中空体成形装置
【課題】フローティングコアが成形体を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理の容易な中空体成形装置を提供する。
【解決手段】主キャビティ1内に溶融樹脂を射出した後、加圧ポート3から加圧流体を圧入してフローティングコア2を出口側に移動させると共に、出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体12を成形する中空体成形装置において、主キャビティ1に接続され、加圧流体によって移動したフローティングコア2を収納するフローティングコア収納部6と、主キャビティ1及びフローティングコア収納部6から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティ10と、フローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路7,9と、スライド移動により連通路7,9を開閉する開閉手段8と、を備え、連通路7,9の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、フローティングコア2の最大径)である。
【解決手段】主キャビティ1内に溶融樹脂を射出した後、加圧ポート3から加圧流体を圧入してフローティングコア2を出口側に移動させると共に、出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体12を成形する中空体成形装置において、主キャビティ1に接続され、加圧流体によって移動したフローティングコア2を収納するフローティングコア収納部6と、主キャビティ1及びフローティングコア収納部6から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティ10と、フローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路7,9と、スライド移動により連通路7,9を開閉する開閉手段8と、を備え、連通路7,9の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、フローティングコア2の最大径)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形体、特に曲管部を有するパイプを射出成形法にて製造する中空体成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂成形体に中空部を形成する方法としては、ブロー成形法が最も良く知られており、ボトルや容器、パイプ等の製造に幅広く用いられている。しかし、ブロー成形法はデザイン上の制限が多く、適応可能な材料の選択の幅が狭く、さらに寸法精度があまり良くない等の課題がある。
【0003】
そこで近年、射出成形による中空成形方法が種々提案されており、例えば、ロストコア法、2シェル成形溶着法、及びダイスライド射出成形法等が挙げられる(特許文献1参照)。しかしながら、これらの成形方法を用いて、曲管部を有する長尺の3次元屈曲パイプを製造するのは困難であった。
【0004】
これらの問題を解決する成形法として、フローティングコアを用いる方法が知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】プラスチックエージ、Apr.2010、103頁〜108頁
【特許文献2】特許第1988870号公報
【特許文献3】特許第3462290号公報
【特許文献4】特許第3411710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フローティングコアを用いる方法では、成形条件、樹脂温度、射出圧力、フローティングコアを飛ばすタイミング等の条件が最適化されていないと、フローティングコアが溶融樹脂の途中で停止し、その先に加圧流体のみで中空部が形成される場合がある。この場合、内径が均一に保てなくなり、内面がスムーズではないなどの不都合が生じてしまうが、中空体の両端には中空部が形成されているため、見かけ上は良品と区別がつきにくく、この様な不良を現場で発見するのは困難である。そのため、成形直後にフローティングコアが製品である成形体を通過したか否かを容易に確認でき、現場での品質管理が容易な手段が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面がスムーズな中空成形体が得られ、かつ成形直後にフローティングコアが成形体を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理の容易な中空体成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の中空体成形装置は、
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートが配され、他端に出口を有する主キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して前記フローティングコアを出口側に移動させると共に、前記出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体を成形する中空体成形装置において、
前記主キャビティに接続され、前記加圧流体によって移動した前記フローティングコアを収納するフローティングコア収納部と、
前記主キャビティ及び前記フローティングコア収納部から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティと、
前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させる連通路と、
スライド移動により前記連通路を開閉する開閉手段と、
を備え、
前記連通路の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面が円滑な中空成形体が得られる。また、フローティングコアが中空成形体を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理が容易であるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の中空体成形装置を示す概略図である。
【図2】図1の中空体成形装置において、主キャビティとフローティングコア収納部に溶融樹脂を充填した状態を示す概略図である。
【図3】図1の中空体成形装置において、中空部の形成前に連通路を開いた状態を示す概略図である。
【図4】図1の中空体成形装置において、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、中空部を形成すると共に余剰樹脂を副キャビティに排出した状態を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態における砲弾形状のフローティングコアを示す概略図である。
【図6】図4のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図7】第1の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部と排出路との境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【図8】製品としての中空成形体の外観を示す概略図である。
【図9】第2の実施形態の中空体成形装置を示す概略図である。
【図10】図9の中空体成形装置において、主キャビティとフローティングコア収納部に溶融樹脂を充填した状態を示す概略図である。
【図11】図9の中空体成形装置において、中空部の形成前に連通路を開いた状態を示す概略図である。
【図12】図9の中空体成形装置において、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、中空部を形成すると共に余剰樹脂を副キャビティに排出した状態を示す概略図である。
【図13】第2の実施形態における球形状のフローティングコアを示す概略図である。
【図14】図12のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図15】第2の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部とランナーとの境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【図16】第3の実施形態のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図17】第3の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部とランナーとの境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0012】
<第1の実施形態>
まず図1を参照して、本実施形態の中空体成形装置について説明する。図1は、本実施形態の中空体成形装置であり、加圧ポートにフローティングコアを装着した状態を示す概略図である。図1では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。
【0013】
