説明

中空ポリマー粒子、着色中空ポリマー粒子及びそれらの製造方法

【課題】 空隙率の高いナノメートルオーダーの中空ポリマー粒子及び着色中空ポリマー粒子を提供することであり、また、それらの粒子を界面活性剤等の分散安定剤を用いなくても良い擬エマルジョンラジカル重合工程を利用して製造する、簡便かつ低環境負荷の中空ポリマー粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなり、且つ該殻壁の厚みの平均値が5nm〜80nmであることを特徴とする中空ポリマー粒子、及びラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を水溶性重合開始剤を用いて水性媒体中でラジカル重合することを特徴とする中空ポリマー粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ポリマー粒子に関し、より詳しくは、薄い殻壁を有する空隙率の高い中空ポリマー粒子、着色中空ポリマー粒子及びそれらの簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空ポリマー粒子は、その粒子内部に種々の機能物質を包含したマイクロカプセルとして広く利用されている。また、内部空孔による特異な光散乱特性を有するため、紙、繊維、皮革等へのコーティング・塗料等の分野において、光沢、不透明度、白色度などの性能を付与するための光散乱剤、光散乱助剤としても有用であることが知られている。さらに、内部が中空であるため、嵩高軽量化や断熱効果も期待できる。
【0003】
このような中空ポリマー粒子の製造方法としては、幾つかの方法が提案されている。例えば、カルボキシ基含有単量体20〜60質量%及びこれと共重合可能な単量体80〜40質量%の共重合体からなる中心層重合体、カルボキシ基含有単量体1〜12質量%及びこれと共重合可能な単量体99〜88質量%の共重合体からなる中間層重合体、及びカルボキシ基を含まない単量体の重合体からなる表面層重合体からなる、少なくとも3層構造を有する重合体粒子を含有するラテックスに、アルカリを添加して該ラテックスのpHを8以上とし、次いで、酸を添加して該ラテックスのpHを7とすることによって、中空重合体粒子を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、動的膨潤法を利用した中空ポリマー粒子の製造法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この製造法では、まず、親水性有機溶媒中において、例えばポリスチレン粒子等の種重合体粒子中に、ジビニルベンゼン等の単量体、トルエンなどの水不溶性有機溶媒及びアゾビスイソブチロニトリル等の油溶性重合開始剤を吸収させることにより、該種重合体粒子を膨潤ないし溶解させる。この操作により、水不溶性有機溶媒が種重合体粒子を溶解し、該種重合体粒子、単量体、水不溶性有機溶媒、及び油溶性重合開始剤の混在した液滴が得られる。この状態で昇温すると、油溶性重合開始剤の存在により、上記液滴内の単量体が重合し、単量体の重合被膜からなる第一のシェル層を形成し、その内部には水不溶性有機溶媒に溶解した種重合体粒子が存在する。こうして得られた粒子を乾燥することにより、コア部の水不溶性有機溶媒が揮発し、種重合体粒子が、単量体の重合被膜からなるシェル層の内側に付着した、第二のシェル層を有する中空重合体粒子が得られる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案された方法では、中空重合体粒子を得るために、予め、少なくとも3層の構造を有する重合体粒子を製造するため、工程が煩雑である。また、得られた該粒子をアルカリ処理した後、酸処理、後処理を行う必要があり、多くの工程と時間を要するという問題がある。更に、3層構造の粒子を用いて中空粒子を製造するために、得られる中空重合性粒子の空隙率を高くすることが困難である。
【0006】
特許文献2に開示されている方法においても、中空重合性粒子を得るためには、前述のように、種重合体粒子を必要とし、これを親水性有機溶媒中に分散させた後、動的膨潤法による種重合体粒子の膨潤、シード重合という複数の工程を経なければならず、多くの工程と時間を要する。また、この方法で得られる中空重合性粒子も、内部壁に種重合体から形成される第二のシェル層を有するので空隙率が低く、得られる粒子の大きさもマイクロメートルオーダーの大きいものであって、ナノサイズの粒子を得ることが出来ない。
【0007】
このように、従来知られている中空重合性粒子の製造法は、一般的に、複数の工程を経る必要があり、生産効率が悪く、簡便な方法の開発は解決すべき重要な課題である。また、製造される中空ポリマー粒子の空隙率を向上させることは、該粒子の応用展開においても必要な開発要求項目である。
【0008】
そこで、少ない工程数で中空粒子を得る方法についても検討がなされ、例えば、モノマー成分に目的成分および重合開始剤を溶解させて均一な溶液としたものを、分散安定剤を含む水に加えて、加熱しながら攪拌し、縣濁重合を行うことによってシェル及び中空部分からなる中空微粒子の中空部分に目的成分が内包された微粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法では、目的成分として特定の有機溶媒を用いれば、溶媒内包微粒子を得ることができ、この溶媒を除去することにより、空隙率の高い単層の中空高分子微粒子を得ることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献3で提案された方法では、重合そのものでは、複数の工程を経ず中空ポリマー粒子を得ることができるが、モノマー成分に目的成分および重合開始剤を溶解させて均一な溶液としたものを水中に分散させるために分散安定剤の使用、および特殊な分散法、例えば、ホモジナイザーや膜乳化法等の機械的せん断力を用いた分散方法を使用するなど全工程での煩雑さは避けられなかった。また、上記分散法から得た分散液中の液滴の大きさは単分散ではなく、種々の異なる粒子径の液滴が混在したものとなり、最終的に得られる中空ポリマー粒子の粒径分布では多分散となる問題があった。そのため、均一な粒径の中空粒子を得るためには多孔質ガラス(SPG)を利用した特別な乳化方法を利用するなど、前処理工程の改善が前提条件となっている。
【0010】
前述の何れの中空ポリマー粒子の製造法では、重合性モノマー分子構造による重合活性、モノマーの重合に伴う成長ポリマーの物性変化などを利用した分子の自発的な組織化過程による中空構造誘導方法とは全く無関係であり、加工的な手法をベースにした工程を増やすことによって中空粒子を得るものである。ラジカル重合形式による中空ポリマー粒子の製造では、未だにこの方法に依存していることが多く、省エネルギー、低環境負荷の製造プロセス開発は挑戦的な課題である。
【0011】
また、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の温度による親水性−疎水性変化を利用して、水滴が油相中分散されるいわゆるW/O型逆エマルジョン媒体中、水/オイル界面でのラジカル重合反応を行うことにより、中空微粒子を得る方法も開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。この方法では、まずは、N−イソプロピルアクリルアミドとテトラエチレンペンタミンを溶解した水溶液を、ラジカル重合の架橋剤であるジビニルベンゼンを溶解したトルエン(油層)中で乳化させ、W/O型逆エマルジョンを形成させる。その後、油相中に過酸化ベンゾイルを加え、水/オイル界面にて、その過酸化物と水滴中に溶解したテトラエチレンペンタミンとの酸化還元反応を引き起こし、それにより生じるラジカルが水滴中のN−イソプロピルアクリルアミドの重合反応を引き起こす。水滴中成長するポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は感温性ポリマーである故に、反応系の温度がポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の下限臨界共溶温度(LCST、3234℃)以上では、疎水性に変化し、水滴中よりも、水/油界面のへ移動する。その界面で、油相中多く溶解された架橋剤ジビニルベンゼンとの共重合反応が進行し、水にも油にも不溶性の架橋化されたポリマーが水/油界面で生成する。その結果、水滴を鋳型にした中空粒子を得ることができる。
