFP標識細胞の数も同様に算定した。
【0206】
統計学的分析
非反復測定ANOVAを用いて、挙動評価データおよび梗塞容積データを分析した。結果が有意であった場合(p<0.05)、Student-Newman-Keuls post hoc手順を95%有意レベルで用いた。別記しない限り、値は平均±標準偏差として示す。
【0207】
実施例10: 挙動試験
MCAO実施の1週間後、および移植の直前に、重症右側神経学的欠陥が出現し、そして各挙動試験に関する平均スコアは、3つの群間で統計学的な差を示さなかった。
【0208】
ビーム平衡試験
7日目から21日目まで、平均スコアは、3つの群間で統計学的に異ならなかった。28および35日目に、NMC群の平均スコアは、対照(28日目:p=0.0041、35日目:p=0.0001)およびMASC群(それぞれp=0.0471、0.0007)と比較して、有意の改善を示した。MASC群は対照と比較してわずかな改善を示したが、しかし統計学的有意差は28および35日目に検出され得なかった(図40)。
【0209】
肢置き直し試験
7日目から21日目まで、3つの群の平均スコア間に有意差は認められなかった。28および35日目に、NMCおよびMASC群は、大将軍と比較して有意の改善を示した(それぞれ28日目:p=0.0022および0.085、35日目:p=0.0022および0.0211)。しかしながら平均スコアは、前期間を通して、NMCおよびMASC群間に有意差を示さなかった(図41)。
【0210】
Morris水迷路試験
水中逃避プラットホームを位置特定するための4つの試行の各組で記録された平均待ち時間を、3群の各々に関して図42に示す。NMC群は、対照およびMASC群と比較して、最も短い待ち時間を示した。39日目の第2組および40日目の第1組に関する平均待ち時間は、NMCおよび対照群間で有意差を実証した(それぞれp=0.0339および0.0492)(図42)。NMC群はMASC群より逃避プラットホームへのより短い待ち時間を要する傾向を示したが、しかし統計学的有意差は存在しなかった。
【0211】
空間プローブ試行において、NMC軍のラットは、対照(p=0.0419)およびMASC群(p=0.0453)と比較して、有意の改善を示した(図43)。プラットホーム配置4分円で費やされる平均時間は、3群間ではNMC群で最長であった。有意差は、NMCおよび対照間に存在した(p=0.0339)(図43)。
【0212】
実施例11: 組織学的試験
梗塞領域を左半球の外側半分、例えば皮質、線条体および海馬に位置確定して、嚢胞および瘢痕の形成をほとんどの病変脳で観察した。病変側の海馬は、対側と比較して、萎縮しており、そして部分的に不規則な配列またはニューロン損失を示した。梗塞容積を、全MCAOモデルで測定した。33日目のNMC、MASCおよび対照群における平均梗塞容積は、それぞれ50.7±10.9%、51.0±10.%および50.9±11.1%であった。3群間に統計学的有意差は認められなかった。
【0213】
主に無傷組織および梗塞域間の境界領域、例えば同側皮質、脳梁、線条体および海馬で、移植GFP標識MASCおよびMNCを位置確定した。梗塞病巣中への炎症細胞の浸潤が観察された。MNCおよびMASC群間に、梗塞病巣中に浸潤した炎症細胞の数に差はないように思われた。
【0214】
多数のGFP標識MNCは、MAP‐2に対して免疫陽性であり、宿主脳中で神経突起発達を示した。それらは、Tuj‐1およびβ‐チューブリン3に対しても免疫陽性であった。同側海馬では、GFP標識MNCの多数の細胞体および神経突起は、NF‐M陽性であることも示した。GFP標識移植MNCの大部分は、MAP‐2に対して陽性であった(84.0±8.1%)が、一方、少数の細胞のみがGFAPに対して陽性であった(1.0±0.2%)。
【0215】
それに反して、宿主脳中のMASCの大多数が、ニューロン(MAP‐2、Tuj‐1、β‐チューブリン3およびNF‐M)および神経膠(GFAP)マーカーに対して陰性であった。GFP標識細胞間のMAP‐2‐およびGFAP‐陽性細胞のパーセンテージは、それぞれ1.4±0.2%および4.8±1.0%であった。MAP‐2陽性MASC中の神経突起の形成は、見出され得なかった。
【0216】
宿主前脳中のMNCおよびMASCの平均数は、13250±1126および5850±997であった。移植後1ヶ月で、移植MNCの約30〜45%が検出され、そして他方、移植MASCの10〜20%が検出された。虚血脳におけるMNCの生存率は、MASCよりも実質的に高かった。海馬では、MNCの平均数は790±160で、そしてそれらの89%がMAP2陽性であった。それに対して、MASCの平均数は470±66であり、そして0.6%がMAP2陽性であったが、これは、移植MASCのほとんどがニューロンおよび神経膠マーカーに対して陰性であった、ということを示す。
【0217】
全群において、MCAO後41日目まで脳実質中に、腫瘍形成は観察されなかった。
【0218】
参考文献:
【化1】
【0219】
【化2】
【0220】
【化3】
【0221】
【化4】
【0222】
【化5】
【0223】
【化6】
【0224】
【化7】
【0225】
【化8】
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、MCAo手順からの結果を示す。
【図2】図2は、MCAo手順からの結果を示す。
【図3】図3は、MCAo手順からの結果を示す。
【図4】図4は、MCAo手順からの結果を示す。
【図5】図5は、MCAo手順からの結果を示す。
【図6】図6は、MCAo手順からの結果を示す。
【図7】図7は、MCAo手順からの結果を示す。
【図8】図8は、MCAo手順からの結果を示す。
【図9】図9は、MCAo手順からの結果を示す。
【図10】図10は、MCAo手順からの結果を示す。
【0227】
【図11】図11は、MCAl手順からの結果を示す。
【図12】図12は、MCAl手順からの結果を示す。
【図13】図13は、MCAl手順からの結果を示す。
【図14】図14は、MCAl手順からの結果を示す。
【図15】図15は、MCAl手順からの結果を示す。
【図16】図16は、MCAl手順からの結果を示す。
【図17】図17は、MCAl手順からの結果を示す。
【図18】図18は、MCAl手順からの結果を示す。
【図19】図19は、MCAl手順からの結果を示す。
【図20】図20は、MCAl手順からの結果を示す。
【0228】
【図21】図21は、TGl手順からの結果を示す。
【図22】図22は、TGl手順からの結果を示す。
【図23】図23は、TGl手順からの結果を示す。
【図24】図24は、TGl手順からの結果を示す。
【図25】図25は、TGl手順からの結果を示す。
【図26】図26は、TGl手順からの結果を示す。
【図27】図27は、TGl手順からの結果を示す。
【図28】図28は、TGl手順からの結果を示す。
【図29】図29は、実施例からの組織学的結果を示す。
【図30】図30は、実施例からの組織学的結果を示す。
【0229】
【図31】図31は、機能的回復および移植片生存を例証する。
【図32】図32は、MCAo手順からの結果を示す。
【図33】図33は、MCAo手順からの結果を示す。
【図34】図34は、MCAl手順からの結果を示す。
【図35】図35は、MCAl手順からの結果を示す。
【図36】図36は、TGl手順からの結果を示す。
【図37】図37は、TGl手順からの結果を示す。
【図38】図38は、移植片生存を例証する。
【図39】図39は、移植片生存を例証する。
【図40】図40は、光束平衡試験の結果を示す。移植28日目に、MNC群に関する平均スコアは、MASCおよび対照群と比較して、有意の改善を示した。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【0230】
【図41】図41は、肢置き直し試験の結果を示す。NMC群およびMASC群に関する平均スコアは、21日目および28日目には、対照群のスコアと有意に異なった。MNCおよびMASC群間に有意差は認められなかった。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【図42】図42は、Morris水迷路試験の結果を示す。最終セットに関しては、MNC群に関する平均待ち時間はMASCおよび対照群に関するものと有意に異なった。
【図43】図43は、水迷路「空間プローブ試験」の結果を示す。3つの群の間で、MNC群に関して最良の結果が得られ、そしてMNC群と他の群との間で有意差が得られた。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【図44】図44は、実施例9で実施されたBederson試験からの結果を示す。
【図45】図45は、実施例9で実施されたEBSTからの結果を示す。
【図46】図46は、実施例9による移植片生存を例証する。
【図47】図47は、実施例9による移植片生存を示す。
【図48】図48は、実施例9によるNissl染色の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、中枢神経系病変の治療に、特に卒中の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
病変は、多数の理由のために、中枢神経系(「CNS」)組織に生じ得る。CNS病変の主因の1つは、卒中である。卒中は、脳の領域への循環の突然の損失により特性化され、神経学的機能の対応する損失を生じる。脳血管性偶発症候または卒中症候群とも呼ばれる卒中は、雑多な群の病理生理学的原因、例えば血栓症、塞栓症および出血を包含する非特定的用語である。近年の報告は、年間、すべての種類の500,000例を超える新規の卒中の発生率を示す。卒中は、主要な致死因子および不能因子である。すべての型の卒中を組合せると、それは死亡の第三の誘導原因および不能性の第一の誘導原因である。最新の傾向では、この数は2050年までに年間100万に急増すると推定される。卒中の直接経費(看護および治療)および間接経費(生産性損失)を合わせて考えた場合、卒中は米国社会で年間433億ドルを要する。卒中は一般に、出血性または虚血性として分類される。急性虚血性卒中は血栓症または塞栓症により引き起こされる卒中を指し、そして全卒中の80%を占める。
【0003】
4つの主な神経解剖学的虚血性卒中症候群は、それらのそれぞれの脳血管分布の崩壊により引き起こされる。
【0004】
前方脳動脈閉塞は主として前頭葉機能に作用して、精神状態変容、判断障害、対側性下肢衰弱および感覚減退、ならびに歩行失行症を生じる。
【0005】
中脳動脈(MCA)閉塞は一般に、対側性片側麻痺、対側性感覚減退、同側性半盲(視野の半分の失明)、ならびに病変側に対する注視偏好を生じる。失認症がよく起こり、そして病変が優性大脳半球に起こる場合には、知覚性または表現的失語症が生じ得る。MCAは上肢運動ストリップを供給するため、腕および顔面の衰弱は通常は下肢の衰弱より悪化する。
【0006】
後脳動脈閉塞は視覚および思考に作用して、同側性半盲、皮質盲、視覚失認症、精神状態変容および記憶障害を生じる。
【0007】
椎骨脳底動脈閉塞は、それらが広範な種々の脳神経、小脳および脳幹欠損を引き起こすため、検出するのは周知のように困難である。これらの例としては、眩暈、眼振、複視、視野欠損、嚥下障害、構音障害、顔面感覚減退、失神および運動失調症が挙げられる。疼痛および温度感覚の損失は、同側顔面および対側身体で起こる。それに反して、前方卒中は、身体の一側面のみに関する知見を生じる。
【0008】
これらの閉塞は、種々の理由のために起こり得る。塞栓は、心臓、頭蓋外動脈、あるいはまれに右側循環(奇異性塞栓)から生じ得る。心原性塞栓の供給源としては、弁膜血栓(例えば僧帽弁狭窄、心内膜炎、人工弁における);心壁血栓(例えば心筋梗塞(MI)、心房細動、拡張心筋症における);ならびに心房粘液腫が挙げられる。MIは、塞栓性卒中の2〜3%の発生率に関連し、この85%はMI後1ヶ月で起こる。
【0009】
ラクナ梗塞は全脳梗塞の13〜20%を占め、そして通常は皮質下大脳および脳幹の小末端血管構造に影響を及ぼす。ラクナ梗塞は一般に、小血管疾患、例えば糖尿病および高血圧症を有する患者に起こる。小塞栓または脂肪硝子様変性症と呼ばれるin situプロセスは、ラクナ梗塞を引き起こすと考えられる。最も一般的なラクナ症候群としては、純運動、純感覚および運動失調性片側麻痺性卒中が挙げられる。それらの小サイズおよび明確な皮質下位置のために、ラクナ梗塞は、認知、記憶、発語、または意識レベルの障害をもたらさない。
【0010】
血栓性閉塞のもっとも一般的部位は、特に内頚動脈の分布における脳動脈枝点である。動脈狭窄(即ち、乱流血流)、アテローム硬化症(即ち、潰瘍化プラーク)ならびに血小板粘着は、動脈を塞栓形成するかまたは閉塞する血餅の形成を生じる。血栓のあまり一般的でない原因としては、赤血球増加症、鎌状赤血球貧血、プロテインC欠乏症、脳動脈の繊維筋性異形成、ならびに片頭痛障害による長期血管収縮が挙げられる。脳動脈の切開を生じる任意のプロセスは、血栓性卒中も引き起こし得る(例えば外傷、胸大動脈切開、動脈炎)。時折、狭窄または閉塞動脈に遠位の低還流、あるいは2つの脳動脈領域間の傷つき易い分水領域の低還流は、虚血性卒中を引き起こし得る。
【0011】
出血性卒中に関しては、脳内出血(ICH)および出血性卒中という用語は、この考察では互換的に用いられ、そして虚血性卒中の出血性転換とは別個の存在であるとみなされる。ICHは全卒中の約20%を占め、そして脳梗塞より高い死亡率に関連する。出血性卒中患者は類似の病巣性神経学的欠陥を呈するが、しかし虚血性卒中患者より加減が悪い傾向がある。脳内出血患者はたいてい、頭痛、精神状態変容、癲癇発作、悪心および嘔吐、および/または顕著な高血圧を有する;しかしながらこれらの知見の中で、出血性卒中と虚血性卒中との間を確かに区別するものはない。
【0012】
ICHにおいて、出血は直接、脳実質中に生じる。通常メカニズムは、慢性高血圧により損傷された小脳内動脈からの漏出であると考えられる。その他のメカニズムとしては、出血素因、医原性抗凝血、大脳アミロイドーシスおよびコカイン乱用が挙げられる。ICHは、脳のある種の部位、例えば視床、被殻、小脳および脳幹に見出される傾向がある。出血により損傷される脳の領域のほかに、周囲の脳は血腫の質量作用により作り出される圧力により損害され得る。頭蓋内圧の全般的増大が起こり得る。出血性卒中に関する30日死亡率は、40〜80%である。全死亡の約50%は、最初の48時間以内に起こる。
【0013】
CNS病変に関するその他の原因、例えば外傷およびCNSの種々の疾患は、寛容的に既知である。
【0014】
CNS病変の治療は、神経形成、即ち問題の患者の組織の領域におけるニューロンの(再)生成、例えば中枢神経系病変における損傷ニューロンの置換(これに限定されない)に関係する。残念ながら、ニューロン(CNS)組織は、その限定修復/再生能力に関して周知である。成人における新規のニューロンの生成は、2つの領域、即ち側脳室を裏打ちするSVZおよび歯状回の顆粒下域に大きく限定される。SVZから移動した内因性前駆体幹細胞に起因する限定ニューロン置換が実証されている。
【0015】
ある種の神経形成方法を用いていくつかの初期の成功が報告されているが、しかしこれらの方法は臨床的に上首尾であったわけではない。したがって必要なものは、中枢神経系の治療のために当該技術分野で特筆された問題を克服する方法および組成物である。
【発明の開示】
【0016】
発明の要約
一態様では、本発明は、ニューロン前駆体細胞を提供し;そして患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患した患者にニューロン前駆体細胞を投与することを包含する方法に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、患者へのニューロン前駆体細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在するニューロン前駆体細胞;ならびに製薬上許容可能な担体を含む移植片形成単位に関する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を提供し;そして患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患している患者に骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を投与することを包含する方法に関する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、患者への骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在する骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞;ならびに製薬上許容可能な担体を含む移植片形成単位に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
A. 序論
上記の問題および制限は、本明細書中に開示される本発明を実施することにより克服され得る、ということを、本発明人等は、意外にもそして驚いたことに、発見した。特に、NPCおよび/またはMNCを提供し、中枢神経系病変を罹患している患者に、患者の機能的回復を促すのに十分な量でそれらのNPCおよび/またはMNCを投与することが可能である、ということを、本発明人等は意外にも発見した。
【0021】
本明細書中で開示されるアプローチは、従来技術を上回るいくつかの利点を有する。先ず、それは、患者別ベースで中枢神経系病変を修復するよう医者に外科的手法を適応させ得る用量‐応答関係を提供する。第二に、それは、移植への同種異系アプローチを提供する。これは、NPCおよび/またはMNCおよび/または移植片形成単位を特性化し、そして細胞バッチおよび移植手順の両方に関してGFU対GFU(あるいはNPC対NPCまたはMNC対MNC)一貫性を提供するために有用である。さらにNPCの使用は、他の多能性細胞の使用と比較して、中枢神経系のより精確な再構築を可能にする。これは、分化する場合、他の細胞型に分化するというよりむしろ、他の型の多能性細胞より多くの有意の大多数のニューロン前駆体細胞がニューロン細胞の細胞運命を受け入れるためである。これは、移植結果全体に制御を提供使用とする場合に重要であり得るし、そして移植細胞の望ましくない(または非分化)増殖の可能性を制限する。さらに、その細胞が機能的回復改善を提供し得るより分化した多能性細胞であるため、MNCの使用が望ましい。