本実施形態の中空体成形装置11は射出成形金型であり、溶融樹脂の射出ゲート4を有する固定型と、型開き時及び型組み時に移動する可動型とからなっている。図1に示すように、本実施形態の成形装置11は、パイプ等の中空成形体を成形する主キャビティ1、主キャビティ1内に樹脂を射出する射出ゲート4、フローティングコア2、加圧ポート3、成形体端部5、フローティングコア収納部6、排出路7、スライド移動により排出路7を開閉する開閉手段8、排出された溶融樹脂が収容される捨てキャビティとしての副キャビティ10、及び副キャビティ10と排出路7を連通するランナー9から構成されている。本実施形態では、排出路7及びランナー9がフローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路である。
【0014】
主キャビティ1は、屈曲部(エルボ部)を有する中空成形体(パイプ)の外形に沿った成形空間をなすもので、その一端(基端)にはフローティングコア2が装着される加圧ポート3が配されている。主キャビティ1の基端側の直管部中間には、この主キャビティ1の内部に溶融樹脂を射出する射出ゲート4が開口されている。
【0015】
また主キャビティ1の他端(出口側の端部)には、主キャビティ1の内部で成形される中空成形体の末端部を規定する成形体端部5が形成されている。本実施形態の成形体端部5の外周には、主キャビティ1の外径よりも大きな凸部が形成されている。成形体端部5には、フローティングコア収納部6と製品としての中空成形体12(図7参照)とを切り離す際の単なる印のみが設けられているだけでもよいが、例えばゴムパイプや金属部品等の他の材料からなる部材と結合させるための凹凸部が設けられていることがより好ましい態様である。
【0016】
主キャビティ1の溶融樹脂流れ方向の後流側には、主キャビティ1を通過したフローティングコア2を収納するフローティングコア収納部6が接続されている。フローティングコア収納部6の内径は、主キャビティ1の内径と同径以上に形成されている。また、フローティングコア収納部6の長さL(図6参照)は、余裕をもってフローティングコア2を収納でき、かつ中空成形体12と切り離す際の作業性を考慮して設定することが好ましく、L>1.1Kであることが好ましい。ここで、Kはフローティングコア2の最大長さである(図5参照)。また長過ぎると無駄な成形部を成形することになるので、L<20Kであることが好ましい。なお、本実施形態では、フローティングコア収納部6は直管で形成されているが、開閉手段8のスライド方向や型構造に適応するために、曲管で形成してもよい。
【0017】
フローティングコア収納部6の後流側には、溶融樹脂が流入する排出路7が接続されている。排出路7の入口断面積(連通路の入口断面積)B(図6参照)は、B<πA2/4である。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図5参照)。フローティングコア2でフローティングコア収納部6の出口である排出路7の入口を閉塞させ、その後も排出路7を封止して成形直後の中空成形体12の内部圧力を保持させて引け等を防止し、外観や寸法安定性を向上させるためには、B<πA2/4であることが必要である。排出路7の長さは任意であり、開閉手段8のストロークによって決まり、排出路7の一部に副キャビティ10と連通させるランナー9を分岐させる程度の長さがあればよく、長すぎると無駄な樹脂成形部を形成することになるので好ましくない。
【0018】
排出路7の中間部には、これに分岐してランナー9が接続されている。そして、このランナー9を介して、排出路7に副キャビティ10が連通されている。副キャビティ10は、樹脂中へ押圧されるフローティングコア2によって排出される余剰樹脂を収納する空間である。
【0019】
開閉手段8は、排出路7内をスライド移動することにより連通路(本実施形態では排出路7及びランナー9)を開閉する。この開閉手段8は、主キャビティ1内へ溶融樹脂を充填する際に排出路7内をスライド移動してランナー9入口を閉じ、フローティングコア2によって排出される余剰樹脂を副キャビティ10に収納するときには排出路7内をスライド移動してランナー9入口を開くように開閉操作される。開閉手段13は、特に限定されないが、例えば、スライド式に開閉するピン等を用いて油圧などの手段で開閉動作させる手段(シャットオフピン)などが適用できる。シャットオフピンの断面形状は三角、四角、矩形、円形など任意であるが、金型製作上は円形が好ましい。
【0020】
次に図1から図8を参照して、本実施形態の中空体成形装置11を用いた成形方法を説明する。なお、図1から図4及び図6では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。
【0021】
まず図1に示すように、主キャビティ1の基端側の加圧ポート3にフローティングコア2を装着して、可動型を移動させ中空体成形装置11を型組み状態にする。なお、開閉手段8は連通路を閉じた状態である。
【0022】
フローティングコア2の材質は、樹脂、金属、セラミックなどあらゆる材質を用いることが可能であるが、副キャビティ10等との分別処理が不要で副キャビティ10等の廃棄が容易な樹脂を採用することが好ましく、副キャビティ10等と共に再生可能である、中空成形体と同一樹脂を採用することがより好ましい。フローティングコア2は予め用意しておくこともできるが、特許文献4に示されている中空成形方法により、製品としての中空成形体の成形と同時に、フローティングコア2を成形することも可能である。
【0023】
フローティングコア2の形状は、球形状、半球形状、円錐形状あるいは砲弾形状等が好ましく、特に本実施形態では、例えば、先端部が円錐形状を有する砲弾形状のものを採用した。ここで砲弾形状とは、図5に例示したような形状であり、円柱部2aと円柱部2aの一方の面に連接し、円柱部2aの中心軸と垂直な断面積が円柱部2aの一方の面側から漸減する形状を有する頂部2bからなる形状をいう。
【0024】
次に図2に示すように、中空体成形装置11の型組み状態において、射出ゲート4から溶融樹脂を射出して主キャビティ1に溶融樹脂を充填する。図2では、主キャビティ1及びフローティングコア収納部6の内部に溶融樹脂が充填されている。少なくとも主キャビティ1の内部に溶融樹脂が充填されれば樹脂量の少ないショートショットでもよいが、成形品の外観を重視する場合はフルショットが望ましい。
【0025】
本発明で用いる樹脂としては、中空成形体を射出成形可能なあらゆる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられるが、射出成形での中空部成形性という観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS,ABS等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66、あるいはナイロン6などのポリアミド系樹脂、PET,PBTなどのポリエステル系樹脂、POM、ポリカーボネート、PPS、変性PPE、PMMA樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など種々の樹脂が挙げられ、これら樹脂にガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、カオリンなどの強化材、無機フィラーなどを添加したものでもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などもBMCとして知られている射出成形が可能な熱硬化性樹脂であれば用いることができる。
【0026】
次いで図3に示すように、開閉手段(シャットオフピン)8をスライド後退させて、連通路が開の状態になる。具体的には、シャットオフピンを油圧シリンダー等適宜な駆動源(図示せず)を用いてスライド後退させて、ランナー9入口を開く。ここで、スライド後退させるタイミングは任意であり、例えば図2に示した射出充填中でも可能であるが、主キャビティ1中の成形体表面の溶融樹脂が固化し、その内部がまだ固化しない状態、すなわち射出充填完了後いくらかのタイムラグをおいてスライド後退させることが好ましい。
【0027】
次に図4に示すように、加圧流体源(図示せず)から加圧ポート3を介して加圧流体を圧入し、フローティングコア2を主キャビティ1の基端から成形体端部5へ向かって移動せしめる。その際、フローティングコア2は溶融樹脂中に内径が均一で内面が円滑な中空部を形成しつつ、成形体端部5を通過して中空成形体12を形成し、フローティングコア収納部6へと侵入する。フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2は、フローティングコア収納部6から排出路7側に、その尖った先端を僅かに突出した状態で停止して収納される。そのため、中空成形体12の内部圧力が保持される。フローティングコア2によって押し出される溶融樹脂は、排出路7及びランナー9を順に経て、副キャビティ10の内部に排出される。
【0028】
加圧流体としては、射出成形の温度及び圧力下で使用樹脂と反応又は相溶しない気体又は液体が使用される。具体的には、例えば窒素ガス、炭酸ガス、空気、水、グリセリン、流動パラフィン等が使用できるが、窒素ガスをはじめとする不活性ガスが好ましい。この加圧流体の圧入は、例えば窒素ガス等の気体を用いる場合、予め圧縮機で畜圧タンク(図示されていない)内に昇圧して蓄えた加圧ガスを配管を通じて加圧ポート16に導くことや、圧縮機で直接加圧ポート3に加圧ガスを送り込んで昇圧させることでおこなう事ができる。加圧ポート3に供給する加圧ガスの圧力は、使用する樹脂の種類やフローティングコア2の大きさなどによっても相違するが、通常4.90〜29.42MPa(50〜300kg/cm2G)程度である。
