説明

中空ファイバー膜

本発明は、支持層と分離層とを有する中空ファイバー膜の製造方法であって、(a)第1のポリマーとその第1のポリマー用の溶媒とを含む紡糸組成物を、中空ファイバーダイの内側環状オリフィスを通して押し出すことと;(b)有機求核剤と、第1のポリマー用の溶媒および非溶媒の混合物とを含む組成物を同時押し出しすることと、ここで、この組成物が、中空ファイバーダイの中心環状オリフィスまたは中空ファイバーダイの外側環状オリフィスのいずれかを通して押し出される;(c)中空ファイバーを、凝固浴を通過させることと、を含む方法に関する。本発明による中空ファイバー膜は、ガス分離プロセス、蒸気分離プロセスおよび液体濾過プロセスにおいて使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持層と、内側(すなわち、支持層の内腔(lumen)に面する側)もしくは外側分離層とを有する中空ファイバー膜に関し、またこのような中空ファイバー膜の製造方法に関する。分離層は支持層と化学的に隣接している。支持層と分離層の両方が、単一ステップで形成される。この中空ファイバー膜は、ガス分離プロセス、蒸気分離プロセスおよび液体濾過プロセスに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
多層中空ファイバー膜は、当技術分野においてよく知られている。多層中空ファイバー膜は通常、異なる材料で作製することができる支持層と分離層からなり(非対称複合膜)、あるいは本質的に同一の材料で作製することができる支持層と分離層からなる(非対称インテグラルスキン膜)。両方の場合に、支持層と分離層とは異なる形態を有する。しかし、非対称複合膜の場合、支持層と分離層とが物理的に境界を示し、このことは有利ではない。非対称インテグラルスキン膜の場合、内腔側の分離層の製作が必ずしも可能とは限らない。
【0003】
参照により組み込まれるWO2005/082502は、中空ファイバーダイの環状オリフィスを通して疎水性ポリマーと溶媒とを含む紡糸溶液を供給すること、溶媒と疎水性ポリマー用の非溶媒と高分子電解質とを含む凝固剤組成物を同時押し出しすること、ならびに得られた中空ファイバー膜を、凝固浴を通過させることによって作製される、非対称構造を有する高流束透析膜を開示しており、この場合、高分子電解質が、中空ファイバーの内腔側に析出され、これが物理的に分離層との境界になる。紡糸溶液は、紡糸溶液の粘度を増加させるため親水性ポリマーをさらに含んでもよい。中空ファイバー膜を形成した後、親水性ポリマーは、中空ファイバー膜を形成した後、架橋されてもよい。したがって、WO2005/082502は、二ステップ方法を開示している。
【0004】
共に参照により組み込まれているWO2007/125367およびWO2008/138078は、ポリイミドから作製される非対称膜を製造するための多ステップ方法を開示している。この方法は、基体上にポリイミド溶液のフィルムを流延すること、フィルムを凝固媒中に浸漬して膜を形成すること、ならびに形成した膜をアミンで処理することを含む。
【0005】
参照により組み込まれているWO2009/088978は、モノエステル化ポリイミドの調製方法ならびに架橋ポリイミドを含む中空ファイバー膜の製造におけるその使用について開示しており、この架橋ステップは、モノエステル化ポリイミドを、架橋剤、好ましくはジオールと接触させることを含む。したがって、WO2009/088978は、二ステップ方法を開示する。
【0006】
参照により組み込まれているWO2007/007051は、三重オリフィスおよび四重オリフィス中空ファイバーダイを開示する。このようなダイは、共に参照により本明細書に組み込まれているS.−G.Liら、J.Membrane Sci.94、329〜340頁、1994年およびWO93/12868からも知られている。
【発明の概要】
【0007】
支持層と、内側(すなわち、支持層の内腔に面する側)もしくは外側分離層とを有する中空ファイバー膜の製造を、単一ステップで可能にする方法を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
本発明は、支持層と分離層とを有する中空ファイバー膜の製造方法であって、
(a)第1のポリマーと第1のポリマー用の溶媒とを含む紡糸組成物を、中空ファイバーダイの内側環状オリフィスを通して押し出すことと;
(b)有機求核試薬と、第1のポリマー用の溶媒および非溶媒の混合物とを含む組成物を同時押し出しすることと、ここで、この組成物が、中空ファイバーダイの中心環状オリフィスまたは中空ファイバーダイの外側環状オリフィスのいずれかを通して押し出される;
(c)中空ファイバーを、凝固浴を通過させることと
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1において、二重オリフィス紡糸口金が概略的に示される。
【図2】図2において、三重オリフィス紡糸口金が概略的に示される。