【0022】
ここで、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
定義
本明細書中に引用される出版物はすべて、各々の個々の出版物が特定的に且つ個別に参考文献により援用されることが示されたように、すべての目的のためにそしてそれらの全記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0024】
「投与する」とは、患者にNPCおよび/または本発明の移植片を提供することを意味する。
【0025】
「領域」とは、区域または限定容積を意味する。例えば中枢神経系の領域は、中枢神経系中に位置する区域または限定容積である。
【0026】
「中枢神経系虚血性事象」または「CNS虚血性事象」とは、患者の中枢神経系の領域への血流の欠如または生理学的有意の低減を生じる任意の出来事を意味する。好ましい一実施形態では、CNS虚血性事象は虚血性卒中を含む。
【0027】
「中枢神経系病変」または「CNS病変」とは、CNS虚血性事象によりまたは出血(例えば好ましい一実施形態では、出血性卒中)により損害される、損害、機能不全または罹患中枢神経系組織の領域、あるいはこのような損害、機能不全または罹患中枢神経系組織周囲の境界域を意味する。
【0028】
「中枢神経系組織」とは、中枢神経系に慣用的に関連する組織を意味する。脳組織および脊髄組織は、中枢神経系組織の非限定例である。本発明のある種の実施形態は、虚血性事象により損害された中枢神経系組織に関する。このような損害は、慣用的に理解されるように、酸素剥奪、ならびにその他の関連カスケードおよびこのような剥奪および関連カスケードの副産物により起こり得る。
【0029】
「機能的回復」とは、その機能に特徴的な神経生物学的パラメーター(即ちCBF、EEG、皮質拡張等)の測定により、あるいは挙動機能(例えば本明細書中に開示されるかまたは当該技術分野で既知のねずみモデルまたはその他のモデルにおける立ち上がりまたは聴覚性驚愕)の測定により確定した場合のCNS病変に関するCNS機能の回復を意味する。回復は、正常または対照集団において観察される値を概算するための測定変数の傾向により確定される。機能的回復は完全であり得る、即ち、適切な統計学的方法により測定した場合、回復は測定パラメーターの値を正常または対照集団で観察される値に戻す。機能的回復は、不完全であるかまたは部分的でもあり得る。例えば患者は、測定パラメーターの完全な機能的回復、あるいは75%回復または50%回復等を経験し得る。
【0030】
「中枢神経系の機能的回復領域」とは、以前は病変に関与し、その後、本発明の実施により機能的に回復されるCNS組織を意味する。
【0031】
「移植片形成単位」または「GFU」とは、(1)NPCおよび/またはMNCを製薬上許容可能な担体と一緒に含み、(2)患者への投与のために意図される組成物を意味する。好ましい一実施形態では、NPCおよびMNCの混合物は意図されたように発現される。他の好ましい実施形態では、NPCは実質的にMNCを伴わずに存在する。さらに他の好ましい実施形態では、MNCは実質的にNPCを伴わずに存在する。
【0032】
「骨髄付着幹細胞」とは、種々の細胞型:骨細胞(osteocyte)、軟骨細胞(chondrocyte)、脂肪細胞(adipocyte)、ならびに他の種類の結合組織細胞、例えば腱中の細胞:を生じる有糸分裂的多能性細胞の一型を意味する。
【0033】
「MASC由来ニューロン細胞(MNC)」とは、(1)骨髄付着幹細胞に由来する、ならびに(2)ニューロンマーカーを免疫組織化学的に発現氏、そして電気生理学的分析においてニューロン特性を示す有糸分裂後ニューロンを意味する。in vitroでMNCを生成する適切な方法は、PCT/JP03/01260に見出され得る。当該技術分野で既知の他の技法を用いて産生されるMNCも、それらが本明細書中に記述されるMNCの定義を満たす限り、本発明の実施に用いられ得る。一実施形態では、ヒトMNCは、MAP‐2+、神経細繊維‐M+およびベータチューブリンIII+(即ちTuJ‐1+)である。これらのマーカーは、PCT/JP03/01260中に開示された技法を用いたMNCの産生後にFACSを用いてMNCを単離するために用いられ得る。MNCの取り扱いの適切な方法は慣用的に既知であり、例としては、米国特許第6,833,269号(Carpenter)に開示された方法が挙げられる。
【0034】
「MCAo」とは、大脳中央動脈閉塞を意味する。
【0035】
「MCAl」とは、大脳中央動脈結紮を意味する。
【0036】
「神経形成」とは、問題の患者の組織の領域におけるニューロンおよびニューロン組織の(再)生成、例えば中枢神経系病変における損傷ニューロンの置換(これに限定されない)を意味する。
【0037】
「ニューロン前駆体細胞(NPC)」とは、有糸分裂的であり、ニューロン前駆体/神経始原細胞に特異的ネスチンおよびその他の細胞マーカーを発現し、そしてMASC由来である細胞を意味する。NPCは、ニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞、ならびに前期のいずれかの前駆体に分化し得る。一実施形態では、NPCは、PCT/JP03/01260に開示された方法に従って骨髄付着幹細胞(MASC)から産生され得る。当該技術分野で既知の他の技法を用いて産生されるNPCも、それらが本明細書中に記述されたNPCの定義を満たす限り、本発明の実施に用いられ得る。好ましくはNPCはヒトNPCを含むが、しかし他の哺乳類種のNPCも本発明の範囲内に包含される。一実施形態では、NPC、好ましくはヒトNPCは、CD29+、CD90+、CD105+、CD31−、CD34−およびCD45−である。これらのマーカーは、PCT/JP03/01260中に開示された技法を用いたNPCの産生後にFACSを用いてNPC、好ましくはヒトNPCを単離するために用いられ得る。NPCの取り扱いの適切な方法は慣用的に既知であり、例としては、公開済み米国特許出願第20020012903号(Goldman等)に開示された方法が挙げられる。
【0038】
「ニューロン(単数または複数)」とは、1つまたは複数の樹状突起および単一軸索を有する有核細胞体からなる、脳、脊柱および神経を構成するインパルス伝達細胞のいずれかを意味する。生化学的に、ニューロンは、Map、神経細繊維‐Mおよびベータ・チューブリンIII(TuJ‐1)に対する抗体との反応により特性化される。神経細胞は、神経伝達物質シンセターゼまたは神経伝達物質関連タンパク質の存在により、そして神経伝達物質、例えば神経ペプチドYおよびサブスタンスPの分泌によっても特性化される。
【0039】
「ニューロンの」とは、ニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞、ならびに前記のいずれかの前駆体を意味する。
【0040】
「患者」とは、疾患または障害のための治療を必要とする動物、典型的には哺乳類、さらに典型的にはヒトを意味する。
【0041】
「製薬上許容可能な担体」とは、NPCの、またはMNCの製剤投与と適合性である任意のおよびすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌薬、抗真菌薬、凍結保護物質、等張および吸収遅延薬等を意味する。このような媒質および作用物質の使用は、当該技術分野で周知である。任意の慣用的媒質または作用物質がNPCと、またはMNCと非適合性である限りを除いて、本発明のGFU中でのその使用が意図される。
【0042】
「全身的に」とは、患者の至るところ、あるいは患者の実質的部分の至るところを意味する。
【0043】
「組織」とは、類似の構造および機能を有する細胞の集合体から成る生物体の一部を意味する。本発明による好ましい組織は、神経組織である。
【0044】
「TGI」とは、一過性全虚血を意味する。
【0045】
「移植(transplantation)」(「(engraftment)」と同義的に用いられる)は、患者の一領域における非内因性細胞の配置を意味する。移植は同種異系であり得るし、あるいは非自己細胞が移植される。移植は自己由来でもあり得るし、あるいは例えば同一患者において、一組織から別の組織に、自己細胞が移植される。
【0046】
「分化転換される(transdifferentiated)」とは、その細胞型と古典的に関連したものとは異なる系列に沿った細胞の発達を意味する。
【0047】
A. NPCならびにその製剤組成物
一実施形態では、NPCは、患者に移植されるGFUの一部として、本発明の実施に用いられる。その意図は、NPCは増殖し、患者の中枢神経系病変の機能的回復において一役を演じるニューロン細胞に分化する、ということである。例えばNPCは、損害内因性ニューロンに取って代わるニューロンに分化し得る。あるいはNPCは、増殖因子を分泌する神経膠細胞またはニューロンに分化し得る。これらの増殖因子は、損害ニューロンに及ぼす栄養活性を有し、そしてそれらの機能的回復を手助けし得る。そのようにして、中枢神経系病変の治療が可能である。
【0048】
好ましいNPCならびにこのようなNPCを提供する好ましい方法は、PCT/JP03/01260(Dezawa等)(表題:Method of Differentiating/Inducing Bone Marrow Interstitial Cells into Nerve Cells and Skeleton Muscle Cells by Transferring Notch Gene (“Dezawa”))に開示されている。特に、Dezawa全体に、そして特に実施例7に記載されるようなDezawaの「ニューロン前駆体細胞」は、本発明のNPCとして用いられ得る。MASCは、その場合、本発明のNPCとして有用であるニューロン前駆体細胞に分化転換され得る、ということを、Dezawaは開示する。
【0049】
実施形態では、GFUは、本発明の実施において有用であり得る。本発明のGFUに有用な製薬上許容可能な担体としては、以下のものが挙げられる:滅菌等張緩衝液、FRS、イソライト、滅菌希釈液、例えば水、通常生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗細菌または抗真菌薬、例えばアスコルビン酸、チメロサール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、ナリジクス酸、馬尿酸メセナミンまたはニトロフラントインマクロクリスタル等;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整され得る。
【0050】
一実施形態では、本発明で用いるのに適した移植片形成単位は、NPCを含む滅菌組成物を含む。静脈内投与に関して、適切な製薬上許容可能な担体としては、生理食塩溶液、ノルマゾル(normasol)、イソライト、プラズマライトまたはリン酸塩緩衝生理食塩溶液(PBS)が挙げられる。すべての場合、GFUは滅菌性でなければならず(存在する任意のNPCまたはMNC以外)、そして易注射可能性が存在する程度に流動性である必要がある(適正な流動性は、例えばレシチンのような物質を用いることにより、分散液の場合はある粒子サイズを保持することにより、そして界面活性剤を含むことにより、保持され得る)。GFUは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして上記のような微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。ある種の場合、GFU中に、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、塩化ナトリウム、LiCl、酪酸Naおよびオルトバナジウム酸ナトリウムを含むことが好ましい。一般的に、本発明のGFUは、塩基性分散媒質および任意に上で列挙されたものからの他の成分を含有する滅菌ビヒクル中にNPCを組入れることにより調製され得る。
【0051】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、移植片形成単位剤形中に本発明のGFUを処方することは、特に有益である。移植片形成単位剤形は、本明細書中で用いる場合、治療されるべき被験者に関する単位投薬量として適合される物理的離散単位を指す。一実施形態では、各GFU剤形は、必要な製剤担体と関連して所望の治療作用を生じるよう算定された予定量のNPCを含有する。本発明の移植片形成単位剤形に関する細目は、NPCの独特の特質、達成されるべき特定の治療作用、ならびに個体の治療のためのNPCの調合の技術分野に固有の制限によって、ならびに直接的に、指図される。各移植片単位剤形中のNPCの数は、好ましくは約1000細胞から約10億細胞、好ましくは約10,000細胞から約1億細胞、さらに好ましくは約50,000細胞から約5000万細胞まで変わり得る。各移植片単位剤形中のNPCの濃度は、好ましくは約100細胞/μL〜約100,000細胞/μL、さらに好ましくは約1,000細胞/μL〜約50,000細胞/μLまで変わり得る。
【0052】
GFUは、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための計器と一緒に含まれ得る。移植片は、好ましくは約37℃で保存される。
【0053】
ある種の実施形態では、移植前にNPCを標識することが望まれ得る。これは、移植NPCの移動、移植NPCの分化、移植NPCの生存等を追跡するために、前臨床的(即ち非ヒト)モデルにおいて望まれ得る。種々の細胞標識方法が、標識が読み取られるものである前臨床環境によって用いられ得る。例えば蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質等)は、検出器が移植片部位近くに適切に配置され得る環境においてと同様に用いられ得る。
【0054】
非臨床状況において移植脳を分析する場合、免疫組織化学分析が有用であり得る。一実施形態では、脳切片は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその他の細胞標識、β‐チューブリンIII、NeuN(ニューロン特異的タンパク質)、神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)またはO4(乏突起神経膠細胞特異的タンパク質)に関して二重免疫染色されて、ニューロン、星状細胞、神経膠細胞または乏突起神経膠細胞プロフィールを同定し得る。所定の抗体に関する陽性プロフィールの数、ならびにGFPを発現する細胞の数は、Abercrombie校正基準に従って概算され得る。分布容積および総GFP(または他の標識)陽性プロフィールは、5切片毎における少なくとも10%のGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の面積を確定し、そしてGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の前面からの距離を掛けることにより、算定され得る。
【0055】
一実施形態では、GFPを用いてNPCを標識する場合、以下の物質が有用である:
【0056】
物質:冷凍保存NPC、PBS(Invitrogen 14190-136)、HTS‐FRS(BioLife Solution 99-609-DV)、GFP‐レンチウイルスストック懸濁液(約107/mlの力価を有する)、臭化ヘキサミジン(ポリブレン)(Sigma(H-9268)-1
または2凍結アリコート@10 mg/ml)、滅菌水、USP、Opti‐MEM(Invitrogen)、およびウシ胎仔血清(Hyclone)。
【0057】
GFP‐レンチウイルスストック懸濁液は市販されているし、あるいは市販のキット、例えばViraPowerレンチウイルス発現系(Invitrogen, Carlsbad、 CAから入手可能)を用いて作製され得る。特にpLenti6/V5 Gatewayベクターは、メーカーの指示に従って、GFPカセットと組合せされて、結局、適切なGFP‐レンチウイルス懸濁液を生じ得る。
【0058】
一実施形態では、標識は、上記のInvitrogen系のようなメーカーから入手可能なトランスフェクションプロトコールに従って実施され得る。
【0059】
別の実施形態では、GFPを用いて標識する場合、以下の方法が有用であり得る:細胞取り扱い手順は、遠心分離ステップを除いて、好ましくはBiohazard Safety Cabinet Level-2で実施される。ポリブレンストック溶液は、滅菌水、USP1 ml中にポリブレン10 mgを溶解し、そして0.25ミクロンフィルターを通して濾過することにより調製され得る。その結果生じる濾過ストック溶液は、アリコートに分けられて、−20℃で光から保護されて保存され得る。
【0060】
ウイルス感染前日、200万細胞/フラスコの密度で細胞培地30 mlを含有するT225フラスコ中でNPCをプレート化し;そして37℃/5%CO2インキュベーター中で一晩、細胞を培養する。
【0061】
ウイルス感染当日、室温でレンチウイルスストックを、そして37℃水浴中でポリブレンストック溶液を解凍する。50 mlファルコン管中で、アルファMEM中加温前(37℃)10%FBS45 mlおよび解凍ウイルスストック5 mlを付加して、約10のMOIを有する培地を得る。10 ug/ml(1,000×希釈)の最終濃度で解凍ポリブレンを付加する。T225フラスコから古い培地を除去し、ウイルス混合物をフラスコに付加し、静かに3〜4回前後に揺する。フラスコを37℃/5%CO2インキュベーター中に戻す。
【0062】
翌日、フラスコからウイルス培地を完全に除去する。アルファMEM中の10%FBSで6×30 mlを洗浄する。感染性試験のために、各洗浄から5 mlを収集する。新しい培地に取り替えて、フラスコをインキュベーター中に戻す。
【0063】
次の日、ウイルス感染細胞を収穫し、計数して、それらをHTS‐FRS中の総容積360 ulに再懸濁して、1.5 ml滅菌DNアーゼ無含有RNアーゼ無含有、発熱物質無含有遠心分離管に移す。適切な移植容積と釣り合うよう、感染細胞濃度が設定され得る。次に細胞は、移植片投与のために用いるまで、湿潤氷上に保持され得る。
【0064】
B. MNC、およびその製剤組成物
一実施形態では、MNCは、患者に移植される移植片の一部として、本発明の実施に用いられる。その意図は、MNCは、問題の患者の組織の領域の機能的回復において一役を演じる、ということである。そのようにして、中枢神経系病変の治療が可能である。
【0065】