【0029】
この中空部の形成後、溶融樹脂が固化するまで冷却した後に、可動型を移動させて金型を型開きし、中空成形体12と、フローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部が連なった状態の成形体を取り出す。
【0030】
図6に示したように、フローティングコア収納部6に形成された成形部と、排出路7に形成された成形部は、フローティングコア先端部において、僅かに互いに溶着している程度の状態で一体化している。かつ、フローティングコア2が楔状にある程度突出しているために、フローティングコア先端部と排出路7に形成された成形部の界面13は、形状的に切り欠き状態である。したがって、この界面13は強度的に弱く、作業員がこの界面13近傍を屈曲させることにより、フローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離すことができる。
【0031】
このようにして切り離した成形品の断面を図7に示す。図7に示すように、フローティングコア2の先端がフローティングコア収納部6に形成された成形部から突出している。フローティングコア2の先端が突出しているということは、フローティングコア2が主キャビティ1を通過し、中空成形体12に良好な中空部が形成されているということであり、現場においてこれを容易に確認することができる。
【0032】
このようにフローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離し、かつ切り離し部でフローティングコアの突出を確実に視認するためには、連通路の入口断面積(本実施形態では排出路7の入口断面積)B(図6参照)が、B>πA2/80であることが好ましく、B>πA2/25であることがより好ましい。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図5参照)。連通路の入口断面積BがπA2/80以下であると、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが困難になる可能性があるし、切り離し部でのフローティングコアの突出を視認し難くなる可能性がある。さらに、排出路7の溶融樹脂の固化が早まって樹脂の排出が困難になるなどの不具合が生じる可能性もある。
【0033】
次いで図7に示したように、鋸等の切断手段で成形体端部5のフローティングコア収納部6側の境界部14を切断して、図8に示す最終製品である中空成形体(パイプ成形品)12として仕上げられる。その際、本実施形態のように成形体端部5に凹凸部や印が付帯されていれば切断部を容易に決定することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面が円滑な中空成形体12が得られる。また、フローティングコア2が主キャビティ1を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理が容易である。
【0035】
また、本実施形態のフローティングコア2は先端が尖った砲弾形状を呈しているので、球形である場合に比較して、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが容易であるし、切り離し部でフローティングコアの突出を容易に視認できる。
【0036】
<第2の実施形態>
次に図9を参照して、本実施形態の中空体成形装置について説明する。図9は、本実施形態の中空体成形装置であり、加圧ポートにフローティングコアを装着した状態を示す概略図である。図9では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。なお、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明する。
【0037】
本実施形態の中空体成形装置21は、第1の実施形態と同様に射出成形金型であり、溶融樹脂の射出ゲート4を有する固定型と、型開き時及び型組み時に移動する可動型とからなっている。図9に示すように、本実施形態の成形装置21は、パイプ等の中空成形体を成形する主キャビティ1、主キャビティ1内に樹脂を射出する射出ゲート4、フローティングコア2、加圧ポート3、成形体端部5、フローティングコア収納部6、スライド移動により排出路7を開閉する開閉手段8、排出された溶融樹脂が収容される捨てキャビティとしての副キャビティ10、及び副キャビティ10とフローティングコア収納部6を連通するランナー9から構成されている。
【0038】
すなわち、本実施形態の中空体成形装置21では、フローティングコア収納部6に分岐されて副キャビティ10への連通路であるランナー9が接続されており、ランナー9がフローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路である点が第1の実施形態と異なっている。
【0039】
また、開閉手段8は、フローティングコア収納部6内をスライド移動することにより連通路(本実施形態ではランナー9)を開閉する点が第1の実施形態と異なっている。この開閉手段8は、主キャビティ1内へ溶融樹脂を充填する際にフローティングコア収納部6内をスライド移動してランナー9入口を閉じ、フローティングコア2によって排出される余剰樹脂を副キャビティ10に収納するときにはフローティングコア収納部6内をスライド移動してランナー9入口を開くように開閉操作される。
【0040】
本実施形態においても、連通路の入口断面積(ランナー9の入口断面積)B(図14参照)は、第1の実施形態と同様の理由で、B<πA2/4である。ここで、Aは、フローティングコアの2の最大径である(図13参照)。
【0041】
また、フローティングコア収納部6の長さL(図14参照)は、第1の実施形態と同様の理由で、1.1K<L<20Kであることが好ましい。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図13参照)。
【0042】
次に図9から図15を参照して、本実施形態の中空体成形装置21を用いた成形方法を説明する。なお、図9から図12及び図14では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置21の内部が見えるように図示している。
【0043】
まず図9に示すように、主キャビティ1の基端側の加圧ポート3にフローティングコア2を装着して、可動型を移動させ中空体成形装置21を型組み状態にする。なお、開閉手段8は連通路を閉じた状態である。フローティングコア2の材質、形状は、第1の実施形態において説明した通りであるが、本実施形態では球形状のフローティングコアを採用している。
【0044】
次に図10に示すように、中空体成形装置21の型組み状態において、射出ゲート4から溶融樹脂を射出して主キャビティ1及びフローティングコア収納部6の内部に充填する。本実施形態においても、成形品の外観を重視する場合はフルショットが望ましい。充填する樹脂としては、第1の実施形態において挙げた樹脂と同様の樹脂を採用することができる。
【0045】
次いで図11に示すように、開閉手段(シャットオフピン)8をスライド後退させて、連通路が開の状態になる。具体的には、シャットオフピンを油圧シリンダー等適宜な駆動源(図示せず)を用いてスライド後退させて、ランナー9入口を開く。スライド後退させるタイミングは第1の実施形態と同様である。
【0046】
次に図12に示すように、加圧流体源(図示せず)から加圧ポート3を介して加圧流体を圧入し、フローティングコア2を主キャビティ1の基端から成形体端部5へ向かって移動せしめる。その際、フローティングコア2は溶融樹脂中に中空部を形成しつつ、成形体端部5を通過して中空成形体12を形成し、フローティングコア収納部6へと侵入する。フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2は、溶融樹脂の流れに沿ってランナー9入口に向かい、湾曲した中空部を形成しつつ、最終的にはフローティングコア収納部6からランナー9側にその球面を突出した状態で停止して収納される。すなわち、フローティングコア2はランナー9の入口を閉塞し、中空成形体12の内部圧力が保持される。フローティングコア2によって押し出される溶融樹脂は、ランナー9を経て副キャビティ10の内部に排出される。
【0047】
この中空部の形成後、溶融樹脂が固化するまで冷却した後に、可動型を移動させて金型を型開きし、中空成形体12と、フローティングコア収納部6、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部が連なった状態の成形体を取り出す。
【0048】
図14に示したように、フローティングコア収納部6に形成された成形部とランナー9に形成された成形部は、フローティングコア2の球面において、僅かに互いに溶着している程度の状態で一体化している。かつ、フローティングコア2が球形状にある程度突出しているために、フローティングコア先端部とランナー9に形成された成形部の界面13は、形状的に切り欠き状態である。したがって、この界面13は強度的に弱く、作業員がこの界面13近傍を屈曲させることにより、フローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離すことができる。
