説明

中空容器およびその製造方法

ポリグリコール酸樹脂と芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂との積層構成を有する中空容器において、ポリグリコール酸樹脂層のガスバリア性を最大限に生かした、より強度のガスバリア性を要求される小容量ボトルに適した多層中空容器を提供する。該多層中空容器は、下式(1) −(O−CH・CO)− ……(1)で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面に芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂が積層され且つ共延伸された多層の器壁構成を有し、下式(2)を満足する。
T×w/v≦0.8×10−3 ……(2) ここで、Tは酸素ガス透過度(ml/容器/日/気圧)、vは容器の容量(ml)、wは容器の全重量に対するポリグリコール酸樹脂の重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、通常プラスチックボトルと称される樹脂製中空容器に関し、特にガスバリア性の改良された樹脂製中空容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
プラスチックボトルは、軽く、耐衝撃性も高いことから、ガラス瓶に代わる容器として広く用いられている。中でも、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することがある)を材料とした通称PETボルトは、透明性や光沢性が優れていることから、炭酸飲料、果汁入り飲料、スポーツ飲料、お茶類、コーヒー飲料などのボトルとして流通されている。一般には、PET単層のボトルが使われているが、PETはガスバリア性が低いことから、保存期間の延長や内容物の劣化を防ぐためにガスバリア性の高い樹脂層を配した多層ボトルが提案されている(特開2001−106219号公報)。特に、近年は、ボトルが小型化する傾向があり、内容量に対するボトルの表面積の割合が高くなることから、ボトル器壁材料にはガスバリア性の要求が高まりつつある。ガスバリア性樹脂としては、エチレンビニルエステル共重合体ケン化物(EVOH)や、芳香族ポリアミド(MXD6ナイロン)などが知られているが、EVOHは、低湿度におけるバリア性は高いが高湿度においてバリアが低下する欠点を有し、MXD6ナイロンはバリア性が不十分であった。これらに代わるバリア材として、脂肪族ポリエステルであるポリグリコール酸(PGA)樹脂は、MXD6ナイロンの数倍以上の酸素バリア性(数分の1以下の酸素透過係数)を有し、EVOHのような高湿度におけるバリア性の低下も少ない事から、従来のバリア樹脂に代わる材料として期待されている。通常、PETボトルの成形方法は、まず、プリフォームと呼ばれる試験管状の成形物を射出成形で成形し、このプリフォームを加熱してロッドによる縦方向の延伸と共に内部に圧縮空気を吹き込みボトル形状に付形(ブロー成形)し、必要に応じてヒートセット(熱固定)する方法が一般的であるが、ブロー成形を2段階に分けて行なう成形方法やヒートセット条件の最適化により、耐熱性や耐圧性などが改善される事が知られている。
しかしながら、PGA樹脂をガスバリア層とするPET系ないしポリエステル樹脂系ボトルにおいて、成形条件との関係で積層構成を最適化してガスバリア性を改善する試みは殆んどなされていない。
【発明の開示】
従って、本発明の主要な目的は、成形条件との関係で積層構成を最適化することにより、ガスバリア性を改善したPGA樹脂をガスバリア層とする多層中空容器を提供することにある。
すなわち、本発明は、下式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面に芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなる共積層樹脂が積層され且つ共延伸された多層の器壁構成を有し、下式(2)を満足するガスバリア性多層中空容器を与えるものである。
T×w/v≦0.8×10−3 ……(2)
ここで、Tは酸素ガス透過度(ml/容器/日/気圧)、vは容器の容量(ml)でありり、好ましくは700(ml)以下、wは容器の全重量に対するポリグリコール酸樹脂の重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