【0012】
非特許文献1の方法では、重合過程そのものは、複数の工程を経ることなく中空粒子を得ることができるが、W/O型逆エマルジョンを形成するために乳化剤を用いる必要があり、適切な乳化剤の種類、使用量、乳化方法の選択が必要である等、全工程では、複雑な作業を行う必要があった。また、この方法では、ラジカル重合反応がW/O型逆エマルジョンの水/オイルの界面で進行するため、重合前初期の水滴サイズを均一に揃えたとしても、全重合過程での水滴サイズは全体的に乱れてしまうため、中空粒子の粒径制御や膜厚の制御はできず、結果的には、粒径の揃わない1−3μm径の比較的大きな粒子で、かつ殻厚さが100nmといった分厚い殻を持った粒子しか得られなかった。更に、この方法では、下限臨界共溶温度(LCST)という熱応答性の水溶性ポリマーなしでは、水/オイル界面でのラジカル重合は全く不可能で、広範囲のモノマーへの展開はできない。また、W/O型逆エマルジョンであるが故に、トルエンのような大量の有機溶剤を排出せざる得なく、その環境負荷は非常に大きい。
【0013】
【特許文献1】特開平6−248012号公報
【特許文献2】特開平8−020604号公報
【特許文献3】特開2003−096108号公報
【非特許文献1】Q.Sun、他1名、「ジャーナル・オブ。アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)」, 第127巻,2005年,p.8274−8275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記実情を鑑み、本発明の課題、即ち目的は、空隙率の高いナノメートルオーダーの中空ポリマー粒子及び着色中空ポリマー粒子を提供することであり、また、それらの粒子を界面活性剤等の分散安定剤を用いなくても良い擬エマルジョンラジカル重合工程を利用して製造する、簡便かつ低環境負荷の中空ポリマー粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群を水性媒体中で重合させることにより、重合反応進行中自発的なポリマー会合体形成を伴いながら、親水性表面を有する空隙率の高い中空ポリマー粒子が生成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなり、且つ該殻壁の厚みの平均値が5nm〜80nmであることを特徴とする中空ポリマー粒子及びその製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体(X)と、着色性化合物(Y)とを主構成成分とする殻壁からなることを特徴とする着色中空ポリマー粒子及びその製造方法をも提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空隙率の高い中空ポリマー粒子を得ることができる。該中空ポリマー粒子は、本発明の製造方法である、ラジカル重合性の水溶性単量体と、ラジカル重合性の非水溶性単量体とを、水性媒体中で水溶性重合開始剤を用いて擬エマルジョンラジカル重合するという、簡便で且つ再現性の良い方法で得ることが出来る。得られる中空ポリマー粒子は単分散性をも有するものであり、殻壁の厚さが5nm〜80nmと薄く、表面が親水性であるため、水性媒体中で安定に存在する。該中空ポリマー粒子は、その製造途中、若しくは製造後、該中空に種々の機能性分子を取り込ませることが可能であり、取り込んだ機能性分子に基づく、様々な機能を有する粒子とすることができる。特に、着色性化合物を物理的な結合(吸着)や化学的結合させることによって、着色した中空ポリマー粒子をも得ることができる。
【0019】
従って、本発明の中空ポリマー粒子は、水性コーティング・塗料等の分野において、内部空孔による特異な光散乱特性を利用し、紙、繊維、皮革等への光沢、不透明度、白色度などの性能を付与するための光散乱性向上剤、白色顔料として応用できる。また中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。また、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また、同一体積での重量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。更に、内部に種々の化学物質を包含した化学物質保持剤としても用いることができ、熱や圧力、pH変化など、何らかの刺激によって内部に包含した成分を徐放する化学物質徐放性放出剤、DDS材料としても利用できる。
【0020】
本発明の中空ポリマー粒子の製造方法は、多段階にわたる複雑な工程を必要とせず、従来行われているラジカル重合形式を用いるものであり、上記の種々の用途に安価に中空ポリマー粒子を供給することが可能であり、さらに各種用途に応じた構造設計も容易であるため、産業的有用性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の中空ポリマー粒子は、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを必須の原料として用い、これらの単量体群(I)を共重合して得られるポリマー層を殻として有するものであり、その厚みが5nm〜80nmと薄いことを特徴とする。前記水溶性単量体(A)と非水溶性単量体(B)の種類や使用割合を調整することによって、該ポリマー層からなる殻の厚みを5nm〜80nm範囲でコントロールすることが可能である。産業上の応用的視点から、5nm未満、または80nm以上の殻の厚みを有する中空ポリマー粒子は望ましくない。なぜなら、殻の厚みが5nm未満では、中空ポリマー粒子としての形状安定性が悪くなり、80nmを超えるものでは、中空ポリマー粒子の該中空部分への物質搭載した際のキャリアー機能が低下するからである。
【0022】
通常のラジカル重合系であっても、原料として用いる単量体の特徴に由来する重合活性、単量体からポリマーへと成長する際のポリマーセグメントの物性変化、重合開始剤の種類、重合媒体などを巧く利用することができれば、重合反応と同時に、分子の自己組織化力を駆動させ、ポリマー会合体のドメインを誘導することは十分可能であると考えられる。
【0023】
本発明では、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)に水溶性重合開始剤を組み合わせ、それを完全水性媒体中でラジカル重合させることにより、自発的な中空ポリマー粒子の形成を完成した。即ち、重合活性や水性媒体への親和性が異なる2種類の単量体を共重合させる場合には、必ずしもランダム共重合となることはなく、共重合体中で単量体1のユニットが濃厚なセグメントと単量体2のユニットが濃厚なセグメントが生じ、それが両親媒性ポリマーとして機能するという現象を利用したものである。
【0024】