【0049】
このようにして切り離した成形品の断面を図15に示す。図15に示すように、フローティングコア2の球面がフローティングコア収納部6に形成された成形部のランナー9入口に相当する部分から突出している。フローティングコア2の球面が突出しているということは、フローティングコア2が主キャビティ1を通過し、中空成形体12に良好な中空部が形成されているということであり、現場においてこれを容易に確認することができる。
【0050】
このようにフローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離し、かつ切り離し部でフローティングコアの突出を確実に視認するためには、連通路の入口断面積(本実施形態ではランナー9入口断面積)B(図14参照)が、B>πA2/80であることが好ましく、B>πA2/25であることがより好ましい。ここで、Aは、フローティングコアの2の最大径である(図13参照)。連通路の入口断面積BがπA2/80以下であると、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが困難になる可能性があるし、切り離し部でのフローティングコアの突出を視認し難くなる可能性がある。さらに、ランナー9の溶融樹脂の固化が早まって溶融状態で樹脂の排出が困難になるなどの不具合が生じる可能性もある。また、本実施形態においては、フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2がランナー9入口に向かわずに直進する可能性もある。
【0051】
次いで、実施形態1と同様にして境界部14を切断して、図8に示したと同様に最終製品である中空成形体(パイプ成形品)12として仕上げられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。特に本実施形態によれば、球形状のフローティングコア2の使用に適した構造を有している。
【0053】
<第3の実施形態>
本実施形態の中空体成形装置は、図16及び図17に示すように、フローティングコア収納部6を屈曲形状に形成した以外は、第2の実施形態の中空体成形装置と同様である。尚、この場合、図16に示すようにフローティングコア収納部6の長さLは、主キャビティ1の直管部の延長方向(開閉手段8のスライド方向)の長さである。
【0054】
このような構造を採用することにより、フローティングコア2をランナー9の入口へと誘導し易く、ランナー9の入口を確実に閉塞することができる。また、第1の実施形態で用いた様な砲弾形状のフローティングコアの使用にも適している。さらに、屈曲形状のフローティングコア収納部6は、開閉手段8のスライド方向や型構造等に適応させることができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
図1の装置11を用いて、図8に示す中空成形体(パイプ成形品、外径;26mm、内径;18mm、肉厚;4mm、長さ;300mm)を成形した。
【0057】
図1の装置11において、排出路7の断面は円形でその直径は14mm(入口断面積Bは1.5cm2)であり、長さは20mmである。また、フローティングコア収納部6の長さLは38mmである。また、開閉手段(シャットオフピン)8の断面形状は円形で、その直径は排出路7の径よりも僅かに小さく滑らかにスライドしうるが、加圧された溶融樹脂を通過させない程度のクリアランスを有している。
【0058】
フローティングコア2の形状は図5に示した様に砲弾形状を呈しており、最大長さK;22mm、最大径A;18mm(断面積は2.5cm2)である。図1では、フローティングコア用キャビティは図示していないが、特許文献4と類似の成形方法でフローティングコア2と中空成形体12を同時に成形した。
【0059】
また、中空成形体12の成形素材には、GF強化ポリアミド樹脂(旭化成ケミカルズ社製「レオナ1402G」;以下、「GFPA」と記す。)を用いた。
【0060】
まず、射出成形機(東洋機械金属社製TP−180H)を用いてGFPAを樹脂温度280℃、射出圧力11.8MPaにて射出ゲート4から射出し、図2に示すように主キャビティ1を溶融樹脂にて充填した。次いで図3に示すように、樹脂充填完了1秒後にシャットオフピン8を不図示の油圧シリンダーにてスライド後退させ、排出路7を開いた。
【0061】
続いて、圧力22.6MPaの窒素ガスをガス中空成形用ガス発生装置(旭エンジニアリング製エアモールド)に接続した加圧ポート3より圧入して、図4に示すようにフローティングコア2を成形体端部5側に移動せしめ、フローティングコア収納部6の端部に到達せしめた。この時、フローティングコア2によって排出される溶融GFPAは、排出路7及びランナー9を順に経て副キャビティ10中へ流入した。
【0062】
主キャビティ1、フローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10内のGFPAが固化するまで冷却後、金型を開いて、中空成形体12並びにフローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部を一体として取り出した。
【0063】
その後、界面13(図6参照)近傍を作業員が手作業で屈曲させると、簡単にフローティングコア収納部6より下流側の成形部を切り離すことができ、図7に示す中空成形体12とフローティングコア収納部6に形成された成形部が一体となった成形体が得られた。フローティングコア2の尖った先端がフローティングコア収納部6に形成された成形部の末端から突出しており、現場にて良好な中空部が得られていることを確認できた。さらに、境界部14にて切断し、図8に示す最終製品としての中空成形体(パイプ成形品)12を得た。
【0064】
<実施例2>
図9の装置21を用いた以外は実施例1と同様にして、図8に示す中空成形体を成形した。
【0065】
図9の装置21において、ランナー9の断面は円形でその直径は14mm(入口断面積Bは1.5cm2)である。また、フローティングコア収納部6の長さLは38mmである。また、開閉手段(シャットオフピン)8の断面形状は円形で、その直径はフローティングコア収納部6の径よりも僅かに小さく滑らかにスライドしうるが、加圧された溶融樹脂を通過させない程度のクリアランスを有している。
【0066】
フローティングコア2の形状は図13に示した様に球形状であり、その最大径A(直径)は18mm(断面積は2.5cm2)、最大長さK(直径)は18mmである。尚、フローティングコア2は、実施例1と同様に中空成形体12と同時に成形した。
【0067】
成形終了後に、パイプ成形品12並びにフローティングコア収納部6、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部を一体として取り出した。その後に、界面13(図14参照)近傍を作業員が手作業で屈曲させると、簡単にフローティングコア収納部6より下流側の成形部を切り離すことができ、図15に示す中空成形体12とフローティングコア収納部6に形成された成形部とが一体になった成形体が得られた。フローティングコア2の球面がフローティングコア収納部6に形成された成形部のランナー9入口に相当する部分から突出しており、現場にて良好な中空部が得られていることが確認できた。さらに、境界部14にて切断し、図8に示した最終製品としての中空成形体(パイプ成形品)12を得た。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る中空体成形装置は、自動車の冷却系パイプや各種熱交換器用パイプ等の屈曲部を有する中空成形体(パイプ成形品)の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 主キャビティ
2 フローティングコア
3 加圧ポート
4 射出ゲート
5 成形体端部
6 フローティングコア収納部
7 排出路
8 開閉手段
9 ランナー
10 副キャビティ
11、21 中空体成形装置
12 中空成形体(パイプ成形品)
13 界面
14 境界部
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形体、特に曲管部を有するパイプを射出成形法にて製造する中空体成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂成形体に中空部を形成する方法としては、ブロー成形法が最も良く知られており、ボトルや容器、パイプ等の製造に幅広く用いられている。しかし、ブロー成形法はデザイン上の制限が多く、適応可能な材料の選択の幅が狭く、さらに寸法精度があまり良くない等の課題がある。
【0003】
そこで近年、射出成形による中空成形方法が種々提案されており、例えば、ロストコア法、2シェル成形溶着法、及びダイスライド射出成形法等が挙げられる(特許文献1参照)。しかしながら、これらの成形方法を用いて、曲管部を有する長尺の3次元屈曲パイプを製造するのは困難であった。
【0004】
これらの問題を解決する成形法として、フローティングコアを用いる方法が知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】プラスチックエージ、Apr.2010、103頁〜108頁