上記において本発明の多層中空容器を規定する上記式(2)の左辺T×w/vは、容器容量が小さくなるにつれてバリア樹脂であるPGA樹脂に要求される大きなバリア性の指標であり、これが小なる程、PGA樹脂が大なるバリア性を示す分子配列状態にあることを示す。
また、本発明のガスバリア性多層中空容器の製造方法は、下式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面にガラス転移点が70℃以上である芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなる共積層樹脂を積層した中空積層プリフォームを加熱成形し、冷却し、再加熱後、共延伸することを特徴とするものである。
本発明者らが、上述の目的で研究を行い、本発明に到達した経緯について若干付言する。
PGA樹脂の示す大なるガスバリア性には、約1.5g/cm以上という高密度による緻密な分子配列が寄与することは知られている。そして、PGA樹脂の密度は、延伸ならびに結晶化に伴う分子配列の緻密化により増大し、それ自体はガスバリア性の増大に有効に作用するものである。しかしながら、PGA樹脂と芳香族ポリエステル樹脂等の積層プリフォームの延伸のための再加熱において、PGA樹脂が過度に結晶化していると、PGA分子が延伸時の分子再配列に追随できずに分子鎖の破断や、結晶内または界面での破壊が起り、ミクロな欠陥(ボイド)が生ずるために、最終的に生成する中空容器(ボトル)のPGA樹脂の密度は低下し、PGA樹脂層のガスバリア性もむしろ低下することになる。本発明者らは、積層プリフォームの延伸に先立つPGA樹脂の過早結晶化を防止するためのPGA樹脂と芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂の組合せならびに再加熱条件の最適化により、上記(2)式の左辺、T×w/vの極小化、すなわち、PGA樹脂層の示すガスバリア性の極大化に成功して、本発明に到達したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の多層中空容器を、その好ましい態様について、順次説明する。
(ポリグリコール酸樹脂)
本発明により製造される多層中空容器の主たる構成層の一はポリグリコール酸樹脂(以下、しばしば「PGA樹脂」と称する)よりなる。ここで、PGA樹脂としては、下記式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされるグリコール酸単位を繰り返し単位として60重量%以上の割合で有する単独または共重合体が用いられる。上記グリコール酸単位は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステルまたはグリコール酸塩の重縮合によっても得られるが、より好ましくは、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合により与えられる。
また本発明の多層中空容器においてポリグリコール酸樹脂層は、ガスバリア性樹脂層として含まれる。特に芳香族ポリエステル樹脂等との樹脂積層体において、10重量%以下の割合の層として含まれたときにおいても有効なガスバリア性樹脂層として寄与することが好ましい。そのような優れたガスバリア性樹脂を形成するためには、少なくとも80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましいくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上のポリグリコール酸(PGA)重合単位を含む共重合体(PGAコポリマー)が用いられるが、最高のガスバリア性を得るためには、単独重合体(PGAホモポリマー)が選択されるべきである。
グリコール酸とともにPGAコポリマーを形成するために比較的少量割合で用いられるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えばトリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)、アミド類(εカプロラクタム等)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。なかでも、ラクチド(LA;Lラクチド(LLA)、Dラクチド(DLA)、DLラクチド(DLLA)などの光学異性体を含む)、トリメチレンカーボネート(TMC)およびカプロラクトン(CL)からなる群より選ばれるコモノマーが好ましい。