好ましいMNCならびにこのようなMNCを提供する好ましい方法は、PCT/JP03/01260(Dezawa等)(表題:Method of Differentiating/Inducing Bone Marrow Interstitial Cells into Nerve Cells and Skeleton Muscle Cells by Transferring Notch Gene (“Dezawa”))に開示されている。特に、Dezawa全体に、そして特に実施例1に記載されるようなDezawaの「神経細胞」は、本発明のMNCとして用いられ得る。骨髄付着幹細胞は、その場合、本発明のMNCとして有用であるニューロン細胞に分化転換され得る、ということを、Dezawaは開示する。
【0066】
好ましい一実施形態では、MNCは、神経栄養性作用物質を用いてNPCから生成され得る。有用な神経栄養作用物質としては、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)および毛様体神経栄養因子(CNTF)が挙げられるが、これらに限定されない。神経栄養作用物質をin vitroでNPCとともに用いる適切な方法は、PCT/JP03/01260に見出され得る。
【0067】
実施形態では、GFUは、本発明の実施において有用であり得る。本発明のGFUに有用な製薬上許容可能な担体としては、以下のものが挙げられる:滅菌等張緩衝液、FRS、イソライト、滅菌希釈液、例えば水、通常生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗細菌または抗真菌薬、例えばアスコルビン酸、チメロサール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、ナリジクス酸、馬尿酸メセナミンまたはニトロフラントインマクロクリスタル等;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整され得る。
【0068】
一実施形態では、本発明で用いるのに適した移植片形成単位は、MNCを含む滅菌組成物を含む。静脈内投与に関して、適切な製薬上許容可能な担体としては、生理食塩溶液、クレモフォアEL.TM.(BASF;Parsippany, N.J.)、ノルマゾル(normasol)、イソライト、プラズマライトまたはリン酸塩緩衝生理食塩溶液(PBS)が挙げられ得る。すべての場合、GFUは滅菌性でなければならず(存在する任意のNPCまたはMNC以外)、そして易注射可能性が存在する程度に流動性である必要がある(適正な流動性は、例えばレシチンのような物質を用いることにより、分散液の場合はある粒子サイズを保持することにより、そして界面活性剤を含むことにより、保持され得る)。GFUは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして上記のような微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。ある種の場合、GFU中に、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、塩化ナトリウム、LiCl、酪酸Naおよびオルトバナジウム酸ナトリウムを含むことが好ましい。一般的に、本発明のGFUは、塩基性分散媒質および任意に上で列挙されたものからの他の成分を含有する滅菌ビヒクル中にNPCを組入れることにより調製され得る。
【0069】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、移植片形成単位剤形中に本発明のGFUを処方することは、特に有益である。移植片形成単位剤形は、本明細書中で用いる場合、治療されるべき被験者に関する単位投薬量として適合される物理的離散単位を指す。一実施形態では、各GFU剤形は、必要な製剤担体と関連して所望の治療作用を生じるよう算定された予定量のMNCを含有する。本発明の移植片形成単位剤形に関する細目は、MNCの独特の特質、達成されるべき特定の治療作用、ならびに個体の治療のためのMNCの調合の技術分野に固有の制限によって、ならびに直接的に、指図される。各移植片単位剤形中のMNCの数は、好ましくは約1000細胞から約10億細胞、好ましくは約10,000細胞から約1億細胞、さらに好ましくは約50,000細胞から約5000万細胞まで変わり得る。各移植片単位剤形中のMNCの濃度は、好ましくは約100細胞/μL〜約100,000細胞/μL、さらに好ましくは約1,000細胞/μL〜約50,000細胞/μLまで変わり得る。
【0070】
GFUは、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための計器と一緒に含まれ得る。移植片は、好ましくは約4℃で保存される。
【0071】
ある種の非臨床的実施形態では、移植前にMNCを標識することが望まれ得る。これは、移植MNCの移動、移植MNCへのさらなる変化、移植MNCの生存等を追跡するために、望まれ得る。種々の細胞標識方法が、標識が読み取られるものである前臨床環境によって用いられ得る。例えば蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質等)は、検出器が移植片部位近くに適切に配置され得る環境においてと同様に用いられ得る。標識は、慣用的方法、例えば上記のInvitrogenGFP‐レンチウイルス系を用いて実施され得る。
【0072】
非臨床状況において移植脳を分析する場合、免疫組織化学分析が有用であり得る。一実施形態では、脳切片は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその他の細胞標識、β‐チューブリンIII、NeuN(ニューロン特異的タンパク質)、神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)またはO4(乏突起神経膠細胞特異的タンパク質)に関して二重免疫染色されて、ニューロン、星状細胞、神経膠細胞または乏突起神経膠細胞プロフィールを同定し得る。所定の抗体に関する陽性プロフィールの数、ならびにGFPを発現する細胞の数は、Abercrombie校正基準に従って概算され得る。分布容積および総GFP(または他の標識)陽性プロフィールは、5切片毎における少なくとも10%のGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の面積を確定し、そしてGFP陽性(または他の標識陽性)プロフィールを含有する脳の前面からの距離を掛けることにより、算定され得る。一実施形態では、MNCは、pBabe neo‐GFPベクターを介してレトロウイルス感染を用いて蛍光的に標識され得る(M. Dezawa et al., ”Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of in vitro differentiated bone-marrow stromal cells.” Eur J Neurosci. 2001; 14: 1771-6)。本手順は、他の蛍光タンパク質がベクター中に組入れられ得るよう、修正され得る。
【0073】
C. NPC移植
一実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され得るし、そして患者に投与されるべきNPCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のNPCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0074】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0075】
本発明のNPCおよび/またはGFUは患者に全身投与され得るが、この場合、非経口投与、例えば静脈内(i.v.)または動脈内(例えば内頸または外頸動脈を介する)投与が好ましい全身投与経路である。全身投与技法は、前駆体細胞、一般的に例えばD Lu et al., ”Intraarterial administration of marrow stromal cells in a rat model of traumatic brain injury.” J Neurotrauma. 2001 Aug; 18 (8): 813-9に開示されたものを投与するために用いられる技法から適合され得る。
【0076】
実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所的に投与され得る。好ましい実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にNPCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるNPCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのNPCのより精確なターゲッティングである。
【0077】
中枢神経系病変に移植する場合、移植は、定位的外科的手順を用いて実行され得る。このような手順では、患者は麻酔される。患者の頭部はMRI適合性定位枠中に置かれ、そしてマイクロインジェクターを有するマイクロポジショナーは頭蓋上に配置される。標的部位の真上の硬膜の領域を露出するために、歯科用ドリルまたはその他の適切な器具を用いて、患者の頭蓋骨にバー・ホール(burr hole)を作り得る。
【0078】
一実施形態では、26‐ゲージ針およびHamilton微量注射器(またはその他の適切なサイズの注射器)を用いた針通路が作製され、この場合、針はMRI画像を用いて移植片部位に手動で導かれて、NPCおよび/またはGFUの適正な配置を保証する。注射、好ましくはボーラス注射は、移植片部位(単数または複数)になされ得る。注入速度は変わり得るし、好ましくは注入容積は約0.1〜約10 μL/分、さらに好ましくは約0.5〜約5 μL/分、さらに好ましくは約1.0〜約3.0 μL/分である。一実施形態では、針は、注入後一定期間、好ましくは約1〜約10分間、さらに好ましくは約5分間、適所に残され得る。その期間後、針が適所に残される場合、針は短距離、好ましくは約1 mm〜約10 mm、さらに好ましくは約2 mm、引張り上げられ、そして次に、さらなる期間、好ましくは約5分〜約30分、さらに好ましくは約15分間、適所に保持され得る。次に注射器が患者から除去され、創傷部位が解剖層中に閉鎖され、患者は麻酔からの回復のためにモニタリングされ得る。
【0079】
鎮痛薬(例えばブプレノルフィン)および抗生物質(例えばセファゾリン、50 mg/kg、IM、1日2回×5日)が、必要な場合、外科手術/術後手順の一部として投与され得る。抗生物質治療は、術後、長期間、好ましくは術後30日まで継続されて、日和見感染を抑制し得る。
【0080】
移植のための付加的技法は、K S Bankiewicz et al., ”Technique for bilateral intracranial implantation of cells in monkeys using an automated delivery system.” Cell Transplantation, 9 (5): 595-607 (2000)に見出され得る。
【0081】
ある種の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の移植片および/またはNPCと一緒に投与され得る。これらの薬は、特に移植片および/またはNPCが全身投与される場合、患者の免疫系によるNPCの拒絶を抑制するのを手助けし得る。本発明の実施に有用な免疫抑制薬の例としては、抗代謝物質、例えばアザチオプリン、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセートまたはメルカプトプリン(6‐MP)、ミコフェノレート(CellCept)、シクロスポリン‐Aおよびタクロリムス(FK‐506)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい免疫抑制薬はCsAである。CsAは、例えばSandimmune(登録商標), Injection;Novartis Pharmaceuticals Corporation(Novartis), East Hanover, NJ;製造元:Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandのように種々の供給元から入手し得る。
【0082】
免疫抑制薬は、種々の経路により、例えば経口的、腹腔内および静脈内により投与され得る。免疫抑制薬の用量投与は、免疫抑制薬の性質および患者により変わり得る。一実施形態では、免疫抑制薬は、移植当日に開始し(処置後約4時間)、その後24時間間隔で継続して用量投与され得る。投薬量範囲は、好ましくは約0.5 mg/kg/日から約100 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約50 mg/kg/日まで変わり得る。静脈内注射は、好ましくは約0.005〜約0.100 μL/分、さらに好ましくは約0.050 μL/分の範囲の流量で、ボーラスとして投与され得る。
【0083】
本発明のNPCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され、そして患者に投与されるべきNPCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のNPCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0084】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0085】
実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所投与され得る。好ましい一実施形態では、本発明のNPCおよび/またはGFUは実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にNPCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるNPCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのNPCのより精確なターゲッティングである。
【0086】
D. MASC由来ニューロン細胞移植
一実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、慣用的プロトコールおよび投与経路を用いて投与され得るし、そして患者に投与されるべきMNCおよび/またはGFUの量は、慣用的用量変動技法を用いて最適化され得る。本発明のMNCおよび/またはGFUは、単独で、あるいは他の物質または組成物と組合せて投与され得る。投与経路は、当業者に既知の慣用的投与経路から選択され得る。
【0087】
移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により(これらに限定されない)、あるいは例えば生分解性カプセルを保菌者内に植え込むことにより、実行され得ると意図されるが、しかし他の投与経路も本発明の範囲内である。
【0088】
実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、患者の中枢神経系病変に局所的に投与され得る。好ましい実施形態では、本発明のMNCおよび/またはGFUは、実質内経路により投与され得る。患者の中枢神経系病変に局所的にMNCおよび/またはGFUを投与する利点は、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でない、という点である。したがって宿主によるMNCの免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要とされ得る場合でさえ、移植片生存の機会が増大され得る。局所投与の別の利点は、CNS病変へのMNCのより精確なターゲッティングである。
【0089】
中枢神経系病変に移植する場合、移植は、定位的外科的手順を用いて実行され得る。このような手順では、患者は麻酔される。患者の頭部はMRI適合性定位枠中に置かれ、そしてマイクロインジェクターを有するマイクロポジショナーは頭蓋上に配置される。標的部位の真上の硬膜の領域を露出するために、歯科用ドリルまたはその他の適切な器具を用いて、患者の頭蓋骨にバー・ホールを作り得る。
【0090】
一実施形態では、26‐ゲージ針およびHamilton微量注射器(またはその他の適切なサイズの注射器)を用いた針通路が作製され、この場合、針はMRI画像を用いて移植片部位に手動で導かれて、MNCおよび/またはGFUの適正な配置を保証する。注射、好ましくはボーラス注射は、移植片部位(単数または複数)になされ得る。注入は変わり得るし、好ましくは注入容積は約0.1〜約10 μL/分、さらに好ましくは約0.5〜約5 μL/分、さらに好ましくは約1.0〜約3.0 μL/分である。一実施形態では、針は、注入後一定期間、好ましくは約1〜約10分間、さらに好ましくは約5分間、適所に残され得る。その期間後、針が適所に残される場合、針は短距離、好ましくは約1 mm〜約10 mm、さらに好ましくは約2 mm、引張り上げられ、そして次に、さらなる期間、好ましくは約5分〜約30分、さらに好ましくは約15分間、適所に保持され得る。次に注射器が患者から除去され、創傷部位が解剖層中に閉鎖され、患者は麻酔からの回復のためにモニタリングされ得る。
【0091】
鎮痛薬(例えばブプレノルフィン)および抗生物質(例えばセファゾリン、50 mg/kg、IM、1日2回×5日)が、必要な場合、外科手術/術後手順の一部として投与され得る。抗生物質治療は、術後、長期間、好ましくは術後30日まで継続されて、日和見感染を抑制し得る。
【0092】
移植のための付加的技法は、K S Bankiewicz et al., ”Technique for bilateral intracranial implantation of cells in monkeys using an automated delivery system.” Cell Transplantation, 9 (5): 595-607 (2000)に見出され得る。
【0093】