【図3】図3は、実施例1からの中空ファイバーの横断面を示し、ボア側を示している。
【図4】図4は、実施例2による中空ファイバーの横断面を示し、ボア側を示している。
【図5】図5は、実施例3からの中空ファイバーの横断面のボア側を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において使用される動詞「備える、含む(to comprise」」ならびにその活用形は、この語に続く項目を含むが、特に言及されない項目を排除しないことを意味する、その非限定的意味において使用される。さらに、不定冠詞「a」もしくは「an」による一要素への参照は、文脈が1つの、また1つだけの要素が存在することを明らかに必要としない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」もしくは「an」は、通常「少なくとも1つ(at least one)」を意味する。
【0011】
第1のポリマー
本発明によれば、第1のポリマーは疎水性ポリマー、好ましくは熱可塑性疎水性ポリマーであって、疎水性ポリマーは、場合によって官能基化したポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドおよびポリイミドからなる群から選択されることが好ましい。これらのポリマーは、当技術分野でよく知られている;例えば、ポリイミドおよびポリエーテルイミドについては、参照により本明細書に組み込まれるKirk−Ohtmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第19巻、第4版、691〜701頁、813〜837頁、1996年を、またエステル基を含有するポリイミドおよびエステル基を含有するポリエーテルイミドについては、参照により組み込まれるWO2009/088978を参照されたい。この疎水性ポリマーは、ポリイミドまたはポリエーテルイミドであることがより好ましい。本発明によれば、第1のポリマーは、異なる第1のポリマーの混合物にされても、またはブレンドとされてもよい。
【0012】
有機求核剤
本発明による有機求核剤は、低分子量有機求核剤、またはオリゴマーもしくはポリマーの有機求核剤であってもよい。有機求核剤の分子量は、好ましくは32〜750,000g/molの範囲内(ヒドラジン、すなわちHN−NHは、分子量32g/molを有する)、より好ましくは60〜750,000g/molの範囲内(エチレンジアミンすなわちHN−CH−CH−NH、これは分子量60g/molを有する)であることが好ましい。有機求核剤は、300〜750,000g/molの範囲内にある分子量を有するオリゴマーもしくはポリマーの求核剤であって、1種もしくは複数の官能基を含む有機オリゴマーもしくはポリマーの求核剤であることがより好ましい。
【0013】
本発明の実施形態によれば、有機求核剤は、ヒドロキシルおよび/もしくはアミノ基を含むことが好ましい。アミノ基は、第一級、第二級または第三級であってよい。求核剤の適切な例には、エチレンジアミン、エチレングリコール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンが含まれる。
【0014】
ポリエチレンイミンは線状もしくは分岐状であってよく、一般式(1)
【化1】

【0015】
(式中、p+qは約8〜約5800であり、またp=8〜2900およびq=0〜2900である)
を有する。ポリエチレンイミンが分岐しており、この場合ポリエチレンイミンにおいて第一級アミノ基:第二級アミノ基:第三級アミノ基の比率が、約1:2:1であることも好ましい。
【0016】
このポリエチレンイミンは、スルホン酸基、リン酸基およびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の官能基を含むポリエチレンイミンであってよく、これらの酸基が任意にそれらの塩の形態にある。このようなポリマーは、従来技術から知られており、例えば、共に参照により組み込まれるUS4.639.339中に、またG.ChamoulaudおよびD.Belanger、J.Colloid Interface Sci.、281、179〜187頁、2005年において、開示されている。
【0017】
このポリエチレンイミンは、HuntsmanからJeffamines(登録商標)として市販されているポリエーテルアミンとすることもできる。
【0018】
このポリエチレンイミンは、共に参照により組み込まれるYen−Che Chiangら、J.Membr.Sci.、326(1)、19〜26頁、2009年およびUS2008/0163437中に開示されている、超分岐ポリエチレンイミンとすることもできる。このような超分岐ポリエチレンイミンは、Nippon Shokubai Co.,LtdからEpomin(登録商標)(重量平均分子量範囲300〜70,000)として市販されている。
【0019】
このポリエチレンイミンは、参照により組み込まれるUS2006/234895において開示されているアルコキシル化ポリエチレンイミンとすることもできる。