PGA樹脂は、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いるGPC測定における重量平均分子量(ポリメチルメタクリレート換算)が5万〜80万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が低過ぎると、強度が弱く、延伸時等にヒビあるいは割れが生じ易い。重量平均分子量が高過ぎると、多層成形時に樹脂層厚みが不均一になり、良好な延伸成形物が得られにくく溶融加工時のスクリューの剪断力で発熱し、PGA樹脂をペレットに加工する時や、あるいは成形物に加工する時、樹脂着色が進み、また溶融不良による斑(成形物のフローマーク)などが発生し外観不良になる。重量平均分子量15万〜30万程度がより好ましい。
PGA樹脂は、延伸を円滑に実施するための好ましい熱的特性として、Tg(ガラス転移温度)が30〜55℃、より好ましくは35〜50℃;Tc1(昇温過程の結晶化温度)が60〜135℃、より好ましくは65〜120℃;Tc2(降温過程の結晶化温度)が140〜200℃、より好ましくは145〜195℃;Tm(融点)が150〜230℃、より好ましくは180〜225℃のものが好ましく用いられる。
ポリグリコール酸樹脂層には、上記PGA樹脂に加えて他の熱可塑性樹脂を配合することもできるが、その場合でもポリグリコール酸樹脂層を構成する樹脂の60重量%以上でできるだけ高い割合のPGA重合単位により構成されることが好ましい。
PGA樹脂には、必要に応じてその100重量部に対して、0.003〜3重量部、好ましくは0.005〜1重量部の熱安定剤を加えることができる。
(共積層樹脂)
本発明の多層中空容器においては、PGA樹脂層の少なくとも片面、好ましくは両面、には、芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなる共積層樹脂が積層される。ポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸等の、上記したグリコール酸と共重合され得るコモノマー類の単独又は共重合体が用いられる。また芳香族ポリエステル樹脂は、ポリエステルを構成するジオールとジカルボン酸の少なくとも一方、好ましくはジカルボン酸、が芳香族であるポリエステルであり、エチレングリコールとテレフタル酸のエステルであるエチレンテレフタレートの重合体が好適に用いられる。芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂がPGA樹脂層のTc1に対して高過ぎるTg(ガラス転移温度)を有すると、延伸のための再加熱においてPGA樹脂層の結晶化が進むので好ましくない。芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂のTgは、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは50〜60℃である。Tc1の高いPGA樹脂を用いれば、エチレンフタレートの単独重合体(Tg=約75℃)も用いられるが、より好ましくは、CHDM(シクロヘキサンジメタノール)、ダイマー酸等により、エチレングリコールまたはテレフタル酸の一方の一部を置換した共重合ポリエステルが用いられ、ポリブチレンテレフタレートも好適に用いられる。芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂は、ウベローデ型粘度計を用いて測定したIV(固有粘度)値が0.7〜0.8のものが好ましく用いられる。
共積層樹脂は、これらのバージン樹脂の中に、多層中空容器を粉砕した顆粒状の樹脂、あるいはそれらを再びペレット加工した樹脂などをリサイクルする目的で混合したリサイクル樹脂であってもよい。また、例えば、顆粒上の樹脂をアルカリ水、温水または酸水にて洗浄することにより、顆粒状の樹脂からポリグリコール酸樹脂を取り除いて混合したものでもよい。共積層樹脂中にはポリグリコール酸樹脂が含まれてもよいが、多層中空容器の成形加工、透明性の観点から、その量は好ましくは10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
(製造方法)
本発明の多層中空容器は、PGA樹脂と芳香族ポリエステル樹脂等の共積層樹脂との試験管状の積層体、すなわち積層プリフォームないし有底パリソンを一旦加熱成形、ならびに冷却により形成し、再加熱後ロッドによる縦方向の延伸とともに内部に圧縮空気を吹き込み金型に押し付けてボトル形状に付形(ブロー成形)する方法が好ましく用いられる。