ある種の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の移植片および/またはMNCと一緒に投与され得る。これらの薬は、患者の免疫系によるMNCの拒絶を抑制するのを手助けし得る。本発明の実施に有用な免疫抑制薬の例としては、抗代謝物質、例えばアザチオプリン、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセートまたはメルカプトプリン(6‐MP)、ミコフェノレート(CellCept)、シクロスポリン‐Aおよびタクロリムス(FK‐506)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい免疫抑制薬はCsAである。CsAは、例えばSandimmune(登録商標), Injection;Novartis Pharmaceuticals Corporation(Novartis), East Hanover, NJ;製造元:Novartis Pharma AG, Basel, Switzerlandのように種々の供給元から入手し得る。
【0094】
免疫抑制薬は、種々の経路により、例えば経口的、腹腔内および静脈内により投与され得る。免疫抑制薬の用量投与は、免疫抑制薬の性質および患者により変わり得る。一実施形態では、免疫抑制薬は移植の2日前に用量投与され、その後、適切な間隔で継続する。一実施形態では、免疫抑制薬は、移植当日に開始し(処置後約4時間)、その後24時間間隔で継続して用量投与され得る。投薬量範囲は、好ましくは約0.5 mg/kg/日から約100 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約75 mg/kg/日まで、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約50 mg/kg日まで変わり得る。静脈内注射は、好ましくは約0.005〜約0.100 μL/分、さらに好ましくは約0.050 μL/分の範囲の流量で、ボーラスとして投与され得る。
【0095】
E. NPCの実験的観察および利点
NPCを含む製剤組成物を含めたNPCの自家および異系間移植の両方は本発明により意図されるが、しかし異系間移植(同一種移植片形成単位)が好ましい。一実施形態では、異系間移植は、中枢神経系病変に罹患している患者におけるNPCの異系間移植が起こり得る臨床設定を模倣する。本明細書中に開示されるのは、中脳動脈閉塞(MCAo)、中脳動脈結紮(MCAl)または一過性全虚血(TGI)に付された成体雄Sprague-Dawleyラットの脳への本発明によるNPCの定位的移植からの結果である。これらのモデルは、中枢神経系病変の治療における本発明の効能を理解するのに有用である。これらのモデルのさらなる考察は、文献中に、特にC. Borlongan et al., ”Transplantation of cryopreserved human embryonal carcinoma-derived neurons (NT2N cells) promotes functional recovery in ischemic rats.” Exp Neurol. 1998; 149: 310-21;およびC. Borlongan et al., ”Glial cell survival is enhanced during melanonin-induced neuroprotection against cerebral ischemia.” FASEB J. 2000; 14: 1307-17に見出され得る。各卒中動物は、3つの細胞投与量:すなわち約40,000、100,000および200,000生育可能NPC(これらの数は、本明細書中で以後用いられる場合、およその数値であると理解される):のうちの1つを含む移植片を受容した。移植は、卒中後約6週間で実行され、そして動物は、移植後生存期間中ずっと、シクロスポリンA(10 mg/kg、腹腔内)で毎日免疫抑制された。移植ラットの運動および認知遂行が移植後4週間の期間に亘って毎週、そして移植後12週目にもう一度、特性化された。脳虚血および移植片生存の程度についての組織学的検査は、移植後5週および12週目に無作為選択動物で検査した。
【0096】
以下でさらに詳細に記述されるような卒中手術および移植手順の両方の結果確定に、以下の試験が用いられた。これらの試験の実施方法は本明細書中の他の箇所に記述されており、さらにまた当業者に理解され得る。
【0097】
【表1】
【0098】
以下の実施例で得られるデータは、試験したモデルにおいて、NPCを移植された動物は、それらの移植前ベースライン遂行と比較して、運動および認知遂行の両方において有意の改善を示す、ということを明示した。約100,000および200,000細胞というより高いほうの2つの用量は、約40,000細胞という低いほうの細胞投与量と比較して、より良好な挙動作用を促し、したがって用量‐応答関係を示唆する。卒中誘導性挙動欠陥からの強靭な回復は、移植後1週間という早期に認められ、そして移植後4週間の期間に亘って持続される。運動遂行における有意の改善(上昇体スウィング試験およびBenderson試験を使用)は、3つの卒中型すべてで観察された。これに対して、認知遂行における有意の改善(Morris水迷路使用)は、MCAI移植動物と比較して、MCAoおよびTGI移植動物では、より強く且つ安定していた。卒中移植動物はすべて健康そうに見え、そして試験期間中に観察可能な挙動に顕れる悪作用を認められなかった。
【0099】
卒中の型は機能的回復における一因子であると思われ、この場合、卒中動物はすべて運動遂行における有意の改善を示すが、一方、MCAoおよびTGI移植動物は、MCAl移植動物と比較して、認知遂行におけるより良好な回復を示した。MCAoおよびTGI移植動物における運動および認知機能の両方の有意の回復の実証は、基底核および海馬損害を生じたこれら2つの卒中モデルはそれぞれ、NPC移植に対して応答性である、ということを示唆する。これらの観察の臨床的適用への外挿は、固定基底核および海馬卒中を有する患者はNPC移植から利益を得る、ということを示す。
【0100】
移植後5および12週目の組織学的結果は、NPC移植片生存が観察された機能的作用に介在した、ということを示す。データは、100,000および200,000NPCの移植が40,000細胞という低用量よりも良好な挙動回復を生じた、ということを示唆する。移植片生存および挙動作用間の相関分析は、NPCの生存が卒中動物における運動および認知回復を促進した、ということをさらに支持する。注釈のうち、移植片生存はレンチウイルス標識アプローチを用いて確定され、そしてこの戦略は移植NPCのマーキングに関して信頼がおけることが示された。さらにまた、この方法を用いて、NPC移動が容易に追跡された。
【0101】
卒中型によって、MCAoおよびMCAlの両方において認められるような、脳損害が重症であるほど、NPCの移動は良好である、と思われる。これに対して、TGIにより引き起こされる軽症脳損害は、より少ない細胞移動を生じたように見える。損傷の部位への長距離を移動するNPCの観察される能力は、特定卒中標的部位に移動するそしてそれに及ぼす修復作用を発揮するその能力を示す。以下の実施例で提供される結果は、移動するNPCがニューロン表現型により分化するように思われる、という見地を支持する。移動細胞のこの好ましい分化に清得た多数の因子が存在し、例としては宿主微小環境および卒中の型(細胞死の位置および程度/型)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
F. MNCの実験的観察および利点
MNCを含む製剤組成物を含めたMNCの自家および異系間移植の両方は本発明により意図されるが、しかし異系間移植(同一種移植片形成単位)が好ましい。一実施形態では、異系間移植は、中枢神経系病変に罹患している患者におけるMNCの異系間移植が起こり得る臨床設定を模倣する。卒中の動物モデルにおけるMNCの異系間委嘱の動物試験からの結果は、以下のセクションJに提示される。これらのモデルは、中枢神経系病変の治療における本発明の効能を理解するのに有用である。
【0103】
セクションJにおける結果は、対照およびMASC群と比較して、MNC群が挙動査定試験において有意の改善を示した、ということを示唆する。組織学的分析では、MCAo後41日目に測定された梗塞容積は3つの群の間の有意差を示さなかった。MASCと比較して、MNCはより高い生存率を実証し、そして大きな割合のMNCが宿主脳におけるニューロンマーカー陽性および神経突起延長を示した。
【0104】
MASC群は、対照群と比較して挙動査定試験におけるわずかな改善を実証したが、しかしNMC群ほど大きな改善ではなかった。
【0105】
本発明によるMNC移植の別の利点は、例えば多能性MASCと比較した場合の、MNCのより大きな生存率である。移植1ヵ月後、移植MNCの約30〜45%が検出されたが、一方、移植MASCは10〜20%が検出されただけであった。MNCのより大きな生存率が、機能的回復における利点を提供し得る。
【0106】
近年の研究では、皮質、線条体および海馬におけるいくつかのMNCは、宿主脳における神経炎の拡張を実証したが、これは、MASC群においては観察され得なかった。それゆえ、MNC群における有意の挙動改善は、移植MNCが宿主脳におけるニューロン特質を保持し、そしてMCAOラットモデルにおける機能的回復に寄与する、ということを示唆した。
【0107】
G. NPC実施例
本明細書中に記述される実施例は、本発明の範囲を例証するよう意図されるが、いかなる点においても本発明を限定するものではない。
【0108】
実験手順: 全動物に、最初にMCAo、MCAlまたはTGI卒中外科手術を施した。手術後約6週間目に、上昇体スウィング試験、Bederson試験およびMorris水迷路仕事で、動物を試験した。有意の運動欠陥を示す動物のみを、移植手術のためにその後用いて、以下の処置のうちの1つに無作為に割り当てた。試験の各部門に関する試料サイズを、表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
卒中手術を受けた動物すべてに、3針通路(MCAoおよびMCAl)または2針通路(TGI)の移植片を施して、シクロスポリンA(10 mg/kg、腹腔内)で毎日処置した。
【0111】
動物を、移植後最初の4週間、毎週試験した。脳梗塞、ならびに移植片生存、表現型発現および移動の組織学的分析のために、移植後5週目に、動物の半数を安楽死させた。残りの動物を再び挙動試験して、その後、NPCの長期挙動的および組織学的作用を査定するために、卒中後12週目に安楽死させた。明らかにするために、模式図を以下に提示する。
【0112】
【表3】
【0113】
GFP‐レンチウイルスベクター系を用いた細胞標識: GFP‐レンチウイルス系は、ジュネーブ大学(Geneva, Switzerland)のDidier Trono博士に提供して頂いた。以下の一般スキームに従って、NPCを標識した。方法には小変更を加えた。
【0114】
必要な材料
10 mg/mL ポリブレン・ストック溶液/滅菌濾過(Sigma)
Opti‐MEM培地(Gibco/Invitrogen)
1%ウシ胎仔血清(抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)含有)
6ウエルプレート約1×106 San-Bio細胞
ウイルス懸濁液
【0115】
詳細な手順
1. 37℃インキュベーター中で細胞培地を暖める。
2. ポリブレンを付加して、10 μg/mLとする(10 mg/mLポリブレン・ストック溶液10 μLを培地10 mLに付加する。ウエルを混合する)。
3. 別個の試験管中で、ポリブレンを含有する培地1 mLにウイルス懸濁液1 mLを付加する。
4. 37℃水浴中でSanBio細胞アリコートを迅速に解凍する。70%エタノールでウイルスをすすぐ;拭き取り乾燥する。
5. 全内容物を、予熱PBS10 mLを含有する15 mL遠心管に付加し;静かに混合して、低速臨床遠心分離機で、室温で5分、1000 RPMで回転する。
6. 上清を静かにピペット分取し、そしてウイルスを含有する予熱培地(ステップ3から)2 mL中に細胞ペレットを再懸濁する。
7. 6‐ウエルプレートの1ウエルに内容物を移し;37℃インキュベーター中に入れて;3時間インキュベートする。
8. 予熱PBS10 mL中で細胞を2回洗浄する。
9. 選択するPBSまたは培地20 μL中に細胞を再懸濁する。1.5 mLエッペンドルフ管に移す。氷上に保持する。細胞は移植の容易ができている。
【0116】
挙動試験: 本発明によるNPCの薬理学的試験において、動物を以下の感覚運動および認知挙動測定に付した:
上昇体スウィング試験(EBST)
Morris水迷路(MWM)
Bederson神経学的スケール
【0117】
上昇体スウィング試験(EBST)
上昇体スウィング試験(EBST)は、基本姿勢反射および非対称的体幹機能を測定する。EBST試験は、齧歯類におけるMCAoおよびMCAl虚血後の長期永続性欠陥を示すために実証された(C. Borlongan et al., ”Locomotor and passive avoidance deficits following occlusion of the middle cerebral artery.” Physiol Behav. 1995, 58: 909-17)。C. Borlongan et al., ”Early assessment of motor dysfunctions aids in successful occlusion of the middle cerebral artery.” Neuroreport. 1998b; 9: 3615-21も参照されたい。それは、慢性卒中に関する神経移植範例でも評価されている(C. Borlongan et al., ”Early assessment of motor dysfunctions aids in successful occlusion of the middle cerebral artery.” Neuroreport. 1998; 9: 3615-21)。
【0118】
EBSTは、その尾を持って動物を取り扱い、そしてスウィングの方向を記録することを包含する。試験装置は、透明プレキシガラス箱(40×40×35.5 cm)で構成された。動物を尾の基部で静かに摘み上げて、そして動物の鼻が表面上2インチ(5 cm)の高さになるまで、尾を持って上げた。動物の頭が身体の正中線位置から横に約10度移動したら1回、スウィングの方向(左または右)を計数した。1回スウィング後、動物をプレキシガラス箱に戻し入れ、そして30秒間自由に動かせた後、再試験する。通常、無傷ラットは50%スウィングバイアスを示し、即ち左へのスウィングと右へのスウィングは同数である。75%スウィングバイアスは、20試験中、一方向に15スウィングそして他方向に5スウィングを示す。EBSTを用いた前研究は、黒質線条体病変後1ヶ月目に、病変動物は>75%偏向スウィング活性を示し;非対称は6ヶ月までの間安定である、ということに注目した。
【0119】
Bederson神経学的検査
Bederson神経学的スケールは、感覚運動仕事を測定する(J. Bederson et al., ”Rat middle cerebral artery occlusion: evaluation of the model and development of a neurologic examination.” Stroke. 1986; 17: 472-6;M. Altumbabic, ”Intracerebral hemorrhage in the rat: effects of hematoma aspiration.” Stroke. 1998; 29: 1917-22)。前研究は、ラットにおけるMCAoおよびMCAl卒中モデルの両方においてBedersonモデルにより測定した場合の長時間に亘る測定可能な欠陥を示した。
【0120】
EBST後約1時間に、上記の手順に従ってBederson神経学的検査を実施する。以下を含めた4つの試験を用いて、各ラットに関する神経学的スコアを得る:
(a)0(旋回なし)から3(連続旋回)まで等級分けした同側性旋回の観察;
(b)対側性後肢退縮。これは、0(即時置換)から3(数分後置換または置換なし)まで等級分けした2〜3 cm側方に転置された後、後肢を置換する動物の能力を測定する;
(c)ビームウォーキング能力。0(幅2.4 cm、長さ80 cmのB無を容易に横断するラット)から3(10秒間ビーム上に留まることができないラット)まで等級分け;
(d)両側性前肢把握。これは、直径2 mmスチール棒上に保持する能力を測定する。0(正常前肢把握挙動を有するラット)から3(前肢で把握できないラット)まで等級分け。
【0121】
各査定日に約15分の時間に亘って実行する4つの試験すべてからのスコアを加えて、神経学的欠陥スコアを得る(最大可能スコア 12)。
【0122】
Morris水迷路(MWM)
Morris水迷路は、認知機能のいくつかの態様、例えば仕事習得および保持、検索戦略、ならびに保存を査定する。水迷路仕事は、線条体および前頭皮質を含めてMCAoにより罹患したいくつかの脳領域における損害に感受性であると推定される。
【0123】
Bederson神経学的検査の約1時間後、空間記憶を査定するために、動物をMorris水迷路に導入する。Morris水迷路は、直径6フィート、深さ3フィートの可膨張性タンクからなる。タンクに水を12 cm充填し、ミルク300 mlを付加することにより不透明にした。直径10 cmの円形表面を有する透明プレキシガラス製の高さ11 cmプラットホームを、プール中の1〜4つの位置に配置した。プラットホームは水の表面下1 cmにあり、したがって水中の動物の視野からは隠れている。プールを等表面積の4分円に分割する。試験ラットをタンクの側面に面するプール中に入れて、4つの出発位置(北、南、東または西)のうちの1つ(無作為に確定)に放し、プール縁上に等距離で随意に配置した。プラットホームをプール縁から25 cmの南‐西4分円の中心に置いた。各試行後、出発点を変更した。無作為に確定した出発位置からの合計3つの試行に関して、プラットホームを見つけ出すために約60秒を動物に与え、そして約30秒間プラットホーム上に休ませて、出発位置に戻した。ラットが隠れたプラットホームを約60秒以内に見つけ出すことができない場合、それをプラットホーム上に載せ、約30秒間、プラットホーム上で休ませた。休憩期間後、ラットをタンク中に戻して、さらに2回の試験のために再び試験した。訓練日は、3つの試験で構成された。試験日は、2日目に実行した(プローブ試験のため。下記参照)。各訓練試行および試験後、次にラットを加熱パッドの上部上のケージ中に入れた。画像分析器を介してコンピューターに接続したビデオカメラにより、遊泳経路をモニタリングした。プラットホームに到達するための逃避待ち時間ならびにプラットホームを見つけ出すために動物が遊泳する経路長を用いて、水迷路仕事の習得を査定した。遊泳速度=経路長/逃避待ち時間を用いて、この仕事におけるラットの運動活性を査定した。プラットホーム位置の想起を査定するために、プール中にプラットホームを用いない60秒プローブ試行に2日目に着手して;前者プラットホーム位置で費やされる時間のパーセンテージをモニタリングした。