【0020】
このポリエチレンイミンは、一般式(1)によることが好ましい。
【0021】
第1のポリマー用の溶媒組成物
本発明によれば、第1のポリマー用の溶媒は、極性非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。このような溶媒は当技術分野でよく知られ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)が含まれる。このポリマー用の溶媒は、これらの極性非プロトン性溶媒の混合物であってもよい。
【0022】
この溶媒は、溶媒の全重量に対して60〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%の極性非プロトン性溶媒と、溶媒の全重量に対して0〜40重量%、より好ましくは0〜30重量%以下の第1のポリマー用の非溶媒とを含むことが好ましい。
【0023】
第1のポリマー用の非溶媒
本発明によれば、第1のポリマー用の非溶媒は、プロトン性溶媒を含むことが好ましい。このような溶媒も当技術分野でよく知られ、水、C〜Cアルカノール(例えばエタノール)、C〜Cアルカンジオール(例えばエチレングリコール)、C〜C12アルカントリオール(例えばグリセロール)、C〜C20ポリオール(例えば、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ジトリメチロールエタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエルチリトール(pentaerthyritol)、ジペンタエルチリトール、トリペンタエリトリトールおよびソルビトール)、親水性、好ましくは水溶性ポリマーもしくはコポリマー例えばポリアルキレンポリオールおよびポリビニルピロリドンなどを含む。非溶媒は、非溶媒の混合物であってもよい。
【0024】
好ましいポリアルキレンポリオールは、C〜Cアルキレングリコールに由来し、それらはポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPO)、EO−PO二ブロックポリマー、EO−PO三ブロックポリマー、混合ポリ(エチレン−プロピレングリコール)ポリマーおよび混合ポリ(エチレン−ブチレングリコール)ポリマーからなる群から選択される。C〜Cアルキレングリコールのより好ましい親水性ポリマーもしくはコポリマーは、数平均分子量200〜5000、より好ましくは400〜3000、特に400〜2000を有する親水性ポリマーである。親水性ブロックはPEGであることが最も好ましい。例示的な親水性ブロックは、PEG200、PEG400、PEG600、PEG1000およびPEG1450である。
【0025】
この非溶媒は、非溶媒の全重量に対して60〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%のプロトン性溶媒と、非溶媒の全重量に対して0〜40重量%、より好ましくは0〜30重量%以下の第1のポリマー用の溶媒とを含むことが好ましい。
【0026】
本発明によれば、ポリマー用の非溶媒が、ポリマー用の溶媒と混和可能であることも好ましい。
【0027】
方法
本発明による方法は、液体誘起による相分離に基づいている。一般に、このような方法において、ポリマー溶液と、非溶媒、好ましくはポリマー用の溶媒と混和可能である非溶媒とが、多重オリフィスダイを通して同時押し出しされ、ポリマー溶液と非溶媒との間で接触すると、ポリマー相から溶媒が駆出され、ある非溶媒濃度でポリマーが固体となる。
【0028】
本発明による方法は、異なる紡糸口金、すなわち二重オリフィス紡糸口金、三重オリフィス紡糸口金または四重オリフィス紡糸口金を使用することによって実施することができる。このような紡糸口金は、当技術分野において知られており、例えば、参照により組み込まれているWO93/12868およびWO2007/007051中に開示されている。二重オリフィス紡糸口金において、ポリマー溶液は通常、外側環状オリフィスを通して押し出され、一方、非溶媒は中心環状オリフィスを通して押し出される。本発明の方法によれば、二重オリフィス紡糸口金を用いると、外側支持層と内側分離層とを有し、分離層の材料が、支持層を構成する材料と異なっている中空ファイバー膜の生成が可能になる。三重オリフィス紡糸口金では、ポリマー溶液は中間オリフィスを通して押し出され、一方、非溶媒は中心環状オリフィスを通しておよび/または外側環状オリフィス(好ましくは外側環状オリフィス)を通して押し出される。このような紡糸口金の使用により、内側支持層と外側分離層とを有し、分離層の材料が、支持層を構成する材料と異なっている中空ファイバー膜の生成が可能になる。四重オリフィス紡糸口金により同様に、三重層中空ファイバー膜の生成が可能になる。
【0029】
本発明の第1の実施形態によれば、紡糸組成物は、第1のポリマーと第1のポリマー用の溶媒とを含み、一方有機求核剤を含む組成物は、第1のポリマー用の非溶媒を含む。