(積層プリフォーム)
積層プリフォーム中のポリグリコール酸樹脂層の構成割合は重量基準(厚さ基準とほぼ等しい)で1〜10%の割合が好ましい。10重量%を超えると、積層プリフォームを延伸するために加熱するに際して結晶化が進み過ぎ、延伸のために多大な応力を必要とするとともに却ってボイドの発生によりガスバリア性が低下することがある。1重量%未満では、得られる多層中空容器のガスバリア性が乏しくなり、ガスバリアの良好な多層中空容器を得るという本発明の目的が達成し難くなる。
プリフォームは、共射出(コ・インジェクション)成形法によって成形される。共射出成形法には、逐次成形法と同時成形法が有り、いずれの成形法でも成形可能であるが、バリア層を芯層とした2種3層構成のプリフォームを成形するには同時成形法が好適に用いられる。射出温度は250〜280℃が好適である。かくして得られる積層プリフォームは、通常2−10mm程度の厚みを有している。
(積層プリフォームの延伸前加熱(再加熱))
積層プリフォームの延伸ブロー成形に先立ち、積層プリフォームをPGA樹脂のTc1に対して過大とならない温度、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜60℃に再加熱する。赤外線ヒーターで、30〜110秒間、より好ましくは40〜100秒間、再加熱する方法が好ましく用いられる。再加熱時間が短すぎると、プリフォームの温度が不均一になり、ブロー成形時に厚み斑が生じやすくなり、分子配向も不均一になる。逆に、再加熱時間が長すぎるとPGAが結晶化して延伸性が損なわれる。
(延伸ブロー成形)
再加熱された積層プリフォームを、金型にセットし、縦1.5〜4.0倍、横3.0〜9.0倍、好ましくは縦2.0〜3.5倍、横3.5〜5.0倍にブロー延伸する。延伸倍率が低すぎると分子の配向が不足し、延伸倍率が高すぎると分子鎖の切断が起こり易くなる。面積倍率(縦の延伸倍率×横の延伸倍率)としては9〜12が好ましい。
(熱固定)
延伸ブロー成形の最終工程で形成された中空容器(ボトル)を70〜160℃、好ましくは110〜150℃、の温度で1〜10秒間、好ましくは3〜7秒間、保持して熱固定することにより成形された中空容器の寸法安定性を改善することが好ましい。これは好ましくは上記温度に加熱された金型中で成形された中空容器を保持することにより行われる。このような加熱金型中での保持による熱固定操作は、通常のPETボトルの延伸ブロー成形においては行われないが、ガラス転移温度が比較的低いポリエステルを好適な共積層樹脂として用いる本発明の中空容器において、加熱販売機などにおける50〜60℃の高温環境下での寸法安定性を良好に保つためには、熱固定が有効に作用する。熱固定なしでは55℃で収縮変形が起こりがちであるが、熱固定することによってこのような収縮変形が抑えられる。
(多層中空容器)
上記各工程を通じて得られた本発明の多層中空容器は、上記式(2)の左辺のパラメータ、すなわちT×w/v(ここで、Tは酸素ガス透過度(ml/容器/日/気圧)、vは容器の容量(ml)、wは容器の全重量に対するポリグリコール酸樹脂の重量%)が0.8×10−3以下、好ましくは0.5×10−3以下、で代表される優れたガスバリア性を示し、炭酸飲料水、清涼飲料水、食用油、果汁、酒類、更には飲料水、洗剤、化粧品の容器として、従来よりPETボトルが用いられる用途により優れたガスバリア性を有する中空容器として用いられる。
本発明の多層中空容器は、特に優れたガスバリア性を示す器壁構成を有するため、容量当りの表面積の大きい内容量700ml以下、特に300〜550mlの小容量ボトルが特に適している。小容量ボトルの多層成形は一般に困難となりがちであるが、本発明の多層中空容器の成形性を良好に保つために、積層容器を構成するポリグリコール酸樹脂層の重量割合(厚さ割合とほぼ等しい)は、1〜10重量%の範囲が好ましい。本発明の多層中空容器においては、このように少ない割合の(従って、薄い)ポリグリコール酸樹脂層であっても良好なガスバリア層として作用する。
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明する。物性等の測定方法は、次の通りである。
(1)ガラス転移温度(Tg)
小型圧縮成形機を用いて、280℃で厚さ約200μmのシートを作製し、このシートから重量約5mgを切り抜いてサンプルとした。このサンプルを示差走査熱量計(島津製作所製「DSC−60A」)を用いて、昇温速度を20℃/minとして、オンセット温度とエンドセット温度から求めた中間点をガラス転移温度とした。