【0124】
MCAo卒中外科手術: 無菌条件下で、全外科手術手順を実行した。MCAo卒中手順は、文献から、特にC. Boriongan et al., ”Chronic cyclosporine-A injection in rats with damaged blood-brain barrier does not impair retention of passive avoidance.” Neurosci Res. 1998, 32: 195-200から採用した。1時間閉塞中の脳血流における有意の(>75%)低減を明示するレーザードップラーを用いて、上首尾の閉塞の各動物における確定を得た。MCAoは、一貫した線条体損害を生じた。
【0125】
MCAl卒中外科手術: MCAl外科手術手順は、Y. Wang et al., ”Glial Cell-Derived Neurotrophic Factor Protects Against Ischemia-Induced Injury in the Cerebral Cortex.” 1997, J. Neuroscience; 17 (11): 4341-4348に一般的に記載されている。レーザードップラーは、動脈結紮を立証するためにも用いた。MCAlは、一貫した皮質損害を生じる。
【0126】
TGI卒中外科手術: 4‐血管閉塞技法を用いた。深い麻酔下で、動物に腹部正中線頚部切開を施した。脊椎動脈を第一頚椎のalar foraminaを通して分離し、マイクロクリップを用いて両総頚動脈を15分間結紮した。この技法は、全脳虚血を生じ、一貫した海馬損害を伴うことが示された。
【0127】
ニューロン前駆体細胞: ニューロン前駆体細胞は、SanBio, Inc. (Mountain View CA)により提供された。一般的にPCT/JP03/01260の技法に従って、これらの細胞を産生した。
【0128】
移植手順: 滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(3 ml/kg、腹腔内)麻酔(疼痛反応に関して動物を検査)下で、26‐ゲージ移植カニューレを用いて、MCAoに関しては線条体に、MCAlに関しては皮質に、またはTGIに関しては海馬に直接、NPCを直接動物に移植した(一般的には、Y. Wang et al., ”Glial Cell-Derived Neurotrophic Factor Protects Against Ischemia-Induced Injury in the Cerebral Cortex.” 1997, J. Neuroscience; 17 (11): 4341-4348およびC. Borlongan et al., ”Transplantation of cryopreserved human embryonal carcinoma-derived neurons (NT2N cells) promotes functional recovery in ischemic rats.” Exp Neurol. 1998; 149: 310-21参照)。本明細書中に開示される方法を用いて、凍結保存NPCを得た。トリパンブルー排除法を用いた生存可能性細胞計数を、移植前および移植直後に、最終動物レシピエントに関して実行した。予定細胞投与量(40,000、100,000および200,000)は、生存可能細胞の数を指した。細胞を解凍後2時間以内に、移植手術を実行した。注入速度は細胞溶液1 ul/分であった。注入後、針が引っ込められる前に、3分吸収期間が与えられた。加熱パッドおよび直腸温度計は、外科手術中ならびに麻酔からの回復まで、体温を約37℃に保った。
【0129】
統計学的分析: p<0.05に設定したANOVAの反復測定を用いて、挙動データを分析した。事後検定は、処置条件間の有意差(p<0.05)を明示するために、折衷型t検定を包含した。
【0130】
実施例1: MCAo結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなMCAo手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0131】
EBST: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=57.60、p<0.0001)(図1)。用量依存性有意作用(200,000>100,000>40,000)も観察された(p<0.01)。運動非対称は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、最も強い回復は、移植後1週間に認められ(p<0.0001)、そして安定回復はその後の移植後3週間に示された。事後試験は、移植後1週間での運動非対称の有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし用量依存性作用が移植後2、3および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図2)。
【0132】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=9.65、p<0.001)(図3)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.01)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後1週間目の神経学的欠陥スコアの有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし2週目では低用量40,000細胞より高用量100,000および200,000の方がより良好な回復を生じ(p<0.05)、そして用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後3および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図4)。
【0133】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,21=2.87、p=0.08)(図5)。ベースラインおよび移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目での長期習得時間により明示されるように、移植後4週間に亘るより長いMWM習得時間傾向があると思われる(p<0.01)(図6)。
【0134】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=61.33、p<0.0001)(図7)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に短時間でのプラットホーム位置発見を促した(p<0.0001)。プラットホームを発見する時間の改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1週目と比較して、移植後2、3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後4週間に亘って低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に短いプラットホーム発見時間を生じ、そして明らかな用量依存性応答(200,000>100,000>40,000)が移植後1および4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図8)。
【0135】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,21=15.19、p<0.0001)(図9)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に長いプラットホーム領域上消費時間を促した(p<0.01)。プラットホーム領域上で消費される時間は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に増大され(p<0.0001)、移植後1および2週目と比較して、移植後3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、移植後4週間に亘って低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じる、ということを明示した(p<0.05)(図10)。
【0136】
実施例2: MCAl結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなMCAl手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0137】
EBST: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,24=76.30、p<0.0001)(図11)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも運動非対称からのより良好な回復を生じた(p<0.0001)。運動非対称は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、より良好な回復が、移植後2、3および4週目に示された。事後試験は、高い方の用量が低用量より良好に運動非対称を有意に低減し、用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後1週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図12)。
【0138】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,24=3.65、p<0.05)(図13)。200,000細胞という最高用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.05);100,000細胞の中用量と40,000細胞の低用量との間には、有意差は見出されなかった(図13)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、週毎の神経学的スコア全体の細胞投与量間に有意差が見出されなかった時間の間、安定であった(p>0.005)。事後試験は、3および4週間目には200,000細胞の最高用量は低用量40,000細胞より良好な回復を生じた(p<0.01);移植後より早期の時点では、細胞投与量間に他の有意差は見出されない、ということを明示した(p>0.05)(図14)。
【0139】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=5.78-16、p>0.05)(図15)。ベースラインと比較して、移植後1、2、3および4週目での長期習得時間により明示されるように、移植後4週間に亘るより長いMWM習得時間傾向があると思われる(p<0.0001)(図16)。
【0140】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=0.62、p=0.55)(図17)。移植後長時間、有意に長いプラットホーム発見時間が認められた(p<0.001)(図18)。
【0141】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,24=2.01、p=0.16)(図19)。プラットホーム領域上の時間は、ベースラインと比較して移植後4週間に亘ってより長い時間が費やされる傾向がある(p<0.001)が、しかし一過性用量依存性作用は移植後1週目に認められただけで(p<0.05)、他の週試験期間では認められなかった(p>0.05)(図20)。
【0142】
実施例3: TGI結果 ‐ 移植後4週間、毎週
試験動物に上記のようなTGI手順を施して、移植後4週間、毎週評価して、以下の結果を得た:
【0143】
Bederson試験: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=47.33、p<0.001)(図21)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも神経学的欠陥スコアのより良好な改善を促した(p<0.0001)。神経学的欠陥スコアの改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減された(p<0.0001)。事後試験は、移植後1週目の神経学的欠陥スコアにおける有意の低減は3つの細胞投与量間で異ならなかったが、しかし高用量100,000および200,000は、2、3および4週間目では低用量40,000細胞より良好な回復を生じ(p<0.005);そして用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)が移植後4週目に認められる、ということを明示した(p<0.05)(図22)。
【0144】
MWM習得: 移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=9.88、p<0.001)(図23)。しかしながらこの有意の治療作用は、200,000細胞という最高用量が、他の2つの用量100,000および40,000細胞と比較して、移植後1週目での仕事獲得の有意の一過性改善を生じた(p<0.005)ためにのみ、達成された。その後、ベースラインおよび移植後1週目と比較して移植後2、3および4週目でのより長い習得時間が注目された(p<0.005)(図24)。
【0145】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=30.98、p<0.0001)(図25)。200,000および100,000細胞という高い方の用量は、40,000細胞という低用量よりも有意に短時間でのプラットホーム位置発見を促した(p<0.0001)。プラットホームを発見する時間の改善は、ベースラインと比較して移植後4週間の各々において有意に低減され(p<0.0001)、移植後1および2週目と比較して、移植後3および4週目に移植動物がより良好に遂行する時間に亘ってより良好な改善傾向がある(p<0.0001)。事後試験は、高用量200,000の方が移植後2および3週目に100,000および40,000細胞の他の2つの用量より有意に短いプラットホーム発見時間を生じ(p<0.05)、一方、移植後4週目では、2つの高い方の用量は低細胞投与量と比較して、プラットホーム発見のより良好な改善を発揮する、ということを明示した(p<0.05)(図26)。
【0146】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後4週間に亘っての毎週試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,23=54.06、p<0.0001)(図27)。有意の用量依存性作用(200,000>100,000>40,000)は、移植後4週間に亘って観察された(p<0.0001)。さらに、移植後4週間の間、より長いプラットホーム領域上時間が消費された(p<0.0001)。事後試験は、移植後3および4週目には、低用量40,000細胞より高用量200,000および100,000の方が有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じる、ということを明示した(p<0.05)。移植後2週目では、最高細胞投与量のみが、他の2つの細胞投与量と比較して有意に長いプラットホーム領域上消費時間を生じた(p<0.05)(図28)。
【0147】
実施例4: 移植後5週目の組織学的検査
移植後5週目に、無作為選択動物を安楽死させた(表3参照)。組織学的検査は、各用量および卒中型に関して2〜3例の脳試料に限定した。したがって定量分析は、GFPエピ蛍光に基づいて移植片生存および移動に関して実施しただけであった。他の組織学的パラメーターに関しては、特に表現型発現を検出するための異なる抗体マーカーの使用に関しては、一般的説明のみを提示する。
【0148】
NPC移植片生存: GFPエピ蛍光は、3つの卒中型すべての間の用量依存性移植片生存(200,000>100,000>40,000)を明示した(F8,32=33.9、p<0.0001)(図29)。GFP陽性細胞の平均細胞数は、40,000細胞という低い方の用量が小さい数の生存GFP陽性移植片を生じ、一方、100,000および200,000という高い方の用量はより大きい数の生存GFP陽性移植片を生じる、ということを明示した。これらの観察は、MCAo、MCAlおよびTGI移植動物に関して一貫していた。しかしながら各細胞投与量に関するパーセンテージを算定した場合、移植片生存%における有意差(F8,32=1.67、p>0.05)(図30)は3つの用量間に認められなかった。
【0149】
【表4】
【0150】
移植片生存および機能的回復間の正の相関: 回帰分析は、生存NPC移植片の数が多いほど(200,000>100,000>40,000)、機能的改善は良好である、ということを明示した(図31)。
【0151】