【0030】
本発明の第2の実施形態によれば、紡糸組成物は、第1のポリマーと第1のポリマー用の溶媒と第1のポリマー用の非溶媒とを含み、一方求核剤を含む組成物は、第1のポリマー用の非溶媒を含む。本発明のこの第2の実施形態において、第1のポリマー用の溶媒系は、溶媒の全重量に対して60〜99.9重量%、より好ましくは70〜99.9重量%の第1のポリマー用の溶媒と、溶媒の全重量に対して0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の第1のポリマー用の非溶媒とを含む。
【0031】
本発明の第3の実施形態によれば、紡糸組成物は、第1のポリマーと第1のポリマー用の溶媒と第1のポリマー用の非溶媒とを含み、一方有機求核剤を含む組成物は、第1のポリマー用の溶媒および非溶媒を含む。本発明のこの第3の実施形態において、第1のポリマー用の溶媒系は、溶媒の全重量に対して60〜99.9重量%、より好ましくは70〜99.9重量%の第1のポリマー用の溶媒と、溶媒系の全重量に対して0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の第1のポリマー用の非溶媒とを含むことが好ましい。有機求核剤を含む組成物用の溶媒系は、溶媒系の全重量に対して60〜99.9重量%、より好ましくは70〜99.9重量%の第1のポリマー用の溶媒と、溶媒系の全重量に対して0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の第1のポリマー用の非溶媒とを含むことが好ましい。
【0032】
本発明の第4の実施形態によれば、紡糸組成物は、第1のポリマーと第1のポリマー用の溶媒とを含み、一方有機求核剤を含む組成物は、第1のポリマー用の溶媒および非溶媒とを含む。有機求核剤を含む組成物用の溶媒系は、溶媒系の全重量に対して60〜99.9重量%、より好ましくは70〜99.9重量%の第1のポリマー用の溶媒と、溶媒系の全重量に対して0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の第1のポリマー用の非溶媒とを含むことが好ましい。
【0033】
本発明の第5の実施形態によれば、紡糸組成物は有機求核剤をさらに含むことができ、この場合組成物は、場合によって有機求核剤を欠くことができる。
【0034】
したがって、本発明は、下記の選択肢を包含しており、この選択肢において、相(1)および相(2)は、示されている必須成分を含む:
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の非溶媒。
【0035】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の非溶媒。
【0036】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒。
【0037】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒。
【0038】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+有機求核剤;相(2):第1のポリマー用の非溶媒。
【0039】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒+有機求核剤;相(2):第1のポリマー用の非溶媒。
【0040】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒+有機求核剤;相(2):第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒。
【0041】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒+有機求核剤;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の非溶媒。
【0042】
相(1):第1のポリマー+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒+有機求核剤;相(2):有機求核剤+第1のポリマー用の溶媒+第1のポリマー用の非溶媒。
【0043】
図1において、二重オリフィス紡糸口金が概略的に示される。本発明による方法が、二重オリフィス紡糸口金により実施される場合、相(1)組成物は、外側環状オリフィス1を通して押し出され、一方相(2)組成物は、中心環状オリフィス2を通して同時押し出しされる。
【0044】