本発明で用いる、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を水性媒体中で共重合する際に、水溶性単量体(A)は非水溶性単量体(B)に比べ、そのモル濃度は非常に低い。水溶性開始剤を用いて重合を行うと、水溶性単量体(A)が優先的に重合され、該単量体(A)由来の親水性のセグメントが形成される。ところが、末端ラジカルの親水性のセグメントが一定の大きさに成長すると、重合度の増大等の要因により非水溶性単量体の液滴との間にdepletion(枯渇)相互作用が強く誘導され、その液滴表面に成長中の親水性セグメントが濃縮される現象が起こる。言い換えれば、親水性セグメントの成長末端周辺は、非水溶性単量体(B)で埋まる状態になる。従って、親水性セグメントのラジカル成長末端には非水溶性単量体(B)の付加反応が始まり、非水溶性単量体(B)の重合が急速に進行し、その結果、二つの相反する性質のセグメントを有する共重合体が生成する。このようにして生成した疎水性セグメントと親水性セグメントとを有する共重合体は、いわゆる高分子界面活性剤として働き、重合反応途中、該共重合体は自発的に疎水セグメントがサンドイッチされたような二分子膜ポリマー会合体粒子(ポリマーベシクル)へ集合する。その結果、残存する多くの非水溶性単量体(B)はその会合体粒子の膜中に取り込まれながら重合し、最終的にはポリマーベシクル構造に類似した内外表面が親水性であり、殻壁の厚みが薄い中空ポリマー粒子が与えられる。本発明では、上記のような重合過程を擬エマルジョン重合と定義する。
【0025】
この様にして得られる中空ポリマー粒子の平均粒子径は、目的に応じて50nm〜5μmのものを作製可能であるが、擬エマルジョン重合法による製法であることに起因し、前述の会合体が安定に存在できる点から、特に50nm〜1μmの中空ポリマー粒子を容易に作製できる。また、その粒径分布は、原料として用いる水溶性単量体(A)、非水溶性単量体(B)及び水溶性開始剤の種類、及び配合比率によって自発的に形成される会合体を基礎とするために単分散であり、変動係数が0.1以下のものも容易に作製可能である。
【0026】
また、本発明の中空ポリマー粒子の殻壁は、粒子の粒径に応じて異なった厚さのものを得ることができる。例えば、平均粒子径が50nm以上300nm未満の中空ポリマー粒子では、その殻壁の厚みが5nm〜30nmのものを作製でき、また、300nm以上1μm未満の平均粒子径を有する中空ポリマー粒子では、その殻壁の厚みは5nm〜80nmのものを作製できる。この殻壁の厚みは、目的に応じて上記範囲の中で適宜選択して作製可能であるが、空隙率が高く、かつ殻壁が充分な強度を保つために、50nm以上300nm未満の中空ポリマー粒子は5nm〜15nmの厚さの殻壁を有することがより好ましく、300nm以上1μm未満の平均粒子径を有する中空ポリマー粒子は10nm〜40nmの厚さの殻壁がより好ましい。尚、この殻壁の厚みについても、粒子径と同様、単量体の重合に伴う自発的な組織化により、均一なものが得られる。即ち1個の粒子の全殻の厚みが均一であり、同一条件下で得られるすべての粒子の殻の厚みも均一である。本発明ではSEMにて観測される中空ポリマー粒子の殻の厚みを30箇所測定した結果の平均値を殻壁の厚みとした。
【0027】
本発明で用いるラジカル重合性の水溶性単量体(A)としては、特に限定されるものではないが、蒸留水に対して1.0質量%以上溶解するものであることが好ましく、蒸留水と任意に混和可能であるものがより好ましく、その構造中に例えば、アミド基、アミノ基、オキシアルキレン鎖、シアノ基、酸無水物基等を有するものを用いることができる。また、例えばカルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を有するもの、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を有するものを用いることができる。具体的には、アミド基を有する水溶性単量体としては、例えばアクリルアミドやN−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N―ジメチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドやN−ジ置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性単量体としては、例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。また、カルボキシ基を有する水溶性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。スルホン酸基を有する水溶性単量体としては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸シクロヘキシルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらにビニルピリジンやグリシジルメタクリレートに有機アミンを反応させて合成した単量体を四級化させて得られる、四級化単量体を用いても良い。
【0028】
これらの水溶性単量体(A)の中でも、その構造中にアミド基、アミノ基、カルボキシ基又はその塩、スルホン酸基又はその塩を有するものは、工業的入手容易性、水溶性、ラジカル重合容易性等に優れる点から好ましいものである。
【0029】
更に、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミドは、疎水性基と親水性基とを1分子中に有する点から、界面活性作用を有すると考えられ、また、その単独重合体は、重合度や水性媒体の温度によって水溶性の度合いが変化するという特異な性質を有する。これらの性質によって、前述の反応機構が容易に達成されることになり、本発明の中空ポリマー粒子をより容易に製造することができる。
【0030】
また、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミドの単独重合体が、水溶液中で下限臨界共溶温度(LCST)を有し、この温度近傍でcoil−globule転移を起こすこと、即ち、低温では高分子鎖は水和して親水性であるが、高温では高分子鎖が収縮し疎水性を示すという特異的な性質は、得られる中空ポリマー粒子の表面構造にも影響を及ぼし、中空ポリマー粒子の粒子径は、水性媒体中に分散された状態でLCSTを境に低温側では大きく、高温側では小さくなるという温度応答性の層を有することになる。
【0031】
この温度応答性を示す層の水性媒体中における厚みは、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とラジカル重合性の水溶性単量体(A)との使用モル比等により変化し、また得られる中空ポリマー粒子の粒子径によっても異なる。例えば、平均粒径が50nm以上300nm未満の中空ポリマー粒子では、温度応答性の層の厚さが5nm〜100nmのものを作製することができ、また、300nm以上1μm未満の平均粒子径を有する中空ポリマー粒子では、5nm〜200nmの温度応答性層を有するものを作製することができる。
【0032】
本発明で用いる、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)としては、前記の水溶性単量体(A)と共重合可能な基を有するものであれば、種々の単量体を用いることが可能であるが、蒸留水に対する溶解度が0.5質量%以下であることが好ましく、特に前記の水溶性単量体(A)との反応性に優れ、且つ工業的入手が容易である点から、アクリレートやメタクリレートであることが好ましい。
【0033】
アクリレートとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸グリシジル、tert−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることが出来る。
【0034】
また、メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることが出来る。これらラジカル重合性の非水溶性単量体(B)は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。以下、本文中で使用する(メタ)アクリレートは特に断りのない限り、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物を総称するものとして用いる。
【0035】