NPC移植片移動: GFPエピ蛍光は、大多数(約55%〜85%)の移植細胞が本来の移植片部位内に留まる、ということを明示した(図32)。MCAo移植動物において、いくつかのGFP陽性細胞が本来の線条体移植片部位内で容易に同定され得た(62%);MCAl移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の皮質移植片部位内に留まった(53%);そしてTGI移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の海馬部位内に留まった(86%)。しかしながら、MCAoおよびMCAl移植動物はともに、TGI移植動物と比較して、移植細胞のより多くの移動を示した、と思われる。それにもかかわらず、移動が観察された場合、移植細胞は全身標的領域内に残存し、この場合、MCAoの移植片移動は線条体内に、MCAlでは皮質内に、そしてTGIでは海馬内に残存した。MCAoおよびMCAlの両方における移植片移動は、それぞれ線条体および皮質における虚血性境界域を裏打ちする移植細胞により特性化された。さらに、MCAoに関しては、線条体虚血性境界域に沿った細胞の内側から外側への(1.8 mm)、および腹側から背側への(2.3 mm)移動が観察された。MCAlに関しては、細胞の内側から外側への(4.4 mm)移動が観察された。TGI移植動物に関しては、移植片移動は、CA2およびCA3区域で同定されるGFP陽性SBDPにより特性化された(本来のCA1移植片部位からそれぞれ1.6 mmおよび0.7 mm離れた)。
【0152】
NPC表現型発現: 移植NPC細胞はGFAPに対して陽性であり(約5%)、そして極少数の細胞(2〜5細胞/脳)もNeuNに対して陽性であった。これらのマーカーはともに、GFPと同時局在した。これらの観察は、全用量ならびに卒中の3つの型すべてに関して一貫していた。
【0153】
実施例5: 移植後12週目のMCAo結果
移植後12週目に、上記のようなTGI手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0154】
EBST: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=11.84、p<0.005)(図32)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の運動非対称の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0155】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=41.83、p<0.001)(図32)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0156】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.36、p=0.071)(図33)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0157】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=6.18、p<0.05)(図33)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム発見時間の有意の低減を明示した(p<0.001)。
【0158】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=6.18、p<0.05)(図33)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム領域での時間の有意の増大を明示した(p<0.001)。
【0159】
実施例6: 移植後12週目のMCAl結果
移植後12週目に、上記のようなMCAl手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0160】
EBST: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=23.02、p<0.0005)(図34)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の運動非対称の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0161】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=9.29、p<0.01)(図34)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0162】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=1.37、p=0.30)(図35)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0163】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.26、p=0.78)(図35)。これらの結果は、即ちプラットホームが利用可能な場合の、ベースラインと移植後12週目との間のMWMプローブ試験において有意差は認められなかったことを示す。
【0164】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.15、p=0.86)(図35)。これらの結果は、即ちプラットホームを用いずに、ベースラインと移植後12週目との間のMWMプローブ試験において有意差は認められなかったことを示す。
【0165】
実施例7: 移植後12週目のTGI結果
移植後12週目に、上記のようなTGI手順を施された試験動物を評価し、以下の結果を得た:
【0166】
Bederson試験: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=184.02、p<0.0001)(図36)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目の神経学的欠陥の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0167】
MWM習得: 移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示しなかった(F2,9=0.31、p=0.74)(図37)。これらの結果は、ベースラインと移植後12週目との間のMWM習得に有意差は認められなかったことを示す。
【0168】
MWMプローブ試験: プラットホーム発見時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=5.14、p<0.05)(図37)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム発見時間の有意の低減を明示した(p<0.0001)。
【0169】
MWMプローブ試験: プラットホーム領域上での消費時間。移植後12週間試験に関して、全体的ANOVAは、有意の主要治療作用を明示した(F2,9=4.39、p<0.05)(図37)。事後試験は、ベースラインと比較した場合の移植後12週目のプラットホーム領域での時間の有意の増大を明示した(p<0.0001)。
【0170】
実施例8: 移植後12週目の組織学的検査
移植後12週目に、すべての残存動物を安楽死させた(表4参照)。GFPエピ蛍光およびその他の免疫組織化学パラメーターに、特に表現型発現を検出するための異なる抗体マーカーの使用に基づいた移植片生存および移動の定量分析を、実行した。
【0171】
【表5】
【0172】
NPC移植片生存: GFPエピ蛍光は、3つの卒中型すべての間の部分的用量依存性移植片生存(200,000>100,000>40,000)を明示した(F8,27=14.88、p<0.0001)(図38)。GFP陽性細胞の平均細胞数は、40,000細胞という低い方の用量が小さい数の生存GFP陽性移植片を生じ、一方、100,000および200,000という高い方の用量はより大きい数の生存GFP陽性移植片を生じる、ということを明示した。これらの観察は、MCAo、MCAlおよびTGI移植動物に関して一貫していた。しかしながら各細胞投与量に関するパーセンテージを算定した場合、移植片生存%における有意差(F8,27=1.37、p>0.05)(図39)は3つの用量間で得られなかった。これは、おそらくはCsA免疫抑制により低および高用量の両方における移植片生存%が保持された、ということを示唆する。
【0173】
NPC移植片移動: 5週間組織学結果と一致して、GFPエピ蛍光は、大多数(約65%〜90%)の移植細胞が本来の移植片部位内に留まる、ということを明示した。MCAo移植動物において、いくつかのGFP陽性細胞が本来の線条体移植片部位内で容易に同定され得た(72%);MCAl移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の皮質移植片部位内に留まった(64%);そしてTGI移植動物では、GFP陽性細胞は、本来の海馬部位内に留まった(91%)。MCAoおよびMCAl移植動物はともに、TGI移植動物と比較して、移植細胞のより多くの移動を示した、と思われる。さらに、移動が観察された場合、移植細胞は全身標的領域内に残存し、この場合、MCAoの移植片移動は線条体内に、MCAlでは皮質内に、そしてTGIでは海馬内に観察された。さらにMCAoおよびMCAlの両方における移植片移動は、それぞれ線条体および皮質における虚血性境界域を裏打ちする移植細胞により特性化された。さらに、MCAoに関しては、線条体虚血性境界域に沿った細胞の内側から外側への(2.0 mm)、および腹側から背側への(2.5 mm)移動が観察された。MCAlに関しては、細胞の内側から外側への(4.5 mm)移動が観察された。TGI移植動物に関しては、移植片移動は、CA2およびCA3区域で同定されるGFP陽性SBDPにより特性化された(本来のCA1移植片部位からそれぞれ1.6 mmおよび0.8 mm離れた)。
【0174】
NPC表現型発現: 卒中型および用量の間で、およその生存率は15%である。これらの本来の移植片部位内では、ほとんどの細胞がそれらのビーズ状の外観を保持し、そしてNeuNまたはGFAPに対して陽性でない。しかしながらMCAo移植動物では、これらの細胞のうちの2〜3がNeuNおよびGFAPを示す。それぞれMCAo、MCAlおよびTGI移植動物の線条体境界域、皮質境界域およびCA3に沿って移動するGFP陽性細胞が検出された。実際、NeuN免疫染色は、これらの細胞が成熟ニューロンに対してこのようなマーカーを発現する、ということを明示する。全体的に、生存GFP陽性細胞の約25%が、卒中型および用量間で、NeuN陽性である;移植部位から離れて移動した細胞では、約60%がNeuN陽性である。これらの細胞は、複雑な且つ長いプロセスにより特性化されるニューロン形態を示したが、これは、MCAo移植動物に豊富である。さらにGFPエピ蛍光顕微鏡は、各発作型に見出される別個のニューロン形態、ならびにNPC移植片細胞対細胞接触を明示した。いくつかの細胞(卒中型および用量の全体で及び間で約5%)は、GFAP染色により確証された神経膠細胞の形態を示す。ほとんどの(全部でないとしても)GFAP陽性細胞は、血管付近または血管内に見出された。
【0175】
移植片‐宿主組織病理学: 線条体;皮質;または海馬におけるニッスル染色を用いて、腫瘍形成の証拠は認められなかった。
【0176】
実施例9: 発作モデルにおける付加的NPC試験
この試験の目的は、発作動物におけるNPCの治療的利益を検査することであった。挙動試験を用いて、移植発作動物の運動および神経学的機能を明示した。移植を発作後1ヶ月目に実行し、そして移植後1ヶ月生存時間を通して、シクロスポリンA(CsA、10 mg/kg、腹腔内)で毎日動物を免疫抑制した。移植ラットの運動および神経学的遂行を、移植後7、14および28日目に特性化した。有効なNPC用量範囲の確定により明示されるような上首尾の移植片結果を、運動挙動および神経学的遂行を用いて評価した。
【0177】
3つの処置条件;即ち0(培地単独)、低用量90k NPCおよび高用量180k NPCが存在した。各処置条件に関する動物の数は、統計学的分析のための必要試料サイズに対応した(n=10/群)。挙動的欠陥に関する判定基準に到達していない動物(75%偏向スウィング活性ならびに神経学的検査における2.5のスコア)は、本試験には含まれなかった。したがってこれらの判定基準に到達した動物そしてこれらの判定機銃を超えているものは、試験に含めた。典型的には、ほとんどの卒中動物はこのような判定基準に到達し、少なくとも8被験者は最終的統計学的分析を提供することを要した。試験中ずっと、全動物を免疫抑制した(10 mg/kgCsA、腹腔内、毎日)。
【0178】
全動物に、最初にMCAo卒中手術を施した。術後4週目に、EBSTで、そして1時間後にBederson神経学的検査により試験した。有意の運動および神経学的欠陥を示した動物のみを、その後、移植手術のために用いて、以下の処置のうちの1つに無作為に割り当てた:
【0179】
【表6】
【0180】
移植後7、14および28日目に、動物を再び挙動試験の同一バッテリーに導入した。平明にするために、模式図を以下に提示する。
【0181】
【表7】
【0182】
滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(300 mg/kg、腹腔内)を用いて動物を麻酔し、疼痛反応に関して検査した。深い麻酔下で、動物にMCA閉塞手術を施した。MCA閉塞技術は、MCAの接合部に到達し、したがって総頚動脈からの、ならびにウィリス動脈環からの血流を遮断するための頚動脈を通した縫合フィラメントの挿入を包含する。右総頚動脈を同定し、腹側正中線頚部切開により分離した。フィラメントサイズは4-0で、滅菌非吸収性縫合糸(Ethicon, Inc.)製で、縫合糸先端の直径はゴムセメントを用いて24〜26‐ゲージサイズに先細にされた。約15〜17 mm縫合フィラメントを外および内頚動脈の接合部から挿入して、MCAを遮断した。右MCAを1時間閉塞した;MCAの1時間閉塞は一般に、最大梗塞を生じる。さらに、塞栓の先端の長さおよびサイズは、250〜350 gの重量の動物において完全MCA閉塞を生じることが判明している。加熱パッドおよび直腸温度計は、正常限界内の体温の保持を促す。上首尾の閉塞および再還流を確定するために、レーザードップラーを用いた。ドップラープローブを予測梗塞線条区域の直ぐ上の硬膜のレベル(AP:+2.0、ML:±2.0およびDV:−4.0 mm)に置いて、閉塞の前、最中および後に脳血流を測定した。
【0183】
滅菌条件下で、すべての外科手術手順を実行した。エクイテシンequithesin(3 ml/kg、腹腔内)麻酔(疼痛反応に関して動物を検査)下で、28‐ゲージ移植カニューレを用いて、線条体(十字縫合前0.5 mm、正中線外側2.8 mmおよび硬膜表面した5.0 mm)に直接、NPCまたはビヒクルを動物に移植した。凍結保存ヒトNPCをSanBio, Inc.から入手して、移植手術直前に解凍した。トリパンブルー排除法を用いた生存可能性細胞計数を、移植前および移植直後に、最終動物レシピエントに関して実行した。予定細胞投与量(90,000および180,000)は、これらの投与量が治療的有効投与量範囲内であることを実証するパイロット試験に基づいた。
【0184】
細胞を解凍後2時間以内に、移植手術を実行した。注入速度は細胞溶液1 ul/分であった。注入後、針が引っ込められる前に、3分吸収期間が与えられた。1針通路を用いたが、しかし3つの背腹沈渣が存在し、各部位に3-ul細胞溶液を投与した。加熱パッドおよび直腸温度計は、外科手術中ならびに麻酔からの回復後、体温を約37℃に保った。
【0185】
1時間MCAo卒中手術は、EBSTおよびBederson検査における動物の卒中前遂行と比較して、それぞれ両検査における有意の偏向スウィング活性および神経学的欠陥により明示されるように、卒中後1ヶ月目に一貫した挙動障害を生じた。動物の卒中前および卒中後遂行間の対比較は、この試験に含まれるすべての卒中動物における両試験における有意の障害を明示した(p<0.0001)。
【0186】
ビヒクル、低用量90k NPCまたは高用量180k NPCに卒中動物を無作為に割り当てた後、ANOVAは、両試験に関する有意の処置作用を明示した(kP<0.0001)。処置群間の対比較は、移植後7日目という早期に、NPCを移植された卒中動物は、用量と関係なく、ビヒクル処置卒中動物と比較して、挙動欠陥の有意の改善を示す(p<0.05)、ということを明示した。NPC移植卒中動物によるこの挙動回復は移植後14日目および28日目に持続されたが、この場合、NPC GFUは、再び用量と関係なく、ビヒクル処置と比較して、運動および神経学的障害の有意の減衰を促した(p<0.0001)。2つのNPC用量のより厳密な検査は、EBSTに関して全移植後試験日数間(p<0.01)で、そしてBedersonに関して移植後日数14および28日目(p<0.0005)で、低用量90kと比較して、高用量180kが挙動欠陥の有意に良好な改善を生じる、ということを明示した。結果を、図44〜45に示す。
【0187】
本発明の挙動データは、挙動回復が移植後7日目という早期に検出されたNPCの強固な治療利益を実証した。結果はさらに、NPC移植片の陽性結果は移植後28日目(試験中断期間)まで安定である、ということを明示した。低および高用量の両方のNPCは機能的利益を促したが、しかし高用量は低用量より有意に良好な挙動回復を提供した。
【0188】
この試験における卒中動物はすべて、免疫抑制された。ビヒクル処置卒中動物はいかなる観察可能な挙動回復も示さなかったので、これは卒中前期間、卒中の最中または直後の送達を包含する試験において前に観察されるような免疫抑制薬CsAの考え得る困惑性有益作用を排除した。NPC移植卒中動物に限定されている観察された挙動回復は、免疫抑制それ自体からでなく、移植細胞からであると思われる。
【0189】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにニッスル染色を実行して、NIH画像解析系を用いて各動物における最大梗塞面積を測定した。梗塞容積を算定するために、以下の式を用いた:=2 mm(薄片厚)×[全能薄片中の梗塞面積の和(mm2)]。
【0190】
移植後1ヶ月目に、無作為選択動物を免疫組織化学用に安楽死させた。以下の手順を用いて、標準ABC方を用いて組織を処理した。20 μmクリオスタット切断組織を4×倍率で検査し、PCベース画像ツールコンピュータープログラムを用いてデジタル化した。脳切片をブラインド・コード化し、そしてAbercrombieの式を用いて免疫陽性細胞の総数を算定した。
【0191】
齧歯類細胞表面マーカーまたは他の齧歯類タンパク質と交差反応しないヒト細胞表面マーカーであるモノクローナルヒト特異的抗体HuNuを用いて、移植後のNPC生存を査定した。細胞移植片中のニューロン、神経膠および乏突起神経膠細胞表現型の発現を検出するために、免疫組織化学的分析Neu‐NおよびGFAPをそれぞれ用いた。これらの細胞表面マーカーは、移植NPCの移動も明示した。