図2において、三重オリフィス紡糸口金が概略的に示される。本発明による方法が、三重オリフィス紡糸口金により実施される場合、相(1)組成物は、中間環状オリフィス1を通して押し出され、一方相(2)組成物は、外側環状オリフィス2を通って同時押し出しされる。非溶媒が、中心環状オリフィス3を通して同時押し出しされる。別法として、相(1)組成物は、中間環状オリフィス1を通して押し出され、一方相(2)組成物は、中心環状オリフィス3を通して同時押し出しされ、またその場合非溶媒が、外側中心環状オリフィス2を通して同時押し出しされる。この実施形態によれば、不活性ガス、蒸気または不活性液体を、相(2)組成物の代わりに中心環状オリフィス3を通して同時押し出しされてもよい。
【0045】
当技術分野において、中心オリフィスを通して押し出される相は、しばしば「ボア(bore)液」と呼ばれ、一方外側オリフィスを通して押し出される相は、しばしば「シェル液」と呼ばれる。
【0046】
他のプロセスパラメーターには、相(1)および相(2)組成物の温度、使用される場合、ガス、蒸気または不活性液体の温度、中空ファイバーが引っ張られる引張り速度、凝固浴の温度、相(1)組成物中の第1のポリマーの濃度などが含まれる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、相(2)組成物は、相(2)組成物の全重量に対して1重量%〜30重量%の求核剤と、70重量%〜99重量%の溶媒相とを含み、この場合、この溶媒相は、溶媒相の全重量に対して1重量%〜99重量%のプロトン性溶媒と、1重量%〜99重量%の極性非プロトン性溶媒とを含む。溶媒相は、10重量%〜90重量%のプロトン性溶媒と、10重量%〜90重量%の極性非プロトン性溶媒とを含むことがより好ましい。最も好ましくは、プロトン性溶媒は水および/またはポリエチレングリコールであり、溶媒はNMPである。
【0048】
本発明による中空ファイバー膜は、ガス分離プロセス、蒸気分離プロセスおよび液体濾過プロセスに特に有用である。
【0049】
[例1]
Lenzing P84ポリイミド(HP polymers GmbH、オーストリア)22重量%と、グリセロール12重量%とN−メチルピロリドン(NMP)66重量%との粘稠な溶液を50℃で24時間連続的に撹拌して、均質な溶液を得た。このポリマー溶液を、25μmメッシュ金属フィルターを通して濾過し、その後室温でさらに48時間静置して、気泡を除去した。ポリマー溶液を、二重紡糸口金の外側環状オリフィスを通して流量3.1ml/minで押し出し、一方、20重量%のポリエチレンイミン(PEI)MW25,000と、NMP70重量%と水10重量%とを含むボア液を同時に、中心オリフィスを通して流量1.8ml/minでポンプ輸送した。紡糸口金寸法は、内側部直径0.8mm、外側部直径1.5mmであった。ファイバーは、8.7m/minの速度で引っ張り、最初にエアギャップ5cmを、その後純水を入れた凝固浴を通過させた。次いでファイバーは、水中に2日間浸漬して、残留NMPを除去し、回収し、エタノール中にさらに1日置いた。次いで中空ファイバー膜を周囲温度で空気中において乾燥した。図3は、実施例1からの中空ファイバーの横断面を示し、ボア側を示している。
【0050】
[例2]
Lenzing P84ポリイミド(HP polymers GmbH、オーストリア)30重量%、N−メチルピロリドン(NMP)70重量%の粘稠な溶液を50℃で24時間連続的に撹拌して、均質な溶液を得た。このポリマー溶液を、25μmメッシュ金属フィルターを通して濾過し、その後室温でさらに48時間静置して、気泡を除去した。ポリマー溶液を、二重紡糸口金の外側環状オリフィスを通して流量3.1ml/minで押し出し、一方、10重量%のPEI MW25,000とNMP79重量%と水11重量%とを含むボア液を同時に、中心オリフィスを通して流量1.8ml/minでポンプ輸送した。紡糸口金寸法は、内側部直径0.8mm、外側部直径1.5mmであった。ファイバーは、4.2m/minの速度で引っ張り、最初にエアギャップ1cmを、その後純水を入れた凝固浴を通過させた。次いでファイバーは、水中に2日間浸漬して、残留NMPを除去し、回収し、エタノール中にさらに1日置いた。次いで中空ファイバー膜を周囲温度で空気中において乾燥した。図4は、実施例2による中空ファイバーの横断面を示し、ボア側を示している。
【0051】
[例3]
Lenzing P84ポリイミド(HP polymers GmbH、オーストリア)22重量%とグリセロール12重量%とN−メチルピロリドン(NMP)66重量%との粘稠な溶液を50℃で24時間連続的に撹拌して、均質な溶液を得た。このポリマー溶液を、25μmメッシュ金属フィルターを通して濾過し、その後室温でさらに48時間静置して、気泡を除去した。ポリマー溶液を、三重紡糸口金の中間環状オリフィスを通して流量2.9ml/minで押し出し、一方、5重量%のエチレンジアミン(EDA)と95重量%のポリエチレングリコール400とを含むボア液を同時に、中心オリフィスを通して流量1.0ml/minでポンプ輸送した。NMP75重量%と水25重量%とを含むシェル液を、外側環状オリフィスを通して流量1.4ml/minでポンプ輸送した。紡糸口金寸法は、内側部直径0.6mm、中間部直径1.25mmおよび外側部直径1.75mmであった。ファイバーは、1.7m/minの速度で引っ張り、最初にエアギャップ2.5cmを、その後純水を入れた凝固浴を通過させた。次いでファイバーは、水中に2日間浸漬して、残留NMPを除去し、回収し、エタノール中にさらに1日置いた。次いで中空ファイバー膜を周囲温度で空気中において乾燥した。図5は、実施例3からの中空ファイバーの横断面のボア側を示している。