【特許文献2】特許第1988870号公報
【特許文献3】特許第3462290号公報
【特許文献4】特許第3411710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フローティングコアを用いる方法では、成形条件、樹脂温度、射出圧力、フローティングコアを飛ばすタイミング等の条件が最適化されていないと、フローティングコアが溶融樹脂の途中で停止し、その先に加圧流体のみで中空部が形成される場合がある。この場合、内径が均一に保てなくなり、内面がスムーズではないなどの不都合が生じてしまうが、中空体の両端には中空部が形成されているため、見かけ上は良品と区別がつきにくく、この様な不良を現場で発見するのは困難である。そのため、成形直後にフローティングコアが製品である成形体を通過したか否かを容易に確認でき、現場での品質管理が容易な手段が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面がスムーズな中空成形体が得られ、かつ成形直後にフローティングコアが成形体を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理の容易な中空体成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の中空体成形装置は、
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートが配され、他端に出口を有する主キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して前記フローティングコアを出口側に移動させると共に、前記出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体を成形する中空体成形装置において、
前記主キャビティに接続され、前記加圧流体によって移動した前記フローティングコアを収納するフローティングコア収納部と、
前記主キャビティ及び前記フローティングコア収納部から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティと、
前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させる連通路と、
スライド移動により前記連通路を開閉する開閉手段と、
を備え、
前記連通路の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面が円滑な中空成形体が得られる。また、フローティングコアが中空成形体を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理が容易であるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の中空体成形装置を示す概略図である。
【図2】図1の中空体成形装置において、主キャビティとフローティングコア収納部に溶融樹脂を充填した状態を示す概略図である。
【図3】図1の中空体成形装置において、中空部の形成前に連通路を開いた状態を示す概略図である。
【図4】図1の中空体成形装置において、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、中空部を形成すると共に余剰樹脂を副キャビティに排出した状態を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態における砲弾形状のフローティングコアを示す概略図である。
【図6】図4のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図7】第1の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部と排出路との境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【図8】製品としての中空成形体の外観を示す概略図である。
【図9】第2の実施形態の中空体成形装置を示す概略図である。
【図10】図9の中空体成形装置において、主キャビティとフローティングコア収納部に溶融樹脂を充填した状態を示す概略図である。
【図11】図9の中空体成形装置において、中空部の形成前に連通路を開いた状態を示す概略図である。
【図12】図9の中空体成形装置において、加圧流体の圧入によりフローティングコアを移動させ、中空部を形成すると共に余剰樹脂を副キャビティに排出した状態を示す概略図である。
【図13】第2の実施形態における球形状のフローティングコアを示す概略図である。
【図14】図12のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図15】第2の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部とランナーとの境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【図16】第3の実施形態のフローティングコア収納部の近傍を示す拡大図である。
【図17】第3の実施形態において、中空成形体を取り出し、フローティングコア収納部とランナーとの境界部を切り離した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0012】
<第1の実施形態>
まず図1を参照して、本実施形態の中空体成形装置について説明する。図1は、本実施形態の中空体成形装置であり、加圧ポートにフローティングコアを装着した状態を示す概略図である。図1では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。
【0013】
本実施形態の中空体成形装置11は射出成形金型であり、溶融樹脂の射出ゲート4を有する固定型と、型開き時及び型組み時に移動する可動型とからなっている。図1に示すように、本実施形態の成形装置11は、パイプ等の中空成形体を成形する主キャビティ1、主キャビティ1内に樹脂を射出する射出ゲート4、フローティングコア2、加圧ポート3、成形体端部5、フローティングコア収納部6、排出路7、スライド移動により排出路7を開閉する開閉手段8、排出された溶融樹脂が収容される捨てキャビティとしての副キャビティ10、及び副キャビティ10と排出路7を連通するランナー9から構成されている。本実施形態では、排出路7及びランナー9がフローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路である。
【0014】
主キャビティ1は、屈曲部(エルボ部)を有する中空成形体(パイプ)の外形に沿った成形空間をなすもので、その一端(基端)にはフローティングコア2が装着される加圧ポート3が配されている。主キャビティ1の基端側の直管部中間には、この主キャビティ1の内部に溶融樹脂を射出する射出ゲート4が開口されている。
【0015】
また主キャビティ1の他端(出口側の端部)には、主キャビティ1の内部で成形される中空成形体の末端部を規定する成形体端部5が形成されている。本実施形態の成形体端部5の外周には、主キャビティ1の外径よりも大きな凸部が形成されている。成形体端部5には、フローティングコア収納部6と製品としての中空成形体12(図7参照)とを切り離す際の単なる印のみが設けられているだけでもよいが、例えばゴムパイプや金属部品等の他の材料からなる部材と結合させるための凹凸部が設けられていることがより好ましい態様である。
【0016】
主キャビティ1の溶融樹脂流れ方向の後流側には、主キャビティ1を通過したフローティングコア2を収納するフローティングコア収納部6が接続されている。フローティングコア収納部6の内径は、主キャビティ1の内径と同径以上に形成されている。また、フローティングコア収納部6の長さL(図6参照)は、余裕をもってフローティングコア2を収納でき、かつ中空成形体12と切り離す際の作業性を考慮して設定することが好ましく、L>1.1Kであることが好ましい。ここで、Kはフローティングコア2の最大長さである(図5参照)。また長過ぎると無駄な成形部を成形することになるので、L<20Kであることが好ましい。なお、本実施形態では、フローティングコア収納部6は直管で形成されているが、開閉手段8のスライド方向や型構造に適応するために、曲管で形成してもよい。
【0017】
フローティングコア収納部6の後流側には、溶融樹脂が流入する排出路7が接続されている。排出路7の入口断面積(連通路の入口断面積)B(図6参照)は、B<πA2/4である。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図5参照)。フローティングコア2でフローティングコア収納部6の出口である排出路7の入口を閉塞させ、その後も排出路7を封止して成形直後の中空成形体12の内部圧力を保持させて引け等を防止し、外観や寸法安定性を向上させるためには、B<πA2/4であることが必要である。排出路7の長さは任意であり、開閉手段8のストロークによって決まり、排出路7の一部に副キャビティ10と連通させるランナー9を分岐させる程度の長さがあればよく、長すぎると無駄な樹脂成形部を形成することになるので好ましくない。
【0018】