【0192】
一般的に、NPCは、移植後1ヶ月目にMAP2発現に対して陽性の2〜3のニューロンを有する線条体中で良好に生存した。移植片生存は、NPCの2つの用量レベル間で有意に異ならなかった。NPCは、卒中境界域における虚血性細胞損失を低減した。2つの用量レベルは、ほぼ同程度のニューロレスキュー作用を示した。これらの分析からのデータを、図46〜48に提示する。
【0193】
H. MNC実施例
本実施例は、本発明の範囲を例証するよう意図されるが、いかなる点においても本発明を限定するものではない。
【0194】
実験手順
MASCの培養およびニューロン誘導
一般的に、S. Azizi et al. ”Engraftment and migration of human bone marrow stromal cells implanted in the brains of albino rats-similarities to astrocyte grafts.” Proc Natl Acad Sci U S A, 1998; 95: 3908-13に前に記載されたように、WisterラットからMASCを単離した。M. Dezawa et al., ”Sciatic nerve regeneration in rats induced by transplantation of invitro differentiated bone-marrow stromal cells.” Eur J Neurosci. 2001; 14: 1771-6に一般的に記載されたように、pBabe neo‐GFPベクターを用いたレトロウイルス感染により、緑色蛍光タンパク質(GFP)でMASCを標識した。
【0195】
MASCからのニューロン誘導は、一般的にM. Dezawa et al., ”Specific induction of neuronal cells from bone-marrow stromal cells and application for autologous transplantation” J Clin Invest. 2004; 113: 1701-10に記載されている。要するに、リポフェクタミン2000(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用いて、Notch細胞内ドメイン(NICD)を含有するベクター(pCI neo‐NICD)をMASC中にトランスフェクトした。11日後にG418により、細胞を選択した。MNCの誘導のために、NICDトランスフェクト化MASCを1回継代培養(集密度60〜70%)し、10%FBS、5 μMFSK(Calbiochem, La Jolla, California)、10 ng/mlbFGF(Peprotech, London, UK)および10 ng/mlCNTF(R&D Systems, Minneapolis, Minnesota)を含有するアルファ‐MEM中でインキュベートした。5日後、細胞をMCAOラットモデル中に移植した。誘導MNCをin vitroで特性化するために、免疫細胞化学試験を実施した。抗MAP‐2ab(Sigma, St. Louis, Missouri)、ニューロフィラメント‐M(NF‐M)(Chemicon, Temecula, California)およびベータチューブリン・アイソタイプ3(β‐チューブリン3)(Sigma, St. Louis, Missouri)をニューロンマーカーとして用い、そしてMNCの90〜95%はこれらのマーカーに対して免疫陽性であることが示された。
【0196】
MCAOラットモデル:
体重200〜250 gの雄Wistarラットを室温(24℃)で、12時間明暗周期で保持し、食餌および水を自由に摂取させた。MCAO手順は、J. Koizumi et al., ”Experimental studies of ischemic brain edema. 1. A new experimental model of cerebral embolism in rats in which recirculation can be introduced in the ischemic area.” Jpn J Stroke. 1986; 8: 1-8;およびE. Longa et al., ”Reversible middle cerebral artery occlusion without craniectomy in rats.” Stroke. 1989; 20: 84-91に記載された方法の変法であった。要するに、1.0〜1.5%ハロタン、10%O2および空気の混合物により誘導される深い麻酔下で、正中線頚部切開を実施し、左頚動脈二分岐を同定した。直径0.3 mmのシリコンゴム被覆頭部を有する4-0ナイロン糸製のプローブを結紮外頚動脈中に挿入し、二分岐から16〜18 mmの位置まで内系動脈中を進めた。外科手術中、フィードバック加熱パッド(BWT‐100、Bio Research Center Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用いて直腸温度を37.5〜38℃に保持した。動脈血ガス分析を実施し、p02を麻酔装置の制御により85〜120 mmHgに保持した。プローブの10 mm引っ込めによる閉塞から4時間後に、再還流を実施した。
【0197】
移植
MCAO手順の7日後に、50 mg/kgペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射でラットを麻酔し、定位枠上に置いた。予備実験では、正中線の外側約3.5 mmからの側方領域に梗塞領域を作り出した。非壊死性能実質中への移植のために、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)3 μl中の8000〜16000個の培養細胞から成る細胞懸濁液を以下の3つの位置:十字縫合前方+2 mm、0 mmおよび−2 mm、ならびに正中線外側2 mm、そして各場合、皮質表面から1.2 mmの深さ:から左前脳中に定位注入した。移植細胞の総数は24000〜48000であった。
【0198】
動物の3つの群を調製した;対照群(PBSのみを摂取(細胞移植を伴わず)(n=7));MASC群(非処置無傷MASCの移植を受けた(n=10));ならびにNMC群(MNCが移植された(n=10))。
【0199】
挙動試験
以下の試験を用いて、神経学的損害の重症度を評価した:ビーム平衡試験、肢置き直し試験およびMorris水迷路試験。ビーム平衡試験および肢置き直し試験を、MCAO後7日目(移植直前)、14、21、28および35日目に実施した。Morris水迷路私権は、MCAO手順後36日から40日まで実施した。
【0200】
ビーム平衡試験
ビーム平衡試験は、肉眼的前庭運動機能を査定するために用いられ、そして一般的にC. Dixon et al., ”A fluid percussion model of experimental brain injury in the rat.” J Neurosurg. 1987; 67: 110-9に前に記載されたように実行された。スコアリングは、以下の判定基準に基づいた:ビームの上面で肢で定常姿勢でバランスを取る:スコア0;ビームの側面を把握するおよび/またはぐらつき:1;1つまたは複数の肢がビームから滑り落ちる:2;ビーム上で平衡を試みるが、しかし落ちる:3;そして平衡を取ろうとしたりぶら下がろうとすることなくビームから落下:4。
【0201】
肢置き直し試験
肢置き直し試験は、視覚的、触覚的および自己受容的刺激に対する肢置き直し応答における感覚運動統合を検査し、そして一般的には、M. De Ryck et al. ”Photochemical stroke model: flunarizine prevents sensorimotor deficits after neocortical infarcts in rats.” Stroke, 1989; 20: 1383-1390に前に記載されたように実施された。同じく一般的には、M. De Ryck et al.の論文に列挙された手順に従って、自己受容的内転試験も実施した。各試験に関して、スコアリングは、以下の判定基準に基づいた:肢を直ちに且つ完全に置き直す:スコア0;不完全および/または遅延(>2秒)置き直し、例えば分散型動揺:1;ならびに置き直しなし:2。視覚的、前方触覚および側方触覚、自己受容的刺激を右前肢に与えた。前方触覚および側方触覚および自己受容的刺激を右後足に与えた。自己受容的内転試験を、前肢および後肢の両方で実施した。総スコアは、0〜8の範囲である。
【0202】
Morris水迷路試験
Morris水迷路試験は、認知機能を査定するための有用な方法である。この試験のいくつかの修正が報告されている。一般的にA. Fukunaga et al., ”Differentiation and angiogenesis of central nervous system stem cells implanted with mesenchyme into ischemic rat brain.” Cell Transplant. 1999; 8: 435-41に報告されたような試験のバージョンが用いられた。この試験を、MCAO後36日目から40日目まで実施した。プール(直径150 cm、深さ35 cm)を調製した。逃避プラットホーム(直径10 cm)を、不透明乳白色にさせた水の表面下1 cmに置いた。プールの縁周囲の4つの出発点に、N、E、SおよびWを充てる。プラットホームを、中心およびプールの縁から等距離の4分円の中央に保持した。ラットを各出発点から水中に放して、プラットホームに到達するまで遊泳させて、プラットホームに到達するのに要した時間を記録した(最大120秒)。各5連続日で4試行の2組を用いる仕事で、ラットを訓練した。初日の第1組の後に、第2組の代わりに、空間プローブ試行を実施した。この試験は、短時間記憶保持を概算するためである。プラットホームを除去し、ラットを60秒間遊泳させた。各動物がプラットホーム配置領域を横断した時間数を測定した。プラットホーム配置4分円で費やした時間も測定した。
【0203】
組織学的分析
41日目に、ペントバルビタール過剰用量の投与によりラットを屠殺し、0.9%生理食塩水で、その後、過ヨウ素酸‐リシン‐パラホルムアルデヒド固定溶液で頭蓋内還流した(I. McLean et al., ”Periodate-lysine-paraformaldehyde fixative. A new fixation for immunoelectron microscopy.” J Histochem Cytochem. 1974; 22: 1077-83に一般的に記載)。Brain Matrix(BAS Inc. Warwickshire, UK)を用いて、2 mm厚の冠状ブロックに脳を切断した。各ブロックから、10 μm厚クリオスタット切片を作製した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色して、梗塞領域を評価した。光学顕微鏡下で1×対物レンズを用いて切片の画像を捕獲し、Scion Image(Scion Corporation, Frederick, MD)を用いて病変域を追跡した。梗塞容積を算定し(一般的にR. Swanson et al., ”A semiautomated method for measuring brain infarct volume.” J Cereb Blood Flow Metab. 1990; 10: 290-29で前に記載されたように)、そして対側半球の容積のパーセンテージとして表わした。
【0204】
免疫染色するために、切片を、MAP‐2(1:100, Boehringer Mannheim, Germany)、β‐チューブリン3(1:400, Sigma, Missouri)、NF‐M(1:200, Boehringer Mannheim, Germany)、Tuj‐1(1:100, BAbCO, CA)またはGFAP(1:400, Dako, CA)に対する一次抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。Alexa Fluor 546-接合抗マウスIgG(Molecular Probes, Eugene, OR)(MAP‐2に対する)または抗ウサギIgG(Molecular Probes, Eugene, OR)(β‐チューブリン3、NF‐M、Tuj‐1およびGFAPに対する)を、二次抗体として用いた。TOTO‐3を核染色のために用いた。共焦点レーザー走査顕微鏡(CLMS)(Radiance 2000, Bio-Rae, Hertfordshire, UK)を用いて、検体を検査した。
【0205】
各ラットにおいて、全前脳中のGFP標識細胞の総数を算定した。海馬中のGFP標識細胞の数も同様に算定した。
【0206】
統計学的分析
非反復測定ANOVAを用いて、挙動評価データおよび梗塞容積データを分析した。結果が有意であった場合(p<0.05)、Student-Newman-Keuls post hoc手順を95%有意レベルで用いた。別記しない限り、値は平均±標準偏差として示す。
【0207】
実施例10: 挙動試験
MCAO実施の1週間後、および移植の直前に、重症右側神経学的欠陥が出現し、そして各挙動試験に関する平均スコアは、3つの群間で統計学的な差を示さなかった。
【0208】
ビーム平衡試験
7日目から21日目まで、平均スコアは、3つの群間で統計学的に異ならなかった。28および35日目に、NMC群の平均スコアは、対照(28日目:p=0.0041、35日目:p=0.0001)およびMASC群(それぞれp=0.0471、0.0007)と比較して、有意の改善を示した。MASC群は対照と比較してわずかな改善を示したが、しかし統計学的有意差は28および35日目に検出され得なかった(図40)。
【0209】
肢置き直し試験
7日目から21日目まで、3つの群の平均スコア間に有意差は認められなかった。28および35日目に、NMCおよびMASC群は、大将軍と比較して有意の改善を示した(それぞれ28日目:p=0.0022および0.085、35日目:p=0.0022および0.0211)。しかしながら平均スコアは、前期間を通して、NMCおよびMASC群間に有意差を示さなかった(図41)。
【0210】
Morris水迷路試験
水中逃避プラットホームを位置特定するための4つの試行の各組で記録された平均待ち時間を、3群の各々に関して図42に示す。NMC群は、対照およびMASC群と比較して、最も短い待ち時間を示した。39日目の第2組および40日目の第1組に関する平均待ち時間は、NMCおよび対照群間で有意差を実証した(それぞれp=0.0339および0.0492)(図42)。NMC群はMASC群より逃避プラットホームへのより短い待ち時間を要する傾向を示したが、しかし統計学的有意差は存在しなかった。
【0211】
空間プローブ試行において、NMC軍のラットは、対照(p=0.0419)およびMASC群(p=0.0453)と比較して、有意の改善を示した(図43)。プラットホーム配置4分円で費やされる平均時間は、3群間ではNMC群で最長であった。有意差は、NMCおよび対照間に存在した(p=0.0339)(図43)。
【0212】
実施例11: 組織学的試験
梗塞領域を左半球の外側半分、例えば皮質、線条体および海馬に位置確定して、嚢胞および瘢痕の形成をほとんどの病変脳で観察した。病変側の海馬は、対側と比較して、萎縮しており、そして部分的に不規則な配列またはニューロン損失を示した。梗塞容積を、全MCAOモデルで測定した。33日目のNMC、MASCおよび対照群における平均梗塞容積は、それぞれ50.7±10.9%、51.0±10.%および50.9±11.1%であった。3群間に統計学的有意差は認められなかった。
【0213】
主に無傷組織および梗塞域間の境界領域、例えば同側皮質、脳梁、線条体および海馬で、移植GFP標識MASCおよびMNCを位置確定した。梗塞病巣中への炎症細胞の浸潤が観察された。MNCおよびMASC群間に、梗塞病巣中に浸潤した炎症細胞の数に差はないように思われた。
【0214】
多数のGFP標識MNCは、MAP‐2に対して免疫陽性であり、宿主脳中で神経突起発達を示した。それらは、Tuj‐1およびβ‐チューブリン3に対しても免疫陽性であった。同側海馬では、GFP標識MNCの多数の細胞体および神経突起は、NF‐M陽性であることも示した。GFP標識移植MNCの大部分は、MAP‐2に対して陽性であった(84.0±8.1%)が、一方、少数の細胞のみがGFAPに対して陽性であった(1.0±0.2%)。
【0215】
それに反して、宿主脳中のMASCの大多数が、ニューロン(MAP‐2、Tuj‐1、β‐チューブリン3およびNF‐M)および神経膠(GFAP)マーカーに対して陰性であった。GFP標識細胞間のMAP‐2‐およびGFAP‐陽性細胞のパーセンテージは、それぞれ1.4±0.2%および4.8±1.0%であった。MAP‐2陽性MASC中の神経突起の形成は、見出され得なかった。
【0216】
宿主前脳中のMNCおよびMASCの平均数は、13250±1126および5850±997であった。移植後1ヶ月で、移植MNCの約30〜45%が検出され、そして他方、移植MASCの10〜20%が検出された。虚血脳におけるMNCの生存率は、MASCよりも実質的に高かった。海馬では、MNCの平均数は790±160で、そしてそれらの89%がMAP2陽性であった。それに対して、MASCの平均数は470±66であり、そして0.6%がMAP2陽性であったが、これは、移植MASCのほとんどがニューロンおよび神経膠マーカーに対して陰性であった、ということを示す。
【0217】
全群において、MCAO後41日目まで脳実質中に、腫瘍形成は観察されなかった。
【0218】
参考文献:
【化1】
【0219】
【化2】
【0220】
【化3】
【0221】
【化4】
【0222】
【化5】
【0223】
【化6】
【0224】
【化7】
【0225】
【化8】
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、MCAo手順からの結果を示す。
【図2】図2は、MCAo手順からの結果を示す。
【図3】図3は、MCAo手順からの結果を示す。
【図4】図4は、MCAo手順からの結果を示す。
【図5】図5は、MCAo手順からの結果を示す。