前記ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)の中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有するものは、前記ラジカル重合性の水溶性単量体(A)との共重合体を形成する途中、若しくは共重合体となった後、該共重合体の分子内、若しくは分子間で架橋反応することが可能であり、該架橋反応によって、得られる中空ポリマー粒子の殻の部分を形成する共重合体の強度を高め、該中空ポリマー粒子の安定性を高めることに寄与すると考えられるので、特に好適に用いることができる。
【0036】
前記ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)として、二官能のジ(メタ)アクリレート
、例えば、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレン(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート等のポリエチレンジ(メタ)アクリレート類、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、等のポリプロピレンジ(メタ)アクリレート類、グリセロールジ(メタ)アクリレート等も単独で、または2種以上を併用して用いることができる。これらのジ(メタ)アクリレートを用いる場合には、得られる中空粒子の凝集を防ぐ目的で、単官能の前記(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特にラジカル重合性の非水溶性単量体(B)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.7以上であることが好ましい。
【0037】
前記ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)としては、(メタ)アクリレート以外の、例えば、スチレン系化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビスビニル化合物等を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。このとき、本発明の中空ポリマー粒子を容易に得られる点から、(メタ)アクリレートと併用することが好ましく、特に、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)中の(メタ)アクリレートの使用割合がモル比で0.5以上であることが好ましい。
【0038】
前記スチレン系化合物は、スチリル基を有する化合物であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−メトキシスチレン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
【0039】
前記ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0040】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
前記ビスビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中空ポリマー粒子の殻中に架橋構造を生じるため、安定した中空粒子を製造することが可能である点から好ましいものである。
【0042】
前記ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)と前記ラジカル重合性の水溶性単量体(A)との使用割合としては、目的とする中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚み等により選択されるものであるが、水性媒体中で安定に存在できる中空ポリマー粒子が得られ、且つ中空構造も安定である点から、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とラジカル重合性の水溶性単量体(A)とのモル比(B)/(A)が3.5〜12であることが好ましく、特に該比率が3.5〜10であることが好ましい。尚、後述する本発明の製造方法において、単量体群(I)を一括で添加するのではなく、ある程度重合が進行し、中空ポリマー粒子が形成されてからラジカル重合性の非水溶性単量体(B)を加えて該中空ポリマー粒子の平均粒子径や殻壁の厚みをコントロールする際には、該比率が12を超える場合においても安定な中空ポリマー粒子を得ることができる。
【0043】
本発明の着色中空ポリマー粒子は、前述の中空ポリマー粒子に着色性の化合物を組み合わせたものであり、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体(X)と、着色性化合物(Y)とを主構成成分とする殻壁からなることを特徴とする。
【0044】
ここで用いることができるラジカル重合性の水溶性単量体(A)及びラジカル重合性の非水溶性単量体(B)は、前述のものをいずれも同様に用いることができ、好ましい単量体としても同じである。
【0045】
前記着色性化合物(Y)としては、可視光領域(400nm〜800nm)に光吸収を有する化合物の他に、フォトクロミック分子等の紫外光を吸収して化学構造の変化を起こすことにより可視光領域の吸収を示す化合物や、可視光領域の発光を示す化合物も用いることができる。
【0046】
本発明の着色中空ポリマー粒子において、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体(X)と、前記着色性化合物(Y)は、物理的結合をしていても良く、また、化学結合していても良い。さらに、着色性化合物(Y)は、一種類であっても、複数が同時に存在していても良い。この場合、物理的結合しているものと化学結合しているものが同時に存在しても良い。
【0047】
共重合体(X)と着色性化合物(Y)とが物理的結合している着色中空ポリマー粒子とは、例えば、後述する着色中空ポリマー粒子の製造方法において、該着色性化合物(Y)の存在下でラジカル重合を行うことにより、共重合体(X)を主構成成分とする殻を有する中空ポリマー粒子の内部に着色性化合物(Y)を内包させ、水性媒体を乾燥等により除去することにより、殻壁の内表面に吸着させたもの、あるいは、水性媒体中に溶解していた着色性化合物(Y)が水性媒体の除去工程において中空ポリマー粒子の該表面に吸着させたものをいう。
【0048】
また、共重合体(X)と着色性化合物(Y)とが物理的結合している着色中空ポリマー粒子には、後述の着色中空ポリマー粒子の製造方法において、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)中に水溶解性の低い該着色性化合物(Y)を溶解させ、ラジカル重合を行うことにより、共重合体(X)を主構成成分とする中空ポリマー粒子の殻内部に着色性化合物(Y)が分散したものも含む。
【0049】
また、共重合体(X)と着色性化合物(Y)とが化学的結合している着色中空ポリマー粒子とは、例えば、共重合体(X)中に存在する反応性を有する基と、これと化学結合可能な基を有する着色性化合物(Y)とを組合せて用い、これらを反応させることによって、中空ポリマー粒子を構成する殻部分に着色性化合物(Y)由来の構造を有することを言うものである。この場合、着色性化合物(Y)は、化学結合によって中空ポリマー粒子の殻の中に存在するので、安定な着色中空ポリマー粒子を与える。
【0050】