(2)密度
プリフォームまたはボトルの芯層からPGAを取り出し、密度勾配管法により、23℃で密度を測定した。プリフォームの再加熱後の密度は、ブロー成形機の再加熱ゾーンをプリフォームが通過した直後に液体窒素で急冷してサンプルとした。
(3)酸素ガス透過度
酸素ガス透過度測定装置(モダンコントロール社製「OX−TRAN2/20」)を用い、23℃、内部湿度80%RH、外部湿度50%RHの条件で酸素ガス透過度を測定した。
(4)再加熱温度
ブロー成形機の再加熱ゾーンをプリフォームが通過した直後にプリフォームの温度を赤外センサーで測定した。
(5)ボトル容量
形成したボトルに水を充填し、水の重量からボトル容量を求めた。
(6)収縮開始温度
ボトル胴部の表面層(外層)を高さ方向に切り出してサンプルとした。このサンプルを熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ(株)社製「EXSTER6000」)を用いて、昇温速度20℃/分での昇温下における収縮開始温度(℃)を測定した。
[実施例1]
ポリグリコール酸(PGA)として、温度270℃、せん断速度120sec−1で測定した溶融粘度が450Pa・sのホモポリマーを用いた。このポリグリコール酸100重量部に対して、0.1重量部のホスファイト系酸化防止剤(旭電化工業株式会社製「PET−8」)を添加して、ペレット化した。このポリグリコール酸を芯層(7重量%)とし、内外層にIV値が0.74、ガラス転移温度が44℃の共重合ポリエステル(カネボウ合繊(株)、WPTS)を用いて、芯層と内外層の射出温度270℃として重量28gのプリフォームを得た。このプリフォームをSidel社製のブロー成形機(「SBO−1」)を用いて成形サイクル400BPH、再加熱温度を60℃として、容量500mlの40℃に加熱されたボトル金型を用いてブロー成形し、成形後5秒間保持して熱固定を行った。
[実施例2]
実施例1と同じプリフォームを用いて、金型温度を70℃とする以外は、実施例1と同様にしてブロー成形を行った。
[実施例3]
実施例1と同じプリフォームを用いて、金型温度を110℃とする以外は、実施例1と同様にしてブロー成形を行った。
[実施例4]
実施例1と同じプリフォームを用いて、金型温度を150℃とする以外は、実施例1と同様にしてブロー成形を行った。
(比較例1)
実施例1で用いた酸化防止剤入りPGAペレットを用い、このポリグリコール酸を芯層(8重量%)とし、内外層にIV値が0.74、ガラス転移温度が74℃のポリエチレンテレフタレートを用いて、芯層の射出温度270℃、内外層の射出温度280℃として重量28gのプリフォームを得た。このプリフォームをSidel社製のブロー成形機(「SBO−1」)を用いて成形サイクル400BPH、再加熱温度を93℃として、実施例1と同様に金型温度40℃、保持時間5秒でブロー成形を行った。
(比較例2)
IV値が0.74、ガラス転移温度が44℃の共重合ポリエステル(実施例1〜4で用いたポリエステルと同じ)を用いて、射出温度270℃で重量28gの単層プリフォームを得た。このプリフォームを用いる以外は実施例1と同様にして、Sidel社製のブロー成形機(「SBO−1」)を用いて成形サイクル400BPH、再加熱温度を60℃として、容量500mlのボトル金型を用いて成形した。
(比較例3)
IV値が0.74、ガラス転移温度が74℃のポリエチレンテレフタレート(比較例1で用いたポリエステルと同じ)を用いて、射出温度290℃で重量28gの単層プリフォームを得た。このプリフォームを再加熱温度を93℃とする以外は実施例1と同様にして、容量500mlのボトルを成形した。
上記実施例および比較例についてそれぞれ求めた、プリフォームおよびボトル物性ならびにPGAガスバリア性能係係数T×w/vをまとめて、次表1に記す。

上記表1の結果を見れば明らかな通り、積層プリフォームの延伸に先立つPGA樹脂の過早結晶化を防止するべく、PGA樹脂と芳香族ポリエステル樹脂の組合せならびに再加熱条件を最適化して得られた本発明の実施例1〜4(PGA割合w=7重量%)のボトルは、PGA樹脂層を含まない単層PETボトルである比較例2および3のボトルはもちろん、より大なるPGA割合(w=8重量%)である比較例1のボトルに比べて30〜40%と低い酸素ガス透過度(v)を示している。そして、その改善された酸素ガスバリア性は、PGAガスバリア性係数T×w/vが比較例1に比べて顕著に小さいことにより裏付けられている。
【産業上の利用可能性】