【符号の説明】
【0052】
1 外側環状オリフィス、中間環状オリフィス
2 中心環状オリフィス、外側環状オリフィス
3 中心環状オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と分離層とを有する中空ファイバー膜の製造方法であって、
(a)第1のポリマーと前記第1のポリマー用の溶媒とを含む紡糸組成物を、中空ファイバーダイの内側環状オリフィスを通して押し出すことと;
(b)有機求核試薬と、前記第1のポリマー用の溶媒および非溶媒の混合物とを含む組成物を同時押し出しすることと、ここで、前記組成物は、前記中空ファイバーダイの中心環状オリフィスまたは中空ファイバーダイの外側環状オリフィスのいずれかを通して押し出される;
(c)前記中空ファイバーを、凝固浴を通過させること
を含み、
(1)前記第1のポリマーが、疎水性ポリマーであり、
(2)前記有機求核剤が、アミノ基を含み、32〜750,000g/molの分子量を有する方法。
【請求項2】
前記中空ファイバーダイが、二重オリフィス紡糸口金、三重オリフィス紡糸口金または四重オリフィス紡糸口金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性ポリマーが、熱可塑性疎水性ポリマーである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性ポリマーが、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはポリエーテルイミドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
疎水性ポリマーが、ポリイミドまたはポリエーテルイミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリイミドまたは前記ポリエーテルイミドがエステル基を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機求核剤が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエチレンイミンが、線状もしくは分岐状であってよく、一般式(1)
【化1】

(式中、p+qは8〜5800であり、またp=8〜2900およびq=0〜2900である)
を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエチレンイミンが分岐しており、前記ポリエチレンイミンにおいて第一級アミノ基:第二級アミノ基:第三級アミノ基の比率が、約1:2:1である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機求核剤を含む組成物が、前記有機求核剤を含む組成物の全重量に対して約0.1〜約100重量%の有機求核試薬を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のポリマー用の溶媒が、極性非プロトン性溶媒を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のポリマー用の非溶媒が、プロトン性溶媒を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる中空ファイバー膜。
【請求項14】
分離層が、支持層と化学的に隣接している、請求項13に記載の中空ファイバー膜。
【請求項15】
ガス分離プロセス、蒸気分離プロセスおよび液体濾過プロセスにおける、請求項13または請求項14に記載の中空ファイバー膜の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−521126(P2013−521126A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557000(P2012−557000)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/NL2011/050151
【国際公開番号】WO2011/108929
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(506016967)
【出願人】(512230960)ウニベルジテイト・トウェンテ (1)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Twente
【住所又は居所原語表記】Drienerlolaan 5, 7522 NB Enschede, the Netherlands
【Fターム(参考)】