本発明で用いる着色性化合物(Y)としては、水溶性色素、油溶性色素等を用いることができる。水溶性色素としては、後述する本発明の中空ポリマー粒子の製造に用いる水性媒体中に可溶な色素であれば特に制限はなく、種々の天然および有機合成色素を用いることができる。例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、硫化染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、アクリジン染料、キサンテン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、アゾメチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、チアゾール染料、メチン染料、ポリメチン染料、シアニン染料、ポルフィリン、フタロシアニン染料等を用いることができる。また、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ピレンスルホン酸ナトリウム等、スルホン酸化、スルホン酸塩化して水溶化した化合物も好適に用いることができる。これら水溶性色素は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
前記油溶性色素としては、前記ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)中に溶解する油溶性染料であれば、特に制限はなく、モノアゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系染料や、ペリレン系、キノフタロン系、アントラピリドン系等の縮合多環系顔料を用いることができる。さらに、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ピレン等の縮合多環芳香族化合物とその誘導体分子、ビフェニル、ターフェニル等のオリゴフェニレンとその誘導体分子、アゾベンゼン、スピロピラン、スピロオキサジン、フルギド、ジアリールエテンとこれらの誘導体であるフォトクロミック色素も好適に用いることができる。これら油溶性色素は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明の着色中空ポリマー粒子としては、その殻壁の厚みが5nm〜80nmであることが好ましい。この厚みの範囲内であれば、前述の中空ポリマー粒子と同様に、水中で安定な着色中空ポリマー粒子であって且つその応用範囲もひろい。また、前述の中空ポリマー粒子と混合して使用する場合にも、好適に用いることができる。
【0053】
本発明の中空ポリマー粒子及び着色中空ポリマー粒子は、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を水性媒体中でエマルジョン重合させることによって、容易に得ることができる。
以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0054】
本発明の製造方法は、ワンポット、即ち同一反応容器内で、単離操作を必要とすることなく、中空ポリマー粒子を製造するものであり、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)とラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを、水性媒体中、水溶性重合開始剤を用いて擬エマルジョンラジカル重合することを特徴とする。
【0055】
前記擬エマルジョン重合に用いる水性媒体としては、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができる。
【0056】
混合溶媒を用いる際の、その配合割合としては、後述する水溶性重合開始剤とラジカル重合性の水溶性単量体(A)が可溶であり、かつ、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)の溶解度が0.5質量%以下の範囲であれば良く、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性重合開始剤による重合開始効率を高く保つために、水の割合を50質量%以上、特に80質量%以上にすることが好ましい。
【0057】
前記水溶性重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、種々のものを使用することができるが、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物を用いる事が好ましく、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられる。
【0058】
これら水溶性重合開始剤の使用割合としては、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)とラジカル重合性の非水溶性単量体(B)との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で適宜選択すれば良いが、重合反応の効率を上げ、且つ中空ポリマー粒子の凝集を抑制する目的で0.5〜3質量部の範囲で選択することがより好ましい。
【0059】
本発明の中空ポリマー粒子の製造においては、界面活性剤のような分散安定剤を一切用いることなく目的の中空ポリマー粒子を製造できるが、必要に応じて適宜各種の分散安定剤をともに用いても良い。分散安定剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機懸濁保護剤等が挙げられるが、中でも中空ポリマー粒子を効率的に得られることからアニオン性界面活性剤、またはカチオン性界面活性剤を用いる事が好ましい。
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸等を挙げることができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0062】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系の界面活性剤を挙げることができる。
【0063】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0064】
これらの分散安定剤は、必要に応じて、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。分散安定剤の使用にあたっては、得られる中空ポリマー粒子の凝集を防ぐため、水溶性重合開始剤によって該粒子に付与される表面電化と同電荷のイオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0065】
分散安定剤の使用量は、必要に応じて適宜選択すれば良いが、反応の初期段階での濃度が高すぎる場合には、通常の乳化重合が進行し、粒子が中空構造を発現しにくくなるため、初期段階では使用量を控え、粒子の形成に伴って後から添加するのが良い。
【0066】
本発明の製造方法において、重合の反応温度としては、用いる水溶性重合開始剤の重合開始温度にあわせて、35〜90℃の範囲で適宜設定すれば良いが、該水溶性重合開始剤の開始能を上げ、且つ、水性媒体の蒸発を防いで反応系の不安定化を抑制する点から、40〜85℃の範囲で設定することが好ましく、60〜80℃の範囲で設定することがより好ましい。
【0067】
本発明の製造方法において、重合時の単量体の濃度は、低すぎると、中空ポリマー粒子の合成効率が悪く、高すぎる場合には凝集が起こりやすいことから、0.5〜20質量%の範囲で目的に応じて適宜選択する事が好ましく、より安定性の高い中空ポリマー粒子を効率良く得られる点からは、該濃度が1〜10質量%の範囲から選択することが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法としては、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)の全使用量を加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行う、従来のラジカル重合のワンポットの製法を採用することが出来る。