上述したように、本発明によれば、PGA樹脂と芳香族ポリエステル樹脂層等の共積層樹脂との積層構成を有する中空容器において、PGA樹脂層のガスバリア性を最大限に生かした、より強度のガスバリア性を要求される小容量ボトルに適した多層中空容器が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面に芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなる共積層樹脂が積層され且つ共延伸された多層の器壁構成を有し、下式(2)を満足するガスバリア性多層中空容器。
T×w/v≦0.8×10−3……(2)
ここで、Tは酸素ガス透過度(ml/容器/日/気圧)、vは容器の容量(ml)、wは容器の全重量に対するポリグリコール酸樹脂の重量%である。
【請求項2】
共積層樹脂のガラス転移温度が70℃以下である請求項1に記載の多層中空容器。
【請求項3】
下式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面に芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなる共積層樹脂が積層され且つ共延伸された多層の器壁構成を有し、下式(2)を満足するガスバリア性多層中空容器。
T×w/v≦0.8×10−3……(2)
ここで、Tは酸素ガス透過度(ml/容器/日/気圧)、vは700ml以下である容器の容量(ml)、wは容器の全重量に対するポリグリコール酸樹脂の割合で1〜10重量%の範囲内である。
【請求項4】
ポリグリコール酸樹脂と芳香族ポリエステル樹脂との積層体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の多層中空容器。
【請求項5】
ポリグリコール酸樹脂層の両側に芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂のいずれか、もしくは両方の樹脂の層が積層され、共延伸されている請求項1〜3のいずれかに記載の多層中空容器。
【請求項6】
ポリグリコール酸樹脂層の両側に芳香族ポリエステル樹脂の層が積層されている請求項5に記載の多層中空容器。
【請求項7】
共積層樹脂がリサイクル樹脂である請求項4〜6のいずれかに記載の多層中空容器。
【請求項8】
リサイクル樹脂中のポリグリコール酸樹脂の量が10重量%以下である請求項7に記載の多層中空容器。
【請求項9】
ポリグリコール酸樹脂が、熱的性質として、Tg(ガラス転移温度)=30〜55℃、Tc1(昇温過程の結晶化温度)=60〜135℃、Tc2(降温過程の結晶化温度)=140〜200℃、Tm(融点)=150〜230℃、を有する請求項1〜8のいずれかに記載の多層中空容器。
【請求項10】
下式(1)
−(O・CH・CO)− ……(1)
で表わされる繰り返し単位を60重量%以上含有するポリグリコール酸樹脂の層の少なくとも片面に芳香族ポリエステル樹脂又はポリグリコール酸樹脂以外の脂肪族ポリエステル樹脂からなるガラス転移点が70℃以下である共積層樹脂を積層した中空積層プリフォームを加熱成形し、冷却し、再加熱後、共延伸するガスバリア性多層中空容器の製造方法。
【請求項11】
中空積層プリフォームが共射出法により成形される請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
冷却後の積層プリフォームを赤外線ヒーターで30〜110秒間加熱して、90℃以下の温度まで再加熱する請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
再加熱された積層プリフォームを金型にセットし、縦1.5〜4.0倍、横3.0〜9.0倍にブロー共延伸する請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
共延伸後の容器を70〜160℃の加熱金型中で1〜10秒間保持して熱固定する工程を更に有する請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/072944
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517568(P2005−517568)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001537
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】