【図6】図6は、MCAo手順からの結果を示す。
【図7】図7は、MCAo手順からの結果を示す。
【図8】図8は、MCAo手順からの結果を示す。
【図9】図9は、MCAo手順からの結果を示す。
【図10】図10は、MCAo手順からの結果を示す。
【0227】
【図11】図11は、MCAl手順からの結果を示す。
【図12】図12は、MCAl手順からの結果を示す。
【図13】図13は、MCAl手順からの結果を示す。
【図14】図14は、MCAl手順からの結果を示す。
【図15】図15は、MCAl手順からの結果を示す。
【図16】図16は、MCAl手順からの結果を示す。
【図17】図17は、MCAl手順からの結果を示す。
【図18】図18は、MCAl手順からの結果を示す。
【図19】図19は、MCAl手順からの結果を示す。
【図20】図20は、MCAl手順からの結果を示す。
【0228】
【図21】図21は、TGl手順からの結果を示す。
【図22】図22は、TGl手順からの結果を示す。
【図23】図23は、TGl手順からの結果を示す。
【図24】図24は、TGl手順からの結果を示す。
【図25】図25は、TGl手順からの結果を示す。
【図26】図26は、TGl手順からの結果を示す。
【図27】図27は、TGl手順からの結果を示す。
【図28】図28は、TGl手順からの結果を示す。
【図29】図29は、実施例からの組織学的結果を示す。
【図30】図30は、実施例からの組織学的結果を示す。
【0229】
【図31】図31は、機能的回復および移植片生存を例証する。
【図32】図32は、MCAo手順からの結果を示す。
【図33】図33は、MCAo手順からの結果を示す。
【図34】図34は、MCAl手順からの結果を示す。
【図35】図35は、MCAl手順からの結果を示す。
【図36】図36は、TGl手順からの結果を示す。
【図37】図37は、TGl手順からの結果を示す。
【図38】図38は、移植片生存を例証する。
【図39】図39は、移植片生存を例証する。
【図40】図40は、光束平衡試験の結果を示す。移植28日目に、MNC群に関する平均スコアは、MASCおよび対照群と比較して、有意の改善を示した。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【0230】
【図41】図41は、肢置き直し試験の結果を示す。NMC群およびMASC群に関する平均スコアは、21日目および28日目には、対照群のスコアと有意に異なった。MNCおよびMASC群間に有意差は認められなかった。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【図42】図42は、Morris水迷路試験の結果を示す。最終セットに関しては、MNC群に関する平均待ち時間はMASCおよび対照群に関するものと有意に異なった。
【図43】図43は、水迷路「空間プローブ試験」の結果を示す。3つの群の間で、MNC群に関して最良の結果が得られ、そしてMNC群と他の群との間で有意差が得られた。 *:p<0.05、 **:p<0.01。
【図44】図44は、実施例9で実施されたBederson試験からの結果を示す。
【図45】図45は、実施例9で実施されたEBSTからの結果を示す。
【図46】図46は、実施例9による移植片生存を例証する。
【図47】図47は、実施例9による移植片生存を示す。
【図48】図48は、実施例9によるNissl染色の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
ニューロン前駆体細胞を提供し;そして
患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患した患者にニューロン前駆体細胞を投与する
ことを包含する方法。
【請求項2】
ニューロン前駆体細胞が局所的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ニューロン前駆体細胞が患者の中枢神経系に投与される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ニューロン前駆体細胞が実質内に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ニューロン前駆体細胞がヒトニューロン前駆体細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ニューロン前駆体細胞の提供が、以下の:
骨髄付着幹細胞を提供し;
骨髄付着幹細胞をニューロン前駆体細胞に分化転換する
ことを包含する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
中枢神経系病変が虚血性卒中または出血性卒中により引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
以下の:
ニューロン前駆体細胞を投与部位から患者の他の位置に移動させる
ことをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者の別の位置が中枢神経系病変を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
以下の:
免疫抑制剤を患者に投与する
ことをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
機能的回復が部分的機能的回復である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ニューロン前駆体細胞が患者に関して同種異系である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
以下の:
患者へのニューロン前駆体細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在するニューロン前駆体細胞;および
製薬上許容可能な担体
を含む移植片形成単位。
【請求項14】
製薬上許容可能な担体が溶媒、分散媒質、抗細菌薬または抗真菌薬を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項15】
移植片が約10,000〜約100万個のニューロン前駆体細胞の範囲の量でニューロン前駆体細胞を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項16】
ニューロン前駆体細胞が標識を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項17】
ニューロン前駆体細胞がヒトニューロン前駆体細胞を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項18】
以下の:
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を提供し;そして
患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患している患者に骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を投与する
ことを包含する方法。
【請求項19】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が局所的に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が患者の中枢神経系病変に投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が実質内に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞がヒト骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の提供が、以下の:
骨髄付着幹細胞を提供し;そして
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を形成するよう骨髄付着幹細胞を誘導する
ことを包含する、請求項18記載の方法。
【請求項24】
以下の:
骨髄付着幹細胞をニューロン前駆体細胞に分化転換し;そして
ニューロン細胞を形成するようニューロン前駆体細胞を誘導する
ことをさらに包含する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
中枢神経系病変が虚血性卒中または出血性卒中により引き起こされる、請求項18記載の方法。
【請求項26】
患者に免疫抑制薬を投与することをさらに包含する、請求項18記載の方法。
【請求項27】
機能的回復が部分的機能的回復である、請求項18記載の方法。
【請求項28】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が患者に関して同種異系である、請求項18記載の方法。
【請求項29】
以下の:
患者への骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在する骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞;ならびに
製薬上許容可能な担体
を含む移植片形成単位。
【請求項30】
製薬上許容可能な担体が溶媒、分散媒質、抗細菌薬または抗真菌薬を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項31】
移植片が約10,000〜約100万個のニューロン前駆体細胞の範囲の量でニューロン前駆体細胞を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項32】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が標識を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項33】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞がヒト骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項1】
以下の:
ニューロン前駆体細胞を提供し;そして
患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患した患者にニューロン前駆体細胞を投与する
ことを包含する方法。
【請求項2】
ニューロン前駆体細胞が局所的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ニューロン前駆体細胞が患者の中枢神経系に投与される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ニューロン前駆体細胞が実質内に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ニューロン前駆体細胞がヒトニューロン前駆体細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ニューロン前駆体細胞の提供が、以下の:
骨髄付着幹細胞を提供し;
骨髄付着幹細胞をニューロン前駆体細胞に分化転換する
ことを包含する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
中枢神経系病変が虚血性卒中または出血性卒中により引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
以下の:
ニューロン前駆体細胞を投与部位から患者の他の位置に移動させる
ことをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者の別の位置が中枢神経系病変を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
以下の:
免疫抑制剤を患者に投与する
ことをさらに包含する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
機能的回復が部分的機能的回復である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ニューロン前駆体細胞が患者に関して同種異系である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
以下の:
患者へのニューロン前駆体細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在するニューロン前駆体細胞;および
製薬上許容可能な担体
を含む移植片形成単位。
【請求項14】
製薬上許容可能な担体が溶媒、分散媒質、抗細菌薬または抗真菌薬を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項15】
移植片が約10,000〜約100万個のニューロン前駆体細胞の範囲の量でニューロン前駆体細胞を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項16】
ニューロン前駆体細胞が標識を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項17】
ニューロン前駆体細胞がヒトニューロン前駆体細胞を含む、請求項13記載の移植片形成単位。
【請求項18】
以下の:
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を提供し;そして
患者の機能的回復を促すのに十分な量で中枢神経系病変に罹患している患者に骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を投与する
ことを包含する方法。
【請求項19】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が局所的に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が患者の中枢神経系病変に投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が実質内に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞がヒト骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を含む、請求項18記載の方法。
【請求項23】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の提供が、以下の:
骨髄付着幹細胞を提供し;そして
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を形成するよう骨髄付着幹細胞を誘導する
ことを包含する、請求項18記載の方法。
【請求項24】
以下の:
骨髄付着幹細胞をニューロン前駆体細胞に分化転換し;そして
ニューロン細胞を形成するようニューロン前駆体細胞を誘導する
ことをさらに包含する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
中枢神経系病変が虚血性卒中または出血性卒中により引き起こされる、請求項18記載の方法。
【請求項26】
患者に免疫抑制薬を投与することをさらに包含する、請求項18記載の方法。
【請求項27】
機能的回復が部分的機能的回復である、請求項18記載の方法。
【請求項28】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が患者に関して同種異系である、請求項18記載の方法。
【請求項29】
以下の:
患者への骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞の投与後に中枢神経系病変に罹患した患者の機能的回復を促すのに十分な量で存在する骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞;ならびに
製薬上許容可能な担体
を含む移植片形成単位。
【請求項30】
製薬上許容可能な担体が溶媒、分散媒質、抗細菌薬または抗真菌薬を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項31】
移植片が約10,000〜約100万個のニューロン前駆体細胞の範囲の量でニューロン前駆体細胞を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項32】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞が標識を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【請求項33】
骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞がヒト骨髄付着幹細胞由来ニューロン細胞を含む、請求項29記載の移植片形成単位。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
【図24】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公表番号】特表2008−538103(P2008−538103A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500806(P2008−500806)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/007917
【国際公開番号】WO2006/096640
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(503235673)サンバイオ,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/007917
【国際公開番号】WO2006/096640
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(503235673)サンバイオ,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】
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