【0069】
また、水性媒体中に予めラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを加えた状態で、水溶性重合開始剤を用いて重合を行い、重合反応が進行した状態で、さらにラジカル重合性の非水溶性単量体(B)を添加するワンポット製造方法でも合成可能である。この後添加の方法を用いる場合には、中空構造の殻壁の厚さを大きくすることができる。
【0070】
また、これらの中空ポリマー粒子の製造方法において、水性媒体中に水溶解性の高い着色性化合物(Y)を溶解した状態で、水溶性重合開始剤を用いて、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)のエマルジョン重合を行うことで、本発明の着色中空ポリマー粒子を得ることが出来る。
【0071】
また、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)中に水溶解性の低い着色性化合物(Y)を溶解しておき、水溶性重合開始剤を用いて、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)の重合を行うことでも、本発明の着色中空ポリマー粒子を得ることができる。
【0072】
これらの方法において、前記着色性化合物(Y)の使用量としては、重合の進行を阻害しない範囲で、目的に応じて任意の範囲で設定すれば良いが、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)とラジカル重合性の非水溶性単量体(B)を含む単量体群(I)に対するモル比で3モル%以下、特に1モル%以下とするのが好ましい。
【0073】
また、中空ポリマー粒子の製造後に着色性化合物(Y)を添加することによっても、着色中空ポリマー粒子を得ることができ、このときの該着色性化合物(Y)の使用量としては、得られる中空ポリマー粒子の凝集が起こらない範囲で、目的に応じて任意の割合で用いることができる。特に、イオン性の着色性化合物を用いる場合には、中空ポリマー粒子の表面電荷、即ち、原料として用いた水溶性単量体(A)中に含まれる官能基由来の電荷と逆の電荷を有するものを用いることが好ましい。
【0074】
また、着色中空ポリマー粒子の殻を構成する共重合体(X)と着色性化合物(Y)とを化学結合させる方法としては、例えば、ラジカル重合性の着色性化合物を併用して重合する方法、反応性の官能基を有する着色性化合物にラジカル重合性の官能基を導入し、得られる化合物(Y’)を併用して重合する方法、中空ポリマー粒子を得てから、該中空ポリマー粒子を構成する共重合体中の反応性の基に着色性化合物を化学反応させる方法などが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、汎用性と結合の確実性の面から、反応性の官能基を有する着色性化合物にラジカル重合性の官能基を導入し、ラジカル重合性の着色性化合物(Y’)を得る方法が好ましい。具体的には、アミノ基を有する着色性化合物、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、アミノフルオレセイン、アミノナフタレン、アミノアントラセン、アミノピレン、アミノビフェニル等と、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロライド等とを反応させる方法や、水酸基を有する着色性化合物、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、6−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、フルオレセイン、ヒドロキシメチルビフェニル、2−(ヒドロキシメチルアントラセン)等と(メタ)アクリル酸クロライド等とを反応させる方法等が挙げられる。
【0076】
前記で得られたラジカル重合性の着色性化合物(Y’)と、前述の水溶性単量体(A)、非水溶性単量体(B)とを用いて前述の方法でエマルジョン重合することにより、中空ポリマー粒子を構成する殻壁の中に着色性化合物由来構造を導入することができ、着色中空ポリマー粒子が得られる。このとき用いる水溶性単量体(A)、非水溶性単量体(B)は、着色性化合物と反応させたものと同一であっても異なっていても良い。また得られるラジカル重合性の着色性化合物(Y’)が水溶性の場合は、中空ポリマー粒子を得るために用いる水溶性単量体(A)として全量をラジカル重合性の着色性化合物(Y’)に置き換えても良い。更に、ラジカル重合性の着色性化合物(Y’)が非水溶性の場合は、中空ポリマー粒子を得るために用いる非水溶性単量体(B)として全量をラジカル重合性の着色性化合物(Y’)に置き換えても良い。
【0077】
本発明で得られる中空ポリマー粒子及び着色中空ポリマー粒子の使用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、水性コーティング・塗料等の分野においては、紙、繊維、皮革等への光沢、不透明度、白色度などの性能を付与するための光散乱性向上剤、白色顔料、隠蔽剤等として用いることが可能であり、また、着色中空ポリマー粒子中の着色成分によるマーキング効果、発色・消色効果、発光特性を利用したリライタブル材料や偽造防止コーティング、特殊用途紙用として用いることができる。さらにまた、中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。さらに、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また、同一体積での重量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。更にまた、内部に種々の化学物質を包含した化学物質保持剤としても用いることができ、化学物質徐放性放出剤、DDS材料としても利用できる。また、着色成分を含有した中空ポリマー粒子は、ラベル化された高機能の薬剤キャリアーやアフィニティイビーズとして用いることができる。この様な用途への使用にあたり、本発明の中空ポリマー粒子が単分散であることや殻壁が薄いことは、該用途で要求される種々の性能を効率的に均一に発現させるためには有効であると考えられ、その有用性は高いものである。
【実施例】
【0078】
次に本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を掲げるが、これらの説明によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。
【0079】
水に分散した状態での粒子の粒径測定は、大塚電子株式会社製の粒径測定装置FPAR−1000を用いて、動的光散乱法により測定した。
【0080】
微粒子の形状及び中空性の確認には、キーエンス社製三次元リアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800を用いたSEM観察を行い、中空ポリマー粒子の殻の厚み測定には、日立製作所製電界放射型走査型電子顕微鏡S−800によるSEM観察像を用いた。
【0081】
(中空ポリマー粒子の合成)
実施例1
<N−イソプロピルアクリアミド(NIPAM)とグリシジルメタクリレート(GMA)との共重合体poly(NIPAM−co−GMA)からなる中空ポリマー粒子の合成>