排出路7の中間部には、これに分岐してランナー9が接続されている。そして、このランナー9を介して、排出路7に副キャビティ10が連通されている。副キャビティ10は、樹脂中へ押圧されるフローティングコア2によって排出される余剰樹脂を収納する空間である。
【0019】
開閉手段8は、排出路7内をスライド移動することにより連通路(本実施形態では排出路7及びランナー9)を開閉する。この開閉手段8は、主キャビティ1内へ溶融樹脂を充填する際に排出路7内をスライド移動してランナー9入口を閉じ、フローティングコア2によって排出される余剰樹脂を副キャビティ10に収納するときには排出路7内をスライド移動してランナー9入口を開くように開閉操作される。開閉手段13は、特に限定されないが、例えば、スライド式に開閉するピン等を用いて油圧などの手段で開閉動作させる手段(シャットオフピン)などが適用できる。シャットオフピンの断面形状は三角、四角、矩形、円形など任意であるが、金型製作上は円形が好ましい。
【0020】
次に図1から図8を参照して、本実施形態の中空体成形装置11を用いた成形方法を説明する。なお、図1から図4及び図6では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。
【0021】
まず図1に示すように、主キャビティ1の基端側の加圧ポート3にフローティングコア2を装着して、可動型を移動させ中空体成形装置11を型組み状態にする。なお、開閉手段8は連通路を閉じた状態である。
【0022】
フローティングコア2の材質は、樹脂、金属、セラミックなどあらゆる材質を用いることが可能であるが、副キャビティ10等との分別処理が不要で副キャビティ10等の廃棄が容易な樹脂を採用することが好ましく、副キャビティ10等と共に再生可能である、中空成形体と同一樹脂を採用することがより好ましい。フローティングコア2は予め用意しておくこともできるが、特許文献4に示されている中空成形方法により、製品としての中空成形体の成形と同時に、フローティングコア2を成形することも可能である。
【0023】
フローティングコア2の形状は、球形状、半球形状、円錐形状あるいは砲弾形状等が好ましく、特に本実施形態では、例えば、先端部が円錐形状を有する砲弾形状のものを採用した。ここで砲弾形状とは、図5に例示したような形状であり、円柱部2aと円柱部2aの一方の面に連接し、円柱部2aの中心軸と垂直な断面積が円柱部2aの一方の面側から漸減する形状を有する頂部2bからなる形状をいう。
【0024】
次に図2に示すように、中空体成形装置11の型組み状態において、射出ゲート4から溶融樹脂を射出して主キャビティ1に溶融樹脂を充填する。図2では、主キャビティ1及びフローティングコア収納部6の内部に溶融樹脂が充填されている。少なくとも主キャビティ1の内部に溶融樹脂が充填されれば樹脂量の少ないショートショットでもよいが、成形品の外観を重視する場合はフルショットが望ましい。
【0025】
本発明で用いる樹脂としては、中空成形体を射出成形可能なあらゆる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられるが、射出成形での中空部成形性という観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS,ABS等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66、あるいはナイロン6などのポリアミド系樹脂、PET,PBTなどのポリエステル系樹脂、POM、ポリカーボネート、PPS、変性PPE、PMMA樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など種々の樹脂が挙げられ、これら樹脂にガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、カオリンなどの強化材、無機フィラーなどを添加したものでもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などもBMCとして知られている射出成形が可能な熱硬化性樹脂であれば用いることができる。
【0026】
次いで図3に示すように、開閉手段(シャットオフピン)8をスライド後退させて、連通路が開の状態になる。具体的には、シャットオフピンを油圧シリンダー等適宜な駆動源(図示せず)を用いてスライド後退させて、ランナー9入口を開く。ここで、スライド後退させるタイミングは任意であり、例えば図2に示した射出充填中でも可能であるが、主キャビティ1中の成形体表面の溶融樹脂が固化し、その内部がまだ固化しない状態、すなわち射出充填完了後いくらかのタイムラグをおいてスライド後退させることが好ましい。
【0027】
次に図4に示すように、加圧流体源(図示せず)から加圧ポート3を介して加圧流体を圧入し、フローティングコア2を主キャビティ1の基端から成形体端部5へ向かって移動せしめる。その際、フローティングコア2は溶融樹脂中に内径が均一で内面が円滑な中空部を形成しつつ、成形体端部5を通過して中空成形体12を形成し、フローティングコア収納部6へと侵入する。フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2は、フローティングコア収納部6から排出路7側に、その尖った先端を僅かに突出した状態で停止して収納される。そのため、中空成形体12の内部圧力が保持される。フローティングコア2によって押し出される溶融樹脂は、排出路7及びランナー9を順に経て、副キャビティ10の内部に排出される。
【0028】
加圧流体としては、射出成形の温度及び圧力下で使用樹脂と反応又は相溶しない気体又は液体が使用される。具体的には、例えば窒素ガス、炭酸ガス、空気、水、グリセリン、流動パラフィン等が使用できるが、窒素ガスをはじめとする不活性ガスが好ましい。この加圧流体の圧入は、例えば窒素ガス等の気体を用いる場合、予め圧縮機で畜圧タンク(図示されていない)内に昇圧して蓄えた加圧ガスを配管を通じて加圧ポート16に導くことや、圧縮機で直接加圧ポート3に加圧ガスを送り込んで昇圧させることでおこなう事ができる。加圧ポート3に供給する加圧ガスの圧力は、使用する樹脂の種類やフローティングコア2の大きさなどによっても相違するが、通常4.90〜29.42MPa(50〜300kg/cm2G)程度である。
【0029】
この中空部の形成後、溶融樹脂が固化するまで冷却した後に、可動型を移動させて金型を型開きし、中空成形体12と、フローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部が連なった状態の成形体を取り出す。
【0030】
図6に示したように、フローティングコア収納部6に形成された成形部と、排出路7に形成された成形部は、フローティングコア先端部において、僅かに互いに溶着している程度の状態で一体化している。かつ、フローティングコア2が楔状にある程度突出しているために、フローティングコア先端部と排出路7に形成された成形部の界面13は、形状的に切り欠き状態である。したがって、この界面13は強度的に弱く、作業員がこの界面13近傍を屈曲させることにより、フローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離すことができる。
【0031】
このようにして切り離した成形品の断面を図7に示す。図7に示すように、フローティングコア2の先端がフローティングコア収納部6に形成された成形部から突出している。フローティングコア2の先端が突出しているということは、フローティングコア2が主キャビティ1を通過し、中空成形体12に良好な中空部が形成されているということであり、現場においてこれを容易に確認することができる。
【0032】
このようにフローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離し、かつ切り離し部でフローティングコアの突出を確実に視認するためには、連通路の入口断面積(本実施形態では排出路7の入口断面積)B(図6参照)が、B>πA2/80であることが好ましく、B>πA2/25であることがより好ましい。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図5参照)。連通路の入口断面積BがπA2/80以下であると、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが困難になる可能性があるし、切り離し部でのフローティングコアの突出を視認し難くなる可能性がある。さらに、排出路7の溶融樹脂の固化が早まって樹脂の排出が困難になるなどの不具合が生じる可能性もある。
【0033】
次いで図7に示したように、鋸等の切断手段で成形体端部5のフローティングコア収納部6側の境界部14を切断して、図8に示す最終製品である中空成形体(パイプ成形品)12として仕上げられる。その際、本実施形態のように成形体端部5に凹凸部や印が付帯されていれば切断部を容易に決定することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、外観や寸法安定性に優れ、かつ内径が均一で内面が円滑な中空成形体12が得られる。また、フローティングコア2が主キャビティ1を通過したことを容易に確認することができ、現場での品質管理が容易である。
【0035】
また、本実施形態のフローティングコア2は先端が尖った砲弾形状を呈しているので、球形である場合に比較して、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが容易であるし、切り離し部でフローティングコアの突出を容易に視認できる。
【0036】
<第2の実施形態>
次に図9を参照して、本実施形態の中空体成形装置について説明する。図9は、本実施形態の中空体成形装置であり、加圧ポートにフローティングコアを装着した状態を示す概略図である。図9では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置11の内部が見えるように図示している。なお、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明する。
【0037】
本実施形態の中空体成形装置21は、第1の実施形態と同様に射出成形金型であり、溶融樹脂の射出ゲート4を有する固定型と、型開き時及び型組み時に移動する可動型とからなっている。図9に示すように、本実施形態の成形装置21は、パイプ等の中空成形体を成形する主キャビティ1、主キャビティ1内に樹脂を射出する射出ゲート4、フローティングコア2、加圧ポート3、成形体端部5、フローティングコア収納部6、スライド移動により排出路7を開閉する開閉手段8、排出された溶融樹脂が収容される捨てキャビティとしての副キャビティ10、及び副キャビティ10とフローティングコア収納部6を連通するランナー9から構成されている。
【0038】
すなわち、本実施形態の中空体成形装置21では、フローティングコア収納部6に分岐されて副キャビティ10への連通路であるランナー9が接続されており、ランナー9がフローティングコア収納部6と副キャビティ10とを連通させる連通路である点が第1の実施形態と異なっている。
【0039】
また、開閉手段8は、フローティングコア収納部6内をスライド移動することにより連通路(本実施形態ではランナー9)を開閉する点が第1の実施形態と異なっている。この開閉手段8は、主キャビティ1内へ溶融樹脂を充填する際にフローティングコア収納部6内をスライド移動してランナー9入口を閉じ、フローティングコア2によって排出される余剰樹脂を副キャビティ10に収納するときにはフローティングコア収納部6内をスライド移動してランナー9入口を開くように開閉操作される。
【0040】
本実施形態においても、連通路の入口断面積(ランナー9の入口断面積)B(図14参照)は、第1の実施形態と同様の理由で、B<πA2/4である。ここで、Aは、フローティングコアの2の最大径である(図13参照)。
【0041】
また、フローティングコア収納部6の長さL(図14参照)は、第1の実施形態と同様の理由で、1.1K<L<20Kであることが好ましい。ここで、Aは、フローティングコア2の最大径である(図13参照)。
【0042】
次に図9から図15を参照して、本実施形態の中空体成形装置21を用いた成形方法を説明する。なお、図9から図12及び図14では、説明の便宜上、固定型と可動型とを型組み状態においても、装置21の内部が見えるように図示している。
【0043】
まず図9に示すように、主キャビティ1の基端側の加圧ポート3にフローティングコア2を装着して、可動型を移動させ中空体成形装置21を型組み状態にする。なお、開閉手段8は連通路を閉じた状態である。フローティングコア2の材質、形状は、第1の実施形態において説明した通りであるが、本実施形態では球形状のフローティングコアを採用している。
【0044】
次に図10に示すように、中空体成形装置21の型組み状態において、射出ゲート4から溶融樹脂を射出して主キャビティ1及びフローティングコア収納部6の内部に充填する。本実施形態においても、成形品の外観を重視する場合はフルショットが望ましい。充填する樹脂としては、第1の実施形態において挙げた樹脂と同様の樹脂を採用することができる。
【0045】
次いで図11に示すように、開閉手段(シャットオフピン)8をスライド後退させて、連通路が開の状態になる。具体的には、シャットオフピンを油圧シリンダー等適宜な駆動源(図示せず)を用いてスライド後退させて、ランナー9入口を開く。スライド後退させるタイミングは第1の実施形態と同様である。
【0046】
次に図12に示すように、加圧流体源(図示せず)から加圧ポート3を介して加圧流体を圧入し、フローティングコア2を主キャビティ1の基端から成形体端部5へ向かって移動せしめる。その際、フローティングコア2は溶融樹脂中に中空部を形成しつつ、成形体端部5を通過して中空成形体12を形成し、フローティングコア収納部6へと侵入する。フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2は、溶融樹脂の流れに沿ってランナー9入口に向かい、湾曲した中空部を形成しつつ、最終的にはフローティングコア収納部6からランナー9側にその球面を突出した状態で停止して収納される。すなわち、フローティングコア2はランナー9の入口を閉塞し、中空成形体12の内部圧力が保持される。フローティングコア2によって押し出される溶融樹脂は、ランナー9を経て副キャビティ10の内部に排出される。
【0047】
この中空部の形成後、溶融樹脂が固化するまで冷却した後に、可動型を移動させて金型を型開きし、中空成形体12と、フローティングコア収納部6、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部が連なった状態の成形体を取り出す。
【0048】
図14に示したように、フローティングコア収納部6に形成された成形部とランナー9に形成された成形部は、フローティングコア2の球面において、僅かに互いに溶着している程度の状態で一体化している。かつ、フローティングコア2が球形状にある程度突出しているために、フローティングコア先端部とランナー9に形成された成形部の界面13は、形状的に切り欠き状態である。したがって、この界面13は強度的に弱く、作業員がこの界面13近傍を屈曲させることにより、フローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離すことができる。
【0049】
このようにして切り離した成形品の断面を図15に示す。図15に示すように、フローティングコア2の球面がフローティングコア収納部6に形成された成形部のランナー9入口に相当する部分から突出している。フローティングコア2の球面が突出しているということは、フローティングコア2が主キャビティ1を通過し、中空成形体12に良好な中空部が形成されているということであり、現場においてこれを容易に確認することができる。
【0050】
このようにフローティングコア収納部6より下流側の成形部を簡単に切り離し、かつ切り離し部でフローティングコアの突出を確実に視認するためには、連通路の入口断面積(本実施形態ではランナー9入口断面積)B(図14参照)が、B>πA2/80であることが好ましく、B>πA2/25であることがより好ましい。ここで、Aは、フローティングコアの2の最大径である(図13参照)。連通路の入口断面積BがπA2/80以下であると、フローティングコア収納部6より下流側の成形部の切り離しが困難になる可能性があるし、切り離し部でのフローティングコアの突出を視認し難くなる可能性がある。さらに、ランナー9の溶融樹脂の固化が早まって溶融状態で樹脂の排出が困難になるなどの不具合が生じる可能性もある。また、本実施形態においては、フローティングコア収納部6へと侵入したフローティングコア2がランナー9入口に向かわずに直進する可能性もある。
【0051】
次いで、実施形態1と同様にして境界部14を切断して、図8に示したと同様に最終製品である中空成形体(パイプ成形品)12として仕上げられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。特に本実施形態によれば、球形状のフローティングコア2の使用に適した構造を有している。
【0053】
<第3の実施形態>
本実施形態の中空体成形装置は、図16及び図17に示すように、フローティングコア収納部6を屈曲形状に形成した以外は、第2の実施形態の中空体成形装置と同様である。尚、この場合、図16に示すようにフローティングコア収納部6の長さLは、主キャビティ1の直管部の延長方向(開閉手段8のスライド方向)の長さである。
【0054】
このような構造を採用することにより、フローティングコア2をランナー9の入口へと誘導し易く、ランナー9の入口を確実に閉塞することができる。また、第1の実施形態で用いた様な砲弾形状のフローティングコアの使用にも適している。さらに、屈曲形状のフローティングコア収納部6は、開閉手段8のスライド方向や型構造等に適応させることができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0056】
<実施例1>
図1の装置11を用いて、図8に示す中空成形体(パイプ成形品、外径;26mm、内径;18mm、肉厚;4mm、長さ;300mm)を成形した。
【0057】
図1の装置11において、排出路7の断面は円形でその直径は14mm(入口断面積Bは1.5cm2)であり、長さは20mmである。また、フローティングコア収納部6の長さLは38mmである。また、開閉手段(シャットオフピン)8の断面形状は円形で、その直径は排出路7の径よりも僅かに小さく滑らかにスライドしうるが、加圧された溶融樹脂を通過させない程度のクリアランスを有している。
【0058】