1.4gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製、以下NIPAMと称す)を溶解した水溶液200mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製、以下GMAと称す)8.52gを加えて、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した。その混合物(GMA/NIPAM=4.8mol/mol)に、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウム(KPS、和光純薬工業株式会社製)0.1gが溶解された水溶液20mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄、精製した。精製後粒子の同定を動的光散乱、SEM、HNMRで行った。粒子の粒径を動的光散乱法によって測定したところ、単分散の粒径分布を示した(図1)。25℃での平均粒子径は407nm、変動係数0.03であった。50℃での平均粒子径は325nmであり、約40nmの温度応答性層を有していることを確認した。この微粒子の乾燥状態での形状をSEM観察したところ、単分散真球状の粒子であった(図2)。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図3)。この粒子の殻壁の厚みは10nmであった(図4)。この中空ポリマー粒子を重水中に分散させて、25℃でH−NMRを測定したところ、図5に示すスペクトルが得られた。これらのシグナルは、親水性のポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)によるイソプロピル基のCH、CHにそれぞれ帰属され〔δ=1.093(6H),3.823(1H)〕、中空ポリマー粒子表面の親水性ポリマーセグメントの存在が確認された。
【0082】
実施例2〜26
<各種水溶性単量体と非水溶性単量体との共重合体からなる中空ポリマー粒子の合成>
実施例1において、用いる水溶性単量体(A)、非水溶性単量体(B)、水溶性重合開始剤、水溶液の使用量を表1の各値に変更する以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマー粒子を得た。得られた粒子の性状値を表2にまとめて記載する。尚、実施例6は界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを用いた例であり、NIPAMの水溶液に所定量加えて均一に攪拌して用いた。
【0083】
【表1】

【0084】
表1の脚注:
MBAM:N,N’−メチレンビスアクリルアミド
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
ACMO:アクリロイルモルフォリン
AA :アクリル酸
MAP−TMACl:3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド
ME−SO3Na:2−(メタクリロイロキシ)エチレンスルホン酸ナトリウム塩
St−SO3Na:スチレンスルホン酸ナトリウム
MMA :メチルメタクリレート
OX−MA:(3−メチル−3−オキセタニル)メタクリレート
F−Et−MA:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
APTEtOSi:アクリロイルプロピルトリエトキシシラン
AIBA:2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩
【0085】
【表2】

【0086】
実施例27
<非水溶性単量体の2段階添加によるpoly(NIPAM−co−GMA)中空ポリマー粒子の合成>
0.7gのNIPAMを溶解した水溶液200mlに、GMA4.5gを加え、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した(GMA/NIPAM=5.1mol/mol)。その混合物に、水溶性重合開始剤として、0.05gのKPS0.05gが溶解された水溶液20mlを添加した。同温度で1時間攪拌後に、さらにGMA2.2gを加え(全GMA/NIPAM=7.6mol/mol)、同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、粒子の粒径を動的光散乱法によって測定したところ、単分散の粒径分布を示し、25℃での平均粒径は380nm、変動係数0.03であった。この粒子の形状を観察したところ、単分散真球状の粒子であった。この粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図12)。
【0087】
実施例28〜34
<非水溶性単量体の2段階添加による各種中空ポリマー粒子の合成>
実施例27において、用いる水溶性単量体(A)、非水溶性単量体(B)、水溶性重合開始剤、水溶液の使用量を表3の各値に変更する以外は、実施例27と同様にして、中空ポリマー粒子を得た。得られた粒子の性状値を表4にまとめて記載する。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
(着色中空ポリマー粒子の合成)
実施例35
<ローダミンBを含む着色中空ポリマー粒子の合成>
ローダミンB(和光純薬工業株式会社製)5mgを含む水溶液200mlに、1.4gのNIPAM、8.84gのGMAを加え、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した。この混合物(GMA/NIPAM=5.0mol/mol、色素/重合性単量体=1.3×10−4mol/mol)中に、0.1gのKPSが溶解された水溶液20mlを添加した。同温度で1時間攪拌することにより粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、粒子の粒径を動的光散乱法によって測定したところ、25℃での平均粒径は670nmであった。50℃での平均粒径は600nmであり、約35nmの温度応答性層を有していた。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図13)。この粒子の殻壁の厚みは20nmであった。粒子は赤色で、光学顕微鏡下で530nm付近の可視光を照射すると、緑−赤色の蛍光を発した(図14)。
【0091】
実施例36
<ピレンを含む着色中空ポリマー粒子の合成>
0.14gのNIPAMを含む水溶液20mlに、13.1mgのピレン(東京化成社製)と0.89gのGMAの混合液を加え、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した。この混合物(GMA/NIPAM=5.0mol/mol、色素/重合性単量体=8.6×10−3mol/mol)中に、10mgの重合開始剤AIBAを添加し、同温度で1時間攪拌することにより平均粒径380nm、変動係数0.06の粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認できた(図15)。この粒子の殻壁の厚みは10nmであった。この粒子は紫外光照射によって青色のピレンの蛍光を発した(図16)。
【0092】
実施例37
<スピロナフトオキサジンを含む着色中空ポリマー粒子の合成>
0.14gのNIPAMを溶解した水溶液20mlに、11.6mgのスピロナフトオキサジン(SP−99、日本感光色素製)と0.87gのGMAの混合液を加え、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した。この混合物(GMA/NIPAM=4.8mol/mol、色素/重合性単量体=4.7×10−3mol/mol)中に、11mgのAIBAを添加し、同温度で1.5時間攪拌することにより平均粒径280nm、変動係数0.05の粒子の分散液を得た。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認でき、この粒子の殻壁の厚みは10nmであった。得られた白色の中空ポリマー粒子に、水銀ランプの紫外光を照射すると青色に変色した。紫外光を遮断すると微粒子は白色に戻り、この中空ポリマー粒子がホトクロミック特性を示すことが確認された。
【0093】
実施例38
<アミノピレン残基を含む着色中空ポリマー粒子の合成>