フローティングコア2の形状は図5に示した様に砲弾形状を呈しており、最大長さK;22mm、最大径A;18mm(断面積は2.5cm2)である。図1では、フローティングコア用キャビティは図示していないが、特許文献4と類似の成形方法でフローティングコア2と中空成形体12を同時に成形した。
【0059】
また、中空成形体12の成形素材には、GF強化ポリアミド樹脂(旭化成ケミカルズ社製「レオナ1402G」;以下、「GFPA」と記す。)を用いた。
【0060】
まず、射出成形機(東洋機械金属社製TP−180H)を用いてGFPAを樹脂温度280℃、射出圧力11.8MPaにて射出ゲート4から射出し、図2に示すように主キャビティ1を溶融樹脂にて充填した。次いで図3に示すように、樹脂充填完了1秒後にシャットオフピン8を不図示の油圧シリンダーにてスライド後退させ、排出路7を開いた。
【0061】
続いて、圧力22.6MPaの窒素ガスをガス中空成形用ガス発生装置(旭エンジニアリング製エアモールド)に接続した加圧ポート3より圧入して、図4に示すようにフローティングコア2を成形体端部5側に移動せしめ、フローティングコア収納部6の端部に到達せしめた。この時、フローティングコア2によって排出される溶融GFPAは、排出路7及びランナー9を順に経て副キャビティ10中へ流入した。
【0062】
主キャビティ1、フローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10内のGFPAが固化するまで冷却後、金型を開いて、中空成形体12並びにフローティングコア収納部6、排出路7、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部を一体として取り出した。
【0063】
その後、界面13(図6参照)近傍を作業員が手作業で屈曲させると、簡単にフローティングコア収納部6より下流側の成形部を切り離すことができ、図7に示す中空成形体12とフローティングコア収納部6に形成された成形部が一体となった成形体が得られた。フローティングコア2の尖った先端がフローティングコア収納部6に形成された成形部の末端から突出しており、現場にて良好な中空部が得られていることを確認できた。さらに、境界部14にて切断し、図8に示す最終製品としての中空成形体(パイプ成形品)12を得た。
【0064】
<実施例2>
図9の装置21を用いた以外は実施例1と同様にして、図8に示す中空成形体を成形した。
【0065】
図9の装置21において、ランナー9の断面は円形でその直径は14mm(入口断面積Bは1.5cm2)である。また、フローティングコア収納部6の長さLは38mmである。また、開閉手段(シャットオフピン)8の断面形状は円形で、その直径はフローティングコア収納部6の径よりも僅かに小さく滑らかにスライドしうるが、加圧された溶融樹脂を通過させない程度のクリアランスを有している。
【0066】
フローティングコア2の形状は図13に示した様に球形状であり、その最大径A(直径)は18mm(断面積は2.5cm2)、最大長さK(直径)は18mmである。尚、フローティングコア2は、実施例1と同様に中空成形体12と同時に成形した。
【0067】
成形終了後に、パイプ成形品12並びにフローティングコア収納部6、ランナー9及び副キャビティ10に形成された成形部を一体として取り出した。その後に、界面13(図14参照)近傍を作業員が手作業で屈曲させると、簡単にフローティングコア収納部6より下流側の成形部を切り離すことができ、図15に示す中空成形体12とフローティングコア収納部6に形成された成形部とが一体になった成形体が得られた。フローティングコア2の球面がフローティングコア収納部6に形成された成形部のランナー9入口に相当する部分から突出しており、現場にて良好な中空部が得られていることが確認できた。さらに、境界部14にて切断し、図8に示した最終製品としての中空成形体(パイプ成形品)12を得た。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る中空体成形装置は、自動車の冷却系パイプや各種熱交換器用パイプ等の屈曲部を有する中空成形体(パイプ成形品)の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 主キャビティ
2 フローティングコア
3 加圧ポート
4 射出ゲート
5 成形体端部
6 フローティングコア収納部
7 排出路
8 開閉手段
9 ランナー
10 副キャビティ
11、21 中空体成形装置
12 中空成形体(パイプ成形品)
13 界面
14 境界部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートが配され、他端に出口を有する主キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して前記フローティングコアを出口側に移動させると共に、前記出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体を成形する中空体成形装置において、
前記主キャビティに接続され、前記加圧流体によって移動した前記フローティングコアを収納するフローティングコア収納部と、
前記主キャビティ及び前記フローティングコア収納部から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティと、
前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させる連通路と、
スライド移動により前記連通路を開閉する開閉手段と、
を備え、
前記連通路の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする中空体成形装置。
【請求項2】
前記連通路は、前記フローティングコア収納部に接続された排出路と、該排出路と前記副キャビティとを連通させるランナーからなり、前記開閉手段は前記排出路内をスライド移動することを特徴とする請求項1に記載の中空体成形装置。
【請求項3】
前記フローティングコアの形状が砲弾形状であることを特徴とする請求項2に記載の中空体成形装置。
【請求項4】
前記連通路は、前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させるランナーからなり、前記開閉手段は前記フローティングコア収納部内をスライド移動することを特徴とする請求項1に記載の中空体成形装置。
【請求項5】
前記連通路の入口断面積Bが、B>πA2/80(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空体成形装置。
【請求項6】
前記フローティングコア収納部の長さLが、L>1.1K(Kは前記フローティングコアの最大長さ)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空体成形装置。
【請求項1】
一端にフローティングコアを備えた加圧ポートが配され、他端に出口を有する主キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、前記加圧ポートから加圧流体を圧入して前記フローティングコアを出口側に移動させると共に、前記出口から溶融樹脂を押し出させて中空成形体を成形する中空体成形装置において、
前記主キャビティに接続され、前記加圧流体によって移動した前記フローティングコアを収納するフローティングコア収納部と、
前記主キャビティ及び前記フローティングコア収納部から排出される溶融樹脂を収容する副キャビティと、
前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させる連通路と、
スライド移動により前記連通路を開閉する開閉手段と、
を備え、
前記連通路の入口断面積Bが、B<πA2/4(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする中空体成形装置。
【請求項2】
前記連通路は、前記フローティングコア収納部に接続された排出路と、該排出路と前記副キャビティとを連通させるランナーからなり、前記開閉手段は前記排出路内をスライド移動することを特徴とする請求項1に記載の中空体成形装置。
【請求項3】
前記フローティングコアの形状が砲弾形状であることを特徴とする請求項2に記載の中空体成形装置。
【請求項4】
前記連通路は、前記フローティングコア収納部と前記副キャビティとを連通させるランナーからなり、前記開閉手段は前記フローティングコア収納部内をスライド移動することを特徴とする請求項1に記載の中空体成形装置。
【請求項5】
前記連通路の入口断面積Bが、B>πA2/80(Aは、前記フローティングコアの最大径)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空体成形装置。
【請求項6】
前記フローティングコア収納部の長さLが、L>1.1K(Kは前記フローティングコアの最大長さ)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空体成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−131136(P2012−131136A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285716(P2010−285716)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]