0.14gのNIPAMを溶解した水溶液20ml中に、アミノピレンを結合させたGMA誘導体0.013gとGMA0.87gが含まれた混合液を加え、窒素雰囲気下撹拌しながら70℃まで加熱した。この混合物(GMA/NIPAM=5.0mol/mol、ラジカル重合性の着色性化合物/重合性単量体=6.0×10−3mol/mol)中に、11mgのKPSを添加し、同温度で1時間攪拌することにより平均粒径250nm、変動係数0.03の粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄すると、白色の微粒子分散液が得られ、これに紫外光を照射すると青色の蛍光を発した。この微粒子を押しつぶして、形態の観察を行ったところ、粒子の中央が空洞の中空ポリマー粒子であることが確認でき、殻壁の厚みは10nmであった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1で得られた中空ポリマー粒子の動的光散乱測定による粒径分布である。
【図2】実施例1で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図3】実施例1で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図4】実施例1で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すFE−SEM観察像である。
【図5】実施例1で得られた中空ポリマー粒子の重水中でのH−NMRスペクトルである。
【図6】実施例2で得られた中空ポリマー粒子の形態を表すSEM観察像である。
【図7】実施例2で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図8】実施例3で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図9】実施例4で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図10】実施例5で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図11】実施例6で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図12】実施例27で得られた中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図13】実施例35で得られた着色性単分散中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図14】実施例35で得られた着色中空ポリマー粒子の蛍光発光スペクトルである。
【図15】実施例36で得られた着色中空ポリマー粒子を押し潰して観察した中空形態を表すSEM観察像である。
【図16】実施例36で得られた着色中空ポリマー粒子の蛍光発光スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなり、且つ該殻壁の厚みの平均値が5nm〜80nmであることを特徴とする中空ポリマー粒子。
【請求項2】
平均粒子径が50nm〜1μmであり、粒径分布が単分散性である請求項1記載の中空ポリマー粒子。
【請求項3】
平均粒子系が50nm以上300nm未満であり、殻壁の厚みが5nm〜30nmである請求項2記載の中空ポリマー粒子。
【請求項4】
平均粒子系が300nm以上1μm以下であり、殻壁の厚みが5nm〜80nmである請求項2記載の中空ポリマー粒子。
【請求項5】
単量体群(I)中の、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とラジカル重合性の水溶性単量体(A)とのモル比(B)/(A)が3.5〜12である請求項1記載の中空ポリマー粒子。
【請求項6】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)が、その構造中にアミド基、アミノ基、カルボキシ基及びその塩並びにスルホン酸基及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する単量体である請求項1記載の中空ポリマー粒子。
【請求項7】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)が、N−置換アクリルアミド及びN,N−ジ置換アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の中空ポリマー粒子。
【請求項8】
ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)が、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の中空ポリマー粒子。
【請求項9】
単量体群(I)を水性媒体中でラジカル重合させた請求項1〜8の何れか1項記載の中空ポリマー粒子。
【請求項10】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を水溶性重合開始剤を用いて水性媒体中でラジカル重合することを特徴とする中空ポリマー粒子の製造方法。
【請求項11】
水溶性重合開始剤が、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物である請求項10記載の中空ポリマー粒子の製造方法。
【請求項12】
ラジカル重合時の水性媒体中での単量体群(I)の濃度が1〜10質量%である請求項10記載の中空ポリマー粒子の製造方法。
【請求項13】
ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とラジカル重合性の水溶性単量体(A)とのモル比(B)/(A)が3.5〜12である請求項10記載の中空ポリマー粒子の製造方法。
【請求項14】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を重合して得られる共重合体(X)と、着色性化合物(Y)とを主構成成分とする殻壁からなることを特徴とする着色中空ポリマー粒子。
【請求項15】
前記共重合体(X)と前記着色性化合物(Y)との結合が、物理的結合及び化学的結合からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項14記載の着色中空ポリマー粒子。
【請求項16】
前記着色中空ポリマー粒子の殻壁の厚みが5nm〜80nmである請求項14又は15記載の着色中空ポリマー粒子。
【請求項17】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを含有する単量体群(I)を水溶性重合開始剤を用いて、着色性化合物(Y)の存在下でラジカル重合することを特徴とする着色中空ポリマー粒子の製造方法。
【請求項18】
ラジカル重合性の水溶性単量体(A)及びラジカル重合性の非水溶性単量体(B)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、着色性化合物(Y)とを予め反応させて、ラジカル重合性の着色性化合物(Y’)を得た後、ラジカル重合性の水溶性単量体(A)とラジカル重合性の非水溶性単量体(B)とを水溶性重合開始剤を用いて、ラジカル重合することを特徴とする着色中空ポリマー粒子の製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図14】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−291359(P2007−291359A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76674(P2007−76674)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】